(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027321
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ヘアードライヤー・アダプター及びそれを付属するヘアードライヤー
(51)【国際特許分類】
A45D 20/12 20060101AFI20220203BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A45D20/12 J
A45D20/12 Z
H01F7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131249
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】518408316
【氏名又は名称】株式会社シザーストリート
(71)【出願人】
【識別番号】512324971
【氏名又は名称】古川 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040CH04
3B040CK00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヘアードライヤーに着接するだけで、毛髪を損傷せず、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすると共に、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができるヘアードライヤー・アダプター及びそれを付属するヘアードライヤーを提供する。
【解決手段】本発明のヘアードライヤー・アダプターの一つは、ヘアードライヤーのエアー吹出し口の下流側に着接することができ、エアーが通過することができる流路を備え、その流路が、硬質磁性材料からなることを特徴とする。また、本発明のヘアードライヤー・アダプターは、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロンのエアーが通過する開口部に、硬質磁性材料による磁場が形成されるように配備されることを特徴とする。更に、本発明のヘアードライヤーは、これらのヘアードライヤー・アダプターを付属していることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアードライヤーのエアー吹出し口の下流側に着接することができ、
エアーが通過する流路を備え、
前記流路に硬質磁性材料よる磁場が形成されていることを特徴とするヘアードライヤー・アダプター。
【請求項2】
ヘアードライヤーのエアー吹出し口の下流側に着接されるノズル、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロンのいずれかのエアーが通過する開口部に、
硬質磁性材料による磁場が形成されるように配備されることを特徴とするヘアードライヤー・アダプター。
【請求項3】
前記硬質磁性材料が、セラミック磁石、金属磁石、及び、ボンド磁石から選択される少なくともいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘアードライヤー・アダプター。
【請求項4】
前記セラミック磁石が、フェライト磁石であり、前記金属磁石が、アルニコ磁石、ネオジウム磁石、及び、サマリウム・コバルト磁石であり、前記ボンド磁石が、前記フェライト磁石、前記アルニコ磁石、前記ネオジウム磁石、及び、前記サマリウム・コバルト磁石から選択される少なくともいずれか一つ以上を樹脂に含有する磁石であることを特徴とする請求項3に記載のヘアードライヤー・アダプター。
【請求項5】
前記硬質磁性材料の磁束密度が、0.2テスラ(T)以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のヘアードライヤー・アダプター。
【請求項6】
請求項1、3、及び、4のいずれか一項に記載のヘアードライヤー・アダプターを付属していることを特徴とするヘアードライヤー。
【請求項7】
請求項2、3、及び、4のいずれか一項に記載のヘアードライヤー・アダプターを備えているノズル、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロンから選択される一つ以上を付属していることを特徴とするヘアードライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアードライヤーのエアーの流路に付設するだけで、ヘアードライヤーの乾燥能力を損なうことなく、毛髪を損傷せず、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすると共に、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができるヘアードライヤー・アダプター及びそれを付属するヘアードライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
洗髪した後、ヘアードライヤーを用いて毛髪を乾燥させる習慣が一般的になって久しいが、これは、生乾きの毛髪が枕等の寝具も湿らせることによって、毛髪、毛根、及び、頭皮の衛生状態を悪化させ、頭皮に繁殖した雑菌が異臭を発生させるだけでなく、炎症等の問題を引き起こすので、健康な毛髪を育成し、美髪を保
つことができなくなるためである。ヘアードライヤーを用いて毛髪を十分に乾燥させると、毛髪を保護するキューティクルが閉じ、毛髪内部からの水分の蒸発を防ぐことができ、パサツキがない艶のある毛髪を保つことができるのである。(非特許文献1)
【0003】
しかし、ヘアードライヤーを用いた毛髪の乾燥には、繊細な注意を払う必要がある。毛髪にヘアードライヤーを当て続け、100℃以上に加熱すると、生卵が固まるように、毛髪内部のタンパク質が変質して毛髪の空洞化が生じ、毛髪の損傷が激しくなる(例えば、非特許文献2)。そのため、60~70℃となるように、間欠したヘアードライヤーの操作や、温風と冷風の使い分け等が必要である(例えば、非特許文献3)。
【0004】
一方、男女を問わず、清潔で艶のある整えられた毛髪に憧れる気持ちは強い。特に、女性の場合、くせ毛がなく、艶のある美しいストレートヘアにしたいという願望や、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れのカールを掛けたいという要求が、年代を問わず幅広く存在し、毛髪の理美容に対する出費が少ないとは言えない(例えば、非特許文献4)。
【0005】
そのため、上述した願望や要求を満たすことができるような効果を発揮する機能が、自宅で使用するヘアードライヤーにも求められ、このような需要に対して応えるヘアードライヤーの開発が行われてきた。
【0006】
