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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027562
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】多孔質亜鉛錯体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/41 20060101AFI20220203BHJP
   C07C 63/26 20060101ALI20220203BHJP
   C07D 233/56 20060101ALI20220203BHJP
   C07D 235/06 20060101ALI20220203BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C07C51/41
C07C63/26 A
C07D233/56
C07D235/06
C07F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122125
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020127847
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】木下 智之
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊輔
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB40
4H006AC90
4H006BB20
4H006BC10
4H006BC19
4H006BJ50
4H006BS30
4H048AA02
4H048AB40
4H048AC90
4H048BB20
4H048BC10
4H048BC19
4H048VA66
4H048VB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多孔質亜鉛錯体の不活性化を引き起こす表面水酸基や吸着水を含まない新規な多孔質亜鉛錯体、従来の製造方法で施された加熱焼成下での長時間に及ぶ減圧乾燥処理を省略でき、設備投資費や燃料費の削減、および製造工程の短縮が期待できる製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と、分子内に少なくとも1つのイミダゾリル基を有するイミダゾール化合物及び分子内に少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸化合物からなる群から選ばれる1以上の有機配位子原料とを、不活性ガス存在下、非プロトン性溶媒中で反応させる、多孔質亜鉛錯体の製造方法と、これより得られる多孔質亜鉛錯体及び触媒を用いる。
-Zn-M(1)
(式中、M及びMは、互いに独立して、炭素数20以下の直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又は炭素数20以下の芳香族を含む環状炭化水素基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と、分子内に少なくとも1つのイミダゾリル基を有するイミダゾール化合物及び分子内に少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸化合物からなる群から選ばれる1以上の有機配位子原料とを、不活性ガス存在下、非プロトン性溶媒中で反応させる、多孔質亜鉛錯体の製造方法。
-Zn-M (1)
(式(1)中、M及びMは、互いに独立して、炭素数20以下の直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又は炭素数20以下の芳香族を含む環状炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記有機配位子原料が、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、1,4-ベンゼンジカルボン酸、又は2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機亜鉛化合物が、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛又はジイソプロピル亜鉛である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記非プロトン性溶媒が、複素環式芳香族系溶媒、フラン系溶媒、チオフェン系溶媒、ニトリル系溶媒、ラクタム系溶媒、アミド系溶媒、カルバミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群から選ばれる1種の溶媒または2種以上の混合溶媒である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記非プロトン性溶媒が、ピリジン、ジメチルスルホキシド又はN,N-ジメチルホルムアミドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記非プロトン性溶媒中の含水量が50ppm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質亜鉛錯体が、X線光電子分光法により得られるO1s軌道(505~545eV)、C1s軌道(270~295eV)、N1s軌道(375~415eV)、およびZn2p軌道(995~1,035eV)の光電子強度から算出される酸素原子濃度が2.5atm%以下、かつ亜鉛原子数に対する酸素原子数の比率が20atm%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
X線光電子分光法により得られるO1s軌道(505~545eV)、C1s軌道(270~295eV)、N1s軌道(375~415eV)、およびZn2p軌道(995~1,035eV)の光電子強度から算出される酸素原子濃度が2.5atm%以下、かつ亜鉛原子数に対する酸素原子数の比率が20atm%以下である、多孔質亜鉛錯体。
【請求項9】
BET比表面積が600m/g以上、かつ熱分解温度が350℃以上である、請求項8に記載の多孔質亜鉛錯体。
【請求項10】
2-メチルイミダゾール亜鉛塩を含む、請求項8又は9に記載の多孔質亜鉛錯体。
【請求項11】
前記多孔質亜鉛錯体が、透過型電子顕微鏡を用いて測定した平均粒子径が10nm~30nmのナノ粒子を含む、請求項10に記載の多孔質亜鉛錯体。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の多孔質亜鉛錯体から成る触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水性雰囲気下で製造される多孔質亜鉛錯体、およびその製造方法に関する。本製造方法により製造された多孔質亜鉛錯体は不活性雰囲気下を好む種々の反応触媒として用いられ、親水性雰囲気下で製造される多孔質亜鉛錯体に比べ、高活性の触媒を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料には、活性炭やメソポーラスカーボンなどの炭素材料、メソポーラスシリカやゼオライトなどの無機物、あるいは有機金属構造体のような多孔質金属錯体が知られている。なかでも金属イオンまたは金属クラスターイオンと配位子イオンから構成される多孔質金属錯体は、分子レベルで均一な細孔構造を形成する高分子であり、細孔分布が狭く、他の多孔質材料を凌ぐ高い比表面積を有する。そのため反応触媒として注目され、表面に官能基を導入した例が多く報告されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
多孔質金属錯体は硝酸金属塩水和物などの無機塩の水和物と有機配位子の原料となる有機化合物をN,N-ジメチルホルムアミドや水などの親水性溶媒下で反応させて製造されるが、表面水酸基や吸着水が残存する(例えば非特許文献2参照)。そのため、不活性雰囲気を好む反応触媒に用いる際、触媒の失活の要因となる表面水酸基や吸着水を除去するため、表面水酸基の不活性化と吸着水の除去が必要となる。
この方法として、加熱雰囲気下での減圧乾燥処理が一般的に知られている。例えば、アミンとカルボン酸によるアミド化反応(例えば非特許文献3参照)、マロノニトリルとアルデヒドによるクネベナーゲル縮合反応(例えば非特許文献4参照)などの触媒に用いられる亜鉛イオンと2-メチルイミダゾールから構成される多孔質亜鉛錯体は加熱雰囲気下での減圧乾燥処理が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Nanoscience and Nanotechnology, (2013) 13, 2307-2312
【非特許文献2】Journal of Physical Chemistry Letters, (2010) 1(1), 349-353
【非特許文献3】Synlett, (2018) 29(12), 1593-1596
【非特許文献4】Journal of Solid State Chemistry, (2017) 256,27-32
【非特許文献5】Energy & Environmental Science, (2014) 7, 2232-2238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質亜鉛錯体の耐熱温度は限られており、例えば亜鉛イオンと2-メチルイミダゾールから構成される多孔質亜鉛錯体は約400℃で金属と配位子の結合が切断され、600℃で完全に非多孔質となる(例えば非特許文献5参照)。このため、表面水酸基の不活性化と吸着水の除去を目的とした減圧乾燥処理は一般的に100℃~400℃の温度範囲で行われているが、該温度では表面水酸基と吸着水を完全に除去することはできない。このように、従来の多孔質亜鉛錯体の製造方法では、多孔質亜鉛錯体に含まれる表面水酸基の不活性化と吸着水の除去は非常に困難であった。多孔質亜鉛錯体の不活性化を引き起こす表面水酸基や吸着水を含まない多孔質亜鉛錯体は従来報告されておらず、工業的に入手容易な原料を用いて容易かつ効率よく当該多孔質亜鉛錯体を得ること及び同錯体を用いた触媒の高活性化は依然として課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み、原料種として有機亜鉛化合物に着目し、非プロトン性溶媒を用いて疎水性雰囲気下で多孔質亜鉛錯体の製造を検討し、上記の課題を下記の手段により解決し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に係る。
[1] 下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と、分子内に少なくとも1つのイミダゾリル基を有するイミダゾール化合物及び分子内に少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸化合物からなる群から選ばれる1以上の有機配位子原料とを、不活性ガス存在下、非プロトン性溶媒中で反応させる、多孔質亜鉛錯体の製造方法。
-Zn-M (1)
(式(1)中、M及びMは、互いに独立して、炭素数20以下の直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又は炭素数20以下の芳香族を含む環状炭化水素基を表す。)
