(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027589
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】内部腓骨スリング
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61B17/56
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123122
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】16/941,629
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード エイチ.リッペ
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー シャイナー
(72)【発明者】
【氏名】ケイイチ マツダ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ エイ.ゴールト
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL29
4C160LL59
(57)【要約】 (修正有)
【課題】靭帯固定デバイス、システム、器具およびそれらの方法を提供する。
【解決手段】脛骨4と腓骨2との間の足首関節を安定化するためのインプラントは、脛骨に固定された第1のアンカ12第2のアンカ14と、腓骨に巻き付くように構成された縫合糸16と、を含み得る。関節を安定させるために腓骨の周りで円周方向の力を提供するために、縫合糸に張力をかけることができる。2つのアンカを接続する縫合糸は、露出した腓骨の周りに巻き付けられ得るか、または腓骨プレートの上もしくは下に行き得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脛骨と腓骨との間の関節を安定化するためのインプラントであって、
前記脛骨の後方面に挿入されるように構成された第1のアンカと、
前記脛骨の前方面に挿入されるように構成された第2のアンカと、
前記腓骨に巻き付くように構成された、第1の端部から第2の端部まで延在する、縫合糸であって、前記縫合糸の前記第1の端部が、前記第1のアンカによって固定可能であり、前記縫合糸の前記第2の端部が、前記第2のアンカによって固定可能であり、前記縫合糸は、前記腓骨の周りに円周方向の力を提供するように張力がかけられ、それによって、前記関節を安定化するように構成されている、縫合糸と、を含む、インプラント。
【請求項2】
前記第1のアンカが、静止アンカである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記第2のアンカが、糸張アンカである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第2のアンカが、近位端から遠位端まで延在するカニューレ状本体を含み、前記遠位端が、前記縫合糸を固定してそれに張力をかけるように構成されたバックルを含む、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記バックルが、前記アンカの前記本体と一体化されており、対向する側部部材間に位置付けられた横断部材を含み、前記バックルが、前記横断部材の両側に第1の開口部および第2の開口部を画定する、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第2のアンカが、一対の展開可能なウイングを含む、請求項3に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第2のアンカが、前記ウイングを展開し、前記縫合糸上に圧着するように構成されたアクチュエータを含む、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第2のアンカが、一体型バックルを有するワッシャと、前記ワッシャを通して位置付け可能な骨スクリューと、を含む、アセンブリを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
第1の骨と第2の骨との間の関節を安定化するためのインプラントであって、
前記第1の骨を係合するように構成された静止アンカと、
前記第1の骨に係合するように構成された糸張アンカであって、それを通って延在する縫合糸開口部を有する本体、前記本体の両側にある一対の展開可能なウイング、および前記展開可能なウイングを拡張するように構成されたアクチュエータを含む、糸張アンカと、
前記第2の骨に巻き付くように構成された縫合糸であって、前記縫合糸の第1の端部が、前記静止アンカによって固定されており、前記縫合糸の第2の端部が、前記糸張アンカによって固定されており、前記縫合糸は、張力がかけられて前記関節を安定化するように構成されている、縫合糸と、を含む、インプラント。
【請求項10】
前記糸張アンカが、前記アンカの前記本体に沿って複数の返しを含む、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記本体は、前記縫合糸が、前記アンカの前記本体に沿って載置され得るように、返しのない縫合糸経路を含む、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
前記展開可能なウイングの各々が、ピボットピンによって前記アンカの前記本体に枢動可能に接続されている、請求項9に記載のインプラント。
【請求項13】
前記展開可能なウイングが、前記ウイングが前記本体に対して位置付けられる折り畳み位置と、前記ウイングが前記アンカの前記本体から離れて外側に拡張する拡張位置と、を有する、請求項9に記載のインプラント。
【請求項14】
前記アクチュエータが、各ウイングの内側部分に沿ってカム面と係合するように構成され、前記アクチュエータが前方に平行移動すると、前記アクチュエータが前記カム面に対してスライドし、それによって前記ウイングを前記拡張位置に枢動する、請求項13に記載のインプラント。
【請求項15】
前記縫合糸が前記縫合糸開口部を通過した後、および前記アクチュエータが前方に前進したときに、前記アクチュエータが、前記縫合糸上で圧着する、請求項9に記載のインプラント。
【請求項16】
脛骨と腓骨の間の関節を安定化するための方法であって、
静止アンカを前記脛骨の後方面に挿入することであって、縫合糸が、前記静止アンカに恒久的に固定される、挿入することと、
糸張アンカを通して前記縫合糸の自由端を位置付けることと、
前記縫合糸を前記腓骨の周りに巻き付けることと、
前記糸張アンカを前記脛骨の前方面に挿入することと、
