(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027764
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】生体電極
(51)【国際特許分類】
A61B 5/26 20210101AFI20220203BHJP
A61B 5/28 20210101ALI20220203BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20220203BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61B5/26 200
A61B5/28
B62D1/06
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184891
(22)【出願日】2021-11-12
(62)【分割の表示】P 2021549547の分割
【原出願日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2020130515
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】石久保 雅道
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 洋
【テーマコード(参考)】
3B084
3D030
4C127
【Fターム(参考)】
3B084JA08
3D030DA26
3D030DA34
3D030DA64
3D030DB13
3D030DB83
4C127AA02
4C127LL15
(57)【要約】
【課題】生体電極の耐久性を向上させる。
【解決手段】接触した生体の生体情報を検出可能な生体電極において、基材110と、基材の表面側に積層されており、絶縁性バインダー121bに鱗片状の導電性粒子121aが分散して構成され、伸長性を有する第1導電層121と、第1導電層の表面側に積層されており、導電性を有し、かつ、第1導電層よりも硬質な第2導電層122と、を備え、第2導電層は、生体と接触可能な基材の表面側に露出して設けられている。第2導電層が第1導電層よりも導電性粒子の充填量が少なく、第2導電層が第1導電層よりも大きい外形を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触した生体の生体情報を検出可能な生体電極において、
基材と、
前記基材の表面側に積層される第1導電層と、
前記第1導電層の表面側に積層されており、導電性を有する第2導電層と、を備え、
前記第2導電層の導電性材料が導電性高分子であり、前記第2導電層は前記生体と接触可能な前記基材の表面側に露出して設けられている
生体電極。
【請求項2】
ステアリングホイール用表皮材に請求項1に記載の生体電極を1又は複数有する
生体電極付きステアリングホイール用表皮材。
【請求項3】
車両用内装部品に請求項1に記載の生体電極を1又は複数有する
生体電極付き車両用内装部品。
【請求項4】
車両を操縦する運転者の生体情報として心電位を電気信号として検出する心電位計測システムにおいて、
請求項1に記載の複数の生体電極を有し、
前記複数の生体電極は、
前記運転者が操作する前記車両の操舵装置に設ける第1の生体電極と、
前記操舵装置又は前記車両の車室に設ける車両用内装部品に設ける第2の生体電極と、を含む
心電位計測システム。
【請求項5】
前記車両用内装部品は、ドアインナーパネル、センターコンソール側アームレスト部又はシフトレバーの少なくとも何れかである
請求項4に記載の心電位計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の運転中における運転者の健康状態等を知るために、運転者の心拍数や心電等の生体情報を電気信号として検出する生体電極等の技術開発が進められている。このような生体情報を電気信号として検出する関連技術として、例えば、特許文献1では、基材層の表面に導電性材料を含む弾性体層を備える表皮材によって表面を覆ったステアリングホイールが開示されている。一方、特許文献2では、導電層の表面を覆う表皮層の一部を貫通して、導電層と導通する貫通導電部が設けされている生体情報検出式ハンドルが開示されている。さらに、特許文献3では、操縦ハンドルに運転者の生体情報を検出する電極等の生体情報検出部が設けられている生体情報検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-202446号公報
【特許文献2】特開2012-157603号公報
【特許文献3】WO2004/089209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、運転者が把持するステアリングホイール等の把持部は、運転者が直接に手で把持する部位であるため、把持部の表面側に取り付けた生体電極が摩耗し易い。このため生体電極が摩耗に伴って経年劣化することを抑制する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、生体電極の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、接触した生体の生体情報を検出可能な生体電極において、基材と、前記基材の表面側に積層されており、絶縁性バインダーに鱗片状の導電性粒子が分散して構成され、伸長性を有する第1導電層と、前記第1導電層の表面側に積層されており、導電性を有し、かつ、前記第1導電層よりも硬質な第2導電層と、を備え、前記生体と接触可能な前記第2導電層は、基材の表面側に露出して設けられている。
