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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027151
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】エンジンの吸排気システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20220203BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20220203BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20220203BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20220203BHJP
   F02M 26/16 20160101ALI20220203BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20220203BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20220203BHJP
【FI】
F01N3/24 S
F01N3/22 311A
F01N3/24 T ZAB
F01N3/24 L
F01N3/20 D
F02D21/08 301F
F02M26/16
F02D43/00 301T
F02D43/00 301N
F02M26/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130974
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大下 真貴夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 嘉清
(72)【発明者】
【氏名】清住 香奈
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大武
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌章
【テーマコード(参考)】
3G062
3G091
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G062AA01
3G062BA05
3G062CA02
3G062EA10
3G062ED09
3G062GA06
3G062GA10
3G062GA16
3G091AA18
3G091AB06
3G091BA02
3G091CA03
3G091CB03
3G091EA01
3G091EA17
3G091EA18
3G091EA20
3G091FA04
3G092AA02
3G092BB06
3G092FA15
3G092GA02
3G092HD01Z
3G092HD02Z
3G092HE01Z
3G092HF05Z
3G384AA03
3G384BA27
3G384BA32
3G384CA03
3G384FA46Z
3G384FA48Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】排気浄化触媒を早期に昇温することができるエンジンの吸排気システムを提供する。
【解決手段】エンジン10の排気通路12に設けられた排気浄化触媒40と、コンプレッサホイール71を電動モータ72で駆動することにより、エンジン10の排気の一部をエンジン10の吸気通路11に戻すEGRガスを圧縮する電動過給機70と、電動過給機70の出口側から延び、排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に繋がる昇温用配管80を備える。エンジン10の排気通路12における排気浄化触媒40の上流側からEGRガスを戻して電動過給機70を介して排気浄化触媒40の上流側に直接供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
コンプレッサホイールを電動モータで駆動することにより、前記エンジンの排気の一部を前記エンジンの吸気通路に戻すEGRガスを少なくとも圧縮する電動過給機と、
前記電動過給機の出口側から延び、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に繋がる配管と、
を備え、
前記エンジンの排気通路における前記排気浄化触媒の上流側から前記EGRガスを戻して前記電動過給機を介して前記排気浄化触媒の上流側に直接供給することを特徴とするエンジンの吸排気システム。
【請求項2】
前記電動過給機は、前記EGRガスを圧縮し、
前記電動過給機において圧縮された前記EGRガスが、前記配管を通して、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に供給される
