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特開2022-27143紙筒製造装置及び紙筒製造方法、並びに紙筒
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  • 特開-紙筒製造装置及び紙筒製造方法、並びに紙筒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027143
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】紙筒製造装置及び紙筒製造方法、並びに紙筒
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/18 20060101AFI20220203BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20220203BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A47G21/18
D21H27/30 B
D21H19/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130961
(22)【出願日】2020-07-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年7月31日、株式会社浮月において、株式会社浮月に卸した。
(71)【出願人】
【識別番号】391021466
【氏名又は名称】春日製紙工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅則
(72)【発明者】
【氏名】木村 博之
【テーマコード(参考)】
3B115
4L055
【Fターム(参考)】
3B115AA03
3B115BA18
3B115DA17
3B115EA03
4L055AG42
4L055AG64
4L055AG71
4L055AH37
4L055AJ01
4L055BE08
4L055EA12
4L055EA25
4L055FA13
4L055FA19
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】
強度や耐水性に優れた紙筒を製造すること。
【解決手段】
1つの外層用帯状原紙、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙、並びに1つの内層用帯状原紙を螺旋状に巻回して紙筒を製造する紙筒製造装置であって、紙筒形成手段のワインディングシャフトと紙筒切断手段のカッティングシャフトとを連結し、ワインディングシャフトで形成された紙筒をカッティングシャフトまで誘導するガイディングシャフトを備えた前記紙筒製造装置において、前記ガイディングシャフトに凹凸を付してざらつかせたことにより、内層用帯状原紙の上面にも接着剤塗布が可能になり、強度や耐水性に優れた紙筒を製造することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの外層用帯状原紙と、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙と、1つの内層用帯状原紙とをワインディングシャフトに対して螺旋状に巻き付けながら紙筒を形成し、その後カッティングして所定の長さの紙筒を製造する紙筒製造装置であって、
前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を供給する帯状原紙供給部と、
貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、
前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する油塗布手段と、
前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙をワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する紙筒形成手段と、
前記紙筒の内径よりも小さい外径を有するカッティングシャフトと、前記紙筒形成手段から前方に送り出される前記紙筒を切断するカッターとを備える紙筒切断手段であって、長手方向の前方に送り出される紙筒に沿って往復する、前記紙筒切断手段と、
前記ワインディングシャフト及び/又は前記カッティングシャフトに挿通されたガイディングシャフトとを備え、
前記ガイディングシャフトが、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたことを特徴とする、
前記紙筒製造装置。
【請求項2】
以下の工程(a)~(e)を順次備えたことを特徴とする紙筒の製造方法。
(a)1つの外層用帯状原紙、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙、及び1つの内層用帯状原紙を用意する工程;
(b)貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を、前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する工程;
(c)前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する工程;