前記縫合糸に張力をかけ、それによって前記腓骨および脛骨を安定化することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記静止アンカおよび糸張アンカが、前記脛骨の皮質骨の下の面一よりも下に位置付けられている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記縫合糸が、前記糸張アンカの開口部を通して位置付け可能なワイヤのループを有する縫合糸通しを用いて、前記糸張アンカを通して位置付けられ、前記縫合糸の自由端が前記ワイヤのループに通された後に、前記ワイヤのループが前記開口部を通して前記縫合糸を引くように、前記アンカから前記通しを除去する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記張力が、複数のスリットを画定するプレートおよび前記プレートを平行移動させるための回転可能ハンドルを有する、糸張器組立体を有する挿入具を有する前記縫合糸に加えられ、前記縫合糸が、前記スリットと前記ハンドルとの間の前記プレートの周りに巻かれ、前記プレートを前記アンカの近位に、かつそれから離れて平行移動させるように回転され、それによって、前記縫合糸に張力を加える、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記糸張アンカ内のアクチュエータを前進させて、一対のウイングを展開し、前記縫合糸上に圧着することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用デバイスに関し、より具体的には、例えば、外傷用途のための安定化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
靭帯結合は、線維組織によって接続され、(例えば、足首の腓骨と脛骨との間の)制限された動きを有する平行な骨間の関節の一種である。靭帯損傷は、例えば、足首の捻挫または足首の骨折を患っている患者において発生し得る。不安定な靱帯結合損傷を安定させるために、靱帯固定術が使用され得る。既存の靭帯固定には、金属製の靭帯スクリューまたは縫合糸ボタンが含まれ得る。
【0003】
金属製靭帯スクリューの場合は、腓骨全体を通して、通常は脛骨を通して孔がドリルで開けられ得る。スクリューは関節を横切って配置されるため、通常の解剖学的な動きを制限することがある。スクリューは、術後約90日で取り外され得るか、または破断し得る。一部の外科医は、それらをそのまま放置し、破断させることを自発的に行う。腓骨内のスクリュー孔は、例えば、孔の位置が不適切な場合、または患者の骨の質が非常に低い場合など、腓骨の疲労骨折につながり得る。
【0004】
縫合糸ボタン構造では、孔が腓骨と脛骨の全体を通って開けられ得る。金属製縫合糸ボタンは、腓骨の外側と脛骨の内側に位置し得、縫合糸によって骨を介して接続される。ドリル孔は、腓骨の疲労骨折につながり得、ボタンは、組織の炎症および痛みを引き起こし得る。縫合糸は、破断し得るか、またはボタンは、骨の中に沈下して固定の喪失を引き起こし得る。
【0005】
これらの方法の各々において、腓骨は、脛骨に対して拘束されており、炎症および痛みが低減される位置は、外科医が選択するインプラント位置に大きく依存する。腓骨を正常な解剖学的位置に戻さない整復は、患者の足首の変性の問題を引き起こし得る。また、腓骨と脛骨を通ってドリル孔が開けられ、これが不完全に行われた場合、または骨粗鬆症の骨に行われた場合、疲労骨折を引き起こし得る。さらに、力のベクトルが作用するため、これらの固定方法では、不全整復した靭帯が形成されることがある。不全整復は、臨床転帰不良と足首関節のさらなる変性に関連していることがある。したがって、既存のデバイスおよび方法に関する多くの懸念を解消すると同時に安定化を提供する靭帯固定システムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
この必要性および他の必要性を満たすために、骨安定化のためのデバイス、システム、器具、および方法が提供されている。安定化システムは、縫合糸、バンド、またはテザーが1つの骨(例えば、腓骨)に巻き付き、別の骨(例えば、脛骨)に固定される固定方法を含み得る。スクリューまたは縫合糸ボタンシステムで治療される損傷とは異なり、この安定化システムは、腓骨を通って靱帯内に配置されるが、インプラントは腓骨を通っていない。代わりに、インプラントが脛骨の前方側と後方側に取り付けられ得、縫合糸が腓骨に巻き付き、靭帯結合を安定して保持する。このように、腓骨には孔が開けられず、縫合糸が関節を安定させる。脛骨および腓骨を参照して説明したが、安定化システムが他の骨または関節に好適であることは理解されるであろう。
【0007】
一実施形態によれば、脛骨と腓骨との間の関節を安定化するためのインプラントは、第1および第2のアンカおよび縫合糸を含む。第1のアンカは、脛骨の後方側面に挿入されるように構成され得る。第2のアンカは、脛骨の前方側面に挿入されるように構成され得る。縫合糸は、腓骨に巻き付くように構成され得る。縫合糸の第1の端部は、第1のアンカによって固定可能であり、縫合糸の第2の端部は、第2のアンカによって固定可能である。縫合糸は、腓骨の周りに円周方向の力を提供するように張力がかけられるように構成され得、それによって関節を安定化する。例えば、第1の後方アンカは静止アンカであり得、第2の前方アンカは糸張アンカであり得る。縫合糸は、例えば、骨に対して位置付けられ得るか、または腓骨プレートの上もしくは下に位置付けられ得る。
【0008】
一実施形態では、アンカは、近位端から遠位端まで延在するカニューレ状本体を含む。遠位端は、縫合糸を固定して緊張をかけるように構成されたバックルを含む。バックルは本体と一体化しており、対向する側部部材の間に位置付けられた横断部材を含む。バックルは、横断部材の両側に第1の開口部と第2の開口部を形成する。縫合糸は、カニューレ挿入状本体を通ってバックルの第2の開口部へ延在し得、横断部材の周りで第1の開口部にループして、縫合糸をアンカに固定し、縫合糸の緊張を可能にする。
【0009】
一実施形態によれば、アンカは、一対の展開可能なウイング、およびウイングを展開して縫合糸に圧着するように構成されたアクチュエータを含む。展開可能なウイングの各々は、枢動式ピンでアンカの本体に枢動可能に接続され得る。展開可能なウイングは、ウイングが本体に対して位置付けられている折り畳み位置、およびウイングがアンカの本体から離れて外側に拡張される拡張位置を有し得る。アクチュエータは、各ウイングの内側部分に沿ってカム面と係合するように構成され得る。アクチュエータが前方に平行移動すると、アクチュエータはカム面に対してスライドすることができ、それによって、ウイングを拡張位置へと枢動させることができる。縫合糸がアンカ本体の縫合糸開口部に通された後、アクチュエータが前方に進められると、アクチュエータは縫合糸上に圧着し得る。アンカは、アンカの本体に沿って複数の返しを含み得る。本体は、縫合糸がアンカ本体に沿って、および/またはアンカ本体内に載置されるように縫合糸経路を含み得る。
【0010】
一実施形態では、アンカは、一体化されたバックルを有するバックルワッシャ、およびワッシャを通して位置付け可能な骨スクリューを含むアセンブリを含む。バックルワッシャは、そこを通って延在する中心孔を有するワッシャを含むことができ、バックルはワッシャから突出することができる。バックルは、例えば、スライドバックルまたはトライグライドアジャスタであり得る。縫合糸は、バックルの周りをループして、縫合糸を固定して張力をかけることができる。
【0011】
