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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028416
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】チャッキング装置および搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20220208BHJP
   B66C 1/10 20060101ALI20220208BHJP
   B66C 1/12 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B66C1/28 B
B66C1/10 X
B66C1/12 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131798
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 信親
(72)【発明者】
【氏名】藤井 視弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 仁
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AL05
3F004EA35
(57)【要約】
【課題】フレキシブルコンテナバッグの紐状部分を直接保持させずに吊り金具で保持させ、小型化が可能であり、さらに吊り金具の磁着を広い面積で行うことが可能なチャッキング装置および搬送装置を提供する。
【解決手段】チャッキング装置10は、本体部20と、磁石により磁着される磁着板部210とベルトを保持する下支持部230とを有する吊り金具200と、第1アクチュエータ38a,38bの作動により開閉することで吊り金具200の把持および把持解除を行う開閉爪機構30と、吊り金具200の磁着板部210を磁着するリフティングマグネット60と、第2アクチュエータ53の作動により本体部20に対してリフティングマグネット60を昇降させる電磁石昇降機構50とを備え、電磁石昇降機構50は、開閉爪機構30に対して独立して昇降し、第1アクチュエータ38a,38bおよび第2アクチュエータ53は上下方向に沿うように配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り紐で吊り上げる荷をチャッキングするチャッキング装置であって、
本体部と、
平板状に設けられている吸着板部と、前記吸着板部を中心に外方に伸びる複数のフック部を有する吊り金具と、
前記本体部に取り付けられる第1アクチュエータを備え、当該第1アクチュエータの作動により開閉することで前記吊り金具の把持および把持解除を行う開閉爪機構と、
前記吸着板部を吸着保持する力を生じさせる吸着手段と、
前記本体部に取り付けられる第2アクチュエータを備え、当該第2アクチュエータの作動により前記本体部に対して前記吸着手段を昇降させる昇降機構と、
を備え、
前記昇降機構は、前記開閉爪機構に対して独立して昇降すると共に、
前記開閉爪機構は、前記フック部の下面を支持して前記吊り金具を把持する、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項2】
請求項1記載のチャッキング装置であって、
前記開閉爪機構の下方側には姿勢矯正機構が設けられていて、
前記姿勢矯正機構は、前記開閉爪機構と共に開閉する一対のガイド部材を備え、それぞれのガイド部材には立壁部が設けられていて、当該立壁部に前記吊り金具のフック部の外縁がガイドされることで前記吊り金具の回転方向における姿勢が矯正される、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項3】
請求項2記載のチャッキング装置であって、
前記開閉爪機構の閉じ位置を規制する閉位置規制部材が取り付けられていて、
前記閉位置規制部材で規制された閉じ位置では、一対の前記ガイド部材における前記立壁部の間には所定の隙間が形成される、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のチャッキング装置であって、
前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータは、前記吊り金具が吊り下げられる方向である上下方向に沿うように配置されている、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のチャッキング装置であって、
前記本体部には、前記昇降機構および前記開閉爪機構を、前記上下方向に直交する水平方向に移動させる水平方向移動機構が設けられている、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のチャッキング装置であって、
前記吸着手段は電磁石を用いたリフティングマグネットである、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のチャッキング装置であって、
前記開閉爪機構は、前記フック部の外縁から当該フック部の基部の下面を支持可能な爪部を有する、
ことを特徴とするチャッキング装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のチャッキング装置を備えると共に、
走行用レールと、
前記チャッキング装置を吊り下げた状態で前記走行用レールを走行する走行装置と、
前記走行装置に設置された昇降装置を有することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャッキング装置および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体などの保管や運搬を行うために、フレキシブルコンテナバッグが広く用いられている。なお、以下の説明では、フレキシブルコンテナバッグは、フレコンバッグと略記して説明する。かかるフレコンバッグは、専用の搬送装置によって、倉庫内の所定の場所に保管したり、倉庫から取り出して所定の作業場所に運んだりしている。このような搬送装置としては、たとえば特許文献1から特許文献3に示すものがある。
【0003】
特許文献1には、フレコンバッグを把持する把持装置(6)を中心とした自動倉庫について開示されている。この特許文献1に開示の構成では、フレコンバッグの吊りひも(32)を、金具(33)に保持させた状態で、電磁石(25)に金具(25)を磁着させている。その後に、把持用モータ(29)の作動によってシリンダ(30)およびロッド(31)をスライドさせることで、電磁石(25)と連結されている昇降体(24)を昇降させると共に、把持部(19,29)を閉じる。それにより、把持部(19,20)の下端のフック状部が吊りひも(32)間に挿入され、フレコンバッグを持ち上げることを可能としている。
【0004】
また、特許文献2には、吊り紐(53)をシャックル(54)で保持させ、そのシャックル(54)を、旋回フック(41)の回転によって保持させる構成について開示されている。また、特許文献3には、吊紐磁着用バンド(100)にフレコンバッグの吊紐を装着し、その吊紐磁着用バンド(100)を介してフレコンバッグを吊り下げる構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4-76881号公報
【特許文献2】特開平7-285610号公報
【特許文献3】特開平11-349274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の構成では、把持装置(6)の把持部(19,20)の下端のフック状部が、吊りひも(32)を直接掴む構成となっている。そのため、フック状部が重なるように閉じる際に、吊りひも(32)を挟み込んでしまい、吊りひも(32)を切断したり、吊りひも(32)にダメージを与える虞がある。したがって、フレコンバッグの思わぬ落下等を招く虞がある。また、特許文献1に開示の構成では、金具(33)は、シャックルと同様のものと思われるが、そのような金具(33)の磁着に際しては、磁着して吊り上げた金具(33)の姿勢を一定に保つことは考慮されず、磁着によって吊り上げられた金具(33)は、横向きに吊り上げられたり、縦向きに吊り上げられるなどして、その吊り上げ姿勢が不安定となる虞がある。したがって、吊り金具(33)に取り付けられた吊り紐(32)と把持部(19,20)の相対位置関係が安定せず、上述のように切断したり損傷したりする虞がある。または、そのような事態を回避するために、吊り紐を長くするなど、システム全体が大型化するなどの課題がある。また、一対の把持部(19,20)と、金具(33)とが比較的狭い接触面積で干渉してしまう虞があるが、そのような干渉については考慮されていない。
【0007】
また、特許文献1に開示の構成では、把持装置(6)は、把持用モータ(29)、シリンダ(30)およびロッド(31)から構成される大型のアクチュエータを1つだけ有すると共に、そのような大型のアクチュエータが上下方向に対して斜めとなるように取り付けられている。そのため、把持装置(6)の上下方向に直交する平面方向(幅方向および奥行き方向)の寸法の大型化を招いてしまう。そのため、倉庫内部に、フレコンバッグの荷崩れを防ぐための柵が設置されている場合には、柵の内部に把持装置(6)が入り込めなくなる虞が増大する。
【0008】
