(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027865
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】自己冷却電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6572 20140101AFI20220204BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220204BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220204BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220204BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20220204BHJP
【FI】
H01M10/6572
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6551
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021201290
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】506249347
【氏名又は名称】株式会社発明屋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙治
(57)【要約】
【課題】電池自体のエネルギで電池を冷却する技術を提供する。
【解決手段】自己冷却電池装置5は電池10と第1の冷却装置50と第2の冷却装置60とを備える。電池10はモータ等電機に電力を供給する。第2の冷却装置60は電池10の電力を利用して電池10を冷却する。第1の冷却装置50は電池10の熱で発電する熱電変換素子51と熱電変換素子51の電力で駆動されるファン53とを有する。ファン53は第2の冷却装置60の放熱フィン62(放熱部)に送風する。ファン53からの送風により放熱フィン62からの放熱が促進される。このように自己冷却電池装置5は電池10の電力を利用して電池10を冷却する第2の冷却装置60の放熱部からの放熱を電池10の電力を利用しない第1の冷却装置50によって促進し得る。よって自己冷却電池装置5は電池10の電力消費量を抑制しながら電池10自体のエネルギで電池10を冷却し得る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、冷却手段と、を備え、
前記冷却手段は、第1の冷却手段及び第2の冷却手段のうちの少なくとも一方であり、
前記第1の冷却手段は、前記電池の熱を利用して前記電池を冷却するための冷却手段であり、
前記第2の冷却手段は、前記電池の電力を利用して前記電池を冷却するための冷却手段である、自己冷却電池装置。
【請求項2】
電池と、
前記電池の熱を利用して前記電池を冷却するための第1の冷却手段と、
前記電池の電力を利用して前記電池を冷却するための第2の冷却手段とを、備え、
前記第1の冷却手段は、前記電池の熱を利用して前記第2の冷却手段の放熱部からの放熱を促進する放熱促進手段を有する、自己冷却電池装置。
【請求項3】
複数の電池と冷却手段とを備え、
前記冷却手段は、第1の冷却手段及び第2の冷却手段のうちの少なくとも一方であり、
前記第1の冷却手段は、前記複数の電池のうちの少なくとも一の電池の熱を利用して当該少なくとも一の電池自体又は当該少なくとも一の電池以外の少なくとも一の電池を冷却するための冷却手段であり、
前記第2の冷却手段は、前記複数の電池のうちの少なくとも一の電池の電力を利用して当該少なくとも一の電池自体又は当該少なくとも一の電池以外の少なくとも一の電池を冷却するための冷却手段である、自己冷却電池装置。
【請求項4】
前記第1の冷却手段は、前記電池の熱で発電する熱電変換素子を有し、
前記熱電変換素子の電力を利用して前記電池を冷却する、請求項1乃至3のいずれか一項の自己冷却電池装置。
【請求項5】
前記個々の電池の温度を管理するための温度管理手段を備え、
前記冷却手段は前記第2の冷却手段を含み、
前記温度管理手段は、
前記電池の状態を検知する状態検知手段と、
前記状態検知手段により検知された状態が前記所定の状態である場合に、前記電池を冷却するべく前記第2の冷却手段を制御する制御手段と、を有する、請求項1乃至4のいずれか一項の自己冷却電池装置。
