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特開2022-28259消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤
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  • 特開-消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028259
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/231 20060101AFI20220208BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220208BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20220208BHJP
【FI】
A61K31/231
A61P3/04
A61P3/06
A61P43/00 111
A23L33/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131574
(22)【出願日】2020-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(71)【出願人】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100201226
【弁理士】
【氏名又は名称】水木 佐綾子
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】森田 沙代
(72)【発明者】
【氏名】古賀 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山津 敦史
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
(72)【発明者】
【氏名】古田 到真
【テーマコード(参考)】
4B018
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD10
4B018ME04
4B018ME14
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA04
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA70
4C206ZC20
4C206ZC33
(57)【要約】
【課題】新規な消化リパーゼ活性阻害剤を提供する。
【解決手段】リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、消化リパーゼ活性阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、消化リパーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤。
【請求項3】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、脂肪吸収抑制剤。
【請求項4】
リノール酸及びオレイン酸の両方を有効成分として含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、消化リパーゼ活性阻害用食品組成物又は消化リパーゼ活性阻害用医薬品。
【請求項6】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用食品組成物又は血中トリグリセリド濃度上昇抑制用医薬品。
【請求項7】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、脂肪吸収抑制用食品組成物又は脂肪吸収抑制用医薬品。
【請求項8】
リノール酸及びオレイン酸の両方を有効成分として含有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の食品組成物又は医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤に関する。また、本発明は、消化リパーゼ活性阻害用の食品組成物又は医薬品、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用の食品組成物又は医薬品、並びに脂肪吸収抑制用の食品組成物又は医薬品にも関する。
【背景技術】
【0002】
食生活や生活習慣の変化などに伴い、肥満人口は世界中で増加している。肥満は糖尿病、高血圧、癌等、様々な健康リスクを増加させるリスク因子であり、世界レベルでは、年間400万人が肥満に起因する疾患で死亡しているといわれている。
【0003】
現在使用されている抗肥満薬としては、(1)食欲中枢に作用し、食欲を抑制するもの(マジンドール等)、(2)腸内のリパーゼを阻害することで脂肪の吸収を抑制するもの(オルリスタット等)等が知られている。これらの抗肥満薬には、何らかの副作用があるものが多く、安全性が未だ確立されていないため、長期使用できるものは少ない。
【0004】
このような中、上記(2)のリパーゼ阻害による脂肪吸収抑制剤について、食品素材を用いることで、より安全性の高いものを得ることが検討されている。リパーゼ阻害能を有する食品素材としては、杜仲葉(特許文献1)、ハクトウオウ、ミツモウカ、カイトウヒ、ハクシジン、トウガシ(特許文献2)、黒ショウガ、赤ショウガ、ニッケイ、大麦若葉、黒ニンニク、阿仙薬、アジサイ、訶子、ザクロ、亜麻仁、桂花、九節茶、雪の下、ジャスミン茶、オレガノ、オリーブ葉、沙棘、カレーリーフ(特許文献3)、及びシラタマカズラ(特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-289951号公報
【特許文献2】特開2006-169181号公報
【特許文献3】特開2010-209051号公報
【特許文献4】特開2014-172901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の食品素材は市場における流通が少ないものが多く、コスト高及び供給量の低下を招来するおそれがある。さらに、食品素材中に含まれる有効成分を十分量摂取するにあたり、食品素材自体の摂取量が比例して増加することから、より効率的に摂取しやすい有効成分の解明及びその利用が求められる。そのため、入手容易性、コスト低減、摂取効率等の観点から、より身近な食品由来の有効成分を用いた脂肪吸収抑制等に有用な剤が求められている。
