(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027231
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】回転電機及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20220203BHJP
H02K 1/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H02K1/18 E
H02K1/04 A
H02K1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131115
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牧志 渉
(72)【発明者】
【氏名】名和田 一理
(72)【発明者】
【氏名】西井 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】上辻 清
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA26
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE04
5H601GA02
5H601GA37
5H601GA40
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GC05
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD08
5H601GD12
5H601GD13
5H601GD22
5H601HH13
5H601KK08
5H601KK21
5H601KK30
(57)【要約】
【課題】電磁鋼板の特性低下を抑制しつつ積層された複数の電磁鋼板を固定する。
【解決手段】ステータコア31は、筒状のヨーク32と、ヨーク32からヨーク32の径方向に延在する複数のティース33と、ヨーク32の軸線方向に沿った断面においてヨーク32の内側に向けて開口する凹状をなす凹部36hと、を備える。ティース33は、樹脂部材40によって被覆されている。樹脂部材40の外側からティース33にコイルが巻回されている。樹脂部材40の一部は、凹部36hの内部に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板を積層したステータコア及びコイルを有するステータと、
前記コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備える回転電機であって、
前記ステータコアは、
筒状のヨークと、
前記ヨークから前記ヨークの径方向に延在する複数のティースと、
前記ヨークの軸線方向に沿った断面において前記ヨークの内側に向けて開口する凹状をなす凹部と、を備え、
前記ティースは、樹脂部材によって被覆されており、
前記コイルは、前記樹脂部材の外側から前記ティースに巻回されており、
前記樹脂部材の一部は、前記凹部の内部に配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
複数の電磁鋼板を積層したステータコア及びコイルを有するステータと、
前記コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備える回転電機であって、
前記ステータコアは、
筒状のヨークと、
前記ヨークから前記ヨークの径方向に延在する複数のティースと、
前記ヨークの軸線方向に沿った断面において前記ヨークの内側に向けて開口する凹状をなす凹部と、を備え、
前記ヨーク及び前記ティースの少なくとも一方は、樹脂部材によって被覆されており、
前記コイルは、前記樹脂部材を介さずに前記ティースに巻回されており、
前記樹脂部材の一部は、前記凹部の内部に配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
前記樹脂部材は、前記ステータコアと前記コイルとを絶縁するインシュレータである請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ティースは、前記コイルが巻回される巻回部と、前記コイルが巻回されない非巻回部と、を備え、
前記巻回部は、前記樹脂部材から露出しており、
前記非巻回部は、前記樹脂部材によって被覆されており、
前記凹部は、前記非巻回部に位置している請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ステータコアは、前記ヨークと前記ティースとを繋ぐ湾曲部を備え、
複数の前記電磁鋼板は、第1湾曲部を備える第1電磁鋼板と、前記軸線方向の一方側からみたときに前記第1湾曲部よりも小さい曲率を有する第2湾曲部を備える第2電磁鋼板と、を含み、
前記湾曲部は前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部を含み、
前記第1電磁鋼板及び前記第2電磁鋼板は、前記軸線方向で隣り合って積層されており、
前記凹部は、前記軸線方向で隣り合った前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部によって形成されている請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ヨークは、
前記軸線方向に沿った断面において前記ヨークの外側に向けて開口する凹状をなす外側凹部を備え、
前記外側凹部が形成される部分での前記ヨークの径方向における寸法が、前記外側凹部が形成されない部分での最小寸法以上であり、
前記樹脂部材の一部は、前記外側凹部の内部に配置されている請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
複数の電磁鋼板を積層したステータコア及びコイルを有するステータと、
前記コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備える回転電機の製造方法であって、
前記ステータコアは、
筒状のヨークと、
前記ヨークから前記ヨークの径方向に延在する複数のティースと、