【請求項6】
前記状態検知手段は、前記電池の温度が所定の温度以上のときに通電し、所定の温度未満のときに断電するサーモスタットであり、
前記制御手段は、前記サーモスタットが通電状態にあるときに作動する、請求項5の自己冷却電池装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自己冷却電池装置と、
前記電池の電力で駆動される電機と、を備えた電動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己冷却電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池が過剰に熱くならないように、当該電池を冷却する技術(以下、「電池冷却技術」と称す)は公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
半導体チップの熱を利用して当該半導体チップを冷却する技術(以下、「自己冷却技術」と称す)は公知である(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-16977号公報
【特許文献2】特開2011-69885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電池冷却技術は、冷却対象である電池以外の電力供給源からの電力により駆動される冷却手段(電熱変換素子、冷媒循環系、等)を用いて電池を冷却する。
【0006】
しかし、電池の使用状況、充電状態、等によっては、電池自体の電力で電池を冷却することが理にかなっていることもある。例えば、冷却のために電池の電力を消費してしまうという不利益よりも、過熱による電池の発火、劣化等を抑制するという利益が優先される状況においては、電池自体の電力で電池を冷却することが有効である。
【0007】
また、従来の自己冷却技術においては、電力(エネルギ)の供給を受けて機能を発揮するとともに発熱するもの(半導体チップ等)が冷却対象であり、電力を外部に供給(放電)するものである電池は冷却対象ではない。
【0008】
本開示では、電池自体のエネルギを利用して電池を冷却し得る自己冷却電池装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の自己冷却電池装置は、電池と、前記電池のエネルギを利用して前記電池を冷却するための冷却手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、電池自体のエネルギを利用して電池を冷却し得る自己冷却電池装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の自己冷却電池装置の概念図である。
【
図2】第2実施形態の自己冷却電池装置の概念図である。
【
図3】第3実施形態の自己冷却電池装置の概念図である。
【
図4】第4実施形態の自己冷却電池装置の概念図である。
【
図5】第5実施形態の自己冷却電池装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書は、少なくとも以下の構成を開示する。
構成1-1:
電池と、
前記電池の熱を利用して前記電池を冷却するための冷却手段(第1の冷却手段)と、を備える、自己冷却電池装置。
【0013】
構成1によれば、自己冷却電池装置は、電池自体のエネルギ(熱エネルギ)を利用して電池を冷却し得る。また、構成1の自己冷却電池装置は、電池を冷却するための制御系なしで電池を冷却し得る。
【0014】
構成1-2:
電池と、
前記電池の電力を利用して前記電池を冷却するための冷却手段(第2の冷却手段)と、を備える、自己冷却電池装置。
【0015】
構成1-2によれば、自己冷却電池装置は、電池自体のエネルギ(電力)を利用して電池を冷却し得る。
【0016】
構成1-3:
電池と、
前記電池の熱を利用して前記電池を冷却するための第1の冷却手段と、
前記電池の電力を利用して前記電池を冷却するための第2の冷却手段と、を備える、自己冷却電池装置。
【0017】
構成1-3によれば、自己冷却電池装置は、電池自体のエネルギ(熱エネルギと電力の少なくとも一方)を利用して電池を冷却し得る。
【0018】
