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特開2022-27996放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器
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  • 特開-放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027996
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
F28F1/32 D
F28F1/32 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206209
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2019126270の分割
【原出願日】2019-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】519246238
【氏名又は名称】境川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 悟志
(57)【要約】
【課題】より一層高い熱交換効率を発揮できる放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器に用いられる放熱フィンであって、板状のフィン本体と、前記フィン本体に形成され前記フィン付き熱交換器が備える伝熱管が貫通する貫通孔と、前記フィン本体の一方面側において前記貫通孔の周縁から前記フィン本体の一方面に対して垂直方向に突設して形成される短筒状の接合部とを備えており、前記短筒状の接合部における内周面の全域は、前記接合部の軸線方向に沿って、その直径が変化せず、同一寸法を有するように構成され、前記伝熱管の外周面と摺動可能に嵌合するストレート面として形成されていることを特徴とする放熱フィン。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器に用いられる放熱フィンであって、
板状のフィン本体と、前記フィン本体に形成され前記フィン付き熱交換器が備える伝熱管が貫通する貫通孔と、前記フィン本体の一方面側において前記貫通孔の周縁から前記フィン本体の一方面に対して垂直方向に突設して形成される短筒状の接合部とを備えており、
前記短筒状の接合部における内周面の全域は、前記接合部の軸線方向に沿って、その直径が変化せず、同一寸法を有するように構成され、前記伝熱管の外周面と摺動可能に嵌合するストレート面として形成されていることを特徴とする放熱フィン。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱フィンを複数備える熱交換器であって、
複数本の伝熱管と、所定間隔をあけて配置される複数枚の前記放熱フィンとを備えており、前記各放熱フィンは、前記接合部を介して前記伝熱管に貫通させて配置されている熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱管の外径に対する前記接合部の内径の比率(前記接合部の内径/前記伝熱管の外径)は、0.970以上であることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィン付き熱交換器として、所定間隔をあけて配置される複数枚の放熱フィンに、複数本の伝熱管を貫通させて構成されるものが知られている。また、図13の説明図に示すように、各放熱フィン3に設けられる貫通孔32の周縁には、貫通方向に沿って突設した短筒状の接合部33が設けられており、当該接合部33で伝熱管2を外嵌するように構成されている。このような熱交換器においては、伝熱管2内を流れる流体の熱が、放熱フィン3を介して、放熱フィン表面を流れる気体へと伝わることにより熱の移動が行われる。
【0003】
熱交換器による熱交換効率を高めるためには、伝熱管2と放熱フィン3との間での熱伝達損失をできるだけ少なくする必要があるが、従来の熱交換器においては、放熱フィン3が有する接合部33と伝熱管2との密着度が低く、熱伝達損失を効果的に低減することが難しいという問題があった。具体的に説明すると、伝熱管2の表面に外嵌される接合部33の形態が、図13に示すように、貫通孔32の周縁から突設方向に向かって縮径するテーパ―状に形成されているため、実質的に伝熱管2の表面と密着している接合部33の部分は、接合部33における突設方向先端部分となっており、熱伝達損失が大きいものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題を解決すべくなされたものであって、より一層高い熱交換効率を発揮できる放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、熱交換器に用いられる放熱フィンであって、板状のフィン本体と、前記フィン本体に形成され前記フィン付き熱交換器が備える伝熱管が貫通する貫通孔と、前記フィン本体の一方面側において前記貫通孔の周縁から前記フィン本体の一方面に対して垂直方向に突設して形成される短筒状の接合部とを備えており、前記短筒状の接合部における内周面の全域は、前記接合部の軸線方向に沿って、その直径が変化せず、同一寸法を有するように構成され、前記伝熱管の外周面と摺動可能に嵌合するストレート面として形成されていることを特徴とする放熱フィンにより達成される。
