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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027796
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】間葉系間質細胞及びその関連用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20220203BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20220203BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20220203BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20220203BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20220203BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220203BHJP
   C12N 5/073 20100101ALN20220203BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/39
A61K35/36
A61K35/407
A61P43/00 121
A61P37/02
A61P25/00
A61P35/00
A61P9/00
A61P1/16
A61P19/00
A61P1/04
A61P1/10
A61P1/02
A61P19/02
A61P35/02
A61P21/02
A61P17/02
A61P25/16
A61P13/12
A61P9/04
A61P11/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P11/02
A61P11/06
A61P29/00
C12N5/077
C12N5/10
C12N5/073
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189684
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2019087857の分割
【原出願日】2012-11-30
(31)【優先権主張番号】61/565,358
(32)【優先日】2011-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509236520
【氏名又は名称】アステラス インスティテュート フォー リジェネレイティブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ランサ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】キンブレル, エリン アン
(72)【発明者】
【氏名】チュー, ジアンリン
(72)【発明者】
【氏名】コウリス, ニコラス アーサー
(57)【要約】
【課題】本発明は、概して、血管芽細胞から誘導された間葉系間質細胞(MSC)の新規な調製物、及びこのようなMSCを使用して病態を治療する方法に関する。
【解決手段】本発明の方法は、効力を保持している若々しい表現型を有する相当数のMSCを産生し、これは病態の治療に有用である。例えば、哺乳動物患者における使用に好適な医薬調製物であって、少なくとも10個の間葉系間質細胞と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬調製物であり、前記間葉系間質細胞が、10回目の倍加までに前記細胞の25%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞への分化を受けている状態で、細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製能力を有する、医薬調製物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物患者における使用に好適な医薬調製物であって、少なくとも10個の間葉系間質細胞と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬調製物であり、前記間葉系間質細胞が、10回目の倍加までに前記細胞の25%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞への分化を受けている状態で、細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製能力を有する、医薬調製物。
【請求項2】
哺乳動物患者における使用に好適な医薬調製物であって、少なくとも10個の間葉系間質細胞と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬調製物であり、前記間葉系間質細胞が、5回目の継代までに前記細胞の25%未満が細胞死、老化又は線維芽細胞への分化を受けている状態で、細胞培養中で少なくとも5回の前記継代を受けるための複製能力を有する、医薬調製物。
【請求項3】
少なくとも10個の間葉系間質細胞と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、血管芽細胞から分化する、医薬調製物。
【請求項4】
少なくとも10個の間葉系間質細胞を含む低温細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、10回目の倍加までに前記細胞の25%未満が細胞死、老化又は線維芽細胞への分化を受けている状態で、細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製能力を有する、低温細胞バンク。
【請求項5】
少なくとも10個の間葉系間質細胞と1%未満の任意の他の細胞型とを含む精製細胞集団であって、前記間葉系間質細胞が、10回目の倍加までに前記細胞の25%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞への分化を受けている状態で、細胞培養中で少なくとも10回の前記集団倍加を受けるための複製能力を有する、精製細胞集団。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、胚性幹細胞系又は誘導多能性幹細胞系などの多能性幹細胞ソースから分化する、調製物又は細胞バンク。
【請求項7】
請求項6に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記調製物又はバンクの前記間葉系間質細胞の全てが、共通の多能性幹細胞ソースから分化する、調製物又は細胞バンク。
【請求項8】
請求項6に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、前記間葉系間質細胞の数に増殖するために培養中で継代され、20回未満の集団倍加後に培養から単離された多能性幹細胞ソースから分化する、調製物又は細胞バンク。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、HLAに遺伝子型で同一である、調製物又は細胞バンク。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、ゲノム的に同一である、調製物又は細胞バンク。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞の少なくとも30%が、CD10が陽性である、調製物又は細胞バンク。
【請求項12】
請求項11に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞の少なくとも60%が、マーカーCD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166及びHLA-ABCが陽性である、調製物又は細胞バンク。
【請求項13】
請求項1~5又は11のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞の30%未満が、マーカーCD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4及びTLR3が陽性である、調製物又は細胞バンク。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、25日未満の細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製速度を有する、調製物又は細胞バンク。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、8kbよりも長い平均末端制限酵素断片長さ(TRF)を有する、調製物又は細胞バンク。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、(i)細胞周期調節及び細胞老化、(ii)細胞エネルギー及び/又は脂質代謝、及び(iii)アポトーシスの1つ以上に関与するタンパク質の5回の集団倍加を受けている、前記間葉系間質細胞が、骨髄から誘導された間葉系間質細胞に対して、統計的に有意な減少した含量及び/又は酵素活性を有する、調製物又は細胞バンク。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、骨髄から誘導された間葉系間質細胞調製物に対して、細胞骨格及びそれに関連する細胞動態に関与するタンパク質の統計的に有意な増加した含量及び/又は酵素活性を有する、調製物又は細胞バンク。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、培養中において10回の集団倍加にわたって5,000,000を超える、フローサイトメトリーによって測定される前方散乱光値を有する細胞において、75%超の増加を受けない、調製物又は細胞バンク。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の調製物又は細胞バンクであって、前記間葉系間質細胞が、休止状態において、骨髄又は脂肪組織から誘導される間葉系間質細胞によって、休止状態で発現されるIL-6mRNAレベルの10%未満である、インターロイキン-6をコード化するmRNAを発現する、調製物又は細胞バンク。
【請求項20】
請求項1~3のいずれか一項に記載の調製物であって、ヒト患者への投与に好適である、調製物。
【請求項21】
請求項1~3のいずれか一項に記載の調製物であって、非ヒト獣医動物への投与に好適である、調製物。
【請求項22】
間葉系間質細胞を含む医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、少なくとも10回の集団倍加を受けることが可能であり、前記10回の集団倍加が、約27日以内、より好ましくは、約26日未満、好ましくは25日未満、より好ましくは約24日未満、更により好ましくは約23日未満、更により好ましくは約22日未満、又はそれ未満で生じる、医薬調製物。
【請求項23】
間葉系間質細胞を含む医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、少なくとも15回の集団倍加を受けることが可能である、医薬調製物。
【請求項24】
請求項23に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、少なくとも20、25、30、35、40、45、50回又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能である、医薬調製物。
【請求項25】
間葉系間質細胞を含む医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、培養中で、少なくとも15回の集団倍加、少なくとも20回の集団倍加、又は少なくとも25回の集団倍加を受けることが可能である、医薬調製物。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、血管芽細胞の生体外分化によって産生される、医薬調製物。
【請求項27】
請求項22~26のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、霊長類細胞又はその他の哺乳動物細胞である、医薬調製物。
【請求項28】
請求項22~26のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、ヒト細胞である、医薬調製物。
【請求項29】
請求項23~28のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記15回の集団倍加が、約35日以内、より好ましくは、約34日以内、好ましくは33日以内、より好ましくは32日以内、更により好ましくは31日以内、又は更により好ましくは約30以内で生じる、医薬調製物。
【請求項30】
請求項22~29のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記調製物が、約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満の多能性細胞を含む、医薬調製物。
【請求項31】
請求項22~30のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記調製物が、多能性細胞を含まない、医薬調製物。
【請求項32】
請求項22~31のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記調製物が、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の間葉系間質細胞を含む、医薬調製物。
【請求項33】
請求項22~31のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞の少なくとも50%が、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも1つ;(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの少なくとも1つ;(iii)CD105、CD73及び/又はCD90若しくは(iv)これらの任意の組み合わせが陽性である、医薬調製物。
【請求項34】
請求項22~33のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞の
少なくとも50%が、(i)CD105、CD73及び/又はCD90の少なくとも2つ、(ii)CD10、CD24、IL-11;AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも2つ;若しくは(iii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性である、医薬調製物。
【請求項35】
請求項22~33のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、(i)前記間葉系間質細胞の少なくとも50%が、CD105、CD73及びCD90の全てが陽性であり;(ii)前記間葉系間質細胞の少なくとも50%が、CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり、及び/又は(iii)前記間葉系間質細胞の5%以下又は10%以下が、CD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、又はTLR3が陽性である、医薬調製物。
【請求項36】
請求項32、33又は34に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞の少なくとも60%、70%、80%又は90%が、(i)CD105、CD73及びCD90の1つ以上;(ii)CD10、CD24、IL-11;AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の1つ以上;若しくは(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの1つ以上が陽性である、医薬調製物。
【請求項37】
請求項22~36のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、これを必要とする対象において不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含む、医薬調製物。
【請求項38】
請求項22~37のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、これを必要とする受容者への移植のための他の細胞、組織又は器官を更に含む、医薬調製物。
【請求項39】
請求項38に記載の医薬調製物であって、前記他の細胞又は組織が、RPE細胞、皮膚細胞、角膜細胞、膵細胞、肝細胞、心細胞又は前記細胞のいずれかを含む組織である、医薬調製物。
【請求項40】
請求項22~39のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、骨髄から誘導されず、免疫調節アッセイにおける前記調製物の前記効力が、骨髄由来間葉系間質細胞の調製物の前記効力よりも大きい、医薬調製物。
【請求項41】
請求項40に記載の医薬調製物であって、前記効力が、EC50用量を決定する免疫調節アッセイによってアッセイされる、医薬調製物。
【請求項42】
請求項22~41のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記調製物が、10回の集団倍加後に、その増殖能の約50%~100%を保持する、医薬調製物。
【請求項43】
請求項22~42のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、多能性細胞から直接的に誘導されず、前記間葉系間質細胞が、(a)凝集しないか、又は多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも少ない量で実質的に凝集し;(b)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞と比較して、分裂する場合、より容易に分散し;(c)等しい数の多能性細胞から出発する場合、多能性細胞から直接的
に誘導された間葉系間質細胞よりも数が多く;及び/又は(d)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも早期に特徴的な間葉系細胞表面マーカーを獲得する、医薬調製物。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項に記載の調製物であって、前記間葉系間質細胞が哺乳動物細胞である、調製物。
【請求項45】
請求項1~43のいずれか一項に記載の調製物であって、前記間葉系間質細胞が、ヒト、イヌ、ウシ、非ヒト霊長類、ネズミ、ネコ又はウマ細胞である、調製物。
【請求項46】
間葉系間質細胞を生成するための方法であって、間葉系間質細胞を生じる条件下で血管芽細胞を培養する工程を含む、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、フィーダーフリー条件下で培養される、方法。
【請求項48】
請求項46又は47に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、マトリックス上で平板培養される、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記マトリックスが、形質転換増殖因子β(TGF-β)、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子1、ウシ線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び/又は血小板由来増殖因子(PDGF)の1つ以上を含む、方法。
【請求項50】
請求項48又は49に記載の方法であって、前記マトリックスが、ラミニン、フィブロネクチン、ビトイロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、硫酸ヘパラン、マトリゲル(エンゲルブレス-ホルム-スウォーム(EHS)マウスの肉腫細胞から得た可溶性調製物)、ヒト基底膜抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項51】
請求項48~50のいずれか一項に記載の方法であって、前記マトリックスが、エンゲルブレス-ホルム-スウォームマウスの肉腫細胞から得た可溶性調製物を含む、方法。
【請求項52】
請求項46~51のいずれか一項に記載の方法であって、前記間葉系間質細胞が、哺乳動物細胞である、方法。
【請求項53】
請求項46~51のいずれか一項に記載の方法であって、前記間葉系間質細胞が、ヒト、イヌ、ウシ、非ヒト霊長類、ネズミ、ネコ又はウマ細胞である、方法。
【請求項54】
請求項46~53のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、αMEMを含む培地中で培養される、方法。
【請求項55】
請求項46~54のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、血清又は血清代替品を含む培地中で培養される、方法。
【請求項56】
請求項46~55のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、0%、0.1~0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%のウシ胎児血清で補充されたαMEMを含む培地中で培養される、方法。
【請求項57】
請求項46~56のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、少なくと
も約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間、前記マトリックス上で培養される、方法。
【請求項58】
請求項46~57のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、多能性細胞から分化する、方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法であって、前記多能性細胞が、iPS細胞又は割球から産生された多能性細胞である、方法。
【請求項60】
請求項58に記載の方法であって、前記多能性細胞が、ヒト胚を破壊することなく、1つ以上の割球から誘導される、方法。
【請求項61】
請求項58に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、(a)多能性細胞を培養し、細胞のクラスタを形成する工程を含む方法によって、前記多能性細胞から分化する、方法。
【請求項62】
請求項46~61のいずれか一項に記載の方法であって、前記多能性細胞が、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び/又は骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養される、方法。
【請求項63】
請求項61に記載の方法であって、工程(a)における前記多能性細胞が、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び/又は骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養される、方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法であって、前記VEGF及びBMP-4が、細胞培養の開始の0~48時間以内に前記多能性細胞培養に添加され、前記VEGFが任意選択で20~100nm/mLの濃度で添加され、前記BMP-4が、任意選択で15~100ng/mLの濃度で添加される、方法。
【請求項65】
請求項63に記載の方法であって、前記VEGF及びBMP-4が、前記細胞培養の開始の0~48時間以内に前記工程(a)の細胞培養に添加され、前記VEGFが任意選択で20~100nm/mLの濃度で添加され、前記BMP-4が、任意選択で15~100ng/mLの濃度で添加される、方法。
【請求項66】
請求項61~65のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、(b)前記細胞のクラスタの血管芽細胞への前記分化を誘導するのに十分な量の少なくとも1つの増殖因子の存在下で、前記細胞のクラスタを培養する工程を更に含む方法によって、多能性細胞から分化する、方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法であって、工程(b)において添加される前記少なくとも1つの増殖因子が、1つ以上の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、幹細胞因子(SCF)、Flt 3L(FL)、トロンボポイエチン(TPO)、及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上を含む、方法。
【請求項68】
請求項66に記載の方法であって、工程(b)において添加される前記少なくとも1つの増殖因子が、約20~25ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、約20~100ng/mlの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、約15~100ng/mlの骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、約20~50ng/mlの幹細胞因子(SCF)、約10~50ng/mlのFlt 3L(FL)、約20~50ng/mlのトロンボポイエチン(TPO)、及び/又は1.5~5U/mlのtPTD-HOXB4の1
つ以上を含む、方法。
【請求項69】
請求項66~68のいずれか一項に記載の方法であって、工程(b)において任意選択で添加される前記少なくとも1つの増殖因子の1つ以上が、工程(a)の前記開始から36~60時間以内又は40~48時間以内に前記培養に添加される、方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、工程(b)において添加される前記少なくとも1つの増殖因子の1つ以上が、工程(a)の前記開始から48~72時間以内に前記培養に添加される、方法。
【請求項71】
請求項66に記載の方法であって、工程(b)において添加される前記少なくとも1つの因子が、bFGF、VEGF、BMP-4、SCF及び/又はFLの1つ以上を含む、方法。
【請求項72】
請求項66~71のいずれか一項に記載の方法であって、(c)前記細胞のクラスタを、任意選択で単一細胞に解離する工程を更に含む、方法。
【請求項73】
請求項66~72のいずれか一項に記載の方法であって、(d)前記血管芽細胞を少なくとも1つの追加の増殖因子を含む培地中で培養する工程を更に含み、前記少なくとも1つの追加の増殖因子が、前記血管芽細胞を活発に増殖させるのに十分な量で存在する、方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法であって、工程(d)における前記少なくとも1つの追加の増殖因子が、インスリン、トランスフェリン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上を含む、方法。
【請求項75】
請求項73に記載の方法であって、工程(d)における前記少なくとも1つの追加の増殖因子が、約10~100μg/mlのインスリン、約200~2,000μg/mlのトランスフェリン、約10~50ng/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、約10~20ng/mlのインターロイキン-3(IL-3)、約10~1000ng/mlのインターロイキン-6(IL-6)、約10~50ng/mlの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、3~50U/mlのエリスロポイエチン(EPO)、約20~200ng/mlの幹細胞因子(SCF)、約20~200ng/mlの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、約15~150ng/mlの骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及び/又は約1.5~15U/mlのtPTD-HOXB4の1つ以上を含む、方法。
【請求項76】
請求項61~75のいずれか一項に記載の方法であって、工程(a)、(b)、(c)及び/又は(d)における前記培地が、無血清培地である、方法。
【請求項77】
請求項46~76のいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、9,500万個、1億個、1億2,500万個、又は1億5,000万個の間葉系間質細胞が生成される、方法。
【請求項78】
請求項46~77のいずれか一項に記載の方法であって、前記血管芽細胞が、前記多能性細胞の分化を誘導し始めて少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17又は18日後に採取される、方法。
【請求項79】
請求項46~78のいずれか一項に記載の方法であって、前記間葉系間質細胞が、前記多能性細胞の分化を誘導し始めて少なくとも25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50日で生成される、方法。
【請求項80】
請求項46~79のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法が、培養の約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35日以内に、約200,000個の血管芽細胞から生成される少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、9,500万個、1億個、1億2,500万個、又は1億5,000万個の間葉系間質細胞が生成されることをもたらす、方法。
【請求項81】
請求項46~80のいずれか一項に記載の方法であって、前記間葉系間質細胞が、血管芽細胞としての培養の約26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35日以内に、少なくとも1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:415、1:425、1:440、1:450、1:365、1:475、1:490及び1:500の間葉系間質細胞に対する血管芽細胞の比で、血管芽細胞から生成される、方法。
【請求項82】
請求項81に記載の方法であって、前記細胞がヒト細胞である、方法。
【請求項83】
請求項46~82のいずれか一項に記載の方法によって得られる血管芽細胞から誘導される、間葉系間質細胞。
【請求項84】
血管芽細胞の生体外分化によって誘導される間葉系間質細胞。
【請求項85】
請求項83又は84に記載の間葉系間質細胞であって、(i)前記間葉系間質細胞の少なくとも50%が、CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり、並びに(ii)前記間葉系間質細胞の10%以下又は5%以下が、CD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4又はTLR3が陽性である、間葉系間質細胞。
【請求項86】
請求項83又は84に記載の間葉系間質細胞であって、前記間葉系打間質細胞の少なくとも50%が、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の全て;若しくは(ii)CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり、間葉系間質細胞。
【請求項87】
請求項83又は84に記載の間葉系間質細胞であって、前記間葉系間質細胞の少なくとも60%、70%、80%又は90%が、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも1つ;若しくは(ii)CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの少なくとも1つが陽性である、間葉系間質細胞。
【請求項88】
請求項87に記載の間葉系間質細胞であって、前記間葉系間質細胞の10%以下又は5%以下が、CD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、St
ro-1、CXCR4、又はTLR3が陽性である、方法。
【請求項89】
請求項83~88のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞の調製物。
【請求項90】
請求項89に記載の調製物であって、前記調製物が、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満の多能性細胞を含む、調製物。
【請求項91】
請求項89に記載の調製物であって、多能性細胞を含まない、調製物。
【請求項92】
請求項89~91のいずれか一項に記載の調製物であって、前記調製物が、実質的に精製され、任意選択で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のヒト間葉系間質細胞を含む、調製物。
【請求項93】
請求項86~92のいずれか一項に記載の調製物であって、前記調製物が、実質的に類似したレベルのp53及びp21タンパク質を含むか、又はp21タンパク質と比較してp53タンパク質の前記レベルが、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍大きい、調製物。
【請求項94】
請求項83~93のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は調製物であって、前記間葉系間質細胞が、培養中で少なくとも5回の集団倍加を受けることが可能である、間葉系間質細胞又は調製物。
【請求項95】
請求項83~93のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は調製物であって、前記間葉系間質細胞が、培養中で少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60回又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能である、間葉系間質細胞又は調製物。
【請求項96】
請求項83~95のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は調製物であって、前記間葉系間質細胞が、(a)凝集しないか、又は多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも少ない量で凝集し;(b)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞と比較して、分裂する場合、より容易に分散し;(c)等しい数の多能性細胞で出発する場合、多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも多い数であり;及び/又は(d)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも早期に特徴的な間葉系細胞表面マーカーを獲得する、間葉系間質細胞又は調製物。
