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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027270
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法、接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20220203BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220203BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20220203BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
G02B7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131165
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高松 信博
【テーマコード(参考)】
2H043
4J040
【Fターム(参考)】
2H043AE02
4J040EC041
4J040EC061
4J040EC262
4J040GA11
4J040GA32
4J040HD18
4J040HD23
4J040KA13
4J040KA14
4J040KA23
4J040KA27
4J040KA29
4J040LA10
4J040MA11
4J040NA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化性が良好で、透明で高屈折率でありながら、優れた接着力を有し、光学結像素子として優れた光線透過率、ヘイズ値、耐熱性を示すことができる光学部材の製造方法、接着剤を提供する。
【解決手段】屈折率が1.50から1.55の範囲にある環状オレフィン樹脂を含む透明部材11を、オキシラニル基を有する化合物及びオニウム塩化合物を含む接着剤から形成される接着層12により重ね合わせて形成する光学部材10の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.50から1.55の範囲にある環状オレフィン樹脂を含む透明部材を、オキシラニル基を有する化合物及びオニウム塩化合物を含む接着剤から形成される接着層により重ね合わせて形成する光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記接着層の屈折率が、前記透明部材の屈折率の0.99以上1.01倍の範囲内にある請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項3】
前記接着層の厚さが、1μmから1200μmの範囲である請求項1または請求項2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項4】
前記接着層の光線透過率が、90%以上である請求項1から請求項3に記載の光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤が、さらにオキセタニル基を有する化合物を含む接着剤である請求項1から請求項4に記載の光学部材の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤が、さらに酸化防止剤を含む請求項1から請求項5に記載の光学部材の製造方法。
【請求項7】
前記オニウム塩化合物のアニオンが、リン系アニオン、ホウ素系アニオンのいずれかである請求項1から請求項6に記載の光学部材の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤の粘度が、25℃で1000mPa・sから10000mPa・sの範囲にある請求項1から請求項7に記載の光学部材の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8に記載の光学部材の製造方法において、接着層形成に用いる接着剤。
【請求項10】
光学結像素子に使用する、請求項1から請求項9に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂基板等を貼り合わせや結合して得られる光学部材の製造方法やその製造方法に用いられる接着剤組成物に関する。特に、光学設計上、高い屈折率が必要とされる用途に使用される接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ、プリズム等の光学材料の貼り合わせや、光ファイバと光導波路等の各種光部品との結合には、接着剤が使用されることが多い。また、光学材料、光エレクトロニクス材料、電子材料等の材料同士、及びこれらの材料と他の材料とを接着剤により接着させることも多くなってきている。これら接着剤の中でも、光が通過する部分に使用される接着剤は、光学透明性の他に、光学設計上最適な屈折率を有するものでなければならない。従来、これらの用途の接着剤として、熱可塑性天然樹脂であるカナダバルサムや、エポキシ樹脂接着剤、アクリル樹脂接着剤等が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
エポキシ樹脂組成物は、そのポットライフが、通常、混合後数秒から数時間と非常に短く、混合、脱泡、塗布作業に十分な時間がとれないという欠点があった。そのため作業者は、その都度組成物を調製しなければならず、作業性が悪く、好ましくなかった。
そのため、十分なポットライフを有し高屈折率絵を有し、透明樹脂を接合した時に透過率を低下させない接着剤組成物の開発が切望されていた。
しかしながら、一般にエポキシ樹脂、保存安定性が悪く、十分にポットライフを延ばすことは困難であった。このような状況から、十分なポットライフを有し、硬化性も良好で、透明で高屈折率でありながら、優れた接着力を有し、揮発性の溶剤を含有しない接着剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-049219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような状況から、硬化性が良好で、透明で高屈折率でありながら、優れた接着力を有し、光学結像素子とした優れた光線透過率、ヘイズ値、耐熱性を示すことができる光学部材の製造方法、接着剤を提供することにある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、硬化性が良好で、透明で高屈折率でありながら、優れた接着力を有し、光学結像素子とした優れた光線透過率、ヘイズ値、耐熱性を示すことができる光学部材の製造方法、接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
