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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027295
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】マップデータ作成システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20220203BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220203BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220203BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/00 J
G09B29/10 A
G01C15/00 101
G01B11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131205
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】501055145
【氏名又は名称】株式会社ZMP
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】谷口 恵恒
(72)【発明者】
【氏名】劉 哲安
【テーマコード(参考)】
2C032
2F065
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB11
2C032HC11
2C032HC17
2C032HD26
2C032HD29
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA37
2F065AA53
2F065BB05
2F065BB15
2F065CC14
2F065DD02
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF61
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ03
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065QQ38
2F065UU05
2F065UU06
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF32
5H181MC07
5H181MC15
5H181MC16
5H181MC21
5H181MC27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型且つ軽量で、初心者であっても容易に使いこなせる可搬型のマップデータ作成システムを提供する。
【解決手段】マップデータ作成装置20と、通信部22と第1のネットワーク40を介して接続した携帯端末30とで構成し、使用者が携帯して移動することで周囲を撮像し、ライダー部29の検出信号で周囲の三次元点群を生成し、制御部23が三次元点群と位置センサの位置情報とを互いに関連付けて三次元マップデータとしてのポイントクラウド23aを作成し、姿勢検出センサ28及び位置センサ27からの検出信号から三軸方向の傾斜角度23b,移動速度23c,回転速度23d又は振動23eを検出し、これらの各項目の検出結果を携帯端末30に送信し、受信した検出結果を表示部34に画面表示するようにマップデータ作成システム10を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、該ケース内に配置された通信部、制御部及び記憶部と、ケースから上方に延びる支持部材の上端付近に配置され周囲を撮像する撮像部と、前記支持部材に取り付けられたライダー部と位置センサと姿勢検出センサと、を備えたマップデータ作成装置と、
使用者が保持し且つ前記マップデータ作成装置の通信部と第1のネットワークを介して接続される携帯端末と、
から構成され、
使用者が前記ケースを携帯して移動することで前記撮像部により周囲を撮像し、前記ライダー部の検出信号により周囲の三次元点群を生成すると共に、前記位置センサにより現在位置の位置情報を検出し、前記制御部が前記三次元点群及び位置情報を互いに関連付けて三次元マップデータとしてのポイントクラウドを作成する、マップデータ作成システムであって、
使用者が前記ケースを携帯して移動する際に、前記制御部が前記姿勢検出センサ及び位置センサからの検出信号に対応してそのときの三軸方向の傾斜角度、移動速度、回転速度又は振動を検出し、これら傾斜角度、移動速度、回転速度又は振動の各項目の検出結果を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末が、受信した前記検出結果を表示部に画面表示する、
マップデータ作成システム。
【請求項2】
前記制御部が、前記各項目の検出結果に関してそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定してその判定結果を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末が、受信した前記判定結果を表示部に画面表示する、請求項1に記載のマップデータ作成システム。
【請求項3】
前記携帯端末が、前記判定結果のうち正常範囲でない項目に関して表示部の画面表示を警告表示とする、請求項2に記載のマップデータ作成システム。
【請求項4】
前記携帯端末が、前記判定結果のうち正常範囲でない項目に関して警告音を発生させる、請求項2又は3に記載のマップデータ作成システム。
【請求項5】
前記携帯端末が、前記判定結果のうち正常範囲でない項目に関して警告振動を発生させる、請求項2から4の何れかに記載のマップデータ作成システム。
【請求項6】
前記ライダー部が、前方に向かって水平方向を検出する横ライダーと前方に向かって垂直方向を検出する縦ライダーとから構成され、
前記制御部が、前記撮像部からの撮像信号及び前記横ライダー及び縦ライダーの検出信号から生成される三次元点群に基づいて、当該マップデータ作成装置の進行方向前方の物体の高さ位置を検知してその高さ位置が所定高さ以下である場合に高さ警告信号を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末が、受信した高さ警告信号に基づいて表示部に高さ警告表示を画面表示しあるいは警告音又は警告振動を発生させる、請求項1から5の何れかに記載のマップデータ作成システム。
【請求項7】
前記制御部が、前記撮像部からの撮像信号及び前記横ライダー及び縦ライダーの検出信号から生成される三次元点群に基づいて当該マップデータ作成装置の進行方向の空間の幅を検知し、その幅が所定幅以下である場合に幅警告信号を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末が、受信した幅警告信号に基づいて表示部に幅警告表示を画面表示しあるいは警告音又は警告振動を発生させる、請求項6に記載のマップデータ作成システム。