一実施形態によれば、アンカは、可動カムを有するカムワッシャ、およびワッシャを通して位置付け可能な骨スクリューを有するアセンブリを含む。可動カムは、縫合糸を受容するための開口部を含み得る。可動カムは、一方向テンショナとして機能することができ、これが、ある位置での縫合糸の自由な動きを可能にし、別の位置での所望の張力での縫合糸のロックを可能する。
【0012】
一実施形態では、アンカは、縫合糸をその近位端で固定し、張力をかけるように構成されたバックルを有する本体を含む。バックルは本体と一体化され得、縫合糸は、バックルの周りにループして縫合糸をアンカに固定することができ、縫合糸の糸張を可能にする。
【0013】
別の実施形態によれば、第1の骨と第2の骨との間の関節を安定化するためのインプラントは、静止アンカ、糸張アンカ、および縫合糸を含み得る。静止アンカおよび糸張アンカは、第1の骨に係合するように構成され得る。糸張アンカは、そこを通って延在する縫合糸開口部を有する本体、本体の両側にある一対の展開可能なウイング、および展開可能なウイングを拡張ように構成されたアクチュエータを含み得る。縫合糸は、第2の骨に巻き付くように構成され得る。縫合糸の第1の端部は、静止アンカによって固定され得、縫合糸の第2の端部は、糸張アンカによって固定され得る。縫合糸は、関節を安定させるために張力をかけるように構成され得る。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、脛骨と腓骨との間の関節を安定化するための方法は、静止アンカを脛骨の後方側面に挿入することであって、縫合糸が静止アンカに恒久的に固定されること、縫合糸の自由端を糸張アンカを介して位置付けること、腓骨の周りに縫合糸を巻き付けること、糸張アンカを脛骨の前方側面に挿入すること、および縫合糸に張力をかけ、それによって腓骨と脛骨を安定化することを含み得る。アンカのいずれかまたは両方が、脛骨の皮質骨の下で面一より下に位置付けられ得る。
【0015】
別の実施形態によれば、縫合糸通し器具は、挿入具器具を保持するように構成されたプロングを有する本体、および縫合糸通し器具の本体から延在するワイヤのループを含み得る。縫合糸は、縫合糸通しを有する糸張アンカを通して位置付けられ得る。例えば、ワイヤのループは、糸張アンカの開口部を通して位置付け可能であり得、縫合糸の自由端がワイヤのループに通された後、通しがアンカから取り外され得、ワイヤのループが開口部を通して縫合糸を引くようになっている。
【0016】
別の実施形態によれば、挿入具は、アンカに接続するように構成された外側シャフトと、外側シャフトを通して位置付け可能であり、アンカのアクチュエータを回転させるように構成された内側シャフトと、複数のスリットを画定するプレートおよびプレートを平行移動させるための回転可能ハンドルを有する糸張器組立体とを含み得る。縫合糸をスリット間のプレートの周りに巻き付け、ハンドルを回転させてプレートをアンカから離して近位に平行移動することによって、挿入具で縫合糸に張力をかけることができる。アクチュエータを縫合糸に圧着し、縫合糸を所定の位置にロックするために、内側シャフトに接続されたノブは回転され得る。
【0017】
別の実施形態によれば、標的化ガイドは、腓骨(またはプレート)と係合するように構成されたベースと、腓骨の端部に引っ掛かるように構成されたベースから延在するフックと、(例えば、前方アンカ用の)脛骨の前方ドリル位置を標的とする第1の照準スリーブを受容するための第1のガイド開口部を有する第1のアームと、(例えば、後方アンカ用の)脛骨の後方ドリル位置を標的とする第2の照準スリーブを受容するための第2ガイド開口部を有する平行移動可能な第2アームとを含む。
【0018】
インプラント、アンカ、縫合糸、挿入具、縫合糸通し、標的化ガイド、K-ワイヤ、および処置を実行するための他の構成要素のうち1つ以上を含むキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明、ならびにそれに付随する利点および特徴のより完全な理解は、添付図面と併せて考慮されるときに、以下の詳細な説明の参照によって、より容易に理解されるであろう。
【
図1】脛骨に取り付けられた後方および前方アンカ、ならびに腓骨の周りをループするアンカを接続する縫合糸を含む腓骨スリング安定化システムの一実施形態を示す。
【
図3A】一実施形態による腓骨スリングの導入方法を示す。
【
図3B】一実施形態による腓骨スリングの導入方法を示す。
【
図3C】一実施形態による腓骨スリングの導入方法を示す。
【
図5A】別の実施形態による展開可能なウイングを含む糸張アンカを示す。
【
図5B】別の実施形態による展開可能なウイングを含む糸張アンカを示す。
【
図5C】別の実施形態による展開可能なウイングを含む糸張アンカを示す。
【
図6A】展開可能なウイングがそれぞれ格納位置と拡張位置にある
図5A~5Cの緊張アンカを示す。
【
図6B】展開可能なウイングがそれぞれ格納位置と拡張位置にある
図5A~5Cの緊張アンカを示す。
【
図8A】一実施形態による、挿入具糸張器具および腓骨の周りでの縫合糸の糸張を示す。
【
図8B】一実施形態による、挿入具糸張器具および腓骨の周りでの縫合糸の糸張を示す。
【
図8C】一実施形態による、挿入具糸張器具および腓骨の周りでの縫合糸の糸張を示す。
【
図8D】一実施形態による、挿入具糸張器具および腓骨の周りでの縫合糸の糸張を示す。
【
図9A】張力をかけて縫合糸を圧着するための
図8A~8Dの挿入具糸張器具のハンドルおよびノブを示す。
【
図9B】張力をかけて縫合糸を圧着するための
図8A~8Dの挿入具糸張器具のハンドルおよびノブを示す。
【
図9C】張力をかけて縫合糸を圧着するための
図8A~8Dの挿入具糸張器具のハンドルおよびノブを示す。
【
図9D】張力をかけて縫合糸を圧着するための
図8A~8Dの挿入具糸張器具のハンドルおよびノブを示す。
【
図10A】それぞれ格納位置、拡張位置、圧着位置にある挿入具糸張器具に接続された展開可能なウイングを有する糸張アンカを示す。
【
図10B】それぞれ格納位置、拡張位置、圧着位置にある挿入具糸張器具に接続された展開可能なウイングを有する糸張アンカを示す。
【
図10C】それぞれ格納位置、拡張位置、圧着位置にある挿入具糸張器具に接続された展開可能なウイングを有する糸張アンカを示す。
【
図11】脛骨に埋め込まれ、腓骨を支持する腓骨スリング安定化システムを示している。
【
図12】縫合糸によって腓骨に加えられる円周方向の力を示している。
【
図13A】脛骨にアンカを設置するための標的化ガイドの一実施形態を示す。
【
図13B】脛骨にアンカを設置するための標的化ガイドの一実施形態を示す。
【
図13C】脛骨にアンカを設置するための標的化ガイドの一実施形態を示す。
【
図13D】脛骨にアンカを設置するための標的化ガイドの一実施形態を示す。
【
図14A】脛骨に取り付け可能な一対のアンカシステム、および腓骨の周りをループして安定化するように構成された縫合糸を含む腓骨スリング安定化システムの一実施形態を示す。
【
図14B】脛骨に取り付け可能な一対のアンカシステム、および腓骨の周りをループして安定化するように構成された縫合糸を含む腓骨スリング安定化システムの一実施形態を示す。
【
図14C】脛骨に取り付け可能な一対のアンカシステム、および腓骨の周りをループして安定化するように構成された縫合糸を含む腓骨スリング安定化システムの一実施形態を示す。
【
