(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027790
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】ヒト胚性幹細胞由来血管芽細胞からナチュラルキラー細胞および樹状細胞を生成する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20220203BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20220203BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/0784
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021188673
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2019022273の分割
【原出願日】2010-12-01
(31)【優先権主張番号】61/266,661
(32)【優先日】2009-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509236520
【氏名又は名称】アステラス インスティテュート フォー リジェネレイティブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】エリン キンブレル
(72)【発明者】
【氏名】シー-ジアン ルー
(57)【要約】
【課題】ナチュラルキラー(NK)細胞および樹状細胞(DC)を生成する方法を提供すること。
【解決手段】本方法は、ヒト血管芽細胞を中間細胞として使用して、ナチュラルキラー(NK)細胞および樹状細胞(DC)を生成する。種々の実施形態では、本方法は、間質フィーダー層の使用を必要としない。種々の実施形態では、血管芽細胞は、ヒト胚性幹細胞(hESC)から分化させることができる。他の実施形態では、血管芽細胞は、誘導多能性(iPS)細胞から分化させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管芽細胞を提供する工程、
前記血管芽細胞を、メチルセルロース、並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、幹細胞因子(SCF)、およびfms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FL)を含む第1のサイトカイン混合物上で培養する工程、
前記培養した細胞を回収する工程、および
前記回収した細胞を、ヒト血清、並びにIL7、IL15、幹細胞因子(SCF)、およびfms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FL)を含む第2のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養してナチュラルキラー(NK)細胞を生成する工程
を含む方法により生成されるナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項2】
前記NK細胞が、未熟NK細胞であり、CD56+およびCD16-である、請求項1に記載のナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項3】
前記NK細胞が、成熟NK細胞であり、CD56-およびCD16+であるか、またはCD56loおよびCD16+である、請求項1に記載のナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のナチュラルキラー(NK)細胞をある量含む薬学的に許容される組成物。
【請求項5】
血管芽細胞を提供する工程、
前記血管芽細胞を、ヒト血清、並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、および幹細胞因子(SCF)を含む第1のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養する工程、
前記培養した細胞を回収する工程、および
前記回収した細胞を、ヒト血清、並びにIL7、IL15、幹細胞因子(SCF)、およびfms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FL)を含む第2のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養してナチュラルキラー(NK)細胞を生成する工程
を含む方法により生成されるナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項6】
前記NK細胞が、未熟NK細胞であり、CD56+およびCD16-である、請求項5に記載のナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項7】
前記NK細胞が、成熟NK細胞であり、CD56-およびCD16+であるか、またはCD56loおよびCD16+である、請求項5に記載のナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載のNK細胞をある量含む薬学的に許容される組成物。
【請求項9】
血管芽細胞を提供する工程、
前記血管芽細胞を、ヒト血清、幹細胞因子(SCF)、fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FL)、IL3、およびGM-CSFを含む液体培地中で培養する工程、
前記液体培地にIL4を添加する工程、および
前記血管芽細胞を更に培養して、樹状細胞(DC)を生成する工程
を含む方法により生成される樹状細胞(DC)。
【請求項10】
前記DCが、成熟DCであり、CD83を発現する、請求項9に記載の樹状細胞(DC)。
【請求項11】
前記DCが、成熟DCであり、CD209、HLA DR、および/またはCD11cの発現が増加される、請求項9に記載の樹状細胞(DC)。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の樹状細胞(DC)をある量含む薬学的に許容される組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管芽細胞からナチュラルキラー(NK)細胞および樹状細胞(DC)を生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書におけるすべての刊行物は、個々の刊行物または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ各々明確に示されている場合と同程度にて、参照により本明細書に組み込まれる。以下の記述は、本発明の理解に有用であり得る情報を含む。それは、本明細書で提供されるいずれの情報についても、それが請求される本発明の先行技術であるかもしくはそれに関連するものであること、および明確にもしくは暗に参照されるいずれの刊行物についても、それが先行技術であること、を承認するものではない。
【0003】
ヒトおよびマウス胚性幹細胞(ESC)を用いた研究は、血管芽細胞と呼ばれる、血管細胞系列(内皮および平滑筋細胞)および造血細胞系列の両方の共通前駆体を、培養中でESC由来胚様体から産生することができることを示している。本発明者らのグループは、無血清および無間質条件下で、血管芽細胞を複数のhESC系統から効率的に再現性よく生成するための簡便な戦略を開発した。これは、再生医学において血管芽細胞の生産用途に重要である。以前の研究は、hESC由来血管芽細胞が赤血球および骨髄系列へと効果的に分化することができることを示しているが、免疫療法能力を有するものを含むリンパ系列細胞を産生するそれらの能力は、比較的わかっていない。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、リンパ系列から生じ、先天性免疫系の一部であり、あるタイプの腫瘍細胞を検出および死滅させることが見出されているため、抗癌療法で使用することができる。樹状細胞(DC)は、多くの場合骨髄系列から(単球から)生じ、適応免疫系の一部であり、抗原を提示するそれらの能力により抗原特異的免疫応答を増強し、未感作T細胞および記憶T細胞の両方を刺激するため(例えば、DCに基づくワクチン療法)に使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
免疫療法能力を考慮すると、当該技術分野では、ナチュラルキラー(NK)細胞および樹状細胞(DC)を生成する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の実施形態およびその態様は、例示および説明のためであることが意図される組成物および方法と合わせて記載および説明され、範囲を限定するものではない。
【0007】
