(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028303
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】折返し階段の間仕切り壁
(51)【国際特許分類】
E04B 2/72 20060101AFI20220208BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
E04B2/72 Z
E04B2/82 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131621
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 元吾
(72)【発明者】
【氏名】岡尾 健二
(57)【要約】 (修正有)
【課題】間仕切り壁の厚みを薄くした場合においても、間仕切り壁の面外剛性の低下とこれに起因する変位の増大を抑制することのできる、折返し階段の間仕切り壁を提供する。
【解決手段】下側直階段部10Aと、折り返し部10Bと、上側直階段部10Cとにより構成される、折返し階段10において、下側直階段部10Aと上側直階段部10Cを仕切る間仕切り壁100であって、縦桟31,41と横桟32,42とを有する軸組下地材30,40と、横方向に延設する第一補強金物50と、軸組下地材30,40と第一補強金物50との周囲に配設される複数の面材とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側直階段部と、折り返し部と、上側直階段部とにより構成される、折返し階段において、該下側直階段部と該上側直階段部を仕切る間仕切り壁であって、
縦桟と横桟とを有する軸組下地材と、横方向に延設する第一補強金物と、該軸組下地材と該第一補強金物との周囲に配設される複数の面材と、を有することを特徴とする、折返し階段の間仕切り壁。
【請求項2】
前記第一補強金物の一端が、階間もしくは土台の梁に固定され、該梁から横方向に該第一補強金物が延設していることを特徴とする、請求項1に記載の折返し階段の間仕切り壁。
【請求項3】
複数の前記面材の内部に配設されている、縦方向に延設する第二補強金物をさらに有し、上下階の天井もしくは床に対して該第二補強金物の上端と下端が固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の折返し階段の間仕切り壁。
【請求項4】
前記軸組下地材は、上階用軸組下地材と下階用軸組下地材を備え、該上階用軸組下地材の下面と該下階用軸組下地材の上面との間に前記第一補強金物が介在しており、
前記上階用軸組下地材と前記下階用軸組下地材が、縦方向に延設する連結縦桟により連結されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の折返し階段の間仕切り壁。
【請求項5】
前記第一補強金物が、角パイプ、形鋼材のいずれか一種により形成される芯材と、芯材の一端に取り付けられているエンドプレートと、該エンドプレートにおける該芯材の上方もしくは下方に取り付けられている補強リブと、を有し、
ウエブを備える形鋼材により形成される前記梁の該ウエブに対して、前記エンドプレートが当接され、該ウエブと該エンドプレートがボルト接合されていることを特徴とする、請求項2、請求項2に従属する請求項3又は4のいずれか一項に記載の折返し階段の間仕切り壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折返し階段の間仕切り壁に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅や集合住宅等の建物に関し、下階と上階が折返し階段(回り階段、U階段)により昇降自在に接続される建物構造においては、折返し階段を構成する下側直階段部と上側直階段部が間仕切り壁により仕切られるのが一般的である。この間仕切り壁は、例えば、木製の縦桟及び横桟(いずれも木桟)により形成される軸組下地材と、軸組下地材の周囲に配設される複数の面材とにより構成され、この面材には、例えば石膏ボード等が適用される。ここで、上記する軸組下地材は、木桟パネルと称することもできる。折返し階段の間仕切り壁は、鉄骨製もしくは木製の柱にビス等の固定手段により固定される。
【0003】
