(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027378
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】蓋用積層材、包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220203BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220203BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220203BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B32B15/08 F
B32B27/18 Z
B65D65/40 D
B65D77/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166347
(22)【出願日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020130936
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】羽野 隆之
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA01
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4F100AB01C
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4F100YY00A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保護樹脂層に摩擦力や衝撃などの外力が加わっても、印刷層の剥がれや脱落、ズレ等の欠陥が生じない蓋用積層材を提供する。
【解決手段】内容物を充填した容器の開口を覆うようにしてその開口周縁部に熱融着させられる蓋用の積層材10であって、外側より順に、合成樹脂よりなる保護樹脂層11と、印刷層12と、金属箔よりなるバリア層14と、熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層17とを有し、かつ、保護樹脂層が滑剤を含み、かつヒートシール層は滑剤を含まないことを特徴とする、蓋用積層材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填した容器の開口を覆うようにしてその開口周縁部に熱融着させられる蓋用の積層材であって、
外側より順に、
合成樹脂よりなる保護樹脂層と、
印刷層と、
金属箔よりなるバリア層と、
熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層とを有し、
かつ、
保護樹脂層が滑剤を含み、かつヒートシール層は滑剤を含まないことを特徴とする、
蓋用積層材。
【請求項2】
保護樹脂層に含まれる滑剤の量が400~1000ppmである、請求項1の蓋用積層材。
【請求項3】
保護樹脂層の最外表面に滑剤が存在させられている、請求項1又は2の蓋用積層材。
【請求項4】
保護樹脂層の最外表面に存在させられている滑剤の態様が、
保護樹脂層に含まれていた滑剤がこの保護樹脂層の最外表面にブリードアウトさせられた態様、
並びに、
保護樹脂層に含まれない滑剤が付着させられた態様、
よりなる群より選ばれる少なくとも一の態様である、請求項3の蓋用積層材。
【請求項5】
滑剤が存在させられた保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数が0.05~0.5である、請求項3又は4の蓋用積層材。
【請求項6】
保護樹脂層の最外表面における滑剤の存在量が0.05~5μg/cm2である、請求項3~5のいずれかの蓋用積層材。
【請求項7】
内容物を充填した容器の開口周縁部に請求項1~6のいずれかの蓋用積層材よりなる蓋が熱融着させられてなる、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種内容物を充填した容器を熱封緘するための蓋用の積層材と、この積層材よりなる蓋で熱封緘された包装体とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳酸菌飲料、清涼飲料及びヨーグルト等の食品、顆粒製剤及び錠剤等の医薬品、並びにガーゼ及びナフキン等の衛生用品といった多くの製品(以下、単に内容物ということがある。)は、合成樹脂や金属、紙等よりなる成形容器に充填したのち、熱融着性樹脂よりなるヒートシール層が最下面に配置させられている蓋で熱封緘することによって、密封された包装体の状態で市場を流通し、店頭に陳列される。
【0003】
前記蓋は一般に、内容物を光やガス、水分等より保護する目的で各種の金属ラミネート包材より作製する。この金属ラミネート包材は、厚さ中間にアルミニウム合金箔等の金属箔よりなるバリア層が配置させられた積層材であり、バリア層の外面側に印刷層を設け、内容物の商品名及び成分等の情報や、バーコード、図柄等を表示することがある。また、それら印刷情報の保護を図るため、印刷層に保護樹脂層としてポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムを積層したり、特許文献1~3で示されるように、各種コーティング剤よりなる保護樹脂層を形成したりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-031016号公報
【特許文献2】特開2014-062234号公報
【特許文献3】特開2019-206387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで前記包装体は、工場から倉庫、販売店を経て消費者の元に運ばれるが、搬送時ないし運搬時の振動や取り扱い時の不手際等により、蓋の表面に強い摩擦が生じたり衝撃が加わったりすることがあり、印刷層が保護樹脂層ごと剥がれたり、脱落したり、印刷面にズレが生じたりする。特に蓋が例えば
図4で示されるようなスカート部を有するキャップ状の形態である場合には、エッジ部でそうした欠陥が生じやすい。
【0006】
上記問題を解消する手段としては、例えば、保護樹脂層を架橋性の高い熱硬化性のオーバーコート剤で形成したり、印刷インキ層を例えば紫外線硬化型インキで構成したりする方法が挙げられるが、いずれも一定の効果は認められるものの、コーティング剤や印刷インキの種類が制限され得る点で汎用性を欠く。
【0007】
本発明は、外側より順に合成樹脂よりなる保護樹脂層、印刷層、金属箔よりなるバリア層、及び熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層が積層させられた蓋用積層材であって、保護樹脂層に衝撃等の外力が加わったり強い摩擦が生じたりしても印刷層の剥がれや脱落、ズレ等の欠陥が生じない蓋に加工可能な積層材を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、蓋用積層材を構成する保護樹脂層に何らかの物体が接触して外力が加わったとしても、この外力を蓋の最外表面に沿って逃すことができれば、保護樹脂層の材料や印刷インキの種類を特段制限せずとも、印刷層における前記欠陥を防止できると着想した。そして、保護樹脂層とヒートシール層の両方に同一の又は異なる滑剤を含ませた積層材によれば、後述のように、この積層材よりなる蓋の最外表面にそれら滑剤を存在させることが可能となり、そのような蓋によれば、前記外力に因る摩擦力を低減できるようになる結果、前記課題を解決できることを見出した。即ち本発明は、下記構成よりなる蓋用積層材、及びこの蓋用積層材を要素とする包装体、に関する。
【0009】
1)内容物を充填した容器の開口を覆うようにしてその開口周縁部に熱融着させられる蓋用の積層材であって、外側より順に、合成樹脂よりなる保護樹脂層と、印刷層と、金属箔よりなるバリア層と、熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層とを有し、かつ、保護樹脂層が滑剤を含み、かつヒートシール層は滑剤を含まないことを特徴とする、蓋用積層材。
【0010】
2)保護樹脂層に含まれる滑剤の量が400~1000ppmである、1)の蓋用積層材。
【0011】
3)保護樹脂層の最外表面に滑剤が存在させられている、1)又は)2の蓋用積層材。
【0012】
4)保護樹脂層の最外表面に存在させられている滑剤の態様が、保護樹脂層に含まれていた滑剤がこの保護樹脂層の最外表面にブリードアウトさせられた態様、並びに、保護樹脂層に含まれない滑剤が付着させられた態様よりなる群より選ばれる少なくとも一の態様である、3)の蓋用積層材。
【0013】
5)滑剤が存在させられた保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数が0.05~0.5である、3)又は4)の蓋用積層材。
【0014】
6)保護樹脂層の最外表面における滑剤の存在量が0.05~5μg/cm2である、3)~5)のいずれかの蓋用積層材。
【0015】
7)内容物を充填した容器の開口周縁部に1)~6)のいずれかの蓋用積層材よりなる蓋が熱融着させられてなる、包装体。
【発明の効果】
【0016】
1)の蓋用積層材は、その最外面の保護樹脂層が滑剤を内包するため(
図1(a)参照)、潜在的に、保護樹脂層の最外表面が外部滑性を奏する。
また、1)の蓋用積層材においては、経時的に、前記滑剤が保護樹脂層の最外表面にブリードアウトし、析出相を形成する(
図1(c)参照)。そして、この析出相により、保護樹脂層の最外表面において、外部滑性機能が顕在化する。
一方、1)の蓋用積層材の最外表面には、保護樹脂層に含まれる滑剤とは別の滑剤を外部より導入することでき(
図1(d)参照)、この滑剤によっても、かかる最外表面に外部滑性を付加することができる。
以上の原理により、1)の蓋用積層材よりなる蓋は、その保護樹脂層に何らかの手段で滑剤が存在させられることによって摩擦抵抗が低減させられ、そのことにより、衝撃等の外力が加わっても、それら外力が保護樹脂層の最外表面に沿って逃されるようになる。その結果、保護樹脂層の下面に配置させられている印刷層に脱落や剥離等の欠陥が生じ難くなる。
従って、1)の蓋用積層材よりなる蓋で内容物を含む容器を熱封緘した包装体は、例えば輸送中に包装体どうしが衝突したり、店頭の商品棚より落下したりした場合に蓋に衝撃が加わっても、印字された商品情報や意匠にズレや掠れ等が発生難くなる。
【0017】
2)の蓋用積層材は、1)の蓋用積層材において、保護樹脂層に含まれる滑剤の下限量が規定されているため、印刷層の欠陥がより生じ難くなる。また、保護樹脂層の耐透湿性が好適化され、大気中の水分(湿気)が印刷層やバリア層に到達することを防止できる。一方、上限量も規定されているため、保護樹脂層の最外表面に過度のブリードアウトが生じない。そのため、2)の蓋用積層材によれば、製造ラインの無視できない汚染を回避できる。
【0018】
3)の蓋用積層材は、1)又は2)の蓋用積層材にあって、その最外表面に滑剤が実際に存在させられており、外部滑性を奏するため、この積層材よりなる蓋は、印刷層の欠陥が生じ難い。
【0019】
4)の蓋用積層材は、3)の蓋用積層材にあって、その最外表面に存在させられている滑剤の態様(由来)を規定したものである。具体的には、かかる態様には、(ア)保護樹脂層に含まれていた滑剤がこの保護樹脂層の最外表面にブリードアウトさせられた態様、並びに、(イ)保護樹脂層にも含まれない滑剤が付着させられた態様、よりなる群より選ばれる少なくとも一の態様が含まれる。態様(ア)及び(イ)は単体であってもよいし、組み合わさってもよい。組合せの場合であって、各態様の滑剤の種類を異ならせると、5)の蓋用積層材の最外表面には、種類の異なる滑剤を同時に存在させることができ、設計上の工夫が可能となる。上記態様のうち特に(ア)の析出相は、5)の蓋用積層材の保護樹脂層表面に、長期に亘り外部滑性を与える。
【0020】
5)の蓋用積層材は、4)の蓋用積層材にあって、保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数が所定範囲に限定されているため、印刷層の欠陥がより生じ難い。また、この蓋用積層材は外部滑性が適切に調節されているため、これよりなる蓋で熱封緘した包装体を開封するさい、蓋における指の滑りも生じにくくなり、開封作業が容易となる。
【0021】
6)の蓋用積層材は、3)~5)のいずれ蓋用積層材にあって、保護樹脂層の最外表面に存在させられている滑剤の量の下限値が規定されているため、印刷層の欠陥がより生じ難くなるとともに、この保護樹脂相の耐湿性も好適化されている。一方、上限量が規定されているため、保護樹脂層の最外表面に過度のブリードアウトが生じない。そのため、6)の蓋用積層材によれば、製造ラインの無視できない汚染を回避できる。
【0022】
8)の包装体は、内容物を充填した容器の開口周縁部に1)の蓋用積層材よりなる蓋が熱融着させられてなる密封体である。この蓋は、その最外面の保護樹脂層が滑剤を内包するため(
図1(a)参照)、潜在的に、保護樹脂層の最外表面が外部滑性を奏する。また、この蓋においては、経時的に、前記滑剤が保護樹脂層の最外表面にブリードアウトして、析出相を形成する(
図1(c)参照)。そして、この析出相により、保護樹脂層の最外表面において、外部滑性機能が顕在化する。一方、この蓋の保護樹脂層の最外表面には、この保護樹脂層に含まれている滑剤よりなる析出相と同時に、或いはこれとは別に、保護樹脂層に含まれている滑剤とは別の滑剤が存在させられていてもよい。そしてそれら滑剤によっても、かかる最外表面に外部滑性を発現させることができる。
以上の原理により、1)の蓋用積層材よりなる蓋は、その保護樹脂層に何らかの手段で滑剤が存在させられることによって摩擦抵抗が低減させられ、そのことにより、衝撃等の外力が加わっても、それら外力が保護樹脂層の最外表面に沿って逃されるようになる。その結果、保護樹脂層の下面に配置させられている印刷層に脱落や剥離等の欠陥が生じ難くなる。
従って、1)の蓋用積層材よりなる蓋で内容物を含む容器を熱封緘した包装体は、例えば輸送中に包装どうしが衝突したり、店頭の商品棚より落下したりした場合に蓋に衝撃が加わっても、印字された商品情報や意匠にズレや掠れ等が発生難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明の包装体の一実施形態の垂直断面図である。
【
図3】スカート部を有するキャップ状の蓋の斜視図である。
【
図4】本発明の蓋用積層材の保護樹脂層について、外部滑性を試験する方法の概念図である。
【
図5】本発明の包装体をなす蓋の保護樹脂層について、外部滑性を試験する方法の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の蓋用積層材と包装体を
図1~5を通じて詳細に説明するが、それら図面により本発明の技術範囲が限定されることはない。
【0025】
図1は、本発明の蓋用積層材(10)(以下、単に積層材(10)と略す。)の断面図である。
図1(a)の積層材(10)は、外側より順に、保護樹脂層(11)と、印刷層(12)と、外面側アンカーコート層(13)と、バリア層(14)と、内面側アンカーコート層(15)と、緩衝材層(16)と、ヒートシール層(17)とがこの順で積層させられている。但し、外面側アンカーコート層(13)、内面側アンカーコート層(15)及び緩衝材層(16)はいずれも任意であり、省略できる。また、保護樹脂層(11)には粒子状の滑剤(S1)が含ませられている。
図1(b)は、
図1(a)の積層材(10)において、滑剤(S1)を含む保護樹脂層(11)の下面に滑剤(S1)を含まない保護樹脂層(11)を、印刷層(12)との間に介在させた態様である。
