(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027925
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】証券管理システム及び証券管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20220203BHJP
G06Q 20/38 20120101ALI20220203BHJP
G06Q 20/06 20120101ALI20220203BHJP
【FI】
G06Q40/04
G06Q20/38 310
G06Q20/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203185
(22)【出願日】2021-12-15
(62)【分割の表示】P 2020061570の分割
【原出願日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019198770
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和2年2月21日ウェブサイトのアドレス https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20200221release_jp.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】592052416
【氏名又は名称】株式会社 みずほ銀行
(71)【出願人】
【識別番号】592131906
【氏名又は名称】みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 耕介
(72)【発明者】
【氏名】武井 優介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓臣
(72)【発明者】
【氏名】千崎 良太
(57)【要約】
【課題】社債等の証券トークンの取引を、円滑かつ効率的に行なうための証券管理システム及び証券管理方法を提供する。
【解決手段】発行API21が、証券の発行機関による証券トークンC1の発行依頼を受け付けた場合、銘柄情報を分散ファイル基盤システム60に登録し、分散ファイル基盤システム60から、銘柄情報の識別情報を取得し、発行API21が、証券管理コントラクトD1を用いて、銘柄情報の識別情報を含めた証券トークンをブロックチェーンネットワークBN1上に登録する発行処理を実行し、売買API22が、ブロックチェーンネットワークBN1上に登録され、投資家によって投資されたステーブルコインC2との決済により、証券トークンC1を投資家に移転する売買処理を実行し、前記証券トークンに基づいて、投資家に対する投資還元のための投資返還処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発行API、売買API、証券管理コントラクトを備え、ブロックチェーンネットワーク上で証券トークンを管理する証券管理システムであって、
前記発行APIが、証券の発行機関による証券トークンの発行依頼を受け付けた場合、銘柄情報を分散ファイル基盤システムに登録し、前記分散ファイル基盤システムから、前記銘柄情報の識別情報を取得し、
前記発行APIが、前記証券管理コントラクトを用いて、前記銘柄情報の識別情報を含めた証券トークンを前記ブロックチェーンネットワーク上に登録する発行処理を実行し、
前記売買APIが、前記ブロックチェーンネットワーク上に登録され、投資家によって投資されたステーブルコインとの決済により、前記証券トークンを前記投資家に移転する売買処理を実行し、
前記証券管理コントラクトが、前記証券トークンに基づいて、前記投資家に対する投資還元のための投資返還処理を実行することを特徴とする証券管理システム。
【請求項2】
前記投資返還処理において、前記銘柄情報で定められた投資還元時期に応じて、前記証券トークンに基づいて、前記投資家に対する投資還元を行なうことを特徴とする請求項1に記載の証券管理システム。
【請求項3】
前記投資家の証券トークンの取崩依頼を受け付ける取崩APIを更に備え、
前記投資返還処理において、前記取崩APIが、前記投資家の証券トークンの取崩依頼を受け付け、前記証券管理コントラクトが、前記証券トークンの取崩のための投資返還を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の証券管理システム。
【請求項4】
前記投資返還処理において、前記ブロックチェーンネットワーク上のステーブルコイン及びカラードコインの何れかを付与することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項5】
前記投資返還処理において、前記発行機関の関連機関で利用可能な特典トークンに変換することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項6】
前記投資返還処理において、前記発行機関の関連機関が、独自コインを発行している場合には、前記独自コインに変換することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項7】
前記投資返還処理において、前記発行機関の関連機関が前記投資家に特典を付与するために、前記投資家の証券トークンのポジション情報を提供することを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項8】