前記ヨークの軸線方向に沿った断面において前記ヨークの内側に向けて開口する凹状をなす凹部と、を備え、
基材から打ち抜いた前記電磁鋼板を前記ヨークの軸線に対して周方向の位置を変位させつつ積層することにより、前記ステータコアに前記凹部を形成し、
前記凹部の内部を含んで樹脂部材を配置することにより、前記樹脂部材によって前記ヨーク及び前記ティースの少なくとも一方を被覆し、
前記ヨーク及び前記ティースの少なくとも一方が前記樹脂部材によって被覆された後、前記コイルを前記ティースに巻回することを特徴とする回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機としては、ステータコア及びコイルを有するステータと、コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備えたものが知られている。ステータコアは、筒状のヨークと、ヨークからヨークの径方向に延在する複数のティースと、を備えている。コイルはティースに巻回されている。
【0003】
また、ステータコアは、複数の電磁鋼板が積層されて構成されている。複数の電磁鋼板の固定方法としては、例えば、特許文献1に記載されるように、積層した複数の電磁鋼板の積層方向の端部を押圧することによるかしめ固定が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積層された複数の電磁鋼板をかしめ固定によって固定した場合、押圧に伴って複数の電磁鋼板に応力が加わることになるため、電磁鋼板の特性低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁鋼板の特性低下を抑制しつつ積層された複数の電磁鋼板を固定できる回転電機及び回転電機の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、複数の電磁鋼板を積層したステータコア及びコイルを有するステータと、前記コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備える回転電機であって、前記ステータコアは、筒状のヨークと、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延在する複数のティースと、前記ヨークの軸線方向に沿った断面において前記ヨークの内側に向けて開口する凹状をなす凹部と、を備え、前記ティースは、樹脂部材によって被覆されており、前記コイルは、前記樹脂部材の外側から前記ティースに巻回されており、前記樹脂部材の一部は、前記凹部の内部に配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する回転電機は、複数の電磁鋼板を積層したステータコア及びコイルを有するステータと、前記コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備える回転電機であって、前記ステータコアは、筒状のヨークと、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延在する複数のティースと、前記ヨークの軸線方向に沿った断面において前記ヨークの内側に向けて開口する凹状をなす凹部と、を備え、前記ヨーク及び前記ティースの少なくとも一方は、樹脂部材によって被覆されており、前記コイルは、前記樹脂部材を介さずに前記ティースに巻回されており、前記樹脂部材の一部は、前記凹部の内部に配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する回転電機の製造方法は、複数の電磁鋼板を積層したステータコア及びコイルを有するステータと、前記コイルに電流が流れることで回転可能なロータと、を備える回転電機の製造方法であって、前記ステータコアは、筒状のヨークと、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延在する複数のティースと、前記ヨークの軸線方向に沿った断面において前記ヨークの内側に向けて開口する凹状をなす凹部と、を備え、基材から打ち抜いた前記電磁鋼板を前記ヨークの軸線に対して周方向の位置を変位させつつ積層することにより、前記ステータコアに前記凹部を形成し、前記凹部の内部を含んで樹脂部材を配置することにより、前記樹脂部材によって前記ヨーク及び前記ティースの少なくとも一方を被覆し、前記ヨーク及び前記ティースの少なくとも一方が前記樹脂部材によって被覆された後、前記コイルを前記ティースに巻回することを特徴とする。
【0010】
上記の各構成及び上記方法によれば、ヨークやティースを被覆する樹脂部材の一部が、ステータコアの凹部の内部に配置されることにより、凹部を含まない状態で樹脂部材がヨークやティースを被覆する場合よりも、被覆面積を増大させることができる。そのため、樹脂部材によって複数の電磁鋼板を強固に固定できる。そして、かしめ固定以外の方法によって複数の電磁鋼板を固定できるため、電磁鋼板の特性低下を抑制しつつ積層された複数の電磁鋼板を固定できる。
【0011】
また、基材から打ち抜いた電磁鋼板を用いる場合、電磁鋼板は打ち抜き方向に沿ってわずかに湾曲することがある。仮に電磁鋼板を表裏の入れ替えをしつつ積層する場合、積層された複数の電磁鋼板の湾曲方向が揃わないため、電磁鋼板間に間隙が生じるおそれがある。そこで、上記方法によれば、電磁鋼板をヨークの軸線に対して周方向の位置を変位させつつ積層することにより、ステータコアに凹部を形成できる。そのため、積層された複数の電磁鋼板の湾曲方向を揃えることができるため、電磁鋼板間での間隙の発生を抑制できる。
【0012】
回転電機において、前記樹脂部材は、前記ステータコアと前記コイルとを絶縁するインシュレータであることが好ましい。
上記構成によれば、樹脂部材とインシュレータとを別部材として搭載する場合と比較して、搭載する部材を樹脂部材だけにできるため、製造工程を簡略化できる。
【0013】
回転電機において、前記ティースは、前記コイルが巻回される巻回部と、前記コイルが巻回されない非巻回部と、を備えてもよい。この場合、前記巻回部は、前記樹脂部材から露出しており、前記非巻回部は、前記樹脂部材によって被覆されており、前記凹部は、前記非巻回部に位置していることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、コイルが巻回されないことによって非巻回部の周りに生じる空間を、複数の電磁鋼板を固定するための樹脂部材の配置スペースとして活用できる。