図1(c)は、
図1(a)の積層材(10)において、緩衝材層(16)を省略したものである。また、保護樹脂層(11)の最外表面には、滑剤(S1)がブリードアウトしてなる析出相が形成されており、ある厚みの滑剤層(11S)が観念される。
図1(d)は、
図1(c)の積層材(10)において、外面側アンカーコート層(13)と内面側アンカーコート層(15)を省略したものである。また、保護樹脂層(11)の最外表面には、滑剤(S1)に加えて滑剤(S2)が存在させられており、それらによるある厚みの滑剤層(11S)が観念される。この滑剤(S2)は、保護樹脂層(11)に由来しない。
各図において、滑剤(S1)及び滑剤(S2)の各形態、存在態様、分布状態等に係る描写は、いずれも本発明の実施形態を観念的に示すための模式図に過ぎない。
以下、滑剤(S1)及び滑剤(S2)を滑剤(S)と総称することがあり、滑剤(S)というときは、滑剤(S1)及び/又は滑剤(S2)をいう。
【0026】
図2は、積層材(10)よりなる蓋(1)で容器(2)を熱封緘してなる包装体(3)の断面図である。
図2(a)の包装体(3)は、蓋(1)が枚葉状でありかつ容器(2)の開口周縁部(21)が略水平状で有意の幅をもつフランジの態様である。
図2(b)の包装体(3)は、蓋(1)がキャップ状でありかつ開口周縁部(21)が略起立状リムの態様である。
各包装体(3)には内容物(C)が充填されている。
【0027】
滑剤(S)としては、各種公知のワックス及び/又は界面活性剤を特に制限なく使用できる。
ワックスとしては、天然ワックス及び/又は合成ワックスが挙げられる。
天然ワックスとしては、動植物系ワックスとして例えばキャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、鯨蝋、シェラック蝋及びラノリンワックス等が、また、鉱物系ワックスとして例えばモンタンワックス、オゾケライト及びセレシン等が、また、石油ワックスとして例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びペトロラタム等が挙げられる。
合成ワックスとしては、炭化水素系合成ワックスとして例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びフィッシャートロプシュワックスが、水素化ワックスとして例えば硬化ヒマシ油及び硬化ヒマシ油誘導体等が、また、変性ワックスとして例えばポリエチレン・ポリプロピレン共重合物にスチレンをグラフト変性させてなるワックス、シリコン系ワックス(シリコーンワックス)、フッ素系ワックス及びアミド系ワックス(オレイン酸アミド、リシノール酸アミド、エルカ酸アミド、N,N'-メチレンビスステアリン酸アミド、N,N'-エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸物モノメチロールアミド、シリノール酸アミドワックス及びステアリン酸エステルワックス等)、並びにこれらの複合体等が挙げられる。
これらワックスの中でも、炭化水素系合成ワックスと変性ワックス(特にシリコン系ワックス及びアミド系ワックス)は、材料として安定であるのみならず、保護樹脂層(11)の外部滑性が一層良好となる点で好ましい。ワックスの形状は特に限定されず、ペースト状、フレーク状ないし粒子状であってよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤よりなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、リシノレイン酸硫酸エステルソーダ、リシノレイン酸エステル硫酸エステルソーダ、硫酸化アミド、オレフィンの硫酸エステル塩、脂肪族アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、こはく酸エステルスルフォン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、第一アミン塩、第三アミン塩、第四級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミノ又は脂肪族アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ワックス及び界面活性剤は夫々一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用できる。
ワックスと界面活性剤は組み合わせてもよい。この場合、界面活性剤の作用により、各種媒体中でワックスの分散性が良好となり、保護樹脂層(11)の最外表面に滑剤(S)よりなる均質な滑剤層(11S)を形成できる場合がある。
滑剤(S1)及び滑剤(S2)は相互に同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0028】
保護樹脂層(11)は、積層材(10)及び蓋(1)の各最外面を構成するとともに、それらの強度や耐久性、耐候性、耐薬品性等を高める層であり、合成樹脂よりなるとともに、滑剤(S1)を含む。
保護樹脂層(11)の形成は、滑剤(S1)を含む合成樹脂系オーバーコート剤及び/又は滑剤(S1)を含む合成樹脂フィルムで行う。
合成樹脂系オーバーコート剤は、各種公知のバインダー樹脂を溶媒に溶解させてなる組成物であり、任意に硬化剤を含む。
バインダー樹脂としては、例えば、硝化綿(ニトロセルロース)、シェラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、二種以上組合せてもよい。
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の溶媒が挙げられ、二種以上組合せてもよい。
硬化剤としては、メラミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤及びエポキシメラミン系硬化剤等が挙げられ、二種以上組合せてもよい。
合成樹脂系オーバーコート剤よりなる保護樹脂層(11)は、シングルコートであってもよいし、二層以上のマルチコートであってもよい。
合成樹脂系オーバーコート剤に含める滑剤(S1)としては、保護樹脂層(11)の最外表面にブリードアウトしやすく、相対的に強い外部滑性を示すものが好ましい。かかる観点より、脂肪酸アミド系ワックスを硝化綿に組み合わせてなる合成樹脂系オーバーコート剤が好適である。
合成樹脂系オーバーコート剤よりなる保護樹脂層(11)は、滑剤(S1)を含む合成樹脂系オーバーコート剤を印刷層(12)の表面に塗工し、通常80~170℃で塗膜を形成させた後、塗膜表面に滑剤(S1)をブリードアウトさせ、析出相を形成させることにより構成する。
合成樹脂フィルムをなす合成樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポレエステル及びポリアミド、並びにその他の合成樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンを例示できる。ポリプロピレンとしては、例えばホモポリプロピレン、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体が挙げられる。ポリエチレン及びポリプロピレンはいずれも、無水マレイン酸や酢酸ビニル等の酸で変性されていてもよい。また、ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等が挙げられる。また、ポリアミドとしては6-ナイロン等が挙げられる。合成樹脂のフィルム化手段は特に限定されず、各種公知の(共)押出成型法(インフレーション、Tダイ等)や延伸法、ラミネート法等が挙げられる。
合成樹脂フィルムに含める滑剤(S1)としては、保護樹脂層(11)の最外表面にブリードアウトしやすく、相対的に強い外部滑性を示すものが好ましい。かかる観点より、脂肪酸アミド系ワックス及び/又はポリオレフィンが好ましい。
