(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027607
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ポリイミド系フィルムおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220203BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220203BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20220203BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220203BHJP
G02B 1/16 20150101ALI20220203BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20220203BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
G02B1/11
G02B1/14
G02B1/16
G02B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123671
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095316
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム スン クグ
(72)【発明者】
【氏名】パク ミン サン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒュン ジュ
【テーマコード(参考)】
2K009
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009AA12
2K009AA15
2K009BB11
2K009EE05
4F071AA60
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4F071AF20Y
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4F071BA02
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4F071BC12
4J043PA04
4J043QB31
4J043RA05
4J043RA35
4J043SA01
4J043SA06
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4J043TA22
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4J043UA022
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4J043VA022
4J043XA16
4J043XA19
4J043YA06
4J043ZA55
4J043ZB21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外観品質が改善された、透明で、且つ、視認性に優れたポリイミド系フィルム、それを用いたウィンドウカバーフィルム、およびディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】100×100mm大きさのフィルムを基準に、単位面積当たりの面内位相差(Ro)の標準偏差が5nm未満であり、等高線の個数が50個以下であることを特徴とする、ポリイミド系フィルムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100×100mm大きさのフィルムを基準に、単位面積当たりの面内位相差(Ro)の標準偏差が5nm未満であり、等高線の個数が50個以下であることを特徴とする、ポリイミド系フィルム。
【請求項2】
前記ポリイミド系フィルムは、550nm波長で測定された面内位相差が300nm以下である、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項3】
前記ポリイミド系フィルムは、550nm波長で測定された面内位相差が0~300nmである、請求項2に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項4】
前記ポリイミド系フィルムは、ASTM D882に準じたモジュラスが3GPa以上、破断伸びが8%以上であり、ASTM D1746に準じて388nmで測定された光透過率が80%以下、400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、ヘイズが2.0%以下、黄色度が5.0以下、およびb*値が2.0以下である、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項5】
前記ポリイミド系フィルムは、ポリアミドイミド系樹脂からなる、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項6】
前記ポリイミド系フィルムは、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含む、請求項5に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項7】
前記ポリイミド系フィルムは、環脂肪族二無水物から誘導された単位をさらに含む、請求項6に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項8】