【請求項97】
請求項83~96のいずれか一項に記載の前記間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物を含む医薬調製物。
【請求項98】
請求項97に記載の医薬調製物であって、不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含む、医薬調製物。
【請求項99】
請求項97に記載の医薬調製物であって、不必要な免疫応答を治療するために有効な間
葉系間質細胞の量を含み、これを必要とする受容者への移植のための他の細胞又は組織を更に含む、医薬調製物。
【請求項100】
請求項99に記載の医薬調製物であって、前記他の細胞又は組織が、同種異系又は同系の膵臓、神経、肝臓、RPE、角膜細胞又は前述のいずれかを含有する組織である、医薬調製物。
【請求項101】
請求項97~100のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、自己免疫障害又は同種異系細胞に対する免疫反応を治療することでの使用のためのものである、医薬調製物。
【請求項102】
請求項101に記載の医薬調製物であって、多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、心筋梗塞、器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、放射線熱傷、パーキンソン病、微少骨折、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生、ブドウ膜炎又はこれらの組み合わせを治療することでの使用のためのものである、医薬調製物。
【請求項103】
請求項1~3、22~45又は83~102のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物を含む、キット。
【請求項104】
請求項1~3、22~45又は83~102のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物を含むキットであって、前記細胞又は細胞の調製物が、凍結又は低温保存される、キット。
【請求項105】
請求項1~3、22~45又は83~102のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物を含むキットであって、前記細胞又は細胞の調製物が、細胞送達用ビヒクル内に封入される、キット。
【請求項106】
疾患又は障害を治療するための方法であって、請求項1~3、22~45又は83~102のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項107】
請求項106に記載の方法であって、他の細胞又は組織の前記移植を更に含む、方法。
【請求項108】
請求項107に記載の方法であって、前記細胞又は組織が、網膜、RPE、角膜、神経、免疫、骨髄、肝臓又は膵臓の細胞を含む、方法。
【請求項109】
請求項106~108のいずれか一項に記載の方法であって、前記疾患又は障害が、
多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、心筋梗塞、器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、パーキンソ
ン病、微少骨折、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生、又はこれらの組み合わせから選択される、方法。
【請求項110】
請求項106又は107に記載の方法であって、前記疾患又は障害がブドウ膜炎である、方法。
【請求項111】
請求項106又は107に記載の方法であって、前記疾患又は障害が、自己免疫障害又は同種異系細胞に対する免疫反応である、方法。
【請求項112】
請求項111に記載の方法であって、前記自己免疫性障害が、多発性硬化症である、方法。
【請求項113】
骨損失又は軟骨損傷を治療する方法であって、請求項1~3、22~45又は83~97のいずれか一項に記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項114】
請求項106~113のいずれか一項に記載の方法であって、前記間葉系間質細胞が、同種移植又は同系移植細胞又は組織と組み合わせて投与される、方法。
【請求項115】
請求項114に記載の方法であって、前記同種移植細胞が、網膜色素上皮細胞、網膜細胞、角膜細胞、又は筋細胞を含む、方法
【請求項116】
有糸分裂不活性化間葉系間質細胞を含む、医薬調製物。
【請求項117】
請求項116に記載の医薬調製物であって、前記間葉系間質細胞が、血管芽細胞から分化する、医薬調製物。
【請求項118】
請求項116に記載の医薬調製物であって、少なくとも10個の間葉系間質細胞及び薬学的に許容し得る担体を含む、医薬調製物。
【請求項119】
請求項73に記載の方法であって、e)前記間葉系間質細胞を有糸分裂的に不活性化する工程を更に含む、方法。
【請求項120】
請求項119に記載の方法によって生成された有糸分裂不活性化間葉系間質細胞を含む、医薬調製物。
【請求項121】
請求項116~118又は120のいずれか一項に記載の調製物であって、ヒト患者への投与に好適である、調製物。
【請求項122】
請求項116~118又は120のいずれか一項に記載の調製物であって、非ヒト獣医哺乳動物への投与に好適である、調製物。
【請求項123】
請求項116~118又は120のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、前記調製物が、多能性細胞を含まない、医薬調製物。
【請求項124】
請求項116~118又は120のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、これを必要とする対象において不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含む、医薬調製物。
【請求項125】
請求項116~118又は120のいずれか一項に記載の医薬調製物であって、炎症呼吸状態、急性損傷に起因する呼吸状態、成人性呼吸困難症候群、外傷後成人性呼吸困難症候群、移植肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、気腫、慢性閉塞性気管支炎、気管支炎、アレルギー反応、細菌性肺炎に起因する損傷、ウイルス性肺炎に起因する損傷、喘息、刺激物質への曝露、喫煙、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、難聴、自己免疫性難聴、騒音性難聴、乾癬及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される疾患又は状態を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含む、医薬調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が、全体が参照として本明細書に組み込まれる、「METHODS
OF GENERATING MESENCHYMAL STROMAL CELLS
USING HEMANGIOBLASTS」と題され、2011年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/565,358号明細書(代理人整理番号第75820.210001号)に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、例えば、対象における不適切な免疫応答によって特徴付けられる病態の発現率を低減させるための、並びにその病態を規定している異常が正常な状態に戻されるように病態の根源に更に影響を与えるための細胞ベース療法の用途に関する。特に、本発明は、対象における病態の発現率の低下において高い効力を付与する「若々しい」細胞の表現型を保持する間葉系間質細胞(MSC)に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの病態は、例えば移植拒絶反応、炎症及び自己免疫障害などの、宿主内部の不必要な又は過剰な免疫応答を通して臨床的に顕在化する。免疫抑制療法は、過剰な免疫応答によって特徴付けられる病態の根本原因を治療するのではなく、症状を治療するために開発された。これら療法は、免疫機能を下方制御する上で有効であり、然る故に、癌及び日和見感染、並びにプレドニゾン、シクロスポリン、及びタクロリムスなどの薬剤からの白内障、高血糖症、挫傷、及び腎毒性を含める重篤な有害事象への可能性をもたらす。
【0004】
免疫系全体を抑制することがない療法が開発されているが、これらレジメンに関連する限界がなお存在する。これら免疫調節治療は、免疫系内の狭いポイントを標的にするために、異なる副作用、場合によっては重症度が軽減された副作用を有する。このような免疫調節療法の例としては、抗体、例えば抗CD3又は抗IL2Rの使用が挙げられる。これら免疫調節療法は、非応答性が高まる状態を誘導する上で有効であるが、これら免疫調節療法の中止は、望ましくない病態への逆転をもたらす。
【0005】
間葉系間質細胞(MSC)は、自己再生能、並びに間葉系細胞系列の中では、骨芽細胞、軟骨細胞、及び脂肪細胞に分化するための能力を有する多能性幹細胞である。近年、ヒトMSCの複数系列分化能及び免疫調節特性に関する集中した研究は、これら細胞が、免疫学的障害並びに変性疾患を含める様々な臨床的状態を治療するために用いることが可能であることを示した。結果的に、MSCを使用する多くの臨床試験が、多種多様な症状:移植片対宿主疾患(GVHD)、心筋梗塞及び炎症並びに自己免疫疾患及び障害などに関して着実に増加を続けている。現在、MSCを用いる臨床プログラムは、成人のソース及び臍帯血からのこれら細胞の単離に依存している。MSCの臨床用途に必要とされる高細胞数(患者の体重1kg当たり最大で数百万個の細胞)は、ドナーソースから単離されたものから多数の細胞を産生することが可能な高信頼性の、再生可能かつ有効で活発な増殖のプロトコールを要求する。
【0006】
しかしながら、細胞療法のための臨床的に意味のある細胞数及び組織工学的用途を達成するためには、MSC生体外の活発な増殖が、必須となる。生体内での老化の間に、臍帯血、胎児及び成人のソース(例えば骨髄又は脂肪組織)から得たMSCのその後の生体外細胞継代は、複製ストレス、染色体異常、又はその他の確率的細胞不全を引き起こす場合があり、増殖したMSCの増殖能力、クローン原性能力及び分化能の進行的損失をもたらし、これが最終的にMSCの臨床的安全性及び有効性を損なう可能性がある。治療におけ
る老化したMSCの使用は、細胞がそれらの分化能の一部を喪失し、並びにそれらの分泌プロファイルもまた変更されているために、軽視されるべきではない。培養中のMSCの老化が、テロメア短縮を伴う細胞増殖停止を誘導することが認められ、骨形成系統への分化の傾向性が増大するのに反して、脂肪細胞分化能における連続的減少が、継代が増加するにつれて骨髄(BM)MSCで報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、MSCの臨床的用途以前に、未だいくつかの解決すべき本質的な問題がある。ESCから誘導されたMSCは、十分な量かつ高度に制御可能な方法で産生されることが可能であり、したがって、ドナー依存的ソースを伴う問題を軽減する。長期にわたるMSCのグラフト化は不必要であり、主要組織適合性(MHC)のミスマッチの基本的な懸念はない[7、8]。当該技術分野において、ESCから誘導されたMSCは、ネズミOP9細胞との共培養又はハンドピッキング手法を含める様々な方法を通して得られている[9~13]。しかしながら、これら方法は煩雑であり、低収率、精度のばらつき、効力の欠如を伴ってMSCを産生する。更に、CB由来の、BM由来の又は脂肪由来のMSCに対して、良好な治療指数、すなわち低減した投与量(細胞数)で使用されるための能力で細胞産物を提供可能であること、及び/又はCB由来の、BM由来の又は脂肪由来のMSCが十分に有効ではない炎症性疾患及び自己免疫疾患に扱いやすい療法を提供するためのMSCについての能力の双方に関して、注入された細胞の効力を最大化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、間葉系間質細胞(MSC)及びMSCを産生するための方法に関する。本発明の方法は、高効力を付与する若々しい細胞の表現型によって特徴付けられる相当数の高品質間葉系間質細胞を産生する。本発明の一実施形態において、MSCは、血管芽細胞から誘導される。主題のMSCの調製は、不必要な免疫応答、例えば自己免疫疾患及び障害、並びに炎症性疾患及び障害を含める病態の治療において有用である。
【0009】
一態様において、本発明は、血管芽細胞を培養するための改善された方法を使用して、血管芽細胞から産生されたMSCの改善された調製物を含む。例示的な実施形態において、本発明の間葉系間質細胞は、高レベルの効力を保持し、凝集しないか、又は胚性幹細胞(ESC)から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも実質的に少量で凝集する。本発明のいずれか1つ以上のプロセスにより産生された間葉系間質細胞は、より高いレベルの効力を保持することが可能であり、凝集しないか、又はESCから誘導された間葉系間質細胞よりも実質的に少量で凝集することが可能である。
【0010】
一態様において、本発明は、間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供し、前記間葉系間質細胞は、少なくとも10回の集団倍加、例えば約22~27日以内に少なくとも10回の集団倍加を受けることが可能である。別の態様において、本発明は、間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供し、前記間葉系間質細胞は、少なくとも15回の集団倍加、例えば約22~27日以内に少なくとも15回の集団倍加を受けることが可能である。本発明の医薬調製物は、血管芽細胞の生体外の分化によって産生され得る。本発明の間葉系間質細胞は、霊長類細胞、例えばヒト細胞であり得る。本発明の間葉系間質細胞は、少なくとも15回の集団倍加を受けることが可能である。例えば、本発明の間葉系間質細胞は、少なくとも20、25、30、35、40、45、50回又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能であり得る。本発明の調製物は、約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未
満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満の多能性細胞を含んでもよい。好ましくは、本発明の調製物は、多能性細胞を含まない。本発明の調製物は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の間葉系間質細胞を含んでもよい。
【0011】
一態様において、前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも1つ、(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの少なくとも1つ、若しくは(iii)これらの任意の組み合わせが陽性である。別の態様において、前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも2つ、(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性である。更に別の実施形態において、前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり、並びに(ii)CD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、TLR3の少なくとも1つを発現しないか又は低レベルで発現する。更に、前記間葉系間質細胞の少なくとも60%、70%、80%、又は90%は、(i)CD10、CD34、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、及びCD90の1つ以上、又は(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの1つ以上が陽性であってもよい。
【0012】
一態様において、本発明の医薬調製物は、これを必要とする対象における不必要な免疫応答を治療又は予防するために有効な間葉系間質細胞の量を含む。本発明の医薬調製物は、これを必要とする受容者への移植のためのその他の細胞、組織又は器官を更に含んでもよい。例示的なその他の細胞又は組織としては、前記細胞のいずれかを含有しているRPE細胞、皮膚細胞、角膜細胞、膵細胞、肝細胞、又は心細胞又は組織が挙げられる。
【0013】
別の態様において、本発明の間葉系間質細胞は、骨髄から誘導されず、免疫調節アッセイにおけるこの調製物の効力は、骨髄由来の間葉系間質細胞の調製物の効力を超える。効力は、EC50用量を決定する免疫調節アッセイによって検定され得る。
【0014】
一態様において、本発明の調製物は、10回の集団倍加後にその増殖能の約50%~100%を保持する。
【0015】
別の態様において、本発明の医薬調製物の間葉系間質細胞は、多能性細胞から直接誘導されることはなく、前記間葉系間質細胞は、(a)凝集しないか、又はESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも実質的に少量で凝集し、(b)ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞と比較して、分裂する場合、より容易に分散し、(c)等しい数
のESCから出発する場合、ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも数が多く、及び/又は(d)ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも早期に特徴的な間葉系間質細胞表面マーカーを獲得する。
【0016】
本発明は、間葉系間質細胞を生じる条件下で血管芽細胞を培養する工程を含む間葉系間質細胞を産生するための方法を更に包含する。血管芽細胞は、フィーダーフリー条件下で培養され得る。更に、血管芽細胞は、例えば形質転換増殖因子β(TGF-β)、上皮増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子1、ウシ線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び/又は血小板由来増殖因子(PDGF)を含むマトリックス上に配置されてもよい。このマトリックスは、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸、マトリゲル(Matrigel)(エンゲルブレス-ホルム-スウォーム(Engelbreth-Holm-Swarm)(EHS)マウス肉腫細胞から得た可溶性調製物)、ヒト基底膜抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。このマトリックスは、エンゲルブレス-ホルム-スウォームマウス肉腫細胞から得た可溶性調製物を含んでもよい。
【0017】
一態様において、本発明の間葉系間質細胞は、哺乳動物細胞である。好ましくは、本発明の間葉系間質細胞は、ヒト、イヌ、又はウマの細胞である。
【0018】
一態様において、この血管芽細胞は、αMEMを含む培地中で培養され得る。別の態様において、この血管芽細胞は、血清又は血清代替品を含む培地中で培養されてもよい。例えば、血管芽細胞は、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%のウシ胎児血清を補充したαMEMを含む培地中で培養され得る。更なる例示的な実施形態において、この培地は、より高いパーセンテージのウシ胎児血清、例えば、20%以上の、例えば少なくとも25%の、少なくとも30%の、少なくとも35%の、少なくとも40%の、更により高いパーセンテージのウシ胎児血清を含んでもよい。この血管芽細胞は、前記マトリックス上で少なくとも約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間にわたって培養され得る。
【0019】
一態様において、この血管芽細胞又は血管コロニー形成細胞は、多能性細胞、例えばiPS細胞、又は割球から分化する。この多能性細胞は、ヒトの胚を破壊することなく、1つ以上の割球から誘導され得る。更に、血管芽細胞は、(a)前記多能性細胞を培養し、細胞のクラスタを形成する工程を含む方法によって多能性細胞から分化することができる。一態様において、この多能性細胞は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び/又は骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養される。VEGF及びBMP-4は、前記細胞培養の開始から0~48時間以内に多能性細胞培養に添加されることが可能であり、前記VEGFは、20~100nm/mLの濃度で任意選択で添加され、前記BMP-4は、15~100ng/mLの濃度で任意選択で添加される。
【0020】
一態様において、血管芽細胞は、(b)前記単一細胞を、血管芽細胞への前記細胞のクラスタの分化を誘導するために十分な量の少なくとも1つの増殖因子の存在下で培養する工程を更に含む方法によって、多能性細胞から分化する。工程(b)で添加される少なくとも1つの増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、幹細胞因子(SCF)、Flt 3L(FL)、トロンボポイエチン(TPO)、EPO、及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上を含むことができる。工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子の1つ以上は、工程(a)の開始から36~60時間以内で前記培養に添加され得る。好
ましくは、工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子の1つ以上は、工程(a)の開始から40~48時間以内で前記培養に添加され得る。工程(b)で添加される少なくとも1つの因子は、bFGF、VEGF、BMP-4、SCF、FL及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上を含んでもよい。工程(b)で添加される場合、前記増殖因子の濃度は、およそ以下の範囲に及ぶことができる:bFGFは約20~25ng/mlであり、VEGFは約20~100ng/mlであり、BMP-4は約15~100ng/mlであり、SCFは約20~50ng/mlであり、FLは約10~50ng/mlであり、TPOは約20~50ng/mlであり、tPTD-HOXB4は約1.5~5U/mlである。
【0021】
別の態様において、本発明の方法は、(c)前記細胞のクラスタを、任意選択で単一細胞に解離させる工程を更に含む。別の態様において、本発明の方法は、(d)少なくとも1つの追加の増殖因子(前記少なくとも1つの追加の増殖因子は、血管芽細胞又は血管コロニー形成細胞を活発に増殖させるのに十分な量である)含む培地中の前記血管芽細胞を培養する工程を更に含む。(d)の少なくとも1つの追加の増殖因子は、インスリン、トランスフェリン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球コロニー刺激増殖因子(G-CSF)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上を含むことができる。工程(d)における例示的な濃度は、約10~100μg/mlのインスリン、約200~2,000μg/mlのトランスフェリン、約10~50ng/mlのGM-CSF、約10~20ng/mlのIL-3、約10~1000ng/mlのIL-6、約10~50ng/mlのG-CSF、約3~50U/mlのEPO、約20~200ng/mlのSCF、約20~200ng/mlのVEGF、約15~150ng/mlのBMP-4、及び/又は約1.5~15U/mlのtPTD-HOXB4を含む。工程(a)、(b)、(c)及び/又は(d)は、無血清培地であり得る。
【0022】
一態様において、本発明の方法は、少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、9,500万個、1億個、1億2,500万個、又は1億5,000万個の間葉系間質細胞を産生する。血管芽細胞は、前記多能性細胞の分化を誘導し始めてから少なくとも10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日又は18日後に採取することが可能である。本発明の間葉系間質細胞は、前記多能性細胞の分化を誘導し始めてから少なくとも25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、又は50日以内で産生することが可能である。別の態様において、本発明の方法は、培養の約15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、又は35日以内で約200,000個の血管芽細胞から産生される少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、9,500万個、1億個、1億2,500万個、又は1億5,000万個の間葉系間質細胞をもたらす。本発明の間葉系間質細胞は、少なくとも1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:415、1:425、1:440、1:450、1:365、1:475、1:490及び1:500の間葉系間質細胞に対する血管芽細胞の比で血管芽細胞及び/又は血管コロニー形成細胞から産生することが可能である。この細胞はヒト細胞であり得る。
【0023】
本発明はまた、記載されている方法によって得られた血管芽細胞から誘導される間葉間質細胞を意図する。一態様において、本発明は、血管芽細胞の生体外分化によって誘導された間葉系間質細胞を含む。前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10
、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり、及び(ii)CD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、TLR3の少なくとも1つを発現しないか又は低レベルで発現する。あるいは、前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の全てが陽性であり得るか、又は(ii)CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり得る。これら間葉系間質細胞の少なくとも60%、70%、80%又は90%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも1つについて陽性であり得るか、又は(ii)CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの少なくとも1つが陽性であり得る。好ましくは、本発明の間葉系間質細胞は、CD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、TLR3の少なくとも1つを発現しないか又は低レベルで発現する。
【0024】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されている間葉系間質細胞の調製物を包含する。この調製物は、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満の多能性細胞を含んでもよい。好ましくは、本発明の調製物は、多能性細胞を含まない。本発明の調製物は、実質的に精製されることが可能であり、任意選択で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のヒト間葉系間質細胞を含む。本発明の調製物は、p53とp21タンパク質の実質的に同一レベルを含むことが可能であり、又はp53タンパク質のレベルをp21タンパク質と比較する場合、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍大きい。本発明の間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも5回の集団倍加を受けることが可能であり得る。好ましくは、本発明の間葉系間質細胞は、少なくとも10回、15回、20回、25回、30回、35回、40回、45回、50回、55回、60回又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能である。
【0025】
一態様において、本発明の間葉系間質細胞は、(a)凝集しないか、又はESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも実質的に少量で凝集し、(b)ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞と比較して、分裂する場合、より容易に分散し、(c)ESCの等しい数から出発する場合、ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも数が多く、及び/又は(d)ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも早期に特徴的な間葉系間質細胞表面マーカーを獲得する。本発明は、このような間葉系間質細胞を含む医薬調製物を意図し、これは不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含む。この調製物は、不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含むことが可能であり、これを必要としている受容者への移植のためのその他の細胞又は組織を更に含むことが可能である。例示的なその他の細胞としては、前述されたもののいずれかを含有している同種又は同系の膵臓、神経、肝臓、RPE、又は角膜の細胞又は組織が挙げられる。本発明の医薬調製物は、多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、
心筋梗塞、器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、放射線熱傷、パーキンソン病、微少骨折、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生、ブドウ膜炎又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない自己免疫疾患又は同種異系細胞に対する免疫反応を治療する上で有用であり得る。対象のMSC(これらの製剤又は調製物を含める)は、呼吸状態、特に、成人性呼吸困難症候群、外傷後成人性呼吸困難症候群、移植肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、気腫、慢性閉塞性気管支炎、気管支炎、アレルギー反応、細菌性又はウイルス性肺炎に起因する損傷、喘息、刺激物質への曝露、及び喫煙などの炎症成分又は急性損傷を含むものを治療するために使用することが可能である。更に、対象のMSC(これらの製剤又は調製物を含める)は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、聴覚障害(特に、自己免疫性聴覚障害又は騒音性聴力障害)、乾癬を治療するために使用することが可能である。
【0026】
本発明は、本明細書に記載されている間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞調製物を含むキットを包含する。このキットは、凍結された又は低温保存された間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物を含むことができる。このキット中に含まれる間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物は、細胞送達ビヒクル内に封入され得る。
【0027】
更に、本発明は、これを必要とする対象に、本明細書に記載されている間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物の有効量を投与する工程を含む、疾患又は障害を治療するための方法を意図する。この方法は、その他の細胞又は組織、例えば、網膜、RPE、角膜、神経、免疫、骨髄、肝臓又は膵臓の細胞の移植を更に含む。治療される例示的な疾患又は障害としては、多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、心筋梗塞、器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、放射線熱傷、パーキンソン病、微少骨折、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生、ブドウ膜炎又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、疾患又は障害はブドウ膜炎である。別の態様において、疾患又は障害は、自己免疫障害、例えば、多発性硬化症、又は同種異系細胞に対する免疫応答である。
【0028】
本発明は、これを必要とする対象に、本明細書に記載されている間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物の有効量を投与する工程を含む、骨損失又は軟骨損傷を治療するための方法を更に包含する。本発明の間葉系間質細胞は、同種異系又は同系移植された細胞又は組織、例えば、網膜色素上皮細胞、網膜細胞、又は筋細胞と組み合わせて投与されてもよい。
【0029】
本発明は、細胞分裂回数の数が増加しているにもかかわらず、効力を維持するMSCの調節物を産生する血管芽細胞を培養する方法を含む。本発明の間葉系間質細胞の医薬調製
物は、このような投与を必要とする哺乳動物宿主に投与する場合、改善された治療特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、多能性細胞からのFM-MA09-MSCの産生を示す。この図は、血管芽細胞を介してESCから間葉系間質細胞を産生する顕微鏡図を示す。
図2図2は、多能性細胞由来の血管芽細胞から得たFM-MA09-MSCの表現型を示す。この図は、初期血管芽細胞集団中のMSC表面マーカーが陽性の細胞のパーセンテージ(グラフの左側、7~11日の血管芽細胞)、及びマトリゲルでコーティングしたプレート上で血管芽細胞を培養した後にMSC表面マーカーが陽性の細胞のパーセンテージ(グラフの右側)、並びに血管芽細胞から誘導された間葉系間質細胞の顕微鏡図(右側パネル写真)を示す。
図3図3は、異なる培養法から誘導された間葉系間質細胞の表現型を示す。この図は、ゼラチンコーティングプレート上でヒト胚性幹細胞(ESC)を培養した後(左パネル)、マトリゲルコーティングプレート上でESCを培養した後(中央パネル)、及びマトリゲルコーティングプレート上で血管芽細胞を培養した後(右パネル)のMSC表面マーカーが陽性の細胞のパーセンテージを示す。
