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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028048
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B62D55/253 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208000
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2020083688の分割
【原出願日】2020-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】519404045
【氏名又は名称】崔 鎔宰
(74)【代理人】
【識別番号】110001645
【氏名又は名称】特許業務法人谷藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 鎔宰
(57)【要約】
【課題】芯金の横ずれ、転輪の上下振動を防止すると共に、芯金間でのクローラ本体の屈曲性の向上を図る。
【解決手段】クローラ本体7内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設された芯金8を備え、芯金8のクローラ幅方向の両側に、クローラ回動方向の両側へと突出し且つ隣り合う芯金8相互のクローラ幅方向の横ずれを防止する横ずれ防止突起15,16を備え、クローラ回動方向の両側の各横ずれ防止突起15,16間で芯金8上に設けられた第1転輪転動部21を備え、各横ずれ防止突起15,16は、クローラ幅方向に隣り合う各横ずれ防止突起15,16間において、クローラ幅方向に近接する横ずれ防止部15a,16aと、この横ずれ防止部15a,16a上にクローラ幅方向に離間して設けられた第2転輪転動部15b,16bとを有する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として弾性材料により構成されたクローラ本体と、該クローラ本体内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設された芯金とを備え、
前記芯金のクローラ幅方向の両側に、クローラ回動方向の両側へと突出し且つ隣り合う前記芯金相互のクローラ幅方向の横ずれを防止する横ずれ防止突起を備えた弾性クローラにおいて、
クローラ回動方向の両側の前記各横ずれ防止突起間で前記芯金上に設けられた第1転輪転動部を備え、
前記各横ずれ防止突起は、前記クローラ幅方向に隣り合う前記各横ずれ防止突起間において、クローラ幅方向に近接する横ずれ防止部と、該横ずれ防止部上にクローラ幅方向に離間して設けられた第2転輪転動部とを有する
ことを特徴とする弾性クローラ。
【請求項2】
クローラ幅方向に隣り合う前記各横ずれ防止突起相互において、少なくとも一方の前記横ずれ防止突起は、前記横ずれ防止部と前記第2転輪転動部とを断面L字状に備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記各横ずれ防止突起は、少なくとも前記横ずれ防止部が前記クローラ本体内に埋設されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記クローラ本体は、クローラ幅方向に隣り合う前記横ずれ防止突起の前記第2転輪転動部間に形成されたクローラ回動方向の第1凹部と、前記第1凹部に連続して前記第1転輪転動部と前記第2転輪転動部との間に形成されたクローラ幅方向の第2凹部とを有する
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記各第2転輪転動部の上面は、前記第1転輪転動部の上面と略同一高さ、又は前記第1転輪転動部の上面に近い高さである
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記第2転輪転動部は、前記横ずれ防止部のクローラ回動方向の突出長さと略同一、又は前記横ずれ防止部のクローラ回動方向の突出長さよりも短い
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記芯金は、前記クローラ本体の係合孔間に位置する係合部と、該係合部の両側から前記クローラ本体の反接地面側に突出するガイド突起と、該ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側に設けられた翼部とを備えた
ことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設用機械等におけるクローラ装置に使用する弾性クローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クローラ装置に使用する弾性クローラは、ゴム等の弾性材料により構成されたクローラ本体と、クローラ本体内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設された芯金と、各芯金の外周側でクローラ本体内にクローラ回動方向に埋設された抗張体とを備えている。
【0003】
この種の弾性クローラでは、芯金のクローラ幅方向の両側に、クローラ回動方向の両側へと突出する横ずれ防止突起を設けて、旋回時や傾斜地での走行時に横方向の外力が加わった場合に、隣り合う二つの芯金の横ずれ防止突起同士がクローラ幅方向に係合して芯金相互の横ずれを防止する一方、その各横ずれ防止突起の上面を転輪転動部として、クローラ本体の回動時に転輪が各芯金の転輪転動部上を連続的に転動するようにしたものがある
(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-345581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の弾性クローラでは、旋回時や傾斜地での走行時の横ずれを防止でき、また転輪の転動時の上下振動を防止できる利点がある。しかし、隣り合う二つの芯金の横ずれ防止突起同士がクローラ幅方向に近接した状態にあるため、係合状態の横ずれ防止突起間に屈曲用溝を形成することができず、クローラ本体の芯金間での屈曲性が低下すると云う欠点がある。
【0006】
また横ずれ防止突起のクローラ幅方向の全幅が転輪転動部となっているため、横ずれ防止突起のクローラ厚さ方向の寸法が厚くなり、横ずれ防止突起を含む芯金全体の重量が重たくなると云う欠点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、芯金の横ずれ、転輪の上下振動を防止できると共に、芯金間でのクローラ本体の屈曲性の向上を図ることができる弾性クローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主として弾性材料により構成されたクローラ本体と、該クローラ本体内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設された芯金とを備え、前記芯金のクローラ幅方向の両側に、クローラ回動方向の両側へと突出し且つ隣り合う前記芯金相互のクローラ幅方向の横ずれを防止する横ずれ防止突起を備えた弾性クローラにおいて、クローラ回動方向の両側の前記各横ずれ防止突起間で前記芯金上に設けられた第1転輪転動部を備え、前記各横ずれ防止突起は、前記クローラ幅方向に隣り合う前記各横ずれ防止突起間において、クローラ幅方向に近接する横ずれ防止部と、該横ずれ防止部上にクローラ幅方向に離間して設けられた第2転輪転動部とを有するものである。
【0009】
クローラ幅方向に隣り合う前記各横ずれ防止突起相互において、少なくとも一方の前記横ずれ防止突起は、前記横ずれ防止部と前記第2転輪転動部とを断面L字状に備えたものでもよい。前記各横ずれ防止突起は、少なくとも前記横ずれ防止部が前記クローラ本体内に埋設されていてもよい。
【0010】
前記クローラ本体は、クローラ幅方向に隣り合う前記横ずれ防止突起の前記第2転輪転動部間に形成されたクローラ回動方向の第1凹部と、前記第1凹部に連続して前記第1転輪転動部と前記第2転輪転動部との間に形成されたクローラ幅方向の第2凹部とを有するものでもよい。前前記各第2転輪転動部の上面は、前記第1転輪転動部の上面と略同一高さ、又は前記第1転輪転動部の上面に近い高さであってもよい。
【0011】
前記第2転輪転動部は、前記横ずれ防止部のクローラ回動方向の突出長さと略同一、又は前記横ずれ防止部のクローラ回動方向の突出長さよりも短くしてもよい。前記芯金は、前記クローラ本体の係合孔間に位置する係合部と、該係合部の両側から前記クローラ本体の反接地面側に突出するガイド突起と、該ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側に設けられた翼部とを備えたものでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、芯金の横ずれ、転輪の上下振動を防止できると共に、芯金間でのクローラ本体の屈曲性の向上を図ることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態を示すクローラ装置の側面図である。