[2] 前記有機配位子原料が、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、1,4-ベンゼンジカルボン酸、又は2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸である、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記有機亜鉛化合物が、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛又はジイソプロピル亜鉛である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記非プロトン性溶媒が、複素環式芳香族系溶媒、フラン系溶媒、チオフェン系溶媒、ニトリル系溶媒、ラクタム系溶媒、アミド系溶媒、カルバミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群から選ばれる1種の溶媒または2種以上の混合溶媒である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記非プロトン性溶媒が、ピリジン、ジメチルスルホキシド又はN,N-ジメチルホルムアミドである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記非プロトン性溶媒中の含水量が50ppm以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記多孔質亜鉛錯体が、X線光電子分光法(XPS)により得られるO1s軌道(505~545eV)、C1s軌道(270~295eV)、N1s軌道(375~415eV)、およびZn2p3/2軌道(995~1,035eV)の光電子強度から算出される酸素原子濃度が2.5atm%以下、かつ亜鉛原子数に対する酸素原子数の比率が20atm%以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] X線光電子分光法(XPS)により得られるO1s軌道(505~545eV)、C1s軌道(255~295eV)、N1s軌道(375~415eV)、およびZn2p軌道(995~1,035eV)の光電子強度から算出される酸素原子濃度が2.5atm%以下、かつ亜鉛原子数に対する酸素原子数の比率が20atm%以下である、多孔質亜鉛錯体。
[9] BET比表面積が600m/g以上、かつ熱分解温度が350℃以上である、[8]に記載の多孔質亜鉛錯体。
[10] 2-メチルイミダゾール亜鉛塩を含む、[8]又は[9]に記載の多孔質亜鉛錯体。
[11] 前記多孔質亜鉛錯体が、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した平均粒子径が10~30nmのナノ粒子を含む、[10]に記載の多孔質亜鉛錯体。
[12] 上記[8]~[11]のいずれかに記載の多孔質亜鉛錯体から成る触媒。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、多孔質亜鉛錯体の不活性化を引き起こす表面水酸基や吸着水を含まない新規な多孔質亜鉛錯体を製造できる。
本発明の多孔質亜鉛錯体は、不活性雰囲気下での反応において高い活性を示し、好適である。
また、本発明の多孔質亜鉛錯体の製造方法は、表面水酸基や吸着水を一定量まで除去するために従来の製造方法で施された加熱焼成下での長時間に及ぶ減圧乾燥処理を省略でき、設備投資費や燃料費の削減、および製造工程の短縮が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1および比較例1の多孔質亜鉛錯体の窒素による吸着量と脱着量を表し、X軸(横軸)は相対圧(P/P)、Y軸(縦軸)はN吸着量(単位はmL/g)を示す。
図2-1】実施例1のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図2-2】比較例1のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図3-1】実施例1のTEM画像を表し、左図の白色バーは50nmの長さを示し、右図の白色バーは20nmの長さを示す。左図中の黒枠を拡大したのが右の図である。
図3-2】比較例1のTEM画像を表し、左図の白色バーは50nmの長さを示し、右図の白色バーは20nmの長さを示す。左図中の黒枠(破線で囲む)を拡大したのが右の図である。
図4-1】実施例1および比較例1における多孔質亜鉛錯体のO1s軌道のX線電子分光法(以下、「XPS」と略することがある。)スペクトルパターンを表し、X軸(横軸)は結合エネルギー(単位はeV)、Y軸(右側の縦軸)は強度(単位はa.u.(任意単位))を示す。
図4-2】実施例1および比較例1における多孔質亜鉛錯体のCls軌道のXPSスペクトルパターンを表し、X軸(横軸)は結合エネルギー(単位はeV)、Y軸(右側の縦軸)は強度(単位はa.u.(任意単位))を示す。
図4-3】実施例1および比較例1における多孔質亜鉛錯体のN1s軌道のXPSスペクトルパターンを表し、X軸(横軸)は結合エネルギー(単位はeV)、Y軸(右側の縦軸)は強度(単位はa.u.(任意単位))を示す。
図4-4】実施例1および比較例1における多孔質亜鉛錯体のZn2p軌道のXPSスペクトルパターンを表し、X軸(横軸)は結合エネルギー(単位はeV)、Y軸(右側の縦軸)は強度(単位はa.u.(任意単位))を示す。
図5】実施例2および比較例2のN,N-ジフェニルアミンの転化率と生成物のN,N-ジフェニルホルムアミドの収率の経時変化をプロットした図を表し、X軸(横軸)は反応時間(単位は時間)、Y軸(縦軸)は収率/転化率(単位は%)を示す。
図6-1】実施例3の多孔質亜鉛錯体の窒素による吸着量と脱着量を表し、X軸(横軸)は相対圧(P/P)、Y軸(縦軸)はN吸着量(単位はmL/g)を示す。
図6-2】実施例3のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図6-3】図左は実施例3のSEM画像を表し、図中の白色バーは50μmの長さを示し、図右は図左中の四角部分の拡大図であり、図中の白色バーは1μmの長さを示す。
図7-1】実施例4の多孔質亜鉛錯体の窒素による吸着量と脱着量を表し、X軸(横軸)は相対圧(P/P)、Y軸(縦軸)はN吸着量(単位はmL/g)を示す。
図7-2】実施例4のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図7-3】図左は実施例4のSEM画像を表し、図中の白色バーは50μmの長さを示し、図右は図左中の四角部分の拡大図であり、図中の白色バーは1μmの長さを示す。
図8-1】実施例5の多孔質亜鉛錯体の窒素による吸着量と脱着量を表し、X軸(横軸)は相対圧(P/P)、Y軸(縦軸)はN吸着量(単位はmL/g)を示す。
図8-2】実施例5のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図8-3】図左は実施例5のSEM画像を表し、図中の白色バーは50μmの長さを示し、図右は図左中の四角部分の拡大図であり、図中の白色バーは1μmの長さを示す。
図9-1】実施例6の多孔質亜鉛錯体の窒素による吸着量と脱着量を表し、X軸(横軸)は相対圧(P/P)、Y軸(縦軸)はN吸着量(単位はmL/g)を示す。
図9-2】実施例6のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図9-3】実施例6のTEM画像を表し、図中の白色バーは100nmの長さを示す。
図10-1】実施例7の多孔質亜鉛錯体の窒素による吸着量と脱着量を表し、X軸(横軸)は相対圧(P/P)、Y軸(縦軸)はN吸着量(単位はmL/g)を示す。
図10-2】実施例7のTG曲線を表し、X軸(横軸)は温度(単位は℃)、Y軸(縦軸)は重量減少率(単位はwt%)を示す。
図10-3】図左は実施例7のSEM画像を表し、図中の白色バーは50μmの長さを示し、図右は図左中の四角部分の拡大図であり、図中の白色バーは1μmの長さを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態について以下に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の多孔質亜鉛錯体は、疎水性の原料を用い、疎水性雰囲気下で製造される。すなわち、不活性雰囲気下において、非プロトン性溶媒中で有機亜鉛化合物と有機配位子原料を反応させて製造される。そのため、従来の製造方法と比べて表面構造が大きく異なる。
【0011】
本発明の多孔質亜鉛錯体の表面構造は、一般式(2-1)で表される構造単位を含むことができる。当該構造単位は亜鉛-有機配位子の結合から構成され、従来の製造方法で形成される一般式(2-2)で表される構造単位における亜鉛-水酸基の結合で表される表面水酸基や吸着水の存在率は極めて低い。表面水酸基や吸着水の存在率はX線光電子分光法(XPS)により測定される表面の酸素原子濃度により見積もることができる。例えば、有機配位子原料がイミダゾール化合物の場合、酸素原子濃度が2.5atm%以下、1atm%以下が更に好ましく、0.1atm%以下が特に好ましい。
【0012】
【化1】
(一般式(2-1)中、nは2以上の整数を表す。)
【0013】
【化2】
(一般式(2-2)中、nは2以上の整数を表す。)
【0014】
本発明の多孔質亜鉛錯体は、式(3-1)としての亜鉛イオンZn2+、または亜鉛-酸素クラスターに対して有機配位子が3つ以上規則的に配位した構造を有する単位ユニットが連結し、高分子量の亜鉛塩の集合体を形成する。
当該亜鉛-酸素クラスターとは、2以上の亜鉛に酸素が架橋する形式で配位した陽イオンであり、例えば一般式(4-1)で表される正四面体型Zn6+の構造が挙げられる。
単位ユニットの例として、例えば有機配位子が2-メチルイミダゾールの場合、一般式(3-2)で表される亜鉛イオンに対し4つの2-メチルイミダゾールが配位した構造を示し、また、有機配位子が1,4-ベンゼンジカルボン酸の場合、一般式(4-2)で表されるZn6+の亜鉛-酸素クラスターに対し1,4-ベンゼンジカルボン酸が6つ配位した構造が挙げられる。
当該亜鉛塩の集合体とは、当該配位子が2以上の亜鉛イオンまたは2以上の亜鉛-酸素クラスターに対し架橋する形式で配位し、亜鉛イオンまたは亜鉛-酸素クラスターと当該配位子とが互いに交差して結合する構造を含む。
【0015】
Zn2+ (3-1)
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
本発明の多孔質亜鉛錯体の結晶構造に特に制限はないが、具体的な多孔質亜鉛錯体を構成する亜鉛塩として、2-メチルイミダゾール亜鉛塩、2-エチルイミダゾール亜鉛塩、4,5-ジクロロイミダゾール塩、ベンズイミダゾール亜鉛塩、イミダゾール-5-クロロベンズイミダゾール亜鉛塩、2-メチルイミダゾール-5-クロロベンズイミダゾール亜鉛塩、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール亜鉛塩、シュウ酸亜鉛塩、フマル酸亜鉛塩、グリシン-アラニン亜鉛塩、2,5-フランジカルボン酸亜鉛塩、アセチレンジカルボン酸亜鉛塩、ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩、2-ブロモ-1,4-ジカルボン酸亜鉛塩、2-アミノ-1,4-ジカルボン酸亜鉛塩、2-(プロポキシ)-1,4-ジカルボン酸亜鉛塩、2-(ペントキシ)-1,4-ジカルボン酸亜鉛塩、2-(シクロブチル)-1,4-ジカルボン酸亜鉛塩、1,4-ナフタレンジカルボン酸亜鉛塩、4,4’-ビフェニルジカルボン酸亜鉛塩、4,5,6,10-テトラヒドロピレン-2,7-ジカルボン酸亜鉛塩、ピレン-2,7-ジカルボン酸亜鉛塩、4,4’-((3,4-ジオキソシクロブテン-1,2-ジイル)ビス(アザネジイル))ジベンゼンカルボン酸亜鉛塩、2’,5’,-ジメチル-3,3’’-ジヒドロキシ-[1,1’:4’1’’-テルフェニル]-4,4''-ジカルボン酸亜鉛塩、2,5-(アリロキシ)-1,4-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩、2,5-(ベンジロキシ)-1,4-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩、テルフェニル-4,4’’-ジカルボン酸亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニル)ベンゼン亜鉛塩、2-メチルイミダゾール-5-クロロベンズイミダゾール亜鉛塩、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニルエチニル)ベンゼン亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ベンゼン亜鉛塩、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩、1,4-ナフタレンジカルボン酸-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン亜鉛塩、ベンゼンジカルボン酸-ビピリジン亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニル)ベンゼン-2,6-ナフタレンジカルボン酸亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニルエチニル)ベンゼン-ビスフェニル-4,4’’-ジカルボン酸亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニルエチニル)ベンゼン-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニルエチニル)ベンゼン-2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩、4,4’,4’’-トリアジン-1,3,5-トリル-トリ-4-アミノベンゼンカルボン酸-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン亜鉛塩、テトラチアフルバレンテトラベンゼンカルボン酸亜鉛塩などを例示することができる。
