(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028154
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】印刷物及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B41M3/14
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131372
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】520289523
【氏名又は名称】日栄印刷紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110157
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 基司
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 典史
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA06
2H113CA25
2H113CA32
2H113CA34
2H113CA39
2H113CA46
(57)【要約】 (修正有)
【課題】商品の不正流通の防止及び原因究明が簡単にできる印刷物を低コストで提供する。
【解決手段】基材の一方面に各種情報が印刷されたラベル(印刷物)1であって、商品の法定表示情報を含む商品情報が可視インクで印刷された商品情報表示部10が形成され、商品情報表示部10の上には、商品に割り当てられた商品識別情報30が不可視インクで印刷されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方面に各種情報が印刷された印刷物であって、
商品の法定表示情報を含む商品情報が可視インクで印刷された商品情報表示部が形成され、
前記商品情報表示部の上に重ねて、前記商品に割り当てられた商品識別情報が不可視インクで印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記商品情報表示部と重ならない領域に、少なくとも、前記商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報が可視インクで印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記不可視インクで印刷された商品識別情報は、前記法定表示情報の上に重ねて印刷されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記基材は、前記商品の収納容器或いは包装容器を形成するための資材であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記基材は、シート状に形成され、その他方面には接着層が形成され、その一方面にラミネート層が形成されているラベルであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項6】
基材の一方面に各種情報を印刷する印刷方法であって、
第1印刷機により、前記基材の一方面に対して、商品の法定表示情報を含む商品情報を可視インクで印刷するステップと、
不可視インクを備えた第2印刷機により、前記商品情報が印刷された前記基材の一方面のうち前記印刷された商品情報と重ならない領域に対して、少なくとも、前記商品に割り当てられた商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報を可視インクで印刷すると共に、前記印刷された商品情報の上に重ねて、前記商品識別情報を該不可視インクで印刷するステップとを有することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物及び印刷方法に関し、例えば、商品の法定表示情報を含む商品情報と、商品に割り当てられた商品識別情報とが印刷された印刷物及び当該印刷物の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級シャンプーや化粧品等の商品の製造番号(商品識別情報)を削ったり、切り取ったり、或いはマジックで塗りつぶして、インターネット上のWebサイト等で、その製品を不正転売するケースが横行している。商品の製造番号(商品識別情報)は、例えば、商品や商品容器に貼着されているラベル(或いは製品容器自体)に、QRコード(登録商標)等に変換されて印刷されているが、このQRコードを削ったり、切り取ったり、或いはマジックで塗りつぶしたりした上、インターネット上で不正転売する行為が問題になっている。
【0003】
なお、商品の製造番号を示すQRコードは、商品の製造販売元が、商品毎に品番や消費期限及び納入先情報を管理するために用いられている。具体的には、製造販売元は、商品の出荷前にQRコードを読み取り、商品毎の品番や消費期限と、商品の納品先情報とを対応付けてデータベース等に登録して管理している。また、流通過程においても、商品を販売する流通業者がQRコードを読み取ることが行われているため、商品の流通状況が把握できるようになっている。