保護樹脂層(11)に含まれる滑剤(S1)の量は特に限定されないが、その最外表面に滑剤(S1)がブリードアウトして析出相を形成するに可能な量であればよい。具体的には、滑剤(S1)を含む保護樹脂層(11)を構成する合成樹脂の重量を基準として、滑剤(S1)の量が通常400~1000ppmであると、合成樹脂よりなる連続相(マトリックス相)の強度と、滑剤(S1)よりなる析出相(分散相)の外部滑性とのバランスが良好となり、積層材(10)よりなる蓋(1)の印刷層(12)の欠陥を好適に防止できるようになる。また、かかる量の滑剤(S1)の作用により、保護樹脂層(11)の耐透湿性が好適化され、大気中の水分(湿気)が印刷層(12)やバリア層(14)に到達することも好適に防止できる。かかる観点より、当該量は、好ましくは500~1000ppmであればよい。
保護樹脂層(11)の全体の厚みは特に制限されないが、印刷層(12)の保護機能や、ヒートシール時の熱伝導性等を考慮すると、通常0.3~25μm、好ましくは0.5~15μmである。
【0029】
保護樹脂層(11)は多層であってよく、最表層に滑剤(S1)が含まれておればよい。
図1(b)の積層材(10)は、最外面に滑剤(S1)を含む保護樹脂層(11)が配置されており、その下面に滑剤(S1)を含まない保護樹脂層(11)が積層させられている。
保護樹脂層(11)は、滑剤(S1)を含む保護樹脂層(11)と、滑剤(S1)を含まない合成樹脂層(11)は、いずれも前記合成樹脂系オーバーコート剤及び/又は合成樹脂フィルムで形成できる。
図1(b)を例にとると、最外面の保護樹脂層(11)を、滑剤(S1)を含む合成樹脂系オーバーコート剤で形成するとともに、その下面の保護樹脂層(11)を、滑剤(S1)を含まない合成樹脂系オーバーコート剤又は滑剤(S1)を含まない合成樹脂フィルムで形成できる。この態様により、滑剤(S)を含む保護樹脂層(11)の外部滑性を維持しつつ、摩擦や衝撃等の外力に対する蓋(1)全体の強度を高めることができる。
滑剤(S1)を含まない合成樹脂系オーバーコート剤よりなる保護樹脂層(11)は、この合成樹脂系オーバーコート剤を印刷層(12)の表面に塗工し、通常80~170℃で塗膜を形成させることにより構成する。その後、滑剤(S1)を含む合成樹脂系オーバーコート剤を塗工して通常80~170℃で塗膜を形成させたり、滑剤(S1)を含む合成樹脂フィルムを貼り合わせたりすることにより、目的とする多層の保護樹脂層(11)が得られる。
滑剤(S1)を含む保護樹脂層(11)と、滑剤(S1)を含まない保護樹脂層(11)とを、同一又は同種の合成樹脂で構成すると、両保護樹脂層(11)の密着性が高まり、滑剤(S1)を含む保護樹脂層(11)の強度をより向上させることができるため、好ましい。
滑剤(S1)を含まない保護樹脂層(11)も、多層であってよい。
滑剤(S1)を含まない保護樹脂層(11)の全体の厚みは特に制限されないが、印刷層(12)の保護機能や、ヒートシール時の熱伝導性等を考慮すると、通常0.3~25μm、好ましくは0.5~15μmである。
【0030】
印刷層(12)は、保護樹脂層(11)と、後述の外面側アンカーコート層(13)又はバリア層(14)との間に介在させられる層であり、印刷インキよりなる。印刷インキで文字や図形、記号を形成することによって、蓋(1)に包装体(3)の内容物(C)の情報や、意匠を与えることができる。
印刷インキは、着色材及びバインダー樹脂を含む組成物であり、活性エネルギー線硬化非硬化型のものと、硬化型のものとが挙げられる。
着色材としては、顔料及び/又は染料が挙げられる。
顔料としては、例えば二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、パライト、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、アルミナホワイト、マイカ、合成ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、カーボンブラック、マグネタイト及びベンガラ等の有機系若しくは無機系の顔料が挙げられる。
染料としては、例えばアントラキノン系染料、アゾ系染料及びキノリン系染料等が挙げられる。
着色材の含有量は特に限定されず、通常は0.5~40重量%であるが、印刷層(12)の強度を確保し、その内部脱落や内部剥離を抑制する観点より2~10重量%が好ましい。
着色材の大きさも特に限定されず、顔料の場合には、平均一次粒子径が通常0.1~5μm、好ましくは0.5~3μmである。
バインダー樹脂としては、活性エネルギー線非硬化型バインダー樹脂及び活性エネルギー線硬化型バインダー樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線非硬化型バインダー樹脂としては、例えば硝化綿(ニトロセルロース)、シェラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型バインダー樹脂としては、例えば各種公知のジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート、並びに分子内に(メタ)アクリロイル基を5~6個有する(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリレート類には、各種公知のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートといった変性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。
印刷インキには、任意に溶媒、硬化剤、重合開始剤、その他の添加剤を含めることができる。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の溶媒を使用できる。また、バインダー樹脂が活性エネルギー線硬化型の樹脂である場合には、各種公知の (メタ)アクリレートを反応性の溶媒として使用できる。
硬化剤としては、例えば多官能イソシアネートや多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ケチミン化合物、メラミン化合物等が挙げられる。
重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤及びベンゾイン系開始剤等の光重合開始剤が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、各種公知のシランカップリング剤や、硬化剤、帯電防止剤等が挙げられる。
印刷層(12)は、ベタ塗りのような連続的な層であってもよいが、
図1で示すように断続的な層であってよく、後者層はグラビア印刷やオフセット印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷法で形成できる。また、印刷層(12)は単色刷りであってもよいし、多色刷りであってもよい。また、印刷層(12)は単層刷りであってもよいし、二層以上の多層刷りであってもよい。
印刷層(12)全体の厚みは特に限定されず、通常一層当たり0.5~2.0μm、好ましくは0.5~1.5μmである。
【0031】
外面側アンカーコート層(13)は、バリア層(14)の外面側表面に必要に応じて形成させられる任意の層であり、アンカーコート剤よりなる。外面側アンカーコート層(13)を保護樹脂層(11)及び/又は印刷層(12)と、バリア層(14)との間に介在させることによって、それら層どうしの接着性ないし密着性を高め、デラミネーションを防ぐことが容易となる。
