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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028333
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】作業車両用の自動走行ユニット
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220208BHJP
   A01B 61/02 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131667
(22)【出願日】2020-08-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター、「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人帯広畜産大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】白藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 禎稔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 与
【テーマコード(参考)】
2B041
2B043
【Fターム(参考)】
2B041AA06
2B041AA11
2B041AC03
2B041AC11
2B041CG08
2B041HA02
2B041HA05
2B041HA07
2B041HA14
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043BB12
2B043DA15
2B043DA17
2B043ED13
2B043ED27
(57)【要約】
【課題】ユーザが望む動作シーケンスで作業車両の状態を切り換えることができる作業車両用の自動走行ユニットを提供する。
【解決手段】作業車両用の自動走行ユニットにおいて、走行車体1と作業機3Dとを有する作業車両Vを目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部23Fと、走行車体1を動作させるための走行用動作機器18,32、及び、作業機3Dを動作させるための作業機用動作機器19,49を含む電子制御可能な複数の動作機器と、作業機3Dに応じて設定された作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする任意設定部23Faとを有し、自動走行制御部23Fは、任意設定部23Faにて任意設定された作業機対応の動作シーケンスに基づいて動作機器の動作を制御して走行車体1及び作業機3Dを動作させる。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と前記走行車体に連結された作業機とを有する作業車両を目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部と、
前記走行車体を動作させるための走行用動作機器、及び、前記作業機を動作させるための作業機用動作機器を含む電子制御可能な複数の動作機器と、
前記作業機に応じて設定された作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする任意設定部とを有し、
前記自動走行制御部は、前記任意設定部にて任意設定された前記作業機対応の動作シーケンスに基づいて前記動作機器の動作を制御して前記走行車体及び前記作業機を動作させる作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項2】
前記任意設定部は、前記作業車両の状態を切り換える手動操作が行われた場合の操作手順と操作タイミングとを記録することで前記作業機対応の動作シーケンスを任意設定する請求項1に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項3】
前記任意設定部は、前記操作手順及び前記操作タイミングのカスタマイズを可能にする請求項2に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項4】
前記目標経路には、前記作業機対応の動作シーケンスを設定するための動作基準位置が含まれており、
前記任意設定部は、前記動作基準位置を基準にした距離と時間とのいずれか一方又は双方に基づく前記作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする請求項1~3のいずれか一項に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項5】
前記作業機には、当該作業機の貯留部における貯留物量が制限値に達したことを前記任意設定部に出力する検出器が備えられ、
前記任意設定部は、前記検出器の検出時点を基準にした距離と時間とのいずれか一方又は双方に基づく前記作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする請求項1~4のいずれか一項に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項6】
前記走行車体に着脱可能な前記作業機ごとに任意設定された前記作業機対応の動作シーケンスを記憶する記憶部と、
前記作業機の種類を含む作業機情報の入力を可能にする作業機情報入力部とを有し、
前記任意設定部は、前記作業機情報入力部を介して入力された前記作業機情報に基づいて、前記作業機情報に応じた前記作業機対応の動作シーケンスを前記記憶部から読み出して設定する請求項1~5のいずれか一項に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項7】
前記走行車体に着脱可能な前記作業機ごとに任意設定された前記作業機対応の動作シーケンスを記憶する記憶部と、
前記走行車体に対する前記作業機の連結に連動して当該作業機に関する情報を前記作業機から前記走行車体に送信する通信システムとを有し、
前記任意設定部は、前記通信システムを介して取得した前記作業機に関する情報に基づいて、当該情報に応じた前記作業機対応の動作シーケンスを前記記憶部から読み出して設定する請求項1~6のいずれか一項に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【請求項8】
前記作業機用動作機器には、前記走行車体に備えられた油圧制御用の動作機器と、前記作業機に備えられて前記油圧制御用の動作機器にて動作が制御される油圧式動作機器とが含まれている請求項1~7のいずれか一項に記載の作業車両用の自動走行ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の自動走行を可能にする作業車両用の自動走行ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車両用の自動走行ユニットにおいては、作業車両が作業領域から非作業領域に移動する場合は、作業車両のロータリ耕耘機(作業機の一例)を作業状態から非作業状態に切り換え、作業車両が非作業領域から作業領域に移動する場合は、ロータリ耕耘機を非作業状態から作業状態に切り換える作業機制御部が備えられている。そして、作業機制御部としては、ロータリ耕耘機を作業状態から非作業状態に切り換える場合は、先にロータリ耕耘機の駆動を停止させて、この駆動停止から遅延時間の経過後にロータリ耕耘機を上昇させ、逆に、ロータリ耕耘機を非作業状態から作業状態に切り換える場合は、ロータリ耕耘機を駆動させると同時に下降させるように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-121594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車両用の自動走行ユニットにおいては、ロータリ耕耘機を作業状態と非作業状態とに切り換えるための動作機器として昇降アクチュエータとPTOクラッチとが備えられている。これにより、作業機制御部は、予め設定された動作シーケンスに基づいて昇降アクチュエータ及びPTOクラッチの動作を制御することで、ロータリ耕耘機を作業状態から非作業状態に切り換える場合には、先にロータリ耕耘機の駆動を停止させてから遅延時間の経過後にロータリ耕耘機を上昇させることができ、又、ロータリ耕耘機を非作業状態から作業状態に切り換える場合には、ロータリ耕耘機を駆動させると同時に下降させることができる。
【0005】
しかしながら、ユーザが作業車両を手動運転する場合に、全てのユーザが上記のような動作シーケンスに基づいてロータリ耕耘機を作業状態と非作業状態とに切り換えているわけではなく、ユーザによっては、圃場の状態や作業性などを考慮した任意の動作シーケンスでロータリ耕耘機を作業状態と非作業状態とに切り換えることがある。
【0006】
具体的には、例えば、ロータリ耕耘機の駆動を停止させると同時にロータリ耕耘機を上昇させる、又は、走行車体を一時停止させた後にロータリ耕耘機の駆動を停止させると同時にロータリ耕耘機を上昇させる、といった任意の動作シーケンスでロータリ耕耘機を作業状態から非作業状態に切り換えることがある。
【0007】
このようなユーザが、特許文献1に記載の作業車両用の自動走行ユニットを使用した作業車両の自動走行でロータリ耕耘機による耕耘作業を行った場合には、ユーザが好む動作シーケンスとは異なる動作シーケンスに基づく各動作機器の動作でロータリ耕耘機が作業状態と非作業状態とに切り換わることから、ユーザに不満を感じさせることがある。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ユーザが望む動作シーケンスで作業車両の状態を切り換えることができる作業車両用の自動走行ユニットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、作業車両用の自動走行ユニットにおいて、
走行車体と前記走行車体に連結された作業機とを有する作業車両を目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部と、
前記走行車体を動作させるための走行用動作機器、及び、前記作業機を動作させるための作業機用動作機器を含む電子制御可能な複数の動作機器と、
前記作業機に応じて設定された作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする任意設定部とを有し、
前記自動走行制御部は、前記任意設定部にて任意設定された前記作業機対応の動作シーケンスに基づいて前記動作機器の動作を制御して前記走行車体及び前記作業機を動作させる点にある。
【0010】
本構成によれば、任意設定された作業機対応の動作シーケンスに基づいて動作機器の動作が制御されることで、走行車体及び作業機は任意設定された作業機対応の動作シーケンスに従って動作することになる。
【0011】
これにより、例えば、作業機対応の動作シーケンスが、走行車体の後部にロータリ耕耘機が昇降可能に連結された作業車両を作業状態から非作業状態に切り換えるためのものである場合には、作業クラッチ(作業機用動作機器)による作業機の駆動停止が行われた後にリフトシリンダ(作業機用動作機器)による作業機の上昇が行われる、リフトシリンダによる作業機の上昇が開始された後に作業クラッチによる作業機の駆動停止が行われる、作業クラッチによる作業機の駆動停止と同時にリフトシリンダによる作業機の上昇が行われる、又は、変速装置(走行用動作機器)及びブレーキ(走行用動作機器)による走行車体の停止が行われた後に作業クラッチによる作業機の駆動停止とリフトシリンダによる作業機の上昇とが同時に行われる、などの任意の動作シーケンスで作業車両を作業状態から非作業状態に切り換えることができる。