【0006】
また、本発明の上記目的は、上記記載の放熱フィンを複数備える熱交換器であって、複数本の伝熱管と、所定間隔をあけて配置される複数枚の前記放熱フィンとを備えており、前記各放熱フィンは、前記接合部を介して前記伝熱管に貫通させて配置されている熱交換器により達成される。
【0007】
また、上記熱交換器において、前記伝熱管の外径に対する前記接合部の内径の比率(前記接合部の内径/前記伝熱管の外径)は、0.970以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より一層高い熱交換効率を発揮できる放熱フィン、及び、放熱フィンを備える熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る熱交換器の概略構成平面図である。
図2図1の要部拡大断面図である。
図3】本発明に係る熱交換器が備える放熱フィンの要部平面図である。
図4図3の要部拡大断面図である。
図5】放熱フィンが備える接合部の構成を説明するための説明図である。
図6】本発明に係る熱交換器の効果を説明するための説明図である。
図7】本発明に係る熱交換器が有する放熱フィンの変形例を示す要部平面図である。
図8】本発明に係る熱交換器が有する放熱フィンの変形例を示す要部平面図である。
図9図8に示す放熱フィンの構造を説明するための説明図である。
図10】伝熱特性評価試験に使用した本発明に係る熱交換器の断面に関するX線画像である。
図11】伝熱特性評価試験に使用した従来の熱交換器の断面に関するX線画像である。
図12】発明者が行った伝熱特性試験結果を示すグラフである。
図13】従来の熱交換器が有する放熱フィン構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る熱交換器について、添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。図1は、本発明に係る熱交換器1の概略構成平面図であり、図2は、図1の要部拡大断面図である。また、図3は、熱交換器1が備える放熱フィン3の要部平面図であり、図4は、図3の要部拡大断面図である。この熱交換器1は、図1図2に示すように、複数本の伝熱管2と、所定間隔をあけて配置される複数枚の放熱フィン3とを備えて構成されている。複数枚の放熱フィン3は、複数本の伝熱管2に貫通させて配置されている。
【0011】
伝熱管2は、内部に流体が流通するパイプ状部材であり、例えば、ステンレススチール管や銅管、アルミニウム管等から構成されている、
【0012】
放熱フィン3は、板状部材から形成されており、フィン本体31と、当該フィン本体31に形成される貫通孔32と、貫通孔32の周縁から突設して形成される接合部33とを備えている。
【0013】
放熱フィン3を形成する板状部材としては、例えば、板厚みが0.1mm~0.5mm程度のステンレススチール板やアルミニウム板を好適に使用することができる。貫通孔32は、伝熱管2が貫通される孔であり、フィン本体31において所定間隔をあけて複数形成されている。貫通孔32は丸孔として形成されており、その直径は、伝熱管2の外径よりも僅かに小さい寸法として形成されている。接合部33は、伝熱管2に外嵌される部材であり、フィン本体31の一方面に対して略垂直方向に突設して形成されている。
【0014】
また、接合部33は、図3及び図4に示すように、短筒状に形成されており、当該接合部33の内径は、貫通孔32の直径と同一寸法となるように構成されている。つまり、この接合部33の内周面は、伝熱管2の外周面と摺動可能に嵌合するストレート面として形成されている。より詳細には、短筒状に形成される接合部33の内周面は、接合部33の軸線方向(接合部33の突設方向)に沿って、その直径が変化せず、同一寸法を有するように構成されている、このような接合部33は、フィン本体31に形成された孔の周縁部(フィン本体31の一部分)を立ち上げ加工することにより、貫通孔32と共に形成することができる。なお、立ち上げ加工に際しては、短筒状の接合部33が、先細のテーパ状とならないように、金型等にて、接合部33と貫通孔32との境界部分を含めた接合部33の外周面側をホールドする。
【0015】