前記ポリイミド系フィルムの厚さは30~110μmである、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のポリイミド系フィルムを含むウィンドウカバーフィルム。
【請求項10】
前記ポリイミド系フィルムの少なくとも一面に、ハードコーティング層、帯電防止層、復元層、衝撃拡散層、セルフクリーニング層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層から選択される何れか1つ以上のコーティング層を有する、請求項9に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項11】
請求項1から8の何れか一項に記載のポリイミド系フィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド系フィルム、ウィンドウカバーフィルム、およびそれを含むディスプレイパネルに関する。
より具体的に、本発明は、視認性に優れたポリイミド系フィルム、それを用いたウィンドウカバーフィルム、およびそれを含むディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
薄型表示装置は、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形態で実現され、スマートフォン(smart phone)、タブレット型(tablet)PC、各種ウェアラブルデバイス(wearable device)に至るまで、各種スマートデバイス(smart device)に用いられている。
【0003】
このようなタッチスクリーンパネルを用いる表示装置は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するために、ディスプレイパネル上に強化ガラスやプラスチックフィルムを含むウィンドウカバーを備えている。
【0004】
このようなウィンドウカバーは、ディスプレイ装置の最も外部に形成された構成であるため、耐熱性、機械的特性、および光学的特性が満たされなければならず、特に、表示品質が高く、ムラ現象、特定の角度で画面が黒く見えるブラックアウト現象、または虹色のムラを有する虹ムラ現象などの、光による歪みが発生しないことが重要である。
【0005】
特に、ウィンドウカバーは、多様な物性を付与するために基材層上にコーティング層が積層されるにつれて、光の乱反射などを誘発し、光学ムラが発生して視認性を悪化させ、ディスプレイに適用時に目の疲労を引き起こすという問題がある。
【0006】
したがって、強化ガラスや従来の有機材料を代替するものであるため、機械的物性と熱的特性および多様な光学的特性とともに、光による歪み問題を解決することができる、ウィンドウカバーに対する開発は、依然として必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2015-0104282号(2015.09.15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外観品質が改善された、透明で、且つ、視認性に優れたポリイミド系フィルム、それを用いたウィンドウカバーフィルム、およびディスプレイパネルを提供しようとする。
また、本発明は、虹や光学ムラ現象が顕著に改善されたポリイミド系フィルム、それを用いたウィンドウカバーフィルム、およびそれを用いたディスプレイパネルを提供しようとする。
【0009】
また、本発明は、強化ガラスなどを代替するウィンドウカバーフィルムを提供するものであるため、優れた機械的物性と熱的特性および多様な光学的特性を満たすとともに、光による歪み問題を解決することができる、新しいウィンドウカバーフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために研究した結果、面内位相差(Ro)の標準偏差が特定範囲を満たすフィルムを提供することで、視認性および品位に優れた光学フィルムであるウィンドウカバーフィルムを提供できることを見出した。
【0011】
本発明の一態様は、100×100mm大きさのフィルムを基準に、単位面積当たりの面内位相差(Ro)の標準偏差が5nm未満であり、等高線の個数が50個以下である物性を同時に満たすことを特徴とする、ポリイミド系フィルムを提供する。前記範囲を同時に満たす範囲で、反射ムラが少なく、外観品質が改善された、透明で、且つ、視認性に優れたフィルムを提供できることを見出した。
【0012】
本発明に係る前記フィルムは、前記物性を得た以上は、その製造手段は特に限定されるものではないが、本発明の前記物性を得る1つの手段を例に挙げると、ポリイミド系樹脂溶液をキャストした後、乾燥時に乾燥温度および風速を調節することで達成されてもよい。より具体的には、2段階以上の乾燥を行ってもよく、1次乾燥時に乾燥温度および風速を低く設定してもよく、さらに具体的には、80~150℃で、1~5m/sの風速で乾燥してもよい。前記温度および風速は、フィルムの厚さに応じて調節されてもよく、前記範囲に制限されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るポリイミド系フィルムは、視認性に優れ、虹現象を顕著に改善できるという長所がある。
本発明に係るウィンドウカバーフィルムは、前記ポリイミド系フィルム上にコーティング層が形成されても、表示品質に優れ、表示部に虹色のムラが発生する虹ムラ現象などを低減させることができ、外観品質が向上するという長所がある。
【0014】
また、本発明に係るポリイミド系フィルムおよびそれを含むウィンドウカバーフィルムは、優れた光学特性および視認性により、多様なディスプレイ分野に適用することができる。