図2】弾性クローラの斜視図である。
図3】弾性クローラの平面図である。
図4】弾性クローラの正面断面図である。
図5】弾性クローラの側面断面図である。
図6】弾性クローラの底面図である。
図7】(a)は芯金の平面図、(b)は芯金の正面図である。
図8】芯金の斜視図である。
図9】要部の拡大断面図である。
図10】本発明の第2の実施形態を示す弾性クローラの正面断面図である。
図11】本発明の第3の実施形態を示す要部の拡大断面図である。
図12】本発明の第4の実施形態を示す要部の拡大断面図である。
図13】本発明の第5の実施形態を示す要部の拡大断面図である。
図14】本発明の第6の実施形態を示す要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳述する。図1図9は本発明の第1の実施形態を例示する。クローラ装置1は、図1に示すように、前後に配置されたスプロケット製の駆動輪2及び従動輪3と、これら駆動輪2及び従動輪3とに跨がって回動可能に巻き掛けられた弾性クローラ4とを備え、また弾性クローラ4は、駆動輪2と従動輪3との間に配置された複数個の転輪5により案内されている。
【0015】
弾性クローラ4は、図2図6に示すように、ゴム等の弾性材料により構成された無端帯状のクローラ本体7と、クローラ本体7内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設
されたクローラ幅方向(横方向)の芯金8と、各芯金8の接地面側でクローラ本体7内にクローラ回動方向に埋設されたスチールワイヤ等の抗張体9とを備えている。
【0016】
クローラ本体7には、クローラ幅方向の中央の各芯金8間に係合孔10が設けられると共に、接地面側のクローラ幅方向の両側に駆動ラグ11が設けられている。各駆動ラグ11は係合孔10に近い内側に広幅部11aを有し、係合孔10から遠い外側に狭幅部11bを有する形状であって、クローラ幅方向の両側に、各係合孔10にクローラ回動方向に交互に対応するように千鳥状に配置されている。
【0017】
芯金8は鋳造又は鍛造製であって、図7図8に示すように、係合孔10間に配置され且つ駆動輪2、従動輪3の外周の係合突部が係合する係合部12と、この係合部12のクローラ幅方向の両側から反接地面側へとクローラ厚さ方向に突出して駆動輪2、従動輪3を両側から案内するガイド突起13と、各ガイド突起13からクローラ幅方向の外側へと突出する偏平状の翼部14と、各翼部14からクローラ回動方向の両側へと突出する横ずれ防止突起15,16とを備えている。
【0018】
ガイド突起13は、基部17と、この基部17上の菱形頂部18とを一体に備えている。菱形頂部18は、クローラ回動方向に略直交方向に配置された内外両側の略平行な側壁18a,18bと、クローラ回動方向の両側で側壁18a,18bに対して斜め方向に傾斜状に配置された略平行な傾斜壁18c,18dとを有し、平面視略菱形状に形成されている。
【0019】
各芯金8の菱形頂部18は、基部17からクローラ回動方向の両側へと反対向きに突出する鋭角状の突部18e,18fを有する。この各菱形頂部18の頂面は略同一高さの平坦状であって、菱形頂部18上が、転輪5の転動用の第3転輪転動部19となっている。
【0020】
クローラ回動方向に隣り合う二つの芯金8において、各ガイド突起13の菱形頂部18は、クローラ回動方向に途切れなく連続する転輪転動路20を形成すべく突部18e,18f同士がクローラ回動方向に重なり量Aで重なっており、また駆動輪2等に巻き掛けたときにも、ガイド突起13の菱形頂部18同士がクローラ回動方向に干渉しないように所定の間隔Bが設けられている。
【0021】
横ずれ防止突起15,16間の翼部14上には、平面視矩形の台形状に盛り上がる第1転輪転動部21が設けられている。横ずれ防止突起15,16は第1転輪転動部21からクローラ回動方向の両側へと突出している。この横ずれ防止突起15,16は、一方の横ずれ防止突起15が第1転輪転動部21のガイド突起13と近い側に位置し、他方の横ずれ防止突起16が第1転輪転動部21のガイド突起13から遠い側に位置しており、クローラ回動方向に隣り合う芯金8の横ずれ防止突起15,16がクローラ幅方向に隣接して配置されている。
【0022】
各横ずれ防止突起15,16は、クローラ幅方向に横幅が大きい横ずれ防止部15a,16aと、この横ずれ防止部15a,16a上にクローラ幅方向の反対側に偏位して配置された第2転輪転動部15b,16bとを一体に備え、断面略L字状に構成されている。