前記投資返還処理において、前記発行機関の関連機関が前記投資家に特典を付与するために、前記投資家に付与したカラードコインの残高情報を提供することを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項9】
前記証券管理コントラクトが、
前記証券トークンに係る取引処理の実行時に、前記証券トークンが、前記ブロックチェーンネットワーク上に記録された個別コントラクトに関連付けられている場合には、前記個別コントラクトを用いて前記証券トークンの前記取引処理を実行し、
前記証券トークンに係る取引処理の実行時に、前記証券トークンが、前記個別コントラクトに関連付けられていない場合には、前記証券管理コントラクトが保持する共通ロジックを用いて前記証券トークンの前記取引処理を実行することを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項10】
前記個別コントラクトには、前記証券トークンに関する価値移転に関するロジックが含まれることを特徴とする請求項9に記載の証券管理システム。
【請求項11】
前記証券トークンを管理するブロックチェーンネットワークとは別に、前記証券トークンについての注文情報を記録する注文用ブロックチェーンネットワークを設け、
前記証券管理コントラクトが、取引所システムにより行われた前記注文用ブロックチェーンネットワークに記録された注文情報のマッチングにより約定された約定情報により、前記ブロックチェーンネットワーク上に登録された証券トークン及びステーブルコインのポジションを変更することを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の証券管理システム。
【請求項12】
発行API、売買API、証券管理コントラクトを備えた証券管理システムを用いて、ブロックチェーンネットワーク上で証券トークンを管理する方法であって、
前記発行APIが、証券の発行機関による証券トークンの発行依頼を受け付けた場合、銘柄情報を分散ファイル基盤システムに登録し、前記分散ファイル基盤システムから、前記銘柄情報の識別情報を取得し、
前記発行APIが、前記証券管理コントラクトを用いて、前記銘柄情報の識別情報を含めた証券トークンを前記ブロックチェーンネットワーク上に登録する発行処理を実行し、
前記売買APIが、前記ブロックチェーンネットワーク上に登録され、投資家によって投資されたステーブルコインとの決済により、前記証券トークンを前記投資家に移転する売買処理を実行し、
前記証券管理コントラクトが、前記証券トークンに基づいて、前記投資家に対する投資還元のための投資返還処理を実行することを特徴とする証券管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子トークン化された社債等の証券を管理するための証券管理システム及び証券管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
会社が資金調達を目的として、社債を発行することがある。また、ブロックチェーン技術を用いて証券取引を売買、決済、および清算するためのシステムも検討されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術においては、分散型ブロックチェーン台帳を利用し、証券取引を実施する。具体的には、ユーザに対して、分散型ブロックチェーン台帳が管理されるコンピューティングノードのピアツーピアネットワークにアクセス可能な暗号ウォレットを提供する。ネットワークを通して利用可能な証券は、直接、ブロックチェーン台帳自体に記憶される。スマート契約は、証券をユーザ間で譲渡し、全取引が適用可能な規制規則および他の制限に準拠することを検証するために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
企業が個人向け社債を発行する場合、資金の調達の他にマーケティングという目的が含まれる場合もある。具体的には、個人向け社債を保有してもらうことにより、その会社とのチャネルを形成し、そのチャネルを使って特典や各種情報を提供するサービスを展開することができる。しかしながら、社債には取引の自由度は限られており、以下の課題がある。
【0005】
・額面に対して潤沢な特典が提供されるわけではなく、サービス享受の機会は限定的になる。
・特典を付す場合は、小口化が難しく、その結果、債権者数は限定的になる。
・投資にそれほど関心が高くない層には、資金の流動性が落ちてしまうことからハードルが高い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する証券管理システムは、発行API、売買API、証券管理コントラクトを備え、ブロックチェーンネットワーク上で証券トークンを管理する。前記発行APIが、証券の発行機関による証券トークンの発行依頼を受け付けた場合、銘柄情報を分散ファイル基盤システムに登録し、前記分散ファイル基盤システムから、前記銘柄情報の識別情報を取得し、前記発行APIが、前記証券管理コントラクトを用いて、前記銘柄情報の識別情報を含めた証券トークンを前記ブロックチェーンネットワーク上に登録する発行処理を実行し、前記売買APIが、前記ブロックチェーンネットワーク上に登録され、投資家によって投資されたステーブルコインとの決済により、前記証券トークンを前記投資家に移転する売買処理を実行し、前記証券トークンに基づいて、投資家に対する投資還元のための投資返還処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、社債等の証券トークンの取引を、円滑かつ効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施形態のAPIとブロックチェーンネットワークとの関係の説明図。
【
