(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028037
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】放熱性及び生産性を向上させた電動機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 9/22 20060101AFI20220203BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H02K9/22 Z
H02K5/20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207570
(22)【出願日】2021-12-21
(62)【分割の表示】P 2019011619の分割
【原出願日】2019-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 玲央
(57)【要約】
【課題】簡易な手法で電動機の放熱性及び生産性を向上させる。
【解決手段】電動機は、環状溝46aを内面に有するハウジング46と、ステータコア15に巻回されてステータコア15から軸方向へ突出するコイルエンド14aを環状溝46a内に配置された巻線14と、環状溝46aに充填されてコイルエンド14a及びハウジング46の双方に接触する熱伝導樹脂22と、を備え、ハウジング46は環状溝46aからハウジング46の外面46bへ連通していて熱伝導樹脂22を電動機の外部から環状溝46aへ充填するための樹脂充填路46cを備え、樹脂充填路46cがハウジング46の径方向に対して傾斜した方向に延在する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状溝を内面に有するハウジングと、
ステータコアに巻回されて前記ステータコアから軸方向へ突出するコイルエンドを前記環状溝内に配置された巻線と、
前記環状溝に充填されて前記コイルエンド及び前記ハウジングの双方に接触する熱伝導樹脂と、
を備え、
前記ハウジングは前記環状溝から前記ハウジングの外面へ連通していて前記熱伝導樹脂を前記電動機の外部から前記環状溝へ充填するための樹脂充填路を備え、
前記樹脂充填路が前記ハウジングの径方向に対して傾斜した方向に延在することを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記巻線と前記ステータコアとの間の隙間を埋める含浸樹脂をさらに備える、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記含浸樹脂が前記熱伝導樹脂と接触する、請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記含浸樹脂は前記熱伝導樹脂と同一成分を有する、請求項2又は3に記載の電動機。
【請求項5】
前記熱伝導樹脂は相互連鎖した絶縁性熱伝導ファイバを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項6】
前記ハウジングは前記電動機が取付けられる放熱部材に接触する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項7】
前記樹脂充填路は前記熱伝導樹脂及び前記ハウジングを冷却する冷却路として使用される、請求項1に記載の電動機。
【請求項8】
ハウジングの内面に環状溝を形成し、
前記環状溝から前記ハウジングの外面へ連通していて前記ハウジングの径方向に対して傾斜した方向に延在する樹脂充填路を形成し、
巻線をステータコアに巻回して前記ステータコアから軸方向へ突出するコイルエンドを形成し、
前記ステータコアを前記ハウジングに組付けて前記コイルエンドを前記環状溝内に配置すると共に、
前記樹脂充填路を介して熱伝導樹脂を前記電動機の外部から前記環状溝に充填することにより、前記熱伝導樹脂が前記コイルエンド及び前記ハウジングの双方に接触することを特徴とする電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及びその製造方法に関し、特に放熱性及び生産性を向上させた電動機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線の発熱による温度上昇は電動機の連続定格トルクの低下に直結する。従って、巻線の熱を如何に外部に放出するかは重要な課題である。巻線の放熱性等を向上させる技術としては、例えば巻線全体を樹脂で覆う樹脂モールド式や、巻線とステータコアとの間の隙間を埋める巻線含浸剤のみに頼ったもの等が知られている。