【0023】
隣り合う芯金8相互間の横ずれ防止突起15,16を見た場合、図9に示すように、横ずれ防止部15a,16aはクローラ幅方向に小さい間隔Cで近接しており、第2転輪転動部15b,16bはクローラ幅方向に大きい間隔Dで離間して配置されている。
【0024】
横ずれ防止部15a,16aの突出長さは第2転輪転動部15b,16bよりも若干長く、その突出端側は所定の重なり量Eでクローラ回動方向に重なっている。各第2転輪転動部15b,16bの上面は、第1転輪転動部21の上面と略同一高さであって、その突出端側が重なり量Fでクローラ回動方向に重なっており、第1転輪転動部21の上面と共にクローラ回動方向に途切れなく連続する転輪転動路22を構成している。
【0025】
なお、第2転輪転動部15b,16bは横ずれ防止部15a,16aに比較して若干短くなっているが、横ずれ防止部15a,16aと略同一長さであってもよい。また各第2転輪転動部15b,16bの上面は、第1転輪転動部21の上面と略同一高さであることが望ましいが、転輪5の振動に影響しない範囲内で第1転輪転動部21の上面よりも若干高くするか若干低くする等、第1転輪転動部21の上面に近い高さであってもよい。
【0026】
横ずれ防止部15a、16a同士は小さい間隔Cでクローラ幅方向に近接して配置されており、その横ずれ防止部15a,16a間にはクローラ本体7の弾性材料が介在されている。
【0027】
また係合部12、ガイド突起13、第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16bは、クローラ本体7の弾性材料内に埋設される等、クローラ本体7の反接地面側には、芯金8の凹凸形状に沿って所定厚さの被覆層26が形成されている。なお、被覆層26は芯金8の凹凸形状に沿って薄く形成されているが、被覆層26を省略して芯金8の凹凸形状が露出するようにしてもよい。
【0028】
クローラ本体7には、クローラ本体7の屈曲を容易にするために、隣り合う芯金8間の反接地面側に内側凹部23、外側凹部24及び連結凹部25が形成されている。内側凹部23はクローラ本体7の係合孔10に近い内側に配置されており、係合孔10と横ずれ防止突起15との間にガイド突起13を避けて形成されている。外側凹部24はクローラ本体7の横ずれ防止突起16よりも外側にクローラ幅方向に形成されている。
【0029】
連結凹部25は内側凹部23と外側凹部24とを連結するもので、第1転輪転動部21と横ずれ防止突起15,16の第2転輪転動部15b,16bとの間に屈曲状に形成されている。この連結凹部25は、横ずれ防止突起15,16の第2転輪転動部15b,16b間にクローラ回動方向に形成された第1凹部25aと、この第1凹部25aの両側に連続して第1転輪転動部21と各第2転輪転動部15b,16bとの間にクローラ幅方向に形成された第2凹部25bとを有する。
【0030】
転輪5はクローラ幅方向の中央側に配置された小径輪部5aと、この各小径輪部5aの外側に配置された大径輪部5bとを一体に備え、その小径輪部5aがガイド突起13上の第3転輪転動部19上を、また大径輪部5bが第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16b上を夫々クローラ回動方向に転動するようになっている。
【0031】
このような構成の弾性クローラ4では、次のような利点がある。クローラ本体7は駆動輪2、従動輪3に巻き掛けた状態で転輪5に案内されながら、駆動輪2の駆動により前進、後進方向に回動する。
【0032】
このクローラ本体7の回動時に、転輪5は、その小径輪部5aが第3転輪転動部19による転輪転動路20上をクローラ回動方向に転動し、大径輪部5bが第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16bによる転輪転動路22上をクローラ回動方向に転動するため、クローラ幅方向の4箇所で転輪5によりクローラ本体7を案内することができる。しかも4箇所の転輪転動路20,22は、隣り合う芯金8相互間で途切れることなく略同じ高さでクローラ回動方向に連続しているので、転輪5の転動時の上下振動を少なくすることができる。
【0033】
即ち、各芯金8のガイド突起13は同一高さであり、ガイド突起13上の第3転輪転動部19は、隣り合う芯金8相互で第3転輪転動部19の両端側が側面視において重なり量Aでクローラ回動方向に重なっているので、小径輪部5aは第3転輪転動部19によりクローラ幅方向の内側に形成された2条の輪転動路20上を上下に振動することなく安定的に転動することができる。