【0007】
本発明の一態様によれば、第2導電層が基材に積層した伸長性を有する第1導電層の鱗片状の導電性粒子の脱落を抑制するので、生体電極の耐久性を向上させられるようになる。
【0008】
本発明の一態様では、前記第2導電層が塊状の導電性粒子を含み、前記第1導電層よりも導電性粒子の充填量が少ないこととしてもよい。このようにすれば、第1導電層の鱗片状の導電性粒子の脱落を抑制しながら、高い導電性を確保できるようになる。
【0009】
本発明の一態様では、前記第2導電層が導電性高分子からなることとしてもよい。このようにすれば、第1導電層の鱗片状の導電性粒子の脱落を抑制しながら、高い導電性を確保できるようになる。
【0010】
本発明の一態様では、前記第2導電層が前記第1導電層よりも大きい外形を有することとしてもよい。このようにすれば、第1導電層の表面が第2導電層によって確実に覆われるので、第1導電層の鱗片状の導電性粒子の脱落による摩耗を抑制し易くなる。
【0011】
本発明の一態様では、前記第2導電層が前記第1導電層の表面を被覆するように設けられていることとしてもよい。このようにすれば、第1導電層の鱗片状の導電性粒子の脱落による摩耗を抑制できるようになる。
【0012】
本発明の一態様では、前記第2導電層は、前記基材と同一の色調を有することとしてもよい。このようにすれば、基材の外観デザインを良好にすることができる。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1導電層の厚さが少なくとも100μm以下であり、前記第2導電層の厚さが少なくとも70μm以下であることとしてもよい。このようにすれば、生体電極の導電性を維持しながら、耐久性を高められるようになる。
【0014】
本発明の一態様では、前記基材と前記第1導電層との間に絶縁性の下地層を更に備えることとしてもよい。このようにすれば、基材が起伏を有していても、第1導電層を塗布し易くなる。
【0015】
本発明の他の態様は、ステアリングホイール用表皮材に前述した何れかの生体電極を1又は複数有する生体電極付きステアリングホイール用表皮材であり、車両用内装部品に前述した何れかの生体電極を1又は複数有する生体電極付き車両用内装部品である。
【0016】
本発明の他の態様によれば、ステアリングホイール用表皮材や車両用内装部品に、前述した何れかの生体電極を適用することによって、生体電極の耐久性が向上した生体電極付きステアリングホイール用表皮材や生体電極付き車両用内装部品とすることができる。
【0017】
本発明の他の態様は、車両の運転者の生体情報として心電位を電気信号として検出する心電位計測システムにおいて、前述した何れかの複数の生体電極を有し、前記複数の生体電極は、前記運転者が操作する前記車両の操舵装置に設ける第1の生体電極と、前記操舵装置又は前記車両の車室に設ける車両用内装部品に設ける第2の生体電極と、を含む。
【0018】
本発明の他の態様によれば、生体電極の耐久性を向上させるので、車両の運転者の生体情報である心電位の変化を電気信号として精度よく検出できるようになる。
【0019】
本発明の他の態様では、前記車両用内装部品は、ドアインナーパネル、センターコンソール側アームレスト部又はシフトレバーの少なくとも何れかであることとしてもよい。このようにすれば、運転者の手で接触する部位から生体情報として心電位の変化を電気信号として精度よく検出できるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生体電極の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)は、本発明の一実施形態に係る生体電極の概略構成を示す断面図であり、(B)は、
図1(A)のA部の拡大図である。
【
図2】(A)~(D)は、本発明の一実施形態に係る生体電極の製造方法を示す説明図である。
【
図3】(A)~(F)は、本発明の他の実施形態に係る生体電極の製造方法を示す説明図である。
【
図4】(A)~(D)は、本発明の更に他の実施形態に係る生体電極の製造方法を示す説明図である。
【
図5】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る生体電極の動作説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る生体電極を適用した心電位計測システムの一例を示す説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る生体電極を適用した心電位計測システムの他の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して明細書での重複説明を省略する。さらに、各実施形態で共通する使用方法及び作用効果についても重複説明を省略する。ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「第1」及び「第2」と記載する場合、それらは、異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0023】