図4】実施形態のブロックチェーンネットワークに記録されるデータの説明図であって、(a)は銘柄情報、(b)は個別コントラクトの説明図。
【
図5】実施形態の証券トークン、ステーブルコイン、カラードコインの説明図。
【
図7】実施形態の処理手順の説明図であって、(a)はステーブルコインの準備処理、(b)は証券トークンの発行処理の説明図。
【
図8】実施形態の処理手順の説明図であって、(a)は証券トークンの売買処理、(b)は証券トークンの取崩処理の説明図。
【
図9】実施形態の証券トークンの利払・償還処理の処理手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図9に従って、証券管理システム及び証券管理方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、ブロックチェーンネットワーク上に証券(社債)をデジタル化した証券トークンを発行することで、中央機関を置かずに、各証券の特性に応じた原簿管理を行なう。
【0010】
図1に示すように、ネットワークを介して接続された投資家端末10、管理システム20、証券会社システム30、銀行システム40、取引所システム50、分散ファイル基盤システム60等を用いる。管理システム20、証券会社システム30、銀行システム40、取引所システム50、分散ファイル基盤システム60は、API(Application Programming Interface)を介して、暗号化された通貨やトークンの取引に用いられるブロックチェーンネットワークBN1に接続される。
【0011】
(ハードウェア構成)
図2を用いて、投資家端末10~分散ファイル基盤システム60を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。タッチパネルディスプレイ等は、入力装置H12、表示装置H13として機能する。
【0014】
記憶部H14は、投資家端末10~分散ファイル基盤システム60の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0015】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、投資家端末10~分散ファイル基盤システム60における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各サービスのための各種プロセスを実行する。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0017】
(システム構成)
次に、
図1~
図6を用いて、ブロックチェーンネットワークBN1、投資家端末10~分散ファイル基盤システム60の機能を説明する。
【0018】
図3に示すように、ブロックチェーンネットワークBN1には、証券管理コントラクトD1、銘柄情報D2、個別コントラクトD3等が記録される。更に、ブロックチェーンネットワークBN1には、証券トークンC1、ステーブルコインC2、カラードコインC3に関する暗号通貨情報が記録される。
【0019】
証券管理コントラクトD1には、トークンやコイン(証券トークンC1、ステーブルコインC2、カラードコインC3)の取扱いについて共通した共通ロジックが記述される。なお、売買益についての税金計算については、ブロックチェーンネットワークBN1外で、取引ログに基づいて税額を計算する。
【0020】
この証券管理コントラクトD1では、トークンやコインの価値移転の管理を行なう。このため、証券管理コントラクトD1は、価値移転の権限を保有する。例えば、利払時期に、利払額に応じた価値移転の権限が付与される。この権限は、価値移転時期の前に、価値移転の必要額について予め付与される。
また、証券管理コントラクトD1では、価値移転のために、証券トークンC1の発行と、ステーブルコインC2による調達額の送金を同時に行なうように定義されている。更に、売買取引の約定・決済(T+0取引)においては、DVP(Delivery Versus Payment)を実行するために、証券トークンC1の譲渡とステーブルコインC2の送金とを同時に行なうように定義されている。
また、証券管理コントラクトD1では、所定の時期に、投資家に対する投資還元(利払、償還等)を行なうように定義されている。例えば、利払については、証券トークンC1に記録された銘柄情報、ポジションに基づいて利払額を計算し、ステーブルコインC2やカラードコインC3の送金を行なうように定義されている。また、償還については、証券トークンC1に記録された銘柄情報、ポジションに基づいて償還額を計算し、証券トークンC1のポジションの消却を行なうとともに、ステーブルコインC2やカラードコインC3の送金を行なうように定義されている。
【0021】
図3に示すように、発行API21、売買API22、取崩API23、分析API24、資金準備API25において受け付けた依頼は、証券管理コントラクトD1に供給される。ここで、証券に独自ルールが設定されている場合には、各種機能ロジックを用いる。そして、証券管理コントラクトD1は、証券トークンC1、ステーブルコインC2、カラードコインC3の管理を行なう。
【0022】
図4(a)に示すように、銘柄情報D2には、各銘柄についての概要が記録される。銘柄情報D2は、社債等の発行時に作成される目論見書に基づいて生成される。この銘柄情報D2には、銘柄ID、発行条件に関するデータが記録される。
【0023】
銘柄IDデータ領域には、各証券の銘柄を特定するための識別子(発行者、回号、募集区分等)に関するデータが記録される。
【0024】
発行条件データ領域には、募集する証券の発行条件(発行価格、発行量、利率、申込期間、利息の支払(利払)方法、償還の方法、担保の有無、財務上の特約等)に関するデータが記録される。