また、構成1-3によれば、自己冷却電池装置は、電池の熱を利用して冷却することが可能又は比較的有利な場合には第1の冷却手段を用いて電池を冷却し得る。また、自己冷却電池装置は、電池の電力を利用して冷却することが可能又は比較的有利な場合には第2の冷却手段を用いて電池を冷却し得る。また、自己冷却電池装置は、電池の熱及び電力を利用して冷却することが可能又は比較的有利な場合には第1の冷却手段及び第2の冷却手段の両方を用いて電池を冷却し得る。このように、構成1-3によれば、自己冷却電池装置は、三種類の方法で電池を冷却し得る。したがって、構成3-1の自己冷却装置は、実効性が高い。
【0019】
また、構成1-3によれば、自己冷却電池装置は、電池の熱を利用することができない場合でも、電池の電力を利用して電池を冷却し得る可能性がある。また、自己冷却電池装置は、電池の電力を利用することができない場合でも、電池の熱を利用して電池を冷却し得る可能性がある。したがって、構成1-3の自己冷却電池装置は、可用性が高い。
【0020】
構成2:
電池と、
前記電池の熱を利用して前記電池を冷却するための第1の冷却手段と、
前記電池の電力を利用して前記電池を冷却するための第2の冷却手段と、を備え、
前記第1の冷却手段は、前記第2の冷却手段の放熱部からの放熱を促進する放熱促進手段を有する、自己冷却電池装置。
前記第2の冷却手段は、例えば、前記電池の電力により前記電池の熱を吸熱し放熱することにより前記電池を冷却するための電熱変換素子(ペルチェ素子)を有する。
【0021】
構成2によれば、自己冷却電池装置は、電池自体のエネルギ(熱エネルギと電力の両方)を利用して電池を冷却し得る。構成2によれば、自己冷却電池装置は、電池の電力を利用して電池を冷却する第2の冷却手段の放熱部からの放熱を、電池の電力を利用しない第1の冷却手段により促進することができるので、電池10の電力消費量を抑制しつつ、電池を効率良く冷却し得る。
【0022】
構成3:
複数の電池と、冷却手段と、を備え、
前記冷却手段は、第1の冷却手段及び第2の冷却手段のうちの少なくとも一方であり、
前記第1の冷却手段は、前記複数の電池のうちの少なくとも一の電池の熱を利用して当該少なくとも一の電池自体又は当該少なくとも一の電池以外の少なくとも一の電池を冷却するための冷却手段であり、
前記第2の冷却手段は、前記複数の電池のうちの少なくとも一の電池の電力を利用して当該少なくとも一の電池自体又は当該少なくとも一の電池以外の少なくとも一の電池を冷却するための冷却手段である、自己冷却電池装置。
【0023】
構成3によれば、自己冷却電池装置は、電池自体のエネルギ(熱エネルギと電力の少なくとも一方)を利用して電池を冷却し得る。
【0024】
また、構成3において、自己冷却電池装置が第1の冷却手段及び第2の冷却手段の両方を備えるものとすれば、構成1-3と同様、自己冷却電池装置は三種類の方法で電池を冷却し得る。したがって、構成3の自己冷却電池装置は、実効性が高い。
【0025】
また、構成3において、自己冷却電池装置が第2の冷却手段を備えるものとすれば、自己冷却電池装置は、冷却すべき電池の電力を利用して当該冷却すべき電池を冷却することができない場合でも、当該冷却すべき電池以外の電池の電力を利用して当該冷却すべき電池を冷却し得る。したがって、構成3の自己冷却電池装置は、可用性が高い。
【0026】
また、構成3において、自己冷却電池装置が第1の冷却手段及び第2の冷却手段の両方を備えるものとすれば、自己冷却電池装置は、電池の熱を利用することができない場合でも、当該電池の電力を利用して当該電池又は当該電池以外の少なくとも一の電池を冷却し得る可能性がある。また、自己冷却電池装置は、電池の電力を利用することができない場合でも、当該電池の熱を利用して当該電池又は当該電池以外の少なくとも一の電池を冷却し得る可能性がある。したがって、構成3の自己冷却電池装置は、可用性が高い。
【0027】
構成4:
構成1乃至構成3のいずかか一の自己冷却電池装置において、
前記第1の冷却手段は、前記電池の熱で発電する熱電変換素子を有し、
前記熱電変換素子の電力(熱起電力)を利用して前記電池を冷却する、自己冷却電池装置。
【0028】
構成4によれば、自己冷却電池装置は、電池自体の熱で発電する熱電変換素子の電力を利用して電池を冷却し得る。
【0029】
構成5-1:
構成1乃至4のいずれか一の自己冷却電池装置であって、
前記個々の電池の温度を管理するための温度管理手段を備え、
前記冷却手段は前記第2の冷却手段を含み、
前記温度管理手段は、
前記電池の状態を検知する状態検知手段と、
前記状態検知手段により検知された状態が前記所定の状態である場合に、前記電池を冷却するべく前記第2の冷却手段を制御する制御手段と、を有する、自己冷却電池装置。