生体電極の構成:
【0024】
本実施形態の生体電極100は、接触した運転者(生体)の生体情報を検出する機能を有している。生体電極100は、例えば、自動車(車両)のステアリングホイール(操舵装置)のリム部に巻く表皮材(ステアリングホイール用表皮材)に設けることができる。この場合、生体電極100は、ステアリングホイールを把持した運転者の心電位等の生体情報を電気信号として検出する心電センサ等に適用することができる。
【0025】
生体電極100を有するステアリングホイール用表皮材は、本発明の一実施形態に係る「生体電極付きステアリングホイール用表皮材」の一態様を構成する。生体電極100は、ステアリングホイールの他には、ドアインナーパネル、センターコンソール側アームレスト部、シフトレバー等の車室に備える「車両用内装部品」に適用することができる。生体電極100付きの車両用内装部品は、本発明の一実施形態に係る「生体電極付き車両用内装部品」の一態様を構成する。なお、「車両」は自動車、鉄道等を含む乗り物である。
【0026】
ステアリングホイールの表皮材には、相互に電気的に絶縁された複数の生体電極100が設けられている。例えば、運転者の右手が何れかの生体電極100を触り、左手が他の生体電極100を触ることで、運転者の人体が導通経路となって、それらの生体電極100を導通させ、生体情報としての心電位を計測することができる。各生体電極100は、図示しない配線に接続されており、各配線は、検出された心電位を入力とする図示しない制御装置に接続されている。
【0027】
生体電極100は、
図1(A)に示すように、基材110の表面側に下地層130を介して電極部120を配置することにより構成されている。電極部120は、複数の導電層を積層して構成されている。すなわち、電極部120は、第1導電層121の表面を第2導電層122で被覆した2層構造となっている。第2導電層122は、第1導電層121の全体を被覆しており、生体電極100の表面側に露出して設けられている。
【0028】
基材110は、電極部120が設けられる部位であり、皮革(合成皮革)、フォーム、布帛、ゴムシート等の材質から構成される。基材110は、これらの材質からなるシートとして形成されている。基材110は、これらの中でも、風合いや触感の観点から皮革(合成皮革)を用いることが好ましく、具体的には、ウレタン樹脂やビニル系樹脂でなる表皮材とPPフォームやウレタンフォーム、シリコンフォーム等で形成されるフォームが積層された合成皮革等を用いることが好ましい。
【0029】
本実施形態では、主に、表面の材質が皮革(合成皮革)や布帛等であるステアリングホイールや車両用内装部材等に生体電極100を形成する。このため、基材110は、表面に凹凸を有する「起伏基材」となっており、その表面の凹凸が独自の触感や風合いを有するものとなっている。すなわち、生体電極100の基材110は、それ自体がステアリングホイールや車両用内装部品の外観面となり得る「加飾表皮材」である。このような加飾表皮材は柔軟性を有しており、ステアリングホイールの形状や車両用内装部品の形状に追従変形して取付可能となっている。また、本実施形態では、ステアリングホイールの表面側に取り付けることができる基材110は、引き伸ばすことのできる伸長性を有するものとしている。
【0030】
第1導電層121は、基材110の表面側に下地層130を介して積層されており、メインの導電層として機能する。本実施形態では、第1導電層121は、絶縁性バインダー121bに、鱗片状の導電性粒子121aが分散して硬化した層として構成される。一例として第1導電層121は、導電性粒子121aが鱗片状の銀等からなる鱗片状フィラーを含む銀インクを使用することができる。このような銀インクにより形成される第1導電層121は、低抵抗で導電性に優れる。
【0031】
第1導電層121は、基材110とともに伸長可能な伸長性を有する。伸長性を有する絶縁性バインダー121bを構成するマトリクスとしては、一般に架橋ゴムや熱可塑性エラストマを用いることができる。具体的には、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン―プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、またはウレタンゴム等の架橋ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマ、オレフィン系熱可塑性エラストマ、エステル系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、アミド系熱可塑性エラストマ、塩化ビニル系熱可塑性エラストマ、またはフッ素系熱可塑性エラストマ等の熱可塑性エラストマが挙げられる。特にこれらの材質の中でも、シリコーンゴムは、伸長性のある柔軟な第1導電層121を形成することができ、比較的耐久性が高いために、好ましい材質である。
【0032】