【0004】
しかし、上記のQRコードが削られて不正転売されると、その製品がいつどこで製造されたのかが判らなくなり、品質保証されない虞がある。また、上記のQRコードが削られたりすると、不正転売の販売ルートが調査できなくなり、不正転売の対策が取れなくなるという問題が生じる。
【0005】
上記の不正転売に対抗する方法として、特許文献1には、商品容器の外周面に貼着される外装シートの発明が開示されている。
具体的には、上記の外装シートには、シート素材に商品の法定表示を含む商品情報を表示する通常印刷層と、商品識別情報を機器で解読可能としたID図形(2次元コード)を表示するID印刷層とから成るベーシック印刷層が設けられている。このベーシック印刷層は、外装シートの外側の表面側から視認可能になっている。また、外装シートは、ベーシック印刷層よりも内側の裏面側であって前記ID図形と重ならない位置に、商品識別情報を目視により読取り可能とするID記号を表示するシークレット印刷層が設けられている。また、シークレット印刷層とベーシック印刷層との間にマスキング印刷層が設けられている。そして、上記のシークレット印刷層は、外装シートの外側の表面側からはマスキング印刷層により視認不能になっており、外装シートの内側の裏面側からは視認できるようになっている。
【0006】
また、上記の外装シートは、以下の方法で製造される。
先ず、透明フィルムで形成されたシート素材の外側の表面に、ID記号を表示するシークレット印刷層を印刷する。このID記号は、英文字や数字の文字等の記号により構成され、目視により商品のシリアルナンバーを直ちに読み取り可能とするためのものであり、外側の表面側Fから視認したときは、ミラー対称状に表された記号として印刷される。これにより、ID記号は、シート素材の裏面側から視認したとき、ただちに記号を読み取ることが可能になる。
次に、シークレット印刷層の上に、マスキング印刷層を印刷する。マスキング印刷層は、外側の表面側からシークレット印刷層を隠蔽するためのものであり、必要に応じて、複数層となるように重ねて印刷を行う。次に、マスキング印刷層の上に、ベーシック印刷層を印刷する。なお、シート素材の内側の裏面には粘着層が設けられている。
【0007】
そして、上記の外装シートは、不透明なボトル等の商品容器の外周面に貼着されて利用されるものであり、ID記号を表示するシークレット印刷層が、マスキング印刷層の背後に印刷されているため、商品の流通中に、ID記号が外装シートの外側の表面側から視認できないように隠蔽されている。従って、流通過程において商品の横流し等を行う不正流通業者は、ID記号の存在を認識することができない。
また、外装シートの一部を切り取る等、外装シートの表面側から視認できるID図形を削除した不正流通品が発生した場合でも、改修した不正流通品から外装シートを剥離すれば、裏面のID記号を読み取ることができ、不正流通の原因調査を行うことが可能になる。この際、ID記号は、リーダ機器を必要とせず、目視だけで識別情報を読み取ることができるので、直ちに調査を開始し、早期に原因を究明することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献1に記載の外装シートは、外装シートの表面側から視認できるID図形を削除した不正流通品が発生した場合、その不正流通品を入手し、不正流通品から外装シートを剥離することで、外装シートの裏面からID記号を見ることができる。但し、このような場合、外装シートが破れないように上手く、不正流通品から外装シートを剥離しなければならず、確認作業に手間がかかるという課題を有している。不正流通品から剥離した外装シートが破れてしまうと、裏面のID記号を読み取ることができなくなる虞があるためである。
また、特許文献1に記載の外装シートは、不透明なボトル等の商品容器に用いられることを想定したものであり、透明なボトル等の容器には用いることはできないという課題も有している。外装シートが透明なボトル等の商品容器に貼着された場合、貼着された外装シートの反対側から、外装シートの裏面が見えるため、商品の横流し等を行う不正流通業者が、裏面のID記号の存在を認識できるためである。
なお、商品のなかには、商品容器に、直接、商品情報やID図形(商品識別情報)を印刷しているものがあるが、上記の外装シートでは、商品容器に、直接、商品情報やID図形(商品識別情報)を印刷するものには適用できない。
【0010】
さらに、上述した特許文献1に記載の外装シートは、透明フィルムで形成されたシート素材にID記号を印刷し、そのID記号の上にマスキング印刷層を印刷し、さらに、マスキング印刷層の上に、商品の法定表示を含むベーシック印刷層を印刷するという工程が必要であり、工程数が多く、コストアップを招くという技術的課題を有している。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、商品の不正流通の防止及び原因究明が簡単にできる印刷物を低コストで提供することにある。また、本発明は、上記印刷物の印刷方法を提供することにある。