【0025】
図4(b)に示すように、個別コントラクトD3には、価値移転に関連して、証券管理コントラクトD1とは異なる独自機能(独自の取引ルール)が設定されている場合に、この機能を実行するためのロジックが記録される。個別コントラクトD3には、個別ID、取引種別に対して独自ロジックが記録されている。
【0026】
個別IDデータ領域には、個別コントラクトを特定するための識別子に関するデータが記録される。
取引種別データ領域には、価値移転に関連して、個別コントラクトを用いる取引種別を特定するための識別子に関するデータが記録される。取引種別としては、例えば、個別コントラクトD3で取り扱う価値移転の取引処理(投資返還処理)としては、取崩、利払、償還等がある。
独自ロジックデータ領域には、この銘柄、取引種別において、独自機能を実現するためのロジックが記録される。
【0027】
次に、
図5を用いて、証券トークンC1、ステーブルコインC2、カラードコインC3を説明する。
【0028】
証券トークンC1は、発行会社により発行された証券の電子化トークンであり、証券の原簿管理として機能する。この証券トークンC1は、ブロックチェーンネットワークBN1上の1つのアドレスで管理されており、発行会社からの依頼に基づいて、証券会社により発行される。そして、取引市場や証券会社間での取引において、ポジションの変更を行なう。この証券トークンC1は、ステーブルコインC2を使ってDVP決済を行なうことができる。また、証券トークンC1は、銘柄に応じてカラードコインC3に交換可能である。この証券トークンC1には、アカウント、ハッシュ値、銘柄ID、個別ID、ポジション等に関するデータが記録される。
【0029】
アカウントデータ領域には、この証券トークンC1の保有者を特定するための識別子に関するデータが記録される。保有者としては、証券会社や投資家がある。なお、個人情報に係る部分(氏名、住所)については、暗号化した上で、分散ファイル基盤システム60に保存する。
ハッシュ値データ領域には、分散ファイル基盤システム60に記録された情報を取得するための識別子(銘柄情報の識別情報や個人情報)に関するデータが記録される。
【0030】
銘柄IDデータ領域には、この証券トークンC1の銘柄(発行会社、回号等)を特定するための識別子に関するデータが記録される。
個別IDデータ領域には、この証券トークンC1の取扱における独自ロジックを特定するための識別子に関するデータが記録される。この個別IDは、この銘柄に独自機能が設定されている場合に記録される。
ポジションデータ領域には、このアカウントにおける保有量(残高)に関するデータが記録される。
【0031】
ステーブルコインC2は、ブロックチェーンネットワークBN1上で汎用的に使える通貨(例えば、円貨や外貨等)と等価のトークンである。ステーブルコインC2は、投資家、証券会社、発行会社間の調達や売買、元利払い等の決済手段として用いられる。本実施形態では、担保型を想定しており、ユーザがステーブルコインC2の発行元(例えば、銀行)外の銀行口座から入金等を行なう場合は、ステーブルコインC2の発行元への振込とステーブルコインC2の発行を同時に行なう。このステーブルコインC2には、アカウント、残高等に関する情報が記録される。
アカウントデータ領域には、このステーブルコインC2を保有する名義人を特定するための識別子に関するデータが記録される。
残高データ領域には、このアカウントの残高に関するデータが記録される。
【0032】
カラードコインC3は、発行会社において利用可能な独自通貨である。ステーブルコインC2とは異なり、汎用性において制限(利用可能な場所や時期等)がかけられている。例えば、特定の場所・サービスのために利用可能な電子マネーやポイントサービスにおけるポイント等のような扱いであり、投資家は証券トークンC1の残高を取り崩して独自通貨に変換することが可能である。独自通貨毎にAPIを介してブロックチェーンネットワークBN1外の既存の電子マネー等と連動するインタフェースを設ける。
【0033】
このカラードコインC3は、アカウント、残高、制約等に関する情報が記録される。
アカウントデータ領域には、このカラードコインC3を保有する名義人を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0034】
残高データ領域には、このアカウントに蓄積されている残高に関するデータが記録される。
制約データ領域には、このカラードコインC3の利用条件に関するデータが記録される。
【0035】
図1に示す投資家端末10は、投資家が用いるコンピュータ端末である。本実施形態では、この投資家端末10は、管理システム20及び証券会社システム30にアクセスしたり、保有する証券トークンC1を換金したり、取り崩したりする場合に用いられる。
【0036】
管理システム20は、証券トークンC1の取引を支援するコンピュータシステムである。この管理システム20は、証券トークンC1の取引を支援するための発行API21、売買API22、取崩API23、分析API24、資金準備API25、換金API26、電子マネー交換API27、利払・償還バッチ28を備える。
【0037】
発行API21は、証券トークンC1の発行依頼を受け付けて、証券トークンC1の発行処理を行なうアプリケーションインターフェースである。この発行API21は、発行会社から証券の発行を依頼された証券会社によって呼び出される。そして、発行API21は、証券管理コントラクトD1を用いて、ブロックチェーンネットワークBN1に記録された証券トークンC1を発行する。
【0038】