【0007】
本発明の一側面は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は新規な消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、リノール酸又はオレイン酸、及びこれらの混合物において、消化リパーゼ活性を阻害する作用、及び血中トリグリセリド濃度の上昇を抑制する作用を有すること、更に、これらの効果がリノール酸及びオレイン酸を併用した場合により顕著に奏されることを発見した。また、これにより、これらの成分が脂肪吸収抑制剤としての効果を有することを本発明者らは見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の一側面は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とする、消化リパーゼ活性阻害剤を提供する。
【0010】
本発明の他の側面は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とする、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を提供する。
【0011】
本発明の他の側面は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とする、脂肪吸収抑制剤を提供する。
【0012】
本発明の他の側面は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、消化リパーゼ活性阻害用食品組成物又は消化リパーゼ活性阻害用医薬品を提供する。
【0013】
本発明の他の側面は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用食品組成物又は血中トリグリセリド濃度上昇抑制用医薬品を提供する。
【0014】
本発明の他の側面は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、脂肪吸収抑制用食品組成物又は脂肪吸収抑制用医薬品。
【0015】
上記の剤、食品組成物又は医薬品は、リノール酸及びオレイン酸の両方を有効成分として含有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規な消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤を提供できる。また、本発明によれば、新規な消化リパーゼ活性阻害用の食品組成物又は医薬品、新規な血中トリグリセリド濃度上昇抑制用の食品組成物又は医薬品、並びに新規な脂肪吸収抑制用の食品組成物又は医薬品を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】リノール酸、オレイン酸による消化リパーゼ活性の阻害効果を示すグラフである。
図2】リノール酸、オレイン酸及びその混合物による消化リパーゼ活性阻害率を示すグラフである。
図3】リノール酸及びオレイン酸の混合物による血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施形態は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とする、消化リパーゼ活性阻害剤を提供する。消化リパーゼ活性阻害効果をより効果的に得るために、消化リパーゼ活性阻害剤は、リノール酸及びオレイン酸の両方を有効成分として含有してもよい。
【0020】
本明細書における消化リパーゼとは、胃、腸(十二指腸、小腸、大腸を含む)、膵臓等の消化に関与する器官から分泌され、消化管内で作用するリパーゼをいい、より具体的には、胃から分泌される胃リパーゼ、十二指腸、小腸又は大腸から分泌される腸リパーゼ、膵臓から分泌される膵リパーゼ等が挙げられる。腸内で主に作用する、腸リパーゼ及び膵リパーゼをまとめて「腸内リパーゼ」ともいう。消化リパーゼは、消化管以外の臓器中で作用するリパーゼ、例えば、心筋細胞のリポタンパク質リパーゼ、脂肪細胞リパーゼ等を含まない。消化リパーゼ活性阻害剤は、これらの消化リパーゼの活性を阻害する剤である。
【0021】
本明細書におけるリノール酸には、下記式(1)で表される化合物、この化合物の異性体、及び下記式(1)で表される化合物の誘導体(リノール酸誘導体)が含まれる。リノール酸としては、消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。リノール酸の異性体としては、共役リノール酸と非共役リノール酸がある。消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、非共役リノールであることが好ましい。リノール酸誘導体としては、リノール酸の酸化物等がある。消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、リノール酸誘導体としては、リノール酸の酸化物以外の誘導体が好ましい。
【化1】
【0022】
本明細書におけるオレイン酸には、下記式(2)で表される化合物、この化合物の異性体、及び下記(2)で表される化合物の誘導体(オレイン酸誘導体)が含まれる。オレイン酸としては、消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。オレイン酸の異性体としては、エライジン酸等が挙げられる。オレイン酸の誘導体としては、オレイン酸メチル等が挙げられる。
【化2】
【0023】
リノール酸及びオレイン酸は、化学的に合成されたものであってよく、ごま、大豆等の食品などから得られるものであってもよい。本明細書におけるリノール酸及びオレイン酸は、遊離リノール酸及び遊離オレイン酸を意味し、トリグリセリドの構成部分としてのリノール酸及びオレイン酸は含まれない。
【0024】
消化リパーゼ活性阻害剤における有効成分の含有量は、消化リパーゼ活性阻害剤の形態、使用目的等によって適宜設定してよいが、例えば、消化リパーゼ活性阻害剤全量基準で、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、又は1質量%以上であってよく、100質量%以下、50質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0025】