本発明の種々の実施形態は、ナチュラルキラー(NK)細胞を生成する方法であって、血管芽細胞を提供すること;血管芽細胞を、メチルセルロース並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、SCF、およびFLを含む第1のサイトカイン混合物上で培養すること;培養した細胞を回収すること;並びに回収した細胞を、ヒト血清、並びにIL7、IL15、SCF、およびFLを含む第2のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養してNK細胞を生成することを含む方法を提供する。
【0008】
種々の実施形態では、メチルセルロースは、H4236メチルセルロースであってもよい。他の実施形態では、メチルセルロースは、H4536メチルセルロースであってもよい。
【0009】
種々の実施形態では、IL2の濃度は、約5~10ng/mlであってもよく、IL3は約1~10ng/mlであってもよく、IL6は約1~10ng/mlであってもよく、IL7は約5~20ng/mlであってもよく、IL15は約5~10ng/mlであってもよく、SCFは約10~50ng/mlであってもよく、FLは約10~50ng/mlであってもよい。
【0010】
種々の実施形態では、血管芽細胞の培養は、約6~8日間であってもよい。種々の実施形態では、回収した細胞の培養は、約14~21日間であってもよい。種々の実施形態では、本方法は、培地を週1回変更して、第2のサイトカイン混合物を新しくすることを更に含んでいてもよい。
【0011】
種々の実施形態では、血管芽細胞は、ヒト胚性幹細胞(hESC)から分化させることができる。他の実施形態では、血管芽細胞は、誘導多能性(iPS)細胞から分化させることができる。
【0012】
種々の実施形態では、NK細胞は、未熟NK細胞であってもよく、CD56+およびCD16-であってもよい。他の実施形態では、NK細胞は、成熟NK細胞であってもよく、CD56-およびCD16+であるか、またはCD56loおよびCD16+であってもよい。
【0013】
本発明の種々の実施形態は、ナチュラルキラー(NK)細胞を生成する方法であって、血管芽細胞を提供すること;血管芽細胞を、ヒト血清並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、およびSCFを含む第1のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養すること;培養した細胞を回収すること;並びに回収した細胞を、ヒト血清並びにIL7、IL15、SCF、およびFLを含む第2のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養してNKを生成することを含む方法を提供する。
【0014】
種々の実施形態では、IL2の濃度は、約5~10ng/mlであってもよく、IL3は約1~10ng/mlであってもよく、IL6は約1~10ng/mlであってもよく、IL7は約5~20ng/mlであってもよく、IL15は約5~10ng/mlであってもよく、SCFは約10~50ng/mlであってもよく、FLは約10~50ng/mlであってもよい。
【0015】
種々の実施形態では、血管芽細胞の培養は、約6~8日間であってもよい。種々の実施形態では、回収した細胞の培養は、約14~21日間であってもよい。
【0016】
種々の実施形態では、本方法は、培地を週1回変更して、第2のサイトカイン混合物を新しくすることを更に含んでいてもよい。
【0017】
種々の実施形態では、血管芽細胞は、ヒト胚性幹細胞(hESC)から分化させることができる。他の実施形態では、血管芽細胞は、誘導多能性(iPS)細胞から分化させることができる。
【0018】
種々の実施形態では、NK細胞は、未熟NK細胞であってもよく、CD56+およびCD16-であってもよい。他の実施形態では、NK細胞は、成熟NK細胞であってもよく、CD56-およびCD16+であるか、またはCD56loおよびCD16+であってもよい。
【0019】
本発明の種々の実施形態は、本発明の方法のいずれかにより生成されたナチュラルキラー(NK)細胞を提供する。本発明の他の実施形態は、本発明の方法のいずれかにより生成されたNK細胞をある量含む薬学的に許容される組成物を提供する。
【0020】
本発明の種々の実施形態は、樹状細胞(DC)を生成する方法であって、血管芽細胞を提供すること;血管芽細胞を、ヒト血清、SCF、FL、IL3、およびGM-CSFを含む液体培地中で培養すること;液体培地にIL4を添加すること;および血管芽細胞を更に培養してDCを生成することを含む方法を提供する。
【0021】
種々の実施形態では、血管芽細胞の培養は、約7~11日間であってもよい。種々の実施形態では、IL4を添加した後の血管芽細胞の培養は、約8~10日間であってもよい。
【0022】
種々の実施形態では、本方法は、IL1b、TNFα、およびIL6を含むサイトカイン混合物を添加して、DCの成熟化を誘導することを更に含んでいてもよい。種々の実施形態では、サイトカイン混合物は、約48時間添加してもよい。種々の実施形態では、サイトカイン混合物は、PGE2、IFNα2b、poly I:C、IFNγ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるサイトカインを更に含んでいてもよい。
【0023】
種々の実施形態では、本方法は、LPS、IFNγ、および/またはS-28463を添加して、DCからのIL12p70産生および/またはDCからのHLA-DR発現を刺激することを更に含んでいてもよい。
【0024】
種々の実施形態では、SCFの濃度は、約20~100ng/mlであってもよく、FLは約10~50ng/mlであってもよく、IL3は約5~50ng/mlであってもよく、GM-CSFは約50~100ng/mlであってもよく、IL4は約50~100ng/mlであってもよい。種々の実施形態では、IL1bの濃度は、約10ng/mlであってもよく、TNFγは約10ng/mlであってもよく、IL6は約150ng/mlであってもよい。種々の実施形態では、PGE2の濃度は、約1μg/mlであってもよく、IFNα2bは約3000単位/mlであってもよく、poly I:Cは約20μg/mlであってもよく、IFNγは約20ng/mlであってもよい。
【0025】
種々の実施形態では、DCは、成熟DCであってもよく、CD83を発現してもよい。他の実施形態では、DCは、成熟DCであってもよく、CD209、HLA DR、および/またはCD11cの発現は増加される。
【0026】
本発明の種々の実施形態は、本発明の方法のいずれかにより生成された樹状細胞(DC)細胞を提供する。本発明の他の実施形態は、本発明の方法のいずれかにより生成されたDCをある量含む薬学的に許容される組成物を提供する。
【0027】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明の実施形態の種々の特徴を例として説明する添付の図面と合わせて、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0028】
代表的な実施形態を、参照図面で示す。本明細書で開示される実施形態および図面は、限定のためではなく、説明のためのものとして見なされるべきであることを意図している。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
ナチュラルキラー(NK)細胞を生成する方法であって、
血管芽細胞を提供すること、
前記血管芽細胞を、メチルセルロース、並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、SCF、およびFLを含む第1のサイトカイン混合物上で培養すること、
前記培養した細胞を回収すること、および
前記回収した細胞を、ヒト血清、並びにIL7、IL15、SCF、およびFLを含む第2のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養してNK細胞を生成することを含む方法。
(項目2)
前記メチルセルロースが、H4236メチルセルロースである、項目1に記載の方法。(項目3)
前記メチルセルロースが、H4536メチルセルロースである、項目1に記載の方法。(項目4)
IL2の濃度が、約5~10ng/mlであり、IL3が約1~10ng/mlであり、IL6が約1~10ng/mlであり、IL7が約5~20ng/mlであり、IL15が約5~10ng/mlであり、SCFが約10~50ng/mlであり、FLが約10~50ng/mlである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記血管芽細胞の培養が、約6~8日間である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記回収した細胞の培養が、約14~21日間である、項目1に記載の方法。
(項目7)