また、本発明のウィンドウカバーフィルムは、優れた機械的特性、熱的特性、および透明度や黄色度などの多様な光学的物性を満たすとともに、視認性に優れた特性を提供して、多様なディスプレイに適用できるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るフィルムの位相差を示したものである。
【
図2】本発明の実施例1に係るフィルムの位相差分布を示したものである。
【
図3】本発明の実施例2に係るフィルムの位相差を示したものである。
【
図4】本発明の実施例2に係るフィルムの位相差分布を示したものである。
【
図5】本発明の比較例1に係るフィルムの位相差を示したものである。
【
図6】本発明の比較例1に係るフィルムの位相差分布を示したものである。
【
図7】反射ムラを観察するための例示を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体的に説明する。但し、下記の一態様は、本発明を詳細に説明するための1つの参照に過ぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、多様な形態で実現可能である。
また、別に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。
【0017】
本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈において特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0018】
また、ある部分がある構成要素を「含む」とするときに、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
本発明において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む用語として用いられる。ポリイミド系フィルムは、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミドフィルムを包括する意味の用語として用いられる。
【0019】
本発明において、「ポリイミド系樹脂溶液」は、「ポリイミド系フィルム形成用組成物」および「ポリアミドイミド溶液」と同一の意味で用いられる。また、ポリイミド系フィルムを形成するためにポリイミド系樹脂および溶媒を含んでもよい。
本発明において、「フィルム」は、前記「ポリイミド系樹脂溶液」を基材上に塗布および乾燥して剥離したものであり、延伸または未延伸のものであってもよい。
【0020】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するために多くの研究をした結果、ディスプレイに用いるウィンドウカバーフィルムの物性として、単位面積当たりの面内位相差(Ro)の標準偏差が5nm未満であり、等高線の個数が50個以下であることを同時に満たす範囲で、外観品質が改善された、透明で、且つ、視認性に優れたフィルムを提供できることを見出し、本発明を完成した。前記面内位相差(Ro)の標準偏差および等高線の個数は、後述する実施例に記載された測定方法により測定したものを意味する。
【0021】
前記範囲を満たすことで、視認性に優れ、色が均一ではなくムラのように見える、色不均一に応じた虹ムラがほぼ発生しない、優れた光学物性を有するウィンドウカバーフィルムを提供できることを見出した。
前記標準偏差が5nm超過の範囲では、等高線の個数も50個を超過し、このような範囲では、反射ムラが多く発生して視認性が低下し、虹ムラのように光学ムラが発生する。
【0022】
以下、本発明の物性を全て満たすポリイミド系フィルムおよび本発明の特性を有するフィルムの製造方法について説明する。
<ポリイミド系フィルム>
本発明の一態様において、前記ポリイミド系フィルムは、550nm波長で測定された面内位相差が300nm以下、好ましくは0~300nmであってもよい。前記範囲において、フィルムの法線方向に等高線のような反射ムラが少なく発生し、フレキシブルディスプレイなどのウィンドウカバーフィルムとして用いるのに好適な光学物性を提供することができる。
【0023】
また、前記範囲の位相差を有する場合、偏光サングラスを着用しても、全ての角度でディスプレイを視聴可能なサングラスフリー(Sunglass free)機能を提供することができる。偏光サングラスを着用した状態でディスプレイを見る場合、特定の視野角で画面が遮断される場合があり、これは、ディスプレイに用いられる偏光板と偏光サングラスとの光軸が垂直になって光が遮断されるためである。前記位相差範囲を有する場合、偏光板から出射される光の偏光状態を線形態から楕円形態に変えることで、偏光サングラスを着用しても、全ての角度でディスプレイを視聴可能な機能を提供することができる。
【0024】
面内位相差とは、フィルム上の直交する2軸の屈折率の異方性(ΔNxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚さd(nm)との積(ΔNxy×d)に定義されるパラメータであって、光学的等方性および異方性を示す尺度である。前記面内位相差(Ro)は、波長550nmでの面内位相差値であって、下記数学式1で表される。
【0025】
[数学式1]
Ro=(nx-ny)×d
この際、nxはフィルム面内の1軸(x軸)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内のx軸に直交する1軸方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
【0026】
