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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027666
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】水血圧計の自動零点調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 7/00 20060101AFI20220204BHJP
   G01L 7/18 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
G01L7/00 C
G01L7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131276
(22)【出願日】2020-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】717001330
【氏名又は名称】情野 國城
(72)【発明者】
【氏名】情野國城
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA05
2F055BB19
2F055CC23
2F055FF13
2F055GG49
2F055HH19
(57)【要約】
【課題】水血圧計の血圧の測定において自動零点調整ができる手段を提供する。
【解決手段】水を貯えた魔法ビン1の水中3に水圧力計モジュール10の容器を設置し、透明パイプ14の他端の測定端子16とカフ32とを接続し、カフを上腕に巻き付け、送気球31によってカフを加圧し、水柱15の高さが降下し、水柱の変化がカフ内圧力を指示することを特徴とする水血圧計において、また、水U字管マノメーターの水面差から求めた圧力と水血圧計の水柱の高さの変化との関係を表す特性曲線を作成する水血圧計において、測定開始時の水柱の高さ22を特性曲線に入力して大気圧を出力させ、カフを加圧することによって変化した水柱の高さ24を特性曲線に入力して大気圧とカフ内圧力の増分との和を出力させ、後者の出力値から前者の出力値を差し引いてカフ内圧力の増分を計測する自動零点調整手段を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの熱伝達を遮断した容器を比熱容量が大きい液体あるいは水で満たし、その水中に水圧力計モジュールの容器を設置し、透明パイプの他端とカフとを接続し、カフを上腕に巻き付け、送気球によってカフを加圧し、水柱の高さが降下し、水柱の変化がカフ内圧力を指示することを特徴とする水血圧計において、また、水U字管マノメーターと水圧力計モジュールとを接続し、送気球によってカフを加圧し、“水U字管マノメーターの水面差”に対する“水血圧計の水柱の高さの変化”を測定し、水U字管マノメーターの水面差から求めた圧力(カフ内圧力)と水血圧計の水柱の高さの変化との関係を表す特性曲線を作成する水血圧計において、測定開始時の水柱の高さを特性曲線に入力して大気圧を出力させ、カフを加圧することによって変化した水柱の高さを特性曲線に入力して大気圧とカフ内圧力の増分との和を出力させ、後者の出力値から前者の出力値を差し引いてカフ内圧力の増分を計測する自動零点調整手段を特徴とする水血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀の代わりに水を使用して血圧を測定する水血圧計の自動零点調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血圧計としては、水銀気圧計があった。血圧を感知するカフ(上腕に巻き付けるベルト)と血圧の値を表示する表示部とからなる。表示部は古くから水銀柱の高さがもちいられ、現在も血圧に関してはmmHgで表されている。血圧計の測定範囲は0~300mmHgである。
【0003】
水銀の代わりに水を使用すると、水の比重は1、水銀の比重は13.6なので、水柱は4mにもなる(非特許文献2)。水銀柱300 mmHgに相当する水柱の高さは、
300(mmHg)× 13.6(mmAq水柱/mmHg)=4.08 mとなる。
【0004】
