(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028456
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】農作業支援システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220208BHJP
A01F 15/08 20060101ALI20220208BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01F15/08 R
A01B69/00 303
A01M7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131865
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
【テーマコード(参考)】
2B043
2B121
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA08
2B043BA09
2B043BB07
2B043BB11
2B043BB20
2B043DA17
2B043EA06
2B043EA31
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC14
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE06
2B121AA19
2B121CB02
2B121CB31
2B121EA26
(57)【要約】
【課題】本発明は、雑草の混入を少なくすることを目的とする。
【解決手段】作業判定部と出力部を備え、作業マップデータは、少なくとも圃場形状および前記圃場内の雑草繁殖領域を経度緯度情報と紐づけたデータであり、前記作業判定部は、前記作業マップデータを利用し、GNSS測位情報を用いて前記雑草繁殖領域に農作業機が位置するか、入るか、または出るか、を判定し、前記出力部は、前記作業判定部が、前記雑草繁殖領域に前記農作業機が位置するかまたは入ると判定した場合に、作業者または前記農作業機の制御システムに報知信号または前記農作業機に作業を中断・再開するための自動制御信号を出力することを特徴とする農作業支援システムとすることで課題を解決した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業判定部と出力部を備え、
作業マップデータは、少なくとも圃場形状および前記圃場内の雑草繁殖領域を経度緯度情報と紐づけたデータであり、
前記作業判定部は、前記作業マップデータを利用し、GNSS測位情報を用いて前記雑草繁殖領域に農作業機が位置するか、入るか、または、出るか、を判定し、
前記出力部は、前記作業判定部が、前記雑草繁殖領域に前記農作業機が位置するかまたは入ると判定した場合に、作業者または前記農作業機の制御システムに報知信号または前記農作業機に作業を中断・再開するための自動制御信号を出力することを特徴とする農作業支援システム。
【請求項2】
前記農作業機の進行方向および進行速度を検出する検出器を備え、
前記作業判定部は、前記作業マップデータに基づき、GNSS測位情報を用いて、前記進行方向および前記進行速度から、前記雑草繁殖領域に前記農作業機が入るまたは出る時間を予測し、
前記作業判定部は、前記農作業機が入るまたは出る時間の前に、前記報知信号または前記自動制御信号を出力することを特徴とする
請求項1記載の農作業支援システム。
【請求項3】
前記GNSS測位情報に加えて慣性誘導測位情報を用いる請求項1または請求項2に記載の農作業支援システム。
【請求項4】
さらに、走行支援部を備え、
前記走行支援部は、作業者または前記農作業機の前記制御システムに対し、現在位置から前記雑草繁殖領域への誘導情報をリアルタイムで報知する機能、または、前記農作業機に対し現在位置から前記雑草繁殖領域へ自動走行をするため誘導情報を制御信号として出力する機能を有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の農作業支援システム。
【請求項5】
さらに、前記走行支援部は、
前記雑草繁殖領域が前記作業マップデータ上に複数存在している場合は,前記現在位置から効率的にすべての前記雑草繁殖領域を巡回できるような前記誘導情報を設定するものであり、
