(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027218
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)阻害薬としての2,4-ジアミノピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 239/48 20060101AFI20220203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220203BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20220203BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20220203BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20220203BHJP
C07D 491/113 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220203BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220203BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220203BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220203BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220203BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20220203BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220203BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220203BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220203BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07D239/48
A61P43/00 111
C07D405/12 CSP
A61K31/506
C07D401/12
C07D409/12
C07D403/12
C07D491/113
A61K31/551
A61K31/5377
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P21/00
A61P9/12
A61P25/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P3/10
A61P27/02
A61P33/06
A61P31/12
A61P29/00
A61P25/04
A61P37/02
A61P37/08
A61K31/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131096
(22)【出願日】2020-07-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508065961
【氏名又は名称】ラクオリア創薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川村 清
(72)【発明者】
【氏名】山口 龍一
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA04
4C050BB07
4C050CC17
4C050EE01
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH04
4C063AA01
4C063BB07
4C063CC29
4C063CC34
4C063CC71
4C063CC73
4C063CC81
4C063CC92
4C063DD03
4C063DD10
4C063DD29
4C063EE01
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA08
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA42
4C084ZA59
4C084ZA94
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C084ZB38
4C084ZC20
4C084ZC35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086BC48
4C086BC50
4C086BC54
4C086BC73
4C086CB22
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB38
4C086ZC20
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】 (修正有)
【課題】Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)阻害活性を有する2,4-ジアミノピリミジン誘導体、またはそのプロドラッグ、または薬学上許容されるその塩、それらを含む医薬組成物、それらの製造方法、及びそれらの使用を提供する。
【解決手段】Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害を治療するための、式(I)で表される化合物の使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害を治療するための、次の式(I)で表される化合物の使用:
{化1}
〔式中、
R
1は水素、ハロゲン、C
1-C
6アルキルまたはニトロであるか、あるいは基-COR
5、-OCF
3、-(CH
2)nR
5、-S-CF
3または-SO
2CF
3であり、
R
2はC
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C10アルキニルまたはC
3-C
10シクロアルキルであるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法で下記置換基により置換されたC
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニルまたはC
3-C
10シクロアルキルであり:ここで、当該置換基は、ヒドロキシ、ハロゲン、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルキルチオ、アミノ、シアノ、C
1-C
6アルキル、-NH-(CH
2)n-C
3-C
10シクロアルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、-NHC
1-C
6アルキル、-N(C
1-C
6アルキル)
2、-SO(C
1-C
6アルキル)、-SO
2(C
1-C
6アルキル)、C
1-C
6アルカノイル、-CONR
3R
4、-COR
5、C
1-C
6アルキルOAc、カルボキシ、アリール、ヘテロアリール、-(CH
2)n-アリール、-(CH
2)n-ヘテロアリール、フェニル-(CH
2)n-R
5、-(CH
2)n-PO
3(R
5)
2、または基-R
6もしくは-NR
3R
4であり;そしてフェニル、C
3-C
10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-(CH
2)n-アリールおよび-(CH
2)n-ヘテロアリールそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、ヘテロアリール、ベンゾキシで、または基-CF
3もしくは-OCF
3で置換されることができ、そしてC
3-C
10シクロアルキルの環およびC
1-C
10アルキルは必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=O基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができるか、あるいは
R
2は基:
{化2}
であり、
Xは酸素または基-NH-、-N(C
1-C
3アルキル) 、又は-OC
3-C
10-シクロアルキルであり、これらは1または2以上の位置において同一または異なる方法でヘテロ芳香族化合物により置換されることができ、あるいは
XおよびR
2は一緒になってC
3-C
10シクロアルキル環を形成し、前記環は1または2以上の異種原子を含有することができ、そして必要に応じて1または2以上の位置においてヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシまたはハロゲンにより置換されていてもよく、
AおよびBは、各場合において互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C
1-C
3アルキル、C
1-C
6アルコキシであるか、あるいは基-SR
7、-S(O) R
7、-SO
2 R
7、-NHSO
2R
7、-CH(OH)R
7、-CR
7(OH)-R
7、C
1-C
6アルキルP(O)OR
3 R
4または-COR
7であるか、あるいは
{化3}
であり、
AおよびBは一緒になってC
3-C
10シクロアルキル環を形成し、前記環は必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=Oまたは=SO
2基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができ、そしてC
3-C
10シクロアルキル環は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でヒドロキシ、ハロゲン、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルキルチオ、アミノ、シアノ、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、-NHC
1-C
6アルキル、-N(C
1-C
6アルキル)
2、-SO(C
1-C
6アルキル)、-SO
2 R
7、C
1-C
6アルカノイル、-CONR
3R
4、-COR
5、C
1-C
6アルコキシOAc、フェニルで、または基R
6で置換されることができ、ここでフェニルそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシで、または基-CF
3もしくは-OCF
3で置換されることができ、
R
3およびR
4は、各場合において互いに独立して、水素、フェニル、ベンジルオキシ、C
1-C
12アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
2-C
4アルケニルオキシ、C
3-C
6シクロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシ-C
1-C
6アルキル、ジヒドロキシ-C
1-C
6アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロ-C
3-C
10アルキル、ヘテロアリール-C
1-C
3アルキル、C
3-C
8シクロアルキル-C
1-C
3アルキル (これはシアノで置換されていてもよい) であるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法でフェニル、ピリジル、フェニルオキシ、C
3-C
6シクロアルキル、C
1-C
6アルキルまたはC
1-C
6アルコキシにより置換されたC
1-C
10アルキルであり、ここでフェニルそれ自体は1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシで、または基-SO
2NR
3R
4で置換されることができるか、あるいは
R
3およびR
4は基-(CH
2)nNR
3R
4、-CNHNH
2または-NR
3R
4であるか、あるいは
R
3およびR
4は一緒になってC
3-C