【0034】
また芯金8の第1転輪転動部21と第2転輪転動部15b,16bは略同一高さであり、しかも各芯金8の第2転輪転動部15b,16bは側面視において重なり量Fでクローラ回動方向に重なっているので、大径輪部5bは各芯金8の第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16bによりローラ幅方向の外側に形成された2条の転輪転動路22上を上下に振動することなく安定的に転動することができる。
【0035】
各芯金8にはクローラ回動方向の両側に突出する横ずれ防止突起15,16があり、その横ずれ防止突起15,16の横ずれ防止部15a,16aが弾性材料を介して小さい間隔Cでクローラ幅方向に近接した状態にあるので、芯金8に横方向の外力が加わった場合にも、横ずれ防止突起15,16の横ずれ防止部15a,16aが係合して隣り合う芯金8の横ずれを防止することができる。
【0036】
また横ずれ防止部15a,16aは、第2転輪転動部15b,16bよりも長いので、クローラ本体7の屈曲等で隣り合う二つの芯金8の相対角度が変化した場合でも、横ずれ防止部15a,16aの係合量を十分に確保することができ、横ずれ防止部15a,16a間の面圧を低く抑えることができる。
【0037】
クローラ本体7の反接地面側には、芯金8間にクローラ幅方向に連続する凹部23~25があるため、芯金8間でのクローラ本体7の屈曲性を容易に確保することができる。例えば、隣り合う二つの芯金8間に内側凹部23と外側凹部24とがあるだけでなく、一方の芯金8の第1転輪転動部21と他方の芯金8の横ずれ防止突起15,16との間に、その内側凹部23と外側凹部24とを連結する連結凹部25があるので、第1転輪転動部21と横ずれ防止突起15,16との間でのクローラ本体7の屈曲性の向上を図ることができる。
【0038】
また各横ずれ防止突起15,16の横ずれ防止部15a,16aがクローラ幅方向に近接した状態にあるが、第1転輪転動部21と第2転輪転動部15b,16bとの間に第2凹部25bがある他、横ずれ防止部15a,16a上の第2転輪転動部15b,16bが横ずれ防止部15a,16aに対してクローラ幅方向に偏位しており、その第2転輪転動部15b,16b間にクローラ幅方向の間隔があり、その部分に第1凹部25aがあるので、これらの部分でもクローラ本体7を容易に屈曲させることができる。
【0039】
従って、第2転輪転動部15b,16bが側面視において重なり量Fでクローラ回動方向に重なる構造を採用して転輪5の上下振動を防止しているにも拘わらず、芯金8間でのクローラ本体7の屈曲性を向上させることができる。
【0040】
また横ずれ防止突起15,16は、下側の横ずれ防止部15a,16aに対して上側の第2転輪転動部15b,16bがクローラ幅方向に偏心する断面L字状になっているので、第2転輪転動部15b,16b間に第1凹部25aを容易に配置できると共に、横ずれ防止突起15,16を含む芯金8全体の重量を軽減することができる。また横ずれ防止突起15,16に横ずれ防止部15a,16aと第2転輪転動部15b,16bとがあるため、相互に補強し合う効果がある。
【0041】
図10は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態では、転輪5は小径胴部5cの両端に大径輪部5bを備え、その大径輪部5bが第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16b上を転動するように構成されている。弾性クローラ4側のクローラ本体7、芯金8等の構成は第1の実施形態と同様である。
【0042】
このように転輪5は、両端の大径輪部5bが第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16bにより形成された2条の転輪転動路22上を転動するように構成することも可能である。この場合には、転輪5の両端の大径輪部5bがクローラ本体7のクローラ幅方向の外側の2条の転輪転動路22上を転動するため、クローラ幅方向の外側の2箇所で転輪5によりクローラ本体7の浮き上がりを阻止すことができる。
【0043】
また両端に大径輪部5bを有する転輪5を使用するだけであって、クローラ本体7、芯金8等を含む弾性クローラ4の構成は第1の実施形態と同様であるため、転輪5の上下の振動を抑制しながらクローラ本体7の屈曲性を確保できる等、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
