IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 輝能科技股▲分▼有限公司の特許一覧 ▶ プロロジウム ホールディング インクの特許一覧

特開2022-27533リチウム電池の熱暴走を抑制するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027533
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】リチウム電池の熱暴走を抑制するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220203BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220203BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20220203BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/42 Z
H01M50/431
H01M50/449
H01M50/434
H01M50/443 M
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021118362
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】63/058,205
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/087,563
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/372,012
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE22
5H021HH03
5H029AJ12
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029BJ27
5H029DJ14
5H029EJ01
5H029EJ03
5H029EJ05
5H029HJ06
5H029HJ12
5H029HJ14
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030AS11
5H030FF22
(57)【要約】
【課題】本発明は、リチウム電池の熱暴走を抑制するための方法を提供する。
【解決手段】この方法は、電気化学反応システムを含む、充電および放電を実行可能なリチウム電池を提供する工程を含む。このリチウム電池の温度が所定の温度に達したときに、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)は、リチウム電池の正極活物質層および負極活物質層に適用され、正極活物質層および負極活物質層を不動態化する。金属イオン(A)は、非リチウムアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはそれらの組合せから選択され、熱暴走の発生を防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池の熱暴走を抑制するための方法であって、
工程(a):電気化学反応システムを含む、充電および放電を実行可能なリチウム電池を提供する工程、および、
工程(b):前記リチウム電池の温度が所定の温度に達したときに、前記リチウム電池の正極活物質層および負極活物質層を不動態化するために、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を前記正極活物質層および前記負極活物質層に適用する工程、を含み、
前記金属イオン(A)は、非リチウムアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはそれらの組合せから選択される、
方法。
【請求項2】
前記金属イオン(A)はナトリウムイオン、カリウムイオンまたはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属イオン(A)はNaOH、KOH、NaCl、KCl、NaNO、KNO、またはNaAl(OH)により供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記両性金属イオン(B)はアルミニウムイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記両性金属イオン(B)はAlCl、AlBr、AlI、Al(NO、AlClO、AlF、AlH、Zn(OH)またはNaAl(OH)により供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(a)のリチウム電池は、前記電気化学反応システムを前記リチウム電池の外側に接続する貫通孔と、前記金属イオン(A)および前記両性金属イオン(B)を供給する、前記リチウム電池の外面に配置された、前記貫通孔を覆うイオン供給体と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記貫通孔の直径は5~250マイクロメーターである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(a)のリチウム電池は、前記貫通孔を覆う除去可能なゲート層をさらに含み、前記イオン供給体は前記ゲート層の外面に配置されている