また、一の放熱フィン3が有する接合部33の突出方向側の先端の厚みTLは、図5の説明図に示すように、該一の放熱フィン3に隣接する他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側において貫通する貫通孔32の孔周縁角部における曲率半径寸法Rよりも大きくなるように構成されている。また、一の放熱フィン3の接合部33の先端が、他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側における貫通孔32の周縁に当接するように、各放熱フィン3は配設されて構成されている。
【0016】
このように、本発明に係る熱交換器1は、放熱フィン3が備える接合部33の内周面をストレート面として構成することにより、接合部33の内周面の全域が伝熱管2の表面と密着させることが可能となるため、伝熱管2から放熱フィン3への熱伝達性能が大きく向上し、高い熱交換効率を発揮することが可能となる。特に、放熱フィン3の接合部33の先端が、他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側における貫通孔32の周縁に当接するように各フィンを配設することにより、複数の放熱フィン3が配置される伝熱管2上の所定領域において、伝熱管2の外表面の全域が接合部33と密着した状態で被覆されることになるため、伝熱管2から放熱フィン3へ熱の移動が効率良く行われるため、より一層高い熱交換効率を発揮することが可能となる。
【0017】
また、内周面がストレート面となる接合部33を有することにより、伝熱管2表面が接合部33によって被覆され、露出しない状態とすることが可能となる。これによって、伝熱管2表面が酸化等の腐食によって損傷することを効果的に防止することが可能となる。特に、放熱フィン3の接合部33の先端が、他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側における貫通孔32の周縁に当接するように各フィンを配設することにより、複数の放熱フィン3が配置される伝熱管2上の所定領域において、伝熱管2の外表面が冷却用の空気との接触が効果的に遮断されるため、伝熱管2表面での高い腐食防止効果を得ることが可能となる。
【0018】
また、一の放熱フィン3が有する接合部33の突出方向側の先端の厚みTLが、該一の放熱フィン3に隣接する他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側において貫通する貫通孔32の孔周縁角部における曲率半径寸法Rよりも大きくなるように構成されることにより、一の放熱フィン3が有する接合部33の突出方向側の先端が、隣接配置される他の放熱フィン3が有する貫通孔32の内側に配置されることを効果的に防止することができる。接合部33の突出方向側の先端の厚みTLが、他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側において貫通する貫通孔32の孔周縁角部における曲率半径寸法Rよりも小さいと、例えば、熱交換器1の使用時において、各放熱フィン3の間を通過する気体に押されて放熱フィン3が移動することにより、図6に示すように、接合部33の突出方向側の先端が、隣接配置される放熱フィン3における貫通孔32の内側に配置されてしまう事態が発生してしまう。この結果、放熱フィン3同士の間隔が狭くなり過ぎてしまい、放熱フィン3同士の間を通過する気体流量が低減してしまうため、熱交換効率が低下することになる。更には、接合部33の突出方向側の先端部分と重なった状態となってしまう貫通孔32の内側部分は、伝熱管2に面しないことになるため、伝熱管2から放熱される熱を直接的に受けることができなくなるため、より一層、熱交換効率の低下を招くこととなる。これに対して、本発明のように、一の放熱フィン3が有する接合部33の突出方向側の先端が、隣接する他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側において貫通する貫通孔32の孔周縁角部における曲率半径寸法よりも大きくなるように構成することにより、接合部33の突出方向側の先端が、隣接配置される放熱フィン3における貫通孔32の内側に配置されてしまうような事態が発生することを効果的に防止することができ、高い熱交換効率を維持することが可能となる。
【0019】
また、一の放熱フィン3が有する接合部33の突出方向側の先端の厚みTLが、該一の放熱フィン3に隣接する他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側において貫通する貫通孔32の孔周縁角部における曲率半径寸法Rよりも大きくなるように構成することにより、複数の放熱フィン3を伝熱管2に挿通させて所定位置に配置する過程において、接合部33の突出方向側の先端を、隣接する他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側における貫通孔32の周縁に当接させることができるため、容易に高い位置決め精度で各放熱フィン3を伝熱管2上に配置することが可能となる。
