(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028118
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】クランプ装置および看板式標識装置
(51)【国際特許分類】
F16B 2/20 20060101AFI20220208BHJP
E01F 9/677 20160101ALI20220208BHJP
E01F 9/604 20160101ALI20220208BHJP
【FI】
F16B2/20 Z
F16B2/20 B
E01F9/677
E01F9/604
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131324
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】村田 悠
【テーマコード(参考)】
2D064
3J022
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA21
2D064BA03
2D064DB14
2D064EA01
3J022DA11
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC23
3J022ED23
3J022FB12
3J022FB17
3J022HA02
3J022HA04
3J022HB02
(57)【要約】
【課題】高所作業が不要であり危険を伴うことなく短時間に構造物の鋼材に標識等の取付けを行うことができるクランプ装置および看板式標識装置を提供する。
【解決手段】バネ(13A,13B)によって内側へ向かって付勢された一対の爪部(12A,12B)と、前記一対の爪部を開いた状態で移動を阻止可能な一対のストッパレバー(16A,16B)と、前記一対の爪部および前記一対のストッパレバーを保持する本体部(11A,11B)とを備え、構造物を構成する鋼材を前記一対の爪部で把持することで鋼材に取り付け可能なクランプ装置において、前記一対のストッパレバーは、ロック状態でその一部が前記本体部の内側へ露出するように配設され、この露出部分に鋼材が接触することでロック状態が解除され、前記一対の爪部がバネの復元力で内側へ移動し、鋼材を把持するように連結されているように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネによって内側へ向かって付勢された一対の爪部と、前記一対の爪部を開いた状態で移動を阻止可能な一対のストッパレバーと、前記一対の爪部および前記一対のストッパレバーを保持する本体部とを備え、構造物を構成する鋼材を前記一対の爪部で把持することで前記鋼材に取り付け可能なクランプ装置であって、
前記一対のストッパレバーは、ロック状態でその一部が前記本体部の内側へ露出するように配設され、この露出部分に鋼材が接触することでロック状態が解除され、前記一対の爪部が前記バネの復元力で内側へ移動し、前記鋼材を把持するように連結されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記本体部は所定の間隔を保持して結合された一対のL字形のプレートを備え、
前記一対のストッパレバーは前記露出部分が前記L字形のプレートの内側角部に位置するように配設され、
前記爪部または前記本体部には、標識プレートの結合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプ装置と、前記クランプ装置と連結可能な保持金具とからなる看板式標識装置であって、
前記L字形のプレートには連結用の被係合部が設けられ、
前記保持金具は、
操作ロッドの端部に嵌合可能な嵌合部と、
前記L字形のプレートの前記被係合部に係合可能な係合部と、前記係合部を係合状態と非係合状態とに変換させる操作レバーを備えた連結機構と、
前記ストッパレバーのロック解除動作に伴い前記係合部と前記被係合部との係合状態を解除する係合解除機構と、を備え、
前記爪部または前記本体部に、前記標識プレートが結合されていることを特徴とする看板式標識装置。
【請求項4】
前記係合部はピンであり、前記被係合部は前記ピンが係合可能な穴として形成され、
前記連結機構は、前記ピンを前記被係合部の穴から遠ざける方向へ付勢するバネと、前記操作レバーの移動によって前記ピンを係合方向へ移動させる作動プレートと、前記ピンの係合状態を維持する係止手段と、を備え、前記係合解除機構の作動によって前記ピンの係合状態が解除されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の看板式標識装置。
【請求項5】
前記保持金具は、前記連結機構と前記係合解除機構を保持する保持手段と、