図14D】脛骨に取り付け可能な一対のアンカシステム、および腓骨の周りをループして安定化するように構成された縫合糸を含む腓骨スリング安定化システムの一実施形態を示す。
【
図14E】脛骨に取り付け可能な一対のアンカシステム、および腓骨の周りをループして安定化するように構成された縫合糸を含む腓骨スリング安定化システムの一実施形態を示す。
【
図15A】骨プレートの周りで設置された縫合糸の例を示している。
【
図15B】骨に直接設置された縫合糸の例を示している。
【
図16A】可動カムを有する糸張アンカアセンブリの一実施形態を示す。
【
図16B】可動カムを有する糸張アンカアセンブリの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願の実施形態は、概して、骨安定化のためのデバイス、システム、および方法を対象とする。具体的には、実施形態は、脛骨に固定されるように構成された第1および第2のアンカまたはアセンブリ、および腓骨を脛骨に対して支持および安定化する腓骨の周りに巻き付く縫合糸を含む安定化システムを対象とする。腓骨スリング安定化システムは、腓骨にドリルで孔を開ける必要を排除し、それにより、腓骨の疲労骨折の可能性を最小限に抑え、炎症および痛みを軽減し、および/または患者の変形する足首の問題の機会を低減する。
【0021】
本発明の実施形態例の追加の態様、利点、および/または他の特徴は、以下の詳細な説明を考慮して明らかになるであろう。本明細書で提供される説明された実施形態は、単に例示的かつ説明的なものであり、限定的なものではないことは当業者には明らかであろう。その修正された多くの実施形態が、本開示およびその同等物の範囲内に入ると考えられる。
【0022】
システムは、腓骨を脛骨に対して安定化することに関して説明されているが、システムは、身体の他の関節または骨に使用され得ることが理解されるであろう。例えば、デバイスは、大腿骨、上腕骨、鎖骨、尺骨、橈骨、足の骨、手の骨、または他の好適な骨のうちの1つ以上を安定させるように適合され得る。
【0023】
ここで
図1を参照すると、遠位腓骨2および遠位脛骨4を含む足首関節が示されている。一実施形態では、足首関節は、後方アンカ12、前方アンカ14、ならびに後方アンカ12と前方アンカ14を接続するテザー、バンド、または縫合糸16を含む安定化システム10で安定化されるように構成される。縫合糸16は、腓骨2と脛骨4を安定させるために腓骨2に巻き付く。後方アンカ12と前方アンカ14は、完全に脛骨4の皮質骨の下で完全に面一より下に位置付けられ得る。2つのアンカ12、14を接続する縫合糸16は、露出した腓骨2(図示のように)の周りに巻き付けられ得るか、または腓骨プレートの上もしくは下に行き得る。
【0024】
図2A~2Dをさらに参照すると、アンカ12、14が示されている。後方アンカ12および前方アンカ14は、同一または異なっていてもよい。この実施形態では、後方アンカ12および前方アンカ14は同じものであり、アンカ12を参照して説明され、このことはアンカ14に等しく適用される。アンカ12は、第1の端部22から第2の端部24まで延在する本体20を有し得る。本体20は、チャネル28が本体20を通って延在するように、カニューレ挿入され得る。第1の端部22は、近位端であり得、アンカ12を挿入するための器具18を受容するように構成されている凹部26を含み得る。第2の端部24は、骨(例えば、脛骨4)に挿入されるように構成された遠位端であり得る。第2の端部24は、鈍い遠位先端を有し得るが、尖頭状に構成され得るか、または他の方法で骨に係合するように構成され得る。
【0025】
アンカ12は、遠位端24の近傍にバックル30を含み得る。バックル30は、本体20の側部部材34、36の間に位置付けられた横断部材32を含み得る。バックル30は、横断部材32の両側に第1の開口部38および第2の開口部40を画定することができる。第2の開口部40は、チャネル28がバックル30からアンカ12の近位端22まで延在するように、凹部26と流体連通することができる。バックル30は、縫合糸16を保持するように構成され得る。例えば、縫合糸16は、アンカ12の本体20を通って第2の開口部40内に延在することができ、かつ横断部材32上をループして第1の開口部38内へ延在することができ、それによって縫合糸16をアンカ12に固定することができる。縫合糸16は、チャネル28を通って戻って延在し、縫合糸16の自由端がアンカ12の本体20を通して張力がかけられ得るようになっている。バックル30が例示されているが、バックル30は、糸張ロックバックル、ラダーロックバックル、ラチェットバックル、カムロックバックル、スライドバックル、スナップバックル、タイバックル、または他の任意の好適なタイプのバックルを含み得ることを理解されたい。
【0026】
アンカ12の本体20は、シャフトの一部または全体に沿って1つ以上のねじ山30を有するねじ山付き部分を含むことができる。例えば、ねじ山30は、本体20に沿って近位端22からバックル30まで延在し得る。バックル30の周りの遠位端24および先端部は、滑らかでねじ山のない外面を有することができる。ねじ山30は、挿入および/または骨との係合を向上させるために、好適な角度、リード、ピッチなどを有し得る。この実施形態ではねじ山付き部分が例示されているが、ねじ山30は、リブ、返し、歯、摩擦面、または他の骨固定機構で置き換えることができることが理解されるであろう。
【0027】
一実施形態では、一方のアンカ12、14は静止アンカであり、他方のアンカ12、14は糸張アンカである。アンカ12、14は、例えば、ノット、接着剤、圧着、超音波溶接などによって、縫合糸16がアンカ12、14に堅固に取り付けられている場合は、静止アンカである。静止アンカ12、14は、縫合糸16がアンカねじ山30に干渉することなく近位端22から出ることができるように、カニューレ状本体20を有する。バックル30は、静止アンカ12、14用の縫合糸16の取り付けに適応することができる。ノット、圧着、溶接または接着剤の位置は、バックル30に、および/またはアンカ本体20のチャネル28内にあってもよい。アンカ12、14は、縫合糸16がバックル30を通って動くことができ、縫合糸16の緊張または弛緩を可能にする場合は、糸張アンカである。縫合糸16は、アンカ12、14のカニューレ付き本体20を通って延在し、横断部材32の周りをループして、カニューレ状本体20を通って戻ることができ、張力が縫合糸16に加えられ得るようになっている。
【0028】
図1では、後方アンカ12は、静止アンカであり得、前方アンカ14は糸張アンカであり得る。静止アンカ12が、最初に脛骨4の後方側面に設置され得、糸張アンカ14がその後、脛骨4の前方側面に設置され、張力がかけられ得る。アンカ12、14は、引き抜き強度が最大化され得、脛骨4の後方側面が前方側面よりもアクセスしにくいことからユーザのステップを最小限に抑えることができる。アンカ12、14は、縫合糸の骨への取り付けが所望されるところならどこでも、身体全体に用途を有し得ることが理解されるであろう。
【0029】
一実施形態によれば、腓骨スリング10を設置する方法は、以下のうちの1つ以上を含み得る。脛骨4の後方側面へアクセスし、脛骨4に事前に孔が開けられ得る。