【0012】
つまり、作業車両用の自動走行ユニットを使用した作業車両の自動走行においても、ユーザが好む圃場の状態や作業性などが考慮された任意の動作シーケンスで作業車両の状態を切り換えることができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、
前記任意設定部は、前記作業車両の状態を切り換える手動操作が行われた場合の操作手順と操作タイミングとを記録することで前記作業機対応の動作シーケンスを任意設定する点にある。
【0014】
本構成によれば、ユーザが作業車両の状態を切り換えるための手動操作を行えば、任意設定部にて、そのときの操作手順と操作タイミングとが記録されて作業機対応の動作シーケンスが任意設定される。
【0015】
これにより、ユーザは、作業車両の状態を切り換えるための操作手順や操作タイミングを操作端末などの手動操作で入力する必要がなくなる。その結果、ユーザが作業機対応の動作シーケンスを任意設定する場合に要する手間を大幅に削減することができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、
前記任意設定部は、前記操作手順及び前記操作タイミングのカスタマイズを可能にする点にある。
【0017】
本構成によれば、ユーザは、自身の手動操作に基づく操作手順と操作タイミングから得た作業機対応の動作シーケンスに対して、操作手順及び操作タイミングに修正を加えることや、動作シーケンスの全体を手動入力し直すことができる。これにより、よりユーザの好みに適した作業機対応の動作シーケンスを任意設定することができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、
前記目標経路には、前記作業機対応の動作シーケンスを設定するための動作基準位置が含まれており、
前記任意設定部は、前記動作基準位置を基準にした距離と時間とのいずれか一方又は双方に基づく前記作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする点にある。
【0019】
本構成によれば、例えば、作業機対応の動作シーケンスとして、作業車両が動作基準位置に到達したときに、その到達に伴って作業クラッチによる作業機の駆動停止が行われた後、動作基準位置への到達から所定時間の経過後又は所定距離の走行後にリフトシリンダによる作業機の上昇が行われる、又は、動作基準位置から所定時間又は所定距離だけ遡った地点又は時点においてリフトシリンダによる作業機の下降が行われる、といった動作シーケンスを任意設定することができる。
【0020】
これにより、動作基準位置を基準にした距離や時間を含めたよりユーザの好みに適した作業機対応の動作シーケンスを任意設定することができる。
【0021】
本発明の第5特徴構成は、
前記作業機には、当該作業機の貯留部における貯留物量が制限値に達したことを前記任意設定部に出力する検出器が備えられ、
前記任意設定部は、前記検出器の検出時点を基準にした距離と時間とのいずれか一方又は双方に基づく前記作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする点にある。
【0022】
本構成によれば、例えば、作業機対応の動作シーケンスとして、検出器が貯留物量の制限値への到達を検出したときに、その検出に伴って変速装置及びブレーキによる走行車体の停止が行われた後、検出時点を基準にした所定時間の経過後又は所定距離の走行後に作業クラッチによる作業機の駆動停止が行われる、といった動作シーケンスを任意設定することができる。
【0023】
これにより、検出器の検出時点を基準にした距離や時間を含めたよりユーザの好みに適した作業機対応の動作シーケンスを任意設定することができる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、
前記走行車体に着脱可能な前記作業機ごとに任意設定された前記作業機対応の動作シーケンスを記憶する記憶部と、
前記作業機の種類を含む作業機情報の入力を可能にする作業機情報入力部とを有し、
前記任意設定部は、前記作業機情報入力部を介して入力された前記作業機情報に基づいて、前記作業機情報に応じた前記作業機対応の動作シーケンスを前記記憶部から読み出して設定する点にある。
【0025】
本構成によれば、作業機対応の動作シーケンスが記憶部に記憶された作業機を走行車体に連結して作業を行う場合には、ユーザは、作業機情報入力部を使用して作業機情報を入力するだけで、作業機に応じて任意設定された作業機対応の動作シーケンスを設定することができる。
【0026】
又、記憶部に作業機対応の動作シーケンスが記憶された作業機と類似の作業機を走行車体に連結して作業する場合には、記憶部に記憶された作業機対応の動作シーケンスを読み出して使用することや、読み出した作業機対応の動作シーケンスの一部を修正して使用することなどが可能になる。
【0027】
これにより、走行車体に異なる作業機を連結するごとに作業機対応の動作シーケンスを任意設定する場合の設定操作の簡略化を図ることができる。
【0028】
本発明の第7特徴構成は、
前記走行車体に着脱可能な前記作業機ごとに任意設定された前記作業機対応の動作シーケンスを記憶する記憶部と、
前記走行車体に対する前記作業機の連結に連動して当該作業機に関する情報の前記作業機から前記走行車体への送信を可能にする通信システムとを有し、
前記任意設定部は、前記通信システムを介して取得した前記作業機に関する情報に基づいて、当該情報に応じた前記作業機対応の動作シーケンスを前記記憶部から読み出して設定する点にある。
【0029】
本構成によれば、作業機対応の動作シーケンスが記憶部に記憶された作業機を走行車体に連結して作業を行う場合には、ユーザは、作業機を走行車体に連結するだけで、作業機に応じて任意設定された作業機対応の動作シーケンスを設定することができる。
【0030】
これにより、走行車体に異なる作業機を連結するごとに作業機対応の動作シーケンスを任意設定する場合の設定操作の簡略化を効果的に図ることができる。
【0031】
本発明の第8特徴構成は、
前記作業機用動作機器には、前記走行車体に備えられた油圧制御用の動作機器と、前記作業機に備えられて前記油圧制御用の動作機器にて動作が制御される油圧式動作機器とが含まれている点にある。
【0032】
本構成によれば、例えば、走行車体に備えられたサブコントロールバルブなどの油圧制御用の動作機器にて動作が制御される油圧シリンダなどの作業機側の油圧式動作機器による作業機の動作を作業機対応の動作シーケンスに含むことができる。これにより、作業機側の油圧式動作機器による作業機の動作を含む作業車両の状態の切り換えを、ユーザが好む動作シーケンスに基づいて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図
図2】中耕カルチが備えられた作業車両の側面図
図3】ブームスプレーヤが備えられた作業車両の側面図
図4】ロールベーラが備えられた作業車両の側面図
図5】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図6】トラクタの伝動構成を示す概略図
図7】自動走行用の目標経路の一例を示す平面図
図8】障害物検出ユニットの概略構成を示すブロック図
図9】ブームスプレーヤが備えられた作業車両の制御構成を示すブロック図
図10】ロールベーラが備えられた作業車両の制御構成を示すブロック図
図11】ロータリ耕耘機が備えられた作業車両の動作シーケンス表示画面を示す図
図12】中耕カルチが備えられた作業車両の動作シーケンス表示画面を示す図
図13】ブームスプレーヤが備えられた作業車両の動作シーケンス表示画面を示す図
図14】ロールベーラが備えられた作業車両の動作シーケンス表示画面を示す図
図15】ロールベーラが備えられた作業車両の動作シーケンス表示画面を示す図
図16】任意設定実行確認処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0035】
図1~4に示すように、本実施形態に例示された作業車両Vは、走行車体として機能するトラクタ1と、その後部にリンク機構2を介して着脱可能に連結された作業機3とを有している。図1に示す作業車両Vにおいては、作業機3の一例であるロータリ耕耘機3Aが、トラクタ1の後部にリンク機構2を介して昇降可能かつローリング可能に連結されている。図2に示す作業車両Vにおいては、作業機3の一例である中耕カルチ3Bが、トラクタ1の後部にリンク機構2を介して昇降可能に連結されている。図3に示す作業車両Vにおいては、作業機3の一例であるブームスプレーヤ3Cがトラクタ1の後部にリンク機構2を介して連結されている。図4に示す作業車両Vにおいては、作業機3の一例であるロールベーラ3Dがトラクタ1の後部にリンク機構2を介して連結されている。
【0036】
尚、トラクタ1の後部には、上記の作業機3以外に、リバーシブルプラウ、ディスクハロー、サブソイラ、播種装置、オフセットモア、などのリアマウント式の作業機を連結することができる。又、トラクタ1の前部には、フロントローダやフロントモアコンディショナなどのフロントマウント式の作業機を連結することができる。
【0037】
作業車両Vは、作業車両用の自動走行システムを使用することにより、図7に示す圃場Aなどにおいて自動走行することができる。図1図5に示すように、作業車両用の自動走行システムには、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット4、及び、自動走行ユニット4と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末5、などが含まれている。携帯通信端末5には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(例えば液晶パネル)50などが備えられている。
【0038】
尚、携帯通信端末5には、タブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。又、無線通信には、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信などを採用することができる。
【0039】
図1~5に示すように、トラクタ1には、駆動可能で操舵可能な左右の前輪10、駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14などを覆うボンネット15、及び、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット16、などが備えられている。これにより、このトラクタ1は4輪駆動可能な前輪ステアリング仕様に構成されている。尚、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。
【0040】