前記嵌合部と前記保持手段とを連結する連結手段と、を備え、
前記保持手段は前記嵌合部に対して水平な軸の周りに回転可能であり、前記連結手段は、前記保持手段を前記嵌合部に対して任意の角度で固定することができるように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の看板式標識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置およびそれを利用した着脱可能な看板式標識装置に関し、例えば鉄道軌道設備の電車線支持構造物のようなフレーム構造物に設置するのに使用して好適なクランプ装置および看板式標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道においては、電車線支持構造物のビームにカラス等の鳥類が巣を作る営巣行動が報告されている。鳥類による営巣は、ツタやカズラなどの植物の枝の他、金属製ハンガーや針金等の金属物を材料としてビーム内に持ち込んで行われることがある。ビームに吊架されている架線は絶縁被膜のない裸線であるため、巣の材料に金属線が使用されていると、それらが垂れ下がって地絡事故を起こし、輸送障害が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、ビーム内に鳥類が巣を作る営巣を、列車の乗務員や輸送指令や電力係員が発見したような場合には、電力指令に対して報告が行われるが、既に報告があがっていて把握しているにもかかわらず新たに報告があることで重複した確認作業が発生するため、業務負担が増加するという課題があった。そのため、営巣を発見した場合に、該当箇所に何らかの標識を付けて明示したり、注意喚起したりできることが望まれている。
従来、着脱可能な看板式標識装置に関する発明としては、例えば特許文献1に開示されているような、鉄塔や鉄構に取り付けられる注意喚起用の標示装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の標示装置は、鉄塔や鉄構を構成するL字鋼に固定できるように構成されているものの、円板状に展開可能な標示部材を先端に有する第一の回動片に設けられている凹所(スリット)にL字鋼を挿入した後、第二の回動片を回動させて第一の回動片とでL字鋼を保持し、固定具を係止突起に係止して固定する必要がある。
そのため、標示装置を取り付けたい位置が高所である場合には、梯子等を使用した高所作業が必要であるので、危険を伴うとともに、取り付け作業に要する時間が長くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目したなされたもので、その目的とするところは、標識を高所に取り付けたい場合にも高所作業が不要であり、危険を伴うことなく短時間にフレーム構造物に取付けを行うことができるクランプ装置および看板式標識装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、操作に不慣れな初心者であっても簡単に電車線支持構造物のようなフレーム構造物を構成する鋼材に容易に装着することができるクランプ装置および看板式標識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明は、
バネによって内側へ向かって付勢された一対の爪部と、前記一対の爪部を開いた状態で移動を阻止可能な一対のストッパレバーと、前記一対の爪部および前記一対のストッパレバーを保持する本体部とを備え、構造物を構成する鋼材を前記一対の爪部で把持することで前記鋼材に取り付け可能なクランプ装置において、
前記一対のストッパレバーは、ロック状態でその一部が前記本体部の内側へ露出するように配設され、この露出部分に鋼材が接触することでロック状態が解除され、前記一対の爪部が前記バネの復元力で内側へ移動し、前記鋼材を把持するように連結されているように構成したものである。
【0008】
上記構成のクランプ装置によれば、一対の爪部を開いた状態で鋼材に近づけて、ストッパレバーの露出部分に鋼材を接触させるだけでロック状態が解除され、一対の爪部がバネの復元力で内側へ移動して鋼材を把持するため、操作に不慣れな初心者であっても簡単に構造物を構成する鋼材に容易に装置を装着することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記本体部は所定の間隔を保持して結合された一対のL字形のプレートを備え、
前記一対のストッパレバーは前記露出部分が前記L字形のプレートの内側角部に位置するように配設され、前記爪部または前記本体部には、標識プレートの結合部が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、爪部または本体部に標識プレートを結合させることができるため、例えば鳥類の営巣などの伝達情報を表示する標識プレートをクランプ装置によって電車線支持構造物を構成する鋼材に装着することができる。
