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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028376
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/24 20060101AFI20220208BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20220208BHJP
   B60K 6/38 20071001ALI20220208BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20220208BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20220208BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
F16H41/24 A
B60K6/36 ZHV
B60K6/38
B60K6/48
B60K6/54
B60K17/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131744
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 順二
(72)【発明者】
【氏名】江崎 徳人
(72)【発明者】
【氏名】関 祐一
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AB01
3D039AB27
3D039AC36
3D202AA08
3D202EE16
3D202FF04
3D202FF13
3D202FF15
(57)【要約】
【課題】流体継手の回転ハウジングにおける軸方向の寸法の変動を許容しつつ、回転ハウジングをケースに対して軸方向に支持可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置100において、流体継手5は、回転ハウジング51を備え、ケース4は、流体継手5に対して軸方向Lの一方側に配置された第1支持体41と、他方側に配置された第2支持体42と、を備え、回転ハウジング51を第1支持体41に対して相対的に回転可能に軸方向L及び径方向Rに支持する第1支持機構S1と、回転ハウジング51を第2支持体42に対して相対的に回転可能に軸方向L及び径方向Rに支持する第2支持機構S2と、が設けられ、軸方向Lにおける回転ハウジング51と第2支持機構S2との間、及び、軸方向Lにおける第2支持機構S2と第2支持体42との間の少なくとも一方に、軸方向Lに弾性を有する弾性部材10が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
ロータを備え、前記車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記回転電機の側から伝達される回転を変速して前記出力部材の側へ伝達する変速機と、
前記回転電機と前記変速機との間の動力伝達経路に配置された流体継手と、
前記回転電機、前記変速機、及び前記流体継手を収容するケースと、を備え、
前記流体継手は、互いに相対的に回転するポンプインペラ及びタービンランナと、前記ポンプインペラ及び前記タービンランナを収容すると共に、前記ポンプインペラと一体的に回転するように連結された回転ハウジングと、を備え、
前記ケースは、前記流体継手に対して軸方向の一方側に配置された第1支持体と、前記流体継手に対して前記軸方向の他方側に配置された第2支持体と、を備え、
前記回転ハウジングが前記第1支持体に対して相対的に回転するように、前記回転ハウジングを前記第1支持体に対して前記軸方向及び径方向に支持する第1支持機構と、
前記回転ハウジングが前記第2支持体に対して相対的に回転するように、前記回転ハウジングを前記第2支持体に対して前記軸方向及び前記径方向に支持する第2支持機構と、が設けられ、
前記軸方向における前記回転ハウジングと前記第2支持機構との間、及び、前記軸方向における前記第2支持機構と前記第2支持体との間の少なくとも一方に、前記軸方向に弾性を有する弾性部材が配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1支持機構は、前記径方向に沿う径方向視で、前記ロータと重複するように配置され、
前記第2支持機構は、前記径方向視で、前記ロータと重複しないように配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記弾性部材及び前記第2支持機構の少なくとも一方は、前記径方向に沿う径方向視で、前記回転ハウジングと重複するように配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ポンプインペラは、複数のポンプブレードを備え、
前記タービンランナは、複数の前記ポンプブレードに対して前記軸方向に対向する複数のタービンブレードを備え、
前記弾性部材及び前記第2支持機構は、複数の前記ポンプブレード及び複数の前記タービンブレードよりも前記径方向の内側に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第2支持機構は、前記回転ハウジングを前記第2支持体に対して前記軸方向に支持するスラスト軸受と、前記回転ハウジングを前記第2支持体に対して前記径方向に支持するラジアル軸受と、を含み、
前記スラスト軸受に対して前記軸方向に隣接するように、前記弾性部材が配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、回転電機の側から伝達される回転を変速して出力部材の側へ伝達する変速機と、回転電機と変速機との間の動力伝達経路に配置された流体継手と、回転電機、前記変速機、及び流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置では、流体継手(5)は、互いに相対的に回転するポンプインペラ(5.3)及びタービンランナ(5.5)と、それらを収容する回転ハウジング(5.1)と、を備えている。そして、回転ハウジング(5.1)における、ポンプインペラ(5.3)及びタービンランナ(5.5)に対して、入力部材(3)の側とは軸方向の反対側(特許文献1の図1における右側)の部分(以下、「リヤ側部分」と記す)は、ラジアルころ軸受によりケース(1)に対して回転可能に支持された軸受支持部を、径方向の内側の領域に備えている。こうして、回転ハウジング(5.1)は、ラジアルころ軸受によりケース(1)に対して径方向に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/197251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、回転ハウジング(5.1)のリヤ側部分は、回転ハウジングの内部の油圧に起因する回転ハウジングの膨張(所謂、バルーニング)等、回転ハウジングの軸方向の寸法が増加した場合に、別途設けられた受け部材に対して軸方向に当接する当接部を、径方向の外側の領域に備えている。このように、特許文献1の車両用駆動装置では、回転ハウジング(5.1)のリヤ側部分は、回転ハウジングの軸方向の寸法が増加した場合に、当接部材によりケース(1)に対して軸方向に支持される。