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲート層は熱分解、エッチングまたは解重合分解を介して除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(a)のリチウム電池は、前記金属イオン(A)および前記両性金属イオン(B)を供給する、前記リチウム電池の内部に配置されたイオン供給体をさらに含み、前記イオン供給体の表面は除去可能な保護機構を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記保護機構は、熱分解によって除去可能なまたは極性溶液に溶解される保護層である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン供給体は前記電気化学反応システム内に配置されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記保護機構は、熱分解によって除去可能なまたは極性溶液に溶解されるカプセルである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン供給体は、前記電気化学反応システムの活物質層内に配置され、前記電気化学反応システムのセパレーターにコーティングされ、または前記電気化学反応システムの電解質に添加される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気化学反応システムのセパレーターは複数のセラミック粉末ごとに積み重ねられ、前記イオン供給体は前記セラミック粉末と混合される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の温度は70~130℃である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の安全性を向上させるための方法、特に、正極活物質層および負極活物質層を不動態化することによりリチウム電池の熱暴走を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、車両、消費者向けおよび産業用のウェアラブル製品、ポータブルデバイスならびにエネルギー貯蔵デバイスなどのような様々な製品に広く使用されているため、人間の日常生活のすべての分野で利用されていると言える。しかしながら、携帯電話の電池および電気自動車の火災または爆発などの、リチウムイオン電池の事故の発生が時々耳に入る。これらはすべて、リチウム電池に安全性の問題に対する包括的で効果的な解決策がまだないためである。
【0003】
リチウム電池の火災または爆発についての危険な事象の主な原因は熱暴走である。また、リチウム電池の熱暴走の主な原因は熱であり、これは、電池内のSEI(固体電解質界面(solid electrolyte interface))膜、電解質、バインダー、ならびに正極活物質および負極活物質の温度上昇によって引き起こされる熱分解から生じる発熱反応である。
熱暴走を抑制するための現在の方法は、配置された場所に応じて、電池セルの外側と電池セルの内側の2つのタイプに分類できる。電池セル外側のタイプでは、デジタル算術シミュレーションを使用する監視システムが利用される。電池セル内側のタイプでは、それはさらに物理的方法または化学的方法に分けることができる。電池セル外側のデジタル監視システムでは、電池セルの外側の専用保護回路と専用管理システムを利用して、使用時の電池の安全監視を強化している。サーマルシャットダウンセパレーターなどの電池セル内側の物理的タイプでは、電池セルの高温下で、セパレーターの孔が閉じられ、イオンの通過が遮断される。
【0004】
電池セル内側の化学的タイプでは、規模制御タイプまたは電気化学反応タイプとして定義できる。規模制御タイプでは、電解質に難燃剤を添加して、熱暴走の規模を制御する。電気化学反応タイプの例は次のとおりである。
a.モノマーまたはオリゴマーが電解質に添加される。温度が上昇すると重合が起こり、イオン移動の速度が低下する。従って、温度が上昇するとイオン導伝率が低下し、セル内の電気化学反応速度が低下する。
b.正の温度係数(PTC)抵抗材料が正極層または負極層と隣接する集電層との間に挟まれている。電池セルの温度が上昇すると、電気的絶縁能力が向上する。正極層または負極層と隣接する集電層との間の電力伝送効率が低下し、電気化学反応速度も低下する。
c.正極活物質の表面に改質層が形成されている。電池セルの温度が上昇すると、改質層は緻密な膜に変換され、これにより、電荷移動の抵抗が増加して、電気化学反応速度が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法は、イオン/電子移動経路を受動的に遮断して、発熱を低減することのみを目的としており、主要供給源が最大エネルギーを生成して、熱暴走および電気化学反応全体の主な反応体、すなわち、活物質を引き起こすことを目的としていない。従って、本発明は、前述の問題を軽減するかまたはなくすために、活物質の熱暴走につながる熱エネルギーを減少させることによってリチウム電池の熱暴走を抑制するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、リチウム電池の熱暴走を抑制するための新しい方法を提供することであり、この方法は、正極活物質および負極活物質を不動態化して、電気化学反応経路を遮断し、電池の熱暴走を効果的に回避できる。
【0007】
上記を実施するために、本発明は、リチウム電池の熱暴走を抑制するための方法を開示し、その方法は、以下の工程を含む。
