(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028462
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131874
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】小池 優
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AR02
4F215AR09
4F215VA02
4F215VD10
4F215VD11
4F215VD19
4F215VD21
4F215VK02
4F215VL08
4F215VL11
4F215VP02
4F215VP11
4F215VP20
4F215VR01
(57)【要約】
【課題】インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造する。
【解決手段】インナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を成型ドラム10に順次巻き付け、ローラ31によりカーカスプライ4を外面側から押圧しつつカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。ローラ31の送りピッチを、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナと、前記インナーライナ上に幅方向に離間して配置される両側のチェーファと、前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅広に形成されて前記インナーライナ及び前記両側のチェーファ-上に配置されるカーカスプライとを成型ドラムに順次巻き付け、
ローラにより前記カーカスプライを外面側から押圧しつつ前記ローラを前記カーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで前記成型ドラムを回転させながら移動させ、
前記ローラを移動させる前記ローラの送りピッチを、前記カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、前記チェーファの内端部を含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において小さくする、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記チェーファは、スチールチェーファである、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記チェーファと前記カーカスプライの間に前記チェーファの幅方向内端部を覆う接合テープが配置され、
前記ローラの送りピッチを、前記カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、前記接合テープを含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において小さくする、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記ローラにより前記カーカスプライを押圧する押圧力は、前記カーカスプライの幅方向中央側に比して、前記チェーファの内端部を含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において増加される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅広且つ前記カーカスプライの両側の幅方向外端部より幅狭に形成された第1ローラにより前記カーカスプライを外面側から押圧し、
前記第1ローラにより前記カーカスプライが押圧された後に、第2ローラにより前記カーカスプライを外面側から押圧しつつ前記第2ローラを前記カーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで前記成型ドラムを回転させながら移動させ、
前記第2ローラを移動させる前記第2ローラの送りピッチを、前記カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、前記チェーファの内端部を含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において小さくし、
前記第1ローラは、前記第2ローラより硬度が低く形成される、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
インナーライナと、前記インナーライナ上に幅方向に離間して配置される両側のチェーファと、前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅広に形成されて前記インナーライナ及び前記両側のチェーファ-上に配置されるカーカスプライとが順次巻き付けられる成型ドラムと、
前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅狭に形成されたローラとを備え、
前記成型ドラムに順次巻き付けられた前記インナーライナ、前記両側のチェーファ及び前記カーカスプライを前記ローラにより外面側から押圧しつつ前記ローラを前記カーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで前記成型ドラムを回転させながら移動させ、