図4図4は、多能性細胞からの間葉系間質細胞の収量を示す。この図は、ゼラチンコーティングプレート上でESCを培養したものから得た(第1番目の欄-産出無し)、マトリゲルコーティングプレート上でESCを培養したものから得た(第2番目の欄)、及びマトリゲルコーティングプレート上で血管芽細胞を培養したものから得た(第3番目の欄)、MSC表面マーカーが陽性の細胞の収量を示す。
図5図5は、間葉系間質細胞マーカーの獲得を示す。この図は、MSC表面マーカーが、血管芽細胞を使用して得られる時間(最上部の線)及びESCを使用して(下部の線)得られる時間を表す。
図6図6は、異なる培養法から誘導された間葉系間質細胞の表現型を示す。この図は、ESCをマトリゲルコーティングプレート上で培養した後(左パネル)に、及び血管芽細胞をマトリゲルコーティングプレート上で培養した後(右パネル)にMSCマーカーが陽性であり、並びに造血及び内皮細胞マーカーが陰性である細胞のパーセンテージを示す。
図7図7は、FM-MA09-MSCの分化能を示す。この図は、MA09 ESCから分化した血管芽細胞から誘導された間葉系間質細胞の脂肪細胞及び骨細胞を形成するための分化能を表す。
図8図8は、MSCの軟骨分化を示す。この図は、アグリカン(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン1)及びコラーゲンIIaのmRNA発現による、MA09 ESC血管芽細胞由来間葉系間質細胞の軟骨分化を表す。
図9図9は、FM-MA09-MSCによるCD309の一過性発現を示す。この図は、細胞表面マーカーCD309の一過性発現を示す。
図10A図10Aは、ミトーゲンに応答するT細胞増殖が、FM-MA09-MSCによって抑制されることを示す。この図は、化学刺激(PMA/イオノマイシン)によって引き起こされたT細胞増殖の血管芽細胞由来の間葉系間質細胞の抑制を示す。
図10B図10Bは、抗原提示細胞に応答するT細胞増殖が、FM-MA09-MSCによって抑制されることを示す。この図は、樹状細胞への暴露によって引き起こされたT細胞増殖の血管芽細胞由来の間葉系間質細胞の抑制を示す。
図11図11は、抗原提示細胞に応答するT細胞増殖が、FM-MA09-MSCによって抑制されることを示す。図11Aは、血管芽細胞由来の間葉系間質細胞が、IL2刺激に応答して誘導されるCD4/CD25に二重陽性のTregのパーセンテージを増加させることが可能であったことを示す。図11Bは、血管芽細胞由来間葉系間質細胞が、IFNγのTh1分泌を阻害することを示す。
図12図12は、炎症誘発性サイトカインIFNgがFM-MA09-MSC表面マーカー発現における変化を刺激することを示す。この図は、インターフェロンガンマが、MSC表面マーカー発現における変化を刺激し、MSC免疫抑制効果を増強させ得ることを示す。
図13図13は、BM-MSCと比較する場合のFM-MA09-MSCの増大した効力及びより大きな阻害効果を示す。FM-MA09-MSCは、BM-MSCが及ぼすよりも大きなT細胞への阻害効果を及ぼす(A)。PBMCとの共培養中でMSCの増加する量は、PMA及びイオノマイシンに応答するT細胞増殖において用量依存的減少を引き起こす。若い(p4)FM-MA09-MSCは試験されたすべての細胞タイプのうち最も能力が高い(B)。FM-MA09-MSCは、PHAに応答してBM-MSCが阻害するよりも大きな程度までT細胞増殖を阻害する。PBMC:MSCの5:1比を6日間共培養した(C)。FM-MA09-MSCは、増加する樹状細胞の量に応答して、T細胞増殖を、BM-MSCが阻害するよりも良好に阻害する。(A~C)において、T細胞増殖のパーセントは、CD4+及び/又はCD8+細胞集団中に組み込まれたBrdUによって評価された。
図14図14は、FM-MA09-MSCがTreg誘発を増強させることを示す:初期継代培養のMSCは、後期継代培養のMSCが有するよりも大きな効果を有する。非接着PBMC(異なるドナー)を、FM-MA09-MSCの存在下又は不在下、+/-IL2で4日間培養した。CD4/CD25二重陽性Tregのパーセンテージを、フローサイトメトリーによって評価した。若い(p6)又は古い(p16~18)FM-MA09-MSCを用いた。黒棒は、6つの実験の平均を示す。MSCは、全体として、Tregの誘発に及ぼす統計的に有意な効果を有した。(p=0.02)。
図15図15は、BM-MSCと比較して、FM-MA09-MSCによる増大されたTreg増殖を示す。FM-MA09-MSCは、BM-MSCが誘発するよりも良好にTreg増殖を誘発する(A)。CD4/CD25二重陽性Tregにおける増加率を示す。-IL2条件を1に設定し、他の群は、このレベルを越える誘導率として表す。MMはMA09-MSCであり、BMは骨髄MSCであり、「p」は継代数である(B)。FM MA09-MSC(MM)は、BM-MSCが誘導するよりも良好にCD4/CD25/FoxP3三重陽性Tregを誘発する(C)。CD4+である応答するPBMCのパーセントは、異なる処置群の間で一致する(D)。CD25+である応答するPBMCのパーセントは、異なる処置群の間で異なる。FM-MA09-MSCは、BM-MSCが誘導するよりもCD25の大きな発現を誘導する。この差は、Tregの誘導における差を説明することが可能である。
図16図16は、FM-MA09-MSCが、BM-MSCよりも大きな増殖能を有することを示す。FM-MA09-MSCは、BM-MSCが有するよりも大きな増殖能を有する。累積集団倍加回数を培養の日数に対してプロットする。ESC由来血管芽細胞又は骨髄由来単核細胞の最初の平板培養後に、接着細胞をp0 MSCとみなした。連続MSC継代培養を、7000細胞/cmの密度で再平板培養し、培養が約70%の集密状態になった時に採取した(3~5日毎)。
図17図17は、FM-MA09-MSC産生のプロセス;マトリゲル効果を示す。初期継代培養において(すなわち、p2で)細胞をマトリゲルから取り出すことは、マトリゲル上でp6まで維持したものと比べて、MSC増殖を一時的に遅くする可能性がある。
図18図18は、BM-MSC及びFM-MA09-MSCが軟骨形成を行うことを示す。サフラニンO染色(軟骨基質沈着の指標)を、21日後にパラフィン埋包ペレット集団培養で行った。画像は40倍の倍率である。
図19図19は、基底状態において、FM-MA09-MSCが、BM-MSCが分泌するよりも少量のPGE2を分泌し、なおIFNγ又はTNFα刺激時の増加率がより大きいことを示す(A)。プロスタグランジンE2分泌の量(pg/ml)は、基底条件又は様々な刺激条件下のFM-MA09-MSCに対比するBM-MSCについて示されている。PGE2の量は細胞数に標準化されている(B)。基底PGE2値が1に設定され(黒線)、様々な刺激下のPGE2分泌は、基底レベルを越える増加率として表されている。
図20図20は、FM-MA09-MSCが経時的に表現型を維持することを示す。異なるMSC集団のフローサイトメトリー分析を示す(A)。FM-MA09-MSCの細胞表面マーカー発現は、3つの異なる基材上で維持され、BM-MSCと比較される(B)。FM-MA09-MSCの細胞表面マーカー発現は、経時的に評価される(示すように、連続継代培養を使用する)。
図21図21は、FM-MA09-MSCが、BM-MSCと比較して、より少量のStro-1及びより多量のCD10を発現することを示す。異なるMSC集団のフローサイトメトリー分析を示す。Stro-1発現は、示した継代数において、BM-MSC中よりもFM-MA09-MSC中で低い。CD10発現は、BM-MSC中よりもFM-MA09-MSC中で高い。その他のマーカーは、両MSC集団で同様である。
図22図22は、初期継代培養FM-MA09-MSCの10個の異なるロット中のStro-1及びCD10発現は、低いStro-1発現及び中間の範囲のCD10発現を一貫して示すことを表示する。異なるMSC集団のフローサイトメトリー分析を示す。FM-MA09-MSCの10個の異なるロットを、Stro-1及びCD10の発現に関して、示した継代数で評価した。Stro-1の発現は、FM-MA09-MSCの異なるロットにおいて一貫して低い(平均で5~10%)。CD10の発現は、FM-MA09-MSCの異なるロットにおいて一貫して中間の範囲である(平均で約40%)。
図23図23は、FM-MA09-MSCが、それらが培養中で老化するとともにそれらのサイズを維持し、一方BM-MSCは老化と共にそのサイズを増加させることを示す。フローサイトメトリー上の前方散乱/側方散乱ドットプロット(左側に示す)を使用して、MSCのサイズを取得した。上右四分の一の「大きな」細胞における細胞のパーセンテージを監視し、棒グラフで表わす。
図24図24は、CD10及びCD24が、BM-MSCと比較して、FM-MA09-MSC中でアップレギュレートされることを示す。遺伝子発現分析を、基底状態におけるBM-MSC及びFM-MA09-MSCについて示す。Taqmanプローブを使用する定量的RT-PCRを用いて、示した遺伝子の発現を評価し、2つのハウスキーピング遺伝子に標準化する。4通りの読み取りの平均を+/-標準偏差で示している。
図25図25は、Aire-1及びIL-11が、BM-MSCと比較して、FM-MA09-MSC中でアップレギュレートされることを示す。遺伝子発現分析を、基底状態におけるBM-MSC及びFM-MA09-MSCについて示す。Taqmanプローブを使用する定量的RT-PCRを用いて、示した遺伝子の発現を評価し、2つのハウスキーピング遺伝子に標準化する。4通りの読み取りの平均を+/-標準偏差で示している。
図26図26は、Ang-1及びCXCL1が、BM-MSCと比較して、FM-MA09-MSC中でアップレギュレートされることを示す。遺伝子発現分析を、基底状態におけるBM-MSC及びFM-MA09-MSCについて示す。Taqmanプローブを使用する定量的RT-PCRを用いて、示した遺伝子の発現を評価し、2つのハウスキーピング遺伝子に標準化する。4通りの読み取りの平均を+/-標準偏差で示している。
図27図27は、IL6及びVEGFが、BM-MSCと比較して、FM-MA09-MSC中でダウンレギュレートされることを示す。遺伝子発現分析を、基底状態におけるBM-MSC及びFM-MA09-MSCについて示す。Taqmanプローブを使用する定量的RT-PCRを用いて、示した遺伝子の発現を評価し、2つのハウスキーピング遺伝子に標準化する。4通りの読み取りの平均を+/-標準偏差で示している。
図28図28は、FM-MA09-MSC及びBM-MSCが、3日間のIFNγ刺激に応答して、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性の増加を示すことを表示する。トリプトファンをキヌレニンに変換させるそれらの能力(IDO活性の指標)について、50ng/mlのIFNgで3日間刺激されたMSCの比較を示す。各MSC集団について、100万個の細胞を溶解し、アッセイで用いた。
図29図29は、Aire-1及びプリオンタンパク質(PrP)のFM-MA09-MSC中の発現における老化関連変化を示す:2つのタンパク質は、それぞれ免疫抑制及び増殖に関与した。異なる継代数(p)におけるFM-MA09-MSCの全細胞溶解物中のAire-1及びPrPの発現のウェスタンブロット分析を示す。アクチン発現を負荷コントロールとして示す。Aire-1とPrPの発現との間の差を、アクチン負荷コントロールを参照して表記している。
図30図30は、FM-MA09-MSCが、基底状態においてBM-MSCが分泌するよりも少ないIL6を分泌することを示す。標準化のための陽性コントロール(左の4つの点)及びMSC培養上清中のIL6(囲み線内)を示しているサイトカインアレイを表示する。2つの異なるドナーから得たBM-MSCを、FM-MA09-MSCの4つの異なるロットと比較する。
図31図31は、基底状態及びIFNγ刺激状態において、FM-MA09-MSCがBM-MSCよりも少ないIL6を分泌することを示す。標準化のための陽性コントロール(左の4つの点)及びMSC培養上清中のIL6(囲み線内)を示しているサイトカインアレイを表示する。48時間の+/-IFNγ処置後の7継代のBM-MSCを、p7のFM-MA09-MSCと比較する。
図32図32は、基底状態及びIFNγ刺激状態において、FM-MA09-MSCがBM-MSCよりも少ないVEGFを分泌することを示す。標準化のための陽性コントロール(左の4つの点)及びMSC培養上清中のVEGF(囲み線内)を示しているサイトカインアレイを表示する。48時間の+/-IFNγ処置後の7継代のBM-MSCを、p7のFM-MA09-MSCと比較する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、間葉系間質細胞を産生する方法、血管芽細胞を培養することから得た間葉系間質細胞の調製物、血管芽細胞を培養する方法、及び間葉系間質細胞を用いて病態を治療する方法に関する。
【0032】
先行プロセスと比較して、血管芽細胞が増大した収量の間葉系間質細胞を産生する、本発明の方法は、実質的に無ESCの間葉系間質細胞を産生する点で、以前のプロセスよりも効率的である。本発明の血管芽細胞由来の間葉系間質細胞は、特異的マーカーの発現又はその欠如によって定義される新規な若々しい表現型を保持する。
【0033】
特定の実施形態において、本発明のMSC調製物(少なくとも10、10、10又は更に10個のMSCを有する培養物など)は、平均として、ESC及び/又はヒトiPS細胞の(又はESC及び/又はヒトiPS細胞の集団の平均の)少なくとも30%であるテロメアの長さ、好ましくはESC及び/又はヒトiPS細胞の(又はESC及び/又はヒトiPS細胞の集団の平均の)少なくとも40、50、60、70、80又は更に90%であるテロメアの長さを有することが可能である。例えば前記ESC及び/又はヒトiPS細胞(又はESC及び/又はヒトiPS細胞の集団)は、そこから前記MSC細胞が分化した細胞又は細胞集団であり得る。
【0034】
本発明のMSC調製物は、集団として、4kbを超える、好ましくは5、6、7、8、9、10、11、12又は更に13kbを超える平均末端制限酵素断片長(TRF)を有することが可能である。例示的な実施形態において、本発明のMSCは、10kb以上である平均TRFを有することが可能である。
【0035】
特定の実施形態において、本発明のMSC調製物(少なくとも10、10、10、10、10又は更に10個のMSCを有する培養物など)は、その他の供給源(
例えば、胎児、乳幼児、小児、青年又は成人の組織などの移植用ヒト組織から誘導された培養物)から得たMSC調製物の複製寿命を超える複製寿命を有する。複製寿命は、複製老化前の培養中の集団倍加数又は継代数を決定することにより評価することが可能であり、すなわち、培養中の細胞の10、20、30、40又は更に50%以上が、次の倍加又は継代の前に老化する。例えば、主題のMSC調製物は、提供されたヒト組織から誘導された(特に成人骨髄又は成人脂肪組織から誘導された)MSC調製物のものを超える少なくとも10回の倍加である複製寿命を有することが可能であり、好ましくは少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90又は更に100回の集団倍加を有することが可能である。特定の実施形態において、本発明のMSC調製物は、細胞の50%以上が老化する前に、及び/又は非MSC細胞型(例えば線維芽細胞)に分化する前に少なくとも8継代を可能にする、より好ましくは、このポイントに到達する前に少なくとも10、12、14、16、18又は更に20継代を可能にする複製寿命を有することが可能である。特定の実施形態において、本発明のMSC調製物は、細胞の50%以上が老化する前に、及び/又は非MSC細胞型(例えば線維芽細胞)に分化する前に、成人の骨髄由来のMSC調製物及び/又は脂肪細胞由来のMSC調製物(例えば、細胞の等しい出発数)と比較して少なくとも2倍多い倍加又は継代を可能にし、より好ましくは少なくとも4、6、8倍又は更に10倍多い倍加又は継代を可能にする複製寿命を有することが可能である。
【0036】
特定の実施形態において、本発明のMSC調製物(少なくとも10、10、10、10、10又は更に10個のMSCを有する培養物など)は、他の供給源(例えば、胎児、乳幼児、小児、青年又は成人の組織などの移植用ヒト組織から誘導された培養物)から誘導された継代数1(P1)、継代数2(P2)、継代数3(P3)、継代数4(P4)及び/又は継代数5(P5)のMSC調製物、特に骨髄由来MSC及び脂肪細胞由来MSCと比較して、細胞周期の調節及び老化に関与するタンパク質の統計的に有意な増加した含量及び/又は酵素活性を有する。例えば、主題のMSC調製物は、移植用ヒト組織から得たMSC(特に成人骨髄又は成人脂肪組織から誘導されたMSC)中の含量の75%未満であり、なおより好ましくは、60、50、40、30、20又は更に10%未満であるプロテアーゼ26Sサブユニット、非ATPアーゼ調節サブユニット11(PSMD11)タンパク質の含量を有する。
【0037】
特定の実施形態において、本発明のMSC調製物(少なくとも10、10、10、10、10又は更に10個のMSCを有する培養物など)は、他の供給源(例えば、胎児、乳幼児、小児、青年又は成人の組織などの移植用ヒト組織から誘導された培養物)から誘導された継代数1(P1)、継代数2(P2)、継代数3(P3)、継代数4(P4)及び/又は継代数5(P5)のMSC調製物、特に骨髄由来MSC及び脂肪細胞由来MSCと比較して、細胞のエネルギー及び/又は脂質代謝に関与するタンパク質の統計的に有意な増加した含量及び/又は酵素活性を有する。例示すると、主題のMSC調製物は、解糖(フルクトース二リン酸アルドラーゼA、ALDOA;アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーA1、AKR1A1);グリセルアルデヒド三リン酸、GAPDHなど)、トリカルボン酸サイクル(TCAサイクル)(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1、IDH1など)、ペントースリン酸回路(グルコース六リン酸デヒドロゲナーゼ、G6PDなど)、及びグルクロン酸生合成経路におけるUDP-グルコースの生合成(UDP-グルコース6-デヒドロゲナーゼ、UGDH)などのATP又はNADHP合成に関する代謝経路に関与する1つ以上のタンパク質について、移植用ヒト組織から得たMSC(特に成人骨髄又は成人脂肪組織から誘導されたMSC)中の含量の90%未満であり、なおより好ましくは、60、50、40、30、20又は更に10%未満であるタンパク質の含量を有する。更に例示すると、主題のMSC調製物は、エノイル-CoAヒドラターゼ、短鎖、1(ECHS1)及び/又はアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(ACAT2)などの脂質代謝に関与する1つ以上のタンパク質について、移植用ヒ
ト組織から得たMSC(特に成人骨髄又は成人脂肪組織から誘導されたMSC)中の含量の90%未満であり、なおより好ましくは、60、50、40、30、20又は更に10%未満であるタンパク質の含量を有する。
【0038】
特定の実施形態において、本発明のMSC調製物(少なくとも10、10、10、10、10又は更に10個のMSCを有する培養物など)は、他の供給源(例えば、胎児、乳幼児、小児、青年又は成人の組織などの移植用ヒト組織から誘導された培養物)から誘導された継代数1(P1)、継代数2(P2)、継代数3(P3)、継代数4(P4)及び/又は継代数5(P5)のMSC調製物、特に骨髄由来MSC及び脂肪細胞由来MSCと比較して、細胞のアポトーシスに関与するタンパク質の統計的に有意な増加した含量及び/又は酵素活性を有する。例示すると、主題のMSC調製物は、1つ以上のタンパク質アネキシンA1(ANXA1)、A2(ANXA2)、A5(ANXA5)、電位依存性アニオン選択性チャンネルタンパク質1(VDAC1)、及び/又はグリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)について、移植用ヒト組織から得たMSC(特に成人骨髄又は成人脂肪組織から誘導されたMSC)中の含量の90%未満であり、なおより好ましくは、60、50、40、30、20又は更に10%未満であるタンパク質の含量を有する。
【0039】
理論に束縛されるものではないが、本発明の血管芽細胞由来のMSCによって示される細胞のエネルギー及び/又は脂質代謝、及び/又はアポトーシスに関与するタンパク質の含量及び/又は酵素活性における統計的に有意な差は、調製物の均一な性質に少なくとも一部は起因している。例えば、本発明の血管芽細胞由来のMSCは、均一なMHC遺伝子発現を有し、すなわち、完全にMHCマッチであり、細胞が複数の異なるドナーから誘導されている、すなわちMHCミスマッチである成人由来のMSCバンクとは異なる。MSCの治療用量は、約200万~800万個の細胞/kg(又は約1億3,000万~5億個の細胞/用量)である。
【0040】
用語の定義
本明細書で使用するとき、「多能性細胞」及び「多能性幹細胞」とは、適切な条件下で、それらの非分化状態を維持し、安定した(好ましくは正常な)核型を呈し、並びに全ての3つの胚葉(すなわち、外胚葉、中胚葉及び内胚葉)に分化する能力を有すると同時に、生体外で長期の又は実質的に無期限の増殖が可能である細胞を広義に指す。典型的には、多能性細胞は、(a)免疫不全(SCID)マウスに移植される場合、奇形腫を誘発することが可能であり、(b)全ての3つの胚葉(すなわち、外胚葉、中胚葉及び内胚葉)に分化することが可能であり、並びに(c)少なくとも1つのhES細胞マーカー(Oct-4、アルカリ性ホスファターゼ、SSEA 3表面抗原、SSEA 4表面抗原、NANOG、TRA 1 60、TRA 1 81、SOX2、REX1など)を発現する。例示的な多能性細胞は、Oct-4、アルカリ性ホスファターゼ、SSEA 3表面抗原、SSEA 4表面抗原、TRA 1 60、及び/又はTRA 1 81を発現することが可能である。更なる例示的な多能性細胞としては、胚性幹細胞、誘導多能性(iPS)細胞、胚由来細胞、胚性生殖(EG)細胞から産生された多能性細胞(例えば、FGF-2、LIF及びSCFの存在下で培養することによって)、単為生殖ES細胞、培養された内部細胞塊細胞から産生されたES細胞、割球から産生されたES細胞、及び核移植によって産生されたES細胞(例えば、受容者の卵母細胞に移植された体細胞核)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な多能性細胞は、胚の破壊なく産生され得る。例えば、誘導多能性細胞は、胚破壊なく得られた細胞から産生され得る。更なる例として、多能性細胞は、生検割球から産生することが可能であり(これは、残りの胚を傷つけることなく達成され得る)、任意選択で、残りの胚を低温保存し、培養し、及び/又は好適な宿主に移植することも可能である。多能性細胞(どんなソースから得たものでも)は、このような多能性細胞(例えばMSC、及び血管芽細胞)から分化した細胞において、
寿命、効力、ホーミングを増加させるために、又は所望の因子を供給するために、遺伝子レベルで修正を加え、又は他の方法で修正を加えることが可能である。これらの非限定的な例として、多能性細胞は、Sirt 1を発現するように(これによって寿命を増加させる)、任意選択で誘導可能な又は抑制プロモータの制御下で、1つ以上のテロメラーゼを発現するように、蛍光標識を組み込むように、酸化鉄粒子又はその他のこのような試薬(これは、生体内撮像、MRIなどを介して細胞の追跡に使用される、Thuら著、Nat Med.2012年2月26日;18(3):463-7を参照)を組み込むように、寿命を促進することが可能であるbFGFを発現するように(Goら著、J.Biochem.142、741-748(2007年)を参照)、ホーミングのためにCXCR4を発現するように(Shiら著、Haematologica.2007年7月;92(7):897-904を参照)、神経膠細胞腫のような癌細胞中でカスパーゼ媒介xアポトーシスを誘発するために組換えTRAILを発現するように(Sasportasら著、Proc Natl Acad Sci USA.2009年3月24日;106(12):4822-7を参照)など、遺伝的に修飾することが可能である。
【0041】
本明細書で使用するとき、「胚」又は「胚性」とは、母性宿主の子宮内膜に移植されていない細胞集団を発達させるものを広義に指す。「胎性細胞」とは、胚から単離された、又は胚内に包含される細胞である。これはまた、二細胞分裂期の早い時期に得られた割球、及び凝集した割球も含む。
【0042】
「胚性幹細胞」(ES細胞又はESC)は、胚性細胞から産生された多能性細胞(培養された内部細胞塊細胞又は培養された割球から得た細胞など)並びに誘導多能性細胞(以下に更に記載)を包含する。多くの場合、このような細胞は、細胞系として連続継代培養されるもの又は連続継代培養されたものである。胚性幹細胞は、本明細書に記載されている血管芽細胞を産生するプロセスにおいて多能性幹細胞として使用することが可能である。例えば、ES細胞は、精子又は精子DNAによる卵細胞の受精、核移植(体細胞核移植を含める)、又は単為生殖などの任意の方法(有性又は無性手段を含める)によって産生された胚からの誘導などの当該技術分野で既知の方法によって産生することが可能である。更なる例としては、胚性幹細胞はまた、非胚性細胞がそのプロセスで使用される場合であっても、体細胞核移植によって産生された細胞も含む。例えば、ES細胞は、胚盤胞期胚のICM、並びに1つ以上の割球から誘導された胚性幹細胞から誘導されてもよい。このような胚性幹細胞は、生殖によって、又は体細胞核移植(SCNT)、無為生殖、及び雄性生殖を含める無性手段によって産生された胚性物質から生成することが可能である。更に上述したように(「多能性細胞」を参照)、ES細胞は、このような多能性細胞(例えば、MSC、及び血管芽細胞)から分化する細胞において、寿命、効力、ホーミングを増加させ、又は所望の因子を供給するために、遺伝子レベルで修正が加えられてもよい。
【0043】
ES細胞は、例えば、遺伝子操作、ヘテロ接合性の自然消失についてのスクリーニングなどを通して、1つ以上のHLA遺伝子におけるホモ接合又は半接合を用いて生成することが可能である。ES細胞は、このような多能性細胞(例えば、MSC、及び血管芽細胞)から分化する細胞において、寿命、効力、ホーミングを増加させ、又は所望の因子を供給するために、遺伝子レベルで修正が加えられてもよい。胚性幹細胞は、それらのソース又はそれらを産生するために使用される特定の方法に無関係に、典型的には以下の属性の1つ以上を有する:(i)全ての3つの胚葉の細胞に分化するための能力、(ii)少なくともOct-4及びアルカリ性ホスファターゼを発現、並びに(iii)免疫不全状態の動物に移植される場合、奇形腫をもたらすための能力。本発明の実施形態において使用され得る胚性幹細胞としては、MA01、MA09、ACT-4、No.3、H1、H7、H9、H14及びACT30胚性幹細胞などのヒトES細胞(「ESC」又は「hES細胞」)が挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的な細胞系としては、NED1、NED2、NED3、NED4、NED5、及びNED7が挙げられる。NIH胚
性幹細胞登録も参照されたい。使用され得る例示的なヒト胚性幹細胞系は、MA09細胞である。MA09細胞の単離及び調製は、Klimanskayaら著(2006年)、「Human Embryonic Stem Cell lines Derived
from Single Blastomeres」、Nature 444:481-485に以前に記載されている。本発明の例示的実施形態により使用されるヒトES細胞は、GMP標準に従って誘導され維持され得る。
【0044】
例示的hES細胞マーカーとしては、アルカリ性ホスファターゼ、Oct-4、Nanog、段階特異的胚性抗原-3(SSEA-3)、段階特異的胚性抗原-4(SSEA-4)、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、Sox2、増殖分化因子3(GDF3)、発現抑制1(REX1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚性細胞特異的遺伝子1(ESG1)、発生多能性関連2(DPPA2)、DPPA4、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、SALL4、E-CADHERIN、表面抗原30(CD30)、クリプト(TDGF-1)、GCTM-2、Genesis、生殖細胞核因子、及び幹細胞因子(SCF又はc-Kitリガンド)などが挙げられるが、これらに限定されない。追加の例としては、Oct-4、アルカリ性ホスファターゼ、SSEA3表面抗原、SSEA4表面抗原、TRA 1 60、及び/又はTRA 1 81を発現し得る胚性幹細胞が挙げられる。
【0045】
このESCは、最初はネズミ胚性フィーダー細胞(MEF)と共培養され得る。このMEF細胞は、ESCを共培養中に播種する前に、ミトマイシンCへの暴露によって有糸分裂的に不活性化することが可能であり、これによってMEFは、培養中で増殖することができない。更に、ESC細胞培養は、顕微鏡検査を行うことが可能であり、非ESC細胞形態を含有するコロニーは、例えば、レーザーアブレーション、又はその他の手段によって、幹細胞切断工具を使用して、採取されかつ廃棄することが可能である。典型的には、胚様体形成の播種のためのESCの採取の時点で、追加のMEF細胞は使用されない。
【0046】
本明細書で使用するとき、「胚由来細胞」(EDC)とは、広くは、内部細胞塊、胚盾、又は胚体杯盤上層などのものを含める多能性桑実胚由来細胞、胚盤胞由来細胞、若しくは原始的外胚葉、中胚葉、及び内胚葉並びにそれらの誘導体を含める初期胚のその他の多能性幹細胞を指す。「EDC」はまた、割球及び凝集した単一の割球から得た細胞塊並びに発生の異なる段階から得た胚も含めるが、細胞系として継代したヒト胚性幹細胞は除外する。
【0047】
例示的なESC細胞マーカーとしては、アルカリ性ホスファターゼ、Oct-4、Nanog、段階特異的胚性抗原-3(SSEA-3)、段階特異的胚性抗原-4(SSEA-4)、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、Sox2、増殖分化因子3(GDF3)、発現抑制1(REX1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚性細胞特異的遺伝子1(ESG1)、発生多能性関連2(DPPA2)、DPPA4、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、SALL4、E-CADHERIN、表面抗原30(CD30)、クリプト(TDGF-1)、GCTM-2、Genesis、生殖細胞核因子、及び幹細胞因子(SCF又はc-Kitリガンド)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用するとき「効力」とは、広くは、濃度、例えば、定義された効果をもたらす試薬(血管芽細胞由来のMSCなど)のモルを指す。効力は、有効濃度(EC50)に関して定義されることが可能であり、有効濃度は、最大効果の測定値を含まないが、この代わりに用量反応曲線の濃度軸に沿った様々な場所における効果を含む。効力はまた、段階的(EC50)又は計数的用量反応曲線(ED50、TD50及びLD50)のいずれかから決定することも可能であるが、効力は、EC50によって測定されることが好ま
しい。用語「EC50」とは、いくつかの指定した暴露時間後のベースラインの効果と最大効果との間の中間部分の応答を誘発する薬剤、抗体又は毒物の濃度を指す。したがって、段階的用量反応曲線のEC50は、その最大効果の50%が観察される場合の化合物の濃度を表す。計数的用量反応曲線のEC50は、指定した暴露持続時間後に、集団の50%が応答を示す場合の化合物の濃度を表す。このEC50は、定義された動物モデルが、薬剤の適用に応答して、測定可能な生理学的変化を示す動物試験;薬剤の添加時に、測定可能な生物学的応答を示す、特定の細胞系を使用する細胞ベースアッセイ;及び/又は薬剤の生物学的活性が、薬剤によって促進された化学反応後に、生成物の蓄積によって測定され得る酵素反応を使用して決定することが可能である。好ましくは、免疫調節アッセイがEC50を決定するために使用される。このような免疫調節アッセイの非限定的な例としては、細胞内サイトカイン、細胞障害性、調節能力、細胞シグナル伝達能力、増殖能力、アポトーシス評価、及びその他のアッセイが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用するとき、「間葉系幹細胞」(MSC)とは、自己再生能力並びに特にその他の間葉系細胞系統の中で骨芽細胞、軟骨細胞、及び脂肪細胞に分化する能力を備えた多能性幹細胞を指す。これら特性に加えて、MSCは、本明細書に更に記載されている1つ以上のマーカーの発現によって特定され得る。このような細胞は、移植片対宿主疾患(GVHD)、心筋梗塞及び炎症並びに自己免疫疾患及び障害などの免疫学的障害並びに変性疾患を含める様々な臨床状態を治療するために使用することが可能である。文脈が別途指示する場合を除き、MSCは、成人のソース及び臍帯血から得た細胞を含むことが可能である。MSC(又は多能性細胞などのこれらが生成される細胞)は、寿命、効力、ホーミングを増加させるために、又はMSC又はこのようなMSCから分化した細胞中に所望の因子を供給するために、遺伝的に修正を加えるか又はその他の方法で修正を加えることが可能である。これらの非限定的な例として、このMSC細胞は、Sirt 1を発現するように(これによって寿命を増加させる)、任意選択で誘導可能な又は抑制プロモータの制御下で、1つ以上のテロメラーゼを発現するように、蛍光標識を組み込むように、酸化鉄粒子又はその他のこのような試薬(これは、生体内撮像、MRIなどを介して細胞の追跡に使用される、Thuら著、Nat Med.2012年2月26日;18(3):463-7を参照)を組み込むように、寿命を促進することが可能であるbFGFを発現するように(Goら著、J.Biochem.142、741-748(2007年)を参照)、ホーミングのためにCXCR4を発現するように(Shiら著、Haematologica.2007年7月;92(7):897-904を参照)、神経膠細胞腫のような癌細胞中でカスパーゼ媒介xアポトーシスを誘発するために組換えTRAILを発現するように(Sasportasら著、Proc Natl Acad Sci USA.2009年3月24日;106(12):4822-7を参照)など、遺伝的に修飾することが可能である。
【0050】
本明細書で使用するとき「療法(therapy)」、「治療(therapeutic)」、「治療(treating)」。「治療する(treat)」又は「治療法(treatment)」とは、広くは、疾患を治療し、疾患又はその臨床的症状の発生を停止し又は低減し、及び/又は疾患を軽減し、疾患又はその臨床的症状の消退を生じることを指す。療法は、疾患、疾患の徴候、及び/又は疾患の症状の予防、阻止、治療、治癒、改善、低減、緩和、及び/又は軽減の提供を包含する。療法は、進行中の疾患の徴候及び/又は症状(例えば、筋衰弱、多発性硬化症)を有する患者における徴候及び/又は症状の緩和を包含する。療法はまた、「予防」及び「阻止」も包含する。予防は、患者の疾患の治療後に疾患の発生を阻止すること、又は患者の疾患の発症又は重症度を低減することを含む。療法の目的のための用語「低減した」とは、広くは、徴候及び/又は症状における臨床的に有意な減少を指す。療法は、徴候及び/又は症状(例えば、網膜変性、失明)の再燃又は再発を治療することを含める。療法は、限定されないが、徴候及び/又は症状の発現を防止すること、並びに既発の徴候及び/又は症状を低減すること、更に既発の徴
候及び/又は症状を排除することを包含する。療法は、慢性疾患(「維持」)及び急性疾患を治療することを含める。例えば、治療は、徴候及び/又は症状(例えば、筋衰弱、多発性硬化症)の再燃又は再発を治療する又は阻止することを含める。