回転電機において、前記ステータコアは、前記ヨークと前記ティースとを繋ぐ湾曲部を備え、複数の前記電磁鋼板は、第1湾曲部を備える第1電磁鋼板と、前記軸線方向の一方側からみたときに前記第1湾曲部よりも小さい曲率を有する第2湾曲部を備える第2電磁鋼板と、を含み、前記湾曲部は前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部を含み、前記第1電磁鋼板及び前記第2電磁鋼板は、前記軸線方向で隣り合って積層されており、前記凹部は、前記軸線方向で隣り合った前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部によって形成されているものであってもよい。
【0015】
回転電機において、前記ヨークは、前記軸線方向に沿った断面において前記ヨークの外側に向けて開口する凹状をなす外側凹部を備え、前記外側凹部が形成される部分での前記ヨークの径方向における寸法が、前記外側凹部が形成されない部分での最小寸法以上であり、前記樹脂部材の一部は、前記外側凹部の内部に配置されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、凹部及び外側凹部に一部が配置された樹脂部材によって複数の電磁鋼板を固定できる。これにより、ヨークの内側と外側との両側で樹脂部材の被覆面積を増大させることができるため、より強固に樹脂部材によって積層された複数の電磁鋼板を固定できる。また、上記構成によれば、外側凹部が形成される部分でのヨークの径方向における寸法が、外側凹部が形成されない部分での最小寸法以上である。そのため、ヨークの径方向の寸法、すなわちヨーク幅を保ちつつ、外側凹部をヨークに形成できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、電磁鋼板の特性低下を抑制しつつ積層された複数の電磁鋼板を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】ヨークとティースにおける湾曲部付近を拡大して示す断面図。
【
図4】ヨークとティースにおける湾曲部付近を拡大して示す斜視図。
【
図5】ヨークとティースにおける湾曲部付近を拡大して示す断面図。
【
図6】ヨークとティースにおける湾曲部付近を拡大して示す断面図。
【
図8】回転電機に用いる電磁鋼板を基材から打ち抜く方法を説明するための模式図。
【
図9】別例におけるステータコア及び樹脂部材を拡大して示す斜視図。
【
図10】別例におけるヨークとティースにおける湾曲部付近を拡大して示す断面図。
【
図11】別例におけるステータコア及び樹脂部材を拡大して示す斜視図。
【
図12】別例におけるヨークとティースを拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、回転電機及び回転電機の製造方法の一実施形態について、
図1~
図8を用いて説明する。
図1に示すように、回転電機10は、内部空間を有する筒状のハウジング11と、ハウジング11内に収容された電動モータ20と、を備えている。ハウジング11は、板状の第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される有底筒状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。第2ハウジング構成体13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。第1ハウジング構成体12は、周壁13bにおける底壁13aとは反対側の開口を閉塞した状態で第2ハウジング構成体13に連結されている。
【0020】
第1ハウジング構成体12には、ハウジング孔12hが厚み方向に貫通して形成されている。ハウジング孔12hは円孔である。また、第1ハウジング構成体12の内面には、円筒状の第1ボス部12cが突設されている。第2ハウジング構成体13の底壁13aの内面には、円筒状の第2ボス部13cが突設されている。ハウジング孔12h、第1ボス部12c、及び第2ボス部13cは、互いに軸線が一致している。
【0021】
電動モータ20は、ステータ21と、ロータ22と、を備えている。ステータ21及びロータ22はいずれもハウジング11の内部に設けられる。ステータ21は、円筒状のステータコア31と、ステータコア31に巻回されるコイル30と、を有している。ステータコア31は、第2ハウジング構成体13の周壁13bの内周面に固定されている。また、ステータコア31は、複数の電磁鋼板31cを積層することで構成されている。ロータ22は、ステータ21の径方向におけるステータコア31の内側に配置されている。そして、コイル30に電流が流れることで、ロータ22は回転可能となっている。なお、以下では、ステータコア31の軸線が延びる方向を軸線方向といい、軸線方向に直交する方向を径方向という。
【0022】
ロータ22は、筒部材23と、磁性体である永久磁石24と、を備えている。筒部材23は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材23の軸線は、ステータコア31の軸線と一致している。筒部材23は、軸線方向の一方端部に第1開口23aを有し、軸線方向の他方端部に第2開口23bを有している。筒部材23は、金属材料からなり、例えばチタン製である。
【0023】
永久磁石24は、中実円柱状であり、径方向に着磁されている。永久磁石24は、筒部材23の内周面に圧入されることにより筒部材23内に固定されている。永久磁石24の軸線は、筒部材23の軸線と一致している。永久磁石24の軸線方向の長さは、筒部材23の軸線方向の長さより短い。
【0024】
