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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028446
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220208BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131840
(22)【出願日】2020-08-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 有限会社NDSエンジニアリングが令和2年6月20日に自社のパンフレットに掲載 有限会社NDSエンジニアリングが令和2年6月20日に自社のウェブサイトにて公開 有限会社NDSエンジニアリングが令和2年6月19日及び同年7月9日にSNSの自社ページにて公開 有限会社NDSエンジニアリングが令和2年7月8日に愛川町立愛川東中学校にて展示
(71)【出願人】
【識別番号】520284067
【氏名又は名称】有限会社NDSエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長岡 哲也
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD13
4C058EE23
4C058KK02
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
(57)【要約】
【課題】マスク等の物品の両面を殺菌可能であり、かつ、複数の物品を連続して殺菌することができる紫外線殺菌装置を提供する。
【解決手段】殺菌を行う物品の着脱が可能な環状搬送機構と、環状搬送機構に対する物品の取り付け及び取り外しを行う作業エリアと、環状搬送機構に取り付けられた物品の殺菌を行う殺菌エリアと、殺菌エリア内に互いに対向して配置された一対の紫外線殺菌部とを備え、環状搬送機構は、作業エリア及び殺菌エリアに亘って配置され、該環状搬送機構に取り付けられた物品を一対の紫外線殺菌部の間を通過させるよう循環する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌を行う物品の着脱が可能な環状搬送機構と、
前記環状搬送機構に対する前記物品の取り付け及び取り外しを行う作業エリアと、
前記環状搬送機構に取り付けられた前記物品の殺菌を行う殺菌エリアと、
前記殺菌エリア内に互いに対向して配置された一対の紫外線殺菌部と
を備え、
前記環状搬送機構は、前記作業エリア及び前記殺菌エリアに亘って配置され、該環状搬送機構に取り付けられた前記物品を前記一対の紫外線殺菌部の間を通過させるよう循環する
ことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記作業エリアは、作業者または物体の存在を検知可能な存在検知部を備え、
前記存在検知部は、作業者または物体が存在するか否かを検知する存在検知センサを有し、前記存在検知センサによって作業者または物体の存在が検知された際に、前記環状搬送機構の搬送速度を減速又は停止させるよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記殺菌エリアは、該殺菌エリア内において殺菌された空気を装置外部に拡散させる空気拡散部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
前記環状搬送機構は、
前記作業エリア及び前記殺菌エリアに亘って配置されたローラーチェーンと、
前記ローラーチェーンに取り付けられ、前記物品を着脱可能な保持部と、
前記ローラーチェーンを回動させるためのモータと、
前記モータの駆動力を前記ローラーチェーンに伝達するスプロケットと、
前記モータと前記スプロケットの間に設けられ、前記モータの駆動力を前記スプロケットに伝達する過負荷保護部と
を備え、
前記過負荷保護部は、前記モータに許容範囲を超える負荷がかかった際に前記スプロケットに対する前記モータの駆動力の伝達を遮断するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項5】
前記環状搬送機構は、
前記ローラーチェーンを挟むように対向して配置される一対の光電センサを有する搬送検知部を更に備え、