更に第1の実施形態は、小径輪部5aと大径輪部5bとを有する転輪5を使用するのに対して、第2の実施形態は、大径輪部5bを有する転輪5を使用する点で相違するのみであるため、弾性クローラ4は各実施形態の何れにも共通に使用することができる。その結果、弾性クローラ4の汎用性が向上することになり、製作コストを削減できる利点がある。
【0045】
なお、第2の実施形態の弾性クローラ4は、第1の実施形態と同様に構成しているが、ガイド突起13の頂面を平坦状に構成する必要はなく、その形状を任意に構成することが可能である。
【0046】
図11は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態では、横ずれ防止突起15,16の第2転輪転動部15b,16bがクローラ本体7の反接地面側から露出するように構成されている。このように第2転輪転動部15b,16bが露出する場合でも、転輪5の上下振動を防止し、クローラ本体7の屈曲性を確保することができる。
【0047】
図12は本発明の第4の実施形態を例示する。この実施形態では、クローラ幅方向に隣り合う二つの横ずれ防止突起15,16の内、一方の横ずれ防止突起15が断面矩形状に構成され、他方の横ずれ防止突起16が断面L字状に構成されている。このような場合にも、横ずれ防止部15a,16aの上側の第2転輪転動部15b,16bをクローラ幅方向に離間させることができる。
【0048】
図13は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態では、横ずれ防止突起15,16の横ずれ防止部15a,16a上の第2転輪転動部15b,16bの対向側を傾斜状にする等によって切り欠き部15c,16cを設けて、第2転輪転動部15b,16bをクローラ幅方向に離間させている。このように横ずれ防止突起15,16に切り欠き部15c,16cを設けることも可能である。従って、このように横ずれ防止突起15,16の形状は種々の変更が可能であり、断面L字状に限定されるものではない。
【0049】
図14は本発明の第6の実施形態を例示する。この実施形態では、クローラ本体7の接地面側の駆動ラグ11は、クローラ回動方向に隣り合う二つの芯金8に跨がって1個の駆動ラグ11が配置されている。そして、各駆動ラグ11は左右対称に配置されている。このように駆動ラグ11を配置してもよい。従って、駆動ラグ11の配置等は任意に変更可能である。
【0050】
以上、本発明の各実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、実施形態では、クローラ本体7の外周の接地面側に左右二列のラグ列を構成する駆動ラグ11を設けているが、その駆動ラグ11の形状、構造、配置は任意に変更可能である。
【0051】
クローラ幅方向の両側に転輪転動部15b,16b、21を設ける場合、その両側に転輪転動部15b,16b、21を転動する転輪5は、クローラ幅方向に別々に構成してもよい。各横ずれ防止突起15,16は、横ずれ防止部15a,16a間の間隔よりも第2転輪転動部15b,16b間の間隔が大になる構造であればよい。
【0052】
クローラ本体7には、クローラ幅方向に隣り合う横ずれ防止突起15,16の第2転輪転動部15b,16b間にクローラ回動方向に形成された第1凹部25aを設け、第1転輪転動部21と第2転輪転動部15b,16bの先端側との間にクローラ幅方向に形成された第2凹部25bを設けることが望ましいが、この第1凹部25a、第2凹部25bは省略してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 クローラ装置
4 弾性クローラ
7 クローラ本体
8 芯金
10 係合孔
12 係合部
13 ガイド突起
15,16 横ずれ防止突起
15a,16a 横ずれ防止部
15b,16b 第2転輪転動部
17 基部
18 菱形頂部
19 第3転輪転動部
20,22 転輪転動路
21 第1転輪転動部
23 内側凹部
24 外側凹部
25 連結凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
主として弾性材料により構成されたクローラ本体と、該クローラ本体内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設された芯金とを備え、