【0003】
図8はモールド樹脂51により放熱性を高めた電動機50の一例を示す模式図である。モールド樹脂51は、巻線52を巻装したステータコア53を専用金型(図示せず)に装填し、溶融樹脂を金型内に射出成形して作製される。電動機50の駆動時に発生する巻線52の熱がモールド樹脂51からステータコア53へ伝熱されて外部に放出される。
【0004】
図9は巻線の放熱をワニス等の巻線含浸剤61のみに依存した電動機60の一例を示す模式図である。巻線含浸剤61は本来、巻線62を固めるために使用されるが、巻線62とステータコア63との間の隙間も埋めるため、巻線62からステータコア63への伝熱性を高める。
【0005】
本願に関連する他の先行技術としては、後述の文献も公知である。特許文献1には、モールド樹脂を巻線と冷却用部材の円筒状部とに接触させることが開示されている。特にモールド樹脂は円筒状部の内周面に形成した溝に入り込み、巻線と冷却用部材との接触面積を高めている。
【0006】
特許文献2には、樹脂モールド体を巻線と上側軸受ハウジングとに接触させることが開示されている。
【0007】
特許文献3には、モールド樹脂をコイル端部とケースとに接触させることが開示されている。
【0008】
特許文献4には、樹脂部をコイルと端板部とに接触させたモールド型ステータが開示されている。
【0009】
特許文献5には、樹脂を固定子巻線とエンドカバーとに接触させることが開示されている。さらに、樹脂の中には400W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導シートが一体成形されている。
【0010】
特許文献6には、高熱伝導樹脂をコイルとフレームとの間にモールド成型し、絶縁特性をかくほしつつ放熱性を高めたモータが開示されている。
【0011】
特許文献7には、エンドモールドを形成する樹脂をコイルエンドとモータフレームとに接触させた回転機が開示されている。さらに、樹脂には高熱伝導率のフィラーが混入されている。
【0012】
特許文献8には、樹脂から成るモールドを界磁コイルとケースとに接触させた電動機が開示されている。また、モールドは冷媒流路にも接触している。
【0013】
特許文献9には、高熱伝導率を有する樹脂材のシートを巻線エンドとブラケットとの間に挟んだ電動機が開示されている。
【0014】
特許文献10には、熱伝導性樹脂を駆動コイルとホルダ又はハウジングとの間に充填し、放熱性を向上させることが開示されている。熱伝導性樹脂は、ステータとロータとの間の空隙に面していることから、モールド成型されていると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2018-82517号公報
【特許文献2】特開2018-26920号公報
【特許文献3】特開2016-46832号公報
【特許文献4】特開2014-7801号公報
【特許文献5】特開2011-205775号公報
【特許文献6】特開2011-139555号公報
【特許文献7】特開2007-143245号公報
【特許文献8】特開2008-167609号公報
【特許文献9】特開2002-369449号公報
【特許文献10】特開平5-328686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
樹脂モールド式では、樹脂を射出成形する種々の工程を必要とするため、製造期間が長期化する。また、専用金型、射出成型機等を必要とするため、製造コストが高くなるという問題もある。他方、巻線含浸剤のみに頼ったものは、放熱性が十分でないため定格トルク低下の要因となる。
【0017】