前記搬送検知部は、回動する前記ローラーチェーンの通過間隔を前記一対の光電センサによってセンシングし、該ローラーチェーンの通過間隔が予め定めた許容範囲を超えた際に、前記モータの駆動を停止させるよう構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク等の物品に対して殺菌を行う紫外線殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感染症の予防手段としてマスクが必需品となっているが、マスクは一度使用するとマスク自体に細菌やウイルスが付着するため、そのまま繰り返し使用することは不衛生であり、使い捨てるか、マスクを洗浄する必要がある。しかし、使い捨てる場合にはマスクを大量に購入する必要があり、感染症の大規模な流行が発生した際に市場でのマスク不足が深刻となっている。一方でマスクを繰り返し使用する場合、マスクを洗浄した際にマスク内部のフィルター構造が破壊され、本来の保護能力が損なわれるおそれがある。このような背景の中で、容器内にマスクを入れ、紫外線により殺菌を行うことでマスクの再利用を可能にした紫外線殺菌装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-78678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した紫外線殺菌装置では、容器内にマスクを二つ折りにして入れるため、マスクの片面のみが殺菌可能であり、反対面を殺菌することができず、また複数のマスクを殺菌する場合に都度容器内にマスクを入れ、殺菌を行うため、連続的に殺菌を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マスク等の物品の両面を殺菌可能であり、かつ、複数の物品を連続して殺菌することができる紫外線殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る紫外線殺菌装置は、殺菌を行う物品の着脱が可能な環状搬送機構と、前記環状搬送機構に対する前記物品の取り付け及び取り外しを行う作業エリアと、前記環状搬送機構に取り付けられた前記物品の殺菌を行う殺菌エリアと、前記殺菌エリア内に互いに対向して配置された一対の紫外線殺菌部とを備え、前記環状搬送機構は、前記作業エリア及び前記殺菌エリアに亘って配置され、該環状搬送機構に取り付けられた前記物品を前記一対の紫外線殺菌部の間を通過させるよう循環することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る紫外線殺菌装置において、前記作業エリアは、作業者または物体の存在を検知可能な存在検知部を備え、前記存在検知部は、作業者または物体が存在するか否かを検知する存在検知センサを有し、前記存在検知センサによって作業者または物体の存在が検知された際に、前記環状搬送機構の搬送速度を減速又は停止させるよう構成されてもよい。
【0008】
本発明に係る紫外線殺菌装置において、前記殺菌エリアは、該殺菌エリア内において殺菌された空気を装置外部に拡散させる空気拡散部を備えてもよい。
【0009】
本発明に係る紫外線殺菌装置において、前記環状搬送機構は、前記作業エリア及び前記殺菌エリアに亘って配置されたローラーチェーンと、前記ローラーチェーンに取り付けられ、前記物品を着脱可能な保持部と、前記ローラーチェーンを回動させるためのモータと、前記モータの駆動力を前記ローラーチェーンに伝達するスプロケットと、前記モータと前記スプロケットの間に設けられ、前記モータの駆動力を前記スプロケットに伝達する過負荷保護部とを備え、前記過負荷保護部は、前記モータに許容範囲を超える負荷がかかった際に前記スプロケットに対する前記モータの駆動力の伝達を遮断するよう構成されてもよい。
【0010】
本発明に係る紫外線殺菌装置において、前記環状搬送機構は、前記ローラーチェーンを挟むように対向して配置される一対の光電センサを有する搬送検知部を更に備え、前記搬送検知部は、回動する前記ローラーチェーンの通過間隔を前記一対の光電センサによってセンシングし、該ローラーチェーンの通過間隔が予め定めた許容範囲を超えた際に、前記モータの駆動を停止させるよう構成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マスク等の物品の両面を殺菌可能であり、かつ、複数の物品を連続して殺菌することができる紫外線殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る紫外線殺菌装置を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る紫外線殺菌装置の概略構成を一部破断して示す図である。
図3】本実施形態に係る紫外線殺菌装置の概略構成を示す平面図である。
図4】紫外線殺菌部を示す図である。
図5】搬送検知部を示す図である。
図6】チェーン駆動部の分解図である。
図7】本実施形態に係る殺菌装置を用いた殺菌方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0014】
[構成の説明]
まず、図1及び図2を参照して、紫外線殺菌装置10を概説する。本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、殺菌を行う物品(以下本実施形態においてはマスクとする。)の着脱が可能な環状搬送機構100と、マスクの取り付け及び取り外しを行う作業エリアWAと、マスクの殺菌を行う殺菌エリアSAと、殺菌エリアSA内に互いに対向して配置された一対の紫外線殺菌部30(表側紫外線殺菌部30,裏側紫外線殺菌部30)とを備えている。環状搬送機構100は、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘って配置されている。