一つの前記雑草繁殖領域内での作業終了情報を受け取ると、設定された前記誘導情報に基づいて次に作業すべき前記雑草繁殖領域へ誘導する機能を備えた請求項4に記載の農作業支援システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の農作業支援システムを備えた農作業機。
【請求項7】
前記農作業機が、ロールベーラ、牧草集草機、牧草刈取機、薬剤散布機または油圧ショベルのいずれかであることを特徴とする請求項6記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機により行われる牧草に関する作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、牧草を刈り取り、乾燥した牧草を集草しウインドローを作り、ウインドローとなった牧草を円筒状にした上で、これをラップして発酵させることが主流となっている。
このことに関して、特許文献1には、回転自在の円板の外周に回転しながら牧草の刈り取りを行う刈取刃を備えた牧草刈取機が記載されている。また、特許文献2には、刈り取られ圃場に放置された牧草を集草する牧草集草機が記載されている。さらに、特許文献3には、集草された牧草を取り込みロール状のベールに圧縮してロールベールとするロールベーラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-58412号公報
【特許文献2】実公平4-44041号公報
【特許文献3】特開平9-224467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロールベールを生産するに際しては雑草の扱いを如何にするかということが深刻な問題となる。例えば、多年草雑草であるギシギシ(日本原産種であるギシギシやエゾノギシギシに加えて、外来種である繁殖力の強いアレチギシギシなど)は牧草地にも進入する。このギシギシにはタンニンやシュウ酸が含まれ、家畜が嗜好せず、食べなくなるのである。従来は、一定程度のギシギシがロールベールに混入しても止むなしとして、これを許容するか、余りにも雑草が多い場合には、圃場の表土層と深層を天地返しする対応に迫られることになるが、当然に多くの労力が求められるものであった。
本発明は、雑草の混入を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、作業判定部と出力部を備え、作業マップデータは、少なくとも圃場形状および前記圃場内の雑草繁殖領域を経度緯度情報と紐づけたデータであり、前記作業判定部は、前記作業マップデータを利用し、GNSS測位情報を用いて前記雑草繁殖領域に農作業機が位置するか、入るか、または、出るか、を判定し、前記出力部は、前記作業判定部が、前記雑草繁殖領域に前記農作業機が位置するかまたは入ると判定した場合に、作業者または前記農作業機の制御システムに報知信号または前記農作業機に作業を中断・再開するための自動制御信号を出力することを特徴とする農作業支援システムとしたことで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、牧草に雑草が混入する量を少なくすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】空撮画像から作業マップデータを作成する工程を説明する概念図
【
図2】本発明の農作業支援システムの実施例について全体構成を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔実施例1〕
本実施例は、農作業支援システム1をロールベーラ(農作業機30)に対して用いた例である。
【0009】
図1は、空撮写真40から作業マップデータ45を作成する工程を説明する概念図である。空撮は飛行機、ドローン、ヘリコプター、衛星等で行われ、画像解析等がなされる。この中には、ギシギシ等の雑草が多く茂っている領域が含まれている。
画像解析により、これらの領域は解析され、位置情報、雑草繁殖領域452が重ね合わされた作業マップデータ45が作成される。或いは、画像解析に依らずともマップ作成者の目視により経験的に雑草が生えていると判断できる領域について画像編集ソフトで対象領域についてのレイヤーを設定するようにしてもよい。このように作成された例が作業マップデータ45であり、