多孔質亜鉛錯体を反応触媒に用いる場合、反応の種類によって、配位子、比表面積、細孔径、細孔構造を鑑みて、最適な多孔質亜鉛錯体を設計することができる。例えば、2級アミンのホルミル化反応においてはルイス酸性の亜鉛イオンの近傍にルイス塩基性の配位子を有する観点で、2-メチルイミダゾール亜鉛塩が好ましい。
【0020】
有機亜鉛化合物の一般式(1)で表されるM、Mについて説明する。
あるいはMは互いに独立して、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖もしくは環状の炭化水素、または炭素数20以下の芳香族を含む環状の炭化水素であるが、これらに限定されない。
【0021】
具体的なMあるいはMを表す炭素数20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンタジエニル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イコシル基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アダマンチル基、インデシル基、フェナントレシル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基などを例示することができる。
【0022】
具体的な一般式(1)で示される有機亜鉛化合物として、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジシクロプロピル亜鉛、ジブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジsec-ブチル亜鉛、ジtert-ブチル亜鉛、ジシクロブチル亜鉛、ジペンチル亜鉛、ジイソペンチル亜鉛、ジネオペンチル亜鉛、ジtert-ペンチル亜鉛、ジシクロペンタジエニル亜鉛、ジ(1-メチルブチル)亜鉛、ジ(2-メチルブチル)亜鉛、ジ(1,2-ジメチルプロピル)亜鉛、ジ(1-エチルプロピル)亜鉛、ジ(シクロペンチル)亜鉛、ジヘキシル亜鉛、ジ(シクロヘキシル)亜鉛、ジ(4-メチルシクロヘキシル)亜鉛、ジヘプチル亜鉛、ジオクチル亜鉛、ジノニル亜鉛、ジデシル亜鉛、ジウンデシル亜鉛、ジドデシル亜鉛、ジトリデシル亜鉛、ジイコシル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジベンジル亜鉛、ジナフチル亜鉛、ジアダマンチル亜鉛、ジインデシル亜鉛、ジフェナントレシル亜鉛、ジフルオレニル亜鉛、ジトリフェニレニル亜鉛などを例示することができる。
多孔質亜鉛錯体を安価に製造できる観点で、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジsec-ブチル亜鉛、ジtert-ブチル亜鉛が好ましく、さらにジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛が好ましく、ジエチル亜鉛が殊更好ましい。
【0023】
有機配位子原料について説明する。有機配位子原料は、分子内にイミダゾリル基を少なくとも1つ有するイミダゾール化合物、あるいはカルボキシ基を分子内に少なくとも2つ有するカルボン酸化合物である。
【0024】
イミダゾール化合物として特に制限はないが、具体的なイミダゾール化合物として、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-sec-ブチルイミダゾール、2-tert-ブチルイミダゾール、2-ペンチルイミダゾール、2-ヘキシルイミダゾール、2-ヘプチルイミダゾール、2-オクチルイミダゾール、2-ノニルイミダゾール、2-デシルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、2-ナフチルイミダゾール、2-(1-ナフチルメチル)イミダゾール、2-アントラシルイミダゾール、2-テトラシルイミダゾール、2-ペンタシルイミダゾール、2-トリフェニレニルイミダゾール、2-フルオロイミダゾール、2-クロロイミダゾール、2-ブロモイミダゾール、2-ヨードイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-ベンジルイミダゾール、4-フルオロイミダゾール、4-クロロイミダゾール、4-ブロモイミダゾール、4-ヨードイミダゾール、5-メチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、5-フェニルイミダゾール、5-ベンジルイミダゾール、5-フルオロイミダゾール、5-クロロイミダゾール、5-ブロモイミダゾール、5-ヨードイミダゾール、4,5-ジメチルイミダゾール、4,5-ジエチルイミダゾール、4,5-ジフェニルイミダゾール、4,5-ジフルオロイミダゾール、4,5-ジクロロイミダゾール、4,5-ジブロモイミダゾール、4,5-ジヨードイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール、2,4,5-トリエチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、2,4,5-トリフルオロイミダゾール、2,4,5-トリクロロイミダゾール、2,4,5-トリブロモイミダゾール、2,4,5-トリヨードイミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、2-エチルベンズイミダゾール、2-フルオロベンズイミダゾール、2-クロロベンズイミダゾール、2-ブロモベンズイミダゾール、2-ヨードベンズイミダゾール、4-メチルベンズイミダゾール、4-エチルベンズイミダゾール、4-フルオロベンズイミダゾール、4-クロロベンズイミダゾール、4-ブロモベンズイミダゾール、4-ヨードベンズイミダゾール、5-メチルベンズイミダゾール、5-エチルベンズイミダゾール、5-フルオロベンズイミダゾール、5-クロロベンズイミダゾール、5-ブロモベンズイミダゾール、5-ヨードベンズイミダゾール、6-メチルベンズイミダゾール、6-エチルベンズイミダゾール、6-フルオロベンズイミダゾール、6-クロロベンズイミダゾール、6-ブロモベンズイミダゾール、6-ヨードベンズイミダゾール、5,6-ジメチルベンズイミダゾール、5,6-ジエチルベンズイミダゾール、5,6-ジフルオロベンズイミダゾール、5,6-ジクロロベンズイミダゾール、5,6-ジブロモベンズイミダゾール、5,6-ジヨードベンズイミダゾール、5,6-ジクロロ-2-メチルベンズイミダゾール、5,6-ジブロモ-2-メチルベンズイミダゾール、2-(2-クロロフェニル)ベンズイミダゾール、2-(2-ブロモフェニル)ベンズイミダゾール、2,2’-ビイミダゾールなどを例示することができ、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾールが好ましい。
【0025】
カルボン酸化合物として特に制限はないが、具体的なカルボン酸化合物として、シュウ酸、フマル酸、1,4-ブタンジカルボン酸、ペンタン-3,3-カルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8-ヘプタデカンジカルボン酸、1,9-ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、2-(プロポキシ)-1,4-ジカルボン酸、2-(ペントキシ)-1,4-ジカルボン酸、2-(シクロブチル)-1,4-ジカルボン酸、シクロブタン-1,1-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-2,3-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘプタン-1,7-ジカルボン酸、3,6-ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、1-ノネン-6,9-ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、3,6,9-トリオキサウンデカン-ジカルボン酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、2-ブロモ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2-ヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジクロロ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-t-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジメチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,5-(アリロキシ)-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,5-(ベンジロキシ)-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2’,5’,-ジメチル-3,3’’ -ジヒドロキシ-[1,1’:4’1’’-テルフェニル]-4,4''-ジカルボン酸、2-ニトロ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、1-メチルピロール-3,4-ジカルボン酸、1-ベンジル-1H-ピロール-3,4-ジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、2-メチルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、2-イソプロピルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、3,4-ピラゾールジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、5-エチル-2,3-ピリジンジカルボン酸、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、5,6-ジメチル-2,3-ピラジン-ジカルボン酸、3,4-キノリンジカルボン酸、7,8-キノリンジカルボン酸、7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン-2,8-ジカルボン酸、7-クロロキノリン-3,8-ジカルボン酸、2-メチルキノリン-3,4-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、キノキサリン-2,3-ジカルボン酸、6-クロロキノキサリン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロ-8-メチルキノリン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロ-3-メチルキノリン-6,8-ジカルボン酸、2,2’-ビキノリン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミンフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、チオフェン-3,4-ジカルボン酸、テトラヒドロピラン-4,4-ジカルボン酸、4-オキソ-ピラン-2,6-ジカルボン酸、ピレン-2,7-ジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノ-1,1’-ジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ベンジジン-3,3’-ジカルボン酸、1,4-ビス-(フェニルアミノ)-ベンゼン-2,5-ジカルボン酸、1,4-ビス-(カルボキシメチル)-ピペラジン-2,3-ジカルボン酸、1-(4-カルボキシ)-フェニル-3-(4-クロロ)-フェニル-ピラゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7,-ヘキサクロロ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フェニルインダン-ジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソ-イミダゾリジン-4,5-ジカルボン酸、2-ベンゾイルベンゼン-1,3-ジカルボン酸、o-ヒドロキシ-ベンゾフェノン-ジカルボン酸、2,4-ジクロロベンゾフェノン-2’,5’-ジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-メトキシ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-ニトロ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-スルホ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,1’-ジナフチル-8,8’-ジカルボン酸、1-アニリノアントラキノン-2,4’-ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン-250-ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル-ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノ-ジフェニルスルホン-ジイミドジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’’-テルフェニルジカルボン酸、4,5,6,10-テトラヒドロピレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセン-2,3-ジカルボン酸、2’,3’-ジフェニル-p-テルフェニル-4,4’’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、4(1H)-オキソチオクロメン-2,8-ジカルボン酸、ペリレン-3,9-ジカルボン酸、ペリレンジカルボン酸、1-アミノ-4-メチル-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3-ジカルボン酸、2,9-ジクロロフルオルビン-4,11-ジカルボン酸、アントラキノン-1,5-ジカルボン酸、5,6-デヒドロノルボルナン-2,3-ジカルボン酸などのジカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、N,N’,N’’-トリス(イソフタニル)-1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、7-クロロ-2,3,8-キノリントリカルボン酸、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニル)ベンゼン、4,5-ジヒドロ-4,5-ジオキソ-1H-ピロロ[2,3-F]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸、5-アセチル-3-アミノ-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、3-アミノ-5-ベンゾイル-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、アウリントリカルボン酸、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリル-トリス(エチレン-2,1-ジイル)トリベンゼンカルボン酸、1,3,5-トリス(4’-カルボキシ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニルエチニル)ベンゼン、4,4’,4’’-トリアジン-2,4,6-トリル-トリベンゼンカルボン酸、4,4’,4’’-トリアジン-1,3,5-トリル-トリ-4-アミノベンゼンカルボン酸などのトリカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、1,2,11,12-ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサン-テトラカルボン酸、1,2,7,8-オクタン-テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカン-2,3,11,12-テトラカルボン酸、デカン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、1,2,9,10-デカンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,1-ジオキシド-ペリロ[1,12-BCD]チオフェン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリレン-1,12-スルホン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニル-3,3’,5,5’,テトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、アダマンチルテトラカルボン酸、テトラチアフルバレンテトラベンゼンカルボン酸、フェニルポルフィリン-4,4’’,4’’’,4’’’’-テトラカルボン酸などのテトラカルボン酸、5,5’,5’’-(ベンゼン-1,3,5-トリル-トリス[エチレン-2,1-ジイル])トリイソフタル酸、などのヘキサカルボン酸を例示することができ、1,4-ベンゼンジカルボン酸が好ましい。
【0026】
また、有機配位子原料はイミダゾール化合物とカルボン酸化合物が挙げられるが、多孔質亜鉛錯体の耐水性および耐熱性を高める観点で第二の有機配位子原料を添加してもよい。第二の有機配位子原料は、一般式(1)の有機亜鉛化合物、イミダゾール化合物、あるいはカルボン酸化合物の少なくとも一つに配位可能な有機配位子の原料であり、一種類でも二種類以上含まれていてもよい。
具体的な第二の有機配位子原料として、ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピペリジン、キノリン、イソキノリン、イソインドリン、2-ピロリン、インドール、インドリジン、カルバゾール、フェナントリジン、インドリン、ピロリジン、ピペリジン、キヌクリジン、アジリジン、アゼピンなどの単座配位子、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2-ピラゾリン、ピラゾリジン、4H-キノリジン、1H-インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン、ピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、4,4’-ビピリジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ビピリジン、1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン、1,4-ビス(4-ピリジル)ブタジイン、1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン、トランス-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン、1,4-ジシアノベンゼン、4,4’-ジシアノビフェニル、1,2-ジシアノエチレン、トリエチレンジアミン、2,2’-ビ-1,6-ナフチリジン、ジアザピレン、イミダゾリジン、ピペラジン、1,4-ビス((1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゼン、などの二座配位子、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、2-イミダゾリジノン、1,3,5-ベンゼントリカルボキシ酸トリス[N-(4-ピリジル)アミド]、1,3,5-トリ(1H-イミダゾール-1-イル)ベンゼン、1,3,5-トリ(1H-ピラゾール-4-イル)ベンゼンなどの三座配位子、プリン、2,2’-ビイミダゾールなどの四座配位子、3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2-4,5-テトラジン、2,4,6-トリ(4-ピリジル)-1,3,5-トリアジンなどの六座配位子が挙げられ、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン、あるいは4,4’-ビピリジルが好ましい。
【0027】
反応溶媒は亜鉛錯体と反応せず、活性水素のない非プロトン性溶媒が好ましい。
具体的な反応溶媒として、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-プロピルピリジン、3-プロピルピリジン、4-プロピルピリジン、4-(2-ブチル)ピリジン、4-(3-ペンチル)ピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、3,5-ジメチルピリジン等の複素環式芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン-3-オン等のフラン系溶媒、テトラヒドロチオフェン、2-メチルテトラヒドロチオフェン等のチオフェン系溶媒、アセトニトリル、プロパンニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-i-プロピル-2-ピロリドン、N-シクロプロピル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、N-i-ブチル-2-ピロリドン、N-sec-ブチル-2-ピロリドン、N-tert-ブチル-2-ピロリドン、N-シクロブチル-2-ピロリドン、N-ペンチル-2-ピロリドン、N-1-メチルブチル-2-ピロリドン、N-2-メチルブチル-2-ピロリドン、N-i-ペンチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン等のラクタム系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジ-i-プロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジ-i-ブチルホルムアミド、N,N-ジ-sec-ブチルホルムアミド、N,N-ジtert-ブチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラメチル尿素、N,N’-ジメチルエチレン尿素、N,N’-ジメチルプロピレン尿素等のカルバミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、エチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルペンチルケトン、メチルシクロペンチルケトン、プロピルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸ブチル、酢酸-i-ブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸-i-プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸-i-プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸-i-プロピル、ピバル酸メチル、2-メチル酪酸メチル、吉草酸メチル、イソ吉草酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、ジメトキシ酢酸メチル、酢酸2-エトキシエチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシ酪酸メチル、メトキシイソ酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、オクタン酸メチル、ノナン酸メチル、デカン酸メチル、ドデカン酸メチル、テトラヒドロフラン-2-酢酸エチル、プロピオン酸テトラヒドロフルフリル、1-メチルシクロプロパンカルボン酸メチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸-n-プロピル、安息香酸-i-プロピル、安息香酸-n-ブチル、安息香酸-sec-ブチル、安息香酸-tert-ブチル、安息香酸-n-チル、安息香酸-n-ヘキシル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸エチルメチル、炭酸プロピルメチル、炭酸-i-プロピルメチル、炭酸エチルプロピル、炭酸エチル-i-プロピル、炭酸プロピル-i-プロピル、炭酸ブチルメチル、炭酸ブチルエチル、炭酸ブチルプロピル、炭酸ブチル-i-プロピル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジ-i-プロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジ-i-ブチル、炭酸ジ-sec-ブチル、炭酸ジ-tert-ブチル、炭酸ジペンチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-デカノラクトン、γ-ドデカノラクトン、α-ヘプチル-γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジ-i-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジアセタート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル-2-アセタート、トリメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコール-i-プロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-i-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコール-i-プロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、12-クラウン4-エーテル、15-クラウン5-エーテル、1,4-ジオキサン、1,4-エポキシシクロヘキサン等のエーテル系溶媒を例示することができる。