【0015】
紫外線殺菌装置10は、殺菌エリアSAに取り付けられ、該殺菌エリアSA内において殺菌された空気を装置外部に拡散させる空気拡散部40と、作業エリアWAに取り付けられ、該作業エリアWA内に作業者または物体が存在するか否かを検知する存在検知部50とを更に備えている。
【0016】
本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、概略的には、作業エリアWAでマスクを環状搬送機構100に取り付け、取り付けたマスクが殺菌エリアSA内に配置された一対の紫外線殺菌部30の間を通過するように環状搬送機構100を循環させることで殺菌を行う紫外線殺菌装置である。
【0017】
次に紫外線殺菌装置10の各構成部材の詳細について説明する。紫外線殺菌装置10は、4本の支柱を有するフレーム20Aと、該フレーム20Aから前方に張り出した張り出し部20Bを備えている。フレーム20Aは、該フレーム20Aの上面に取り付けられた第1天板21と、該フレーム20Aの両側面に取り付けられた一対の第1側板22と、該フレーム20Aの背面側に取り付けられた背面板24と、該フレーム20A及び張り出し部20Bの境界に取り付けられた仕切り板23とを備えており、仕切り板23は、後述する環状搬送機構100のローラーチェーン110が循環できるよう一対の第1側板22と離間して配置されている。張り出し部20Bは、該張り出し部20Bの上面に取り付けられた第2天板25と、該張り出し部20Bの両側面に取り付けられた一対の第2側板26とを備えており、第2天板25は、第1天板21の一端部(前端部)に取り付けられ、一対の第2側板26は、一対の第1側板22の一端部(前端部)にそれぞれ取り付けられている。
【0018】
殺菌エリアSAは、図1及び図3に示すように、仕切り板23と、第1天板21と、一対の第1側板22と、背面板24とで囲われることで形成されている。殺菌エリアSAには、一対の紫外線殺菌部30と、一又は複数(本実施形態では2つ)の空気拡散部40とが設置されている。
【0019】
一対の紫外線殺菌部30は、図3に示すように、一又は複数(本実施形態では2つ)の紫外線殺菌灯32と、紫外線殺菌灯32を取り付け可能な蛍光灯器具34とをそれぞれ備えている。一対の紫外線殺菌部30は、図4に示すように、一方が仕切り板23の背面板24との対向面に取り付けられており、他方が背面板24の仕切り板23との対向面に、一方の紫外線殺菌部30と対向するよう取り付けられている。具体的には、各紫外線殺菌灯32が仕切り板23の対向面及び背面板24の対向面に蛍光灯器具34を介して取り付けられている。各紫外線殺菌部30において、紫外線殺菌灯32は、2台設置されており、該2台の紫外線殺菌灯32は、マスクの耳掛け部を除いたマスク本体の全体を殺菌可能な間隔で鉛直方向に沿って離間して配置されている。
【0020】
一対の紫外線殺菌部30は、紫外線殺菌灯32から紫外線(殺菌線)を放射させ、環状搬送機構100に取り付けたマスクが一対の紫外線殺菌部30の間を通過することでマスクの両面を殺菌するよう構成されている。
【0021】
空気拡散部40は、ファン(図示せず)と、該ファンを駆動するモータ(図示せず)とを備えている。空気拡散部40は、第1天板21の上面における、一対の紫外線殺菌部30の間を通過する後述するローラーチェーン110の軌道上に取り付けられており、ファンを回転させることにより、殺菌エリアSA内に鉛直方向上向きの空気流を発生させ、一対の紫外線殺菌部30により殺菌された空気を第1天板21から紫外線殺菌装置10の外部へ拡散(放出)させ、該紫外線殺菌装置10の周辺を殺菌された空間とするよう構成されている。
【0022】
作業エリアWAは、図1及び図3に示すように、第2天板25と、一対の第2側板26と、仕切り板23とで囲われることで形成されており、作業者または物体の存在を検知可能な存在検知部50を備えている。
【0023】
存在検知部50は、一対の第2側板26の対向面に設けられており、作業者または物体が存在するか否かを検知する一又は複数の存在検知センサ52を備えている。存在検知センサ52は、本実施形態では、鉛直方向に所定の間隔を置いて3台設置されている。なお、ここでいう「所定の間隔」は、存在検知センサ52によって作業エリアWA内への作業者または物体の進入を漏れなく検知可能な間隔であることが好ましい。
【0024】
各存在検知センサ52は、一方の第2側板26に取り付けられた投光器と、他方の第2側板26に取り付けられた受光器とを備えている。存在検知部50は、作業エリアWAの入り口、すなわち、第2側板26の一端部(前端部)において、存在検知センサ52の投光器から受光器に向かって発せられる光線が作業者または物体によって遮られることで、作業者または物体が作業エリアWAに進入したことを検知するよう構成されている。また、存在検知部50は、作業者または物体の存在が検知された際に、環状搬送機構100の搬送速度、すなわち、後述するモータ140の回転速度を減速又は停止させるよう構成されている。