屈折率が1.50から1.55の範囲にある環状オレフィン樹脂を含む透明部材を、オキシラニル基を有する化合物及びオニウム塩化合物を含む接着剤から形成される接着層により重ね合わせて形成する光学部材の製造方法である。
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該光学部材の製造方法に用いられる接着剤である。
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、光学結像素子に使用する光学部材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化性に優れ、光学用途で使用できる高屈折率で高い接着力を有する接着剤組成物を提供すること、及び光学部材の製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る光学部材の模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光学結像素子の構成の一部を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る光学結像素子の構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<光学部材の製造方法>
本発明の一実施形態に係る光学部材の製造方法は、屈折率が1.50から1.55の範囲にある環状オレフィン樹脂を含む透明部材を、オキシラニル基を有する化合物及びオニウム塩化合物を含む接着剤から形成される接着層により重ね合わせて形成する光学部材の製造方法である。
各成分等について詳説する。
【0013】
本発明の実施の形態に係る立体像結像装置の製造方法について、製造される光学部材の構成について説明する。図1は、本実施形態に一例にかかる光学部材を示す模式図である。
本発明の製造方法によって製造された光学部材10は、透明樹脂部材11を備え、透明部材の間に接着剤から形成される接着層12により重ね合わせて形成される。
透明部材11は、板状でもよく、特定の光学性能を発現させるため、凹凸状、ジグザグ状、断面半円状、断面直角三角形状等特定の形状に加工されていてもよい。このような形状の加工は、透明樹脂からなる成型母材を、プレス成型、インジェクション成型、又はロール成型によって加工する。
【0014】
さらに光反射性を発現させるため、加工された樹脂基板の少なくとも一面を金属や金属種を含む塗料で加工されていてもよい。
透明樹脂部材11は、屈折率が1.50から1.55の範囲にある環状オレフィン樹脂であることが好ましい。このような樹脂は透明性、耐熱性が高く、光学部材の加工時の熱処理によって、透明性が損なわれることや、熱変形することを軽減することが可能である。屈折率が1.50から1.55の範囲、より好ましくは1.51から1.54の範囲にあることで、光学部材全体の透過率や光学物性を損なうことがない。
【0015】
このような環状オレフィン樹脂の具体例としては、ゼオネックス(ZEONEX:登録商標、屈折率:1.54)、ゼオノア(ZEONOR:登録商標、屈折率:1.53)、アートン(ARTON:登録商標、屈折率:1.51)を使用できる。
【0016】
重ね合わせた光学部材は、接着剤から形成される接着剤層により重ね合わせて形成する。
接着剤層の硬化性組成物としては、透明性および樹脂層の強度の観点から、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂およびヒドロシリル化架橋系樹脂が挙げられ、これらの中でもオキシラニル基を有するエポキシ化合物が好ましい。
【0017】
エポキシ化合物としては、高分子量のエポキシ樹脂や低分子量のエポキシ化合物もいずれも用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、そのアルキレンオキシド変性物、およびこれらの水素化物;3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂および4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂;トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(α-メチルグリシジル)イソシアヌレートに代表される1,3,5-トリアジン核誘導体エポキシ樹脂等のトリアジン誘導体エポキシ樹脂;ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
低分子量のエポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等の化合物が挙げられる。
【0019】
これらのエポキシ化合物として、CEL2021P(株式会社ダイセル製)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂YX8000(三菱化学株式会社 製)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂EP4088L (ADEKA社製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂 JER828(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
オキセタニル基を有する化合物としては、1分子当り2個以上のオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,3-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)プロパン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン、1,2-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ビフェニル、2,2’-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ビフェニル、3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕プロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物、3-エチルオキセタン-3-イルメタノールとシランテトラオール重縮合物の縮合反応生成物等が挙げられる。