アンカーコート剤としては、例えば硝化綿(ニトロセルロース)、シェラック樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。ポリウレタン樹脂をベースとするアンカーコート剤としては、二液硬化型ポリエーテル-ウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤が好ましく、硬化剤として、例えば多官能イソシアネートや多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ケチミン化合物等を併用できる。
外面側アンカーコート剤として、保護樹脂層(11)をなす樹脂及び/又は前記印刷インキをなすバインダー樹脂と同一又は同種の樹脂よりなるものを選択すると、外面側アンカーコート剤層(13)と、前記保護樹脂層(11)及び/又は前記印刷層(12)との密着性が更に良好になり、デラミネーションや、印刷層(12)の欠陥を防止しやすくなる。
外面側アンカーコート層(13)の厚みは特に限定されず、通常1~5μmである。
外面側アンカーコート層には滑剤(S)及び前記着色材が含まれない。
【0032】
バリア層(14)は、内容物(C)をガスや水蒸気、光等から保護する層であり、金属箔よりなる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔等が挙げられ、バリア機能、成形性及びコスト等を考慮するとアルミニウム箔が好適である。
アルミニウム箔としては、純アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が挙げられ、軟質材(O材)及び硬質材(H18材)のいずれかであればよい。特にJIS H4160で規定される1000系のアルミニウム合金箔のO材又は8000系アルミニウム合金箔のO材は成形性の点で好ましく、とりわけA1N30H-O、A8021H-O及びA8079H-Oが好適である。金属箔の片面又は両面には、それら界面における接着強度を向上させる目的で、下地層を、所定の化成処理液を用いて形成できる。
化成処理液としては、例えば、リン酸と、クロム系化合物と、フッ素系化合物及び/又はバインダー樹脂とを含む水-アルコール溶液が挙げられる。クロム系化合物としてはクロム酸及び/又はクロム(III)塩を、フッ素系化合物としてはフッ化物の金属塩及び/又はフッ化物の非金属塩を、バインダー樹脂としてはアクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を、夫々例示できる。化成処理液の使用量は特に限定されず、通常、金属箔の片面当たりのクロム付着量が0.1~50mg/m2となる範囲である。
バリア層(14)の厚みは特に限定されないが、通常7~50μmである。この範囲であると、ピンホールの発生や振動に因るクラックを防止しやすくなり、またヒートシール時の伝熱性を確保しやすくなる。かかる観点より、当該厚みは、好ましくは25~35μmである。
【0033】
内面側アンカーコート層(15)は、バリア層(14)の内面側表面に必要に応じて形成させられる任意の層であり、バリア層(14)と、任意の緩衝材層(16)又はヒートシール層(17)との間に介在させることによって、それら層どうしの密着性を高め、デラミネーションを防ぐことが容易となる。
内面側アンカーコート層(15)を構成するアンカーコート剤としては、外面側アンカーコート層(13)をなすアンカーコート剤と同じものを使用できるが、かかる密着性を考慮すると、各種公知のポリウレタン樹脂系接着剤が好ましく、特に二液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤が好適である。また、硬化剤として、例えば、多官能イソシアネートや多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ケチミン化合物等を併用できる。
内面側アンカーコート層(15)の厚みは特に限定されないが、前記密着性やデラミネーションを考慮すると通常1~5μmである。
【0034】
緩衝材層(16)は、バリア層(14)又は内面側アンカーコート層(15)とヒートシール層(17)との間に配置させられる任意の層であり、合成樹脂よりなる。緩衝材層(16)により、本発明の包装体(3)に振動や衝撃等の外力が加わった場合に生じ得るバリア層(14)のクラックや、包装体(3)開封時の蓋(1)の破れを防止することができる。
合成樹脂としては、保護樹脂層(11)をなす前記合成樹脂と同じものが使用でき、具体的には、前記したポリオレフィン、ポレエステル及びポリアミド、並びにその他の合成樹脂が挙げられる。これらのなかでもポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンは、ヒートシール層(17)が後述のホットメルト接着剤や多層シーラントフィルムである場合に好適である。また、ポリプロピレンは、ヒートシール層(17)がポリプロピレンやポリエステル等の場合に好適である。
緩衝材層(16)は、合成樹脂よりなるフィルム(延伸又は無延伸)で構成してもよいが、(共)押出法で構成するのが好ましい。
緩衝材層(16)の厚みは特に限定されないが、通常10~50μmである。かかる範囲であると、前記したバリア層(14)のクラックや蓋(1)の破れを防止しやすくなる。かかる観点より、当該厚みは、好ましくは25~35μmである。
【0035】
ヒートシール層(17)は、蓋(1)の最下面を構成するとともに容器(2)の開口周縁部と熱融着させられる層であり、熱融着性樹脂よりなる。但しヒートシール層(17)は滑剤(S)を含まない。
ヒートシール層(17)の形成は、熱融着性樹脂フィルム及び/又はホットメルト接着剤で行う。
熱融着性樹脂フィルムは、外形的に薄層状態であればよく、無延伸フィルム及び延伸フィルム並びに押出層等のいずれかの態様であればよい。熱融着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、前記ポリプロピレン類、ポリエチレン類及びポリエチレン・プロピレン類が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。ポリビニル樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
熱融着性樹脂フィルムは複層であってよく、例えば、同一の又は異なる少なくとも二種の熱融着性樹脂を共押出ししてなる多層フィルム、同一の又は異なる少なくとも二枚の熱融着性樹脂フィルムをラミネートしてなる多層フィルム、及び熱融着性樹脂フィルムと熱融着性樹脂よりなる押出層とよりなる多層フィルム等が挙げられる。
ホットメルト接着剤は、ベース樹脂及び粘着付与樹脂を含む組成物であり、各種公知のものを使用できる。
ベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィン及びエチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。ポリオレフィンとしては、前記したポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。酢酸ビニル共重合体としては、例えば、エチレン・エチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9系石油樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂の使用量は特に限定されず、ベース樹脂100重量部に対して通常10~50重量部程度である。
ホットメルト接着剤よりなる層は、バリア層(14)、内面側アンダーコート層(15)又は緩衝材層(16)にホットアプリケーターやグラビアコーター等を用いて塗工することにより形成できる。塗工量は特に限定されないが、シール精度やシール強度を考慮すると、通常10~25g/m2、好ましくは12~20g/m2である。また、ホットメルト接着剤よりなる層は、予めフィルム化されたホットメルト接着材で構成してもよい。
熱融着性樹脂フィルム及びホットメルト接着剤には、任意に各種添加剤を含めてよく、例えば、アンチブロッキング剤や帯電防止剤が挙げられる。