【請求項8】
前記制御部が、初心者の使用のための練習モードを備え、
前記制御部が、前記練習モードにて使用者がマップデータ作成装置を携帯した状態での試用時に、前記姿勢検出センサ及び位置センサからの検出信号に基づいて三軸方向の傾斜角度を検出し、各傾斜角度をそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定し、検出結果の傾斜角度と正常範囲でない傾斜角度に関して判定結果を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末が、受信した傾斜角度及び判定結果を前記表示部に画面表示する、請求項1から7の何れかに記載のマップデータ作成システム。
【請求項9】
前記制御部が、前記練習モードにて試用開始後に前記姿勢検出センサ及び位置センサからの検出信号に基づいて移動速度,回転速度及び振動の各項目を検出し、各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定し、各項目の検出結果と正常範囲でない項目に関して判定結果を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末が、受信した前記検出結果,判定結果及び修正対応を表示部に画面表示する、請求項8に記載のマップデータ作成システム。
【請求項10】
さらに、マップデータの保存及び管理を行なうマップデータサーバを備え、
前記マップデータ作成装置が第二のネットワークを介して前記マップデータサーバに接続され、
前記マップデータ作成装置の制御部が、作成されたポイントクラウドを前記第二のネットワークを介して前記マップデータサーバに送信し、
前記マップデータサーバが、受信したポイントクラウドをデータベースとして登録する、請求項1から9の何れかに記載のマップデータ作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者、車両又は自動運転車両等に用いられるマップデータ作成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動運転車両やナビゲーションシステムを搭載した車両は、走行状態を検出する各種センサや他の車両や障害物を検出する周囲センサ等から成る検出部からの検出信号に基づいて、走行制御部が駆動制御部を制御しこれにより駆動制御部が走行部及び操舵部を駆動制御して運転や自動運転を行なう。
【0003】
例えば自動運転車両の走行制御部は、当該自動運転車両の運行範囲のマップデータを利用して前もって走行経路を設定しておくと共に、走行中は、位置センサ及び姿勢検出センサを含む検出部からの検出信号に基づいて当該自動運転車両の自己位置を推定し、この推定された自己位置が走行経路内に納まるように走行経路を修正し、修正された走行経路に対応して駆動制御部が走行部及び操舵部を駆動制御することにより、走行経路に沿って当該自動運転車両を走行させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、マップデータは、マップデータ作成装置を搭載した自動車を、車両又は自動運転車両の運行範囲全体に亘って又は歩行者の通路に沿って走行させて作成される。即ち、マップデータ作成装置を搭載した自動車を実際に道路に沿って走行させながら、マップデータ作成装置により走行中の道路に関して三次元点群を作成し、この三次元点群とそのときの現在位置の位置情報とを相互に関連付けて、三次元マップデータとしてのポイントクラウドを作成し、無線ネットワークを介してマップデータサーバに送信する。マップデータサーバでは、これらのポイントクラウドをデータベースとして登録することで、車両や自動運転車両の運行範囲全体に亘ってマップデータが作成される。
【0005】
ところで、車両が走行する走行路には、一般の公道以外に自動車が通行できないような狭い道路,歩行者専用道路に加え、例えば歩道,公園内の通路,建物内の通路等があり、上述したマップデータ作成装置を搭載した自動車は通行することができず、マップデータを作成することができない。
【0006】
また、道路やその周辺環境は常に一定とはいえず、建物の新築や撤去、新規道路の開設、道路の付け替え等によって変動することもある。従って、マップデータに関して、定期的に変更箇所について修正を行なってマップデータを修正する必要がある。
【0007】
従来、マップデータの修正は、マップデータ作成と同様に、マップデータ作成装置を搭載した自動車がマップデータを修正したい箇所を実際に走行してマップデータに必要な各種情報を収集する。このような測量機材は高コストであり、測量機材を積載した自動車を大量に導入することは大きな経済的負担を生じる。
【0008】
これに対して、小型に構成された機材をバックパック状に背負って移動する所謂可搬型のマップデータ作成装置も実用化されている。可搬型のマップデータ作成装置では、使用者が当該マップデータ作成装置をバックパックのように背負って歩行や自転車などで移動しつつ、道路及び周辺環境の三次元データマップとしてのポイントクラウドを作成することで、自動車が通行できないような道路等のマップデータの作成や修正が可能になる。また、可搬型のマップデータ作成装置は、小型で自動車搭載のマップデータ作成装置より低コストで構成されることから、マップデータの作成及び修正のためのランニングコストが低減される。しかしながら、このような小型の測量機材であっても、高コストであると共に使いこなすためには熟練した技術が必要であり、特に歩行などの移動時の姿勢に注意を払う必要があることから、一般的には誰でも使いこなせるものではない。
【0009】
本発明は以上の点に鑑み、小型で且つ軽量な構成で、初心者であっても容易に使いこなせるようにした可搬型のマップデータ作成システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ケースと、ケース内に配置された通信部、制御部及び記憶部と、ケースから上方に延びる支持部材の上端付近に配置され周囲の静止画を撮像するカメラを備えた撮像部と、支持部材に取り付けられたライダー部と位置センサと姿勢検出センサと、を備えたマップデータ作成装置と、使用者が保持し且つマップデータ作成装置の通信部と第一のネットワークを介して接続される携帯端末と、から構成され、使用者がケースを携帯して移動しながらカメラにより周囲を撮像し、ライダーの検出信号により周囲の三次元点群を生成すると共に、位置センサにより現在位置の位置情報を検出し、制御部が三次元点群及び位置情報を互いに関連付けて三次元マップデータとしてのポイントクラウドを作成するマップデータ作成システムであって、使用者がケースを携帯して移動する際に、制御部が、姿勢検出センサ及び位置センサからの検出信号に対応してそのときの三軸方向の傾斜角度,移動速度,回転速度又は振動を検出し、これら傾斜角度,移動速度,回転速度又は振動の各項目の検出結果を携帯端末に送信し、携帯端末が受信した検出結果を表示部に画面表示するように構成している。