電動モータ20は回転軸25を備えている。回転軸25は、永久磁石24よりも軸線方向の一方側に位置する円柱状の第1軸部26と、永久磁石24よりも軸線方向の他方側に位置する円柱状の第2軸部27と、を有する。第1軸部26及び第2軸部27は例えば金属製である。第1軸部26は、第1小径軸部26aと、第1小径軸部26aと軸線方向で並ぶとともに第1小径軸部26aよりも直径の大きい第1大径軸部26bと、を有する。第1小径軸部26a及び第1大径軸部26bは軸線方向に沿って軸線が延びている。第2軸部27は、第2小径軸部27aと、第2小径軸部27aと軸線方向で並ぶとともに第2小径軸部27aよりも直径の大きい第2大径軸部27bと、を有する。第2小径軸部27a及び第2大径軸部27bは軸線方向に沿って軸線が延びている。第1小径軸部26aと第2小径軸部27aとは同じ寸法の直径を有している。第1大径軸部26bと第2大径軸部27bとは同じ寸法の直径を有している。
【0025】
第1大径軸部26bは、第1ハウジング構成体12におけるハウジング孔12hに挿通されているとともに、第1ボス部12cの内部に位置している。第2大径軸部27bは、第2ボス部13cの内部に位置している。また、第1小径軸部26aは、筒部材23の第1開口23aに挿通されることにより、第1開口23aを閉塞した状態で筒部材23に固定されている。第2小径軸部27aは、筒部材23の第2開口23bに挿通されることにより、第2開口23bを閉塞した状態で筒部材23に固定されている。これにより、第1軸部26及び第2軸部27は、筒部材23及び永久磁石24と一体回転可能である。第1軸部26及び第2軸部27の軸線、すなわち回転軸25の軸線は、筒部材23の軸線と一致している。なお、回転軸25の軸線を軸線Lとして図示している。
【0026】
ロータ22は、一対の空気軸受29によってハウジング11に対して回転可能に支持されている。一対の空気軸受29は、第1ボス部12cの内周面と第1大径軸部26bの外周面との間と、第2ボス部13cの内周面と第2大径軸部27bの外周面との間と、にそれぞれ設けられている。
【0027】
次に、ステータコア31についてさらに詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、ステータコア31は、円筒状のヨーク32と、ヨーク32からヨーク32の径方向に延在する複数のティース33と、を備える。ティース33の各々は、ヨーク32からヨーク32の径方向の内側に延びている。ヨーク32の軸線が延びる方向はステータコア31の軸線が延びる方向と一致する。すなわち、軸線方向はヨーク32の軸線が延びる方向でもある。径方向はヨーク32の径方向でもある。なお、以下では、ヨーク32の軸線に対する周方向を単に周方向という。
【0028】
ステータコア31は、複数の電磁鋼板31cが周方向に並ぶとともに、軸線方向に積層されることで構成されている。各電磁鋼板31cは、円弧状のヨーク部132と、ヨーク部132の周方向の中間部分から径方向の内側に延びるティース部133と、を備える。本実施形態では、電磁鋼板31cが周方向に12個並んでいる。周方向で隣り合う電磁鋼板31cのヨーク部132の端部同士が溶接されることにより、周方向に並ぶ複数の電磁鋼板31cは一体化されている。軸線方向に積層されたヨーク部132によってステータコア31のヨーク32が構成されている。軸線方向に積層されたティース部133によってステータコア31のティース33が構成されている。
【0029】
図2に示すように、ティース33は、軸線方向に延びる矩形板状の本体部34と、本体部34よりも径方向の内側に位置している先端部35と、を備える。本体部34は、コイル30が巻回される巻回部34aと、コイル30が巻回されない非巻回部34bと、を有する。非巻回部34bは、ティース33のうちで巻回部34aと先端部35との間にある部分である。
【0030】
先端部35は、軸線方向に延びる略矩形柱状をなす。また、先端部35は、径方向における本体部34の内側の端部から周方向の両側に延びている。さらに、先端部35は、周方向において隣り合うティース33同士で、周方向にて互いに離間している。
【0031】
図1に示すように、軸線方向におけるステータコア31の両端面を第1端面31a及び第2端面31bとする。第1端面31aは、軸線方向において最も第1ハウジング構成体12側での電磁鋼板31cの端部で構成されている。第2端面31bは、軸線方向において最も第2ハウジング構成体13の底壁13a側での電磁鋼板31cの端部で構成されている。第1端面31aと第2端面31bとの間には、ティース33の周方向内側の端面でもある内側端面31dと、ヨーク32の周方向外側の端面でもある外側端面31eと、が設けられている。内側端面31dは、複数の電磁鋼板31cの周方向内側の端部が積層されて構成されている。内側端面31dは、筒部材23の外周面に沿って延びている。外側端面31eは、複数の電磁鋼板31cの周方向外側の端部が積層されて構成されている。外側端面31eは、第2ハウジング構成体13の周壁13bの内周面に沿って延びるとともに、周壁13bの内周面に固定されている。
【0032】
図4に示すように、ステータコア31は、ヨーク32とティース33とを繋ぐ湾曲部36を備える。湾曲部36は、ティース33の周方向の両側において、ヨーク32とティース33との境界部分に位置する。湾曲部36によって、ヨーク32の内周面であるヨーク内周面32aと、周方向で並ぶティース33の両側面であるティース側面33aと、が繋がれている。
【0033】
図5に示すように、湾曲部36は、軸線方向に複数の電磁鋼板31cが積層されることにより、積層された第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bによって構成されている。第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bは、ヨーク部132とティース部133とを繋いでいる。第1湾曲部136aは、ティース部133の周方向の一方側に位置している。第2湾曲部136bは、ティース部133の周方向の他方側に位置している。第2湾曲部136bは、軸線方向の一方側からみたときに第1湾曲部136aよりも小さい曲率を有する。
【0034】
電磁鋼板31cは、周方向で隣り合う電磁鋼板31c同士で、第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bの位置が反対になっている。
図5に示す周方向で隣り合う3つの電磁鋼板31cのうち、周方向の中間に位置する電磁鋼板31cを第1電磁鋼板体131aといい、第1電磁鋼板体131aの周方向の両側に位置する電磁鋼板31cを第2電磁鋼板体131bという。第1電磁鋼板体131aは、