売買API22は、証券トークンC1の売買依頼を受け付け、証券トークンC1の売買処理を行なうアプリケーションインターフェースである。この売買API22は、投資家等から証券トークンC1の売買を依頼された証券会社によって呼び出される。そして、売買API22は、証券管理コントラクトD1を用いて、ブロックチェーンネットワークBN1に記録された証券トークンC1を移転させる。
【0039】
取崩API23は、証券トークンC1の取崩依頼を受け付けるアプリケーションインターフェースである。この取崩API23は、証券トークンC1の取崩時に、投資家等によって呼び出される。そして、取崩API23は、証券管理コントラクトD1を用いて、ブロックチェーンネットワークBN1に記録された証券トークンC1をカラードコインC3に換金させる。
【0040】
分析API24は、監督官庁に証券トークンC1に関する情報を提供するためのアプリケーションインターフェースである。分析API24は、銀行や監督官庁によって呼び出される。そして、分析API24は、証券管理コントラクトD1を用いて、ブロックチェーンネットワークBN1に記録された証券トークンC1の取引状況に基づいて、報告用データを作成する。
資金準備API25は、証券管理コントラクトD1に対して、トークンやコインの価値移転の権限を付与するためのアプリケーションインターフェースである。例えば、利払や償還時に発行会社から投資家にステーブルコインC2を支払う。そこで、証券管理コントラクトD1が、利払や償還時の時期情報に基づいて、ステーブルコインC2を送金できるように、事前に発行会社が証券管理コントラクトD1にステーブルコインC2の特定残高の送金権限を委譲する場合に用いる。
【0041】
換金API26は、ステーブルコインC2への換金依頼を受け付けるアプリケーションインターフェースである。この換金API26は、発行会社や証券会社、投資家等によって呼び出される。換金依頼を受け付けた換金API26は、銀行システム40に対して、現金支払や振込等に基づいて、証券トークンC1の換金を依頼する。この場合、銀行システム40は、ステーブルコインC2に変換する。
【0042】
電子マネー交換API27は、カラードコインC3について既存の電子マネーへの交換依頼を受け付けるアプリケーションインターフェースである。この電子マネー交換API27は、証券トークンC1を保有する投資家によって呼び出される。
【0043】
利払・償還バッチ28(投資還元バッチ)は、証券トークンC1の利払や償還等の投資還元時期に関する情報を、証券管理コントラクトD1に提供するタイマである。
【0044】
証券会社システム30は、証券の発行や売買取引を行なう証券会社のコンピュータシステムである。
銀行システム40は、ステーブルコインC2を管理する銀行のコンピュータシステムである。
取引所システム50は、証券の売買取引を行なう市場を管理する取引所のコンピュータシステムである。
【0045】
図6を用いて、発行された証券トークンC1などが投資家間で売買される市場(セカンダリマーケット)について説明する。
投資家P1が、証券トークンC1の取引を行なう場合、証券会社システム30を利用する。この場合、証券会社システム30は、同一の投資家については同一ウォレットを用いる。
【0046】
取引を行なうための注文情報はタイムスタンプが重要である。このため、取引の完了(ブロック化)が遅延しないように、注文情報のタイムリーな管理が必要である。そこで、本実施形態では、証券トークンC1~カラードコインC3を取り扱うトークン管理用のブロックチェーンネットワークBN1とは別に、指値注文情報、成行注文情報等の注文情報を登録する注文用のブロックチェーンネットワークBN2(注文用ブロックチェーンネットワーク)を用いる。
【0047】
このブロックチェーンネットワークBN2に接続された取引所システム50により、証券トークンC1の取引を管理する。
取引所システム50は、蓄積部51、市場DB52、約定部53、市場情報API54を備える。
【0048】
蓄積部51は、ブロックチェーンネットワークBN2に登録された指値注文情報、成行注文情報を取得する。
市場DB52は、蓄積部51が取得した注文情報を蓄積する。蓄積部51は、ブロックチェーンネットワークBN2において、注文情報のブロック化をトリガーとして、このブロックに含まれる注文情報を市場DB52に蓄積する。
【0049】
約定部53は、市場DB52に蓄積された注文情報のマッチングを行ない、約定金額を決める。そして、約定部53は、約定結果に基づいて、ブロックチェーンネットワークBN1の証券管理コントラクトD1に対して、証券トークンC1の移転を指示する。なお、ポジション管理を行なっているブロックチェーンネットワークBN1と、注文情報を管理しているブロックチェーンネットワークBN2とから遡ってマッチングの正当性を検証可能であることから、マッチングをオフチェーンの約定部53で行なっても支障はない。
市場情報API54は、市場DB52に蓄積された注文情報に基づいて気配値等を算出し、投資家端末10、証券会社システム30に情報提供を行なう。
【0050】
分散ファイル基盤システム60は、ブロックチェーンネットワークBN1に格納される情報を分散して記憶するコンピュータシステム(IPFS)である。銘柄情報の中で決済に利用しないが、例えばリスク管理などに利用する情報を、JSON等の非構造データ形式で保存し、その分散ファイル基盤システム60上のハッシュ値を参照する情報を証券トークン内に持たせることで改ざん耐性を持たせている。
【0051】
(証券管理方法)
次に、
図7~
図9を用いて、証券管理方法を説明する。
(ステーブルコインの準備処理)
まず、
図7(a)を用いて、証券取引に必要なステーブルコインC2の準備処理について説明する。
【0052】