まず、着目されたのは遠赤外線を利用したヘアードライヤーで、毛髪を迅速に乾燥することができ、頭皮の血行を促進する効果があると記載されている(例えば、特許文献1)。遠赤外線は、1981年にアメリカ航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration,NASA)が、遠赤外線は人体の水分子との共振作用によって熱エネエルギーを発生する人体に有効な電磁波であると発表した研究報告以降注目され、育成光線と呼称されるようになり、暖房機等の熱線として幅広く応用されたものである(非特許文献5)。確かに、遠赤外線の波長の電磁波は、生体の表面から約200μmの深さで大半が吸収され、生体を発熱させる作用や、生体の細胞を活発化する作用がある上、殺菌作用を有することが報告されている(例えば、非特許文献6~8)。
【0007】
次いで、放電等によって形成されたプラズマから放出されるイオン、ラジカル、及び、オゾン等が、殺菌及び消臭に効果的であるため、空気清浄機、エアコン、除湿器、及び、加湿器等で幅広く利用されているが、ヘアードライヤーにおいても、これらを活用できることが見出された(非特許文献9)。
【0008】
特に、ヘアードライヤーの場合には、湿度の高い環境で使用されるため、放電等によって形成されたプラズマ中で生成する電子及びイオンと水分子との相互作用が利用されている。例えば、電子が空気中の分子に付着した状態で水分子を数個取り込んだマイナスイオン、及び、水素プラスイオンと酸素マイナスイオンが水分子を数個取り込んで安定化したプラズマクラスター等を利用するものである。(例えば、特許文献2~6、並びに、非特許文献9及び10)。
【0009】
例えば、空気の分子に電子が付着した状態で水分子を数個取り囲んだものであると定義されたマイナスイオンによるトリートメント効果を向上可能なヘアードライヤーが報告されている。特に、冷風流路に放電装置を配置されることを特徴とし、熱風流路に配置される場合と比較して、マイナスイオンの蒸散が防止され、画素毛髪内部まで浸透し、毛髪がしっとり、サラサラになる効果が向上することが記載されている(特許文献2)。
【0010】
更に、このマイナスイオンを強制的に冷却して低い熱運動エネルギー状態に保ち、その蒸散が抑止されることによって、一層潤いのある毛髪に仕上げることができるように改良されたヘアードライヤーも提案されている(特許文献3)。
【0011】
また、放電装置で発生したイオンが拡散することがない空気流路を形成し、毛髪に対するイオンの分布密度を高め、毛髪を電気的に中和し、毛髪の内部深くまで水分を浸透させ、毛髪の状態を好適化するヘアードライヤーが報告されている。このイオンと水分子との相互作用に基づくこれらの状態に関する記載はないが、放電部で形成されたプラズマから放出されるイオンが、帯電した毛髪を中和すると共に、水分子を取り込んだクラスターが毛髪に作用する効果を高める流路としていることを特徴としている(特許文献4)。
【0012】
一方、このような放電装置(イオン発生装置)の生成する正負のイオンによる、殺菌効果、及び、帯電した毛髪の除電によるまとわりつき等の抑制効果によって、髪の乾燥を円滑に行うと共に、空気清浄機にも利用できるヘアードライヤーが開発されている(特許文献5)。
【0013】
しかし、このような放電装置を備えたヘアードライヤーは、空気の吸込み口から吹出し口への規則的な流れの場合、通常正に帯電した埃等の異物が、マイナスイオンに帯電したヘアードライヤー内部の部材に電気的に吸着されやすいという問題がある。この課題に対し、吹出し口から吸込み口への第二の空気の流れを形成して、埃等の異物の効率的に飛散できるヘアードライヤーが提案されている(特許文献6)。
【0014】
ヘアードライヤーの重要な課題である毛髪への豊富な水分供給は、放電装置が形成するプラズマから生成される電子及びイオンと水分子との相互作用を利用する方法以外に、ミストを積極的に利用する方法が検討されてきた(例えば、特許文献7~10)。
【0015】
しかし、ミストを温風と共に供給できるヘアードライヤーであっても、ミスト量と温風が一定の場合、頭髪の状態に応じた寝ぐせ直しや洗髪後のセット等が困難で使い勝手が悪いという問題があった。これに対し、ミスト量を制御することによって解決するヘアードライヤーが提案された(特許文献7)。
【0016】
更に、従来のミスト発生装置は、水タンク、ミストノズル、エアーポンプとから構成されるものであったが、水が供給される放電電極に高電圧を印加して形成される静電霧化現象によって帯電微粒子水(ナノサイズミスト)を生成させる静電霧化装置が開発され、ヘアードライヤー及びヘアーセッター等の理容機器、並びに、空気清浄機等の空調機器等への搭載が検討されてきた(特許文献8)。これは、ナノサイズミストが強酸性の微小な粒子であり、毛髪に当てればツヤやコシを与えることができ、消臭等の効果も有しているためである。ヘアードライヤーに適用する場合には、ナノサイズミストの吐出量が不足しているため、その改良が施されている(特許文献9)。
【0017】
また、ミスト(水滴)ではなく、ヒーターにより発生される蒸気をヘアードライヤーに適用することによって、温風による毛髪の水分の急激な減少を抑制し、潤いを持った毛髪に乾燥できるヘアードライヤーも提案されている(特許文献10)。
【0018】
最近では、遠赤外線発生部材とマイナスイオン発生部材の最適な配置によって、遠赤外線効果とマイナスイオン効果のいずれの効果も互いに妨げることがないヘアードライヤーも提案されている(特許文献11)。
【0019】
このように、遠赤外線、マイナスイオン、ミスト、及び、蒸気の毛髪に対する効能を活用したヘアードライヤーが日々改良され、多種多様なヘアードライヤーが消費者に提供されてきた。しかしながら、いずれのヘアードライヤーも、温風発生装置、遠赤外線発生装置、各種放電装置、静電霧化装置、及び、蒸気発生装置、並びに、それらの制御機器等をヘアードライヤーに内蔵させる必要があり、構造が複雑で重く、故障の原因を数多く内在した、高価な機器となっているにもかかわらず、毛髪及び頭皮に及ぼす明らかな効能を発現しうるとは限らない。
【0020】
ただし、これまでのヘアードライヤーの技術開発を顧みると、温風暴露環境下における水分子の毛髪及び頭皮に及ぼす何らかの作用が重要であることを否定することはできないと考えられる(例えば、非特許文献9及び10、並びに、特許文献1~11)。
【0021】
このことは、毛髪の化学的構成成分及び構造からも示唆される(非特許文献2及び3)。まず、毛髪の大部分が、水分子や熱の影響を受け易いタンパク質で化学的に構成されていることである。更に、毛髪が、メデュラをコルテックスが取り囲み、コルテックスがキューティクルで被覆されている構造であり、メデュラ、コルテックス、及び、キューティクルが、それぞれ、次のような特徴を備えていることにある。すなわち、メデュラは、円柱状の多孔質状タンパク質であるが、熱による損傷によりメデュラの割合が増加する。コルテックスは、繊維状タンパク質の束が更に多数束ねられており、毛髪の85~90%を占め、タンパク質の構造及び水分量が毛髪の柔軟性及び太さに影響する。そして、キューティクルは、うろこ状平板が4~10枚積層された多層構造で、その積層界面が毛髪の0.1%しか存在しない18-メチルエイコサン酸という脂質で被覆され、毛髪内部を保護しているが、水で膨潤しやすく、毛髪内部への水の供給路となっており、毛髪の艶及び手触りを左右する18-メチルエイコサン酸が失われ易い。