(d)前記紙筒を、前記ワインディングシャフト及び/又はカッティングシャフトに挿通された、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたガイディングシャフトを介して、前記カッティングシャフトに移送する工程;
(e)前記紙筒を、前記カッティングシャフト上で切断する工程;
【請求項3】
帯幅方向に互いにずれるように螺旋状に接着された、外層用帯状原紙、1又は2以上の中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙からなる紙筒であって、
前記外層用帯状原紙、中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙の密度が0.60g/cm~0.89g/cmであり、
少なくとも前記内層用帯状原紙の上面、及び前記内層用帯状原紙と接着される前記中層用帯状原紙の下面に接着剤が塗布されたことを特徴とする、前記紙筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製ストロー等の紙筒の製造装置及び製造方法や、該製造装置や該製造方法により製造された紙筒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、環境負荷の大きいプラスチックごみを減らす動きが進められている。プラスチックごみは、海洋汚染の原因となっており、年間800万トンものプラスチックごみが海洋に流出していると言われている。これらのプラスチックごみは、時間とともに細かく分解されてマイクロプラスチックごみとなり、海洋生物に悪影響を与えると考えられている。
【0003】
プラスチックごみの中でも、プラスチック製ストローは飲食店により大量消費されている。しかしながら、近年海洋に廃棄されたプラスチック製ストローを誤飲したことによるウミガメの死亡例が広く知られるようになり、店内でのプラスチック製ストローの使用を廃止する飲食店が増えてきている。
【0004】
そのような動きの中で、プラスチック製ストローに代えて、紙製ストローへのニーズが高まっている。紙製ストローは、中国で広く製造されており、特許文献1に記載されるような紙製ストロー製造装置も市販されているが、プラスチック製ストローと比較して強度や耐水性に劣るものである。そこで、近年かかる問題点を解決するための取り組みが行われている。例えば、特許文献2には、耐久性を持たせるために高密度の原紙を用いて製造された、一定の剛性を備えた紙製ストローが提案されている。また、特許文献3には、所定の坪量を有する紙を貼り合わせてなるストロー原紙が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国実用新案公開第205588696号明細書
【特許文献2】特開2020-089528号公報
【特許文献3】国際公開第2020/004107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙製ストローは、一般的には上述した通りプラスチック製ストローと比較して強度や耐水性に劣る。また、特許文献2や3の紙製ストローは、その強度や耐水性能を紙の性質に依存しており、使用する紙の自由度が狭められ、コスト面でも不利なものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた。まず、特許文献1に記載されるような市販の紙製ストロー製造装置を用い、入手が容易な晒クラフト紙、及び汎用されている紙製ストロー用接着剤である酢酸ビニル系接着剤を用いた紙製ストローの製造試験を行ったが、製造した紙製ストローは水に浸けると端部からほぐれ、十分な耐水性を有するストローを得るには至らなかった。この理由として、紙と接着剤との相性に起因する、接着ムラが考えられた。また、酢酸ビニル系接着剤は耐水性能に劣るものであるため、アクリル系樹脂接着剤を用いたが、接着ムラによる剥がれを解消することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明者らは、いかなる紙を用いた場合であっても接着ムラを解消して接着強度を高めることを目的とし、これまで接着剤が塗布されてこなかった内層の紙の上面にも接着剤を塗布したところ、紙がストロー製造装置のワインディングシャフトやガイディングシャフトに貼り付き紙詰まりを生じた。かかる紙詰まりは、常法に従い内層の紙の下面に潤滑用の油を塗布しても解消しなかった。そこで、紙筒とシャフトとの間の滑りをよくするために、紙製ストロー製造装置のいずれのシャフトにも潤滑用の油を塗布したが、ワインディングシャフトとガイディングシャフトの固着による紙詰まりは解消しなかった。
【0009】
元来、紙製ストロー製造装置のシャフトは、シャフト同士の摩擦を減らすため平滑であるほど良いと考えられてきたが、本発明者らは、検討を重ねるなかで、ワインディングシャフトからカッティングシャフトへと紙製ストローを誘導するガイディングシャフトの表面に紙製又は布製やすり等で凹凸を付してざらつかせ、潤滑用の油を塗布したところ、予想に反してストロー製造装置の紙詰まりが解消され、端部まで接着された優れた紙製ストローの連続製造が可能になった。かかる製造装置により、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けることができるいかなる紙を用いても、端部まで十分に接着された優れた紙筒を紙詰まりなく連続製造することができるに至った。
【0010】