絶縁性バインダー121bを構成するマトリクスの硬さは、JIS K6253で規定されるA硬度で5~80の範囲が好ましい。A硬度が5未満では、マトリクスが柔軟すぎるため第1導電層121の耐久性の点で懸念が生じる。一方、A硬度が80を越えると、マトリクスが硬すぎるため、第1導電層121が殆ど伸長することができず、伸縮させる用途として好適ではない。
【0033】
導電性粒子121aを構成する導電性充填材としては、カーボンや金属等の導電性粉末を用いることができ、特に、低抵抗の金属粉末を用いることが望ましい。金属粉末の中では、極めて低い抵抗値を有する銀粉末が特に好ましい。また、導電性充填材の形状は、比較的少ない充填量で低抵抗にすることができると共に、伸長したときの抵抗率変化を小さくするために、特に、鱗片状のものが好ましい。具体的には、導電性粒子121aに含まれる鱗片状の粉末が30~100体積%であることが好ましく、50体積%以上、100体積%未満であることがより好ましい。本実施形態では、鱗片状の粉末を単独で用いるよりも抵抗値を低くし易くするために、少量の鱗片状以外の粉末を含むようにしてもよい。なお、ここで言及する「鱗片状」とは、いわゆるフレークや薄片を含むアスペクト比(長軸/厚さ)が2を超える板状のものであることを意味する。
【0034】
こうした導電性充填材は、第1導電層121中で15~50体積%を占めるように配合することが好ましい。15体積%未満では、抵抗値が高くなりすぎる虞があり、50体積%を超えると、導電性充填材を保持するマトリクスの割合が少なくなりすぎ、伸長したときに導電層に亀裂等が生じて断線する虞が高まる。
【0035】
第1導電層121は、液状の導電性ペーストを用いて印刷形成することが好ましい。この導電性ペーストには、絶縁性バインダー121b(マトリクス)と導電性粒子121a(導電性充填材)を含む液状組成物を用いることができる。液状組成物の具体例としては、導電性充填材を硬化可能な液状樹脂であるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンとを組合せたものや、ポリウレタンポリオールとイソシアネートとを組合せたもの、各種ゴムやエラストマを溶剤に溶かしたものに分散したものとすることができる。また、導電性ペーストには、溶剤を含めることによって、導電性充填材の分散性、基材表面への塗布性、粘度を調整することができる。
【0036】
第1導電層121を導電性ペーストで印刷形成する場合には、導電性粒子121aが鱗片状であるため、導電性ペーストのチキソ比を3~30に調整することができ、しかも、固化後には、所定の抵抗値範囲の導電性を得ることができる。また、第1導電層121を形成する導電性ペーストのチキソ比を3~30に調整することで、基材110の表面に第1導電層121を高品位でパターニングすることが可能となる。なお、チキソ比は、粘度計(BROOKFIELD回転粘度計DV-E)でスピンドルSC4-14の回転子を用い、回転速度10rpmにおける測定値μ10rpmと、回転速度100rpmにおける測定値μ100rpmの比(μ10rpm/μ100rpm)で示すことができる。
【0037】
第1導電層121又は導電性ペーストには、生産性、耐候性、耐熱性など種々の性質を高める目的で種々の添加材を含むことができる。例えば、添加材は、可塑剤、補強材、着色剤、耐熱向上剤、難燃剤、触媒、硬化遅延剤、劣化防止剤など、種々の機能性向上剤が挙げられる。
【0038】
第1導電層121の弾性率E’2は、2~60MPaであることが好ましい。第1導電層121自体がある程度柔軟である必要があるからである。弾性率E’2が2MPaより低いと、第1導電層121に含有する導電性粒子121aの相対量が少なすぎて、伸長した生体電極100の導電性が得られなくなる虞がある。また、弾性率E’2が60MPaを超えると、第1導電層121が硬すぎるため、布帛等の基材110に皺やうねりが残り易くなる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において「弾性率E’」とは、動的粘弾性測定装置の引張モードで試験片を引っ張った際の貯蔵弾性率E’をいう。また、第1導電層121の弾性率E’は、他の下地層の弾性率E’等と区別する場合には「E’2」とも表記するものとする。また、第1導電層121の弾性率E’の測定は、第1導電層121の原料組成物を弾性率E’が測定できる試験片の形状に形成することにより測定できる。
【0039】
また、第1導電層121は、伸長性のある銀ペーストからなるので、伸長性を有するものとなっている。具体的には、ステアリングホイールに生体電極100を取付け時に30%程度、取付け後に10%程度の伸びが可能な伸長性を有することが好ましい。さらに、第1導電層121は、伸長性を有していることから、第1導電層121のアスペクト比を踏まえると厚さが厚い方が伸ばした時の抵抗値の変化が小さくなるので、厚さが厚い方が好ましい。しかしながら、第1導電層121は、厚さが100μmを超えると割れ易くなるので、耐久性を考慮して、厚さが100μm以下にすることが好ましい。
【0040】
第2導電層122は、第1導電層121の表面側を被覆するように積層されており、第1導電層121の摩耗性の低さを補うための「導電保護層」として機能する。また、第2導電層122は、第1導電層121の伸長に追従可能な伸長性を有する塗膜として構成されることが好ましい。
