(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027498
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】さまざまなウイルスのための多重迅速検出キットおよび方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20220203BHJP
C07K 16/42 20060101ALI20220203BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220203BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220203BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220203BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K16/42
C12M1/34 F
G01N33/543 521
C12N5/10 ZNA
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108574
(22)【出願日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】16/942,666
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521288231
【氏名又は名称】アポロ バイオメディカル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Apollo Biomedical, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100074723
【弁理士】
【氏名又は名称】野原 利雄
(72)【発明者】
【氏名】シュンライ,ファン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA03
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA51
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA53
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高感度、良好な特異性、高速、簡単、且つ安価という利点を備え、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルスを検出し得る多重迅速検出キット及びその調整方法を提供する。
【解決手段】ヒトACE2の遺伝子のC末端を人工的に設計された配列とするステップ;前記人工的に設計された配列をACE2-AVIタグ-6×Hisタグ融合タンパク質を発現するプラスミドを構築するステップ;前記ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立するステップ;前記安定トランスフェクト細胞株を培養し増殖させるステップ;前記ACE2融合タンパク質を含む培養上清を回収するステップ;前記培養上清からACE2融合タンパク質を得るステップ;前記ACE2融合タンパク質からACE2-ビオチンを得るステップ;等により調製されるウイルス多重迅速検出キットとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を含む、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットであって、
前記着色ラテックスで標識したACE2タンパク質が、以下のステップ:
ヒトACE2遺伝子のC末端を、AVIタグ配列および6×Hisタグに順に接続させ、人工的に設計された配列を形成するステップ;
前記人工的に設計された配列を宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングし、それにより、ACE2融合タンパク質プラスミドと呼ばれる、ACE2-AVIタグ-6×Hisタグ融合タンパク質を発現するプラスミドを構築するステップ;
前記ACE2融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立するステップ;
前記安定トランスフェクト細胞を培養し、増殖させるステップ;
ACE2融合タンパク質を含む培養上清を回収するステップ;
Hisタグ親和性カラムであるタンパク質精製カラムによって、前記培養上清からACE2融合タンパク質を得るステップ;
前記ACE2融合タンパク質をビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのC末端で部位特異的ビオチン化して、ACE2-ビオチンを得るステップ;
ストレプトアビジンSAを、カルボキシル基を有する着色ラテックスと結合させ、L-SAを得るステップ;ならびに
ACE2-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、L-SB-ACE2を得るステップ
を用いて調製されるキット。
【請求項2】
前記Hisタグ親和性カラムが、Ni2+およびCo2+カラムのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の迅速検出キット。
【請求項3】
前記ヒトACE2遺伝子が、ヒトACE2の細胞外部分、すなわちGenBank;AB046569.1のパート1-739aaのコード化遺伝子配列を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記AVIタグ配列がGLNDIFEAQKIEWHEを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記ベクターがレンチウイルス発現ベクターpCDH-CMV-MCS-EFl-copGFPであり;前記構築したACE2融合タンパク質のプラスミドがpCDH-ACE2.copGFPであり;ACE2融合タンパク質の前記人工的に設計されたDNA配列がSEQ ID NO:1に記載されており、かつその翻訳されたタンパク質配列がSEQ ID NO:2に記載されている、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
トランスフェクションのための前記細胞株が、HEK293およびCHOのうち少なくとも1つを含み、ACE2融合タンパク質を発現する前記安定トランスフェクト細胞株が、ACE2.copGFP/293およびACE2.copGFP/CHOのうち少なくとも1つを含み;前記安定トランスフェクト細胞株の前記確立プロセスがpCDH-ACE2.copGFPプラスミドを含み;トランスフェクションの前記ステップが、pH1プラスミドおよびpH2プラスミドをレンチウイルスパッケージング細胞293Vに共トランスフェクトして、ACE2.copGFPレンチウイルスを調製するステップ、ならびにACE2.copGFPレンチウイルスでHEK293またはCHOをトランスフェクトするステップをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
ビオチン化の前記ステップが、ACE2タンパク質の前記アミノ酸配列SEQ ID NO:2の末端、ビオチンタンパク質リガーゼの認識部位GLNDIFEAQKIEWHEのリジン(K)での部位特異的ビオチン化ステップをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記方法が、前記カルボキシル着色ラテックスをEDC/NHS架橋剤で活性化させるステップ、およびストレプトアビジン(SA)をペプチド結合により前記カルボキシル着色ラテックスに結合させて、L-SAを得るステップ;前記ACE2-ビオチンタンパク質をストレプトアビジン-ビオチン反応によってL-SAに結合させ、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を得て、L-SB-ACE2と命名するステップをさらに含み;L-SB-DPP4も同様である、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
着色ラテックスで標識したDPP4タンパク質を含む、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットであって、
前記着色ラテックスで標識したDPP4タンパク質が、以下のステップ:
ヒトDPP4のN末端を、ラット成長ホルモンシグナルペプチド、6×Hisタグ、およびAVIタグ配列に順に接続させ、人工的に設計された配列を形成するステップ;
前記人工的に設計された配列を、宿主細胞コドンを用いて最適化するステップ;
前記人工的に設計された配列をそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングし、DPP4融合タンパク質プラスミドと呼ばれる、6×Hisタグ-AVIタグ-DPP4融合タンパク質を発現するプラスミドを構築するステップ;
前記DPP4融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、DPP4融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立するステップ;
安定トランスフェクト細胞を前記安定トランスフェクト細胞株で培養し、増殖させ、かつDPP4融合タンパク質を含む培養上清を回収するステップ;
Hisタグ親和性カラムであるタンパク質精製カラムによって、前記培養上清からDPP4融合タンパク質を得るステップ;
前記DPP4融合タンパク質をビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのN末端で部位特異的ビオチン化して、DPP4-ビオチンを得るステップ;
ストレプトアビジンSAを、カルボキシル基を有する着色ラテックスと結合させ、L-SAを得るステップ;ならびに
DPP4-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、L-SB-DPP4を得るステップ
を用いて調製されるキット。
【請求項10】
前記ヒトDPP4遺伝子が、ヒトDPP4の細胞外部分、すなわちGenBank:KJ896722.1のパート29-766aaのコード化遺伝子配列を含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記構築したDPP4融合タンパク質のプラスミドがpCDH-DPP4.copGFPである、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
DPP4融合タンパク質の前記人工的に設計されたDNA配列がSEQ ID NO:3に記載されており、かつその翻訳されたタンパク質配列がSEQ ID NO:4に記載されている、請求項9に記載のキット。
【請求項13】
DPP4融合タンパク質を発現する前記安定トランスフェクト細胞株が、DPP4.copGFP/293およびDPP4.copGFP/CHOのうち少なくとも1つを含み;前記安定トランスフェクト細胞株の前記確立プロセスがpCDH-DPP4.copGFPプラスミドを含み;トランスフェクションの前記ステップが、pH1プラスミドおよびpH2プラスミドをレンチウイルスパッケージング細胞293Vに共トランスフェクトして、DPP4.copGFPレンチウイルスを調製するステップ、ならびにDPP4.copGFPレンチウイルスでHEK293またはCHOをトランスフェクトするステップをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項14】
ビオチン化の前記ステップが、DPP4タンパク質の前記アミノ酸配列SEQ ID NO:4のN末端、ビオチンタンパク質リガーゼの認識部位GLNDIFEAQKIEWHEのリジン(K)での部位特異的ビオチン化ステップをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項15】
ACE2タンパク質および少なくとも1つのクロマトグラフィーストリップを含む、SARS-CoV-2を検出するためのキットであって、
前記クロマトグラフィーストリップが前記ACE2タンパク質を収容し、
前記少なくとも1つのクロマトグラフィーストリップが、底部ライニング、ニトロセルロース膜、試料パッド、剥離パッド、および吸収紙を含み、
前記試料パッド、前記剥離パッド、前記ニトロセルロース膜、および前記吸収紙が、前記底部ライニングの上に配置されており、
前記剥離パッドおよび前記吸収紙が、前記ニトロセルロース膜の両端部上に、それぞれを前記ニトロセルロース膜の各端部に重ねてさらに配置されており、ならびに
前記試料パッドが、前記剥離パッドの端部上に、前記剥離パッドの前記端部に重ねて配置されており、このとき前記剥離パッドの前記端部が前記ニトロセルロース膜の端部上にない
キット。
【請求項16】
前記クロマトグラフィーストリップが、抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体をさらに含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記クロマトグラフィーストリップが、抗B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体をさらに含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
ACE2タンパク質が第1の着色ラテックスで標識され、前記抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体が第2の着色ラテックスで標識され、前記抗B型インフルエンザモノクローナル抗体が第3の着色ラテックスで標識され、このとき3つすべてが、前記剥離パッドに埋め込まれ、試料の新型コロナウイルスまたはインフルエンザウイルスを捕獲するよう構成されている、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記クロマトグラフィーストリップが、前記ニトロセルロース膜に配置されたL-ウサギIgGおよび対照線領域をさらに含む、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記試料パッドに適用された試料が検査で陽性であるかどうかを観察する時間枠が約3~約15分間を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
ウイルスの陽性検査結果が、前記ニトロセルロース膜上の当該ウイルスに指定された検査線領域に着色線が現れ、かつ前記ニトロセルロース膜上に配置された検査対照線領域に着色線が現れることによって示され、ならびに陰性結果が、前記検査領域に着色線が現れず、かつ前記検査対照線領域に着色線が現れることによって示される、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
前記キットが、便、尿、呼吸器分泌物、口腔粘液、涙、および環境試料のうち少なくとも1つを含む試料からSARS-CoV-2を検出するよう構成される、請求項15に記載のキット。
【請求項23】
ACE2タンパク質および第1のクロマトグラフィーストリップを含む、SARS-COV-2、MERS-CoV、A型インフルエンザ、およびB型インフルエンザを検出するためのキットであって、
前記第1のクロマトグラフィーストリップが前記ACE2タンパク質を収容し、
前記第1のクロマトグラフィーストリップが、底部ライニング、ニトロセルロース膜、試料パッド、剥離パッド、および吸収紙を含み、
このとき前記試料パッド、前記剥離パッド、前記ニトロセルロース膜、および前記吸収紙が、前記底部ライニングの上に配置されており、
前記剥離パッドおよび前記吸収紙が、前記ニトロセルロース膜の両端部上に、それぞれを前記ニトロセルロース膜の各端部に重ねてさらに配置されており、ならびに
前記試料パッドが、前記剥離パッドの端部上に、前記剥離パッドの前記端部に重ねて配置されており、このとき前記剥離パッドの前記端部が前記ニトロセルロース膜の端部上にない
キット。
【請求項24】
前記キットが第2のクロマトグラフィーストリップをさらに含み、
前記第2のクロマトグラフィーストリップが、第2の底部ライニング、第2のニトロセルロース膜、第2の試料パッド、第2の剥離パッド、および第2の吸収紙を含み、
前記第2の試料パッド、前記第2の剥離パッド、前記第2のニトロセルロース膜、および前記第2の吸収紙が、前記第2の底部ライニングの上に配置されており、
前記第2の剥離パッドおよび前記第2の吸収紙が、前記第2のニトロセルロース膜の両端部上に、それぞれを前記第2のニトロセルロース膜の各端部に重ねてさらに配置されており、ならびに
前記第2の試料パッドが、前記第2の剥離パッドの端部上に、前記第2の剥離パッドの前記端部に重ねて配置されており、このとき前記第2の剥離パッドの前記端部が前記第2のニトロセルロース膜の端部上にない、