10シクロアルキル環を形成し、前記環は必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=O基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができ、
R
5はヒドロキシ、フェニル、C
1-C
6アルキル、C
3-C
6シクロアルキル、ベンゾキシ、C
1-C
6アルキルチオまたはC
1-C
6アルコキシであり、
R
6はヘテロアリールまたはC
3-C
6シクロアルキル環であり、ここで前記環は上に示した意味を有し、
R
7はハロゲン、ヒドロキシ、フェニル、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
3-C
6シクロアルキル (上に示した意味を有する) であるか、あるいは基-NR
3R
4であるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法でヒドロキシ、C
1-C
6アルコキシ、ハロゲン、フェニル、または-NR
3R
4により置換されたC
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニルまたはC
3-C
6シクロアルキルであり、前記フェニルそれ自体は必要に応じて
1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、ハロ-C
1-C
6アルキル、ハロ-C
1-C
6アルコキシで置換されることができるか、あるいはR
7はフェニルであり、前記フェニルそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキルまたはC
1-C
6アルコキシ、ハロ-C
1-C
6アルキルまたはハロ-C
1-C
6アルコキシで置換されることができ、
R
8、R
9およびR
10は、各場合において互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニル、C
3-C
10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールであるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法で下記置換基により置換されたC
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニルまたはC
3-C
10シクロアルキルであり:ここで当該置換基はヒドロキシ、ハロゲン、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルキルチオ、アミノ、シアノ、C
1-C
6アルキル、-NH-(CH
2)n-C
3-C
10シクロアルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、-NHC
1-C
6アルキル、-N(C
1-C
6アルキル)
2、-SO(C
1-C
6アルキル)、-SO
2(C
1-C
6アルキル)、C
1-C
6アルカノイル、-CONR
3R
4、-COR
5、C
1-C
6アルキルOAc、カルボキシ、アリール、ヘテロアリール、-(CH
2)n-アリール、-(CH
2)n-ヘテロアリール、フェニル-(CH
2)n-R
5、-(CH
2)n-PO
3(R
5)
2、または基-R
6または-NR
3R
4であり;そしてフェニル、C
3-C
10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-(CH
2)n-アリールおよび-(CH
2)n-ヘテロアリールそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシで、または基-CF
3もしくは-OCF
3で置換されることができ、そしてC
3-C
10シクロアルキルの環およびC
1-C
10アルキルは必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=O基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができ、そして
nは0から6である〕
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
次の式(II)で表される化合物:
【化4】
〔式中、
R
11およびR
12は独立して、C
1-C
6アルキルである〕;
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって:
R11およびR12は独立して、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、またはブチルからなる群から選ばれる;
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
4-((5-ブロモ-4-((3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2,3-ジメチルブタン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;および
4-((5-ブロモ-4-((4-(ヒドロキシメチル)ヘプタン-4-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項6】
さらに他の薬理学的に活性な薬剤を含む、請求項5に記載される医薬組成物。
【請求項7】
Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)阻害剤として使用される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害を治療するための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記病態または障害が、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記病態または障害が、乳癌、白血病、肺腺癌、肺癌、精巣癌、ユーイング肉腫、および脊髄性筋萎縮症、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ヒトを含む動物における、Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害の治療方法であって、治療有効量の請求項1から請求項4に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩を該治療が必要な動物に投与することを含む方法。
【請求項12】
Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害の治療薬を製造するための、請求項1から請求項4に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、またはその組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vaccinia-related kinase 1 (VRK-1)阻害活性を有する2,4-ジアミノピリミジン誘導体、またはそのプロドラッグ、または薬学上許容されるその塩、それらを含む医薬組成物、それらの製造方法、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)は、ワクシニア関連キナーゼのファミリーの一つであるセリンスレオニンタンパク質キナーゼである。ワクシニア関連キナーゼのファミリーには、VRK-1、VRK-2、及びVRK-3が報告されている。VRK-1及びVRK-2は活性化したキナーゼドメインを持ち、複製、クロマチン再構築、およびDNA損傷に対する細胞応答を含む細胞周期の過程に関与することが報告されている。一方VRK-3は疑似キナーゼであると考えられている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
VRK-1は有糸分裂キナーゼであり、細胞周期関連基質たとえばバリアーツーオートインテグレーションファクター(BAF)、ヒストンH3、またはcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)などをリン酸化することにより細胞周期を制御する機能を有する。VRK-1はヒト組織において広範囲に発現し、精巣、白血球、胎児肝、及びがん細胞において細胞分裂に関与している(非特許文献3~5)。
【0004】
がん細胞では変異型キナーゼが過剰な増殖シグナルを伝達して、細胞の無秩序な増殖を引き起こしていることが知られている。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるキナーゼなどのタンパク質に特異的に作用することで、効率良くがん細胞を攻撃し正常な細胞へのダメージが少ないことから、より患者の負担が少ない治療薬として近年期待されている。
【0005】
肺腺癌の研究において、VRK-1が腫瘍特異的有糸分裂ネットワークにおける分子標的として特定され、VRK-1阻害活性がPARPシグナル伝達阻害と連動して、肺の癌細胞の成長を阻害することが報告されている(非特許文献6)。
【0006】
VRK-1は、乳がんにおいて予後不良の症例に関係するキナーゼの一つであるとされている。エストロゲン受容体(ER)陽性やプロゲストロン受容体(PR)陽性の腫瘍では、高レベルのVRK-1たんぱくが確認されるのに対し、ErbB2陽性の場合では優位に低い。また、VRK-1をノックダウンした乳がんの細胞株を、放射線やドキソルビシンによるDNA損傷を誘発させる処理をおこなったところ、VRK-1欠損株はDNA損傷からの修復能力が減少した。このことから、VRK-1はDNA損傷系の治療に対し腫瘍の抵抗性に関与していることが報告されている(非特許文献7)。
【0007】
ユーイング肉腫を引き起こす異常な転写因子EWS-FLI1をターゲットとした標的治療薬の開発において、細胞分裂期に関与しているセリンスレオニンキナーゼであるVRK-1がEWS-FLI1エンハンサーの近位にあり、ユーイング肉腫細胞株において活性化していることが報告されている(非特許文献8)。
【0008】
脊髄性筋委縮症は脊髄の前角細胞が衰退そして失われることを特徴とする疾患で、筋肉の衰弱と委縮を引き起こすが、橋小脳の形成不全を伴う脊髄性委縮症はVRK-1遺伝子の変異が原因であると報告されている(非特許文献9)。
【0009】
植物に含まれるフラボン類の一つであるルテオリンは、VRK-1阻害活性を有することが見出され、細胞周期関連基質BAFとヒストンH3のVRK-1 誘発リン酸化を有意に抑制することが報告されている。ルテオリンはVRK-1活性の調節によって細胞周期の進行を制御し、癌細胞の細胞増殖の抑制およびアポトーシスの誘発につがなることが示唆されている(非特許文献10)。
【0010】
これらの報告例から、VRK-1阻害活性を有する化合物は、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする病態または障害の予防薬または治療薬として有用性が期待されている。
【0011】
このように薬学的に有益であるにも関わらず、VRK-1阻害活性を持つ低分子化合物はあまり知られておらず、近年、Ricardoらが報告するピリジン骨格を有する化合物のみである(非特許文献11)。
【0012】
また、2,4-ジアミノピリミジン誘導体として公知のものは、特表2004-535414(特許文献1)に記載されるサイクリン依存的キナーゼ(CDK)阻害活性を有する化合物、特表2005-507420(特許文献2)に記載されるグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β阻害活性を有する化合物、特表2005-516046(特許文献3)に記載される免疫グロブリンEおよび/または免疫グロブリンG受容体シグナル伝達系を阻害する化合部、および特表2012-501983(特許文献4)に記載される植物病原性の有害な真菌類を防除するための化合物が知られている。本願発明と最も近い化合物は、特表2004-535414の実施例143であると考えられ、2,4-ジアミノピリミジン骨格の4位アミノ基の隣接炭素が3級炭素であることを特徴とする。本願発明化合物は2,4-ジアミノピリミジン骨格の4位アミノ基の隣接炭素が4級炭素である点で異なっており、それによって強力なVRK-1阻害活性を有する。本願発明の実施例1は、VRK-1_Enzymeアッセイで0.18 microMのIC50値を示し、VRK-1_Cellularアッセイで0.16 micro MのIC50値を示す。特表2004-535414の実施例143は、VRK-1_Enzymeアッセイで0.61 microMのIC50値を示し、VRK-1_Cellularアッセイで0.98 micro MのIC50値を示す。本願発明の実施例1は、特表2004-535414の実施例143と比較して、VRK-1_Enzymeアッセイでは3倍以上、VRK-1_Cellularアッセイでは6倍以上優れたVRK-1阻害活性を示します(表1)。特表2004-535414にはVRK-1阻害活性に関して記載も示唆もない。本願発明の効果は、特表2004-535414で示された発明の効果とは明らかに異質な効果を示しており、技術水準から当業者が容易に想到できたものではない。