ヒートシール層(17)と容器(2)とを同一又は同種の合成樹脂で構成すると、シール精度及び強度が高まり、例えば、シール面に塵芥等の夾雑物が付着していても、蓋(1)と容器(2)の開口周縁部(21)との熱融着性が高まる。
ヒートシール層(17)の厚みは特に限定されないが、シール精度やシール強度を考慮すると、通常10~50μm、好ましくは25~35μmである。
【0036】
積層材(10)は、例えば、ドライラミネート法や溶融押し出しラミネート法、ヒートラミネート法、グラビアコート法等の各種公知の方法で製造でき、これら工法は組合せてもよい。
【0037】
図1(a)及び
図1(b)の積層材(10)はいずれも、最外面の保護樹脂層(11)に滑剤(S1)が内包される態様であり、滑剤(S1)が保護樹脂層(11)の最外表面に実質的に存在しないため、潜在的に外部滑性を奏する態様である。
【0038】
図1(c)の積層材(10)は、
図1(a)の積層材(10)(但し緩衝材層(16)は省略)において、滑剤(S1)が保護樹脂層(11)の最外表面にブリードアウトして析出相を形成し、ある厚みの滑剤層(11S)を形成している態様である。そしてこの析出相により、保護樹脂層(11)は、その最外表面において外部滑性を奏するようになる。ブリードアウトを実現するためのエージング条件は特に限定されず、例えば、室温~70℃程度、1~15日程度であればよい。
【0039】
図1(d)の積層材(10)は、
図1(c)の積層材(10)(但し外面側アンカーコート層(13)及び内面側アンカーコート層(14)は省略)において、保護樹脂層(11)の最外表面に滑剤(S1)に加え、滑剤(S2)を、前者とは異なる手段で存在させた態様である。滑剤(S2)の導入手段としては、例えば、塗布法や蒸着法が挙げられる。
塗布法では、例えば、保護樹脂層(11)の最外表面をなす合成樹脂系オーバーコート剤の硬化層又は合成樹脂フィルム(いずれも滑剤(S1)を含む)に、滑剤(S2)に溶媒に溶解又は分散させてなる溶液乃至分散体を、各種公知の手段で塗布し、溶媒を揮発させることによって、この滑剤(S2)を、保護樹脂層(11)の最外表面に存在させることができる。そのさい、滑剤(S2)として、前記ワックスに適量の前記界面活性剤を組合せたものを用いると、塗布性や拡散性が向上し、より均一な厚みの滑剤層(11S)が形成されやすくなる傾向にある。塗布手段は特に限定されず、例えば、スプレーコート法やグラビアロールコート法、リバースロールコート法等が挙げられる。前記溶液乃至分散体における滑剤(S3)の濃度は特に限定されず、後述の滑剤(S)の存在量を実現できる濃度であればよく、例えば、重量基準で500 ppm~10000ppmとすることができる。
保護樹脂層(11)の最外表面に存在している滑剤(S)の様相は特に限定されないが、例えばこれが実質的に分散相を形成する場合には、
図1(c)で観念されるような断続的な滑剤層(11S)が形成され得る。また、当該滑剤(S)が実質的に連続相を形成する場合には、
図4で観念されるような連続的な滑剤層(11S)が形成され得る。
蒸着法では、例えば、真空チャンバー中で滑剤(S3)を加熱して気化させ、保護樹脂層(11)の最外表面にクラスター分子として蒸着させればよい。この態様だと、連続相たる滑剤層(11S)をより均一な厚みで形成できるようになる。
【0040】
滑剤(S)が存在させられた保護樹脂層(11)の最外表面の外部滑性の程度は、動摩擦係数(JIS K7125)で評価できる。この値は特に限定されないが、0.05~0.50程度であると、印刷層(12)の欠陥がより生じ難くなり、また、包装体(3)を開封するさい指の滑りが生じにくくなるため、開封作業も容易となる。かかる観点より、動摩擦係数は、好ましくは0.03~0.40である。
【0041】
保護樹脂層(11)の最外表面に存在させられた滑剤(S)の量も特に限定されないが、所期の外部滑性や、印刷層(12)の欠陥防止性等を考慮すると、通常0.05~1.0μg/cm2、好ましくは0.1~0.5μg/cm2である。この析出量は各種公知の方法で測定でき、例えばガスクロマトグラフィー法が挙げられる。ガスクロマトグラフィー法では、例えば、保護樹脂層(11)の最外表面に存在させられている滑剤(S)を適当な溶媒に溶解させ、得られた溶液に含まれる滑剤(S)の重量を測定すればよい。また、簡便には、滑剤(S)が存在させられている積層材(10)の保護樹脂層(11)を、滑剤(S)を溶解させるエタノール等の溶媒を含ませた不織布等で拭き取り、かかる払拭前後の重量差より滑剤(S)の存在量を求めてもよい。
【0042】
蓋(1)は、積層材(10)を加工したものである。その寸法及び形状は特に限定されず、容器(2)の形状や、包装体(3)の開封様式に応じて適宜決定できる。
例えば、
図2(a)で示されるように、容器(2)が上方開口のカップ形状であって開口周縁部(21)が略水平なフランジ状である場合には、蓋(1)は本体部(1a)よりなる枚葉状の部材であってよく、必要に応じタブやノッチ等の開封用切掛を形成できる。
また、
図2(b)で示されるように、容器(2)が上方開口のボトル形状であって開口周縁部(21)がリム状である場合には、蓋(1)は、
図3で示すようなキャップ形状であってよい。
また、図示は省略するが、容器(2)がボトル形状であっても、開口周縁部(21)をフランジ状に形成できることはもとよりであり、この場合も蓋(1)にはスカート部(1b)が形成されていてよい。
また、同じく図示は省略するが、容器(2)はプレス・スルー・パック(PTP)用の容器であってもよく、この場合、蓋(1)は本体部(1a)よりなるシート状の部材であり得る。
【0043】
図3は、キャップ状の蓋(1)の斜視図であり、この蓋(1)は、本体部(1a)と、本体部(1a)の周縁より垂下状に伸びたスカート部(1b)とよりなる。なお、図示は省略するが、容器(2)が
図3(b)で示されるようなボトル形状であっても、開口周縁部(21)をフランジ状に形成できることはもとよりであり、この場合も蓋(1)にはスカート部(1b)が形成されていてよい。また、同じく図示は省略するが、容器(2)はプレス・スルー・パック(PTP)用の容器であってもよい。
【0044】
図4は、蓋(1)(積層材(10))をなす保護樹脂層(11)の外部滑性を評価する方法の概念図である。本図の装置(4)は、本発明の蓋(1)を載置する水平台(41)と、保護樹脂層(11)の上方に配置される金属製の支柱(42)と、支柱(42)の底面に接続される金属製の球状端子(43)とで構成されており、球状端子(43)の表面は綿ガーゼ(図示外)で覆われている。また、本図において、蓋(1)は便宜上、保護樹脂層(11)、印刷層(12)及びバリア層(14)のみで構成される。評価方法の詳細は実施例で説明する。
【0045】
容器(2)は、蓋(1)との熱融着性や、内容物(C)の性状に応じて素材を選定する。素材としては、ヒートシール層(17)を構成する前記熱融着性樹脂フィルム又は前記ホットメルト接着剤と同一若しくは同種の樹脂が好ましいが、ガラス、鉄、銅、アルミニウム等も使用できる。特に、容器(2)の開口周縁部(21)を熱融着性樹脂で形成するとともに、蓋(1)のヒートシール層(17)も同一又は同種の熱融着性樹脂で構成すると、包装体(3)のシール精度及び強度が良好となり、密封性が高まる。容器(2)の形状も特に限定されず、カップ形状、ボトル形状、筒状等が挙げられる。容器(2)がボトル形状の場合には、
図3(b)で示すようにネック部分をテーパー形状とすると、安定したシールが可能となる。容器(2)の製造法は特に限定されず、例えば、深絞りやブロー成形、真空成形、圧空気成形が挙げられる。
【0046】
内容物(C)は特に限定されず、例えば、経口摂取される製品が挙げられる。具体的には、乳製品や乳飲料、清涼飲料、ハム、チーズ、カレー、ソース等の固形状若しくは液状の食料品、又は、液状若しくは固形状の医薬品等を例示できる。また、ナフキンやガーゼ、コットン等の衛生用品も内容物(C)足り得る。