培地を週1回変更して、前記第2のサイトカイン混合物を新しくすることを更に含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記血管芽細胞が、ヒト胚性幹細胞(hESC)から分化する、項目1に記載の方法。(項目9)
前記血管芽細胞が、誘導多能性(iPS)細胞から分化する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記NK細胞が、未熟NK細胞であり、CD56+およびCD16-である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記NK細胞が、成熟NK細胞であり、CD56-およびCD16+であるか、またはCD56loおよびCD16+である、項目1に記載の方法。
(項目12)
項目1~11のいずれか一項に記載の方法により生成されるナチュラルキラー(NK)細胞。
(項目13)
項目12に記載のNK細胞をある量含む薬学的に許容される組成物。
(項目14)
ナチュラルキラー(NK)細胞を生成する方法であって、
血管芽細胞を提供すること、
前記血管芽細胞を、ヒト血清、並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、およびSCFを含む第1のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養すること、
前記培養した細胞を回収すること、および
前記回収した細胞を、ヒト血清、並びにIL7、IL15、SCF、およびFLを含む第2のサイトカイン混合物を含む液体培地中で培養して前記NKを生成することを含む方法。
(項目15)
IL2の濃度が、約5~10ng/mlであり、IL3が約1~10ng/mlであり、IL6が約1~10ng/mlであり、IL7が約5~20ng/mlであり、IL15が約5~10ng/mlであり、SCFが約10~50ng/mlであり、FLが約10~50ng/mlである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記血管芽細胞の培養が、約6~8日間ある、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記回収した細胞の培養が、約14~21日間である、項目14に記載の方法。
(項目18)
培地を週1回変更して、前記第2のサイトカイン混合物を新しくすることを更に含む、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記血管芽細胞が、ヒト胚性幹細胞(hESC)から分化する、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記血管芽細胞が、誘導多能性(iPS)細胞から分化する、項目14に記載の方法。(項目21)
前記NK細胞が、未熟NK細胞であり、CD56+およびCD16-である、項目14に記載の方法。
(項目22)
前記NK細胞が、成熟NK細胞であり、CD56-およびCD16+であるか、またはCD56loおよびCD16+である、項目14に記載の方法。
(項目23)
項目14~22のいずれか一項に記載の方法により生成されるナチュラルキラー(NK)細胞。
(項目24)
項目24に記載のNK細胞をある量含む薬学的に許容される組成物。
(項目25)
樹状細胞(DC)を生成する方法であって、
血管芽細胞を提供すること、
前記血管芽細胞を、ヒト血清、SCF、FL、IL3、およびGM-CSFを含む液体培地中で培養すること、
前記液体培地にIL4を添加すること、および
前記血管芽細胞を更に培養して、前記DCを生成することを含む方法。
(項目26)
前記血管芽細胞の培養が、約7~11日間ある、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記IL4添加の後の前記血管芽細胞の培養が、約8~10日間である、項目25に記載の方法。
(項目28)
IL1b、TNFα、およびIL6を含むサイトカイン混合物を添加して、前記DCの成熟化を誘導することを更に含む、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記サイトカイン混合物が、約48時間添加される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記サイトカイン混合物が、PGE2、IFNα2b、Poly I:C、IFNγ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるサイトカインを更に含む、項目28に記載の方法。
(項目31)
LPS、IFNγ、および/またはS-28463を添加して、前記DCからのIL12p70産生および/または前記DCからのHLA-DR発現を刺激することを更に含む、項目25に記載の方法。
(項目32)
SCFの濃度が、約20~100ng/mlであり、FLが約10~50ng/mlであり、IL3が約5~50ng/mlであり、GM-CSFが約50~100ng/mlであり、IL4が約50~100ng/mlである、項目25に記載の方法。
(項目33)
IL1bの濃度が、約10ng/mlであり、TNFγが、約10ng/mlであり、IL6が約150ng/mlである、項目28に記載の方法。
(項目34)
PGE2の濃度が、約1μg/mlであり、IFNα2bが約3000単位/mlであり、poly I:Cが約20μg/mlであり、IFNγが約20ng/mlである、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記DCが、成熟DCであり、CD83を発現する、項目25に記載の方法。
(項目36)
前記DCが、成熟DCであり、CD209、HLA DR、および/またはCD11cの発現が増加される、項目25に記載の方法。
(項目37)
項目25~36のいずれか一項に記載の方法により生成される樹状細胞(DC)細胞。(項目38)
項目37に記載のDC細胞をある量含む薬学的に許容される組成物。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1-1】血管芽細胞が、本発明の種々の実施形態により造血系列(A~C)および血管(D~F)系列の両方を生じさせることができる二分化能前駆細胞であることを示す図である。
【
図1-2】血管芽細胞が、本発明の種々の実施形態により造血系列(A~C)および血管(D~F)系列の両方を生じさせることができる二分化能前駆細胞であることを示す図である。
【
図2-1】樹状細胞等の免疫療法能力を有する細胞を、本発明の種々の実施形態により血管芽細胞から分化させることができることを示す図である。A.分化の28日目の樹状細胞表面マーカー発現。B.成熟化サイトカインと48時間接触させることにより、DC表面マーカー発現を増加させることができることを示す棒グラフ。C.DCが30分間のアッセイでDQ-オボアルブミン抗原を取り込み、プロセシングすることができることを示すヒストグラム。D.DCのライト-ギムザ染色、20×。E.DCのライト-ギムザ染色、100×。
【
図2-2】樹状細胞等の免疫療法能力を有する細胞を、本発明の種々の実施形態により血管芽細胞から分化させることができることを示す図である。A.分化の28日目の樹状細胞表面マーカー発現。B.成熟化サイトカインと48時間接触させることにより、DC表面マーカー発現を増加させることができることを示す棒グラフ。C.DCが30分間のアッセイでDQ-オボアルブミン抗原を取り込み、プロセシングすることができることを示すヒストグラム。D.DCのライト-ギムザ染色、20×。E.DCのライト-ギムザ染色、100×。
【
図3】リンパ誘導性サイトカインとの接触に際して、hESC由来血管芽細胞が、本発明の種々の実施形態により、無フィーダー培養系でCD56low/CD16+ナチュラルキラー細胞を生じさせることができることを示す図である。A.メチルセルロース培養中に、血管芽細胞のサブセットは、共通の白血球抗原、CD45を獲得する。B.血管芽細胞を液体培養(ヒト血清およびサイトカイン混合物を含有する)に移すことにより、NK細胞マーカー、CD56の獲得が可能になる。C.合計28~40日間分化させた後のCD56low/CD16+NK細胞の出現。
【
図4】古典的な51Cr放出アッセイと同様に、細胞内フローサイトメトリーを使用して、本発明の種々の実施形態により、NK媒介性細胞傷害活性を評価することができることを示す図である。
【
図5】血管芽細胞由来NKエフェクター細胞が、本発明の実施形態により、標準的な4時間の共培養後にK562赤白血病標的細胞のアポトーシスを誘導することができることを示す図である。
【
図6-1】本発明の実施形態によりNK細胞を生成するプロセスを示す図である。
【