【0006】
しかし、上記の構成では、回転ハウジング(5.1)をケース(1)に対して軸方向に支持するための受け部材を配置すると共に、回転ハウジングのリヤ側部分に当接部を設ける必要があるため、車両用駆動装置の大型化を招き易かった。
【0007】
そこで、回転ハウジングがケースに対して軸方向に支持される構成であっても、小型化が容易な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
ロータを備え、前記車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記回転電機の側から伝達される回転を変速して前記出力部材の側へ伝達する変速機と、
前記回転電機と前記変速機との間の動力伝達経路に配置された流体継手と、
前記回転電機、前記変速機、及び前記流体継手を収容するケースと、を備え、
前記流体継手は、互いに相対的に回転するポンプインペラ及びタービンランナと、前記ポンプインペラ及び前記タービンランナを収容すると共に、前記ポンプインペラと一体的に回転するように連結された回転ハウジングと、を備え、
前記ケースは、前記流体継手に対して軸方向の一方側に配置された第1支持体と、前記流体継手に対して前記軸方向の他方側に配置された第2支持体と、を備え、
前記回転ハウジングが前記第1支持体に対して相対的に回転するように、前記回転ハウジングを前記第1支持体に対して前記軸方向及び径方向に支持する第1支持機構と、
前記回転ハウジングが前記第2支持体に対して相対的に回転するように、前記回転ハウジングを前記第2支持体に対して前記軸方向及び前記径方向に支持する第2支持機構と、が設けられ、
前記軸方向における前記回転ハウジングと前記第2支持機構との間、及び、前記軸方向における前記第2支持機構と前記第2支持体との間の少なくとも一方に、前記軸方向に弾性を有する弾性部材が配置されている点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、軸方向に弾性を有する弾性部材が、回転ハウジングをケースの第2支持体に対して軸方向及び径方向に支持する第2支持機構に軸方向に隣接して配置されている。これにより、流体継手の回転ハウジングの軸方向の寸法が変動した場合であっても、弾性部材が軸方向に伸縮するように変形するため、回転ハウジングにおける軸方向の寸法の変動を許容しつつ、回転ハウジングをケースに対して軸方向に支持することができる。このように、軸方向における回転ハウジングと第2支持機構との間、及び、軸方向における第2支持機構と第2支持体との間の少なくとも一方に弾性部材を配置するだけで、適切に回転ハウジングをケースに対して軸方向に支持することができる。したがって、回転ハウジングがケースに対して軸方向に支持される構成であっても、車両用駆動装置の小型化が容易となっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図
図3】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の部分拡大断面図
図4】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の部分拡大断面図
図5】第2の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
図6】第2の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図
図7】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるように構成されている。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源として内燃機関EG及び回転電機MGの一方又は双方を用いる車両(ハイブリッド車両)を駆動するための装置である。つまり、車両用駆動装置100は、所謂、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
【0013】
以下の説明では、特に明記している場合を除き、回転電機MGの回転軸心を基準として、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向」を定義している。そして、軸方向Lにおいて、回転電機MGに対して内燃機関EGが配置される側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、径方向Rにおいて、回転電機MGの回転軸心側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。なお、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。
【0014】
回転電機MGは、車輪Wの駆動力源として機能する。回転電機MGは、ステータStと、ロータRoと、を備えている。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(バッテリやキャパシタ等)と電気的に接続されている。回転電機MGは、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関EGのトルクや車両の慣性力により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0015】
内燃機関EGは、回転電機MGと同様に、車輪Wの駆動力源として機能する。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0016】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、上記の回転電機MGに加えて、入力部材1と、出力部材2と、変速機3と、ケース4と、流体継手5と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、切離用係合装置6と、カウンタギヤ機構CGと、差動歯車機構DFと、を更に備えている。
【0017】
入力部材1は、内燃機関EGに駆動連結されている。本実施形態では、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ装置DP(図2参照)を介して、内燃機関EGの出力軸に駆動連結されている。
【0018】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0019】
切離用係合装置6は、入力部材1と回転電機MGとの間の動力伝達経路に配置されている。切離用係合装置6は、入力部材1と回転電機MGとの間の動力伝達を断接する係合装置である。
【0020】
変速機3は、回転電機MGの側から伝達される回転を変速して出力部材2の側へ伝達する。本実施形態では、変速機3は、当該変速機3の入力要素としての変速入力軸31と、当該変速機3の出力要素としての変速出力ギヤ32と、を備えている。変速機3としては、例えば、複数の変速段を切り替え可能に備える有段自動変速機や、変速比を無段階で変更することが可能な無段自動変速機等の公知の各種自動変速機が用いられる。
【0021】
流体継手5は、回転電機MGと変速機3との間の動力伝達経路に配置されている。本実施形態では、流体継手5は、回転ハウジング51と、ポンプインペラ52と、タービンランナ53と、ロックアップクラッチ54と、を備えたトルクコンバータである。