【0025】
環状搬送機構100は、図2及び図3に示すように、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘って配置されたローラーチェーン110と、ローラーチェーン110に取り付けられ、物品を着脱可能な保持部120と、ローラーチェーン110を循環させるためのチェーン駆動部130と、ローラーチェーン110を懸架する従動スプロケット155と、ローラーチェーン110の循環不良を検知可能な搬送検知部170とを備えている。
【0026】
ローラーチェーン110は、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘ってロの字状に循環しており、一対の紫外線殺菌部30よりも高い位置に設置されている。また、ローラーチェーン110は、作業エリアWAに取り付けられた2つの従動スプロケット155と、殺菌エリアSAに取り付けられた従動スプロケット155及び後述するスプロケット150によって、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘って水平に懸架されている。ローラーチェーン110の殺菌エリアSA内を横断する部分は、図4に示すように、離間した一対の紫外線殺菌部30に挟まれており、該紫外線殺菌部30と平行に配置されている。
【0027】
保持部120は、環状のローラーチェーン110の周方向に沿って所定の間隔をおいて複数設けられている。具体的には、各保持部120は、ローラーチェーン110の側面に取り付けられ、一端部に孔を有するL字型プレート112と、該L字型プレート112の孔に取り付け可能なフック122とを備えており、該フック122又は該フック122に取り付け可能なクリップ(図示せず)にマスクの耳掛け部を吊り下げられるよう構成されている。
【0028】
搬送検知部170は、図5に示すように、ローラーチェーン110を挟むように対向して配置される一対の光電センサ172を有し、作業エリアWAに取り付けられた従動スプロケット155と、殺菌エリアSAに取り付けられた後述するスプロケット150との間に設けられている(図3参照)。
【0029】
搬送検知部170は、回動するローラーチェーン110の通過間隔を一対の光電センサ172によってセンシングし、ローラーチェーン110の通過間隔が予め定めた許容範囲を超えた際に、後述するモータ140の駆動を停止させるよう構成されている。具体的には、搬送検知部170は、光電センサ172によってローラーチェーン110のピンの通過をパルスとして計測しており、パルスのオン又はオフの幅が予め定めた許容値を超えた場合に、ローラーチェーン110の停止を検知し、モータ140の駆動を緊急停止させるよう構成されている。
【0030】
チェーン駆動部130は、図6に示すように、ローラーチェーン110を回動させるためのモータ140と、モータの駆動力をローラーチェーン110に伝達するスプロケット150と、モータ140及びスプロケット150の間に設けられ、モータ140の駆動力をスプロケット150に伝達する過負荷保護部160と、スプロケット150及び過負荷保護部160の間に設けられたスプロケット駆動軸152とを備えており、第1天板21に取り付けられている(図1参照)。
【0031】
過負荷保護部160は、図6に示すように、駆動力調整用カラー162と、駆動力調整用カラー162と対向して設けられた金属ディスク164と、駆動力調整用カラー162及び金属ディスク164の間に設けられた超たわみ圧縮ばね163と、金属ディスク164と対向して設けられた駆動力伝達ディスク166と、金属ディスク164及び駆動力伝達ディスク166の間に設けられた樹脂ディスク165と、駆動力調整用カラー162、超たわみ圧縮ばね163、金属ディスク164及び樹脂ディスク165に挿入される駆動伝達軸161とを備えている。過負荷保護部160は、一端部に備える駆動力調整用カラー162が駆動伝達軸161を介してモータ140に取り付けられており、他端部に備える駆動力伝達ディスク166が、該駆動力伝達ディスク166及びスプロケット150に挿入されるスプロケット駆動軸152によってスプロケット150と連結している。
【0032】
以上の構成を備えるチェーン駆動部130は、過負荷保護部160の樹脂ディスク165及び駆動力伝達ディスク166が摩擦係合することにより、モータ140の駆動力が駆動力伝達ディスク166を介してスプロケット駆動軸152に伝達され、スプロケット150が回転するよう構成されている。また、チェーン駆動部130は、モータ140に許容範囲を超える負荷がかかった際に、過負荷保護部160の樹脂ディスク165及び駆動力伝達ディスク166の間の摩擦力が最大静止摩擦を超え、樹脂ディスク165と駆動力伝達ディスク166とが相対的に滑ることでスプロケット150にモータ140の駆動力が伝達されなくなるよう構成されている。
【0033】