本発明の一態様において、前記ポリイミド系フィルムは、厚さが10~500μm、20~250μm、または30~110μmであってもよい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、ASTM D882に準じたモジュラスが3GPa以上、4GPa以上、5GPa以上、6GPa以上、または7GPa以上であり、破断伸びが8%以上、12%以上、または15%以上であり、ASTM D1746に準じて388nmで測定された光透過率が80%以下、75%以下、または5~80%、400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、88%以上、または89%以上、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、1.5%以下、または1.0%以下、ASTM E313に準じた黄色度が5.0以下、3.0以下、または0.4~3.0、およびb*値が2.0以下、1.3以下、または0.4~1.3であってもよい。前記範囲において、ウィンドウフィルムとして従来の強化ガラスや従来のポリイミド系フィルムを代替可能な優れた物性を有する。
【0027】
本発明の一態様において、前記ポリイミド系フィルムは、ポリイミド系樹脂であり、特に、ポリアミドイミド(polyamide-imide)構造を有するポリイミド系樹脂である。
好ましくは、フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド(polyamide-imide)系樹脂であってもよい。
【0028】
本発明の一態様において、前記フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド(polyamide-imide)系樹脂は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含んでもよい。
【0029】
より好ましくは、本発明の一態様において、前記フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド(polyamide-imide)系樹脂は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、環脂肪族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含む4員共重合体を用いることが、目的とする物性を発現するのにさらに好適である。
【0030】
本発明の一態様において、前記フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド(polyamide-imide)系樹脂の一例としては、第1フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二酸二塩化物から誘導されたアミン末端ポリアミドオリゴマーを製造し、前記アミン末端ポリアミドオリゴマー、第2フッ素系芳香族ジアミン、芳香族二無水物、および環脂肪族二無水物から誘導された単量体と重合してポリアミドイミド重合体を製造する場合、本発明の目的をさらに達成できるため好適である。
【0031】
前記第1フッ素系芳香族ジアミンと第2フッ素系芳香族ジアミンとしては、互いに同一または異なる種類のものを用いてもよい。より具体的に、前記ポリイミド系樹脂の一態様は、第1フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二酸二塩化物から誘導されたアミン末端ポリアミドオリゴマーからなるブロックと両末端にポリイミド単位を含んでもよく、前記ブロックの含量が質量基準に50%以上であってもよい。
【0032】
本発明の一態様において、芳香族二酸二塩化物により高分子鎖内にアミド構造が形成されるアミン末端オリゴマーをジアミンの単量体として含む場合、光学物性の向上だけでなく、特にモジュラスを含めて機械的強度を改善させることができ、また、動的曲げ(dynamic bending)特性をさらに向上させることができる。
【0033】
本発明の一態様において、上記のようにポリアミドオリゴマーブロックを有する際、アミン末端ポリオリゴマーおよび第2フッ素系芳香族ジアミンを含むジアミン単量体と、前記本発明の芳香族二無水物および環脂肪族二無水物を含む二無水物単量体とのモル比は、1:0.9~1.1モル比で用いることが好ましく、好ましくは1:1モル比で用いてもよい。
【0034】
また、前記ジアミン単量体の全体に対するアミン末端ポリアミドオリゴマーの含量は、特に限定されないが、30モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上含むことが、本発明の機械的物性、黄色度、光学的特性を満たすのにさらに好ましい。
【0035】
また、芳香族二無水物と環脂肪族二無水物の組成比は、特に制限されないが、本発明の透明性、黄色度、機械的物性などの達成を考慮する際、30~80モル%:70~20モル%の割合で用いることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0036】
また、本発明は、フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド(polyamide-imide)系樹脂であって、フッ素系芳香族ジアミン、芳香族二無水物、環脂肪族二無水物、および芳香族二酸二塩化物を混合して重合しイミド化したポリアミドイミド系樹脂であってもよい。
【0037】