例えば、モジュール化された建物においては、その仕様や商品タイプに応じて上記する間仕切り壁が固定される柱の断面寸法が変化する場合があるが、この柱の断面寸法の変化に応じて間仕切り壁の厚みを変化させることにより、階段の有効幅の確保が図られている。ここで、モジュール化された建物とは、1P幅(Pはモジュールを示し、800mm乃至1100mmの間で、例えば910mm幅等、モジュール設計仕様により任意に設定可能)をシングルモジュールとして設定した上で、例えばシングルモジュール間隔やダブルモジュール間隔に柱が配設された建物を意味する。
【0004】
建築基準法施行令には、共同住宅の共用階段を除く住宅における階段の幅として、75cm以上が規定されているが、上記するモジュール化された建物において、柱の断面寸法が大きくなる方向に変化する場合、階段の有効幅を確保しようとすると、間仕切り壁の厚みを薄くする調整が余儀なくされる。しかしながら、間仕切り壁の厚みが薄くなることにより、上記するように木桟にて形成される軸組下地材を芯材とする間仕切り壁の面外剛性が低下してしまい、この面外剛性の低下に起因して間仕切り壁が変位し易くなり、不安定になるといった課題が生じ得る。
【0005】
ここで、特許文献1には、三階建て住宅にも対応することができ、かつ、現場で容易に施工することを可能にした階段構造が提案されている。具体的には、下階と上階とをつなぐ階段の少なくとも一方の側面に手摺壁(上記する間仕切り壁に相当)が接合された階段構造において、手摺壁が、上下に接合される複数の手摺壁ユニットを備えるとともに、上下に接合された複数の手摺壁ユニットの少なくとも一方の側縁部側にこれら複数の手摺壁ユニットに亘って接合される支持部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の階段構造によれば、支持部材により複数の手摺壁ユニット同士の接合部が補強されることから、手摺壁ユニットの接合部を仮支持部材により仮支持する必要がなくなり、また、手摺壁の施工に際して仮支持部材が用いられていないことから仮支持部材を撤去する必要がなく、階段の施工を省力化することができるとしている。しかしながら、この階段構造によっても、上記する課題、すなわち、柱の断面寸法の増大に対して階段の有効幅を確保するべく、間仕切り壁の厚みを薄くした際に、間仕切り壁の面外剛性が低下して変位し易くなるといった課題を解消することは難しい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、間仕切り壁の厚みを薄くした場合においても、間仕切り壁の面外剛性の低下とこれに起因する変位の増大を抑制することのできる、折返し階段の間仕切り壁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による折返し階段の間仕切り壁の一態様は、
下側直階段部と、折り返し部と、上側直階段部とにより構成される、折返し階段において、該下側直階段部と該上側直階段部を仕切る間仕切り壁であって、
縦桟と横桟とを有する軸組下地材と、横方向に延設する第一補強金物と、該軸組下地材と該第一補強金物との周囲に配設される複数の面材と、を有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、間仕切り壁の構成として、縦桟と横桟とを有する木製の軸組下地材とこの周囲に配設される複数の面材の他に、横方向に延設する第一補強金物が付加されたことにより、間仕切り壁の面外剛性が高められ、間仕切り壁の厚みが薄くなった場合でも間仕切り壁の面外剛性の低下を抑制することができる。ここで、第一補強金物は、例えば軸組下地材の内部に配設され、従って、その周囲に配設される石膏ボード等による面材の内部に隠され、軸組下地材とともに外部(階段側)から視認されない。第一補強金物としては、角パイプ、溝形鋼や山形鋼等の形鋼材等が適用できる。また、適用される第一補強金物の数は、一本でも複数本でもよく、一本の第一補強金物の有する剛性と要求される補剛性能に基づき本数が設定できる。また、縦桟と横桟はいずれも木桟であるが、その他、例えば軽量鉄骨製の桟であってもよい。
【0011】
また、本明細書において、「間仕切り壁」には、上側直階段部の途中位置から上階の床までの区間の腰壁も含まれるものとする。さらに、「横方向に延設する」とは、水平方向に延設する形態の他、水平方向から上下方向に多少傾斜した角度方向に延設する形態も含んでいる。
【0012】
また、本発明による折返し階段の間仕切り壁の他の態様は、前記第一補強金物の一端が、階間もしくは土台の梁に固定され、該梁から横方向に該第一補強金物が延設していることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第一補強金物の一端が階間の梁(胴差)や土台の梁に固定された状態で横方向に延設していることにより、当該梁が高剛性の部材であることから、第一補強金物を介して、間仕切り壁を高剛性の部材に固定することができ、間仕切り壁の変位抑制効果が高められる。