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項3】
前記電動過給機は、前記EGRガス及び新気を圧縮し、
前記電動過給機において圧縮された前記EGRガス及び前記新気が、前記配管を通して、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に供給される
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項4】
前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に設けられた触媒昇温装置を更に備え、
前記配管は、前記排気通路における前記触媒昇温装置の上流側に繋がる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項5】
前記エンジンの排気によるタービンホイールの回転によりコンプレッサホイールを駆動して前記エンジンの吸気を過給するターボチャージャを更に備え、
前記排気浄化触媒は、前記エンジンの排気通路における前記ターボチャージャのタービンホイールの下流側に設けられている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジンの吸排気システム。
【請求項6】
前記配管に設けられたバルブと、
前記電動モータの回転数及び前記バルブを制御するコントローラと、
を更に備える
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のエンジンの吸排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸排気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気通路に設けた排気浄化触媒に対しスーパーチャージャや電動アシストターボチャージャを用いて空気を供給するシステムが知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-16351号公報
【特許文献2】特開2020-20312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン始動時、低速時のさらなる触媒昇温の向上を図りたいという要求がある。
本発明の目的は、排気浄化触媒を早期に昇温することができるエンジンの吸排気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのエンジンの吸排気システムは、エンジンの排気通路に設けられた排気浄化触媒と、コンプレッサホイールを電動モータで駆動することにより、前記エンジンの排気の一部を前記エンジンの吸気通路に戻すEGRガスを少なくとも圧縮する電動過給機と、前記電動過給機の出口側から延び、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に繋がる配管と、を備え、前記エンジンの排気通路における前記排気浄化触媒の上流側から前記EGRガスを戻して前記電動過給機を介して前記排気浄化触媒の上流側に直接供給することを要旨とする。
【0006】
これによれば、電動過給機の電動モータによりコンプレッサホイールが駆動される際に、少なくともEGRガスが電動過給機により圧縮されて温度が高くなる。電動過給機の出口側から温度が高くなった気体が配管を通して排気浄化触媒に供給される。EGRガスがエンジンの排気通路における排気浄化触媒の上流側から戻されることで、より排気温度が高いEGRガスを排気浄化触媒に供給できる。EGRガスが排気浄化触媒の上流側に直接供給されることでエンジンの排気通路における熱容量が大きい部位で熱が奪われにくくして、より高温の状態で排気浄化触媒へ供給することができる。これにより、排気浄化触媒を早期に昇温することができる。
【0007】
また、エンジンの吸排気システムにおいて、前記電動過給機は、前記EGRガスを圧縮し、前記電動過給機において圧縮された前記EGRガスが、前記配管を通して、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に供給されるとよい。
【0008】
また、エンジンの吸排気システムにおいて、前記電動過給機は、前記EGRガス及び新気を圧縮し、前記電動過給機において圧縮された前記EGRガス及び前記新気が、前記配管を通して、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に供給されるとよい。
【0009】
また、エンジンの吸排気システムにおいて、前記排気通路における前記排気浄化触媒の上流側に設けられた触媒昇温装置を更に備え、前記配管は、前記排気通路における前記触媒昇温装置の上流側に繋がるとよい。
【0010】