図6-2】本発明の実施形態によりNK細胞を生成するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全内容が完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。それ以外の定義がなされない限りにおいて、本明細書で用いられる技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2001);March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 5th ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2001);および、Sambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2001)は、本出願に用いられる用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供するものである。
【0031】
当業者であれば、本発明の実践に用いることが可能である本明細書で述べるものと類似または同等である多くの方法および物質を識別する。実際、本発明は、記載される方法および物質に限定されるものではまったくない。本発明の目的のために、以下の用語を次のように定義する。
【0032】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通して用いる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の意味は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限りにおいて、複数の言及を含む。また、本明細書で用いる場合、「中で(in)」の意味は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限りにおいて、「中で(in)」および「上で(on)」を含む。
【0033】
「胚性幹細胞」(ES細胞)の用語は、当該技術分野で用いられるように本明細書において用いられる。この用語は、細胞系統として段階的に継代培養されたものを含む、ヒト胚盤胞または桑実胚の内部細胞塊から得られる細胞を含む。ES細胞は、卵細胞と精子との受精から、さらにはDNA、核移植、単為生殖を用いて、またはHLA領域においてホモ接合性を有するES細胞を生成させる手段によって得られるものであってよい。ES細胞はまた、精子と卵細胞との融合、核移植、単為生殖、雄性生殖、またはクロマチンの再プログラム化およびそれに続く細胞作製のための再プログラム化されたクロマチンの細胞膜への組み込みによって発生した接合体、卵割球、もしくは胚盤胞期哺乳類の胚から得られる細胞でもある。胚性幹細胞は、その作製源またはそれを作製するために用いられる特定の方法に関わらず、(i)3つすべての胚葉の細胞へ分化する能力、(ii)少なくともOct4およびアルカリホスファターゼの発現、ならびに(iii)免疫不全動物へ移植された場合にテラトーマを発生させる能力、に基づいて識別することができる。
【0034】
本明細書で用いる場合、「多能性幹細胞」の用語は、多能性幹細胞が得られる方法に関わらず、胚性幹細胞、胚由来幹細胞、および誘導多能性幹細胞を含む。多能性幹細胞は、機能的に:(a)免疫不全(SCID)マウスに移植された場合にテラトーマを誘発する能力を有する;(b)3つすべての胚葉の細胞型へ分化する能力を有する(例:外胚葉、中胚葉、および内胚葉細胞型に分化することができる);ならびに(c)胚性幹細胞の1つ以上のマーカーを発現する(例:Oct4、アルカリホスファターゼ、SSEA‐3表面抗原、SSEA‐4表面抗原、nanog、TRA‐1‐60、TRA‐1‐81、SOX2、REX1などを発現する)、幹細胞として定義される。代表的な多能性幹細胞は、例えば当該技術分野で公知の方法を用いて生成することができる。代表的な多能性幹細胞としては、胚盤胞期胚のICMから得られる胚性幹細胞、さらには卵割期または桑実胚期胚の1つ以上の卵割球から得られる胚性幹細胞(所望に応じて、胚の残り部分を破壊することなく行ってよい)が挙げられる。そのような胚性幹細胞は、受精によって、または体細胞核移植(SCNT)、単為生殖、および雄性生殖を含む無性生殖的手段によって作製される胚性物質から生成してよい。さらなる代表的な多能性幹細胞としては、因子の組み合わせ(以降本明細書にて再プログラム化因子と称する)を発現することによる体細胞の再プログラム化によって生成される誘導多能性幹細胞(iPS細胞)が挙げられる。iPS細胞は、胎児(仔)、出生後、新生児(仔)、若齢、または成体の体細胞を用いて生成してよい。特定の実施形態において、体細胞を再プログラム化して多能性幹細胞とするために用いてよい因子としては、例えば、Oct4(Oct3/4と称される場合もある)、Sox2、c‐Myc、およびKlf4の組み合わせが挙げられる。他の実施形態において、体細胞を再プログラム化して多能性幹細胞とするために用いてよい因子としては、例えば、Oct4、Sox2、Nanog、およびLin28の組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、体細胞は、少なくとも2つの再プログラム化因子、少なくとも3つの再プログラム化因子、または4つの再プログラム化因子の発現により再プログラムされる。誘導多能性幹細胞は、ある組み合わせの再プログラム化因子を体細胞で発現させることより産生することができる。特定の実施形態では、体細胞の再プログラム化を成功させるために、少なくとも2つの再プログラム化因子が体細胞中で発現される。他の実施形態では、体細胞の再プログラム化を成功させるために、少なくとも3つの再プログラム化因子が体細胞中で発現される。他の実施形態では、体細胞の再プログラム化を成功させるために、少なくとも4つの再プログラム化因子が体細胞中で発現される。誘導多能性幹細胞は、再プログラム化因子を体細胞にタンパク質形質導入することにより産生することができる。ある実施形態では、体細胞の再プログラム化を成功させるために、少なくとも2つの再プログラム化タンパク質が、体細胞に形質導入される。他の実施形態では、体細胞の再プログラム化を成功させるために、少なくとも3つの再プログラム化タンパク質が、体細胞に形質導入される。他の実施形態では、体細胞の再プログラムを成功させるために、少なくとも4つの再プログラム化タンパク質が、体細胞に形質導入される。
【0035】
他の実施形態では、さらなる再プログラム化因子が特定され、体細胞を多能性幹細胞に再プログラム化するために、単独でまたは1つ以上の既知の再プログラム化因子と組み合わせて使用される。誘導多能性幹細胞は、機能的に定義され、様々な方法(組込みベクター、非組込みベクター、化学的手段等)のいずれかを使用して再プログラム化されている細胞が含まれる。
【0036】
多能性幹細胞は、いかなる種からのものであってもよい。胚性幹細胞は、例えば、マウス、非ヒト霊長類の複数の種、およびヒトで得ることに成功しており、胚性幹様細胞(embryonic stem-like cells)は、数多くのさらなる種から生成されている。従って、当業者であれば、胚性幹細胞および胚由来幹細胞を、これらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(マウス、ラット)、有蹄類(ウシ、ヒツジなど)、イヌ(飼育用および野生のイヌ)、ネコ類(ライオン、トラ、チーターなど、飼育用および野生のネコ類)、ウサギ、ハムスター、アレチネズミ、リス、モルモット、ヤギ、ゾウ、パンダ(ジャイアントパンダを含む)、ブタ、アライグマ、ウマ、シマウマ、海洋哺乳類(イルカ、クジラなど)などを含むいずれの種からも生成することができる。特定の実施形態では、種は、絶滅危惧種である。特定の実施形態では、種は、現在絶滅した種である。
【0037】
同様に、iPS細胞もいかなる種からのものであってもよい。これらのiPS細胞は、マウスおよびヒト細胞を用いての生成に成功している。iPS細胞は、胚、胎児(胎仔)、新生児(仔)、および成体組織を用いての生成に成功している。従って、iPS細胞は、いかなる種からのドナー細胞を用いても容易に生成することができる。従って、iPS細胞は、これらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(マウス、ラット)、有蹄類(ウシ、ヒツジなど)、イヌ(飼育用および野生のイヌ)、ネコ類(ライオン、トラ、チーターなど、飼育用および野生のネコ類)、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ゾウ、パンダ(ジャイアントパンダを含む)、ブタ、アライグマ、ウマ、シマウマ、海洋哺乳類(イルカ、クジラなど)などを含むいずれの種からも生成することができる。特定の実施形態では、種は、絶滅危惧種である。特定の実施形態では、種は、現在絶滅した種である。
【0038】
誘導多能性幹細胞は、出発点として、実質的にいかなる細胞発生段階のいかなる体細胞を用いて生成してもよい。例えば、細胞は、胚、胎児(仔)、新生児(仔)、若齢、または成体ドナーからのものであってよい。用いてよい代表的な体細胞としては、皮膚サンプルもしくは生検によって得られる皮膚線維芽細胞などの線維芽細胞、滑膜組織からの滑膜細胞、包皮細胞、頬細胞、または肺線維芽細胞が挙げられる。皮膚および頬は、容易に利用可能であり、簡単に入手可能である適切な細胞源を提供するが、実質的にいかなる細胞を用いてもよい。特定の実施形態では、体細胞は線維芽細胞ではない。