【0022】
すなわち、卵の加熱変質によって調理され、加熱温度によって温泉卵や茹で卵のように状態が異なることから分かるように、タンパク質で構成される毛髪は、極めて熱に敏感である上、毛髪の内部構造が、多孔質状又は繊維状で水熱の影響を受け易く、内部を保護する最外層が水に膨潤しやすく、脂質を失いやすいため、ヘアードライヤーを用いた毛髪の乾燥において、乾燥能力を損なうことなく、毛髪を損傷せず、水分の潤いを与え、艶のある毛髪に仕上げるためには、水を介在させることは不可欠であると考えられる。また、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えるためには、極めて温和な水熱処理で毛髪を乾燥させる必要があると考えられる。
【0023】
このようなヘアードライヤーを用いた乾燥を見直したところ、温風及び冷風にかかわらず、そこには、特別な操作を施さなくとも水分子が存在しており、水分子が毛髪に接触する機会があるということを再認識すると共に、水の沸点や融点等が、水の分子量と類似したアルコール等のそれらよりもはるかに高いという水の特異性に着目した。
【0024】
上述した水(H2O)の特異性は、酸素(O)原子がマイナスに分極すると共に、水素(H)原子がプラスに分極して、0.0956nmの間隔で二つのO-H結合が形成され、それらの結合角が104.5°の分子構造に形作られていることに起因している。すなわち、この分極された分子構造に基づき、異なる水分子のO原子とH原子とが水素結合し、水分子の塊であるクラスターを形成すると共に、双極子モーメントを有するイオン性分子の挙動を示すためである(非特許文献11~12)。具体例として、一般的に分子量の大きさと相関関係にある物質固有の沸点を取り上げると、水(分子量:18)の沸点は100℃であるのに対し、分子量が2だけしか異ならないメタノール(分子量:16)の沸点は-164℃で、264℃もの差があり、これが水の特異性を如実に示している。
【0025】
このような水分子の構造は、次のように二つの考え方に基づいて説明されている。一つは、
図1に示すように、O原子Aの2P軌道A3とH原子Bの1S軌道B1の不対電子が共有化されてO-H結合を形成する考え方で、O原子AとH原子Bの電気陰性度の差によって生じるO-H結合の分極(O原子:-2δ、H原子:+δ)によってH原子同士が反発し、O-H結合の角度αが104.5°となることを説明するものである。O原子Aは、原子番号が8で、8つの電子を有し、エネルギー準位の低い順に、1S軌道A1及び2S軌道A2に、それぞれ2つの電子が入り、そして、
図1では、2P
x軌道A31、2P
y軌道A32、及び、2P
z軌道A33に、それぞれ、1つ、2つ、及び、1つの電子が入っている。2P軌道A3は、三つの軌道にそれぞれ2つの電子が入ることによって安定化するため、H原子Bの1S軌道B1に入っている1つの電子が、O原子Aの2P
x軌道A31及び2P
z軌道A33と共有して共有結合を形成する。この分子軌道によれば、O-H結合の角度αは90°となるべきであるが、プラスに分極したH原子同士が反発して、104.5°の結合角αに拡大していると解釈することができる。
【0026】
もう一つは、O原子AのSP3混成軌道A41~44を用いて、O原子AとH原子Bとが共有結合して水分子の構造が形成される考え方で説明するものである。O原子Aの1S軌道A1には2つの電子が入るが、上述したように、エネルギー準位の低い順に電子が入るのではなく、2S軌道に入るべき2つの電子と、2Px軌道A31、2Py軌道A32、及び、2Pz軌道A33に入るべき4つの電子が混成し、2つのSP3混成軌道A41、42には2つの電子が、残りの2つのSP3混成軌道A43、44には1つの電子が入り、正四面体の安定した4つのSP3混成軌道A41~44を作るという考え方である。この混成軌道に従えば、H原子Bの1S軌道B1に入っている1つの電子は、1つの電子しか入っていないSP3混成軌道A43、44と共有して共有結合を形成する。この分子軌道に従えば、O-H結合の角度αは109.27°となるべきであるが、共有電子対同士の反発力よりも、非共有電子対の反発力の方が大きいという電子対反発則により、非共有電子対同士の反発力が優り、共有電子対同士のO-H結合が104.5°の結合角αに縮小していると解釈することができる。
【0027】
いずれにしても、水分子は、O原子がマイナスに分極すると共に、H原子がプラスに分極して、0.0956nmの間隔で二つのO-H結合が形成され、それらの結合角が104.5°の分子構造に形作られている。この分極された分子構造に基づき、異なる水分子のO原子とH原子とが水素結合し、水分子の塊であるクラスターを形成すると共に、双極子モーメントを有するイオン性分子の挙動を示すために、水の特異性を発現するのである。
【0028】
そして、この水の特異性の根幹となる分極したイオン性分子は、磁場の影響を強く受けることが報告されている(非特許文献14~17)。
【0029】
水分子のO-H結合に基づく赤外線吸収スペクトルは、液相において、伸縮振動モード、変角振動モード、及び、束縛回転振動モードに由来するピークが認められるが、その伸縮振動モードの共鳴振動数が、気相の水分子よりも低振動数側にシフトしており、液相の水分子のO-H結合が水素結合によって実効的なバネ定数が小さくなることが知られている(非特許文献14)。これと同様の共鳴振動数シフトが、10T(テスラ)を超える強磁場中において認められた(非特許文献15)。すなわち、磁場における水の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、O-H伸縮振動モードの共鳴振動数が低振動数側にシフトしており、磁場において、水素結合が増加したことを示している。
【0030】
また、この磁場中における水素結合の増加が、極めて精密に測定可能な屈折率においても興味深い現象として観察されている(非特許文献15)。すなわち、10Tの磁場中において、温度変化よりもはるかに大きな水の屈折率の増加が測定され、磁場における水素結合の増加が屈折率からも確認されたのである。これは、反磁性の水が常磁性に移行して安定化していることを伺わせる。しかも、金表面の水の屈折率を測定する表面プラズモン共鳴法(SPR)とガラスセルのバルクの水の屈折率を測定する位置敏感検出法(PSD)で測定した屈折率は異なり、SPR法測定結果の方がより大きな屈折率の増加を示し、金表面の水の方が磁場に対する応答性が高いことが認められた。
【0031】