【0011】
好ましくは、制御部は、各項目の検出結果に関してそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定しその判定結果を携帯端末に送信し、携帯端末は受信した判定結果を表示部に画面表示する。携帯端末は、判定結果のうち正常範囲でない項目に関して表示部の画面表示を警告表示とする。判定結果のうち、正常範囲でない項目に関して、警告音又は警告振動を発生させる。ライダー部は、好ましくは、前方に向かって水平方向を検出する横ライダー及び前方に向かって垂直方向を検出する縦ライダーから構成し、制御部は、撮像部からの撮像信号及び横ライダー及び縦ライダーの検出信号から生成される三次元点群に基づいて当該マップデータ作成装置の進行方向前方の物体の高さ位置を検知し、その高さ位置が所定高さ以下である場合に高さ警告信号を携帯端末に送信し、携帯端末は受信した高さ警告信号に基づいて表示部に高さ警告表示を画面表示しあるいは警告音又は警告振動を発生させる。
制御部は、カメラからの撮像信号及びライダーの検出信号から生成される三次元点群に基づいて当該マップデータ作成装置の進行方向の空間の幅を検知し、その幅が所定幅以下である場合に幅警告信号を携帯端末に送信し、携帯端末は受信した幅警告信号に基づいて表示部に幅警告表示を画面表示しあるいは警告音警告振動を発生させてもよい。好ましくは、制御部は初心者の使用のための練習モードを備え、練習モードにて使用者がマップデータ作成装置を背負った状態での試用時に、姿勢検出センサ及び位置センサからの検出信号に基づいて三軸方向の傾斜角度を検出し、各傾斜角度をそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定し、検出結果である傾斜角度と正常範囲でない傾斜角度に関して判定結果を携帯端末に送信し、携帯端末が受信した傾斜角度及び判定結果を表示部に画面表示する。制御部は、練習モードにて姿勢検出センサ及び位置センサからの検出信号に基づいて、移動速度,回転速度及び振動の各項目を検出し、各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定し、各項目の検出結果と正常範囲でない項目に関して判定結果を携帯端末に送信し、携帯端末は受信した検出結果,判定結果及び修正対応を表示部に画面表示する。
好ましくは、さらにマップデータの保存及び管理を行なうマップデータサーバが備えられ、マップデータ作成装置が第二のネットワークを介してマップデータサーバに接続され、マップデータ作成装置の制御部は、作成されたポイントクラウドを第二のネットワークを介してマップデータサーバに送信し、マップデータサーバが受信したポイントクラウドをデータベースとして登録する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型で軽量な構成により、初心者であっても容易に使いこなせるようにした、極めて優れた可搬型のマップデータ作成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のマップデータ作成システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】マップデータ作成装置の外観を示す概略斜視図である。
図3】撮像部のカメラ配置を示す概略平面図である。
図4】横ライダーの機能を説明する、(A)正面図及び(B)側面図である。
図5】縦ライダーの機能を説明する、(A)正面図及び(B)側面図である。
図6】携帯端末の表示部で表示される傾斜角度の、(A)正常範囲でない場合及び(B)正常範囲の場合の表示例を示す図である。
図7】携帯端末の表示部で表示される移動速度の、(A)正常範囲でない場合及び(B)正常範囲の場合の表示例を示す図である。
図8】携帯端末の表示部で表示される回転速度の、(A)正常範囲でない場合及び(B)正常範囲の場合の表示例を示す図である。
図9】マップデータ作成作業を示すフローチャートである。
図10】マップデータ作成作業での姿勢チェック作業のフローチャートである。
図11】練習モードでの作業を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明によるマップデータ作成システムの一実施形態を詳細に説明する。
図1において、マップデータの作成システム(以下、マップデータ作成システムという)10は、マップデータ作成装置20と携帯端末30と第一のネットワーク40とから構成されている。さらに、マップデータ作成装置20は、第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に接続される。
【0015】
マップデータ作成装置20と携帯端末30とは、第一のネットワーク40を介してワイヤレス接続され各種信号の送受信を行なう。第一のネットワーク40は、任意の構成の無線ネットワークであり専用回線ネットワークであっても公衆回線ネットワークであってもよく、あるいはマップデータ作成装置20と携帯端末30とを直接に相互接続するWi-Fi(登録商標)接続又はBluetooth(登録商標)接続等の無線LANであってもよい。第二のネットワーク50は、マップデータ作成装置20とマップデータサーバ60とを接続する任意の構成のネットワークであり、無線ネットワーク、専用回線ネットワーク及び公衆回線ネットワークの何れかであってよい。
【0016】
マップデータ作成装置20は、図2に一例を示すように、ケース21と、ケース21から上方に延びる支持部材25の上端付近に配置された撮像部26と、さらに該支持部材25に取り付けられた位置センサ27と姿勢検出センサ28と横ライダー29a及び縦ライダー29bから成るライダー部29と、から構成されている。ケース21内には図1に示すように、通信部22,制御部23及び記憶部24が配置される。
【0017】
ケース21は、例えばバックパック状に構成され、使用者が背負って移動するなど携行できるように、左右一対のショルダーベルト21aを備えている。使用者は、歩行による移動でも自転車やオートバイあるいは車両による移動でもよいが、以下の実施例では使用者がケース21を携帯して歩行により移動する場合で説明する。また、ケース21は内側に収容空間を有しており、この収容空間内に、前述の通信部22,制御部23及び記憶部24と後述する電源部20aとを収納するようになっている。
【0018】
通信部22,制御部23及び記憶部24は、例えばパーソナルコンピュータにより構成され、制御部23が後述する各種処理を行なうと共に、通信部22を介してデータの送受信を行ない、また記憶部24にデータを読み書き可能に登録する。
【0019】
支持部材25は、例えば真っ直ぐなロッド状に形成されており、使用者がケース21を背負った状態でほぼ垂直に配置されるように、例えばケース21に対して着脱可能に取り付けられている。
【0020】