過負荷保護部160が伝達可能な駆動力の上限値は、樹脂ディスク165と駆動力伝達ディスク166の摩擦力の大きさで決定し、該摩擦力は、樹脂ディスク165及び駆動力伝達ディスク166の摩擦係数と、金属ディスク164を介して樹脂ディスク165にかかる超たわみ圧縮ばね163の弾性力によって決定する。過負荷保護部160は、超たわみ圧縮ばね163の弾性力を駆動力調整用カラー162によって調整することで伝達可能な駆動力の上限値を決めることが可能であり、駆動力の上限値は、モータ140に掛かる負荷の許容範囲に応じて適宜設定される。
【0034】
なお、紫外線殺菌部30、空気拡散部40、存在検知部50及び環状搬送機構100の駆動及び停止制御や、チェーン駆動部130が備えるモータ140の回転速度及び回転方向の制御は、作業エリアWA及び殺菌エリアSAの下に設けられている制御部180により行われる。
【0035】
[動作の説明]
次に、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10を用いた殺菌方法の一連の動作について、図7を参照して説明する。
【0036】
制御部180を操作し、紫外線殺菌部30及び空気拡散部40を始動させることで、紫外線殺菌部30の紫外線殺菌灯32が点灯し、空気拡散部40のファン(図示せず)が回転する。続いて環状搬送機構100を始動させることで、チェーン駆動部130のモータ140が駆動し、該モータ140の駆動力が過負荷保護部160及びスプロケット150を介してローラーチェーン110に伝達され、該ローラーチェーン110が循環を開始する(S1)。
【0037】
始動から所定時間内(S2にてNOの場合)に保持部120に殺菌対象となるマスクを取り付けるために、作業者が作業エリアWAに手を進入させると(S3にてYESの場合)、存在検知部50が備える存在検知センサ52がこれを検知し、環状搬送機構100のローラーチェーン110が一時的に停止する(S4)。この状態において、作業者は、ローラーチェーン110のL字型プレート112に取り付けられたフック122にマスクをかける(S5)。その後、存在検知センサ52により作業者が作業エリアWAから離れたことが検知されると(S6にてYESの場合)、環状搬送機構100のローラーチェーン110は再び循環を開始する(S1)。
【0038】
取り付けられたマスクは、殺菌エリアSAに搬送され、一対の紫外線殺菌部30の間を通過する。マスクが一対の紫外線殺菌部30の間を通過する際に、紫外線殺菌装置10は、紫外線殺菌部30の紫外線殺菌灯32から放射される紫外線(殺菌線)によってマスクに付着した細菌やウイルスを殺菌する。
【0039】
殺菌エリアSAで殺菌されたマスクは、殺菌エリアSAから作業エリアWAに搬送される。作業エリアWAにマスクが戻って来た際に、殺菌されたマスクを取り出すために再び作業者が作業エリアWAに手を進入させると(S3にてYESの場合)、存在検知部50が備える存在検知センサ52がこれを検知し、環状搬送機構100のローラーチェーン110が一時的に停止する(S4)。ローラーチェーン110のL字型プレート112に取り付けられたフック122からマスクを取り外し(S5)、存在検知センサ52により作業者が作業エリアWAから離れたことが検知されると(S6にてYESの場合)、環状搬送機構100のローラーチェーン110は再び循環を開始する(S1)。
【0040】
以上の工程により本実施形態に係る紫外線殺菌装置10を用いた殺菌方法の一連の動作が実行される。環状搬送機構100のローラーチェーン110は、殺菌したマスクを取り外した後も循環し続けるが、存在検知部50が最後の検知から一定時間(例えば2分間)内に何も検知しない場合(S2にてYESの場合)には、チェーン駆動部130のモータ140及びローラーチェーン110が停止し、待機状態となる。この待機状態において、紫外線殺菌部30の紫外線殺菌灯32は点灯し続けており、空気拡散部40のファン(図示せず)も回転し続けている。
【0041】
空気拡散部40は、該空気拡散部40の始動後、停止するまでの間において、該空気拡散部40のファン(図示せず)を回転させることにより、殺菌エリアSA内に鉛直方向上向きの空気流を発生させ、一対の紫外線殺菌部30の間を通過することで殺菌された空気を第1天板21から紫外線殺菌装置10の外部へ拡散し、該紫外線殺菌装置10の周辺を空間殺菌している。
【0042】
また、図示は省略するが、環状搬送機構100のローラーチェーン110が停止した待機状態から作業者が作業エリアWAに手を進入させ、ローラーチェーン110に取り付けられたフック122にマスクをかけると(S5)、存在検知部50が備える存在検知センサ52がこれを検知し、作業者が作業エリアWAから離れた後(S6にてYESの場合)、環状搬送機構100のローラーチェーン110は再び循環を開始し(S1)、一連の殺菌動作が行われる。
【0043】
循環する環状搬送機構100のローラーチェーン110に作業者やマスクが挟まれた場合等においては、チェーン駆動部130のモータ140に許容範囲を超える負荷がかかり、過負荷保護部160の摩擦係合する樹脂ディスク165及び駆動力伝達ディスク166が滑る。この際に、モータ140の駆動力がスプロケット150を介してローラーチェーン110に伝達されなくなるため、循環しているローラーチェーン110は停止する。この場合において、モータ140は駆動を続けているが、搬送検知部170がローラーチェーン110の停止を検知し、モータ140の駆動を緊急停止させる。