水を使用して気圧を測る気圧計としては、ゲーテの水気圧計があった(非特許文献3)。ガラス球体内に水が貯められており、水を使用するのでwater-based barometerとよばれている。ガラス球体の上部に空気溜りがあり、下部に水溜りがある。水溜りの底からガラスパイプが突出し、“気圧”と“空気溜り内の空気圧”とが釣り合ったところで水柱の高さが定まる。
【0005】
気圧が上昇すると、水柱が押し下げられ(水柱が降下する)、降下した水柱の体積と等しい体積の水が、ガラスパイプから水溜りに押し込まれる。それによって水溜りの体積が増えた分だけ、空気溜りの空気は圧縮され、空気溜りの空気圧は上昇する。“上昇した空気溜りの空気圧”と“上昇した気圧”とが釣り合ったところで、降下した水柱の高さが定まる。反対に、気圧が低下すると、“低下した空気溜りの空気圧”と“低下した気圧”とが釣り合ったところで、上昇した水柱の高さが定まる。水気圧計では、気圧が高くなると水柱は降下し、気圧が低下すると水柱は上昇する。
【0006】
空気溜りと外気とを隔てているのは、厚さ数mmのガラス壁である。そのため、設置された場所の気温が変化すると、ガラス壁を通して熱が伝達され、空気溜りの温度も変化する。気温が上がった場合は、空気溜りの温度が上昇し、空気溜りの空気が膨張し、水溜りの水が透明パイプに押し出され、水柱は上昇する。あたかも気圧が低下したように変化する。反対に、気温が下がると、水柱は降下する。あたかも気圧が上がったように変化する。このように、気温の変化によって気圧の測定に誤差が生ずるという欠点が指摘されていた。そこで、空気溜りの温度が外気の気温の変化に影響されないように,水を貯えた魔法ビンに水気圧計を浸けて使用する方法が考案された(特許文献1)。
【0007】
水銀の代わりに水を使用しても水柱の高さが水銀柱と同程度である水血圧計が提案された(特許文献2)。まず、外部からの熱伝達を遮断した容器を比熱容量が大きい液体、例えば、水で満たす。次に、容器と、容器の上部に閉じ込めた空気溜りと、容器の下部に貯えた水溜りと、片端が水溜りに没し他端が大気に通じる容器から突出した透明パイプと、透明パイプ中の水柱とを構成要素とする水圧力計モジュールを水中に設置する。以上によって、水圧力計にとって安定した測定環境が確保される。そして、水圧力計モジュールの透明パイプの他端とカフとを接続し、カフを上腕に巻き付けて送気球によってカフを加圧すると、水柱が降下し、その変化量がカフ内圧力の増分を指示する。
【0008】
また、水U字管マノメーターと上記の水圧力計モジュールとを接続し、送気球によってカフを加圧し、“水U字管マノメーターの水面差”に対する“水血圧計の水柱の高さの変化”を測定し、水U字管マノメーターの水面差から求めた圧力(カフ内圧力)と水血圧計の水柱の高さの変化との関係を表す特性曲線を作成する。この特性曲線に水血圧計の水柱の高さの変化を入力すると、カフ内圧力の増分が出力される(特許文献2)。
【0009】
医療現場で使われている水銀気圧計は、2021年以降は原則として製造・輸出入が禁止となる(非特許文献1)。
【0010】
水を使用する血圧計としては、森式水血圧計があった(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2018-179538
【特許文献2】特願2020-26344
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】日本高血圧学会 血圧計の試験結果に関する集計、日本高血圧学会学術委員会 血圧計に関するワーキンググループ、2019
【非特許文献2】鈴木高廣、森式水気圧計の製作と血圧測定、理科資料61号
【非特許文献3】Wikipedia、Barometer、2・1Water-based barometers
【非特許文献4】独立行政法人 産業技術総合研究所 軽量標準総合センター 型式承認申請ガイド アネロイド型血圧計
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
血圧計は、自動零点調整機能を持つことが要求されている。自動零点調整機能とは「大気圧においてカフ内圧力の表示を0 kPa(0mmHg)にする動作」と定義されている(非特許文献4)。
【0014】