また、特許文献2に開示の構成では、シャックル(54)は電磁石(44)で磁着されるが、その磁着に際しては、かなり狭い面積で磁着されるので、特に吊り紐(53)の長さに余裕がない場合に磁着が不安定となり、旋回フック(41)を差し込めない虞がある。さらに、特許文献2に開示の構成では、旋回フック(41)が旋回することで、吊り紐(53)を旋回フック(41)が直接保持している。しかしながら、旋回フック(41)がシャックル(54)と干渉してしまう虞があるが、そのような干渉については考慮されていない。
【0009】
また、特許文献2に開示の構成においても、旋回フック(41)が吊り紐(53)を挟み込んでしまい、吊り紐(53)を切断したり、吊り紐(53)にダメージを与える虞がある。さらに、特許文献2に開示の構成では、旋回フック(41)のみならず、本体部も、フレコンバッグが重ねられるフレーム内に入り込む。そのため、フレームサイズによっては入り込めない虞がある。さらに、特許文献2に開示の構成では、強度を要する旋回フック(41)に噛合歯を形成している特殊な構成のため、その製造にコストがかかる。
【0010】
また、特許文献3に開示の構成では、吊紐磁着用バンド(100)へ、例えば4本といった複数本のベルトをどのように装着させるのかが不明である。また、特許文献3に開示の構成では、図9および図10において、吊り紐を懸吊器(700)で磁着および保持する構成と思われるが、その懸吊器(700)は、フレーム(701)に対して、懸吊鉤(702)および離脱防止爪(704)が独立して下方に移動できないので、懸吊器(700)ごと、荷崩れを防ぐ柵の内部に入り込む構成となっている。しかしながら、離脱防止爪(704)が水平方向に移動する構成のため、水平方向に比較的大きな寸法を要するので、そのような懸吊器(700)が、柵の内部に入り込めない虞がある。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、フレキシブルコンテナバッグのような、複数の吊り紐で吊り上げる荷物の、吊り紐部分を直接保持させずに吊り金具でまとめて保持させ、小型化が可能であり、さらに吊り金具の吸着を広い面積で行うことが可能なチャッキング装置および搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、吊り紐で吊り上げる荷をチャッキングするチャッキング装置であって、本体部と、平板状に設けられている吸着板部と、吸着板部を中心に外方に伸びる複数のフック部を有する吊り金具と、本体部に取り付けられる第1アクチュエータを備え、当該第1アクチュエータの作動により開閉することで吊り金具の把持および把持解除を行う開閉爪機構と、吸着板部を吸着保持する力を生じさせる吸着手段と、本体部に取り付けられる第2アクチュエータを備え、当該第2アクチュエータの作動により本体部に対して吸着手段を昇降させる昇降機構と、を備え、昇降機構は、開閉爪機構に対して独立して昇降すると共に、開閉爪機構は、フック部の下面を支持して吊り金具を把持する、ことを特徴とするチャッキング装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、開閉爪機構の下方側には姿勢矯正機構が設けられていて、姿勢矯正機構は、開閉爪機構と共に開閉する一対のガイド部材を備え、それぞれのガイド部材には立壁部が設けられていて、当該立壁部に吊り金具のフック部の外縁がガイドされることで吊り金具の回転方向における姿勢が矯正される、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、開閉爪機構の閉じ位置を規制する閉位置規制部材が取り付けられていて、閉位置規制部材で規制された閉じ位置では、一対のガイド部材における立壁部の間には所定の隙間が形成される、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1アクチュエータおよび第2アクチュエータは、吊り金具が吊り下げられる方向である上下方向に沿うように配置されている、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、本体部には、昇降機構および開閉爪機構を、上下方向に直交する水平方向に移動させる水平方向移動機構が設けられている、ことが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、吸着手段は電磁石を用いたリフティングマグネットである、ことが好ましい。
【0018】
また、本発明の他の側面は、開閉爪機構は、フック部の外縁から当該フック部の基部の下面を支持可能な爪部を有する、ことが好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によると、上述の発明に係るチャッキング装置を備えると共に、走行用レールと、チャッキング装置を吊り下げた状態で走行用レールを走行する走行装置と、走行装置に設置された昇降装置を有することを特徴とする搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、フレキシブルコンテナバッグなどの荷物の吊り紐部分を直接保持させずに吊り金具でまとめて保持させ、小型化が可能であり、さらに吊り金具の吸着と、吊り金具のチャッキングとを独立して行うことが可能なチャッキング装置および搬送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る搬送装置の構成を示す正面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るチャッキング装置の構成を示す正面図である。
図3図2に示すチャッキング装置の構成を示す側面図である。
図4図2に示すチャッキング装置の下連結部を下方側から見た状態を示す図であり、吊り金具を保持していない状態を示す図である。
図5図2に示すチャッキング装置の下連結部を下方側から見た状態を示す図であり、吊り金具を保持している状態を示す図である。
図6図2に示すチャッキング装置の構成を示すと共に、手前側の爪リンク機構を取り除いてガイドカム、電磁石昇降機構および電磁石の構成を示す図であり、リンクアームが閉じた状態を示している。
図7図6に示す状態から、リンクアームが開いた状態を示す図である。
図8図2に示すチャッキング装置における吊り金具の構成を示す側面図である。
図9図8に示す吊り金具の構成を示す平面図である。
図10図8に示す吊り金具の構成を示す底面図である。
図11図2に示すチャッキング装置におけるフレコンバッグの吊り上げ動作を説明する動作フローのうち、ステップS11からステップS18までを説明する図である。
図12図2に示すチャッキング装置におけるフレコンバッグの吊り上げ動作を説明する動作フローのうち、ステップS19からステップS27までを説明する図である。
図13図2に示すチャッキング装置におけるフレコンバッグの吊り上げ動作を説明する動作フローのうち、ステップS31からステップS39までを説明する図である。
図14図2に示すチャッキング装置におけるフレコンバッグの荷下ろし動作を説明する動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態に係る、チャッキング装置10および搬送装置1について、図面に基づいて説明する。
【0023】
<搬送装置1について>
最初に、搬送装置1について説明する。図1は、搬送装置1の構成を示す正面図である。図1に示すように、搬送装置1は、チャッキング装置10と、走行装置11と、電気チェーンブロック12とを備えている。これらのうち、走行装置11は、不図示の駆動力の駆動によって、走行用レールR1に沿って走行する装置である。
【0024】
また、電気チェーンブロック12は、チェーンC2を巻き上げたり巻き下げることで、そのチェーンC2の端部が連結されているチャッキング装置10を昇降させる装置である。なお、電気チェーンブロック12は、昇降装置に対応する。搬送装置1は、チャッキング装置10の他に、上記のような走行装置11および電気チェーンブロック12を有することで、フレコンバッグなどの荷を吊り上げた状態で、走行用レールR1に沿って移動可能としている。
【0025】
なお、図1に示す構成では、搬送装置1は、横行機構を備えないテルハクレーンが示されている。しかしながら、搬送装置1は、横行機構を備えても良い。この場合には、チャッキング装置10は、後述する横行機構70を省略することができる。
【0026】
<チャッキング装置10の全体構成について>
以下の説明においては、X方向は、図2における左右方向とし、X1側は図2における右側とし、X2側はそれとは逆の図2における左側とする。また、Z方向はチャッキング装置10の懸吊状態における鉛直方向(上下方向)とし、Z1側は懸吊状態における上側とし、Z2側は懸吊状態における下側とする。また、Y方向は、X方向およびZ方向に直交する方向とし、Y1側は図3における右側とし、Y2側はそれとは逆の図3における左側とする。
【0027】
図2はチャッキング装置10の構成を示す正面図である。図3は、チャッキング装置10の構成を示す側面図である。
【0028】
図2および図3に示すように、チャッキング装置10は、本体フレーム20と、開閉爪機構30と、姿勢矯正機構40と、電磁石昇降機構50と、リフティングマグネット60と、横行機構70と、ビジョンセンサ80と、距離センサ90と、制御部100と、吊り金具200とを備えている。チャッキング装置10は、搬送装置1を構成するが、この搬送装置1は、上記のようにチャッキング装置10以外に、吊り荷を昇降し水平移動可能な走行装置11や、電気チェーンブロック12を備えている。なお、搬送装置1は、チャッキング装置10以外に、昇降と水平搬送機能を備えたクレーンや荷物の昇降機能を備える産業用車両等を備えるようにしても良い。