【0022】
回転ハウジング51は、ポンプインペラ52及びタービンランナ53を収容している。また、回転ハウジング51は、ポンプインペラ52と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、回転ハウジング51は、更に回転電機MGのロータRoと一体的に回転するように連結されている。
【0023】
ポンプインペラ52とタービンランナ53とは、軸方向Lに対向するように配置されている。本実施形態では、ポンプインペラ52がタービンランナ53に対して軸方向第2側L2で対向するように配置されている。ポンプインペラ52とタービンランナ53とは、互いに相対的に回転するように支持されている。ポンプインペラ52は、回転ハウジング51と一体的に回転するように連結されている。タービンランナ53は、変速機3の変速入力軸31と一体的に回転するように連結されている。
【0024】
ロックアップクラッチ54は、ポンプインペラ52とタービンランナ53とを選択的に直結係合状態とするように構成されている。つまり、ロックアップクラッチ54は、回転ハウジング51と変速機3の変速入力軸31とを、直結係合状態、及びポンプインペラ52とタービンランナ53との間で流体を介して動力を伝達する状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。
【0025】
カウンタギヤ機構CGは、当該カウンタギヤ機構CGの入力要素としてのカウンタ入力ギヤG1と、当該カウンタギヤ機構CGの出力要素としてのカウンタ出力ギヤG2と、を備えている。カウンタ入力ギヤG1は、変速機3の変速出力ギヤ32に噛み合っている。カウンタ出力ギヤG2は、カウンタ入力ギヤG1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、カウンタ入力ギヤG1とカウンタ出力ギヤG2とは、軸方向Lに沿って延在するカウンタ軸CSを介して、一体的に回転するように連結されている。
【0026】
差動歯車機構DFは、カウンタギヤ機構CGのカウンタ出力ギヤG2に噛み合う差動入力ギヤG3を備えている。差動歯車機構DFは、当該差動歯車機構DFの入力要素としての差動入力ギヤG3の回転を、一対の出力部材2に分配する。
【0027】
出力部材2は、車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、一対の出力部材2のそれぞれが、ドライブシャフトDSを介して車輪Wに駆動連結されている。
【0028】
ケース4は、回転電機MG、変速機3、及び流体継手5を収容している。本実施形態では、ケース4は、切離用係合装置6、カウンタギヤ機構CG、及び差動歯車機構DFも収容している。
【0029】
図2に示すように、回転電機MGのステータStは、非回転部材(ここでは、ケース4)に固定されたステータコアStcを有している。回転電機MGのロータRoは、ステータStに対して相対的に回転するロータコアRocを有している。
【0030】
本実施形態では、回転電機MGは、インナロータ型の回転電機であるため、ステータコアStcよりも径方向内側R1にロータコアRocが配置されている。
【0031】
また、本実施形態では、回転電機MGは回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコアStcには、当該ステータコアStcから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部Ceが形成されるようにステータコイルが巻装されている。また、ロータコアRocには、永久磁石(図示を省略)が設けられている。
【0032】
ケース4は、流体継手5に対して軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第1側L1)に配置された第1支持体41と、流体継手5に対して軸方向Lの他方側(ここでは、軸方向第2側L2)に配置された第2支持体42と、を備えている。本実施形態では、ケース4は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された筒状体43も備えている。
【0033】
本実施形態では、第1支持体41は、回転電機MG及び切離用係合装置6に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。そして、第2支持体42は、流体継手5に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。また、第1支持体41及び第2支持体42は、筒状体43から径方向内側R1に向けて延在するように、筒状体43に連結されている。こうして、本実施形態では、第1支持体41と第2支持体42と筒状体43とによって囲まれた空間に、回転電機MG、流体継手5、及び切離用係合装置6が配置されている。
【0034】
図3に示すように、本実施形態では、第1支持体41は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された第1筒状支持部411と、当該第1筒状支持部411から径方向外側R2に向けて延在する第1径方向延在部412と、を備えている。本実施形態では、第1筒状支持部411は、第1径方向延在部412の径方向内側R1の端部から軸方向第2側L2に向けて延在するように形成されている。また、第1径方向延在部412は、第1筒状支持部411と筒状体43とを連結するように、径方向Rに沿って延在している。
【0035】
図4に示すように、本実施形態では、第2支持体42は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された第2筒状支持部421と、当該第2筒状支持部421から径方向外側R2に向けて延在する第2径方向延在部422と、を備えている。本実施形態では、第2筒状支持部421は、第2径方向延在部422の径方向内側R1の端部から軸方向第1側L1に向けて延在するように形成されている。また、第2径方向延在部422は、第2筒状支持部421と筒状体43とを連結するように、径方向Rに沿って延在している。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、入力部材1は、外側筒状部11と、内側筒状部12と、接続部13と、を備えている。
【0037】
外側筒状部11及び内側筒状部12のそれぞれは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。内側筒状部12は、外側筒状部11よりも径方向内側R1に配置されている。本実施形態では、内側筒状部12に対して径方向外側R2を、ケース4における第1支持体41の第1筒状支持部411が覆うように配置されている。そして、本実施形態では、内側筒状部12と第1筒状支持部411との間を油密状に封止するシール部材Sが設けられている。本実施形態では、シール部材Sは、内側筒状部12の外周面に形成されたシール用外周面12aと、第1筒状支持部411の内周面に形成されたシール用内周面41bとの径方向Rの間に配置されている。
【0038】
接続部13は、外側筒状部11と内側筒状部12とを接続するように、径方向Rに沿って延在している。図示の例では、外側筒状部11が、接続部13の径方向外側R2の端部から軸方向第1側L1に向けて延在するように形成されている。そして、内側筒状部12が、接続部13の径方向内側R1の端部から軸方向第2側L2に向けて延在するように形成されている。