【0030】
構成5-1によれば、自己冷却電池装置は、電池の状態が所定の状態である場合に、電池自体の電力で電池を冷却する。電池の状態が所定の状態である場合に、電池を冷却することにより、電池の劣化を効果的に抑制し得る。
【0031】
構成5-2:
構成1乃至4のいずれか一の自己冷却電池装置であって、
複数の電池と、
前記複数の電池に含まれる個々の電池の電力を利用して当該個々の電池を冷却するための冷却手段と、
前記個々の電池の温度を管理するための温度管理手段と、を備え、
前記温度管理手段は、
前記個々の電池の状態を検知する状態検知手段と、
前記状態検知手段により検知された状態が前記所定の状態である前記個々の電池を冷却するべく前記冷却手段を制御する制御手段と、を有する自己冷却電池装置。
【0032】
構成5-2によれば、自己冷却電池装置は、電池自体の電力で電池を冷却し得る。また、構成5-2によれば、自己冷却電池装置は、複数の電池の温度を、個々の電池の状態に基づいて、個々の電池毎に個別に管理し得るので、個々の電池の劣化を効果的に抑制し得る。
【0033】
構成6:
構成5-1又は構成5-2の自己冷却電池装置であって、
前記状態検知手段は、前記電池の温度が所定の温度以上のときに通電し、所定の温度未満のときに断電するサーモスタットを有し、
前記制御手段は、前記サーモスタットが通電状態にあるときに作動する、自己冷却電池装置。
【0034】
構成6によれば、電池の温度が所定の温度以上のときのみ(所定の状態のときのみ)制御手段が作動するので、制御手段が常時作動している場合と比較して、電池の消費電力を抑制できる。
【0035】
構成7:
構成1乃至6のいずれか一の自己冷却電池装置と、
前記電池の電力で駆動される電機と、を備えた電動装置。
【0036】
構成7によれば、電動装置は、電池自体の電力で電池を冷却し得る。
【0037】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。この実施形態の自己冷却電池装置が備える電池には、二次電池又は燃料電池が含まれる。この実施形態において、電池を冷却することは、電池が過剰に熱くならないようにすることを意味する。この実施形態において、電池が二次電池(例えば、リチウムイオン電池)である場合、冷却対象は二次電池セル又は複数の二次電池セルをパッケージングしたバッテリパックである。この場合、電池を二次電池セル又はバッテリパックと読み替えることができる。この実施形態において、電池が燃料電池である場合、冷却対象となる部分は、燃料電池スタックである。この場合、電池を燃料電池スタックと読み替えることができる。この実施形態の自己冷却電池装置は、電池が燃料電池である場合、燃料電池スタックに燃料を供給する手段(燃料タンク、燃料配管、等)を備える
【0038】
[第1実施形態]
図1に示す自己冷却電池装置1は、電池10と、電池10の熱を利用して電池10を冷却するための冷却装置(冷却手段、第1の冷却手段)20と、を備える。
【0039】
電池10は、モータ等電機(不図示)に電力を供給する。モータ等電機(不図示)は自己冷却電池装置1の外部に設けられている。
【0040】
冷却装置20は、熱電変換素子21と、放熱フィン22と、ファン23と、とを有する。
【0041】
熱電変換素子21は、電池10に面する吸熱面21aと、放熱フィン22に面する放熱面21bと、を有する。熱電変換素子21は、電池10及び放熱フィン22の双方と熱交換可能である。
【0042】
熱電変換素子21は、吸熱面21aと放熱面21bとの間の温度差により発電する(ゼーベック効果)。
【0043】
放熱フィン22には、電池10の放熱面21bから熱が伝わる。放熱フィン22は、熱電変換素子21の放熱面21bよりも格段に大きい表面積を有している。
【0044】
ファン23は、熱電変換素子21が発電した電力P1により駆動される。そして、ファン23は、放熱フィン22に冷気(電池10よりも低温の空気)を送風する。
【0045】
放熱フィン22に冷気が送風されることにより、放熱フィン22の表面からの放熱が促進される。その結果、放熱フィン22を介した電池10からの放熱が促進され、電池10が冷却される。
【0046】