本発明者らは、かかる製造装置を用いてさらなる検討を重ねたところ、入手が容易な密度が0.60g/cm~0.89g/cmの比較的低密度である紙を原紙として用い、接着剤として、耐水性能が高い反面、接着ムラが生じやすいアクリル系樹脂接着剤を用いた場合であっても、端部まで十分に接着された優れた紙筒を製造することができることがわかった。製造した紙製ストローは、原紙として入手が容易な比較的低密度の紙を用いているにもかかわらず、耐水性に優れ、十分な強度を有するものであった。本発明は、これらの知見により完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は以下に関する。
〔1〕1つの外層用帯状原紙と、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙と、1つの内層用帯状原紙とをワインディングシャフトに対して螺旋状に巻き付けながら紙筒を形成し、その後カッティングして所定の長さの紙筒を製造する紙筒製造装置であって、
前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を供給する帯状原紙供給部と、
貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、
前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する油塗布手段と、
前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙をワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する紙筒形成手段と、
前記紙筒の内径よりも小さい外径を有するカッティングシャフトと、前記紙筒形成手段から前方に送り出される前記紙筒を切断するカッターとを備える紙筒切断手段であって、長手方向の前方に送り出される紙筒に沿って往復する、前記紙筒切断手段と、
前記ワインディングシャフト及び/又は前記カッティングシャフトに挿通されたガイディングシャフトとを備え、
前記ガイディングシャフトが、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたことを特徴とする、
前記紙筒製造装置。
〔2〕以下の工程(a)~(e)を順次備えたことを特徴とする紙筒の製造方法。
(a)1つの外層用帯状原紙、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙、及び1つの内層用帯状原紙を用意する工程;
(b)貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を、前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する工程;
(c)前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する工程;
(d)前記紙筒を、前記ワインディングシャフト及び/又はカッティングシャフトに挿通された、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたガイディングシャフトを介して、前記カッティングシャフトに移送する工程;
(e)前記紙筒を、前記カッティングシャフト上で切断する工程;
〔3〕帯幅方向に互いにずれるように螺旋状に接着された、外層用帯状原紙、1又は2以上の中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙からなる紙筒であって、
前記外層用帯状原紙、中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙の密度が0.60g/cm~0.89g/cmであり、
少なくとも前記内層用帯状原紙の上面、及び前記内層用帯状原紙と接着される前記中層用帯状原紙の下面に接着剤が塗布されたことを特徴とする、前記紙筒。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けることができるいかなる紙を用いても、端部まで十分に接着された優れた紙筒を連続製造することができる。さらに、アクリル系樹脂接着剤を用いることにより、入手が容易な0.60g/cm~0.89g/cmの密度の帯状原紙を用いた場合であっても耐水性に優れた紙筒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の紙筒製造装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、1つの外層用帯状原紙と、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙と、1つの内層用帯状原紙とをワインディングシャフトに対して螺旋状に巻き付けながら紙筒を形成し、その後カッティングして所定の長さの紙筒を製造する紙筒製造装置であって、前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を供給する帯状原紙供給部と、貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する油塗布手段と、前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙をワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する紙筒形成手段と、前記紙筒の内径よりも小さい外径を有するカッティングシャフトと、前記紙筒形成手段から前方に送り出される前記紙筒を切断するカッターとを備える紙筒切断手段であって、長手方向の前方に送り出される紙筒に沿って往復する、前記紙筒切断手段と、前記ワインディングシャフト及び/又は前記カッティングシャフトに挿通されたガイディングシャフトとを備え、前記ガイディングシャフトが、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたことを特徴とする、前記紙筒製造装置(以下、「本発明の紙筒製造装置」ということがある。)