【0041】
本実施形態では、第2導電層122は、ウレタンバインダーやシリコーンバインダー等の絶縁性バインダー122bに、主に塊状(例えば、球状、楕円球状、不定形状)の導電性粒子122aが分散して構成される。すなわち、第2導電層122には、塊状の導電性粒子122aが主に含まれ、鱗片状の導電性粒子が全く含まれないか、殆ど含まれない。また、前述した塊状の導電性粒子122aのアスペクト比は、2以下であることが好ましい。第2導電層122の絶縁性バインダー122b(マトリクス)は、前述した第1導電層121の絶縁性バインダー121b(マトリクス)と同一のものを用いることができる。
【0042】
また、第2導電層122は、カーボン系充填材を含むカーボンインクが使用され、相対的に第1導電層121よりも硬質なものとなっており、耐摩耗性のある導電層となっている。そのため、絶縁性バインダー122bを構成するマトリクスの硬さは、JIS K6253で規定されるA硬度で5~80の範囲が好ましい。A硬度が5未満では、マトリクスが柔軟すぎるため、第2導電層122の耐摩耗性、耐久性の点で懸念が生じる。一方、A硬度が80を越えると、マトリクスが硬すぎるため、第2導電層122が殆ど伸長することができず、伸縮させる用途として好適ではない。
【0043】
また、第2導電層122は、第1導電層121よりも多くの導電性粒子を含むこともできる。その理由は、塊状の導電性粒子は、鱗片状の導電性粒子に比べて脱落し難く、より多量に導電性粒子を含ませても、耐久性を高めることができるためである。このとき、第2導電層122に含有する導電性充填材は、第2導電層122中で10~60体積%を占めるように配合することができる。導電性充填材が10体積%未満では、第2導電層122の抵抗値が高くなりすぎる虞がある。導電性充填材が60体積%を超えると、導電性充填材を保持するマトリクスの割合が少なくなりすぎ、伸長したときに第2導電層122に亀裂等が生じる虞が高まるからである。
【0044】
また、耐久性をさらに高めるという観点から、第2導電層122は、第1導電層121よりも導電性粒子の充填量が少ないものとすることが好ましい。すなわち、第2導電層122は、第1導電層121よりも導電性粒子の充填量が少ないことから、相対的に導電性が低い導電層となっている。具体的には、第2導電層122に含有する導電性充填材は、第2導電層122中で10~30体積%を占めるように配合することが好ましい。
【0045】
但し、第2導電層122は、導電性粒子が含まれるものに限定されない。すなわち、第2導電層122は、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸))等の導電性高分子からなるものを使用してもよい。また、第2導電層122として導電性高分子を適用する際に、当該導電性高分子には、導電性粒子が含まれたものとしてもよい。導電性粒子の含有量は、例えば、前述した絶縁性バインダー122bを用いた場合と同量としても良いが、より少量の含有量であることが好ましい。具体的には、含有量は0体積%を超え、25体積%未満であることが好ましい。
【0046】
さらに、第2導電層122は、抵抗値を下げて導電性を確保するために、厚さが少なくとも70μm以下であることが好ましく、50μm以下とすることがより好ましい。また、本実施形態では、第2導電層122が基材110の表面側(ステアリングホイールや車両用内装部品の外観面)に露出して設けられていることから、第2導電層122は、基材110の外観デザイン等を良好にするために、基材110と同一又は類似する色相又は色調を有することが好ましい。すなわち、第2導電層122を黒色とする場合には、導電性粒子122aとしてカーボン系充填材を使用することで黒色とすることができる。第2導電層122が基材110と同一又は類似する色相又は色調を有することにより、第2導電層122を基材110に対して外観上目立たなくすることができる。また、目的の色の導電性粒子がない場合には、導電性が大きく損なわれない範囲で着色顔料や染料を添加することにより、色相又は色調を調整することができる。
【0047】
下地層130は、第1導電層121を基材110の表面に塗布し易くするために、基材110と第1導電層121との間に設けられている。但し、例えば、基材110が天然皮革、合成皮革、布帛である場合のように、その内部にまで下地層130がしみ込んでいる場合には、そのしみ込み部分を含めて下地層130というものとする。また、下地層130は、基材110の伸長に追従して伸長することのできる伸長性を有する塗膜にて構成されている。すなわち、下地層130は、高分子マトリクスからなるものであり、第1導電層121との接着性を高めるために第1導電層121を形成する高分子マトリクスと同種の材料で形成することが好ましい。例えば下地層130は、ポリウレタン樹脂等のウレタン系樹脂や、液状シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂等の絶縁性を有する樹脂が使用される。
【0048】