【0039】
本実施形態では、流体継手5の回転ハウジング51は、回転電機MGのロータRoを支持するロータ支持部515を備えている。ロータ支持部515は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。ロータ支持部515の外周面には、ロータRoを径方向内側R1から支持する第2外周面51bが形成されている。
【0040】
本実施形態では、切離用係合装置6は、第1摩擦部材61と、当該第1摩擦部材61を軸方向Lに押圧する第1ピストン部62と、当該第1ピストン部62の作動用の油が供給される第1作動油室63と、を備えている。
【0041】
第1摩擦部材61は、第1内側摩擦材611及び第1外側摩擦材612を含んでいる。第1内側摩擦材611及び第1外側摩擦材612は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸を一致させて(同軸に)配置されている。また、第1内側摩擦材611及び第1外側摩擦材612は複数枚ずつ設けられており、これらは軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1内側摩擦材611及び第1外側摩擦材612は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0042】
第1外側摩擦材612は、入力部材1が備える第1摩擦材支持部14によって径方向外側R2から支持されている。第1摩擦材支持部14は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。本実施形態では、第1摩擦材支持部14は、外側筒状部11と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第1摩擦材支持部14は、外側筒状部11から軸方向第2側L2に向けて延在するように形成されている。そして、図示の例では、第1摩擦材支持部14は、外側筒状部11と一体的に形成されている。また、本実施形態では、第1摩擦材支持部14は、回転ハウジング51のロータ支持部515に対して径方向内側R1に配置されている。
【0043】
本例では、第1外側摩擦材612の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第1摩擦材支持部14の内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士を係合させることで、第1外側摩擦材612が第1摩擦材支持部14により径方向外側R2から支持される。こうして、第1外側摩擦材612は、第1摩擦材支持部14に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0044】
第1内側摩擦材611は、回転ハウジング51が備える第2摩擦材支持部516によって径方向内側R1から支持されている。第2摩擦材支持部516は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。本実施形態では、第2摩擦材支持部516は、回転ハウジング51の一部により構成され、ロータ支持部515と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第2摩擦材支持部516は、ロータ支持部515の軸方向第2側L2の端部から径方向内側R1に向けて延在し、更に軸方向第1側L1に向けて延在するように形成されている。
【0045】
本例では、第1内側摩擦材611の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第2摩擦材支持部516の外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士を係合させることで、第1内側摩擦材611が第2摩擦材支持部516により径方向内側R1から支持される。こうして、第1内側摩擦材611は、第2摩擦材支持部516に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0046】
第1ピストン部62は、第1作動油室63に供給された油圧に応じた圧力で第1摩擦部材61を押圧するように構成されている。本実施形態では、第1ピストン部62は、第1摺動部621と、第1押圧部622と、を有している。
【0047】
本実施形態では、入力部材1の接続部13に、径方向外側R2を向く段差面132aを形成する第2段差部132が設けられている。図示の例では、第2段差部132は、軸方向第2側L2に突出するように形成されている。第1摺動部621は、第2段差部132の段差面132aと、入力部材1の外側筒状部11の内周面11cとを、軸方向Lに摺動するように構成されている。つまり、本実施形態では、第2段差部132と外側筒状部11とによって、第1摺動部621が摺動するシリンダ部が形成されている。第1摺動部621は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状部と、当該円環板状部の径方向内側R1の端部及び径方向外側R2の端部のそれぞれから軸方向Lに延在する2つの筒状部とを有する有底の二重円筒状に形成されている。
【0048】
第1押圧部622は、第1摩擦部材61を軸方向Lに押圧する。本実施形態では、第1押圧部622は、第1摩擦部材61に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。図示の例では、第1押圧部622は、第1摺動部621から軸方向第2側L2に向けて延在し、更に径方向外側R2に延在するように形成されている。
【0049】
第1作動油室63は、第1ピストン部62に対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、第1作動油室63は、第1摺動部621と、外側筒状部11と、第2段差部132と、接続部13における外側筒状部11と第2段差部132との間の部分とによって形成されている。
【0050】
本実施形態では、複数の第1外側摩擦材612のうち、互いに軸方向Lに隣接する一対の第1外側摩擦材612の間のそれぞれに、周方向に沿って延在する円環状に形成されて、軸方向Lに弾性を有する第1弾性体64が配置されている。第1弾性体64は、第1作動油室63に供給された油圧が所定値未満の場合には、その弾性力によって、隣接する第1外側摩擦材612同士を軸方向Lに離間させる。これにより、切離用係合装置6の解放動作を適切に行い、摩擦材間の引き摺りトルクを低減することができると共に、遠心油圧等によって切離用係合装置6が意図せずに係合状態となることを回避することができる。なお、第1弾性体64として、例えばウェーブスプリングを採用可能である。
【0051】
本実施形態では、ロックアップクラッチ54は、第2摩擦部材55と、当該第2摩擦部材55を軸方向Lに押圧する第2ピストン部56と、当該第2ピストン部56の作動用の油が供給される第2作動油室57と、を備えている。
【0052】
