(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027093
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】注射針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/34 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61M5/34 550
A61M5/34 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130887
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】591065402
【氏名又は名称】株式会社タスク
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100212587
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】秋田 幸乙
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066GG13
4C066HH12
4C066KK07
(57)【要約】
【課題】 針をハブに固定するために塗布する接着剤の塗布量のばらつきに関わらず、皮下に穿刺する針の長さを一定にできる注射針を提供することを目的とする。
【解決手段】 貫通孔109を有するハブ103と、貫通孔109に挿入され、先端部111がハブ103の一方の端部113から突出した針105と、一方の端部113の領域の貫通孔109が拡径されて形成された接着剤溜り115に充填され、貫通孔109に挿入された針105をハブ103に固定する接着剤117と、ハブ103に装着され、ハブ103の一方の端部113及び針105の一部を覆い、先端部111が外部に突出するように針105が挿入される先端貫通孔119を有するシース107と、備える注射針101が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するハブと、
前記貫通孔に挿入され、先端部が前記ハブの一方の端部から突出した針と、
前記一方の端部の領域の前記貫通孔が拡径されて形成された接着剤溜りに充填され、前記貫通孔に挿入された前記針を前記ハブに固定する接着剤と、
前記ハブに装着され、前記ハブの前記一方の端部及び前記針の一部を覆い、前記先端部が外部に突出するように前記針が挿入される先端貫通孔を有するシースと、
備える注射針。
【請求項2】
前記シースから突き出た前記針の前記先端部が皮下に穿刺されたとき、前記シースが、皮膚に対するストッパになり、前記針の穿刺深さを画定し、
前記シースの先端から前記針の前記先端部までの長さの異なる前記シースを交換することで、前記針の穿刺深さを変えることができる、請求項1に記載の注射針。
【請求項3】
前記シースは、前記シースの先端に向かって細くなる、請求項1または2に記載の注射針。
【請求項4】
前記シースの内面及び前記ハブの外面の間に設けられた凹凸嵌合による固定機構を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の注射針。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の注射針とシリンジとを備える注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針がハブに固定されて形成された注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、針をハブに固定して注射針を形成するとき、ハブと針管との接合部であるハブの凹部に接着剤を塗布し、その接着剤を硬化させて、針管をハブに固定する工程が採られてきた。特許文献1は、そのような工程を含む注射針の作製工程を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハブの凹部に接着剤を塗布し硬化させるとき、塗布する接着剤の量にばらつきが生じるので、接着剤が凹部からはみ出す場合がある。そのため、皮膚にハブが接する様に注射した場合、ハブから隆起した接着剤が干渉して、注射針の皮下の深さがばらつく虞がある。そこで本発明は、針をハブに固定するために塗布する接着剤の塗布量のばらつきに関わらず、皮下に穿刺する針の長さを一定にできる注射針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
貫通孔を有するハブと、
前記貫通孔に挿入され、先端部が前記ハブの一方の端部から突出した針と、
前記一方の端部の領域の前記貫通孔が拡径されて形成された接着剤溜りに充填され、前記貫通孔に挿入された前記針を前記ハブに固定する接着剤と、
前記ハブに装着され、前記ハブの前記一方の端部及び前記針の一部を覆い、前記先端部が外部に突出するように前記針が挿入される先端貫通孔を有するシースと、
備える注射針である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、針とハブの固定に使う接着剤がシースの中にあるため、接着剤の塗布量のばらつきに関わらず、皮下に穿刺する針の長さを一定にできる注射針が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る注射針の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る注射針の断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る注射針を皮下に注射したところを示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る注射針をシリンジに取り付けた注射器を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための様々な実施の形態を、図面を参照して説明する。なお以下に説明する注射針は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定しない。要点の説明または理解の容易性を考慮して、異なる図面で便宜上符号を同一にして示す。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0009】