このような樹脂はランダム共重合体構造を有するものであり、ジアミン100モルに対し、芳香族二酸二塩化物を40モル以上、好ましくは50~80モルを用いてもよく、芳香族二無水物の含量は10~50モルであってもよく、環状脂肪族二無水物の含量は10~60モルであってもよく、前記ジアミン単量体に対して二酸二塩化物および二無水物の和が1:0.9~1.1モル比となるように重合して製造することができる。好ましくは、1:1となるように重合することができる。
【0038】
本発明のランダムポリアミドイミドは、上記のブロック型ポリアミドイミド樹脂に比べて透明度などの光学的特性、機械的物性、および位相差範囲においてやや差があるが、これも本発明の範疇に属する。
【0039】
本発明の一態様において、フッ素系芳香族ジアミン成分としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジンと他の公知の芳香族ジアミン成分と混合して用いてもよいが、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジンを単独で用いてもよい。このようなフッ素系芳香族ジアミンを用いることで、ポリアミドイミド系フィルムとして、本発明で求める機械的物性に基づいて、優れた光学的特性をさらに向上させることができ、黄色度を改善することができる。また、ポリアミドイミド系フィルムの引張モジュラスを向上させ、ハードコーティングフィルムの機械的な強度をさらに向上させることができ、動的曲げ特性をさらに向上させることができる。
【0040】
芳香族二無水物としては、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(6HDBA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)のうち少なくとも1つまたは2つ以上を用いてもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0041】
環脂肪族二無水物としては、一例として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BTA)、ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物(TMDA)、1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物(TCDA)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を用いてもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0042】
本発明の一態様において、芳香族二酸二塩化物により高分子鎖内にアミド構造が形成される場合、光学物性の向上だけでなく、特にモジュラスを含めて機械的強度を著しく改善させることができ、また、動的曲げ(dynamic bending)特性をさらに向上させることができるため好適である。
【0043】
芳香族二酸二塩化物としては、イソフタロイル二塩化物(isophthaloyl dichloride、IPC)、テレフタロイル二塩化物(terephthaloyl dichloride、TPC)、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニル二塩化物([1,1’-Biphenyl]-4,4’-dicarbonyl dichloride、BPC)、1,4-ナフタレンジカルボン酸二塩化物(1,4-naphthalene dicarboxylic dichloride、NPC)、2,6-ナフタレンジカルボン酸二塩化物(2,6-naphthalene dicarboxylic dichloride、NTC)、1,5-ナフタレンジカルボン酸二塩化物(1,5-naphthalene dicarboxylic dichloride、NEC)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を用いてもよく、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明において、ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、200,000g/mol以上、好ましくは300,000g/mol以上であってもよく、より好ましくは200,000~500,000g/molであってもよい。また、ガラス転移温度は、特に制限されるものではないが、300~400℃、より具体的には330~380℃であってもよい。前記範囲において、モジュラスがさらに高く、機械的な強度にさらに優れ、光学的物性にさらに優れ、カール発生がさらに少ないフィルムを提供することができるため好適であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
<ポリイミド系フィルムの製造方法>
以下では、本発明の特性を有するポリイミド系フィルムの製造方法について例示する。
本発明の一態様において、前記ポリイミド系フィルムは、ポリイミド系樹脂および溶媒を含む「ポリイミド系樹脂溶液」を基材上に塗布した後、乾燥、または乾燥および延伸して製造されてもよい。すなわち、前記基材層は、溶液キャスト方法により製造されてもよい。
【0046】
一例として、フッ素系芳香族ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させてオリゴマーを製造するアミン末端オリゴマーの製造ステップと、製造されたオリゴマーと、フッ素系芳香族ジアミン、芳香族二無水物、および環脂肪族二無水物を反応させてポリアミック酸溶液を製造するステップと、ポリアミック酸溶液をイミド化してポリアミドイミド樹脂を製造するステップと、ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させたポリアミドイミド溶液を塗布して製膜するステップと、を含んで製造されてもよい。