撮像部26は周囲の静止画を撮像するカメラからなり、支持部材25の上端付近に固定配置されている。図3に示すようにカメラは、例えば二台のカメラ26a及び26bから構成され、各カメラ26a及び26bは、それぞれ水平方向に関して約220度の画角を備えている。各カメラ26a及び26bは、互いにその水平方向の画角がオーバーラップするように逆向きに配置されて全体として全方位カメラとして構成される。撮像部26の各カメラ26a及び26bは、それぞれ制御部23からの撮像指示信号に基づいて静止画の撮像を行ない、静止画を検出信号S1及びS2として制御部23に出力する。各カメラ26a及び26bのシャッター速度は、周囲が暗くなっても静止画の撮像ができるよう周囲の明るさに応じて自動調節されると好ましい。なお、カメラ26a及び26bは、周囲の静止画と共に動画が撮像できるカメラでもよい。この場合、各カメラ26a及び26bで撮像する静止画は、一旦撮像した動画から切り出した静止画であってもよい。
【0021】
位置センサ27は、支持部材25の上端付近に固定配置され、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System、GNSSと呼ぶ)用の、例えばGPSセンサであり、当該マップデータ作成装置20の位置、即ち経度及び緯度を検出して検出信号S3を制御部23に出力する。なお、位置センサ27は、支持部材25の上端付近ではなく支持部材25の他の部分に対して固定配置してもよい。
【0022】
姿勢検出センサ28は、支持部材25の上端付近に固定配置され、例えばMEMS技術で製造された所謂ジャイロ及び高さを検出するセンサであって、当該マップデータ作成装置20の三軸又は六軸の方向の加速度により、マップデータ作成装置20の三次元又は角度も含む六軸の姿勢と高さ又は標高を検出し、検出信号S4を制御部23に出力する。なお、姿勢検出センサ28は、支持部材25の上端付近ではなく支持部材25の他の部分に対して固定配置されてもよい。本明細書において、位置センサ27と姿勢検出センサ28は、これらのセンサを組み合わせたモジュールやこれらのセンサを搭載した基板等でもよく、位置及び姿勢を検出できる機能を有する部品を含むものである。
【0023】
ライダー部29は本実施形態では横ライダー29a及び縦ライダー29bから構成される。横ライダー29a及び縦ライダー29bは、共にレーザーレーダーとも呼ばれるセンサであり、光検出と測距(LIDAR(Light Detection and Ranging))又はレーザー画像検出と測距(Laser Imaging Detection and Ranging)を行なうセンサで、LIDARとも表記される。ライダーとしては二次元ライダーや三次元ライダーを用いてもよい。
【0024】
ここで、横ライダー29aは支持部材25の上端に取り付けられて水平方向を検出範囲となるように配置されていて、前方及び所定の水平方向を含む周囲の道路や町並みの形状を三次元点群として検出し、検出信号S5を制御部23に出力する。これにより横ライダー29aは、図4に示すように使用者が歩行する前方(y方向)に対して水平方向に走査することにより横方向(x方向)の壁面Wを検出することができる。
【0025】
また、縦ライダー29bは支持部材25の後ろ側に取り付けられ縦方向を検出範囲となるように配置されていて、狭い空間の形状を三次元点群として検出し検出信号S6を制御部23に出力する。これにより縦ライダー29bは、図5に示すように使用者が歩行する前方(y方向)に対して垂直方向に走査することにより間隔の狭い壁面Wであっても密度の高い三次元点群取得することができると共に、高いビルや天井等の三次元点群を取得することができる。
【0026】
この構成によれば、使用者が本マップデータ作成装置20を背負って歩行しているとき、進行方向の前方に例えば天井の低い場所や上方に障害物が存在する場合、三次元点群に基づいて進行方向前方の物体の高さ位置を検知し、所定高さ以下であれば高さ警告信号を携帯端末30に送信する。これを受けて携帯端末30の表示部34に高さ警告表示や警告音又は警告振動が発生するので、使用者は進行方向前方の上方に物体が存在することを迅速に認知し、進行方向前方の低い天井や障害物等への本マップデータ作成装置20のカメラ26a,26bとライダー29a,29bの衝突を確実に回避できる。エレベータ内や狭い通路等に進入しようとする場合も、幅警告表示が携帯端末30の表示部34に画面表示、警告音又は警告振動で表示するので、注意深く向きを変えることで、背負ったマップデータ作成装置20の一部が壁等に突き当たってしまうようなことを防止できる。
【0027】
電源部20aは充電式電池であって、ケース21の底部付近に収納されて通信部22,制御部23,記憶部24,撮像部26,位置センサ27,姿勢検出センサ28,ライダー29に対して給電を行なう。充電式電池は、交換可能に複数の充電式電池で構成されてもよい。電源部20aが2つの充電式電池を接続するA端子及びB端子を備えている場合には連続給電が可能である。最初にA端子に満充電された第1の充電式電池が接続され、第1の充電式電池の残量が、後述する携帯端末30の表示部34にシステム情報として表示される。表示部34に充電式電池の交換と表示された場合には、使用者は満充電された第2の充電式電池をB端子に接続して、使用済みの第1の充電式電池が交換される。第2の充電式電池の交換も満充電された第3の充電式電池をA端子に接続し、使用済みの第2の充電式電池をB端子から抜いて同様に交換できる。これにより使用者は、マップデータ作成装置20の使用時間に応じて複数の充電式電池を携帯することにより電源部20aから連続給電が可能となる。
【0028】
いま、使用者が携帯端末30に動作開始指令30aを受け取り、作業開始信号20aを第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に送信すると、マップデータサーバ60からマップデータの作成エリア60aを受信して、当該マップデータの作成エリア60aが第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信される。携帯端末30の表示部34に、マップデータの作成エリア60aが表示されるので、使用者は携帯端末30の表示部34の表示に従いマップデータの作成エリア60aにマップデータ作成装置20一式を携行して移動し、当該マップデータの作成エリア60aに到着したら携帯端末30を操作して作業開始指令30bを第一のネットワーク40を介してマップデータ作成装置20に送信する。
【0029】
マップデータ作成装置20の制御部23には、使用者の歩行に伴って所定時間毎にあるいは所定距離毎に撮像部26により撮像された周囲の静止画としての検出信号S1及びS2と、ライダー29により取得された周囲の三次元点群としての検出信号S5及びS6と、位置センサ27からの位置情報としての検出信号S3と、姿勢検出センサ28からの姿勢情報としての検出信号S4が入力される。そして、制御部23は、検出信号S5及びS6と検出信号S3により三次元点群と位置情報を互いに関連付けて、三次元マップデータとしてのポイントクラウド23aを作成し、第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に送信する。