(本発明の注射針)
図1は、本発明の実施の形態に係る注射針の概略斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る注射針の断面図である。
図1及び
図2を参照しながら、本発明の注射針を説明する。
【0010】
図1に示すように、本発明の注射針101は、ハブ103と、針105と、シース107と、を備える。
【0011】
図2に示すようにハブ103は、貫通孔109を備える。貫通孔109には針105が挿入され、針105は、穿刺用の先端部111がハブ103の一方の端部113から突出している。針105の先端部の反対の端部は、ハブ103の貫通孔109の中に収容されている。
【0012】
一方の端部113の領域の貫通孔109が拡径されて形成された接着剤溜まり115には、貫通孔109に挿入された針105をハブ103に固定するために接着剤117が充填される。接着剤117は、通常、接着剤溜まり115の開口面と注入した接着剤の液面が一致するように注入される。しかし、注入量にばらつきが生じるため、接着剤117が接着剤溜まり115からはみ出す場合もあり得る。針105をハブ103に固定する強度を考慮すると、注入した接着剤の液面が接着剤溜まり115の開口面より低い場合よりも、接着剤117が接着剤溜まり115からはみ出す場合の方が好ましいといえる。
【0013】
シース107は、ハブ103に装着される。シース107は、ハブ103の一方の端部113及び針105の一部を覆う。シース107は、針105の穿刺用の先端部111が外部に突出するように針105が挿入される先端貫通孔119を備える。注射を行う場合には、シース107の先端面(先端貫通孔119が開口する面)が皮膚に接するまで、針105を皮下に穿刺する。
【0014】
接着剤117は、接着剤溜まり115から外部にはみ出しても、シース107の内部に収められる。したがって、本発明により、針105とハブ103の固定に使う接着剤がシース107の中にあるため、接着剤の塗布量のばらつきに関わらず、皮下に穿刺する針105の長さを一定にできる注射針101が提供される。
【0015】
シース107は、ハブ103の外面の凸部121とシース107の内面の凹部123の間で凹凸嵌合することによりハブ103と接合される。そのためシース107は、ハブ103から容易に取り外される固定機構を提供できる。ハブ103の外面に凹部を設け、シース107の内面に凸部を設け、その間で凹凸嵌合してもよい。凹凸嵌合だけでなく、螺合等のその他の着脱可能な固定方法を採用することもできる。また、シース107は、ハブ103と接着剤で接着するまたは溶着で接合して、取り外しできないようにしてもよい。
【0016】
(本発明の注射針を用いた穿刺例)
図3は、本発明の実施の形態に係る注射針を皮下に注射したところを示す図である。
図3を参照して、本発明の皮膚に穿刺に適した形態を説明する。
【0017】
図3に示すように、シース107から突き出た針105の先端部111が皮下に穿刺されたとき、シース107の先端125が皮膚127に対するストッパになる。したがって、シース107の先端125から針105の先端部111までの長さが針105の穿刺深さを画定する。
【0018】
このように、接着剤117の塗布量のばらつきにかかわらず、シース107の先端125からの針105の突出長さによって、針105の穿刺深さを決定できる。また、シース107の先端125から針105の先端部111までの長さの異なるシース107を交換することで、針105の穿刺深さを変えることができる。
【0019】
また、
図3に示すように、シース107は、シース107の先端125に向かって細くすることが好ましい。このようにすると、注射するとき、使用者に穿刺カ所を見やすくすることができる。
【0020】
(本発明の注射針を用いた注射器)
図4は、本発明の実施の形態に係る注射針をシリンジに取り付けた注射器を示す概略斜視図である。
図4を参照しながら本発明の注射針を用いた注射器を説明する。
【0021】
本発明の注射針101を用いた注射器129は、注射針101と、シリンジ131と、プランジャ133とを備える。
【0022】
本発明の注射針101は、ハブ103の端部の外面にねじが切ってある。シリンジ131の注射針に接続する側の端部は、内面にねじが切ってある。このハブ103の外面のねじとシリンジ131の内面のねじを嵌合し、ねじ回すことで、注射針101をシリンジ131に組み立てることができる。
【0023】
このように、注射針101とシリンジ131を分解可能に組み立てることができる。上記のように、ハブ103とシース107も凹凸嵌合により組み立てることができるため、本発明の注射器129は、ハブ103、シース107、シリンジ131、プランジャ133を分解可能に組み立てることができ、それぞれを交換できる。
【0024】
本発明は、針とハブの固定に使う接着剤がシースの中にあるため、接着剤の塗布量のばらつきに関わらず、皮下に穿刺する針の長さを一定にできる注射針が提供される。
【0025】
また、本発明の注射針は、シースの先端から針の先端部までの長さの異なるシースを交換することで、針の穿刺深さを変えることができる。
【0026】
また、本発明の注射針は、注射するとき、使用者に穿刺カ所を見やすくすることができる。
【0027】
本発明の注射針を用いた注射器は、ハブ、シース、シリンジ、プランジャを分解可能に組み立てることができ、それぞれを交換できる。
【0028】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により提供された注射針を用いて、適切な皮下深さで注射することができる。
【符号の説明】
【0030】
101 注射針
103 ハブ
105 針
107 シース
109 貫通孔
111 先端部
113 一方の端部
115 接着剤溜まり
117 接着剤
119 先端貫通孔
121 凸部
123 凹部
125 先端
127 皮膚
129 注射器
131 シリンジ
133 プランジャ