請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記剥離パッドが、
L-IFVA、
L-SB-ACE2、および
L-ウサギIgGをさらに含み;ならびに
前記キットが、前記ニトロセルロース膜上に第1の対照線領域、
前記ニトロセルロース膜上に第1の検査線領域、および
前記ニトロセルロース膜上に第2の検査線領域をさらに含み、
このとき前記第1の検査線領域が前記第1の対照線領域とともに連続的に配置されており、
前記第1の対照線領域が、前記第1の対照線領域と比べて前記吸収紙の近くに配置されており、
前記第2の検査線領域が、前記第1の対照線領域と比べて前記吸収紙から遠くに配置されており、
前記第1の検査線が抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の被覆を含み、前記第2の検査線領域がSARS-CoV-2ポリクローナル抗体の抗S1タンパク質の被覆を含み、ならびに
前記第1の対照線領域がヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体を含む、
請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記第2の剥離パッドが、
L-IFVB、
L-SB-DPP4、および
L-ウサギIgGをさらに含み、ならびに
前記キットが、前記第2のニトロセルロース膜上に第2の対照線領域、
前記ニトロセルロース膜上に第3の検査線領域、および
前記ニトロセルロース膜上に第4の検査線領域をさらに含み、
このとき前記第3の検査線領域が前記第2の対照線領域とともに連続的に配置されており、
前記第2の対照線領域が、前記第3の対照線領域と比べて前記吸収紙の近くに配置されており、
前記第4の検査線領域が、前記第2の対照線領域と比べて前記吸収紙から遠くに配置されており、
前記第3の検査線が抗B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の被覆を含み、前記第4の検査線領域がMERS-CoVポリクローナル抗体の抗S1タンパク質の被覆を含み、ならびに
前記第2の対照線領域がヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体を含む、
請求項24に記載のキット。
【請求項27】
前記キットが二重ストリップカードをさらに含み、前記二重ストリップカードの第1のストリップが、新型コロナウイルスおよびA型インフルエンザウイルスを検出するよう構成されており、ならびに前記二重ストリップカードの第2のストリップが、MERSおよびB型インフルエンザウイルスを検出するよう構成されている、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
前記試料プレートに適用された試料が検査で陽性であるかどうかを観察する前記時間枠が約3~約15分間を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項29】
ウイルスの陽性検査結果が、前記第1の検査領域に着色線が現れ、かつ前記検査対照領域に着色線が現れることによって示され、ならびに陰性結果が、前記第1の検査領域に着色線が現れず、かつ前記対照線領域に着色線が現れることによって示される、請求項23に記載のキット。
【請求項30】
1つまたは複数のウイルスの存在を検出するのに使用される前記試料が、便、尿、呼吸器分泌物、口腔粘液、涙、および環境試料のうち少なくとも1つを含む、請求項23に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2020年7月10日に出願された米国仮特許出願第63/050,717号、2020年7月10日に出願された米国仮特許出願第63/050,722号、および2020年3月27日に出願されたPCT出願番号PCT/中国特許出願公開第2020/081636号明細書、ならびにPCT出願番号PCT/中国特許出願公開第2020/081636号明細書が優先権を主張する2020年2月26日に出願された中国国内特許の利益を主張するものであり、かかるすべての出願は、以下に具体的に記載する部分を含むがこれに限定されないその全体が参照により本明細書に援用され、この参照による援用は以下を例外として行われる:上記の出願のいずれかの部分が本出願と矛盾する場合、本出願は上記の仮出願に優先する。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
該当なし。
【0003】
配列表は本明細書の一部であり、かつ参照により本明細書に援用される。
【0004】
本開示は特にバイオテクノロジーの領域に関する。具体的には、本開示はウイルス検出のシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0005】
SARS-CoV-2は、ヒトに感染することが知られている7番目のコロナウイルスである。残りの6つは、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV、およびMERS-CoVである。研究から、SARS-CoV-2、SARS-CoV、およびHCoV-NL63は、ウイルスのスパイク糖タンパク質(Sタンパク質)の媒介により、ウイルスと宿主細胞膜上のACE2受容体との相互作用を通じてヒトに感染することがわかっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、新型コロナウイルス感染による急性呼吸器感染症である。一般的な症状は発熱で、乾性咳、疲労、呼吸困難などの症状を伴う。頭痛、めまいなどの症状を訴える人もいるが、特に目立った症状を示さない人もいる。MERS-CoVはサブグループCに属するコロナウイルスである。感染後、中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こす。MERSウイルス感染は大部分が中東で発生する。SARS-CoV-2と異なり、MERS-CoVはエンベロープSタンパク質と宿主細胞膜上のDPP4受容体との相互作用によりヒトに感染する。
【0006】
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性気道感染症である。感染力が強く、伝播速度が速い疾患である。典型的な臨床症状は、急性高熱、全身痛、著明な疲労、および軽度の呼吸器症状である。一般に秋冬に発生率が高く、合併症を引き起こし、死亡事象は非常に深刻である。この疾患はインフルエンザウイルスによって引き起こされ、A型(A)・B型(B)・C型(C)の3種類に分類できる。A型ウイルスは抗原変異が頻繁に起こり、感染性で、急速に伝播し、広範な流行病が発生しやすい。
【0007】
COVID-19とMERSとインフルエンザの症状は区別が難しく、重大な交差反応を示す検査キットもある。そのため、自宅で使用できながらも、COVID-19、MERS、およびインフルエンザを迅速に区別できる検出キットの開発は、コロナウイルスおよびインフルエンザウイルスの世界的な流行や伝染病監視にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【0008】
例示的な実施形態は、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットを含み得る。キット法が、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を含むことを特徴とし、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質の調製方法は以下のステップを含む:
1.1 ヒトACE2遺伝子のC末端を、AVIタグ配列および6×Hisタグに順に接続させ、人工的に設計された配列を形成した。人工的に設計された配列は宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングした。ACE2-AVIタグ-6×Hisタグ融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し、これをACE2融合タンパク質プラスミドと呼ぶ。
1.2 ステップ1.1で構築したACE2融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立した。安定トランスフェクト細胞を培養、増殖させ、ACE2融合タンパク質を含む上清を回収した。
1.3 Ni2+またはCo2+カラムなどのHisタグ親和性カラムであるタンパク質精製カラムによって、ステップ1.2で調製した培養上清からACE2融合タンパク質を得て、ACE2タンパク質を得た。