【0020】
具体的に説明すると、放熱フィン3同士の間隔は、フィン本体31の厚みと接合部33の長さとの合計寸法によって決定されることになる為、一の放熱フィン3が有する接合部33の先端部が、他の放熱フィン3が有する貫通孔32の孔周縁に当接するまで、一の放熱フィン3を移動させるだけで、所定間隔に維持された放熱フィン3の配列状態を得ることが可能となる。
【0021】
また、従来のように、突設方向に向かって縮径するテーパ状に形成される接合部33の場合、接合部33に伝熱管2を挿通させて所定位置に放熱フィン3を設置する際に、テーパ―状の接合部33の先端部が、伝熱管2表面を削ってしまい、該伝熱管2表面に傷をつけてしまうという問題があった。このような傷が発生すると、酸化等の腐食の進行がはやまることになってしまうが、本願のように、内周面がストレート面である接合部33の場合、接合部33に伝熱管2を挿通させて所定位置に放熱フィン3を設置する際に、伝熱管2の表面を削ってしまうことを効果的に抑制することができる。
【0022】
具体的に説明すると、従来の内周面が突設方向に向かって縮径するテーパ状に形成される接合部33の場合、伝熱管2の表面と接触する部分は、テーパ―状の接合部33の先端部であり、接合部33と伝熱管2表面との接触箇所は線状となる。このような場合、放熱フィン3を伝熱管2に貫通移動させる際に放熱フィン3が僅かに傾いた場合であっても、接合部33の先端部が、伝熱管2表面に食い込むような状態で、接合部33は伝熱管2表面上を摺動することになり、伝熱管2表面に傷を形成してしまうことになる。これに対し、ストレート面を内面に有する本発明に係る接合部33の場合、接合部33の内周面全域が伝熱管2の表面に当接しているため、放熱フィン3を伝熱管2に貫通させる際に放熱フィン3が傾いた場合であっても、接合部33の先端部が、伝熱管2表面に食い込むような状態にはならず、その結果、伝熱管2の表面に傷を形成してしまうことが効果的に抑制される。なお、ストレート面を内面に有する本発明に係る接合部33の場合、接合部33が伝熱管2表面上を摺動する際に、接合部33の内周面と伝熱管2とが広い面積で接触した状態で接合部33が摺動することになるため、伝熱管2の表面が磨かれることになる。これにより、伝熱管2の表面に形成されていた傷の一部や、汚れ等が除去されることになり、熱伝達効率の向上に寄与することになる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態に係る熱交換器1について説明したが、熱交換器1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、図7の要部平面図に示すように、フィン本体31が、スリット4を備えるように構成してもよい、このようなスリット4は、貫通孔32同士の間に形成することが好ましい。当該スリット4を設けることにより、放熱フィン3に供給される空気とフィン本体31との接触表面積が増大することになるため、より一層熱交換効率を向上させることが可能となる。また、伝熱管2からの熱を受けたフィン本体31が、いわゆる熱伸びによって変形してしまうことを効果的に抑制することもできる。
【0024】
また、図8の要部拡大断面図に示すように、放熱フィン3が備える接合部33の先端部に、突出片5を設けるように構成してもよい。この突出片5は、接合部33の先端部開口縁から径方向外方に突出するように形成されている。また、突出片5の突出方向は、短筒状の接合部33の外表面に対して垂直方向に突出するように構成されることが好ましい。また、突出片5としては、例えば、図8のA-A断面を示す図9(a)に示すように、接合部33の先端部開口縁に沿って配設されるリング状の形態を有するように構成してもよく、或いは、図9(b)に示すように、舌片状であってもよい。また、突出片5の突出方向に沿う幅W(突出寸法)は、隣接する他の放熱フィン3が有するフィン本体31の他方面側において貫通する貫通孔32の孔周縁角部における曲率半径寸法Rよりも大きくなるように構成されている。なお、図9(b)においては、舌片状に形成される突出片5を4つ設ける構成を示しているが、この数については、特に限定されない。
【0025】
このような突出片5を備えるように構成することにより、接合部33の一部分が、隣接配置される他の放熱フィン3が有する貫通孔32の内側に配置されることを効果的に防止することができる。また、突出片5を介しても、伝熱管2を流下する液体の熱を、放熱フィン3に供給される空気側に移動させることができるため、熱交換器1の熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0026】
次に、本発明の発明者らは、実際に本発明に係る熱交換器1、及び、従来の熱交換器を作製し、伝熱特性の評価を行ったので、以下説明する。
【0027】