オキセタニル基を含む樹脂としては、例えば、特開2002-322268号公報、特開2005-132886号公報、および特開2008-214493号公報に記載のオキセタン化合物が挙げられる。
これらのうち、特に3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名 OXT221 東亜合成社製)が好ましい。
【0021】
オキシラニル化合物は、接着剤中、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の接着剤中、前記オキシラニル化合物の含有量は、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上である。オキセタニル基を含む化合物も同時に使用することができる。このような態様であれば、接着剤塗工時の濡れ広がり性に優れる。
【0022】
本発明の接着剤は、オニウム塩化合物を含有する。オニウム塩化合物は、前記オキシラニル基またはオキセタニル基を含む化合物の重合開始剤として機能する。
重合開始剤は、熱または光により光硬化性樹脂の重合反応を開始させることにより、光硬化性樹脂を硬化させる働きを有する化合物である。このような重合開始剤としてのオニウム塩化合物は、例えば、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中でも、BF4-、PF6 -、SbF6 -、(BX4-(ただし、Xは、少なくとも2つのフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)を対アニオンとする、アリールスルホニウム塩、アリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩および第4級アンモニウム塩が好ましい。特にPF6 -等のリン系アニオン、BF4-等のホウ素系アニオンが好ましい。これのリン系アニオン、ホウ素アニオンは、接着剤の接着性を維持しつつ、接着層の硬化収縮を抑えることができる。硬化収縮が大きくなりすぎると基板からの剥がれや接着精度を損なうおそれがある。
オニウム塩化合物の具体例として、フェニルスルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2、6-ジフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-(4-フェニルチオ)フェニルスルフォニウム ヘキサフルオロフォスフェート等を挙げることができる。
これらのうち、特に、CRP100P;ジフェニル-(4-フェニルチオ)フェニルスルフォニウム ヘキサフルオロフォスフェート、CRP1200K;トリアリールスルホニウム・特殊リン系アニオン塩、CRP310FG;トリアリールスルホニウムボレート(サンアプロ(株)製)が好ましい。
重合開始剤の含有量は、オキシラニル基またはオキセタニル基を含む化合物の合計量100質量部に対して、カチオン重合開始剤を0.1~10質量部の量で配合することができる。
【0023】
本発明の接着剤は酸アk防止剤を含むことができる。このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、光透過性の観点からヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物が好ましい。ヒンダードフェノール系化合物は、フェノール性水酸基に対して2位及び6位の両方に置換基を有する化合物である。置換基としては、メチル基またはt-ブチル基が好ましい。ヒンダードフェノール系化合物は、モノフェノール類、ビスフェノール類、ポリフェノール類のいずれであってもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,4-ビス〔(ラウリルチオ)メチル〕-o-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ノニルフェノール、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチル-フェノール)、4,4’-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオ-ビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,5-ジ-tert-アミル-ヒドロキノン、2,2’チオジエチルビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス-(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)-ブタン、2,2’-メチレンビス(6-(1-メチル-シクロヘキシル)-p-クレゾール)、2,4-ジメチル-6-(1-メチル-シクロヘキシル)-フェノール、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)等が挙げられる。その他ヒンダードフェノール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することができる。
【0024】
ホスファイト系化合物としては、トリス(イソデシル)フォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、フェニルイソオクチルフォスファイト、フェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジ(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’イソプロピリデンジフェノールアルキルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリスジノニルフェニルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ビフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラトリデシル-4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)ジフォスファイト、ヘキサトリデシル-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリフォスファイト、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスファイトジエチルエステル、ナトリウムビス(4-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、ナトリウム-2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-フォスファイト、1,3-ビス(ジフェノキシフォスフォニロキシ)-ベンゼン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)等が挙げられる。その他ホスファイト構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することができる。