ここで、ポイントクラウド23aは、目標物との相対距離を示す三次元点群に、検出信号S3及びS4から得られる位置及び姿勢に関する位置情報、つまり、絶対座標(緯度、経度、標高)による座標を加えた絶対座標で表示する点群であり、マップデータシステムで使用されている。ポイントクラウド23aは、単に点群と呼ぶ場合もある。絶対座標は、例えばGPSセンサである位置センサ27による位置取得時刻を加えて、絶対座標を(緯度、経度、標高、時刻)で表してもよい。
【0030】
さらに、マップデータ作成装置20の制御部23は、本実施形態の機能により、マップデータ作成作業の開始前と各撮像直後あるいは所定時間毎に、位置センサ27及び姿勢検出センサ28からの検出信号S3,S4に基づいて下記の各項目を検出する。すなわち、支持部材25の上端、マップデータ作成装置20そして使用者の上半身の三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目を検出し、次いで、これらの傾斜角度23b,歩行速度23c,回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較し、正常範囲か否かを判定する。
なお、回転速度23dは、地面をxy方向としたとき、地面に対して垂直な高さ方向であるz方向つまり垂直軸の周りの回転速度であり、例えば使用者が角を曲がるとき、あるいはUターンするときの回転速度である。回転速度23dが速すぎると、撮像部26及びライダー部29の静止画や三次元点群に水平方向のブレやボケが発生してしまう。
【0031】
ここで、傾斜角度23bのしきい値は、例えば30度である。傾斜角度23bが30度を越えると、ライダー29による三次元点群の取得の際に傾きによって精度が低下してしまう。歩行速度のしきい値は、例えば10km/hである。歩行速度23cが10km/hを越えると、撮像部26により撮像される静止画が流れてしまい、ライダー29で取得される三次元点群の解像度が低下してしまう。
【0032】
回転速度23dのしきい値は、例えば90度/秒である。回転速度23dが90度/秒を越えると、同様にして撮像部26により撮像される静止画が流れてライダー29により取得される三次元点群の解像度が低下してしまう。振動23eのしきい値は、例えば上記のz方向の加速度が0.5m/sである。振動23eが0.5m/sを越えると、撮像部26により撮像される静止画にブレが生じ、ライダー29により取得される三次元点群もぶれて解像度が低下してしまう。
そして、マップデータ作成装置20の制御部23は、これらの検出結果及び判定結果を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。
【0033】
また、マップデータ作成装置20の制御部23は、使用者が初心者でマップデータ作成装置20によるマップデータ作成作業に不慣れな場合には、練習モードに切り替えて使用者を短時間だけ歩行させて試用させる。その際、マップデータ作成装置20の制御部23は、位置センサ27及び姿勢検出センサ28からの検出信号S3,S4に基づいて支持部材25の上端、マップデータ作成装置20そして使用者の上半身の三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eを検出すると共に、これらの傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較し、正常範囲か否かを判定する。マップデータ作成装置20の制御部23は、これらの検出結果及び判定結果を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。
【0034】
携帯端末30は公知の携帯端末、例えばスマートホン、タブレット等のスマートデバイスであって、第一のネットワーク40に接続可能に構成されている。携帯端末30は、図1に示すように送受信部31、制御部32、記憶部33及び表示部34から構成される。
【0035】
送受信部31は、第一のネットワーク40に接続してデータの送受信を行なう。制御部32は、送受信部31、記憶部33及び表示部34を制御して所定の動作を行なう。
【0036】
表示部34は、所謂タッチパネルとして構成され、制御部32により駆動制御されて所定の表示を行なうと共に、手指の操作で所定の入力を行なうことができる。
【0037】
さらに、携帯端末30の制御部32は、マップデータ作成装置20から送受信部31を介して前述した傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果及び判定結果を受信したとき、検出結果及び判定結果を表示部34に表示し、正常範囲でない場合には例えば赤色の警告表示としまた警告振動を発生させる。
【0038】
携帯端末30の制御部32は、マップデータ作成装置20で計測された傾斜角度23bについて、図6に示すように表示部34に傾斜角度の数値34a,34a’及び模式図34b,34b’を表示する。その際、例えば傾斜角度のしきい値を30度とすると、マップデータ作成装置20で計測された傾斜角度23bが30度を越えて正常範囲ではない場合には、図6(A)に示すように傾斜角度の数値34aは、赤色で表示部34に警告表示され、バイブレータによる警告振動も発生する。これに対して、マップデータ作成装置20で計測された傾斜角度23bが5度で正常範囲にある場合には、図6(B)に示すように傾斜角度の数値34a’は緑色表示となる。
【0039】
また、携帯端末30の制御部32は、マップデータ作成装置20で計測された歩行速度23cについて、図7に示すように表示部34に歩行速度の数値34c,34c’及び模式図34d,34d’を表示する。その際、例えば歩行速度のしきい値を10km/hとすると、マップデータ作成装置20で計測された歩行速度23cが10km/hを越え正常範囲ではない場合には、図7(A)に示すように、歩行速度の数値34cは、赤色で表示部34に警告表示され、バイブレータによる警告振動も発生する。これに対して、マップデータ作成装置20で計測された歩行速度23cが5km/hで正常範囲にある場合には、図7(B)に示すように歩行速度の数値34c’は緑色表示となる。
【0040】
さらに、携帯端末30の制御部32は、マップデータ作成装置20で計測された回転速度23dについて、図8に示すように表示部34に回転速度の表示34e,34e及び模式図34f,34f’を表示する。その際、例えば回転速度23dが速すぎて正常範囲ではない場合には、図8(A)に示すように、回転速度の表示34eは赤色で表示され、バイブレータによる警告振動も発生する。これに対して、回転速度23dが正常範囲にある場合には、図8(B)に示すように回転速度の表示34e’は緑色表示となる。
【0041】