【0029】
これらのうち、本体フレーム20は、互いに対向する一対のフレーム板21a,21bを備え、そのフレーム板21a,21bが複数の連結バー22で連結されている。なお、本体フレーム20は、本体部に対応する。また、フレーム板21a,21bの下端には、後述する接続リンク37a,37bの上端側を連結軸S1を介して支持するための支持プレート23a,23bがそれぞれ取り付けられている。また、本体フレーム20の上方側(Z1側)には、天井クレーン等の巻上機(電気チェーンブロック12)から吊り下げられるチェーンに取り付けられた吊り具(チェーンスリング、シャックル、フック等)が連結されるための上部連結部24が設けられている。
【0030】
また、開閉爪機構30は、一対の爪リンク機構31と、一対の開閉用直動装置38と、ガイドカム39とを有している。ここで、爪リンク機構31および開閉用直動装置38は、図2において電磁石昇降機構50よりもX方向の一方側(X1側)と他方側(X2側)にそれぞれ設けられることで、一対(2つ)設けられている。以下の説明では、X方向の一方側(X1側)の爪リンク機構31を爪リンク機構31aとし、X方向の他方側(X2側)の爪リンク機構31を爪リンク機構31bとする。また、X方向の一方側(X1側)の開閉用直動装置38を開閉用直動装置38aとし、X方向の他方側(X2側)の開閉用直動装置38を開閉用直動装置38bとする。また、X方向の一方側(X1側)のガイドカム39をガイドカム39aとし、X方向の他方側(X2側)のガイドカム39をガイドカム39bとする。
【0031】
なお、図2に示すように、開閉爪機構30はフレーム板21a,21bと並行に設けられている。かかる開閉爪機構30のうち、爪リンク機構31a,31bは、リンクアーム32a,32bと、接続リンク37a,37bとを主要な構成要素としていて、フレーム板21a,21bの下方にそれぞれ一組ずつ配置されている。一方のリンクアーム32a,32bは、連結軸S2の一方の端部で連結され、かつ、間隔を置いて配置されている他方のリンクアーム32a,32bも連結軸S2の他方の端部で連結されている。すなわち、一対のリンクアーム32a,32bの組は、互いに連結軸S2で連結されている。
【0032】
また、それぞれのリンクアーム32a,32bの上端側は、一対の連結軸S3の端部で接続リンク37a,37bとそれぞれ連結されていて、接続リンク37a,37bの上端は連結軸S1で軸支され、連結軸S1を介して支持プレート23に連結されている。リンクアーム32a,32bの下端に設けられている下連結部34a、34b(後述)が互いに近接する閉じ状態から、連結軸S2を開閉用直動装置38a,38bで連結軸S1方向に上昇させると、各リンクの作用によって、リンクアーム32a,32bの下端は下連結部34a、34bと共に、互いに離れる開き状態となり、かつ、両下端は連結軸S1方向に上昇する。
【0033】
なお、図3に示すように、リンクアーム32a,32bは、上方側(Z1側)から下方側(Z2側)に向かう途中部分でそれぞれ下方側に曲げられているいわゆるトングアームである。それにより、リンクアーム32a,32bが互いに閉じた状態から開き状態へとリンクアーム32a,32bが移行する際に、リンクアーム32a,32bの上方側(Z1側)に接続リンク37a,37bから良好にリンクアーム32a,32bの下端に力が伝達される。また、リンクアーム32a,32bが互いに閉じた状態では、後述する下連結部34a,34bが概ね水平となる。
【0034】
また、リンクアーム32a,32bの中途部分には、それぞれ突き当て部材33a,33bが取り付けられている。かかる2つの突き当て部材33a,33bは、リンクアーム32a,32bの閉じ状態のときに、互いに突き当てられる部材であり、その突き当て状態となった場合、それ以上、リンクアーム32a,32bが閉じ方向に回動できなくなる。すなわち、突き当て部材33a,33bは、リンクアーム32a,32bが必要以上に閉じるのを規制する部材である。なお、突き当て部材33a,33bは、閉位置規制部材に対応する。
【0035】
また、それぞれのリンクアーム32a,32bの下端(Z2側)には、リンクアーム32a,32b同士及びリンクアーム32a,32b同士を連結する下連結部34a,34bが設けられている。下連結部34a,34bは、板状の部材であり、リンクアーム32a,32bの閉じ状態では、一対の下連結部34a,34bが近接する。それにより、後述する吊り金具200を下方側(Z2側)から水平に支持可能となっている。
【0036】
図4は、開閉爪機構30が閉じた状態での下連結部34a,34bを下方側(Z2側)から見た状態を示す図であり、吊り金具200を保持していない状態を示す図である。図5は、同じく開閉爪機構30が閉じた状態での下連結部34a,34bを下方側(Z2側)から見た状態を示す図であり、吊り金具200を保持している状態を示しており、吊り金具200に掛けられたフレコンバッグの吊り紐を省略した図である。図4および図5に示すように、下連結部34a,34bには、爪部35a,35bと、ガイド部材支持部36a,36bとが設けられていて、これらが下連結部34a,34bの補強リブ341a~343a,341b~343bと共に一体的に設けられている。なお、この下連結部34a,34bは、リンクアーム32a,32bの下方側(Z2側)と直交するように設けられている(図3参照)。
【0037】
ここで、それぞれの下連結部34a,34bの長手方向(X方向)における両端側は、その長手方向(X方向)に直交する幅方向の寸法が大きく設けられている。また、両端側から長手方向の中央側に向かうと、幅方向の寸法が小さく設けられているが、長手方向の中央側では、ガイド部材支持部36a,36bから幅方向(Y方向)に沿って、爪部35a,35bがそれぞれ他方の下連結部34a,34bに向かって突出するように設けられている。この爪部35a,35bは、吊り金具200の所定の部位を下方側(Z2側)から支持する。また、ガイド部材支持部36a,36bは、後述するガイド部材41a,41bの固定用フランジ部43を取り付ける部分となっている。
【0038】
なお、図4および図5に示すように、下連結部34aと下連結部34bとは、X方向における位置が若干異なるように配置されている。具体的には、図4および図5に示す構成では、下連結部34aの方が、下連結部34bよりもX1側に突出するように設けられている。しかしながら、下連結部34aと下連結部34bとが、X方向において同じ位置に設けられるようにしても良い。
【0039】
また、接続リンク37a,37bは、長片形状に設けられていると共に、その上端側が、本体フレーム20の支持プレート23に、連結軸S1を介して連結されている。
【0040】
また、開閉用直動装置38a,38bは、シリンダ381と連結ロッド382とを備えていて、たとえばエアシリンダ、油圧シリンダやパワーシリンダのように、空気、作動油や電力を供給することによって連結ロッド382をシリンダ381に出入させることを可能としている。なお、開閉用直動装置38a,38bは、連結ロッド382を往復運動させることが可能であれば、上記以外の直動装置、例えばラック&ピニオンやスクリュージャッキであっても良い。なお、開閉用直動装置38a,38bは、第1アクチュエータに対応する。
【0041】
この開閉用直動装置38a,38bは、リンクアーム32a,32bの開閉動作を行うための駆動力を与えるものである。具体的には、連結ロッド382の下端側は上述した連結軸S2を下から支持するように若干の遊びを持って連結されている。そのため、連結ロッド382が下降していない上昇状態では連結軸S2を持ち上げることによってリンクアーム32a,32bが開き状態となっている。連結ロッド382が下降するにつれて、リンクアーム32a,32b等の自重によって徐々にリンクアーム32a,32bは閉じる。なお、上記のように若干の遊びを持って連結しているのは、閉じ動作中に無理な力が開閉用直動装置38a,38bにかかるのを防止し、開閉用直動装置38a,38bを小型化させるためである。
【0042】
図6は、チャッキング装置10の構成を示すと共に、手前側の爪リンク機構31とフレーム板21aを取り除いてガイドカム39a,39b、電磁石昇降機構50およびリフティングマグネット60の構成を示す図であり、吊り金具200(吊り紐は省略)を吸着しリンクアーム32a,32bが閉じた状態を示している。図7は、図6に示す状態から、リンクアーム32a,32bが開いた状態を示す図である。
【0043】
図6に示すように、ガイドカム39a,39bには、上記の連結軸S2が挿入されている。ガイドカム39a,39bには、上下方向(Z方向)に沿うガイド溝391a,391bが形成されていて、このガイド溝391a,391bに連結軸S2が挿入されている。したがって、開閉用直動装置38a,38bの作動により、連結軸S2はガイド溝391a,391bに沿って上下動することができ、その連結軸S2の上下動に伴ってリンクアーム32a,32bが開閉する。なお、ガイドカム39a,39bは、本体フレーム20の支持プレート23に取り付けられていて、爪リンク機構31の横揺れを防止している。
【0044】