【0012】
上記技術的課題を解決するための本発明は、基材の一方面に各種情報が印刷された印刷物であって、商品の法定表示情報を含む商品情報が可視インクで印刷された商品情報表示部が形成され、前記商品情報表示部の上に重ねて、前記商品に割り当てられた商品識別情報が不可視インクで印刷されていることを特徴とする。
また、前記印刷物は、前記商品情報表示部と重ならない領域に、少なくとも、前記商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報が可視インクで印刷されていることが望ましい。
【0013】
上記の構成によれば、本発明の印刷物を商品と一体となるようにして流通させた場合、すなわち、本発明の印刷物を商品(或いは商品の容器)に貼着したり、或いは商品の容器に本発明の印刷物を形成したりして商品を流通させた場合、商品の流通過程において、不正流通業者が不可視インクで印刷された商品識別情報を認識することができない。
なお、不可視インクで印刷された商品識別情報は、ブラックライトで紫外線を照射することで発光発色するようになっている。そのため、不正流通業者が、本発明の印刷物と一体の商品を不正流通させた場合(例えば、印刷物から2次元コード表示部を削ったりした上で、商品を不正流通させた場合)でも、不正流通品を回収して、不正流通品と一体の印刷物にブラックライトで紫外線を照射するという簡単な作業で、肉眼により商品識別情報を読み取ることができる。すなわち、本発明の印刷物を利用することで、不正流通の原因調査を行うことができ、早期に原因を究明することが可能となる。すなわち、本発明の印刷物は、上述した特許文献1に記載の発明の「外装シートを剥離する作業」と比べて、簡単な作業により商品識別情報を確認することができる。
【0014】
また、本発明の印刷物は、基材の一方面に、可視インクで印刷された商品情報表示部の上に重ねて、商品識別情報が不可視インクで印刷されている構成になっている。この構成によれば、透明なボトル等の商品容器にも用いることもできる。
また、本発明の印刷物は、可視インクで印刷された商品情報表示部の上に重ねて、商品識別情報を不可視インクで印刷することにより作成できるため、上述した特許文献1に記載の発明の「透明フィルムで形成されたシート素材にID記号を印刷し、そのID記号の上にマスキング印刷層を印刷し、さらに、マスキング印刷層の上に、商品の法定表示を含むベーシック印刷層を印刷すること」により形成される構成よりも、工数をかけずに低コストで製造することができる。
【0015】
また、前記不可視インクで印刷された商品識別情報は、前記法定表示情報の上に重ねて印刷されていることが望ましい。
商品の法定表示情報は、商品の販売のために必要な情報であるため、不正流通業者が、切り取ったり、削り或いはマジックで塗りつぶしたりされる可能性が極めて低い。実際に、これまでの不正流通商品の傾向を見ると、法定表示情報が切り取られたり、削られたりしているケースが稀である。そのため、本発明では、不正流通業者から切り取られたりする可能性が低い、法定表示情報の上に、重ねて、不可視インクで商品識別情報を印刷するようにしている。
【0016】
また、前記基材は、前記商品の収納容器或いは包装容器を形成するための資材であることが望ましい。
このように、本発明によれば、紙や合成樹脂等で形成される商品容器(商品の収納容器或いは包装容器)に、直接、商品情報等を印刷している化粧品や高級シャンプー等にも適用できる。すなわち、本発明は、上述した特許文献1に記載の発明と比べて、汎用的に利用することができる。
【0017】
また、前記基材は、シート状に形成され、その他方面には接着層が形成され、その一方面にラミネート層が形成されているラベルであることが望ましい。
このようにラベルを構成することで、商品情報等が印刷された印刷面が保護されたラベルが提供できる。
【0018】
また、本発明は、基材の一方面に各種情報を印刷する印刷方法であって、第1印刷機により、前記基材の一方面に対して、商品の法定表示情報を含む商品情報を可視インクで印刷するステップと、不可視インクを備えた第2印刷機により、前記商品情報が印刷された前記基材の一方面のうち前記印刷された商品情報と重ならない領域に対して、少なくとも、前記商品に割り当てられた商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報を可視インクで印刷すると共に、前記印刷された商品情報の上に重ねて、前記商品識別情報を該不可視インクで印刷するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、商品の不正流通の防止及び原因究明が簡単にできる印刷物を低コストで提供することができる。また、本発明によれば、上記印刷物の印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態のラベルの表面を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態のラベルの表面にブラックライトで紫外線を照射した状態を示した模式図である。