工程(a):電気化学反応システムを含む、充電および放電を実行可能なリチウム電池を提供する工程。
工程(b):前記リチウム電池の温度が所定の温度に達したときに、前記リチウム電池の正極活物質層および負極活物質層を不動態化して、電気化学反応経路を遮断し、前記電池の熱暴走を効果的に回避するために、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を前記正極活物質層および前記負極活物質層に適用する工程。金属イオン(A)は、非リチウムアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはそれらの組合せから選択される。
【0008】
本発明のさらなる適用範囲が、以下に与える詳細な説明から明らかになるであろう。この詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が当業者に明らかになるが、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示し、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【0009】
本発明は、以下に示す、例示にすぎない詳細な説明からより完全に理解されるが、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるリチウム電池の熱暴走を抑制するための方法の工程の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明によるリチウム電池の熱暴走を抑制するための方法の工程の別の例を示すフローチャートである。
図3A図2による電池セルの概略図である。
図3B図2による電池セルの概略図である。
図4図2による電池セルの別の実施形態の概略図である。
図5】本発明によるリチウム電池の熱暴走を抑制するための方法の工程の別の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の熱暴走抑制を伴うリチウム電池の一実施形態の概略図である。
図7A】本発明の金属イオン(A)および(B)を適用するためのイオン供給体を備えた活物質層の概略図である。
図7B】本発明の金属イオン(A)および(B)を適用するためのイオン供給体でコーティングされたセパレーターの概略図である。
図7C】本発明のセパレーターの概略図であり、セパレーターの表面はセラミック粉末およびイオン供給体を含む。
図7D】本発明の金属イオン(A)および(B)を適用するためのイオン供給体と混合されたセラミック粉末の概略図である。
図8】30%NaOH(aq)、30%NaAl(OH)4(aq)、30%NaCl(aq)、10%LiOH(aq)、および30%KOH(aq)の濃度についてのリチウムイオン抽出を伴う正極活物質との反応のXRD回折パターンである。
図9】リチウムイオン挿入を伴う負極活物質がナトリウム/カリウムイオンおよびアルミニウムイオンに曝露される前および後のXRD回折パターンである。
図10】従来のリチウム電池セルの熱暴走試験についての電圧および温度曲線を示す。
図11】本発明の熱暴走抑制を伴うリチウム電池セルについての電圧および温度曲線を示す。
図12A】100%SOC(充電状態)でカソード上に純水を滴下した結果の画像である。
図12B】100%SOC(充電状態)でカソード上にNaOH(aq)を滴下した結果の画像である。
図12C】100%SOC(充電状態)でカソード上にNaAl(OH(aq)を滴下した結果の画像である。
図13A】100%SOC(充電状態)でアノード上に純水を滴下した結果の画像である。
図13B】100%SOC(充電状態)でアノード上にNaOH(aq)を滴下した結果の画像である。
図13C】100%SOC(充電状態)でアノード上にNaAl(OH(aq)を滴下した結果の画像である。
図13D】泡沫をジグによってクランプした図13Cの画像である。
図14A】40%SOCのカソードの、30%水酸化ナトリウムを約1時間にわたって滴下したSEMダイアグラムである。
図14B】100%SOCのカソードの、30%水酸化ナトリウムを約1時間にわたって滴下したSEMダイアグラムである。
図15A】40%SOCのアノードの、30%水酸化ナトリウムを約1時間にわたって滴下したSEMダイアグラムである。
図15B】100%SOCのアノードの、30%水酸化ナトリウムを約1時間にわたって滴下したSEMダイアグラムである。
図16A】20%NaAl(OH(aq)を使用したカソードについての示差走査熱量計のサーモグラムである。
図16B】20%NaAl(OH(aq)を使用したアノードについての示差走査熱量計のサーモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。クレーム内のいずれの参照記号も、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。記載されている図面は、概略的なものにすぎず、限定するものではない。図面では、要素の一部のサイズは誇張されており、例示目的のために縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【0012】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、一般的な発明の概念を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a,an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに別意を示していない限り、複数形も含むことを意図している。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、実施形態例が属する当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用されている辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈での意味と一致する意味を持っていると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが理解される。