次に、姿勢矯正機構40について説明する。姿勢矯正機構40は、一対のガイド部材41a,41bを備えている。このガイド部材41a,41bは、立壁部42と、固定用フランジ部43を有している。これらのうち、立壁部42は、下連結部34a,34bから立設するように設けられている板状(壁状)の部分であり、図4および図5に示すように合計3つのガイド板部42a~42cから構成されている。以下の説明では、ガイド板部42a~42cを平面視した場合に、中央に位置するものをガイド板部42aとし、そのガイド板部42aの両側に位置するものをガイド板部42b,42cとする。
【0045】
ここで、ガイド板部42aは、一対の下連結部34a,34bの並びの方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に沿って設けられている。一方、ガイド板部42b,42cは、ガイド板部42aに対して所定の角度をなして傾斜している。具体的には、ガイド板部42a~42cで、多角形(図4および図5では吊り金具200の板状フック部232の外縁の形状に合わせ八角形)の辺に沿うように配置されている。
【0046】
これらのうち、ガイド板部42aは、ガイド板部42b,42cよりも短く設けられているが、その長さは、吊り金具200の所定の部位に対応した長さとなっている。また、ガイド板部42bはガイド板部42aの一端部に対し略135度の角度をなして傾斜していると共にガイド板部42cはガイド板部42aの他端部に対し略135度の角度をなして傾斜している。この配置は、吊り金具200の板状フック部232の外縁の形状に合わせて配置されている。このため、吊り金具200を平面視した場合に、回転方向において位置ずれしていても、その回転方向の位置ずれを開閉爪機構30の閉じ動作によって矯正することが可能となっている。
【0047】
また、固定用フランジ部43は、下連結部34a,34bの上面に取り付けられる部分である。この固定用フランジ部43は、立壁部42に対して直交しているが、ガイド板部42a~42cで囲まれる側(内筒側)とは逆側(外側)に向かって突出している。なお、固定用フランジ部43は、立壁部42に対し、たとえば溶接により取り付けられている。また、固定用フランジ部43は下連結部34a,34bのガイド部材支持部36a,36bに対しボルトなどにより結合されている。
【0048】
また、下連結部34a,34bのガイド板部42a~42cで囲まれる側(内筒側)には、下支え部34a1,34b1が一体に設けられ、吊り金具200の板状フック部232の外周縁を支持する部分である。この下支え部34a1,34b1は、立壁部42に対して直交していると共に、ガイド板部42a~42cで囲まれる側(内筒側)に向かって突出している。また、図4および図5に示すように、爪部35a,35bは、下支え部34a1,34b1から突出しているが、その突出する向きは、その爪部35a,35bが存在するガイド部材41a,41bに対し向き合っている他方のガイド部材41b,41a側となっている。なお、爪部35a,35bは、吊り金具200の中央寄りの部位(板状フック部232の基部)や、板状フック部232の絞り部233を下面から支持可能となっている。このような下支え部34a1,34b1と爪部35a,35bとは、図4および図5に示すように、平面視した場合にW字を描くように設けられている。
【0049】
次に、電磁石昇降機構50について説明する。なお、電磁石昇降機構50は、昇降機構に対応する。電磁石昇降機構50は、上述した開閉爪機構30の中央部に配置されている。電磁石昇降機構50は、磁石連結部材51と、チェーンC1と、シリンダ連結部材52と、昇降用直動装置53とを有している。これらのうち、磁石連結部材51は、その下方側(Z2側)が後述するリフティングマグネット60に連結されると共に、その上方側(Z1側)がチェーンC1に連結されている。ここで、図2および図5に示す構成では、磁石連結部材51には開閉爪機構30の内側で所定の間隔で配置された合計4本のチェーンC1が連結されているが、チェーンC1は少なくとも3本以上連結されていれば良い。このように、少なくとも3本以上のチェーンC1が磁石連結部材51に連結されることで、その磁石連結部材51に連結されているリフティングマグネット60は、概ね水平な状態を維持しながら昇降する。
【0050】
また、昇降用直動装置53は、昇降用シリンダ53aと連結ロッド53bを有し、シリンダ連結部材52は、連結ロッド53bの下端側(Z2側)に連結されている。このため、昇降用直動装置53(電磁石昇降機構50)の連結ロッド53bは、シリンダ53aに沿った移動が可能となっている。
【0051】
この昇降用直動装置53は、上述した開閉用直動装置38a,38bと同様に、たとえばエアシリンダ、油圧シリンダやパワーシリンダのように、空気、作動油や電力を供給することによって連結ロッド53bをシリンダ53aに出入させることを可能としているが、昇降用直動装置53は、連結ロッド53bを往復運動させることが可能であれば、上記以外のシリンダであっても良い。なお、昇降用直動装置53は、第2アクチュエータに対応する。
【0052】
この昇降用直動装置53を作動させると、連結ロッド53bが上下動し、シリンダ連結部材52、チェーンC1および磁石連結部材51を介してリフティングマグネット60を上下動させることができる。かつ、フレコンバッグ等の荷の上面に吊り金具200が傾斜した姿勢で置かれていても、その傾斜にならってリフティングマグネット60も傾斜し、磁着面60aが吊り金具200の磁着板部210の上面に密着できるようになっている。
【0053】
また、リフティングマグネット60は、電磁石を用いて吊り金具200を磁力によって吸引する(磁着する)部材である。本実施の形態では、リフティングマグネット60は、電磁力のオン・オフによって、吊り金具200を磁着したり、釈放する(磁着状態を切り離す)ことを可能としている。なお、吊り金具200をリフティングマグネット60が磁着している状態で電磁石昇降機構50がリフティングマグネット60を持ち上げようとした場合、リフティングマグネット60は、吊り紐が掛けられた状態の吊り金具200を十分に持ち上げることが可能な磁力を発生可能となっている。なお、リフティングマグネット60は、吸着手段に対応する。
【0054】
このリフティングマグネット60の下方の磁着面60aは、円形に設けられている。したがって、後述する吊り金具200の磁着板部に対し、磁着面60aは比較的広い面積で平面状に磁着可能となっている。
【0055】
次に、横行機構70について説明する。なお、横行機構70は、水平方向移動機構に対応する。横行機構70は、電磁石昇降機構50およびリフティングマグネット60が、横行方向(図2におけるX方向)に移動するのをガイドする機構である。すなわち、フレコンバッグに取り付けられている吊り金具200に対し、横行方向(X方向)の位置がずれている場合には、この横行機構70を作動させて、リフティングマグネット60の位置合わせを行う。なお、横行機構70は、横行機構を備えないテルハクレーンにおいては設ける必要はあるものの、横行機構を備えるクレーン(天井クレーン等)では、チャッキング装置10は、横行機構70を省略することができる。また、天井クレーン等の横行・走行機構を備える搬送装置であっても、横行機構70あるいは図示しない走行機構を備え、X-Y方向に移動可能とするようにしても良い。なお、横行機構70は、吸着装置移動機構に対応する。チャッキング装置10内に上記の吸着装置移動機構を備えた方が、チャッキング装置10は大型化するものの、クレーン全体を移動するよりも高速で精度良く吸着装置を移動できる利点がある。
【0056】
この横行機構70は、横行用モータ71と、駆動伝達機構72と、ボールねじ73と、連結ナット74とを有している。横行用モータ71は、図2に示すようにフレーム板21bに取り付けられているが、フレーム板21aに取り付けられていても良い。この横行用モータ71の駆動力は、駆動伝達機構72を介してボールねじ73に伝達される。なお、駆動伝達機構72は、ギヤ、ベルトやプーリ等のような駆動力を伝達可能な部材で構成されている。
【0057】
また、ボールねじ73は、一対のフレーム板21a,21bの間で回転自在な状態で支持されている。このボールねじ73には、連結ナット74が捻じ込まれている。連結ナット74は、昇降用直動装置53の上端側(Z1側)を取り付けている。このため、横行用モータ71が作動し、その回転力が駆動伝達機構72を介してボールねじ73に伝達されると、連結ナット74は横行方向(X方向)に沿って移動する。それにより、連結ナット74に取り付けられている昇降用直動装置53が横行方向(X方向)に沿って移動するので、リフティングマグネット60、リフティングマグネット60に吸着された吊り金具200も、横行方向(X方向)に沿って移動する。
【0058】
また、図2に示すように、本体フレーム20にはビジョンセンサ80が取り付けられている。ビジョンセンサ80は、フレコンバッグの上部に存在する吊り金具200の位置を識別するためのものであり、たとえばカメラ等のような吊り金具200を撮像可能なものが好適である。しかしながら、ビジョンセンサ80は、カメラ以外のセンサであっても良い。このビジョンセンサ80は、リフティングマグネット60をXY平面内にて吊り金具200に対して好適な位置へと移動させるために、吊り金具200を認識(撮像)するものである。なお、ビジョンセンサ80で撮像されたデータ(画像情報)は、後述する制御部100に送信される。
【0059】