圧力には、絶対真空(絶対ゼロ圧力)を基準(ゼロ)とする絶対圧と、大気圧を基準(ゼロ)とするゲージ圧(相対圧)とがある。血圧値はゲージ圧で表示されているので、血圧計は、大気圧を基準(ゼロ)とした空気圧の増分を計測する方法が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決手段は、外部からの熱伝達を遮断した容器を比熱容量が大きい液体あるいは水で満たし、その水中に水圧力計モジュールの容器を設置し、透明パイプの他端とカフとを接続し、カフを上腕に巻き付け、送気球によってカフを加圧し、水柱の高さが降下し、水柱の変化がカフ内圧力を指示することを特徴とする水血圧計において、また、水U字管マノメーターと水圧力計モジュールとを接続し、送気球によって水圧力計を加圧し、“水U字管マノメーターの水面差”に対する“水血圧計の水柱の高さの変化”を測定し、水U字管マノメーターの水面差から求めた圧力(カフ内圧力)と水血圧計の水柱の高さの変化との関係を表す特性曲線を作成する水血圧計において、測定開始時の水柱の高さを特性曲線に入力して大気圧を出力させ、カフを加圧することによって変化した水柱の高さを特性曲線に入力して大気圧とカフ内圧力の増分との和を出力させ、後者の出力値から前者の出力値を差し引いてカフ内圧力の増分を計測する自動零点調整方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明は、測定開始時の水柱の高さを特性曲線に入力して大気圧を出力させ、カフを加圧することによって変化した水柱の高さを特性曲線に入力して大気圧とカフ内圧力の増分との和を出力させ、後者の出力値から前者の出力値を差し引いてカフ内圧力の増分を計測する自動零点調整方法を提供する。本発明の効果は、水を使用するので安全であり、水柱の高さが水銀血圧計の水銀柱の高さと同程度であり、測定精度は原理的に水銀血圧計と同程度であり、測定精度の校正が簡単であり、圧力測定部の主要部品が安価であることに加えて、水気圧計が本来有しているゲージ圧の測定機能を水血圧計の自動零点調整機能に活用し、自動零点調整が簡単であり、自動零点調整した計測値の精度が良いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態を示す水血圧計の断面図である。
図2】水U字管ナノメーターを用いて第1の実施形態の特性曲線を作成する第2の実施形態を示す実験系である。
図3】第2の実施形態によって得た測定データによる未知係数の決定である。
図4】第1の実施形態の特性曲線である。
図5】第1の実施形態の測定結果である。
図6】本発明の自動零点調整機能の説明図である。
図7】本発明の自動零点調整後の特性曲線である。
図8】本発明の第3の実施形態を示す水血圧計の断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態の測定結果である。
図10】本発明の第3の実施形態の他の測定結果である。
図11】本発明の水血圧計と市販のアネロイド血圧計との比較である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示したのは、水圧力計1とカフ32と送気球31とから構成されている水血圧計である。
【0019】
10は水圧力計モジュールであり、11は容器、12は空気溜り、13は水溜り、14は透明パイプである。魔法ビン2を水3で満たし、水圧力計モジュール10を水中に設置する。温度計4によって水温を測定する。
1.魔法ビン2は、外部からの熱伝達を遮断する。
2.水は比熱容量が大きいので(4.2 J/(K・L))、外部からの熱伝達に対して、魔法ビン2内の温度変化は小さい。
3.空気の比熱容量は小さいので(0.308 J/(K・L))、空気溜り12の空気の温度は、魔法ビン2内の水温に等しくなる。
以上1、2、3の理由によって、空気溜り12の温度変化は小さく抑えられる。安定した測定環境の確保によって、水気圧計の測定精度が維持される。水3で満たした魔法ビン2の使用は、本考案に必須の要件である。
【0020】
21は水面であり、透明パイプ14の一端は水溜り13に没している。“カフ内圧力”と“空気溜りの圧力”とが釣り合ったところで、22で示した水柱の高さh0が定まる。17は直定規である。
【0021】
測定端子16とカフとを接続し、カフを上腕に巻き付け、送気球によってカフを加圧すると、水柱は初期の水柱の高さh0から24で示した水柱の高さhに降下する。23で示した水柱の変化Δhがカフ内圧力の増分を指示する。
【0022】
ボイル・シャルルの法則は次式によって表される。
【数1】
【0023】
ここで、Pは気体の圧力(Pa)、Vは気体の体積(m3)、Tは気体の温度(K)、Rは気体定数(8.31[J/mol・K])、nは気体の物質量(モル数)である。