【0013】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態では」または「ある実施形態では」という語の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らないが、その場合もあり得る。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0014】
まず、図1を参照されたい。この図は、本発明によるリチウム電池の熱暴走を抑制するための方法の工程の一例を示すフローチャートである。図に示されるように、第1の工程S1は、「電気化学反応システムを含むリチウム電池を提供すること」である。このリチウム電池は、充電および放電を実行可能である。これは、このリチウム電池が、リチウムイオン抽出を伴う正極活物質およびリチウムイオン挿入を伴う負極活物質を有し得ることを意味する。
次に、工程S2は「リチウム電池の温度が所定の温度に達したときに、追加の金属イオン(A)および追加の両性金属イオン(B)をリチウム電池に適用すること」である。金属イオン(A)および両性金属イオン(B)は、リチウムイオン抽出を伴う正極活物質およびリチウムイオン挿入を伴う負極活物質と化学反応を行い、電気化学反応システムの正極活物質および負極活物質を、元の状態と比較してエネルギーが低い不動態化状態にする。従って、電気化学反応経路が遮断され、電池の熱暴走が効果的に回避される。金属イオン(A)は、非リチウムアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはそれらの組合せから選択される。前記所定の温度は70~130℃である。さらに、上述の「追加の」とは、リチウム電池は充電および放電を実行するために必要な材料をすでに備えており、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)がリチウム電池/これらの材料に追加的に加えられることを意味する。
【0015】
金属イオン(A)が非リチウムアルカリ金属イオンから選択される場合、これは、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはそれらの組合せから選択される。金属イオン(A)がアルカリ土類金属イオンから選択される場合、これは、好ましくは、ベリリウムイオン、マグネシウムイオンまたはカルシウムイオンから選択される。
両性金属イオン(B)はアルミニウムイオンまたは亜鉛イオンである。上述の電気化学反応システムは、正極活物質層、負極活物質層、正極活物質層と負極活物質層との間に挟まれたセパレーター、および電気化学反応システムに充填された電解質系を含む。この電解質系は液体、固体またはそれらの組合せであり得る。
【0016】
金属イオン(A)および両性金属イオン(B)がリチウム電池の電気化学反応システムに導入された後、正極活物質では、金属イオン(A)が正極活物質から電子を取得し、正極活物質の表面に堆積し、その後、さらに移動してリチウムイオン抽出の正極を占有する。リチウムイオン抽出を伴う正極活物質は、電位が高くエネルギーが高い元の状態から、電位が低くエネルギーが低い不動態化状態へ移行する。さらに、正極活物質の元の状態のリチウム原子が失われるため、構造が不安定で、酸素物質(O、O 、O)が放出されやすくなる。
ナトリウムなどの金属イオン(A)と電子によって形成された金属原子は、熱エネルギーによって駆動され、リチウムイオン抽出、すなわち、インターカレーションの正極を満たし、格子を再配置して新しい安定状態を形成し、同時に、熱エネルギーが消費される。さらに、ナトリウムなどの金属イオン(A)によって形成された金属原子がリチウムイオン抽出の正極に満たされると、この新しい安定状態の構造は、水分の吸着の増加など、ナトリウムの特性の一部を表し、ナトリウムを含有することを求める。これにより、電極の絶縁特性が高まり、性能が低下することになる。同様に、負極活物質では、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)が、リチウムイオン挿入を伴う負極活物質と反応する。リチウムイオン挿入を伴う負極活物質は、電位が低くエネルギーが高い元の状態から、電位が高くエネルギーが低い不動態化状態に移行する。従って、本発明は、追加の金属イオン(A)および追加の両性金属イオン(B)を適用することにより、正極活物質および負極活物質を不動態化して、電気化学反応経路を遮断し、電池の熱暴走を効果的に回避することを達成できる。
【0017】
追加の金属イオン(A)および追加の両性金属イオン(B)をリチウム電池に適用する工程S2に関して、以下のタイプを含む。
1)金属イオン(A)および両性金属イオン(B)は、リチウム電池の外側から電気化学反応システムまで提供される。
2)金属イオン(A)および両性金属イオン(B)は、リチウム電池の内側から電気化学反応システムまで提供される。