【0010】
また、本出願の他の発明は、上記のような構成を有するクランプ装置と、前記クランプ装置と連結可能な保持金具とからなる看板式標識装置において、
前記L字形のプレートには連結用の被係合部が設けられ、
前記保持金具は、
操作ロッドの端部に嵌合可能な嵌合部と、
前記L字形のプレートの前記被係合部に係合可能な係合部と、前記係合部を係合状態と非係合状態とに変換させる操作レバーを備えた連結機構と、
前記ストッパレバーのロック解除動作に伴い前記係合部と前記被係合部との係合状態を解除する係合解除機構と、を備え、
前記爪部または前記本体部に、前記標識プレートが結合されているように構成したものである。
【0011】
上記構成の看板式標識装置によれば、手動によるロックや係合状態を解除する操作が不要であるため、高所作業をせずに、電車線支持構造物のビームのような高所にある鋼材に伝達情報を表示する標識プレートを簡単に取り付けることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記係合部はピンであり、前記被係合部は前記ピンが係合可能な穴として形成され、
前記連結機構は、前記ピンを前記被係合部の穴から遠ざける方向へ付勢するバネと、前記操作レバーの移動によって前記ピンを係合方向へ移動させる作動プレートと、前記ピンの係合状態を維持する係止手段と、を備え、前記係合解除機構の作動によって前記ピンの係合状態が解除されるようにする。
かかる構成によれば、比較的簡単な機成で、連結機構を構成するピンと穴の係合状態を解除する機構を実現することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記保持金具は、前記連結機構と前記係合解除機構を保持する保持手段と、
前記嵌合部と前記保持手段とを連結する連結手段と、を備え、
前記保持手段は前記嵌合部に対して水平な軸の周りに回転可能であり、前記連結手段は、前記保持手段を前記嵌合部に対して任意の角度で固定することができるように構成する。
かかる構成によれば、クランプ装置を様々な姿勢で取り付けることができるため、取付け対象の鋼材が斜め方向や垂直方向であっても取り付けることができ、取付け箇所を選ばないので、作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクランプ装置および看板式標識装置によれば、標識を高所に取り付けたい場合にも高所作業が不要であり、危険を伴うことなく短時間にフレーム構造物に取付けを行うことができる。また、操作に不慣れな初心者であっても簡単に電車線支持構造物のようなフレーム構造物を構成するL字鋼に容易に装着することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る看板式標識装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】実施形態の看板式標識装置を構成するクランプ装置としてのクランパーの一例を示すもので、(A)は背面図、(B)は正面図である。
【
図3】実施形態に係る看板式標識装置を構成する取付け具を斜め上方から見たもので、(A)は操作レバーの係止前の状態を示す斜視図、(B)は操作レバーの係止状態を示す斜視図である。
【
図4】(A)は実施形態に係る看板式標識装置のL字鋼への取付け前の状態を示す側面図、(B)は看板式標識装置のL字鋼への取付け後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を看板式標識装置に適用した場合の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る看板式標識装置の構成を示す側面図、
図2(A)は看板式標識および固定具(クランパー)の背面図、
図2(B)はその正面図である。
図1に示されているように、本実施形態の看板式標識装置は、L字鋼(山形鋼)を掴んで標識プレートSPを吊架するためのクランパー(クランプ装置)10と、該クランパー10を保持してL字鋼Fに取り付けるためのホルダー(保持金具)20とから構成されている。クランパー10が取り付けられるL字鋼Fは、例えば鉄道軌道設備の電車線支持構造物のようなフレーム構造物を構成する鋼材(フレーム)である。
【0017】
図1に示すように、クランパー10は側面視で逆L字状をなす本体部11と、該本体部11の一方のアーム(水平アーム)に伸縮可能に設けられた第1引っ掛け爪12Aと、本体部11の他方のアーム(垂直アーム)に伸縮可能に設けられた第2引っ掛け爪12Bとを備えている。第1引っ掛け爪12Aと第2引っ掛け爪12Bは、本体部11の各アーム内にそれぞれ配設された引っ張りバネ13A,13B(