また、エンジンの吸排気システムにおいて、前記エンジンの排気によるタービンホイールの回転によりコンプレッサホイールを駆動して前記エンジンの吸気を過給するターボチャージャを更に備え、前記排気浄化触媒は、前記エンジンの排気通路における前記ターボチャージャのタービンホイールの下流側に設けられているとよい。
【0011】
また、エンジンの吸排気システムにおいて、前記配管に設けられたバルブと、前記電動モータの回転数及び前記バルブを制御するコントローラと、を更に備えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気浄化触媒を早期に昇温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態におけるエンジンの吸排気システムの概略構成図。
図2】(a)は排気浄化触媒における触媒の温度についてのタイムチャート、(b)は電動過給機の電動モータの回転数についてのタイムチャート、(c)はEGRバルブの開度及び触媒昇温バルブの開度についてのタイムチャート、(d)はEGRバルブを通るガスの量及び触媒昇温バルブを通るガスの量についてのタイムチャート。
図3】別例のエンジンの吸排気システムの概略構成図。
図4】別例のエンジンの吸排気システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、エンジン10は、多気筒ディーゼルエンジンであって、吸気通路(吸気管)11及び排気通路(排気管)12を備える。
【0015】
エンジンの吸排気システム20は、ターボチャージャ30と、排気浄化触媒40と、触媒昇温装置50と、EGR管60と、電動過給機70と、昇温用配管80と、EGRバルブ91と、触媒昇温バルブ92と、コントローラとしてのエンジンECU100と、を備える。
【0016】
ターボチャージャ30は、エンジン10の吸気を過給するためのものであって、タービンホイール31とコンプレッサホイール32を有する。タービンホイール31は回転軸33の一端に設けられ、コンプレッサホイール32は回転軸33の他端に設けられている。タービンホイール31は吸気通路11に設けられている。コンプレッサホイール32は吸気通路11に設けられている。エンジン10の排気によりタービンホイール31が回転して、その回転に伴い回転軸33を介してコンプレッサホイール32が回転する。このコンプレッサホイール32の駆動(回転)に伴いエンジン10の吸気が圧縮される。
【0017】
吸気通路11におけるターボチャージャ30の下流側にはクーラ110が設けられ、クーラ110により吸気が冷却されてエンジン10の燃焼室10aに送られる。
排気浄化触媒40は、エンジン10の排気通路12におけるターボチャージャ30のタービンホイール31の下流側に設けられている。排気浄化触媒40は、例えば、PM(粒子状物質)とNOxを浄化するNOx吸蔵還元型の触媒である。
【0018】
触媒昇温装置50は、排気通路12におけるタービンホイール31の下流側かつ排気浄化触媒40の上流側に設けられている。触媒昇温装置50により排気浄化触媒40への排気ガスが昇温される。触媒昇温装置50として電気ヒータ(EHC:Electrical Heated Catalyst)を用いている。他にも触媒昇温装置50として、燃料を噴射して燃焼させて排気浄化触媒40に供給する燃焼システムを用いることもできる。
【0019】
EGR管60の一端が排気通路12におけるターボチャージャ30の上流側に繋がっている。EGR管60の他端が吸気通路11におけるクーラ110の下流側に繋がっている。EGR管60により、エンジン10の排気の一部をEGRガスとして当該EGRガスをエンジン10の吸気通路11に戻すことができる。
【0020】
EGR管60の途中にはクーラ111が設けられ、クーラ111によりEGR管60を通るEGRガスが冷却されてエンジン10の燃焼室10aに送られる。
EGR管60におけるクーラ111の下流側には電動過給機70が設けられている。電動過給機70は、コンプレッサホイール71と電動モータ72とモータ駆動部73を有する。電動モータ72の出力軸72aにコンプレッサホイール71が固定されている。モータ駆動部73により電動モータ72が駆動される。電動モータ72が駆動されると出力軸72aの回転に伴いコンプレッサホイール71が回転する。このコンプレッサホイール71の駆動(回転)に伴いEGRガスが圧縮される。
【0021】
EGR管60における電動過給機70の下流側にはEGRバルブ91が設けられている。EGRバルブ91の開度に応じた量のEGRガスがエンジン10の吸気通路11に戻される。
【0022】
このように、本実施形態におけるEGR(排気ガス再循環)システムは、高圧ループ式EGR(HPL-EGR)であり、ターボチャージャ30のタービンホイール31よりも上流側排気通路で排気ガスを取り出し、コンプレッサホイール32よりも下流側吸気通路に戻すようになっている。
【0023】