携帯端末30の制御部32は、マップデータ作成装置20の練習モードにおいて、マップデータ作成装置20から送受信部31を介して傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果及び判定結果を受信したとき、同様に検出結果及び判定結果を表示部34に表示し、正常範囲でない場合には表示を例えば赤色の警告表示とし、また警告振動を発生させる。ここで、携帯端末30の制御部32は、練習モードにおいては検出結果及び判定結果を表示部34に表示するだけでなく修正対応、すなわち正常範囲ではない項目について正常範囲内にするための修正方法を表示部34に表示し、あるいは音声ガイドを発生するようにしてもよい。
【0042】
マップデータサーバ60は適宜の箇所に設置されたサーバであり、例えば自動運転車両のためのマップデータ(以下、マップデータという)61を登録する記憶部62と、記憶部62に対してマップデータ61の読み書きや修正を含む各種管理を行なう制御部63と、から構成されている。マップデータ61は、自動運転車両等の運行範囲内の走行可能エリアに関して運転に必要な道路及び周辺環境に関するデータを含む。記憶部62には、マップデータ61がデータベースとして登録されており、位置情報に基づいて当該位置情報付近のマップデータ61を読み出すことができる。
【0043】
制御部63は、後述するように、マップデータ作成装置20から送られてくるポイントクラウド23aに基づいて当該ポイントクラウドを記憶部62に登録する。さらに制御部63は、第三のネットワーク70を介して自動運転車両80と接続可能であり、自動運転車両80からの要求に応じて記憶部62からマップデータ61を読み出し、第二のネットワーク70を介して当該自動運転車両80に対して送信する。この構成によれば、マップデータ作成装置20により作成されたポイントクラウド23aが、逐次、あるいは一連のポイントクラウド23aの作成作業の終了後に一括して第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に送信され、マップデータサーバ60がポイントクラウド23aを一元管理することができる。
【0044】
本発明によるマップデータ作成システム10によるマップデータの作成作業は、図9に示すフローチャートに従って以下のように実行される。
【0045】
まずステップA1にて使用者がマップデータ作成装置20の電源を入れて自分の背中に背負った状態で、ステップA2にて携帯端末30を操作して動作開始指令30aを第一のネットワーク40を介してマップデータ作成装置20に送信する。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップA3にて動作開始指令30aを第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に送信する。
【0046】
これを受けて、マップデータサーバ60の制御部63は、ステップA4にてマップデータ61を作成すべき場所を指定するマップデータの作成エリア60aを第二のネットワーク50を介してマップデータ作成装置20に送信する。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップA5にてマップデータの作成エリア60aを第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。これにより、携帯端末30の制御部32は、ステップA6にて表示部34にマップデータ61の作成エリア60aを表示する。
【0047】
使用者は、携帯端末30の表示部34に表示されたマップデータ61の作成エリア60aを見て当該作成エリア60aまで移動し、当該作成エリア60aに到着したら、ステップA7にて携帯端末30を操作すると、作業開始指令30bを第一のネットワーク40を介してマップデータ作成装置20に送信する。同時に、使用者はマップデータ作成のための歩行を開始する。すると、マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップA8にてマップデータ作成装置20即ち使用者の姿勢チェックを行なう。
【0048】
本発明のマップデータ作成システム10によれば、使用者がケースを背負った状態で歩行して、所定時間毎又は所定距離毎に撮像部26の全方位カメラが周囲の静止画を撮像し、ライダー部29の横ライダー29a及び縦ライダーの検出信号S3に基づいて前方の三次元点群を生成する。そして、制御部23がこれらの三次元点群を位置センサ27からの検出信号S3による位置情報と互いに関連付けて使用者が歩行した範囲における三次元マップデータ61としてのポイントクラウド23aが作成される。
本発明のマップデータ作成システム10は可搬型のマップデータ作成装置20を使用するので、使用者が当該マップデータ作成装置20をバックパックのように背負って携行しながら歩行や自転車などで移動しつつ、道路及び周辺環境の三次元データマップとしてのポイントクラウド23aを作成することができ、自動車が通行できないような小道などのマップデータの作成や修正が可能になる。また、可搬型のマップデータ作成装置20が小型で自動車搭載のマップデータ作成装置より低コストで構成されるから、マップデータ61の作成及び修正のためのランニングコストが低減する。
【0049】
使用者の姿勢チェックは、図10のフローチャートに従って以下のように行なわれる。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップB1にて図9によるマップデータ作成作業を中断し、ステップB2にて位置センサ27及び姿勢検出センサ28からの検出信号S3,S4に基づいて三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目を検出すると共に、ステップB3にてこれらの傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定する。そして、ステップB4にてこれらの検出結果及び判定結果を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。
【0050】
これを受けて、携帯端末30の制御部32はステップB5にてこれらの検出結果及び判定結果を表示部34に表示する。その際、表示部34は、前述した各項目、即ち三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目を順次に時系列で表示する。ステップB6にていずれの項目も正常範囲である場合には、ステップB7にてマップデータ作成作業を再開して姿勢チェック作業を終了し、図9によるマップデータ作成作業に戻る。
【0051】
使用者の歩行中に三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d又は振動23eの各項目に関して正常範囲であるか否かの判定結果が携帯端末30の表示部34に画面表示されるので、使用者は携帯端末30の表示部34を視認することで、自分の姿勢や歩行速度23c、角を曲がる際の回転速度23d及び振動23eがそれぞれ正常範囲にあるか否かを視覚的に容易に把握することができる。上記各項目の判定結果のうち、正常範囲にない項目に関して使用者が姿勢、歩行速度23c、回転速度23d又は振動23eを修正し、当該項目の検出結果が正常範囲内に収まると、判定結果が即時に表示され使用者は携帯端末30の画面表示により当該項目が正常範囲に修正されたことを容易に把握することができる。