{表1}
【0013】
以上のように、VRK-1阻害薬としての化合物は報告例が少なく、未だ臨床試験に進んだものや上市されたものがない。したがって、優れたVRK-1阻害活性を有する新規薬剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2004-535414
【特許文献2】特表2005-507420
【特許文献3】特表2005-516046
【特許文献4】特表2012-501983
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Nichols, R. J. & Traktman, J. Biol. Chem. 279, 7934-7946 (2004)
【非特許文献2】Eric D. Scheeff, et al. Structure 17, 128–138, January 14, (2009)
【非特許文献3】Tae-Hong Kong, et al. MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, Dec. 2007, p8533-8546
【非特許文献4】Tyler P. Molitor, et al. Molecular Biology of the Cell, Volume 25, March 15, 2014, p891-903
【非特許文献5】Matra Sanz-Garcia, et al.Emerging Signaling Oathways in Tumor Biology, 2010: 135-156
【非特許文献6】Il-Jin Kim. et al. Nature Communications, (2013), doi:10.1038/ncomms2660
【非特許文献7】Marcella Salzano, et al. Oncotarget, Vol.5, No.7, p1770-1778, (2014)
【非特許文献8】Nicolo Riggi, et al. Cancer Cell 28, p668–681, November 9, 2014
【非特許文献9】Paul Renbaum, et al. The American Journal of Human Genetics 85, 281–289, August 14, 2009
【非特許文献10】Ye Seul Kim, et al. PLOS ONE, Vol.9, Issue 10, e109655, October 2014
【非特許文献11】Ricardo A. M. Serafim, et al. ACS Med. Chem. Lett. 2019, 10, 1266-1271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、新規なVRK-1阻害薬を提供することを目的とする。好ましい化合物は、VRK-1阻害活性が強く、VRK-1が関与する病態または障害の予防または治療のための薬物吸収、分布、代謝および排泄といった好ましい薬物動態学的特性を有する。それらは非毒性で、副作用をほとんど示さない。さらに理想的な化合物は、安定で非吸湿性であり、製剤化に適した物理的形状で存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討したところ、2,4-ジアミノピリミジン誘導体の4位アミノ基に隣接する炭素が4級炭素である化合物に強力なVRK-1阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
[1] Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害を治療するための、次の式(I)で表せられる化合物の使用:
{化1}
【0018】
〔式中、
R
1は水素、ハロゲン、C
1-C
6アルキルまたはニトロであるか、あるいは基-COR
5、-OCF
3、-(CH
2)nR
5、-S-CF
3または-SO
2CF
3であり、
R
2はC
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニルまたはC
3-C
10シクロアルキルであるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法で下記置換基により置換されたC
1-C
10アルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニルまたはC
3-C
10シクロアルキルであり:ここで、当該置換基は、ヒドロキシ、ハロゲン、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルキルチオ、アミノ、シアノ、C
1-C
6アルキル、-NH-(CH
2)n-C
3-C
10シクロアルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルコキシ-C
1-C
6アルキル、-NHC
1-C
6アルキル、-N(C
1-C
6アルキル)
2、-SO(C
1-C
6アルキル)、-SO
2(C
1-C
6アルキル)、C
1-C
6アルカノイル、-CONR
3R
4、-COR
5、C
1-C
6アルキルOAc、カルボキシ、アリール、ヘテロアリール、-(CH
2)n-アリール、-(CH
2)n-ヘテロアリール、フェニル-(CH
2)n-R
5、-(CH
2)n-PO
3(R
5)
2、または基-R
6もしくは-NR
3R
4であり;そしてフェニル、C
3-C
10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-(CH
2)n-アリールおよび-(CH
2)n-ヘテロアリールそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、ヘテロアリール、ベンゾキシで、または基-CF
3もしくは-OCF
3で置換されることができ、そしてC
3-C
10シクロアルキルの環およびC
1-C
10アルキルは必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=O基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができるか、あるいは
R
2は基:
{化2}
【0019】
であり、
Xは酸素または基-NH-、-N(C
1-C
3アルキル) 、又は-OC
3-C
10-シクロアルキルであり、これらは1または2以上の位置において同一または異なる方法でヘテロ芳香族化合物により置換されることができ、あるいは
XおよびR
2は一緒になってC
3-C
10シクロアルキル環を形成し、前記環は1または2以上の異種原子を含有することができ、そして必要に応じて1または2以上の位置においてヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシまたはハロゲンにより置換されていてもよく、
AおよびBは、各場合において互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C
1-C
3アルキル、C
1-C
6アルコキシであるか、あるいは基-SR
7、-S(O) R
7、-SO
2 R
7、-NHSO
2R
7、-CH(OH)R
7、-CR
7(OH)-R
7、C
1-C
6アルキルP(O)OR
3 R
4または-COR
7であるか、あるいは
{化3}
【0020】
であり、
AおよびBは一緒になってC3-C10シクロアルキル環を形成し、前記環は必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=Oまたは=SO2基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができ、そしてC3-C10シクロアルキル環は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でヒドロキシ、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルチオ、アミノ、シアノ、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C3-C10シクロアルキル、C1-C6アルコキシ-C1-C6アルキル、-NHC1-C6アルキル、-N(C1-C6アルキル)2、-SO(C1-C6アルキル)、-SO2 R7、C1-C6アルカノイル、-CONR3R4、-COR5、C1-C6アルコキシOAc、フェニルで、または基R6で置換されることができ、ここでフェニルそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシで、または基-CF3もしくは-OCF3で置換されることができ、
R3およびR4は、各場合において互いに独立して、水素、フェニル、ベンジルオキシ、C1-C12アルキル、C1-C6アルコキシ、C2-C4アルケニルオキシ、C3-C6シクロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシ-C1-C6アルキル、ジヒドロキシ-C1-C6アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロ-C3-C10アルキル、ヘテロアリール-C1-C3アルキル、C3-C8シクロアルキル-C1-C3アルキル (これはシアノで置換されていてもよい) であるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法でフェニル、ピリジル、フェニルオキシ、C3-C6シクロアルキル、C1-C6アルキルまたはC1-C6アルコキシにより置換されたC1-C10アルキルであり、ここでフェニルそれ自体は1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシで、または基-SO2NR3R4で置換されることができるか、あるいは
R3およびR4は基-(CH2)nNR3R4、-CNHNH2または-NR3R4であるか、あるいは
R3およびR4は一緒になってC3-C10シクロアルキル環を形成し、前記環は必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=O基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができ、
R5はヒドロキシ、フェニル、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、ベンゾキシ、C1-C6アルキルチオまたはC1-C6アルコキシであり、
R6はヘテロアリールまたはC3-C6シクロアルキル環であり、ここで前記環は上に示した意味を有し、
R7はハロゲン、ヒドロキシ、フェニル、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル (上に示した意味を有する) であるか、あるいは基-NR3R4であるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法でヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、ハロゲン、フェニル、または-NR3R4により置換されたC1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニルまたはC3-C6シクロアルキルであり、前記フェニルそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロ-C1-C6アルキル、ハロ-C1-C6アルコキシで置換されることができるか、あるいはR7はフェニルであり、前記フェニルそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6アルキルまたはC1-C6アルコキシ、ハロ-C1-C6アルキルまたはハロ-C1-C6アルコキシで置換されることができ、