【0051】
規制の遵守を維持するために、MSCバンクは、例えば、少なくとも数百人から10,000人の患者を治療するために十分な数の細胞を提供するように、細胞の十分な供給を維持せねばならず、MSCバンクは、少なくとも500億個のMSCを有さねばならない。本発明は、GMPコンプレイン品及び/又は低温保存されたMSCバンクを包含する。一実施形態において、本発明のMSC調製物は、少なくとも1010個の血管芽細胞由来のMSCを含む。別の態様において、本発明のMSC調製物は、少なくとも1011、1012、1013、又は1014個の血管芽細胞由来のMSCを含むMSC調製物を提供する。
【0052】
本明細書で使用するとき「病態を正常化する」とは、疾患から生じた異常構造及び/又は機能をより正常な状態に回復させることを指す。正常化とは、疾患から生じた組織、器官、細胞型などの構造及び/又は機能における異常を修正することによって、病態の進行が制御されかつ改善され得ることを示唆する。例えば、本発明のESC-MSCによる治療後に、自己免疫疾患、例えばMSの結果としての免疫系の異常が、改善され、修正され、及び/又は回復されることが可能である。
【0053】
誘導多能性幹細胞
更なる例示的な多能性幹細胞としては、因子(「再プログラミング因子」)の組み合わせを発現することによって、又は因子の組み合わせの発現を誘導することによって、体細胞を再プログラミングすることで生成される誘導多能性幹細胞(iPS細胞)が挙げられる。iPS細胞は、胎児、出生後、新生児、未成年者、又は成人の体細胞を使用して生成され得る。iPS細胞は、細胞バンクから得ることも可能である。あるいは、iPS細胞は、RPE細胞又は別の細胞型に分化し始める前に、新たに生成されてもよい(当該技術分野で既知のプロセスによって)。iPS細胞の製造は、分化した細胞の産生における最初の工程であり得る。iPS細胞は、組織適合RPE細胞を生成することを目的として、特定の患者又は適合したドナーから得た材料を用いて特異的に生成することが可能である。iPS細胞は、意図されている受容者において実質的に免疫原性ではない細胞から生成され得、例えば、自己由来細胞又は意図されている受容者に対して組織適合性の細胞から産生され得る。更に上述したように(「多能性細胞」を参照)、iPS細胞を含める多能性細胞は、このような多能性細胞(例えば、MSC及び血管芽細胞)から分化する細胞中で、寿命、効力、ホーミングを増加させるために、又は所望の因子を供給するために、遺伝的に修正を加えるか、又は他の方法で修正を加えてもよい。
【0054】
他の例として、誘導多能性幹細胞は、細胞を1つ以上の再プログラミング因子に接触させることによって、体細胞又はその他の細胞を再プログラミングすることで生成されてもよい。例えば、再プログラミング因子は、例えば、細胞に加えられた外因性核酸から、又はその遺伝子の発現を促進又は誘導する小分子、マイクロRNA等、などの因子に応答して内因性遺伝子から、細胞によって発現されてもよい(Suh及びBlelloch著、Development 138、1653-1661(2011年);Miyoshら著、Cell Stem Cell(2011年)、doi:10.1016/j.stem.2011.05.001;Sancho-Martinezら著、Journal
of Molecular Cell Biology(2011年)、1-3;Anokye-Dansoら著、Cell Stem Cell 8、376-388、2011年4月8日;Orkin及びHochedlinger著、Cell 145、835-850、2011年6月10日を参照(これらのそれぞれは、その全体が参考として本明細書に援用される)。再プログラミング因子は、例えば、培養基に加えられることで
、外因性ソースから提供されることが可能であり、細胞に侵入するペプチド、タンパク質、又は核酸トランスフェクション剤へのカップリング、リポフェクション、電子穿孔、バイオリスティック粒子送達系(遺伝子ガン)、マイクロインジェクションなどを通して等、当該技術分野で既知の方法によって、細胞中に導入され得る。iPS細胞は、胎児、出生後、新生児、未成年者、又は成人の体細胞を使用して生成され得る。特定の実施形態において、体細胞を多能性幹細胞に再プログラミングするために使用され得る因子としては、例えば、Oct4(Oct3/4と呼ばれることもある)、Sox2、c-Myc、及びKlf4の組み合わせが挙げられる。他の実施形態において、体細胞を多能性幹細胞に再プログラミングするために使用され得る因子としては、例えば、Oct-4、Sox2、Nanog、及びLin28の組み合わせが挙げられる。他の実施形態において、体細胞は、少なくとも2つの再プログラミング因子、少なくとも3つの再プログラミング因子、又は4つの再プログラミング因子を発現することによって再プログラミングされる。他の実施形態において、更なる再プログラミング因子が特定され、体細胞を多能性細胞に再プログラミングするために、単独で又は1つ以上の既知の再プログラミング因子と組み合されて使用される。iPS細胞は、典型的には、胚性幹細胞と同一のマーカーの発現によって特定され得るが、特定のiPS細胞系は、その発現プロファイルで異なる場合がある。
【0055】
誘導多能性幹細胞は、体細胞中で1つ以上の再プログラミング因子を発現することによって、又は再プログラミング因子の発現を誘導することによって産生することが可能である。この体細胞は、皮膚線維芽細胞、滑膜線維芽細胞、又は肺線維芽細胞などの線維芽細胞、若しくは非線維芽細胞体細胞である。この体細胞は、少なくとも1、2、3、4、5個の再プログラミング因子を発現することによって再プログラミングされる。この再プログラミング因子は、Oct3/4、Sox2、NANOG、Lin28、cMyc、及びKlf4から選択され得る。再プログラミング因子の発現は、体細胞を、再プログラミング因子の発現を誘導する小有機分子作用物質などの少なくとも1つの作用物質に接触させることによって誘発され得る。
【0056】
この体細胞はまた、再プログラミング因子が発現され(例えば、ウイルスベクター、プラスミド等を使用して)、再プログラミング因子の発現が誘発される(例えば、小有機分子を使用して)組み合わせアプローチを使用しても再プログラミングすることが可能である。例えば、この再プログラミング因子は、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを使用する感染によって体細胞中で発現されてもよい。更に、再プログラミング因子は、エピソームプラスミドなどの非組込みベクターを使用して、体細胞中で発現されてもよい。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yuら著、Science.2009年5月8日;324(5928):797-801を参照されたい。再プログラミング因子が、非組込みベクターを使用して発現される場合、この因子は、電気穿孔、トランスフェクション、又はこのベクターによる体細胞の形質転換を使用して、発現され得る。例えば、マウス細胞において、組込みウイルスベクターを使用しての4つの因子(Oct3/4、Sox2、cmyc、及びKlf4)の発現は、体細胞を再プログラミングするのに十分である。ヒト細胞において、組込みベクターを使用しての4つの因子(Oct3/4、Sox2、NANOG、及びLin28)の発現は、体細胞を再プログラミングするのに十分である。
【0057】
再プログラミング因子が細胞中で一旦発現されると、この細胞は培養され得る。経時的に、ES特性を有する細胞は、培養皿中で出現する。例えばES形態に基づいて、又は選択可能又は検出可能なマーカーの発現に基づいて、この細胞を選択し、サブ培養することが可能である。この細胞を培養し、ES細胞に類似する細胞(これらは推定上のiPS細胞である)の培養物を産生することが可能である。iPS細胞は、典型的には、他の胚性幹細胞と同一のマーカーの発現によって特定され得るが、特定のiPS細胞系は、その発
現プロファイルにおいて異なる場合がある。例示的なiPS細胞は、Oct-4、アルカリ性ホスファターゼ、SSEA 3表面抗原、SSEA 4表面抗原、TRA 1 60、及び/又はTRA 1 81を発現することができる。
【0058】
iPS細胞の多能性を確認するために、この細胞を多能性の1つ以上のアッセイで試験することが可能である。例えば、この細胞は、ES細胞マーカーについて試験されてもよく;この細胞はSCIDマウス中に移植される場合、奇形腫を産生するための能力が試験されてもよく;細胞が、全ての3つの胚葉の細胞型を産生するよう分化するための能力について評価されてもよい。一旦多能性iPS細胞が得られると、この多能性iPS細胞は、血管芽細胞及びMSC細胞を産生するために使用することが可能である。
【0059】
血管芽細胞
血管芽細胞は多能性であり、造血細胞及び内皮細胞系統の双方に対する共通の前駆体として働く。胚発生時に、これらは、初期中胚葉発生時に出現し、原始的血島をコロニー形成する移行性細胞型として発生すると考えられている(Choiら著、Development 125(4):725-732(1998年))。一旦そうなると、血管芽細胞は原始的及び最終的な造血細胞、HSC、及び内皮細胞の双方をもたらすことが可能である(Mikkolaら著、J.Hematother.Stem Cell Res 11(1):9-17(2002年))。
【0060】
血管芽細胞は、マウスESC(Kennedyら著、Nature(386):488-493(1997年);Perlingeiroら著、Stem Cells(21):272-280(2003年))及びヒトESC(参考文献14、15、Yuら著、Blood 2010 116:4786-4794)の双方から生体外で誘導されることが可能である。その他の研究は、臍帯血から(Bordoniら著、Hepatology 45(5)1218-1228)、末梢血液から得た循環するCD34-lin-CD45-CD133細胞から(Ciraciら著、Blood 118:2105-2115)、及びマウスの子宮から(Sunら著、Blood 116(16):2932-2941(2010年))から血管芽細胞が単離されたことを主張している。マウス及びヒトESC由来血管芽細胞の双方は、様々なサイトカイン及び増殖因子を含有する半固体培地中の細胞の増殖後に、液体培地中で増殖した細胞の培養及びクラスタの分化を通して得られ(Kennedy、Perlingeiro著、参考文献14、15)、更にその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,017,393号明細書を参照されたい。この適用の目的で、用語血管芽細胞はまた、米国特許第8,017,393号明細書に記載されている血管コロニー形成細胞を包含し、これは、造血細胞及び内皮細胞系統への分化に加えて、平滑筋細胞になることも可能であり、CD34、CD31、KDR、及びCD133が陽性ではない。本明細書に記載されている方法において有用な血管芽細胞は、これら既知の方法のいずれかから誘導又は取得され得る。例えば、胚様体は、非付着条件下、例えば、低接着性基材上又は「懸滴」で多能性細胞を培養することによって形成することが可能である。これら培養において、ES細胞は、胚様体と呼ばれる細胞の集塊又はクラスタを形成することができる。Itskovitz-Eldorら著、Mol Med.2000年2月;6(2):88-95を参照されたい(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。典型的には、胚様体は、最初は多能性細胞の固体集塊又はクラスタとして形成し、経時的に、胚様体のいくつかが流体で満たされた空洞を含有するようになり、後者前者は、この文献では「単純性」EBと呼ばれ、後者は「嚢胞性」胚様体と呼ばれる。これらEB(固体型及び嚢胞性型双方の)中の細胞は、分化することができ、経時的に徐々に増加する細胞を産生する。任意選択で、その後EBは、接着培養として培養され、突起物を形成させることも可能である。同様に、過増殖させ、多層細胞集団を形成させる多能性細も経時的に分化することが可能である。
【0061】
一実施形態において、血管芽細胞は、(a)ESC細胞系を2、3、4、5、6又は7日間培養し、細胞のクラスタを形成させる工程と、(b)前記細胞のクラスタを血管芽細胞に分化するように誘導する工程とを含む工程によって生成される。他の実施形態において、工程(b)における細胞のクラスタは、サイトカインに富む無血清のメチルセルロース系培地中で培養される(14、15)。
【0062】
一実施形態において、血管芽細胞は、(a)MA09、H7、H9、MA01、HuES3、及びH1gfpからなる群から選択されるESC細胞系を、2、3、4、5、6又は7日間培養し、細胞のクラスタを形成させる工程と、(b)サイトカインに富む無血清のメチルセルロース系培地中で培養することによって、血管芽細胞に分化するよう誘導する工程とを含む工程によって生成される。
【0063】
別の実施形態において、血管芽細胞は、本明細書に記載されているいずれかの多能性細胞を誘導することによって生成される。他の実施形態において、血管芽細胞は、胚盤胞、平板培養されたICM、1つ以上の割球、又は着床前段階の胚又は胚葉構造のその他の部分(生殖、体細胞核移植(SCNT)、単為生殖、雄性生殖、若しくは有性手段又は無性手段によって産生されるかどうかに無関係に)、若しくは再プログラミングを通して誘導されたESC(例えばiPS細胞)を含む群から選択される多能性細胞の分化を誘導することによって生成される。更に他の実施形態において、血管芽細胞は、iPS細胞から生成され、ここではこのiPS細胞は、外因的に付加された因子若しくはタンパク質又はマイクロRNAなどの当該技術分野で既知のその他の方法を使用して生成される(Zhouら著、Cell Stem Cell(4):1-4、2009年;Miyoshiら著、Cell Stem Cell(8):1-6、2011年;Dansoら著、Cell Stem Cell(8):376-388、2011年を参照)。
【0064】
別の態様において、本開示は、間葉系間質細胞(MSC)の調製物及び血管芽細胞を使用するMSCを生成する方法を提供する。このMSCは、本明細書で更に説明されるように、1つ以上の態様における既存のMSCとは異なる場合がある。一実施形態において、血管芽細胞は、胚盤胞、平板培養されたICM、1つ以上の割球、又は着床前段階の胚又は胚葉構造のその他の部分(生殖、体細胞核移植(SCNT)、単為生殖、雄性生殖、若しくは有性手段又は無性手段によって産生されるかどうかに無関係に)、若しくは再プログラミングを通して誘導された細胞(例えばiPS細胞)を含む群から選択される多能性細胞を誘導することによって、無血清のメチルセルロース培地に、ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strp)、EX-CYTE(登録商標)増殖補給物(9.0~11.0g/Lのコレステロール及び13.0~18.0g/Lのリポタンパク質並びに脂肪酸を含む水溶性濃縮物(pH7~8.4))、Flt3-リガンド(FL)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、トロンボポイエチン(TPO)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、幹細胞由来因子(SCF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン3(IL3)、及びインターロイキン6(IL6)からなる群から選択された1つ以上の材料を加えたものを使用する培養において、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日後に採取される。本発明の好ましい実施形態において、血管芽細胞は、例えば、無血清のメチルセルロースに前の実施形態の成分を加えた培地中で、6~14日間培養されて採取される。好ましい実施形態において、この成分は、前記培地中に以下の濃度で存在する:Flt3-リガンド(FL)は50ng/mlで、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は50ng/mlで、トロンボポイエチン(TPO)は、50ng/mlで、及び塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)は20ng/mlで存在し、50ng/mlの幹細胞由来因子(SCF)、20ng/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、20ng/mlのインターロイキン3(IL3)、20ng/mlのインターロイキン6(IL6)、50ng/mlのFL、50ng/mlのVEGF、50ng
/mlのTPO、及び30ng/mlのbFGFである。
【0065】
別の実施形態において、実質的に血管芽細胞から構成される細胞のクラスタは、再再度プレーティングし、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、又は36日間培養して、間葉系幹細胞の調製物を形成する。一実施形態において、間葉系幹細胞は、(a)ESCを8~12日間培養する工程と、(b)細胞のクラスタを形成する血管芽細胞を採取する工程と、(c)工程(b)の血管芽細胞を再度プレーティングする工程と、(d)工程(c)の血管芽細胞を14~30日間培養する工程とを含む工程によって生成される。
【0066】
一実施形態において、マウス胚性繊維芽細胞、OP9細胞、又は当業者に既知であるその他の細胞型などの細胞のフィーダー層が培養中に含まれる無フィーダー条件下で、血管芽細胞を採取し、再度プレーティングし、液体培地中で培養する。好ましい実施形態において、血管芽細胞は細胞外マトリックス上で培養される。更に好ましい実施形態において、血管芽細胞は細胞外マトリックス上で培養され、前記マトリックスは、室温でゲル化し、再構成基底膜(マトリゲル)を形成する、エンゲルブレス-ホルム-スウォーム(EHS)マウスの肉腫細胞から得た可溶性調製物を含む。更に他の実施形態において、血管芽細胞は、(a)前記血管芽細胞を、マトリゲル上で少なくとも7日間培養する工程と、(b)工程(a)の血管芽細胞を、非コーティング組織培養プレートに移し、工程(b)の前記血管芽細胞を約7~14日の間、更に培養する工程と、を含む工程によって生成される。血管芽細胞は、形質転換増殖因子β(TGF-β)、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子1、ウシ線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び/又は血小板由来増殖因子(PDGF)、ヒト基底膜抽出物(BME)(例えば、Cultrex BME、Trevigen)又はEHSマトリックス、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン(例えば、コラーゲンI、コラーゲンIV)、及び硫酸ヘパランからなる群から選択される因子の1つ以上を含む基材上で培養されてもよい。前記マトリックス又はマトリックス構成成分は、哺乳動物のものであり、又はより具体的にはヒト起源であり得る。一実施形態において、血管芽細胞は、マトリゲルコーティングプレート上で血清を含む液体培地中で培養され、この培養基は、10~20%のウシ胎児血清を補充したαMEM(Sigma-Aldrich)(αMEM+20%FCS)、10~20%の熱不活性化ヒトAB血清を補充したαMEM、及び10~20%の熱不活性化ABヒト血清を補充したIMDMから選択される成分を含むことが可能である。
【0067】
血管芽細胞を培養することにより生成される間葉系間質細胞
本発明の一実施形態は、改善された間葉系間質細胞を含む。本発明の間葉系間質細胞は、血管芽細胞を培養する改善されたプロセスを使用して、血管芽細胞から生成することが可能である。
【0068】
本発明の間葉系間質細胞は、より高いレベルの効力を維持することが可能であり、凝集しないか、ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも実質的に少なく凝集することが可能である。本発明の一実施形態において、本発明のプロセスのいずれか1つ以上により生成された間葉系間質細胞の調製物は、より高いレベルの効力を維持し、凝集しないか、ESCから直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも実質的に少なく凝集する。
【0069】
本発明の一実施形態は、間葉系間質細胞の調製物を生成する血管芽細胞を培養するプロセスを提供し、前記間葉系間質細胞は、若々しい表現型を維持する。本発明の間葉系間質細胞の医薬調製物は、治療を必要とする哺乳動物宿主に投与される場合、改善された治療特性を示す。
【0070】
本発明の一実施形態は、ヒト血管芽細胞を培養することによって生成される間葉系間質細胞の調製物を提供する。本発明の他の実施形態は、ヒト血管芽細胞を培養することによる間葉系間質細胞の調製物を生成するためのプロセスを提供する。本発明のプロセスの実施形態において、前記ヒト血管芽細胞は、フィーダーフリー条件で培養され、次いでマトリックス上で平板培養される。本発明の更に他の実施形態において、前記マトリックスは、形質転換増殖因子β(TGF-β)、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子1、ウシ線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、硫酸ヘパラン、エンゲルブレス-ホルム-スウォーム(EHS)マウスの肉腫細胞から得た可溶性調製物、マトリゲル、及びヒト基底膜抽出物を含む群から選択される。更に他の実施形態において、前記マトリックスは、哺乳動物又はヒト起源から誘導され得る。
【0071】
別の実施形態において、血管芽細胞は、血清又は20%ウシ胎児血清を補充したαMEMなどの血清代替え品を含む培地中で培養される。他の実施形態において、血管芽細胞は、マトリックス上で約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間培養される。本発明の更に他の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、(a)血管芽細胞をマトリゲル上で約7日間培養する工程と、(b)工程(a)の血管芽細胞をマトリゲルから移し、この血管芽細胞を非コーティングの組織培養皿上で更に9~100日間、すなわち約9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、60、70、80、90又は100日間増殖させる工程と、を含む工程によって生成される。
【0072】
本発明の一実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、血清又は20%ウシ胎児血清を補充したαMEMなどの血清代替え品を含む培地中で培養される。本発明の他の実施形態において、前記血管芽細胞は、マトリックス上で、約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間培養される。
【0073】
本発明の一実施形態において、血管芽細胞は、ESCから分化する。本発明の他の実施形態において、前の実施形態の血管芽細胞は、ESCから分化し、前記ESCは、iPS、MA09、H7、H9、MA01、HuES3、H1gfp、内部細胞塊細胞及び割球を含む群から選択される。
【0074】
本発明の一実施形態は、血管芽細胞がESCから分化するプロセスによって生成された間葉系間質細胞の調製物を含む。本発明の他の実施形態において、前の実施形態の血管芽細胞は、ESCから分化し、前記ESCは、iPS、MA09、H7、H9、MA01、HuES3、H1gfp、内部細胞塊細胞及び割球を含む群から選択される。
【0075】
本発明の一実施形態において、血管芽細胞は、以下の工程によってESCから分化し、工程は、(a)ESCを、例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び/又は骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養し、細胞のクラスタを形成する工程と、(b)前記細胞のクラスタを、前記細胞のクラスタの血管芽細胞への分化を誘導するのに十分な量で提供される、少なくとも1つの増殖因子(例えば、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、及び骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、幹細胞因子(SCF)、Flt 3L(FL)、トロンボポイエチン(TPO)、及び/又はtPTD-HOXB4)の存在下で培養する工程と、(c)前記血管芽細胞を、少なくとも1つの追加の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、顆粒
球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及びtPTD-HOXB4)を含む培地中で培養する工程(前記少なくとも1つの追加の増殖因子は、前記培養中の前記細胞のクラスタを増殖させるのに十分な量で提供される)と、を含み、任意選択で、工程(a)~(c)のいずれかに銅が付加される。
【0076】
本発明の一実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、血管芽細胞を培養することで生成され、前記血管芽細胞は、以下の工程によりESCから分化し、工程は、(a)ESCを、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養し、前記培養の開始から0~48時間以内に細胞のクラスタを形成させる工程と、(b)前記細胞のクラスタを、前記細胞のクラスタの血管芽細胞への分化を誘導するのに十分な量で提供される、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、幹細胞因子(SCF)、Flt 3L(FL)、トロンボポイエチン(TPO)、及びtPTD-HOXB4を含む群から選択される少なくとも1つの増殖因子の存在下で培養する工程と、(c)前記血管芽細胞を、インスリン、トランスフェリン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及びtPTD-HOXB4を含む群から選択される1つ以上の追加の増殖因子を含む培地中で培養する工程(前記少なくとも1つの追加の増殖因子は、前記培養中でヒトの細胞のクラスタを増殖させるのに十分な量で提供される)と、を含む。
【0077】
別の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、(a)前記血管芽細胞に分化させるようにESCを誘導する少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、又は14日後に、血管芽細胞を採取する工程と、(b)工程(a)から得た前記血管芽細胞を前記間葉系間質細胞に分化させる誘導の約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50日以内に生成された前記間葉系間質細胞を採取する工程と、を含む工程によって生成される。
【0078】
更に別の実施形態において、少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、1億個、1億2,500万個又は1億2,500万個の間葉系間質細胞の調製物は、約26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35日以内の約200,000個の血管芽細胞の培養から生成され、前記間葉系間質細胞の調製物は、約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満のヒト胚性幹細胞を含む。更に別の実施形態において、少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、1億個、1億2,500万個又は1億5,000万個の間葉系間質細胞が、血管芽細胞の培養の約26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35日以内の約200,000個の血管芽細胞から生成される。
【0079】
本発明のプロセスの一実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、ヒト胚性幹細胞について実質的に精製される。本発明のプロセスの他の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、前記調製物が少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の間葉系間質細胞を含むように、ヒト胚性幹細胞について実質的に精製される。
【0080】
本発明の別の実施形態において、本発明のプロセスの任意の1つ以上により生成される間葉系間質細胞の調製物は、宿主に導入される場合、奇形腫を形成しない。
【0081】
本発明の別の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物の少なくとも50%は、培養の約7~20(例えば15)日以内でCD105又はCD73が陽性である。本発明の好ましい実施形態において、本発明の任意の1つ以上のプロセスにより生成される間葉系間質細胞の調製物の少なくとも50%は、培養の約7~15日後に、CD105又はCD73が陽性である。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の少なくとも80%は、培養の約20日以内でCD105及びCD73が陽性である。本発明の更に他の実施形態において、本発明の任意の1つ以上のプロセスにより生成される間葉系間質細胞の調製物の少なくとも80%は、培養の約20日以内でCD105及びCD73が陽性である。
【0082】
例示的な態様において、本開示は、少なくとも10個の間葉系間質細胞及び薬学的に許容し得る担体を含む、哺乳動物患者における使用に好適な医薬調製物を提供し、この間葉系間質細胞は、10回目の倍加までに、細胞の25%未満が細胞死を受け、非MSCに老化するか分化する状態で、少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製能力を有する。
【0083】
例示的な態様において、本開示は、少なくとも10個の間葉系間質細胞及び薬学的に許容し得る担体を含む、哺乳動物患者における使用に好適な医薬調製物を提供し、この間葉系間質細胞は、第5継代までに、細胞の25%未満が細胞死を受け、線維芽細胞に老化又は分化する状態で、細胞培養中で少なくとも5継代を受けるための複製能力を有する。
【0084】
例示的な態様において、本開示は、少なくとも10個の間葉系間質細胞及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬調製物を提供し、この間葉系間質細胞は、血管芽細胞から分化する。
【0085】
例示的な態様において、本開示は、少なくとも10個の間葉系間質細胞を含む低温細胞バンクを提供し、この間葉系間質細胞は、10回目の集団倍加までに細胞の25%未満が細胞死、老化又は線維芽細胞への分化を受ける状態で、細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加複製能力を受けるための複製能力を有する。
【0086】
例示的な態様において、本開示は、少なくとも10個の間葉系間質細胞及び1%未満の任意のその他の細胞型を含む精製された細胞調製物を提供し、この間葉系間質細胞は、10回目の集団倍加までに細胞の25%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞への分化を受ける状態で、細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加複製能力を受けるための複製能力を有する。
【0087】
本発明の間葉系間質細胞は、胚性幹細胞系又は誘導多能性幹細胞系などの多能性幹細胞源から分化することが可能である。例えば、調製物又はバンクの間葉系間質細胞の全ては、共通の多能性幹細胞源から分化することが可能である。更に、この間葉系間質細胞は、多能性幹細胞ソースから分化し、培養中で継代し、間葉系間質細胞の数を増大させ、20回未満の集団倍加後に培養から単離することが可能である。
【0088】
この間葉系間質細胞は、HLA遺伝子型的に同一であり得る。この間葉間質細胞は、ゲノム的に同一であり得る。
【0089】
この間葉系間質細胞の少なくとも30%は、CD10が陽性であり得る。更にこの間葉系間質細胞の少なくとも60%は、マーカーCD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、及びCD166並びにHLA-ABCが陽性であり得る。例示的な実施形態において、この間葉系間質細胞の少なくとも30%が、マーカーCD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4及びTLR3が陽性であり得る。
【0090】
本発明の間葉系間質細胞は、25日未満に細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製率を有することが可能である。この間葉系間質細胞は、8kbよりも長いことが可能である平均末端制限酵素断片長さ(TRF)を有する。この間葉系間質細胞は、5回の集団倍加を受けた骨髄から誘導された間葉系間質細胞調製物と比較して、(i)細胞周期調節及び細胞老化、(ii)細胞エネルギー及び/又は脂質代謝、及び(iii)アポトーシスに関与するタンパク質の含量及び/又は酵素活性の統計的に有意な減少を有することが可能である。この間葉系間質細胞は、骨髄から誘導された間葉系間質細胞と比較して、細胞骨格構造及びこれに関連する細胞動態に関与するタンパク質の含量及び/又は酵素活性の統計的に有意な増加を有することが可能である。この間葉系間質細胞は、培養中の10回の集団倍加にわたって、5,000,000を超えるフローサイトメトリーで測定される前方散乱光値を有する細胞において75%以上の増加を受けることができない。この間葉系間質細胞は、休止状態で、骨髄又は脂肪組織から誘導された間葉系間質細胞によって、その休止状態で発現されるIL-6 mRNAのレベルの10%未満であり得るレベルで、インターロイキン6をコード化するmRNAを発現することが可能である。
【0091】
本発明の調製物は、ヒト患者への投与に好適であり得る。この調製物は、非ヒト獣医哺乳動物への投与に好適であり得る。
【0092】
例示的な態様において、本開示は、間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供し、前記間葉系間質細胞は、少なくとも10回の集団倍加を受けることが可能であり、10回の集団倍加は約27日以内、より好ましくは約26日未満、好ましくは25日未満、より好ましくは約24日未満、更により好ましくは約23日未満、更により好ましくは約22日未満、若しくはそれ以下で起こる。
【0093】
例示的な態様において、本開示は、間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供し、前記間葉系間質細胞は、少なくとも15回の集団倍加を受けることが可能である。
【0094】
前記間葉系間質細胞は、少なくとも20、25、30、35、40、45、50回又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能であり得る。
【0095】
例示的な態様において、本開示は、間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供することが可能であり、前記間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも15回の集団倍加、少なくとも20回の集団倍加、又は少なくとも25回の集団倍加を受けることが可能である。