第2摩擦部材55は、第2内側摩擦材551及び第2外側摩擦材552を含んでいる。第2内側摩擦材551及び第2外側摩擦材552は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸を一致させて(同軸に)配置されている。また、第2内側摩擦材551及び第2外側摩擦材552は複数枚ずつ設けられており、これらは軸方向Lに沿って交互に配置されている。第2内側摩擦材551及び第2外側摩擦材552は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0053】
第2外側摩擦材552は、上記の第2摩擦材支持部516によって径方向外側R2から支持されている。本例では、第2外側摩擦材552の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第2摩擦材支持部516の内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士を係合させることで、第2外側摩擦材552が第2摩擦材支持部516により径方向外側R2から支持される。こうして、第2外側摩擦材552は、第2摩擦材支持部516に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0054】
第2内側摩擦材551は、支持部材7によって支持されている。支持部材7は、流体継手5のタービンランナ53及び変速機3の変速入力軸31と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、変速入力軸31は、径方向外側R2に向けて延在する連結部311を有している。そして、連結部311の径方向外側R2の端部に対して、支持部材7の径方向内側R1の端部が固定されている。
【0055】
支持部材7は、第3摩擦材支持部71を備えている。第3摩擦材支持部71は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。第3摩擦材支持部71は、支持部材7における変速入力軸31との連結部分から軸方向第1側L1に向けて延在するように形成されている。
【0056】
本例では、第2内側摩擦材551の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第3摩擦材支持部71の外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士を係合させることで、第2内側摩擦材551が第3摩擦材支持部71により径方向内側R1から支持される。こうして、第2内側摩擦材551は、第3摩擦材支持部71に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0057】
第2ピストン部56は、第2作動油室57に供給された油圧に応じた圧力で第2摩擦部材55を押圧するように構成されている。本実施形態では、第2ピストン部56は、第2摺動部561と、第2押圧部562と、を有している。
【0058】
第2摺動部561は、回転ハウジング51が備えるシリンダ形成部517によって形成されたシリンダ部の内部を摺動するように構成されている。第2摺動部561は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されている。
【0059】
シリンダ形成部517は、外周部517aと、内周部517bと、連結部517cと、を有している。外周部517aは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。内周部517bは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。内周部517bは、外周部517aよりも径方向内側R1に配置されている。連結部517cは、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そして、連結部517cは、外周部517aと内周部517bとを接続するように形成されている。図示の例では、外周部517aは、連結部517cの径方向外側R2の端部から軸方向第2側L2に向けて延在するように形成されている。そして、内周部517bは、連結部517cの径方向内側R1の端部から軸方向第2側L2に向けて延在するように形成されている。このように形成された外周部517aと内周部517bと連結部517cとによって、第2摺動部561が摺動するシリンダ部が形成されている。
【0060】
本実施形態では、連結部517cは、入力部材1の接続部13に対して軸方向第2側L2に間隔を空けて配置されている。これは、流体継手5における回転ハウジング51の内部の油圧に起因する回転ハウジング51の膨張(所謂、バルーニング)等、回転ハウジング51の軸方向Lの寸法の変動を考慮したものである。
【0061】
第2押圧部562は、第2摩擦部材55を軸方向Lに押圧する。本実施形態では、第2押圧部562は、第2摩擦部材55に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。図示の例では、第2押圧部562は、第2摺動部561の径方向外側R2の部分から軸方向第2側L2に突出するように形成されている。
【0062】
第2作動油室57は、第2ピストン部56に対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、第2作動油室57は、第2摺動部561と、外周部517aと、内周部517bと、連結部517cとによって形成されている。
【0063】
本実施形態では、第2ピストン部56の第2摺動部561は、周方向に分散して配置された複数の付勢部材58によって、軸方向第1側L1に向けて付勢されている。付勢部材58は、第2作動油室57に供給された油圧が所定値未満の場合には、その付勢力によって第2ピストン部56を第2摩擦部材55から離間するように軸方向第1側L1へ移動させる。これにより、ロックアップクラッチ54の解放動作を適切に行うことができると共に、遠心油圧等によってロックアップクラッチ54が意図せずに係合状態となることを回避することができる。なお、付勢部材58として、例えば圧縮コイルばねを採用可能である。
【0064】
また、本実施形態では、複数の第2外側摩擦材552のうち、互いに軸方向Lに隣接する一対の第2外側摩擦材552の間のそれぞれに、周方向に沿って延在する円環状に形成されて、軸方向Lに弾性を有する第2弾性体59が配置されている。第2弾性体59は、第2作動油室57に供給された油圧が所定値未満の場合には、その弾性力によって、隣接する第2外側摩擦材552同士を軸方向Lに離間させる。これにより、ロックアップクラッチ54の解放動作を適切に行い、摩擦材間の引き摺りトルクを低減することができると共に、遠心油圧等によってロックアップクラッチ54が意図せずに係合状態となることを回避することができる。なお、第2弾性体59として、例えばウェーブスプリングを採用可能である。
【0065】
本実施形態では、ロックアップクラッチ54は、切離用係合装置6に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で切離用係合装置6と重複する位置に配置されている。図示の例では、ロックアップクラッチ54の第2摩擦部材55が、切離用係合装置6の第1摩擦部材61に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で第1摩擦部材61と重複する位置に配置されている。これは、上述したように、第2摩擦材支持部516が、第1摩擦部材61の第1内側摩擦材611を径方向内側R1から支持すると共に、第2摩擦部材55の第2外側摩擦材552を径方向外側R2から支持することによって実現されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0066】