1.4 ステップ1.3で得たACE2タンパク質は、ビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのC末端で部位特異的ビオチン化した。また、ACE2-ビオチンを得た。
1.5 ストレプトアビジンSAは、カルボキシル基を有する着色ラテックスと結合させ、L-SAを得た。ステップ1.4で得たACE2-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、L-SB-ACE2を得た。
【0009】
本出願/特許ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、請求のうえ必要な料金を支払うことにより米国特許庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】pCDH-ACE2.copGFPのプラスミドマップである。
【
図2】pCDH-DPP4.copGFPのプラスミドマップである。
【
図3】本明細書で考察する実施形態に従ったSARS-CoV-2、MERS-CoV、A型およびB型インフルエンザウイルス検査キットの検出原理の概略図を示す。
【
図4】本明細書に記載する実施形態による試料検査ストリップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示する実施形態は、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットのための装置および方法を含む。本明細書に開示する実施形態は、1種または複数種のウイルス、本明細書に教示するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルスを検出し得る。
【0012】
本開示に従った原理の理解を促進する目的で、以下に、本明細書に記載する実施形態を参照し、特定の言語を用いてこれを説明していく。しかしながら、それにより本開示の範囲が限定されるものではないことが理解されよう。本明細書に例示する本発明の特徴の任意の変更およびさらなる改変、ならびに本明細書に例示する本開示の原理の任意の追加的な適用は、本開示を所持する当業者であれば通常なし得るものであり、請求する開示の範囲内で考慮され得る。
【0013】
本発明のウイルス迅速検査キットを開示し、説明する前に、本開示は、本明細書に開示する特定の構成、プロセスステップ、および材料に限定されず、したがって構成、プロセスステップ、および材料が多少異なる場合があることを理解されたい。また、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上別段の明示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。
【0015】
本開示の説明および特許請求にあたり、以下の用語は、以下に記載する定義に従って使用する。
【0016】
本明細書で使用する用語「構成する」、「含む」、「含有する」、「特徴とする」、およびこれらの文法的等価物は、追加的な未記載の要素または方法のステップを除外しない総称またはオープンエンドの用語である。
【0017】
本明細書で使用する句「から成る」およびその文法的等価物は、請求項に記載されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。
【0018】
本明細書で使用する句「から本質的に成る」およびその文法的等価物は、請求の範囲を、特定の材料またはステップ、および請求された開示の基本的かつ新規の1つまたは複数の特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。
【0019】
用語「重量百分率」、「重量パーセント」、および「重量%」はすべて、構成成分の濃度を、構成成分の重量を組成物の重量で除したものに100を乗じて表す。本明細書で言及する重量%および定量的な用語は、1~2、2~3、1~3の範囲、およびその間のすべての値を含むものとみなされるべきである。したがって、重量%が10である場合、7および13の値、およびこれらの間のすべての値を含み得る。
【0020】
既存の技術における前述の技術的課題を鑑みて、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットを本明細書に開示する。いくつかの実施形態は、コロナウイルスのスパイクタンパク質に2つのサブユニット、S1およびS2を含み得、S1サブユニットはリガンドとして働き、ヒト細胞膜上の受容体と相互作用して特異的結合を形成する。SARS-CoV-2は、そのS1タンパク質(リガンド)がヒト細胞膜上のACE2受容体と高親和性で特異的に結合することにより、ヒト細胞に侵入する(KDの測定値が15nMで、SARS-CoVより10~20倍高い)。サンドイッチ法の免疫クロマトグラフィー原理に従って、いくつかの実施形態では組み換えヒトACE2タンパク質を用いて、抗Sタンパク質モノクローナル抗体の1つを交換して着色ラテックスで標識し、検査ストリップの剥離パッドにこれを噴霧する。
【0021】
いくつかの実施形態では、検査ストリップ上のSARS-CoV-2検査線(T線)をSARS-CoV-2ポリクローナル抗体の抗S1タンパク質で被覆し、これを用いて、SARS-CoV-2とラテックス標識したACE2の複合体をクロマトグラフィーで捕獲する。検査試料にSARS-CoV-2が存在すれば、T線は着色ラテックス凝集を生じる。検査試料にSARS-CoV-2が存在しなければ、T線は発色しない。MERS-CoVは、そのS1タンパク質(リガンド)がヒト細胞膜上のDPP4受容体と特異的に結合することにより、ヒト細胞に侵入する。同様に、例示的な実施形態に従って、組み換えヒトDPP4タンパク質を用いて、抗S1タンパク質モノクローナル抗体の1つを交換して着色ラテックスで標識し、検査ストリップの剥離パッドにこれを噴霧する。検査ストリップ上のMERS-CoV検査線をMERS-CoVポリクローナル抗体の抗S1タンパク質で被覆し、これを用いて、MERS-CoVとラテックス標識したDPP4の複合体をクロマトグラフィーで捕獲し得る。実施形態は、検査試料にMERS-CoVが存在すれば、T線は着色ラテックス凝集を生じ、検査試料にMERS-CoVが存在しなければ、T線の色が発色しないように構成し得る。
【0022】
いくつかの例示的な実施形態は、A型インフルエンザ検査を含み得る。A型インフルエンザ検査では、抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体、抗IFVA mAb(捕獲)をそれぞれ着色ラテックスで標識し、検査ストリップの剥離パッドにこれを噴霧し得る。検査ストリップ上のA型インフルエンザ検査線を抗IFVA mAb(検出)で被覆し、これを用いて、A型インフルエンザウイルスとラテックス抗IFVA mAb(捕獲)の複合体をクロマトグラフィーで捕獲し得る。いくつかの実施形態では、検出時に検査試料にA型インフルエンザウイルスが存在すれば、T線は着色ラテックス凝集を生じる。検査試料にA型インフルエンザウイルスが存在しなければ、T線は発色しなくてもよい。いくつかの実施形態では、B型インフルエンザの検査に同様の手順を使用し得る。
【0023】
いくつかの例示的な実施形態では、検査キットは2つの検査ストリップを含む(
図3参照)。検査ストリップの1つで、ニトロセルロース(NC)膜上の検査領域(T1)に抗IFVA mAb(検出)を被覆し、検査領域(T2)に新型コロナウイルス抗体のウサギ抗S1タンパク質を被覆し、対照領域(C1)にヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体を被覆し得る。ラテックス標識したACE2タンパク質、ラテックス標識した抗IFVA mAb(捕獲)、およびラテックス標識したウサギIgGを剥離パッドに埋め込み得る。もう1つの検査ストリップで、ニトロセルロース(NC)膜上の検査領域(T3)に抗IFVB mAb(検出)を被覆し、検査領域(T4)にMERS-CoV抗体のウサギ抗S1タンパク質を被覆し、対照領域(C2)にヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体を被覆し得る。ラテックス標識したDPP4タンパク質、ラテックス標識した抗IFVB mAb(捕獲)、およびラテックス標識したウサギIgGを剥離パッドに埋め込み得る。
【0024】