【0039】
「血管芽細胞」および「血管コロニー形成細胞(hemangio-colony forming cell)」の用語は、本出願全体を通して交換可能に用いられる。これらの細胞は、数多くの構造的および機能的特徴を有する。これらの細胞の特徴の中で、宿主へ投与された場合に骨髄へ生着する能力がある。これらの細胞は、これらに限定されないが、1つ以上のマーカーの発現(RNAまたはタンパク質)、または発現(RNAまたはタンパク質)がないこと、を含む数多くの構造的および機能的特性に基づいて説明することができる。血管コロニー形成細胞は、分化して、少なくとも造血細胞型または内皮細胞型を発生させる能力を有する。好ましくは、血管コロニー形成細胞は、二分化能であり、分化して、少なくとも造血細胞型および内皮細胞型を発生させる能力を有する。従って、本発明の血管コロニー形成細胞は、少なくとも単分化能であり、好ましくは二分化能である。しかし、加えて、血管コロニー形成細胞は、より高い度合いの発生能を有していてよく、特定の実施形態では、分化して、その他の系列の細胞型を発生させてよい。特定の実施形態では、血管コロニー形成細胞は、分化して、心臓細胞(例えば、心筋細胞)および/または平滑筋細胞などのその他の中胚葉誘導体を発生させる能力を有する。
【0040】
「非生着血管芽細胞(non-engrafting hemangioblasts)」または「非生着血管細胞(non-engrafting hemangio cells)」の用語は、本出願全体を通して、血管コロニー形成細胞の特徴の一部を共有する細胞の集団を意味するために用いられる。しかし、非生着血管細胞は、免疫不全宿主に投与された場合に骨髄へ生着しないという点で、区別することができる。この違いにも関わらず、非生着血管細胞は、血管コロニー形成細胞の機能的または構造的特徴および特性の1つまたは2つ以上(2、3、4、5、6、7、8、9、10)を共有し得る。例えば、特定の実施形態では、非生着血管細胞は、互いに緩やかに接着している。他の実施形態では、非生着血管細胞は、以下のタンパク質:CD34、KDR、CD133、CD31、の1つまたは2つ以上(2、3、4)を発現しない。理論に束縛されるものではないが、非生着血管細胞は、血管コロニー形成細胞よりもある程度特殊化された独特の幹細胞集団を提供し得るが、それでも、一定範囲の造血細胞型を生成する能力を有する。
【0041】
本発明者らは、ヒトESCから免疫療法能力を有する細胞を産生するための生体外培養系を開発した。この戦略は、hESC由来血管芽細胞を中間細胞供給源として使用することを伴うという点で従来技術と異なる。本発明者らは、無フィーダー培養条件を使用して、血管芽細胞の分化をナチュラルキラー(NK)および樹状細胞(DC)の両方に向けることができた。NK細胞は、リンパ系列から生じ、先天性免疫系の一部であり、あるタイプの腫瘍細胞を検出および死滅させることが見出されているため、抗癌療法で使用することができる。DCは、多くの場合骨髄系列から(単球から)生じ、適応免疫系の一部であり、抗原を提示するそれらの能力により抗原特異的免疫応答を増強し、未感作T細胞および記憶T細胞の両方を刺激するため(例えば、DCに基づくワクチン療法)に使用することができる。
【0042】
種々の活性化シグナルおよび阻害シグナル間の相互作用が、NK細胞の3つの主な機能を制御する。3つの主な機能とは、サイトカイン放出、ナチュラル細胞毒性、および抗体依存性細胞傷害性である。H7およびHuES-3 hESC系統の両方から生成された血管芽細胞を使用して、本発明者らは、成熟CD56low/-、CD16+NK細胞を産生することができ、それらの産生は、間質フィーダー層の使用を必要としないことを見出した。この分化手順は、最初に4日間培養して胚様体を生成し、その後、血管芽細胞集団を産生および増殖させるための一組のサイトカインおよび成長因子で補完されたメチルセルロースで10~14日間培養することを伴う。フローサイトメトリーで評価すると、ヒト血清およびサイトカイン混合物を加えた液体培養中でのさらなる14~21日間は、NK細胞の分化を可能にする。51Cr放出アッセイに類似した非放射能性細胞傷害性アッセイは、これら血管芽細胞由来NK細胞が、標準的な4時間の共培養後に、標的K562赤芽球性白血病細胞のアポトーシスを効果的に誘導することができるため、ナチュラル細胞傷害性機能を内包することを示す。血管芽細胞を中間細胞供給源として使用することは、hESCが生体外で分化する能力および/または効率を増強し、重要なことには、免疫療法能力を有する細胞を産生するための無フィーダー系の開発を可能にすることができる。
【0043】
本発明の実施形態は、リンパ系列細胞を生成する方法を提供する。種々の実施形態では、本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞を生成する方法を提供する。
【0044】
種々の実施形態では、NK細胞を生成する方法は、血管芽細胞を提供すること;血管芽細胞を、メチルセルロース並びにIL2、IL3、IL6、IL7、IL15、SCF、およびFL上に播種し、培養すること;細胞を回収すること;並びに回収した細胞を、ヒト血清、IL7、IL15、SCF、およびFLを含む液体培地に再播種/培養することを含む。
【0045】
種々の実施形態では、液体培地は、週1回変更される。種々の実施形態では、メチルセルロースは、H4236メチルセルロースである。他の実施形態では、メチルセルロースは、H4536メチルセルロースである。種々の実施形態では、サイトカインの濃度は、IL2(5~10ng/ml)、IL3(1~10ng/ml)、IL6(1~10ng/ml)、IL7(5~20ng/ml)、IL15(5~10ng/ml)、SCF(10~50ng/ml)、およびFL(10~50ng/ml)である。種々の実施形態では、細胞の回収は、細胞を6~8日間培養した後で行われる。種々の実施形態では、細胞は、再播種された後、更に14~21日間培養される。種々の実施形態では、液体培地は、αMEMまたはDMEM:F12である。
【0046】
別の実施形態では、ナチュラルキラー(NK)細胞を生成する方法は、血管芽細胞を提供すること;血管芽細胞を、IL2、IL3、IL6、IL7、IL15、SCF、およびヒト血清を含む液体培地中で培養すること;細胞を回収すること;および回収した細胞を、ヒト血清、IL7、IL15、SCF、およびFLを含む液体培地中で培養することを含む。
【0047】
種々の実施形態では、液体培地は、週1回変更される。先述と同様に、種々の実施形態では、サイトカインの濃度は、IL2(5~10ng/ml)、IL3(1~10ng/ml)、IL6(1~10ng/ml)、IL7(5~20ng/ml)、IL15(5~10ng/ml)、SCF(10~50ng/ml)、およびFL(10~50ng/ml)である。種々の実施形態では、細胞の回収は、細胞を6~8日間培養した後で行われる。種々の実施形態では、細胞は、再播種された後、更に14~21日間培養される。種々の実施形態では、液体培地は、αMEMまたはDMEM:F12である。
【0048】
本発明の種々の実施形態は、本発明の方法により生成されたナチュラルキラー細胞を提供する。種々の実施形態では、NK細胞は、本発明の方法により生成されたNK細胞をある量含む薬学的に許容される組成物に提供される。
【0049】
本発明の他の実施形態は、樹状細胞(DC)を生成する方法を提供する。1つの実施形態では、DCを生成する方法は、血管芽細胞を提供すること;血管芽細胞を、ヒト血清、SCF、FL、IL3、およびGM-CSFを含む液体培地に播種し培養すること;IL4を液体培地に添加すること;および細胞を更に培養することを含む。
【0050】
他の実施形態では、本方法は、IL1b、TNFα、およびIL6を含むサイトカイン混合物を添加して、DCの成熟化を誘導することを更に含む。さらなる実施形態では、サイトカイン混合物は、PGE2、IFNα2b、Poly I:C、IFNγ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるサイトカインを更に含む。他の実施形態では、本方法は、LPS、IFNγ、および/またはS-28463を添加して、DCからのIL12p70産生および/またはDCからのHLA-DR発現を刺激することを更に含む。
【0051】
種々の実施形態では、液体培地は、6~7日毎に変更される。種々の実施形態では、液体培地は、αMEMまたはDMEM:F12である。種々の実施形態では、細胞は、7~11日間培養される。種々の実施形態では、細胞を7~11日間培養した後で、IL4を添加する。種々の実施形態では、細胞は、IL4を添加した後、更に8~10日間培養される。
【0052】