図1に示した作業マップデータ45には、圃場形状451に、雑草繁殖領域452として左上の矩形部や右下部の楕円部の箇所が載せられている。作業マップデータ45の実態は、圃場形状451と雑草繁殖領域452が、経度緯度情報と紐づけられているデータである。
【0010】
このような農作業支援システム1は、実施例として示した一つの装置のように実体物として存在してもよいが、ソフトウェア上のモジュールとして存在してもよく、農作業機30が備えた通信部を介してネットワークで接続されたものであってもよい。ネットワークで接続されている場合は、農作業支援システム1として機能するのであればネットワークに存在すればよく、農作業機30に搭載されている必要もない。
なお、本実施例では、注意喚起画面等を表示するために、ディスプレイ11(
図2参照)を備えるものであるが、自動制御信号186を農作業機30に搭載されている制御システム31に出力して自動化を図る態様であればディスプレイ11は必須の構成とはならなくなるし、また、農作業機30が備えるディスプレイ11に対して出力することで注意喚起画面等を表示することも可能である。
【0011】
図2は、本発明の実施例である農作業支援システム1の全体構成を示す概念図である。農作業支援システム1は、非常にコンパクトに構成されており、農作業機30の運転席に付属品(図示していない吸盤等)を介して設置できるようになっている。
また、中央には、各種設定や作業状況等の各種情報が表示されるディスプレイ11を備えている。ディスプレイ11は、農作業中、GNSS測位情報185を受けて農作業機30の進行方向や速度を表示し、作業を補助する。また、ディスプレイ11は、作業判定部181から出力される作業の中断を促すための報知信号187を受けて、注意喚起画面等を作業者に報知(表示)する。
表示内容の切り替え、各種設定は、ディスプレイ11のソフトキーでなされてよいが、農作業支援システム1にハードキー(図示していない)を設けて、表示内容の切り替えや各種設定を行うようにしてもよい。
【0012】
農作業支援システム1は、入出力端子である接続端子12を備えている。接続ケーブル16を介して、GNSS接続端子13にGNSSアンテナ21を備えたGNSS受信装置20を接続できるようになっている。GNSSとしては、GPSが代表的であるが、GPSに加えてQZSS(愛称「みちびき」)などを受信できるGNSS受信装置20を接続端子12に接続してもよい。GNSS測位情報185は、接続端子12を介して、制御部18へ送られるようになっている・
【0013】
また接続ケーブル16は、農作業機30の制御システム31の接続端子14を備えており、農作業機30に設けられた農作業機30の制御システム31に接続でき、作業判定部181および接続端子12から出力される自動制御信号186を農作業機30の制御システム31に送ることができる。
農作業機30の制御システム31は、農作業機30の走行制御(車速、操向等)を制御することや、ディスプレイ11に車速や走行支持を表示し作業者を補助する。それと同時に、例えばロールベーラなどの農作業機30の動作を中断・再開制御する。しかしながら、農作業機30の制御システム31は、一つのまとまったコントローラである必要はない。トラクターにけん引されたロールベーラのような農作業機30においては、トラクター側に走行制御(車速、操向等)を制御するコントローラを置き、ロールベーラに農作業の動作を制御するコントローラを置いてもよく、通信ができるように相互に接続されている。制御の目的に適したコントローラが複数設けられるのが普通である。
農作業機30側に複数の制御システム31が設けられているとしても、接続ケーブル16を用いて農作業機30の制御システム31の接続端子14と接続しさえすれば、農作業支援システム1が行う制御に必要なすべての農作業機30の制御システム31と接続が完了するようになっている。
本実施例では、このような接続を可能とする、CAN(Controller AreaNetwork)通信を用いているが、これに限られるものではない。
【0014】
農作業支援システム1には、USB端子15が設けられており、雑草繁殖領域452を判別するための作業マップデータ45(
図1)などの情報が取り込めるようになっている。しかし、これらの情報を取り込むのに、ネットワークを介して取り込むこともでき、USB端子15は必須なものではない。
【0015】
図3は、制御部18の説明図である。