や、(a)1つの外層用帯状原紙、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙、及び1つの内層用帯状原紙を用意する工程;(b)貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を、前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する工程;(c)前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する工程;(d)前記紙筒を、前記ワインディングシャフト及び/又はカッティングシャフトに挿通された、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたガイディングシャフトを介して、前記カッティングシャフトに移送する工程;及び(e)前記紙筒を、前記カッティングシャフト上で切断する工程;を順次備えたことを特徴とする、紙筒製造方法(以下、「本発明の紙筒製造方法」ということがある。)に関する。
【0015】
また、本発明は、帯幅方向に互いにずれるように螺旋状に接着された、外層用帯状原紙、1又は2以上の中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙からなる紙筒であって、前記外層用帯状原紙、中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙の密度が0.60g/cm~0.89g/cmであり、少なくとも前記内層用帯状原紙の上面、及び前記内層用帯状原紙と接着される前記中層用帯状原紙の下面に接着剤が塗布されたことを特徴とする、前記紙筒(以下、「本発明の紙筒」ということがある。)に関する。本発明の紙筒は、本発明の紙筒製造装置や本発明の紙筒製造方法を用いて初めて実現したものであり、現在汎用されている紙製ストローと比較して先端ほつれが低減された、耐水性に優れた紙筒である。本発明の紙筒に用いられる密度0.60g/cm~0.89g/cmの原紙は、特許文献2で用いられる高密度の紙と比較して一般的に強度が弱く、耐水性能にも劣るが、本発明の紙筒においては、かかる原紙を用いた場合であっても、少なくとも内層用帯状原紙の上面、及び該内層用帯状原紙と接着される中層用帯状原紙の下面に接着剤を塗布することにより、耐水性能に優れた紙筒になる。この理由は明らかではないが、内層及びそれに隣接する層に接着剤を塗布することで、接着強度が高まることに加え、内層とそれに隣接する層との間に隙間なく接着剤の層が形成され、紙筒内部への水の浸透が抑制されるからだと推測された。本発明の紙筒の耐水性能は、例えば、2cm長さにカットした10個の紙筒断片を、300mlビーカー中の常温25℃の水300mlに浸け、マグネチックスターラーで2時間攪拌(500rpm)した後に、先端の剥がれが1mm以上の前記紙筒断片を先端ほつれと判定する評価方法において、先端ほつれの個数により評価することができ、本発明の紙筒は、先端ほつれが10個中5個以下であることが好ましく、4個以下がより好ましく、3個以下がさらに好ましい。
【0016】
本発明の紙筒製造装置及び本発明の紙筒製造方法は、帯状原紙をワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて形成した紙筒を、ワインディングシャフト及び/又はカッティングシャフトに挿通されたガイディングシャフトを介してカッティングシャフトへと移送し、カッティングシャフト上でカッターにより切断する紙筒製造装置及び紙筒製造方法において、表面に凹凸を付してなるざらつきを有するガイディングシャフトに油を塗布することにより、内層用帯状原紙の上面への接着剤塗布を初めて可能にしたものである。ここで、上記ガイディングシャフト表面の凹凸は、いかなる方法で付してもよく、好ましくは、紙やすり等で表面を研削することにより付することができる。ここで、凹凸を付してなるざらつきは、ガイディングシャフト表面への油の付着量を高めることができればよく、好ましくはガイディングシャフトの円弧方向に最大高さ粗さ(Rz)を計測したときの数値が0.8μm以上、0.9μm以上、1μm以上、1.2μm以上、1.4μm以上であり、上限は特に規定されなくてもよいが、例えば5μm以下である、ざらつきや、ガイディングシャフトの円弧方向に算術平均粗さ(Ra)を計測したときの数値が0.15μm以上であり、上限は特に規定されなくてもよいが、例えば3μm以下である、ざらつきを挙げることができる。凹凸の付与に紙やすりを用いる場合、例えば#40~#240の紙やすりを用いることができる。理論により拘束されるものではないが、ガイディングシャフトの表面に凹凸を付することにより、油の付着量が増えると同時に内層用帯状原紙の下面に塗布された油が凹凸により掻き取られて補充され、紙ストローの連続製造が可能になると考えられる。
【0017】