【0014】
また、本発明による折返し階段の間仕切り壁の他の態様は、複数の前記面材の内部に配設されている、縦方向に延設する第二補強金物をさらに有し、上下階の天井もしくは床に対して該第二補強金物の上端と下端が固定されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、上下階の天井もしくは床に対してその上端と下端が固定される第二補強金物をさらに有することにより、間仕切り壁の面外剛性がより一層高められ、間仕切り壁の変位抑制効果が高められる。ここで、第二補強金物は、間仕切り壁のうち、階段の上り口側の端部もしくは端部近傍に配設されるのが望ましい。この第二補強金物も第一補強金物と同様、角パイプ、溝形鋼や山形鋼等の形鋼材等が適用できる。尚、「縦方向に延設する」とは、鉛直方向に延設する形態の他、鉛直方向から多少左右方向に傾斜した角度方向に延設する径多雨も含んでいる。
【0016】
また、本発明による折返し階段の間仕切り壁の他の態様において、前記軸組下地材は、上階用軸組下地材と下階用軸組下地材を備え、該上階用軸組下地材の下面と該下階用軸組下地材の上面との間に前記第一補強金物が介在しており、
前記上階用軸組下地材と前記下階用軸組下地材が、縦方向に延設する連結縦桟により連結されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、上階用軸組下地材と下階用軸組下地材が、縦方向に延設する連結縦桟にて連結されていることにより、施工時に、連結縦桟を介して上階用軸組下地材と下階用軸組下地材の縦方向の通りを通しながら、双方の一体化を図ることができる。
【0018】
ここで、対象の建物が二階建ての場合、下階用軸組下地材は、例えば土台の梁と、一階と二階の階間の梁との間の高さを有する下地材となり、上階用軸組下地材は、階間の梁の上方に設けられる腰壁(上記するように、間仕切り壁に含まれる)用の下地材となる。一方、対象の建物が三階建ての場合、一階と二階、二階と三階に分けられ、三階建ての一階と二階に関して、下階用軸組下地材は、例えば土台の梁と、一階と二階の階間の梁との間の高さを有する下地材となり、上階用軸組下地材は、一階と二階の階間の梁と、二階と三階の階間の梁との間の高さを有する下地材となる。また、三階建ての二階と三階に関して、下階用軸組下地材は、例えば一階と二階の階間の梁と、二階と三階の階間の梁との間の高さを有する下地材となり、上階用軸組下地材は、二階と三階の階間の梁の上方に設けられる腰壁用の下地材となる。
【0019】
例えば三階建て以上の建物においては、下方の軸組下地材、中間の軸組下地材、及び上方の軸組下地材(腰壁用の下地材)のそれぞれが連結縦桟により連結されることにより、上下に長尺な軸組下地材のユニットの一体化を図ることができ、それらが、複数の第一補強金物と第二補強金物により補強されていることにより、厚みが薄くなった場合でも面外剛性の低下が抑制された間仕切り壁のユニットを形成することができる。
【0020】
また、本発明による折返し階段の間仕切り壁の他の態様は、前記第一補強金物が、角パイプ、形鋼材のいずれか一種により形成される芯材と、芯材の一端に取り付けられているエンドプレートと、該エンドプレートにおける該芯材の上方もしくは下方に取り付けられている補強リブと、を有し、
ウエブを備える形鋼材により形成される前記梁の該ウエブに対して、前記エンドプレートが当接され、該ウエブと該エンドプレートがボルト接合されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第一補強金物が、芯材と、梁のウエブに対してボルト接合されるエンドプレートを備え、エンドプレートにおける芯材の上方もしくは下方に補強リブをさらに備えていることにより、第一補強金物が梁に対して強固に接合されるとともに、エンドプレートの座屈や塑性変形を補強リブにより効果的に抑制することができる。
【0022】