図5に示すように、トラクタ1には、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット17、左右の後輪11を制動するブレーキユニット(走行用動作機器の一例)18、ロータリ耕耘機3Aなどの駆動式の作業機3への伝動を断続する電子油圧制御式の作業クラッチユニット(作業機用動作機器の一例)19、作業機3を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット(作業機用動作機器の一例)20、ロータリ耕耘機3Aをロール方向に駆動する電子油圧制御式のローリングユニット21、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器22、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット23、などが備えられている。尚、パワーステアリングユニット17には、操舵用の電動モータを有する電動式を採用してもよい。
【0041】
図1~5に示すように、運転部12には、手動操舵用のステアリングホイール25、搭乗者用の座席26、及び、各種の情報表示や入力操作などを可能にする操作端末27、が備えられている。図示は省略するが、運転部12には、アクセルレバーや主変速レバーなどの操作レバー類、及び、アクセルペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル類、などが備えられている。操作端末27には、マルチタッチ式の液晶モニタやISOBUS(イソバス)対応のバーチャルターミナルなどを採用することができる。
【0042】
図6に示すように、変速ユニット16には、エンジン14からの動力を走行用に変速する走行伝動系16Aと作業用に変速する作業伝動系16Bとが備えられている。そして、走行伝動系16Aによる変速後の動力が、前輪駆動用の伝動軸28、及び、前車軸ケース29に内蔵された前輪用差動装置30、などを介して左右の前輪10に伝えられる。又、作業伝動系16Bによる変速後の動力が駆動式の作業機3に伝えられる。変速ユニット16には、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ31が備えられている。
【0043】
走行伝動系16Aには、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の主変速装置(走行用動作機器の一例)32、主変速装置32からの動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置(走行用動作機器の一例)33、前後進切換装置33からの前進用又は後進用の動力を高低2段に変速するギア式の副変速装置34、前後進切換装置33からの前進用又は後進用の動力を超低速段に変速するギア式のクリープ変速装置35、副変速装置34又はクリープ変速装置35からの動力を左右の後輪11に分配する後輪用差動装置36、後輪用差動装置36からの動力を減速して左右の後輪11に伝える左右の減速装置37、及び、副変速装置34又はクリープ変速装置35から左右の前輪10への伝動を切り換える電子油圧制御式の伝動切換装置38、などが含まれている。
【0044】
作業伝動系16Bには、エンジン14からの動力を断続する油圧式の作業クラッチ(作業機用動作機器の一例)39、作業クラッチ39を経由した動力を正転3段と逆転1段とに切り換える作業用変速装置40、及び、作業用変速装置40からの動力を作業用として出力するPTO軸41、などが含まれている。PTO軸41から取り出された動力は、駆動式の作業機3がトラクタ1の後部に連結された場合に、外部伝動軸などを介して作業機3に伝えられる。作業クラッチ39は、作業クラッチ39に対するオイルの流れを制御する電磁制御弁(図示せず)などとともに作業クラッチユニット19に含まれている。
【0045】
主変速装置32には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。
【0046】
尚、主変速装置32には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などの無段変速装置を採用してもよい。又、無段変速装置の代わりに、複数の油圧式の変速クラッチ、及び、それらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁式の変速バルブ、などを有する電子油圧制御式の有段変速装置を採用してもよい。
【0047】
伝動切換装置38は、左右の前輪10への伝動状態を、左右の前輪10への伝動を遮断する伝動遮断状態と、左右の前輪10の周速が左右の後輪11の周速と同じになるように左右の前輪10に伝動する等速伝動状態と、左右の後輪11の周速に対して左右の前輪10の周速が約2倍になるように左右の前輪10に伝動する倍速伝動状態とに切り換える。これにより、このトラクタ1は、2輪駆動状態と4輪駆動状態と前輪倍速状態とに切り換え可能に構成されている。
【0048】
図示は省略するが、ブレーキユニット18には、左右のブレーキ31、運転部12に備えられた左右のブレーキペダルの踏み込み操作に連動して左右のブレーキ31を作動させるフットブレーキ系、運転部12に備えられたパーキングレバーの操作に連動して左右のブレーキ31を作動させるパーキングブレーキ系、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキ31を作動させる旋回ブレーキ系、などが含まれている。
【0049】
車両状態検出機器22は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。図示は省略するが、車両状態検出機器22には、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルセンサ、主変速レバーの操作位置を検出する変速センサ、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出するリバーサセンサ、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、トラクタ1の車速を検出する車速センサ、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ、などが含まれている。
【0050】
図5に示すように、車載制御ユニット23には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部23A、トラクタ1の車速や前後進の切り換えなどの変速ユニット16に関する制御を行う変速ユニット制御部23B、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部23C、作業機3に関する制御を行う作業機制御部23D、操作端末27などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部23E、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部23F、及び、圃場内に区分けされた走行領域に応じて生成された自動走行用の目標経路P(図7参照)などを記憶する不揮発性の車載記憶部23G、などが含まれている。各制御部23A~23Fは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部23A~23Fは、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
【0051】
尚、各制御部23A~23Fの相互通信には、CAN以外の通信規格や次世代通信規格である、例えば、車載EthernetやCAN-FD(CAN with FLexible Data rate)などを採用してもよい。
【0052】
エンジン制御部23Aは、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーの操作位置に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御、などを実行する。
【0053】
変速ユニット制御部23Bは、変速センサからの検出情報と車速センサからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速が主変速レバーの操作位置に応じた速度に変更されるように主変速装置32の作動を制御する車速制御、及び、リバーサセンサからの検出情報に基づいて前後進切換装置の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、などを実行する。車速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、主変速装置32を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
【0054】
作業機制御部23Dには、運転部12に備えられたPTOスイッチの操作などに基づいて作業クラッチユニット19の作動を制御する作業クラッチ制御、運転部12に備えられた昇降スイッチの操作や高さ設定ダイヤルの設定値などに基づいて昇降駆動ユニット20の作動を制御する昇降制御、及び、運転部12に備えられたロール角設定ダイヤルの設定値などに基づいてローリングユニット21の作動を制御するローリング制御、などを実行する。PTOスイッチ、昇降スイッチ、高さ設定ダイヤル、及び、ロール角設定ダイヤルは、車両状態検出機器22に含まれている。
【0055】
図5に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の位置や方位などを測定する測位ユニット42が備えられている。測位ユニット42には、衛星測位システムの一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してトラクタ1の位置と方位とを測定する衛星航法装置43、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)44、などが含まれている。GNSSを利用した測位方法には、DGNSS(Differential GNSS:相対測位方式)やRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GNSSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK-GNSSによる測位を可能にする基地局6が設置されている。
【0056】
図1図5に示すように、トラクタ1と基地局6とのそれぞれには、測位衛星7(図1参照)から送信された電波を受信するGNSSアンテナ45,60、及び、トラクタ1と基地局6との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール46,61、などが備えられている。これにより、測位ユニット42の衛星航法装置43は、トラクタ側のGNSSアンテナ45が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側のGNSSアンテナ60が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の位置及び方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット42は、衛星航法装置43と慣性計測装置44とを有することにより、トラクタ1の位置、方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0057】
このトラクタ1において、測位ユニット42の慣性計測装置44、GNSSアンテナ45、及び、通信モジュール46は、図1~4に示すアンテナユニット47に含まれている。アンテナユニット47は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。