まず、本発明に係る熱交換器1、及び、従来の熱交換器は、共に、外径17.3 mm、内径13.3mmのステンレススチール管(伝熱管)を64本備えるものであり、これらステンレススチール管を4本×16本に配列して構成されている。なお、ステンレススチール管同士の間隔(中心間距離)は、4.24cmとしている。また、放熱フィン3は、フィン本体31の大きさが7.6cm×30cmの矩形状を有しており、その厚みを0.2mmとし、各ステンレススチール管が貫通される貫通孔32、当該貫通孔32の周縁に突設される接合部33を備えるようにして構成した。なお、放熱フィン3の枚数は、800枚であり、各フィン本体31の積層間隔は3mmとしている。
【0028】
また、本発明に係る熱交換器1の放熱フィン3が有する接合部33は、その外形が17.45mmであり、内径が17.05mm、長さ(貫通孔32の境界から先端部までの長さ)が3mmとなるように構成されている。なお、接合部33の内周面は、ストレート面である。一方、従来の熱交換器の放熱フィン3が有する接合部33は、突設方向に向かって縮径するテーパ―状に形成されており、長さ(貫通孔32の境界から先端部までの長さ)が2.9mmとなるように構成されている。また、貫通孔32の境界における外径が、17.7mmであり、突設方向先端部における外径が17.0mmである。貫通孔32の境界における内径は、17.3mmであり、突設方向先端部における内径は、16.6mmである。
【0029】
上述のような各熱交換器1において、伝熱管2内に温度143.7℃(圧力3.06 kg/cm(G) )の飽和蒸気を流通させると共に、放熱フィン3の間に温度15℃の空気を通過させ、熱貫流率を計測することにより伝熱特性の評価を行った。ここで、放熱フィン3の間を通過させ得る空気の風速を、1m/s、2m/s、3m/s、4m/s、5m/s、6m/sと変化させ、各風速時における熱貫流率を測定した。なお、放熱フィン3の間を通過させる空気は、テラル株式会社製のファン(型番CMF-NO.3-TH-L-OB-D)により供給した。
【0030】
ここで、実際に伝熱特性評価試験に使用した本発明に係る熱交換器1、及び、従来の熱交換器の断面に関するX線画像をそれぞれ図10図11に示す。なお、図10図11共に、ステンレススチール管(伝熱管)の軸線に沿った断面に関するX線画像である。図10より、本発明に係る熱交換器1においては、フィン本体31に形成される貫通孔32の周縁から突設して形成される接合部の内周面の全域が、ステンレススチール管(伝熱管)の表面と密接していることがわかる。一方、図11より、従来の熱交換器においては、実質的にステンレススチール管(伝熱管)の表面と密着している接合部の部分は、接合部の突設方向の半分程度の領域であることがかわる。
【0031】
表1に、本発明に係る熱交換器1、及び、従来の熱交換器における各風速での熱貫流率を示すと共に、図12に、横軸を風速、縦軸を熱貫流率としたグラフを示す。ここで、表1中における向上率(熱貫流率の向上率)は、下式により算出している。
式:[(本発明に係る熱交換器1における熱貫流率)-(従来の熱交換器における熱貫流率)]/(従来の熱交換器における熱貫流率)×100(%)
【0032】
【表1】
【0033】
この伝熱特性評価結果から、本発明に係る熱交換器1は、従来の熱交換器に比べて、熱伝達率を、約15%程度向上できるものであることが分かる。
【0034】
このように、熱伝達率が向上することにより、例えば、従来の熱交換器と同等の熱交換能力を発揮させる場合には、従来の熱交換器よりもコンパクトな形態とすることが可能となり、また、コンパクト化できる結果、放熱フィン3に送り込まれる気体の圧力損失を低下させることができるため、気体を放熱フィン3に送り込むためのファンを小さくすることが可能となり、熱交換器1自体のコストを下げることが可能となる。
【0035】
また、従来の熱交換器と同等の大きさを有する熱交換器1の場合には、放熱フィン3に送り込まれる気体の温度差(熱交換器1に流入する気体温度と熱交換器1から流出する気体温度との差)を、従来の熱交換器よりも大きく設定することが可能となることから、従来の熱交換器と比べて熱交換性能を向上させることが可能となる。
【0036】
また、発明者らは、接合部33や貫通孔32が大きく歪むことなく伝熱管2に外嵌することができる接合部33の内径(或いは貫通孔32の内径)と伝熱管2の外径との関係を明らかにしたので、その内容について説明する。
【0037】
接合部33や貫通孔32が大きく歪むことなく伝熱管2に外嵌することができる接合部33の内径(或いは貫通孔32の内径)と伝熱管2の外径との関係を明らかにする上で、以下のようなモデルについて検討した。つまり、放熱フィン3に関しては、フィン本体31の厚みをt1とし、接合部33(貫通孔32)の内径をd1、接合部33(貫通孔32)における歪をε1とし、伝熱管2に関しては、伝熱管2の肉厚をt2とし、伝熱管2の外径をd2とし、伝熱管2における歪をε2とすると、接合部33(貫通孔32)を伝熱管2に挿入した後の当該接合部33分の径Dは、以下の式Aにて表すことができる。