また、非プロトン性溶媒は1種類の溶媒に限らず、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。亜鉛化合物と配位子の反応温度を制御しやすい観点で、ピリジン等の複素環式芳香族系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が好ましい。また、多孔質亜鉛錯体を形成しやすい観点で、N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好ましい。ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドであることが更に好ましい。
【0028】
続いて、本発明の多孔質亜鉛錯体の製造方法について詳細を説明する。
本発明の製造方法は、有機亜鉛化合物と有機配位子原料を反応させる工程(以下、反応工程)と生成した多孔質亜鉛錯体を抽出する工程(以下、精製工程)を有する。
【0029】
反応工程には、有機亜鉛化合物を反応溶媒で溶媒和させる第1工程と、有機亜鉛化合物と有機配位子原料を反応させる第2工程を有する。本反応は全て不活性雰囲気で行う。使用する不活性ガスは、有機亜鉛化合物と反応しないガスであれば特に制限がなく、窒素、またはアルゴンが好ましい。窒素またはアルゴンは単独でも任意の割合で混合させてもよい。使用する反応溶媒中の含水量は酸化物などの副生を抑制するため、極限まで少なくすることが好ましい。具体的には50ppm以下、20ppm以下が更に好ましく、10ppm以下が殊更好ましい。
【0030】
第1工程は、含水量が制御された溶媒に有機亜鉛化合物を添加して熟成し、有機亜鉛化合物の溶液(以下、有機亜鉛化合物溶液)を調製する。
第1工程の撹拌混合条件は、均一な有機亜鉛化合物溶液を調製する観点から、撹拌混合することが好ましい。
第1工程の反応濃度に特に制限はないが、具体的に0.001mol/L~10mol/L(1mol/Lは、有機亜鉛化合物1molを1Lの溶媒で溶解させた有機亜鉛化合物溶液の濃度)が挙げられるが、第2工程の有機亜鉛化合物と有機配位子原料との反応熱の徐熱を効率的に行う観点で0.005mol/L~1mol/Lが更に好ましく、0.01mol/L~0.1mol/Lが殊更好ましい。
【0031】
第1工程の有機亜鉛化合物を添加する温度は反応温度を制御できる温度であれば制限はなく、具体的には30℃以下が挙げられるが、制御温度範囲を±2℃で制御するには、-20℃~20℃が更に好ましく、-15℃~0℃が殊更好ましい。また、有機亜鉛化合物の添加方法は、反応温度を制御する観点で、有機亜鉛化合物が液体の場合は滴下、有機亜鉛化合物が固体の場合は分割して添加する方法が好ましい。
第1工程の熟成温度は30℃以下が挙げられるが、-20℃~20℃が更に好ましく、-15℃~0℃が殊更好ましい。また、熟成温度は有機亜鉛化合物を添加する温度から変化させてもよい。この場合、副反応を抑制するため、有機亜鉛化合物の添加温度から熟成温度までの単位時間当たりの温度変化(以下、変温速度)を制御することが好ましい。具体的な変温速度は0.01℃/min~5℃/minが好ましく、0.05℃/min~1℃/minが更に好ましく、0.1℃/min~0.5℃/minが殊更好ましい。
第1工程の熟成時間は特に制限はないが、具体的には24hr以下が好ましく、1hr~12hrが更に好ましい。
【0032】
第2工程は、有機亜鉛化合物と有機配位子原料を反応させて熟成し、本発明の多孔質亜鉛錯体を製造する工程である。
有機亜鉛化合物と有機配位子原料のモル比は、特に制限はない。有機配位子原料がイミダゾール化合物の場合、有機亜鉛化合物1molに対しイミダゾール化合物2molを添加すればよく、未反応の有機亜鉛化合物やイミダゾール化合物が少ない観点で有機亜鉛化合物とイミダゾール化合物のモル比は1:1.0~1:5.0が好ましく、1:1.4~1:4.0が更に好ましく、1:1.8~1:3.0が殊更好ましい。有機配位子原料がカルボン酸化合物の場合、分子内のカルボキシ基の数により有機亜鉛化合物1molに対し添加すればよいカルボン酸化合物の量は異なる。例えば、カルボン酸化合物がジカルボン酸の場合、有機亜鉛化合物1molに対しジカルボン酸0.75molを添加すればよく、未反応の有機亜鉛化合物やジカルボン酸化合物が少ない観点で有機亜鉛化合物とジカルボン酸のモル比は1:0.30~1:2.0が好ましく、1:0.45~1:1.5が更に好ましく、1:0.60~1:1.0が殊更好ましい。また、カルボン酸化合物がトリカルボン酸の場合、有機亜鉛化合物1molに対しトリカルボン酸0.50molを添加すればよく、有機亜鉛化合物とトリカルボン酸のモル比は1:0.20~1:1.0が好ましく、1:0.25~1:0.85が更に好ましく、1:0.30~1:0.70が殊更好ましい。
第2工程の撹拌混合条件は、静置状態で反応させてもよいが、撹拌混合して反応させてもよい。また、ボールミルのように粒子に圧縮やせん断力を作用させて粉砕させる方法、あるいは超音波やマイクロ波により粒子表面に局所的に気泡を発生させ反応させてもよい。
第2工程の反応濃度に特に制限はないが、具体的に1mol/L以下(1mol/Lは、有機亜鉛化合物1molを1Lの反応溶媒で溶解させた反応溶液)が挙げられるが、製造される多孔質亜鉛錯体の純度が高い観点で0.005mol/L~1mol/Lが更に好ましく、0.01mol/L~0.1mol/Lが殊更好ましい。
【0033】
第2工程の製造方法は有機亜鉛化合物溶液に有機配位子原料、または有機配位子原料の溶液を添加してもよいし、有機配位子原料、または有機配位子原料の溶液に有機亜鉛化合物溶液を添加してもよい。
第2工程の有機配位子原料、有機配位子原料の溶液、または有機亜鉛化合物溶液を添加する温度は反応温度を制御できる温度が好ましく、具体的には100℃以下が挙げられるが、制御温度範囲を±2℃で制御するには、-20℃~50℃が更に好ましく、-15℃~20℃が殊更好ましい。また、有機配位子原料、有機配位子原料の溶液、または有機亜鉛化合物溶液の添加方法は、反応温度を制御する観点で、液体の有機配位子原料、有機配位子原料の溶液、または有機亜鉛化合物溶液の場合は滴下する方法が、固体の有機配位子原料または有機亜鉛化合物の場合は分割して添加する方法が好ましい。
第2工程の熟成温度は-20~200℃が挙げられるが、0℃~150℃が更に好ましく、20℃~120℃が殊更好ましい。また、熟成温度は有機配位子原料、有機配位子原料の溶液、または有機亜鉛化合物溶液を添加する温度から変化させてもよい。ここで、有機配位子原料、有機配位子原料の溶液、または有機亜鉛化合物溶液を添加する温度から熟成温度に至るまでの変温速度を制御することが好ましい。具体的な変温速度は10℃/min以下が好ましく、0.01℃/min~5℃/minが更に好ましく、0.1℃/min~3℃/minが殊更好ましい。
第2工程の熟成中に熟成温度を適宜変化させてもよい。この場合の変温速度も制御することが好ましい。具体的な変温速度は10℃/min以下が好ましく、0.01℃/min~5℃/minが更に好ましく、0.1℃/min~3℃/minが殊更好ましい。
第2工程の反応圧力は0.1MPa~10MPaが挙げられるが、0.1MPa~2MPaが更に好ましく、0.1MPa~1MPaが殊更好ましい。
第2工程の熟成時間は特に制限はないが、具体的には240hr以下が挙げられ、1hr~48hrが更に好ましく、1hr~24hrが殊更好ましい。
【0034】
精製工程は固液分離工程、洗浄工程、および乾燥工程からなり、本発明の多孔質亜鉛錯体を得ることができる。
固液分離工程は、多孔質亜鉛錯体を含む固相と未反応の配位子や非プロトン性溶媒が溶解した反応液を分離する工程である。固液分離の方法は特に制限はないが、遠心分離、静定、濃縮、濾過などの方法が例示され、多孔質亜鉛錯体の沈降性や反応溶媒の沸点などを考慮して適切な方法を選ぶことができる。
【0035】
洗浄工程は1回の固液分離工程で抽出できない反応液を多孔質亜鉛錯体から除去する工程である。すなわち、洗浄工程は反応液と均一に混合し、かつ多孔質亜鉛錯体が溶解しない溶媒(以下、洗浄溶媒)により、固液分離により多孔質亜鉛錯体を洗浄する操作である。多孔質亜鉛錯体の触媒反応では反応液の成分などの不純物は反応を妨害するため、洗浄工程を繰り返し行うことが好ましい。例えば、1回の洗浄で1gの多孔質亜鉛錯体を含む粗スラリーを5gの洗浄溶媒で洗浄する場合、具体的な洗浄回数として5回以上が挙げられるが、5~6回が好ましい。
洗浄工程で用いる洗浄溶媒は1種の溶媒だけでなく、2種以上の溶媒を使用してもよい。洗浄溶媒として、反応工程で使用する非プロトン性溶媒、あるいは分子内に酸素を含まない溶媒が好ましい。前者の反応工程で使用する非プロトン性溶媒は反応工程で記述した溶媒が挙げられ、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、であることが更に好ましい。後者の分子内に酸素を含まない具体的な洗浄溶媒として、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、クメン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどが挙げられ、反応液の溶解性の観点からクロロホルム、ジクロロメタン、トルエンが更に好ましい。
【0036】
乾燥工程は洗浄溶媒を乾燥する工程である。乾燥温度は多孔質亜鉛錯体が分解しない温度であれば特に制限はないが、具体的には20℃~400℃が挙げられるが、20℃~100℃が好ましく、20℃~40℃が殊更好ましい。乾燥圧力は減圧により洗浄溶媒を留去する方法でも、加圧した窒素ガスまたはアルゴンガスにより洗浄溶媒を留去する方法でもよい。乾燥圧力は特に制限はないが、具体的には1kPa以下の減圧が挙げられ、効率よく洗浄溶媒を留去できる観点で、0.1kPa以下の減圧が更に好ましく、0.01kPa以下の減圧が殊更好ましい。乾燥時間は特に制限はないが、具体的には1hr~120hrが挙げられ、5hr~60hrが更に好ましく、10~30hr以下が殊更好ましい。
【0037】
次に本発明の多孔質亜鉛錯体に含まれる表面水酸基や吸着水の測定方法について説明する。
本発明の多孔質亜鉛錯体の表面に残存する水酸基や吸着水に由来する酸素濃度は極めて低い。この酸素濃度は一般的にX線光電子分光法(以下、「XPS」と称する。)により測定することができ、固体表面にX線を照射して放出される光電子強度から多孔質亜鉛錯体の表面に構成される元素比率を得ることができる。
元素比率は、原子の種類とその結合状態に依存される電子と原子核の結合エネルギー値と放出光電子強度の関係から、装置固有の感度係数を用いた相対感度因子法により相対的に算出できる。XPSにより測定される本発明の多孔質亜鉛錯体は、酸素原子濃度は2.5atm%以下であり、1atm%以下が更に好ましく、0.1atm%以下が特に好ましい。
【0038】
続いて本発明の多孔質亜鉛錯体の物性とその測定方法について説明する。