R8、R9およびR10は、各場合において互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C3-C10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールであるか、あるいは1または2以上の位置において同一または異なる方法で下記置換基により置換されたC1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニルまたはC3-C10シクロアルキルであり:ここで当該置換基はヒドロキシ、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルチオ、アミノ、シアノ、C1-C6アルキル、-NH-(CH2)n-C3-C10シクロアルキル、C3-C10シクロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ-C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ-C1-C6アルコキシ-C1-C6アルキル、-NHC1-C6アルキル、-N(C1-C6アルキル)2、-SO(C1-C6アルキル)、-SO2(C1-C6アルキル)、C1-C6アルカノイル、-CONR3R4、-COR5、C1-C6アルキルOAc、カルボキシ、アリール、ヘテロアリール、-(CH2)n-アリール、-(CH2)n-ヘテロアリール、フェニル-(CH2)n-R5、-(CH2)n-PO3(R5)2、または基-R6または-NR3R4であり;そしてフェニル、C3-C10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-(CH2)n-アリールおよび-(CH2)n-ヘテロアリールそれ自体は必要に応じて1または2以上の位置において同一または異なる方法でハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシで、または基-CF3もしくは-OCF3で置換されることができ、そしてC3-C10シクロアルキルの環およびC1-C10アルキルは必要に応じて1または2以上の窒素、酸素および/または硫黄原子により中断されることができ、そして/または環において1または2以上の=C=O基により中断されることができ、そして/または必要に応じて1または2以上の可能な二重結合を含有することができ、そして
nは0から6である〕
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩;
【0021】
式(I)において
〔式中、
R1はブロモであり、
R2は1のヒドロキシで置換されたC4-C10アルキルであり、
Xは-NH-であり、
AおよびBは、水素および-COR7であるか、または-COR7および水素であり、
R7は-NR3R4であり、
R3およびR4は水素である〕
で表される化合物は、すなわちこれは次の式(II)で表される。
これらの化合物は新規化合物である;
【0022】
[2] 次の式(II)で表される化合物:
〔式中、
R
11およびR
12は独立して、C
1-C
6アルキルである〕;
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩;
【化4】
【0023】
[3] [2]に記載の化合物であって:
R11およびR12は独立して、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、またはブチルからなる群から選ばれる;好ましくはR11およびR12はメチルである;
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩;
【0024】
[4] 4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
4-((5-ブロモ-4-((3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2,3-ジメチルブタン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;および
4-((5-ブロモ-4-((4-(ヒドロキシメチル)ヘプタン-4-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド;
またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩;
【0025】
[5] [1]から[4]に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物;
【0026】
[6] さらに他の薬理学的に活性な薬剤を含む、[5]に記載される医薬組成物;
【0027】
[7] Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)阻害剤として使用される、[5]に記載の医薬組成物;
【0028】
[8] Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害を治療するための、[5]に記載の医薬組成物;
【0029】
[9] 前記病態または障害が、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、[8]に記載の医薬組成物;
【0030】
[10] 前記病態または障害が、乳癌、白血病、肺腺癌、肺癌、精巣癌、ユーイング肉腫、および脊髄性筋萎縮症、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、[8]に記載の医薬組成物;
【0031】
[11] ヒトを含む動物における、Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害の治療方法であって、治療有効量の[1]から[4]に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩を該治療が必要な動物に投与することを含む方法;
【0032】
[12] 前記病態または障害が、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、[11]に記載の方法。好ましくは、前記病態または障害が、乳癌、白血病、肺腺癌、肺癌、精巣癌、ユーイング肉腫、および脊髄性筋萎縮症、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、[11]に記載の方法;
【0033】
[13] Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害の治療薬を製造するための、[1]から[4]に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、またはその組成物の使用;
【0034】
[14] 前記病態または障害が、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項[13]に記載の使用;好ましくは、前記病態または障害が、乳癌、白血病、肺腺癌、肺癌、精巣癌、ユーイング肉腫、および脊髄性筋萎縮症、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項[13]に記載の使用;
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0035】
式(I)および式(II)で表される本発明の化合物(以下、「本発明化合物」と記載することもある。)は、4位アミノ基上に4級炭素側鎖を持つことを特徴とする2,4-ジアミノピリミジン誘導体であり、Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)阻害を有しする。本発明化合物またはそのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩は、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする病態及び/又は障害の治療薬として使用できる。
【0036】
好ましい本発明化合物は、VRK-1阻害活性が強く、VRK-1が関与する病態または障害の予防または治療のための薬物吸収、分布、代謝および排泄といった好ましい薬物動態学的特性を有する。それらは非毒性で、副作用をほとんど示さない。さらに理想的な化合物は、安定で非吸湿性であり、製剤化に適した物理的形状で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
【0038】
本明細書中において、用語「治療すること」または「治療」は、症状または障害の進行または重篤化を防止、抑制、減速、停止、または逆転させることを含む。本明細書中において、用語「予防すること」または「予防」は、症状または障害の発生または発生を防止、抑制、または阻害することを含む。
【0039】
本明細書中において、用語「動物」は、ほ乳類または非ほ乳類を含む。適切なほ乳類の例としては、ヒト、げっ歯動物、伴侶動物、家畜、および霊長類が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。適切なげっ歯類としては、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。適切な伴侶動物としては、ネコ、イヌ、ウサギ、フェレットが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。適切な家畜としては、馬、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ラマ、アルパカが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。適切な霊長類としては、チンパンジー、キツネザル、アカゲザル、マーモセット、クモザル、リスザル、ベルベットモンキーが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。適切な非ほ乳類の例としては、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。鳥類の例としては、鶏、七面鳥、アヒル、そしてガチョウなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0040】
本願発明は、式(I)および式(II)で表される化合物(以下、本発明化合物ともいう)またはそのプロドラッグ、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、錯体、多形体、放射性または非放射性同位体でラベルされた誘導体、立体異性体および光学異性体を包含する
【0041】
式(I)および式(II)で表される化合物またはプロドラッグの薬学的に許容される塩とは、本発明化合物と無毒の塩を形成するものであればいかなる塩でもよく、置換基の種類によって、酸付加塩または塩基との塩を形成する場合がある。
例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、アミノ酸との塩等が挙げられる。様々な形態の薬学上許容される塩が当分野で周知であり、例えば以下の参考文献、「医薬品の開発」(廣川書店)1990年,第7巻,分子設計,p.163-198、Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, ACS Symposium Series(T HiguchiおよびW Stella)、およびBioreversible Carriers in Drug Design, Pergamon Press, 1987(E B Roche編、American Pharmaceutical Association)に記載されている。
【0042】