作業モードにおいては、ディスプレイ11には、作業の中断を促すための注意喚起画面等が表示されるようになっている。GNSS受信装置20から出力されるGNSS測位情報185が農作業支援システム1に入力されるとともに、作業判定部181に送られる。
作業判定部181は、作業マップデータ45を記憶部182から呼び出す。接続端子12から常時入力されるGNSS測位情報185を用いて、作業を中断・再開する自動制御信号186を農作業機30の制御システム31に出力する。
以上の制御部18の説明は、実施例の態様であったが、何らかの形で作業マップデータ45を利用すれば本発明に含まれる。例えば、ネットワークの作業マップデータ45を利用する場合は、記憶部182に作業マップデータ45を記憶させておくことは必須ではない。作業マップデータ45を作業判定部181どのように利用できるようにするかは任意である。また、作業判定部181は、実施例では制御部18のモジュールとして設けたが、制御部18というモジュールの中に作業判定部181が内包されている必要もない。
【0016】
作業判定部181が雑草繁殖領域452である若しくは雑草繁殖領域452に接近したと判断し、作業の中断を促すための注意喚起画面等がディスプレイ11に表示された場合に、作業者が作業中止キー17を押下すると、ロールベーラ(農作業機30)の収草機構(ウインドローとなった牧草をロールベーラ本体に取り込む機構)がリフトアップされて雑草が多く含まれた牧草の取り込み作業が中断されることになる。その後、再度、作業中止キー17を押下すると、ロールベーラ(農作業機30)の収草機構がリフトダウンされて牧草の取り込み作業が再開される。
また、収草機構のリフトアップについてトラクター等が作業機を跳ね上げるためのトラクター等が本来的に備えるスイッチを操作するといった対応を取ることもできる。ピックアップを持ち上げることで牧草取り込みを減少させることもできる。
このようにして、牧草取り込み作業の効率的な支援を図ることができる。
【0017】
ロールベーラ(農作業機30)の牧草の取り込み作業を自動化する態様について説明する。作業判定部181が、GNSS測位情報185に基づいて雑草繁殖領域452である若しくは雑草繁殖領域452に接近したと判断すると、出力部でもある接続端子12から、自動制御信号186を農作業機30の制御システム31に対して出力する。これを受けて、制御システム31は、自動的にロールベーラの収草機構をリフトアップさせることによって、取り込み作業の中断がされる。
作業判定部181は農作業機が雑草繁殖領域452から抜け出ることも判断できるため、自動制御信号186によって自動的にロールベーラの収草機構をリフトダウンさせることもでき、これによって、牧草の取り込み作業の再開がされる。
収草機構のリフトアップ、リフトダウンには多少のタイムラグが伴うため、雑草繁殖領域452に農作業機30が入るまたは出る時間を予測して、リフトアップまたはリフトダウンに要する時間(当然にアップとダウンとでは異なる時間となる)を見込んで、前もって自動制御信号186が出力されるようになっている。
時間の予測は、農作業機30の進行方向および進行速度に基づいて行われる。GNSS測位情報185から、進行方向および進行速度を検出してもよいし、これとは別に、検出器を備えてもよい。
【0018】
このようにして、作業者に作業の中断を促すための報知信号187または作業を中断・再開する自動制御信号186を出力する農作業支援システム1であれば、雑草の混入が少なく、家畜の嗜好性の良いロールベールを効率よく生産することができる。
【0019】
〔実施例2〕
実施例1は、農作業支援システム1をロールベーラに用いた例であるが、実施例2では、農作業支援システム1を、ウインドローを作る牧草集草機(農作業機30)に適用した例である。
作業判定部181が雑草繁殖領域452である若しくは雑草繁殖領域452に接近したと判断し、作業の中断を促すための注意喚起画面等が表示された場合に、作業者は、集草装置の動作を停止させて、作業機械をリフトアップさせた状態で、問題となる箇所を通過するように走行させる。
この後の作業段階において雑草が圃場に一部ウインドローとならず放置されたままとなるが、ウインドローとなり集草され密度が高められている牧草に対し、ウインドローとならずに圃場に散らばったままの領域の草をロールベーラが取り込んだとしても、牧草に含まれる雑草の割合は小さいことになる。
【0020】