ここでは、管理システム20の換金API26は、換金依頼処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、証券会社や投資家においては、ステーブルコインC2の残高がない場合、管理システム20にアクセスし、換金API26を用いて、換金依頼を銀行システム40に送信する。この換金依頼には、依頼者情報、ステーブルコインC2の取得希望額等に関する情報を含める。依頼者の口座残高を利用する場合には、依頼者情報として、口座番号に関する情報を含める。
【0053】
銀行システム40は、ステーブルコインの登録処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、銀行システム40は、依頼者(証券会社、投資家)の口座から取得希望額を引き落とし、依頼者のアカウントを設定したステーブルコインC2を、ブロックチェーンネットワークBN1に登録する。
【0054】
(証券トークンの発行処理)
次に、
図7(b)を用いて、証券トークンの発行処理を説明する。
証券の発行を希望する発行会社は、目論見書を作成して、証券会社に提供する。証券会社は、管理システム20の発行API21にアクセスする。
【0055】
この場合、管理システム20の発行API21は、銘柄情報の登録依頼処理を実行する(ステップS2-1)。具体的には、発行API21は、目論見書を取得し、目論見書から発行条件を取得し、銘柄IDを付与する。そして、発行API21は、分散ファイル基盤システム60に対して、銘柄情報の登録依頼を送信する。この銘柄情報の登録依頼には、目論見書から取得した銘柄ID、発行条件を含める。
【0056】
この場合、分散ファイル基盤システム60は、銘柄情報の登録処理を実行する(ステップS2-2)。具体的には、分散ファイル基盤システム60は、発行API21から取得した銘柄ID、発行条件を含めた銘柄情報を記憶する。
【0057】
次に、分散ファイル基盤システム60は、ハッシュ値の生成処理を実行する(ステップS2-3)。具体的には、分散ファイル基盤システム60は、記憶した銘柄情報に基づいてハッシュ値を生成する。このハッシュ値を用いることにより、分散ファイル基盤システム60から銘柄情報(コンテンツ)を取得することができる。そして、分散ファイル基盤システム60は、生成したハッシュ値を発行API21に返信する。
【0058】
次に、管理システム20の発行API21は、証券トークンの登録依頼処理を実行する(ステップS2-4)。具体的には、発行API21は、証券管理コントラクトD1に対して、銘柄情報の登録依頼を送信する。この銘柄情報の登録依頼には、銘柄ID、発行条件、分散ファイル基盤システム60から取得したハッシュ値を含める。
【0059】
証券管理コントラクトD1は、証券トークンの登録処理を実行する(ステップS2-5)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、銘柄ID、発行条件を含めた銘柄情報D2を、ブロックチェーンネットワークBN1に登録する。次に、証券管理コントラクトD1は、アカウント、ハッシュ値、銘柄ID、ポジションを含めた証券トークンC1を発行する。証券トークンC1のアカウントデータ領域には、証券会社のアカウントを設定する。ポジションデータ領域には、発行会社と証券会社との間で取り決められ、発行API21を介して入力された発行量を設定する。
【0060】
次に、証券管理コントラクトD1は、個別コントラクトとのリンク処理を実行する(ステップS2-6)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、証券の取扱について独自機能が設定されているかどうかを判定する。独自機能が設定されていると判定した場合には、証券管理コントラクトD1は、独自機能に対応した個別コントラクトD3を特定する。そして、証券管理コントラクトD1は、証券トークンC1に、個別コントラクトD3の個別IDを設定する。
【0061】
証券管理コントラクトD1は、ステーブルコインの移転処理を実行する(ステップS2-7)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、証券トークンC1の発行と同時に、証券会社のアカウントのステーブルコインC2を、発行会社に移転する。
【0062】
(証券トークンの売買処理)
次に、
図8(a)を用いて、証券トークンの売買処理(売買に関する取引処理)を説明する。ここでは、新たに発行された証券を、投資家が証券会社から購入するプライマリマーケットにおいて取得する場合を想定する。
【0063】
取引を希望する投資家は、投資家端末10から、証券会社システム30に売買注文を行なう。この売買注文には、取引希望の銘柄ID、売買識別(売り又は買いを識別する情報)、取引量を含める。証券会社システム30は、売買API22にアクセスする。
【0064】
この場合、管理システム20の売買API22は、証券トークンの取引依頼処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、売買API22は、証券会社システム30から、取引希望の銘柄ID、売買識別、取引量を取得する。そして、売買API22は、証券管理コントラクトD1に対して、取引依頼を送信する。この取引依頼には、証券会社システム30から取得した銘柄ID、売買識別、取引量を含める。
【0065】
証券管理コントラクトD1は、証券トークンのポジション変更処理を実行する(ステップS3-2)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、証券会社のアカウントの証券トークンC1を投資家のアカウントに移転する。
【0066】