【0058】
図示は省略するが、トラクタ1の位置を特定するときの車体位置は後輪車軸中心位置に設定されている。車体位置は、測位ユニット42からの測位情報、及び、トラクタ1におけるGNSSアンテナ45の取り付け位置と後輪車軸中心位置との位置関係を含む車体情報から求めることができる。
【0059】
図1~5に示すように、トラクタ1には、電子制御式で二連のサブコントロールバルブ(作業機用動作機器として機能する油圧制御用の動作機器の一例)49が備えられている。サブコントロールバルブ49は、トラクタ1に備えられた作業用油圧ポンプ(図示せず)にて圧送されるオイルの流れを制御する。
【0060】
図5に示すように、携帯通信端末5には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット51などが備えられている。端末制御ユニット51には、表示デバイス50などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部51A、自動走行用の目標経路Pを生成する目標経路生成部51B、及び、目標経路生成部51Bが生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部51C、などが含まれている。端末記憶部51Cには、目標経路Pの生成に使用する各種の情報として、トラクタ1の旋回半径やロータリ耕耘機3Aの作業幅などの車体情報、及び、前述した測位情報から得られる圃場情報、などが記憶されている。圃場情報には、圃場Aの形状や大きさなどを特定する上において、トラクタ1を圃場Aの外周縁に沿って走行させたときにGNSSを利用して取得した圃場Aにおける複数の形状特定地点(形状特定座標)となる4つの角部地点Pa~Pd(図7参照)、及び、それらの角部地点Pa~Pdを繋いで圃場Aの形状や大きさなどを特定する矩形状の形状特定線SL(図7参照)、などが含まれている。
【0061】
図5に示すように、トラクタ1及び携帯通信端末5には、車載制御ユニット23と端末制御ユニット51との間における測位情報などを含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール48,52が備えられている。トラクタ1の通信モジュール48は、携帯通信端末5との無線通信にWi-Fiが採用される場合には、通信情報をCANとWi-Fiとの双方向に変換する変換器として機能する。端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23との無線通信にてトラクタ1の位置や方位などを含むトラクタ1に関する各種の情報を取得することができる。これにより、携帯通信端末5の表示デバイス50にて、目標経路Pに対するトラクタ1の位置や方位などを含む各種の情報を表示させることができる。
【0062】
目標経路生成部51Bは、車体情報に含まれたトラクタ1の旋回半径や作業機3の作業幅、及び、圃場情報に含まれた圃場Aの形状や大きさ、などに基づいて目標経路Pを生成する。
【0063】
例えば、図7に示すように、矩形状の圃場Aにおいて、自動走行の開始位置p1と終了位置p2とが設定され、トラクタ1の作業走行方向が圃場Aの短辺に沿う方向に設定されている場合は、目標経路生成部51Bは、先ず、圃場Aを、前述した4つの角部地点Pa~Pdと矩形状の形状特定線SLとに基づいて、圃場Aの外周縁に隣接するマージン領域A1と、マージン領域A1の内側に位置する走行領域A2とに区分けする。
【0064】
次に、目標経路生成部51Bは、トラクタ1の旋回半径や作業機3の作業幅などに基づいて、走行領域A2を、走行領域A2における各長辺側の端部に設定される一対の端部領域A2aと、一対の端部領域A2aの間に設定される中央側領域A2bとに区分けする。その後、目標経路生成部51Bは、中央側領域A2bに、圃場Aの長辺に沿う方向に作業幅に応じた所定間隔を置いて並列に配置される複数の並列経路P1を生成する。又、目標経路生成部51Bは、各端部領域A2aに、複数の並列経路P1をトラクタ1の走行順に接続する複数の接続経路P2を生成する。
これにより、目標経路生成部51Bは、図7に示す圃場Aに設定された自動走行の開始位置p1から終了位置p2にわたってトラクタ1を自動走行させることが可能な目標経路Pを生成することができる。
【0065】
図7に示す圃場Aにおいて、マージン領域A1は、トラクタ1が走行領域A2の端部を自動走行するときに、作業機3などが圃場Aに隣接する柵や樹木などの他物に接触するのを防止するために、圃場Aの外周縁と走行領域A2との間に確保された領域である。各端部領域A2aは、トラクタ1が現在走行中の並列経路P1から次の並列経路P1に向けて接続経路P2に従って方向転換移動するときの方向転換領域である。中央側領域A2bは、トラクタ1が各並列経路P1に従って作業状態で自動走行する作業領域である。
【0066】
図7に示す目標経路Pにおいて、各並列経路P1は、トラクタ1が作業機3による作業を行いながら自動走行する作業経路である。各接続経路P2は、トラクタ1が作業機3による作業を行わずに自動走行する非作業経路である。各並列経路P1の始端位置p3は、トラクタ1が作業機3による作業を開始する作業開始位置である。各並列経路P1の終端位置p4は、トラクタ1が作業機3による作業を停止する作業停止位置である。各並列経路P1の始端位置p3のうち、トラクタ1の走行順位が一番目に設定された並列経路P1の始端位置p3が自動走行の開始位置p1である。そして、残りの並列経路P1の始端位置p3が、接続経路P2の終端位置との接続位置である。又、トラクタ1の走行順位が最後に設定された並列経路P1の終端位置p4が自動走行の終了位置p2である。
【0067】
尚、図7に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、トラクタ1の機種や作業機3の種類などに応じて異なる車体情報、及び、圃場Aに応じて異なる圃場Aの形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0068】
ちなみに、図7に示す目標経路Pにおいて、トラクタ1が代掻き機による代掻き作業を行う場合には、各並列経路P1と各接続経路P2とのそれぞれが作業経路として使用される。
【0069】
目標経路Pは、車体情報や圃場情報などに関連付けされた状態で端末記憶部51Cに記憶されており、携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示することができる。目標経路Pには、前述した作業開始位置p3及び作業停止位置p4とともに、各並列経路P1の方位角、各並列経路P1におけるトラクタ1の目標車速、各接続経路P2におけるトラクタ1の目標車速、各並列経路P1における前輪操舵角、及び、各接続経路P2における前輪操舵角、などが含まれている。
【0070】
端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23からの送信要求指令に応じて、端末記憶部51Cに記憶されている圃場情報や目標経路Pなどを車載制御ユニット23に送信する。車載制御ユニット23は、受信した圃場情報や目標経路Pなどを車載記憶部23Gに記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット51が、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部51Cから車載制御ユニット23に一挙に送信するようにしてもよい。又、端末制御ユニット51が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階からトラクタ1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタ1の走行順位に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部51Cから車載制御ユニット23に逐次送信するようにしてもよい。
【0071】
車載制御ユニット23において、自動走行制御部23Fには、車両状態検出機器22に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、変速ユニット制御部23Bやステアリング制御部23Cなどを介して入力されている。これにより、自動走行制御部23Fは、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
【0072】
自動走行制御部23Fは、搭乗者や管理者などのユーザによる手動運転でトラクタ1が自動走行の開始位置p1まで移動された後に、各種の自動走行開始条件を満たすための手動操作が行われてトラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の開始が指令された場合に、測位ユニット42にてトラクタ1の位置や方位などを取得しながら目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0073】
自動走行制御部23Fは、自動走行制御の実行中に、例えば、ユーザにより携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の終了が指令された場合や、運転部12に搭乗しているユーザにてステアリングホイール25やアクセルペダルなどの手動操作具が操作された場合は、自動走行制御を終了するとともに走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。このように自動走行制御が終了された後に自動走行制御を再開させる場合は、先ず、ユーザが運転部12に乗り込んで、トラクタ1の走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。次に、各種の自動走行開始条件を満たすための手動操作を行ってから、トラクタ1の走行モードを手動走行モードから自動走行モードに切り換える。そして、この状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50を操作して自動走行の開始を指令することで、自動走行制御を再開させることができる。
【0074】
自動走行制御部23Fによる自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部23Aに送信するエンジン用自動制御処理、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を変速ユニット制御部23Bに送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部23Cに送信するステアリング用自動制御処理、及び、ロータリ耕耘機3Aなどの作業機に関する自動走行用の制御指令を作業機制御部23Dに送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
【0075】
自動走行制御部23Fは、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部23Aに送信する。エンジン制御部23Aは、自動走行制御部23Fから送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
【0076】