ここで、例えばH形鋼により形成される梁のウエブのうち、上方フランジ側にエンドプレートが取り付けられる場合は、芯材の下方に補強リブが設けられていることにより、補強リブが、上方フランジとウエブの間のコーナーR部や、上方フランジと他の部材とを繋ぐボルト等と干渉するのを防止することができる。また、同様の理由から、ウエブのうち、下方フランジ側にエンドプレートが取り付けられる場合は、逆に芯材の上方に補強リブが設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の折返し階段の間仕切り壁によれば、柱の断面寸法の増大に対して階段の有効幅を確保するべく、間仕切り壁の厚みを薄くした場合においても、間仕切り壁の面外剛性の低下とこれに起因する変位の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例を有する折返し階段を、三階建て建物の二階の上り口側から見た外観斜視図である。
【
図2】実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例を示す正面図であって、面材を透視して間仕切り壁の内部を示した図である。
【
図3】
図2のIII-III矢視図であって、実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0026】
[実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁]
図1乃至
図5を参照して、実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例を有する折返し階段を、三階建て建物の二階の上り口側から見た外観斜視図であり、
図2は、実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例を示す正面図であって、面材を透視して間仕切り壁の内部を示した図である。また、
図3は、
図2のIII-III矢視図であって、実施形態に係る折返し階段の間仕切り壁の一例の縦断面図であり、
図4と
図5はそれぞれ、
図2のIV部の拡大図と
図2のV方向矢視図である。
【0027】
図1に示す折返し階段の間仕切り壁100は、三階建て建物における二階と三階を繋ぐ折返し階段10において、その下側直階段部10Aと、上側直階段部10C(
図2参照)を仕切る間仕切り壁である。尚、図示例の間仕切り壁は下方に延設しており、一階と二階を繋ぐ折返し階段における下側直階段部10Aと上側直階段部10Cも、図示例の間仕切り壁により仕切られる。ここで、間仕切り壁100が適用される建物は、三階建ての建物の他、二階建ての建物、四階以上の階層の建物であってもよく、建物には、戸建て住宅や集合住宅等が含まれる。
【0028】
図1に示す間仕切り壁100は、その内部に以下で詳説する軸組下地材や第一補強金物等を備え、その両広幅面に石膏ボード等の面材が取り付けられ、その周面にクロス98が貼り付けられることにより形成されている。また、折返し階段10は、蹴込板11と踏板12からなる段を複数段備えており(折り返し部では、回り踏板を有する)、踏板12の先端には段鼻13が設けられている。また、間仕切り壁100の所定の高さ位置には、上り勾配に応じた勾配を有する手摺り80が取り付けられている。
【0029】
ここで、対象の建物は、柱の間隔がモジュール単位で配設されている、モジュール化された建物であり、建物を構成する柱(図示せず)の断面寸法が大きくなる方向に変化する場合、折返し階段10の幅t2として有効幅(例えば75cm以上)を確保しようとすると、間仕切り壁100の厚みt1を薄くする調整が余儀なくされる建物である。
【0030】
図2に示すように、折返し階段10は、下側直階段部10Aと、折り返し部10Bと、上側直階段部10Cとにより構成される。図示例では、下側直階段部10Aの最下段の蹴込板11は二階の床面に通じ、上側直階段部10Cの最上段の蹴込板11は三階の床面に通じている。
【0031】
一階と二階の間の階間には、建物の平面視輪郭に沿って組み付けられた胴差を形成する梁20Aが設けられており、同様に、二階と三階の間の階間には、胴差を形成する梁20Bが設けられている。梁20はH形鋼により形成され、ウエブ21と上方フランジ22と下方フランジ23とを有する。
【0032】
梁20Bの上端の近傍から梁20Aの上端に亘る高さ範囲において、間仕切り壁100を構成する軸組下地材の一種である、下階用軸組下地材30が配設される。下階用軸組下地材30は、複数の縦桟31(木桟)と複数の横桟32(木桟)が相互に格子状に組み付けられることにより形成された木桟パネルである。より詳細には、下階用軸組下地材30は、相対的に幅広の下方軸組下地材30Aと、相対的に狭幅の上方軸組下地材30Bとにより構成され、下方軸組下地材30Aと上方軸組下地材30Bの居室側の縦桟31を共通にし、屋外側の上方軸組下地材30Bの縦桟31を相対的に居室側にセットバックさせることにより、双方の境界の屋外側に段部33を有している。