更に、磁気水も、通常の水とは異なる状態にあることが、高速原子衝撃法(Fast Atom Bombardment,FAB)と思われるイオン化法を用いたイオン化質量分析(Ionization Mass Spectrometry)により観測された(非特許文献16)。この方法によれば、水中のクラスターがイオンとして観測されるので、ネオジウム磁石4300G(ガウス、0.4T)12個が搭載された磁化装置を用いて製造された磁気水と、磁気水を製造する前の純水とを測定した結果、磁気の効果により水のクラスターが分解されていることが分かった。また、これらの水を用いたカイワレ大根栽培実験の結果、磁気水の方が発芽率及び成長率共に高くなったと報告されている。
【0032】
そして、ネオジウム磁石上で電気分解された電解質溶液中のイオンには、電子同様、ローレンツ力が働き、その水溶液が回転運動することを可視化することに成功している(非特許文献17)。このことは、分極によってイオン性を有する水分子が磁場中に突入すれば、ローレンツ力を受けることを強く示唆している。
【0033】
以上、磁場が水分子に及ぼす影響が微視的に報告されているが、このような磁場における水分子の挙動を具体的に利用した装置が、熱風乾燥機として提案され、販売されている(特許文献12及び非特許文献18)。磁場を通過した水分子を含む熱風で乾燥させるもので、水分子の磁場による揺らぎが効果を発揮することが示唆されている。
【0034】
さて、従来のヘアードライヤーは、エアーと共に、遠赤外線、電子やイオンに取り囲まれた水分子、及び、帯電微粒子水を毛髪に働きかけることによって、毛髪を損傷せず、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすると共に、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができるように改良されてきた。しかし、温風発生装置、遠赤外線発生装置、各種放電装置、静電霧化装置、及び、蒸気発生装置、並びに、それらの制御機器等をヘアードライヤーに内蔵させる必要があり、構造が複雑で重く、故障の原因を数多く内在した、高価な機器となっているにもかかわらず、毛髪及び頭皮に及ぼす明らかな効能を発現しうるとは限らない。
【0035】
従って、上述した技術背景を踏まえれば、従来のヘアードライヤー技術から逸脱した新しい発想、例えば、水分子の特異性及び水に及ぼす磁場の影響を利用することによって、毛髪に優しいヘアードライヤーを創造することが可能ではないかと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特公平8-24606号公報
【特許文献2】特開2004-208935号公報
【特許文献3】特開2009-233366号公報
【特許文献4】特開2004-230202号公報
【特許文献5】特開2013-000275号公報
【特許文献6】特開2013-111226号公報
【特許文献7】特開平5-309013号公報
【特許文献8】特開2008-012484号公報
【特許文献9】特開2009-028432号公報
【特許文献10】特開2012-210385号公報
【特許文献11】特開2017-108786号公報
【特許文献12】特許第5720937号
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】頭美人運営事務局監修,「ドライヤーによる髪への影響と対策」,ヘッドスパ頭美人ホームページ,ヘアケア講座,[2020年5月8日検索],インターネット,<URL:https://www.atama-bijin.jp/hair_care/trouble/dryer/>
【非特許文献2】花王株式会社,「髪の構造~髪の構造となりたち~」,花王ホームページ,ヘアケアサイト,[2020年5月8日検索],インターネット,<URL:https://www.kao.com/jp/haircare/hair/1-3/>
【非特許文献3】花王株式会社,「髪の知識~高温加熱の影響~」,花王ホームページ,ヘアケアサイト,[2020年5月8日検索],インターネット,<URL:https://www.kao.com/jp/haircare/hair/3-7/>
【非特許文献4】総務省統計局、「“サービス産業動向調査”平成28年の拡大調査結果(確報)結果の概要」、平成30年3月30日,[2020年5月8日検索],インターネット,URL:http://www.stat.go.jp/data/mssi/kekka/pdf/k2016k.pdf>
【非特許文献5】山城眞,黒澤宏,「育成光線とは何か?」,[2020年5月8日検索],インターネット,<URL:http://www.b-eco.com/breedingray.pdf>
【非特許文献6】一般社団法人遠赤外線協会,「遠赤外線とは?」,[2020年5月9日検索],インターネット,<URL:http://www.enseki.or.jp/tokusei.php>
【非特許文献7】成瀬宇平,「遠赤外線による調理・加工への応用の現状」,栄養学会誌,1988年,Vol.46,No.4,pp.195-198
【非特許文献8】石井猛,木村碩志,延原玲子,岡田敏彦,福田星人,「遠赤外線による魚の成育に関する考察」,岡山実験動物研究会報,2009年3月,25巻,pp.50-58
【非特許文献9】「イオンを用いた空気清浄機の原理」,[2020年5月10日検索],インターネット,<URL:https://ocw.nagoya-u.jp/files/113/C2.pdf>
【非特許文献10】シャープ株式会社,「プラズマクラスター技術」,シャープ株式会社ホームページ,[2020年5月10日検索],インターネット,<URL:https://jp.sharp/plasmacluster-tech/principle/>
【非特許文献11】北野大,「水について考える」,臨床環境医学,第22巻第1号,pp.1-5(2013)
【非特許文献12】化学屋の呟き,「水分子の構造」,[検索日:2020年5月10日],インターネット,<URL:https://hyper-chemistry.blog.ss-blog.jp/2011 -03-06>
【非特許文献13】ポーリング著(小泉正夫訳),「化学結合論」,pp.76-69,共立出版株式会社,昭和50年10月25日,改訂版15刷
【非特許文献14】芦原聡,「中赤外非線形分光法による水分子ダイナミクスの時間分解観察」,光学,40巻8号,pp.409-414(2011)
【非特許文献15】中林誠一郎,曽越宜仁,「水と強磁場との相互作用-屈折率に見る水素結合ネットワークへの磁場効果-」,化学と教育,54巻,1号,pp.8-11(2006)
【非特許文献16】大石不二夫,志賀忠宏,「磁気水の評価」,神奈川大学,年報2003, pp.177-184(2003)
【非特許文献17】矢野潤,塩原正雄,平木弘一,竹田正,「磁場中の電気分解により発生した液回転によるローレンツ力の可視化」,科学教育研究,Vol.29,No.4,pp.308-312(2005)