自動走行制御部23Fは、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて主変速装置32の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置33の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを変速ユニット制御部23Bに送信する。変速ユニット制御部23Bは、自動走行制御部23Fから送信された主変速装置32や前後進切換装置33などに関する各種の制御指令に応じて、主変速装置32の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置33の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、主変速装置32を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
【0077】
自動走行制御部23Fは、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部23Cに送信する。ステアリング制御部23Cは、自動走行制御部23Fから送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット17の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動ステアリング制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、ブレーキユニット18を作動させて旋回内側のブレーキ31を作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
【0078】
自動走行制御部23Fは、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた作業開始位置p3に基づいてロータリ耕耘機3Aの作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた作業停止位置p4に基づいてロータリ耕耘機3Aの非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業機制御部23Dに送信する。作業機制御部23Dは、自動走行制御部23Fから送信されたロータリ耕耘機3Aに関する各種の制御指令に応じて、作業クラッチユニット19と昇降駆動ユニット20の作動を制御して、ロータリ耕耘機3Aを作業高さまで下降させて駆動させる自動作業開始制御、及び、ロータリ耕耘機3Aを停止させて非作業高さまで上昇させる自動作業停止制御、などを実行する。
【0079】
つまり、前述した自動走行ユニット4には、パワーステアリングユニット17、ブレーキユニット18、作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、ローリングユニット21、車両状態検出機器22、車載制御ユニット23、測位ユニット42、及び、通信モジュール46,48、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができるとともに、作業機3による作業を適正に行うことができる。
【0080】
図5図8に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の周囲を監視して、その周囲に存在する障害物を検出する障害物検出ユニット80が備えられている。障害物検出ユニット80が検出する障害物には、圃場Aにて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aに既存の電柱や樹木などが含まれている。
【0081】
図1~4、図8に示すように、障害物検出ユニット80には、トラクタ1の周囲を撮像する撮像ユニット80A、トラクタ1の周囲に存在する測定対象物までの距離を測定するアクティブセンサユニット80B、及び、撮像ユニット80Aからの情報とアクティブセンサユニット80Bからの測定情報とを統合して処理する情報統合処理部80C、が含まれている。
【0082】
撮像ユニット80Aには、キャビン13から前方の所定範囲が撮像範囲に設定された前カメラ81、キャビン13から後方の所定範囲が撮像範囲に設定された後カメラ82、キャビン13から右方の所定範囲が撮像範囲に設定された右カメラ83、キャビン13から左方の所定範囲が撮像範囲に設定された左カメラ84、及び、各カメラ81~84からの画像を処理する画像処理装置85、が含まれている。
【0083】
アクティブセンサユニット80Bには、キャビン13から前方の所定範囲が測定範囲に設定された前ライダーセンサ86、キャビン13から後方の所定範囲が測定範囲に設定された後ライダーセンサ87、及び、キャビン13から右方の所定範囲とキャビン13から左方の所定範囲とが測定範囲に設定されたソナー88、が含まれている。各ライダーセンサ86,87は、測定光の一例であるレーザ光(例えばパルス状の近赤外レーザ光)を使用して測定範囲での測定を行う測定部86A,87Aと、測定部86A,87Aからの測定情報に基づいて距離画像の生成などを行うライダー制御部86B,87Bと、が含まれている。ソナー88には、右超音波センサ88Aと左超音波センサ88Bと単一のソナー制御部88Cとが含まれている。
【0084】
情報統合処理部80C、画像処理装置85、各ライダー制御部86B,87B、及び、ソナー制御部88Cは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。情報統合処理部80C、画像処理装置85、各ライダー制御部86B,87B、及び、ソナー制御部88Cは、車載制御ユニット23にCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0085】
前カメラ81及び後カメラ82は、トラクタ1の左右中心線上に配置されている。前カメラ81は、キャビン13の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前カメラ81は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。後カメラ82は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後カメラ82は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。右カメラ83は、キャビン13の右端側における上部の前後中央箇所に、トラクタ1の右方側を斜め上方側から見下ろす右下がり姿勢で配置されている。これにより、右カメラ83は、車体右方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。左カメラ84は、キャビン13の左端側における上部の前後中央箇所に、トラクタ1の左方側を斜め上方側から見下ろす左下がり姿勢で配置されている。これにより、左カメラ84は、車体左方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。
【0086】
各ライダーセンサ86,87において、各測定部86A,87Aは、照射したレーザ光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各測定部86A,87Aから測定範囲の各測距点までの距離を測定する。各測定部86A,87Aは、測定範囲の全体にわたって、レーザ光を高速で縦横に走査して、走査角(座標)ごとの測距点までの距離を順次測定することで、各測定範囲において3次元の測定を行う。各測定部86A,87Aは、測定範囲の全体にわたってレーザ光を高速で縦横に走査したときに得られる各測距点からの反射光の強度(以下、反射強度と称する)を順次測定する。各測定部86A,87Aは、測定範囲の各測距点までの距離や各反射強度などをリアルタイムで繰り返し測定する。各ライダー制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aが測定した各測距点までの距離や各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報から、距離画像を生成するとともに障害物と推定される測距点群を抽出し、抽出した測距点群に関する測定情報を、障害物候補に関する測定情報として情報統合処理部80Cに送信する。
【0087】
前ライダーセンサ86及び後ライダーセンサ87は、前カメラ81及び後カメラ82と同様にトラクタ1の左右中心線上に配置されている。前ライダーセンサ86は、キャビン13の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前ライダーセンサ86は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が測定部86Aによる測定範囲に設定されている。後ライダーセンサ87は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後ライダーセンサ87は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が測定部87Aによる測定範囲に設定されている。
【0088】
ソナー88において、ソナー制御部88Cは、左右の超音波センサ88A,88Bによる超音波の送受信に基づいて、測定範囲における測定対象物の存否を判定する。ソナー制御部88Cは、発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各超音波センサ88A,88Bから測定対象物までの距離を測定し、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを、障害物候補に関する測定情報として情報統合処理部80Cに送信する。
【0089】
図示は省略するが、右超音波センサ88Aは、右側の前輪10と右側の後輪11との間に配置された右側の乗降ステップに車体右外向き姿勢で取り付けられている。これにより、右超音波センサ88Aは、車体右外側の所定範囲が測定範囲に設定されている。図1に示すように、左超音波センサ88Bは、左側の前輪10と左側の後輪11との間に配置された左側の乗降ステップ24に車体左外向き姿勢で取り付けられている。これにより、左超音波センサ88Bは、車体左外側の所定範囲が測定範囲に設定されている。
【0090】
画像処理装置85は、各カメラ81~84から順次送信される画像に対して画像処理を行う。画像処理装置85には、圃場Aにて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aに既存の電柱や樹木などを障害物として認識するための学習処理が施されている。
【0091】
画像処理装置85は、各カメラ81~84から順次送信される画像を合成してトラクタ1の全周囲画像(例えばサラウンドビュー)を生成するとともに、生成した全周囲画像や各カメラ81~84からの画像を、トラクタ1の表示制御部23Eや携帯通信端末5の表示制御部51Aに送信する。
【0092】
これにより、画像処理装置85が生成した全周囲画像やトラクタ1の走行方向の画像などを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50などにおいて表示することができる。そして、この表示により、トラクタ1の周囲の状況や走行方向の状況をユーザに視認させることができる。
【0093】