このように、第1実施形態の自己冷却電池装置1は、電池10の熱を利用して電池10を冷却し得る。また、第1実施形態の自己冷却電池装置1は、電池10を冷却するための制御系を別途備えることなく、電池10を冷却し得る。すなわち、第1実施形態の自己冷却電池装置1は、熱電変換素子21が所定の電力(ファン23の駆動に必要な電力)を出力し得ることを条件として、冷却装置20により常時電池10を冷却し得る。電池10を冷却することにより、電池10の発火、電池10の劣化等、電池10が熱くなり過ぎることによる悪影響を抑制する効果が得られる可能性がある。
【0047】
[第2実施形態]
図2に示す自己冷却電池装置2は、電池10と、電池10の電力P2を利用して電池10を冷却するための冷却手段(冷却手段、第2の冷却手段)30と、を備える。
【0048】
電池10は、モータ等電機(不図示)に電力を供給する。モータ等電機(不図示)は自己冷却電池装置1の外部に設けられている。
【0049】
冷却装置(冷却手段)30は、電熱変換素子31と、放熱フィン(放熱部)32と、ファン33と、を有する。
【0050】
電熱変換素子31は、電池10に面する吸熱面31aと、放熱フィン32に面する放熱面(放熱部)31bと、を有する。電熱変換素子31は、電池10及び放熱フィン32の双方と熱交換可能である。
【0051】
電熱変換素子31は、電池10の電力P2により吸熱面31aから吸熱するとともに放熱面31bから放熱する(ペルチェ効果)。
【0052】
放熱フィン32には、電熱変換素子31の放熱面31bから熱が伝わる。放熱フィン22は、熱電変換素子21の放熱面21bよりも格段に大きい表面積を有している。
【0053】
ファン33は、電池10の電力P2により駆動される。そして、ファン33は、放熱フィン32に冷気(電池10よりも低温の空気)を送風する。
【0054】
ファン33から放熱フィン32に冷気が送風されることにより、放熱フィン32の表面からの放熱が促進される。その結果、電熱変換素子31及び放熱フィン32を介した電池10からの放熱が促進され、電池10が冷却される。すなわち、電池10の熱が、ペルチェ効果により電熱変換素子31の吸熱面31aに能動的に吸熱され、電熱変換素子31の放熱面31bから放熱フィン32を介して能動的に放熱される。その結果、電池10が冷却される。
【0055】
このように、第2実施形態の自己冷却電池装置2は、電池10の電力を利用して電池10を冷却し得る。この場合、電池10の冷却のために電池10の電力を消費することになるが、電池10が冷却されることにより、電池10の劣化を抑制するという効果が得られる可能性がある。したがって、第2実施形態の自己冷却電池装置2は、電池10の冷却のために電池10の電力を消費するという不利益よりも、電池10の劣化を抑制するという利益が優先される場合に有効に機能する。すなわち、この場合、電池10自体の電力10で電池を冷却することは理にかなっている。
【0056】
[第3実施形態]
図3に示す自己冷却電池装置3は、
図2に示す自己冷却電池装置2の構成に加えて、電池10の温度を管理するための温度管理装置40を備える。温度管理装置40は電池10の電力を用いて動作する。
【0057】
温度管理装置40は、状態検知部(状態検知手段)41と、制御部42と、備える。
【0058】
状態検知部41は、電池10の状態を検知するための機能ブロックである。
【0059】
制御部42は、状態検知部41による検知結果に基づいて冷却装置30を制御するための機能ブロックである。状態検知部41及び制御部42は、温度管理装置40の演算部(図示せず)が温度管理装置40の記憶部(図示せず)に記憶された所定のプログラムを実行することにより実現され得る。
【0060】
制御部42は、状態検知部41により検知された状態が所定の状態である場合に、冷却装置30を作動させる。すなわち、制御部42は、状態検知部41により検知された状態が所定の状態である場合に、電池10の電力を電熱変換素子31及びファン33に供給させる。
【0061】
所定の状態の例として、温度が所定値以上(例えば、異常過熱)の状態、充電状態(充電率)が所定値以上の状態、温度が所定値以上であり且つ充電状態(充電率)が所定値以上の状態、放電量が所定値以上(例えば、過放電)の状態、温度が所定値以上であり且つ放電量が所定値以上の状態、サイクル充電回数が所定値以上の状態、温度が所定値以上であり且つサイクル充電回数が所定値以上の状態、等、を挙げることができる。
【0062】
このように、第3実施形態の自己冷却電池装置3は、電池10の状態に基づいて、すなわち、電池10の状態が所定の状態である場合に、電池10自体の電力を利用して電池10を冷却し得る。電池10の状態が所定の状態である場合に、電池10を冷却することにより、電池10の劣化をより抑制するという効果が得られる可能性がある。したがって、第3実施形態の自己冷却電池装置3は、電池10の冷却のために電池10の電力を消費するという不利益よりも、電池10の劣化を抑制するという利益が優先される場合に有効である。すなわち、この場合、電池10自体の電力10で電池を冷却することは理にかなっている。