【0044】
[本実施形態に係る紫外線殺菌装置の利点]
以上説明したように、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、殺菌を行う物品の着脱が可能な環状搬送機構100と、環状搬送機構100に対する物品の取り付け及び取り外しを行う作業エリアWAと、環状搬送機構100に取り付けられた物品の殺菌を行う殺菌エリアSAと、殺菌エリアSA内に互いに対向して配置された一対の紫外線殺菌部30とを備え、環状搬送機構100は、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘って配置され、該環状搬送機構100に取り付けられた物品を一対の紫外線殺菌部30の間を通過させるよう循環する。
【0045】
そして、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、このような構成を備えることにより、マスクの両面を殺菌可能であり、かつ、複数のマスクを連続して殺菌することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10において、作業エリアWAは、作業者または物体の存在を検知可能な存在検知部50を備え、存在検知部50は、作業者または物体が存在するか否かを検知する存在検知センサ52を有し、存在検知センサ52によって作業者または物体の存在が検知された際に、環状搬送機構100の搬送速度を減速又は停止させるよう構成されている。このような構成により、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、環状搬送機構100に物品を着脱する際に、安全に作業することができるという利点を有している。
【0047】
また、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10において、殺菌エリアSAは、殺菌エリアSA内において殺菌された空気を装置外部に拡散させる空気拡散部40を備えている。このような構成により、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、殺菌エリアSA内で殺菌された空気を紫外線殺菌装置10の外部へ拡散させ、該紫外線殺菌装置10の周辺を殺菌された空間とする空間殺菌装置としての機能を有するという利点を有している。
【0048】
また、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10において、環状搬送機構100は、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘って配置されたローラーチェーン110と、ローラーチェーン110に取り付けられ、物品を着脱可能な保持部120と、ローラーチェーン110を回動させるためのモータ140と、モータ140の駆動力をローラーチェーン110に伝達するスプロケット150と、モータ140とスプロケット150の間に設けられ、モータ140の駆動力をスプロケット150に伝達する過負荷保護部160とを備え、過負荷保護部160は、モータ140に許容範囲を超える負荷がかかった際にスプロケット150に対するモータ140の駆動力の伝達を遮断するよう構成されている。
【0049】
このような構成により、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、モータ140に許容範囲を超える負荷がかかった際にモータ140の損傷を防ぐことが可能であると共に、ローラーチェーン110に作業者または物品等が挟まれた場合に直ちにローラーチェーン110の循環を停止させることができ、安全であるという利点を有している。
【0050】
また、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10において、環状搬送機構100は、ローラーチェーン110を挟むように対向して配置される一対の光電センサ172を有する搬送検知部170を更に備え、搬送検知部170は、回動するローラーチェーン110の通過間隔を一対の光電センサ172によってセンシングし、ローラーチェーン110の通過間隔が予め定めた許容範囲を超えた際に、モータ140の駆動を停止させるよう構成されている。このような構成により、本実施形態に係る紫外線殺菌装置10は、ローラーチェーン110の循環不良を検知し、モータ140の空転を防止できるという利点を有している。
【0051】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、殺菌を行う物品がマスクであるものとして説明したが、これに限定されず、種々の任意の物品を殺菌可能である。
【0053】