【0047】
以下では、ブロック型ポリアミドイミドフィルムを製造する場合を例に挙げて各ステップについてより詳細に説明する。
オリゴマーを製造するステップは、反応器にて、フッ素系芳香族ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させるステップと、得られたオリゴマーを精製して乾燥するステップと、を含んでもよい。この場合、フッ素系芳香族ジアミンを芳香族二酸二塩化物に対して1.01~2モル比で投入し、アミン末端ポリアミドオリゴマー単量体を製造することができる。前記オリゴマー単量体の分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量を1000~3000g/molの範囲にする場合、さらに優れた物性を得ることができる。
【0048】
また、アミド構造を導入するために、テレフタル酸エステルや、テレフタル酸自体でなくテレフタロイルクロリドやイソフタロイルクロリドなどの芳香族カルボニルハライド単量体を用いることが好ましいが、これは、明らかではないが、塩素元素によるフィルムの物性に影響を与えると考えられる。
【0049】
次に、ポリアミック酸溶液を製造するステップは、製造された前記アミン末端フッ素系置換ポリアミドオリゴマーと、フッ素系芳香族ジアミン、芳香族二無水物、および環脂肪族二無水物を有機溶媒中で反応させる溶液重合反応により行うことができる。この際、重合反応のために用いられる有機溶媒は、一例として、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、アセトン、ジエチルアセテート、m-クレゾールなどから選択される何れか1つまたは2つ以上の極性溶媒であってもよい。
【0050】
次に、イミド化してポリアミドイミド樹脂を製造するステップは、化学的イミド化により行うことができ、好ましくは、ポリアミック酸溶液を、ピリジンと酢酸無水物を用いて化学的イミド化することがより好ましい。次いで、150℃以下、好ましくは100℃以下、具体的には50~150℃の低温でイミド化触媒と脱水剤を用いてイミド化することができる。
このような方法により、高温で熱によってイミド化する反応の場合に比べて、フィルムの全体にわたって均一な機械的な物性を付与することができる。
【0051】
イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)から選択される何れか1つまたは2つ以上を用いてもよい。また、脱水剤としては、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を用いてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0052】
また、ポリアミック酸溶液に、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などの添加剤を混合してポリアミドイミド樹脂を製造してもよい。
また、イミド化を行った後、溶媒を用いて樹脂を精製して固形分を得、それを溶媒に溶解させてポリアミドイミド溶液を得ることができる。溶媒は、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0053】
ポリアミドイミド溶液で製膜するステップは、ポリアミドイミド溶液を基材に塗布した後、乾燥領域に区画された乾燥ステップで乾燥することで行う。また、必要に応じて、乾燥後または乾燥前に延伸を行ってもよく、乾燥または延伸ステップの後に熱処理ステップをさらに設けてもよい。基材としては、例えば、ガラス、ステンレス、またはフィルムなどを用いてもよいが、これに制限されない。塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスト、グラビア、スピンコーティングなどにより行ってもよい。
【0054】
以下では、ポリアミドイミド溶液で製膜して、位相差の標準偏差が5nm未満のポリイミド系フィルムを製造する方法について説明する。
本発明においては、前記物性を得た以上は、その製造手段は特に限定されるものではないが、本発明の前記物性を得る1つの手段を例に挙げると、ポリイミド系樹脂溶液をキャストした後、乾燥温度、乾燥風量などを調節して乾燥速度を調節するとともに、キャストダイにおけるキャスト時に流量を調節してフィルムの厚さを調節することで達成することができる。
【0055】
より具体的に、ポリアミドイミド溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリイミドフィルムなどのキャリアフィルムまたはステンレスベルト(SUS belt)上にキャストした後、乾燥速度を調節してフィルムの物性を調節する。この際、前記乾燥速度は、フィルムの厚さに応じて調節されてもよく、より具体的に、2段階以上の乾燥を行ってもよい。この際、1次乾燥時に乾燥温度および風速を2次乾燥に比べて低く設定して初期に徐々に乾燥されるようにしてもよく、より具体的に、80~150℃で、1~5m/sの風速で乾燥してもよい。また、2次乾燥温度および風速は、前記1次乾燥より高い温度範囲および風速で行ってもよく、具体的に例を挙げると、200~300℃で3~20m/sの風速で行ってもよい。前記温度および風速は、フィルムの厚さに応じて調節されてもよく、前記範囲に制限されるものではない。
【0056】
<ウィンドウカバーフィルム>
本発明のまた他の態様は、上述したポリイミド系フィルムと、前記ポリイミド系フィルム上に形成されたコーティング層と、を含む、ウィンドウカバーフィルムを提供する。
【0057】