携帯端末30の表示部34には、マップデータ作成装置20のシステム状態が表示されてもよい。このシステム状態としては、ケース21a、撮像部26の静止画カメラ26a,26b及びライダー部29の温度、電源部20aのバッテリー残量、各センサ27,28の接続状態、記憶部24のメモリの記憶容量の残量等が挙げられる。ケース21aの温度は、ケース21a内に収容されるマップデータ作成装置20の制御部23や通信部22等を搭載した基板の温度や、制御部22に使用するCPUやGPUの温度が表示されてもよい。また、各センサ27,28の接続状態は、これらのセンサ27,28から出力されるデータを判断することにより接続状態の良否が表示される。
【0052】
ステップB6にて正常範囲でない項目がある場合には、ステップB8にて所定時間が経過した後にステップB2に戻る。これにより、使用者が姿勢に関する各項目のうち正常範囲にない項目について修正し、正常範囲になるのを待ってマップデータ作成作業を再開することになる。
上記構成によれば、正常範囲にない項目に関して表示部34の画面表示が警告表示となり警告音又は警告振動が発生するので、使用者は当該項目の検出結果が正常範囲にないことを視覚的に又は体感的により容易に把握して迅速に修正することが可能となる。
【0053】
このようにしてステップA8の姿勢チェックが終了すると、マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップA9にて撮像部26及びライダー部29に対して撮像を実行させて、ステップA10にて位置センサ27からの検出信号S3と姿勢検出センサ28からの検出信号S4を受信し、ステップA11にてライダー部29の横ライダー29a及び縦ライダー29bからの検出信号S5及びS6を受信し、ステップA12にて検出信号S5及びS6による三次元点群がマップデータの作成に適正か否かの判定を行なう。
【0054】
ここで、検出信号S5及びS6が適正でないと判定されると、ステップA13にてマップデータ作成装置20の制御部23は再撮像確認信号23fを作成し、第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。これを受けて携帯端末30の制御部32は、ステップA14にて表示部34に再撮像を確認する表示を行なう。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップA9に戻って再撮像を行なう。
【0055】
これに対して、ステップA12にて検出信号S5及びS6が適正であると判定されると、ステップA15にてマップデータ作成装置20の制御部23は、これらの検出信号S3即ち位置情報と検出信号S5及びS6即ち進行方向前方の三次元点群を互いに関連付けて三次元マップデータとしてのポイントクラウド23aを作成する。そして、ステップA16にてマップデータ作成装置20の制御部23は、検出信号S3による位置情報に基づいて当該マップデータの作成エリア60aで指定される範囲全体の撮像が完了したか否かを判断し、完了していない場合にはステップA17にて例えば所定距離だけ水平方向に離れた撮像位置まで移動してステップA8に戻り、姿勢チェックの後、次の撮像を行なう。
【0056】
これに対して、ステップA16にて撮像が完了した場合には、マップデータ作成装置20の制御部23はステップA18にて撮像毎に作成したポイントクラウド23aを一括して、第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に送信する。
【0057】
これにより、ステップA19にてマップデータサーバ60の制御部63は、受信したポイントクラウド23aを記憶部62に登録されているマップデータ61に追加登録する。以上で、マップデータの作成作業が完了する。
【0058】
次に、初心者の使用のための練習モードによる使用者の習熟作業について、図11のフローチャートに従って以下に説明する。
練習モードでは、マップデータ作成装置20を背負った使用者が短時間、例えば数分間から15分程度の練習時間Tだけ歩行することにより、マップデータ作成装置20そして使用者の上半身の姿勢、即ち三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目を検出して各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較する。これにより、各項目の検出結果がしきい値以下に収まるように、携帯端末30の表示部34における画面表示で修正の指示を行なうことで、マップデータ作成時の姿勢を使用者に体感させる。
【0059】
図11のフローチャートにおいて、まずステップC1にてマップデータ作成装置20の電源部20aのスイッチを入れて使用者の背中に背負った状態で、ステップC2にて携帯端末30の操作により練習開始指令30cを第一のネットワーク40を介してマップデータ作成装置20に送信する。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップC3にてその動作を練習モードに切り替えて、ステップC4にて歩行開始信号23gを作成し、第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。これを受けて携帯端末30の制御部32は、ステップC5にて表示部34に練習モードの歩行開始の旨を表示する。
【0060】
使用者が歩行を開始すると、ステップC6にてマップデータ作成装置20の制御部23は、位置センサ27及び姿勢検出センサ28からの検出信号S3,S4に基づいて三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目を検出し、ステップC7にてこれらの傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果をそれぞれしきい値と比較して正常範囲か否かを判定する。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップC8にてこれらの検出結果及び判定結果を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。
【0061】
携帯端末30の制御部32は、ステップC9にてこれらの検出結果及び判定結果を表示部34に表示する。即ち三軸方向の傾斜角度23b、歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eの各項目を順次に時系列で表示する。ステップC10にていずれの項目も正常範囲である場合には、ステップC11にて所定時間tだけ経過した後にステップC12にて練習モード開始から練習時間Tが経過しているか否かを判断し、練習時間Tが経過していない場合にはステップC6に戻る。