【0096】
本発明の間葉系間質細胞は、血管芽細胞の生体外分化によって産生され得る。この間葉系間質細胞は、霊長類細胞又はその他の哺乳動物細胞であり得る。この間葉系間質細胞はヒト細胞であり得る。
【0097】
前記集団倍加は、約35日以内、より好ましくは約34日以内、好ましくは33日以内、より好ましくは32日以内、更により好ましくは31日以内、又は更により好ましくは約30日以内で生じる。
【0098】
本発明の調製物は、約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満の多能性細胞を含むことが可能である。
【0099】
本発明の調製物は、多能性細胞を含まなくともよい。
【0100】
本発明の調製物は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の間葉系間質細胞を含むことが可能である。
【0101】
前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも1つ;(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの少なくとも1つ;(iii)CD105、CD73及び/又はCD90;若しくは(iv)これらの任意の組み合わせが陽性であり得る。前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD105、CD73及び/又はCD90の少なくとも2つ;(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも2つ;若しくは(iii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの全てが陽性であり得る。前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD105、CD73及びCD90の全てが陽性であり得;(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの全てが陽性であり得、及び/又は(ii)CD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、及び/又はTLR3が陰性であり得るか、若しくは細胞の5%未満又は10%未満がCD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、及び/又はTLR3を発現することが可能である。前記間葉系間質細胞の少なくとも60%、70%、80%又は90%が、(i)CD105、CD73及びCD90の1つ以上;(ii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の1つ以上;若しくは(iii)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの1つ以上が陽性であり得る。
【0102】
本発明の医薬調製物は、これを必要とする対象における不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含むことが可能である。
【0103】
本発明の医薬調製物は、これを必要とする受容者への移植のためのその他の細胞、組織又は器官を含むことが可能である。その他の細胞又は組織は、RPE細胞、皮膚細胞、角膜細胞、膵細胞、肝細胞、心細胞又は前記細胞のいずれかを含有する組織であり得る。前記間葉系間質細胞は、骨髄から誘導されることはなく、免疫調節アッセイにおけるこの調製物の効力は、骨髄由来の間葉系間質細胞の調製物の効力を超えることが可能である。効力は、EC50用量を決定する免疫調節アッセイによってアッセイされ得る。この調製物は、10回の集団倍加後に、その分化能の約50%~100%を保持することができる。
【0104】
前記間葉系間質細胞は、多能性細胞から直接的に誘導されることができず、前記間葉系間質細胞は、(a)凝集しないか又は多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも少ない量で凝集し;(b)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞と比較して、分裂する場合より容易に分散し;(c)等しい数の多能性細胞で出発する場合、多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも数で多い場合があり;及び/又は(d)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりもより早期に特徴的な間葉系間質細胞表面マーカーを獲得する。
【0105】
前記間葉系間質細胞は、哺乳動物細胞であり得る。前記間葉系間質細胞は、ヒト、イヌ、ウシ、非ヒト霊長類、ネズミ、ネコ、又はウマの細胞であり得る。
【0106】
例示的な態様において、本開示は、間葉系間質細胞を生成するための方法を提供し、方法は、間葉系幹細胞をもたらす条件下で血管芽細胞を培養する工程を含む。前記血管芽細胞は、フィーダーフリー条件下で培養することが可能である。前記血管芽細胞は、マトリックス上で平板培養することが可能である。前記マトリックスは、形質転換増殖因子β(TGF-β)、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子1、ウシ線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び/又は血小板由来増殖因子(PDGF)の1つ以上を含むことが可能である。前記マトリックスは、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、硫酸ヘパラン、マトリゲル(エンゲルブレス-ホルム-スウォーム(EHS)マウスの肉腫細胞から得た可溶性調製物)、ヒト基底膜抽出物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択することが可能である。前記マトリックスは、エンゲルブレス-ホルム-スウォームマウスの肉腫細胞から得た可溶性調製物を含むことができる。
【0107】
前記間葉系間質細胞は、哺乳動物細胞であり得る。前記間葉系間質細胞は、ヒト、イヌ、ウシ、非ヒト霊長類、ネズミ、ネコ、又はウマの細胞であり得る。
【0108】
前記血管芽細胞は、αMEMを含む培地中で培養され得る。前記血管芽細胞は、血清又は血清代替品を含む培地中で培養され得る。前記血管芽細胞は、0%、0.1~0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%のウシ胎児血清が補充されたαMEMを含む培地中で培養され得る。前記血管芽細胞は、前記マトリックス上で少なくとも約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間培養され得る。
【0109】
前記血管芽細胞は、多能性細胞から分化することが可能である。
【0110】
前記多能性細胞は、iPS細胞又は割球から産生された多能性細胞であり得る。前記多能性細胞は、ヒトの胚を破壊することなく1つ以上の割球から誘導することが可能である。
【0111】
前記血管芽細胞は、(a)前記多能性細胞を培養し細胞のクラスタを形成する工程を含む方法によって、多能性細胞から分化することが可能である。この多能性細胞は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び/又は骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養され得る。工程(a)において、この多能性細胞は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び/又は骨形態形成タンパク質4(BMP-4)の存在下で培養され得る。前記VEGF及びBMP-4は、前記細胞培養の開始から0~48時間以内に多能性細胞培養に添加することが可能であり、前記VEGFは、20~100nm/mLの濃度で任意選択で添加することが可能であり、前記BMP-4は、15~100ng/mLの濃度で任意選択で添加することが可能である。前記VEGF及びBMP-4は、前記細胞培養の開始から0~48時間以内に工程(a)の細胞培養に添加することが可能であり、前記VEGFは、20~100nm/mLの濃度で任意選択で添加することが可能であり、前記BMP-4は、15~100ng/mLの濃度で任意選択で添加することが可能である。前記血管芽細胞は、(b)前記細胞のクラスタの血管芽細胞への分化を誘導するのに十分な量で、少なくとも1つの増殖因子の存在下で、前記細胞のクラスタを培養する工程を更に含む方法によって、多能性細胞から分化することが可能である。工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、幹細胞因子(SCF)、Flt 3L(FL)、トロンボポイエチン(TPO)、EPO、及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上の増殖因子を含むことができる。
【0112】
工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子は、約20~25ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、約20~100ng/mlの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、約15~100ng/mlの骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、約20~50ng/mlの幹細胞因子(SCF)、約10~50ng/mlのFlt 3L(FL)、約20~50ng/mlのトロンボポイエチン(TPO)、EPO、及び/又は1.5~5U/mlのtPTD-HOXB4の1つ以上を含むことが可能である。
【0113】
工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子の1つ以上は、工程(a)の開始から36~60時間以内、又は40~48時間以内に前記培養に添加することが可能である。
【0114】
工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子1つ以上は、工程(a)の開始から48~72時間以内に前記培養に添加することが可能である。
【0115】
工程(b)で添加される前記少なくとも1つの増殖因子は、bFGF、VEGF、BMP-4、SCF及び/又はFLの1つ以上を含むことが可能である。
【0116】
本発明の方法は、(c)前記細胞のクラスタを任意選択で単一細胞に解離する工程を更に含んでもよい。
【0117】
本発明の方法は、(d)前記血管芽細胞を、少なくとも1つの追加の増殖因子を含む培地中で培養する工程を更に含んでもよく、前記少なくとも1つの追加の増殖因子は、血管芽細胞を増殖させるために十分な量であり得る。
【0118】
工程(d)において、前記少なくとも1つの追加の増殖因子は、インスリン、トランスフェリン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、エリスロポイエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及び/又はtPTD-HOXB4の1つ以上を含むことが可能である。
【0119】
工程(d)において、前記少なくとも1つの追加の増殖因子は、約10~100μg/mlのインスリン、約200~2,000μg/mlのトランスフェリン、約10~50ng/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、約10~20ng/mlのインターロイキン-3(IL-3)、約10~1000ng/mlのインターロイキン-6(IL-6)、約10~50ng/mlの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、3~50U/mlのエリスロポイエチン(EPO)、約20~200ng/mlの幹細胞因子(SCF)、約20~200ng/mlの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、約15~150ng/mlの骨形態形成タンパク質4(BMP-4)、及び/又は約1.5~15U/mlのtPTD-HOXB4の1つ以上を含むことが可能である。
【0120】
工程(a)、(b)、(c)及び/又は(d)における前記培地は、無血清培地であり得る。
【0121】
上述の方法は、(e)間葉系間質細胞を有糸分裂で不活性化する工程を更に含んでもよい。
【0122】
少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、9,500万個、1億個、1億2,500万個、又は1億5,000万個の間葉系間質細胞を生成することが可能である。
【0123】
前記血管芽細胞は、前記多能性細胞の分化を誘導し始めてから少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17又は18日後に採取されることが可能である。
【0124】
前記間葉系間質細胞は、前記多能性細胞の分化を誘導し始めてから少なくとも25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50日以内で生成することが可能である。
【0125】
本発明は、培養の約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35日以内に、約200,000個の血管芽細胞から生成される少なくとも8,000万個、8,500万個、9,000万個、9,500万個、1億個、1億2,500万個、又は1億5,000万個の間葉系間質細胞をもたらすことが可能である。
【0126】
本発明の間葉系間質細胞は、血管芽細胞としての培養の約26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35日以内に、少なくとも1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:415、1:425、1:440、1:450、1:365、1:475、1:490及び1:500の間葉系間質細胞に対する血管芽細胞の比で、血管芽細胞から生成することが可能である。
【0127】
前記細胞は、ヒトの細胞であり得る。
【0128】
別の態様において、本開示は、上記記載の方法のいずれかにより得られた血管芽細胞から誘導される間葉系間質細胞を提供する。
【0129】
別の態様において、本開示は、血管芽細胞の生体外分化において誘導された間葉系間質細胞を提供する。
【0130】
前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、
AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274、及びHLA-ABCの全てが陽性であり得、並びに(ii)CD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4及び/又はTLR3が陰性であるか、又はこの細胞の5%未満又は10%未満がCD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4及び/又はTLR3を発現することが可能である。
【0131】
前記間葉系間質細胞の少なくとも50%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の全て;又は(ii)CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの全てが陽性であり得る。
【0132】
前記間葉系間質細胞の少なくとも60%、70%、80%又は90%は、(i)CD10、CD24、IL-11、AIRE-1、ANG-1、CXCL1、CD105、CD73及びCD90の少なくとも1つ;又は(ii)CD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166、CD274及びHLA-ABCの少なくとも1つが陽性であり得る。
【0133】
この間葉系間質細胞は、CD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、又はTLR3の少なくとも1つを発現することができないか、若しくはこの細胞の5%未満又は10%未満が、CD31、34、45、133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4、又はTLR3の少なくとも1つを発現することができる。
【0134】
別の態様において、本開示は、上記記載の間葉間質細胞の調製物を提供する。
【0135】
前記調製物は、約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満の多能性細胞を含むことが可能である。
【0136】
この調製物は、多能性細胞を含まなくともよい。
【0137】
前記調製物は、実質的に精製されることが可能であり、任意選択で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のヒト間葉系間質細胞を含むことが可能である。
【0138】
この調製物は、実質的に類似したレベルのp53及びp21タンパク質を含むことが可能であり、又はp21タンパク質と比較してp53タンパク質のレベルが1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍大きいことも可能である。
【0139】
この調製物中の間葉系間質細胞又はMSCは、培養中で少なくとも5回の集団倍加を受けることが可能であり、若しくは培養中で少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60回又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可
能である。
【0140】
前記間葉系間質細胞は(a)凝集することができないか、又は多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも少ない量で凝集することが可能であり;(b)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞と比較して、分裂する場合より容易に分散することが可能であり;(c)等しい数の多能性細胞で出発する場合、多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりも多い数であることが可能であり;及び/又は(d)多能性細胞から直接的に誘導された間葉系間質細胞よりもより早期に特徴的な間葉系細胞表面マーカーを獲得する。
【0141】
別の態様において、本開示は、上記記載のいずれかの間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物を含む医薬調製物を提供する。
【0142】
この医薬調製物は、不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含むことが可能である。
【0143】
この医薬調製物は、不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含むことが可能であり、それを必要とする受容者への移植のためのその他の細胞又は組織を更に含んでもよい。
【0144】
前記その他の細胞又は組織は、同種異系又は同系の膵臓、神経、肝臓、RPE、角膜細胞又は前述のいずれかを含有する組織であり得る。
【0145】
本発明の医薬調製物は、自己免疫障害又は同種異系細胞に対する免疫反応を治療することで使用され得るか、若しくは多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、心筋梗塞、器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、放射線熱傷、パーキンソン病、微少骨折、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生、ブドウ膜炎又はこれらの組み合わせを治療することで使用され得る。
【0146】
別の態様において、本開示は、上記記載の間葉系間質細胞のいずれか、又は間葉系間質細胞の調製物のいずれかを含むキットを提供する。
【0147】
別の態様において、本開示は、上記記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物含むキットを提供し、前記細胞又は細胞の調製物は、凍結又は低温保存されることが可能である。
【0148】
別の態様において、本開示は、上記記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物含むキットを提供し、前記細胞又は細胞の調製物は、細胞送達用ビヒクル内に封入されることが可能である。
【0149】
別の態様において、本開示は、疾患又は障害を治療するための方法を提供し、方法は、上記記載の間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0150】
本発明の方法は、その他の細胞又は組織の違勅を更に含むことが可能である。この細胞又は組織は、網膜、RPE、角膜、神経、免疫、骨髄、肝臓又は膵臓の細胞を含むことが可能である。この疾患又は障害は、多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、心筋梗塞、器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、パーキンソン病、微少骨折、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生、又はこれらの組み合わせから選択され得る。
【0151】
この疾患又は障害は、ブドウ膜炎であってもよい。前記疾患又は障害は、自己免疫障害又は同種異系細胞に対する免疫反応であってもよい。この自己免疫障害は、多発性硬化症であり得る。
【0152】
別の態様において、本開示は、骨損失又は軟骨損傷を治療する方法を提供し、方法は、間葉系間質細胞又は間葉系間質細胞の調製物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0153】
本発明の間葉系間質細胞は、同種移植又は同系移植細胞又は組織と組み合わせて投与されてもよい。この同種移植細胞は、網膜色素上皮細胞、網膜細胞、角膜細胞、又は筋細胞を含むことが可能である。
【0154】
別の態様において、本開示は、有糸分裂不活性化間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供する。この間葉系間質細胞は、血管芽細胞から分化することが可能である。
【0155】
この医薬品は、少なくとも10個の間葉系間質細胞及び薬学的に許容し得る担体を含むことが可能である。
【0156】
別の態様において、本開示は、上記方法によって産生された有糸分裂不活性化間葉系間質細胞を含む医薬調製物を提供する。
【0157】
この調製物は、ヒト対象への投与に好適であり得る。この調製物は、非ヒト獣医哺乳動物への投与に好適であり得る。
【0158】
この医薬調製物は、多能性細胞を含まなくともよい。
【0159】
この医薬調製物は、これを必要とする対象において不必要な免疫応答を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含むことが可能である。
【0160】
この医薬調製物は、炎症呼吸状態、急性損傷に起因する呼吸状態、成人性呼吸困難症候群、外傷後成人性呼吸困難症候群、移植肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、気腫、慢性閉塞性気管支炎、気管支炎、アレルギー反応、細菌性肺炎に起因する損傷、ウイルス性肺炎に起因する損傷、喘息、刺激物質への曝露、喫煙、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、難聴、自己免疫性難聴、騒音性難聴、乾癬及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される疾患又は状態を治療するために有効な間葉系間質細胞の量を含むことが可能である
【0161】
間葉系間質細胞の調製物
本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物が提供され、この中で、前記間葉系間質細胞の所望の表現型は、ESC培養による間葉系間質細胞と比較して、より早期に存在する(図5を参照)。本発明の他の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、この中で、前記間葉系間質細胞の所望の表現型は、ESC培養による間葉系間質細胞と比較して、より早期に存在し、前記所望の表現型は、CD9、CD13、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、及びHLA-abcを含む群から選択される少なくとも2つのマーカーの発現によって規定される。
【0162】
本発明の他の実施形態は、間葉系間質細胞の調製物を含み、この中で、前記間葉系間質細胞の表現型は、CD9、CD13、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、及びHLA-ABCを含む群から選択される少なくとも2つのマーカーの発現によって規定される。本発明の更に他の実施形態は、間葉系間質細胞の調製物を含み、この中で、前記間葉系間質細胞の表現型は、CD9、CD13、CD29、CD44、CD73、CD90及びCD105を含む群から選択される少なくとも2つのマーカーの発現によって規定され、前記間葉系間質細胞は、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD33、CD36、CD38、CD61、CD62E及びCD133を発現しない。
【0163】
本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成された)の約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%が、培養中で約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日後に、CD9、CD13、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、及びHLA-abcの発現によって規定される表現型を提示する。本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成された)の約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%が、培養中で約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日後に、CD9、CD13、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、及びHLA-abcを含む群から選択される少なくとも2つのマーカーの発現並びにCD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD33、CD36、CD38、CD61、CD62E、CD133及びStro-1の発現の欠如によって規定される表現型を提示する。前述の実施形態において、前記表現型は、AIRE-1、IL-11、CD10、CD24、ANG-1、及びCXCL1を含む群から選択されるマーカーによって更に規定される。
【0164】
本発明の好ましいプロセスが提供され、この中で、血管芽細胞から誘導された間葉系間質細胞の数は、間葉系間質細胞の培養の約30日以内に、約2×10個の血管芽細胞から誘導された約8×10、8.5×10、9×10、9.5×10、1×10、1.25×10、又は1.5×10個の間葉系間質細胞である。本発明の代替実施形態において、間葉系間質細胞は、間葉系間質細胞の培養の約30日以内に、約1:200、1:400、1:415、1:425、1:440、1:450、1:465、1:475、1:490、及び1:500の間葉系間質細胞に対する血管芽細胞の比で、血管芽細胞から生成されることが可能である。
【0165】
本発明の好ましい実施形態において、血管芽細胞を培養することで得られる間葉系間質細胞の数は、ESCから直接的に得られる間葉系間質細胞の数よりも多い。本発明の他の好ましい実施形態において、血管芽細胞の培養によって得られる間葉系間質細胞の数は、ESCから直接的に得られる間葉系間質細胞の数よりもESCから直接的に得られる間葉系間質細胞の数よりも少なくとも5倍、10倍、20倍、22倍多い(図4を参照)。
【0166】
本発明の別の実施形態において、主題の間葉系間質細胞の調製物は、哺乳動物宿主に導入される場合、奇形腫を形成することはない。
【0167】
本発明の一実施形態は、本発明のプロセス実施形態のいずれかを使用して、血管芽細胞を培養することによって生成される間葉系間質細胞の調製物を提供する。本発明の一実施形態は、本発明のプロセス実施形態のいずれかを使用して、血管芽細胞を培養することによって生成される間葉系間質細胞の調製物を含み、ここでは、前記調製物の表現型は、AIRE-1、IL-11、CD10、CD24、ANG-1、及びCXCL1を含む群から選択されるマーカーのいずれか又は全ての存在によって規定される。本発明の他の実施形態は、本発明のプロセス実施形態のいずれかを使用して、血管芽細胞を培養することにより生成された間葉系間質細胞の調製物を含み、前記調製物の表現型は、AIRE-1、IL-11、CD10、CD24、ANG-1、及びCXCL1を含む群から選択されるマーカーのいずれか又は全ての存在によって規定され、前記調製物は、IL-6、Stro-1及びVEGFの低減した発現を提示する。
【0168】
本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物は、実質的に同程度のレベルのp53及びp21タンパク質を含むか、又はp21と比較したp53のレベルは、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい。本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物は、実質的に同程度のレベルのp53及びp21タンパク質を含むか、又はp21と比較したp53のレベルは、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい。本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物が提供され、前記医薬調製物は、実質的に同程度のレベルのp53及びp21タンパク質を含むか、又はp21と比較したp53のレベルは、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい。
【0169】
本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物は、実質的に同程度のパーセンテージのp53及びp21タンパク質が陽性の細胞を含むか、又はp21と比較したp53が陽性の細胞のパーセンテージは、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい。本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物は、実質的に同程度のパーセンテージのp53及びp21タンパク質が陽性の細胞を含むか、又はp21と比較したp53が陽性の細胞のパーセンテージは、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい。本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物が提供され、前記医薬調製物は、実質的に同程度のパーセンテージのp53及びp21タンパク質が陽性の細胞を含むか、又はp21と比較したp53が陽性の細胞のパーセンテージは、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい。
【0170】
本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養する
ことによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物は、S100A1、VIM、MYADM、PIM1、ANXA2、RAMP、MEG3、IL13R2、S100A4、TREM1、DGKA、TPBG、MGLL、EML1、MYO1B、LASS6、ROBO1、DKFZP586H2123、LOC854342、DOK5、UBE2E2、USP53、VEPH1、SLC35E1、ANXA2、HLA-E、CD59、BHLHB2、UCHL1、SUSP3、CREDBL2、OCRL、OSGIN2、SLEC3B、IDS、TGFBR2、TSPAN6、TM4SF1、MAP4、CAST、LHFPL2、PLEKHM1、SAMD4A、VAMP1、ADD1、FAM129A、HPDC1、KLF11、DRAM、TREM140、BHLHB3、MGC17330、TBC1D2、KIAA1191、C5ORF32、C15ORF17、FAM791、CCDC104、PQLC3、EIF4E3、C7ORF41、DUSP18、SH3PX3、MYO5A、PRMT2、C8ORF61、SAMD9L、PGM2L1、HOM-TES-103、EPOR及びTMEM112からなる群から、又はS100A1、VIM、MYADM、PIM1、ANXA2、RAMP、MEG3、IL13R2、S100A4、TREM1、DGKA、TPBG、MGLL、EMLI、MYO1B、LASS6、ROBO1、DKFZP586H2123、LOC854342、DOK5、UBE2E2、USP53、VEPH1及びSLC35E1を含む群から選択された老化マーカーのバックグラウンドレベルを有する細胞の実質的に同程度のパーセンテージを含み、若しくはS100A1、VIM、MYADM、PIM1、ANXA2、RAMP、MEG3、IL13R2、S100A4、TREM1、DGKA、TPBG、MGLL、EML1、MYO1B、LASS6、ROBO1、DKFZP586H2123、LOC854342、DOK5、UBE2E2、USP53、VEPH1、SLC35E1、ANXA2、HLA-E、CD59、BHLHB2、UCHL1、SUSP3、CREDBL2、OCRL、OSGIN2、SLEC3B、IDS、TGFBR2、TSPAN6、TM4SF1、MAP4、CAST、LHFPL2、PLEKHM1、SAMD4A、VAMP1、ADD1、FAM129A、HPDC1、KLF11、DRAM、TREM140、BHLHB3、MGC17330、TBC1D2、KIAA1191、C5ORF32、C15ORF17、FAM791、CCDC104、PQLC3、EIF4E3、C7ORF41、DUSP18、SH3PX3、MYO5A、PRMT2、C8ORF61、SAMD9L、PGM2L1、HOM-TES-103、EPOR、TMEM112を含む群から、又はS100A1、VIM、MYADM、PIM1、ANXA2、RAMP、MEG3、IL13R2、S100A4、TREM1、DGKA、TPBG、MGLL、EML1、MYO1B、LASS6、ROBO1、DKFZP586H2123、LOC854342、DOK5、UBE2E2、USP53、VEPH1及びSLC35E1を含む群から選択される老化マーカーが陽性の細胞のパーセンテージは、バックグラウンドよりも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍大きい。本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物はHoxB3、HoxB7、MID1、SNAPC5、PPARG、ANXA2、TIPIN、MYLIP、LAX1、EGR1、CRIP1、SULT1A3、STMN1、CCT8、SFRS10、CBX3、CBX1、FLJ11021、DDX46、ACADM、KIAA0101、TYMS、BCAS2、CEP57、TDG、MAP2K6、CSRP2、GLMN、HMGN2、HNRPR、EIF3S1、PAPOLA、SFRS10、TCF3、H3F3A、LOC730740、LYPLA1、UBE3A、SUM02、SHMT2、ACP1、FKBP3、ARL5A、GMNN、ENY2、FAM82B、RNF138、RPL26L1、CCDC59、PXMP2、POLR3B、TRMT5、ZNF639、MRPL47、GTPBP8、SUB1、SNHG1、ATPAF1、MRPS24、C16ORF63、FAM33A、EPSTL1、CTR9、GAS5、ZNF711、MTO1及びCDP2を含む群から選択されるマーカーのバックグラウンドレベルを有する細胞の実質的に同程度のパーセンテージを含み、若しくはHoxB3、HoxB7、MID1、SNAPC5、PPA