【0063】
[第4実施形態]
図4に示す自己冷却電池装置4は、
図1に示した冷却装置(第1の冷却手段)20と、
図3に示した冷却装置(第2の冷却手段)30及び温度管理装置40と、を備える。冷却装置(第1の冷却手段)20は電池10の一方の面に取り付けられている。冷却装置(第2の冷却手段)30は電池10の他方の面に取り付けられている。この構成により、自己冷却電池装置4は、二種類の冷却装置(第1の冷却手段)20及び冷却装置(第2の冷却手段)30を用いて電池10を冷却し得る。
【0064】
自己冷却電池装置4は、熱電変換素子21が所定の電力(ファン23の駆動に必要な電力)を出力し得ることを条件として、冷却装置(第1の冷却手段)20により常時電池10を冷却し得る。そして、自己冷却電池装置4は、電池10の状態が所定の状態である場合に、冷却装置(第2の冷却手段)30により電池10を冷却し得る。
【0065】
また、自己冷却電池装置4は、電池10の熱を利用して冷却することが可能又は比較的有利な場合には冷却装置(第1の冷却手段)20を用いて電池を冷却し得る。また、自己冷却電池装置4は、電池10の電力を利用して冷却することが可能又は比較的有利な場合には冷却装置(第2の冷却手段)30を用いて電池を冷却し得る。また、自己冷却電池装置4は、電池10の熱及び電力を利用して冷却することが可能又は比較的有利な場合には冷却装置(第1の冷却手段)20及び冷却装置(第2の冷却手段)30の両方を用いて電池10を冷却し得る。このように、自己冷却電池装置4は、三種類の方法で電池10を冷却し得る。したがって、自己冷却電池装置4は実効性が高い。
【0066】
また、自己冷却電池装置4は、電池10の熱を利用することができない場合でも、電池10の電力を利用して電池10を冷却し得る可能性がある。また、自己冷却電池装置4は、電池10の電力を利用することができない場合でも、電池10の熱を利用して電池10を冷却し得る可能性がある。したがって、自己冷却電池装置4は可用性が高い。
【0067】
[第5実施形態]
図5に示す自己冷却電池装置5は、第1の冷却装置(第1の冷却手段)50と、第2の冷却装置(第2の冷却手段)60及び温度管理装置70と、を備える。第1の冷却装置50は電池10の一方の面に取り付けられている。第2の冷却装置60は電池10の他方の面に取り付けられている。
【0068】
第1の冷却装置50は、熱電変換素子51と、放熱フィン52と、ファン53と、を有する。
【0069】
熱電変換素子51は、電池10に面する吸熱面51aと、放熱フィン52に面する放熱面51bと、を有する。熱電変換素子51は、電池10及び放熱フィン52の双方と熱交換可能である。
【0070】
熱電変換素子51は、吸熱面51aと放熱面51bとの間の温度差により発電する(ゼーベック効果)。
【0071】
放熱フィン52には、電池10の放熱面51bから熱が伝わる。放熱フィン52は、熱電変換素子51の放熱面51bよりも格段に大きい表面積を有している。
【0072】
ファン53は、熱電変換素子51が発電した電力P1により駆動される。そして、ファン53は、第2の冷却装置60の放熱部(放熱フィン62)に冷気(電池10よりも低温の空気)を送風する。ファン53は、第2の冷却装置60の放熱部(放熱面61b、放熱フィン62)からの放熱を促進する放熱促進手段である。
【0073】
第2の冷却装置60は、電熱変換素子61と、放熱フィン62と、を有する。
【0074】
電熱変換素子61は、電池10に面する吸熱面61aと、放熱フィン22に面する放熱面(放熱部)61bと、を有する。電熱変換素子61は、電池10及び放熱フィン62の双方と熱交換可能である。
【0075】
電熱変換素子61は、電池10の電力P2により吸熱面61aから吸熱するとともに放熱面61bから放熱する(ペルチェ効果)。
【0076】
放熱フィン62には、電熱変換素子61の放熱面61bから熱が伝わる。放熱フィン62は、電熱変換素子61の放熱面(放熱部)61bよりも格段に大きい表面積を有している。
【0077】
第1の冷却装置50のファン53から第2の冷却装置60の放熱フィン62に冷気が送風されることにより、第2の冷却装置60の放熱フィン62の表面からの放熱が促進される。その結果、放熱フィン62を介した電池10からの放熱が促進され、電池10が冷却される。