たとえば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、またはナフタレンスルホン酸などの有機酸との酸付加塩;ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属陽イオンとの塩;メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、2-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、t-ブチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、エポラミン、ヒドラバミン、モルホリン、ピペラジン、プロカイン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メグルミン、およびトロメタミンなどの有機塩基との塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、アセチルロイシン、アルギニン、グリシン、リジンなどの各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0043】
公知の方法に従って、式(I)および式(II)で表される化合物またはそのプロドラッグと、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、又はアミノ酸等とを反応させることにより、各々の塩を得ることができる。
【0044】
式(I)および式(II)で表される化合物、そのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩は、溶媒和物または水和物として存在することもある。「溶媒和物」とは、式(I)および式(II)で表される化合物、そのプロドラッグ、またはその薬学的に許容されるその塩に、溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。溶媒和物は、薬学的に許容される溶媒和物が好ましい。例えば、式(I)および式(II)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。具体的には、式(I)および式(II)で表される化合物の半水和物、1水和物、2水和物又は1エタノール和物、或いは式(I)および式(II)で表される化合物のナトリウム塩の1水和物又は2塩酸塩の2/3エタノール和物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
公知の方法に従って、式(I)および式(II)で表される化合物、そのプロドラッグまたは薬学的に許容されるその塩の溶媒和物を得ることができる。
【0046】
式(I)および式(II)で表される化合物、そのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩、またはそれらの水和物または溶媒和物は、結晶形または非結晶形で製造されてもよく、結晶形の場合、結晶多形をとりうるが、これらも本発明の範囲内である。
【0047】
式(I)および式(II)で表される化合物またはそのプロドラッグは、薬学的に許容される共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、公知の共結晶化法に従い製造することができる。
【0048】
薬学的に許容されない対イオンをもつ塩および溶媒和物も、本発明の範囲内に含まれる。たとえば、式(I)および式(II)で表される化合物の他の化合物および薬学的に許容されるその塩の製造における中間体として使用される場合が挙げられる。
【0049】
本明細書中において、用語「プロドラッグ」とは、たとえば、式(I)および式(II)で表される化合物のプロドラッグの場合、それ自体は薬理活性をほとんどまたはまったく持たないかもしれない式(I)および式(II)で表される化合物のある種の誘導体が、身体に投与されたとき、加水分解または生理学的条件等による切断によって、所望の活性を有する式(I)および式(II)で表される化合物に変換される化合物をいう。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198、「Prodrugs and targeted delivery」(Wiley-VCH 2011) Methods and principles in medicinal chemistry volume 47、およびH. BundgaardのDesign of Prodrugs(Elsevier、1985年)に示される基が挙げられる。
【0050】
たとえば、式(I)および式(II)で表される化合物がアルコール官能基(-OH)を含む場合、該水酸基は生体内 (インビボ)で加水分解および/またはエステラーゼなどの酵素によって水酸基に変換可能な部分で置き換えられる。たとえば、式(I)および式(II)で表される化合物の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(たとえば、アセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化、アシルオキシアルキル化、1-(アルコキシカルボニルオキシ)アルキル化、フタリジル化、およびピバロイルオキシメチルオキシカルボニル化された化合物等);式(I)および式(II)で表される化合物がアミノ基を含む場合、該アミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(たとえば、式(I)および式(II)で表される化合物のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化された化合物等);式(I)および式(II)で表される化合物がカルボキシ基を含む場合、該カルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(たとえば、式(I)および式(II)で表される化合物のカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物等)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
公知の方法に従って、式(I)および式(II)で表される化合物からプロドラッグを製造することができる。
【0052】
式(I)および式(II)で表される化合物は、1個以上の原子が、放射性または非放射性同位体などによって標識または置換された化合物であってもよい。 同位体としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素、および塩素などが挙げられ、たとえば、2H、3H、11C、13C、14C、18F、35S、123I、および125Iなどが挙げられる。トリチウム同位体(3H)および炭素14同位体(14C)は、製造および検出が容易であることから特に好ましい。11Cおよび18F同位体は、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography,PET)において使用するトレーサー(PETトレーサー)として用いることができ、23I同位体は、SPECT(シングルフォトンエミッションCT)において特に有用であることから、同位体標識化合物は医療診断などの分野において有用である。さらに、重水素(2H)などの重い同位体で置換した場合、その代謝安定性が大きいことから、たとえば、インビボ半減期の増加や必要用量の低減などの治療的利点がもたらされるため、状況によってはこのような置換が好ましいことがある。本発明の同位体標識化合物は、一般に、下記のスキームおよび/または実施例に記載された手順に従って合成し、次いで、同位体標識されていない試薬の代わりに、容易に入手可能な同位体標識試薬を用いることにより製造される。
【0053】
本技術分野に開示された他の化合物に関して、特定の化合物は予期しない性質、たとえば、好ましい作用の持続時間および/または代謝安定性、好ましい経口生物学的利用率または吸収、および/または薬物相互作用の減少などを示す。
【0054】
本明細書中において、「薬学的に許容される担体」としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、例えば、固形製剤における賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤等、或いは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、界面活性剤、pH調整剤、粘稠剤等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。更に必要に応じて、保存剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物が用いられる。
【0055】
本発明化合物は、医薬製剤の製造方法として公知の方法(たとえば、第17改正日本薬局方記載の方法)に従って、式(I)および式(II)で表される化合物を単独で、または式(I)および式(II)で表される化合物と薬学的に許容される担体、または、さらに他の薬理学的に活性な薬剤を混合した医薬組成物として使用することができる。「医薬組成物」としては、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠、バッカル錠等を含む)、丸剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁剤、放出制御製剤、エアゾール剤、フィルム剤(たとえば、口腔内崩壊フィルム)等の経口製剤、または、注射剤、点滴剤、外用剤、経皮吸収型剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤、点眼剤等の非経口製剤が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。好ましい医薬組成物としては錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散財などの経口製剤である。
【0056】
本発明医薬組成物は、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って、式(I)および式(II)で表される化合物またはそのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩、或いはその溶媒和物を、少なくとも1種以上の薬学的に許容される担体等と、適宜、適量混合等することによって、製造される。該医薬組成物中の式(I)および式(II)で表される化合物またはそのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩、或いはその溶媒和物の含量は、剤形、投与量等により異なるが、例えば、組成物全体の0.00001から100重量%である。
【0057】
本発明医薬組成物は、ヒトはもちろんのこと、ヒト以外の動物に対しても、経口的又は非経口的に投与することができる。選ばれる用法・用量は、所望の治療効果、投与経路、剤形、および治療期間に応じて決定される。投与量は、疾患の状態および重篤度、患者の体重、患者が従っている食事療法、併用薬剤、および当業者が認識するであろう他の要因に応じて、患者ごとに変わる。
【0058】
ヒト患者に対する投与については、有効成分である本発明化合物として、1日あたりの総投与量は、もちろん投与方法に依存するが、典型的には0.1 mg~1000 mgの範囲である。たとえば、経口投与では、1日あたりの総投与量として1 mg~1000 mgを必要とし、静脈投与では、0.1 mg~100 mgを必要とする。これらの1日あたりの総投与量を、1回(単回投与)から複数回に分けて投与することができる。また、医師の裁量でここに述べた典型的な範囲の外になってもよい。
【0059】
これらの投与量は、成人の患者(体重約60 kg)の平均的な体重を基礎としている。医師は、この範囲外に体重が該当する患者(たとえば、乳児および高齢者)に対しては、投与用量を変更することができる。
【0060】
一つの実施態様において、投与量範囲は、1日に患者1人あたり約0.5mg~1000 mg、また別の実施態様では、1日に患者1人あたり約0.5mg~500mg、また別の実施態様では、1日に患者1人あたり約1mg~250mg、また別の実施態様では、1日に患者1人あたり約5mg~100mg、さらに別の実施態様では、1日に患者1人あたり約1mg~30mgである。本発明医薬組成物は、たとえば、約0.5mg~500mgの有効成分を含むかまたは約1mg~250mgの有効成分を含む固体投与製剤で提供することができる。本発明医薬組成物は、約0.5 mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、または500mgの有効成分を含む固体投与製剤で提供することができる。経口投与では、治療を受ける患者の症状に応じて用量を調整した有効成分である本発明化合物の量(0.5 mg ~1000 mg)を、本発明医薬組成物として、たとえば0.5、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、または500mgを含有する錠剤の剤形、場合によっては複数個の錠剤の組み合わせによって提供することができる。本発明医薬組成物を、1日あたり1~4回、たとえば1日あたり1回または2回の回数で投与することができる。