【非特許文献18】松井エコエネルギー社,「松井式多目的熱風機(愛称 太一号)」,[2020年5月11日検索],インターネット,<http://www.matsui-nenergy.com/03tamokuteki_neppu.files/taichi.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
従来のヘアードライヤーは、エアーと共に、遠赤外線、電子やイオンに取り囲まれた水分子、及び、帯電微粒子水を毛髪に働きかけることによって、毛髪を損傷せず、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすると共に、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができるように改良されてきた。しかし、温風発生装置、遠赤外線発生装置、各種放電装置、静電霧化装置、及び、蒸気発生装置、並びに、それらの制御機器等をヘアードライヤーに内蔵させる必要があり、構造が複雑で重く、故障の原因を数多く内在した、高価な機器となっているにもかかわらず、毛髪及び頭皮に及ぼす明らかな効能を発現し、利用者が十分に満足しうるヘアードライヤーが提供されている状況にはなく、多種多様なヘアードライヤーが利用者の好みに応じて使用されている。
【課題を解決するための手段】
【0039】
このような状況に鑑み、本発明者は、ヘアードライヤーのエアーが水分を毛髪に供給していることに着目し、その水分を構成する水分子一つ一つに毛髪に作用する活力を与える方法を種々検討してきた。その過程において、強磁性材料を素材とするコームを用いた整髪が、ネオジウム磁石をコーム近傍にネオジウ存在させたり、磁気水を用いて行われると、毛髪の絡みも少なく、癖毛を自然なストレート・ヘアーにすることができることに気づき、ヘアードライヤーのノズルに温風が通過するようにネオジウム磁石を装着して毛髪の乾燥を行ったところ、毛髪に艶を与え、ふんわりとした自然な流れの毛髪に乾燥できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0040】
すなわち、本発明の第一のヘアードライヤー・アダプターは、ヘアードライヤーのエアー吹出し口の下流側に着接することができ、エアーが通過する流路を備え、
その流路に硬質磁性材料よる磁場が形成されていることを特徴とするヘアードライヤー・アダプターである。
【0041】
本発明の第一のヘアードライヤー・アダプターを適用できるヘアードライヤーは、エアー吸込み口と吹出しし口を備えたハウジング内に、ヒーターユニット、ファン、モーター等を備え、少なくともエアーが吐出される能力を備えていること以外に制限がなく、一般に市販されている全てのヘアードライヤーを対象とすることができる。本発明のヘアードライヤー・アダプターは、水分を含むエアーに作用するため、AIR MULTIPLIER(登録商標)のような送風機構が異なるヘアードライヤーに適用することができることは当然のことながら、遠赤外線発生装置、各種放電装置、静電霧化装置、及び、蒸気発生装置等を備えたヘアードライヤーにも例外なく適用可能である。
【0042】
より具体的には、第一のヘアードライヤー・アダプターは、少なくとも、ヘアードライヤーのエアー吹出し口に装着することができる嵌合部、エアー吹出し口、エアーを通過することができる流路を備え、その流路に磁場を形成するように硬質磁性材料が配備されていればよい。
【0043】
流路のエアーが通過する面積は、ヘアードライヤーの吹出し口の面積よりも小さくてもよいが、硬質磁性材料の磁場の磁力線の密度が高くなるように、硬質磁性材料で囲まれた流路又は一つ以上の硬質磁性材料が橋架された流路が少なくとも一つ以上備えられていることが好ましい。そのような流路の数に制限はないが、吹出し口の面積及び硬質磁性材料の加工精度、並びに、風量の観点から、500流路以下であることが好ましい。
【0044】
また、流路の形状についても制約はなく、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状等の形状とすることができるが、流路のエアーの流れ方向に直角な断面形状に関わりなく、格子状になっていることが、ヘアードライヤー・アダプターの風量確保、強度、及び、加工性等の観点から好ましい。格子状としては、井桁型、面格子型、横面格子型、及び、横格子型等が好ましい。
【0045】
磁場の向きに制限はないが、磁場の向きをエアーの流れ方向と並行又は直交するように、硬質磁性材料は配備されることが好ましい。特に、磁場の向きをエアーの流れ方向と直交するように、硬質磁性材料は配備されることがより好ましい。
【0046】
そして、本発明の第二のヘアードライヤー・アダプターは、ヘアードライヤーのエアー吹出し口の下流側に着接されるノズル、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロン等のヘアードライヤーの付属品と同様に適用される形態のものではなく、ノズル、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロン等の付属品内のエアーが通過する開口部に、硬質磁性材料による磁場が形成されるように配備されることを特徴とするヘアードライヤー・アダプターである。
【0047】
この第二のヘアードライヤー・アダプターも、第一のヘアードライヤー・アダプター同様、適用できるヘアードライヤーに制限はない。
【0048】
その一実施形態としては、付属品内のエアーが通過する開口部に、硬質磁性材料で囲まれた流路が少なくとも一つ以上備えられている第二のヘアードライヤー・アダプターを挙げることができる。
【0049】
また、別の一実施形態としては、付属品内のエアーが通過する開口部に、一つ以上の硬質磁性材料が橋架された流路が少なくとも一つ以上備えられている第二のヘアードライヤー・アダプターを挙げることができる。
【0050】
このようなノズル、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロン等のヘアードライヤーの付属品に装着する本発明の第二のヘアードライヤー・アダプターは、ヘアードライヤーの付属品の開口部の面積、形状、及び、数量等に伴う制約があり、適宜設計される必要がある。
【0051】
一方、本発明の第一及び第二のヘアードライヤー・アダプターに使用する硬質磁性材料は、いわゆる、永久磁石であることが好ましいが、磁場の強度を制御するために、電磁石を使用してもよい。硬質磁性材料に制限はなく、セラミック磁石、金属磁石、及び、ボンド磁石、並びに、これらを組み合わせて使用することができる。
【0052】
セラミック磁石としては、フェライト磁石が好ましく、金属磁石としては、アルニコ磁石、ネオジウム磁石、及び、サマリウム・コバルト磁石が好ましい。ボンド磁石は、このようなフェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジウム磁石、及び、サマリウム・コバルト磁石から選択される少なくともいずれか一つ以上を樹脂に含有する磁石であることが好ましい。