証券管理コントラクトD1は、ステーブルコインの移転処理を実行する(ステップS3-3)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、投資家のアカウントのステーブルコインC2を証券会社のアカウントに移転する。
【0067】
なお、セカンダリマーケットにおいて取引が行なわれた場合には、管理システム20の売買API22は、取引所システム50の約定部53から約定結果を含む取引依頼を取得する。そして、上記と同様に、証券管理コントラクトD1は、証券トークンのポジション変更処理(ステップS3-2)、ステーブルコインの移転処理(ステップS3-3)を実行する。
【0068】
(証券トークンの取崩処理)
次に、
図8(b)を用いて、証券トークンの取崩処理を説明する。投資家が、保有する証券トークンC1の取崩を希望する場合、投資家端末10を用いて、取崩API23にアクセスする。ここでは、証券トークンC1を取り崩して、カラードコインC3を提供する場合を想定するが、ステーブルコインC2を提供してもよい。
【0069】
この場合、管理システム20の取崩API23は、証券トークンの取崩依頼処理を実行する(ステップS4-1)。具体的には、取崩API23は、投資家端末10から、アカウント、銘柄ID、取崩量を取得する。そして、取崩API23は、証券管理コントラクトD1に対して、取崩依頼を送信する。この取崩依頼には、投資家端末10から取得したアカウント、銘柄ID、取崩量を含める。
【0070】
証券管理コントラクトD1は、証券トークンのポジション変更処理を実行する(ステップS4-2)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、銘柄IDに関連付けられた投資家のアカウントの証券トークンC1のポジションを特定する。そして、証券管理コントラクトD1は、取崩量に応じた証券トークンC1の失効情報をブロックチェーンネットワークBN1に登録することにより、投資家が保有する証券トークンC1のポジションを減らす。
【0071】
次に、証券管理コントラクトD1は、独自コインへの変換処理を実行する(ステップS4-3)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、発行会社において変換可能なカラードコインC3を特定する。そして、証券管理コントラクトD1は、取崩量に応じたカラードコインC3を投資家のアカウントに追加する。
【0072】
次に、証券管理コントラクトD1は、電子マネーチャージ処理を実行する(ステップS4-4)。具体的には、投資家が、既存の電子マネーに交換希望の場合には、証券管理コントラクトD1は、カラードコインC3の失効情報を記録する。そして、電子マネー交換API27は、失効させたカラードコインC3の失効量に応じて、既存の電子マネーを投資家に提供する。
【0073】
(証券トークンの利払・償還処理)
次に、
図9を用いて、証券トークンの利払・償還処理を説明する。この処理は、各証券において、予め設定された利払・償還時期に実行される。
【0074】
管理システム20の利払・償還バッチ28は、タイマ情報の提供処理を実行する(ステップS5-1)。具体的には、利払・償還バッチ28は、利払又は償還の時期情報を証券管理コントラクトD1に供給する。
【0075】
この場合、証券管理コントラクトD1は、利払・償還の判定処理を実行する(ステップS5-2)。具体的には、利払・償還バッチ28から取得したタイマ情報に基づいて、銘柄情報D2を用いて、利払又は償還を判定する。
【0076】
利払時期が到来した場合、証券管理コントラクトD1は、利払処理を実行する(ステップS5-3)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、ブロックチェーンネットワークBN1上に残存している証券トークンC1について、銘柄情報D2を用いて、ポジションに応じて利息額を計算する。なお、証券トークンC1において個別IDが設定されている場合には、この個別IDの個別コントラクトD3を用いて、利息額を計算する。そして、証券管理コントラクトD1は、利息額分のステーブルコインC2を、ブロックチェーンネットワークBN1上で、トークン保有者のアカウントに移転させる。
【0077】
更に、償還時期が到来した場合、証券管理コントラクトD1は、証券トークンの消滅処理を実行する(ステップS5-4)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、ブロックチェーンネットワークBN1上に残存している証券トークンC1の失効情報を記録する。
【0078】
証券管理コントラクトD1は、ステーブルコインの移転処理を実行する(ステップS5-5)。具体的には、証券管理コントラクトD1は、銘柄情報D2を用いて、失効情報を記録した証券トークンC1の償還額を算出する。なお、証券トークンC1において個別IDが設定されている場合には、この個別IDの個別コントラクトD3を用いて、償還額を計算する。そして、証券管理コントラクトD1は、償還額に応じたステーブルコインC2を、ブロックチェーンネットワークBN1上で、トークン保有者のアカウントに移転する。
【0079】
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、ブロックチェーンネットワーク上に証券(社債)をデジタル化した証券トークンを発行する。これにより、台帳が分散しており、かつ改ざん耐性が高いというブロックチェーンネットワークの性質を活かして、中央機関を置かずに、債券の原簿管理ができる。ブロックチェーンネットワークを活用することによってシステムの可用性を確保できる。また、取引ログが確実に残るので、監査を容易にすることができる。
【0080】