画像処理装置85は、各カメラ81~84から順次送信される画像に基づいて、各カメラ81~84のいずれかの撮像範囲においてトラクタ1の走行に影響を及ぼす障害物が存在するか否かを判別する。画像処理装置85は、障害物が存在する場合は、障害物が存在する画像上での障害物の座標を求め、求めた障害物の座標を、各カメラ81~84の搭載位置や搭載角度などに基づいて、車体座標原点を基準にした座標に変換する。そして、その変換後の座標と予め設定した距離算出基準点とにわたる直線距離を、距離算出基準点から障害物までの距離として求め、変換後の座標と求めた障害物までの距離とを障害物に関する情報として情報統合処理部80Cに送信する。一方、障害物が存在しない場合は、障害物が未検出であることを情報統合処理部80Cに送信する。
【0094】
このように、各カメラ81~84の撮像範囲のいずれかに障害物が存在する場合は、画像処理装置85が、障害物に関する情報を情報統合処理部80Cに送信することから、情報統合処理部80Cは、その障害物に関する情報を受け取ることにより、各カメラ81~84のいずれかの撮像範囲に障害物が存在することを把握することができるとともに、その障害物の位置及び障害物までの距離を取得することができる。又、各カメラ81~84の撮像範囲のいずれにも障害物が存在しない場合は、画像処理装置85が、障害物の未検出を情報統合処理部80Cに送信することから、情報統合処理部80Cは、各カメラ81~84の撮像範囲のいずれにも障害物が存在しないことを把握することができる。
【0095】
情報統合処理部80Cは、物体の判別精度が高い撮像ユニット80Aからの障害物に関する情報と、測距精度が高いアクティブセンサユニット80Bからの障害物候補に関する測定情報とが整合した場合に、アクティブセンサユニット80Bから得た障害物候補までの距離を障害物までの距離として採用する。これにより、障害物検出ユニット80は、情報統合処理部80Cにおいて物体の判別精度及び測距精度の高い障害物に関する情報を取得することができる。障害物検出ユニット80は、情報統合処理部80Cにて取得した障害物に関する情報を自動走行制御部23Fに送信する。
【0096】
自動走行制御部23Fは、障害物検出ユニット80からの障害物に関する情報に基づいて障害物との衝突を回避する衝突回避制御を実行する。自動走行制御部23Fは、衝突回避制御においては、障害物検出ユニット80からの障害物に関する情報に基づいて障害物までの距離などを取得し、取得した障害物までの距離などに応じて、トラクタ1及び携帯通信端末5に備えられた報知ブザーや報知ランプなどの報知器を作動させる報知処理、トラクタ1の車速を自動で低下させる自動減速処理、及び、トラクタ1の走行を自動で停止させる自動走行停止処理、などの各種の衝突回避処理を適宜行うように構成されている。
【0097】
図1に示す作業車両Vにおいて、ロータリ耕耘機3Aは、トラクタ1のPTO軸41(図5参照)から取り出された動力で駆動される。これにより、ロータリ耕耘機3Aは、作業機制御部23Dにて作業クラッチユニット19の動作が制御されることで、耕耘ロータ3Aaが駆動される駆動状態と、耕耘ロータ3Aaの駆動が停止された停止状態とに切り換わる。
【0098】
ロータリ耕耘機3Aは、作業機制御部23Dにて昇降駆動ユニット20の動作が制御されることで、耕耘ロータ3Aaが接地する作業位置と、耕耘ロータ3Aaが浮上する退避位置とにわたって昇降する。
【0099】
これらにより、作業車両Vは、トラクタ1の後部にロータリ耕耘機3Aが連結された耕耘作業時には、作業機制御部23Dにて作業クラッチユニット19及び昇降駆動ユニット20の動作が制御されることで、ロータリ耕耘機3Aが作業位置に位置して駆動された耕耘作業状態と、ロータリ耕耘機3Aが駆動停止されて退避位置に位置する非作業状態とに切り換えられる。
【0100】
図2に示す作業車両Vにおいて、中耕カルチ3Bは、作業機制御部23Dにて昇降駆動ユニット20の動作が制御されることで、各中耕刃3Baが接地する作業位置と、各中耕刃3Baが浮上する退避位置とにわたって昇降する。
【0101】
トラクタ1は、中耕カルチ3Bの昇降操作が開始される場合には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されることで、走行状態から一時停止状態に切り換えられる。トラクタ1は、中耕カルチ3Bの昇降操作が終了した場合には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されることで、一時停止状態から走行状態に切り換えられる。
【0102】
これらにより、作業車両Vは、トラクタ1の後部に中耕カルチ3Bが連結された耕耘作業時には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されてトラクタ1が一時停止している間において、作業機制御部23Dにて昇降駆動ユニット20の動作が制御されることで、中耕カルチ3Bが作業位置に位置する中耕作業状態と、中耕カルチ3Bが退避位置に位置する非作業状態とに切り換えられる。
【0103】
図3に示す作業車両Vにおいて、ブームスプレーヤ3Cには、図3図9に示すように、薬液を貯留する貯留タンク(貯留部の一例)3Ca、ブームスプレーヤ3Cの後端下部において左右の延びる第1ブーム3Cb、第1ブーム3Cbの左右両端部に前後揺動可能に連結された左右の第2ブーム3Cc、貯留タンク3Ca内の薬液を各ブーム3Cb,3Ccに備えられた複数の噴霧ノズル3aに圧送する噴霧ポンプ3Cd、及び、左右の第2ブーム3Ccを展開状態と格納状態とに切り換える油圧式の左右のブームシリンダ(作業機用動作機器として機能する油圧式動作機器の一例)3Ce、などが備えられている。
【0104】
噴霧ポンプ3Cdは、トラクタ1のPTO軸41(図5参照)から取り出された動力で駆動される。これにより、噴霧ポンプ3Cdは、作業機制御部23Dにて作業クラッチユニット19の動作が制御されることで、各噴霧ノズル3aに薬液を圧送する駆動状態と、各噴霧ノズル3aへの薬液の圧送を停止する停止状態とに切り換えられる。
【0105】
左右のブームシリンダ3Ceは、トラクタ1のサブコントロールバルブ49に油圧配管53(図9参照)を介して接続されている。これにより、左右のブームシリンダ3Ceは、作業機制御部23Dにてサブコントロールバルブ49の動作が制御されて、各ブームシリンダ3Ceに対するオイルの流れが制御されることで、左右の第2ブーム3Ccを、第1ブーム3Cbの左右の両端部から横外方に延びる展開状態と、第1ブーム3Cbの左右の両端部から前上方に延びる格納状態とに切り換える。
【0106】
トラクタ1は、左右の第2ブーム3Ccの切り換え操作が開始される場合には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されることで、走行状態から一時停止状態に切り換えられる。トラクタ1は、左右の第2ブーム3Ccの切り換え操作が終了した場合には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されることで、一時停止状態から走行状態に切り換えられる。
【0107】
これらにより、作業車両Vは、トラクタ1の後部にブームスプレーヤ3Cが連結された噴霧作業時には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されてトラクタ1が一時停止している間において、作業機制御部23Dにて作業クラッチユニット19及びサブコントロールバルブ49の動作が制御されることで、左右の第2ブーム3Ccが展開されて噴霧ポンプ3Cdが駆動された噴霧作業状態と、左右の第2ブーム3Ccが格納されて噴霧ポンプ3Cdが駆動停止された非作業状態とに切り換えられる。
【0108】
図4に示す作業車両Vにおいて、ロールベーラ3Dには、図4図10に示すように、圃場Aの牧草などを拾い上げるピックアップ装置3Da、ピックアップ装置3Daを下方の作業位置と上方の退避位置とにわたって昇降駆動する油圧式の昇降シリンダ(作業機用動作機器として機能する油圧式動作機器の一例)3Db、及び、ピックアップ装置3Daにて拾い上げられた牧草などを貯留して円柱状のロールベールに圧縮成形する成形部(貯留部の一例)3Dc、などが備えられている。成形部3Dcには、前ケース3Dd、前ケース3Ddに開閉揺動可能に連結された後ケース3De、及び、後ケース3Deを開閉駆動する油圧式の開閉シリンダ(作業機用動作機器として機能する油圧式動作機器の一例)3Df、などが備えられている。
【0109】
ピックアップ装置3Da及び成形部3Dcは、トラクタ1のPTO軸41(図5参照)から取り出された動力で駆動される。これにより、ピックアップ装置3Daは、作業機制御部23Dにて作業クラッチユニット19の動作が制御されることで、牧草などを拾い上げる駆動状態と、牧草などの拾い上げを停止した停止状態とに切り換えられる。成形部3Dcは、作業機制御部23Dにて作業クラッチユニット19の動作が制御されることで、拾い上げられた牧草などをロールベールに圧縮成形する駆動状態と、その圧縮成形を停止する停止状態とに切り換えられる。
【0110】
昇降シリンダ3Db及び開閉シリンダ3Dfは、トラクタ1のサブコントロールバルブ49に油圧配管53(図10参照)を介して接続されている。これにより、昇降シリンダ3Dbは、作業機制御部23Dにてサブコントロールバルブ49の動作が制御されて、昇降シリンダ3Dbに対するオイルの流れが制御されることで、ピックアップ装置3Daを下方の作業位置と上方の退避位置とにわたって昇降駆動する。開閉シリンダ3Dfは、作業機制御部23Dにてサブコントロールバルブ49の動作が制御されて、開閉シリンダ3Dfに対するオイルの流れが制御されることで、後ケース3Deを下方の閉鎖位置と上方の開放位置とにわたって昇降駆動する。
【0111】
トラクタ1は、後ケース3Deの開放操作が開始される場合には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されることで、走行状態から一時停止状態に切り換えられる。トラクタ1は、後ケース3Deの開放操作で成形部3Dc内のロールベールが放出された場合には、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されることで、一時停止状態から走行状態に切り換えられる。
【0112】
これらにより、作業車両Vは、トラクタ1の後部にロールベーラ3Dが連結された梱包作業時には、作業機制御部23Dにてサブコントロールバルブ49の動作が制御されて、ピックアップ装置3Daが昇降駆動されることで、ピックアップ装置3Daが牧草などを拾い上げて成形部3Dcがロールベールを成形して梱包する梱包作業状態と、ピックアップ装置3Daが牧草などを拾い上げないことで成形部3Dcによるロールベールの圧縮成形が中断される非作業状態とに切り換えられる。又、変速ユニット制御部23Bにて主変速装置32及びブレーキユニット18の動作が制御されてトラクタ1の走行が制御され、かつ、作業機制御部23Dにてサブコントロールバルブ49の動作が制御されて、後ケース3Deが開閉駆動されることで、前述した梱包作業状態と、梱包されたロールベールを放出する放出状態とに切り換えられる。
【0113】
図9に示すように、ブームスプレーヤ3Cには、貯留タンク3Caにおける薬液の貯留量が下限値に達したことを検出する残量センサ(検出器の一例)3Cfが備えられている。図10に示すように、ロールベーラ3Dには、成形部3Dcに貯留された牧草などの貯留量が上限値(満杯)になったことを検出する満杯センサ(検出器の一例)3Dgが備えられている。
【0114】