上述した実施形態では、一対の紫外線殺菌部30は、2つの紫外線殺菌灯32と、紫外線殺菌灯32を取り付け可能な蛍光灯器具34とをそれぞれ備えており、各紫外線殺菌部30において、紫外線殺菌灯32は、2台設置されており、該2台の紫外線殺菌灯32は、鉛直方向に沿って離間して配置されているものとして説明したが、これに限定されず、紫外線殺菌灯32により物品の両面を殺菌可能な構成であれば、紫外線殺菌灯32の本数及び配置は任意に変更することが可能である。
【0054】
上述した実施形態では、空気拡散部40は、ファン(図示せず)と、該ファンを駆動するモータ(図示せず)とを備えるものとして説明したが、これに限定されず、空気拡散部40により殺菌された空気を装置外部に拡散(放出)可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0055】
上述した実施形態では、存在検知部50は、一対の第1側板22の対向面に設けられており、作業者または物体が存在するか否かを検知する存在検知センサ52を備えるものとして説明したが、これに限定されず、作業エリアWA内への作業者または物体の進入を検知可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0056】
上述した実施形態では、保持部120は、ローラーチェーン110の側面に取り付けられ、一端部に孔を有するL字型プレート112と、該L字型プレート112の孔に取り付け可能なフック122とを備えるものとして説明したが、これに限定されず、ローラーチェーン110に殺菌を行う物品を保持させる構成であれば、種々の任意の構成を採用可能であり、例えば、ローラーチェーン110とL字型プレート112及びフック122が一体となっているアタッチメントリンク付きローラーチェーン等の種々の任意の構成を採用可能である。
【0057】
上述した実施形態では、過負荷保護部160は、駆動力調整用カラー162と、駆動力調整用カラー162と対向して設けられた金属ディスク164と、駆動力調整用カラー162及び金属ディスク164の間に設けられた超たわみ圧縮ばね163と、金属ディスク164と対向して設けられた駆動力伝達ディスク166と、金属ディスク164及び駆動力伝達ディスク166の間に設けられた樹脂ディスク165と、駆動力調整用カラー162、超たわみ圧縮ばね163、金属ディスク164及び樹脂ディスク165に挿入される駆動伝達軸161とを備えるものとして説明したが、これに限定されず、過負荷保護部160は、金属ディスク164及び樹脂ディスク165の配置が逆である構成や、金属ディスク164又は樹脂ディスク165を備えないものとしても良い。
【0058】
上述した実施形態では、作業エリアWAは、存在検知部50を備えるものとして説明したが、これに限定されず、作業エリアWAは、存在検知部50を備えないものとしても良い。
【0059】
上述した実施形態では、殺菌エリアSAは、該殺菌エリアSA内において殺菌された空気を装置外部に拡散させる空気拡散部40を備えるものとして説明したが、これに限定されず、殺菌エリアSAは、空気拡散部40を備えないものとしても良い。
【0060】
上述した実施形態では、環状搬送機構100は、作業エリアWA及び殺菌エリアSAに亘って配置されたローラーチェーン110と、ローラーチェーン110に取り付けられ、物品を着脱可能な保持部120と、ローラーチェーン110を回動させるためのモータ140と、モータ140の駆動力をローラーチェーン110に伝達するスプロケット150と、モータ140とスプロケット150の間に設けられ、モータ140の駆動力をスプロケット150に伝達する過負荷保護部160とを備えるものとして説明したが、これに限定されず、環状搬送機構100は物品の着脱が可能であり、作業エリアWA及び殺菌エリアSAを循環可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0061】
上述した実施形態では、環状搬送機構100は、搬送検知部170を備えるものとして説明したが、これに限定されず、環状搬送機構100は、搬送検知部170を備えないものとしても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 紫外線殺菌装置
21 第1天板
22 第1側板
23 仕切り板
24 背面板
25 第2天板
26 第2側板
30 紫外線殺菌部
32 紫外線殺菌灯
34 蛍光灯器具
40 空気拡散部
50 存在検知部
52 存在検知センサ
100 環状搬送機構
110 ローラーチェーン
112 L字型プレート
120 保持部
122 フック
130 チェーン駆動部
140 モータ
150 スプロケット
152 スプロケット駆動軸
155 従動スプロケット
160 過負荷保護部
161 駆動伝達軸
162 駆動力調整用カラー
163 超たわみ圧縮ばね
164 金属ディスク
165 樹脂ディスク
166 駆動力伝達ディスク
170 搬送検知部
172 光電センサ
180 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7