前記ローラを移動させる前記ローラの送りピッチを、前記カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、前記チェーファの内端部を含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において小さくする、空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造では、インナーライナ及びカーカスプライなどのタイヤ構成部材が成型ドラムに巻き付けられて円筒状のカーカスバンドが成型される。成型されたカーカスバンドは、両端部にビードが組み付けられると共にビード周りに折り返され、円筒状のグリーンケースが成型される。一方、ベルト及びトレッドなどのタイヤ構成部材が別の成型ドラムに巻き付けられて円筒状のトレッドバンドが成型される。
【0003】
そして、トレッドバンドがグリーンケースの径方向外側に搬送された後に、グリーンケースが径方向外側に膨張されてトレッドバンドの内面に結合され、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは加硫成型装置によって加硫成型され、空気入りタイヤが製造される。
【0004】
特許文献1には、空気入りタイヤを製造するときに、インナーライナとして、ブチルゴムの幅方向両側にチェーファを配置すると共にブチルゴム及び両側のチェーファを覆うようにタイガムを圧着したインナーライナを用いることが開示されている。
【0005】
特許文献1にはまた、ブチルゴムとチェーファとの間に形成される隙間を塞ぐことを意図して、インナーライナのタイヤ周方向両端部が接合されたジョイント部においてブチルゴムとチェーファとの間を含む部分を押圧ローラによって押圧することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気入りタイヤを製造するときに、インナーライナとカーカスプライとの間において幅方向両側にチェーファ、例えばスチールチェーファが配置される場合がある。この場合、成型ドラムにインナーライナ、両側のチェーファ及びカーカスプライを順次巻き付けてカーカスバンドを成型するときに、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まり、空気入りタイヤにエア溜まりが発生するおそれがある。特に、スチールチェーファが配置される場合、このような問題がより顕著になり得る。また、空気入りタイヤを製造する際には、生産性良く製造することが望まれる。
【0008】
本発明は、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、インナーライナと、前記インナーライナ上に幅方向に離間して配置される両側のチェーファと、前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅広に形成されて前記インナーライナ及び前記両側のチェーファ-上に配置されるカーカスプライとを成型ドラムに順次巻き付け、ローラにより前記カーカスプライを外面側から押圧しつつ前記ローラを前記カーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで前記成型ドラムを回転させながら移動させ、前記ローラを移動させる前記ローラの送りピッチを、前記カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、前記チェーファの内端部を含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において小さくする、空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0010】
本構成により、空気入りタイヤを製造する際に、ローラにより、成型ドラムに順次巻き付けられたインナーライナ、両側のチェーファ及びカーカスプライを外面側から押圧しつつローラをカーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラムを回転させながら移動させる。
【0011】
ローラの送りピッチは、カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファの内端部を含むカーカスプライの幅方向所定範囲において小さくされるので、ローラの送りピッチが小さくされない場合に比して、ローラの移動が少なく、チェーファの内端部によってカーカスプライに形成される段差部近傍においてローラによってインナーライナ及びチェーファに沿ってカーカスプライを径方向に変形させやすい。ローラの送りピッチは、成型ドラムが一回転するときの成型ドラムの軸方向、すなわちカーカスプライ4の幅方向へのローラの移動距離である。
【0012】
これにより、ローラをカーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで移動させてインナーライナとカーカスプライとの間に存在するエアをカーカスプライの幅方向外側に移動させて排出するとき、インナーライナとカーカスプライとの間に存在するエアをチェーファの内端部より幅方向外側に移動させやすく、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを抑制することができる。
【0013】
また、ローラの送りピッチは、カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファの内端部を含むカーカスプライの幅方向所定範囲において小さくされるので、カーカスプライの幅方向中央側又は幅方向外端部側においてもローラの送りピッチが小さくされる場合に比して、カーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部までローラを移動させるローラの送り時間を短縮し、生産性良く製造することができる。
【0014】
したがって、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0015】
前記チェーファは、スチールチェーファであり得る。
【0016】