いくつかの例示的な実施形態では、検査方法は、試料を試料ウェルに投入するステップを含み得る。他の例示的な実施形態では、方法は試料約3滴を添加するステップを含み得、試料は毛細管現象により下部から上部に側方に流動し得る。試料がSARS-CoV-2を含有している場合、ラテックス標識したACE2タンパク質はウイルスのS1タンパク質と結合し得、次いで、検査領域(T2)に被覆された抗S1タンパク質抗体に捕獲され得、T2線が現れ得る。試料がSARS-CoV-2を含有していない場合、ラテックス標識したACE2タンパク質は、検査領域(T2)に被覆された抗S1タンパク質抗体に捕獲されなくてもよく、したがってT2線が現れなくてもよい。
【0025】
いくつかの例示的な実施形態では、試料がA型インフルエンザウイルスを含有していない場合、ラテックス標識したA型インフルエンザモノクローナル抗体は、クロマトグラフィープロセスで、検査領域(T1)に被覆されたA型インフルエンザモノクローナル抗体によって捕獲、結合されなくてもよく、T1領域に線が現れない。試料がA型インフルエンザウイルスを含有している場合、ラテックス標識したA型インフルエンザモノクローナル抗体は、まず試料中のA型インフルエンザウイルスと結合し得る。次いでクロマトグラフィープロセス中に、T1領域に被覆されたA型インフルエンザモノクローナル抗体と結合し得、T1領域に着色線が現れ得る。
【0026】
試料がB型インフルエンザウイルスを含有していない場合、ラテックス標識したB型インフルエンザモノクローナル抗体は、クロマトグラフィープロセスで、検査領域(T3)に被覆されたB型インフルエンザモノクローナル抗体によって捕獲、結合されなくてもよく、T3領域に線が現れなくてもよい。試料がB型インフルエンザウイルスを含有している場合、ラテックス標識したB型インフルエンザモノクローナル抗体は、まず試料中のB型インフルエンザウイルスと結合し得る。次いでクロマトグラフィープロセス中に、T3領域に被覆されたB型インフルエンザモノクローナル抗体と結合し得、T3領域に着色線が現れ得る。
【0027】
試料がMERSウイルスを含有していない場合、ラテックス標識したウサギ抗MERSウイルスS1タンパク質ポリクローナル抗体は、クロマトグラフィー中に、T4領域に被覆されたDPP4によって捕獲、結合されなくてもよく、T4領域に線が現れなくてもよい。試料がMERSウイルスを含有している場合、ラテックス標識したウサギ抗MERSウイルスS1タンパク質ポリクローナル抗体は、まず試料中のMERSウイルスと結合し得る。次いでクロマトグラフィープロセス中に捕獲され、T4領域に被覆されたDPP4と結合し得る。T4領域に着色線が現れ得る。
【0028】
対照領域(C)はヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体で被覆され得、試料中に新型コロナウイルス/IFVA/B/MERS-CoVが存在するか否かにかかわらず、ラテックス標識したウサギIgGは、C領域に被覆されたヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体と結合し得、C線が現れ得る。
【0029】
いくつかの例示的な実施形態では、検査終了時に、T線上で結合したラテックスタンパク質の量は、試料中の新型コロナウイルス、IFVA、IFVB、またはMERS-CoVの濃度に比例し得るのに対し、対照線C上で結合したラテックスの量は、試料中のウイルスの量とは無関係であり得る。
【0030】
本開示の例示的な実施形態には、速く、簡単で、安価で、安定し、かつヒトACE2受容体と相互作用する新型コロナウイルススパイクタンパク質S1リガンドに基づいた、自宅で実施できる検査を提供するという利点に加え、モノクローナル抗体の開発サイクルが長く、抗体と交差反応を起こすという問題が回避されるという利点があり、そのため検出の特異性が改善され、効果的なキットが迅速に提供される。実施形態は、SARS-CoV-2およびそのすべての変異体の検出に好適であり得る。このウイルスは、S1タンパク質の変異(例えばD614G)によって感染力の強い変異体となり、ACE2受容体とより強く結合することがわかっている。ゆえに、ACE2受容体に基づいた本明細書に記載する検出キットの例示的な実施形態は、そのような変異体に対して感度がより高い可能性がある。MERS-CoVを検出するのにDPP4受容体を用いる実施形態も良好な感度と特異性を有し得、抗体検出を用いることによる交差反応を回避し得る。一般市民には、インフルエンザをCOVID-19やMERSと区別することは難しい。したがって、1つのストリップで同時にCOVID-19、MERS、A型・B型インフルエンザを検査できる、本明細書の例示的な実施形態に記載するキットを開発することは有益である。
【0031】
キットの例示的な実施形態は、
図3に示すように、1つの検査キットに二重のストリップを含む1つまたは複数のストリップを含み得る。ストリップで、COVID-19、MERS、A型インフルエンザ、およびB型インフルエンザ、ならびにこれらの組み合わせを含むがこれに限定されない、本明細書に示す1つまたは複数のウイルスの検査をし得る。
【0032】
新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、キット法が着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を含み得ることを特徴とし、いくつかの実施形態では、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質の調製方法は以下のステップを含み得る:
1)ヒトACE2遺伝子のC末端を、AVIタグ配列および6×Hisタグに順に接続させ、人工的に設計された配列を形成し得る。人工的に設計された配列は、宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングし得る。ACE2-AVIタグ-6×Hisタグ融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し得、これをACE2融合タンパク質プラスミドと呼ぶ。
2)ステップ1)で構築したACE2融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立し得る。安定トランスフェクト細胞の培養および増殖、ACE2融合タンパク質を含有する上清の回収をさらに行い得る。
3)ステップ2)で調製した培養上清からタンパク質精製カラムによってACE2融合タンパク質を得ることができ、またACE2タンパク質を得ることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質精製カラムは、Ni2+またはCo2+カラムなどのHisタグ親和性カラムであり得る。
4)ステップ3)で得たACE2タンパク質は、ビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのC末端で部位特異的ビオチン化し、ACE2-ビオチンを得ることができる。
5)ストレプトアビジンSAはカルボキシル基で着色ラテックスに結合させ、L-SAを得ることができる;ステップ4)で得たACE2-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、それによりL-SB-ACE2を得ることができる。
【0033】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、キット法が着色ラテックスで標識したDPP4タンパク質を含み得ることを特徴とし、いくつかの実施形態では、着色ラテックスで標識したDPP4タンパク質の調製方法は以下のステップを含み得る:
1)ヒトDPP4遺伝子のN末端を、ラット成長ホルモンシグナルペプチド、6×Hisタグ、およびAVIタグ配列に順に接続させ、人工的に設計された配列を形成し得る。人工的に設計された配列は、宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングし得る。6×Hisタグ-AVIタグ-DPP4融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し得、これをDPP4融合タンパク質プラスミドと呼ぶ。
2)ステップ1)で構築したDPP4融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、DPP4融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立し得る。方法は、安定トランスフェクト細胞を培養し、増殖させるステップ、およびDPP4融合タンパク質を含有し得る上清を回収するステップをさらに含み得る。