このように、牧草集草機(農作業機30)に用いた場合であっても、雑草の混入が少なく、家畜の嗜好性の良いロールベールを効率よく生産することができる。
【0021】
〔実施例3〕
実施例3は、農作業支援システム1を牧草刈取機(農作業機30)に用いたものである。作業判定部181が雑草繁殖領域452である若しくは雑草繁殖領域452に接近したと判断し、作業の中断を促すための注意喚起画面等が表示された場合に、作業者は刈取作業を中断する。または、農作業支援システム1の接続端子12(出力部)から報知信号187または自動制御信号186を農作業機30の制御システム31に対して出力することで、自動的に刈取作業が中断される。
雑草繁殖領域452の牧草を一切刈り取らないため、雑草の混入が極めて少なく、家畜の嗜好性の良いロールベールを確実に生産することが可能となる。
【0022】
〔実施例4〕
実施例1~実施例3は、農作業支援システム1を活用し雑草を取り込まないことに主眼を置いてきた。ギシギシなどの多年草の雑草は、刈り取っても根が残っている限りまた生えてくる。また、年々根が太くなり繁殖力や成長力を増すため、牧草の生育を圧倒し妨げる。雑草繁殖領域452に対する積極的な対応も望まれている。実施例4では、農作業支援システム1を活用し、雑草繁殖領域452を小さく抑え込む、または、消滅させることに主眼を置く態様である。
例えば、農作業支援システム1を草刈機(農作業機30)に装着し、雑草がまだ成長しきっていない段階で、雑草繁殖領域452の草を刈り取ることで雑草の繁殖を抑えることもできる。雑草繁殖領域452が小さくなれば、圃場を有効に使えるようになる。
【0023】
さらに、薬剤散布機(スプレーヤ)を農作業機30とし、農作業支援システム1を装着すれば、雑草繁殖領域452だけ除草剤等の薬剤を散布することができ、雑草の繁殖を抑えることができる。
究極的な対策として、土作業機(例えば、油圧ショベル等の建設機械)に農作業支援システム1を搭載し、牧草が生える前に雑草繁殖領域452に限り天地返しを行えば、根本的な雑草対策となり得る。
このように、本発明でいう農作業機30とは、圃場に対して何らかの作業を行う機械を意味し、圃場に対して作業を行うのであれば建設機械等も含まれる。
【0024】
(走行支援部)
実施例4では、雑草繁殖領域452に対して前述のような作業を行う。雑草繁殖領域452の位置は、圃場を目視しただけではどこが雑草繁殖領域452か見分けがつかない。そこで、農作業支援システム1に走行支援部(図示せず)を搭載することが好ましい。
図4は、走行支援部の機能の説明図である。作業者によって農作業機30の現在位置1881がセットされる、あるいは、走行支援部が最も効率的に作業が行える初期位置を指定し、初期位置に農作業機30が到達する(現在位置1881に到達する)と、走行支援が開始される。農作業機30の位置を示すGNSS測位情報185が走行支援部へ送られる。
走行支援は主に2つの支援から成る。
第1の支援は、現在位置1881から、雑草繁殖領域452の作業開始点1892までの走行経路、方向もしくは距離などの誘導情報(誘導経路等)1891をリアルタイムでディスプレイ11に表示すること、または、農作業機30の制御システム31に対し現在位置1881から雑草繁殖領域452へ自動走行をするため誘導情報(誘導経路等)1891を制御信号として出力することである。
第2の支援は、雑草繁殖領域内452内の作業経路1893を支援すべく、経路、走行方向もしくは距離など誘導情報(作業経路等)1891を、リアルタイムでディスプレイ11に表示すること、または、農作業機30の制御システム31に対し雑草繁殖領域452内を作業するためにくまなく自動走行するための誘導情報(作業経路等)1891を制御信号として出力することである。誘導情報(作業経路等)1891の表示はさまざまであり得る。カーナビのように地図で表示したり、方向だけを表示したり、経路からのずれがわかるように表示するなどさまざまであり得る。
特に、雑草繁殖領域452が全く分からない、牧草が生える前に作業を行う場合(天地返しを行う油圧ショベルなど)には無くてはならない機能となる。
【0025】
(ディスプレイ等への表示)
図5は、誘導情報表示態様の説明図である。ディスプレイ11に表示されている農作業機30を表す図形は、GNSS測位情報185からもたらされる現在の農作業機30の位置を示す。そして、太線で表される誘導情報(移動経路等)1891からのずれとして農作業機30の現在位置を表示している。