図9~10に示すように、作業車両Vは、トラクタ1に対する作業機3の連結に連動して、作業機3に関する情報の作業機3からトラクタ1への送信を可能にする通信システム70を有している。通信システム70は、トラクタ1の車載制御ユニット23と、作業機3に備えられた制御ユニット又は前述した残量センサ3Cfや満杯センサ3Dgなどの検出器などとを、情報通信ケーブル71やコネクタ72などを介して接続することで構築されている。これにより、トラクタ1にブームスプレーヤ3Cが連結された場合には、車載制御ユニット23は貯留タンク3Caに貯留された薬液が補給用の下限値に達したか否かを検知することができる。又、トラクタ1にロールベーラ3Dが連結された場合には、成形部3Dcに貯留された牧草などが満杯になったか否かを検知することができる。
【0115】
尚、通信システム70に関しては、トラクタ1側の車載制御ユニット23や操作端末27、作業機3側の制御ユニット、及び、コネクタ72、などをISOBUS対応機器とすることで、トラクタ1からの指令情報や作業機3の状態などの各種の情報を、トラクタ1と作業機3との間において双方向に通信可能にすることができる。
【0116】
前述したように、図7に示す目標経路Pにおいては、複数の並列経路P1が作業経路に設定され、複数の並列経路P1を作業車両Vの走行順に接続する複数の接続経路P2が非作業経路に設定されている。そのため、各並列経路P1の終端位置p4は、作業車両Vの作業を停止する作業停止位置に設定されている。又、各並列経路P1の始端位置p3は、作業車両Vが作業を開始する作業開始位置に設定されている。そして、各並列経路P1の終端位置p4は、自動走行制御部23Fに作業車両Vの作業状態と非作業状態との切り換えを指令する切り換え地点として機能する。
【0117】
自動走行制御部23Fは、作業車両Vの自動走行中に作業車両Vが切り換え地点に達したときに、トラクタ1に連結された作業機3に応じて設定された作業機対応の動作シーケンスに基づいて作業車両Vを作業状態と非作業状態とに切り換える。又、自動走行制御部23Fは、トラクタ1の後部にロールベーラ3Dが連結された梱包作業時に、満杯センサ3Dgからの検出情報に基づいて成形部3Dcの満杯を検知した場合には、ロールベーラ3Dに対応するロールベール放出用の動作シーケンスに基づいて作業車両Vを梱包作業状態と放出状態とに切り換える。ロールベール放出用を含む作業機対応の動作シーケンスは車載記憶部23Gに記憶されている。
【0118】
図11~14に示すように、作業機対応の動作シーケンスは、操作端末27の表示デバイス27Aなどにおいて表示させることができる。図9~10に示すように、操作端末27には、作業機3の種類を含む作業機情報の入力を可能にする作業機情報入力部として機能する情報入力部27Bが備えられている。表示制御部23Eは、操作端末27に対する所定の操作で、作業機対応の動作シーケンスを表示させる動作シーケンス表示モードに切り換えられた状態において情報入力部27Bにて作業機情報が入力された場合に、操作端末27における表示デバイス27Aの表示画面を、作業機対応の動作シーケンスを表示させる動作シーケンス表示画面に切り換えて、作業機情報に対応する動作シーケンスを車載記憶部23Gから読み出して動作シーケンス表示画面にて表示させる。
【0119】
図11~14に示すように、表示デバイス27Aの動作シーケンス表示画面には、作業車両Vの状態を切り換えるときの作業車両Vの経路情報や動作基準などを表示する第1表示領域27a、及び、動作シーケンスを表示する第2表示領域27b、などが含まれている。これにより、動作シーケンス表示画面においては、作業車両Vの状態を切り換えるときの動作シーケンスが、そのときに作業車両Vが走行する経路に対応付けされた状態で表示されている。第2表示領域27bには、作業車両Vの状態の切り換えに要する動作項目を動作順に表示する動作順位表示部27c、及び、動作項目ごとの動作タイミング、動作期間、などを理解し易くブロック表示する動作表示部27d、などが含まれている。
【0120】
図11には、作業機3がロータリ耕耘機3Aである場合に作業車両Vを耕耘作業状態と非作業状態とに切り換えるときの第1動作シーケンスが、そのときに作業車両Vが走行する経路に対応付けされた状態で表示されている。図12には、作業機3が中耕カルチ3Bである場合に作業車両Vを中耕作業状態と非作業状態とに切り換えるときの第2動作シーケンスが、そのときに作業車両Vが走行する経路に対応付けされた状態で表示されている。図13には、作業機3がブームスプレーヤ3Cである場合に作業車両Vを噴霧作業状態と非作業状態とに切り換えるときの第3動作シーケンスが、そのときに作業車両Vが走行する経路に対応付けされた状態で表示されている。図14には、作業機3がロールベーラ3Dである場合に作業車両Vを梱包作業状態と非作業状態とに切り換えるときの第4動作シーケンスが、そのときに作業車両Vが走行する経路に対応付けされた状態で表示されている。又、作業機3がロールベーラ3Dである場合に作業車両Vを梱包作業状態と放出状態とに切り換えるときの第5動作シーケンスが、そのときに作業車両Vが走行する経路に対応付けされた状態で表示されている。
【0121】
図11に示す第1動作シーケンスにおいては、圃場Aにおける作業領域A2bと非作業領域A2aとの境界が動作基準Osに設定されている。又、並列経路P1の終端位置p4が第1動作基準位置aに設定され、並列経路P1の始端位置p3が第2動作基準位置bに設定されている。そして、第1動作シーケンスにおける第1動作として、ロータリ耕耘機3Aの駆動を停止させる作業機停止動作が設定されている。第2動作として、ロータリ耕耘機3Aを非作業位置に上昇させる作業機上昇動作が設定されている。第3動作として、ロータリ耕耘機3Aを作業位置に下降させる作業機下降動作が設定されている。第4動作として、ロータリ耕耘機3Aを駆動させる作業機駆動動作が設定されている。そして、第1動作シーケンスとしては、ロータリ耕耘機3Aが第1動作基準位置aに到達するタイミングで作業機停止動作と作業機上昇動作とを行い、その後、ロータリ耕耘機3Aが第2動作基準位置bに到達するタイミングでロータリ耕耘機3Aが作業位置に位置するように第2動作基準位置bから所定時間又は所定距離だけ遡った所定のタイミングで作業機下降動作を行い、ロータリ耕耘機3Aが作業位置に下降するまでの間でロータリ耕耘機3Aが駆動されるように所定のタイミングで作業機駆動動作を行うように設定されている。
【0122】
図12に示す第2動作シーケンスにおいては、圃場Aにおける作業領域A2bと非作業領域A2aとの境界が動作基準Osに設定されている。又、並列経路P1の終端位置p4が第1動作基準位置aに設定され、並列経路P1の始端位置p3が第2動作基準位置bに設定されている。そして、第2動作シーケンスにおける第1動作として、トラクタ1の走行を一時停止させる走行一時停止動作が設定されている。第2動作として、中耕カルチ3Bを非作業位置まで上昇させる作業機上昇動作が設定されている。第3動作として、トラクタ1の走行を再開させる走行再開動作が設定されている。第4動作として、前述した走行一時停止動作が設定されている。第5動作として、中耕カルチ3Bを作業位置まで下降させる作業機下降動作が設定されている。第6動作として、前述した走行再開動作が設定されている。そして、第2動作シーケンスとしては、中耕カルチ3Bが第1動作基準位置aに到達するタイミングでトラクタ1が一時停止するように所定のタイミングで走行一時停止動作を行い、走行車体1が一時停止している間に作業機上昇動作を行い、作業機3の上昇後に走行再開動作を行った後、中耕カルチ3Bが第2動作基準位置bに到達するタイミングでトラクタ1が一時停止するように第2動作基準位置bから所定時間又は所定距離だけ遡った所定のタイミングで走行一時停止動作を行い、走行車体1が一時停止している間に作業機下降動作を行い、作業機3の下降後に走行再開動作を行うように設定されている。
【0123】
図13に示す第3動作シーケンスにおいては、圃場Aにおける作業領域A2bと非作業領域A2aとの境界が動作基準Osに設定されている。又、並列経路P1の終端位置p4が第1動作基準位置aに設定され、第1動作基準位置aから走行方向下手側に所定距離L1だけ離れた位置が第2動作基準位置bに設定されている。更に、並列経路P1の始端位置p3から走行方向上手側に所定距離L1だけ離れた位置が第3動作基準位置cに設定され、並列経路P1の始端位置p3が第4動作基準位置dに設定されている。そして、第3動作シーケンスにおける第1動作として、前述した走行一時停止動作が設定されている。第2動作として、ブームスプレーヤ3Cによる噴霧を停止させる噴霧停止動作が設定されている。第3動作として、左右の第2ブーム3Ccを展開状態から格納状態に切り換えるブーム格納動作が設定されている。第4動作として、前述した走行再開動作が設定されている。第5動作として、前述した走行一時停止動作が設定されている。第6動作として、左右の第2ブーム3Ccを格納状態から展開状態に切り換えるブーム展開動作が設定されている。第7動作として、ブームスプレーヤ3Cによる噴霧を開始させる噴霧開始動作が設定されている。第8動作として、前述した走行再開動作が設定されている。そして、第3動作シーケンスとしては、ブームスプレーヤ3Cが第2動作基準位置bに到達するタイミングでトラクタ1が一時停止するように所定のタイミングで走行一時停止動作を行い、トラクタ1が一時停止している間に、先ず噴霧停止動作を行い、次にブーム格納動作を行い、その後、走行車体1の走行を再開させる走行再開動作を行った後、ブームスプレーヤ3Cが第3動作基準位置cに到達するタイミングでトラクタ1が一時停止するように第3動作基準位置cから所定時間又は所定距離だけ遡った所定のタイミングで走行一時停止動作を行い、トラクタ1が一時停止している間に、先ずブーム展開動作を行い、次に噴霧開始動作を行った後、走行再開動作を行うように設定されている。
【0124】
図14に示す第4動作シーケンスにおいては、圃場Aにおける作業領域A2bと非作業領域A2aとの境界が動作基準Osに設定されている。又、並列経路P1の終端位置p4が第1動作基準位置aに設定され、並列経路P1の始端位置p3が第2動作基準位置bに設定されている。そして、第4動作シーケンスにおける第1動作として、ピックアップ装置30Daを非作業位置に上昇させるピックアップ上昇動作が設定されている。第2動作として、ピックアップ装置30Daを作業位置に下降させるピックアップ下降動作が設定されている。そして、第4動作シーケンスとしては、ピックアップ装置30Daが第1動作基準位置aに到達するタイミングで作業機上昇動作を行い、ピックアップ装置30Daが第2動作基準位置bに到達するタイミングでピックアップ装置30Daが作業位置に位置するように第2動作基準位置bから所定時間又は所定距離だけ遡った所定のタイミングで作業機下降動作を行うように設定されている。
【0125】
図14に示す第5動作シーケンスにおいては、満杯センサ3Dgのオンオフ動作が動作基準Osに設定されている。そして、第5動作シーケンスにおける第1動作として、前述した走行一時停止動作が設定されている。第2動作として、後ケース3Deを開放位置に上昇させる後ケース上昇動作が設定されている。第3動作として、後ケース3Deを閉鎖位置に下降させる後ケース下降動作が設定されている。第4動作として、前述した走行再開動作が設定されている。そして、第5動作シーケンスとしては、満杯センサ3Dgにて成形部3Dcの満杯が検出されたタイミングで走行一時停止動作を行った後に後ケース上昇動作を行い、その後、満杯センサ3Dgにて成形部3Dcの満杯が検出されなくなったタイミングで後ケース下降動作を行った後、走行再開動作を行うように設定されている。