また、本体フレーム20には、距離センサ90も取り付けられている。距離センサ90は、チャッキング装置10と下方の物体との上下方向(Z方向)の距離を測定するためのセンサであり、たとえばレーザ方式の距離センサや赤外線方式の距離センサ等が用いられる。なお、距離センサ90で測定されたデータ(距離情報)は、後述する制御部100に送信される。
【0060】
また、制御部100は、チャッキング装置10の作動を制御する部分であると共に、搬送装置1の作動を制御する部分である。この制御部100は、図示を省略するシーケンサ、シリンダ用ドライバ、モータドライバ、各種コントローラ、その他の要素から構成されている。また、シーケンサには、所望の制御を実行するためのプログラムおよびデータが記憶されている。
【0061】
この制御部100では、ビジョンセンサ80で撮像されたデータ(画像情報)を処理しシーケンサに出力するコントローラを有し、距離センサ90で測定されたデータ(距離情報)もシーケンサに入力される。これらのデータに基づいて、制御部100のシーケンサは、開閉用直動装置38a,38b、昇降用直動装置53および横行用モータ71の作動を制御すると共に、搬送装置1の各装置を制御、または制御に必要な信号をそれぞれの駆動制御部と送受信する。
【0062】
<吊り金具200について>
次に、吊り金具200について説明する。図8は、吊り金具200の構成を示す側面図である。図9は、吊り金具200の構成を示す平面図である。図10は、吊り金具200の構成を示す底面図である。
【0063】
図8から図10に示す吊り金具200は、予め作業者等がフレコンバッグの吊り紐を取り付けて、そのフレコンバッグの上部に置かれるものである。そして、フレコンバッグを搬送する場合には、吊り金具200が上記のリフティングマグネット60によって磁着されることで、吊り紐が持ち上げられ、吊り金具200の下方にチャッキング装置10の下支え部34a1,34b1と爪部35a,35bを差し込んで下面を支持することで、吊り金具200を介して、フレコンバッグを持ち上げて、搬送を行うことが可能となっている。
【0064】
この吊り金具200は、磁着板部210と、スペーサ部220と、下支持部230とを有している。これらのうち、磁着板部210は、吊り金具200の中央部に平板状に設けられている部分であり、下支持部230に対し平行に位置している。上述したリフティングマグネット60で水平に磁着板部210を持ち上げると吊り紐を吊りかけた下支持部230も水平に持ち上げることが可能となっている。そのため、磁着板部210は、磁石によって吸着することが可能な軟磁性材から構成されている。なお、図8に示す構成では、磁着板部210は円盤状に設けられている。そのため、磁着板部210は、回転方向におけるいずれの方向でも、良好にリフティングマグネット60に対して磁着させることが可能となっている。
【0065】
ここで、磁着板部210の上面には、センサ用マーク211が設けられている。センサ用マーク211は、ビジョンセンサ80で吊り金具200を識別するためのマークである。このようなマークとしては、たとえば縦棒と横棒とから構成される十字形状のマークが好ましい。ビジョンセンサ80のコントローラは、予め登録した十字形状のマークと認識した場合、その中心位置を制御装置に出力することができる。また、センサ用マーク211が十字形状のマークの場合、その縦棒および横棒を、後述する絞り部233の延伸方向に沿う状態とすると、絞り部233の回転方向における位置を認識するようにすることもできる。
【0066】
なお、吊り金具200が上記のようなセンサ用マーク211を有する場合、チャッキング装置10は、ビジョンセンサ80によってXY平面における吊り金具200の向きを検出することができる。そのため、チャッキング装置10は、リフティングマグネット60の回転方向における位置を調整可能な旋回装置を備えても良い。この旋回装置は、上記のようにリフティングマグネット60のみを旋回させても良いが、チャッキング装置10全体を旋回させても良い。すなわち、旋回装置は、少なくともリフティングマグネット60を旋回させることができれば、どのような構成を採用しても良い。
【0067】
また、スペーサ部220は、磁着板部210と下支持部230とを所定の間隔を保って接続する部分である。すなわち、下支持部230に十分な広さの磁着部を設けることができない場合、下支持部230の中心部上面にスペーサ部220を固着し、さらにスペーサ部220の上端に当該スペーサ部220より面積の大きい磁着板部210を下支持部230と並行に固着している。なお、磁着板部210はリフティングマグネット60の磁着面60aの形状に合わせ円形が好ましいが、多角形であっても良い。また、径方向の寸法および高さ方向の寸法によって、また、径方向の寸法および高さ方向の寸法によって、吊り紐(ベルト等)の上端部を遊びを持たせて位置させるための空間が規定される。
【0068】
また、下支持部230は、板状に設けられているが、この下支持部230は、中央部231と、板状フック部232とを有している。中央部231は、平面視すると略矩形の板状に設けられている部分である。なお、中央部231の上面には、スペーサ部220が一体的に取り付けられている。また、板状フック部232(フック部に対応)は、中央部231を基部として外径側に突出している部分であり、鉤状に設けられている部分である。この板状フック部232は、フレコンバッグの吊り紐を掛けるための部分である。図9に示す構成では、板状フック部232は、合計4つ設けられていて、4本の吊り紐を掛ける場合にも対応している。なお、板状フック部232は、図9に示すように平面視したときの外周縁部が、略八角形に沿うように設けられている。また、4つのフック232は、中央部231と共に一枚の板状体から形成されており、同一平面を形成している。
【0069】
また、下支持部230は、図5に示すように、板状フック部232の外縁の外周幅広部234を開閉爪機構30の下支え部34a1,34b1によって下から把持される構成となっている。また、開閉爪機構30の爪部35a,35bは、図5では板状フック部232の基部である中央部231を下から支えることが可能となっており、下支持部230は、このような把持が可能な大きさと強度を有している。更にまた、爪部35a,35bは、図10に示すように、図5と同じ支え方の他に、後述の絞り部233を下から支えることが可能となっている。
【0070】
4箇所の板状フック部232に4本の吊り紐を掛けて荷重を分散させている場合には、下支持部230は、図5と同じ方向から吊り金具200を把持するようにする。一方、吊り金具200のに合計2本の吊り紐を掛ける場合、中央部231を挟んで対称位置に位置する合計2箇所の板状フック部232に、それぞれ1本ずつ吊り紐を掛ける。また、4本の吊り紐を掛ける場合でも、中央部231を挟んで対称位置に位置する合計2箇所の板状フック部232に、2本ずつに分けて吊り紐を掛けることもできる。これらのように、中央部231を挟んで対称位置に位置する合計2箇所の板状フック部232に吊り紐を掛ける場合、図5とは吊り金具に対し45度向きを変えた方向から爪部35a,35bを差し込み、チャッキングできるようになっている。
【0071】
これにより、2箇所の絞り部233に荷重か集中して作用する場合には、爪部35a,35bで絞り部233の下から支えることで、絞り部233にかかる負荷を軽減し、吊り金具200の強度アップのための質量増を回避できるので、作業者が吊り金具200に吊り紐を掛けて荷の上の所定の位置に置く一連の作業負荷を軽減できる。
【0072】
この板状フック部232には、幅狭の絞り部233と、外周側の外周幅広部234とが設けられていて、さらに外周幅広部234には返し部235が一体的に設けられている。絞り部233は、図9に示すように、外周幅広部234よりも幅狭に設けられている部分であるが、その幅は、吊り紐から受ける荷重に耐えられる程度となっている。なお、爪部35a,35bの幅は、絞り部233の幅と同等か、絞り部233の幅よりも狭く設けられている。また、爪部35a,35bのうち、当該爪部35a,35bを補強するための部分(爪部35a,35bの下の補強リブ341a~343a,341b~343bに相当する部分)の幅は、絞り部233よりもさらに狭く設けられている。
【0073】
また、外周幅広部234は、絞り部233よりも幅が十分に広く設けられている部分であり、絞り部233に掛けられた吊り紐が抜け落ちないように外径側に移動するのを防止する部分である。なお、図9に示すように、絞り部233と外周幅広部234とで、略T字を描くように設けられている。
【0074】
また、返し部235は、外周幅広部234の幅方向の両端側から、中央部231に向かうように突出している部分であり、外径側に向かって移動してきた吊り紐が、外周幅広部234から抜けるのを阻止する部分である。なお、絞り部233、外周幅広部234および返し部235によって、吊り紐が抜けるのを阻止するフック状の部分を構成している。
【0075】
ここで、隣り合う板状フック部232の返し部235の間には、所定の隙間P1が設けられている。したがって、この隙間P1を介して、吊り紐を絞り部233に掛けることが可能となっている。
【0076】
また、吊り紐の上端が、板状フック部232より中央部231方向に移動するのを絞り部233より幅広の中央部231と共にスペーサ部220の外周によって規制可能となっている。更にスペーサ部220の上端に取り付けた磁着板部210の張り出し部212の下面も吊り紐の磁着板部210の上面への移動を規制している。絞り部233より幅広の中央部231、スペーサ部220及びスペーサ部220上端からの張り出し部212は、それぞれ単独あるいは組み合わせて、吊り紐の被吸着部である磁着板部210への移動(吊り紐の浮き上がりを含む)を規制する規制手段を構成している。