【
図3】本発明の実施形態のラベルの断面を示した模式図である。
【
図4】本発明の実施形態のラベルの製造工程を説明するための模式図であり、(a)が凸版印刷機によりラベルを構成する基材の表面に商品情報が可視インクで印刷された状態を示した模式図であり、(b)がデジタルインクジェット印刷機によりラベルを構成する基材の表面に可視インクで2次元コード情報が印刷され、基材の表面に印刷された商品情報の上に重ねて不可視インクで商品識別情報が印刷された状態を示した模式図である。
【
図5】本発明の実施形態のラベルを構成する基材の表面に、2次元コード情報と、商品識別情報とを印刷するための印刷システムを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
先ず、本実施形態の印刷物であるラベルについて、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0022】
ここで、
図1は、本実施形態のラベルの表面を示した模式図である。
図2は、本発実施形態のラベルの表面にブラックライトで紫外線を照射した状態を示した模式図である。
図3は、本実施形態のラベルの断面を示した模式図である。
【0023】
なお、本実施形態では、一例として、印刷物が商品(或いは商品容器)に貼着されるラベル(商品ラベル)1である場合について説明する。また、本実施形態では、ラベル1が貼着される対象となる商品がシャンプーである場合を例にするが、特にこれに限定されるものではない。ラベル1は、医薬品、化粧品、電気製品、雑貨等の任意の商品に用いることができる。
また、本実施形態において印刷物は、商品情報等が印刷されているものであれば良く、ラベルだけでなく、商品情報等が直接印刷される商品容器(商品の収納容器或いは商品の包装容器)も含まれている。この商品容器には、紙材で形成された紙箱、合成樹脂で形成されたプラスチックケースが含まれている。
【0024】
図1~
図3に示すように、本実施形態のラベル1は、シート状の紙等で形成された基材1a(
図3参照)の一方面(表面)に商品名、商品説明、原材料、製造販売元等の各種情報が印刷されており、商品や商品容器の外周側面に貼着されて用いられる。
【0025】
具体的には、
図1に示すように、ラベル1は、その一方面(表面)に、商品の法定表示情報を含む商品情報が可視インクで印刷された商品情報表示部10と、商品に割り当てられた製造番号(以下、「商品識別情報」という)を2次元コードに変換して示した2次元コード情報が可視インクで印字された2次元コード表示部20とが形成されている。
なお、商品識別情報は、商品に一意に割り当てられた情報であり、本実施形態では、複数の英数字(図示する例では、「001ZZ012200」)により構成されている例を示す。
また、本実施形態では、2次元コード情報がQRコード(登録商標)である場合を示しているが、これは一例である。2次元コード情報がQRコード以外のもの(QRコード以外のマトリックス型2次元コードや、スタック型2次元コード)であっても良い。
また、本実施形態では、2次元コード表示部20に示す2次元コード情報は、「商品識別情報」を変換したものとして説明するがこれは一例である。2次元コード情報は、少なくとも、「商品識別情報」が含まれる情報を2次元コードに変換したものであれば良い。例えば、2次元コード情報が、「商品識別情報」と「商品の製造販売業者のURL情報」とが含まれる情報を2次元コードに変換したものであっても良い。
【0026】
また、本実施形態において、法定表示情報とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」により定められた表示、「化粧品の表示に関する公正競争規約」、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」により定められた商品に表示することを義務付けられた表示のことをいう。具体的には、法定表示情報は、製造販売業者(製造販売元)の氏名又は名称及び住所、商品の名称、成分の名称(全成分表示)、使用上又は保管上の注意、原産国名、問い合わせ先等の情報のことをいう。
【0027】
また、ラベル1は、商品情報表示部10の上に重ねて、商品識別情報30が不可視インク(ステルスインク)で印刷(ステルス印刷)されている。
本実施形態の不可視インクは、肉眼では見えず、ブラックライトLで紫外線(波長315~400nm、UVA(Ultraviolet A))を照射されることで発光発色するものである。ラベル1の商品情報表示部10の上に不可視インクで印刷された商品識別情報30は、
図1に示すように、紫外線が照射されていない状態においては視認できず、商品情報表示部10に提示されている商品情報を読むことが出来る。
一方、
図2に示すように、ラベル1の商品識別情報30は、ブラックライトLで紫外線が照射されると、発光した状態になり、肉眼で視認できるようになる。
【0028】