【0033】
一方、梁20Bの上端から、梁20Bの上方に立設する三階の手摺壁85に亘る範囲において、下階用軸組下地材30とともに間仕切り壁100を構成する軸組下地材の一種である、上階用軸組下地材40が配設される。上階用軸組下地材40は、複数の縦桟41(木桟)と複数の横桟42(木桟)が相互に格子状に組み付けられ、さらに、手摺壁85の上方近傍に摺り付く斜め桟43(木桟)が組み付けられることにより形成された木桟パネルであり、高さの低い腰壁用木桟パネルである。
【0034】
図2からも明らかなように、下階用軸組下地材30を構成する上方軸組下地材30Bと上階用軸組下地材40の双方の屋外側の縦桟31,41は、縦方向に通りが一致しており、双方の屋外側の側面に縦方向に延設する連結縦桟70が配設され、連結縦桟70を介して屋外側の縦桟31,41がビス等の固定手段により固定されている。連結縦桟70は木桟からなり、その側面には、折り返し部10Bに対応して縦方向に延設する手摺り80が取り付けられている。
【0035】
施工に際しては、現場において、下階用軸組下地材30と上階用軸組下地材40が個別に配設されるが、双方が縦方向に延設する連結縦桟70にて連結されることにより、施工時に、連結縦桟70を介して双方の縦方向の通りを一致させながら(通しながら)、双方の一体化を図ることができる。
【0036】
上階用軸組下地材40の最下段の横桟42の下面と、下階用軸組下地材30の最上段の横桟32の上面との間には、横方向に延設する第一補強金物50が介在しており、第一補強金物50の一端は梁20Bのウエブ21にボルト接合されている。
【0037】
図3及び
図5に示すように、第一補強金物50は、芯材51と、芯材51の一端に溶接等により取り付けられているエンドプレート52と、エンドプレート52における芯材51の下方に溶接等により取り付けられている補強リブ53とを有する。図示例の芯材51は軽量鉄骨等の角パイプにより形成され、エンドプレート52と補強リブ53は平鋼により形成されている。尚、芯材51は、山形鋼や溝形鋼等の形鋼材により形成されてもよく、補強リブ53も形鋼材により形成されてよい。また、エンドプレート52には、ウエブ21に開設されている複数(図示例は二つ)のボルト孔21aに対応する位置にそれぞれ、ボルト孔52aが開設されている。
【0038】
図5に示すように、梁20Bを構成するウエブ21や上方フランジ22、下方フランジ23には、梁20Bと他の部材をボルト接合する際に適用されるボルト孔21a、22a,23aが予め開設されている。図示例では、ウエブ21のうち、上方フランジ22の近傍に開設されている二つのボルト孔21aに対し、エンドプレート52の有する二つのボルト孔52aをそれぞれ位置合わせして連通孔を形成し、それぞれの連通孔にボルト55を螺合することにより、梁20Bに対して第一補強金物50がボルト接合される。
【0039】
図示例のように、梁20Bのウエブ21のうち、上方フランジ22側にエンドプレート52が取り付けられる場合は、芯材51の下方に補強リブ53が設けられていることにより、補強リブ53が、上方フランジ22とウエブ21の間のコーナーR部や、上方フランジ22と他の部材とを繋ぐボルト等と干渉するのを防止することができる。尚、
図5において、エンドプレート52がウエブ21における下方フランジ23側に取り付けられる場合は、図示例と逆の形態、すなわち、芯材51の上方に補強リブ53が設けられているのがよい。
【0040】
第一補強金物50が、芯材51と、梁20Bのウエブ21に対してボルト接合されるエンドプレート52を備え、エンドプレート52における芯材51の下方に補強リブ53をさらに備えていることにより、第一補強金物50が梁20Bに対して強固に接合されるとともに、エンドプレート52の座屈や塑性変形を補強リブ53により抑制することができる。
【0041】
図2のIV部を拡大した
図4に明瞭に示すように、梁20Bのウエブ21にボルト接合されて横方向に延設する第一補強金物50に対して、上階用軸組下地材40の最下段の横桟42と、下階用軸組下地材30の最上段の横桟32がそれぞれ、複数のビス91(固定手段の一例)により固定されている。
【0042】
図2に戻り、下階用軸組下地材30の最下段の横桟32は、一階と二階の階間の胴差を形成する別途の梁20Aのウエブ21にボルト接合されて横方向に延設する、別途の第一補強金物50に対して複数のビス91により固定されている。すなわち、下階用軸組下地材30は、上下にある第一補強金物50を介して上下の梁20B,20Aに強固に固定される。