本発明の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は600m/g以上である。BET比表面積は窒素吸着法により測定することができる。例えば、200℃で物理吸着された有機物を減圧乾燥により除去した多孔質亜鉛錯体を液化窒素により77K(絶対温度単位であり、約-196℃に相当する)まで冷却させ、真空状態から窒素ガスを段階的に導入することにより、窒素ガスの平衡圧とその吸着量に関する吸着等温線を測定することができる。この吸着等温線によりBET比表面積を得ることができる。
本発明の多孔質亜鉛錯体の熱分解温度は350℃以上であり、熱重量分析(TG分析)により求めることができる。熱分解温度は、TG分析により得られた重量減少曲線の変曲点における接線と、基線との延長線との交点に対応する温度から読み取ることができる。
本発明は、球状に近い形状のナノ粒子多孔質亜鉛錯体を得ることが可能である。当該ナノ粒子の径は1nm~50nmが好ましく、5nm~30nmが更に好ましく、10nm~20nmが特に好ましい。
【0039】
最後に本発明の多孔質亜鉛錯体の用途について説明する。
本発明の多孔質亜鉛錯体は、そのまま反応触媒として、または金属や金属錯体などに固定した担持触媒として用いることができる。
【0040】
本発明の多孔質亜鉛錯体を触媒として用いることができる反応として、硝酸金属塩水和物などの無機塩を原料に製造される多孔質亜鉛錯体について報告されている反応が挙げられる。例えば、固体塩基性触媒が挙げられ、ホルミル化、カルボニル化、クネベナーゲル縮合反応、アルドール反応、マイケル付加反応、カルボニル挿入、エステル化、オレフィン生成(ワッズワース-エモンズ反応)、オレフィンやアルキンの水素付加、オレフィンのエポキシ化などを例示することができる。
【0041】
本発明の多孔質亜鉛錯体を触媒として用いる際、固体粉末、あるいはスラリーいずれの形態でも用いることができる。
本発明の多孔質亜鉛錯体を触媒に用いる反応濃度は特に制限はないが、0.10mol/L(多孔質亜鉛錯体0.1molを1Lの反応溶媒中に分散させた濃度)以下が好ましい。触媒濃度が高くなるにつれ、生成物濃度が上昇して反応液の粘度が上昇するため、撹拌効率の観点から、0.05mol/L以下が更に好ましく、0.01mol/L以下が特に好ましい。
本発明の多孔質亜鉛錯体を触媒に用いる反応時間は特に制限はないが、120hr以下が挙げられ、48hr以下が更に好ましく、24hr以下が特に好ましい。
本発明の多孔質亜鉛錯体を触媒に用いる反応圧力(絶対圧力単位である)に特に制限はないが、0.1MPa~10MPaが挙げられるが、0.1MPa~2MPaが更に好ましく、0.1MPa~1MPaが特に好ましい。
本発明の多孔質亜鉛錯体を触媒に用いる反応温度は多孔質亜鉛錯体の分解温度以下であれば特に制限はないが、400℃以下が挙げられ、200℃以下が更に好ましく、100℃以下が特に好ましい。
【0042】
本発明の多孔質亜鉛錯体を反応触媒として使用後、触媒を分離して再利用することもできる。反応後の生成物との分離方法として、例えば遠心分離、静定、濃縮、濾過など挙げられるが、特に制限はない。固液分離後に洗浄液で多孔質亜鉛錯体を洗浄することにより再利用できる。ここで、使用する洗浄液は疎水性溶媒が好ましく、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、クメン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどを例示することができる。汎用性の観点からトルエン、ヘキサンが好ましい。
【0043】
更に、本発明の多孔質亜鉛錯体は、ガス吸着、分離、貯蔵に適用することができる。吸着の対象となるガスとして、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和炭化水素、エチレン、アセチレン、プロピレン、メチルアセチレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、2-メチルプロペンなどの不飽和炭化水素が挙げられる。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
試薬として、ジエチル亜鉛(東ソー・ファインケム株式会社製)、硝酸亜鉛六水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)、2-メチルイミダゾール(富士フイルム和光純薬株式会社製)、メタノール(キシダ化学株式会社製)、ピリジン(富士フイルム和光純薬株式会社製、脱水グレード、水分濃度10ppm以下)、トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社製、脱水グレード、水分濃度10ppm以下)、ヘキサン(富士フイルム和光純薬株式会社製、脱水グレード、水分濃度10ppm以下)、テレフタル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製、脱水グレード、水分濃度10ppm以下)、ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬株式会社製、脱水グレード、水分濃度10ppm以下)、ジフェニルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)、ギ酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)、トリフルオロエタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヘキサメチルベンゼン(東京化成工業株式会社製)、0.02mol/L エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTA)溶液(キシダ化学株式会社製)、0.02mol/L 硫酸亜鉛水溶液(キシダ化学株式会社製)、97%硫酸(キシダ化学株式会社製)、無水酢酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)、無水酢酸アンモニウム(キシダ化学株式会社製)、ジチゾン(富士フイルム和光純薬株式会社製)、2-プロパノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)、およびアセトン(富士フイルム和光純薬株式会社製)は精製せずにそのまま使用した。
なお、重クロロホルム(以下、CDCl)(テトラメチルシラン1wt%含有、フランス原子力庁製)は窒素雰囲気下で乾燥剤としてA3ゼオラム(東ソー株式会社製、4~8メッシュ、ビーズ)を10g入れて1日以上静置して使用した。A3ゼオラムは120℃のデシケーター内で12時間減圧乾燥させて使用した。
【0046】
<多孔質亜鉛錯体のZn濃度測定、キレート滴定>
多孔質亜鉛錯体を加水分解してキレート剤EDTAを添加し、ZnSO水溶液の逆滴定により多孔質亜鉛錯体に含まれるZnの重量パーセント濃度を測定した。測定手順を以下に示す。
1)多孔質亜鉛錯体の加水分解液調製
1.0mol/Lの硫酸水溶液100mL、ヘキサン50mL、および多孔質亜鉛錯体約50~100mgを混合し、65℃の恒温槽に浸漬して30分攪拌して、多孔質亜鉛錯体を加水分解した。加水分解後の水相(以下、加水分解液)を分液により採取した。
2)被滴定液調製
加水分解液10mLと0.02mol/LのEDTA溶液約7mL、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)10mLをガラス容器に入れ、39℃の恒温槽で20分浸漬させた。ガラス容器を恒温槽から取り出た後、酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)10mL、2-プロパノール70mL、およびジチゾン指示薬を数滴加えた。
3)滴定
0.02mol/LのZnSO溶液をビュレットに準備し、被滴定液に滴定した。0.02mol/Lの硫酸亜鉛溶液を約6~7mL滴下した時点で被滴定液の色が青緑色からマゼンダ色に変化して滴定液のキレート錯形成が確認され、滴定を終了した。
4)多孔質亜鉛錯体のZn濃度計算
下記の計算式によりZn濃度を計算した。

【0047】
<XPSの測定と元素組成の算出>
試料の表面に含まれる元素組成を分析するため、使用した装置、測定条件、および元素濃度の算出方法は以下のとおりである。
・装置 :日本電子株式会社(製)JPS-9010MX
・X線源 : MgKα
・測定角 : 45°
・積算回数 : 8
・観測エネルギー:O1s軌道(505~545eV)、C1s軌道(270~295eV)、N1s軌道(375~415eV)、Zn2p軌道(995~1,035eV)
・元素濃度算出方法:
【0048】
<比表面積の測定>
試料の比表面積は、窒素吸着による等温線を測定し、BET法により解析した。
・装置 :BELSORP MINI II(日本ベル株式会社製)
・解析ソフトウェア:BELMaster バージョン5.3.3.4
・前処理:200℃6hr
・吸着ガス:窒素
・吸脱着温度:-196℃
・比表面積算出に用いた平衡相対圧:0.0002<p/p<0.16
【0049】
<熱分解温度の測定>
試料の熱分解温度をTGにより測定した。測定装置および測定条件は以下のとおりである。
・装置:DTG-60H(株式会社 島津製作所製)
・温度範囲:25℃~700℃
・昇温速度:5℃/min
・ガス雰囲気:空気
【0050】
<粒径や粒子形状の観察>
試料の粒径や粒子形状をTEMにより観察した。測定装置および測定条件は以下のとおりである。
・装置:JEM-2010(日本電子株式会社製)
・加速電圧:200kV
<粒径や粒子形状の観察>
試料の粒径や粒子形状をFE-SEMにより観察した。測定装置および測定条件は以下のとおりである。
・装置:S-4800(日立ハイテクノロジーズ社製)
・加速電圧:1kV
【0051】
<本発明の多孔質亜鉛錯体の触媒活性評価>
本発明の多孔質亜鉛錯体と比較例の触媒活性(単位時間当たりの転化率と収率)を下記の化学反応(化学反応式4)において評価した。
【0052】
【化6】
【0053】
なお、原料の転化率と生成物の収率は反応粗液を経時ごとに採取し、H-NMRを測定して決定した。測定装置および測定条件は以下のとおりである。
・装置 :Delta v5.0.3 500MHz(日本電子株式会社製)
・測定条件 :測定核H、積算16回、緩和時間15sec、測定温度21℃
・溶媒 :CDCl(テトラメチルシラン1wt%含有)
・測定数 :熟成50時間経過する範囲内で5回
・原料の転化率と生成物の収率の測定方法:
内標準物質(テトラメチルベンゼン)を基準ピークと生成物のピーク面積比率から以下の式により決定した。
(1) X時間後の原料と生成物の量(mol)
(2) X時間後の原料の転化率と生成物の収率
・原料(N,N-ジフェニルアミン)のH-NMR(CDCl):
δ6.94(2H、dd、7Hz)、δ7.07(1H、s)、δ7.09(4H、dd、14Hz)、δ7.27(4H、dd、8Hz)
・生成物(N,N-ジフェニルホルムアミド)のH-NMR(CDCl):
δ7.17(2H、d、8.5Hz)、δ7.34(1H、t、8.0Hz)、δ7.29(1H、t、8.8Hz)、δ7.29(1H、t、8.8Hz)、δ7.27(1H、t、8.3Hz)、δ7.42(4H、d、9.0Hz)、δ8.64(1H、s)
・内標準物質(ヘキサメチルベンゼン)のH-NMR(CDCl):
δ2.24(18H、s)
【0054】
実施例1
<合成> 疎水性雰囲気下での多孔質亜鉛錯体(2-メチルイミダゾール亜鉛塩)の合成
(反応工程1)1.0mol/L ジエチル亜鉛ピリジン溶液調製
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積500mL)にピリジン246mLを加え、攪拌しながらフラスコ内の液温を-10℃に冷却した。液温が-11℃~-9℃の範囲内で安定したら、ジエチル亜鉛25mLの滴下を開始し、フラスコ内の液温が-11℃~-9℃の温度範囲内に保持されるよう滴下速度を調整した。滴下後、-10℃で1時間熟成し、100分かけて20℃まで一定速度で昇温させた。フラスコ内の液温が20℃に到達した後、フラスコ内の液温20℃で6時間熟成した。黄色透明溶液270gを回収した。
【0055】
(反応工程2)多孔質亜鉛錯体(2-メチルイミダゾール亜鉛塩)の合成
