IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028314
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】活性剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20220208BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20220208BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/67
A61Q19/00
A61K8/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131634
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】田上 安宣
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC01
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温環境下での水への溶解性及び高温での保存安定性に優れる活性剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)グリセリンモノアルキルエーテル、(b)ポリグリセリンアルキルエーテル、(c)下記式(II)のアスコルビン酸誘導体を含有する活性剤組成物。

(R1~Rは、それぞれ独立して水素原子または、R5-CO-の何れかであり、R1~Rのうち少なくとも一つはR5-CO-である。Rは炭素数が4~24のアルキル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルキル基の炭素数が4~24であるグリセリンモノアルキルエーテルを94~99.999質量%、
(b)下記式(I)で示されるポリグリセリンアルキルエーテルを0.001~5質量%、
(c)下記式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体を0~5質量%含有する活性剤組成物。
【化1】

【化2】

(R1~Rは、それぞれ独立して水素原子または、R5-CO-の何れかであり、R1~Rのうち少なくとも一つはR5-CO-である。Rは炭素数が4~24のアルキル基である。)
【請求項2】
請求項1記載の活性剤組成物を0.01~10質量%含有する化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グリセリンモノアルキルエーテルが、低刺激な非イオン性界面活性剤として、パーソナルケア、芳香剤、化粧品、トイレタリー製品など様々な用途で活用されている。なかでも、グリセロールモノ2-エチルヘキシルエーテルは、保湿性や被膜性に優れ、また、皮膚刺激性と皮膚感作性が小さいにも関わらず、防腐助剤としての効能を持つことから着目されている。
グリセリンモノアルキルエーテルが使用されている例として、特許文献1には、グリセリルアルキルエーテル、香料、水、エタノールからなる空間消臭速度に優れる消臭剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、グリセリルアルキルエーテル、脂肪酸、高級アルコール、水からなる洗浄後の触感に優れる皮膚洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、グリセリルアルキルエーテルとグレープフルーツ種子抽出物を組み合わせた抗菌性に優れる化粧料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-289221号公報
【特許文献2】特開2012-87072号公報
【特許文献3】特開2013-14554号公報
【特許文献4】特表2003-535116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリセリンモノアルキルエーテルは水系の組成物で多く処方されている。その一方、グリセリンモノアルキルエーテルの水への溶解性が悪く、保湿や防腐助剤としての効果を期待して配合量を増やしたい場合にはアルコール類と併用し水への溶解性を向上させるなどの工夫が行われている。しかし、実際は寒冷地などで使用される製品においては、グリセリンモノアルキルエーテルは、低温での溶解性の不安から配合量が抑えられるとともに、併用されるアルコール類の量も多くなっている。
【0005】
保湿性や防腐助剤としての効果を狙ってグリセリンモノアルキルエーテルの配合量を増やしたいというニーズは強く、アルコールの配合量が少ない場合の低温環境下でも水溶解性に優れるグリセリンモノアルキルエーテルの開発が望まれている。
また、グリセリンモノアルキルエーテルは、極端な高温環境下で長期間保存した場合、樹皮の香りに似た軽めの臭いが生じることがあり、特に50℃以上で長期間保存した場合に臭いが顕著になる。臭いの発生したグリセリンモノアルキルエーテル処方は、各製品の品質にも影響するため原料となるグリセリンモノアルキルエーテルの保管温度には十分な配慮が必要とされていた。
上述した2つの課題は、特許文献1~3では述べられていない。また、長期保管時の安定性の改良には特許文献4において、グリセリンモノアルキルエーテルにビタミンEを配合する方法が開示されているが、低温での溶解性の向上については述べられていない。
【0006】
上述のように、グリセリンモノアルキルエーテルの保湿性や防腐助剤としての効能に注目が集まる中、グリセリンモノアルキルエーテルに対して、低温環境下での水への溶解性の向上と高温での保存安定性の向上が求められていた。
そこで本発明は、低温環境下でアルコールを用いない場合であっても水への溶解性に優れ、かつ高温での保存安定性に優れるグリセリンモノアルキルエーテルを含む活性剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明者が鋭意検討した結果、特定のグリセリンモノアルキルエーテルと、特定のポリグリセリンアルキルエーテルを一定量ずつ含む活性剤組成物が、グリセリンモノアルキルエーテルと同等の保湿性や防腐助剤としての機能を有しながら、低温環境下での水への溶解性と高温での保存安定性に優れることを見出し、化粧料用途に好適に用いることができることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]~[2]に関する。
【0008】
[1](a)アルキル基の炭素数が4~24であるグリセリンモノアルキルエーテルを94~99.999質量%、(b)下記式(I)で示されるポリグリセリンアルキルエーテルを0.001~5質量%、(c)下記式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体を0~5質量%含有する活性剤組成物。
【化1】