(2)本実施形態では、ブロックチェーンネットワークBN1上に、証券取引を管理する証券管理コントラクトD1を設ける。これにより、証券のポジション情報である証券トークンC1、及び決済手段であるステーブルコインC2の両方を、証券管理コントラクトD1で操作できるので、売買取引の約定・決済(T+0取引)でのDVP決済を実現することができる。更に、証券管理コントラクトD1により、譲渡制限などの条件をプログラムとして表現でき、確認事務等を自動化できる。
【0081】
(3)本実施形態では、証券管理コントラクトD1とは異なる独自機能(独自の取引ルール)が設定されている場合、ブロックチェーンネットワークBN1に個別コントラクトD3を設定する。これにより、証券管理コントラクトD1に対して、オプション機能を付加することができる。
【0082】
(4)本実施形態では、証券トークンC1を、電子マネーや独自通貨と紐付いたカラードコインC3に交換する。これにより、カラードコインC3を用いて、所定の場所やスケジュール(時期)で使用可能な電子マネーを提供することができる。更に、既存の電子マネー基盤が存在する場合には、発行会社側は、証券トークンC1を通じてマーケティングが可能になる。
【0083】
(5)本実施形態では、ブロックチェーンネットワークBN2において、注文情報のブロック化をトリガーとして、このブロックに含まれる注文情報を市場DB52に蓄積する。これにより、約定における売買のマッチングのような複雑な情報の統合や、気配値などの情報提供を、オフネットワークのデータベースを用いて効率的に実現することができる。
【0084】
(6)本実施形態では、市場情報API54は、市場DB52に蓄積された注文情報に基づいて気配値等を算出し、投資家端末10、証券会社システム30に情報提供を行なう。これにより、ブロック化が必要なブロックチェーンネットワークとは異なり、タイムリーに各種情報を証券会社や投資家に提供することができる。
【0085】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、証券トークンを、発行会社が発行する社債に適用したが、証券トークンの適用対象は、社債に限定されるものではない。株式、債券、手形、小切手等を含めた有価証券にも広く適用できる。また、有価証券に限定されるものでもなく、交換可能な財産的価値(例えば、ゲームアイテム)等にも適用できる。
【0086】
・上記実施形態では、売買益についての税金計算については、ブロックチェーンネットワークBN1外で、取引ログに基づいて税額を計算する。これに代えて、証券管理コントラクトD1が、取引ログに基づいて税額を計算し、取引時の税引き後のステーブルコインを送金するようにしてもよい。
・上記実施形態では、償還時に、証券管理コントラクトD1は、ステーブルコインの移転処理を実行する(ステップS5-5)。これに代えて、カラードコインC3に変換して償還するようにしてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、ブロックチェーンネットワークBN1には、個別コントラクトD3が記録される。個別コントラクトD3には、個別ID、取引種別に対して独自ロジックが記録されている。これに加えて、個別コントラクトD3に銘柄IDを記録してもよい。この場合には、証券トークンC1に記録された銘柄IDを用いて、取引時に利用する個別コントラクトD3を特定する。
【0088】
・上記実施形態では、証券管理コントラクトD1は、所定の時期に、投資家に対する投資還元(利払、償還等)を行なうように定義される。投資還元は、利払、償還に限定されるものではない。例えば、所定の時期の特典トークン付与により、投資還元を行なうようにしてもよい。この場合には、証券管理コントラクトD1では、証券トークンC1に記録された銘柄情報、ポジションに基づいて特典の付与量を計算し、投資家に特典トークンを付与するように定義されている。特典トークンとしては、例えば、発行会社や提携会社等の証券発行関連者が提供する商品の商品券や、サービスの利用券や会員券等を用いることができる。特典トークン(商品券や、利用券、会員券等)は、例えばERC721規格で提供することができる。
【0089】
・上記実施形態では、証券管理コントラクトD1は、独自コインへの変換処理を実行する(ステップS4-3)。ここで、個別に会員システムを有する発行会社に関しては、会員ステータスの向上のような付加価値を付与してもよい。例えば、発行会社の会員であるユーザについて、証券トークンのポジション(残高情報)を発行会社の会員管理システムに提供する。この場合、会員管理システムは、証券トークンのポジションに応じて会員ユーザのステータスアップを行なう。
また、証券トークンのポジション(残高情報)に加えて、証券トークンの投資返還に基づいてユーザに対して提供したカラードコインC3の累積の残高情報(例えば、年ごとの獲得残高等)を提供してもよい。この場合には、累積の残高情報に応じて、ユーザに対して、発行会社が特典を付与する。特に、個別に会員システムを有さない発行会社は、独自コインの代わりに、カラードコインC3の累積の残高情報に応じて、特典を付与することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…投資家端末、20…管理システム、21…発行API、22…売買API、23…取崩API、24…分析API、25…資金準備API、26…換金API、27…電子マネー交換API、28…利払・償還バッチ、30…証券会社システム、40…銀行システム、50…取引所システム、60…分散ファイル基盤システム、D1…証券管理コントラクト、D2…銘柄情報、D3…個別コントラクト、C1…証券トークン、C2…ステーブルコイン、C3…カラードコイン、BN1,BN2…ブロックチェーンネットワーク。