また、商品情報表示部10は、上方側の領域10aに、「商品名(ABCD SCALP SHAMPOO)、容量(500ml)」等の情報が印刷されており、下方側の領域10cに、「製造販売元情報(XYZ株式会社、大阪府八尾市・・・(住所)、0120・・・(電話番号))」等の情報が印刷されている。
また、商品情報表示部10のうち、領域10aと領域10cとの間の中間部の領域10bに、「商品名、商品説明、使用方法、使用上の注意、原材料(成分の名称)」等の情報が印刷されている。
また、領域10bと領域10cとを跨いだ部分に、バーコード15が印刷されている。
【0029】
また、本実施形態のラベル1は、
図3に示すように、シート状の基材1aを備え、基材1aの他方面(裏面)に接着層1bが設けられ、基材1aの一方面(表面)にラミネート加工により形成されたラミネート層1cが設けられている。
このように、本実施形態のラベル1は、表面にラミネート層1cが設けられており、基材1aの表面に印刷された「商品情報表示部10、2次元コード表示部20及び商品識別情報」が保護されている。
【0030】
このように、本実施形態のラベル1は、商品識別情報30が不可視インクで印刷されている。そのため、ラベル1が貼着された商品の流通過程において、不正流通業者は、商品に貼着されたラベル1を見ても、不可視インクで印刷された商品識別情報30を認識することができない。
【0031】
また、本実施形態のラベル1は、基材1aの一方面において、商品情報表示部10の上に重ねて、不可視インクで商品識別情報30が印刷された構成になっている。この構成によれば、ラベル1は、透明なボトル等の商品容器に貼着して利用することもできる。なお、上述した特許文献1に記載の発明の外装シートは、その裏面側からだけ商品識別情報が視認できるものであり、透明なボトル等の商品容器には用いることができない構成になっている。
【0032】
さらに、ラベル1に形成された不可視インクの商品識別情報30は、法定表示情報(製造販売業者(製造販売元)の氏名又は名称及び住所、商品の名称、成分の名称(全成分表示)、使用上又は保管上の注意、原産国名、問い合わせ先等の情報)を含む商品情報を提示している商品情報表示部10上に重ねて印刷されている。この法定表示情報は、商品の販売のために必要な情報であるため、不正流通業者が、切り取ったり、削り或いはマジックで塗りつぶしたりされる可能性が極めて低い。
なお、実際に、これまでの不正流通された商品(不正流通品)の傾向を見ると、法定表示情報が切り取られたり、削られたりしているケースが稀である。
【0033】
そして、例えば、不正流通業者が、ラベル1が貼着された商品を不正流通させるために、ラベル1から2次元コード表示部20を削ったり、切り取ったり等をした上で、商品を不正流通させたとする。このような場合でも、不正流通品を回収して、不正流通品に貼着されたラベル1にブラックライトLで紫外線を照射するという簡単な作業で、肉眼により商品識別情報30を読み取ることができる。すなわち、本実施形態のラベル1は、上述した特許文献1に記載の発明の「外装シートを剥離する作業」と比べて、簡単な作業により商品識別情報を確認することができる。
このように、本実施形態のラベル1を利用することで、不正流通の原因調査を行うことができ、早期に原因を究明し、原因となった販売ルートへの商品供給を止めれば、以降の不正流通を防止することができる。
【0034】
次に、本実施形態のラベル1の製造方法について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
ここで、
図4は、本実施形態のラベルの製造工程を説明するための模式図であり、(a)が凸版印刷機によりラベルを構成する基材の表面に商品情報が可視インクで印刷された状態を示した模式図であり、(b)がデジタルインクジェット印刷機によりラベルを構成する基材の表面に可視インクで2次元コード情報が印刷され、基材の表面に印刷された商品情報の上に重ねて不可視インクで商品識別情報が印刷された状態を示した模式図である。また、
図5は、本実施形態のラベルを構成する基材の表面に、2次元コード情報と、商品識別情報とを印刷するための印刷システムを示した模式図である。
なお、
図4(b)に示すラベル1では、説明の便宜上、ブラックライトLにより紫外線が照射された状態を示しているが、紫外線が照射されない限り、商品識別情報30が視認できないようになっている。
【0035】
具体的には、先ず、ラベル1を構成する基材1aの表面に、製品情報(商品名、容量、製造販売元情報(会社名、住所、電話番号)、商品説明情報(商品名、商品説明、使用方法、使用状の注意、原材料(成分の名称))、バーコード15等の製品情報)を印刷して、基材1aの表面に商品情報表示部10を形成する。
この商品情報は、商品毎に異なる情報ではなく、同じ商品において共通に用いられる情報である。そのため、本実施形態では、可視インクを備えた凸版印刷機(或いはオフセット印刷機)を用いて、ラベル1を構成する基材1aの表面に、可視インクで商品情報を印刷する。
これにより、
図4(a)に示すように、ラベル1を構成する基材1aの表面に、商品情報表示部10だけが形成された状態になる。
【0036】