図5における反時計回り側に第1湾曲部136aを有し、時計回り側に第2湾曲部136bを有する。一方、第2電磁鋼板体131bは、
図5における反時計回り側に第2湾曲部136bを有し、時計回り側に第1湾曲部136aを有する。本実施形態では、第1電磁鋼板体131aと第2電磁鋼板体131bとが周方向で交互になるように6つずつ並んでいる。
【0035】
図5及び
図6に示すように、電磁鋼板31cは、軸線方向で隣り合う電磁鋼板31c同士でも、第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bの位置が反対になっている。
図6には、
図5に示した3つの電磁鋼板31cと周方向の同位置において、これら電磁鋼板31cと軸線方向で隣り合う3つの電磁鋼板31cを示している。
図6に示す3つの電磁鋼板31cでは、周方向の中間に第2電磁鋼板体131bが位置し、第2電磁鋼板体131bの周方向の両側に第1電磁鋼板体131aが位置している。本実施形態では、第1電磁鋼板体131aと第2電磁鋼板体131bとが軸線方向で交互になるように隣り合って積層されている。これにより湾曲部36は、第1湾曲部136aと第2湾曲部136bとが軸線方向で交互に位置して構成される。
【0036】
図4及び
図7に示すように、第2湾曲部136bは、第1湾曲部136aよりもヨーク32の内側に飛び出している。凹部36hは、軸線方向で隣り合った第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bによって形成されている。詳細には、凹部36hは、軸線方向に隣接する3つの電磁鋼板31cにおいて、第1電磁鋼板体131aの第1湾曲部136aと第2電磁鋼板体131bの第2湾曲部136bとが軸線方向に重なることで形成される。そして凹部36hは、2つの第2電磁鋼板体131bにおける第1電磁鋼板体131aと接する端面と、第1電磁鋼板体131aにおけるヨーク32の内側に位置する端部と、で区画形成されている。こうして形成される凹部36hにおいては、第1湾曲部136aを備える第1電磁鋼板体131aが第1電磁鋼板に相当し、第2湾曲部136bを備える第2電磁鋼板体131bが第2電磁鋼板に相当する。
【0037】
凹部36hは、軸線方向に沿った断面においてヨーク32の内側に向けて開口する凹状をなす。すなわち、凹部36hは、ヨーク内周面32a、ティース側面33a、ステータコア31の内側端面31dで囲まれたヨーク32の内側の空間に向けて開口する。軸線方向に第1湾曲部136aと第2湾曲部136bとが交互に並ぶことにより、湾曲部36は軸線方向に並ぶ複数の凹部36hを備えている。
【0038】
なお、
図7は、ティース33の周方向の一方側に位置する湾曲部36での軸線方向に沿った断面を図示している。
図7において、第1電磁鋼板体131aを第2電磁鋼板体131bに変更し、第2電磁鋼板体131bを第1電磁鋼板体131aに変更すれば、ティース33の周方向の他方側に位置する湾曲部36を示す図になる。こうしたティース33の周方向の他方側の湾曲部36においては、軸線方向に隣接する3つの電磁鋼板31cにおいて、第2電磁鋼板体131bの第1湾曲部136aと第1電磁鋼板体131aの第2湾曲部136bとが軸線方向に重なることで形成される。そして凹部36hは、2つの第1電磁鋼板体131aにおける第2電磁鋼板体131bと接する端面と、第2電磁鋼板体131bにおけるヨーク32の内側に位置する端部と、で区画形成されている。こうして形成される凹部36hにおいては、第1湾曲部136aを備える第2電磁鋼板体131bが第1電磁鋼板に相当し、第2湾曲部136bを備える第1電磁鋼板体131aが第2電磁鋼板に相当する。こうしたティース33の周方向の他方側の湾曲部36も、
図7に示すように軸線方向に並んだ複数の凹部36hを備えている。
【0039】
図1及び
図4に示すように、軸線方向に積層された複数の電磁鋼板31cは、樹脂部材40によって固定されている。本実施形態の樹脂部材40は、ヨーク32およびティース33の両方を被覆している。具体的には、ヨーク32の径方向の内側部分及び巻回部34aでの第1端面31a及び第2端面31bと、ティース33の周方向の両側に位置するヨーク内周面32aと、巻回部34aでのティース側面33aと、湾曲部36のヨーク32の内側での端面と、が樹脂部材40によって被覆されている。言い換えると、上記の樹脂部材40による被覆部分以外である、ヨーク32の径方向の外側部分の表面、非巻回部34bの表面、及び先端部35の表面は、樹脂部材40から露出している。樹脂部材40の一部は、軸線方向に並ぶ複数の凹部36hの内部に配置されている。なお、樹脂部材40は、被覆するステータコア31の各部分や凹部36hに密着している。これにより、軸線方向に積層された複数の電磁鋼板31cが樹脂部材40によって固定された状態となっている。また、樹脂部材40は、ティース33毎に設けられている。
【0040】
コイル30は、樹脂部材40の外側から巻回部34aに巻回されている。樹脂部材40によって、ステータコア31とコイル30とが絶縁されている。すなわち、本実施形態の樹脂部材40は、軸線方向に積層された複数の電磁鋼板31cの固定部材と、ステータコア31とコイル30とを絶縁するインシュレータと、を兼ねている。
【0041】
次に、ステータコア31の製造方法について説明する。
図8に示すように、まず第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bを形成する。第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bは金型を用いて基材Bから打ち出されることにより形成される。図示は省略しているが、金型としては、第1電磁鋼板体131aの形を備える第1金型と、第2電磁鋼板体131bの形を備える第2金型と、が用いられる。本実施形態では、1枚の基材Bから周方向に隣り合う第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bが1つずつ打ち出される。図示は省略しているが、