【0024】
図1において、水面の位置における水柱の圧力は、次式で表される。
【数2】
【0025】
ここで、Ph は水面の位置における圧力(Pa)、9.8 (m/s2) は重力加速度、dは液体の比重(Kg/m3)、hは水柱の高さ(m)である。水の比重 1000 Kg/m3を(2)式に代入すると次式になる。
【数3】
【0026】
水面の位置における透明パイプ内の圧力は、測定端子16に加わる空気圧Pと水柱による圧力9800hとの和である。
【数4】
【0027】
水面の位置における透明パイプ内の圧力と空気溜りの空気圧とは釣り合っているから、数式1は次式になる。
【数5】
【0028】
ここで、Vは空気溜りの空気の体積(m3)、Pは空気圧(Pa)、Tは空気溜りの温度(K)、hは水柱の高さ(m)である。
【0029】
空気圧がP0からPに変化し、空気溜りの温度がT0からTに変化し、水柱の高さがh0からhに変化することによって、空気溜りの体積がV0からV に変化したとすると、VとV0との差に等しい体積の水が、透明パイプから水溜りへあるいはその逆に移動する。したがって、水柱の変化Δh (= h - h0)は、空気溜りの体積の変化を透明パイプの断面積をSで割った値に等しい。
【数6】
【数7】
【0030】
ここで、V0は空気溜りの初期の体積(m3)、P0 は初期の空気圧(Pa)、T0は空気溜りの初期の温度(K)、h0は水柱の初期の高さ(m)である。Vは空気溜りの体積(m3)、Pは空気圧(Pa)、Tは空気溜りの温度(K)、hは水柱の高さ(m)である。
【0031】
数式6によると、実験データを“Δh”と“T/( P + 9800 h) - T0/( P0 + 9800 h0)”との関係でプロットすると直線関係が得られ、その勾配からα値を決定することができる。
【0032】
数式6を書き直すと、
【数8】
【数9】
【0033】
(8)式を変形すると次式となる。
【数10】
【0034】
数式10に水柱の高さh (= h0+Δh)を入力すると空気圧Pが出力される関係を特性曲線とよぶ。
【0035】
上式においては、h(=h0+Δh)の測定によってPが決まる。
【0036】
以下に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2に示すように、第1の実施形態に水U字管マノメーター40を追加する。もちろん、水に限らずマノメーター専用液も使用できる。
【0037】
透明パイプ14の内直径は5mmΦ、容器はガス透過性の低いPETボトル、空気溜り12の体積は約35 ccであった。30cm長の透明パイプで250mmHgまで測定可能となるように設定した。温度計4は、電子温度計(シンワ測定 ホームサーモ デジタルT クッキング用 グリーン72979)を使用した。水U字管マノメーター40の高さは1.2 mであった。
【0038】
図2に、水U字管マノメーター40を用いて特性曲線を作成する実験系を示す。送気球によって水圧力計を加圧すると、水柱は、水面差43を生じる。水面差と圧力差との関係には (3)式を適用できる。これをあらためて数式11に示す。
【数11】
【0039】
ただし、lは水面差 (m)、ΔPは圧力差 (Pa)である。
【0040】
表1に、水面差と数式11によって計算した圧力差とを、第1列と第2列とに示した。水圧力計の水柱の高さも同時に測定し第3列に示した。第4列に、実験開始時における気圧P0と第2列の圧力差との和を示した。気圧P0は、気圧計のアプリによって測定し、1001.0 hPaであった。水温T0は17.0 ℃であった。
【表1】
【0041】
図3に、表1の測定結果を数式6に従って“Δh”と“T/( P + 9800 h) - T0/( P0 + 9800 h0)”との関係でプロットし、直線の勾配から数式12のα値を決定した。ただし、実験は短時間なので、実験中の空気溜りの温度変化は無視した。
【数12】
【0042】
図4に、表1に示した水柱の高さと空気圧との関係をプロットした。次に、α = 423.6として数式10によって計算した特性曲線を実線で示した。両者は良く一致した。
【0043】
図1に示した実験装置によって、水柱の高さと空気圧との関係を測定した。送気球によって水圧力計を加圧し、水柱の高さを測定し、測定値を 数式10に入力して空気圧を計算した。空気溜りの温度14.7 ℃であった。測定結果を表2に示した。
【表2】