次に、商品情報表示部10だけが形成されている基材1aの表面に、商品識別情報を2次元コードで示した2次元コード情報と、商品識別情報(英数字で示した商品識別情報)とを印刷する。
この2次元コード情報及び商品識別情報は、商品毎に割り当てられた一意の情報である。そのため、本実施形態では、デジタルインクジェット印刷機(デジタルインクジェットプリンタ)を用いて、商品毎に可変の2次元コード情報及び商品識別情報印刷するようにしている。
【0037】
なお、デジタルインクジェット印刷機100は、
図5に示すように、専用のプリンタドライバ210がインストールされたコンピュータ200により制御され動作するようになっている。また、デジタルインクジェット印刷機100は、可視インクと、不可視インクとを備えている。
【0038】
そして、デジタルインクジェット印刷機100が可視インクで、ラベル1を構成する基材1aの表面のうち商品情報表示部10と重ならない領域に、2次元コード情報を印刷して、基材1aの表面に2次元コード表示部20を形成する。また、デジタルインクジェット印刷機100が不可視インクで、ラベル1を構成する基材1aの表面のうち商品情報表示部10の上に重ねて商品識別情報を印刷して、商品表示情報部10の上に、重ねて、不可視インクからなる商品識別情報30を形成する。
これにより、
図4(b)に示すように、ラベル1を構成する基材1aの表面に、商品情報表示部10及び2次元コード表示部20が形成されると共に、商品情報表示部10の上に重ねて、商品識別情報30が形成される。
【0039】
次に、
図4(b)に示す基材1aの裏面に粘着層1bを形成すると共に、基材1aの表面にラミネート層1cを形成する。これにより、本実施形態のラベル1が形成される。
【0040】
このように、本実施形態では、汎用的に利用されている印刷機である凸版印刷機を用いて、ラベル1を構成する基材1aの表面に、同じ商品において共通に用いられる商品情報を可視インクで印刷して商品情報表示部10を形成する。その後、基材1aの表面に、デジタルインクジェット印刷機を用いて、商品毎に可変の2次元コード情報を可視インクで印刷した2次元コード表示部20を形成する共に、商品毎に可変の商品識別情報30を不可視インクで、商品表示部10の上に重ねて印刷している。
本実施形態の方法(印刷方法)は、上述した特許文献1に記載の発明の「透明フィルムで形成されたシート素材にID記号を印刷し、そのID記号の上にマスキング印刷層を印刷し、さらに、マスキング印刷層の上に、商品の法定表示を含むベーシック印刷層を印刷すること」により形成される方法よりも、工数がかからず低コストで実現できる。
【0041】
以上、説明したように、本実施形態によれば、商品の不正流通の防止及び原因究明が簡単にできるラベル(印刷物)1を低コストで提供することができる。また、本実施形態によれば、上記のラベル(印刷物)1の印刷方法を提供することができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0043】
上述した実施形態では、紙等の基材1aの表面に、商品表示部10、2次元コード表示部20、及び商品識別情報30が印刷により形成されたラベル1を例にしているが、特にこれに限定されるものではない。本発明は、ラベル1以外にも適用できる。
例えば、紙の基材1aではなく、基材(図示せず)が、プラスチックケース等の商品容器(収納容器或いは包装容器)を形成するための合成樹脂で形成された資材であっても良い。また、紙の基材1aが、ラベルに用いられるものではなく、厚紙等で形成された紙箱等の商品容器(収納容器或いは包装容器)に用いられるものであっても良い。
また、本発明は、紙以外のラベル、例えば、プラスチックラベルにも適用することができる。
この構成によれば、高価なシャンプーのように、商品情報が包装容器に直接印刷されている商品についても本発明が適用される。すなわち、本発明は、上述した特許文献1に記載の発明と比べて、汎用的に利用することができる。
【0044】
また、上述した実施形態のラベル1は、基材1aの表面に、商品表示部10、2次元コード表示部20、及び商品識別情報30が形成されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、基材1aの表面に、商品表示部10及び商品識別情報30だけが形成され、2次元コード表示部20が設けられていないものでも良い。
【0045】
L…ブラックライト
1…ラベル
1a…基材
1b…接着層
1c…ラミネート層
10…商品情報表示部
20…2次元コード表示部
30…商品識別情報
100…デジタルインクジェット印刷機
200…コンピュータ
210…プリンタドライバ
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方面に各種情報が印刷された印刷物であって、
商品に表示することを義務付けられた法定表示情報を含む商品情報が可視インクで印刷された商品情報表示部が形成され、
前記商品情報表示部の上に重ねて、前記商品に一意に割り当てられた商品識別情報が不可視インクで印刷されており、