【0018】
リチウム電池の外側から電気化学反応システム内に金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を提供する上述の方法に関して、以下の経路、例えば、リチウム電池のケーシングに形成された圧力解放部材、リチウム電池の膨張によって引き起こされた孔、またはパンクによって引き起こされた裂け目を利用することができる。さらに、この経路は、リチウム電池の外側から電気化学反応システム内に金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を提供する目的で形成され得る。以下の説明は目的の形成の例として示されている。
【0019】
図2および図3Aを参照されたい。工程S12は、「電気化学反応システムと、リチウム電池20の集電層202上に形成された複数の貫通孔203と、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を提供する、貫通孔203に配置されたイオン供給体10とを含むリチウム電池20を提供すること」である。リチウム電池20は、集電層202上に形成された複数の貫通孔203を有する。貫通孔203の一端はリチウム電池20の外側に露出し、他端は電気化学反応システム、すなわち、活物質層208、210およびセパレーター212に接続されている。イオン供給体10は、リチウム電池20の外面に配置され、貫通孔203を覆っている。このような構造下では、イオン供給体10はリチウム電池20の外側に配置されるため、リチウム電池20の電気化学反応システムの効率または組成には影響を及ぼさない。貫通孔の直径は5~250マイクロメーターである。次に、リチウム電池20の温度が所定の温度に達すると、イオン供給体10は、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を、貫通孔203を介して電気化学反応システムに適用する(工程S22)。
【0020】
さらに、上記の、正極活物質が電位が高くエネルギーが高い状態から電位が低くエネルギーが低い状態へ移行する場合について、以下に詳細な説明を提供する。
正極活物質は、リチウムイオン抽出を伴う状態であり、電位は高くなっている。また、結晶格子が不安定なため、結晶格子は崩壊しやすく、酸素を放出し、熱エネルギーを激しく放出する能力が高くなっている。従って、上記では、正極活物質は、熱暴走を引き起こす可能性のある、電位が高くエネルギーが高い状態であると定義されている。金属イオン(A)がリチウムイオン抽出またはインターカレーションの位置を満たすと、正極活物質の電位が低下し、正極活物質の結晶格子が比較的安定する。また、正極活物質の結晶格子の安定性が高くなり、酸素放出能力が低下し、熱エネルギーを激しく放出する能力が低下する。従って、上記では、正極活物質は金属イオン(A)との反応後に不動態化状態にあると定義され、電位が低くエネルギーが低い結晶状態と定義される。
【0021】
上記の、負極活物質が、熱暴走を引き起こす可能性のある、電位が低くエネルギーが高い状態から電位が高くエネルギーが低い状態へ移行する場合については、以下に詳細な説明を提供する。
負極活物質は、リチウムイオン挿入を伴う状態であり、電位は低くなっている。加えて、負極活物質は正極活物質から放出された酸素を受け取るため、負極活物質は、激しく燃焼し、熱エネルギーを放出しやすい。従って、負極活物質は、不安定であり、熱エネルギーを放出する能力が高い。従って、上記では、負極活物質は、電位が低くエネルギーが高い状態にあると定義されている。
金属イオン(A)および両性金属イオン(B)がリチウムイオン挿入を伴う負極活物質と作用すると、リチウムイオンが抽出され、負極活物質のベース材料とケイ素・炭素などのポリマー化合物を形成する。正極活物質の酸素放出能力の低下と同様に、負極活物質の熱エネルギーを激しく放出する能力も低下する。従って、上記では、負極活物質は金属イオン(A)および両性金属イオン(B)との反応後に不動態化状態にあると定義され、電位が高くエネルギーが低いポリマー化合物状態と定義される。
【0022】
イオン供給体10は、金属イオン(A)を提供可能な化合物および両性金属イオン(B)を提供可能な化合物を含む。例えば、金属イオン(A)を提供可能な化合物は、NaOH、KOH、NaCl、NaNO、KNOなどであり得る。両性金属イオン(B)を提供可能な化合物は、AlCl、AlBr、AlI、Al(NO、AlClO、AlF、AlH、Zn(OH)などであり得る。また、イオン供給体10は、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を提供可能な化合物、例えば、NaAl(OH)などでもあり得る。
【0023】
この実施形態のリチウム電池20は、第1の集電層202、第2の集電層204、グルーフレーム206、電気化学反応システム、セパレーター212および電解質系を含む。グルーフレーム206は、第1の集電層202と第2の集電層204の間に挟まれている。グルーフレーム206の一端は第1の集電層202に接着され、グルーフレーム206の他端は第2の集電層204に接着される。第1の集電層202、第2の集電層204およびグルーフレーム206が閉鎖空間を形成する(貫通孔203は、ここでは考慮されていない)。