図2Dに示されるように、アンカ12、14は、取り付けを容易にするために縫合糸16が事前装填され、カニューレ状ドライバ本体20を通って延在する状態でドライバ18に事前に取り付けられ得る。
図3Aに示されるように、第1の静止アンカ12を挿入するために、外科医は、単に、アンカ12が面一より下になるまで(例えば、レーザマークによって示されるように)、アンカ本体20を事前に開けられた孔にねじ込む。
図3Bに示すように、ドライバシャフト18が除去される。
図3Cでは、縫合糸16の自由端は、皮質骨の下に埋め込まれたアンカ12で露出されている。縫合糸16の自由端は、腓骨2の周りでループする。続いて、糸張アンカ14が脛骨4の前方側面に設置される。縫合糸16は、腓骨2の周りに円周方向の力を提供するように張力が加えられ、それにより腓骨2および脛骨4を安定化する。
【0030】
図4A~4Cは、テザー、バンド、または縫合糸16のいくつかの異なる例を示している。縫合糸16は、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレンまたはUHMWPE)、ポリプロピレン、シルク、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル、シルク綿、または他の好適な生体適合性材料を含み得る。縫合糸16は、UHMWPE、ポリエステル、PETポリマー繊維などの任意の組み合わせまたはブレンドを使用して編まれ、および/または織られ得る。
図4Aに示されるように、縫合糸16は、断面が円形または楕円形であり得る。
図4Bでは、縫合糸は、平坦またはテープ状の形状を有し得る。
図4Cでは、縫合糸16は、円形から平坦な形状に、またはその逆に移行することができる。縫合糸16は、完全に放射線透過性であり得るか、または蛍光透視法で見えるように設計された1つ以上のマーカストランドを有し得る。
【0031】
アンカまたは本明細書に記載の他のデバイスは、これらに限定されるものではないが、チタン、ステンレス鋼、チタン合金、非チタン金属合金、ポリマー材料、プラスチック、プラスチック複合材料、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、セラミック、および弾性材料を含む多くの生体適合材料から製造され得る。
【0032】
ここで
図5A~5Cに目を向けると、展開可能なウイング52を有するアンカ50の別の実施形態が示されている。安定化システム10のアンカ12、14の一方または両方は、拡張可能なアンカ50に置き換えられ得る。一実施形態では、アンカ50は、前方(張力)アンカである。アンカ50は、縫合糸16を骨に取り付け、張力が加えられ維持され得るように構成されている。
図5Aに最もよく見られるように、アンカ50は折り畳まれた構成を有し、それにより、例えば、最小侵襲性の方法で、アンカ50が脛骨4に挿入されることを可能にする。
図5Bに示されるように、脛骨4に挿入されると、アンカ50は、拡張され、延長した構成を有し、そこではウイング52が外側に拡げられ、それによってアンカ50を脛骨4に固定している。ウイング52は、アンカの引き抜きに抵抗するように構成され得る。アンカ50は、縫合糸の骨への取り付けが望まれるところならどこでも、身体全体に他の用途を有し得る。
【0033】
アンカ50は、第1の端部または近位端56から第2の端部または遠位端58まで延在する本体54を有し得る。遠位端58は、脛骨4に挿入されるように構成され得る。遠位端58は、鈍い遠位先端を有し得るが、尖頭状に構成され得、または他の方法で骨を係合するように構成され得る。アンカ50の本体54は、シャフトの一部または全体に沿って1つ以上の円周方向リブまたは返し60を有するリブまたは返し付き部分を含み得る。例えば、複数のリブまたは返し60が、本体54に沿って近位端56から遠位端58まで延在し得る。返し60の各々は、(例えば、円錐状にテーパが付いた)テーパ状外面を有し得る。返し60の各々は、近位端56に向かってより大きな外径を有し、遠位端58に向かってより小さな外径を有し得、それにより、返し60が、骨への容易な挿入を可能にするが、反対方向へのアンカ50の引き抜きに抵抗するようになっている。この実施形態では返し付きアンカが例示されているが、返し60は、ねじ山、歯、摩擦強化表面、または他の骨固定機構で置き換えることができることが理解されるであろう。アンカ本体54のテーパ状の返し付き外形は、事前にドリルで開けられた孔にタップインし、引き抜きに抵抗するように構成される。一実施形態では、本体54は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのプラスチック材料で構成される。アンカ50のプラスチック組成および形状により、返し60が孔に衝突するときに返し60がわずかに撓むことを可能にし、返しの形状により、アンカ50が後方に引っ張られることに抵抗するようにできる。
【0034】
本体54に沿った縫合糸経路62は、リブ60がなくてもよい。例えば、経路62は、平坦化面または凹状面を含み得る。
図5Cにおいて最もよく分かるように、アンカ50は、本体54の対向する側部に2つの縫合糸経路62を含み得る。経路62は、縫合糸16がアンカ50の本体54に沿って、および/または本体54内に載置されることを可能にする。本体54は、それを通って横方向に延在する縫合糸開口部62を画定することができる。縫合糸開口部62は、縫合糸経路62の始点に位置付けられた細長い開口部であり得る。縫合糸開口部62は、その中に縫合糸16を受容するように構成され得る。縫合糸開口部64は、縫合糸16がそこを通されることを可能にし、本体54のいずれかの側にある平坦な縫合糸経路62は、アンカ本体54が骨にタップインされた後に縫合糸16がアンカ本体54と骨との間をスライドする空間を形成する。
【0035】
アンカ50は、1つ以上の展開可能ウイング52を含み、優れた引き抜き強度を提供することができる。例えば、アンカ50は、本体54の対向する側部に1対の展開可能なウイング52を含み得る。ウイング52は、アンカ50の本体54に枢動可能に接続された第1の端部66、および骨内に拡張可能な第2の端部68を有し得る。ウイング52の第2の端部68は、先細であるか、尖ったものであり得る。アンカウイング52は、テーパ状で鋭ったものであることができ、ウイング52が骨を通ってより容易に展開できるようになっている。ウイング形状は、ウイング52が特定の角度を超えて拡張されることに抵抗するように構成され得、したがって、アンカの引き抜きに抵抗する働きもする。ウイング52の各々は、例えば、枢動式ピン67を介して、ピンジョイントなどのジョイントの周りで本体54に枢動可能に接続され得る。この実施形態では、枢動式ピン67が例示されているが、枢動式ジョイント、ヒンジジョイントなどの他の好適なジョイントを選択できることが理解されるだろう。このように、ウイング52は、アンカ50の本体54に対して関節運動することができる。
図5Aに示される折り畳まれた位置では、ウイング52は、アンカ50の本体54に対して位置付けられるか、またはその中に入れ子にされ、それによって、アンカ50が骨に挿入されることを可能にする。
図5Bに示される拡張された、または伸長された位置では、ウイング52は、外側に、アンカ50の本体54から離れて拡張され、それによって、ウイング52が引き抜きに抵抗することを可能にしている。
【0036】
図6A~