【0047】
包装体(3)は、内容物(C)を充填した容器(2)に、本発明の蓋(1)を、各種公知のシール装置を用いて熱融着させ、封緘したものである。シール条件は特に制限されず、蓋(1)や容器(2)の材料種、シール装置のスペック等に応じて適宜決定する。
【0048】
図5は、包装体(3)の蓋(1)における保護樹脂層(11)の外部滑性を直接評価する方法の概念図である。本図の装置(5)は、段ボール等の包装材(51)と、その内部に収容された複数のサンプル(52)とよりなる。各サンプル(52)は、二個の包装体(3)を横方向に連接させて、側面よりポリエチレンフィルム等の結束フィルム(53)で拘束した組物である。サンプル(52)の数は特に限定されず、包装材(51)の寸法や包装体(3)の大きさに応じて適宜決定すればよい。本図では、3組のサンプルが上下方向に間仕切り材(54)を介して積層させられている。間仕切り材(54)としては、例えば、段ボールのように表面に凹凸があり一定の強度を有する素材を用いることができる。但し間仕切り材(54)は任意であり、省略できる。評価方法の詳細は実施例で説明する。
【実施例0049】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、それら具体例により本発明の技術範囲が限定されることはない。
【0050】
<積層材(10)の作製>
【0051】
比較例1
JIS H4160で規定されるA8079H-O材である厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に、市販の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤を塗工し、加熱下に硬化させることにより、厚さ3μm外面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この外面側アンカーコート層に、前記したものと同じ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤に白色顔料(二酸化チタン)を10重量%分散させてなる白色インキ(紫外線非硬化型)を塗膜厚みが約1.5μmとなるようにグラビアロールで塗工し、印刷層を形成させた。
次に、この印刷層の表面に、硝化綿の酢酸エチル溶液(不揮発分10重量%)を塗工し、乾燥させることにより、滑剤(S)を含まない厚さ0.6μmの保護樹脂層を形成させて、中間部材を作製した。
次に、この中間部材のアルミニウム箔のもう一方の面に、市販の二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤を塗工して厚さ2μmの内面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この内面側アンカーコート層に、溶融状態の低密度ポリエチレン(LDPE)を共押出させ、厚さ30μmの緩衝材層と、滑剤(S)を含まない厚さ30umのヒートシール層とを同時に形成させることによって、比較用の積層材A0を作製した。
最後に、積層材A0の保護樹脂層の動摩擦係数をJIS K7125に準拠して測定(以下、同様)したところ1.00であった。
【0052】
実施例1
JIS H4160で規定されるA8079H-O材である厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に、市販の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤を塗工し、加熱下に硬化させることにより、厚さ3μmの外面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この外面側アンカーコート層に、前記したものと同じ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤に白色顔料(二酸化チタン)を10重量%分散させてなる白色インキ(紫外線非硬化型)を塗膜厚みが約1.5μmとなるようにグラビアロールで塗工し、印刷層を形成させた。
次に、この印刷層の表面に、滑剤(S1)としてエルカ酸アミドを重量基準で1000ppm添加した硝化綿の酢酸エチル溶液(不揮発分10重量%)を塗工し、乾燥させることにより、厚さ0.6μmの保護樹脂層を形成させて、中間部材を作製した。
次に、この中間部材のアルミニウム箔のもう一方の面に、2液硬化型のポリエステルポリウレタン樹脂系接着剤2umを塗布することによって、内面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この内面側アンカーコート層に、溶融状態の低密度ポリエチレン(LDPE)を共押出させることによって、厚さ30μmの緩衝材層と、厚さ30umのヒートシール層とを同時に形成させた。なお、このヒートシール層には滑剤(S)が含まれていなかった。この積層材Aの保護樹脂層の動摩擦係数は1.00であった。
最後に、この積層材Aを40℃で7日間エージングさせることにより、評価用の積層体Aを得た。この積層材Aの保護樹脂層の動摩擦係数は0.14であった。
【0053】
実施例2
実施例1において、保護樹脂層をなす硝化綿酢酸エチル溶液におけるエルカ酸アミドの含有量(ppm)を700ppmにした他は同様にして、評価用の積層材Bを作製した。この積層材Bの保護樹脂層の動摩擦係数は0.22であった。なお、エージング前の積層材Bの保護樹脂層の同係数は1.00であった。
【0054】
実施例3
実施例1において、保護樹脂層をなす硝化綿酢酸エチル溶液におけるエルカ酸アミドの含有量(ppm)を400ppmにした他は同様にして、評価用の積層材Cを作製した。この積層材Cの保護樹脂層の動摩擦係数は0.30であった。なお、エージング前の積層材Cの保護樹脂層の同係数は1.00であった。
【0055】
実施例4
実施例1で得た評価用の積層材Aの保護樹脂層の最外表面に、滑剤(S2)としてポリエチレンワックスを重量基準で1000ppm含むメチルエチルケトン溶液をスプレーしたのち、フェルト布で軽く拭きとり、120℃で1分間乾燥させることにより評価用の積層材Dを作製した。この積層材Dの保護樹脂層の最外表面には滑剤(S1)及び滑剤(S2)が存在させられていた。また、この保護樹脂層の動摩擦係数は0.05であった。
【0056】
実施例5
実施例2で得た評価用の積層材Bの保護樹脂層の最外表面に、滑剤(S2)としてポリエチレンワックスを重量基準で1000ppm含むメチルエチルケトン溶液をスプレーしたのち、フェルト布で軽く拭きとり、120℃で1分間乾燥させることにより評価用の積層材Eを作製した。この積層材Eの保護樹脂層の最外表面には滑剤(S1)及び滑剤(S2)が存在させられていた。また、この保護樹脂層の動摩擦係数は0.07であった。
【0057】
実施例6
実施例3で得た評価用の積層材Cの保護樹脂層の最外表面に、滑剤(S2)としてポリエチレンワックスを重量基準で1000ppm含むメチルエチルケトン溶液をスプレーしたのち、フェルト布で軽く拭きとり、120℃で1分間乾燥させることにより評価用の積層材Fを作製した。この積層材Fの保護樹脂層の最外表面には滑剤(S1)及び滑剤(S2)が存在させられていた。また、この保護樹脂層の動摩擦係数は0.08であった。
【0058】
実施例7
JIS H4160で規定されるA8079H-O材である厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に、市販の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤を塗工し、加熱下に硬化させることにより、厚さ3μmの外面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この外面側アンカーコート層に、前記したものと同じ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤に白色顔料(二酸化チタン)を10重量%分散させてなる白色インキ(紫外線非硬化型)を塗膜厚みが約1.5μmとなるようにグラビアロールで塗工し、印刷層を形成させた。