本実施形態に係る消化リパーゼ活性阻害剤は、上記の有効成分のみを含有するものであってもよく、本発明による効果を妨げない限り、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、食品組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材であってよい。食品組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材としては、特に制限されるものではなく、例えば、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、油脂、甘味料、ミネラル、ビタミン、香料、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。
【0026】
タンパク質としては、例えば、ミルクカゼイン、ホエイ、大豆タンパク、小麦タンパク、卵白等が挙げられる。炭水化物としては、例えば、コーンスターチ、セルロース、α化デンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン等が挙げられる。油脂としては、例えば、サラダ油、コーン油、大豆油、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油等が挙げられる。甘味料としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等の人工甘味料、ステビア甘味料等が挙げられる。ミネラルとしては、例えば、カルシウム、カリウム、リン、ナトリウム、マンガン、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等が挙げられる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB類、ビオチン、ナイアシン等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、デキストリン、デンプン、乳糖、結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸、乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。基剤としては、例えば、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0027】
本実施形態に係る消化リパーゼ活性阻害剤の形状は制限されず、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、ペースト等のいずれの形状であってもよく、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0028】
消化リパーゼ活性阻害剤の投与対象は、ヒト、又は動物であってよく、好ましくはヒトである。消化リパーゼ活性阻害剤は、肥満患者用、糖尿病患者用、高血圧患者用等として用いられてよく、肥満等の健康上の問題のない健常者用として用いられてもよい。
【0029】
消化リパーゼ活性阻害剤においては、経口投与がされてよく、静脈投与等の非経口投与がされてもよい。消化リパーゼ活性阻害剤は、経口投与されることが好ましい。
【0030】
消化リパーゼ活性阻害剤が経口投与される場合、有効成分が1回当たり50μg以上となるように投与されるのが好ましく、200μg以上となるように投与されるのがより好ましく、1000μg以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、有効成分が1日当たり150μg以上となるように投与されるのが好ましく、600μg以上となるように投与されるのがより好ましく、3000μg以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、有効成分が1回当たり300mg以下となるように投与されるのが好ましく、100mg以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、有効成分が1日当たり900mg以下となるように投与されるのが好ましく、300mg以下となるように投与されるのがより好ましい。この範囲であれば、消化リパーゼ活性を十分に阻害することができる。
【0031】
消化リパーゼ活性阻害剤が非経口投与される場合、有効成分が1回当たり50μg以上となるように投与されるのが好ましく、200μg以上となるように投与されるのがより好ましく、1000μg以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、有効成分が1日当たり150μg以上となるように投与されるのが好ましく、600μg以上となるように投与されるのがより好ましく、3000μg以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、有効成分が1回当たり300mg以下となるように投与されるのが好ましく、100mg以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、有効成分が1日当たり900mg以下となるように投与されるのが好ましく、300mg以下となるように投与されるのがより好ましい。この範囲であれば、消化リパーゼ活性を十分に阻害することができる。
【0032】
消化リパーゼ活性阻害剤は、胃リパーゼ、腸リパーゼ、膵リパーゼ等の消化リパーゼの活性を阻害することにより、血中のトリグリセリド濃度の上昇を抑制することができる。すなわち、本発明の一実施形態は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とする、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を提供するということができる。
【0033】