本発明において、紙筒とは、帯状原紙の上面及び/又は下面に接着剤を塗布し、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて形成した筒を意味する。ここで、帯状原紙の上面とは、紙筒に成型したときに外側になる面を意味し、帯状原紙の下面とは、紙筒に成型したときに内側になる面を意味する。帯状原紙をワインディングシャフトに巻き付ける際、ワインディングシャフトに接するように配設された、ワインディングの回転と同じ速度で走行するエンドレスベルトによって、帯状原紙を押圧してもよい。紙筒の外径としては、例えば3mm~20mm、3mm~16mm、3mm~12mm、3mm~8mm、3mm~6mmを挙げることができ、長さとしては、例えば9cm~30cm、12cm~28cm、15cm~26cmを挙げることができる。上記紙筒は、好ましくは紙製ストローである。
【0018】
上記帯状原紙としては、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けることができる密度及び坪量を有するものであれば限定されないが、密度としては、0.60g/cm~0.89g/cmが好ましく、0.65g/cm~0.89g/cmがより好ましく、0.65g/cm~0.80g/cmがさらに好ましい。また、坪量は、密度に応じて適宜設定することができるが、60g/m~120g/m、70g/m~110g/m、70g/m~100g/m、80g/m~100g/m等を好適に例示することができる。また、帯状原紙の幅としては、例えば5mm~30mm、10mm~25mm、10mm~20mmを挙げることができる。外層用帯状原紙、1又は2以上の中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0019】
上記帯状原紙の原料としては、針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、サルファイトパルプ(SP)等の木材の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、リファイナグランドパルプ(RGP)、ストーングランドパルプ(SGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材の機械パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ、古紙パルプなど、公知のパルプを適宜配合して用いることができる。
【0020】
上記接着剤としては、帯状原紙同士を貼り合わせることができるものであれば制限されないが、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキサイド系、ポリアクリルアミド系、デンプン系、ゼラチン、カゼイン、エーテル系セルロース、フェノール樹脂系、水ガラス等の水溶性接着剤や、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体系、スチレン・ブタジエン共重合体系、ウレタン系、α-オレフィン系等の水分散性接着剤を例示することができる。これらのうち、例えば耐水性を有するアクリル系樹脂接着剤を、0.60g/cm~0.89g/cmの密度を有する帯状原紙に適用する場合、帯状原紙に浸透して耐水性を付与することができる反面、帯状原紙に浸透することにより接着ムラが生じやすく、端部からのほつれが生じやすい。したがって、0.60g/cm~0.89g/cmの密度を有する帯状原紙とアクリル系樹脂接着剤との組み合わせは、本発明により初めて可能となるものである。
【0021】
接着剤塗布手段としては、帯状原紙全体に接着剤を塗布することのできるいかなる方法を適用することができ、具体的にはローラー塗布、どぶ漬け塗布、刷毛塗布等を例示することができるが、中でも片面塗布にはローラー塗布、両面塗布にはどぶ漬け塗布又はローラー塗布が、連続塗布の観点からは好ましい。余剰の接着剤は、ローラー、ブレード、スキージ等で除去してもよい。また、接着剤塗布後、接着剤がタック発現するまで半乾燥させてからワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けることが好ましく、乾燥時間は、接着剤塗布手段からワインディングシャフトまでの距離を変更することにより適宜調節することができる。
【0022】
上記油としては、ガイディングシャフトへの接着剤の付着を抑えることのできるものであれば制限されないが、紙製ストローに使用する観点から食用油脂が好ましく、植物油がより好ましい。植物油としては、具体的には、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ホホバ油、硬化油、アボガド油、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、木ロウ、ライスワックス等が挙げられる。これらの植物油は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
外層用帯状原紙は、耐水性を高め、且つ紙特有の風味及び香りを抑えるため、上面に耐水性ニスを塗布することができる。ここで、耐水性ニスとしては、いかなるものも使用することができ、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、エチレン・酢酸ビニル共重合体、パラフィン系等の熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系、シリコーン系、アクリル系、エポキシ系、セルロース系、ウレタン系、酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニリデン系、合成ゴム系、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、スチレン・アクリル共重合系等の樹脂を含む耐水性塗料等を挙げることができる。