RG、ANXA2、TIPIN、MYLIP、LAX1、EGR1、CRIP1、SULT1A3、STMN1、CCT8、SFRS10、CBX3、CBX1、FLJ11021、DDX46、ACADM、KIAA0101、TYMS、BCAS2、CEP57、TDG、MAP2K6、CSRP2、GLMN、HMGN2、HNRPR、EIF3S1、PAPOLA、SFRS10、TCF3、H3F3A、LOC730740、LYPLA1、UBE3A、SUM02、SHMT2、ACP1、FKBP3、ARL5A、GMNN、ENY2、FAM82B、RNF138、RPL26L1、CCDC59、PXMP2、POLR3B、TRMT5、ZNF639、MRPL47、GTPBP8、SUB1、SNHG1、ATPAF1、MRPS24、C16ORF63、FAM33A、EPSTL1、CTR9、GAS5、ZNF711、MTO1及びCDP2を含む群から選択されるマーカーが陽性である細胞のパーセンテージは、バックグランドの1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍未満である。
【0171】
本発明の一実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成される)の調製物が提供され、前記調製物は、HoxB3、HoxB7、MID1、SNAPC5、PPARG、ANXA2、TIPIN、MYLIP、LAX1、EGR1、CRIP1、SULT1A3、STMN1、CCT8、SFRS10、CBX3、CBX1、FLJ11021、DDX46、ACADM、KIAA0101、TYMS、BCAS2、CEP57、TDG、MAP2K6、CSRP2、GLMN、HMGN2、HNRPR、EIF3S1、PAPOLA、SFRS10、TCF3、H3F3A、LOC730740、LYPLA1、UBE3A、SUM02、SHMT2、ACP1、FKBP3、ARL5A、GMNN、ENY2、FAM82B、RNF138、RPL26L1、CCDC59、PXMP2、POLR3B、TRMT5、ZNF639、MRPL47、GTPBP8、SUB1、SNHG1、ATPAF1、MRPS24、C16ORF63、FAM33A、EPSTL1、CTR9、GAS5、ZNF711、MTO1及びCDP2を含む群から、又はHoxB3、HoxB7、MID1、SNAPC5、PPARG、ANXA2、TIPIN、MYLIP、LAX1、EGR1、CRIP1及びSULT1A3を含む群から選択される老化マーカーのバックグラウンドレベルを有する細胞の実質的に同程度のパーセンテージを含み、若しくはHoxB3、HoxB7、MID1、SNAPC5、PPARG、ANXA2、TIPIN、MYLIP、LAX1、EGR1、CRIP1、SULT1A3、STMN1、CCT8、SFRS10、CBX3、CBX1、FLJ11021、DDX46、ACADM、KIAA0101、TYMS、BCAS2、CEP57、TDG、MAP2K6、CSRP2、GLMN、HMGN2、HNRPR、EIF3S1、PAPOLA、SFRS10、TCF3、H3F3A、LOC730740、LYPLA1、UBE3A、SUM02、SHMT2、ACP1、FKBP3、ARL5A、GMNN、ENY2、FAM82B、RNF138、RPL26L1、CCDC59、PXMP2、POLR3B、TRMT5、ZNF639、MRPL47、GTPBP8、SUB1、SNHG1、ATPAF1、MRPS24、C16ORF63、FAM33A、EPSTL1、CTR9、GAS5、ZNF711、MTO1及びCDP2を含む群から選択される、又はHoxB3、HoxB7、MID1、SNAPC5、PPARG、ANXA2、TIPIN、MYLIP、LAX1、EGR1、CRIP1及びSULT1A3を含む群から選択される老化マーカーが陽性の細胞のパーセンテージは、バックグランドの1.5、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍未満である。
【0172】
別の実施形態において、血管芽細胞由来のMSCは、成人由来のMSCと比較して、より若々しい表現型を有する。一実施形態において、主題のMSCは、培養中で少なくとも5、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60回、又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能である。これとは対照的に、成人由来の間葉系間質細胞は、典型的には、培養中で2~3回の倍加を受ける。別の実施形態において、血管芽細胞由来のMSCは、成人由来のMSCと比較して、より長いテロメア長さ、より大きな
免疫抑制効果、より少ない液胞、より迅速な分裂、培養中のより容易な分裂、より高いCD90発現を有すること、より少ない分化系列に決定されること、又はこれらの組み合わせを有する。別の実施形態において、血管芽細胞由来のMSCは、成人由来MSCと比較して、細胞増殖を促進する転写物の増加した発現を有し(すなわち、より高い増殖能を有し)、最終細胞分化に関与する転写物の低減した発現を有する。
【0173】
本発明の別の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物は、本発明の任意の1つ以上のプロセスによって生成され、前記間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60回、又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能である。
【0174】
本発明の別の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60回、又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能である。本発明の別の実施形態において、主題の間葉系間質細胞の調製物は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60回、又はそれを超える回数の集団倍加を受けることが可能であり、前記集第倍加後に、間葉系間質細胞の50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、又は1%未満は、複製老化を受けている。他の実施形態において、前記調製物は、医薬調製物である。
【0175】
本発明の別の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60回の集団倍加を受けている。
【0176】
本発明の別の実施形態において、間葉系間質細胞の調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60回の集団倍加を受けていて、前記間葉系間質細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満は、複製老化を受けていて、前記間葉系間質細胞は、若々しい表現型及び効力を有し、並びに前記調製物は医薬調製物である。前記調製物は、免疫学的障害、変性疾患、又はMSCを使用して治療し易いその他の疾患などの疾患の治療に有効な数の間葉系間質細胞を含むことが可能である。
【0177】
本発明の別の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60回の集団倍加を受けていて、このような倍加後に、前記間葉系間質細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満は、複製老化を受けていて、前記間葉系間質細胞は、若々しい表現型及び効力を有し、並びに前記調製物は医薬調製物である。前記調製物は、免疫学的障害、変性疾患、又はMSCを使用して治療し易いその他の疾患などの疾患の治療に有効な数の間葉系間質細胞を含むことが可能である。
【0178】
本発明の別の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、培養中で少なくとも又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60回の集団倍加を受けている。前の実施形態において、前記間葉系間質細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%、又は1%未満は、複製老化を受けていて、前記間葉系間質細胞は、若々しい表現型及び効力を有し、前記調製
物は医薬調製物であり、前記医薬調製物は、間葉系間質細胞の有効な数を含み、並びに前記医薬調製物は保存されている。
【0179】
別の実施形態において、本発明は、間葉系間質細胞の医薬調製物を含むキットを提供する。別の実施形態において、本発明は、間葉系間質細胞の医薬調製物を含むキットを提供し、前記調製物は保存されている。別の実施形態において、本発明は、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の医薬調製物を含むキットを提供する。別の実施形態において、本発明は、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の医薬調製物を含むキットを提供し、前記調製物は保存されている。
【0180】
別の実施形態において、本発明は、血管芽細胞から誘導された間葉系間質細胞の有効量を、これを必要とする対象に投与することによって、病態を治療する方法を提供する。前記病態としては、自己免疫障害、ブドウ膜炎、骨損失又は軟骨損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
血管芽細胞を培養することで得られる本発明の間葉系間質細胞は、ESCから直接誘導されたMSCと比較して、改善された特性を有する。例えば、ESC誘導MSCは、血管芽細胞由来MSCと比較すると、大量に凝集し、分裂する場合分散することがより難しく、等しい数のESCから出発する場合、同じ数のMSCを生成することは殆どなく、特徴的なMSC細胞表面マーカーを獲得するために長い時間を要する。実施例2及び図3~6を参照されたい。
【0182】
一実施形態において、本発明は、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物を提供し、前記調製物は、病態の正常化において有効である。本発明の他の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物が提供され、前記調製物は、過剰な又は不必要な免疫応答を低減することにおいて有効である。本発明の他の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物が提供され、前記調製物は、自己免疫障害を軽減することにおいて有効である。本発明の他の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の有効量を宿主に投与することによる病態の正常化が提供される。本発明の他の実施形態は、病態の正常化を提供し、このような病態の正常化は、前記MSCによるサイトカイン放出、調節性T細胞の数の増加を刺激すること、Th1細胞から放出するIFNγの特定量を阻害すること、及びTh2細胞からの特定量のIL4分泌を刺激することを含む群から選択される効果で特徴付けられる。他の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物の投与は、形質転換増殖因子β、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ、プロスタグランジンE2、肝細胞増殖因子、一酸化窒素、インターロイキン10、インターロイキン6、マクロファージコロニー刺激因子、及び可溶性ヒト白血球抗原(HLA)G5を含む群から選択されるサイトカインの前記間葉系間質細胞からの放出をもたらす。
【0183】
本発明の他の実施形態において、主題の間葉系間質細胞(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物の投与は、形質転換増殖因子β、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、プロスタグランジンE2、肝細胞増殖因子、一酸化窒素、インターロイキン10、インターロイキン6、マクロファージコロニー刺激因子、及び可溶性人白血球抗原(HLA)G5、インターロイキン4、8、11、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、血管内皮細胞増殖因子、インスリン様増殖因子1、ホスファチジルイノシトール-グリカン生合成クラスFタンパク質、単球化学誘因タンパク質1、間質細胞由来因子1、腫瘍壊死因子1、形質転換増殖因子β、塩基性線維芽細胞増速因子、アンジオポイエ
チン1及び2、インターフェロンγによって誘導されるモノカイン、インターフェロン誘導タンパク質10、脳由来神経親和性因子、インターロイキン1受容体α、ケモカインリガンド1及び2を含む群から選択されるサイトカインの前記間葉系間質細胞からの放出をもたらす。
【0184】
MSCの医薬調製物
本発明のMSCは、薬学的に許容し得る担体で製剤化することが可能である。例えば、本発明のMSCは、単独又は医薬品製剤の構成成分として投与されることができ、前記MSCは、医薬品での使用のための任意の便利な方法で投与されるために製剤化され得る。一実施形態は、分散液、懸濁液、エマルジョン、使用の直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に任意選択で再構成される無菌粉末、抗酸化剤、緩衝液、静細菌剤、溶質又は懸濁化剤及び増粘剤からなる群から選択される1つ以上の薬学的に許容し得る無菌等張の水性又は非水性溶液と結合した間葉系間質細胞の医薬調製物を提供する。
【0185】
本発明の一実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約5回~約100回の集団倍加を受けている。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約10回~約80回の集団倍加を受けている。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約25回~約60回の集団倍加を受けている。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約10回未満の集団倍加を受けている。本発明の更に他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約20回未満の集団倍加を受けている。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約30回未満の集団倍加を受けており、前記間葉系間質細胞は、複製老化を受けていない。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約30回未満の集団倍加を受けており、前記間葉系間質細胞の約25%未満が複製老化を受けている。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約30回未満の集団倍加を受けており、前記間葉系間質細胞の約10%未満が複製老化を受けている。本発明の他の実施形態において、間葉系間質細胞の医薬調製物が提供され、前記間葉系間質細胞は、約30回未満の集団倍加を受けており、前記間葉系間質細胞の約10%未満が複製老化を受けており、前記間葉系間質細胞は、AIRE-1、IL-11、CD10、CD24、ANG-1、及びCXCL1を含む群から選択されるマーカーを発現する。
【0186】
MSCの医薬調製物の注射のための濃度は、有効である任意の量であり、例えば実質的にESCを含まない量であり得る。例えば、この医薬調製物は、本明細書に記載されているMSCの数及びタイプを含むことが可能である。特定の実施形態において、MSCの医薬調製物は、これを必要とする宿主への全身投与用に、約1×10個の主題のMSC(例えば、血管芽細胞を培養することにより生成された)を含み、又はこれを必要とする宿主への局所投与用に、約1×10個の血管芽細胞の培養による前記MSCを含む。
【0187】
本開示の例示的な組成物は、パイロジェンフリー又は本質的にパイロジェンフリー、及び病原体フリーなどの、ヒト患者を治療する上での使用に好適な製剤であり得る。投与される場合、本開示における使用のための医薬調製物は、パイロジェンフリー、病原体フリーの生理学的に許容し得る形態であり得る。
【0188】
本明細書に記載されている方法で使用されるMSCを含む調製物は、懸濁液、ゲル、コロイド、スラリー、又は混合物で移植されてもよい。また、注射時に、冷凍保存したMSCが市販の平衡塩類溶液で再懸濁され、注射(すなわち、ボーラス注射又は静脈内注射)による投与に望ましい浸透圧及び濃度を達成することが可能である。
【0189】
本発明の一態様は、哺乳動物患者における使用に好適な医薬調製物に関し、医薬調製物は、少なくとも10、10、10又は更に10個もの間葉系間質細胞と、薬学的に許容し得る担体を含む。本発明の別の態様は、少なくとも10、10、10又は更に10個もの間葉系間質細胞と、薬学的に許容し得る担体を含む医薬調製物に関し、この間葉系間質細胞は、血管芽細胞から分化する。本発明の更に別の態様は、10、10、1010、1011、1012、又は1013個もの間葉系間質細胞を含む低温細胞バンクを提供する。本発明の更に別の態様は、非ヒト細胞及び/又は非ヒト動物の産物を含まない又は実質的に含まない、精製された細胞調製物を提供し、この調製物は、少なくとも10、10、10又は更に10個もの間葉系間質細胞と、1%未満の任意のその他の細胞型、より好ましくは0.1%未満、0.01%未満又は更に0.001%未満の任意のその他の細胞型を含む。上記の調製物、組成物及びバンクの特定の好ましい実施形態としては、限定されないが、以下のパラグラフに列挙されているものが挙げられる。
【0190】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、10回目の倍加までに細胞の25、20、15、10又は更に5%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞(線維芽細胞、脂肪細胞及び/又は骨細胞)への分化を受けている状態で、培養中で少なくとも10回の集団倍加を受けるための複製能力を有する。
【0191】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、15回目の倍加までに細胞の25、20、15、10又は更に5%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞(線維芽細胞、脂肪細胞及び/又は骨細胞)への分化を受けている状態で、培養中で少なくとも15回の集団倍加を受けるための複製能力を有する。
【0192】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、20回目の倍加までに細胞の25、20、15、10又は更に5%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞(線維芽細胞、脂肪細胞及び/又は骨細胞)への分化を受けている状態で、培養中で少なくとも20回の集団倍加を受けるための複製能力を有する。
【0193】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、第5継代までに細胞の25、20、15、10又は更に5%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞(線維芽細胞、脂肪細胞及び/又は骨細胞)への分化を受けている状態で、培養中で少なくとも5回の継代を受けるための複製能力を有する。
【0194】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、第10継代までに細胞の25、20、15、10又は更に5%未満が細胞死、老化又は非MSC細胞(線維芽細胞、脂肪細胞及び/又は骨細胞)への分化を受けている状態で、培養中で少なくとも10回の継代を受けるための複製能力を有する。
【0195】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、OCT-4、アルカリ性ホスファターゼ、Sox2、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、及びTRA-1-80を発現する多能性幹細胞などの多能性幹細胞源(及び、胚性幹細胞系又は誘導多能性幹細胞系など)から分化し、、より好ましくは一般的な多能性幹細胞ソースからも分化する。
【0196】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、HLAと遺伝子型で同一である。
【0197】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、ゲノム的に同一である。
【0198】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞の少なくとも30%、35%、40%、45%又は更に50%は、CD10が陽性である。
【0199】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%又は更に90%は、マーカーCD73、CD90、CD105、CD13、CD29、CD44、CD166及びCD274及びHLA-ABCが陽性である。
【0200】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞の30%未満、25%未満、20%未満、15%未満又は更に10%未満は、マーカーCD31、CD34、CD45、CD133、FGFR2、CD271、Stro-1、CXCR4及びTLR3が陽性である。
【0201】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、25日未満、24日未満、23日未満、22日未満、21日未満又は更に20日未満で、細胞培養中で少なくとも10回の集団倍加を受ける複製速度を有する。
【0202】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、7kb、7.5kb、8kb、8.5kb、9kb、9.5kb、10kb、10.5kb、11kb、11.5kb又は更に12kbよりも長い平均末端制限酵素断片長さ(TRF)を有する。
【0203】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、培養中で10、15又は更に20回の集団倍加にわたる5,000,000を超える、フローサイトメトリーにより測定される前方散乱光値を有する細胞において、75%、70%、65%、60%、55%、50%、又は更に45%以上のパーセント増加を受けることはない。
【0204】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、休止状態において、臍帯血、骨髄又は脂肪組織から誘導された間葉系間質細胞によって発現されるIL-6 mRNAレベルの10%未満、8%未満、6%未満、4%未満又は更に2%未満であるレベルで、インターロイキン-6をコード化するmRNAを発現する。
【0205】
特定の実施形態において、この間葉系間質細胞は、臍帯血、骨髄又は脂肪組織から誘導されたMSCよりも少なくとも2、4、6、8、10、20、50又は更に100倍の効力がある。
【0206】
特定の実施形態において、MOG35-55 EAEマウスモデル(MOG35-55ペプチドで免疫化したC57BL/6マウスなど)に注射される場合、100万個の間葉系間質細胞は、平均で、3.5の臨床スコアを2.5未満に低減し、更により好ましくは、この臨床スコアを2、1.5未満に、又は1未満までにも低減するであろう。
【0207】
特定の実施形態において、この調製物は、ヒト患者への投与に好適であり、より好ましくは、パイロジェンフリーであり、及び/又は非ヒト動物産物を含まない。
【0208】
他の実施形態において、この調製物は、イヌ、ネコ又はウマなどの非ヒト獣医動物への投与に好適である。
【0209】
血管芽細胞の培養から誘導されたMSCを使用して治療可能な疾患及び状態
MSCは、多様な疾患及び状態に対する治療的効果があることが示されている。特に、MSCは、損傷部位に移動し、免疫抑制効果を及ぼし、損傷した組織の修復を促進する。本発明の一実施形態が提供され、その中で間葉系間質細胞の医薬調製物が病態の発現を低減する。本発明の一実施形態が提供され、その中で間葉系間質細胞の医薬調製物は、病態
を患う宿主に投与される。本発明の他の実施形態において、主題のMSC(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物は、創傷治癒、移植片対宿主病(GvHD)、疾患、慢性眼疾患、網膜変性、緑内障、ブドウ膜炎、急性心筋梗塞、慢性疼痛、肝炎、及び腎炎から選択される病態の発現を低減する。本発明の他の実施形態において、血管芽細胞を培養することによる間葉系間質細胞の医薬調製物は、ウマ蹄葉炎の症状発現を低減する。他の例として、MSCは、同種移植細胞又は組織(例えば、網膜色素上皮(RPE)細胞、乏突起膠細胞前駆体、網膜、角膜、骨格筋、平滑筋、又は心筋若しくはこれらの任意の組み合わせなどの筋肉、又はその他などのES細胞から分化した細胞を含む)と組み合わせて投与することが可能であり、これによって、移植された細胞又は組織に対する免疫反応の可能性を減少させ、その他の免疫抑制の必要性を潜在的に排除する。本明細書に記載されている主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成された)は、同様な用途で使用することが可能である。本発明のプロセスの一実施形態が提供され、ここでは主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物の宿主への投与は、将来的な治療の必要性を低減する。本発明のプロセスの一実施形態が提供され、ここでは、主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物の宿主への投与は、将来的な治療の必要性を低減し、前記治療が免疫機能を抑制する。
【0210】
本発明の一実施形態において、主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物は、病態の治療のために宿主に投与される。本発明の一実施形態において、主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物は、病態の治療のために宿主に投与され、この病態は、創傷治癒、多発性硬化症、全身性硬化症、血液癌、心筋梗塞、組織及び器官移植、組織及び器官移植拒絶、慢性同種移植片腎炎、肝硬変、肝不全、心不全、GvHD、脛骨骨折、左室機能不全、白血病、骨髄異形成症候群、クローン病、I型又はII型真性糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧賞、慢性疼痛、骨形成不全、ホモ接合性家族性低コレステロール血症、半月板切除後の処置、成人性歯周炎、重篤な心筋虚血症を有する患者における脈管形成、脊髄損傷、骨異形性症、真正糖尿病に関連する重度の虚血下肢、糖尿病性足部疾患、原発性シェーグレン症候群、骨関節炎、軟骨欠損(例えば、関節軟骨の欠損)、蹄葉炎、多系統委縮症、筋萎縮性側索硬化症、心臓手術、治療抵抗性全身性エリテマトーデス、生体腎同種移植、非悪性赤血球障害、熱傷、放射線熱傷、パーキンソン病、微少骨折(例えば、膝関節軟骨の欠損損傷を有する患者における)、水疱性表皮剥離症、重度の冠動脈虚血、突発性拡張心筋症、大腿骨骨頭壊死、ループス腎炎、骨空隙欠損、虚血性脳卒中、卒中後、急性放射線症候群、肺疾患、関節炎、骨再生を含むリストから選択される。
【0211】
本発明の他の実施形態において、主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成される)の医薬調製物は、自己免疫性病態の治療のために宿主に投与され、この自己免疫性病態は、急性壊死性出血性脳脊髄炎、アディソン病、無γグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイド症、強直性脊椎炎、抗GBM抗体/抗TBM抗体腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経失調、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵臓炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性蕁麻疹、軸索及びニューロン神経障害、同心円硬化症(Balo病)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コーガン症候群、寒冷凝集素病、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト病、本能性混合型クリオグロブリン血症、脱髄性神経障害、ヘルペス状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状ルーパス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、
結節性紅斑、実験的アレルギー脳髄膜炎、エヴァンズ症候群、線維筋痛症、線維化肺胞炎、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発性血管炎性肉芽腫症(GPA)(ウェゲナー肉芽腫症を参照)、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本脳症、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低γグロブリン血症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節性リポタンパク質疾患、封入体筋炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病、川崎病、ランバート-イートン症候群、白血球は規制血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病(LAD)、狼瘡(SLE)、ライム病、慢性メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、睡眠発作、視神経脊髄炎(デビック病)、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌関連性精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、(PNH)、パリー・ロンベルク症候群(進行性顔面片側萎縮)、パーソネージ・ターナー症候群、扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型及びIII型多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲストロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、突発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤血球糸無形成症、レーノー現象、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、不穏脚症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、多臓器肉芽腫性疾患、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性無精子性睾丸炎、全身硬直性症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、測頭動脈炎/巨細胞動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患(UCTD)、ブドウ膜炎、脈管炎、水疱性皮膚炎、白斑症、及びウェゲナー肉芽腫症(現在、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれる)を含むリストから選択される。
【0212】
血管芽細胞の培養から誘導されたMSCを使用する治療レジメン
本明細書に記載されているMSC及びMSCを含む医薬調製物は、細胞ベースの治療に使用することが可能である。特に、本発明は、本明細書に記載されている疾患及び状態を治療又は予防するための方法を提供し、方法は、MSCを含む医薬調製物の有効量を投与する工程を含み、このMSCは、血管芽細胞を培養することから誘導される。
【0213】
本発明のMSCは、治療される特定の病態に応じて、静脈内、心筋内、経心内膜、硝子体内、又は筋肉内経路を介する注射若しくは局所移植を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知の治療手段を使用して投与することが可能である。
【0214】
本発明の間葉系間質細胞は、局所移植を介して投与することが可能であり、ここでは送達装置が利用される。本発明の送達装置は、生体適合性かつ生体分解性である。本発明の送達装置は、生体適合性繊維、生体適合性糸、生体適合性発泡材、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリアルキレン、シュウ酸塩、ポリアミド、チロシン由来ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミノ基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、バイオポリマー;ラクチド、グリコシド、ε-カプロラクトン、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネートのホモポリマー及びコポリマー;ラクチド、グリコシド、ε-カプロラクトン、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネートのホモポリマー及びコポリマー;線維性コラーゲン、非線維性コラーゲン、ペプシンで処理されていないコラーゲン、他のポリマーと組み合されたコラーゲン、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質、生物学的関連ペプチド断片、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、血小板強化血漿、インスリン増殖因子、増殖分化因子、血管内皮