一実施形態に係る血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤において、有効成分及びその含有量、投与対象、投与量等の具体的な態様は、上述した消化リパーゼ活性阻害剤における態様と同様であってよい。すなわち、一実施形態に係る血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、上述した消化リパーゼ活性阻害剤に関する説明において、「消化リパーゼ活性阻害剤」を「血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤」と読み替えたものであってよい。
【0034】
さらに、本実施形態に係る消化リパーゼ活性阻害剤、又は血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、消化リパーゼ活性を阻害し、また、血中トリグリセリド濃度の上昇を抑制することにより、体内への脂肪吸収を抑制することができる。すなわち、本発明の一実施形態は、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とする、脂肪吸収抑制剤を提供するということができる。
【0035】
一実施形態に係る脂肪吸収抑制剤において、有効成分及びその含有量、投与対象、投与量等の具体的な態様は、上述した消化リパーゼ活性阻害剤における態様と同様であってよい。すなわち、一実施形態に係る脂肪吸収抑制剤は、上述した消化リパーゼ活性阻害剤に関する説明において、「消化リパーゼ活性阻害剤」を「脂肪吸収抑制剤」と読み替えたものであってよい。
【0036】
上述した消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤は、抗肥満、ダイエットの用途に用いることができる。その他、肌質改善、心血管疾患改善、インスリン抵抗性改善、糖尿病予防、脳梗塞予防、脂肪肝防止、肝硬変防止、高血圧防止、体臭用消臭剤の用途にも用いることができる。
【0037】
上述の消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、及び脂肪吸収抑制剤は、消化リパーゼ活性阻害用、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用、又は脂肪吸収抑制用の食品組成物、医薬部外品、又は医薬品として用いてもよく、動物へ使用する場合、飼料、飼料添加物として用いることもできる。上記の各剤は、食品組成物、医薬部外品、医薬品、飼料又は飼料添加物等の各製品の一成分として用いてもよい。すなわち、本発明の一実施形態によれば、リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有する、消化リパーゼ活性阻害用、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用、又は脂肪吸収抑制用の食品組成物、医薬部外品、医薬品、飼料又は飼料添加物が提供される。
【0038】
消化リパーゼ活性阻害用、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用、又は脂肪吸収抑制用の食品組成物は、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品であってもよい。食品組成物の具体例としては、例えば、米類、パン類、麺類、乳製品、豆製品、菓子類、ドリンク類、油脂食品、調味料、サプリメント類等が挙げられる。
【0039】
消化リパーゼ活性阻害用、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用、又は脂肪吸収抑制用の医薬品又は医薬部外品としては、素錠、糖衣錠、顆粒、粉末、タブレット、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル)等が挙げられる。
【0040】
消化リパーゼ活性阻害用、血中トリグリセリド濃度上昇抑制用、又は脂肪吸収抑制用の飼料又は飼料添加物としては、ドッグフード、キャットフード等のコンパニオンアニマル用飼料、家畜用飼料、家禽用飼料、養殖魚介類用飼料等が挙げられる。「飼料」には、動物が栄養目的で経口的に摂取するもの全てが含まれる。より具体的には、養分含量の面から分類すると、粗飼料、濃厚飼料、無機物飼料、特殊飼料の全てを包含し、また公的規格の面から分類すると、配合飼料、混合飼料、単体飼料の全てを包含する。また、給餌方法の面から分類すると、直接給餌する飼料、他の飼料と混合して給餌する飼料、又は飲料水に添加し栄養分を補給するための飼料の全てを包含する。
【0041】
上記の各製品における有効成分の含有量は、上述した消化リパーゼ活性阻害剤、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤、又は脂肪吸収抑制剤における有効成分の好適な投与量を摂取できる範囲で、各製品に応じて適宜設定されてよい。
【0042】
上記の各製品の製造方法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、これらの製造工程においてリノール酸及びオレイン酸から選択される少なくとも一種を、好適な添加量で添加することにより製造することができる。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<試験1:リノール酸、オレイン酸による消化リパーゼ活性阻害試験>
リノール酸及びオレイン酸について、消化リパーゼ阻害活性を下記の方法により評価した。なお、リノール酸及びオレイン酸としては、富士フイルム和光純薬社製のものを用いた。
【0045】
(消化リパーゼ液の調製)
ラット腸管アセトンパウダー(Sigma社製)30mgに0.1Mクエン酸緩衝液(pH6.0)30mLを加え、氷中で1時間振とう後、4℃、10000rpmで45分間遠心分離し、消化リパーゼ液を得た。当該消化リパーゼ液は、膵リパーゼ、腸リパーゼ等の混合物である。
【0046】
(活性評価)
1.5mL容チューブに、リノール酸0.19mg/mL又はオレイン酸0.16mg/mLのDMSO溶液(濃度は反応時の終濃度)、又は、比較対象であるセサミン0.044mg/mLのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(濃度は反応時の終濃度)を10μLと、発色液237μLと、上述の消化リパーゼ液9μLと、エステラーゼ阻害剤4μLと水90μLを添加し、30℃、5分間インキュベートした。その後、基質液25μLを添加し、遮光下30℃で30分間反応を行った。その後、反応停止液700μLを加え、この液について412nmの吸光度を測定した。発色液、基質液、エステラーゼ阻害剤、反応停止液としては、リパーゼキットS(SBバイオサイエンス社製)付属のものを用いた。