種々の実施形態では、ヒト血清、SCF、FL、IL3、およびGM-CSFの濃度は、ヒト血清(10~20%)、SCF(20~100ng/ml)、FL(10~50ng/ml)、IL3(5~50ng/ml)、およびGM-CSF(50~100ng/ml)である。別の実施形態では、IL4の濃度は、50~100ng/mlである。種々の実施形態では、IL1b、TNFα、およびIL6の濃度は、IL1b(10ng/ml)、TNFα(10ng/ml)、およびIL6(150ng/ml)である。種々の実施形態では、PGE2、IFNα2b、poly I;C、およびIFNγの濃度は、PGE2(1μg/ml)、IFNα2b(3000単位/ml)、poly I:C(20μ/ml)、およびIFNγ(20ng/ml)である。
【0053】
血管芽細胞から樹状細胞を産生する効率は比較的良好であるため、DCを用いた将来的な研究は、新しい機能アッセイのための条件を最適化することおよび種々の新しい機能アッセイを開発することを含み得る。例えば、DC成熟化混合物を構成する成分の変更は、IL12p70分泌アッセイを向上させる可能性がある。本発明者らは、現在6つの異なるサイトカインの混合物を成熟化に使用しているが、芽球由来DCからのIL12p70産生を刺激するためには、LPSおよび/またはIFNγの添加が必要な場合がある。同様に、合成化合物、S-28463は、IL12p70産生およびHLA-DR発現の両方の増加を支援することができる。
【0054】
本発明の種々の実施形態は、本発明の方法により生成された樹状細胞を提供する。種々の実施形態では、DCは、本発明の方法により生成されたDCをある量含む薬学的に許容される組成物に提供される。
【0055】
本発明の種々の実施形態では、血管芽細胞は、以下を含む方法により取得することができる:hESCを提供すること;サイトカインを含む培地中でhESCを培養して、胚様体(EB)を生成すること;EBを脱凝集すること;個々の細胞をろ過すること;個々の細胞を、TPO、VEGF、FL、およびbFGFを含むメチルセルロースに接種すること;およびメチルセルロースから芽球様細胞を回収すること。
【0056】
種々の実施形態では、hESCは、EBを脱凝集する前に、まず4日間培養される。種々の実施形態では、胚様体を生成するためのサイトカインは、VEGFおよびBMP4を含む。種々の実施形態では、VEGFおよびBMP4は、EB形成の全体にわたって使用される。別の実施形態では、胚様体を生成するためのサイトカインは、bFGFを更に含む。1つの実施形態では、bFGFは、hESC培養の最初の2日間の後に添加される。種々の実施形態では、EBの脱凝集は、トリプシンを用いてEBを脱凝集し、その後、血清含有培地でトリプシンを不活化することを含む。1つの実施形態では、トリプシンは、0.05%である。種々の実施形態では、個々の細胞のろ過は、40μM細胞ストレーナーで個々の細胞をろ過することを含む。種々の実施形態では、メチルセルロースは、H4436またはH4536メチルセルロースである。種々の実施形態では、サイトカインの濃度は、TPO(50μg/ml)、VEGF(50μg/ml)、FL(50μg/ml)、およびbFGF(20~50μg/ml)である。種々の実施形態では、芽球様細胞は、6日目~10日目にメチルセルロースから回収される。
【0057】
NK細胞の生成に使用するための血管芽細胞の調製等の、特定の実施形態では、メチルセルロースは、さらなるサイトカインを含んでいてもよい。これらさらなるサイトカインは、IL2、IL7、IL15、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。種々の実施形態では、これらサイトカインの濃度は、IL2(1~10μg/ml)、IL7(1~20μg/ml)、およびIL15(1~10μg/ml)である。種々の実施形態では、メチルセルロース培養物は、50,000~150,000細胞/mlの濃度で播種される。
【0058】
特定の実施形態では、血管芽細胞は、無エリトロポイエチンメチルセルロース中で生成される。1つの実施形態では、無エリトロポイエチンメチルセルロースは、H4536メチルセルロースである。
【0059】
代替的な実施形態では、多能性幹細胞(iPS細胞およびヒトiPS細胞を含む)が、hESCの代りに使用される。他の実施形態では、血管芽細胞は、非生着血管芽細胞であってもよい。
【0060】
国際出願PCT/US09/43050号および同PCT/US09/43043号は、双方ともに、2009年5月6日に出願され、その全内容が完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、血管芽細胞および非生着血管芽細胞を生成する際の追加的な手引きを提供する。
【0061】
種々の実施形態では、本発明は、治療上有効量の本発明のナチュラルキル細胞または樹状細胞と共に薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。「薬学的に許容される賦形剤」は、一般的に、安全であり、無毒であり、望ましい医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用並びにヒト医薬品使用に許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアゾール組成物の場合にはガス状であってもよい。
【0062】
種々の実施形態では、本発明による医薬組成物は、任意の投与経路で送達するために製剤化することができる。「投与経路」は、当該技術分野で公知の任意の投与経路を指すことができ、エアロゾル、経鼻、経口、経粘膜、経皮、または非経口が含まれるが、それらに限定されない。
【0063】
「非経口」は、一般的に注射に関連する投与経路を指し、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、または経気管が含まれる。非経口経路では、組成物は、注入用または注射用の溶液または懸濁液の形態であってもよく、または凍結乾燥粉末としてでもよい。
【0064】
また、本発明による医薬組成物は、任意の薬学的に許容される担体を含有することができる。「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、目的の化合物を、体内のある組織、器官、または部分から、体内の別の組織、器官、または部分に運搬または輸送することに関与する薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。例えば、担体は、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。担体の各成分は、製剤の他の成分と適合しなければならないという点において、「薬学的に許容」されなければならない。また、担体の各成分は、それが接触する可能性がある任意の組織または器官と接触しての使用に好適でなければならず、その治療的有益性を過度に上回る毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または任意の他の合併症のリスクをもたらしてはならないことを意味する。
【実施例0065】
以下の例は、特許請求されている発明をよりよく説明するために提供されており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。特定の物質が言及される場合、それは例示目的に過ぎず、本発明を限定することは意図されていない。当業者であれば、発明的な能力を行使せず、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発することができる。
【0066】
実施例1
初期分化
両細胞タイプの初期分化手順は同じであり、胚様体(EB)を生成するために、サイトカインを加えたStemline II(Sigma社製)中でhESCを4日間培養することを伴う。サイトカイン、VEGFおよびBMP4を、EB培養の全体にわたって使用し、bFGFを、最初の2日間の後に添加する。合計で4日後に、その結果生じたEBを、0.05%トリプシンで脱凝集し、その後トリプシンを血清含有培地で不活化する。その後、個々の細胞を40μM細胞ストレーナーでろ過し、計数し、TPO(50μg/ml)、VEGF(50μg/ml)、FL(50μg/ml)、およびbFGF(20~50μg/ml)等のさらなるサイトカインを含有するH4436またはH4536メチルセルロース(Stem Cell Technologies社製)に播種する。NK分化の場合、サイトカインIL2(1~10μg/ml)、IL7(1~20μg/ml)、および/またはIL15(1~10μg/ml)を、この段階で添加することもできる。血管芽細胞集団を産生および増殖させるために、1ml当たり50,000~150,000細胞の濃度で、メチルセルロース培養物を播種する。芽球様細胞を、6~10日目にメチルセルロースから回収し、下記の手順のうちの1つにより更に分化させる。
【0067】
実施例2
NK分化