図1の破線)により、収縮する方向へ付勢されており、先端の爪がL字鋼Fの縁に係止されることで、L字鋼Fを掴んだ状態で固定する機能を有するように構成されている。
【0018】
本体部11は、平行に配設された2枚のL字形のプレート11A,11Bと、このプレート11A,11Bを所定の間隔に保持して結合する複数のピンボルト18により構成されており、プレート11A,11B間に上記引っ張りバネ13A,13Bを収納したガイドパイプ17A,17Bが配設されている。このガイドパイプ17A,17Bには、引っ掛け爪12A,12Bに設けられたピン12a,12bが挿通され案内するスリットが形成されている。
【0019】
特に限定されるものでないが、引っ掛け爪12A,12Bには、L字鋼Fの厚み等のバラツキを吸収してしっかりとL字鋼Fの縁部に当接するようにローラ14A,14Bが設けられている。また、引っ掛け爪12A,12Bの背面には、固定用ビスB1,B2がそれぞれ設けられており、このビスB1,B2により標識プレートSPを引っ掛け爪12A,12Bに結合することができるように構成されている。なお、標識プレートSPには、例えば烏の営巣を伝達したい場合には、
図2(A)に示すように、烏の絵柄等の情報が表示されている。
【0020】
また、本体部11の各アーム内には、ピン軸15A,15Bに回転自在に支承されたストッパレバー16A,16Bが設けられている。このストッパレバー16A,16Bは、ピン軸15A,15Bにトーションバネによりそれぞれ先端側が本体部11のアーム内へ入る方向へ付勢されている。そのため、第1引っ掛け爪12Aと第2引っ掛け爪12Bを伸長させると、トーションバネの復元力によってストッパレバー16A,16Bの先端が引っ掛け爪12A,12Bの内端面に当接するように回動されて、引っ張りバネ13A,13Bにより付勢されている引っ掛け爪12Aと12Bが収縮方向へ移動しないロック状態になるように構成されている。
【0021】
さらに、ストッパレバー16A,16Bの後端側には、への字状をなす折曲片16a,16bが設けられているとともに、L字状をなす本体部11の基部には凹部11cが形成されており、ストッパレバー16A,16Bの後端の折曲片16a,16bが臨むように配設されている。そのため、ストッパレバー16A,16Bの先端が、引っ掛け爪12A,12Bの内端面に当接するようにセットされたロック状態で、折曲片16a,16bを内側へ押し込むと、ストッパレバー16A,16Bが回動して、その先端が引っ掛け爪12A,12Bの内端面から外れ、引っ掛け爪12Aと12Bのロック状態が解除されて引っ掛け爪12Aと12Bが収縮し、先端の爪でL字鋼Fを掴んで把持することができる。
【0022】
一方、ホルダー20は、タコ取り棒のような操作ロッド30の先端部に嵌合する円筒状の嵌合部21と、該嵌合部21の上部に設けられた連結片21aに蝶ナット22aおよびボルト22bによって結合されたホルダー本体23とを備えている。特に限定されるものでないが、嵌合部21には、操作ロッド30の先端部外周に植設された抜け止めピン31が進入可能なスリットとだるま穴からなる係合部21b(
図3参照)が設けられており、抜け止めピン31を係合部21bに係合させながら嵌合部21を操作ロッド30の先端部に嵌合させることで、嵌合部21が抜け落ちないようにすることができるよう、構成されている。
【0023】
また、ホルダー20は、クランパー10の本体部11を構成する一対の平行なプレート11A,11Bに設けられている係合穴に係合可能な連結ピンP1,P2と、該連結ピンP1,P2を外側へ突出させてクランパー10のプレート11A,11Bの係合穴に係合させる操作レバー24を備えている。この操作レバー24には連結ピンP1,P2が外側へ突出した状態に維持する係止機構が設けられている。この係止機構およびその解除機能については、後に説明する。
【0024】
なお、
図2(A)に示すように、標識プレートSPは正方形をなし、4隅の角部にそれぞれビス挿通穴H1,H2が形成されている。これは、本実施形態の看板式標識装置を設置したい箇所によっては、ビームを構成する水平方向のL字鋼ではなく、垂直方向に配設されているL字鋼に取り付けたいことがあるが、ビス挿通穴H1,H2が1か所であると、クランパー10を取り付けた際に、標識プレートSの絵柄が傾いてしまうためである。
そこで、本実施形態においては、4隅の角部にそれぞれビス挿通穴H1,H2を形成することで、標識プレートSPを吊下した姿勢だけではなく、使用するビス挿通穴H1,H2の位置を変えることによって、絵柄の向きの異なるプレートを用意することなく、