電気化学反応システムは、閉鎖空間に配置され、第1の集電層202に隣接する第1の活物質層208および第2の集電層204に隣接する第2の活物質層210を含む。第1の活物質層208および第2の活物質層210はそれぞれ、正極活物質および負極活物質である。セパレーター212は、第1の活物質層208と第2の活物質層210の間に配置され、イオン伝導特性および電気的絶縁性を有する。電解質系は、閉鎖空間内に配置され、イオン移動に使用するために、第1の活物質層208および第2の活物質層210は含浸されまたは混合される。さらに、第1の活物質層208および第2の活物質層210は、導電性材料および接着剤材料をさらに含み得る。これらの部分は本発明の技術的特徴ではないため、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0024】
加えて、セパレーター212の材料は、電池業界の様々なタイプからから選択できる。例えば、セパレーター212は、固体電解質、またはセラミック粉末によってその表面がコーティングされたポリマー材料で形成された有孔電気的絶縁層から構成される。また、セパレーター212は、接着剤を使用してセラミック粉末のみを積み重ねることによっても形成できる。セラミック粉末は、イオン伝導性を有さなくてもよく、または、イオン伝導性を有してもよい。貫通孔203は、第1の集電層202を貫通してその上面および下面と接続する。従って、貫通孔203の一端はリチウム電池20の外部環境に曝され、他端はリチウム電池20の電気化学反応システムに接続されている。
第1の集電層202は、正極集電層または負極集電層であり得る。第1の集電層202の極性は、第2の集電層204の極性とは異なる。例えば、第1の集電層202が正極集電層である場合、第2の集電層204は負極集電層である。第1の集電層202、第2の集電層204、およびグルーフレーム206は、電池のパッケージング部品として使用される。言い換えれば、貫通孔203が考慮されない場合、リチウム電池20の電気化学反応システムは、このパッケージング部品によって外部環境から保護される。
【0025】
グルーフレーム206は、特定の要件なくポリマー材料で作られている。それは第1の集電層202および第2の集電層204の表面に接着でき、電解質系に対して耐久性がある場合に限る。しかしながら、熱硬化性樹脂、例えば、シリコーンが好ましい。負極活物質は、炭素材料、シリコーン系材料、またはそれらの混合物であり得る。炭素材料の例としては、天然黒鉛、改質黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン粒子、軟質炭素(コークスなど)、およびいくつかの硬質炭素などの黒鉛化炭素材料および非晶質炭素材料が挙げられる。シリコーン系材料には、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素・炭素複合材料、およびケイ素合金が含まれる。
【0026】
集電層202に貫通孔203を形成する方法は、集電層202での直接打ち抜きおよび予備成形が可能である。さらに、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)のイオン供給体10が、予備成形された貫通孔203を介して引き起こされる電気化学反応システムとの相互作用(例えば、電解質が漏れてイオン供給体10に影響を及ぼすまたはイオン供給体10に浸潤して電気化学反応システムに影響を及ぼす)を防止するため、図3Bに示されるように、除去可能なゲート層205が貫通孔203の開口部に配置され、開口部を一時的に閉鎖する。
ゲート層205は、貫通孔203の開口部を露出させるために破壊される。例えば、ゲート層205は、エッチングによって破壊され得る材料で作られており、ゲート層205をエッチングするための材料は、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)のイオン供給体10または追加の適用から提供され得る。ゲート層205はまた、破壊機構としての加熱により溶融し得る感熱材料で作られていてよく、またはゲート層205は解重合可能な材料で作ることができ、解重合を誘導する材料は、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)のイオン供給体10または追加の適用から提供され得る。
【0027】
集電層202に貫通孔203を形成するための別の方法は、エッチングによるものであり、例えば、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)のイオン供給体10がエッチング能力を有し得、エッチング能力は温度によって引き起こされる。例えば、イオン供給体10の外面は、感熱分解材料から構成される保護層12で覆われている。図4に示されるように、温度が所定の温度に近い場合、保護層12は分解して、イオン供給体10を露出/解放し、イオン供給体10に外部部品(集電層202)に対するエッチング攻撃能力を発揮させる。他方、イオン供給体10は、水放出材料など、温度によって引き起こされる分解可能な組成物を有し得る。水放出材料は、高温では吸熱分解して水を放出し、イオン供給体10の濃度またはイオン特性を調整してエッチング攻撃能力を発揮する。
【0028】
図5を参照されたい。この図を使用して、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)がリチウム電池の内部に提供されて電気化学反応システムに入ることを説明する。図に示されるように、リチウム電池20は、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を提供する、リチウム電池20の内部に配置されたイオン供給体10をさらに含み、イオン供給体10の表面には除去可能な保護機構が備わっている(工程S14)。例えば、保護層は、フィルム状タイプのイオン供給体10の表面にコーティングされるか、または電気化学反応システムとイオン供給体10との不適切な相互作用を回避するために、イオン供給体10はカプセル内で複数の部分に分割される。