【0077】
<作用について>
以上のような構成を有するチャッキング装置10の作用について、図11図14に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明では、基本的には、制御部100の制御に基づいて、下記の各ステップが実行される。
【0078】
<吊り上げ動作について>
最初に、吊り金具200を用いた、フレコンバッグの吊り上げ動作について、図11から図13に基づいて説明する。この場合、先ずはチャッキング装置10がフレコンバッグの吊り上げ位置に位置することを確認すると共に、チャッキング装置10が下降する準備が整っているのかを確認する(ステップS11)。ここで、下降する準備とは、たとえば、次のものが挙げられる。すなわち、図示を省略する爪リンク機構31の開き側のリミットスイッチがオンとなっているか、電磁石昇降機構50およびリフティングマグネット60が横行機構70における中心位置に到達している場合に押されるリミットスイッチがオンとなっているか、リフティングマグネット60が上限位置に到達していることを検出する上限リミットスイッチがオンとなっているか等がある。しかしながら、チャッキング装置10が下降する準備は、これに限られるものではない。
【0079】
なお、このステップS11において、チャッキング装置10が下降する準備が整っていないと判断される場合(Noの場合)、このステップS11の判断を再び繰り返す。
【0080】
上記のステップS11において、チャッキング装置10が下降する準備が整っていると判断される場合(Yesの場合)、チャッキング装置10の下降を行う(ステップS12)。そして、その下降によって、ビジョンセンサ80の撮像位置に到達したか否かを判断する(ステップS13)。なお、この撮像位置に到達したか否かは、上述した距離センサ90での計測により、既定の撮像距離以下となったか否かを検出することにより行う。なお、ステップS13において、ビジョンセンサ80の撮像位置に到達していないと判断される場合(Noの場合)、このステップS13の判断を再び繰り返す。
【0081】
上記のステップS13において、ビジョンセンサ80の撮像位置に到達したと判断される場合(Yesの場合)、チャッキング装置10の下降を停止させ、ビジョンセンサ80で吊り金具200の撮像を開始する(ステップS14)。なお、このビジョンセンサ80での撮像を行う場合、不図示の照明装置によって、吊り金具200側を照らすのが好ましい。また、ステップS14におけるチャッキング装置10の下降の停止位置は、フレコンバッグおよび吊り金具200に対し、チャッキングを行う位置よりも所定距離だけ上方側(Z1側)となっている。
【0082】
上記のビジョンセンサ80での撮像により、制御部100が吊り金具200の位置ずれが存在するか否かを判断する(ステップS15)。ここで、吊り金具200の位置ずれが存在する場合とは、吊り金具200の位置ずれ量が許容値以上であるか否かを制御部100が判断することにより行う。そして、制御部100が吊り金具200の位置ずれが存在する(許容値以上である)ことを検出した場合(Yesの場合)、後述するステップS31へと進行する。
【0083】
一方、制御部100が吊り金具200の位置ずれが存在する(許容値以上である)ことを検出しなかった場合(Noの場合)、そのままリフティングマグネット60を下降させることができる状態となる。そのため、リフティングマグネット60を下限位置まで下降させ、その下降を停止させる(ステップS16)。なお、上記の下限位置は、リフティングマグネット60に設けられているリミットスイッチ(図示省略)が、吊り金具200によって押し込まれたか否かにより行うが、その他の手法によって、リフティングマグネット60の下限位置までの下降を検出するようにしても良い。
【0084】
次に、チャッキング装置10を所定の下降位置まで下降させ、その下降を停止させる(ステップS17)。なお、この所定の下降位置までの下降は、距離センサ90での距離の測定によって行われる。ここで、所定の下限位置は、リフティングマグネット60の下面よりも、一対の下連結部34a,34bの下面の方が上側(Z1側)に位置する所定位置となっている。したがって、一対の下連結部34a,34bよりもリフティングマグネット60は下側(Z2側)に突出した状態となる。また、一対の下連結部34a,34bは、フレコンバッグに接触はしないが、下降前よりもフレコンバッグに近接した状態となる。なお、このステップS17は、後述するステップS18およびステップS19の判断を行いつつ、実行するようにしても良い。
【0085】
次に、リフティングマグネット60の励磁を行う(ステップS18)。その後に、リフティングマグネット60によって、吊り金具200の磁着板部210がリフティングマグネット60に吸着されたか否かを確認する(ステップS19)。かかる磁着板部210がリフティングマグネット60に吸着されたか否かの確認は、リフティングマグネット60に設けられている、磁着を確認するためのリミットスイッチ(図示省略)によって行われる。なお、このステップS19において、磁着板部210がリフティングマグネット60に吸着されていないと判断される場合(Noの場合)、このステップS19の判断を再び繰り返す。
【0086】
また、ステップS19において、磁着板部210がリフティングマグネット60に吸着されていることが確認された場合(Yesの場合)、リフティングマグネット60を規定位置まで上昇させる(ステップS20)。すなわち、後のステップS23にて、爪リンク機構31を閉じた場合に、一対の下連結部34a,34bと、リフティングマグネット60に磁着されている吊り金具200とが干渉しない高さ位置T1まで、リフティングマグネット60を上昇させる。ただし、その高さ位置T1は、爪リンク機構31を閉じた場合に、立壁部42で囲まれた空間内にリフティングマグネット60および吊り金具200が収まるものの、下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bからは吊り金具200が所定の高さだけ高い位置となっている。なお、上記のように吊り金具200が上昇することで、吊り紐の弛みがある程度解消される。それにより、吊り紐の垂れ下がり状態が整えられ、吊り金具200の下面に爪部35a,35bを挿入する隙間が確保される。それにより、吊り紐を傷つけることなく、吊り荷の上に置かれた吊り金具200を吊り上げて、フレコンバッグ等の荷を吊り上げることができる。
【0087】
次に、チャッキング装置10を規定位置まで上昇させる(ステップS21)。かかるチャッキング装置10の上昇では、爪リンク機構31とリフティングマグネット60とが一体的に規定位置まで上昇する。なお、この規定位置とは、後述するように爪リンク機構31を閉じるための位置のことを指し、距離センサ90でフレコンバッグの上面からの距離を測定することで規定位置に到来したことが検出される。したがって、一対の下連結部34a,34bとフレコンバッグとの間には、十分な間隔が空けられた状態となると共に、フレコンバッグの吊り紐に適度な張力が掛かることで吊り紐が板状フック部232に掛かる位置が整えられ、吊り金具200の板状フック部232に確実に係合する状態となり、爪部35a,35bを吊り金具200の下面の所定の位置に移動可能となる。
【0088】
上記のようにステップS21においてチャッキング装置10を規定位置まで上昇させた後に、または後述するステップS39において横行機構70の作動によってリフティングマグネット60が中心位置に移動した後に、爪リンク機構31を閉じる(ステップS22)。このとき、突き当て部材33aと突き当て部材33bが、突き当てられる状態となる。そのため、下連結部34a、34bの下支え部34a1、34b1同士、及び対向する爪部35a,35b同士、対向するガイド板部42b同士、および対向するガイド板部42c同士の間は突き合わされずに、隙間が形成される。そのため、フレコンバッグの吊り紐が吊り金具200の下面より上方に浮き上っていても、開閉爪機構30で損傷させることなく、その後、チャッキング装置10を上昇させることでガイド板部42c端部に沿って吊り紐を下方に逃がすことができ、吊り紐の切断を防止することが可能となっている。
【0089】
なお、この閉じ動作を行うことで、リフティングマグネット60および吊り金具200が、立壁部42で囲まれた空間内に配置される状態となる。
【0090】
次に、上記の立壁部42で囲まれた空間内において、リフティングマグネット60を下降させる(ステップS23)。ただし、この下降位置P2は、高さ位置T1よりは低いものの、下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bに対し、吊り金具200が所定の高さだけ高い位置となっている。
【0091】
次に、リフティングマグネット60を消磁する(ステップS24)。それにより、吊り金具200は、リフティングマグネット60から落下するが、その吊り金具200は、下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bで受け止められる。
【0092】