【0047】
(コントロール、ブランク評価)
上記のサンプル及び試薬自身が有する吸光度を測定する目的で、新たな1.5mL容チューブにコントロールを作成した。コントロールとして、リノール酸0.19mg/mL又はオレイン酸0.16mg/mLのDMSO溶液、又は、セサミン0.044mg/mLのDMSO溶液を10μLと、発色液237μLと、上述した消化リパーゼ液9μLと、エステラーゼ阻害剤4μLと、水90μLとを添加し、遮光下30℃で35分間インキュベートした。その後、反応停止液700μL、及び基質液25μLを加え、412nmの吸光度を測定した。また、各サンプルのDMSO溶液の代わりにDMSOのみを添加した以外は活性評価と同様に調整したものをブランクaとし、DMSOのみを添加してコントロールと同様に調製したものをブランクb(コントロールのブランク)とした。ブランクa及びブランクbについても412nmの吸光度を測定した。
【0048】
(計算)
以下の計算式により、各サンプルを添加した際の消化リパーゼ活性を算出した。
消化リパーゼ活性(%)=100×(各サンプルの吸光度-コントロールの吸光度)/(ブランクaの吸光度-ブランクbの吸光度)
【0049】
(結果)
各サンプルを添加した際の消化リパーゼ活性の算出結果を図1に示す。セサミンを添加した際の消化リパーゼ活性が110.9%であったのに対して、リノール酸を添加した場合は8.9%、オレイン酸を添加した場合は7.1%であり、リノール酸又はオレイン酸の添加により消化リパーゼ活性が低下することが分かった。
【0050】
<試験2:リノール酸及びオレイン酸の混合物による消化リパーゼ活性阻害試験>
リノール酸及びオレイン酸の混合物について、上記試験1と同様の方法で消化リパーゼ活性阻害効果を検討した。リノール酸及びオレイン酸としては上述したものを用いた。サンプルとして、0.009mg/mLのリノール酸水溶液、0.008mg/mLのオレイン酸水溶液、及び、0.009mg/mLのリノール酸水溶液と0.008mg/mLのオレイン酸水溶液との混合物をそれぞれ用いた(各サンプルにおける濃度は反応測定時の終濃度)。
【0051】
(計算)
まず、下記に示す計算式により、各サンプルの消化リパーゼ活性阻害率を算出した。
消化リパーゼ活性阻害率(%)=100-{100×(各サンプルの吸光度-コントロールの吸光度)/(ブランクaの吸光度-ブランクbの吸光度)}
また、混合物により相乗効果が得られるかどうかを評価するため、コルビーの式を用いた。以下のコルビーの式によって算出された理論値よりも実測値が大きい場合、相乗効果があると判断できる。
コルビーの式:理論値E=A+B-(A×B)/100
A:リノール酸の消化リパーゼ活性阻害率(%)
B:オレイン酸の消化リパーゼ活性阻害率(%)
【0052】
(結果)
結果を図2に示す。リノール酸、オレイン酸、及びこれらの混合物を添加した場合の消化リパーゼ活性阻害率は、それぞれ9.6%、12.8%、30.6%であった。コルビーの式により得られる、混合物による消化リパーゼ活性阻害率の理論値は21.1%であったため、リノール酸及びオレイン酸の混合物において、消化リパーゼ活性阻害作用の相乗効果があると判断できた。
【0053】
<試験3:リノール酸及びオレイン酸の混合物によるラットの血中トリグリセリド濃度上昇抑制試験>
リノール酸及びオレイン酸の混合物が、ラットに対して血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果を有するか否かを、下記の試験により評価した。リノール酸及びオレイン酸としては上述したものを用いた。
【0054】
(試験動物)
ラットには、Wister Rat(雄性、6週齢)を用いた。ラットは、環境温度:23℃、設定湿度:55%、明暗各12時間(照明:午前8時~午後8時)に維持された飼育室で飼育した。水道水を飲料水として自動給水装置を用いて自由に摂取させた。ラットは個別飼育し、搬入後5日間以上馴化させた。ケージ及び給餌器の交換は週に1回以上行った。
【0055】
(脂質負荷食の作製)
コーン油30mLを、コール酸400mg、コレステロールオリエート10g及び純水30mLと混合し、この混合物を10分間超音波処理することにより乳化して、脂質負荷食の乳化コーン油とした。
【0056】
(試験方法)
ラットの体重を測定し、リノール酸0.46mg/kg(ラット体重)及びオレイン酸0.72m/kg(ラット体重)を投与できるように投与用量を計算した。リノール酸及びオレイン酸を20%(v/v)エタノール溶液中で撹拌させ、試験液とした。ラットをリノール酸・オレイン酸投与群とコントロール群の2群(各群7匹)に分け、リノール酸・オレイン酸投与群には試験液400μLを経口投与した。コントロール群には20%(v/v)エタノール溶液400μLを経口投与した。いずれの群についても、経口投与から10分後、脂質負荷食である乳化コーン油1mLを経口投与した。脂質負荷食の投与から7.5時間経過後まで1.5時間毎にラットの採血を行った。採取した血液を30分間静置した後、遠心分離(3000g×15分)を行った。遠心分離後に血清を取り出し、血中トリグリセリド濃度(mg/dL)を測定した。血中トリグリセリド濃度の測定は、ラボアッセイTMトリグリセライド(富士フィルム和光純薬社製)の測定法に則って行った。
【0057】
(結果)
リノール酸・オレイン酸投与群、及びコントロール群における血中トリグリセリド濃度の変化を図3に示す。なお、コントロール群の被検体のうち1匹が試験続行不可能の状態になったため、コントロール群から除外した。リノール酸・オレイン酸投与群の血中トリグリセリド濃度は、脂質負荷食投与後、6時間後にコントロール群よりも有意に低値(P=0.04)であり、4.5時間後に抑制傾向(P=0.08)を示した。これにより、リノール酸及びオレイン酸の混合物によって血中トリグリセリド濃度の上昇が抑制されたことが分かる。すなわち、リノール酸及びオレイン酸により、脂肪の吸収が抑制され得ることが確認できた。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2020-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化1】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化2】