本構成により、インナーライナとカーカスプライとの間にスチールチェーファが配置される場合に、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを有効に抑制することができる。ナイロンチェーファに比してエアが溜まりやすいスチールチェーファが配置される場合に、本発明の効果が好適に発揮される。
【0017】
前記チェーファと前記カーカスプライの間にチェーファの幅方向内端部を覆う接合テープが配置され 前記ローラの送りピッチを、カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、接合テープを含むカーカスプライの幅方向所定範囲において小さくすることが好ましい。
【0018】
本構成により、接合テープによってチェーファとカーカスプライとの接合強度を高めると共に、インナーライナとカーカスプライの間に配置されるチェーファの内端部において空気入りタイヤのチェーファによる強度変化を抑制することができる。チェーファとカーカスプライの間に接合テープが配置される場合においても、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0019】
前記ローラにより前記カーカスプライを押圧する押圧力は、前記カーカスプライの幅方向中央側に比して、前記チェーファの内端部を含むカーカスプライの幅方向所定範囲において増加され得る。
【0020】
本構成により、ローラによる押圧力は、カーカスプライの幅方向中央側に比して、チェーファの内端部を含むカーカスプライの幅方向所定範囲において増加されるので、チェーファの内端部によってカーカスプライに形成される段差部近傍においてローラによってインナーライナ及びチェーファに沿ってカーカスプライをより径方向に変形させ、チェーファの内端部近傍にエアが溜まることをより抑制することができる。
【0021】
前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅広且つ前記カーカスプライの両側の幅方向外端部より幅狭に形成された第1ローラによりカーカスプライを外面側から押圧した後に、第2ローラによりカーカスプライを外面側から押圧しつつ第2ローラをカーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラムを回転させながら移動させるようにしてもよい。前記第2ローラは、カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファの内端部を含むカーカスプライの幅方向所定範囲において第2ローラの送りピッチを小さくし、前記第1ローラは、前記第2ローラより硬度が低く形成され得る。
【0022】
本構成により、第1ローラは第2ローラより硬度が低く形成されるので、第1ローラによってインナーライナ及びチェーファに沿ってカーカスプライを径方向に変形させやすくインナーライナとカーカスプライとの間に存在するエアを第1ローラによってチェーファの幅方向内端部より幅方向外側に移動させやすい。第1ローラはカーカスプライの両側の幅方向外端部より幅狭に形成されるので、カーカスプライの両側の幅方向外端部より幅広に形成される場合に比して、インナーライナとカーカスプライとの間に存在するエアを第1ローラによってチェーファの幅方向内端部より幅方向外側に移動させやすい。さらに、第2ローラによってカーカスプライの幅方向外端部より幅方向外側に移動させて排出することができ、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることをさらに抑制することができる。
【0023】
本発明はまた、インナーライナと、前記インナーライナ上に幅方向に離間して配置される両側のチェーファと、前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅広に形成されて前記インナーライナ及び前記両側のチェーファ-上に配置されるカーカスプライとが順次巻き付けられる成型ドラムと、前記両側のチェーファの幅方向内端部より幅狭に形成されたローラとを備え、前記成型ドラムに順次巻き付けられた前記インナーライナ、前記両側のチェーファ及び前記カーカスプライを前記ローラにより外面側から押圧しつつ前記ローラを前記カーカスプライの幅方向中央側から幅方向外端部まで前記成型ドラムを回転させながら移動させ、前記ローラを移動させる前記ローラの送りピッチを、前記カーカスプライの幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、前記チェーファの内端部を含む前記カーカスプライの幅方向所定範囲において小さくする、空気入りタイヤの製造装置を提供する。
【0024】
本発明によれば、空気入りタイヤの製造方法に係る発明の効果が、空気入りタイヤの製造装置において発揮される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法及び製造装置によれば、インナーライナとカーカスプライとの間においてチェーファの内端部近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置の概略側面図。
【
図3】成型ドラムに巻回されたタイヤ構成部材を示す断面図。
【
図4】インナーライナ、チェーファ及びカーカスプライの巻回工程を説明するための説明図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る成型ドラムに巻回されたタイヤ構成部材を示す断面図。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る成型ドラムに巻回されたタイヤ構成部材を示す断面図。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置の概略側面図。
【