前記各芯金は、係合部と、該係合部に対してクローラ幅方向の両側に配置されたガイド突起と、各ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側でクローラ回動方向の一方側へと突出する一方側横ずれ防止突起と、各ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側でクローラ回動方向の他方側へと突出し且つ隣り合う前記芯金側の前記一方側横ずれ防止突起との間で隣り合う前記芯金のクローラ幅方向への横ずれを防止する他方側横ずれ防止突起とを備え、
前記各ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側に転輪転動部を備えた弾性クローラにおいて、
前記転輪転動部は、前記一方側横ずれ防止突起及び前記他方側横ずれ防止突起間で前記芯金上に設けられた中間転輪転動部と、前記一方側横ずれ防止突起上に設けられた一方側転輪転動部と、前記他方側横ずれ防止突起上に設けられた他方側転輪転動部とを備え、
前記両一方側横ずれ防止突起、前記両他方側横ずれ防止突起、前記両中間転輪転動部、前記両一方側転輪転動部及び前記両他方側横ずれ防止突起は、夫々クローラ幅方向に略対称に配置されており、
前記一方側横ずれ防止突起及び前記一方側転輪転動部は、前記他方側横ずれ防止突起及び前記他方側転輪転動部よりもクローラ幅方向の内側に配置されている
ことを特徴とする弾性クローラ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、芯金の横ずれ、転輪の上下振動を防止できる弾性クローラを提供することを目的とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、主として弾性材料により構成されたクローラ本体と、該クローラ本体内にクローラ回動方向に略等間隔をおいて埋設された芯金とを備え、前記各芯金は、係合部と、該係合部に対してクローラ幅方向の両側に配置されたガイド突起と、各ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側でクローラ回動方向の一方側へと突出する一方側横ずれ防止突起と、各ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側でクローラ回動方向の他方側へと突出し且つ隣り合う前記芯金側の前記一方側横ずれ防止突起との間で隣り合う前記芯金のクローラ幅方向への横ずれを防止する他方側横ずれ防止突起とを備え、前記各ガイド突起に対してクローラ幅方向の外側に転輪転動部を備えた弾性クローラにおいて、前記転輪転動部は、前記一方側横ずれ防止突起及び前記他方側横ずれ防止突起間で前記芯金上に設けられた中間転輪転動部と、前記一方側横ずれ防止突起上に設けられた一方側転輪転動部と、前記他方側横ずれ防止突起上に設けられた他方側転輪転動部とを備え、前記両一方側横ずれ防止突起、前記両他方側横ずれ防止突起、前記両中間転輪転動部、前記両一方側転輪転動部及び前記両他方側横ずれ防止突起は、夫々クローラ幅方向に略対称に配置されており、前記一方側横ずれ防止突起及び前記一方側転輪転動部は、前記他方側横ずれ防止突起及び前記他方側転輪転動部よりもクローラ幅方向の内側に配置されたものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明では、芯金の横ずれ、転輪の上下振動を防止できる利点がある。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
横ずれ防止突起15,16間の翼部14上には、平面視矩形の台形状に盛り上がる第1転輪転動部21が設けられている。横ずれ防止突起15,16はその中間の第1転輪転動部21からクローラ回動方向の両側へと突出している。この横ずれ防止突起15,16は、一方側の横ずれ防止突起15が第1転輪転動部21のガイド突起13と近い側に位置し、他方の横ずれ防止突起16が第1転輪転動部21のガイド突起13から遠い側に位置しており、クローラ回動方向に隣り合う芯金8の横ずれ防止突起15,16がクローラ幅方向に隣接して配置されている。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
また芯金8の第1転輪転動部21と第2転輪転動部15b,16bは略同一高さであり、しかも各芯金8の第2転輪転動部15b,16bは側面視において重なり量Fでクローラ回動方向に重なっているので、大径輪部5bは各芯金8の第1転輪転動部21、第2転輪転動部15b,16bによりローラ幅方向の外側に形成された2条の転輪転動路22上を上下に振動することなく安定的に転動することができる。