【0043】
一方、上階用軸組下地材40は、その下方が第一補強金物50を介して梁20Bに強固に固定され、居室側の縦桟41が三階の手摺壁85や三階の床面材86に対してビス等により固定される。
【0044】
また、
図2に示すように、下階用軸組下地材30のうち、居室側の縦桟31は、縦方向に延設する第二補強金物60に対してビス91により固定されている。上方の梁20Bの下方には二階の天井面材95が配設され、下方の梁20Aの上方には二階の床面材87が配設されており、それらに対して例えばランナー(図示せず)が取り付けられ、上下のランナーに対して第二補強金物60の上下端がビス等を介して固定される。ここで、図示例の第二補強金物60も軽量鉄骨等の角パイプにより形成されているが、その他、形鋼材により形成されてもよい。
【0045】
第二補強金物60を図示例の位置に配設することにより、間仕切り壁100のうち、特に上り口側の端部が補強される。
【0046】
図2に示すように、下階用軸組下地材30と、上階用軸組下地材40と、それらの屋外側の端部同士を繋ぐ連結縦桟70と、下階用軸組下地材30と上階用軸組下地材40の間に介在して横方向に延設する第一補強金物50と、下階用軸組下地材30の居室側に配設されて縦方向に延設する第二補強金物60とにより、間仕切り壁100の内部の基本骨格が構成される。そして、この基本骨格の両側の広幅面に石膏ボード等の面材35(
図3参照)がビス等により固定され、その周面にクロス98(
図1参照)が貼り付けられることにより、間仕切り壁100が形成される。
【0047】
上記するように、モジュール化された建物において、建物を構成する柱の断面寸法が大きくなる方向に変化する場合、折返し階段10の幅t2として有効幅を確保しようとすると、
図1及び
図3に示す間仕切り壁100の厚みt1を薄くする調整が余儀なくされる。そして、間仕切り壁の厚みが薄くなることにより、木桟にて形成される軸組下地材30,40を芯材とする間仕切り壁の面外剛性が低下してしまい、この面外剛性の低下に起因して間仕切り壁が変位し易くなり、不安定になり得る。
【0048】
しかしながら、図示する間仕切り壁100は、木製の軸組下地材30、40とこの周囲に配設される複数の面材35の他に、胴差を形成する梁20に固定されて横方向に延設する第一補強金物50が付加されたことにより、間仕切り壁100の面外剛性が高められ、間仕切り壁100の厚みt1が薄くなった場合でもその面外剛性の低下とこれに起因する変位の増大を抑制することができる。
【0049】
さらに、間仕切り壁100が、上下階の天井もしくは床に対してその上端と下端が固定される第二補強金物60をさらに有することにより、間仕切り壁100の面外剛性がより一層高められ、その変位抑制効果が一層高められる。
【0050】
尚、図示を省略するが、一階の土台を形成する梁と梁20Aの間にも軸組下地材30と同様の軸組下地材が配設され、当該軸組下地材が土台の梁と梁20Aから横方向に延設する上下の第一補強金物50に固定されるとともに、これら上下の軸組下地材同士が連結縦桟にて連結されることにより、一階から三階に亘って一体化された間仕切り壁が形成される。
【0051】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0052】
例えば、軸組下地材と、第一補強金物のみを基本骨格とする(第二補強金物と連結縦桟を備えていない)間仕切り壁であってもよい。また、軸組下地材と、第一補強金物と、第二補強金物と連結縦桟のいずれか一方のみを基本骨格とする(第二補強金物と連結縦桟のいずれか一方を備えていない)間仕切り壁であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10:折返し階段
10A:下側直階段部
10B:折り返し部
10C:上側直階段部
11:蹴込板
12:踏板
13:段鼻
20,20A,20B:梁(胴縁、)
21:ウエブ
22:上方フランジ
23:下方フランジ
30:下階用軸組下地材(軸組下地材)
30A:下方軸組下地材
30B:上方軸組下地材
31:縦桟
32:横桟
33:段部
35:面材
40:上階用軸組下地材(軸組下地材)
41:縦桟
42:横桟
43:斜め桟
50:第一補強金物
51:芯材
52:エンドプレート
53:補強リブ
55:ボルト
60:第二補強金物
70:連結縦桟
80:手摺り
85:手摺壁
86,87:床面材
91:ビス(固定手段)
95:天井面材
100:間仕切り壁(折返し階段の間仕切り壁)