【0126】
つまり、第1~2の動作シーケンスにおいては、走行車体1に備えられた作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、主変速装置32、及び、ブレーキユニット18、などの車体側動作機器による動作のみが動作シーケンスに含まれているが、第3~5の動作シーケンスにおいては、車体側動作機器による動作に加えて、走行車体1に備えられたサブコントロールバルブ49にて動作が制御されるブームシリンダ3Ce、昇降シリンダ3Db、及び、開閉シリンダ3Df、などの作業機側の油圧式動作機器による作業機3の動作を作業機対応の動作シーケンスに含むことができる。
【0127】
図9~10に示すように、自動走行制御部23Fには、作業車両Vの状態を切り換えるために作業機3に応じて設定された作業機対応の動作シーケンスを任意設定可能にする任意設定部23Faが含まれている。任意設定部23Faは、操作端末27における表示デバイス27Aの表示画面が動作シーケンス表示画面に切り換えられた状態において、操作端末27に対して任意設定部23Faを起動させるための所定の操作が行われた場合に起動する。そして、任意設定部23Faは、起動に伴って、動作シーケンスの任意設定を実行するか否かをユーザに確認する任意設定事項確認処理を行う。
【0128】
以下、図16のフローチャートに基づいて任意設定事項確認処理での任意設定部23Faの制御作動について説明する。
【0129】
任意設定部23Faは、図11~14に示すように、表示デバイス27Aの動作シーケンス表示画面において、作業機対応の動作シーケンスを表示させるとともに、動作シーケンスの任意設定を実行するか否かや任意設定を実行する場合の設定方法をユーザに確認するためのコメント(図示せず)、コメントに対する返答用の実行ボタン27eと実行停止ボタン27f、及び、任意設定を実行する場合の設定方法を選択するための第1選択ボタン27gと第2選択ボタン27h、などを表示させる確認情報表示処理を行う(ステップ#1)。
任意設定部23Faは、実行ボタン27eと実行停止ボタン27fとのいずれが操作されたか否かを判定する第1判定処理を行う(ステップ#2)。
任意設定部23Faは、第1判定処理にて実行ボタン27eが操作された場合(Yesの場合)は、第1選択ボタン27gと第2選択ボタン27hとのいずれが操作されたか否かを判定する第2判定処理を行う(ステップ#3)。
任意設定部23Faは、第1判定処理にて実行停止ボタン27fが操作された場合(Noの場合)は、任意設定事項確認処理を終了する。
任意設定部23Faは、第2判定処理にて第1選択ボタン27gが操作された場合は、任意設定方法として第1設定方法を実行し、第2選択ボタン27hが操作された場合は、任意設定方法として第2設定方法を実行する。
第1設定方法は、ユーザが操作端末27の情報入力部27Bを操作して、動作シーケンスの任意設定に関する情報を任意設定部23Faに入力することで、任意設定部23Faが入力された情報に基づいて動作シーケンスを任意設定する方法である。
第2設定方法は、ユーザが作業車両Vを手動運転して、作業車両Vの状態を切り換えるための手動操作を行った場合に、任意設定部23Faが、そのときの操作手順と操作タイミングとを記録することで作業機対応の動作シーケンスを任意設定する方法である。
【0130】
これにより、ユーザは、操作端末27における表示デバイス27Aの表示画面を動作シーケンス表示画面に切り換えるために、操作端末27の情報入力部27Bを使用して作業機情報を入力した後、任意設定部23Faを起動させるための操作端末27に対する所定の操作を行い、この起動で表示された実行停止ボタン27fを操作することで、車載記憶部23Gから読み出された作業機対応の動作シーケンスを実行する動作シーケンスとして設定することができる。
【0131】
又、ユーザは、任意設定部23Faの起動後に実行ボタン27eと第1選択ボタン27gとを操作した場合には、操作端末27の情報入力部27Bを操作して、動作シーケンスの任意設定に関する情報を任意設定部23Faに入力することで、車載記憶部23Gから読み出された作業機対応の動作シーケンスを任意設定することができる。
【0132】
この場合、作業機対応の動作シーケンスに対して以下に記載する任意設定処理などを行うことができる。
(1)動作順位表示部27cにおける動作項目を追加又は削除することで、作業機対応の動作シーケンスに含まれる走行車体1の動作又は作業機3の動作を任意に追加又は削除させる動作増減設定処理。
(2)動作順位表示部27cにおける動作項目の順位を変更することで、作業機対応の動作シーケンスで行われる走行車体1の動作や作業機3の動作の順位を任意設定する動作順位設定処理。
(3)動作表示部27dに表示される各動作基準位置a~dや動作基準Osを基準にして並ぶブロックの数量を追加又は削除することで、各動作基準位置a~dを基準にした距離や時間に基づく走行車体1の動作や作業機3の動作の動作タイミング、動作期間、などを任意に設定する動作タイミング・動作期間設定処理。
(4)第2設定方法で任意設定された作業機対応の動作シーケンスに対して操作手順及び操作タイミングに修正を加えることや、動作シーケンスの全体を手動入力し直す、といったカスタマイズ処理。
【0133】
又、第1設定方法においては、作業機3によっては任意設定不能に設定されている動作項目(図12に示す第2動作シーケンスにおける走行一時停止動作など)に対する任意設定操作を無効にする任意設定無効処理が含まれている。
【0134】
一方、ユーザは、任意設定部23Faの起動後に実行ボタン27eと第2選択ボタン27hとを操作した場合には、作業車両Vを手動運転して、作業車両Vの状態を切り換えるための手動操作を行うことで、作業機対応の動作シーケンスを任意設定することができる。この場合、作業車両Vの状態を切り換えるための操作手順や操作タイミングを操作端末27の手動操作で入力する必要がなくなることから、作業機対応の動作シーケンスを任意設定する場合に要する手間を大幅に削減することができる。
【0135】
つまり、任意設定部23Faを備えることで、作業車両用の自動走行ユニット4を使用した作業車両Vの自動走行においても、ユーザが圃場の状態や作業性などを考慮して任意設定した作業機対応の動作シーケンスに基づいて、作業車両Vの作業状態と非作業状態との切り換えや梱包作業状態と放出状態との切り換えを行うことができる。
【0136】
特に、図3に示すブームスプレーヤ3C、又は、図4に示すロールベーラ3Dが備えられた作業車両Vにおいては、作業クラッチユニット19や昇降駆動ユニット20などの車体側動作機器による作業機3の動作に加えて、走行車体1に備えられたサブコントロールバルブ49にて動作が制御されるブームシリンダ3Ce、昇降シリンダ3Db、及び、開閉シリンダ3Df、などの作業機側の油圧式動作機器による作業機3の動作を含む状態で、ユーザが任意設定した作業機対応の動作シーケンスに基づいて、作業車両Vの作業状態と非作業状態との切り換えや梱包作業状態と放出状態との切り換えを行うことができる。
【0137】
図3に示すように、ブームスプレーヤ3Cには残量センサ3Cfが備えられ、又、図4に示すロールベーラ3Dには満杯センサ3Dgが備えられていることから、ブームスプレーヤ3C又はロールベーラ3Dが備えられた作業車両Vにおいては、残量センサ3Cf又は満杯センサ3Dgのオンオフ動作(検出時点)を基準にした距離や時間に基づいて作業機対応の動作シーケンスを任意設定することが可能になっている。
【0138】
そこで、図15には、図14に示す第5動作シーケンスを、満杯センサ3Dgのオンオフ動作を基準にした距離や時間などに基づいて任意設定した場合の一例が示されている。図15に示す任意設定後の第5動作シーケンスにおいては、満杯センサ3Dgのオンオフ動作が動作基準Osに設定されている。又、満杯センサ3Dgのオン動作から所定時間経過した時点での車体位置(オン動作位置)が動作基準位置cに設定されている。そして、任意設定後の第5動作シーケンスにおける第1動作として、前述した走行一時停止動作が設定されている。第2動作として、後ケース3Deを開放位置に上昇させる後ケース上昇動作が設定されている。第3動作として、前述した走行再開動作が設定されている。第4動作として、後ケース3Deを閉鎖位置に下降させる後ケース下降動作が設定されている。尚、前述した満杯センサ3Dgのオン動作からの所定時間は、走行車体1が一時停止して後ケース3Deが開放位置に達するまでの所要時間に設定されている。そして、任意設定後の第5動作シーケンスとしては、満杯センサ3Dgにて成形部3Dcの満杯が検出されたタイミングで走行一時停止動作を行った後に後ケース上昇動作を行い、その後、後ケース上昇動作が終了したタイミングで走行再開動作を行って、所定距離L2を走行したタイミングで走行一時停止動作を行った後、トラクタ1が一時停止している間において満杯センサ3Dgにて成形部3Dcの満杯が検出されなくなったタイミングで後ケース下降動作を行うように設定されている。
【0139】
つまり、図15に示す任意設定後の第5動作シーケンスにおいては、後ケース3Deを上方の開放位置に位置させた状態で走行車体1を走行させることから、成形部3Dcからのロールベールの放出を促進させることができる。
【0140】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0141】
(1)作業車両Vの構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両Vは、左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両Vは、左右の前輪10及び左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両Vは、エンジン14の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両Vは、エンジン14と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
【0142】
(2)表示制御部23E及び任意設定部23Faは、ISOBUS対応機器を備えた通信システム70を利用して、トラクタ1に接続された作業機3の情報を取得して、取得した情報に対応する作業機対応の動作シーケンスを自動的に車載記憶部23Gから読み出すように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 走行車体
3 作業機
3Ca 貯留タンク(貯留部)
3Ce ブームシリンダ(作業機用動作機器、油圧式動作機器)
3Cf 残量センサ(検出器)
3Db 昇降シリンダ(作業機用動作機器、油圧式動作機器)
3Dc 成形部(貯留部)
3Df 開閉シリンダ(作業機用動作機器、油圧式動作機器)
3Dg 満杯センサ(検出器)
18 ブレーキユニット(走行用動作機器)
19 作業クラッチユニット(作業機用動作機器)
20 昇降駆動ユニット(作業機用動作機器)
23F 自動走行制御部
23Fa 任意設定部
23G 記憶部
27B 情報入力部
32 主変速装置(走行用動作機器)
33 前後進切換装置(走行用動作機器)、
49 サブコントロールバルブ(作業機用動作機器、油圧制御用の動作機器)
70 通信システム
P 目標経路
V 作業車両
a 動作基準位置
b 動作基準位置
c 動作基準位置(検出時点)
d 動作基準位置
図1
図2
図3
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