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積1L)にピリジン420mLを加え、0.9mol/L ジエチル亜鉛のピリジン溶液を16.5mL(ジエチル亜鉛14.7mmol)加えた。撹拌しながらフラスコ内の温度を-10℃に冷却した。液温が-11℃~-9℃の範囲内で安定したら、あらかじめ調製した2.5wt%の2-メチルイミダゾールのピリジン溶液108.6g(2-メチルイミダゾール32.9mmol)を液温が-10℃~-6℃の温度範囲内に保持されるよう速度を調整しながら滴下漏斗を介して300分かけて滴下した。滴下後、ピリジン30mLで滴下漏斗を洗浄し、洗浄液をフラスコに滴下した。洗浄液をフラスコに滴下後、-10℃で1時間熟成し、約100分かけて20℃まで一定速度で昇温させた(昇温速度0.31℃/min)。フラスコ内の液温が20℃に到達した後、液温20℃に保持したまま熟成を開始した。熟成1.5hr後に無色透明色に変化し、反応4hr後に白濁し析出し始めた。16時間後にH-NMRによりフラスコ内の上澄み液からジエチル亜鉛の転化率を測定したところ95%であった。19時間後も同様に測定したところ95%であったため、白濁スラリー561gを回収した。
【0056】
(精製工程)
多孔質亜鉛錯体を抽出するため、回収した白濁スラリーを遠心分離により白色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,400r.p.m.、回転時間30min)、上澄み液の層を除いた。続いて、残存する未反応の配位子を除去するため、白色固体の層にピリジンを1.4L添加し、遠心分離および上澄み液の層を除去して3回洗浄した。次に、ピリジンを除去するため、白色固体の層にトルエンを1.4L添加し、同様に3回洗浄した。さらに、トルエンを除去するため、白色固体の層にヘキサンを1.4L添加し、同様に3回洗浄した。最後に白色固体の層を入れたガラス容器を40℃のデシケーターに入れ、24時間減圧乾燥を行い、白色固体3.7gを回収した。
【0057】
<収率>
先に記述のキレート滴定の結果(多孔質亜鉛錯体 88.8mg、EDTA量0.151mmol、ZnSO0.126mmol)、本実施例の多孔質亜鉛錯体のZn濃度は24.0wt%であった。このZn濃度から換算される本実施例のZnの収率は93%であった。
【0058】
<比表面積>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は805m/g、細孔容量は1.2mL/gであった。本実施例の多孔質亜鉛錯体の窒素吸着等温線を図1に示す。図1中、黒丸(●)の実線は実施例1の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、黒丸(●)の破線は実施例1の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0059】
<熱分解温度>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のTG曲線を図2-1に示す。図2-1中、温度の増加に伴い重量が減少することを示す図中の曲線において、実施例1の多孔質亜鉛錯体が熱分解したと推定される概算温度、すなわち、低温側の外挿線と高温側の外挿とが交差する点(黒丸で表示)は、概ね361℃であった。
【0060】
<粒径>
本実施例の多孔質亜鉛錯体は球状に近い形状のナノ粒子10~30nmが凝集していることが確認された。TEMの画像を図3-1に示す。
【0061】
比較例1 親水性雰囲気下でのZIF-8結晶構造を有する多孔質亜鉛錯体の合成
非特許文献3に記載の方法に準じて合成した。
【0062】
<合成>
ガラス瓶(容量250mL)に2-メチルイミダゾール3.3g(39.6mmol)とメタノール100mLを加えて攪拌して2-メチルイミダゾールを溶解させた。これに0.05mol/L硝酸亜鉛六水和物のメタノール溶液79.4g(硝酸亜鉛5.0mmol)を加え、室温で24hr攪拌した後、乳白色のコロイド分散液160.0gを回収した。該液を遠心分離により白色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,400r.p.m.、回転時間30min)、上澄み液の層を除いた。続いて、メタノール160mL添加し、遠心分離(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,400r.p.m.、回転時間75min)および上澄み液の層を除去して3回洗浄した。洗浄後、残った白色固体の層を40℃のデシケーターに入れ、24hr減圧乾燥を行い、白色固体を0.49g回収した。
【0063】
<収率>
先に記述のキレート滴定の結果(多孔質亜鉛錯体 48.2mg、EDTA 0.139mmol、ZnSO 0.124mmol)、本比較例の多孔質亜鉛錯体のZn濃度は26.1wt%であった。このZn濃度から換算される本実施例のZnの収率は39%であった。
【0064】
<活性化処理-1>
比較例1の多孔質亜鉛錯体に含まれる表面水酸基の不活性化と吸着水の除去のため、多孔質亜鉛錯体111mgを100℃に加熱したデシケーターに入れ、12hr減圧乾燥を行った。(乾燥後の重量89mg)
【0065】
<活性化処理-2>
比較例1の多孔質亜鉛錯体に含まれる表面水酸基の不活性化と吸着水の除去のため、多孔質亜鉛錯体27.7mgを200℃に加熱したデシケーターに入れ、6hr減圧乾燥を行った。(乾燥後の重量26.4mg)
【0066】
<比表面積>
本比較例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は1,779m/g、細孔容量は1.2mL/gであった。本比較例の多孔質亜鉛錯体の窒素吸着量最大70mL/gであった。本比較例の多孔質亜鉛錯体の窒素吸着等温線を図1に示す。図1中、グレー色三角(▲)の実線は比較例1の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、グレー色三角(▲)の破線は比較例1の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0067】
<熱分解温度>
活性化処理-1を施した本比較例の多孔質亜鉛錯体のTG曲線を図2-2に示す。図2-1中、温度の増加に伴い重量が減少することを示す図中の曲線において、比較例1の多孔質亜鉛錯体が熱分解したと推定される概算温度、すなわち、低温側の外挿線と高温側の外挿とが交差する点(黒丸で表示)は、概ね400℃であった。
【0068】
<粒径>
本比較例の多孔質亜鉛錯体は、約20~50nmの多面体形の粒子形態を有していることが確認された。TEMの画像を図3-2に示す。
【0069】
<表面元素組成>
本実施例1の多孔質亜鉛錯体と、活性化処理(活性化処理-1:100℃、12hr、活性化処理-2:200℃、6hr)を施した比較例1の多孔質亜鉛錯体の酸素、炭素、窒素、および亜鉛のXPSスペクトルパターンをそれぞれ図4-1、図4-2、図4-3、および図4-4に示す。
なお上記の通り、比較例1は表面水酸基や吸着水を除去するため、一定温度での加熱焼成下での減圧乾燥(以下、単に「活性化処理」ということがある。)を施したものによる結果である。活性化処理は加熱温度と加熱時間の異なる2種類の条件で評価した。図4-1~図4-4において、実施例1の結果は太字実線で示した。また比較例1について、活性化処理-1は100℃、12hrの条件で活性化処理されたものを細字実線で示し、活性化処理-2は200℃、6hrの条件で活性化処理されたものを破線で示した。
【0070】
また、放出光電子強度から相対感度因子法により相対的に算出した構成元素の原子濃度を表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
本結果より、本実施例1の多孔質亜鉛錯体は比較例1の多孔質亜鉛錯体に比べて表面酸素組成が少なく、表面窒素組成が多いことが確認された。これより、本実施例1の多孔質亜鉛錯体の表面化学構造は比較例1に比べ一般式(2-1)で示される亜鉛-イミダゾリル基の組成が高く、一般式(2-2)で示される表面水酸基や吸着水が少ないことが示唆された。
【0073】
実施例2
<実施例1の触媒活性評価>
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積200mL)に実施例1の多孔質亜鉛錯体135mgとヘキサメチルベンゼン48mg、トリフルオロエタノール33mLを加えた。攪拌しながら、フランコ内の液温を65℃に昇温した。攪拌開始から1時間後にN,N-ジフェニルアミン1.53gとギ酸1.1mLを加え、液温65℃を保持しながら熟成を開始した。原料のN,N-ジフェニルアミンの転化率と生成物のN,N-ジフェニルホルムアミドの収率の経時変化を図5に示した。熟成5hr経過後の初期活性は1.1mol/Zn-mol.hrであった。図5中、黒丸(●)は実施例2における収率を示し、白丸(○)は実施例2における転化率を示す。
【0074】
比較例2
<比較例1の触媒活性評価>
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積200mL)に活性化処理-1を施した比較例1の多孔質亜鉛錯体89mgとヘキサメチルベンゼン42mg、トリフルオロエタノール29mLを加えた。攪拌しながら、フランコ内の液温を65℃に昇温した。攪拌開始から1時間後にN,N-ジフェニルアミン1.27gとギ酸1.0mLを加え、液温65℃を保持しながら熟成を開始した。原料のN,N-ジフェニルアミンの転化率と生成物のN,N-ジフェニルホルムアミドの収率の経時変化を図5に示した。熟成5hr経過後の初期活性は0.35mol/Zn-mol.hrであった。図5中、黒四角(■)は比較例2における収率を示し、白四角(□)は比較例2における転化率を示す。
【0075】
実施例3
<合成>
(反応工程1)1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルスルホキシド溶液調製
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積500mL)にジメチルスルホキシド243mLを加え、攪拌しながらフラスコ内の液温を-10℃に冷却した。液温が-11~-9℃の範囲内で安定したら、ジエチル亜鉛25mLの滴下を開始し、フラスコ内の液温が-11~-9℃の温度範囲内に保持されるよう滴下速度を調整した。33分かけて滴下後、-10℃で1時間熟成し、100分かけて20℃まで一定速度で昇温させた。フラスコ内の液温が20℃に到達した後、フラスコ内の液温20℃で6時間熟成した。黄色透明溶液299gを回収した。
【0076】
(反応工程2)多孔質亜鉛錯体の合成(2-メチルイミダゾール亜鉛塩)
窒素微加圧雰囲気下のグローボックス内で、ボールミル容器にジルコニアボール(直径10mm)と2-メチルイミダゾール0.82g(10.0mmol)、1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルスルホキシド溶液2.0mL(ジエチル亜鉛2.0mmol)を加えて密閉した。密閉容器を遊星ボールミル(Fritsch社製P-6)に設定し、回転数150r.p.m.、回転時間30min混錬処理を施した。
【0077】
(精製工程)
混錬処理を施した後、白濁スラリーを回収し、遠心分離により白色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,400r.p.m.、回転時間30min)、上澄み液の層を除いた。続いて、残存する未反応の配位子を除去するため、白色固体の層にジメチルスルホキシドを190mL添加し、遠心分離および上澄み液の層を除去して4回洗浄した。次に、ジメチルスルホキシドを除去するため、白色固体の層にメタノールを190mL添加し、同様に4回洗浄した。最後に白色固体の層を入れたガラス容器を40℃のデシケーターに入れ、24時間減圧乾燥を行い、白色固体0.50gを回収した。
【0078】
<比表面積>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は1,481m/g、細孔容量は0.82mL/gであった。本実施例の多孔質亜鉛錯体の窒素吸着等温線を図6-1に示す。図6-1中、黒丸(●)の実線は実施例3の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、黒丸(●)の破線は実施例3の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0079】
<熱分解温度>
本実施例の多孔質亜鉛錯体の熱分解温度は425℃、TG曲線を図6-2に示す。
【0080】
<粒径>
本実施例の多孔質亜鉛錯体はナノ粒子~100nmが凝集していることが確認された。SEMの画像を図6-3に示す。
【0081】
実施例4
<合成>
(反応工程1)実施例3の1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルスルホキシド溶液を使用した。
【0082】
(反応工程2)多孔質亜鉛錯体の合成(2-エチルイミダゾール亜鉛塩)