昇温用配管80は、EGR管60における電動過給機70の出口側かつEGRバルブ91の上流側から延びている。昇温用配管80は、排気通路12におけるターボチャージャ30のタービンホイール31の下流側かつ触媒昇温装置50の上流側に繋がっている。即ち、昇温用配管80は、EGR管60における電動過給機70の出口側から分岐して排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に繋がっている。よって、電動過給機70によりEGRガスを圧縮し、圧縮されたEGRガスを、昇温用配管80を通して、排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に供給することができる。
【0024】
昇温用配管80の途中には触媒昇温バルブ92が設けられている。触媒昇温バルブ92の開度に応じた量のEGRガスがエンジン10の排気通路12に戻される。
コントローラとしてのエンジンECU100は、モータ駆動部73に対し電動モータ72の回転数指令信号を送出して電動モータ72の回転数を制御することができる。エンジンECU100は、EGRバルブ91に開度指令信号を送出してEGRバルブ91の開度を制御することができる。エンジンECU100は、触媒昇温バルブ92に開度指令信号を送出して触媒昇温バルブ92の開度を制御することができる。
【0025】
エンジンECU100は、排気浄化触媒40の触媒の温度を検出するセンサから触媒温度検出信号を入力する。エンジンECU100は、始動スイッチから始動スイッチ操作信号を入力する。エンジンECU100は、回転数検出センサからエンジンの回転数検出信号を入力する。エンジンECU100は、EGRガス温度検出センサからEGRガス温度検出信号を入力する。エンジンECU100は、EGRガス量検出センサからEGRガス量検出信号を入力する。エンジンECU100は、これらの入力信号等に基づいて電動モータ72の回転数、EGRバルブ91の開度、触媒昇温バルブ92の開度を制御する。
【0026】
エンジン10の排気通路12における排気浄化触媒40の上流側からEGRガスを戻して電動過給機70を介して排気浄化触媒40の上流側に直接供給することができるようになっている。
【0027】
次に、作用について説明する。
図2(a)において横軸に時間tをとり、縦軸に排気浄化触媒40における触媒温度をとっている。図2(b)において横軸に時間tをとり、縦軸に電動過給機70の電動モータ72の回転数をとっている。図2(c)において横軸に時間tをとり、縦軸にEGRバルブ91の開度及び触媒昇温バルブ92の開度をとっている。図2(d)において横軸に時間tをとり、縦軸にEGRバルブ91を通るガスの量Q2(図1参照)及び触媒昇温バルブ92を通るガスの量Q3(図1参照)をとっている。
【0028】
図2(a)に示すように、エンジンECU100は、t1のタイミングでエンジン始動を検知すると、図2(b)に示すように、電動過給機70の電動モータ72の回転数を所定の回転数Ne1にする。これにより、電動過給機70の吐出ガスは所定の量Q1(図1参照)となる。また、エンジンECU100は、t1のタイミングでエンジン始動を検知すると、図2(c)に示すように、EGRバルブ91を全閉にするとともに触媒昇温バルブ92を全開にする。その結果、図2(d)に示すように、EGRバルブ91を通過するガスの量Q2はゼロとなるとともに触媒昇温バルブ92を通るガスの量Q3は、電動過給機70の吐出ガスの量Q1の全てとなる。
【0029】
電動過給機70の駆動により温度が高いEGRガスが圧縮されて更に温度が高くなり、電動過給機70の出口側から温度が高くなった気体が触媒昇温バルブ92が開くことにより昇温用配管80を通して排気浄化触媒40に供給される。
【0030】
これにより、図2(a)でのt1~t2の期間において、排気浄化触媒40における触媒の温度が上昇していく。
エンジンECU100は、図2(a)に示すように、t2のタイミングで排気浄化触媒40における触媒の温度が所定値T1に達したことを検知すると、図2(b),(c)に示すように、電動過給機70の電動モータ72の回転数を所定の回転数Ne1に維持したまま、触媒昇温バルブ92を全閉にするとともにEGRバルブ91を全開にする。その結果、図2(d)に示すように、触媒昇温バルブ92を通過するガスの量Q3はゼロとなるとともにEGRバルブ91を通るガスの量Q2は、電動過給機70の吐出ガスの量Q1の全てとなる。
【0031】
電動過給機70の駆動に伴い温度が高くなった気体が昇温用配管80を通して排気浄化触媒40に供給されることにより、排気浄化触媒40がより早期に昇温される。
以降において、エンジンECU100は、エンジン回転数、EGRガス温度、EGRガス量等に基づいて電動モータ72の回転数を制御する。
【0032】
このようにして、電動過給機70を用いて排気浄化触媒40の昇温効果を高めることができる。また、電動過給機70の回転数とEGRバルブ91及び触媒昇温バルブ92の開度の協調制御が行われる。これにより、単に電動過給機70の出口ガスを排気浄化触媒40に供給する場合に比べ、吸気を過給する際において触媒昇温と吸気を過給する上で、好ましいタイミングで好ましい量に制御できる。このとき、最適化を図ることでエンジン10の燃焼室10aと排気浄化触媒40へ供給する空気量の制御精度向上が図られる。