図6Bの断面図で最もよく分かるように、ウイング52は、折り畳み位置から拡張位置にウイング52を関節運動させるように構成された関節運動アセンブリ70で展開可能である。
図6Aでは、ウイング52は折り畳み位置で示されており、
図6Bでは、ウイング52は拡張位置で示されている。関節運動アセンブリ70は、近位端74から遠位端76まで延在するアクチュエータ72を含み得る。近位端74は、駆動器具を受容するように構成された凹部78を含み得る。アクチュエータ72は、例えば、アンカ50の本体54内の対応するねじ山付き部分とねじ結合するように構成された外側ねじ山付き部分80を有する止めねじの形態であり得る。
【0037】
アクチュエータ72の遠位端76は、各ウイング52の内側部分に沿ったカム面82と係合するように構成され得る。アクチュエータ72が前方に平行移動すると、アクチュエータ72の遠位端76はウイング52のカム面82に対してスライドし、それによってウイング52をそれらの拡張位置に枢動させる。カム面82は、突起部84で終端し得る。
図6Aに示される折り畳み位置では、突起部84は、互いに接触するか、または互いに近接し得る。
図6Bに示される拡張位置では、アクチュエータ72は、ウイング52の突起部84間のギャップ内に位置付けられ、それにより、ウイング52の最大拡張を維持する。アクチュエータ72の遠位端76も、縫合糸16を縫合糸開口部64内に保持するように構成される。縫合糸16は、最初にアンカ本体54の縫合糸開口部64に通される。次に、アンカ50が骨表面の下に打ち込まれる。最後に、アクチュエータ72が前進されて、縫合糸16を圧着し、ウイング52を展開する。
【0038】
ここで
図7A~
図7Bを参照すると、アンカ50の本体54の開口部64を通って縫合糸16を通すために、縫合糸通し器具、スレッダ、または通し90が使用され得る。縫合糸通し90は、挿入具/糸張器器具100を保持するように構成された複数のプロング94を有する本体92、および通し90の本体92から延在するワイヤのループ96を含み得る。ワイヤのループ96は、アンカ50の開口部64を通して位置付け可能であり、通し90の縁部が、アンカ50および挿入具100に当接し、プロング94が挿入具100を保持するようになっている。
図7Aに示されるように、縫合糸16の自由端は、ワイヤのループ96を通過する。通し90がアンカ50および挿入具100から取り外されると、ワイヤのループ96が、アンカ縫合糸開口部64を通して縫合糸16を引き、それにより、アンカ50を通して縫合糸16を通す。
【0039】
ここで
図8A~
図8Dを参照すると、アンカ50を挿入するために、および/または縫合糸16に張力をかけるために、挿入具および/または糸張器器具100が使用され得る。挿入具/テンショナ100は、アンカ50の近位端56に接続するように構成された外側シャフト104、および外側シャフト104を通して位置付け可能であり、アンカ50のアクチュエータ72を回転させるように構成された内側シャフト106を有する本体102を含む。内側シャフト106は、ノブ116を介して回転可能であり得る。
図8Aに示されるように、縫合糸16がアンカ50を通過した後、糸張アンカ50は、例えば、挿入具100上のレーザマークされた線まで、前外側脛骨4内にタップされる。
【0040】
器具100は、回転可能ハンドル110および糸張器プレート112を含む糸張器組立体108を含む。
図8Bに示されるように、縫合糸16は、糸張器組立体108に取り付けられる。
図8Cで最もよく分かるように、プレート112は複数のスリット114を含み、これは、例えば、プレート112の周りに、およびスリット114の間で縫合糸16が巻かれたとき、または巻き付けられたときに、それを保持する。プレート112は、本体102の一方の側に第1の対の整列したスリット114を含み、本体102の反対側に第2の対の整列したスリット114を含むことができる。縫合糸16は、例えば、1対のスリット114の間に巻き付けられ得る。
図8Dに示されるように、ハンドル110が回転されると、テンショナプレート112は、近位方向に平行移動され、アンカ50から離れる。ハンドル100を回転させることにより、縫合糸16が引かれ、それにより構造体に張力を加える。
【0041】
図9A~
図9Dで最もよく分かるように、ハンドル110の回転がノブ116も回転させるようにハンドル110とノブ116は一元化され得る。
図9Cでは、ノブ116はハンドル110に嵌合されている。ハンドル110を回転させることにより、同時にノブ116も回転し、アンカウイング52を展開する。ハンドル110は、所望の縮小が達成されるまで、構造体の張力を増すために回転し続けることができる。最終的な張力に達したら、ノブ116が指で回され、アクチュエータ72を縫合糸16上に圧着し、縫合糸16を所定の位置にロックすることができる。
図9Dでは、ノブ116は、ハンドル100に押し込まれ、ハンドル100から外され、ノブ116を微調整することができるようになっている。縫合糸16に張力をかけてウイング52を展開した後、挿入具100がアンカ50から取り外され得る。
図10A~10Cは、ウイング52が収縮され(
図10A)、ウイング52が拡張され(
図10B)、ウイング52が最終位置で存在する場合には縫合糸16を圧着するアクチュエータ72とともに拡張された状態(
図10C)でアンカ50に取り付けられた挿入具100を示す。
【0042】
図11は、安定化システム10で安定化された足首関節の例を示している。2つのアンカ12、14、50が、脛骨4の後方側および前方側で脛骨4内に位置付けられる。張力がかかった縫合糸16が一対のアンカ12、14、50によって固定され、腓骨2に巻き付き、関節を安定させる。
図12は、縫合糸16が腓骨2に加え得る円周方向の力を示している。縫合糸16は、露出した腓骨2の周りに巻き付けられているように示されているが、縫合糸16は腓骨プレートの上または下に行くこともできる。腓骨スリングシステム10は、既存の腓骨プレート上で機能し得る。腓骨スリングシステム10は、腓骨2をその正常な解剖学的位置に戻すように作用することができる。内部スリングは、不適切な移植(例えば、スクリューまたは縫合糸ボタンの軌道)による不全整復のリスクを軽減する。スクリューまたはボタンがない場合、脛骨4または腓骨2の外側部または内側部のインプラント突起がなくなり、このことで患者の組織への刺激および痛みが低減する。貧弱な骨におけるインプラント沈下による固定の喪失がない。腓骨2にドリルで孔を開ける必要がないことで、疲労骨折を誘発するリスクが最小限に抑えられ得る。
【0043】
ここで
図13A~
図13Dを参照すると、アンカ12、14、50などのアンカを位置付けし、設置するための標的化ガイド120が示されている。特に、理想的な軌道と位置で後方アンカ部位にアクセスすることは、標的化器具の補助なしでは困難になり得る。標的化ガイド120は、腓骨2の最遠位面に対する位置に基づいて、外科医に最適なドリル軌道を提供するために、骨準備ステップの間に使用され得る。標的化ガイド120は、遠位腓骨2に引っ掛かり、腓骨プレート122の有無にかかわらず、腓骨2の上に配置され得る。