【0024】
上記ワインディングシャフト及び/又はカッティングシャフトは中空構造を有しており、そのいずれか一方又は両方に、ガイディングシャフトが挿通される。好ましい態様としては、ガイディングシャフトはワインディングシャフトに挿通され、カッティングシャフトに連結される。この場合において、ガイディングシャフトは、カッティングシャフトが備え付けられた紙筒切断手段に、長手方向の前方に送り出される紙筒に沿った往復運動を行うための駆動力を与えるために用いられてもよい。
【0025】
上記紙筒切断手段は、カッティングシャフト及びカッターを備え、前方に送り出される紙筒と同調して前方に移動しながらカッターにより紙筒を切断し、次の紙筒が前方に送られる間に元の位置に戻るという往復運動を繰り返すことにより、紙筒を精度よく、連続的に切断することができる。したがって、往路である前方に移動する速さは、紙筒の前方に送り出される速さと略同じであることが好ましい。上記紙筒切断手段は、それ自体が駆動力に連結されていてもよく、カッティングシャフトとガイディングシャフトが連結した態様においては、ガイディングシャフトが駆動力に連結されていてもよい。駆動力としては、上記紙筒切断手段を往復運動せしめるものであればよく、具体的には、電気モーター、電磁ソレノイド、油圧シリンダ、空気圧シリンダ等を例示することができる。上記カッティングシャフトは、前記紙筒の内径よりも小さい外径を有し、紙筒切断手段において紙筒が切断される際の支持体となる。ここで、前記紙筒の内径よりも小さい外径とは、前記紙筒に挿通されることのできる外径であればよく、例えば前記紙筒の内径よりも0.1mm~1mm小さい外径、0.1mm~0.5mm小さい外径、0.1mm~0.3mm小さい外径を挙げることができる。
【0026】
上記ワインディングシャフトとカッティングシャフトとの間隔は任意に設定することができるが、最も近づいたときの間隔が5cm以上、10cm以上、15cm以上、20cm、又は40cm以上であることが好ましい。間隔がこれより小さいと、紙筒がカッティングシャフトに到達するまでに接着剤が十分に乾燥されず、カッティングシャフトにおける紙詰まりが生じやすくなるため好ましくない。また、最も遠ざかったときの間隔の上限は、紙筒製造装置の設置面積に応じて任意に設定することができ、具体的には80cm以下、60cm以下を例示することができる。
【0027】
上記ワインディングシャフトにおいて、帯状原紙が巻き付けられる領域の長さの下限は、紙筒の形成に十分な長さであればよく、一方で、帯状原紙が巻き付けられる領域が長すぎると、ワインディングシャフトを通過する紙筒の抵抗が大きくなり、紙詰まりを生じる。したがって、ワインディングシャフトの帯状原紙が巻き付けられる領域の長さは、3cm~9cmが好ましい。
【0028】
本発明の紙筒製造装置や本発明の紙筒製造方法により製造された紙筒や、本発明の紙筒は、中層と内層がムラなく接着されているため、溝を付したときに剥がれが生じにくい。よって、かかる紙筒は、2又は3本以上の溝を付することによって、容易に屈曲部を設けることができる。溝は、例えば、紙筒を伸ばしたときに3mm~7mm、4mm~6mm、4.5mm~5.5mm間隔になるように付することができる。溝の間隔が3mmより狭いと内層の剥がれが生じやすくなり、間隔が7mmよりも広いと屈曲しづらくなるため好ましくない。本発明の紙筒製造装置は、紙筒切断手段の下流に屈曲部を設けるための屈曲部形成手段を備えてもよく、本発明の紙筒製造方法は、上記工程(e)に引き続き、工程(f)紙筒に屈曲部を形成する工程;を備えてもよい。
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例0030】
1.紙筒製造装置
図1の模式図に示す構成の紙筒製造装置を製造した。かかる紙筒製造装置は、1つの外層用帯状原紙供給部(1);1つの中層用帯状原紙供給部(2);1つの内層用帯状原紙供給部(3);外層用帯状原紙の下面に接着剤を塗布するための外層用接着剤塗布用ローラー(4)、中層用帯状原紙の上面及び下面に接着剤を塗布するための中層用接着剤塗布用バット(5)及び内層用帯状原紙の上面に接着剤を塗布するための内層用接着剤塗布用ローラー(6)を備えた接着剤塗布手段(7);内層用帯状原紙の下面に植物油を塗布するための油塗布用ローラー(8);外径5.2mmのワインディングシャフト(9)、及びワインディングシャフト(9)に帯状原紙を押圧するためのエンドレスベルト(10)を備えた紙筒形成手段(11);外径5.0mmのカッティングシャフト(12)及びカッター(13)を備えた紙筒切断手段(14);並びに、外径3.0mmのガイディングシャフト(15)を備える。接着剤塗布手段(7)と紙筒形成手段(11)との距離は、帯状原紙に塗布された接着剤が、紙筒形成手段(11)に到達した時点で半乾燥状態になり、タック発現するように最適化した。また、ワインディングシャフト(9)において、帯状原紙が巻き付く領域は9cmになるように設定した。
【0031】
ガイディングシャフト(15)は、#40の紙製又は布製やすりにより軸方向にやすり掛けを行いざらつかせたうえで、ワインディングシャフト(9)に挿通されてカッティングシャフト(12)に連結される。ガイディングシャフト(15)の他端はモーター(16)に連結されており、紙筒切断手段(14)に、長手方向の前方に送り出される紙筒に沿って、ワインディングシャフトとカッティングシャフトとの間の距離が40cm~80cmと変動する往復運動を行うための駆動力を与える。また、ガイディングシャフト(15)には、紙筒製造開始前に植物油を塗布した。