また、本実施形態では、切離用係合装置6及びロックアップクラッチ54が、径方向Rに沿う径方向視で、回転電機MGのロータRoと重複するように配置されている。図示の例では、第1係合装置CL1の全体及び第2係合装置CL2の全体が、径方向視で、ロータRoと重複するように配置されている。
【0067】
図4に示すように、本実施形態では、流体継手5のポンプインペラ52は、複数のポンプブレード521を備えている。図示は省略するが、複数のポンプブレード521は、周方向に並んで配置されている。また、タービンランナ53は、複数のポンプブレード521に対して軸方向Lに対向する複数のタービンブレード531と、当該複数のタービンブレード531を変速入力軸31の連結部311に連結するためのタービン連結部532と、を備えている。図示の例では、複数のタービンブレード531は、複数のポンプブレード521に対して軸方向第1側L1から対向するように配置されている。図示は省略するが、複数のタービンブレード531は、周方向に並んで配置されている。タービン連結部532は、複数のタービンブレード531から径方向内側R1に向けて延在するように形成されている。本実施形態では、連結部311の径方向外側R2の端部に対して、タービン連結部532、及び支持部材7の径方向内側R1の端部が軸方向Lに重なり合った状態で、それらが一体的に連結されている。
【0068】
本実施形態では、回転ハウジング51は、ポンプ収容部511と、タービン収容部512と、第1支持部513と、第2支持部514と、を備えている。
【0069】
ポンプ収容部511は、複数のポンプブレード521の外側を覆うように形成されている。タービン収容部512は、複数のタービンブレード531の外側を覆うように形成されている。本実施形態では、タービン収容部512から軸方向第1側L1に向けて延在するように、ロータ支持部515が形成されている。
【0070】
第1支持部513は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。第1支持部513は、ポンプ収容部511よりも径方向内側R1に配置されている。
【0071】
第2支持部514は、第1支持部513とポンプ収容部511とを接続するように、径方向Rに沿って延在している。本実施形態では、第2支持部514は、第1支持部513の軸方向第1側L1の端部と、ポンプ収容部511の径方向内側R1の端部とを接続するように形成されている。また、本実施形態では、ポンプ収容部511は、第2支持部514よりも軸方向第2側L2に膨んだ形状を有している。
【0072】
図2に示すように、車両用駆動装置100には、第1支持機構S1と、第2支持機構S2と、が設けられている。
【0073】
第1支持機構S1は、回転ハウジング51がケース4の第1支持体41に対して相対的に回転するように、回転ハウジング51を第1支持体41に対して軸方向L及び径方向Rに支持している。本実施形態では、第1支持機構S1は、第1軸受B1と、第2軸受B2と、を含む。
【0074】
図3に示すように、本実施形態では、第1軸受B1は、入力部材1における外側筒状部11の外周面に形成された第1外周面11aと、回転ハウジング51におけるロータ支持部515の内周面に形成された第2内周面51aとの径方向Rの間に配置されている。こうして、本実施形態では、第1軸受B1は、回転ハウジング51を入力部材1に対して相対的に回転可能に支持している。本例では、第1軸受B1は、ラジアル玉軸受である。
【0075】
また、本実施形態では、第1軸受B1は、外側筒状部11に形成された第1側面11bと、外側筒状部11に取り付けられた第1固定部材SR1と、ロータ支持部515に取り付けられた第2固定部材SR2及び第3固定部材SR3と、によって軸方向Lの移動が規制されている。
【0076】
第1側面11bは、軸方向第2側L2から第1軸受B1に当接するように形成されている。本実施形態では、第1側面11bは、第1外周面11aから径方向外側R2に向けて延在するように形成されている。
【0077】
第1固定部材SR1は、外側筒状部11の第1外周面11aから径方向外側R2に突出すると共に、周方向に沿って連続するように形成されている。ここでは、第1固定部材SR1は、周方向に沿って第1外周面11aに形成された溝部に取り付けられている。そして、第1固定部材SR1は、軸方向第1側L1から第1軸受B1に当接するように配置されている。第2固定部材SR2及び第3固定部材SR3のそれぞれは、ロータ支持部515の第2内周面51aから径方向内側R1に突出すると共に、周方向に沿って連続するように形成されている。ここでは、第2固定部材SR2及び第3固定部材SR3のそれぞれは、周方向に沿って第2内周面51aに形成された溝部に取り付けられている。そして、第2固定部材SR2は、軸方向第1側L1から第1軸受B1に当接するように配置されている。第3固定部材SR3は、軸方向第2側L2から第1軸受B1に当接するように配置されている。本例では、第1固定部材SR1、第2固定部材SR2、及び第3固定部材SR3のそれぞれは、円環状に形成されたスナップリングである。
【0078】
本実施形態では、第2軸受B2は、入力部材1の接続部13に形成された第1内周面13aと、ケース4における第1筒状支持部411の外周面に形成された支持外周面41aとの径方向Rの間に配置されている。こうして、本実施形態では、第2軸受B2は、入力部材1をケース4に対して相対的に回転可能に支持している。本例では、第2軸受B2は、ラジアル玉軸受である。
【0079】
第1内周面13aは、接続部13に設けられた第1段差部131が形成する、径方向内側R1を向く段差面である。図示の例では、第1段差部131は、接続部13における第1段差部131よりも径方向内側R1の部分に対して軸方向第2側L2に屈曲すると共に、接続部13における第1段差部131よりも径方向外側R2の部分に対して軸方向第1側L1に屈曲するように形成されている。この第1段差部131における軸方向Lに延在する部分の内周面が、段差面としての第1内周面13aとなっている。
【0080】
本実施形態では、第2軸受B2は、第1段差部131に形成された第2側面13bと、ケース4の第1筒状支持部411に形成された第1支持側面41cと、によって軸方向Lの移動が規制されている。
【0081】
第2側面13bは、軸方向第2側L2から第2軸受B2に当接するように形成されている。本実施形態では、第2側面13bは、第1内周面13aから径方向内側R1に向けて延在するように形成されている。第1支持側面41cは、軸方向第1側L1から第2軸受B2に当接するように形成されている。本実施形態では、第1支持側面41cは、支持外周面41aから径方向外側R2に向けて延在するように形成されている。
【0082】
本実施形態では、第1軸受B1と第2軸受B2とが、径方向Rに沿う径方向視で互いに重複するように配置されている。ここで、第1軸受B1における軸方向Lの領域の半分以上が径方向視で第2軸受B2と重複し、第2軸受B2の軸方向Lの領域の半分以上が径方向視で第1軸受B1と重複していると好適である。本例では、第1軸受B1及び第2軸受B2における互いの軸方向Lの領域の4分の3以上が径方向視で重複している。なお、図示の例では、第1軸受B1の軸方向Lの寸法と第2軸受B2の軸方向Lの寸法とは同等である。本実施形態では、第1軸受B1は、第2軸受B2よりも径方向外側R2であって、径方向Rに沿う径方向視で第2軸受B2と重複する位置に配置されている。