下地層130は、前述のように基材110の内部にしみ込む場合であっても、基材110の表面に沿って形成されている。従って、第1導電層121のマトリクスと同じマトリクスからなる下地層130を形成すれば、第1導電層121と下地層130とが一体不可分となり、伸長しても密着を維持することができる。この場合、第1導電層121と下地層130とは、層間の境界が融合して識別できない可能性があるが、導電性を有する上側部分が前者であり、導電性を有さない下側部分が後者となる。
【0049】
下地層130は、少なくとも第1導電層121よりも広い面積となるように、基材110に形成することができる。下地層130として第1導電層121よりも伸長性に優れたものを用い、第1導電層121の周囲に下地層130を設けることで、下地層130や第1導電層121の厚みによって生じる段差が重ならないようにするため、大きな段差が生じることを防ぐことができる。
【0050】
また、第2導電層122も第1導電層121を完全に覆うようにする。すなわち、第2導電層122を第1導電層121よりも広い面積となるように形成する。これによれば、下地層130と第2導電層122とで第1導電層121を包み込むことによって、水分の浸入等から第1導電層121を保護することができる。なお、こうした保護は、生体が触れる表面側が重要であるものの、例えば、基材110として吸汗素材等の水分と親和性のある材質を用いる場合には、下地層130が基材側から水分の浸入を抑制することが重要になる。
【0051】
下地層130の弾性率E’(他の弾性率と区別するため下地層130の弾性率を「E’1」とも表記する。)は、1~10MPaであることが好ましい。下地層130は、基材110の局所的な伸長のばらつきを緩衝するために、柔軟性が必要だからである。例えば基材110が布帛である場合、布帛を伸ばした際に撚糸どうしの隙間が局所的に広がることがある。また、布帛の織り方や編み方の相違によって基材110に複数の畝が生じることがある。この布帛を伸ばすと、隣接する畝どうしの隙間が局所的に広がることがある。そして、それらの局所的な隙間の広がりが生じた際には、その影響を第1導電層121に及ぼさないようにすることが必要である。このために下地層130の弾性率E’を規定している。下地層130の弾性率E’が、1MPaより低かったり、10MPaを超えたりすると、基材110に皺やうねりが残りやすい。下地層130の弾性率E’の測定方法及び測定用試験片の作製は、第1導電層121と同様に行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、電極部120が設けられる基材110の表面が凹凸を有する「起伏基材」となっているので、下地層130で基材110の表面を平坦に近い状態にすることによって、第1導電層121を塗布又は後述する転写をし易くしている。さらに、第1導電層121の基材110に対する接着力が弱い場合には、下地層130が接着力を高める効果を奏するようになる。なお、下地層130を介さずに、直接、基材110の表面に第1導電層121を設けることも可能である。
【0053】
生体電極の製造方法:
【0054】
本実施形態では、生体電極100は、「起伏基材」となる基材110に直接、下地層130、電極部120の第1導電層121及び第2導電層122をそれぞれ印刷積層することによって製造される。すなわち、
図2(A)に示すように、まず、基材110の起伏面側の表面にポリウレタン樹脂等のウレタン系樹脂や、液状シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂等の絶縁性を有する樹脂をスクリーン印刷等で印刷して、下地層130を形成する。その後、
図2(B)に示すように、下地層130の表面側に銀インクをスクリーン印刷等で印刷して、第1導電層121を形成する。そして、
図2(C)に示すように、第1導電層121の表面を被覆するように、カーボンインクをスクリーン印刷等で印刷して、第2導電層122を形成することによって、生体電極100が製造される。
【0055】
なお、生体電極100は、起伏基材となる基材110に直接、下地層130、電極部120の第1導電層121及び第2導電層122をそれぞれ印刷積層する態様だけでなく、その他の態様であっても製造可能である。例えば、剥離フィルム印刷体と合皮基材の両方に下地層を設けてから、それぞれを張り合わせて転写するようにして製造してもよい。
【0056】
すなわち、
図3(A)に示すように、シリコーン系剥離PETフィルムからなる剥離フィルム240の表面にカーボンインクをスクリーン印刷等で印刷して、第2導電層222を形成する。それから
図3(B)に示すように、第2導電層222の表面側に銀インクを印刷して、第1導電層221を形成する。その際に、第2導電層222の外形が第1導電層221の外形よりも大きく形成するために、第1導電層221の外形を第2導電層222の外形よりも小さく形成する。このようにして、剥離フィルム240の側に、第1導電層221と第2導電層222からなる電極部220を形成する。その後、
図3(C)に示すように、第1導電層221の表面に、ポリウレタン樹脂等のウレタン系樹脂や、液状シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂等の絶縁性を有する樹脂をスクリーン印刷等で印刷して、下地層231を形成する。
【0057】
次に、