図2(A)に二点鎖線で示すように、横向きにした姿勢や上方へ立ち上げた姿勢で保持して、絵柄の向きを一定にして設置することができるようにしている。
【0025】
また、上記のように、クランパー10を垂直方向に配設されているL字鋼に取り付ける作業を行ない易くするための工夫がホルダー20になされている。すなわち、本実施形態のホルダー20は、操作ロッド30の先端部に嵌合する嵌合部21の連結片21aに蝶ナット22aおよびボルト22bが設けられている。そのため、蝶ナット22aを緩めて回転させてから適当な角度にしてから、蝶ナット22aを締め付けることによって、垂直面に対して90度等の任意の角度にセットすることができる。なお、ホルダー20を45度の角度にセットすることで、斜め方向のL字鋼に対してクランパー10を取り付けることも可能である。
【0026】
図3には、ホルダー20を斜め上方から見た斜視図が示されている。このうち
図3(A)は操作レバー24の解除状態を、
図3(B)は操作レバー24の係止状態を示している。ホルダー本体23は、平行に配設された2枚のプレート23A,23Bと、固定ピン25によってプレート23A,23Bの端部間に挟持されるようにして固定された有底円筒状の結合部材26を備えており、結合部材26の端面に前記蝶ナット22aが螺合されるボルト22bが植設されている。また、プレート23A,23B間に、前記操作レバー24が配設されている。
【0027】
操作レバー24は、
図1に示すように、側面視で「つ」の字状をなすように形成されており、上辺に樹脂製の筒状キャップが被着された操作部24aが設けられ、下辺の先端には湾曲した形状を有する押圧部24bが設けられている。
図3(A)に示すように、「つ」の字状の操作レバー24は折返し部分がピン軸28Aによってプレート23Aに回動可能に取り付けられているとともに、ピン軸28Aに介挿されたトーションバネ27によって操作部24aが後方へ向かう方向へ回動付勢されている。また、押圧部24bに対応してプレート23A,23B間にはピン軸28Bが横架されており、このピン軸28Bには、一対の台形状の作動プレート29A,29Bが軸方向へ移動可能に装着されている。
【0028】
また、ピン軸28Bには、上記作動プレート29A,29Bを互いに接近する方向へ付勢する圧縮バネC1,C2が介挿されている。この作動プレート29A,29Bのピン軸28Bから斜め下方へ離れた位置に、前述の連結ピンP1,P2(
図1参照)が固着されているとともに、作動プレート29A,29Bのピン軸28B近傍の内面には、V字状を形成するようなテーパ面を有するパッド29a,29bが互いに向き合った状態で接合されている。
【0029】
そして、このパッド29a,29b間に、前記操作レバー24の押圧部24bが対向するように設定されており、操作レバー24を押し下げる方向へ力を加えると、押圧部24bがパッド29a,29b間に入り込んで、圧縮バネC1,C2のバネ力に抗して作動プレート29A,29Bを離れる方向へ押し広げる。すると、連結ピンP1,P2がそれぞれ外側へ移動して、クランパー10のプレート11A,11Bの係合穴に係合されて、ホルダー20にクランパー10が結合されるように構成されている。また、このとき、圧縮バネC1,C2のバネ力でパッド29a,29bが近づく方向へ押圧されているため、押圧部24bがパッド29a,29bで挟まれて、摩擦力で操作レバー24が元の位置に復帰しないように係止された状態となる。
【0030】
次に、
図4を用いて、上記ホルダー20を用いたクランパー10のL字鋼への取付け手順について説明する。なお、
図4(A)はホルダー20にクランパー10が結合された状態を示す。
クランパー10をL字鋼へ取り付けるには、先ず
図4(A)のように、ホルダー20側のピンP1,P2をクランパー10側の係合穴に係合させて、ホルダー20とクランパー10とを一体になるように結合する。また、このとき、操作レバー24を押し込んでピンP1,P2が抜けないようにロックする。次に、引っ掛け爪12A,12Bをそれぞれ先端側へ移動させてストッパレバー16A,16Bで係止してロックをかけた状態にした後、ホルダー20の嵌合部21に操作ロッド30の先端を挿入する。それから、操作ロッド30を操作して、ホルダー20とクランパー10を、取付けをしたいL字鋼の近傍まで持ち上げる。
【0031】
次に、
図4(A)のように、開いた引っ掛け爪12A,12Bの先端の間をL字鋼31が通過するように移動させる。そして、L字鋼31の角部をクランパー10のL字のプレート11A,11Bの基部の凹部11cに合致させる。すると、凹部11c内に臨んでいるストッパレバー16A,16Bの後端にL字鋼31の角部が当たってストッパレバー16A,16Bが回動してロックが外れ、引っ掛け爪12A,12Bが縮む方向へ移動して、
図4(B)に示すように、引っ掛け爪12A,12BによってL字鋼31を掴むように把持することができる。