【0083】
図4に示すように、第2支持機構S2は、回転ハウジング51がケース4の第2支持体42に対して相対的に回転するように、回転ハウジング51を第2支持体42に対して軸方向L及び径方向Rに支持している。本実施形態では、第2支持機構S2は、第3軸受B3と、第4軸受B4と、を含む。
【0084】
本実施形態では、第3軸受B3は、回転ハウジング51における第1支持部513の外周面に形成された第1支持面513aと、ケース4の第2筒状支持部421の内周面に形成された支持内周面42aとの径方向Rの間に配置されている。このように、第3軸受B3は、回転ハウジング51をケース4の第2支持体42に対して径方向Rに支持する「ラジアル軸受」である。本例では、第3軸受B3は、ラジアルころ軸受である。ここで、第3軸受B3は、第1支持面513a及び支持内周面42aの少なくとも一方との間で、軸方向Lに移動可能に構成されている。これにより、回転ハウジング51の内部の油圧に起因する回転ハウジング51の膨張(所謂、バルーニング)等で、回転ハウジング51の軸方向Lの寸法の変動が生じた場合でも、第1支持部513が軸方向Lに移動することが許容される。
【0085】
本実施形態では、第4軸受B4は、回転ハウジング51における第2支持部514の軸方向Lを向く側面に形成された第2支持面514aと、ケース4の第2径方向延在部422の軸方向Lを向く側面に形成された第2支持側面42bとの軸方向Lの間に配置されている。本実施形態では、第2支持面514aは、軸方向第2側L2を向くように形成されている。また、第2支持側面42bは、軸方向第1側L1を向くように形成されている。このように、第4軸受B4は、回転ハウジング51をケース4の第2支持体42に対して軸方向Lに支持する「スラスト軸受」である。本例では、第4軸受B4は、スラストころ軸受である。
【0086】
図4に示すように、車両用駆動装置100は、軸方向Lに弾性を有する弾性部材10を備えている。弾性部材10は、軸方向Lにおける回転ハウジング51と第2支持機構S2との間、及び、軸方向Lにおける第2支持機構S2と第2支持体42との間の少なくとも一方に配置されている。好ましくは、弾性部材10は、第2支持機構S2における回転ハウジング51を第2支持体42に対して軸方向Lに支持している部分、すなわち、スラスト軸受である第4軸受B4に対して設けられていると良い。つまり、弾性部材10は、軸方向Lにおける回転ハウジング51と第4軸受B4との間、及び、軸方向Lにおける第4軸受B4と第2支持体42との間の少なくとも一方に配置されていると良い。本実施形態では、弾性部材10は、軸方向Lにおける回転ハウジング51と第4軸受B4(第2支持機構S2)との間に配置されている。なお、弾性部材10としては、圧縮コイルばね、皿ばね、ゴム又は合成樹脂製のワッシャ等、各種弾性部材を採用可能である。この弾性部材10が軸方向Lに弾性変形することにより、回転ハウジング51の内部の油圧に起因する回転ハウジング51の膨張(所謂、バルーニング)等で、回転ハウジング51の軸方向Lの寸法の変動が生じた場合でも、第2支持部514が軸方向Lに移動することが許容される。つまり、第2支持部514は、第4軸受B4及び弾性部材10により軸方向Lに支持されつつも、軸方向Lへの移動が許容される。
【0087】
本実施形態では、弾性部材10及び第2支持機構S2の少なくとも一方は、径方向Rに沿う径方向視で、回転ハウジング51と重複するように配置されている。本実施形態の構成では、弾性部材10及び第4軸受B4のうちの回転ハウジング51に近い側の部材(ここでは弾性部材10)が少なくとも径方向視で、回転ハウジング51と重複するように配置されていると良い。図示の例では、弾性部材10及び第4軸受B4の双方が、径方向視で回転ハウジング51のポンプ収容部511と重複するように配置されている。なお、本例では、第2支持機構S2を構成する第3軸受B3も、径方向視でポンプ収容部511と重複するように配置されている。
【0088】
この構成によれば、弾性部材10及び第2支持機構S2の双方が回転ハウジング51に対して軸方向Lの一方側に配置された構成と比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0089】
また、本実施形態では、弾性部材10及び第2支持機構S2は、ポンプインペラ52における複数のポンプブレード521、及びタービンランナ53における複数のタービンブレード531よりも径方向内側R1に配置されている。
【0090】
このように、本実施形態では、ポンプインペラ52は、複数のポンプブレード521を備え、
タービンランナ53は、複数のポンプブレード521に対して軸方向Lに対向する複数のタービンブレード531を備え、
弾性部材10及び第2支持機構S2は、複数のポンプブレード521及び複数のタービンブレード531よりも径方向内側R1に配置されている。
【0091】
回転ハウジング51における複数のポンプブレード521及び複数のタービンブレード531を収容する部分(ここでは、ポンプ収容部511及びタービン収容部512)は、それよりも径方向内側R1の部分(ここでは、第2支持部514)と比べて軸方向Lの寸法が大きくなり易い。上記の構成によれば、回転ハウジング51における複数のポンプブレード521及び複数のタービンブレード531を収容する部分よりも径方向内側R1のスペースを利用して、弾性部材10及び第2支持機構S2を配置することができる。したがって、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0092】
本例では、弾性部材10は、回転ハウジング51における第2支持部514の第2支持面514aと、第2支持機構S2の第4軸受B4に軸方向第1側L1を向くように形成された支持面B4aとに亘って配置されている。
【0093】
このように、本例では、第2支持機構S2は、回転ハウジング51を第2支持体42に対して軸方向Lに支持するスラスト軸受としての第4軸受B4と、回転ハウジング51を第2支持体42に対して径方向Rに支持するラジアル軸受としての第3軸受B3と、を含み、
スラスト軸受としての第4軸受B4に対して軸方向Lに隣接するように、弾性部材10が配置されている。
【0094】
この構成によれば、スラスト軸受としての第4軸受B4における軸方向Lを向く面(ここでは、支持面B4a)に隣接させて弾性部材10を配置することができる。これにより、弾性部材10を適切に配置することができる。
【0095】
図2に示すように、本実施形態では、第1支持機構S1は、径方向Rに沿う径方向視で、ロータRoと重複するように配置されている。一方、第2支持機構S2は、流体継手5に対して、軸方向Lにおける回転電機MGの側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)に配置されている。これにより、第2支持機構S2は、径方向視で、ロータRoと重複しないように配置されている。
【0096】
この構成によれば、第1支持機構S1がロータRoの径方向Rの荷重を主に支持する構成とすることが容易となる。これにより、回転ハウジング51の軸方向Lの寸法が変動して、第2支持機構S2に隣接して配置された弾性部材10が変形した場合に、回転ハウジング51における第2支持機構S2によって支持された部分が軸方向Lに変位することに伴う、ロータRoの軸方向Lの変位を小さく抑えることができる。したがって、回転ハウジング51の軸方向Lの寸法の変動が回転電機MGに与える影響を小さく抑えることができる。