芽球細胞は、IL2(5~10ng/ml)、IL3(1~10ng/ml)、IL6(1~10ng/ml)、IL7(5~20ng/ml)、IL15(5~10ng/ml)、SCF(10~50ng/ml)、およびFL(10~50ng/ml)を加えたH4236メチルセルロースに再播種してもよく、または同じサイトカインおよび10~20%ヒト血清を含有する液体培養に再播種してもよい。6~8日間の培養後、細胞を回収し、10~20%ヒト血清並びにサイトカインIL7(5~20ng/ml)、IL15(5~10ng/ml)、SCF(10~50ng/ml)、およびFL(10~50ng/ml)を加えた液体培地(αMEMまたはDMEM:F12)に、更に14~21日間再播種する。週1回の培地変更を使用して、サイトカイン混合物を新しくする。
【0068】
フローサイトメトリーを分化手順の全体にわたって断続的に使用して、細胞の免疫表現型およびNK細胞表面マーカーの獲得を評価する。細胞表面マーカーには、CD34、CD45、CD56、CD16、CD94、NKG2D、CD3、CD7、CD4、CD8a、およびCD45RAが含まれる。血管芽細胞由来NK細胞の機能を検査する試験には、以下が含まれる:(1)K562赤白血病標的細胞を使用したナチュラル細胞傷害アッセイ、(2)IL12/IL18またはフォルボールミリステートアセテート処理に応答したIFNγ産生、(3)パーフォリンおよびグランザイムB酵素の存在に関する細胞内フローサイトメトリー、および(4)Raji細胞および抗CD20抗体を使用した抗体依存性細胞傷害アッセイ(antibody-dependent cellular cytotoxicty assay)。
【0069】
これまでのところ、本発明者らは、H7およびHuES3 hESCの両方からNK細胞を生成することができた。51Cr放出アッセイに類似する非放射能性細胞傷害性アッセイは、本発明者らの血管芽細胞由来NK細胞が、標準的な4時間の共培養後に、標的K562赤芽球性白血病細胞のアポトーシスを効果的に誘導することができるため、ナチュラル細胞傷害性機能を内包することを示す。
【0070】
実施例3
DC分化
芽球細胞を、10~20%ヒト血清並びにサイトカイン、SCF(20~100ng/ml)、FL(10~50ng/ml)、IL3(5~50ng/ml)、およびGM-CSF(50~100ng/ml)を加えた液体培地(αMEMまたはDMEM:F12)に播種する。7~11日間の培養後、IL4(50~100ng/ml)も培養物に添加し、細胞を更に8~10日間増殖させる。培地変更は、6~7日毎に実施する。DCの成熟化を誘導するために、さらなるサイトカイン混合物(10ng/ml IL1b、10ng/ml TNFγ、150ng/ml IL6)を、48時間培養物に添加することができる。
【0071】
フローサイトメトリーを分化手順の全体にわたって断続的に使用して、細胞の免疫表現型およびDC表面マーカーの獲得を評価する。細胞表面マーカーには、CD11c、CD209(DC-SIGN)、HLA ABC(MHCクラスI)、HLA DR(MHCクラスII)、CD1a、およびCD14が含まれる。成熟化は、T細胞共刺激受容体(CD83)の獲得により評価するが、成熟化に際して、CD209、HLA DR、およびCD11cの発現も増加する場合がある。あるアッセイでは、1μg/ml PGE2、3000単位/ml IFNα2b、20μg/ml poly I:C、またはIFNγ 20ng/ml等のさらなるサイトカインを、成熟化混合物に添加して、DC機能応答を増強することができる。血管芽細胞由来DCの機能性に取り組むアッセイには、以下が含まれる:(1)DQ-オボアルブミン(BD Biosciences社製)処理による抗原取り込み、(2)化学誘引物質、MIP-3bに応答したトランスウエル遊走、(3)HLA不適合T細胞の増殖を増加させるDCの能力を決定するための同種異系混合リンパ球反応アッセイ、(4)DC刺激時のIL12-p70分泌、および(5)抗原負荷DCが、以前に抗原で初回刺激を受けた末梢血単核細胞でIFNγ産生を誘導することができるか否かを決定するための抗原提示アッセイ。
【0072】
本発明者らは、HuES3およびMA01 hESCの両方からDC細胞を生成することができた。48時間の成熟化サイトカイン混合物に応答して、CD83、HLA-DR、CD11c、およびCD209の上方制御が観察された。これらDCは、30分間のアッセイで、DQ-オボアルブミンを取り込み、タンパク質分解することができることが見出される。
【0073】
実施例4
血管芽細胞増殖条件の変更
H4436メチルセルロースで増殖させた血管芽細胞を使用して、上記のNKおよびDC分化手順を実施した。しかしながら、H4536、Stem Cell Technologies社製の無エリトロポイエチンメチルセルロースを使用して、血管芽細胞を効率的に生成することもできる。これら「epoマイナス」血管芽細胞は、元々の「epoプラス」芽球と非常に類似しており、それらは、様々な造血細胞タイプおよび血管細胞タイプへと分化することが可能である。予備的な結果は、NK細胞およびDCを含む種々の造血系列へと血管芽細胞を分化させるためには、H4536の使用が、H4436メチルセルロースよりも著しい利点を提供することができることを示唆する。芽球増殖培地中にepoが存在しないことにより、赤血球マーカーCD235aを発現する細胞の割合を低減させ、CD34、CD45、およびCD41aを発現する細胞の割合を増加させることが見出された。細胞表面マーカー発現におけるこの違いのため、「epo-マイナス」増殖条件は、骨髄系列および/またはリンパ系列への分化を増強することができる。
【0074】
実施例5
iPS細胞からのMKの生成
OP9共培養系を使用して、本発明者らは、iPS細胞からMKを生成することができることを示す。数千個のCD41a+MKを、数十万個のiPS細胞から生成した。
【0075】
実施例6
ヒトESCからのNK細胞分化
分化手順を以下のように実施した:
H7 ESCを、胚様体(EB)へと4日間分化させた。EBを回収し、血管芽細胞を産生および増殖させるために、サイトカイン豊富なメチルセルロースに10~15日間移した。血管芽細胞を回収し、10~20%ヒトAB血清を加えた無フィーダー液体培地に一群のサイトカインと共に更に14~17日間配置し、3~4日毎に培地を半分変更した。
免疫表現型検査(フローサイトメトリーを使用):
未熟NK細胞は、CD56bright、CD16lo、KIRlo、CD117+、CD94-、NKG2D+だった。上記の手順の変法を使用することにより、32日間の分化後の生細胞の20~30%が、CD56+CD16-だった。成熟NK細胞は、CD56dim、CD16hi、KIRhi、CD117lo/-、CD94+、NKG2D+だった。上記の手順を使用することにより、31日間の分化後の生細胞の20%が、CD56-CD16+であり、それらの5%が、CD56loCD16+だった。
【0076】
機能アッセイ:
ナチュラル細胞傷害性:成熟NK細胞は、ヒトK562赤白血病細胞、MCF7細胞、U87細胞、PC3細胞、NTERA2細胞等の標的細胞のアポトーシスを誘発することができる。「3FC」アッセイを使用して、細胞傷害性の効率を評価する。このアッセイは、51Cr放出アッセイと類似しているが、放射能を必要としない。Derby et al., Immunol. Letters 78: 35-39 (2001)を参照されたい。上述の成熟NK細胞の異種性集団(アイテムB2-a)が、標準的な4時間の実験で65~70%のK562細胞にアポトーシスを誘発することが見出された。
【0077】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC):NK細胞表面のFcyRIII(CD16)は、標的細胞に結合された抗CD20抗体のfc領域に結合し、ADCCを誘導する。Raji細胞(バーキットリンパ腫(Burkett’s lymphoma)に由来する)を抗CD20抗体と共にプレインキュベートし、ADCCアッセイでの標的として使用する。(Tsirigotis et al., J of Steroid Biochem and Mol Bio 108: 267-271 (2008))。
【0078】
IFNγサイトカイン産生:未熟NK細胞は、イオノマイシンまたはIL12を加え、IL18を加えたPMA(フォルボールミリステートアセテート)による一晩の処理に応答して、大量のIFNγを産生する。IFNγ分泌をブレフェルジンaで阻止し、細胞内フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーおよびIFNγについて細胞を染色する。Woll et al. J. of Immunol. 175: 5095-5103 (2005)を参照されたい。
【0079】
異種移植マウスモデルを使用したNK細胞の生体内免疫療法能力:生物発光(ルシフェラーゼ含有)K562細胞を、腫瘍生着用のNOD/SCIDマウスに注射し、その後NK細胞のボーラス並びにIL2およびIL15の1日1回のIP注射を行う。生物発光画像診断を使用して、生体内NK免疫療法能力を経時的にモニターする。Woll et al. Blood 113 (24): 6094-6101 (2009)を参照されたい。
【0080】