そこで、簡易な手法で電動機の放熱性及び生産性を向上させる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示の一態様は、環状溝を内面に有するハウジングと、ステータコアに巻回されてステータコアから軸方向へ突出するコイルエンドを環状溝内に配置された巻線と、環状溝に充填されてコイルエンド及びハウジングの双方に接触する熱伝導樹脂と、を備え、ハウジングは環状溝からハウジングの外面へ連通していて熱伝導樹脂を電動機の外部から環状溝へ充填するための樹脂充填路を備え、樹脂充填路がハウジングの径方向に対して傾斜した方向に延在する、電動機を提供する。
本開示の他の態様は、ハウジングの内面に環状溝を形成し、環状溝からハウジングの外面へ連通していてハウジングの径方向に対して傾斜した方向に延在する樹脂充填路を形成し、巻線をステータコアに巻回してステータコアから軸方向へ突出するコイルエンドを形成し、ステータコアをハウジングに組付けてコイルエンドを環状溝内に配置すると共に、樹脂充填路を介して熱伝導樹脂を環状溝に充填することにより、熱伝導樹脂がコイルエンド及びハウジングの双方に接触する、電動機の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様によれば、熱伝導樹脂を前方ハウジングの環状溝に充填するという簡易な手法により電動機の放熱性だけでなく生産性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】一実施形態における熱伝導樹脂の拡大断面図である。
【
図3】一実施形態における電動機の製造方法を示す分解図である。
【
図4】他の実施形態における電動機の製造方法を示す分解図である。
【
図5】別の実施形態における電動機の断面図である。
【
図6】別の実施形態における前方ハウジングの内面図である。
【
図7】さらに別の実施形態における前方ハウジングの内面図である。
【
図9】他の従来技術における電動機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。本明細書において、用語「前方」とは電動機の負荷側、出力側を意味し、用語「後方」とは電動機の反負荷側、反出力側を意味することに留意されたい。
【0022】
図1は、本実施形態における電動機10の断面図である。本例の電動機10は、例えばサーボモータであるが、ステータに巻線を備える電動機であれば、他の電動機でも実施できることに留意されたい。電動機10は、ステータ11と、ステータ11の径方向のY内側に配置されたロータ12と、ロータ12の位置、速度等を検出する検出器13と、を備えている。
【0023】
ステータ11は、巻線14を巻回したステータコア15と、ステータコア15に組付けられた前方ハウジング16及び後方ハウジング17と、を備えている。他方、ロータ12は、かご型ロータ、巻線型ロータ、永久磁石型ロータ等で構成することができる。ロータ12は、図示しない軸受に軸支された出力軸18と、出力軸18に組付けられたロータコア19と、出力軸18の後方に組付けられた検出用円板13aと、を備えている。検出器13は、例えばエンコーダ、レゾルバ、ホール素子、タコジェネレータ等の検出器で構成することができる。検出器13は、検出用円板13aに基づきロータ12の位置、速度等を検出する。
【0024】
前方ハウジング16は、熱伝導率及び透磁率の高い珪素鉄、ステンレス鋼、他の合金等で形成される。前方ハウジング16は負荷側に配置され、内面に環状溝16aを有している。巻線14は、ステータコア15から前方及び後方へ突出するコイルエンド14a、14bを有している。前方へ突出するコイルエンド14aは、前方ハウジング16の環状溝16a内に配置されている。環状溝16aには、熱伝導樹脂22が充填されている。熱伝導樹脂22は、コイルエンド14a及び前方ハウジング16の双方に接触している。これにより、電動機10の駆動時に発生したコイルエンド14aの熱が前方ハウジング16へ伝熱され、前方ハウジング16から外部へ放出されるため、電動機10の放熱性が向上する。
【0025】
また、熱伝導樹脂22は、手作業又は機械によって環状溝16aにのみ(環状溝16aからはみ出さないように)充填すればよいため、射出成形の種々の工程を必要とせず、高価な専用金型、射出成型機等の製造設備も不要である。従って、製造期間を短縮でき、製造コストを低減できる。ひいては、電動機10の生産性が向上する。なお、後方ハウジング17に環状溝を設け、この環状溝に熱伝導樹脂22を充填してもよい。これにより、後方へ突出するコイルエンド14bの熱が後方ハウジング17に伝熱され、後方ハウジング17から外部へ放出されるため、斯かるタイプの電動機では、さらに放熱性が向上する。