前記コーティング層は、ウィンドウカバーフィルムの機能性を付与するための層であり、目的に応じて多様に適用されてもよい。具体例として、前記コーティング層は、ハードコーティング層、帯電防止層、復元層、衝撃拡散層、セルフクリーニング層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層などから選択される何れか1つ以上の層を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
前記コーティング層は、通常当業界で用いられるものであれば特に制限されずに用いられてもよい。
【0058】
<ディスプレイ装置>
本発明のまた他の態様は、ディスプレイパネルと、ディスプレイパネル上に形成された上述のウィンドウカバーフィルムと、を含む、ディスプレイ装置を提供する。
【0059】
本発明の一態様において、前記ディスプレイ装置は、優れた光学特性を求める分野であれば特に制限されず、それに合ったディスプレイパネルを選択して提供することができる。好ましくは、前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置に適用してもよく、具体例として、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置など各種画像表示装置などから選択される何れか1つ以上の画像表示装置に含ませて適用してもよいが、これに制限されるものではない。
【0060】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0061】
1)モジュラス/破断伸び
ASTM D882に準じて、厚さ50μm、長さ50mm、および幅10mmのポリアミドイミドフィルムを25℃で50mm/minで引っ張る条件でInstron社製のUTM 3365を用いて測定した。モジュラスの単位はGPaであり、破断伸びの単位は%である。
【0062】
2)光透過率
ASTM D1003の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムに対して、分光光度計(日本電色工業社製、COH-400)を用いて400~700nmの波長領域全体で測定された全光線透過率を測定した。また、ASTM D1746に準じて、UV/Vis(島津製作所社製、UV3600)を用いて388nmで測定された単一波長光透過率を測定した。単位は%である。
【0063】
3)ヘイズ(haze)
ASTM D1003の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムを基準に分光光度計(日本電色工業社製、COH-400)を用いて測定した。単位は%である。
【0064】
4)黄色度(YI)およびb*値
ASTM E313の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムを基準に色度計(Colorimeter)(HunterLab社製、ColorQuest XE)を用いて測定した。
【0065】
5)重量平均分子量(Mw)および多分散指数(PDI)
製造されたフィルムの重量平均分子量および多分散指数は次のように測定した。
先ず、フィルム試料を、0.05MのLiBrを含有するDMAc溶離液に溶解して試料として用いた。
【0066】
測定にはGPC(Waters GPC system、 Waters 1515 isocratic HPLC Pump、 Waters 2414 Refractive Index detector)を用い、GPC ColumnとしてはOlexis、Polypore、およびmixed-Dカラムを連結し、溶剤としてはDMAc溶液を用い、標準物としてはポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用い、35℃、1mL/minのflow rateで分析した。
【0067】
6)鉛筆硬度
実施例および比較例で製造されたフィルムに対し、JISK5400に準じて、750gの荷重を用いて50mm/secの速度で20mmの線を引き、それを5回以上繰り返してスクラッチが1回以下発生した場合を基準に鉛筆硬度を測定した。
【0068】
7)残留溶媒の含量の測定
残留溶媒の含量は、TGA(TA社製Discovery)を用いて150℃での重さから370℃での重さを引いた値をフィルム内残留溶媒と判断した。この際、測定条件は、昇温速度10℃/minで400℃まで昇温して150~370℃区間での重さ変化を測定した。
【0069】
8)位相差の標準偏差
位相差特性は、Axoscan(OPMF、 Axometrics Inc.)を用いて測定した。適当なサイズの試料をステージに載置し、550nm波長に対して面内位相差(Ro)を測定する。1mmのビームサイズの光源を用い、100×100mm2面積に対して自動化されたXYステージを用いて、横、縦1mmの間隔でサンプルを移動させ、全面に対する位相差を測定した。測定された位相差値に対して下記数式を用いて標準偏差を算出する。
【0070】
【0071】
9)ムラ現象の観察(視認性)
I-Phone X(apple社製)を用いて、白色光をつけ、製造したポリイミドフィルムを上部に積層した状態で視野角別のムラを観察した。ムラの観察は、5人を選定して、同一の暗室で観察するようにし、5人が良好判定時には良好(○)、4人未満が良好判定時には多少不良(△)、および3人未満が良好判定時には不良(×)と評価した。
【0072】
10)虹の観察
フィルムの一面を黒く処理した後、暗室で、3波長ランプ下で肉眼で虹が発生するか否かを観察した。
良好:虹が見えず、均一な色感を示す。
不良:虹が強く見え、強い色感を示す。
【0073】
11)等高線の個数