3)ステップ2)で調製した培養上清からタンパク質精製カラムによってDPP4融合タンパク質を得ることができ、またDPP4タンパク質を得ることができる。実施形態は、Ni2+またはCo2+カラムなどのHisタグ親和性カラムであるタンパク質精製カラムを含み得る。
4)ステップ3)で得たDPP4タンパク質は、ビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのN末端で部位特異的ビオチン化し得る。また、DPP4-ビオチンを得ることができる。
5)ストレプトアビジンSAはカルボキシル基で着色ラテックスに結合させ、L-SAを得ることができ;ステップ4)で得たDPP4-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、L-SB-DPP4を得ることができる。
【0034】
さらにいくつかの実施形態では、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、ヒトACE2遺伝子がヒトACE2の細胞外部分、すなわちGenBank:AB046569.1のパート1-739aaのコード化遺伝子配列であり;ヒトDPP4遺伝子がヒトDPP4の細胞外部分、すなわちGenBank:KJ896722.1のパート29-766aaであり;AVIタグ配列がGLNDIFEAQKIEWHEであり;コドンがヒト宿主に最適化され得;ベクターがレンチウイルス発現ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-copGFPであり得;構築したACE2融合タンパク質のプラスミドが本明細書においてpCDH-ACE2.copGFPと命名され得;構築したDPP4融合タンパク質のプラスミドが本明細書においてpCDH-DPP4.copGFPと命名されることを特徴とし得る。
【0035】
ACE2融合タンパク質の人工的に設計されたDNA配列はSEQ ID NO:1に記載されており、その翻訳されたタンパク質配列はSEQ ID NO:2に記載されている。添付の配列表を参照のこと。
【0036】
DPP4融合タンパク質の人工的に設計されたDNA配列はSEQ ID NO:3に記載されており、その翻訳されたタンパク質配列はSEQ ID NO:4に記載されている。添付の配列表を参照のこと。
【0037】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、トランスフェクションのための細胞株がHEK293またはCHOである可能性があり;ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株が本明細書においてACE2.copGFP/293またはACE2.copGFP/CHOと命名され;DPP4融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株が本明細書においてDPP4.copGFP/293またはDPP4.copGFP/CHOと命名されることを特徴とし得る。
【0038】
安定トランスフェクト細胞株の確立プロセスは以下であり得る:pCDH-ACE2.copGFPまたはpCDH-DPP4.copGFPプラスミド、pH1プラスミド、およびpH2プラスミドをレンチウイルスパッケージング細胞293Vに共トランスフェクトして、ACE2.copGFPまたはDPP4.copGFPレンチウイルスを調製し、またACE2.copGFPまたはDPP4.copGFPレンチウイルスでHEK293またはCHOをトランスフェクトする。
【0039】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、部位特異的ビオチン化が、ACE2タンパク質のアミノ酸配列SEQ ID NO:2の末端、ビオチンタンパク質リガーゼの認識部位GLNDIFEAQKIEWHEのリジン(K)で;DPP4タンパク質のアミノ酸配列SEQ ID NO:4のN末端、ビオチンタンパク質リガーゼの認識部位GLNDIFEAQKIEWHEのリジン(K)で行われ得ることを特徴とし得る。
【0040】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、カルボキシル着色ラテックスをEDC/NHS架橋剤で活性化させた後、ストレプトアビジン(SA)をペプチド結合によりラテックスに結合させて、L-SAを得ることができ;ACE2-ビオチンタンパク質をストレプトアビジン-ビオチン反応によってL-SAに結合させ、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を得ることができ、L-SB-ACE2と命名することを特徴とし得る。同じプロセスに従ってL-SB-DPP4を得ることができる。
【0041】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、EDC/NHS架橋剤活性化カルボキシル着色ラテックス、抗A型インフルエンザウイルス(IFVA)抗体(捕獲)、抗B型インフルエンザウイルス(IFVB)抗体(捕獲)、およびウサギIgGを使用するステップも含み得るキットにおいて説明される特徴を有し得、これらはそれぞれペプチド結合により着色ラテックスに結合させて、L-IFVA、L-IFVB、およびL-ウサギIgGを得ることができる。
【0042】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、キットが2つのクロマトグラフィーストリップも含み得ることを特徴とし得る。ストリップは、底部ライニング、ニトロセルロース(NC)膜、試料パッド、剥離パッド、および吸収紙を含み得る。試料パッド、剥離パッド、NC膜、および吸収紙は底部ライニングの上に組み合わせ得、その中で剥離パッドおよび吸収紙はNC膜のいずれかの端部上に積み重ね得、また試料パッドは剥離パッドの上に積み重ね得る。
【0043】
ストリップのうちの1つで、L-IFVA、L-SB-ACE2、およびL-ウサギIgGを混合し、ストリップの剥離パッド上に噴霧し得;その剥離パッドから吸収紙まで、検査線領域T1(A型インフルエンザウイルス)、T2(新型コロナウイルス)、および対照線領域C1を連続的にNC膜上に設置し得る。また、それぞれ抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(検出型)、SARS-CoV-2ポリクローナル抗体の抗S1タンパク質、ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(GAR)で被覆し得る。このストリップはストリップAと命名し得る。
【0044】
もう1つのストリップで、L-IFVB、L-SB-DPP4、およびL-ウサギIgGを混合し、ストリップの剥離パッド上に噴霧し得;その剥離パッドから吸収紙まで、検査線領域T3(B型インフルエンザウイルス)、T4(MERS-CoV)、および対照線領域C2を順にNC膜上に設置し得る。また、それぞれ抗B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(検出型)、MERS-CoVポリクローナル抗体の抗S1タンパク質、ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(GAR)で被覆し得る。このストリップはストリップBと命名し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、検査ストリップAおよびBは、二重ストリップカード上に組み合わせ得る。新型コロナウイルス、MERS、およびA型・B型インフルエンザウイルスの4-in-1迅速検出キットを構築し得る。このうち、新型コロナウイルスおよびA型インフルエンザウイルスはストリップA上で検出でき、MERSおよびB型インフルエンザウイルスはストリップB上で検出できる。
【0046】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、検査の際に、試薬プレートの2つの試料孔それぞれに試料を投入すると、約3~15分以内に、A型インフルエンザウイルスのT1、新型コロナウイルスのT2、B型インフルエンザウイルスのT3、またはMERSウイルスのT4を目視で観察し得、対応するT線が現れたものが陽性であり、現れなければ陰性であることを特徴とする。
【0047】
さらに、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、キットが、便、尿、呼吸器分泌物、口腔粘液、涙、および環境試料の検出に好適であり得ることを特徴とし得る。新型コロナウイルス、MERS-CoV、A型インフルエンザ、およびB型インフルエンザウイルスに適用して迅速に検出し、4つのウイルス性伝染病を同時に約3~15分以内に特定することができる。これは、病院検査、在宅検査、疫学調査、大規模スクリーニングおよび診断に、ならびにコロナウイルスやインフルエンザウイルスアウトブレイクの世界的監視に使用できる。