【0061】
式(I)および式(II)で表される化合物、そのプロドラッグ、または薬学的に許容されるその塩、或いはその溶媒和物を、医薬分野で行われている一般的な方法で、1剤または複数の他の薬剤(以下、併用薬剤ともいう)と組み合わせて使用(以下、併用ともいう)することができる。他の薬剤と組み合わせた方がそれぞれの薬剤を単独で使用するよりも安全または効果的である場合、本発明化合物は1種以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0062】
そのような他の薬剤は、それに慣用的に使用される経路および量で、本発明化合物と同時にまたは連続して投与することができる。併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、配合剤として投与してもよいし、両製剤を同時に又は一定の間隔をおいて投与してもよい。併用薬剤の投与形態は、特に限定されず、本発明化合物またはそのプロドラッグ、又はその塩、或いはその溶媒和物と併用薬剤とが組み合わされていればよい。1種以上の他の有効成分と組み合わせて使用する場合、本発明化合物および他の有効成分は、それぞれ単独で使用される場合よりも低い用量で使用できることも考慮される。
【0063】
したがって、本発明医薬組成物は、本発明化合物に加えて、1種以上の他の有効成分を含有するものが挙げられる。上記の組み合わせには、本発明化合物と1種の他の活性のある化合物との組み合わせのみならず、本発明化合物と2種以上の他の活性のある化合物との組み合わせも挙げられる。
【0064】
同様に、本発明化合物は、本発明化合物が有用である疾患または病態の予防、治療、抑制、緩和またはリスクの低減に使用される他の薬理学的に活性な薬剤と組み合わせて使用することができる。そのような他の薬剤は、慣用的に使用される経路および量で、本発明化合物と同時にまたは連続して投与することができる。本発明化合物を1種以上の他の薬剤と同時に使用する場合、本発明の組成物に加えてそのような他の薬剤を含有する医薬組成物が想定される。したがって、本発明医薬組成物には、本発明化合物に加えて、1種以上の他の有効成分も含有するものが挙げられる。
【0065】
本発明化合物と第2の有効成分の重量比は、変えることができ、それぞれの成分の有効用量に応じて決定される。一般に、それぞれの有効用量が使用される。したがって、たとえば、本発明化合物が別の薬剤と組み合わされる場合、本発明化合物と他の薬剤の重量比は、一般に約1000:1~約1:1000の範囲であり、好ましくは約200:1~約1:200である。また、本発明化合物と他の有効成分の組み合わせは、一般に上記の範囲内であるが、それぞれの場合において、それぞれの有効成分の有効用量が使用されるべきである。そのような組み合わせにおいて、本発明化合物および他の有効成分を、別々または一緒に投与することができる。加えて、1種の成分の投与は、別の薬剤の投与の前、同時、または後に行うことができる。
【0066】
本発明化合物と組み合わされる他の薬理学的に活性な薬剤または薬理学的に活性な化合物としては、以下の薬剤または化合物から1種または2種以上が選ばれる;
【0067】
・代謝拮抗薬、たとえば、5-FU、S-1、カペシタビン、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ヒドロキシカルバミド;
・アルキル化薬、たとえば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン;
・プラチナ系薬、たとえば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン;
・タキサン系薬、たとえば、ドセタキセル、パクリタキセル;
・トポイソメラーゼ阻害薬、たとえば、イリノテカン、エトポシド;
・アンスラサイクリン系薬、たとえば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ピラルビシン;
・微小管阻害薬、たとえば、タキソール、エリブリン、ビノレルビン;
・ビンカアルカロイド系薬、たとえば、ビンクリスチン;
・mTOR阻害薬、たとえば、エベロリムス、テムシロリムス;
・チロシンキナーゼ阻害薬、たとえば、スニチニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、レンバチニブ、エルロチニブ;
・VEGF阻害薬、たとえば、ベバシズマブ;
・EGFR阻害薬、たとえば、アファチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ;
・CCR4阻害薬、たとえば、モガムリズマブ;
・ALK阻害薬、たとえば、クリゾチニブ;
・HER2阻害薬、たとえば、トラスツズマブ、ラパチニブ;
・BCR-ABL阻害薬、たとえば、イマニチブ、ダサチニブ;
・PARP阻害薬、たとえば、オラパリブ;
・抗GD2Ab抗体、たとえば、ジヌツキシマブ;
・CDK4/6阻害剤、たとえば、パルボシクリブ;
・膜状分化抗原標的薬、たとえば、イブリツモマブチウキセタン、リツキシマブ;
・抗エストロゲン剤、たとえば、タモキシフェン、トレミフェン;
・抗アンドロゲン剤、たとえば、カソデックス、イクスタンジ、アーリーダ;
・LH-RHアゴニスト、アンタゴニスト製剤、たとえば、ゴセレリン、リュープロレリン;
・プロゲステロン製剤、たとえば、メドロキシプロゲステロン;
・アロマターゼ阻害剤、たとえば、アナストロゾール、エキセメスタン;
・免疫チェックポイント阻害剤、たとえば、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ;
・RANKL阻害剤、たとえば、デノスマブ;
・抗生物質、たとえば、アモキシシリン、セフカペンピボキシル塩酸塩、クラリスロマイシン、ブレオマイシン、ミノサイクリン、レボフロキサシン;
・抗真菌薬、たとえば、ミコナゾール、イトラコナゾール;
・抗ウイルス薬、たとえば、バラシクロビル、アシクロビル;
・合成副腎皮質ホルモン剤、たとえば、デキサメタゾン;
・5-HT3受容体拮抗薬、たとえば、カイトリル、グラニセトロン、ナゼア、オンダンセトロン;
・NK1受容体拮抗薬、たとえば、イメンド、プロイメンド;
・D2受容体拮抗薬、たとえば、ナウゼリン、プリンペラン;
・GABAA受容体作動薬、たとえば、プロポフォール、フェノバルビタール;
・抗コリン薬、たとえば、ブスコパン、チアトン、ガストロゼピン;
・乳酸菌製剤、たとえば、ラクトミン、ビオラクチス、ビオフェルミン;
・便秘薬、たとえば、プルゼニド、アローゼン、ラキソベロン、アミティーザ、マグミット;
・利尿剤、たとえば、ヒドロクロロチアジド、フロセミド、スピロノラクトン、サムスカ;
・オピオイド鎮痛薬、たとえば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、リン酸コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、ペンタゾシン;
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、たとえば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチン、またはゾメピラク;
・解熱鎮痛剤、たとえば、アセトアミノフェン;
・ステロイド薬、たとえば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン;
・COX-2阻害剤、たとえば、ロフェコキシブ、セレコキシブ;
・NMDA受容体拮抗薬、たとえば、ケタミン;
・バルビツール酸系鎮静薬、たとえば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール、チオペンタール;
・鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、たとえば、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム;
・ナトリウムチャネル遮断薬、たとえば、リドカイン;
・カルシウムチャネル遮断薬、たとえば、ジコノチド、ゾニサミド、ミベフラジル;
・抗てんかん薬、たとえば、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン;
・三環系抗うつ薬、たとえば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン;
・抗けいれん薬、たとえば、ラモトリギン、トピラマート、バルプロ酸塩;
・局所麻酔薬、たとえば、メキシレチン;
・向精神薬、たとえば、テトラヒドロカンナビノール、カンナビノイド;
・α2-アドレナリン受容体拮抗薬、たとえば、メキシレチン;
・鎮静薬、たとえば、グルテチミド、メプロバメート、メタカロン、ジクロラルフェナゾン;
・抗ヒスタミン薬、たとえば、アレグラ、アレジオン、ポララミン;
・ビタミンA誘導体、たとえば、イソトレチノイン;
・骨格筋弛緩薬、たとえば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール、オルフェナドリン;
・神経弛緩薬、たとえば、ドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クエチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノックス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン、パリンドレ、エプリバンセリン、オサネタント、リモナバント、メクリネルタント、Miraxion(登録商標)、サリゾタン;
・セロトニン再取り込み阻害薬、たとえば、セルトラリン、セルトラリンの代謝物であるデスメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンのデスメチル代謝物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラムの代謝物であるデスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l-フェンフルラミン、フェモキセチン、イホキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミン、トラゾドン;
・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害薬、たとえば、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロピオン;
このような併用により、治療において相乗効果を含む優れた効果を発揮する。
【0068】
製造法
本発明化合物の製造法について以下に説明する。なお、以下の方法は、本発明化合物の製造法の例示であり、これに限定されるものではない。
【0069】
本明細書中において、以下の略号は下記の意味で用いられる:
DCM ジクロロメタン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMA N,N-ジメチルアセトアミド
DME 1,2-ジメトキシエタン
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
e.e. エナンチオマー過剰率
ESI エレクトロスプレー・イオン化
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Ex 実施例
HOBT 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC 液体クロマトグラフィー
LG 脱離基
tR 保持時間
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MHz メガヘルツ
MS 質量分析