【0044】
図5に、図4に示した特性曲線を転載した(実線)。この特性曲線の空気溜りの温度は、17.0 ℃であった。次に、図3で決定したα値と空気溜りの温度14.7℃を(10)式に入力して計算した特性曲線を破線で示した。また、表2の測定結果を×プロット点でプロットした。2本の特性曲線の差は、空気溜りの温度が異なるからである。
【0045】
血圧計は、自動零点調整機能を持つことが要求されている。自動零点調整機能とは「大気圧においてカフ内圧力の表示を0 kPa(0mmHg)にする動作」と定義されている。圧力には、絶対真空(絶対ゼロ圧力)を基準(ゼロ)とする絶対圧と、大気圧を基準(ゼロ)とするゲージ圧(相対圧)とがある。血圧値はゲージ圧で表示される。つまり、血圧計は、大気圧を基準(ゼロ)としてカフ内圧力の増分を計測する。
【0046】
大気圧は、図1に示した水圧力計や被験者の上腕(実験では円筒)に対して、また、カフ内において、均一に加わっている。送気球によってカフに空気を送り込むと、カフ内圧力は、大気圧と“カフ内圧力の増分”との和となり、水圧力計モジュールの測定端子にもこれと同じ空気圧が加わる。
【0047】
図6に、図5の特性曲線を転載する。横軸の空気圧は、大気圧とカフ内圧力の増分との和である。縦軸は、水圧力計の水柱の高さである。測定開始時のhsは、カフ内圧力の増分がゼロの時、つまり、カフ内圧力が大気圧である時の水柱の高さである。
【0048】
図6によって、零点調整の方法について述べる。1.測定開始時の水柱の高さhsを読み取り、特性曲線に入力して大気圧Psを求める。2.送気球によってカフに空気を送り込む。水圧力計の測定端子に、大気圧とカフ内圧力の増分との和の空気圧が加わる。3.水柱の高さhmを読み取り、特性曲線に入力して絶対圧Pmを求める。4.PmからPsを差し引くことによって、大気圧を基準(ゼロ)とするカフ内圧力の増分が求まる。
【0049】
図7に、零点調整後の測定結果を、水血圧計の水柱の高さとカフ内圧力の増分(単位はmmHg)との関係で表示した。
【0050】
測定開始時の気圧を別途に測定する必要は無く、測定開始時の水柱の高さが自動零点調整機能を担っている。
【実施例0051】
図8に、本発明の第1の実施形態に市販のアネロイド血圧計(ケンツメディコ アネロイド血圧計No.500紺YAMASU)34を連結した第3の実施形態を示す。
【0052】
本発明の自動零点調整の効果を検証するために多数の実験を繰り返したが、表3と表4とに、その中の代表的な実験結果を示した。表には、測定年月日と時刻、測定時の気圧と空気溜りの温度Tm、α値、測定時の水柱の高さ、水血圧計の計測値を示した。また、参考値として、アネロイド血圧計の指示値を示した。
【表3】
【表4】
【0053】
5月4日は、水柱の高さがhs=28.9 cmであった。
【0054】
5月13日は、水柱に水を供給し、水柱の高さがhs=38.3 cmであった。α値をあらたに測定した。
【0055】
5月15日は、測定時の気圧が比較的高く、1007.1 hPaであった。この日の測定結果を図9に示した。α値は前回の測定と同じ値をもちいた。α値は一旦決定すると毎回測定する必要はない。
【0056】
5月19日は、測定時の気圧が比較的低く、983.5 hPaであった。この日の測定結果を図10に示した。
【0057】
図11に、表3・表4の5月4日から5月19日までの全ての測定データを水血圧計の指示値とアネロイド血圧計の指示値との関係でプロットした。は、図11に示したように 、近似式はy=0.9865x (差異は1.35%)となった。200 mmHgで1.35% の差は2.7 mmHgとなった。一方、Excelの関数STEYXによって計算した水血圧計の指示値の標準偏差は、1.2 mmHgであった。これは、市販の血圧計の通常の誤差±3 mmHgよりも小さかった。
【符号の説明】
【0058】
1 水圧力計
2 魔法ビン
3 水
4 温度計
10 水圧力計モジュール
11 容器
12 空気溜り
13 水溜り
14 透明パイプ
15 水柱
16 測定端子
17 直定規
21 水面
22 h0 初期の水柱の高さ
23 Δh 水柱の変化
24 h 水柱の高さ
31 送気球
32 カフ
33 円筒
34 アネロイド圧力計
40 水U字管マノメーター
41 透明パイプ
42 水
43 水面差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11