【化2】

(R1~Rは、それぞれ独立して水素原子または、R5-CO-の何れかであり、R1~Rのうち少なくとも一つはR5-CO-である。Rは炭素数が4~24のアルキル基である。)
[2]上記[1]に記載の活性剤組成物を0.01~10質量%含有する化粧料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、低温環境下のアルコールフリーで水への溶解性に優れ、且つ、高温での保存安定性に優れる活性剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量の範囲など)を段階的に記載した場合、各下限値および上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載は、「10~90」、「20~100」、「10~20」または「90~100」に変更することができる。また、記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限値および下限値)の数値を含むものとする。例えば、「2~5」は2以上5以下を表す。
【0011】
本発明の活性剤組成物は、(a)アルキル基の炭素数が4~24であるグリセリンモノアルキルエーテルを94~99.999質量%、(b)下記式(I)で示されるポリグリセリンアルキルエーテルを0.001~5質量%、(c)下記式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体を0~5質量%含有する。
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】

(R1~Rは、それぞれ独立して水素原子または、R5-CO-の何れかであり、R1~Rのうち少なくとも一つはR5-CO-である。Rは炭素数が4~24のアルキル基である。)
【0014】
以下、アルキル基の炭素数が4~24であるグリセリンモノアルキルエーテルのことを成分(a)と、式(I)で示されるポリグリセリンアルキルエーテルのことを成分(b)と、式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体のことを成分(c)と記載することもある。
【0015】
<成分(a):アルキル基の炭素数が4~24であるグリセリンモノアルキルエーテル>
本発明の活性剤組成物はアルキル基の炭素数が4~24であるグリセリンモノアルキルエーテル(成分(a))を含有する。
成分(a)のグリセリンモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は4~24であり、6~20が好ましい。グリセリンモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数が4未満であると、親水性が高くなるため界面活性剤としての機能が低下するとともに、防腐助剤効果も低下する。また、グリセリンモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数が24を超える場合も界面活性剤としての機能が低下するとともに、保湿性が低下する。また、炭素数24を超えると、炭素数の増加に見合った効果を得ることができず、入手も困難となることがある。
【0016】
グリセリンモノアルキルエーテルとしては、例えば、アルキル鎖が直鎖型、分岐型、脂環式のものが挙げられる。なかでも、溶解性を期待する場合は分岐型のものが特に好ましい。グリセリンモノアルキルエーテルとしては、具体的にはグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル、グリセリンモノパルミトイルエーテルなどが挙げられ、中でもグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテルが好ましい。
本発明の成分(a)は、一種を単独で使用することもでき、または二種類以上を併用することもできる。
【0017】
本発明の活性剤組成物中の成分(a)の含有量は、94~99.999質量%であり、好ましくは95~99.999質量%であり、より好ましくは97~99.995質量%であり、さらに好ましくは、98~99.99質量%である。成分(a)の含有量が94質量%未満であると、保湿性効果が著しく低下する。また、99.999質量%を超えると、発明の効果である高温時の臭気の抑制と低温での溶解性が得られない。
【0018】
<成分(b):式(I)で示されるポリグリセリンアルキルエーテル>
本発明の活性剤組成物は、下記式(I)で示されるポリグリセリンアルキルエーテル(成分(b))を含有する。
【化5】

成分(b)の含有量は、0.001~5質量%であり、好ましくは0.005~3質量%であり、より好ましくは0.01~2質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.8質量%である。成分(b)の含有量が0.001質量%未満であると高温保管時の臭気が増加するとともに低温溶解性が低下する傾向がある。また、5質量%を超えると配合量に応じた効果を得ることができず、高温保管時の臭気抑制効果と低温溶解性向上効果は頭打ちするだけである。
【0019】
<成分(C):式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体>
本発明の活性剤組成物は、上記した成分(a)、成分(b)以外に、第3成分として式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体(以下、成分(c)ともいう)を含有してもよい。活性剤組成物が成分(C)を含有することで、より高温環境下での臭気の発生が抑制される。
【化6】