図8の紙面に直交する方向である重力方向での基材Bの下部に収容容器が設置されている。基材Bから打ち出された第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bは、重力方向に落下することで、収容容器の内部に収容される。
【0042】
また、基材Bの打ち出しは、打ち出しが一度行われる毎に、第1金型と第2金型の位置が交換されながら行われる。これにより、1度目の基材Bの打ち出しでは、
図8に実線で示すように、
図8の左側の基材Bから第2電磁鋼板体131bが打ち出され、
図8の右側の基材Bから第1電磁鋼板体131aが打ち出される。2度目の基材Bの打ち出しでは、
図8に二点鎖線で示すように、基材Bでの第1電磁鋼板体131aの打ち出し位置と第2電磁鋼板体131bの打ち出し位置とが交換される。こうして金型の位置の交換が繰り返されつつ基材Bの打ち出しが継続されることにより、第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bが積層位置を交換しながら収容容器の内部に収容されていく。そして、基材Bからの打ち出しが完了すると、収容容器には複数の電磁鋼板31cが積層された積層体が2つ出来上がる。
【0043】
出来上がった各積層体は、重力方向で第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bが交互に積層された状態となる。また、2つの積層体の最下層から最上層において、一方の積層体の第1電磁鋼板体131aと他方の積層体の第2電磁鋼板体131bとが同じ層に位置するとともに、一方の積層体の第2電磁鋼板体131bと他方の積層体の第1電磁鋼板体131aとが同じ層に位置する状態となる。
【0044】
出来上がった2つの積層体から、ヨーク32の軸線に対して周方向で隣り合う複数の電磁鋼板31cが構成される。すなわち、2つの積層体の形成において、第1電磁鋼板体131a及び第2電磁鋼板体131bを互いの積層位置を交換させつつ積層したことは、電磁鋼板31cを周方向の位置を変位させつつ積層したともいえる。
【0045】
本実施形態では、上記の2つの積層体の組を周方向に6組並べる。そして、周方向で隣り合う積層体において、電磁鋼板31cのヨーク部132の端部同士を溶接することで、周方向に並ぶ複数の電磁鋼板31cが一体化されてステータコア31が形成される。なお、各積層体で積層された電磁鋼板31cの第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bによって、各積層体に凹部36hが形成されている。これにより、ステータコア31にも凹部36hが形成される。
【0046】
次に樹脂部材40の形成方法について説明する。
ヨーク32の径方向の内側部分、巻回部34a、及び湾曲部36を囲むように、ステータコア31に型が取り付けられる。この型の中に硬化前の樹脂材が流し込まれる。樹脂材は、凹部36hの内部にも流れ込む。そして、樹脂材が硬化したら、ステータコア31から型が取り外される。これにより、ステータコア31に樹脂部材40が設けられる。樹脂部材40によって、ヨーク32の径方向の内側部分及び巻回部34aでの第1端面31a及び第2端面31bと、ティース33の周方向の両側に位置するヨーク内周面32aと、巻回部34aでのティース側面33aと、湾曲部36のヨーク32の内側での端面と、が被覆される。これにより、軸線方向に積層された複数の電磁鋼板31cは、樹脂部材40によって固定されるため、軸線方向において互いに離間することが抑制される。こうしてヨーク32及びティース33が樹脂部材40によって被覆された後、樹脂部材40の外側から巻回部34aにコイル30が巻回される。
【0047】
次に、本実施形態の作用について説明する。
樹脂部材40の一部は、軸線方向に並ぶ複数の凹部36hの内部に配置されている。これにより、凹部36hを含まない状態で樹脂部材40がヨーク32及びティース33を被覆する場合よりも、被覆面積を増大させることができる。そのため、樹脂部材40によって複数の電磁鋼板31cを強固に固定できる。
【0048】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ヨーク32及びティース33を被覆する樹脂部材40の一部がステータコア31の凹部36hの内部に配置されるため、樹脂部材40によって複数の電磁鋼板31cを強固に固定できる。そして、かしめ固定以外の方法によって複数の電磁鋼板31cを固定できるため、電磁鋼板31cの特性低下を抑制しつつ積層された複数の電磁鋼板31cを固定できる。
【0049】
(2)樹脂部材40は、ステータコア31とコイル30とを絶縁するインシュレータである。そのため、樹脂部材40とインシュレータとを別部材として搭載する場合と比較して、搭載する部材を樹脂部材40だけにできるため、製造工程を簡略化できる。
【0050】
(3)曲率の異なる第1湾曲部136aと第2湾曲部136bを有する電磁鋼板31cを周方向の位置を変位させつつ積層することにより、ステータコア31に凹部36hを形成できる。そのため、基材Bから打ち抜くことで電磁鋼板31cに湾曲が生じたとしても、積層された複数の電磁鋼板31cの湾曲方向を揃えることができるため、電磁鋼板31c間での間隙の発生を抑制できる。
【0051】
(4)仮に軸線方向で隣り合う電磁鋼板31c同士を接着剤で接着すると、電磁鋼板31c間に形成される接着剤層の分だけ電磁鋼板31cの積層数を減少させる必要があるが、本実施形態では、そうした接着剤を用いずに複数の電磁鋼板31cを軸線方向で固定できるため、電磁鋼板31cの積層数の減少による電動モータ20の性能低下を抑制できる。
【0052】
(5)仮に、孔を形成した複数の電磁鋼板31cを積層して、重なった孔の内部に樹脂を流し込むことで複数の電磁鋼板31cを軸線方向に固定する場合、孔の形成に伴って電磁鋼板31cでの磁路幅の減少や工数増大が生じるが、本実施形態では、孔を形成せずに複数の電磁鋼板31cを固定できるため、上記の磁路幅の減少や工数増大を抑制できる。
【0053】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
○ 複数の電磁鋼板31cは、電動工具を使って基材Bを切断する等、打ち抜き以外の方法で形成してもよい。
○ ステータコア31が有するティース33の数を変更してもよい。
【0055】