【0026】
また、電動機10は巻線14に塗布したワニス等の含浸樹脂23を備えていてもよい。含浸樹脂23は、巻線同士の隙間を埋めて巻線14を固定するだけでなく、巻線14とステータコア15との間の隙間も埋めるため、巻線14で発生した熱がステータコア15へ、さらに前方ハウジング16へ伝熱され、外部に放出され易くなる。含浸樹脂23によれば、既存の製造設備、既存の製造資材等を利用できるため、より製造コストを低減できる。また、含浸樹脂23は熱伝導樹脂22と接触することが好ましい。これにより、巻線14の熱が含浸樹脂23から熱伝導樹脂22へ、熱伝導樹脂22から前方ハウジング16へ、さらに前方ハウジング16から外部へ放出されるため、より放熱性が向上する。加えて、含浸樹脂23は熱伝導樹脂22と同一成分を有すると好適である。これにより、熱伝導樹脂22と含浸樹脂23との接触界面における接触熱抵抗が低減し、より伝熱性が高まる。
【0027】
図2は、本実施形態における熱伝導樹脂22の拡大断面図である。本例の熱伝導樹脂22は、マトリックス樹脂24の中に相互連鎖した絶縁性熱伝導ファイバ25を含んでいる。マトリックス樹脂24としては、耐熱性樹脂、例えばポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、又は、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。絶縁性熱伝導ファイバ25としては、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、アルミナ、無水炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛等を利用できる。
【0028】
絶縁性熱伝導ファイバ25は、棒片状、薄片状、鱗片状等に成形され、マトリックス樹脂24に多量に添加することにより、マトリックス樹脂24内で相互連鎖し且つ軸方向Xへ配向された状態で作製できる。これにより、コイルエンド14aで発生した熱が相互連鎖した絶縁性熱伝導ファイバ網を伝熱方向Hへ伝熱し、前方ハウジング16へ伝熱され易くなる。熱伝導樹脂22は、手作業又は機械によって環状溝16aに充填するだけでよいため、樹脂を高圧入する射出成形を必要とせず、高い流動性を要求されない。従って、絶縁性熱伝導ファイバ25の粒径、重量比等を高め、相互連鎖した状態を形成し易い。なお、絶縁性熱伝導ファイバ25の代わりに、粒状、球状等に成形した絶縁性熱伝導フィラーをマトリックス樹脂24に添加してもよい。
【0029】
図3は、本実施形態における電動機10の製造方法を示す分解図である。第1工程では、負荷側に配置される前方ハウジング16の内面16bに環状溝16aを形成する。前方ハウジング16は、ダイカスト鋳造、機械加工等により成形される。第2工程では、ゲル状又は溶融した熱伝導樹脂22を充填方向F1で環状溝16aに充填する。第3工程では、巻線14をステータコア15に巻回してステータコア15から前方へ突出するコイルエンド14aを形成する。第4工程では、前方ハウジング16をステータコア15に組付けてコイルエンド14aを環状溝16a内に配置することにより、熱伝導樹脂22がコイルエンド14a及び前方ハウジング16の双方に接触する。続いて、熱伝導樹脂22が熱硬化性樹脂の場合には、前方ハウジング16を加熱して熱伝導樹脂22を固化させる。或いは、熱伝導樹脂22が熱可塑性樹脂の場合には、前方ハウジング16を冷却して熱伝導樹脂22を固化させる。前述した通り、射出成形の種々の工程や、高価な専用金型、射出成型機等が不要である。なお、ロータ12、後方ハウジング17、及び検出器13の組付けは、熱伝導樹脂22の固化前又は固化後に実施してもよい。
【0030】