図3(D)に示すように、基材210の表面に下地層232を形成した合皮基材に向けて、剥離フィルム240側に電極部220と下地層231が形成された剥離フィルム印刷体を対向させる。そして、
図3(E)に示すように、合皮基材の下地層232と剥離フィルム印刷体の下地層231とを貼り合わせてから、
図3(F)に示すように、剥離フィルム240を剥がす。このようにして、下地層230を介して基材210の表面側に電極部220を積層させて構成された生体電極200が形成される。
【0058】
なお、剥離フィルム印刷体と合皮基材の両方に下地層を設けてから、それぞれを貼り合わせて生体電極を製造する方法は、前述した態様だけでなく、その他の態様でも可能である。例えば、剥離フィルム印刷体に下地層インクを塗布してから、合皮基材と張り合わせて下地層インクを硬化するようにして製造してもよい。
【0059】
すなわち、
図4(A)に示すように、まず、シリコーン系剥離PETフィルムからなる剥離フィルム340の表面にカーボンインクをスクリーン印刷等で印刷して第2導電層322を形成する。次に、第2導電層322の表面側に銀インクをスクリーン印刷等で印刷して、第1導電層321を形成する、そして、第1導電層321の表面に、ポリウレタン樹脂等のウレタン系樹脂や、液状シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂等の絶縁性を有する樹脂をスクリーン印刷等で印刷して下地層331を形成する。
【0060】
その後、
図4(B)に示すように、剥離フィルム印刷体の下地層331の上面側に下地層インク332を塗布してから、
図4(C)に示すように、合皮基材310と剥離フィルム印刷体の下地層インク332とを貼り合わせる。そして、
図4(D)に示すように、下地層インク332を熱硬化することによって、下地層330を介して基材310の表面側に電極部320を積層させて構成された生体電極300が形成される。
【0061】
実施形態の効果:
【0062】
本実施形態では、生体電極100は、基材110の表面の一部に伸長性を有する第1導電層121と第2導電層122の2層構造の電極部120を設ける構成としている。このため、基材110の触感や風合いをできるだけ損なわずに、ステアリングホイールを把持した運転者の心電位等の生体情報を電気信号として検出する精度が高められるようになる。また、生体電極100を基材110と同一又は類似する色相又は色調にすれば、外観も損なわれ難く、より好ましい風合いとすることができる。
【0063】
本実施形態では、生体電極100の基材110の表面側に設けられる電極部120は、低抵抗で導電性に優れる第1導電層121と、第1導電層121よりも導電性粒子の充填量が少なく、かつ、硬質な第2導電層122の2層構造となっている。特に、メインの導電層として機能する第1導電層121は、絶縁性バインダー121bに鱗片状の導電性粒子121aが分散して構成される鱗片状フィラーを含むので、低抵抗にして導通性を高められるが、鱗片状フィラーが脱落し易くなる。このため、本実施形態では、第1導電層121の表面側に第2導電層122を被覆することによって、第1導電層121の導電性粒子121aが保持され易くなり、導電性粒子121aの脱落を低減することができる。
【0064】
また、第2導電層122は、含まれる導電性粒子122aが塊状であり、鱗片状の導電性粒子を含まないか、含んでいても微量である。このため、メインの導電層として機能する第1導電層121には、鱗片状充填剤を用いて導電性や伸長性を高める一方で、第1導電層121の「導電保護層」として機能する第2導電層122には、鱗片状充填剤を含ませないことによって、生体電極100の電極部120が高い導電性及び伸長性を有しながら、脱落を抑制した積層構造とすることができる。すなわち、
図5(A)に示すように、メインの導電層となる第1導電層121は、鱗片状充填剤として面方向(長さ方向)の高い導電性を確保しながら、第1導電層121の表面側に導電性を有する第2導電層122でコーティングすることによって、積層方向(厚さ方向)の導電性を確保することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、第1導電層121が伸長性を有する柔軟な導電層であるのに対して、第2導電層122は、第1導電層121と比べて相対的に硬質な導電層となっている。このため、第1導電層121は、伸長しても破断しなければ導電性を維持できる。これに対して第2導電層122は、伸長により破断し易い材質であっても、硬質な導電層であることから、第1導電層121の保護層としての耐久性を有する。すなわち、
図5(B)に示すように、電極部120の第1導電層121が伸長して、第2導電層122が所々破断しても、第1導電層121と第2導電層122が剥がれずに強固に固着しているので、第1導電層121の面方向(長さ方向)の高い導電性を確保しながら、固着した第2導電層122によって積層方向(厚さ方向)の導電性を確保できるようになる。
【0066】
また、第2導電層122をPEDOT/PSS等の導電性高分子とした場合には、当該導電性高分子は、塗膜の強靭性の点では、必ずしも強靭ではないが、導電性粒子を含まないか、微量に含む。こうした導電性高分子を第1導電層121に積層すると、第1導電層121に含まれる導電性粒子121aの脱落を抑制できるようになる。また、導電性高分子は、銀ペーストに比べて導電性が低いが、第2導電層122として設けた場合には、人体が触れた箇所においては、厚さ方向に導通性を有していれば良いため、かかる導電性の低さが問題とならない。