【0032】
2.紙製ストローの製造
上記1の紙筒製造装置を用い、紙製ストローを製造した。まず、表1に記載の外層用帯状原紙、中層用帯状原紙、内層用帯状原紙を用意し、それぞれ幅15mm、14mm、13mmの帯状に切断して外層用帯状原紙供給部(1)、中層用帯状原紙供給部(2)、内層用帯状原紙供給部(3)にセットした。また、接着剤塗布手段(7)により、アクリル系樹脂接着剤又は酢酸ビニル系接着剤を、外層用帯状原紙の下面及び内層用帯状原紙の上面にはローラー塗布、中層用帯状原紙の上面及び下面にはどぶ漬け塗布した。さらに、油塗布用ローラー(8)により、内層用帯状原紙の下面に植物油を塗布した。
【0033】
接着剤を塗布した外層用帯状原紙、中層用帯状原紙、及び内層用帯状原紙を、ワインディングシャフト(9)に互いに帯幅方向にずらして螺旋状に巻き付け、エンドレスベルト(10)により押圧して紙筒を形成した。紙筒は、エンドレスベルト(10)による押し出しによりガイディングシャフト(15)を介してカッティングシャフト(12)に移送した。紙筒切断手段(14)が、長手方向の前方に送り出される紙筒と同じ速さで前方に移動しているときに、カッター(13)により紙筒を切断し、外径6mmの紙製ストロー(実施例1~5)を製造した。また、比較例1~4として、表1に記載のとおり、海外製の4種類の紙製ストローを用意した。比較例5は、内層用帯状原紙の上面に接着剤を塗布しなかったこと以外は実施例1と同様に紙製ストローを製造したが、接着不良によるロス率が高く大量生産に適さなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
3.耐水性試験
実施例1~5及び比較例1~4の紙製ストローを用い、耐水性試験を行った。紙製ストローを2cm長さにカットした紙筒断片10個を、300mlビーカー中の溶媒300mlに浸け、マグネチックスターラーで攪拌(500rpm)した後に、以下の評価基準で評価した。
・表層(外層上面)ほぐれ(目視にて判定)
紙製ストローの表層が水によりほぐれかけている状態を4段階で示す
×:表層がやや水を吸って柔らかくなっている
××:表層が水を吸って紙の膨潤が見られる
×××:表層がほぐれ始める
××××:表層がほぐれバラバラになっている
・先端ほつれ
紙製ストロー表層の紙の先端が剥がれている状態のことで、紙ストローの接着の中で一番はがれやすい部分である。先端の剥がれが1mm以上のときに、先端ほつれと判定した。
・バラバラ
紙間の接着が剥がれ、紙がばらばらになった状態
【0036】
溶媒として室温25℃の水を用い、2時間撹拌した後の「表層ほぐれ」の評価、並びに紙筒断片10個当たりの「先端ほつれ」及び「バラバラ」の個数を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
本発明の紙筒製造方法により製造した実施例1~5の紙筒は、いずれも「先端ほつれ」が4個以下であり、比較例1~4よりも優れた紙筒であることが示された。また、接着剤としてアクリル系樹脂接着剤を用いた実施例1~3では、「先端ほつれ」の成績が向上し、「バラバラ」の紙筒断片も0個であった。さらに、耐水性ニスの併用により、「表層ほぐれ」の成績が向上した(実施例1及び3)。
【0039】
次に、実施例1、2、4、5の紙製ストローについて、溶媒として50℃の水を用い、30分おきに水を交換して2時間撹拌して、同様に耐水性評価を行った。結果を表3に示す。なお、30分おきの水の交換時には、33℃まで水温が下がっていた。ここでの結果より、50℃の水では、紙への浸透が大きくなり「表層ほぐれ」の成績が悪化したものの、アクリル系樹脂接着剤を使用することで「先端ほつれ」、「バラバラ」は抑えられ、アクリル系樹脂接着剤が、紙製ストローの耐水性を高めることが示された。
【0040】
【表3】
【0041】
次に、実施例1及び4の紙製ストローについて、溶媒としてアルコール飲料を想定した10%イソプロピルアルコール水溶液を用い、90分間撹拌して、同様に耐水性評価を行った。結果を表4に示す。イソプロピルアルコールは接着剤を剥がす効果があるため、酢酸ビニル系接着剤を用いた実施例4のストローは全て「バラバラ」になったが、アクリル系樹脂接着剤はイソプロピルアルコールに耐性を有し、成績の悪化は見られなかった。一方で、「表層ほぐれ」の成績はいずれの紙製ストローでも悪化しておらず、イソプロピルアルコールの紙への浸透は少ないことが示された。
【0042】
【表4】
【0043】
4.ガイディングシャフトへの凹凸付与の条件検討
ガイディングシャフトへの凹凸付与の条件検討を、以下の手順で行った。
(1)3mmのガイディングシャフトに、#40、#80、#120、#150、#180、#240の紙製又は布製やすりで軸方向にやすり掛けを行う。
(2)触針式表面粗さ形状測定機(フォームタリサーフPGI840、テーラーホブソン社製)を用い、円弧方向の算術平均粗さRa(μm)、最大高さRz(μm)、及び要素の平均粗さRSm(μm)を測定する。
(3)個々のガイディングシャフトに対し植物油を塗布し、塗布前後の重量を比較することで植物油の付着量を測定する。
【0044】
結果を表5に示す。ブランクは、やすり掛けを行っていないガイディングシャフトでの測定結果を示す。ここでの結果より、円弧方向の凹凸の最大高さRzの数値が、紙製又は布製やすりの番手を減らすごとに増加し、植物油の付着量もそれに伴い増加することがわかった。