前記商品情報表示部と重ならない領域に、少なくとも、前記商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報が可視インクで印刷されており、
前記不可視インクで印刷された商品識別情報は、前記法定表示情報の上に重ねて印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記法定表示情報には、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律により定められた表示、化粧品の表示に関する公正競争規約、不当景品類及び不当表示防止法により定められた表示が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記基材は、前記商品の収納容器或いは包装容器を形成するための資材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記基材は、シート状に形成され、その他方面には接着層が形成され、その一方面にラミネート層が形成されているラベルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項5】
基材の一方面に各種情報を印刷する印刷方法であって、
第1印刷機により、前記基材の一方面に対して、商品に表示することを義務付けられた法定表示情報を含む商品情報を可視インクで印刷するステップと、
不可視インクを備えた第2印刷機により、前記商品情報が印刷された前記基材の一方面のうち前記印刷された商品情報と重ならない領域に対して、少なくとも、前記商品に一意に割り当てられた商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報を可視インクで印刷すると共に、前記印刷された前記法定表示情報の上に重ねて、前記商品識別情報を該不可視インクで印刷するステップとを有することを特徴とする印刷方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記技術的課題を解決するための本発明は、基材の一方面に各種情報が印刷された印刷物であって、商品に表示することを義務付けられた法定表示情報を含む商品情報が可視インクで印刷された商品情報表示部が形成され、前記商品情報表示部の上に重ねて、前記商品に一意に割り当てられた商品識別情報が不可視インクで印刷されており、前記商品情報表示部と重ならない領域に、少なくとも、前記商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報が可視インクで印刷されており、前記不可視インクで印刷された商品識別情報は、前記法定表示情報の上に重ねて印刷されていることを特徴とする。
また、前記法定表示情報には、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律により定められた表示、化粧品の表示に関する公正競争規約、不当景品類及び不当表示防止法により定められた表示が含まれていることが望ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
なお、商品の法定表示情報は、商品の販売のために必要な情報であるため、不正流通業者が、切り取ったり、削り或いはマジックで塗りつぶしたりされる可能性が極めて低い。実際に、これまでの不正流通商品の傾向を見ると、法定表示情報が切り取られたり、削られたりしているケースが稀である。そのため、本発明では、不正流通業者から切り取られたりする可能性が低い、法定表示情報の上に、重ねて、不可視インクで商品識別情報を印刷するようにしている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、本発明は、基材の一方面に各種情報を印刷する印刷方法であって、第1印刷機により、前記基材の一方面に対して、商品に表示することを義務付けられた法定表示情報を含む商品情報を可視インクで印刷するステップと、不可視インクを備えた第2印刷機により、前記商品情報が印刷された前記基材の一方面のうち前記印刷された商品情報と重ならない領域に対して、少なくとも、前記商品に一意に割り当てられた商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報を可視インクで印刷すると共に、前記印刷された前記法定表示情報の上に重ねて、前記商品識別情報を該不可視インクで印刷するステップとを有することを特徴とする。
基材の一方面に各種情報を印刷する印刷方法であって、基材の一方面に各種情報を印刷する印刷方法であって、第1印刷機により、前記基材の一方面に対して、商品の法定表示情報を含む商品情報を可視インクで印刷するステップと、不可視インクを備えた第2印刷機により、前記商品情報が印刷された前記基材の一方面のうち前記印刷された商品情報と重ならない領域に対して、少なくとも、前記商品に一意に割り当てられた商品識別情報が含まれる情報を2次元コードに変換して示した2次元コード情報を可視インクで印刷すると共に、前記印刷された前記法定表示情報の上に重ねて、前記商品識別情報を該不可視インクで印刷するステップとを有することを特徴とする。