窒素微加圧雰囲気下のグローボックス内で、ボールミル容器にジルコニアボール(直径10mm)と2-エチルイミダゾール0.96g(10.0mmol)、1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルスルホキシド溶液2.0mL(ジエチル亜鉛2.0mmol)を加えて密閉した。密閉容器を遊星ボールミル(Fritsch社製P-6)に設定し、回転数150r.p.m.、回転時間30min混錬処理を施した。
【0083】
(精製工程)
混錬処理を施した後、白濁スラリーを回収し、遠心分離により白色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,400r.p.m.、回転時間30min)、上澄み液の層を除いた。続いて、残存する未反応の配位子を除去するため、白色固体の層にジメチルスルホキシドを190mL添加し、遠心分離および上澄み液の層を除去して4回洗浄した。次に、ジメチルスルホキシドを除去するため、白色固体の層にメタノールを190mL添加し、同様に4回洗浄した。最後に白色固体の層を入れたガラス容器を40℃のデシケーターに入れ、24時間減圧乾燥を行い、白色固体0.52gを回収
した。
【0084】
<比表面積>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は1,198m/g、細孔容量は4.7mL/gであった。本実施例の多孔質亜鉛錯体の窒素吸着等温線を図7-1に示す。図7-1中、黒丸(●)の実線は実施例4の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、黒丸(●)の破線は実施例4の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0085】
<熱分解温度>
本実施例の多孔質亜鉛錯体の熱分解温度は390℃、TG曲線を図7-2に示す。
【0086】
<粒径>
本実施例の多孔質亜鉛錯体はナノ粒子~100nmが凝集していることが確認された。SEMの画像を図7-3に示す。
【0087】
実施例5
<合成>
(反応工程1)実施例3の1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルスルホキシド溶液を使用した。
【0088】
(反応工程2)多孔質亜鉛錯体の合成(ベンズイミダゾール亜鉛塩)
窒素微加圧雰囲気下のグローボックス内で、ボールミル容器にジルコニアボール(直径10mm)とベンズイミダゾール1.44g(10.0mmol)、1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルスルホキシド溶液2.0mL(ジエチル亜鉛2.0mmol)を加えて密閉した。密閉容器を遊星ボールミル(Fritsch社製P-6)に設定し、回転数150r.p.m.、回転時間30min混錬処理を施した。
【0089】
(精製工程)
混錬処理を施した後、白濁スラリーを回収し、遠心分離により白色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,400r.p.m.、回転時間30min)、上澄み液の層を除いた。続いて、残存する未反応の配位子を除去するため、白色固体の層にジメチルスルホキシドを190mL添加し、遠心分離および上澄み液の層を除去して4回洗浄した。次に、ジメチルスルホキシドを除去するため、白色固体の層にメタノールを190mL添加し、同様に4回洗浄した。最後に白色固体の層を入れたガラス容器を40℃のデシケーターに入れ、24時間減圧乾燥を行い、白色固体0.71gを回収した。
【0090】
<比表面積>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は284m/g、細孔容量は0.41mL/gであった。本実施例の多孔質亜鉛錯体の窒素吸着等温線を図8-1に示す。図8-1中、黒丸(●)の実線は実施例5の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、黒丸(●)の破線は実施例5の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0091】
<熱分解温度>
本実施例の多孔質亜鉛錯体の熱分解温度は515℃、TG曲線を図8-2に示す。
【0092】
<粒径>
本実施例の多孔質亜鉛錯体はナノ粒子~250nmが凝集していることが確認された。SEMの画像を図8-3に示す。
【0093】
実施例6
<合成>
(反応工程1)1.0mol/L ジエチル亜鉛のN,N-ジメチルホルムアミド溶液調製
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積300mL)にN,N-ジメチルホルムアミド162mLを加え、攪拌しながらフラスコ内の液温を-10℃に冷却した。液温が-11℃~-9℃の範囲で安定したら、ジエチル亜鉛17mLの滴下を開始し、フラスコ内の液温が-11℃~-9℃の温度範囲内に保持されるよう滴下速度を調整した。滴下後、-10℃で1時間熟成し、100分かけて20℃まで一定速度で昇温させた。フラスコ内の液温が20℃に到達した後、フラスコ内の液温20℃で6時間熟成した。無色透明溶液169gを回収した。
【0094】
(反応工程2)多孔質亜鉛錯体の合成(1,4-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩)
窒素微加圧雰囲気下のガラスフラスコ(容積300mL)にN,N-ジメチルホルムアミド15mLを加え、1.0mol/L ジエチル亜鉛のN,N-ジメチルホルムアミド溶液を11mL(ジエチル亜鉛10.4mmol)加えた。攪拌しながらフラスコ内の温度を-10℃に冷却した。液温が-11℃~-9℃の範囲で安定したら、あらかじめ調製した2.1wt%の1,4-ベンゼンジカルボン酸のN,N-ジメチルホルムアミド溶液64.3g(1,4-ベンゼンジカルボン酸8.3mmol)を液温が-10℃~-4℃の温度範囲内に保持されるよう速度を調整しながら滴下漏斗を介して42分かけて滴下した。滴下後、N,N-ジメチルホルムアミド10mLで滴下漏斗を洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後、-10℃で1時間熟成し、約60分かけて15℃まで一定速度で昇温させた(昇温速度0.34℃/min)。昇温過程の液温-1℃に達した際、白色結晶の析出が確認された。液温が15℃に到達した後、152℃バスに浸漬して40分かけて一定速度で150℃まで昇温させ(昇温速度3.5℃/min)、液温150℃で熟成を開始した。熟成13hr後にH-NMRによりフラスコ内の上澄み液からジエチル亜鉛の転化率を測定したところ99%以上であったため、橙濁スラリー79gを回収した。
【0095】
(精製工程)
多孔質亜鉛錯体を抽出するため、回収した橙濁スラリーを遠心分離により橙色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数2,800r.p.m.、回転時間30min)、上澄み液の層を除いた。続いて、残存する未反応の配位子を除去するため、白色固体の層にN,N-ジメチルホルムアミドを200mL添加し、遠心分離および上澄み液の層を除去して3回洗浄した。次に、N,N-ジメチルホルムアミドを除去するため、白色固体の層にジクロロメタンを200mL添加し、同様に3回洗浄した(回転数4,000r.p.m.、回転時間15min)。最後に薄い黄色固体の層を入れたガラス容器を40℃のデシケーターに入れ、24時間減圧乾燥を行い、薄い黄色固体1.5gを回収した。
【0096】
<収率>
先に記述のキレート滴定の結果(多孔質亜鉛錯体 52.0mg、EDTA 0.146mmol、ZnSO 0.119mmol)、本実施例の多孔質亜鉛錯体のZn濃度は34.0wt%であった。このZn濃度から換算される本実施例のZnの収率は75%であった。
【0097】
<比表面積>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は628m/g、細孔容量は0.86mL/gであった。本実施例の窒素吸着等温線を図9-1に示す。図9-1中、黒丸(●)の実線は実施例6の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、黒丸(●)の破線は実施例6の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0098】
<熱分解温度>
本実施例のTG曲線を図9-2に示す。図7中、温度の増加に伴い重量が減少することを示す図中の曲線において、実施例6の多孔質亜鉛錯体が熱分解したと推定される概算温度、すなわち、低温側の外挿線と高温側の外挿とが交差する点(黒丸で表示)は、概ね407℃であった。
【0099】
<粒径>
本実施例の多孔質亜鉛錯体は約200nmのヒトデ型の粒子形態を有していることが確認された。本実施例のTEMの画像を図9-3に示す。
【0100】
実施例7
<合成>
(反応工程1)実施例6の1.0mol/L ジエチル亜鉛ジメチルホルムアミド溶液を使用した。
【0101】
(反応工程2)多孔質亜鉛錯体の合成(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸亜鉛塩)
窒素微加圧雰囲気下の耐圧式ステンレス容器(最大使用圧力2MPa、容積150mL)にジメチルホルムアミド25mLを加え、1.0mol/L ジエチル亜鉛のジメチルホルムアミド溶液を5.0mL(ジエチル亜鉛4.7mmol)加えた。攪拌しながらフラスコ内の温度を-10℃に冷却した。液温が-11~-9℃の範囲で安定したら、あらかじめ調製した2.1wt%の2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸のジメチルホルムアミド溶液11.6g(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸1.2mmol)を液温が-10~-4℃の温度範囲内に保持されるよう速度を調整しながら滴下漏斗を介して60分かけて滴下した。滴下後、ジメチルホルムアミド10mLで滴下漏斗を洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後、-10℃で1時間熟成し、約60分かけて15℃まで一定速度で昇温させた(昇温速度0.34℃/min)。液温が15℃に到達した後、110℃バスに浸漬して48分かけて一定速度で100℃まで昇温させ(昇温速度2.0℃/min)、液温100℃で熟成を開始した。熟成20hr後にH-NMRによりフラスコ内の上澄み液からジエチル亜鉛の転化率を測定したところ99%以上であったため、橙濁スラリー50gを回収した。
【0102】
(精製工程)
多孔質亜鉛錯体を抽出するため、回収した橙濁スラリーを遠心分離により橙色固体の層と無色透明の上澄み液の層に分層させ(株式会社 コクサン製、H-103N、回転数3,500r.p.m.、回転時間5min)、上澄み液の層を除いた。続いて、残存する未反応の配位子を除去するため、白色固体の層にジメチルホルムアミドを60mL添加し、遠心分離および上澄み液の層を除去して3回洗浄した。次に、ジメチルホルムアミドを除去するため、白色固体の層にメタノールを60mL添加し、同様に3回洗浄した(回転数3,500r.p.m.、回転時間5min)。最後に黄色固体の層を入れたガラス容器を40℃のデシケーターに入れ、24時間減圧乾燥を行い、薄い黄色固体0.35gを回収した。
【0103】
<収率>
先に記述のキレート滴定の結果(多孔質亜鉛錯体 54.0mg、EDTA 0.142mmol、ZnSO 0.109mmol)、本実施例の多孔質亜鉛錯体のZn濃度は39.8wt%であった。このZn濃度から換算される本実施例のZnの収率は45%であった。
【0104】
<比表面積>
本実施例の多孔質亜鉛錯体のBET比表面積は401m/g、細孔容量は0.41mL/gであった。本実施例の窒素吸着等温線を図10-1に示す。図10-1中、黒丸(●)の実線は実施例7の吸着時における相対圧とN吸着量の関係を示し、黒丸(●)の破線は実施例7の脱着時における相対圧とN吸着量の関係を示す。
【0105】
<熱分解温度>
本実施例の熱分解温度は365℃であった。本実施例のTG曲線を図10-2に示す。
【0106】
<粒径>
本実施例の多孔質亜鉛錯体は200nm以下の粒子形態を有していることが確認された。本実施例のSEMの画像を図10-3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の多孔質亜鉛錯体は、反応触媒、ガス吸着、ガス分離、あるいはガス貯蔵などの用途に利用することができる。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】