【0053】
また、硬質磁性材料は、磁束密度が0.2~1.5テスラ(T)である一般的な磁石を使用することができるが、流路に使用する硬質磁性材料の密度、及び、毛髪の状態の個人差があり、ヘアードライヤー・アダプターの毛髪に及ぼす作用効果としては、エアーが通過する流路の磁場の磁束密度が0.5~1.0Tとなるように設計されることが好ましい。
【0054】
以上、本発明の第一のヘアードライヤー・アダプター及び本発明の第二のヘアードライヤー・アダプターが備えられたノズル、ディヒューザー、ブラシ、及び、アイロン等の付属品は、乾燥機能を少なくとも備えたヘアードライヤーに着接して使用することができるので、これらを付属するヘアードライヤーは、艶のある毛髪にすると共に、ふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができる機能を有し、構造が単純で軽く、故障が少なく寿命の長い上、安価なヘアードライヤーであるという特徴を有している。
【発明の効果】
【0055】
本発明のヘアードライヤー・アダプターによれば、それが装着されたヘアードライヤーは、従来のヘアードライヤーのように、エアーと共に、遠赤外線、電子やイオンに取り囲まれた水分子、及び、帯電微粒子水を毛髪に働きかけるための、遠赤外線発生装置、各種放電装置、静電霧化装置、及び、蒸気発生装置、並びに、それらの制御機器等をヘアードライヤーに内蔵する必要がなく、構造が単純で軽く、故障の原因となる要素が少なく、安価な機器となる。
【0056】
更に、本発明のヘアードライヤー・アダプターを装着したヘアードライヤーを用いた毛髪の乾燥によって、毛髪を損傷せず、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすると共に、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができるという効果を発現する。
【0057】
本発明のヘアードライヤー・アダプターを装着したヘアードライヤーのエアーは、温風及び/又は冷風だけを吹出すヘアードライヤーによる毛髪の乾燥における毛髪の損傷を防ぐことができるだけでなく、遠赤外線発生装置、各種放電装置、静電霧化装置、及び、蒸気発生装置、並びに、それらの制御機器等によって、エアーと共に、遠赤外線、電子やイオンに取り囲まれた水分子、及び、帯電微粒子水が毛髪に働きかけることによって生起する効果以上に、健康的で美しい毛髪に仕上げることができると共に、ボリュームのある自然な流れの毛髪にセットすることができる。
【0058】
この効力の源泉は、定かではないが、背景技術に記載したように、分極して双極子モーメントを有する、特異なイオン性水分子が、磁場を通過することによって揺動され、その水分子の揺動が、水分子を毛髪の内部まで浸透させ、毛髪を構成し、水素結合を有する親水性高分子であるタンパク質と共鳴するためであると考えている。特に、ヘアードライヤーの温風では、水分子のクラスターを作る水素結合が熱により切断され、秩序の乱れた小さなクラスター又は単独で振舞う水分子が多いため、より磁場の影響を受け易い。そのため、一方では、水分子のクラスターを作る水素結合が磁場によって破壊され、揺動する水分子単独で毛髪に働きかけることができ、他方では、単独で振る舞う水分子間に水素結合が形成され、揺動する小さな水分子の塊が毛髪に働きかけることができる。このような揺動した大きさの異なる水分子が、それぞれ、構造の異なる毛髪内外で作用するものと考えられる。
【0059】
このように、本発明のヘアードライヤー・アダプターの効果は、エアーを通過する流路に形成される磁場を通過した水分子及び水分子の塊に生起される、毛髪のタンパク質と共鳴する揺動に起因するものであり、従来技術の遠赤外線、電子やイオンに取り囲まれた水分子、及び、帯電微粒子水等とは全く異なるメカニズムにより、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすると共に、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができる効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】酸素原子と水素原子との結合が、酸素原子の2P軌道と水素原子の1S軌道の共有結合によって形成されるという考え方に基づいて、水分子の構造を説明するための水分子の分子軌道模式図である。
【
図2】酸素原子と水素原子との結合が、酸素原子のSP
3混成軌道と水素原子の1S軌道の共有結合によって形成されるという考え方に基づいて、水分子の構造を説明するための水分子の分子軌道模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、エアーの流路に磁場を形成する永久磁石である格子と、ヘアードライヤーのエアー吹出し口に着接するための嵌合部と、エアー吹出し口を備えたヘアードライヤー・アダプターをヘアードライヤーに装着した概略断面模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、エアーが通過するノズル開口部に磁場が形成されるように、永久磁石であるヘアードライヤー・アダプターを装着することができるアダプター装着部が備えられているノズルを着接したヘアードライヤーの概略断面模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、エアーが通過するノズル開口部に磁場を形成するように、永久磁石である本発明の第二のヘアードライヤー・アダプターが第一アダプター装着部に装着されたノズルを着接したヘアードライヤーの概略断面模式図、並びに、第二アダプター装着部及び第三アダプター装着部に装着することができる形態の永久磁石であるアダプターの概略断面模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る、ノズルの第一アダプター装着部に装着することができる永久磁石製ヘアードライヤー・アダプターの代表的な三種の形態を示す平面模式図である。(a)井桁型アダプター、(b)横面格子型アダプター、(c)横格子型アダプター。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、ノズルの第一アダプター装着部に装着することができる、樹脂製の外枠(b)に永久磁石製井桁(c)が嵌合された永久磁石製井桁嵌合式井桁型アダプター(a)のそれぞれの形態を示す平面模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、ノズルの第一アダプター装着部に装着することができる、樹脂製の一つの縦枠を中央に配置した外枠(b)に永久磁石製横枠が嵌合された永久磁石製横枠嵌合式横面格子型アダプター(a)のそれぞれの形態を示す平面模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る、ノズルの第一アダプター装着部に装着することができる、樹脂製の外枠(b)に永久磁石製横枠(c)が嵌合された永久磁石製横枠嵌合式横格子型アダプター(a)のそれぞれの形態を示す平面模式図である。