次に、この印刷層の表面に、硝化綿の酢酸エチル溶液を塗工し、乾燥させることにより、滑剤(S)を含まない厚さ0.6μmの保護樹脂層を形成させた。
次に、この保護樹脂層の表面に、滑剤(S1)としてエルカ酸アミドを重量基準で1000ppm添加した硝化綿の酢酸エチル溶液を塗工し、乾燥させることにより、厚さ0.6μmの保護樹脂層を形成させて、中間部材を作製した。
次に、この中間部材のアルミニウム箔のもう一方の面に、2液硬化型のポリエステルポリウレタン樹脂系接着剤2umを塗布することによって、内面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この内面側アンカーコート層に、低密度ポリエチレンを共押出させることによって、厚さ30μmの緩衝材層と、厚さ30umのヒートシール層とを同時に形成させた。なお、このヒートシール層には滑剤(S)が含まれていなかった。この積層材Gの保護樹脂層の動摩擦係数は1.00であった。
最後に、この積層材Gを40℃で7日間エージングさせることにより、評価用の積層体Gを得た。この積層材Gの保護樹脂層の動摩擦係数は0.22であった。
【0059】
実施例8
実施例1の中間部材のアルミニウム箔の、印刷層が形成されていない面に、2液硬化型のポリエステルポリウレタン樹脂系接着剤2umを塗布することによって、内面側アンカーコート層を形成させた。
次に、この内面側アンカーコート層に、溶融状態の低密度ポリエチレンを押し出すことにより厚さ30μmの緩衝材層を形成させるとともに、この緩衝材層に厚さ30μmの市販のポリスルホン(PSU)フィルムを張り合わせ、ヒートシール層を同時に形成させることによって、積層材Hを作製した。なお、このヒートシール層には滑剤(S)が含まれていなかった。また、この積層材Hの保護樹脂層の動摩擦係数は1.00であった。
最後に、この積層材Hを40℃で7日間エージングさせることにより、評価用の積層体Hを得た。この積層材Hの保護樹脂層の動摩擦係数は0.21であった。
【0060】
実施例9
実施例3において、印刷層を所定の紫外線硬化型インキで構成した他は同様にして積層材Iを作製した。このインキは、ウレタンアクリレート(オリゴマー)90重量%、ベンゾフェノン6重量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート3重量%及びシランカップリング剤であるビニルトリエトキシシラン1重量%よりなる紫外線硬化型樹脂ワニスに、このワニスに対して5重量%となる二酸化チタンを分散させた白色インキ組成物であり、塗工量は4g/m2であった。また、硬化条件は、紫外線波長350nm、照射強度800W×0.6S、及び積算光量400mJ/cm2であった。また、硬化後の印刷インキ層の厚みは1.5μmであった。また、この積層材Iの保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数は1.00であった。
次に、この積層材Iを、実施例1と同様の条件でエージングさせることによって、評価用の積層材Iを作製した。この積層材Iの保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数は0.31であった。
【0061】
実施例10
実施例9の評価用積層材Gの保護樹脂層の最外表面に、滑剤(S2)としてポリエチレンワックスを重量基準で1000ppm含むメチルエチルケトン溶液をスプレーしたのち、フェルト布で軽く拭きとり、120℃で1分間乾燥させることにより評価用の積層材Hを作製した。この積層材Hの保護樹脂層の最外表面には滑剤(S1)及び滑剤(S2)が存在させられていた。また、この保護樹脂層の動摩擦係数は0.08であった。
【0062】
<滑剤析出量の測定>
評価用の積層材Aより試験片A1(10cm×10cm)を50枚用意した。次に、一の試験片A1を電子天秤(新光電子株式会社、HTR-220)で秤量したのち、保護樹脂層の表面を、エタノールを含浸させた不織布でふき取ってから、再度秤量した。次に、この試験片A1の重量差分(μg)を、当該試験片の面積(100cm2)で除することにより、滑剤の存在量(μg/cm2)を求めた。また、他の49枚の試験片A1についてもそれぞれ同様にして滑剤の存在量(μg/cm2)を求めた。そして、50枚全てについての滑剤存在量の合計値を、試験片の全枚数(50枚)で除することにより、この積層材Aの保護樹脂層の最外表面における滑剤存在量を平均値として求めたところ、0.41μg/cm2であった。他の蓋用積層材についても同様にして試験片を作製し、同平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0063】
<積層体の外部滑性評価>
評価用の積層体Aより試験片A(5cm×20cm)を切り出し、ステンレス製の水平支持台に載置し、四辺を粘着テープで固定した。次に、試験片Aの上面に摺動部材を設置した。この摺動部材は、
図4で示されるような治具であって、総重量は1kgであり、球状端子(SUS304)の直径は10mmであった。また、この球状端子は綿ガーゼで被覆させられていた。次に、この摺動部材を降下させることにより、その球状端子を、綿ガーゼを介して、保護樹脂層に軽く圧接させた。次に、この摺動部材を左右方向に往復距離が2cm/秒となるよう動かし、印刷層が剥がれて素地のアルミニウム箔が露出するまで摺動させた。評価は、素地が露出するまでの回数が1~10回以内であれば不良(×)と、11~20回であればやや良好(△)と、21~30回以内であれば良好(○)とした。結果、試験片Aは良好であった。他の試験片についても同様の試験を行った。なお、往復回数は30回を上限とした。結果を表1に示す。
【0064】
<包装体の作製、蓋の外部滑性評価>
評価用の積層体Aより所定寸法の蓋A(80mm×80mm)を切り出した。次に、ポリスチレン樹脂製で所定寸法のフランジ付カップ状容器(口径66mmφ、底径57mmφ、高さ26mm、フランジ幅7mm)に水54ccを入れ、その開口を覆うようにして蓋Aを被せ、上部より150℃に熱したステンレス板を1.0秒間押圧させることにより、密封された包装体Aを作製した。また、同様の方法により、包装体Aを更に23個作製した。
次に、二個の包装体Aを水平台に並べ、フランジ部分どうしを当接させた状態で、側面よりポリエチレンフィルムを巻きつけて結束し、一組のサンプルを作製した。同様の方法で一組のサンプルを更に11個作製した。
次に、所定寸法の段ボール箱(縦11cm×横24cm×奥行き19cm)の底面に、前記サンプルを計三組並べ、それらの蓋の上面に間仕切り材として厚さ1mmの段ボールシート(24cm×19cm)を載置し、更にその上に前記サンプルを計三組並べた。この作業を更に二回繰り返すことにより、合計12組の前記サンプルをパッキングした。
次に、この段ボール箱を粘着テープで梱包した後、市販の振盪装置(ヤマト科学(株)製、SA31)にかけて、所定条件(120rpm、振幅50mm)で100時間振盪させた。
次に、この段ボール箱を開梱し、24個の包装体A全てについて蓋の上面を目視判断し、夫々について印刷層の剥がれ部分を数えた。評価は、剥がれ部分の個数が0~2個であれば良好(○)と、3~10個であればやや良好(△)と、14~15個であれば不良(×)とした。
他の積層体についても同様にして包装体B~Kを作製し、夫々について同様の方法で蓋の外部滑性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
本発明の蓋用積層材は、食品やその他物品を収容した容器を熱封緘するための蓋として好適であり、その保護樹脂層に不意の外力が運搬時や陳列時に加わっても印刷層に剥がれやズレ等の欠陥が生じ難いため、経済的な価値が高い。