【0062】
ステップC10にて正常範囲でない項目がある場合には、マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップC13にて当該項目に関する修正対応23hを作成し、第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信する。これを受けて、携帯端末30の制御部32は、ステップC14にて当該項目の表示部34への検出結果及び判定結果の表示を行なう際に、この修正対応23hに基づいて当該項目の検出結果を正常範囲にするための方策を併せて表示しあるいは音声メッセージを発生させる。
【0063】
使用者は、携帯端末30の表示部34に表示される上記方策を視認しあるいは音声メッセージを聞き取り、各項目が正常範囲となるように姿勢を修正する。その後、マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップC15にて所定時間t経過後にステップC12に進む。
【0064】
ここで、使用者が姿勢を正しく修正した場合には、ステップC10にて各項目の検出結果がすべて正常範囲になる。マップデータ作成装置20の制御部23は、ステップC6以降の作業を練習時間Tの間繰り返し実行することにより、ステップC12にて練習時間Tが経過すると練習モードが終了する。
【0065】
マップデータ作成装置20は、所謂システムエラーに対して以下のように動作し、ハードウェア及び各種センサの不具合やソフトウェアの不具合などのシステムエラーによる不具合を回避することができる。ハードウェアの不具合は、具体的にはライダー部29の接触不良や回転停止、電源部20aのバッテリー残量が少ない等があるが、このようなハードウェアの不具合は制御部23が検出する。ソフトウェアの不具合も、同様にして制御部23が検出する。
【0066】
マップデータ作成装置20の制御部23は、このようなハードウェア又はソフトウェアの不具合を検出した場合には、エラー発生信号を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信し、第二のネットワーク50を介してマップデータサーバ60に送信すると共に、マップデータ作成作業を中止する。
【0067】
使用者が移動している間、マップデータ作成装置20の制御部23は、例えば所定距離毎に横ライダー29a及び縦ライダー29bからの検出信号S5及びS5から生成される三次元点群に基づいて、進行方向前方の物体の高さ位置を検知すると共に、進行方向前方の空間の幅を検知している。そして、高さ位置が所定高さ以下である場合には、高さ警告信号を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信し、幅が所定幅以下である場合に、幅警告信号を第一のネットワーク40を介して携帯端末30に送信すると共に、マップデータの作成作業を中断する。
【0068】
これにより、携帯端末30は高さ警告信号又は幅警告信号を受け取ったとき、表示部34に高さ警告表示または幅警告表示を画面表示しあるいは警告音又は警告振動を発生させる。使用者は、高さ警告表示又は幅警告表示に対して確認操作を行なうと、携帯端末30の制御部32は確認信号を第一のネットホーク40を介してマップデータ作成装置20に送信する。これを受けて、マップデータ作成装置20の制御部23は、マップデータ作成作業を再開する。なお、使用者が高さ警告表示を確認する際、ケース21から支持部材25を取り外して支持部材25を手持ちすることにより、マップデータ作成装置20の全高を低くしてマップデータ作成作業を再開することも可能である。
【0069】
上記練習モードによれば、本マップデータ作成装置を背負った状態で短時間だけ歩行することで、当該初心者の歩行時における姿勢の検出結果、即ち三軸方向の傾斜角度23bそして正常範囲でない場合の判定結果が携帯端末30の表示部34に表示される。従って、当該初心者は自分の歩行時の姿勢のクセや傾向を客観的に把握し、さらに正常範囲となるように修正することができる。当該初心者の歩行時における歩行速度23c,回転速度23d及び振動23eの各項目の検出結果、そして正常範囲にあるか否かの判定結果も携帯端末30の表示部34に表示されるので、自分の歩行時の歩行速度23c、回転速度23d及び振動23eのクセや傾向を客観的に把握し、さらに正常範囲となるように修正することができる。
【0070】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。携帯端末30はスマートホン,タブレット等のスマートデバイスに限らず、ノートパソコン等の携帯端末であってもよいことは明らかである。使用者が所持しているスマートホン,タブレット等の各種スマートデバイスを使用すれば初期投資がほぼ不要となり、低コストで且つ容易に、正しい姿勢で、自動運転車両80等のためのマップデータ61の作成を行なうことができる。
【0071】
撮像部26は、水平方向の画角が220度の二台のカメラ26a,26bによって全方位カメラを構成しているが、複数台のカメラを各カメラの水平方向の画角を互いにオーバーラップさせて等角度間隔に配置することによって、全方位カメラを構成してもよい。例えば、水平方向の画角が50度のカメラを五台使用して、互いに72度の等角度間隔に配置することによっても、全方位カメラを構成することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…マップデータ作成システム; 20…マップデータ作成装置;
20a…電源部; 21…バックパック状のケース; 21a…ショルダーベルト;
22…通信部; 23…制御部; 23a…ポイントクラウド; 23b…傾斜角度;
23c…歩行速度; 23d…回転速度; 23e…振動; 23f…再撮像確認信号; 23g…歩行開始信号; 23h…修正対応; 24…記憶部; 25…支持部材;
26…撮像部; 26a,26b…カメラ; 27…位置センサ; 28…姿勢検出センサ; 29…ライダー部; 29a…横ライダー; 29b…縦ライダー;
30…携帯端末; 30a…動作開始指令; 30b…作業開始指令; 30c…練習開始指令; 31…送受信部; 32…制御部; 33…記憶部; 34…表示部;
34a,34a’…傾斜角度の数値; 34b,34b’…傾斜角度の模式図;
34c,34c’…歩行速度の数値; 34d,34d’…歩行速度の模式図;
34e,34e’…回転速度の表示; 34f,34f’…回転速度の模式図;
40…第一のネットワーク; 50…第二のネットワーク; 60…マップデータサーバ; 60a…作成エリア; 61…マップデータ; 62…記憶部; 63…制御部;
70…第三のネットワーク; 80…自動運転車両; S1~S6…検出信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11