【
図10】本発明の磁性を有するヘアードライヤー・アダプターの作用効果を説明するため、
図8に示す磁石製横枠嵌合式横面格子型アダプターに、代表的な磁力線が描出された斜視模式図である。(a)ヘアードライヤーのエアーの流れ方向と永久磁石製横枠のNS両磁極を結ぶ方向とが一致する場合。(b)ヘアードライヤーのエアーの流れ方向と永久磁石製横枠のNS両磁極を結ぶ方向とが直交する場合。
【
図11】本発明の一実施形態に係る、ノズルの第一アダプター装着部に装着することができる、樹脂製の円柱状嵌合部を凹設した横面格子型アダプター(a)に磁力線を描出した円柱状永久磁石(b)が嵌合された永久磁石製円柱嵌合式横面格子型アダプター(c)のそれぞれの形態を示す平面模式図又は斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面に示した一実施形態を用い、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0062】
図3は、本発明の一実施形態に係る、エアーの流路に磁場を形成する永久磁石である格子22と、ヘアードライヤーのエアー吹出し口112に着接するための嵌合部23と、エアー吹出し口24を備えた本発明の第一のヘアードライヤー・アダプター2をヘアードライヤー1に装着した概略断面模式図(a)と、第一のヘアードライヤー・アダプター2の矢印方向から見た平面図(b)である。
【0063】
ヘアードライヤー1は、エアー吸込み口111及びエアー吹出し口112を備えたハウジング11に、熱源121、温度過昇防止装置122、及び、温度ヒューズ等を備えたヒーターユニット12、ファン13、モーター14等を内蔵し、ハンドル15、電源・操作スイッチ16、電源コード17等、最も基本的な部品や器具から構成されるものである。
【0064】
このようなシンプルなヘアードライヤー1のエアー吹出し口に、本発明の第一のヘアードライヤー・アダプター2を装着して、ヘアードライヤー1を使用した毛髪の乾燥を行うだけで、毛髪に水分の潤いを与え、艶のある毛髪にすることができる。また、毛髪をストレートに仕上げる場合にも、毛髪にカールを掛ける場合にも、毛髪の根元から毛先までふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることもできる。
【0065】
この第一のヘアードライヤー・アダプター2の効力は、分極して双極子モーメントを有する特異なイオン性水分子が、例えば、格子状に成形された0.5Tのネオジウム磁石で製造された磁場形成格子22の磁場が形成されたエアー流路21を通過することによって揺動され、その水分子の揺動が、水分子を毛髪の内部まで浸透させ、毛髪を構成し、水素結合を有する親水性高分子であるタンパク質と共鳴するためであると推測している。
【0066】
図4は、本発明の一実施形態に係る、エアーが通過するノズル18の開口部に磁場が形成されるように、永久磁石である本発明の第二のヘアードライヤー・アダプター3を装着することができるアダプター装着部181~183が備えられているノズル18を着接したヘアードライヤー1の概略断面模式図である。
【0067】
ヘアードライヤー1は、
図3と全く同様の構造であり、一般的に、このようなヘアードライヤー1には、エアーの強さ、向き、及び、拡がり等を調整するノズル18が付属されている。本発明の第二のヘアードライヤー・アダプター3は、このようなノズル18の内部のエアー流路に磁場を形成することができるように装着することができるものである。
図4の実施形態では、本発明の第二のヘアードライヤー・アダプター3が装着可能なように、アダプター装着部181~183が形成されているが、本発明のヘアードライヤー・アダプター3に装着部を形成しておく方が好ましい。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態に係る、エアーが通過するノズル18の開口部に磁場を形成するように、永久磁石である第一アダプター装着部用アダプター31が第一アダプター装着部181に装着されたノズル18を着接したヘアードライヤー1の概略断面模式図、並びに、第二アダプター装着部182及び第三アダプター装着部183にそれぞれ装着することができる形態の永久磁石である第二アダプター装着部用アダプター32及び第三アダプター装着部用アダプター33の概略断面模式図である。
【0069】
図5では、本発明の第二のヘアードライヤー・アダプター3がノズル18に装着される位置を三ヶ所示しているが、エアーが通過するように、第二のヘアードライヤー・アダプター3を配備されればよく、これに限定されることはない。
【0070】
図6は、本発明の一実施形態に係る、ノズルの第一アダプター装着部に装着することができる第二のヘアードライヤー・アダプター3の代表的な三種の形態を示す平面模式図であり、(a)は井桁型アダプター311、(b)は横面格子型アダプター312、そして、(c)は横格子型アダプター313である。これらのアダプターは、永久磁石で成形加工されたもので、0.2~1.5Tのネオジウム磁石であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0071】
井桁型アダプター311は、横枠3111と縦枠3112からエアー流路3114が形成されており、粉末焼結法の一体成形により製造することができる。NS両極を結ぶ方向は、特に限定されないが、エアーの流れ方向に対して平行又は直角方向である方が、流路314の磁場が流路314を通過する水分子に及ぼす影響が強くなり、毛髪に好影響を与える。また、流路311の形状は、ヘアードライヤー・アダプター311の流路311を通過する風量、磁場の大きさ、開口面積当たりの外周の長さ、及び、機械的強度等の観点から四角柱状であることが好ましく、三角柱状であることがより好ましい。なお、開口面積当たりの外周の長さは長い程、磁束密度が高くなるためである。ただし、流路311のエアーの流れ方向に直角な断面の断面積は、永久磁石の磁場の大きさ、風量、及び、機械的強度等を考慮して適宜設定される。また、装着部3115は、ノズル18の第一アダプター装着部に凸部を形成した場合に嵌合する凹部としたが、ヘアードライヤー・アダプター3が磁石であることを利用した装着方法等を用いることができる。
【0072】
横面格子型アダプター312は、横枠3121と縦枠3122とで形成される流路3124の面積を大きくし、風量を高め、流路3124に形成される磁力線の性状を変化させたものである。毛髪の状態に個人差があるため、横面格子型アダプター312の方が良好な結果が得られる場合もある。なお、装着部3125は、井桁型アダプター311と逆のパターとしている。
【0073】