【0078】
温度管理装置70は、状態検知部(状態検知手段)71と、制御部72と、備える。
【0079】
状態検知部71は、電池10の状態を検知するための機能ブロックである。
【0080】
制御部72は、状態検知部71による検知結果に基づいて第2の冷却装置60を制御するための機能ブロックである。状態検知部71及び制御部72は、温度管理装置70の演算部(図示せず)が温度管理装置70の記憶部(図示せず)に記憶された所定のプログラムを実行することにより実現され得る。
【0081】
制御部72は、状態検知部71により検知された状態が所定の状態である場合に、第2の冷却装置60を作動させる。すなわち、制御部72は、状態検知部71により検知された状態が所定の状態である場合に、電池10の電力を電熱変換素子61に供給させる。
【0082】
自己冷却電池装置5は、熱電変換素子51が所定の電力(ファン63の駆動に必要な電力)を出力し得ることを条件として、第1の冷却装置50により常時第2の冷却装置60の放熱フィン62に冷却風を送風し得る。そして、自己冷却電池装置5は、電池10の状態が所定の状態である場合に、第2の冷却装置60により電池10を冷却し得る。
【0083】
このように、電池10の電力を利用して電池10を冷却する第2の冷却装置60の放熱部(放熱面61b、放熱フィン62)からの放熱を、電池10の電力を利用しない第1の冷却装置50により促進し得るすることにより、電池10の電力消費量を抑制しつつ、電池10を効率良く冷却し得る。すなわち、第4実施形態のように第2の冷却装置30のファン33を、電池10の電力P2により駆動する場合と比較して、電池10の電力消費量を抑制し得る。
【0084】
[第6実施形態]
図6に示す電動装置100は、自己冷却電池装置6と、電池10の電力で駆動されるモータ(電機)80と、を備える。自己冷却電池装置6は、
図1乃至
図5に例示する自己冷却電池装置1乃至5のうちのいずれかである。例えば、電動装置100は、モータ80の動力で移動(走行、飛行、航行、等)する移動体である。
【0085】
移動体の例として、電動車両、電動飛行機、電動船舶、等を挙げることができる。電動車両には、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車及び燃料電池自動車が含まれる。電動飛行機には、電動航空機、ハイブリッド航空機、電動飛行船、ドローン、等が含まれる。電動船舶には、電動船、電動潜水艦、等が含まれる。電動船にはドローン船が含まれる。電動潜水艦にはハイブリッド艦、ドローン艦、等が含まれる。
【0086】
この電動装置100は、電池10自体のエネルギを利用して電池10を冷却し得る。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1実施形態では、冷却装置(冷却手段)20は、放熱フィン22を有しているが、放熱フィン22がなくともファン23からの送風によって放熱面21bから十分に放熱させることが可能であれば、放熱フィン22は省略可能である。
【0088】
また、第2実施形態では、冷却装置(冷却手段)30は、ファン33を有しているが、ファン33がなくとも放熱フィン32に十分な気流(自然風、電動装置が走行時の外気、電動装置が飛行時の外気、電動装置が航行時の外気、等)が作用し得る条件下であれば、ファン33は省略可能である。
【0089】
また、第2実施形態において、電熱変換素子31を省略することも可能である。すなわち、放熱フィン32を電池10と熱交換可能に配置し、ファン33から放熱フィン32への送風のみにより、電池10を冷却するようにしてもよい。
【0090】
また、第2実施形態又は第3実施形態において、自己冷却電池装置2、3が冷却対象である電池10を複数備えるものである場合、複数の電池10のうちの少なくとも一の電池10の電力を利用して、当該少なくとも一の電池10以外の電池10を冷却し得るように、冷却装置(冷却手段)30を構成してもよい。この場合も、自己冷却電池装置2、3は、電池10自体の電力を利用して電池10を冷却し得る。
【0091】
また、第3実施形態において、自己冷却電池装置3が電池10を複数備えるものである場合、各電池10を個別に冷却し得るように冷却装置(冷却手段)30を構成するとともに、状態検知部41が各電池10の状態を検知し、各電池10の状態に基づいて、例えば検知結果が所定の結果である電池10を冷却するべく、制御部42が冷却装置(冷却手段)30を制御するようにしてもよい。この構成によれば、自己冷却電池装置3が備える複数の電池10の温度を、各電池10の状態に基づいて、電池10毎に個別に管理し得るので、個々の電池10の劣化を効果的に抑制し得る。