【0045】
【表5】
【0046】
いずれの番手の紙製又は布製やすりを用いた場合であっても、油付着量が向上していたため、試験したうち最も目が粗い#40及び最も目が細かい#240の紙製又は布製やすりを用いて凹凸を付したガイディングシャフトを用いて紙製ストローを製造した。その結果、ブランクのガイディングシャフトでは、約1.5時間で紙詰まりを生じたのに対し、#40及び#240の紙やすりを用いて凹凸を付したガイディングシャフトでは、いずれのガイディングシャフトでも半日(4時間)試験で紙詰まりが生じず、紙製ストローの製造に好適に使用できることが明らかになった。
【0047】
5.紙製ストローへの屈曲部の付与
実施例1で製造した紙製ストローに、伸ばした状態での感覚が2mm又は5mmになるように、複数の溝を付すことにより、長さ約5cmの屈曲部を設けた。その結果、2mm間隔で溝を付した場合には屈曲部の紙層剥がれが生じたが、5mm間隔で溝を付した場合には、紙層剥がれが生じるものが約10%に抑えられ、屈曲性能も維持されることがわかった。
【0048】
これに対して、内層用帯状原紙の上面に接着剤塗布を行わなかった以外は実施例1と同様に製造した比較例5の紙製ストローでは、上記と同様に5mm間隔で溝を付した場合の屈曲部の紙層剥がれが約40%の紙製ストローに見られた。ここでの結果より、内層用帯状原紙の上面に接着剤塗布を行わない場合には、中層用帯状原紙への接着が十分に行われておらず、屈曲のための切り込みを入れる際に紙層が剥がれることが示された。さらに、アクリル系樹脂接着剤による接着ムラが生じ、本発明による紙製ストローと比較して耐水性能に劣る紙製ストローになると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けることができるいかなる紙を用いても、端部まで十分に接着された優れた紙筒を製造することができる。その結果、入手が容易な0.60g/cm~0.89g/cmの密度の帯状原紙を用いた場合であっても耐水性に優れた紙筒を安定的に製造することができる。以上のように、本発明によれば、優れた品質の紙製ストローを、低コストで供給することができるため、紙加工分野、飲食品分野における産業上の利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0050】
1 外層用帯状原紙供給部
2 中層用帯状原紙供給部
3 内層用帯状原紙供給部
4 外層用接着剤塗布用ローラー
5 中層用接着剤塗布用バット
6 内層用接着剤塗布用ローラー
7 接着剤塗布手段
8 油塗布用ローラー
9 ワインディングシャフト
10 エンドレスベルト
11 紙筒形成手段
12 カッティングシャフト
13 カッター
14 紙筒切断手段
15 ガイディングシャフト
16 モーター
図1
【手続補正書】
【提出日】2021-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの外層用帯状原紙と、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙と、1つの内層用帯状原紙とをワインディングシャフトに対して螺旋状に巻き付けながら紙筒を形成し、その後カッティングして所定の長さの紙筒を製造する紙筒製造装置であって、
前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を供給する帯状原紙供給部と、
貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を塗布する接着剤塗布手段と、
前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する油塗布手段と、
前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙をワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する紙筒形成手段と、
前記紙筒の内径よりも小さい外径を有するカッティングシャフトと、前記紙筒形成手段から前方に送り出される前記紙筒を切断するカッターとを備える紙筒切断手段であって、長手方向の前方に送り出される紙筒に沿って往復する、前記紙筒切断手段と、
前記ワインディングシャフト及び/又は前記カッティングシャフトに挿通されたガイディングシャフトとを備え、
前記ガイディングシャフトが、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたことを特徴とする、
前記紙筒製造装置。
【請求項2】
以下の工程(a)~(e)を順次備えたことを特徴とする紙筒の製造方法。
(a)1つの外層用帯状原紙、1つ又は2つ以上の中層用帯状原紙、及び1つの内層用帯状原紙を用意する工程;
(b)貼り合わされる前記外層用帯状原紙及び前記中層用帯状原紙の接着面のいずれか一方又は両方と、前記内層用帯状原紙の上面と、前記内層用帯状原紙に接着される前記中層用帯状原紙の下面とに接着剤を、前記内層用帯状原紙の下面に油を塗布する工程;
(c)前記外層用帯状原紙、前記中層用帯状原紙、及び前記内層用帯状原紙を、ワインディングシャフトに螺旋状に巻き付けて紙筒を形成する工程;
(d)前記紙筒を、前記ワインディングシャフト及び/又はカッティングシャフトに挿通された、表面に凹凸を付してなるざらつきを有し、且つ油が塗布されたガイディングシャフトを介して、前記カッティングシャフトに移送する工程;
(e)前記紙筒を、前記カッティングシャフト上で切断する工程;