消化リパーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化3】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化4】

消化リパーゼ活性阻害作用に基づく血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤。
【請求項3】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化5】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化6】

脂肪吸収抑制剤。
【請求項4】
前記リノール酸及び前記オレイン酸の両方を有効成分として含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化7】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化8】

消化リパーゼ活性阻害用食品組成物又は消化リパーゼ活性阻害用医薬品。
【請求項6】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化9】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化10】

消化リパーゼ活性阻害作用に基づく血中トリグリセリド濃度上昇抑制用食品組成物又は消化リパーゼ活性阻害作用に基づく血中トリグリセリド濃度上昇抑制用医薬品。
【請求項7】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分として含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化11】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化12】

脂肪吸収抑制用食品組成物又は脂肪吸収抑制用医薬品。
【請求項8】
前記リノール酸及び前記オレイン酸の両方を有効成分として含有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の食品組成物又は医薬品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本明細書におけるリノール酸には、下記式(1)で表される化合物、この化合物の異性体、及び下記式(1)で表される化合物の誘導体(リノール酸誘導体)が含まれる。リノール酸としては、消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。リノール酸の異性体としては、共役リノール酸と非共役リノール酸がある。消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、非共役リノールであることが好ましい。リノール酸誘導体としては、リノール酸の酸化物等がある。消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、リノール酸誘導体としては、リノール酸の酸化物以外の誘導体が好ましい。
【化1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本明細書におけるオレイン酸には、下記式(2)で表される化合物、この化合物の異性体、及び下記(2)で表される化合物の誘導体(オレイン酸誘導体)が含まれる。オレイン酸としては、消化リパーゼ活性の阻害作用をより得やすくする観点から、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。オレイン酸の異性体としては、エライジン酸等が挙げられる。オレイン酸の誘導体としては、オレイン酸メチル等が挙げられる。
【化2】

【手続補正書】
【提出日】2021-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とし、当該有効成分のみを含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化1】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化2】

消化リパーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とし、当該有効成分のみを含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化3】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化4】

消化リパーゼ活性阻害作用に基づく血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤。
【請求項3】
リノール酸及びオレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を有効成分とし、当該有効成分のみを含有し、
前記リノール酸が、下記式(1)で表される化合物であり、
【化5】

前記オレイン酸が、下記式(2)で表される化合物である、
【化6】

脂肪吸収抑制剤。
【請求項4】
前記リノール酸及び前記オレイン酸の両方を有効成分とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。