式A:D=d1・(1+ε1)=d2・(1+ε2)
【0038】
また、“放熱フィン3側に作用する引張荷重”と“伝熱管2側に作用する圧縮荷重”とは釣り合っていると考えられることから、
“放熱フィン3側に作用する引張荷重”=“伝熱管2側に作用する圧縮荷重”であり、フィン本体31を形成する材料のヤング率をE1とし、伝熱管2を形成する材料のヤング率をE2とすると、以下の式Bが成り立つ。
式B:E1・ε1・t1・(代表長さL)+E2・ε2・t2・(代表長さL)=0
【0039】
式Aより、d2-d1=d1・ε1-d2・ε2が得られ、
式Bより、d2-d1=d1・ε1+d2・E1・ε1・t1/(E2・t2)=((d1・E2・t2+d2・E1・t1)/(E2・t2))・ε1が得られ、両式から、
ε1=E2・t2・(d2-d1)/(E2・d1・t2+E1・d2・t1)
が得られる(式C)。
【0040】
上記式Cに、フィン本体31の厚みt1、接合部33(貫通孔32)の内径d1、伝熱管2の肉厚t2、伝熱管2の外径d2としての各値を代入することにより、放熱フィン3に生じる歪ε1を算出した。なお、フィン本体31を形成する材料と伝熱管2を形成する材料は同じ材料を想定したため、ヤング率E1、E2は、同じ数値として歪ε1を算出している。
【0041】
上記式Cに代入したフィン本体31の厚みt1、接合部33(貫通孔32)の内径d1、伝熱管2の肉厚t2、伝熱管2の外径d2の組み合わせを表2に示す。なお、表2においては、算出された歪ε1、及び、伝熱管2の外径d2に対する接合部33(貫通孔32)の内径d1の比率(d1/d2)も併せて記載している。また、表2中の組み合わせBは、組み合わせAにおける放熱フィンt1及び伝熱管2の肉厚t2の値を変更したものであり、組み合わせCは、組み合わせAにおける放熱フィン3の肉厚t1の値を変更したものとなる。また、組み合わせDは、組み合わせAにおける放熱フィン3の内径d1の値、及び、伝熱管2の外径d2を変更したものとなり、組み合わせEは、組み合わせDにおける伝熱管2の外径d2を変更したものとなる。更に、組み合わせFは、組み合わせEにおける放熱フィン3の肉厚t1を変更したものとなる。
【0042】
【表2】
【0043】
上記表2から、歪みε1が、0.030よりも小さくなるときの伝熱管2の外径d2に対する接合部33(貫通孔32)の内径d1の比率(d1/d2)は、約0.970であることがわかる。このことから、伝熱管2の外径に対する伝熱管2に外嵌される前の接合部33の内径(貫通孔32の内径)の比率を0.970以上、より好ましくは、0.980以上とすることにより、接合部33や貫通孔32が大きく歪むことなく伝熱管2に外嵌することができると考えられる。
【符号の説明】
【0044】
1 熱交換器
2 伝熱管
3 放熱フィン
31 フィン本体
32 貫通孔
33 接合部
4 スリット
5 突出片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器に用いられる放熱フィンであって、
板状のフィン本体と、前記フィン本体に形成され前記熱交換器が備える伝熱管が貫通する貫通孔と、前記フィン本体の一方面側において前記貫通孔の周縁から前記フィン本体の一方面に対して垂直方向に突設して形成される短筒状の接合部とを備えており、
前記短筒状の接合部における内周面の全域は、前記接合部の軸線方向に沿って、その直径が変化せず、同一寸法を有するように構成され、前記伝熱管の外周面と摺動可能に嵌合するストレート面として形成されていることを特徴とする放熱フィン。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱フィンを複数備える熱交換器であって、
複数本の伝熱管と、所定間隔をあけて配置される複数枚の前記放熱フィンとを備えており、前記各放熱フィンは、前記接合部を介して前記伝熱管に貫通させて配置されている熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱管の外径に対する前記接合部の内径の比率(前記接合部の内径/前記伝熱管の外径)は、0.970以上であることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の上記目的は、熱交換器に用いられる放熱フィンであって、板状のフィン本体と、前記フィン本体に形成され前記熱交換器が備える伝熱管が貫通する貫通孔と、前記フィン本体の一方面側において前記貫通孔の周縁から前記フィン本体の一方面に対して垂直方向に突設して形成される短筒状の接合部とを備えており、前記短筒状の接合部における内周面の全域は、前記接合部の軸線方向に沿って、その直径が変化せず、同一寸法を有するように構成され、前記伝熱管の外周面と摺動可能に嵌合するストレート面として形成されていることを特徴とする放熱フィンにより達成される。