次に、工程S24では、リチウム電池20の温度が所定の温度に達したら、除去可能な保護機構が機能しなくなり、イオン供給体10は金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を電気化学反応システムに適用する。そして、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)は、不動態化のために正極活物質および負極活物質と反応する。保護機構では、例えば、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)を提供するイオン供給体10は、上述の保護層12でコーティングされ、リチウム電池30のパッケージングケーシング32内に配置される。図6に示されるように、イオン供給体10は、電気化学反応システムの活物質層またはセパレーター内に配置されていない。
【0029】
イオン供給体10は、カプセル14に含まれており、図7Aに示されるように、電気化学反応システムの活物質層33内で混合されるか、または図7Bに示されるように、セパレーター35の表面にコーティングされている。また、セパレーター35の表面は、図7Cに示されるように、セラミック粉末36などの補強材料でコーティングし得るし、または図7Dに示されるように、基板が存在しない場合には、セパレーター35のセラミック粉末36と混合され得る。これらのセラミック粉末36は、イオン伝導性を有してもよく、または、イオン伝導性を有さなくてもよい。さらに、カプセル14は、(液体または固体にかかわらず)電解質で混合される。
この実施形態では、カプセル14は、イオン供給体10の保護機構として使用され、所定の温度に達していないときにイオン供給体10が電気化学反応システムの部品と反応するのを防止する。この方法は、グルーフレームと集電層をパッケージング構造とするリチウム電池構造に適用でき、図6に示されるように、金属ケーシングなど、集電層とグルーフレームをパッケージング構造として使用しないリチウム電池、またはアルミニウムプラスチックフィルムでパックされたリチウム電池にも適用できる。
【0030】
保護層12の感熱分解材料は、パラフィン油、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、低密度PE(ポリエチレン)、ポリ(トランス-1,4-ブタジエン)、ポリ(テトラメチレンオキシド)、アイソタクチックポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンアジパート)、アイソタクチックポリ(1-ブテン)、ポリ(エチレン)から選択される。また、感熱分解材料は、軟化点を下げるために鉱油と混合される。
【0031】
カプセル14の材料は、含められる化合物によって決定される。例えば、イオン供給体10の温度によって引き起こされる分解可能な組成物が、水放出材料から選択される場合、カプセル14の材料は、水などの極性溶液に溶解しやすい材料、例えば、ゼラチン、アラビアガム、キトサン、カゼイン酸ナトリウム、デンプン、ラクトース、マルトデキストリン、ポリ-l-リシン/アルギナート、ポリエチレンイミン/アルギナート、アルギン酸カルシウム、ポリビニルアルコールから選択される。カプセル14の材料が、感熱分解材料である場合、これは、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリメタクリラート、硝酸セルロース、シリコーン、パラフィン、カルナウバ蝋、ステアリン酸、脂肪アルコール、ステアリルアルコール、脂肪酸、炭化水素樹脂、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールから選択される。イオン供給体10が、特定の温度でエッチング能力を発揮する材料から選択される場合、カプセル14の材料は、エッチング可能な材料から選択される。しかしながら、これらの説明は例にすぎない。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に変更を加え得ることを理解するであろう。
【0032】
続いて、本発明の方法が正極活物質および負極活物質に作用し、正極活物質および負極活物質の構造を変化させて熱暴走を抑制できることを検証する。この実験では、正極活物質はNMC811であり、負極活物質はケイ素・炭素である。金属イオン(A)はナトリウムまたはカリウムイオンであり、両性金属イオン(B)はアルミニウムイオンである。
【0033】
図8を参照されたい。この図は、30%NaOH、30%NaAl(OH)、30%NaCl、10%LiOH、および30%KOHの濃度についてのリチウムイオン抽出を伴う正極活物質との反応のXRD回折パターンである。リチウムイオン抽出を伴うNMC811がナトリウムまたはカリウムイオンと反応した後、NMC811の特徴的なピーク(矢印で示す)はもはや存在せず、ナトリウムまたはカリウムイオンの挿入により格子構造が変化していることが図からわかる。これは、サイズが大きく、重量が重く、電位エネルギーが高いナトリウム/カリウムイオンが正極活物質の表面に電子を取得してナトリウム/カリウム原子を形成することによる可能性がある。また、熱エネルギーの吸収によって、それらはリチウムイオン抽出またはインターカレーションの位置に移動し、より安定したより低いエネルギーの構造を形成する。
【0034】