【0032】
また、L字鋼31の角部が当たってストッパレバー16A,16Bのロックが外れる際に、ストッパレバー16A,16B後端の「へ」の字部の外側がピンP1,P2の近傍に衝突することで生じた衝撃でバッド29a,29bの間隔が緩んで、操作レバー24の押圧部24bへの摩擦力が減少する。そのため、トーションバネ27の復元力で操作レバー24が上方へ回動して押圧部24bがバッド29a,29bから抜ける。すると、圧縮バネC1,C2の力で作動プレート29A,29Bの間隔が狭くなる方向へ移動し、連結ピンP1,P2がクランパー10のプレート11A,11Bの係合穴から抜けることで、ホルダー20とクランパー10との連結が外れるため、
図4(B)に示すように、ホルダー20をL字鋼31から切り離して遠ざけることができるようになる。
【0033】
上記のように、上記実施形態のクランパー10は、引っ張りバネ13A,13Bよって内側へ付勢された一対の引っ掛け爪12A,12Bと、引っ掛け爪12A,12Bの移動を阻止するストッパレバー16A,16Bとを備えているため、ロックが外れると引っ掛け爪12A,12Bがバネの力によってL字鋼31を掴んで把持することで、L字鋼31に取り付けることができる。しかも、ストッパレバー16A,16Bは一部が本体部11の内側へ露出するように配設されているため、ストッパレバー16A,16Bの露出部をL字鋼31の角部に接触させることで、ワンタッチでロックを解除して引っ掛け爪12A,12Bを移動させてL字鋼31を掴むようにセットすることができる。
【0034】
また、上記実施形態のホルダー20は、クランパー10の本体部11に設けられている係合穴に係合可能な連結ピンP1,P2を備えるため、クランパー10と連結可能であるとともに、前記ストッパレバー16A,16Bのロック解除動作の際に前記連結ピンP1,P2の係合を外す機構と操作ロッドの先端に嵌合可能な嵌合部21を備えているため、操作ロッドを使って連結状態のホルダー20とクランパー10を持ち上げ、高所作業をせずに、地上からの操作で上方にあるフレーム構造のL字鋼にクランパー10を装着することができる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、注意喚起したい情報を表示した標識プレートの4隅にそれぞれビス挿通孔を設けることで、標識プレートの取付けの角度を変えても図柄の向きが変わらないようにしているが、標識プレートを2枚の透明パネルで注意喚起情報を印刷した表示用シートを挟んだ構造とするとともに、2枚の透明パネルを解放可能に構成して、内部の表示用シートを回転させることができるようにしても良い。これにより、ビス挿通孔が1か所であっても、図柄の向きを変えずに標識プレートの取付けの角度(設置姿勢)を変えることができる。
【0036】
また、前記実施形態では、L字形のプレート11A,11Bの各辺にスライド可能な引っ掛け爪12A,12Bを設けた構造のクランパーについて説明したが、引っ掛け爪12A,12Bをスライド可能に設ける代わりに、回動可能に構成された爪部を設けるようにしても良い。なお、回動可能な爪部を設けた場合、取付け対象のL字鋼の大きさは限定されることになるが、前記実施形態のようにスライド可能な爪部を設けることで、取付け対象のL字鋼の大きさが異なったとしても取り付けることができる。
【0037】
さらに、前記実施形態では、引っ掛け爪12A,12Bに標識プレートを結合するビスB1,B2を設けているが、標識プレートを結合するビスB1,B2は、プレート11A,11Bなど本体部11側設けても良い。
また、前記実施形態では、烏の営巣等を注意喚起する標識プレートを取り付ける場合について説明したが、本発明は標識以外のもの、例えばライトや警報器等の物品を取り付ける場合にも利用することができる。
【0038】
さらに、前記実施形態では、本発明の看板式標識装置を鉄道軌道設備の電車線支持構造物を構成するL字鋼に取り付ける際に利用する場合について説明したが、送電用の鉄塔や鉄橋、道路脇の設備その他のフレーム構造の建造物に看板式標識その他の物品を取り付ける場合に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 クランパー
11A,11B プレート
12A,12B 引っ掛け爪
13A,13B 引っ張りバネ
14A,14B ローラ
15A,15B ピン軸
16A,16B ストッパレバー
17A,17B ガイドパイプ
18 ピンボルト
20 ホルダー(保持金具)
21 嵌合部
22a 蝶ナット
23 ホルダー本体
24 操作レバー
25 固定ピン
26 結合部材
27 トーションバネ
28A,28B ピン軸
29A,29B 作動プレート
29a,29b パッド
30 操作ロッド
31 抜止めピン