図13Aでは、腓骨プレート122の例が腓骨2の上に示されている。腓骨プレートの例は、例えば、米国特許第2018/0049784号および米国特許第2018/0049783号で見出すことができ、これらは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0044】
標的化ガイド120は、腓骨2、または存在する場合にはプレート(例えば、腓骨プレート122)の面と係合するように構成されたベース124を含み得る。ベース124は、骨またはプレートの形状を模倣するように湾曲するか、または輪郭を描くことができる。フック126は、ベース124から延在し、腓骨2の遠位端に引っ掛かるように構成される。フック126は、遠位腓骨2の解剖学的構造に係合するようなサイズおよび寸法の一対の湾曲したフック部材を含むことができる。ポスト128は、ベース124を第1のアーム130に接続する。第1のアーム130は、第1の照準スリーブ134を受容するように構成された第1のガイド開口部132を含む。ガイド開口部132および第1の照準スリーブ134は、脛骨4上の前方ドリル位置を標的とするように構成され得る。第1のアーム130は、第2のアーム136とスライド可能に係合する。第1のアーム130は、最適な軌道を確保するために曲げられ得る。第2のアーム136は、第2の照準スリーブ140を受容するように構成された第2のガイド開口部138を含む。ガイド孔132、138は、ドリルガイド、ドリル、トロカール、K-ワイヤなどとインターフェースする照準スリーブ134、140を受容する。第2のアーム136は、脛骨4上の後方ドリル位置を標的とするために第1のアーム130に対してスライド可能である。所望の位置が位置特定されると、第2のアーム136は、取付ナット142を介して所定の位置にロックされ得る。第2のアーム136を第1のアーム130に対して調節することにより、挿入ガイド120は横断面における調節を容易にする。
【0045】
図13Cで最もよく分かるように、第1の照準スリーブ134は、前方ドリル位置を標的とし、第2の照準スリーブ140は、後方ドリル位置を標的化する。第1の照準スリーブ134と第2の照準スリーブ140との間の角度は、アンカ位置に対して最適化され得る。例えば、第1の照準スリーブ134と第2の照準スリーブ140との間の角度は、約50°~70°、約55°~65°、または約60°であってもよい。標的化ガイド120は、腓骨2の遠位面から近位に正確な距離を提供し、アンカ12、14、50が確実に距脛骨関節線に侵入しないようにする。挿入ガイド120は、脛骨4への垂直的な挿入を容易にするために、最適なドリル軌道および角度を維持することができる。
【0046】
ここで
図14A~
図14Eを参照すると、安定化システム160の別の実施形態が、靭帯破断の固定のために示されている。安定化システム160は、後方アンカアセンブリ162、前方アンカアセンブリ164、および後方アンカアセンブリ162と前方アンカアセンブリ164を連結するテザーまたは縫合糸166を含み得る。縫合糸166は、腓骨2と脛骨4を安定させるために腓骨2を固定して受けるように構成される。後方アンカアセンブリ162および前方アンカアセンブリ164は、脛骨4の皮質骨内に位置付けられ得る。2つのアンカアセンブリ162、164を接続する縫合糸166は、(
図14Aに示されるように)露出した腓骨2の周りに巻き付けられ、(
図15Aに示されるように)腓骨プレート122の上に位置付けられるか、または腓骨プレート122の下に位置付けられ得る。安定化システム160は、解剖学的整復を支援するように構成され得る。
【0047】
後方アンカアセンブリ162および前方アンカアセンブリ164は、それぞれ後方脛骨4および前方脛骨4の中に固定される。後方アンカアセンブリ162および前方アンカアセンブリ164は、同一であっても異なっていてもよい。この実施形態では、アンカアセンブリ162、164の一方は静止アンカであり、アンカアセンブリ162、164の他方は糸張アンカである。例えば、前方アンカアセンブリ164は、脛骨4の前方部分の張力側として使用することができ、後方アンカアセンブリ162は、脛骨4の後方部分の静止側として使用することができる、またはその逆でもよい。アンカアセンブリ162、164は、縫合糸166によって接続され、これらは腓骨2を脛骨4に対して安定化するために張力が加えられている。
【0048】
一実施形態によれば、糸張アンカアセンブリ164は、バックルワッシャ170およびアンカ172を含む。アンカ172は、バックルワッシャ170とは別個の構成要素であってもよく、またはバックルワッシャ170と一体であってもよい。バックルワッシャ170は、ワッシャまたはリング174およびバックル176を含み得る。ワッシャまたはリング174は、それを通って延在する中心孔178を有するディスク状のプレートを含み得る。バックル176は、リング174の一方の側から突出し得る。バックル176は、例えば、スライドバックルまたはトライグライドアジャスタであり得る。バックル176は、側部部材182、184の間に位置付けられた横断部材180を含むことができる。バックル176は、横断部材180の両側に第1の開口部186および第2の開口部188を画定することができる。バックル176は、横断部材180の上で、側部部材182、184の間に上部部材190を含む。開口部186、188は、歯または他の摩擦強化面を含むことができる。
【0049】
バックル176は、縫合糸166を保持するように構成され得る。例えば、
図14Cに示されるように、緊張アセンブリ164の断面は、縫合糸166がバックル176に巻き付けられた状態で示されている。縫合糸166の自由端または尾端168は、上部部材190へ上り、それを越えて、第1の開口部186へ下り、そこを通り、横断部材180の周りを周って、第2の開口部188へと戻って、第2の開口部188を通され得る。この巻き付けパターンにより、尾端168が引かれて縫合糸166の張力を締め付け、それにより腓骨2を脛骨4に近づけることを可能にする。縫合糸166をバックル176に通して巻くことにより、バックル176は、生じた摩擦によって縫合糸166が緩むのを防止する。バックル176および巻き付けパターンが示されているが、縫合糸166への張力を提供するために他のバックルまたは縫合糸166の交絡が使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0050】
バックルワッシャ170は、アンカ172で骨に固定され得る。アンカ172は、骨スクリュー、釘、または他のタイプのアンカを含むことができる。特に、アンカ172は、バックルワッシャ170の開口部178を通って延在することができる。アンカ172は、アンカ172を挿入するための器具を受容するように構成された凹部を有するヘッド192、および骨に挿入されるように構成されたねじ山付きシャフト194を含み得る。シャフト194は、尖頭の、鈍い、または他の方法で骨に係合するように構成された遠位先端を有することができる。
【0051】
一実施形態によれば、静止アンカアセンブリ162は、静止ワッシャ200およびアンカ172を含む。アンカ172は、静止ワッシャ200とは別個の構成要素であってもよく、またはそこに一体化されていてもよい。