○ ステータコア31は、上記実施形態よりも少ない数で周方向に分割されたものでもよい。この場合、ステータコア31の各分割部分は、複数のティース部133を備えた複数の電磁鋼板31cが積層されることにより、複数のティース33を備えたものであってもよい。
【0056】
○ ステータコア31は、周方向で分割されない態様であってもよい。この場合、各電磁鋼板31cは、円形枠状のヨーク部132と、ステータコア31が有するティース33と同数のティース部133と、第1湾曲部136aと、第2湾曲部136bと、を備えたものである。そして、軸線方向において第1湾曲部136aと第2湾曲部136bとが重なるように、電磁鋼板31cを周方向の位置を変位させつつ積層する。これにより、ステータコア31に凹部36hを形成できる。
【0057】
○ 電磁鋼板31cの積層は、周方向の位置を変位させつつ行うものに限らない。第1電磁鋼板体131aを裏返すと、第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bの位置が反対になる。裏返した第1電磁鋼板体131aは第2電磁鋼板体131bと同じ形状を有する。そのため、第1電磁鋼板体131aの表裏を入れ替えながら軸線方向に複数の第1電磁鋼板体131aを積層することにより、電磁鋼板31cの積層を行うことも可能である。これにより、軸線方向において第1湾曲部136aと第2湾曲部136bとが重なった状態になるため、ステータコア31に凹部36hを形成できる。
【0058】
○ 軸線方向に積層された複数の電磁鋼板31cは、1つの第1電磁鋼板体131aと1つの第2電磁鋼板体131bとが軸線方向に交互に積層されたものに限らない。例えば、軸線方向に積層された複数の電磁鋼板31cは、複数の第1電磁鋼板体131aの組と複数の第2電磁鋼板体131bの組とが軸線方向に交互に並んだものであってもよいし、2つの第1電磁鋼板体131aによって複数の第2電磁鋼板体131bを軸線方向に挟むように並んだものであってもよい。これら場合も、第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bが軸線方向で隣り合う。そしてこれら第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bによって凹部36hが形成される。
【0059】
○ 凹部36hは、第1湾曲部136a及び第2湾曲部136bの曲率を異ならせること以外で、湾曲部36に形成されていてもよい。例えば、第1湾曲部136aには切欠きを形成する一方で、第2湾曲部136bには切欠きを形成しない。そして、第1電磁鋼板体131aと第2電磁鋼板体131bとが積層されることにより、第1湾曲部136aの切欠きと第2湾曲部136bとによって凹部36hが形成されてもよい。また、例えば、第1湾曲部136aにはヨーク32の内側に突出する突出部を形成する一方で、第2湾曲部136bには突出部を形成しない。そして、第1電磁鋼板体131aと第2電磁鋼板体131bとが積層されることにより、第1湾曲部136aの突出部と第2湾曲部136bとによって凹部36hが形成されてもよい。
【0060】
○ 樹脂部材40は、ステータコア31とコイル30とを絶縁するインシュレータでなくてもよい。この場合の樹脂部材40は、ステータコア31とコイル30との間に介在するものの、厚みの不足等により、ステータコア31とコイル30との絶縁機能までは有さないものが該当する。この変更例においては、樹脂部材40の外側にさらにインシュレータを配置させ、ステータコア31とコイル30との間にインシュレータを介在させてもよい。
【0061】
○ 樹脂部材40は、凹部36hの内部に一部が配置されてさえすれば、ステータコア31を被覆する位置を変更してもよい。
○
図9及び
図10に示すように、湾曲部36が凹部36hを備えることに加えて、ヨーク32が径方向の外側に向けて開口する外側凹部32hを備えてもよい。具体的には、第1電磁鋼板体131aにおけるヨーク部132の径方向の外側端部に切欠部132hを形成する。その一方で、第2電磁鋼板体131bには切欠部132hのような切欠きを形成しない。そして、第1電磁鋼板体131aと第2電磁鋼板体131bとが積層されることにより、第1電磁鋼板体131aにおけるヨーク部132の切欠部132hと第2電磁鋼板体131bにおけるヨーク部132とによって外側凹部32hが形成される。言い換えると、この変更例において、ヨーク32は、軸線方向に沿った断面においてヨーク32の外側に向けて開口する凹状をなす外側凹部32hを備える。
【0062】
この変更例での樹脂部材40は、実施形態での樹脂部材40による被覆箇所に加えて、ヨーク32の径方向の外側部分での第1端面31a及び第2端面31bと、ステータコア31の外側端面31eを被覆する。そして、樹脂部材40の一部は、凹部36hの内部に配置されるとともに、外側凹部32hの内部に配置される。
【0063】
さらに、
図10に示すように、この変更例では、外側凹部32hが形成される部分でのヨーク32の径方向における寸法である第1寸法D1が、外側凹部32hが形成されない部分でのヨーク32の径方向における最小寸法である第2寸法D2以上である。比較のために、ステータコア31の外側端面31eとヨーク内周面32aとを平行に位置させる場合での、ヨーク内周面32a及び湾曲部36の位置を
図10に二点鎖線で示す。この変更例でのヨーク内周面32aは、外側端面31eと平行となる位置よりも径方向の内側に位置している。ヨーク内周面32aは、周方向においてヨーク部132の両端部からティース部133に近づくほど、外側端面31eと平行となる位置から径方向の内側へのとび出し寸法がより大きくなる。これにより、第1電磁鋼板体131aのヨーク部132の径方向の寸法が、周方向においてヨーク部132の両端部からティース部133に近づくほど大きくされる。そして、外側凹部32hが形成される部分でのヨーク部132の径方向の寸法が大きくなるため、第1寸法D1を第2寸法D2以上とできる。
【0064】