図4は、他の実施形態における電動機10の製造方法を示す分解図である。本例では、前方ハウジング16をステータコア15に組付けた後に熱伝導樹脂22をステータコア15の後方から環状溝16aに充填する点で、前述の製造方法とは異なる。具体的には、第1工程では、負荷側に配置される前方ハウジング16の内面に環状溝16aを形成する。第2工程では、巻線14をステータコア15に巻回してコイルエンド14aを形成する。第3工程では、前方ハウジング16をステータコア15に組付けてコイルエンド14aを環状溝16a内に配置する。第4工程では、ゲル状又は溶融した熱伝導樹脂22をステータコア15の後方から充填方向F2で環状溝16aに充填することにより、熱伝導樹脂22がコイルエンド14a及び前方ハウジング16の双方に接触する。斯かる製造方法によれば、コイルエンド14a及び前方ハウジング16を環状溝16a内に位置決めした状態で、熱伝導樹脂22を環状溝16aに充填するため、熱伝導樹脂22がコイルエンド14a及び前方ハウジング16の双方に接触し易い。なお、更なる後続工程は、前述した製造方法と同一であるため、説明を省略する。
【0031】
図5は別の実施形態における電動機30の断面図であり、
図6は前方ハウジング36の内面図である。本例の電動機30は、環状溝36aから前方ハウジング36の外面36bへ連通する樹脂充填路36cを備えている点で、前述の電動機10とは異なる。樹脂充填路36cは、ダイカスト鋳造、機械加工等により形成され、前方ハウジング36の径方向Yに延在する。樹脂充填路36cは、熱伝導樹脂22の充填路であるため、環状溝36a全体に熱伝導樹脂22が行き渡るように3つ、4つ等、複数設けられることが好ましい。また、樹脂充填路36cは、充填後にも熱伝導樹脂22にアクセスできることから、熱伝導樹脂22及び前方ハウジング36を冷却する冷却路として使用されてもよい。冷却路には、冷却装置(図示せず)が接続される。冷却装置としては、冷却ファン、クーラー、ラジエータ等の空冷式、水冷式、油冷式等を利用できる。
【0032】
電動機30の製造方法は、樹脂充填路36cを介して熱伝導樹脂22を環状溝36aに充填する点で、前述の製造方法とは異なる。具体的には、第1工程では、負荷側に配置される前方ハウジング36の内面に環状溝36aを形成する。第2工程では、環状溝36aから前方ハウジング36の外面36bへ連通する樹脂充填路36cを形成する。第3工程では、巻線14をステータコア15に巻回してステータコア15から前方へ突出するコイルエンド14aを形成する。第4工程では、ステータコア15を前方ハウジング36に組付けてコイルエンド14aを環状溝36a内に配置する。第5工程では、ロータ12、後方ハウジング17、及び検出器13を組付ける。第6工程では、樹脂充填路36cを介して熱伝導樹脂22を充填方向F3で環状溝36aに充填することにより、熱伝導樹脂22がコイルエンド14a及び前方ハウジング36の双方に接触する。続いて、前述と同様に熱伝導樹脂22を固化させる。なお、第5工程は、熱伝導樹脂22の充填後に実施してもよい。
【0033】
図7はさらに別の実施形態における前方ハウジング46の内面図である。本例の樹脂充填路46cは、前方ハウジング46の径方向Yに対して傾斜した方向に延在している。これにより、環状溝46a全体に熱伝導樹脂22が行き渡り易い。また、前述した通り、樹脂充填路46cは、熱伝導樹脂22及び前方ハウジング36、46を冷却する冷却路として使用されてもよい。樹脂充填路46cは前方ハウジング46の径方向Yに対して傾斜しているため、冷媒が気体である場合には、環状溝46aを周方向に流れ易くなる。
【0034】
前述した種々の実施形態において、前方ハウジング16、36、46は、電動機が取付けられる放熱部材(図示せず)に接触すると好適である。放熱部材としては、金属製の構造部材、ヒートシンク等を挙げることができる。これにより、電動機10の放熱性がより向上する。
【0035】
以上の実施形態によれば、熱伝導樹脂22を前方ハウジング16、36、46の環状溝16a、36a、46aにのみ充填するという簡易な手法で電動機の放熱性だけでなく生産性を向上させることができる。
【0036】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0037】
10、30 電動機
11 ステータ
12 ロータ
13 検出器
13a 検出用円板
14 巻線
14a、14b コイルエンド
15 ステータコア
16、36、46 前方ハウジング
16a、36a、46a 環状溝
16b 内面
17 後方ハウジング
18 出力軸
22 熱伝導樹脂
23 含浸樹脂
24 マトリックス樹脂
25 絶縁性熱伝導ファイバ
36b、46b 外面
36c、46c 樹脂充填路