【0025】
これの市販品としては、Irganox1010(BASF社製)、アデカスタブPEP-8、PEP-36,HP-10、2112、2112RG、1178、1500(ADEKA社製)を用いることができる。
【0026】
酸化防止剤の含有量は、オキシラニル基またはオキセタニル基を含む化合物の合計量100質量部に対して、カチオン重合開始剤を0.01~3質量部の量で配合することができる。
【0027】
必要に応じて有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。本実施形態の接着剤に使用可能な有機溶剤としては、他の含有成分を溶解または分散させるとともに、他の含有成分と反応しないものを挙げることができる。
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチル-3-メトキシプロピオネート等のエステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0028】
本発明の接着剤は、25℃で1000mPa・sから10000mPa・sの範囲にあることを特徴とする。なお粘度は、JIS K2283に準拠して、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、25℃で測定した値である。この粘度とすることで接着剤に適当な濡れ性を有することとなり、良好な接着性を確保することができる。
この粘度は、接着剤に含有される各成分の分子量、添加量比によって調整することができ、特にオキシラニル基を有する化合物の分子量によって調整することが好ましい。またこの粘度範囲は、経時による粘度上昇が起こりにくい範囲でもある点で好ましい。
【0029】
本発明の接着剤から形成される接着層の屈折率は、基材にもちいる透明樹脂部材の屈折率の0.99以上1.01倍の範囲内にあることが好ましい。この範囲にあることで、透明樹脂基材と接着剤層の透過率の差を小さくすることができ、透明樹脂部材と接着剤層からなる光学部材の透過率を損なうことを防止することができる。接着剤とその接着剤から形成された接着層では、固体状の接着層の方が、屈折率がわずかに高くなる。接着剤の屈折率は、接着剤に含有される各成分の分子量、添加量比によって調整することができ、特にオキシラニル基を有する化合物の分子量によって調整することができる。
接着層の屈折率が、前記透明部材の屈折率の0.99以上1.01倍の範囲内になるように、接着剤の屈折率で調整することができる。
【0030】
接着層の厚さが、1μmから1200μmの範囲であることが好ましい。また、接着層の膜厚10μmにおける光線透過率が、90%以上であることが好ましい。この範囲にあることで、透明樹脂基材と接着剤層の透過率の差を小さくすることができ、透明樹脂部材と接着剤層からなる光学部材の透過率を損なうことを防止することができる。
【0031】
光学結像素子について
本発明の接着剤の具体的な好適な使用例として、光学結装置の一部に用いられる光学結像素子への使用である。光学結像装置は、光学結物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、国際公開第2009/131128号公報に記載の立体像結像装置(光学結像装置)がある。立体像結像装置に用いる光学結像素子は、第1、第2の光制御パネルを有し、当該パネルの製造に際しては、金属反射面が一面側に形成された一定厚みの板状の透明合成樹脂板やガラス板(以下、「透明板」ともいう)を、金属反射面が一方側に配置されるように多数枚積層して積層体を作製し、この積層体から各金属反射面に対して垂直な切り出し面が形成されるように切り出している。
【0032】
本発明の接着剤の使用例の一例として、透明樹脂で加工した断面直角三角形状の樹脂部材で、断面直角三角形状の一面に金属反射面を形成した部材を多数枚積層してなる積層体を作製するときの接着剤として使用する。
図2の20は光学制御パネルを示す。この図2の21で示される透明平板の一方の面に、図2の22で示される断面直角三角形状の部材を連続的に設け、その一面に図2の23で示される金属反射面からなる光反射面を設ける。一定のピッチで並べて形成し光制御パネルを作成する。
【0033】
図3の30は、図2の20は光学制御パネルの断面直角三角形の溝の部分に、本発明の接着剤を充填した光学制御パネルである。図3の31は、接着剤から形成された接着層をします。この2以上の光制御パネルを、それぞれの光反射面が直交するように、2以上の光制御パネルの一面側を向い合わせて密着させたものである。これが光学結像装置の一部を構成する光学結像素子となる。
【0034】
接着層の形成方法
本発明の接着剤による接着層の形成方法は、基板上に直接又は間接に接着剤の塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射(露光)する工程(以下、「放射線照射工程」ともいう。)、または上記塗膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう。)を備える。
【0035】
塗膜形成工程
本工程では、基板上に直接又は他の層を介して当該接着剤を塗布した後、必要に応じて塗布面を露光または、加熱することにより仮接着することもできる。塗膜を形成する。上記基板の材質としては、屈折率が1.50から1.55の範囲にある環状オレフィン樹脂を含む透明部材等が挙げられる。
当該接着剤の塗布方法としては特に限定されず、例えばインクジェット法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にインクジェット法が好ましい。
【0036】
放射線照射工程
本工程では、塗膜形成工程で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射することができる。上記放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