【0092】
また、自己冷却電池装置が冷却対象である電池10を複数備えるものである場合、複数の電池10のうちの少なくとも一の電池10は第1実施形態の冷却装置(第1の冷却手段)20により冷却し、その他の少なくとも一の電池10は第2実施形態又は第3実施形態の冷却装置(第2の冷却手段)30により冷却するようにしてもよい。この場合も、自己冷却電池装置は、自己冷却電池装置が備える電池10自体のエネルギ(熱エネルギと電力の少なくとも一方)を利用して電池10を冷却し得る。
【0093】
また、第3乃至第5実施形態において、状態検知部41、61の例として、電池10の温度が所定の温度以上のときに通電し、所定の温度未満のときに断電するサーモスタットを挙げることができる。状態検知部41、61がサーモスタットである場合、制御部42、62は、サーモスタットが通電状態にあるときに作動する。これにより、制御部42、62が常時作動している場合と比較して、電池10の消費電力を抑制できる。
【0094】
また、第3乃至第5実施形態では、自己冷却電池装置3、4、5がその構成要素として温度管理装置40、70を備えているが、温度管理装置40、70は自己冷却電池装置3、4、5の外部装置であってもよい。温度管理装置40、70が自己冷却電池装置3、4、5の外部装置である場合、温度管理装置40、70には、自己冷却電池装置3、4、5の外部の電力供給源から電力が供給されてもよい。
【0095】
また、第1乃至第5実施形態において、放熱フィンの代わりにヒートシンク又はヒートパイプを用いてもよい。
【0096】
また、第5実施形態では、第1の冷却装置50のファン53(放熱促進手段)からの送風により、第2の冷却装置60の放熱フィン62(放熱部)からの放熱を促進させているが、この構成に限定されない。放熱促進手段は、例えば、第2の冷却装置60の電熱変換素子61の放熱面61b(放熱部)と熱交換する冷媒が流れる冷媒流路(冷媒管)と、冷媒流路内に冷媒の流れを生じさせる冷媒流発生手段(ポンプ等)を備え、放熱面61bと冷媒との熱交換により放熱面61bからの放熱を促進させるものであってもよい。この場合、第1の冷却装置50の熱電変換素子51の電力(熱起電力)により冷媒流発生手段が駆動される。放熱面61b(放熱部)と第1の冷却装置50の冷媒との熱交換は、放熱面61bからの熱を伝える介在物(放熱フィン、ヒートシンク、ヒートパイプ、冷媒管、等)を介して実現されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、第2の冷却手段の例として、ペルチェ効果により電池を冷却するものを示したが、第2の冷却手段はこれに限定されない。第2の冷却手段は、例えば、電池と熱交換可能に冷媒を流し、電池と冷媒との熱交換により電池を冷却するものであってもよい。この場合、第2の冷却手段は、冷媒が流れる冷媒流路(冷媒管)に設けた冷媒流発生手段(ポンプ等)を、電池の電力を利用して駆動させるものとして実現され得る。電池と第2の冷却手段の冷媒との熱交換は、電池からの熱を伝える介在物(放熱フィン、ヒートシンク、ヒートパイプ、冷媒管、等)を介して実現されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 自己冷却電池装置
2 自己冷却電池装置
3 自己冷却電池装置
4 自己冷却電池装置
5 自己冷却電池装置
6 自己冷却電池装置
10 電池
20 冷却手段(第1の冷却手段)
21 熱電変換素子
21a 吸熱面
21b 放熱面
22 放熱フィン
23 ファン
30 冷却手段(第2の冷却手段)
31 電熱変換素子
31a 吸熱面
31b 放熱面(放熱部)
32 放熱フィン(放熱部)
33 ファン
40 温度管理装置
41 状態検知部(状態検知手段)
42 制御部(制御手段)
50 第1の冷却装置(第1の冷却手段)
51 熱電変換素子
51a 吸熱面
51b 放熱面
52 放熱フィン
53 ファン(放熱促進手段)
60 第2の冷却装置(第2の冷却手段)
61 電熱変換素子
61a 吸熱面
61b 放熱面(放熱部)
62 放熱フィン(放熱部)
70 温度管理装置
71 状態検知部(状態検知手段)
72 制御部
80 モータ(電機)
100 電動装置
P1 電力
P2 電力