【0067】
このように、本実施形態の生体電極100は、電極部120の第2導電層122が外部に露出したものとなっているので、電極部120を直接手で触る構成となっている。このため、より高い耐久性が要求されるので、2層構造の電極部120の外側の第2導電層122がより硬質な材質から構成されるものとなっている。
【0068】
また、本実施形態では、平坦なシート状の生体電極100をドーナツ形状のステアリングホイールのリム部の表面に、生体電極付きステアリングホイール用表皮材を密着させて取り付ける際に、生体電極100がリム部に沿って曲げられて伸ばされるので、電極部120のメインの導電層となる第1導電層121が取付け時30%程度、取付け後10%程度の伸びが可能な一定の伸長性を有するものとしている。このため、生体電極100が設けられる生体電極付きステアリングホイール用表皮材を、ステアリングホイールの形状に沿って密着させて取り付けることができる。また、生体電極付きステアリングホイール用表皮材をステアリングホイールに密着させて取り付けても、第1導電層121の高い導電性を損なわないので、生体電極100の検出精度を高めることができる。
【0069】
心電位計測システムの説明:
【0070】
次に、本発明の一実施形態に係る生体電極100を適用した心電位計測システムの概略について、図面を使用しながら説明する。
【0071】
本実施形態の生体電極100は、心電センサとして機能して、「車両」としての自動車1の運転者の生体情報として心電位を電気信号として検出する心電位計測システム10に適用できる。例えば、
図6で示すように、運転席2、助手席3、「操舵装置」としてのステアリングホイール4、「車両用内装部品」としてのドアインナーパネル5aのドア側アームレスト部5、センターコンソール側アームレスト部6、インストルメント・パネル7、シフトレバー8を備える自動車1について、少なくともステアリングホイール4のリム部の表皮材に生体電極100を設けることによって、心電位計測システム10が構成される。
【0072】
すなわち、自動車1のステアリングホイール4に右手と左手のそれぞれに接触可能な生体電極100が複数設けられることによって、運転者が両手でステアリングホイール4を把持した際に、生体電極100が運転者の心臓の拍動に伴う心筋の活動電位の変動を検出する心電センサとして機能するようになる。このため、生体電極100を介して、ステアリングホイール4を把持した運転者の心電位等の生体情報を精度よく検出できるようになる。なお、本実施形態の生体電極100を用いた心電位計測システム10は、適用される車両として、自動車1以外にも鉄道等に適用してもよい。
【0073】
また、
図7に示すように、自動車1のステアリングホイール4の他に、運転席2の両サイドに有するドア側アームレスト部5とセンターコンソール側アームレスト部6のそれぞれの表皮材に、本実施形態の生体電極100を設けることによって、心電位計測システム20を構成してもよい。あるいは、生体電極100は、ドア側アームレスト部5かセンターコンソール側アームレスト部6の何れかに設けてもよい。
【0074】
心電位計測システム20をかかる構成とすることによって、例えば、運転者が右手でステアリングホイール4を把持して、左手でセンターコンソール側アームレスト部6に触れた場合や、運転者が左手でステアリングホイール4を把持して、右手でドア側アームレスト部5に触れた場合にも、生体電極100が心電センサとして機能するので、同様にして運転者の心電位等の生体情報を把握することができるようになる。なお、生体電極100を備えるドア側アームレスト部5とセンターコンソール側アームレスト部6は、それぞれ本発明の一実施形態に係る「生体電極付き車両用内装部品」の一態様を構成する。
【0075】
本実施形態の心電位計測システム20では、生体電極100がステアリングホイール4以外では、ドア側アームレスト部5を含むドアインナーパネル5a、センターコンソール側アームレスト部6、シフトレバー8等の運転者の手が届く範囲にある車両部品の少なくとも何れかの表面側に設けられていればよい。また、本実施形態の生体電極100を用いた心電位計測システム20は、適用される車両として、自動車1以外にも鉄道等に適用してもよい。
【0076】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0077】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、生体電極、及び心電位計測システムの構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0078】
4 ステアリングホイール、5 ドア側アームレスト部(車両用内装部品)、5a ドアインナーパネル(車両用内装部品)、6 センターコンソール側アームレスト部(車両用内装部品)、7 インストルメント・パネル(車両用内装部品)、8 シフトレバー(車両用内装部品)、10、20 心電位計測システム、100、200、300 生体電極