等高線の個数は、フィルムの100×100mm面積をAxoscan(OPMF、Axometrics Inc.)で測定した位相差のマッピング結果を用いて測定する。前記位相差のマッピング結果は、前記8)で位相差特性と同様に測定した。
【0074】
図7に示されたように、位相差のマッピング結果に、横および縦にそれぞれ10mmの間隔で9個ずつ線(grid)を引いて、総18個の線を引く。総18個の線に対し、それぞれ等高線と線(grid)が交わる点の個数を等高線の個数とする。18個の線のうち等高線の個数が最も多い線の値から下記のように判断する。
良好:等高線の個数が50個以下であり、明るい部分と暗い部分の明るさ差が少なく発生
不良:等高線の個数が50個超過であり、明るい部分と暗い部分の明るさ差が大きく発生
【0075】
[実施例1]
反応器にて、ジクロロメタンおよびピリジンの混合溶液に、テレフタロイル二塩化物(TPC)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れ、窒素雰囲気下、25℃で2時間撹拌させた。この際、前記TPC:TFMBのモル比を300:400とし、固形分の含量が15重量%になるように調節した。その後、前記反応物を過量のメタノールに沈殿させた後、濾過して得られた固形分を50℃で4時間以上真空乾燥してオリゴマーを得た。製造されたオリゴマーのFW(Formula Weight)は1720g/molであった。
【0076】
反応器に、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマー100モルと2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)28.6モルを投入して十分に撹拌させた。固体原料が完全に溶解されたことを確認した後、ヒュームドシリカ(表面積95m2/g、<1μm)を前記固形分に対して1000ppmの含量でDMAcに添加し、超音波を用いて分散させて投入した。シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)64.3モルと4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)64.3モルを順に投入し、十分に撹拌させた後、40℃で10時間重合した。この際、固形分の含量は15重量%であった。次いで、溶液に、ピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍のモルで順に投入し、60℃で12時間攪拌した。
【0077】
重合が終わった後、重合溶液を過量のメタノールに沈殿させてから濾過し、得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドパウダーを得た。前記パウダーをDMAcに20重量%で希釈溶解してポリイミド系樹脂溶液を製造した。
【0078】
製造されたポリイミド系樹脂溶液を、幅300mmのステンレススチールプレートの上部に、スロットダイ(Slot die)でコーティングし、90℃の温度に加熱されたエアが循環する乾燥オーブンで90分間滞留させて1次乾燥する。1次乾燥時、乾燥オーブン内に対流する空気の風速は2m/sである。フィルム内に残留した溶媒を完全に除去するために、280℃に加熱された乾燥オーブン内で30分間滞留させて2次乾燥を完了した。2次乾燥時、フィルムの劣化を防止するためにN2 purgeを同時に行い、風速は4m/sであった。乾燥が完了したフィルムは常温に冷却した後、ステンレススチールプレートから剥ぎ取ってフィルムを製造した。
【0079】
製造されたフィルムの残留溶媒の含量が1.1重量%であった。製造されたポリアミドイミドフィルムは、厚さが50μm、388nmでの光透過率が72%であり、全光線透過率が90%、ヘイズが0.3%、黄色度(YI)が1.5、b*値が1.0、モジュラスが7GPa、破断伸びが22%、重量平均分子量が312,000g/mol、多分散指数(PDI)が2.2、および鉛筆硬度がH/750gであった。
【0080】
また、反射ムラを評価した結果、等高線の個数が27個であり、虹が観察されず視認性に優れることを確認した。
また、位相差のマッピング結果を
図1に示し、位相差分布を
図2に示した。
【0081】
[実施例2~3]
下記表1のように、フィルムの厚さおよび乾燥条件を調節したことを除いては、前記実施例1と同様にフィルムを製造した。
【0082】
実施例2~3の反射ムラを評価した結果、等高線の個数がそれぞれ35個、37個であり、虹が観察されず視認性に優れることを確認した。
また、実施例2の位相差のマッピング結果を
図3に示し、位相差分布を
図4に示した。
【0083】
[比較例1~3]
下記表1のように、乾燥条件を調節したことを除いては、前記実施例1と同様にフィルムを製造した。
【0084】
比較例1の反射ムラを評価した結果、等高線の個数が実施例1および2に比べて多くて、非常に稠密に形成され、等高線の個数が50個以上であり、等高線が明らかで強く見えることを確認した。
また、位相差のマッピング結果を
図5に示し、位相差分布を
図6に示した。
【0085】
実施例1および2と比較する際、等高線の個数が多く稠密に形成された比較例1では、視認性が低下し、虹が発生することが分かった。また、位相差のマッピング結果が反射ムラの観察結果とよくマッチング(matching)することから、位相差の標準偏差が反射ムラ性能に影響を与えると判断される。
【0086】
【0087】
以上、特定の事項と限定された実施例および図面により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0088】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。