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  • 特開-自消材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028318
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】自消材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/02 20060101AFI20220208BHJP
   C01G 9/04 20060101ALI20220208BHJP
   C09K 21/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C09K21/02
C01G9/04
C09K21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131641
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】515065936
【氏名又は名称】株式会社コスト管理サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝美
【テーマコード(参考)】
4H028
【Fターム(参考)】
4H028AA05
4H028AA06
4H028AA08
4H028AA09
4H028AA10
4H028AA24
4H028BA06
(57)【要約】
【課題】着火してもすぐに自消する自消材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る自消材の製造方法は、水に対して炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、クエン酸、及びオルトケイ酸の粉末をそれぞれ溶解させて溶解液を形成する溶解工程と、前記溶解液から水分を除去して結晶体を形成する除去工程と、前記結晶体を粉砕して粉状物とする粉砕工程とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対して炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、クエン酸、及びオルトケイ酸の粉末をそれぞれ溶解させて溶解液を形成する溶解工程と、
前記溶解液から水分を除去して結晶体を形成する除去工程と、
前記結晶体を粉砕して粉状物とする粉砕工程とを備えたことを特徴とする自消材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着火してもすぐに自消し、特に樹脂と混合して壁紙等とした場合に自消性に優れた自消材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自消材料として、ホウ酸、セスキ炭酸ソーダ、及びクエン酸を混合させて製造されたものが知られている。(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、特にホウ酸、セスキ炭酸ソーダ、及びクエン酸を主とし、さらに種々の材料を混合して様々な自消作用を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-166289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は特に外壁に用いるのに特化した成分にて自消材料を製造している。自消材は、種々の樹脂と混合させて用いるものであるため、適用する場所に応じてその成分を変更させて最適なものを用いることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、着火してもすぐに自消する自消材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、水に対して炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、クエン酸、及びオルトケイ酸の粉末をそれぞれ溶解させて溶解液を形成する溶解工程と、前記溶解液から水分を除去して結晶体を形成する除去工程と、前記結晶体を粉砕して粉状物とする粉砕工程とを備えたことを特徴とする自消材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、クエン酸、及びオルトケイ酸の粉末をそれぞれ水に溶解してから結晶化して結晶体とし、この結晶体から得られた粉状物が自消作用を発揮している。すなわち、得られた粉状物を加工することで様々なものに適用し、着火されても直ぐに自消させることができる。特に得られた粉状物はエポキシ系樹脂と混合させると好適である。他には、塩化ビニル系樹脂やエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂にも適用可能である。例えば、エポキシ系樹脂に混合した場合は、重量比にて3%粉状物を含めるだけで、0秒にて消火することが確認されている。さらに、塩化ビニル系樹脂に混合して適用すれば、COやCOはもとより、ダイオキシンの発生も抑制できる。また、本発明に係る自消材を混合した各樹脂は、燃焼させた際のガス量が半分程度に抑制されるので、COが蔓延してしまうことを防止でき、高い安全性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る自消材の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明に係る自消材の製造方法のフローチャートにて製造された自消材の着火実験後の概略写真である。
図3】本発明に係る自消材の製造方法のフローチャートにて製造された自消材の着火実験を示す概略写真である。
図4】本発明に係る自消材の製造方法のフローチャートにて製造された自消材の着火実験を示す概略写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る自消材の製造方法は、図1に示すように、まず溶解工程を行う(ステップS1)。この混合工程は、水に対して炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、クエン酸、及びオルトケイ酸の粉末をそれぞれ溶解させて溶解液を形成する工程である。具体的には、容器に水を貯留した後、粉末状のそれぞれの材料を供給して混合液を形成する。その後、この混合液を加熱や撹拌等し、それぞれの材料を溶解させて溶解液とする。溶解液では原料が粉末として残っていてもよく、液体部分が飽和状態となっていれば好ましい。
【0010】
次に除去工程を行う(ステップS2)。この除去工程は、溶解液から水分を除去して結晶体を形成する工程である。具体的には、溶解液が入った容器をそのまま長時間放置して水分を蒸発させる。あるいは、溶解液が収容されている容器を氷水が入った容器に浸漬させてスラリー状とし、さらに遠心分離機を用いて上澄み液を除去してもよい。要は、溶解液中の成分を反応させて結晶化させればどのような方法を用いてもよい。結晶体はさらに乾燥させてもよい。
【0011】
次に、粉砕工程を行う(ステップS3)。この粉砕工程は、結晶を粉砕して粉状物とする工程である。除去工程にて得られた結晶体は塊として得られることから、これを粉砕して粉状とするものである。これにより、自消材(粉状物)を得ることができる。
【0012】
本発明に係る自消材の製造方法では、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸、クエン酸、及びオルトケイ酸を材料としている。これらの化合物を出発材料として用いたことに特に特徴がある。これらの粉末材料をそれぞれ水に溶解してから結晶化して結晶体とし、この結晶体から得られた粉状物が自消作用を発揮している。そして、得られた粉状物を加工することで様々なものに適用し、着火されても直ぐに自消させることができる。特に得られた粉状物はエポキシ系樹脂と混合させると好適である。他には、塩化ビニル系樹脂やエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂にも適用可能である。例えば、エポキシ系樹脂に混合した場合は、重量比にて3%粉状物を含めるだけで、0秒にて消火することが確認されている。さらに、塩化ビニル系樹脂に混合して適用すれば、COやCOはもとより、ダイオキシンの発生も抑制できる。また、本発明に係る自消材を混合した各樹脂は、燃焼させた際のガス量が半分程度に抑制されるので、環境にも優しく、COが蔓延してしまうことを防止でき、高い安全性を担保できる。
【0013】
本発明に係る自消材の製造方法によって製造された自消材が本当に自消作用を有しているのか実験を行った。溶解工程にて供給する各種材料の重量比は、以下の通りとした。
炭酸マグネシウム 4%
水酸化カルシウム 17%
塩化ナトリウム 22%
塩化亜鉛 2%
ホウ酸 17%
クエン酸 37%
オルトケイ酸 1%
以後の実験もこの重量比にて溶解工程を行った。今回主として適用させる壁紙用の樹脂に関しては、この重量比が最適であることを確認している。
【0014】
まずは、上記重量比にて溶解工程行い、その後除去工程、粉砕工程を行って得られた粉状物をエポキシ系樹脂に重量比3%混合させた。そしてこのエポキシ系樹脂に向けて着火し、消火したところ、エポキシ系樹脂は焦げただけで燃焼はしなかった。次に、図2に示すように、アクリル系樹脂及びパルプの混合物に対して、上記粉状物を20%混合させた。これを1分間着火したところ、燃焼はせず、焦げただけであった。したがって、20%の混合でエポキシ系樹脂にも自消性能を付与できた。
【0015】
次に、塩化ビニル系樹脂としてペースト塩ビ(リューロンペースト(登録商標))に上記粉状物を10%混合させた。さらに比較例として、粉状物を混合させないものも用意した。これらをケース内にいれて着火したところ、図3に示すように紙面向かって左側の実施例では炎が上がらず、紙面向かって右側の比較例では勢いよく炎が燃えた。約30秒着火を続けたところ、図4に示すように、実施例では着火部分が焦げたのみでガス(煙)もあまり出なかった。一方で比較例では黒鉛が出てしまったため視認性も悪くなり、樹脂はほとんどなくなってしまった。
【0016】
このように、上記重量比で各種樹脂に3%~25%程度混合させるのみで、自消作用を付与していることが分かった。
図1
図2
図3
図4