【0037】
加熱工程
本工程では、塗膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて加熱(ポストベーク)することにより、接着性を発現させて接着層を形成することができる。加熱温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃であってもよい。加熱温度を上記下限以上とすることで、十分に硬化された接着層を得ることができる。一方、上記加熱温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。上記加熱温度を上記下限以上とすることにより、例えば基板に備わる接着層の硬化収縮を抑制しつつ、十分に硬化された接着層と硬化収縮をバランスよく制御することができる。また、加熱温度を上記上限以下とすることにより、急激な膜収縮等の過度の応力発生を抑制できるため、クラックの発生を抑制できる。このように、加熱工程においては、例えばホットプレート上で加熱する場合には5分以上30分以下、オーブン中で加熱する場合には10分以上90分以下とすればよい。なお、加熱は、空気中で行っても、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法を用いることも可能である。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の記載において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
以下に配合例および実施例および比較例で用いた各成分を説明する。
【0039】
<配合例1>
オキシラニル基を有する化合物として(A-1)OXT221(東亜合成(株)製)を10質量部、オキシラニル基を有する化合物として(A-2)CEL-2021P((株)ダイセル社製)を90質量部、オニウム塩化合物として、(B-1)CPI100P(サンアプロ(株))1質量部、及び酸化防止剤として、(C-1)Irganox1010(BASF社製)0.3質量部、(C-2)アデカスタブPEP-36(株ADEKA社製)0.3質量部を加え、各成分溶解させて、配合した。接着剤の屈折率(ナトリウムD線)は1.51であり、光線透過率(全光線透過率(300~800nm)平均透過)96%であった。
【0040】
<配合例2>から<配合例14>、<比較配合例1>、<比較配合例2>も<配合例1>と同様に行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す、各成分は以下に示す。
(A-1)オキセタン樹脂(東亜合成(株)製「OXT221」
(A-2)エポキシ樹脂((株)ダイセル社製「CEL-2021P」:脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量:130g/eq)
(A-3)エポキシ樹脂((株)ADEKA製「EP-4080E:脂環式エポキシ樹脂)
(A-4)エポキシ樹脂((株)ADEKA製「EP-4088L」:脂環式エポキシ樹脂)
(B-1)オニウム塩化合物 (サンアプロ(株)製「CPI100P」)
(B-2)オニウム塩化合物(サンアプロ(株)製「CPI200K」)
(B-3)オニウム塩化合物(サンアプロ(株)製「CPI310FG」)
(C-1)フェノール系酸化防止剤(BASF製「Irganox1010」)
(C-2)リン系酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブPEP-36」)
【0043】
<立体像結像装置の作成>
図2に示した、一面側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された成型母材をプレス成型により作成し、かつ垂直面にアルミ膜を蒸着よって形成してミラーを形成した光制御パネルを作成し、表1に配合例を示した接着剤により光制御パネルを重ね合わせてUVコンベアによる紫外線照射により接着し立体像結像素子を作成した。
【0044】
<接着層の屈折率の測定>
透明樹脂及び接着層の屈折率は、633nmの波長で屈折率を測定した。接着剤の屈折率はナトリウムD線で、プリズムカプラ法を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0045】
<光線透過率(%)及びヘイズ値の測定)
光制御パネルに対して垂直に、波長380~780nmにおける全光線透過率(%)の平均値及びヘイズ値を、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。結果を表2に示す。光線透過率が90%以上のとき良好であると判断できる。また、ヘイズ値が0.5以下のとき良好であると判断できる。
【0046】
<耐熱性確認のためのYI値の測定>
立体像結像素子を作成後、100℃のオーブンに100時間放置した。その後光制御パネルに対して垂直方向から、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7373に準拠を用いて測定した。100℃のオーブンで加熱処理する前と加熱処理した後の測定値の差を求め、Y1の差(ΔY1)を求めた。ΔY1が5以下の時に良好であると判断できる。
結果を表2に示す。
【0047】
<接着剤層の硬化収縮率の測定>
接着層の硬化収縮率についてはJIS K7112に準拠して測定した。硬化前の配合品の液密度ρlを振動式液密度計(DMA4500M、アントンパール社製)により測定した。硬化後の固体密度は水中置換法により測定し、固体密度ρaを求めた。硬化収縮率は下記式に基づいて測定した。硬化収縮率=(ρaa-ρl) / ρll ×100
硬化収縮率が5%以下の時に良好であると判断できる。
結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示されるように、実施例1から14は、硬化性が良好で、透明で高屈折率でありながら、優れた接着力を有し、光学結像素子とした優れた光線透過率、ヘイズ値、耐熱性を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の光学部材の製造方法、接着剤は、光学結像素子の接着剤として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 光学部材
11透明樹脂部材
12 接着層
20 光学制御パネル
21 透明樹脂部
22 透明樹脂で加工した断面直角三角形状の樹脂部
23 有機発光層
30 接着層が形成された光制御パネル
31 接着層
図1
図2
図3