NMR 核磁気共鳴
rt 室温
T3P 無水プロピルホスホン酸(Cyclic Trimer(登録商標))
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
UV 紫外線
【0070】
各工程で得られた化合物は反応液のままか、または粗生成物として得た後に、次反応に用いることもできる、あるいは、各工程で得られた化合物を、常法に従って、反応混合物から濃縮、晶出、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィー、分取HPLCなどの慣用される方法を適宜選択し、または組み合わせて単離および/または精製することができる。また、塩を形成しうる中間体は塩として得てもよく、また塩として反応に用いてもよい。
【0071】
各工程の原料や試薬の化合物が市販されている場合には、市販品をそのまま用いることができる。
【0072】
反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常-78℃~300℃、好ましくは-78℃~150℃である。実施例中の「室温」は通常約10℃~約35℃の範囲を示す。
【0073】
各工程の反応において、反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分~48時間、好ましくは10分~8時間である。反応は薄層クロマトグラフィー(TLC)等でモニターするが、反応時間は例示に過ぎない。
【0074】
各工程の反応において、圧力は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常1気圧~20気圧、好ましくは1気圧~3気圧である。
【0075】
各工程の反応において、これらの反応は、無溶媒あるいは適当な溶媒に溶解または懸濁しておこなわれる。通常、好ましくは不活性溶媒中で行われる。これらの反応または用いられる試薬に悪影響を及ぼさず、かつ該試薬を少なくともある程度溶解する限り、用いる溶媒の性質に関して特別な制限はない。適した溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭素系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル、およびベンゾニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシド、およびスルホランなどのスルホキシド類、水又はこれらの混合溶媒等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの溶媒は当業者に公知である種々の反応条件に応じて適宜選択される。これらの溶媒のうち、DMF、DMA 、DMSO、THF、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、アセトニトリル、DCM、ジクロロエタン、およびクロロホルムが好ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0076】
各工程の反応において、「塩基」とは例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアミド;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert-ブトキシドなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の低級アルコキシド;n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、メチルリチウムなどのアルキルリチウム;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩;トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、N,N-ジメチルアニリンなどのアミン;ピリジン、イミダゾール、2,6-ルチジンなどの塩基性ヘテロ環化合物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの塩基のうち、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、DBN、DABCO、ピリジン、ルチジン、コリジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、水酸化バリウム、および炭酸セシウムが好ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0077】
各工程の反応において、「酸」とは例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸及びp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸ピリジニウムなどの有機酸などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの酸のうち、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、酢酸、クエン酸が好ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
各工程において、特に記載の無い限り、官能基の保護または脱保護反応は、自体公知の方法、例えば、Wiley-Interscience社2007年刊「Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed.」(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著);Thieme社2004年刊「Protecting Groups 3rd Ed.」(P.J.Kocienski著)などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
【0079】
各工程において、特に記載の無い限り、自体公知の方法、例えば、第5版実験化学講座、13巻~19巻(日本化学会編);新実験化学講座、14巻~15巻(日本化学会編);精密有機化学 改訂第2版(L. F. Tietze,Th. Eicher、南江堂);改訂 有機人名反応そのしくみとポイント(東郷秀雄著、講談社)などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
【0080】
各工程の反応において、例えば、Biotage社製InitiatorまたはBiotage Initiator+などのMicrowave合成装置を用いたマイクロ波反応を行うことがある。
【0081】
単離された化合物の構造および純度は、TLC(Merckシリカゲル60F254プレコートTLCプレート、またはMerck NH2 F254プレコートHPTLCプレート)、マススペクトロメトリー、HPLC(LC-MS)、IRまたはNMRのうちの少なくとも1種の技法によって確認する。収率は、例示のためだけに示す。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Biotage SNAP KP-Sil、Biotage SNAP Isolute NH2、Merckシリカゲル60(230~400メッシュ(ASTM))、Fuji Silysia Chromatorex(商標)NH-DM1020およびNH-DM2035、WAKOワコーゲルC300-HG、山善Hi-FLASHカラム、またはYMC DispoPack-SILを用いて行う。イオン交換クロマトグラフィーは強陽イオン交換カートリッジ(ISOLUTE (登録商標) SCX, 1 g/6 mL, Biotage社)、または強陰イオン交換カートリッジ(ISOLUTE (登録商標) PE-AX, 1 g/6 mL, Biotage社)を用いて行う。
【0082】
低分解能マススペクトルデーター(ESI)は、以下の装置と条件で得る:装置;ZQまたはZMDマススペクトロメーターとUV検出器付きウォーターズ アライアンス(Alliance) HPLC システム。NMRデータは、特に明示しない限り、溶媒として重水素化クロロホルム(99.8%D)またはジメチルスルホキシド(99.9%D)を用いて400MHz(JEOL JNM-ECZ400S分光計)で測定し、データは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して、parts per million(ppm)で示す。使用した慣用略語は、s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br.=ブロードなどである。化学記号は、M(モル/リットル)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)の通常の意味を示す。製造したそれぞれの化合物は、一般にChemDraw(Professional, PerkinElmer Informatics, Inc.)によって命名する。
【実施例0083】
工程1:2-((5-ブロモ-2-クロロピリミジン-4-イル)アミノ-2-メチルプロパン-1-オール
【化5】
【0084】
2-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール(12.7g、142mmol)とジイソプロピルエチルアミン(27.5mL、158mmol)のアセトニトリル(150mL)溶液に氷浴下で5-ブロモ-2,4-ジクロロピリミジン(18.0g、79mmol)の粉末を加え、得られた混合液を60℃に加熱して4時間撹拌する。室温に戻した後、水(300mL)で希釈して酢酸エチル(100mL x 3)で抽出、硫酸ナトリウムで乾燥後に濾過し、その濾液を濃縮して粗生成物を得る。粗生成物を酢酸エチル(50mL)に加熱溶解し、ヘキサン(100mL)を加えて沈殿物を得る。沈殿物を濾取し、ヘキサンで洗浄することで、2-((5-ブロモ-2-クロロピリミジン-4-イル)アミノ-2-メチルプロパン-1-オール(14.4g、51.2mmol)を薄黄色固体として得る(収率65%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.13 (s, 1H), 5.69 (s, 1H), 3.74 (s, 2H), 1.46 (s, 6H). 水酸基のピークは観測されない。
MS (ESI) m/z: 279.9 (M+H)+.
【0085】
工程2:4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド
【化6】
【0086】
2-((5-ブロモ-2-クロロピリミジン-4-イル)アミノ-2-メチルプロパン-1-オール(20.0g、71.2mmol)、4-アミノベンズアミド(15.5g、114mmol)およびパラトルエンスルホン酸一水和物(1.36g、7.12mmol)の1,4-ジオキサン(150mL)混合液を80℃から90℃に加熱して7日間撹拌する。室温に戻した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH7に調整する。得られる沈殿物を濾取し、1,4-ジオキサン(100mL)次いで、水(100mL)で洗浄し、粗生成物を固体として得る。その粗生成物の固体を1,4-ジオキサン/水(1/1、100mL)中で懸濁させ、沈殿物を濾取し、水(100mL)次いで、酢酸エチル(80mL)で洗浄し、得られた固体を減圧下、50℃で乾燥することで、4-((5-ブロモ-4-((1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンズアミド(22.5g、59.1mmol)を白色固体として得る(収率83%)。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.48 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.74-7.84 (m, 5H), 7.15 (s, 1H), 5.93 (s, 1H), 5.28 (br, 1H), 3.49 (s, 2H), 1.44 (s, 6H).
MS (ESI) m/z: 379.9 (M+H)+.
【0087】
薬理学的アッセイ:
リン酸化酵素アッセイ:
ヒトVRK-1タンパク質 (ActiveMotif)を用いたLANCE TR-FRET assayにより被験化合物のリン酸化活性阻害能を測定する。VRK-1タンパク質, ULight-CREBtide、ATP (Km, 1mM)、被験化合物をAssay buffer (100 mM KCl, 2.5 mM MgCl2, 2 mM DTT, 1 mM EGTA, 0.01% Brij L23, 50 mM HEPES, pH7.5)で最適濃度に希釈し、室温で2時間反応させる。EDTAおよびEu-labeled anti-phospho CREB antibodyを含むDilution buffer (137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 0.01% Tween 20, 10 mM HEPES, pH7.5)を添加し、30分間室温暗黒下でインキュベーションする。反応液はEnvision (Perkinelmer)を用いてEx320 nm/Em665 nmで蛍光量を測定する。スタウロスポリンを100%阻害のコントロールとし、相対比によって被験化合物のIC50値を決定する。
試験した本発明の化合物は、ヒトVRK-1タンパク質に対し強い活性を有する。実施例1化合物はIC50=0.18 microM(Km ATP)の活性を示す。
【0088】
AlphaScreen を用いた細胞内Histone H3 リン酸化アッセイ:
HEK293細胞を用いて、被験化合物の細胞内Histone H3のリン酸化阻害能を測定する。アッセイにはAlphaScreen SureFire Histone H3 (p-Ser10) Assay Kit (PerkinElmer)とAlphaScreen Protein A Kit (PerkinElmer)を用いる。細胞を96well plateに2.5x104 cells/well播種し、37℃/5% CO2の条件で6~8時間培養する。細胞を同調させるために、終濃度0.4 M、0.1% DMSOとなるように培地で調整したNocodazole溶液を添加し、37℃/5% CO2の条件で16~18時間培養する。被験化合物を培地で希釈して培養細胞に添加後、37℃/5% CO2の条件で30分間培養する。培地を除去後50 L/well Lysis buffer (PerkinElmer)を添加し、室温で1分間Plate shakerで撹拌後、-80℃冷凍庫で1~2時間凍結する。凍結Lysateは水で至適濃度に希釈して細胞を破壊した後にアッセイプレートに移し、Acceptor Beadsと抗体溶液を混ぜ室温暗黒下で2時間反応させる。その後Donor Beadsを加え室温暗黒下で2時間反応させる。反応サンプルの蛍光シグナルはEnVision(PerkinElmer)を用いて測定する。スタウロスポリンを100%阻害のコントロールとし、相対比によって被験化合物のIC50値を決定する。
試験した本発明の化合物は、HEK293細胞におけるHistone H3のs10におけるリン酸化を強く阻害する。実施例1化合物はIC50=0.16 microMの活性で阻害する。
【0089】
ヒトドフェチリド結合アッセイ:
ヒトHERG発現HEK293S細胞を施設内で調製し、培養・増殖させる。収集した細胞を、50 mM Tris-HCl(4℃でpH7.4)に懸濁し、手持式Polytron PT 1300Dホモジナイザーを用いて氷上、20秒間ホモジナイズする(15,000 rpm x 10秒)。そのホモジネートを48,000×g、4℃で20分間遠心分離する。その後、ペレットを同じように再懸濁してホモジナイズし、同様にもう一度遠心分離する。最終ペレットを、適量のBuffer (complete EDTA free protease inhibitor cocktailを含む50 mM Tris-HCl、10 mM KCl、1 mM MgCl2 (4℃でpH7.4))に再懸濁し、ホモジナイズし、少量ずつ小分けし、使用するまで-80℃で貯蔵する。この小分けした膜画分をBCAタンパク質アッセイキット(PIERCE)、およびSpectraMaxプレートリーダー(Moleculardevice)を使ったタンパク質濃度定量に用いる。結合アッセイは、384ウェルプレートにおいて総量30 microLで行う。結合活性は、PHERAstar(BMG LABTECH)で蛍光偏光技術を用いて測定する。10 microLの被験化合物を10 microLの蛍光リガンド(Cy3Bで標識した6 nMのドフェチリド誘導体) および10 microLの膜ホモジネート(6 micro gramタンパク)と室温120分間インキュベーションする。非特異的な結合は、最終濃度で10 microMのE-4031 (hERG channel blocker)によって求める。
試験した本発明の化合物は高いヒトドフェチリド結合のIC50値を示す。高いヒトドフェチリド結合活性は、心血管有害事象の危険を軽減する指標となる。
【0090】
代謝安定性アッセイ:
ヒト肝ミクロソーム(HLM)中の化合物の代謝安定性を評価する。
試験化合物(1 microM)を、96ディープウエルプレートにおいて37℃で100 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)中、1 mM MgCl2および0.61 mg protein/mL HLM (Xenotech)と共に5-10分間インキュベーションする。反応混合物にNADPH生成システム(β-NADP+、イソクエン酸、イソクエン酸脱水素酵素)を加えて代謝反応を開始させる。反応開始から0,10,30,60分後にサンプルを採取し、内部標準を含有するアセトニトリル溶液で抽出する。析出したタンパク質を遠心分離機(2000 rpm、15分)で沈降する。上澄みの化合物量を、LC/MS/MSシステムで測定する。
【0091】
半減期値は、化合物/内部標準のピーク面積比の自然対数を時間に対してプロットして得る。各時点を通して、最良適合直線の勾配から消失速度定数(kel)を得る。Well-stirred modelに従って半減期(T1/2)およびin vitro固有クリアランス(CLint)を算出する。
{数1}
T1/2 (min)=0.693 /kel(min-1)
{数2}
CLint(mL/min/kg) = kel x (microsomal protein concentration (mg/mL))-1 x (21 g Liver wt / kg body wt) x (45 mg microsomal protein / g liver wt)
本発明の化合物は、好ましい安定性を示し、これは上述の実用性を示す。
【0092】
薬物相互作用アッセイ:
本試験は、ヒト肝ミクロソームの各CYP分子種に対する化合物の阻害能を測定する。各CYP分子種の基質(フェナセチン・ブプロピオン塩酸塩・アモジアキン二塩酸塩二水和物・ジクロフェナクナトリウム塩・(S)-メフェニトイン・ブフラロール・ミダゾラム)を必要濃度混合し、基質カクテルとして使用する。この手法では、終濃度0.05 mg protein/mLミクロソーム中の基質カクテルからの代謝物生成の阻害率%を実質的に求める。
段階希釈した被験化合物は、ミクロソームバッファー混合液(0.5 Mリン酸カリウム緩衝液pH7.4、165 mM塩化マグネシウム水溶液、ヒト肝ミクロソーム)と混合し、37℃5分間プレプレインキュベーションする。その後、カクテル基質溶液を添加し、37℃30分間プレインキュベーションする。さらにその後、13mmol/L β-NADPH水溶液を添加し反応を開始し、37℃10分間反応させる。メタノールを添加することで反応を停止し、内部標準物質フェニトイン溶液を添加して適切な濃度にメタノールで希釈する。3000rpm、4℃で10分間遠心を行い、その上清を採取する。
【0093】
上清中の代謝物の濃度は、LC/MS/MSシステムにより測定する。薬物-薬物相互作用の程度は、試験化合物の存在下または非存在下で代謝物の生成%に基づいて解釈する。
本発明の化合物は、好ましい安定性を示し、これは上述の実用性を示す。
【0094】
血漿タンパク結合:
試験化合物(1 microM)の血漿タンパク結合は、96ウェルプレートタイプの装置を用いて平衡透析法により測定する。HTD96a(商標)、すなわち再生セルロース膜(分子量カットオフ12,000~14,000、22 mm×120 mm)を超純水に4℃一晩浸し、次いで30%エタノールに15分間以上浸してから超純水で洗浄し、最後に透析緩衝液(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)に20分間浸す。ヒト、Sprague-Dawleyラット、およびビーグル犬の凍結血漿を使用する。透析装置を組み立て、透析膜で2分割された各ウェルの片側に化合物を入れた血漿150 microLを加え、その反対側のウェルに透析緩衝液150 microLを加える。150 rpm、37℃で4時間インキュベーションした後、血漿と緩衝液を採取する。血漿中および緩衝液中の化合物を、内部標準化合物を含む300 microLのアセトニトリル/メタノール(1:1)で抽出する。超音波処理し2000rpm,15分間遠心後、その上清に含まれる化合物の濃度をLC/MS/MS分析で決定する。
化合物の非結合率は、次式(A)または(B)で計算する:
{数3}
(A) fu = 1-{ ( [血漿]eq - [緩衝液]eq ) / ( [血漿]eq)}
式中、[血漿]eq および [血漿]eqは、それぞれ血漿中と緩衝液中の化合物濃度を示す。
(B) {数4}
【0095】
式中、Cpは、血漿試料中の化合物のピーク面積であり;
Cis,pは、血漿試料中の内部標準のピーク面積であり;
Cbは、緩衝液試料中の化合物のピーク面積であり;
Cis,bは、緩衝液試料の内部標準のピーク面積であり;
4および4/3は、それぞれ血漿および緩衝液で希釈率の逆数である。
本発明の化合物は、好ましい血漿タンパク結合を示し、これは上述の実用性を示す。
【0096】
平衡状態における水溶性試験:
各化合物のDMSO溶液(2 microL, 30 mM)を96ウェルガラス底プレートの各ウェルに分注する。リン酸塩緩衝液(50 mM, pH 6.8)、あるいは人工胃液(pH 1.2)または空腹時人工腸液(pH 6.5)、198 microLを各ウェルに添加し、振とうしながら37℃で24時間インキュベートする。振とう後、析出した固体を倒立偏光顕微鏡で観察して結晶度を判定する。その後、ポリカーボネートメンブレンフィルターを用いて遠心ろ過(2000×g, 10分間)を行い、濾液中の化合物の濃度をグラジエント溶出法によりUPLCで測定する。 (参考文献: J. Pharm. Sci., 2006, 95, 2115-2122)
【0097】
本出願に引用されたすべての刊行物(登録特許、特許出願、および学術論文を包含するが、これらに限定されるものではない)は、参照により本明細書中にその全体がそれぞれ組み込まれる。開示した実施形態を参照して本発明を記載したが、詳細に述べた具体的な実験は本発明の例示に過ぎないことを当業者は容易に理解できるであろう。本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変更を加えられうると理解される。したがって、本発明は以下の特許請求項によってのみ限定される。
本発明の化合物は、Vaccinia-related kinase 1(VRK-1)が関与する病態または障害、特に、癌、小児がん、網膜芽腫、胃芽腫、肝芽腫、腺腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、結腸癌、表皮癌、濾胞癌、尿生殖路癌、神経膠芽細胞腫、ホジキン病、頭頸部癌、肝癌、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、白血病、多発性骨髄腫, 肺腺癌、肺癌、リンパ障害、悪性リンパ腫、造血器腫瘍、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳頭癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、胆のう癌、肉腫、小細胞癌、精巣癌、奇形癌、甲状腺癌、未分化癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、脊髄性筋萎縮症、高血圧、神経変性、血管形成、肺線維症、糖尿病、網膜症、マラリア、ウイルス感染症、炎症性疾患、疼痛および自己免疫疾患、およびアレルギー、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、の予防または治療に有効である。