実施例7
血管芽細胞を骨髄再増殖細胞として使用することにより、またはそれらを樹状突起細胞、ナチュラルキラー細胞、T細胞、および/または間葉系幹細胞(MSC)へと分化させることにより、本発明者らは、癌、HIV、および/または自己免疫疾患(automimmune disease)と闘うための大規模で効果的な細胞に基づく療法を生み出すことができる。本発明者らは、hESCおよびiPS細胞の両方からの樹状細胞(DC)の分化を、40~55%の効率で達成することができた。2つの新しい機能アッセイに加えて、ヒト骨髄に由来するDCと対照比較することにより、今や、hESC由来DCが、多くの同様な特徴をヒトBM由来DCと共有していることが確認され、さらなる最適化を必要とする分野も特定された。ナチュラルキラー細胞分化の場合、ヒト骨髄由来NK細胞と対照比較することにより、骨髄細胞供給源を使用した場合さえ、生体外NK細胞分化が、あまり効率的ではないことが確認された。本発明者らは、芽球由来NK細胞が、ナチュラル細胞傷害性能力を示すことを見出した。抗体依存性細胞傷害アッセイを実施する。T細胞分化の場合、本発明者らは、Notchシグナル伝達を刺激するためにヒトデルタリガンド発現OP9間質細胞系統の生成することに成功し、血管芽細胞のT細胞分化を刺激するために、この間質細胞系統を使用している。
【0081】
血管芽細胞由来樹状細胞(40~55%効率)
細胞表面マーカー:CD11c、45、209は、芽球由来DCおよびヒト骨髄由来DCでは同様の発現を示すが、HLA-DRは、芽球DCでは、ヒトBM DCよりもはるかに低いレベルで発現される。
【0082】
機能アッセイ(抗原取り込みおよび遊走アッセイについて以前に報告されている)。 IL12-p70分泌:IL12p70は、CD4+T細胞からのTh1指向性応答を誘発するために、成熟DCにより分泌される。ヒトBM由来DCは、500pg/mlを超えるIL12p70を産生することができるが、芽球由来DCは、成熟化時に検出可能なIL12p70を産生しなかった。混合リンパ球反応(MLR)アッセイ:MLRアッセイは、同種異系T細胞の増殖を刺激するDCの能力を決定する。臍帯血単核細胞(CBMC、これはT細胞を含む)を応答物として使用し、蛍光標識し、それらの増殖を、未熟または成熟芽球由来DCと共に4~5日間共培養した後で測定した。予備的な結果は、レスポンダー細胞が、成熟(m)DCに応答して増殖することを示す。
【0083】
血管芽細胞由来ナチュラルキラー細胞:細胞表面マーカーCD45、CD7、CD94、CD56、CD16、およびNKG2Dを、芽球由来およびヒト骨髄由来NK細胞で評価した。
【0084】
NK分化効率:組換えヒトSox7タンパク質を、NK分化の前駆体から始めて、CD34+の貯留を増加させるその能力について調査されていた。結果は、rhSox7が、CD34+細胞の%に劇的な影響を及ぼさないことを示唆する。重要な細胞間接触およびNK細胞分化の分泌因子を提供することができる間質フィーダー層として、マウスAFT024を調査した。細胞表面マーカー発現により示されたように、AFT024間質共培養は、ヒトBMまたは芽球のNK分化をいずれも増強しなかった。
【0085】
血管芽細胞由来T細胞:Notchシグナル伝達は、T細胞分化にとって重要である。そのため、ヒトデルタ様リガンド1(hDLL1)のcDNAを、MSCV-ires-GFPに基づくレトロウイルスベクターにクローニングし、その結果生じたウイルス上清を使用して、OP9間質細胞を感染させた。ウイルスが組み込まれると、OP9細胞は、それらの細胞表面にhDLL1を発現し、gfp陽性になるだろう。FACSに基づく選別を使用して、感染OP9細胞の異種性貯留から最も高いgfp陽性の細胞を精製した。これらOP9-hDL1S(選別では「S」)を増殖させ、特徴付けした。Q-RT-PCR、免疫蛍光法、およびフローサイトメトリーは全て、これら細胞でのhDLL1タンパク質の発現を確認する。
【0086】
実施例8
臍帯血および末梢血単核細胞は両方とも、レスポンダーとして使用される。本発明者らは、陽性対照エフェクターとしてヒト骨髄由来DCを使用する。
【0087】
E4BP4は、NK系列発生にとって重要であることが示されており(Gascoyne et al. Nature Immunology 10(10): 1118-1125, 2009を参照)、生体外でのより高い効率に必要な転写プログラムを提供することができる。
【0088】
NK細胞分化。本発明者らは、E4BP4 cDNAを、血管芽細胞でそれを過剰発現するためにレトロウイルスベクターにクローニングし、NK分化を増加させるその能力を評価する。RT-PCRを使用して、NK細胞機能に重要である種々のKIR受容体アイソフォーム、並びに酵素、パーフォリンおよびグランザイムBの発現をモニターする。機能アッセイの場合、本発明者らは、芽球由来NK細胞が、ナチュラル細胞傷害性を示すことを示した。従って、芽球由来NK細胞の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)能力を評価する。ADCCアッセイに必要な試薬には、バーキットリンパ腫由来Raji細胞および抗CD20抗体が含まれる。CD20表示Raji細胞とNK細胞との共培養は、特異的ADCC応答を誘発するはずであり、それは、フローサイトメトリー手段でモニターされるだろう。
【0089】
NK参考文献:
1. Woll, P, et al. J. of Immunology. 175: 5095-5103 (2005).
2. Woll, P et al. Blood113(24): 6094-101 (2009).
3. Bordoni et al. Hepatology 39: 1508-1516 (2004).
4. Tabatoabaei-Zavareh et al. PLOS One Issue 2, e232 (2007).
5. McCullar, V et al. Exp. Hematology 36(5): 598-608 (2008).
6. Freud, AG et al. Immunity 22:295-304 (2005).
7. Yu, H et al. Blood 92 (10): 3647-3657 (1998).
【0090】
DC文献:
1. Su et al. Clinical Cancer Research 14(19): 6207-6217 (2008).
2. Tseng et al. Regenerative Medicine 4(4): 513-526 (2009).
3. Bandi et al. AIDS Research and Therapy 5:1 (2008). (open-access)
4. Slukvin, II et al. J of Immunology 176: 2924-2932 (2006).
【0091】
本発明の種々の実施形態が、発明を実施するための形態に記述されている。これらの説明は、上記の実施形態を直接記述するが、当業者であれば、本明細書に表示および記述されている特定の実施形態の改変および/または変異を想起することができることが理解される。本説明の範囲以内にあるあらゆるそのような改変または変異も同様に本説明の範囲に含まれることが意図される。特別な注記がない限り、本明細書および特許請求の範囲にある単語および語句には、該当する技術分野(複数可)の当業者にとって通常の習慣的な意味が与えられることが、本発明者らの意図である。
【0092】
本出願の出願時に出願者に知られている本発明の種々の実施形態の先述の説明が示されており、それは、例示および説明のためであることが意図されている。本説明は、網羅的であることも、開示された詳細な形態に本発明を限定することも意図されておらず、上記の教示に照らして多数の改変および変異が可能である。記載された実施形態は、本発明の原理およびその実用的応用を説明し、他の当業者が、企図した特定の使用に好適なように種々の改変を施して、本発明を種々の実施形態で使用することを可能にする役目を果たす。従って、本発明は、本発明を実施するための開示された特定の実施形態に限定されないことが意図されている。
【0093】
本発明の特定の実施形態が表示および記述されているが、当業者であれば、本明細書の教示に基づき、本発明およびそのより広範な態様から逸脱せずに変更および改変を為すことができることは明らかであり、従って添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内にあるそのような変更および改変を全て、それらの範囲に包含することになる。本明細書で使用されている用語は、一般的に「非限定的」な用語であると意図されていることが、当業者により一般的に理解されるだろう(例えば、用語「含む(including)」は、「~を含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「~を少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「~を含むが、限定されない」と解釈されるべきである等)。