図9を参照されたい。この図は、リチウムイオン挿入を伴う負極活物質がナトリウム/カリウムイオンおよびアルミニウムイオンに曝露される前および後のXRD回折パターンである。Li-Si合金を表す特徴的なピークが完全に消失していることがはっきりとわかる。これは、Li-Si合金がより低いエネルギーのポリマー化合物になったことを意味する。
【0035】
図10および11を参照されたい。図10は、従来のリチウム電池セルの熱暴走試験についての電圧および温度曲線を示す。図11は、本発明の熱暴走抑制を伴うリチウム電池セルについての電圧および温度曲線を示す。図に示されるように、熱暴走が発生し発熱すると、従来のリチウム電池セルの電圧は、温度が500℃前後に達した後、低下し始める。しかしながら、本発明の熱暴走抑制を備えたリチウム電池セルでは、電気化学反応経路を遮断して、熱暴走を効果的に回避することにより、電圧は、温度が100℃前後に達した後、低下し始める。
【0036】
図12A~12Cはそれぞれ、100%SOC(充電状態)でカソード上に純水、NaOH(aq)およびNaAl(OH(aq)から選択される異なる溶液を滴下した結果の画像である。図12Aでは、カソードは純水と反応しないことが分かる。図12Bおよび12Cでは、NaOH(aq)およびNaAl(OH(aq)がカソードの表面上に疎水性状態で液滴を形成し、複数の小さな気泡が液滴中に現れていることが分かる。
【0037】
図13A~13Cはそれぞれ、100%SOC(充電状態)でアノード上に純水、NaOH(aq)およびNaAl(OH(aq)から選択される異なる溶液を滴下した結果の画像である。図13Aでは、アノードに残っているリチウムが純水に強く反応し、アノードに亀裂を生じさせていることが分かる。図13Bおよび13Cでは、NaOH(aq)およびNaAl(OH(aq)が、アノードの表面上に泡沫のような気泡を有する無機ポリマーを形成していることが分かる。また、図13Dに示されるように、無機ポリマーの一部を、ジグによってクランプしている。
【0038】
図14Aおよび14Bはそれぞれ、40%SOCおよび100%SOCのカソードの、30%水酸化ナトリウムを約1時間にわたって滴下し、DMC(炭酸ジメチル)および純水を表面洗浄に使用し、その後、60℃で8時間乾燥させたSEMダイアグラムである。
図に示されるように、40%SOCのカソードでは、リチウムイオン抽出が少ないため、カソードのリチウムイオン抽出の正極にナトリウムイオンが挿入される状況は重要ではない。しかしながら、カソードの表面の形状の起伏が顕著になる。100%SOCのカソードでは、リチウムイオン抽出が多いため、カソードのリチウムイオン抽出の正極にナトリウムイオンが挿入される状況は非常に重要である。100%SOCのカソードの格子の再配置と表面の形状の起伏も非常に重要である。また、表面の一部にも亀裂の入った状態が見られる。
【0039】
図15Aおよび15Bはそれぞれ、40%SOCおよび100%SOCのアノードの、30%水酸化ナトリウムを約1時間にわたって滴下し、DMCおよび純水を表面洗浄に使用し、その後、60℃で8時間乾燥させたSEMダイアグラムである。図に示されるように、水酸化ナトリウムは、40%SOCのアノードの一部を無機ポリマー(ジオポリマー)に形成し、それはコロイドシリカ酸の針状構造も有する。100%SOCのアノードでは、針状構造がより明白である。
【0040】
さらに、上述のより低いエネルギーのカソードおよびアノードを検証するために、図16Aおよび16Bを参照する。これらの図は、20%NaAl(OH(aq)を使用したカソードおよびアノードについての示差走査熱量計のサーモグラムである。約210℃でのカソードの熱流量のピークが明らかに消えていることがはっきりとわかる(図16A参照)。約180℃でのアノードの熱流量のピークが明らかに消えていることがはっきりとわかる(図16B参照)。
【0041】
従って、本発明は、リチウム電池の熱暴走を抑制するための方法を提供する。リチウム電池の温度が所定の温度に達したときに、金属イオン(A)および両性金属イオン(B)が正極活物質および負極活物質に適用され、反応を行う。リチウムイオン抽出を伴う正極活物質およびリチウムイオン挿入を伴う負極活物質は、エネルギーが低い不動態化状態へ移行する。電気化学反応経路が遮断され、電池の熱暴走が効果的に回避される。金属イオン(A)は、非リチウムアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはそれらの組合せから選択される。さらに、従来技術と比較すると、本発明の熱暴走を抑制するための方法は、最大エネルギーを生成して熱暴走を引き起こす、電気化学反応全体の主な反応体である活物質に対して直接実行される。
また、金属イオン(A)は、獲得した熱エネルギーによって駆動され、リチウムイオン抽出またはインターカレーションの正極を満たし、格子を再配置して新しい安定状態を形成し、同時に、熱エネルギーが消費される。金属イオン(A)および両性金属イオン(B)は、リチウムイオン挿入を伴う負極活物質と反応して、不動態化状態に移行する。従って、正極活物質と負極活物質の両方が、リチウム電池の安全性を向上させるために、より低いエネルギーにとどまる。
【0042】
本発明を上述のように説明したが、同じことでも様々に変化し得ることは明らかであろう。そのような変形形態は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかであるそのようなすべての修飾は以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
【外国語明細書】