(R1~Rは、それぞれ独立して水素原子または、R5-CO-の何れかであり、R1~Rのうち少なくとも一つはR5-CO-である。Rは炭素数が4~24のアルキル基である。)
【0020】
式(II)で示されるアスコルビン酸誘導体のRのアルキル基の炭素数は4~24が好ましく、6~20がより好ましい。アルキル基の炭素数が4未満であると本活性剤組成物を含む化粧料組成物の濡れ広がりが悪い。アルキル基の炭素数が24を超えると、疎水性が強くなりすぎて活性剤組成物を化粧品等に配合時に溶解性が悪くなるとともに、炭素数の増加に見合った効果を得ることができず、入手も困難となることがある。成分(c)としては、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸などを好適に使用することができる。これらの中でも、成分(c)としては、相溶性の観点から、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルがより好ましい。
成分(c)は、上記式(II)を満足する化合物から選ばれる一種を単独で使用することもでき、または二種類以上を併用することもできる。
【0021】
活性剤組成物中の成分(c)の含有量は、0~5質量%であり、0.02~3質量%が好ましく、0.05~2質量%がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0022】
<化粧料組成物>
本発明の化粧料組成物は、上記した活性剤組成物を0.01~10質量%含有する。
該活性剤組成物は、水への溶解性に優れるため、アルコール類を用いなくても上記所定の濃度に容易に調整することが可能となる。ただし、本発明の化粧料組成物にアルコール類を配合することを否定するものではない。
活性剤組成物の含有量を0.01質量%以上とすることにより、化粧料組成物の保湿性及び被膜性向上させることができ、さらに、長期間保存した際の臭気の発生を抑制できる。活性剤組成物の含有量を10質量%以下とすることにより、水への適切な溶解性を確保でき、添加量に応じた効果を得ることができる。このような観点から、化粧料組成物中の活性剤組成物の含有量は、0.05~5質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
【0023】
(その他の成分)
化粧料組成物は、上記した活性剤組成物以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、化粧品に一般的に用いられている成分が挙げられる。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、エタノール、イソプロパノール等の溶剤、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油等の油分、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の保湿剤、エチレンジアミン四酢酸塩、エデト酸等のキレート剤、ジステアリン酸エチレングリコール等のパール化剤、パラメトキシケイ皮酸エステル、メトキシジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤、増粘剤、酸化防止剤、pH調整剤、植物抽出物、アミノ酸、ビタミン類、色素、香料等が挙げられる。
【0024】
(水)
本発明の化粧料組成物において、活性剤組成物および必要に応じて配合されるその他の成分以外の残部は水である。化粧料組成物中の水の含有量は、好ましくは70~99.9質量%、より好ましくは80~99.9質量%である。
【実施例0025】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
(低温での水への溶解性評価)
バイヤル瓶に0.023gの各実施例及び比較例の活性剤組成物を秤取った後、水を加えて10gの水溶液にして化粧性組成物を調製した。その後バイヤル瓶を氷冷水に10分間浸漬させ良く冷却した。
その後、バイヤル瓶を引き上げて水と結露水をワイプでふき取りそれぞれの外観を比較し、以下の判定基準に基づき溶解性を評価した。
◎:無色透明
〇:微濁
×:乳白色
【0027】
(60℃1か月後保管後の臭気評価)
20mLのガラスバイアル瓶に対して、上記した溶解性評価で調整したものと同様の組成の化粧料組成物10gを入れ、ふたをしてよく攪拌した後、60℃で1か月保管した。その後、瓶のふたをあけ、バイヤル瓶の口から任意の距離での臭気の有り無しを次の判定基準に基づき評価した。
◎:バイヤル瓶から5cmで不快な臭気無し
〇:バイヤル瓶から10cmで不快な臭気無し
×:バイヤル瓶から10cmで不快な臭気有り
【0028】
(実施例1)
20mLのガラスバイアル瓶にグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル9.999g、ジグリセリンビス2-エチルヘキシルエーテル0.001gを秤取り、ミックスローターで10h常温で攪拌し、活性剤組成物を得た。得られた活性剤組成物の低温での水への溶解性と60℃で1か月保管後の臭気を評価した。
【0029】
(実施例2)
活性剤組成物の組成をグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル9.950g、ジグリセリンビス2-エチルヘキシルエーテル0.050 gに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0030】
(実施例3)
活性剤組成物の組成をグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル9.949g、ジグリセリンビス2-エチルヘキシルエーテル0.001g、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸0.050gに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0031】
(実施例4)
活性剤組成物の組成をグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル9.850g、ジグリセリンビス2-エチルヘキシルエーテル0.100g、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル0.050gに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0032】
(比較例1)
活性剤組成物の組成をグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル10.00gにした以外は実施例1と同様に実施した。
【0033】
(比較例2)
活性剤組成物の組成をグリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル9.950g、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル0.05gに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、本発明の要件を満足する各実施例の活性剤組成物は、低温での水への溶解性が良好であり、高温長期保管時の臭気の発生もなかった。
これに対して、比較例1の活性剤組成物は、本発明の要件のポリグリセリンアルキルエーテルを含んでおらず、グリセリンモノアルキルエーテルのみを用いた例であるが、低温での水への溶解性悪く、また、高温長期保管時に臭気が発生した。
比較例2の活性剤組成物は、本発明の要件のポリグリセリンアルキルエーテルを含んでおらず、グリセリンモノアルキルエーテルと、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルを用いた例であるが、高温保管時の臭気発生は抑制されていたものの、低温での水への溶解性が悪かった。