細胞由来増殖因子、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド、テネイシン-C、ラミニン、抗拒絶剤、鎮痛剤、抗酸化剤、抗アポトーシス剤、抗炎症剤及び細胞増殖抑制剤を含む群から選択される材料を使用して製造することが可能である。
【0215】
特定の治療レジメン、投与の経路、及び補助療法は、特定の病態、業態の重度、及び患者の健康状態に基づいて調整され得る。MSCを含む医薬調製物の投与は、病態の症状の重症度を低減するために、及び/又は病態の症状の更なる編成を予防するために有効であり得る。
【0216】
本発明の治療手段は、MSCの単一用量の投与を含むことが可能である。あるいは、本明細書に記載されている治療手段は、MSCがある期間にわたって複数回投与される治療のコースを含んでもよい。治療の例示的コースは、毎週、隔週、毎月、年4回、半年ごと、又は年1回の治療を含むことができる。あるいは、治療は、複数回投与が初期に必要とされ(例えば、初めの1週間は1日1回投与)、その後、より少なく低頻度の投与回数が要求される。
【0217】
一実施形態において、血管芽細胞を培養することにより得られた間葉系間質細胞の調製物は、患者の一生を通じて、1回以上周期的に患者に投与される。本発明の他の実施形態において、主題のMSC(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成された)の医薬調製物は、1年に1回、6~12ヶ月毎に1回、3~6ヶ月毎に1回、1~3ヶ月毎に1回、又は1~4週間毎に1回投与される。あるいは、特定の状態又は障害には、より頻繁な投与が望ましい場合がある。本発明の一実施形態において、主題のMSC(例えば、血管芽細胞を培養することによって生成された)の医薬調製物は、1回、複数回、患者の一生を通して周期的に、又は特定の患者及び治療される患者の病態の任意選択で、装置を介して投与される。同様に、時間とともに変化する治療レジメンも考えられる。例えば、治療開始時にはより頻繁な治療が必要とされ得る(例えば、毎日又は毎週治療)。時間と共に、患者の状態が改善するにつれて、より少ない回数の治療が必要とされ、又は更なる治療さえ必要でない場合もある。
【0218】
本発明によると、本明細書に記載されている間葉系幹細胞の静脈内投与によって、疾患又は状態が治療又は予防されることが可能である。いくつかの実施形態において、約2,000万個、約4,000万個、約6,000万個、約8,000万個、約1億個、約1億2,000万個、約1億4,000万個、約1億6,000万個、約1億8,000万個、約2億個、約2億2,000万個、約2億4,000万個、約2億6,000万個、約2億8,000万個、約3億個、約3億2,000万個、約3億4,000万個、約3億6,000万個、約3億8,000万個、約4億個、約4億2,000万個、約4億4,000万個、約4億6,000万個、約4億8,000万個、約5億個、約5億2,000万個、約5億4,000万個、約5億6,000万個、約5億8,000万個、約6億個、約6億2,000万個、約6億4,000万個、約6億6,000万個、約6億8,000万個、約7億個、約7億2,000万個、約7億4,000万個、約7億6,000万個、約7億8,000万個、約8億個、約8億2,000万個、約8億4,000万個、約8億6,000万個、約8億8,000万個、約9億個、約9億2,000万個、約9億4,000万個、約9億6,000万個、約9億8,000万個の細胞が静脈内注射される。いくつかの実施形態では、約10億個、約20億個、約30億個、約40億個又は約50億個の細胞又はそれ以上が静脈内注射される。いくつかの実施形態において、細胞の数は、約2,000万個~約40億個の細胞の間、約4,000万個~約10億個の細胞の間、約6,000万個~約7億5,000万個の細胞の間、約8,000万個~約4億個の細胞の間、約1億個~約3億5,000万個の細胞の間、及び約1億7,500万個~約2億5,000万個の間に及ぶ。
【0219】
本明細書に記載されている方法は、当該技術分野において既知の方法を使用して、治療又は予防の有効性をモニタリングする工程を更に含んでもよい。
【0220】
キット
本発明は、本明細書に記載されている組成物のいずれかを含むキットを提供する。間葉系間質細胞の調製物が、当業者に既知である方法によって、並びに米国特許出願公開第2002/0103542号明細書、欧州特許出願第EP1454641号明細書に記載されている方法を含める方法によって製造された送達装置内に封入され得るか、又は当業者に既知の方法、並びに米国特許第8,198,085号明細書、PCT出願第WO2004/098285号明細書、及び米国特許出願公開第2012/0077181号明細書に記載されている方法を含める方法に従って保存される。本発明の一実施形態において、キットは、少なくとも約8×10個、8.5×10個、9×10個、9.5×10個、1×10個、1.25×10個、又は1.25×10個の血管芽細胞の培養から誘導された主題のMSCの調製物を含む。別の実施形態において、約8×10個、8.5×10個、9×10個、9.5×10個、1×10個、1.25×10個、又は1.25×10個の主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成された)の調製物を含むキットが提供され、前記調製物は、医薬調製物である。本発明の更に他の実施形態において、約8×10個、8.5×10個、9×10個、9.5×10個、1×10個、1.25×10個、又は1.25×10個の主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成された)の医薬調製物を含むキットが提供され、前記医薬調製物は保存されている。本発明の更に他の実施形態において、約8×10個、8.5×10個、9×10個、9.5×10個、1×10個、1.25×10個、又は1.25×10個の主題のMSC(血管芽細胞を培養することによって生成された)の医薬調製物を含むキットが提供され、前記医薬調製物は、細胞送達ビヒクル内に収容されている。
【0221】
更に、このキットは、低温保存されたMSC又は低温保存されたMSCの調製物、凍結MSC又は凍結MSCの調製物、解凍された凍結MSC又は解凍された凍結MSCの調製物を含んでもよい。
【0222】
様々な実施形態及び概念の組み合わせ
本明細書に記載されている実施形態及び概念は、組み合わせて使用することが可能であることを理解されたい。例えば、本発明は、MSCを生成する方法を提供し、この方法は、ESCから血管芽細胞を生成する工程、この血管芽細胞を少なくとも4日間培養する工程、この血管芽細胞を採取する工程、マトリゲルコーティングプレート上で血管芽細胞を再平板培養する工程、並びに本明細書に記載されている血管芽細胞を少なくとも14日間培養する工程を含み、この方法は、ESCを実質的に含まない、少なくとも8,500万個のMSCを生成する。
【実施例0223】
以下の実施例は、決して本発明を限定するよう意図するものではない。
【0224】
実施例1-MSCの血管芽細胞からの生成
血管芽細胞を、以下のように、ESC系、MA09[16]に由来する、臨床段階の単一割球から生成した。
【0225】
まず初めに、モルフォゲン及び初期造血サイトカインの組み合わせ(具体的には、骨形態形成タンパク質-4(BMP-4)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(Tpo)及びfms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FL))で補充された無血清培地中で培養さ
れたMA09 ESCから初期段階の細胞のクラスタを生成した。より具体的には、6-ウェルの組織培養処置プレートの1つのウェルから得たESCを、50ng/mlのVEGF及び50ng/mlのBMP-4(R&D)で補充した3mLのStemline II培地(Sigma)中、6ウェル超低接着表面プレート(Corning)の1つのウェルに播種し、5%のCO2で37℃にてインキュベートした。細胞のクラスタが初めの24時間で形成した。40~48時間後に、培地の半分(1.5ml)を、50ng/mlのVEGF、50ng/mlのBMP-4、及び20~22.5ng/mlのbFGFで補充した新鮮なStemline II培地で置き換え、更に40~48時間インキュベーションを続けた(すなわち、合計で3.5~4日)。
【0226】
細胞のクラスタを解離し、単一細胞を無血清半固体の芽球コロニー増殖培地(BGM)中で平板培養した。具体的には、細胞のクラスタを0.05%のトリプシン-0.53mMのEDTA(Invitrogen)によって、2~5分間解離した。細胞懸濁液を上下にピペッティングし、次いでDMEM+10%のFCSを加え、トリプシンを不活性化させた。次いで40μmの濾過器に細胞を通過させて、単一細胞懸濁液を得た。次いで細胞を計数し、1~1.5×10個細胞/mlでStemline II培地中に再懸濁させた。
【0227】
単一細胞懸濁液(0.3ml、3~4.5×10個の細胞)を、短時間ボルテックスしながら、2.7mlの血管芽細胞増殖培地(上記記載のH4536ベースの培地配合)と混合し、5分間静置させた。次いで、18Gの針を取り付けたシリンジ(3ml)を使用して、この細胞混合物を6ウェル超低接着プレートの1つのウェルに移し、5%CO2で37℃にてインキュベートした。
【0228】
細胞のいくつかは、ブドウ様芽球コロニー(BC)に発達した。具体的には、BCは3日目に見ることができ(典型的には、3日目の始めに10個未満の細胞に含まれた)、4~6日後には、ブドウ様hES-BCは、顕微鏡下で容易に特定された(BC当たり100個を超える細胞に含まれた)。培養中に存在するBCの数は、数日間を経て徐々に増加した。6~7日後には、BCは、開口ガラスキャピラリーを使用して採取することができた。
【0229】
血管芽細胞は、7~12日の間の培養物から採取することが可能であり、α MEM+20%FCS中、マトリゲルコーティング組織培養プレート上に再平板培養した。フローサイトメトリー分析は、典型的にMSC上で見出される5つの細胞表面マーカーの発現レベルが、開始時の血管芽細胞集団において比較的低いことを示している(図2、左側パネル、4つの実験の平均+/-標準偏差)。しかしながら、MSC増殖条件における3週間の培養後に、これら5つの特徴的なMSCマーカーについて>90%の陽性に染色する均一な接着細胞集団が発生する(図2、右側パネル-22~23日、4つの実験の平均+/-標準偏差)。MSC培養条件時に、MSC表面マーカーを獲得するために細胞を分化させるのに要する時間の量は、使用される特定のESC系、血管芽細胞を採取する日にち、及びマトリゲル上で平面培養される血管芽細胞の数に応じて異なる可能性がある。いくつかの実験において、マーカーは細胞の90%で7~14日までに生じ、一方他の実験においては、この多くの細胞がこれらMSCマーカーを獲得するために22~24日を要する場合がある。
【0230】
上記実験に関連して、図1は、多能性細胞からのFM-MA09-MSCの生成、及び血管芽細胞を介してのECSからの間葉系間質細胞の生成の顕微鏡写真を示している。加えて、図2は、上記記載のように産生された多能性細胞由来血管芽細胞から得たFM-MA09-MSCの表現型を含む。この図は、最初の血管芽細胞集団中のMSC表面マーカーが陽性の細胞のパーセンテージ(グラフの左側、7~11日の血管芽細胞)及びマトリ
ゲルコーティングプレート上で血管芽細胞を培養後のMSC表面マーカーが陽性の細胞のパーセンテージ(グラフの右側)並びに血管芽細胞から誘導された間葉系間質細胞の顕微鏡写真(右側パネルの写真)を示している。更に、上記実験に関連して、図17は、FM-MA09-MSC生成のプロセス;及びマトリゲルの効果、すなわち、初期継代(すなわち、p2)においてマトリゲルから細胞を取り出すことが、p6までマトリゲル上で維持されたものと比較して、一時的にMSC増殖を遅くする可能性があるという効果を示している。
【0231】
図18は、得られたBM-MSC及びFM-MA09-MSCが軟骨形成を受けることを示している。
【0232】
実施例2-ESC及び血管芽細胞由来MSCの分化の比較
この実施例は、直接的分化(ここではESCがゼラチン又はマトリゲル上に直接的に平板培養された)又は血管芽細胞法(ここでは、実施例1に記載されているように、ESCが血管芽細胞にまず分化し、次いでマトリゲル上で平板培養された)のいずれかの2つの方法によるESCのMSCへの分化の比較を記述する。ゼラチン上の直接的分化は、MSC様細胞を発生するが、この細胞はCD105の発現を欠如し、このことは、MSCの運命の不完全な選択を示唆している(図3、左側パネル)。ESCがマトリゲル上で直接的に平板培養された場合、得られた細胞はMSCについて予想したようにCD105を発現しなかった(図3の中央パネル)。しかしながら血管芽細胞法によって産生されたMSCと比較すると、直接的に分化したMSC細胞は、集塊で増殖し、分裂する場合、分散することが難しく、等しい数のESCから出発する場合、同じ数のMSCを生成することは殆どなかった(図4)。
【0233】
ESCから直接的に分化したMSCもまた、特徴的なMSC細胞表面マーカーを獲得するためにより長い時間を要した(図5)。一旦MSCが得られると、拡大された免疫表現型検査は、両方法から得られたMSCが、HLA-ABCなどのMSC上で典型的に見出されるその他のマーカーについては陽性であるが、CD34及びCD45などの血管芽細胞関連マーカーについては陰性であることを示している(図6)。これらの結果は、血管芽細胞の中間段階が、ESCからの均質のMSCの堅調な産生を可能にすることを示唆している。これらの所見から、MSCに関する追加の試験が、血管芽細胞由来MSCを使用して行われるであろう。
【0234】
加えて、その結果が図3~6、13、15、16、19、及び21~27に含まれる実験(上記記載の)が、血管芽細胞由来MSCの特性に対比してESC-MSC又はBM-MSCの特性を比較し、これら細胞が、これらの細胞及びそれらから誘導された組成物の治療有効性に影響を与える可能性がある有意差を示すことを明らかにしている。特に、図3は、ヒト胚性幹細胞(ESC)をゼラチンコーティングプレート上で培養後の(左側パネル)、ESCをマトリゲルコーティングプレート上で培養後の(中央パネル)、及び血管芽細胞をマトリゲルコーティングプレート上で培養後の(右側パネル)MSC表面マーカーが陽性の細胞のパーセンテージを示している。更に、図4は、多能性細胞から産出されたMSCを示し、図5は、間葉系間質細胞マーカーの獲得を図示し、並びに図6は、MSCマーカーの発現及び造血及び内皮細胞マーカーの発現の欠如を含める、異なる培養方法から誘導された間葉系間質細胞の表現型を示す。更に、FM-MA09-MSCを、効力及び阻害効果における(図13)、Treg増殖の刺激における(図15)、増殖能における(図16)、PGE2分泌における(図19)、Stro-1及びCD10発現(図21~22)、継代中のサイズの維持における(図23)、CD10及びCD24発現における(図24)、Aire-1及びIL-11発現における(図25)、Ang-1及びCXCL1発現における(図26)、並びにIL6及びVEGF発現における(図27)顕著な差異を検出するためにアッセイした。
【0235】
実施例3-その他の細胞型へ分化する血管芽細胞から誘導されたMSC
MSCは、定義によって、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞を生じることが可能でなければならない。標準法を使用して、図7は、血管芽細胞由来MSCの脂肪細胞及び骨細胞に分化するための能力を示し、一方図8は、軟骨細胞特異的遺伝子の発現を介しての、軟骨細胞に向かうそれらの分化の能力を示し、並びに図18は、ペレット集団培養のサフラニンO染色を介しての、軟骨細胞に向かうそれらの分化の能力を示している。
【0236】
血管芽細胞から誘導されたMSCは、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞に分化することが予想される。これら分化の経路は、当該技術分野において以前報告された方法を使用して検討することが可能である。Karlssonら著、Stem Cell Research 3:39-50(2009年)(血管芽細胞由来及び直接ESC由来のMSCの脂肪細胞及び骨細胞への分化に関する)を参照されたい。特に、FM-MA09-MSCは、脂肪細胞及び骨細胞に分化するための能力を含める分化能を示す(図7)。軟骨細胞への分化については、このプロセスを研究し、軟骨細胞特異的遺伝子(例えば、アグリカン及びコラーゲンIIa)の獲得並びにサフラニンO、アルシアンブルー、及び/又はトルエンブルー染色を通してのグリコサミノグリカン沈着を引き続き検討するために、Gongら著、J.Cell.Physiol.224:664-671(2010年)からの方法が適合された。特に、MA09 ESC血管芽細胞由来間葉系間質細胞の軟骨形成分化は、アグリカン(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン1)及びコラーゲンIIaのmRNA発現により検出した(図8)。文献では、これら3つの細胞型(MSCから誘導された脂肪細胞、骨細胞、又は軟骨細胞)は、免疫刺激性HLA DR分子を発現することが報告されている(Le Blanc 2003年、Gotherstrom 2004年、Liu 2006年)。これらの報告された観察を確認するためには、これらの完全に分化したMSC細胞型で免疫染色法及び/又はフリーサイトメトリーを実施することが考えられる。このことは、生体内環境におけるMSCの分化が宿主受容者から免疫応答を誘発しないことを確認するために重要である。これら3つの細胞型の中では、スポーツ損傷、老化による関節痛、骨関節炎に対する軟骨置換療法で使用されるその能力のために、軟骨形成分化が特に重要であり得る。このような療法については、MSCは、治療的に使用されるために、MSCは軟骨細胞に完全に分化することは必ずしも必要ではない。
【0237】
実施例4-血管芽細胞から誘導されたMSCが実質的にESCを含まないことの確認
MSCはまた、ESCの奇形腫を形成する性向を欠如せねばならない。MSCは、12継代までに(培養中で約50日まで)正常な核型を含有することが確認された(データ図示せず)。芽球由来MSCが微量のESCも含有しないことを確認するために、奇形腫形成アッセイをNOD/SCIDマウスにおいて実行した。5×10個のMSCを、3匹のマウスの左大腿筋に皮下注射した。CT2 ECを陽性対照として使用し、ESCC注入マウスに対比してMSC注入マウスにおける奇形腫形成を比較するために、マウスを6週間にわたってモニタリングした。MSCを注射されたマウスにおいて、奇形腫は形成されなかった。
【0238】
実施例5-血管芽細胞から誘導されたMSCによるEAEスコアの減少
6~8週齢のC57BL/6マウスで実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を血管芽細胞由来ESC-MSCを使用して治療するためのパイロット試験を行った。EAEは、マウスの側腹部に、アジュバント油(CFA)中、50pgのMOG(35-55)ペプチド及び250pgの結核マイコバクテリア(M.tuberculosis)の100pLのエマルジョンで0日目に注射し、このマウスは、500ngの百日咳毒素で腹腔内注射した。6日後に、マウスに、PBS中100万個のESC-MSC(n=3)又は対照としてビヒクル(n=4)のいずれかを腹腔内注射した。免疫化後29日間にわたって、この動物の臨床スコアを記録した。疾患スコアの大幅な減少が観察された(データ図示せ
ず)。
【0239】
実施例6-EAE治療における血管芽細胞由来ESC-MSCの有効性の確認及び疾患の追加の動物モデルの使用
A.マウスのEAEモデルにおけるESC-MSC試験がそれらの抗EAE効果を確認する。
実施例5で得られた結果を確認するために、追加の試験を、動物の数を増やし、細胞用量を種々変えて、異なる投与プロトコールで、並びにより多くの対照で実行する。臨床スコア及び死亡率を記録する。マウスの脳及び脊髄中のリンパ球の浸潤の程度もまた評価される。MSCの抗EAE効果は、Th17細胞の抑制などの免疫抑制活性に関与すると一般的に考えられ、CNS中のリンパ球浸潤の程度を低減することが予想される。
【0240】
B.マウス骨髄(BM)-MSC、ヒトBM-MSC及びヒトUCB-MSCとESC-MSCを比較する。
マウスBM-MSCは、最初にEAE治療に使用され、徹底的に研究がなされた[1]。(それらの異種間の性質があるとすれば)ESC-MSCは、抗EAE有効性についてネズミBM-MSCと直接的に比較することが可能である。ヒトUCB-MSCもまた、免疫抑制活性を有することが示されている[19]。ヒトUCB-MSC及びヒトBM-MSCの抗EAE活性もまた、EAEマウスモデルにおいてESC-MSCの抗EAE活性と比較することが可能である。これら多様な細胞型の年齢及び継代は、これらの抗EAE挙動に影響を及ぼす可能性があり、したがって、本出願人らは、EAEマウスモデル系におけるMSCの有効性に及ぼす年齢の因果関係も評価するつもりである。
【0241】
C.ESC-MSCの投与用量、経路、及びタイミングを最適化する。
ESC-MSCの注射は、免疫化後29日以内で記録されたように、EAEのスコアを低減することができる。疾患の長期にわたる予防及び治癒を試験するためには、ESC-MSCが種々の容量、経路、及び時間で投与されることが可能である。
【0242】
MSCは、H1gfp ESCから生成され、これらがMSC段階でなおGFPを発現することが確認されている。EAEマウスはこれらGFP+ESC-MSCで注射することができ、これらの分布をXenogen In Vivo Imaging Systemを使用して、生体内で追跡することができる。これらのアプローチを通して、ESC-MSCの種々の投与用量、経路、及びタイミングが分析され、MSCの抗EAE活性についての作用のメカニズム(すなわち、膵臓又は内分泌効果)、マウス体内のMSCの寿命並びにMSC生体分布、及び排泄/排除の経路に関する情報を提供されるであろう。
【0243】
抗EAE効果は、臨床スコアの低減、生存率の増加、及び/又はリンパ球浸潤の退行並びにCNSの脱髄の1つ以上によっては反映され得る。異なるESC系は、MSCを生成するための異なる固有の能力を有する場合がある。したがって、複数のESC系をこの試験において使用することが可能であり、MSCマーカーの獲得は、経時的にモニタリングされ、各ESC系について比較されることができる。ESC-MSCを使用する実験間のばらつきを更に低減するために、凍結ESC-MSCの多量の在庫がアリコートで製造されることが可能であり、アリコートの各在庫が、複数の実験で使用することが可能である。
【0244】
D.その他の疾患モデルにおいて血管芽細胞由来MSCの有効性を確認する。
上述したように、MSCはまた、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び眼障害(ブドウ膜炎)などの他の型の自己免疫性疾患に対して治療的活性を有することが可能である。これらの疾患についての動物モデルは現存し、当該技術分野において周知である(例えば、Pizarroら著、2003年、Duijvesteinら著、2011年、Liangら
著、2011年、Coplandら著、2008年を参照)。生体内試験は、これら動物モデル系の1つ以上でMSCの治療的有用性の評価を含むように拡大されることが可能である。このようなモデルは、注射された動物の血清を単離しかつヒトサイトカインについてスクリーニングすることによって、本出願人らがヒトMSCのサイトカイン分泌プロファイルを検討することを可能にすることができる。特に、ブドウ膜炎のモデルは、局所的硝子体内注射が、本出願人らが非全身的な環境でMSCの効果を研究することを可能にすることができるために、有用であり得る。
【0245】
MSCはまた、関節軟骨の損失及び冒された関節の炎症を含める、骨関節炎状態を治療する上で大きな治療的有用性を有することが可能である(Nothら著、2008年)。骨関節炎、軟骨損失及び関節炎症を検討するためのモデルも当該技術分野において周知である(例えば、Mobasheriら著、2009年を参照)。これらの試験のいくつかにおいて、MSCが炎症の低減及び/又は軟骨の修復に関して局所的、非全身的な治療的効果を有するかどうかを決定するために、ヒトBM-MSCは、半固体骨格又はミクロスフィア内にカプセル化され、ヒト対象の冒された関節に移植される(Wakitaniら著、2002年)。このような方法は、本出願人らのESC血管芽細胞由来MSCの変性関節状態を治療するための治療的有用性を決定する上で補助するであろう。
【0246】
注射されたMSCの予想寿命は、非常に短く[8]、このことは、移植細胞の長期生存は必要とされないことを示唆している。したがって、有糸分裂的に不活性化されたESC-MSC(例えば、照射された又はミトマイシンCで処置された)もまた、上述された動物モデルにおいて、抗EAE効果又はその他の抗疾患効果について試験され得る。そうである場合、生ESC-MSCは必要とされ得ず、したがって、移植されたESC-MSC中の潜在的に残留するESC混在物からの生物学的安全性の懸念を更に低減する。
【0247】
E.結果
異なるドナー由来ソースから得たMSC(マウスBM-MSC、ヒトBM-MSC、及びヒトUCB-MSC)は、抗EAE効果を保持することが予想される。しかしながら、これらの効果は、MSCがドナー限定ソースから得られるために、実験間で変動する可能性がある。これとは対照的に、本開示のESC-MSCは、より一貫した効果を有することが可能である。多くの細胞表面マーカーがMSCを特性評価するために使用され、全てのMSCが全てのマーカーを発現するわけではないので、MSCの有効性を異なるソースから比較するために、CD73+及びCD45-などのマーカーのサブセットを使用することが可能である。
【0248】
ESC-MSCは、クローン病、潰瘍性大腸炎、及びブドウ膜炎(これらが自己免疫性成分及び炎症反応を含有するために)の動物モデルにおける治療的有用性を有することが予想される。
【0249】
有糸分裂不活性化MSC(例えば、照射された若しくはミトマイシンC不活性化MSC又はESC-MSC)は、これらがサイトカインをなお分泌し、免疫抑制機能に関連する細胞表面マーカーを発現するために、免疫抑制機能を少なくとも部分的に保持することができる[29]。しかしながら、これらの効果は、これらの生体内の短くなった寿命のために低減する可能性がある。もしそうであるならば、照射された、又は別の方法で有糸分裂不活性化された細胞の用量及び投与頻度は、免疫抑制機能を増強するために、増加させることが可能である。有糸分裂不活性化MSC及びESC-MSCは、これらがサイトカインをなお分泌し、免疫抑制機能に関連する細胞表面マーカーを発現するために、免疫抑制機能を少なくとも部分的に保持することができる[29]。しかしながら、これらの効果は、生体内でのこれらの短くなった寿命のために低減する可能性がある。もしそうであるならば、有糸分裂不活性化細胞の用量及び投与頻度は、免疫抑制機能を増強するために
、増加させることが可能である。
【0250】
EAEを治療するための第2のパイロット試験を行った。8~10週齢のC57BL/6マウスを、皮下注射を介して、完全フロイントアジュバント中のMOG35-55ペプチドで免疫化した。これは、百日咳毒素の腹腔内注射と併用して行われた。6日後に、マウス1匹当たり100万個の生(又は200万個の照射された)血管芽細胞由来多能性細胞兼用系間質細胞を腹腔内注射した。疾患重症度を、以前に公開されたように、マウスの足/胴体の運動を監視することによって、0~5のスケールで採点した。結果は、4継代の血管芽細胞由来多能性細胞間葉系間質細胞及び照射された血管芽細胞由来多能性細胞兼用系間質細胞によって、ビヒクル対照と比較して、臨床スコアの著しい減少を示している(データ図示せず)。両パイロット試験についての採点は、以下のプロトコールに従って実行された:1のスコアは尾部の引きずりを示し、2は後ろ足の部分的麻痺を示し、3は後ろ足の完全な麻痺であり、4は後ろ足の完全麻痺及び前足の部分的麻痺であり、5は瀕死の状態である。
【0251】
加えて、本発明によるMSC及びこれらから誘導された生成物の異なる療法において使用されるための有効性は、企図された治療適応症に応じて、その他の動物モデル、例えば、その他の移植又は自己免疫性モデルで確認することが可能である。
【0252】
実施例7-ESC-MSCの機能的構成成分の検討
MSCは、以下の細胞表面マーカー:CD105、CD73、CD29、CD90、CD166、CD44、CD13及びHLA-クラスI(ABC)を発現するプラスチック接着細胞として定義することが可能であるが、一方、これと同時に、非誘導状態で培養される場合(例えば、サイトカインを含まない定型的なαMEM+20%FCS中で培養される場合)、CD34、CD45、CD14、CD19、CD11b、CD79a及びCD31が陰性である。これらの条件下では、MSCは細胞内HLA-Gを発現し、CD40及びHLAクラスII(DR)が陰性でなければならない。機能的には、このような細胞はまた、標準生体内培養アッセイで評価されるように、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞に分化することが可能でなければならない。インターフェロンγ(IFNγ)による刺激から7日後に、MSCは、それらの細胞表面上にHLA-Gを、並びにそれらの細胞表面上にCD40及びHLA-クラスII(DR)を発現せねばならない。これらの必要条件にもかかわらず、ESCの多能性のために、いかなるソースから誘導されたMSCもいくらかの不均質性を含有する場合があり、ESCから誘導されたMSC培養物は、3種の胚葉からの任意の系統の細胞を含有することができる。本明細書に記載されている培養系は、細胞の>90%が上述の免疫表現型及び機能的特性を日常的に示すことを示唆しているが、MSC培養内の細胞の一部のサブ集団はMSC細胞表面マーカーの1つ以上の発現を欠如して存在し又は不在であるべきマーカーの1つ以上を発現することもある。混在する不均質性の程度を決定するために、本発明のMSC培養中のこのようなサブ集団の存在範囲が検討される。上述のマーカー間の重複を決定するために、多色フローサイトメトリー(同時に8色以上)を、BD LSR IIフローサイトメーターで実行することが可能である。これはまた、最も大きな免疫抑制活性に必要とされる正確な細胞表面マーカープロファイルを正確に示すためにも役立つことができる。
【0253】
A.免疫抑制効果と関連付けてESC-MSCの分化段階、サブ集団、及び活性状態を特性化する。
ESC-MSCを採取するために大きな時間窓(例えば、MSC分化培地中で少なくとも14日~28日)が存在する(例えば、図1を参照)。いくつかの試験は、MSCがそれらの免疫抑制機能を喪失する傾向性があり、これらが連続的に継代するにつれて古くなり、長期の培養の間に老化することを示している。このように、この細胞は、MSC培地中の所定日数が、より大きな免疫抑制活性を与えるかどうかを決定するために、異なる時
点の活性で採取することが可能である。事実、初期の時点(例えばMSC培養条件において14日目)で回収されたMSCは、特徴的なMSC細胞表面マーカーの全てをまだ完全に獲得していないが、非常に強力な免疫抑制効果を保持する前駆体細胞を含有することが可能である。潜在的に有用なMSC前駆体集団を画定するために、広範囲の細胞表面マーカーの発現が、MSC分化プロセス全体を通して、7日~28日にわたって追跡される。培養物の少なくとも50%が、MSC培養条件の14日以内で細胞表面マーカーCD309(別名として、VEGFR2、KDRを含む)を獲得するであろう。CD309は、出発血管芽細胞集団で大部分は不在である(図9、第1の時点、d7及び8で採取されたMA09血管芽細胞)が、MSC培養条件の最初の2週間以内に発生し、28日までに細胞の5%未満まで再度低下する(図9、第2、第3、及び第4)。このパターンは、MA09血管芽細胞由来MSCのみならず、MA01、H1gfp、及びH7 ESCから得たものでも生じることが認められている。これら実験において、血管芽細胞は、それらの採取日数に無関係に(6日~14日)、CD309について常に陰性である。しかしながら、CD309発現を獲得するMSCに発達するパーセンテージは、より古い血管芽細胞(例えば、d10又はd12の割球)から発達する場合、低減する可能性がある。同様な様式で、血管芽細胞由来MSCの増殖特性は、血管芽細胞の採取日数に応じて異なる可能性があることが観察されている。より若い血管芽細胞(6日又は7日)から発達するMSCは、より古い(d8~12)血管芽細胞から発達するMSCと同じように力強く増殖し続けることはない。血管芽細胞採取の最適日数は、これらが28日及びそれ以降を通して増殖するための力強い能力をなお維持しつつ、MSC発達の代理マーカーとしてCD309の適切な獲得を可能にすることができるために、中間の日数(8日~10日)であり得る。MSC前駆体発達のこれら態様を最適化するための試験が進行中である。
【0254】
MSCに対して最も典型的なマーカーであることが証明されているCD105、CD90及びCD73(MSCの最小分類としてのInternational Society for Cellular Therapy(Dominiciら著、Cytotherapy 8(4):315-317(2006年)に記載されているような)を除いて、CD49a、CD54、CD80、CD86、CD271、VCAM、及びICAMなどの上述されていない多くの他の細胞表面分子もまたMSCマーカーとして提案され又は使用されてきた[22]。したがって、ESC-MSCは、血管芽細胞からの分化の間にその他のマーカーの様々な組み合わせを発現するサブ集団を含有できることが可能であり、これらは多様な免疫抑制活性を有することが可能である。サブ集団は、生体外又は生体内の方法を使用して、それらの免疫抑制活性を比較するための分析に、1つ以上のマーカー(単独で又は組み合わせて)に基づいて分類され得る(例えば、FACSを使用して)。
【0255】
B.大量の機能的ESC-MSCを得るために分化及び増殖条件を最適化する。
予備実験が、MSCはIMDM+10%熱不活性化ヒト血清中で維持され得ることを示してはいるが、本出願人らは、この培地中のこれらの派生物をまだ試験していない。異なる培養条件が、代替培養成分(例えば、基礎培地、血清源、血清代替製品、ヒト血清血小板溶融物)が本明細書に記載されている有効なサブ集団を富化させることができるかどうかを決定するために試験することが可能である。ESCを培養しかつMSCを調製するための動物を含まない異なる基本培地及び定義された培養システム(FBSなしの)が評価されるであろう。具体的には、Invitrogenから入手可能なStemPro(登録商標)MSC SFM、及びLonzaから入手可能なMSCMビュレットキットを使用して、無血清の定義された培養系がESC-MSCを所望の品質及び量で生成するかどうかを決定するであろう。更に、FGF、PDGF、及びTGFI3などの様々な増殖因子、並びにシグナル伝達経路又は細胞構造を調節する小化学物質を使用して、ESC-MSCの品質及び量を増強することが可能である。
【0256】
C.結果
ESC-MSCは、典型的なマーカーCD73(エクト-5’-ヌクレオチダーゼ[26])、CD90及びCD105を発現する。更に、図20は、本発明により産生されたFM-MA09-MSCが、それらの表現型を経時的に維持する(経時的及び連続的継代にわたって異なるMSC集団のフローサイトメトリー分析中に検出されるマーカー発現に基づいて)ことを示している。
【0257】
実施例8-ESC-MSCによる免疫抑制のメカニズム
A.ESC-MSCが、T細胞によって仲介される適応免疫応答をどのように抑制し得るかを試験する。