図14Dに示されるように、静止ワッシャ200は、ワッシャまたはリング202およびループ204を含み得る。ワッシャまたはリング202は、そこを通って延在する中心孔206を有するディスク状プレートを含むことができる。ループ204は、リング202の一方の側から突出し得る。ループ204は、縫合糸166を保持して固定するための単一の細長い開口部208を含み得る。例えば、縫合糸166は、開口部208を通るループ状にされ得る。縫合糸166は、例えば、ノット、接着剤、圧着、超音波溶接などによって、ループ204に堅固に取り付けられ得る。
【0052】
図14Eは、安定化システム160で安定化された足首関節の軸方向の図を示す。静止ワッシャ200は、脛骨4の後方側に配置され得、第1のアンカ172で固定され得る。バックルワッシャ170は、脛骨4の前方側に配置され得、第2のアンカ172で固定され得る。縫合糸166は、静止ワッシャ200に固定され、腓骨2に巻き付けられ、バックルワッシャ170のバックル176に取り付けられ得る。縫合糸166は、縫合糸166の自由端168を引くことにより張力がかけられ、関節を安定化することができる。
【0053】
図15Aに示されるように、縫合糸166は、腓骨プレート122(例えば、以前の手術からの既存のもの)の周りに、その上に、かつそれに対して巻き付けられ得る。縫合糸166はまた、骨プレートの下に行ってもよいことが理解されるであろう。
図15Bでは、張力がかけられた縫合糸166が、露出した腓骨2の周りに巻き付けられて示されている。腓骨を通って靭帯結合に配置されるスクリューまたは縫合糸ボタンシステムで治療される傷害とは異なり、安定化システム160は腓骨2を通過していない。代わりに、安定化システム160は、脛骨4の前方側および後方側に取り付けられ、縫合糸166で腓骨2の周りを巻き付け、靱帯結合を安定して保持する。
【0054】
図16A~
図16Bを参照すると、糸張アンカアセンブリ220の一実施形態が示されている。糸張アンカアセンブリ220は、カムワッシャ222、可動カム224、およびアセンブリ220を骨に固定するためにワッシャ222を通して位置付け可能なアンカ172を含み得る。カムワッシャ222は、ワッシャまたはリング226、およびリング226の一方の側から突出する中空ハブまたはケーシング228を含み得る。ワッシャまたはリング226は、アンカ172のヘッド192を保持するように構成された、そこを通って延在する中心孔230を有するディスク状プレートを含み得る。
【0055】
ケーシング228は、回転式カム224を収納するように構成されている。カム224は、カムの回転224を可能にするケーシング228内の対応する表面と噛み合うように構成された湾曲した外面232を含むことができる。カム224は、そこを通る縫合糸166を受容するための開口部234を含む。カム224は、垂直に引かれた場合に、縫合糸166がカム224を通して自由に引かれることを可能にする一方向機構として機能することができる。
図16Aは、縫合糸166の自由な動きを可能にする第1の位置にあるカム224を示している。次に、縫合糸166を所望の張力で保持するために、縫合糸166は、ワッシャ222の底部に向けて引き下げられ得る。
図16Bは、動きをロックし、縫合糸166の張力を維持する第2の位置にあるカム224を示す。縫合糸166がこのように下方に引かれると、カム224が枢動して縫合糸166をワッシャ222の本体の中へ押し込み、縫合糸166を圧着し、それにより縫合糸166への張力を摩擦で保持する。
【0056】
ここで
図17A~
図17Bを参照すると、糸張アンカ240および静止アンカ270の実施形態が示されている。アンカ240、270は、インプラントの突出がないように、骨の下で面一より下に配置することができる。糸張アンカ240は、糸張構成要素をアンカ本体に一体化する。アンカ240は、第1の近位端244から第2の遠位端246まで延在し、骨に挿入されるように構成された本体242を有し得る。第2の端部246は、尖頭であるが、鈍くなるように構成され得るか、または他の方法で骨と係合するように構成され得る遠位先端を有してもよい。近位端244は、アンカ240の本体242に一体化されたバックル248を有するヘッドレスであり得る。
【0057】
バックル30と同様に、バックル248は、本体242の側部部材252、254の間に位置付けられた横断部材250を含み得る。バックル248は、横断部材250の両側に第1の開口部256および第2の開口部258を画定することができる。バックル248は、縫合糸166を保持し、張力をかけるように構成され得る。縫合糸166は、開口部256、258を通して位置付けられ得、縫合糸166を緩め、かつ/または張力をかけるのに好適な方法で横断部材250の周りに巻き付けられ得る。バックル248が例示されているが、バックル248は、糸張ロックバックル、ラダーロックバックル、ラチェットバックル、カムロックバックル、スライドバックル、スナップバックル、タイバックル、または他の任意の好適なタイプのバックルを含み得ることを理解されたい。
【0058】
アンカ240の本体242は、シャフトの一部または全体に沿って1つ以上のねじ山を有する第1のねじ山付き部分260および第2のねじ山付き部分262を含むことができる。例えば、第1のねじ山付き部分260は、バックル248から第2のねじ山付き部分262への移行部まで延在することができ、第2のねじ山付き部分262は、この移行部からアンカ240の遠位端246まで延在する。第1のねじ山付き部分260は、第2のねじ山付き部分262よりも大きい外径を有し得る。ねじ山は、挿入および/または骨との係合を強化するために、好適な角度、リード、ピッチなどを有し得る。この実施形態ではねじ山付き部分260、262が例示されているが、ねじ山は、リブ、歯、摩擦面、または他の骨固定機構で置き換えることができることを理解されたい。アンカ本体242はまた、挿入中に骨片をアンカ本体242から離れる方向に向ける1つ以上の縦溝264を含むことができる。
【0059】
図17Bに示される実施形態では、アンカ270は静止アンカである。静止アンカ270は、バックル248が単一ループ272に置き換えられていることを除いて、糸張アンカ240と同じである。静止アンカ270は、縫合糸166が巻き付けられて固定される1つのループ272を有する。縫合糸166は、例えば、ノット、接着剤、圧着、超音波溶接などによって、それ自体またはアンカ270に堅固に取り付けられ得る。
【0060】
本明細書に記載の安定化システムは、解剖学的整復を支援するための、および/または靱帯破断の固定のための腓骨スリングとして機能する。縫合糸は腓骨の周りに巻き付けられ、腓骨を支えるために張力が加えられる。縫合糸は、両端が脛骨に固定される。腓骨スリングシステムは、腓骨を通るいかなる孔も開ける必要性を排除し、それによって、腓骨の疲労骨折の可能性を最小限に抑え、炎症および痛みを軽減し、および/または患者の足首変形問題の可能性を低減している。
【0061】
本発明を特定の実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正をすることができると当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に入るという条件で、本発明の修正および変形を包含することが意図される。上記で開示された様々なデバイスのすべての構成要素は、任意の好適な構成で組み合わせられ得るか、または修正され得ることが、明白に意図されている。