上記変更例によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(6)上記変更例によれば、凹部36h及び外側凹部32hに一部が配置された樹脂部材40によって、複数の電磁鋼板31cを固定できる。これにより、ヨーク32の内側と外側との両側で樹脂部材40の被覆面積を増大させることができるため、より強固に樹脂部材40によって複数の電磁鋼板31cを固定できる。また、上記変更例によれば、外側凹部32hが形成される部分でのヨーク32の径方向における第1寸法D1が、外側凹部32hが形成されない部分でのヨーク32の径方向における最小寸法の第2寸法D2以上である。そのため、ヨーク32の径方向の寸法、すなわちヨーク幅を保ちつつ、外側凹部32hをヨーク32に形成できる。
【0065】
(7)ヨーク内周面32aは、周方向においてヨーク部132の両端部からティース部133に近づくほど、外側端面31eと平行となる位置から径方向の内側へのとび出し寸法がより大きくなっている。したがって、径方向の内側に位置するヨーク32を増大させているため、径方向の外側でのヨーク32の増大による大型化を抑制しつつ、ヨーク幅を保つことができる。
【0066】
○ 上記変更例において、第1寸法D1は第2寸法D2未満であってもよい。
○
図11に示すように、凹部36hを非巻回部34bでのティース側面33aに形成してもよい。この場合では、切欠きや突出部などの形成の有無によって、第1電磁鋼板体131aのティース部133と第2電磁鋼板体131bのティース部133とが異なる形状を有する。そして、第1電磁鋼板体131aのティース部133と第2電磁鋼板体131bのティース部133とが軸線方向で重なることにより、軸線方向に沿った断面においてヨーク32の内側に向けて開口する凹状をなす凹部36hが、非巻回部34bのティース側面33aに形成される。すなわち、この変更例での凹部36hは、非巻回部34bに位置している。そして、樹脂部材40の一部は凹部36hの内部に配置される。この変更例での樹脂部材40は、非巻回部34bでのティース側面33a、第1端面31a、及び第2端面31bを被覆する。すなわち、この変更例において、非巻回部34bは樹脂部材40によって被覆されるが、非巻回部34b以外のティース33の部分とヨーク32とが樹脂部材40から露出している。巻回部34aは樹脂部材40から露出している。コイル30は、樹脂部材40を介さずに巻回部34aに巻回されている。なお、コイル30は、巻回部34aに直接巻回されてもよいし、インシュレータをコイル30と巻回部34aとの間に介在させ、インシュレータの外側から巻回部34aに巻回されてもよい。
【0067】
上記変更例によれば、上記実施形態での(1)、(4)、及び(5)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)凹部36hは非巻回部34bに位置している。非巻回部34bは樹脂部材40によって被覆されている。したがって、コイル30が巻回されないことによって非巻回部34bの周りに生じる空間を、複数の電磁鋼板31cを固定するための樹脂部材40の配置スペースとして活用できる。
【0068】
○ 上記変更例において、樹脂部材40によって、非巻回部34b以外のティース33の部分を被覆してもよい。例えば、樹脂部材40は、非巻回部34bに加えて巻回部34aも被覆してもよい。この場合、コイル30は、樹脂部材40の外側からティース33に巻回される。また、上記変更例において、樹脂部材40によって、非巻回部34bに加えて、ヨーク32も被覆してもよい。
【0069】
○ ティース33は、ヨーク32とティース33との境界位置と、巻回部34aと、の間にコイル30が巻回されない非巻回部34bを有してもよい。
○
図12に示すように、凹部36hをヨーク内周面32aに形成してもよい。
図12に示す場合では、第2電磁鋼板体131bのヨーク部132に径方向内側に突出する突出部32gを形成する一方で、第1電磁鋼板体131aのヨーク部132には突出部32gを形成しない。そして、第1電磁鋼板体131aのヨーク部132と第2電磁鋼板体131bのヨーク部132が軸線方向で重なることにより、軸線方向に並ぶ2つの突出部32gと2つの突出部32gの間に位置する第1電磁鋼板体131aのヨーク部132の径方向の内周面とによって、凹部36hが区画形成される。この変更例での凹部36hは、軸線方向に沿った断面においてヨーク32の内側に向けて開口する凹状をなし、ヨーク内周面32aに形成される。そして、樹脂部材40の一部は凹部36hの内部に配置される。この変更例での樹脂部材40は、ヨーク内周面32aを被覆する。また、樹脂部材40は、ヨーク内周面32aと共に巻回部34aを被覆してもよいし、被覆しなくてもよい。樹脂部材40が巻回部34aを被覆する場合は、樹脂部材40の外側からコイル30が巻回部34aに巻回される。樹脂部材40が巻回部34aを被覆しない場合は、樹脂部材40を介さずにコイル30が巻回部34aに巻回される。
【0070】
○ 凹部36hは、巻回部34aでのティース側面33a、先端部35でのティース側面33a、及びステータコア31の内側端面31dのいずれかに形成されてもよい。また、凹部36hは、湾曲部36、ヨーク内周面32a、巻回部34aでのティース側面33a、非巻回部34bでのティース側面33a、先端部35でのティース側面33a、及びステータコア31の内側端面31dの複数箇所に形成されてもよい。この場合も、凹部36hは、軸線方向に沿った断面においてヨーク32の内側に向けて開口する凹状をなしたものとなる。そして、形成された凹部36hの全てを含むように樹脂部材40を配置させる。
【0071】
○ 上記実施形態では、インナーロータタイプの電動モータ20について説明したが、電動モータ20はアウターロータタイプであってもよい。この変更例において、ロータ22は、ステータ21の径方向におけるステータコア31の外側に配置される。ティース33の各々は、ヨーク32からヨーク32の径方向の外側に延びている。凹部36hは、ヨーク32に位置するとともに、軸線方向に沿った断面においてヨーク32の内側に向けて開口する凹状をなしている。樹脂部材40の一部は、凹部36hの内部に配置されている。
【符号の説明】
【0072】
B…基材、L…軸線、10…回転電機、21…ステータ、22…ロータ、30…コイル、31…ステータコア、31c…電磁鋼板、32…ヨーク、32h…外側凹部、33…ティース、34a…巻回部、34b…非巻回部、36…湾曲部、36h…凹部、40…樹脂部材、136a…第1湾曲部、136b…第2湾曲部。