誘導情報(移動経路等)1891どおりに農作業機30が移動している場合、ディスプレイ11には、
図5(A)のように農作業機30を表す図形が、太線で表される誘導情報(移動経路等)1891の中心に位置するように表示される。同時に雑草繁殖領域452までの距離が50mと表示されている。この距離情報によって、作業者は農作業機30を作業状態とする(例えば、薬剤を散布する等)の準備を始める。
図5(B)は、太線で表される誘導情報(移動経路等)1891から位置がずれて走行している場合を示す。さらに、
図5(C)のように、太線で表される誘導情報(移動経路等)1891から方向も位置もずれている場合を示す。作業者は、太線の誘導情報(移動経路等)1891から、正しい方向に操向しているかどうかを判断できる。
実施例では、誘導情報(移動経路等)1891の報知をディスプレイで行ったが、音声で行ってもよく、報知手段は適宜である。
また、ディスプレイ11等への表示形態は、これに限られるものではなく、市販のカーナビゲーションシステムで使用されているような、矢印などの報知手段を併せて採用してもよい。走行経路、方向もしくは距離などの誘導情報(移動経路等)1891が報知できるのであれば、表示形態を問わない。
【0026】
(走行支援部の追加機能)
また、走行支援部(図示せず)の追加機能として、
図4のように複数の雑草繁殖領域452が作業マップデータ45に複数存在している場合は、現在位置から効率的にすべての雑草繁殖領域452を巡回できるような誘導情報(移動経路等)1891を設定する機能を備えてもよい。走行支援部は、一つの雑草繁殖領域452内での作業終了情報を受け取ると、設定された誘導情報(移動経路等)1891に基づいて次に作業すべき雑草繁殖領域452へ誘導する。雑草繁殖領域452内の走行中、走行支援部は作業経路1893を示す誘導情報(作業経路等)1891に従って農作業機30を誘導する。そして、走行支援部がGNSS測位情報等から作業終了点1894に到達したことを表す作業終了情報を受け取ると、巡回できるように設定された誘導情報(移動経路等)1891に基づいて次に作業すべき雑草繁殖領域452の作業開始点1892へ誘導する機能を備える。
そして、走行支援部(図示せず)は、不定形で形状も大きさも異なる雑草繁殖領域452をできるかぎり短い時間で作業を終え、かつ、次の雑草繁殖領域452へと向かう距離も短くするような、雑草繁殖領域452内の誘導情報(作業経路等)1891を選び、作業開始1892と作業終了点1894を設定する。
つまり、本発明の現在位置から「効率的に」すべての雑草繁殖領域452を巡回できるような誘導情報(移動経路等)1891とは、時間的な効率や距離的な効率のいずれも含む概念である。
雑草繁殖領域452内での誘導情報(作業経路)1891は、単に走行距離が短いというだけではなく、時間を要するターンする回数や、次の雑草繁殖領域452へのつながりも考慮して時間的に効率的になるように決めてもよい。また、作業者の負担を減らす、すなわち、距離や時間は長くなっても、ターンする回数が減るような効率であってもよい。
このように、通常の農作業のように圃場全体にわたり作業するのと異なり、雑草繁殖領域452のみを作業するため、走行支援部は、農作業の効率をアップするのに貢献する。
【0027】
以上、本発明に係る実施形態の農作業支援システム1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造やシステム構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0028】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 農作業支援システム
11 ディスプレイ
12 接続端子
13 GNSS接続端子
14 農作業機コントローラ接続端子
15 USB端子
16 接続ケーブル
17 作業中止キー
18 制御部
181 作業判定部
182 記憶部
185 GNSS測位情報
186 自動制御信号
187 報知信号
1881 現在位置
1891 誘導情報(移動経路等)または誘導情報(作業経路等)
1892 作業開始点
1893 作業経路
1894 作業終了点
20 GNSS受信装置
21 GNSSアンテナ
30 農作業機
31 制御システム
40 空撮写真
45 作業マップデータ
451 圃場形状
452 雑草繁殖領域