【0097】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態係る車両用駆動装置100は、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載されるように構成されている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0098】
図5に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、カウンタギヤ機構CGを備えておらず、変速機3の出力要素が出力した回転が、カウンタギヤ機構CGを介することなく差動歯車機構DFに伝達される。
【0099】
図6に示すように、本実施形態では、第2支持側面42bは、第2支持体42の第2径方向延在部422の軸方向Lを向く側面に形成される代わりに、第2支持体42の第2筒状支持部421の軸方向Lを向く側面に形成されている。そのため、本実施形態では、第4軸受B4は、軸方向Lにおける第2筒状支持部421と回転ハウジング51の第2支持部514との間に配置されている。
【0100】
本実施形態では、切離用係合装置6とロックアップクラッチ54とが、径方向Rに沿う径方向視で互いに重複しないように配置されている。具体的には、切離用係合装置6とロックアップクラッチ54とが、軸方向Lに沿う軸方向視で互いに重複すると共に、軸方向Lの配置領域が重ならないように、軸方向Lに並んで配置されている。また、本実施形態では、切離用係合装置6が、径方向視で回転電機MGのロータRoと重複するように配置されている。そして、ロックアップクラッチ54が、径方向視で回転電機MGのステータSt(ここでは、コイルエンド部Ce)と重複すると共に、軸方向Lに沿う軸方向視でロータRoと重複するように配置されている。
【0101】
本実施形態では、第1摩擦部材61の第1内側摩擦材611は、入力部材1の第1摩擦材支持部14によって径方向内側R1から支持されている。そして、第1摩擦部材61の第1外側摩擦材612は、回転ハウジング51のロータ支持部515によって径方向外側R2から支持されている。
【0102】
また、本実施形態では、第2摩擦部材55の第2内側摩擦材551は、回転ハウジング51の第2摩擦材支持部516によって径方向内側R1から支持されている。そして、第2摩擦部材55の第2外側摩擦材552は、支持部材7の第3摩擦材支持部71によって径方向外側R2から支持されている。
【0103】
本実施形態では、第1軸受B1と第2軸受B2とが、径方向Rに沿う径方向視で互いに重複しないように配置されている。本例では、第1軸受B1と第2軸受B2とは、軸方向Lに沿う軸方向視でも、互いに重複しないように配置されている。
【0104】
また、本実施形態では、第1軸受B1は、第1支持体41の第1筒状支持部411の外周面と、回転電機MGのロータRoと一体的に回転するように連結された518の内周面との径方向Rの間に配置されている。そして、第2軸受B2は、第1支持体41の第1筒状支持部411の内周面と、入力部材1の外周面との径方向Rの間に配置されている。
【0105】
3.その他の実施形態
(1)上記第1の実施形態では、第2支持側面42bが第2支持体42の第2径方向延在部422の軸方向Lを向く側面に形成された構成を例として説明したが、そのような構成に限定されない。例えば、図7に示すように、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるように構成された車両用駆動装置100であっても、上記第2の実施形態と同様に、第2支持側面42bが第2支持体42の第2筒状支持部421の軸方向Lを向く側面に形成されていても良い。
【0106】
(2)上記の実施形態では、弾性部材10が軸方向Lにおける回転ハウジング51と第2支持機構S2を構成する第4軸受B4との間に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されない。弾性部材10は、回転ハウジング51と第2支持機構S2との間に代えて、又は、回転ハウジング51と第2支持機構S2との間に加えて、軸方向Lにおける第2支持機構S2と第2支持体42との間に配置された構成としても良い。この構成では、第4軸受B4に軸方向第2側L2を向くように形成された第2の支持面と、第2支持側面42bとの軸方向Lの間に、弾性部材が配置されると好適である。
【0107】
(3)上記の実施形態では、第1支持機構S1が径方向視でロータRoと重複すると共に、第2支持機構S2が径方向視でロータRoと重複しないように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1支持機構S1及び第2支持機構S2の双方が径方向視でロータRoと重複するように配置されていても良い。或いは、第1支持機構S1及び第2支持機構S2の双方が径方向視でロータRoと重複しないように配置されていても良い。
【0108】
(4)上記の実施形態では、弾性部材10及び第2支持機構S2を構成する第4軸受B4の双方が径方向視で回転ハウジング51と重複するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、弾性部材10及び第4軸受B4のいずれか一方のみが径方向視で回転ハウジング51と重複するように配置されていても良い。或いは、弾性部材10及び第4軸受B4の双方が径方向視で回転ハウジング51と重複しないように配置されていても良い。なお、上記の実施形態では、第2支持機構S2を構成する第3軸受B3についても、径方向視で回転ハウジング51と重複するように配置されていたが、第3軸受B3が径方向視で回転ハウジング51と重複しないように配置されていても良い。
【0109】
(5)上記の実施形態では、弾性部材10及び第2支持機構S2が、複数のポンプブレード521及び複数のタービンブレード531よりも径方向内側R1に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、弾性部材10及び第2支持機構S2の少なくとも一方が、軸方向視で複数のポンプブレード521及び複数のタービンブレード531の少なくとも一方と重複するように配置されていても良い。
【0110】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、回転電機の側から伝達される回転を変速して出力部材の側へ伝達する変速機と、回転電機と変速機との間の動力伝達経路に配置された流体継手と、回転電機、前記変速機、及び流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
100:車両用駆動装置、1:入力部材、2:出力部材、3:変速機、4:ケース、41:第1支持体、42:第2支持体、5:流体継手、51:回転ハウジング、52:ポンプインペラ、53:タービンランナ、10:弾性部材、S1:第1支持機構、S2:第2支持機構、MG:回転電機、Ro:ロータ、EG:内燃機関、W:車輪、L:軸方向、R:径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7