ここで、吊り金具200の回転方向における角度が、既定の角度から大幅にずれている場合には、ステップS22の爪リンク機構31の閉じ動作だけでは吊り金具200の向きを修正することができず、一対のリンクアーム32a,32bの間で、吊り金具200がガイド板部42a,42b,42cに引っかかった状態で、吊り金具200が下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bに向かって落下しないまたは落下しても傾斜したままで水平に支持されないことが考えられる。
【0093】
このような、吊り金具200の引っかかりを防止するために、ステップS25に示すような、爪リンク機構31の微動を行う。具体的には、爪リンク機構31を若干開いた後に、爪リンク機構31を再び閉じる。すると、爪リンク機構31が若干開いたときに吊り金具200が下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bに向かってガイド板部42a~42cに案内されながら落下する。その落下後に、爪リンク機構31が閉じる。この一連の動作で、吊り金具200の外周部分は、立壁部42のガイド板部42a~42cに正規の位置と向きに矯正される。したがって、吊り金具200は、下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bによって下支持部230の下面が支持されると共に、立壁部42(ガイド板部42a~42c)によってXY平面内でずれるのが防止される。
【0094】
ステップS25の後に、リフティングマグネット60を所定の退避位置まで上昇させる(ステップS26)。すなわち、リフティングマグネット60が吊り金具200から十分に離間させられる。
【0095】
次に、チャッキング装置10を上昇させる(ステップS27)。すなわち、たとえば倉庫内のフレーム内部からフレコンバッグを吊り上げるべく、搬送装置1の巻上機である電気チェーンブロック12を作動させて、チャッキング装置10を上昇させる。この後に、制御部100は、走行装置11を作動させて、チャッキング装置10を所定の場所に移動させる。なお、チャッキング装置10の制御部100とは別に搬送装置1の図示しない制御部を設け、チャッキング装置10からの各ステップの完了信号を搬送装置1の制御部に出力するようにし、搬送装置1の制御部から指令信号を受信するようにしても良い。
【0096】
次に、図11のステップS15において、制御部100が吊り金具200の位置ずれが存在する(許容値以上である)ことを検出した場合(Yesの場合)の動作フローについて、図13に基づいて説明する。この場合、ビジョンセンサ80での検出結果に基づいて、横行機構70を作動させる(ステップS31)。すなわち、リフティングマグネット60(および電磁石昇降機構50)が吊り金具200の真上に来るように移動させる。
【0097】
上記の横行機構70の作動の途中、または移動の後に、吊り金具200の位置ずれを検出するか否かの確認を行う(ステップS32)。この確認において、位置ずれが存在することが検出された場合には、ステップS31における横行機構70の作動を継続する。一方、位置ずれが存在することが検出された場合、次のステップS33へと進む。
【0098】
なお、ステップS33~ステップS38は、上述したステップS16~ステップS21と同様となっている。そのため、これらについての説明は省略する。
【0099】
また、ステップS38において、チャッキング装置10を規定位置まで上昇させた後に、横行機構70を移動させて、リフティングマグネット60(および電磁石昇降機構50)を、中心位置に復帰させる(ステップS39)。なお、この中心位置の検出は、図示を省略するリミットスイッチのオン・オフの検出により行う。それにより、爪リンク機構31に対し、リフティングマグネット60および電磁石昇降機構50が既定の中心位置に位置する状態となり、ステップS22の爪リンク機構31の閉じ動作を実行可能となる。なお、このステップS39の実行後は、上述したステップS22以降の動作を実行する。なお、ステップ19において、所定の回数または時間繰り返しても吸着が確認されなかった場合には、図示を省略したステップによってステップ14に戻り、ステップ14以降のステップを実施するようにしても良い。
【0100】
<荷下ろし動作について>
次に、フレコンバッグの荷下ろし動作について、図14に基づいて説明する。この場合、チャッキング装置10が下降する準備が整っているのかを確認する(ステップS41)。ここで、下降する準備とは、たとえば、次のものが挙げられる。すなわち、図示を省略する爪リンク機構31の閉じ側のリミットスイッチがオンとなっているか、電磁石昇降機構50およびリフティングマグネット60が横行機構70における中心位置に到達しているか、リフティングマグネット60が上限位置に到達していることを検出する上限リミットスイッチがオンとなっているか等がある。しかしながら、チャッキング装置10が下降する準備は、これに限られるものではない。
【0101】
次に、チャッキング装置10を爪リンク機構31の開き位置まで下降させる(ステップS42)。なお、この開き位置までの下降は、距離センサ90での距離の測定によって行われる。ここで、上記の開き位置とは、フレコンバッグの着床が完了し、さらにフレコンバッグに一対の下連結部34a,34bが所定だけ近接した位置となっている。すなわち、フレコンバッグを吊り上げている状態では、フレコンバッグと距離センサ90の距離は一定となっている。しかしながら、フレコンバッグが着床すると、フレコンバッグの吊り紐が緩むので、チャッキング装置10および吊り金具200がフレコンバッグに対して近接する。したがって、距離センサ90でフレコンバッグに対する距離を測定すれば、フレコンバッグの着荷が検出できると共に、上記の開き位置の測定も可能となる。
【0102】
次に、立壁部42で囲まれた空間内に存在する吊り金具200に対し、リフティングマグネット60を下降させる(ステップS43)。なお、このリフティングマグネット60の下降位置は、図示を省略するリミットスイッチが吊り金具200により押し込まれることで、リフティングマグネット60が吊り金具200の磁着板部210に当接したことが検出される。
【0103】
上記のようにリフティングマグネット60が磁着板部210に当接した場合、リフティングマグネット60の励磁を行う(ステップS44)。すると、リフティングマグネット60に対し磁着板部210が磁着される。
【0104】
次に、リフティングマグネット60を所定の上昇位置まで上昇させる(ステップS45)。ここでいう所定の上昇位置とは、立壁部42で囲まれた空間内において吊り金具200を持ち上げるための位置であるが、その持ち上げによって、吊り金具200の下支持部230が、下支え部34a1,34b1および爪部35a,35bから離間する。それにより、爪リンク機構31を開くことが可能となる。
【0105】
続いて、爪リンク機構31を開く(ステップS46)。それにより、リフティングマグネット60で磁着されている吊り金具200を、フレコンバッグに向けて降ろすことが可能となる。
【0106】
次に、フレコンバッグに向け、リフティングマグネット60を所定の下降位置まで下降させる(ステップS47)。ただし、このリフティングマグネット60の下降位置は、フレコンバッグに吊り金具200が接触する位置ではなく、それよりも若干上側(Z1側)となっている。なお、上述した距離センサ90での測定によって、上記の所定の下降位置の検出がなされる。
【0107】
次に、チャッキング装置10を所定の下降位置まで下降させる(ステップS48)。なお、上述した距離センサ90での測定によって、チャッキング装置10の下降位置の検出がなされるようにしても良いし、チェーンC1の緩みを検知する図示しないリミットスイッチの作動により所定の位置を判断するようにしても良い。ただし、このステップS48は、省略するようにしても良い。
【0108】
この後に、リフティングマグネット60を消磁する(ステップS49)。それにより、リフティングマグネット60から吊り金具200の吸着が解かれ、フレコンバッグの中央に、吊り金具200を置くことができる。すなわち、吊り金具200を保持していた爪リンク機構31を開くことで吊り金具200をフレコンバッグの上面中央に載置しようとした場合、吊り紐の張力の不均衡や吊り金具200と爪リンク機構31との摩擦力の不均衡や緩んだ吊り紐が爪リンク機構31に引っかかるなどして、目的位置に吊り金具200を落下させるのは不確実な動作となる。したがって、リフティングマグネット60のみで吊り金具200を保持し、フレコンバッグの上面中心部に置いた状態でリフティングマグネット60を消磁するのが確実である。リフティングマグネット60を消磁するのはフレコンバッグの上面に吊り金具200を置いた後が制御も簡単で確実であるが、吊り金具200を置く直前でも良い。
【0109】
次に、チャッキング装置10を上昇させる(ステップS50)。リフティングマグネット60から吊り金具200が釈放されたことを確認し、荷下ろし動作は完了する。続いて、倉庫内のフレーム内部への、フレコンバッグの搬送が終了したので、チャッキング装置10は次のフレコンバッグの搬送に備えるか、または所定の退避位置へと移動させる。
【0110】
<効果について>