横格子型アダプター313は、横面格子型アダプター312の縦枠を取り除いたものである。破壊しやすい形状であるが、より風量が高く、流路3125に形成される磁力線の性状がより単純化され、個人差はあるが、横格子型アダプター313が適している場合もある。従って、以上の三種の形態のヘアードライヤー・アダプター3を用意しておくことが、ヘアードライヤーの使用者に限定されず、幅広く同じ効果を発現するために望ましい。このように、従来技術とは異なり、容易な交換によって毛髪に与える影響の調整が可能であるということも、本発明のヘアードライヤー・アダプターの大きな特徴である。
【0074】
図7~9には、ヘアードライヤー・アダプター3が、永久磁石だけからではなく、例えば、安価な樹脂製の枠に、粉末焼結法で成形された永久磁石を嵌め込む嵌合式アダプターの代表例を示している。この方法は、永久磁石の構造を簡略化し、高価な永久磁石の使用量を削減し、異なる形態のヘアードライヤー・アダプター3を同一の磁石パーツで製造できるという特長がある。
【0075】
図7は、永久磁石製井桁嵌合式井桁型アダプター314(a)が、ノズル18の第一アダプター装着部181に装着する装着部3145を備え、樹脂製の外枠3143(b)に、横枠3141及び縦枠3142で流路3144が形成された永久磁石製井桁(c)が嵌合され、製造されたものであることを示している。
【0076】
図8は、永久磁石製横枠嵌合式横面格子型アダプター315(a)が、ノズル18の第一アダプター装着部181に装着する装着部3155を備え、永久磁石製横枠3151の嵌合部3156を凹設した樹脂製の一つの縦枠3152を中央に配置した樹脂製の外枠3153(b)に、永久磁石製横枠3151が嵌合され、製造されたものであることを示している。
【0077】
図9は、永久磁石製横枠嵌合式横格子型アダプター316(a)が、ノズル18の第一アダプター装着部181に装着する装着部3165を備え、永久磁石製横枠3161を組継ぎする嵌合部3166を凹設した樹脂製の外枠3163(b)に、永久磁石製横枠3161(c)が嵌合され、製造されたものであることを示している。
【0078】
図10は、このような実施形態で示している永久磁石を含んで製造された本発明の第一及び第二のヘアードライヤー・アダプターの作用効果を説明するため、
図8に示す永久磁石製横枠嵌合式横面格子型アダプター315に、代表的な磁力線H1、H2を描出した。
【0079】
図10(a)は、ヘアードライヤー1のエアーの流れ方向と永久磁石製横枠3151のNS両磁極を結ぶ方向とが一致する場合で、流路3154の中に、エアーの流れ方向に磁力線が走り磁場を形成している。エアーの流れについて表現すれば、上流側のヘアードライヤー・アダプター315表面をN極、下流側のヘアードライヤー・アダプター315表面をS極に統一した例を示している。一方、
図10(b)は、ヘアードライヤー1のエアーの流れ方向と永久磁石製横枠3151のNS両磁極を結ぶ方向とが直交する場合で、流路3154の中に、エアーの流れ方向と直角方向に磁力線が走り磁場を形成している。
【0080】
このような磁場に、分極して双極子モーメントを有するイオン性の水分子が突入してくると、磁場の影響を受けることによって水分子が揺動するものと推測している。特に、磁場と電子の関係から、ローレンツ力が強く作用する、
図10(b)のように、流路3154内にエアーの流れ方向に直角方向に磁力線が走る磁場が好ましい。事実、この場合の方が、艶があり、ふんわりとしたボリュームのある自然な流れの毛髪に整えることができる。
【0081】
更に、
図11には、永久磁石製円柱嵌合式横面格子型アダプター317(c)が、ノズル18の第一アダプター装着部181に装着する装着部3175を備え、円柱状嵌合部3176を凹設した樹脂製の横面格子型アダプター(a)に、円柱状永久磁石3177(b)が嵌合され、製造されたものであることを示している。
【0082】
これは、流路3174に磁場が形成されるためには、永久磁石が必ずしも連続一体化している必要がなく、本発明の第一及び第二のヘアードライヤー・アダプターいずれにしても、様々な構成とすることができることを示す一例である。すなわち、本発明のヘアードライヤー・アダプターは、磁場が形成された流路を通過するということ以外に限定される要素はほとんどないことを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のヘアードライヤー・アダプターの技術的本質は、磁場を通過する、分極した双極子モーメントを有するイオン性の水分子に生起する揺動を毛髪の手入れ、すなわち、ヘアケアに利用していることにある。従って、水分子を含むエアーを利用する美顔器等のボディケアに機器には極めて効果的であると考えられる。また、磁気水のように、植物の生育を促進する効果があるため、農業分野における噴霧機器に利用することができると考えられる。更に、揺動する水分子の効果は定かではないが、空調機器、空気清浄機、加湿器等幅広く利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
A 酸素(O)原子
A1 酸素の1S軌道
A2 酸素の2S軌道
A3 酸素の2P軌道
A31 酸素の2Px軌道
A32 酸素の2Py軌道
A33 酸素の2Pz軌道
A41~A44 酸素のSP3混成軌道
B 水素(H)原子
B1 水素の1S軌道
α 酸素-水素結合角
1 ヘアードライヤー
11 ハウジング
111 エアー吸込み口
112 エアー吹出し口
12 ヒーターユニット
121 熱源
122 温度過昇防止装置
123 温度ヒューズ
13 ファン
14 モーター
15 ハンドル
16 電源・操作スイッチ
17 電源コード
18 ノズル
181 第一アダプター装着部
182 第二アダプター装着部
183 第三アダプター装着部
2 第一のヘアードライヤー・アダプター
21 エアー流路
22 磁場形成格子
23 ヘアードライヤーとの嵌合部
24 エアー吹出し口
3 第二のヘアードライヤー・アダプター
31 第一アダプター装着部用アダプター
32 第二アダプター装着部用アダプター
33 第三アダプター装着部用アダプター
311 第一アダプター装着部用永久磁石製井桁型アダプター
312 第一アダプター装着部用永久磁石製横面格子型アダプター
313 第一アダプター装着部用永久磁石製横格子型アダプター
314 第一アダプター装着部用永久磁石製井桁嵌合式井桁型アダプター
315 第一アダプター装着部用永久磁石製横枠嵌合式横面格子型アダプター
316 第一アダプター装着部用永久磁石製横枠嵌合式横格子型アダプター
317 第一アダプター装着部用永久磁石製円柱嵌合式横面格子型アダプター
3111~3171 横枠
3112~3172 縦枠
3113~3173 外枠
3114~3174 エアー流路
3115~3175 装着部
3156 縦枠の永久磁石製横枠嵌合部
3166 外枠の永久磁石製横枠嵌合部
3177 横面格子の永久磁石製円柱嵌合部
H 磁力線
H1 アダプター面直交方向の磁力線
H2 アダプター面方向の磁力線