【0033】
また、高温のEGRガスを電動過給機70で過給して排気浄化触媒40に供給するため、新気を供給するシステムに比べて、昇温効果を高めることができる。
また、エンジンを駆動源とするメカニカルスーパーチャージャやターボチャージャの回転軸に電動モータを備えた電動アシストターボチャージャを用いたシステムよりも、電動過給機70を使用することでより精密に空気量の制御が可能となる。
【0034】
さらに、スーパーチャージャを用いる場合は、エンジンの出力軸にベルトで繋がっており、エンジン回転に連動して駆動されるので、ベルトが必要であるとともに体格が大きくなり搭載場所も限られてくる。また、電動アシストターボチャージャを用いる場合は、電動モータを内蔵する必要があり、大型化を招くとともに搭載場所も限られてくる。このように、スーパーチャージャや電動アシストターボチャージャを用いる場合にはエンジンレイアウト上の制約が多いが、本実施形態のように電動過給機70を用いる場合は吸排気の配管上に自由にレイアウトが可能である。
【0035】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)エンジンの吸排気システム20の構成として、エンジン10の排気通路12に設けられた排気浄化触媒40と、コンプレッサホイール71を電動モータ72で駆動することにより、エンジン10の排気の一部をエンジン10の吸気通路11に戻すEGRガスを圧縮する電動過給機70を備える。さらに、電動過給機70の出口側から延び、排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に繋がる配管としての昇温用配管80を備える。エンジン10の排気通路12における排気浄化触媒40の上流側からEGRガスを戻して電動過給機70を介して排気浄化触媒40の上流側に直接供給する。これによれば、電動過給機70の電動モータ72によりコンプレッサホイール71が駆動される際に、EGRガスが電動過給機70により圧縮されて温度が高くなる。電動過給機70の出口側から温度が高くなった気体(EGRガス)が昇温用配管80を通して排気浄化触媒40に供給される。EGRガスがエンジン10の排気通路12における排気浄化触媒40の上流側から戻されることで、より排気温度が高いEGRガスを排気浄化触媒40に供給(導入)できる。EGRガスが排気浄化触媒40の上流側に直接供給されることで(排気浄化触媒40の直前に戻すことで)エキゾーストマニホールド12a(図1参照)やターボチャージャ30などのエンジン10の排気通路12における熱容量が大きい部位で熱が奪われにくくして、より高温の状態で排気浄化触媒40へ供給することができる。これにより、排気浄化触媒40を早期に昇温することができる。
【0036】
(2)昇温用配管80に設けられた触媒昇温バルブ92と、電動モータ72の回転数及び触媒昇温バルブ92を制御するコントローラとしてのエンジンECU100と、を備える。これにより、エンジンECU100により電動過給機70の電動モータ72の回転数が制御されてコンプレッサホイール71が駆動される。この際、EGRガスが電動過給機70により圧縮されて温度が高くなる。また、エンジンECU100により昇温用配管80に設けられたバルブとしての触媒昇温バルブ92が制御され、電動過給機70の出口側から温度が高くなった気体(EGRガス)が昇温用配管80を通して排気浄化触媒40に供給される。このようにして、エンジン始動時の排気温度が低い領域において、電動過給機70によって圧縮されたEGRガスを排気浄化触媒40に供給することにより排気浄化触媒40を早期に昇温することができる。
【0037】
(3)排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に設けられた触媒昇温装置50を更に備え、昇温用配管80は、排気通路12における触媒昇温装置50の上流側に繋がる。よって、触媒昇温装置50により排気浄化触媒40をより早期に昇温することができる。
【0038】
(4)エンジン10の排気によるタービンホイール31の回転によりコンプレッサホイール32を駆動してエンジン10の吸気を過給するターボチャージャ30を更に備え、排気浄化触媒40は、エンジン10の排気通路12におけるターボチャージャ30のタービンホイール31の下流側に設けられている。よって、ターボチャージャ30を有する場合にも排気浄化触媒40を早期に昇温することができる。
【0039】
(5)電動過給機70は、EGRガスを圧縮し、電動過給機70において圧縮されたEGRガスが、昇温用配管80を通して、排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に供給される。これにより、排気浄化触媒40をより早期に昇温することができる。