以上のような構成のチャッキング装置10および搬送装置1によると、本体フレーム20(本体部)と、吸着保持する力を生じさせる吸着手段(リフティングマグネット60)と、平板状に設けられている磁着板部210(吸着板部)と、磁着板部210(吸着板部)を中心に外方に伸びる複数の板状フック部232(フック部)を有する吊り金具200と、本体フレーム20(本体部)に取り付けられる開閉用直動装置38a,38b(第1アクチュエータ)を備え、当該開閉用直動装置38a,38b(第1アクチュエータ)の作動により開閉することで吊り金具200の把持および把持解除を行う開閉爪機構30と、吸着板部(磁着板部210)を吸着保持する力を生じさせる吸着手段(リフティングマグネット60)と、本体フレーム20(本体部)に取り付けられる昇降用直動装置53(第2アクチュエータ)を備え、当該昇降用直動装置53(第2アクチュエータ)の作動により本体フレーム20(本体部)に対してリフティングマグネット60(吸着手段)を昇降させる電磁石昇降機構50(昇降機構)と、を備える。そして、電磁石昇降機構50(昇降機構)は、開閉爪機構30に対して独立して昇降すると共に、開閉爪機構30は、板状フック部232(フック部)の下面を支持して吊り金具200を把持する。
【0111】
このように構成する場合には、吊り金具200の磁着板部210(吸着板部)は平板状に設けられているので、比較的広い面積でリフティングマグネット60の磁着面60aで磁着することが可能となる。したがって、リフティングマグネット60によって吊り金具200を安定的に水平に磁着することができる。また、中央の磁着板部210(吸着板部)と外側の複数の板状フック部232(フック部)で磁着板部210(吸着板部)と吊り紐を掛ける板状フック部232(フック部)が区画されて配置されているので、吊り金具200を把持する開閉爪機構30及び吸着する吸着手段と、吊り紐の干渉(挟み込み)を防止できる。また、開閉爪機構30は、板状フック部232(フック部)の下面を支持して吊り金具200を把持するので、フレコンバッグ等の吊り荷の吊り紐を、直接、開閉爪機構30で保持するのを防ぐことができ、吊り紐(ベルト等)を痛めることを防止することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、開閉爪機構30の下方側(Z2側)には姿勢矯正機構40が設けられていて、姿勢矯正機構40は、開閉爪機構30と共に開閉する一対のガイド部材41a,41bを備えている。それぞれのガイド部材41a,41bには立壁部42が設けられていて、当該立壁部42に吊り金具200の板状フック部232(フック部)の外縁がガイドされることで吊り金具200の回転方向における姿勢が矯正される。
【0113】
このように構成する場合には、立壁部42への吊り金具200の衝突によって、一対のガイド部材41a,41bが閉じる際に、吊り金具200の回転方向における向きを矯正することができる。
【0114】
また、本実施の形態では、開閉爪機構30の閉じ位置を規制する突き当て部材33a,33b(閉位置規制部材)が取り付けられていて、突き当て部材33a,33b(閉位置規制部材)で規制された閉じ位置では、一対のガイド部材における立壁部の間には所定の隙間が形成される、ことが好ましい。一対のガイド部材41a,41bにおける立壁部42の間には隙間が形成される。また、吊り金具200を把持する下連結部34a、34bの互いに対向する部分である下支え部34a1、34b1間及び爪部35a,35bの先端同士の予め定めた所定の隙間が閉じることが無い。
【0115】
このように構成する場合には、突き当て部材33aと突き当て部材33b(閉位置規制部材)同士が突き当てられることにより、対向する立壁部42は、完全には当接せずに、それらの間に予め定めた所定の隙間が形成される。このため、これらの隙間から吊り紐を逃がすことが可能となり、吊り紐を開閉爪機構30で挟み込むことが無く、これによって損傷するのを防止することができる。
【0116】
また、本実施の形態では、開閉用直動装置38a,38b(第1アクチュエータ)および昇降用直動装置53(第2アクチュエータ)は、吊り金具200が吊り下げられる方向である上下方向(Z方向)に沿うように配置されている。
【0117】
このように構成する場合には、開閉用直動装置38a,38b(第1アクチュエータ)および昇降用直動装置53(第2アクチュエータ)は、特許文献1に開示の構成とは異なり、上下方向(Z方向)に沿うように配置される状態となる。そのため、チャッキング装置10が、上下方向(Z方向)と直交する平面方向(X方向およびY方向)においてスペースが大きくなるのを防止することができ、チャッキング装置10の小型化を図ることができる。
【0118】
また、本実施の形態では、本体フレーム20(本体部)には、電磁石昇降機構50(昇降機構)および開閉爪機構30を、上下方向(Z方向)に直交する水平方向(XY平面内の所定方向)に移動させる横行機構70(水平方向移動機構)が設けられている。
【0119】
このように構成する場合には、本体フレーム20において電磁石昇降機構50(昇降機構)および開閉爪機構30を水平方向(XY平面内の所定方向)に移動させることができるので、吊り金具200に対するリフティングマグネット60の位置合わせを精度良く短時間で行うことができる。そのため、テルハクレーンにおいても、吊り金具200をリフティングマグネット60で良好に磁着させることができる。
【0120】
また、本実施の形態では、吸着手段として、電磁石を用いたリフティングマグネット60を用いている。このように構成する場合には、リフティングマグネット60で吊り金具200を磁着させることができ、その磁着状態で昇降用直動装置53(第2アクチュエータ)を作動させることで、吊り金具200を吊り上げることができる。また、リフティングマグネット60では、吊り金具200を容易に釈放(磁着状態を切り離す)ことが可能となる。
【0121】
また、本実施の形態では、開閉爪機構30は、板状フック部232(フック部)の外縁から当該板状フック部232(フック部)の基部の下面を支持する爪部35a,35bを有している。
【0122】
このように構成する場合には、爪部35a,35bによって、板状フック部232(フック部)の外縁から基部の下面が支持されるので、フレコンバッグの荷重は爪部35a,35bで受け止めることができる。そのため、仮に吊り金具200が軽量化のために十分な強度を有しない場合でも、吊り紐を上側に吊り上げる動作を実行させることができる。
【0123】
また、本実施の形態の搬送装置1では、チャッキング装置10を吊り下げた状態で走行用レールR1を走行する走行装置11と、この走行装置11に設置された昇降装置(電気チェーンブロック12)とを有している。このため、フレコンバッグを、倉庫内外において、所定の位置に容易に搬送することが可能となる。
【0124】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0125】
上述の実施の形態では、フレコンバッグの吊り紐は、ベルト状のものでも良いが、ベルトよりも幅が狭いロープ状や紐状のものでも良い。
【0126】
また、上述の実施の形態では、吸着手段としてリフティングマグネット60について説明している。しかしながら、吸着手段は、リフティングマグネット60に限られるものではない。吸着手段としては、たとえば、永久磁石(磁力をオン・オフできるものや通常の永久磁石)、バキューム式の吸着装置を吸着手段として用いても良い。また、吸着手段をバキューム式の吸着装置とした場合には、吸着板部として磁性体から形成される磁着板部210を用いる必要はなく、軽合金や樹脂等から形成される吸着板部を用いることで、吊り金具200を更に軽量化することができる。
【0127】
また、ビジョンセンサ80を省略して、予め定めた水平方向で複数の位置(吊り金具200が置かれている可能性がある位置)でリフティングマグネット60の吸着位置まで下降させ、吸着する動作を吸着できるまで繰り返すようにしても良い。
【符号の説明】
【0128】
1…搬送装置、10…チャッキング装置、11…走行装置、12…電気チェーンブロック(昇降装置に対応)、20…本体フレーム(本体部に対応)、21a,21b…フレーム板、22…連結バー、23…支持プレート、23a…支持プレート、23b…支持プレート、24…上部連結部、30…開閉爪機構、31a,31b…爪リンク機構、32a,32b…リンクアーム、33a,33b…突き当て部材(閉位置規制部材に対応)、34a…下連結部、34b…下連結部、34a1,34b1…下支え部、35a,35b…爪部、36a,36b…ガイド部材支持部、37a,37b…接続リンク、38a,38b…開閉用直動装置(第1アクチュエータに対応)、39a,39b…ガイドカム、40…姿勢矯正機構、41a…ガイド部材、41b…ガイド部材、42…立壁部、42a…ガイド板部、42b…ガイド板部、42c…ガイド板部、43…固定用フランジ部、50…電磁石昇降機構50(昇降機構に対応)、51…磁石連結部材、52…シリンダ連結部材、53…昇降用直動装置53(第2アクチュエータに対応)、53a…昇降用シリンダ、53b…連結ロッド、60…リフティングマグネット、60a…磁着面、70…横行機構(水平方向移動機構に対応)、71…横行用モータ、72…駆動伝達機構、73…ボールねじ、74…連結ナット、80…ビジョンセンサ、90…距離センサ、100…制御部、200…吊り金具、210…磁着板部(吸着板部に対応)、211…センサ用マーク、220…スペーサ部、230…下支持部、231…中央部、232…板状フック部(フック部に対応)、233…絞り部、234…外周幅広部、235…返し部、341a,341b…補強リブ、391a,391b…ガイド溝、381…シリンダ、382…連結ロッド、C1…チェーン、C2…チェーン、P1…隙間、P2…下降位置、R1…走行用レール、S1~S3…連結軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14