PBMC内のT細胞の一般的な応答は、これらがフィトヘマグルチニン(PHA)又はホルボールミリスチン酸酢酸(PMA)/イオノマイシンなどの有糸分裂刺激物質によって誘導される場合、又はこれらが樹状細胞などの抗原提示細胞に遭遇する場合、増殖することである。このことは、混合白血球反応(MLR)アッセイにおけるCD4+及びCD8+T細胞の全般的な増殖によって最適に例示される。以前の試験は、MLRアッセイにおいて、MSCがT細胞増殖を抑制できることを示唆している。
【0258】
化学的刺激(PMA/イオノマイシン、図10a及び13a)(PHA、図13b)又はAPC(樹状細胞、図10b及び13c)への暴露のいずれかによって引き起こされる本発明のESC-血管芽細胞由来MSCのT細胞増殖を阻害する能力を検討した。MSCは、化学的刺激又はAPCとの共培養のいずれかに起因して、T細胞の増殖応答を減衰すること、並びにこの抑制が、用量依存的様式で生じることを観察した(図10b、右側のグラフ)。更に、有糸分裂不活性化MSC(図10b)が、T細胞増殖を生MSCと同程度まで抑制することが可能であることを見出し、このことは、有糸分裂不活性化MSCが免疫抑制のために生体内で十分に有用であり得ることを示唆している。
【0259】
T細胞の様々な機能的サブセットが現存し、これらは炎症誘発性応答、抗炎症応答、又はT細胞アネルギーの誘導に関与する特異的役割を実行する。調節性T細胞(Treg)は、天然発生型の免疫抑制T細胞であり、通常の設定において、過敏性の自己反応性T細胞応答を減衰させる役割を果たしていると考えることができる。これらは、通常、身体のT細胞の極一部ではあるが、それらの分布状況は、様々な環境因子によって影響され得る。MSCは、Treg細胞の誘導を通して、末梢免疫寛容を誘導することが示されている[33~35]。
【0260】
短期間の5日間の共培養アッセイにおいて、以前の試験と同様に、血管芽細胞由来MSCは、IL2刺激に応答して誘発されるCD4/CD25二重陽性Tregのパーセンテージを増加させることが可能であることが認められた(図11a、14、15a)。非接着末梢血単核細胞(PBMC)から得た混合T細胞集団とMSCとの共培養(10PBMC:1 MSCの比で)は、MSCがIL2誘導培養中に含まれる場合、Treg誘導はほぼ倍加されたことを示す。このTreg誘導の程度は、Blood、2005で公開された、非常によく引用されたAggarwalらの試験で観察されたものと同様である。CD4/CD25二重陽性集団内で誘導されたFoxP3の量は、これらが実際の真のTregであることを確認するために検討された(図15b)。細胞内フローサイトメトリーを、IL2誘導T細胞培養中のMSCの不在下及び存在下のFoxP3誘導を試験するために使用した。非接着PBMC及び精製CD4+T細胞集団の双方は、これらのアッセイにおいてTreg誘導を試験するために使用することができる。理論によって束縛されようとするものではないが、ES-MSCは、これらがBM-MSCよりも効果的にCD25の発現を増加させるために、Tregを誘導する上でより効果的である(図15b)。
【0261】
Th1及びTh17細胞は、MS及び他の自己免疫性疾患において重要な役割を果たすと考えられている。Th1及びTh17 CD4+T細胞の分化及び機能が、インビトロアッセイを使用して、最初に分析され;これらはまた、EAEモデル又は本発明で使用することが可能であるその他の動物モデルにおいて検討することが可能である。生体外でのTh1に及ぼすMSCの効果は、検討が開始されている。無感作CD4+T細胞からのTh1特定を促進する培養条件は、当該技術分野において既知である(Aggarwalら)。これら培養条件(ヒトIL3及びIL12と共に抗CD3、抗CD28、及び抗CD4抗体を含有する)を、MSCの不在下又は存在下で、無感作の非接着PBMCからTh1細胞を誘導するために使用した(10PBMC:1 MSC)。共培養の48時間後に、非接着細胞を単離し、濯ぎ、新しいウェル中でPMA/イオノマイシンで16時間にわたって刺激した。16時間の誘導の後に、上清を回収し、Th1サイトカインのIFNγを分泌について分析した。予測されたように、48時間のTh1誘導条件においてMSCと共に培養されたPBMCは、MSCなしに培養されたものほど多くのIFNγを産生しないことが認められた。このことは、MSCが主要なTh1細胞機能、すなわち、IFNγ分泌を抑制することが可能であることを示唆している(図11b)。同様な試験が、生体外でTh17細胞を分化させ、培養上清に関するELISAアッセイを使用して、炎症誘発性IL17の分泌に及ぼすMSCの効果を決定することにより実行されるであろう。
【0262】
Th2細胞は、IL4などの抗炎症効果を有するサイトカインを分泌することが知られている。MSCは、Th2の分化及びIL4の分泌を増強することが可能であり得る。Th1細胞についての上記記載の試験と同様に、T細胞を含有する無感作PBMCからTh2の分化を刺激するために、Th2誘導条件を48時間の培養系で使用するであろう。IL4分泌に及ぼすMSC共培養の効果は、ELISAアッセイを使用して検討されるであろう。
【0263】
最近、CD8 T細胞が、EAEモデル及びMSの根本的なメカニズムにおいて中心的役割を果たすことも示唆されている[30]。本発明者は、生体外でのESC-MSCとの共培養がCD8 T細胞の機能に影響を及ぼすことができるかどうかを検討する。これを行うためには、非接着PBMC又は精製CD8+T細胞が、APCの使用を介して、EAE関連MBP110-118ペプチドに暴露されると考えられる。これが、抗原特異的CD8+T細胞集団を出現させ、このような集団は、CD3/CD28エクスパンダビーズ(Invitrogen)を使用して、活発に増殖させることが可能であろう。抗原特異的CD8+T細胞の存在は、フローサイトメトリーにおいて、MBP-ペプチドに特異的なペンタマー試薬(Proimmune)を使用して確認することが可能である。抗原特異的CD8+T細胞の活発な増殖及びIFNγの分泌の双方を含む、抗原特異的免疫応答を誘導するためにMBP110-118装填APCによる再刺激が実行されるであろう。MSCの不在下又は存在下で培養されたT細胞からの応答を比較し、MSCがこれら細胞障害性EAE関連抗原特異的T細胞の誘導を抑制することが可能であるかどうかを決定する。ペンタマー特異的フローサイトメトリー(BrdU incorporation)及びELISAアッセイが、この目的で使用される。
【0264】
B.炎症因子及び細胞間接着分子がESC-MSCの免疫抑制効果に寄与するかどうかを決定する。
TGFβ、PGE2、IDO、一酸化窒素(NO)、及びICAMが、MSCの免疫抑制機能に重要であることが示されている[7]。ESC-MSCによるこれら分子の分泌及びICAMの発現が、ELISAアッセイ及びフローサイトメトリーを使用して検討されるであろう。
【0265】
炎症誘発性サイトカイン、IFNγがMSCの活性化には必要とされ[23]、LPS及びポリ(I:C)などのToll様受容体(TLR)についての様々な作動薬が、MS
Cの異なるサブセットを誘導することができること[24]が示されている。例えば、IFNγ活性化MSCは、未処理のMSCよりも大腸炎のマウスモデルにおいて大きな治療的有効性を有することが最近示されている(Duijvesteinら、2011年)。MSC特性に及ぼすIFNγのこの効果は、検討が始められている。ESC-MSCが生体外にてIFNγで7日まで処理され、細胞表面マーカーの発現における著しい変化がもたらされている。これら試験結果は、以前の試験(Gotherstromら著、2004年、Rasmussonら著、2006年、Newmanら著、2009年)で行われた観察と一致し、血管芽細胞由来ESC-MSCが体部から単離されたMSCと同様に機能することを立証している。例えば、休止状態において、MSCは、それらの細胞表面上で多量のHLA Gを発現しないが(<10%)、免疫耐性HLAマーカーのこの特殊な部類の細胞内貯蔵所を保有する。7日間のIFNγ処理の際に、HLA Gは細胞表面で容易に検出され(図12)、分泌されるよう誘導することも可能である(まだ試験されていない)。更に、IFNγ処理は、細胞表面においてCD40発現及びHLA DR発現のアップレギュレーションを引き起こす(図12)。これら変化は、これらの免疫抑制効果を増強させることを提唱する。例えば、本出願人らは、上記記載のインビトロ共培養アッセイを使用して、IFNγでのMSCの前処理がTreg集団を誘導し、IFNγのTh1分泌を抑制し、又はTh2細胞からのIL分泌を増強させるこれらの能力を強化することができるかを検討するつもりである。IFNγはまた、MLRアッセイにおいて、一般的なT細胞増殖を阻害するMSCの能力に影響を与える可能性がある。TNFα、LPS、及び/又はポリI:Cが、これらのタイプのMSC免疫抑制特性に及ぼす影響もまた試験することも可能である。
【0266】
C.結果
機能的Tregが誘導刺激に応答して、転写因子の発現をアップレギュレートすることが報告されているように、MSCから誘導されたTregのCD4/CD25二重陽性集団もまた、転写因子FoxP3を発現することを示した(図15b)。
【0267】
MSCは、Th17細胞によるIL17の炎症誘発性分泌をある程度まで阻害すること、並びにMSCが、抗炎症性Th2細胞によるIL4分泌を著しく増強させることが可能であることが予想される。このような観察は、以前の試験で行われており、血管芽細胞由来MSCの真の機能性を確認する上で補助すると考えられる。
【0268】
このESC-MSCは、CD8+T細胞の抗原誘導活性化を少なくとも部分的に阻害するべきである。ESC-MSC共培養後のNK細胞、マクロファージ、及び樹状細胞の機能もまた検討することが可能である。これらその他のタイプの免疫細胞による成熟、細胞障害性、及び/又は特異的サイトカイン産生に及ぼすESC-MSCの効果も検討されるであろう。
【0269】
例えば、図11Aの実験は、血管芽細胞由来間葉系間質細胞が、IL2刺激に応答して誘導されるCD4/CD25二重陽性Tregのパーセンテージを増加させることを示している。更に、図12の実験は、炎症誘発性サイトカインIFNgが、FM-MA09-MSC表面マーカーにおける変化を刺激すること、並びにインターフェロンγが、MSC表面マーカー発現における変化を刺激し、MSC免疫抑制効果を増強し得ることを示している。
【0270】
更に、図14の実験は、FM-MA09-MSCがTreg誘導を増強すること、特に、初期継代MSCが後期継代MSCよりも大きな影響を有したことを示している。非接着PBMC(異なるドナー)を、FM-MA09-MSCの不在下又は存在下で、IL2の有無で培養した。CD4/CD25二重陽性Tregのパーセンテージを、フローサイトメトリーにより評価した。若い(p6)又は古い(p16~18)FM-MA09-MS
Cを使用した。黒棒は、6つの実験の平均値を示している。MSCは、全体として、Tregの誘導に関して統計的に有意な効果を有した(p=0.02)。
【0271】
実施例9-ESC-MSCはBM-MSCよりも増加した効力及び大きな阻害効果を有する
異なるMSC集団がT細胞増殖を阻害する異なる能力を有するかどうかを決定するために、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを実行した。結果は、ESC-MSCは、マイトジェン刺激(「一方向」MLR)(図13a及び13b参照)又は抗原提示細胞(樹状細胞、DC、「二方向」MLR)(図13c参照)のいずれかに応答してT細胞増殖を阻害するこれらの能力において、BM-MSCよりも強力であることを示唆している。
【0272】
この「一方向」MLRアッセイは、以下のように行った:ヒトPBMCをAllCellから購入した。凍結バイアルを解凍する際に、PBMCを、IMDM+10%熱不活性化ヒト血清中で少なくとも1時間又は一晩平板培養し、単核細胞を選択的に接着させた。非接着細胞(T細胞を含有する)をT細胞レスポンダーの粗供給源として使用した。ESC由来MSC又はBM由来MSCを阻害剤として使用した。これらMSCは、生きた状態又はミトマイシンCで有糸分裂を停止されたもののいずれかであった。非接着PBMC及びMSCを種々の割合で一緒に混合し、5日間共培養させた。3日目に、ミトーゲン、ホルボール-12ミリステート13-アセテート(PMA)及びイオノマイシン又はフィトヘマグルチニン(PHA)をこの培養に加え、T細胞増殖を誘導した。4日目に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を加えた。5日目に、T細胞増殖を、BrdU組込みキット(B&D Biosystems)を使用するCD4、CD8、及びBrdU指向性の抗体で染色するフローサイトメトリーを通して評価した。T細胞増殖は、それらのDNAに組み込まれたBrdU(すなわち、BrdU+)を有するCD4+及び/又はCD+8細胞の%として評価した(図13a及び13bに図示)。
【0273】
「二方向」MLRにおいては、ESC由来MSC又はBM由来MSCを阻害剤として使用し、非接着末梢血液単核細胞(PBMC)をT細胞レスポンダーの粗供給源として使用し、並びに単核細胞由来樹状細胞(DC)を刺激剤として使用した。DCを誘導するために、プラスチック接着単核細胞をPBMCから単離した。PBMCを、IMDM+10%熱不活性化ヒト血清中(10%HuSer)で少なくとも1時間又は一晩平板培養し、単核細胞を選択的に接着させた。非接着細胞を除去し、接着細胞を、IMDM+10%HuSer中で、SCF、FL、GM-CSF、IL3、及びIL4と共に4日間培養した。アッセイのこの変型においては、3日目にミトーゲンを添加しない。BrdUだけを、上記のようにフローサイトメトリー用に細胞を採取する16~24時間前に、加える。このアッセイでは、MSC及びDCの双方は、ミトマイシンCで有糸分裂不活性化された(図13cに図示)。
【0274】
実施例10-BM-MSC及び後期ESC-MSCと比較しての初期ESC-MSCによるTreg発現の改善された誘導
MSCの存在が、PBMC集団内の調節性T細胞(Treg)の活発な増殖を誘導し得るかどうかを決定するために、PBMC及びMSCを使用して共培養実験を実施した。結果は、初期ESC-MSCが、BM-MSC及び後期ESC-MSCの双方よりも良好にTregの活発な増殖を誘導したことを示唆している(図14及び図15参照)。
【0275】
共培養を、非接着PBMC及び異なるタイプのMSC(「初期」ESC由来(約p5~6)、「後期」ESC由来(約p12又はそれを超える継代)、BM-由来のもの)を10:1比(PBMC:MSC)で使用して確立した。共培養を、IMDM+10%熱不活性化ヒト血清+300単位/mlの組換えヒトIL2中で4日間にわたってインキュベートした。Tregの存在を、FoxP3細胞内フローサイトメトリー染色キット(Bio
legend)を使用して、CD4、CD25、及びFoxP3が陽性で染色されたPBMCのパーセンテージにより決定した。
【0276】
実施例11-ESC-MSCは大きな増殖能力を有する。
MSCの供給源がそれらの増殖能力に影響を与えるかどうかを決定するために、異なるMSC集団の増殖速度を経時的に監視した。結果は、ESC由来MSCが、BM由来MSCよりも大きな増殖能力を有することを示している。結果はまた、基材(マトリゲルなど)上でESC-MSCを長期にわたって(最大6継代)培養することが、p2などのより初期の継代で細胞を基材から除去する場合よりも高い増殖速度を維持することに役立つことも示唆している(図16及び図17)。
【0277】
ESC由来血管芽細胞を、p0として、αMEM+20% Hyclone FBS+1-グルタミン+非必須アミノ酸(=MSC増殖培地)中、マトリゲルコーティング組織培養プラスチックに50,000細胞/cmで播種した。骨髄単核細胞を、p0として、MSC増殖培地中、規定の組織培養プラスチックに50,000細胞/cmで播種した。細胞がp0で約50~60%の集密状態に到達したときに、又はp1以降で70~80%の集密状態に到達したときに(通常、3~5日毎)、細胞を0.05%トリプシン-edta(Gibco)を使用して採取した。採取の際に、細胞を遠心して、計数し、7000細胞/cmで再平板培養した。ESC-MSCをマトリゲルから取り外し、特に断らない限り、引き続いてp3で開始する規定組織培養プラスチック上で増殖させた。MSCなどの細胞の増殖の速度が培養中で維持されていることを示すために、経時的な累積集団倍加をプロットする。
【0278】
実施例12-ESC-MSCは軟骨形成分化を受ける
異なるMSC集団の軟骨形成能を決定するために、ESC-MSC又はBM-MSCをペレット集団培養として播種し、分化培地を使用して軟骨細胞への分化を誘導した(又は陰性対照として、規定MSC増殖培地中で保持した)。結果は、ESC-MSCがBM-MSCのものと同様な様式で軟骨形成を受けることを示唆している。ESC-MSC及びBM-MSCペレットの双方は、サフラニンO染色を介して、軟骨基質(プロテオグリカン)沈着を明らかにしている(図18参照)。
【0279】
軟骨形成ペレット培養を形成するために、2.5×10細胞のESC-MSCを、15mLの円錐形管中、500×gで5分間遠心分離した。培養基を吸引し、0.5mLの軟骨形成培養基(1mMのピルビン酸ナトリウム(Life Technologies)、0.1mMのアスコルビン酸2-ホスフェート(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)、0.1μMのデキサメタゾン(Signa-Aldrich)、1%のITS(Collaborative Biomedical Products,Bedford,MA)、10ng/mLのTGF-β3(Peprotech,Rocky Hill,NJ)で補充されたDMEM-HG(Life Technologies,Gaitherburg,MD)からなる)又は培養基(対照)をこのペレットに加えた。培地を2~3日毎に交換して、ペレット培養を21日間維持した。21日の終わりに、ペレットを4%パラホルムアルデヒドで固定し、標準的手法を使用するパラフィン包埋、薄片化、及びサフラニンO染色のために、MassHistology(Worcester,MA)に送った。
【0280】
実施例13-IFN-γ又はTNF-α刺激下のプロスタグランジンE2(PGE2)の増強された分泌
ESC-MSCは、一部ではPGE2の分泌を通して免疫調節性効果を及ぼす。FM ESC-MSC及びBM-MSCから回収した培養上清は、BM-MSCが、基底状態においてFM ESC-MSCよりも高レベルのPGE2を分泌することを示している。刺
激条件下(IFN-γ及び/又はTNF-αの様々な濃度での)PGE2分泌を決定するための実験は、FM-ESC―MSCが刺激に応答して、それらのPGE2の分泌を大幅に増加することを示している(図19)。事実、基底状態から刺激状態までのPGE2分泌の誘導率は、BM-MSCよりもFM ESC-MSCについて大幅に大きい。しかしながら、刺激条件下でのPGE2分泌の実際の未精製量は、FM ESC-MSC及びBM-MSCで同様である。
【0281】
ESC-MSCを、6ウェルプレート(BD Falcon,Franklin Lakes,NJ)において7.5×10細胞/cmで平板培養した。培養物を培地中で24時間にわたって維持し、次いで10、50、100、又は200ng/mlのIFN-γ及び/又は10、25、50ng/mLのTNF-α(Peprotech)で刺激した。誘導の3日後に上清を回収し、-20℃で保存した。ESC-MSCを採取し、計数してPGE2レベルを細胞数に標準化した。PGE濃度をELISAキット(R&D
PGE2 Parameter or Prostaglandin E2 Express EIAキット、Cayman Chemicals)で測定し、製造業者のプロトコールに従って使用した。
【0282】
実施例14-ESC-MSC表現型評価
様々な細胞表面マーカーの発現を、異なるMSC集団で評価し、それらの個々の免疫表現型を決定した。ESC由来MSCは、多様な基材上で分化することが可能である。細胞表面マーカーのパネルを検討し、BM-MSC上のこれらの発現と対比して、3つの異なるマトリックス(マトリゲル、フィブロネクチン、又はコラーゲンI)上で誘導されたMSC上でのこれらの発現プロファイルを決定した。結果は、これらの最初の分化で使用した基材に無関係に、これらマーカーについての発現の類似のパターンを示している。これらは95%を超えてCD13、29、44、73、90、105、166、及びHLA-ABCが陽性であり、一方CD31、34、45、HLA-DR、FGFR2、CD271が陰性であった(図20Aを参照)。Stro-1発現は、ESC-MSCでは約5%からBM-MSCでは約30%までの間で異なった。
【0283】
MSCは、継代数の増加と共に、増殖及び集団倍加で遅くなる。この実験の狙いは、FM-ESC-MSCにおける継代3~17からの多数の異なるMSCマーカーについての表面マーカー発現を検査することである。FM-ESC-MSCの全ての継代における細胞は、CD90、CD73、CD105、HLA-ABC、CD166、CD13、及びCD44を陽性で染色した。細胞は、CD34、CD45、TLR3、HLA-DR、CD106、CD133、及びCD271が陰性であった(図20Bを参照)。
【0284】
各系統/継代数については、同一のプロトコールに従った。細胞を、MSC培地中、T75又はT175フラスコにて増殖した。細胞を3~4日毎に継代させた。細胞の継代は、フラスコをPBSで洗浄し、細胞分離培地TryPLE Expressを使用して細胞を回収し、MSC培地で洗浄することからなる。トリパンブルーを使用して細胞を生存率について計数し、条件ごとに50~100,000個の生存可能な細胞をアリコートした。以下の抗体を使用した:CD34-Fitc、CD34-PE、CD44-Fitc、CD73-PE、CD106-PE、CD45-APC(BD);HLA-DR-APC、CD90-Fitc、HLA-ABC-Fitc、CD133-APC、CD29(ebioscience);CD166-PE、CD105-APC、CD13-PE、CD13-APC、CD271-Fitc、CD-Fitc、Stro-1-AF647、CD10(Biolegend);TLR3-Fitc(Santa Cruz Biotech)。ヨウ化プロピジウムもまた、生存率マーカーとして加えた。細胞を室温で30分間インキュベートし、遠心分離し、40μmの細胞濾過器を通過させ、Accuri C6フローサイトメーターで分析した。それぞれの細胞型については、細胞をMSC
集団(FSC対SSC)上でPI陰性でゲートコントロールした。陽性パーセントを、ヒストグラムプロットでゲートコントロールし、染色されていない細胞集団を陰性対照として使用することにより決定した。Wagner Wら著、Replicative Senescence of Mesenchymal Stem Cells:A Continuous and Organized Process.PLoS ONE(2008年)).3(5):e2213.doi:10.1371/journal.pone.0002213;及びMusinaら著、Comparison of Mesenchymal Stem Cells Obtained from Different Human Tissues.Cell Technologies in Biology and Medicine(2005年)4月、1(2)、504-509を参照されたい。
【0285】
更に、FM ESC-MSCは、FM ESC-MSC及びBM-MSCよりも高いレベルのCD発現及び低いレベルのStro-1発現を有する(図21参照)。低レベルのStro-1(細胞の5~10%)及び中間レベルのCD10(細胞の約40%)のこの発現パターンを、FM-MA09-MSCの10個の異なるロットで確認した(図22参照)。細胞サイズを評価するために、フローサイトメトリーも異なる集団で使用した(図23参照)。結果は、この細胞が長期にわたり培養中で維持されているために、BM-MSCの細胞サイズは増加するが、一方FM ES-由来MSCは細胞サイズを維持することを示している。細胞サイズは、フローサイトメトリードットプロット上の前方散乱対側方散乱によって決定した。4分の1ゲートを使用して、プロットを4つの領域に分けた。右上4分の1は、大きな細胞を有する、すなわち、この領域内の細胞は、大きな前方散乱(細胞体積)及び高い側方散乱(粒状性)も有する。
【0286】
ESC-MSCを前述のように採取し、1X DPBS(Life Technologies)中で洗浄した。75~100×10個の細胞をフローバッファー(3%のFBS;Atlas Biologicals,Fort Collins,CO)で洗浄し、続いて、氷上で、一次抗体又はイソタイプ対照抗体を含有するフローバッファー100μLで45分間インキュベートした。細胞を2mLのフローバッファーで洗浄し、氷上、二次抗体を含有する100μLのフローバッファー中でインキュベートした。細胞を最終的に洗浄し、ヨウ化プロピジウムを含有するフローバッファー中に再懸濁し、Accuri C6フローサイトメトリー(Accuri Cytometers Inc.,Ann Arbor,MI)で分析した。
【0287】
実施例15-ESC-MSCにおける遺伝子発現分析
これらの試験の目的は、FM-ESC-MSCとBM-MSCの間のmRNA発現の類似性又は相違性を決定することであった。実験の第1のセット(基礎実験)において、FM-ESC-MSC及びBM-MSCから得た細胞のmRNA発現の相対的差を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって比較した。ΔΔCt法を使用して、内因性対照、GAPDHに対する相対的発現を決定するために、様々な遺伝子に対するTaqmanプローブ(Life Technologies)を用いた。28個の遺伝子のリストから、以下の遺伝子がFM-ESC-MSC対BM-MSCの基礎実験においてアップレギュレートされた:AIRE、ANGPT1(ANG-1)、CXCL1、CD10、CD24、及びIL11(図24~26を参照)。IL6及びVEGFは、FM-ESC-MSC対BM-MSCにおいてダウンレギュレートされた(図27参照)。以下の遺伝子はMSCのソース間で顕著な差はなかった:ALCAM、FGF7、HGF、LGALS1、NT5E、及びTNFSF1B(データ図示せず)。以下の遺伝子は、いずれのMSCソースでも検出されなかった:ANGPT2、CD31、CD34、CD45、HLA-G、IL2RA、IL3、IL12B(データ図示せず)。陰性対照として、全てのMSCを、造血前駆細胞マーカーCD34、CD41、及びCD45の発現について試験し
た。これらの実験から、本出願人らは、FM-ESC-MSCが等価のBM-MSCよりも高いレベルで又は低いレベルでいくつかの遺伝子を発現することを決定した。
【0288】
更に、本出願人らは、MSCをT細胞で処理し、次いで刺激剤フィトヘマグルチニン(PHA)を加えることによる免疫応答を模倣する環境に対してMSCをチャレンジさせた。RNAを回収する前の更に2日間にわたって2.5μg/mlのPHAを添加する以前に、ESC-MSCを、T細胞の存在下(非刺激)又はT細胞に加えてPHAの存在下(刺激を受けた)で2日間培養した。非刺激又は刺激されたESC-MSCの遺伝子発現は、現在、非刺激及び刺激を受けたBM-MSCのmRNAレベルと比較されている。
【0289】
基礎実験ついては、FM-ESC-MSC及びBM-MSCを、前述された条件下で、10cmの皿において、約500,000細胞の出発密度にて4日間培養した。更に、基礎実験についての陰性対照は、MA09 ESC由来造血前駆細胞であった。
【0290】
刺激実験については、FM-ESC-MSC及びBM-MSCを、前述された条件下で、10cmの皿において、約500,000細胞の出発密度にて3~4日間培養した。次いで、MSCをT細胞に2日間にわたって暴露し、その後2.5μg/mlのPHAに+/-暴露させた。対照として、MSCをPHAなしでT細胞の存在下で増殖し、別個にT細胞+PHA(MSCなし)も増殖させた。培地を吸引し、PBS中で2回洗浄し、吸引乾燥した。RNAeasyキット(Qiagen)を製造業者の指示通りに使用して、RNAを単離した。RNAの濃度及び純度を、Nanodrop 2000(Thermo
Scientific)を使用して分析した。cDNA合成を、出発物質として1マイクログラムのRNAを用いて、SuperScript III First-Strand Synthesis SuperMix forqRT-PCR(Life Technologies)を使用して実施した。cDNAは5マイクロリットル/ウェルで約30倍に希釈された。希釈cDNA、1マイクロリットルのQPCR Taqmanプローブ(Life Technologies)、及び15マイクロリットルのSSO Fast Mastermix(Biorad)を各ウェルで混合した。QPCRをBiorad CFX 96で実施した。データをCFXマネージャー2.1(Biorad)を使用して分析した。mRNA発現の相対量を、内因性対照、GAPDH、及びΔΔCt法を使用して決定した。
【0291】
実施例16-ESC-MSC中のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)酵素活性
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)は、トリプトファンのキヌレニンへの変換に関与する酵素である。IFNγ活性化MSCは、IDOを産生し、IDOがT細胞代謝を妨害するために、このことがT細胞増殖を抑制するこれらの能力を部分的に担当することが可能である。この試験において、本出願人らは、ESC-MSCと比較してBM-MSCのIDO活性を試験している。IDO発現は、IFNγによる刺激後に、又はT細胞との共培養することによって測定されている。実験は、IFNγによる刺激時に、全てのMSC集団がIDOを大幅に増加させることを示している(図28)。
【0292】
細胞を、IFNγ(50ng/ml)を培地に添加することで、又はT細胞と3日間共培養することのいずれかで刺激し、IDO発現は、分光学的アッセイを使用して実施する。刺激後に、細胞を回収し、1~2×10個の細胞を溶解した。溶解物を回収し、2X
IDO緩衝液(40mMのアスコルビン酸塩、20μMのメチレンブルー、200μg/mlのカタラーゼ、及び800μMのL-トリプトファンを含むPBS)と1:1で混合し、37℃で30分間インキュベートした。30%のトリクロロ酢酸の添加によって、反応を停止させ、52℃で30分間インキュベートした。溶解物を遠心分離し、上清をエールリッヒ試薬(新しく調製された、酢酸中0.8%のp-ジメチルアミノベンズアルデ
ヒド)と1:1で混合した。発色後に、吸光度を492nmにて分光光度計で読み取った。キヌレニンへのトリプトファンの変換を評価するために、OD値を、0~1000μMのキヌレニンの標準物と比較した。
【0293】
Meiselら著、Human bone marrow stromal cells inhibit allogeneic T-cell response by indoleamine 2,3-dioxygenase―mediated tryptophan degradation.Blood.(2004年)6月15日;103(12):4619-21を参照されたい。
【0294】
Braun,Dら著、A two-step induction of indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO) activity during dendritic-cell maturation.Blood.(2005年)10月1日;106(7):2375-81を参照されたい。
【0295】
実施例17-ESC-MSC中のAire-1及びプリオンタンパク質の発現レベル
Aire-1及びプリオンタンパク質(Prp)の発現レベルを、ウェスタンブロット分析を使用して監視し、異なるMSC集団(細胞供給源、誘導法、又はMSCの継代数に基づく)の間に差があるかどうかを決定した。Aire-1は、後にMHC上で提示され、隣接するT細胞の応答を緩和する稀な末梢組織拘束性抗原(PTA)の転写を誘導することを助ける。Aire-1はまた、初期T細胞活性化因子―1(ETA-1)の発現を抑制し、T細胞炎症応答を阻害する。プリオンタンパク質(PrP)は、様々な幹細胞集団(造血幹細胞、神経幹細胞等)の増殖及び自己再生を増強することが示されていて、その発現は、培養中の異なるMSC集団の増殖特性と相互に関連することが可能である。結果は、両タンパク質において、老化関連減退を示している(各試料についての負荷コントロールのアクチンの検討後に)。FM MA09-MSCは、経時的にAire-1及びPrPの双方の発現を維持すると思われる(図29)。
【0296】
MSCの全細胞溶解物を、標準プロトコールに従って、12%のアクリルアミドSDS-PAGEゲル上を移動させた。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、PBS中5%の乳汁+0.05%のツイーン-20でブロックした。膜をAire-1指向性の抗原(Santa Cruz Biotech)又はプリオンタンパク質(Abcam)で、続いてHRP接合二次抗原で探査した。Biorad GelDoc Imaging Systemでの分析の前に、強化化学発光試薬を使用して、信号を発生させた。
【0297】
Parekkadanら著、Molecular Therapy 20(1):178-186(2011年)を参照されたい。
【0298】
Mohantyら著、Stem Cells 30:1134-1143(2012年)を参照されたい。
【0299】
実施例18-サイトカインのESC-MSC分泌
MSCは、種々のサイトカイン及び増殖因子を基底状態及び様々な刺激に対する応答の双方において分泌することが知られている。20を超える異なる分泌された因子を、サイトカインアレイを使用して分析した。結果は、ESC-MSCとBM-MSCとの間に基底状態及び刺激状態の双方において分泌された因子に関して、数個の重要な相違が存在することを示している。BM-MSCは、基底状態及びIFNγ刺激状態の双方において、ESC-MSCが発現するよりも高いレベルのVEGFを発現する(図30~32参照)。
【0300】
MSCの同数を最初に平板培養し、平板培養後3~4日目にMSCから上清を回収した。CMを短時間で遠心分離し、細胞残骸を除去し、-20℃で凍結させた。CMを解凍し、製造業者のプロトコールに従って、RayBiotech(Norcross,GA)特注膜アレイ又は様々なR&D Systems(Minneapolis,MN)の既製品サイトカインアレイで分析した。
【0301】
実施例19-MSCの分化のためのヒトES細胞培養
この実験の目的は、MSCへの分化の前のhESC培養に使用される異なる増殖培地を評価することであった。
【0302】
ヒトES細胞を、概ね、ヒト細胞増殖培地(ノックアウトDMEM又はDMEM/F12(1:1)基礎培地、20%の血清代替品、1-グルタミン、非必須アミノ酸、及び10ng/mlのbFGF)中で、照射された又はミトマイシンC処理のマウス胚性線維芽細胞(MEF)フィーダー細胞上で培養した。0.05%のトリプシン/EDTAを使用して、継代を行った。あるいは、hESCを、Primate Medium中、MEFフィーダー上で培養し、Dissociation溶液を使用して継代させた(両者共にReproCELLから購入した)。結果は、Primate Mediumは、ノックアウトDMEMを含有するヒトES細胞増殖培地上で増殖した細胞と比較して、「見かけのよい」hESCコロニー(自発的分化があまりない、円形に近い、より引き締まったコロニー)を一貫して提供した。
【0303】
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【0304】
本明細書で引用された各文献(米国特許、米国特許出願公開、非特許文献等)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【手続補正書】
【提出日】2021-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】