【0040】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図1においては、電動過給機70は、EGRガス(エンジンの排気の一部をエンジンの吸気通路11に戻すガス)を圧縮する構成であったが、これに代わり図3に示すようにしてもよい。
【0041】
図3において、EGR管60における電動過給機70の入口側には新気導入管120が接続され、新気導入管120の途中にはバルブ121が設けられている。バルブ121はコントローラとしてのエンジンECU100により開度が制御される。電動過給機70は、エンジン10の排気の一部をエンジン10の吸気通路11に戻すEGRガス及び新気を圧縮する。なお、新気はターボチャージャ30のコンプレッサホイール32の出口側から、電動過給機70の入口側に導入してもよい。
【0042】
そして、コントローラとしてのエンジンECU100により電動過給機70の電動モータ72の回転数が制御され、EGRガス及び新気が電動過給機70により圧縮されて温度が高くなる。また、コントローラとしてのエンジンECU100により昇温用配管80に設けられたバルブとしての触媒昇温バルブ92が制御され、電動過給機70の出口側から温度が高くなった気体(EGRガス及び新気)が昇温用配管80を通して排気浄化触媒40に供給される。これにより、排気浄化触媒40を早期に昇温することができる。
【0043】
このように、電動過給機70は、EGRガス及び新気を圧縮し、電動過給機70において圧縮されたEGRガス及び新気が、昇温用配管80を通して、排気通路12における排気浄化触媒40の上流側に供給されるシステム構成としてもよい。
【0044】
要は、電動過給機70は、コンプレッサホイール71を電動モータ72で駆動することにより、エンジン10の排気の一部をエンジン10の吸気通路11に戻すEGRガスを少なくとも圧縮するものであればよい。
【0045】
図2においては、エンジン始動時に電動モータ72の回転数を一定としたが、エンジン始動時に電動モータ72の回転数を変えるようにしてもよい。
図1図2においては、エンジン始動時の場合について説明したが、エンジン回転が低速時にも同様に電動モータ72の回転数及び触媒昇温バルブ92を制御して排気浄化触媒40を昇温するようにしてもよい。
【0046】
図2においては、EGRバルブ91を全閉と全開とに切り替えるとともに触媒昇温バルブ92を全閉と全開とに切り替えたが、これに代わり、EGRバルブ91を全閉と全開との中間開度に制御するとともに触媒昇温バルブ92を全閉と全開との中間開度に制御してもよい。
【0047】
図1においては、EGRバルブ91及び触媒昇温バルブ92を備えていたが、これに代わり図4に示すようにバルブとしての三方弁130を用いてもよい。
図4において、電動過給機70の出口管75から、エンジン吸気通路11への接続管65と、昇温用配管80との分岐箇所(3本の配管の集合部分)において、バルブとしての三方弁130を設ける。バルブとしての三方弁130は、中央の回動軸131に板状の弁体132が固定されている。コントローラとしてのエンジンECU100は、図示しないアクチュエータを介して回動軸131を回動することができる。そして、エンジンECU100は、例えば回動軸131を回動して弁体132を図4において実線で示すA位置にすることにより、電動過給機70の出口管75とエンジン吸気通路11への接続管65とを連通させることができる。エンジンECU100は、回動軸131を回動して弁体132を図4において仮想線で示すB位置にすることにより、電動過給機70の出口管75と昇温用配管80とを連通させることができる。このようにして、昇温用配管80の上流側の端部に三方弁130を設け、弁体132の回動位置によりガス量Q2とガス量Q3の分配率を調整するようにしてもよい。
【0048】
図1等においては、エンジンの吸排気システム20は、ターボチャージャ30、触媒昇温装置50を備えていたが、これに限るものではない。例えば、ターボチャージャ30は無くてもよい。また、触媒昇温装置50は無くてもよい。
【0049】
図1等におけるクーラ110,111は無くすることも可能である。
図1図3においては昇温用配管80に触媒昇温バルブ92を設けるとともにコントローラとしてのエンジンECU100により電動モータ72の回転数及び触媒昇温バルブ92を制御したが、これに限るものではない。例えば、電動モータ72のオンでガスを流し、電動モータ72のオフでガスを流さないようにしてもよい。同様に、図4の三方弁130を用いることなく、電動モータ72のオンでガスを流し、電動モータ72のオフでガスを流さないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…エンジン、11…吸気通路、12…排気通路、20…エンジンの吸排気システム、30…ターボチャージャ、31…タービンホイール、32…コンプレッサホイール、40…排気浄化触媒、50…触媒昇温装置、60…EGR管、70…電動過給機、71…コンプレッサホイール、72…電動モータ、80…昇温用配管、92…触媒昇温バルブ、100…エンジンECU、130…三方弁。
図1
図2
図3
図4