【0048】
いくつかの例示的な実施形態では、キットは、キットのストリップのバイオセイフティが改善されていること、すなわち、リボヌクレアーゼを1つまたは複数の試料パッド前処理溶液に添加し、1つまたは複数の試料でウイルスを抑制または不活性化したことを特徴とし得る。試料パッド前処理溶液中のリボヌクレアーゼの濃度は、約0.1~1U/mLであり得る。
【0049】
図4に示すように、例示的な実施形態は、検査ストリップ400、試料パッド402、吸収紙404、底部ライニング406、ニトロセルロース膜408、剥離パッド410を含み得る。試料パッド402、剥離パッド410、ニトロセルロース膜408、および吸収紙404は、
図4に示すように、底部ライニング406上に配置し得る。剥離パッド410および吸収紙404はニトロセルロース膜408の両端部上に、それぞれをニトロセルロース膜408の各端部に重ねてさらに配置し得、また試料パッド402は、剥離パッド410の端部上に、剥離パッド410の前記端部に重ねて配置し得、このとき剥離パッド410の前記端部はニトロセルロース膜408の端部上にない。いくつかの例示的な実施形態では、試料は試料投入口412を通じてキットに入れ得る。試料は、矢印422に示すように横の流れ方向に流動し得る。
【0050】
いくつかの例示的な実施形態では、検査ストリップ400は、ニトロセルロース膜408上に第1の対照線領域414、ニトロセルロース膜408上に第1の検査線領域416、ニトロセルロース膜408上に第2の検査線領域418、およびニトロセルロース膜408上に第3の検査線領域420をさらに有し得る。
図3など他の実施形態では、キット内に1つよりも多い検査ストリップを有し得、
図3および4に示すよりも多いまたは少ない、1つまたは2つの検査線領域を含む検査線領域を有し得る。キット中の各検査ストリップは対照線領域を有し得る。いくつかの例示的な実施形態では、第1の検査線領域416は、第1の対照線領域414とともに連続的に配置し得、このとき第1の対照線領域414は、第1の検査線領域416と比べて吸収紙404の近くに配置されている。第2の検査線領域418は、第1の対照線領域414と比べて吸収紙404から遠くに配置し得る。ウイルス検査の結果が陽性であれば、本明細書に教示するように、それが第1の対照線領域414の着色線と一致すれば、各検査領域に着色線で示される。
【0051】
明細書の追加支持
実施形態1:新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キット。キット法が、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を含み、また着色ラテックスで標識したACE2タンパク質の調製方法が、以下のステップを含むことを特徴とする:
1.1 ヒトACE2遺伝子のC末端を、AVIタグ配列および6×Hisタグに順に接続させ、人工的に設計された配列を形成した。人工的に設計された配列は宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングした。ACE2-AVIタグ-6×Hisタグ融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し、これをACE2融合タンパク質プラスミドと呼ぶ。
1.2 ステップ1.1で構築したACE2融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立した。安定トランスフェクト細胞を培養、増殖させ、ACE2融合タンパク質を含む上清を回収した。
1.3 Ni2+またはCo2+カラムなどのHisタグ親和性カラムであるタンパク質精製カラムによって、ステップ1.2で調製した培養上清からACE2融合タンパク質を得て、ACE2タンパク質を得た。
1.4 ステップ1.3で得たACE2タンパク質は、ビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのC末端で部位特異的ビオチン化した。また、ACE2-ビオチンを得た。
1.5 ストレプトアビジンSAは、カルボキシル基を有する着色ラテックスと結合させ、L-SAを得た。ステップ1.4で得たACE2-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、L-SB-ACE2を得た。
【0052】
実施形態2:新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キット。キット法が、着色ラテックスで標識したDPP4タンパク質を含み、また着色ラテックスで標識したDPP4タンパク質の調製方法が、以下のステップを含むことを特徴とする:
2.1 ヒトDPP4遺伝子のN末端を、ラット成長ホルモンシグナルペプチド、6×Hisタグ、およびAVIタグ配列に順に接続させ、人工的に設計された配列を形成した。人工的に設計された配列は、宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングした。6×Hisタグ-AVIタグ-DPP4融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し、これをDPP4融合タンパク質プラスミドと呼ぶ。
2.2 ステップ2.1で構築したDPP4融合タンパク質プラスミドを細胞株にトランスフェクトし、DPP4融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株を確立した。安定トランスフェクト細胞を培養、増殖させ、DPP4融合タンパク質を含む上清を回収した。
2.3 ステップ2.2で調製した培養上清から、Ni2+またはCo2+カラムなどのHisタグ親和性カラムであるタンパク質精製カラムによってDPP4融合タンパク質を得て、DPP4融合タンパク質を得た。
2.4 ステップ2.3で得たDPP4タンパク質は、ビオチン-タンパク質リガーゼBirAによってそのN末端で部位特異的ビオチン化した。また、DPP4-ビオチンを得た。
2.5 ストレプトアビジンSAはカルボキシル基で着色ラテックスに結合させ、L-SAを得て;ステップ2.4で得たDPP4-ビオチンをL-SAと共インキュベートし、L-SB-DPP4を得た。
【0053】
実施形態3:実施形態1および2に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、ヒトACE2遺伝子がヒトACE2の細胞外部分、すなわちGenBank:AB046569.1のパート1-739aaのコード化遺伝子配列であり;ヒトDPP4遺伝子がヒトDPP4の細胞外部分、すなわちGenBank:KJ896722.1のパート29-766aaのコード化遺伝子配列であり;AVIタグ配列がGLNDIFEAQKIEWHEであり;コドンがヒト宿主に最適化され;ベクターがレンチウイルス発現ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-copGFPであり;構築したACE2融合タンパク質のプラスミドがpCDH-ACE2.copGFPと命名され;構築したDPP4融合タンパク質のプラスミドがpCDH-DPP4.copGFPと命名されたことを特徴とする。
【0054】
ACE2融合タンパク質の人工的に設計されたDNA配列はSEQ ID NO:1に記載されており、その翻訳されたタンパク質配列はSEQ ID NO:2に記載されている。
【0055】
DPP4融合タンパク質の人工的に設計されたDNA配列はSEQ ID NO:3に記載されており、その翻訳されたタンパク質配列はSEQ ID NO:4に記載されている。
【0056】
実施形態4:実施形態1および2に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、トランスフェクションのための細胞株がHEK293またはCHOであり;ACE2融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株がACE2.copGFP/293またはACE2.copGFP/CHOと命名され;DPP4融合タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞株がDPP4.copGFP/293またはDPP4.copGFP/CHOと命名されたことを特徴とする。
【0057】
安定トランスフェクト細胞株の確立プロセスは以下であった:pCDH-ACE2.copGFPまたはpCDH-DPP4.copGFPプラスミド、pH1プラスミド、およびpH2プラスミドをレンチウイルスパッケージング細胞293Vに共トランスフェクトして、ACE2.copGFPまたはDPP4.copGFPレンチウイルスを調製し、またACE2.copGFPまたはDPP4.copGFPレンチウイルスでHEK293またはCHOをトランスフェクトした。
【0058】
実施形態5:実施形態1および2に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、部位特異的ビオチン化が、ACE2タンパク質のアミノ酸配列SEQ ID NO:2の末端、ビオチンタンパク質リガーゼの認識部位GLNDIFEAQKIEWHEのリジン(K)で;DPP4タンパク質のアミノ酸配列SEQ ID NO:4のN末端、ビオチンタンパク質リガーゼの認識部位GLNDIFEAQKIEWHEのリジン(K)で行われたことを特徴とする。
【0059】
実施形態6:実施形態1および2に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、カルボキシル着色ラテックスをEDC/NHS架橋剤で活性化させた後、ストレプトアビジン(SA)をペプチド結合によりラテックスに結合させて、L-SAを得;ACE2-ビオチンタンパク質をストレプトアビジン-ビオチン反応によってL-SAに結合させ、着色ラテックスで標識したACE2タンパク質を得て、L-SB-ACE2と命名し;L-SB-DPP4についても同様であったことを特徴とする。
【0060】
実施形態7:実施形態1に記載するように、キットにおいて説明する特徴を有する新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、EDC/NHS架橋剤活性化カルボキシル着色ラテックス、抗A型インフルエンザウイルス(IFVA)抗体(捕獲)、抗B型インフルエンザウイルス(IFVB)抗体(捕獲)、およびウサギIgGを使用し、これらをそれぞれペプチド結合により着色ラテックスに結合させて、L-IFVA、L-IFVB、およびL-ウサギIgGを得るステップも含む。
【0061】
実施形態8:実施形態1に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、キットが2つのクロマトグラフィーストリップも含むことを特徴とする。ストリップは、底部ライニング、ニトロセルロース(NC)膜、試料パッド、剥離パッド、および吸収紙を含む。試料パッド、剥離パッド、NC膜、および吸収紙は底部ライニングの上に組み合わせ、その中で剥離パッドおよび吸収紙はNC膜のいずれかの端部上に積み重ね、試料パッドは剥離パッドの上に積み重ねる。
【0062】
例示するストリップのうちの1つで、L-IFVA、L-SB-ACE2、およびL-ウサギIgGを混合し、ストリップの剥離パッド上に噴霧した。その剥離パッドから吸収紙まで、検査線領域T1(A型インフルエンザウイルス)、T2(新型コロナウイルス)、および対照線領域C1を連続的にNC膜上に設置する。また、それぞれ抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(検出型)、SARS-CoV-2ポリクローナル抗体の抗S1タンパク質、ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(GAR)で被覆した。このストリップはストリップAと命名する。
【0063】
もう1つの例示するストリップで、L-IFVB、L-SB-DPP4、およびL-ウサギIgGを混合し、ストリップの剥離パッド上に噴霧した。その剥離パッドから吸収紙まで、検査線領域T3(B型インフルエンザウイルス)、T4(MERS-CoV)、および対照線領域C2を連続的にNC膜上に設置する。また、それぞれ抗B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(検出型)、MERS-CoVポリクローナル抗体の抗S1タンパク質、ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(GAR)で被覆した。このストリップはストリップBと命名する。
【0064】
検査ストリップAおよびBを、二重ストリップカード上に組み合わせる。新型コロナウイルス、MERS、およびA型・B型インフルエンザウイルスの4-in-1迅速検出キットを構築した。このうち、新型コロナウイルスおよびA型インフルエンザウイルスはストリップA上で検出でき、MERSおよびB型インフルエンザウイルスはストリップB上で検出できる。
【0065】
実施形態9:実施形態8に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、検査の際に、試薬プレートの2つの試料孔それぞれに試料を投入すると、約3~15分以内に、A型インフルエンザウイルスのT1、新型コロナウイルスのT2、B型インフルエンザウイルスのT3、またはMERSウイルスのT4を目視で観察し、対応するT線が現れたものが陽性であり、現れなければ陰性であることを特徴とする。
【0066】
実施形態10:実施形態8に記載するように、新型コロナウイルス/MERS-CoV/A型・B型インフルエンザウイルス多重迅速検出キットは、キットが、便、尿、呼吸器分泌物、口腔粘液、涙、および環境試料の検出に好適であることを特徴とする。新型コロナウイルス、MERS-CoV、A型インフルエンザ、およびB型インフルエンザウイルスに適用して迅速に検出し、4つのウイルス性伝染病を同時に約3~15分以内に特定することができる。これは、病院検査、在宅検査、疫学調査、大規模スクリーニングおよび診断に、ならびにコロナウイルスおよびインフルエンザウイルスアウトブレイクの世界的監視に使用できる。
【0067】
以下に、特定の実施例を参照する。これらは例示的な実施形態であり、それらの特定の要素に限定されることを意図するものではないが、本開示の実施形態は、本明細書に教示するより多くまたは少なく含み得る。
【0068】
以下に、例示的な実施形態を、特定の例示的な実施形態と組み合わせてさらに説明する。ただし、例示的な実施形態の保護範囲はこれに限定されない。
【実施例0069】
プラスミドpCDH-ACE2.copGFPの構築
ヒトACE2遺伝子のC末端(GenBank:AB046569.1のパート1-739aaのコード化遺伝子配列)を、ビオチン化タグ配列(GLNDIFEAQKlEWHE)および6×Hisタグに順に接続させ、人工的に設計された配列を形成した。人工的に設計された配列は宿主細胞コドンによって最適化し、次いでそのCMVプロモーター下でベクターにサブクローニングした。ACE2-AVIタグ-6×Hisタグ融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し、これをACE2融合タンパク質プラスミドと呼ぶ。人工的に設計されたDNA配列はSEQ ID NO:1に記載されており、その発現されたアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に記載されている。遺伝子を合成した後、リガーゼ制限部位EcoRIおよびNotIを介してpCDH-CMV-MCS-EF1-CopGFPベクターにクローニングした。構築したプラスミドはpCDH-ACE2.copGFPと命名する(
図1に示す)。
【0070】
SEQ ID NO:1の特定の配列を配列表に示す。その末端のそれぞれにおいて、EcoRI(GAATTC)/NotI(GCGGCCGC)を遺伝子サブクローニングに用いる。7-2223bp配列のパートはヒトACE2タンパク質の細胞外領域(1-739aa)をコードする。2224-2295bp配列のパートはBirA酵素の識別部位をコードする。2296-2314bpは精製タグ6×Hisの遺伝子配列である。
【0071】
SEQ ID NO:2の特定の配列を配列表に示す。1-739aaのパートはヒトACE2タンパク質の細胞外領域であり;740-763aaのパートはBirA酵素の認識部位であり;764-770aaは精製タグ6×Hisである。
SEQ ID NO:3の特定の配列を添付の配列表に示す。その末端のそれぞれにおいて、EcoRI(GAATTC)/NotI(GCGGCCGC)を遺伝子サブクローニングに用いる。7-84bp配列のパートはラット成長ホルモンシグナルペプチドをコードする。85-102bp配列は6×Hisタグをコードする。103-147bp配列はAVIタグをコードする。154-2367bp配列はヒトDPP4タンパク質の細胞外領域(29-766aa)をコードする。