図11】第1ローラの押圧工程を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの製造では、成型ドラムにインナーライナ、両側のチェーファ及びカーカスプライが巻き付けられて円筒状のカーカスバンドが成型される。成型されたカーカスバンドは、別の成型ドラムに移動されて保持された後に、カーカスバンドの両側部にビードが組み付けられると共にビード周りに折り返され、サイドウォールゴムが巻き付けられて円筒状のグリーンケースが成型される。一方、また別の成型ドラムにベルト、トレッドゴムが順に巻き付けられて、円筒状のトレッドバンドが成型される。
【0028】
そして、トレッドバンドがグリーンケースの径方向外側に搬送された後に、グリーンケースが径方向外側にトロイダル状に膨張されてトレッドバンドの内面に結合され、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは加硫成型装置によって加硫成型され、空気入りタイヤが製造される。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置の概略側面図である。
図2は、空気入りタイヤの製造装置の概略正面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤを製造するための製造装置1は、成型ドラムにインナーライナ、両側のチェーファ及びカーカスプライを含むタイヤ構成部材を順次巻き付けて円筒状のカーカスバンドを成型するものである。
【0030】
製造装置1は、インナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4が順次巻き付けられる成型ドラム10と、成型ドラム10を回転駆動させるドラム駆動装置11と、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を順次供給する供給装置20とを備えている。
【0031】
図3は、成型ドラムに巻回されたタイヤ構成部材を示す断面図である。供給装置20によって、
図3に示すように、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4が順次巻き付けられて、円筒状のカーカスバンド5が形成される。
【0032】
図4は、インナーライナ、チェーファ及びカーカスプライの巻回工程を説明するための説明図である。
図4では、タイヤ構成部材を径方向に離間して示している。
図4に示すように、空気入りタイヤを製造する際には先ず、成型ドラム10に、インナーライナ2が供給されて、成型ドラム10にインナーライナ2が円筒状に巻回される。
【0033】
次に、成型ドラム10に、幅方向に離間して配置される両側のチェーファ3が同時に供給されて、インナーライナ2上に両側のチェーファ3が円筒状に巻回される。両側のチェーファ3はそれぞれ、少なくとも幅方向内端部3aがインナーライナ2の幅方向外端部2aより幅方向内側に位置するように形成される。
【0034】
その後に、成型ドラム10に、カーカスプライ4が供給されて、インナーライナ2及び両側のチェーファ3上にカーカスプライ4が円筒状に巻回される。カーカスプライ4は、両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅広に形成され、両側の幅方向外端部4aが両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に位置するように形成される。インナーライナ2、チェーファ3及びカーカスプライ4は、カーカスプライ4の幅方向中心線L1に対して対称に形成されている。
【0035】
本実施形態では、カーカスプライ4は、両側の幅方向外端部4aが両側のチェーファ3の幅方向外端部3bより幅方向内側に位置するように形成される。インナーライナ2は、両側の幅方向外端部2aが両側のチェーファ3の幅方向外端部3bより幅方向外側に位置するように形成される。
【0036】
両側のチェーファ3は、インナーライナ2とカーカスプライ4との間に幅方向両側に離間して配置される。両側のチェーファ3はそれぞれ、間隔をあけて並設した複数本のスチールコードをゴムで被覆した帯状のシートであるスチールチェーファである。両側のチェーファ3は、スチールチェーファであるが、有機繊維コードを用いたナイロンチェーファを用いることも可能である。
【0037】
図3に示すように、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4が順次巻き付けられるとき、カーカスプライ4の幅方向中央側は、両側のチェーファ3間においてインナーライナ2に重ねられ、カーカスプライ4の両側の幅方向外側はそれぞれ、インナーライナ2に重ねられた両側のチェーファ3に重ねられる。このため、カーカスプライ4は、両側のチェーファ3によって幅方向中央側と両側の幅方向外側との間にそれぞれ段差部が形成される。
【0038】
ドラム駆動装置11は、成型ドラム10をドラム中心軸C1周りに回転駆動させるモータ11が用いられる。ドラム駆動装置11として、モータに代えて成型ドラム10を回転駆動させる他のドラム駆動装置を用いることも可能である。ドラム駆動装置11は、成型ドラム10の回転速度を変更できるようになっている。
【0039】
図1に示すように、供給装置20は、インナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4をそれぞれガイド部21によって案内して成型ドラム10に供給するように構成されている。
【0040】
製造装置1はまた、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を外面側から押圧する押圧装置30を備えている。
【0041】
押圧装置30は、
図1及び
図2に示すように、円筒状に形成された一対のローラ31と、一対のローラ31を回転可能にそれぞれ支持するシャフト32と、シャフト32をそれぞれ成型ドラム10の径方向及び軸方向に移動させる移動機構33とを備えている。移動機構33は、シャフト32を固定して支持する支持部34を備え、支持部34を成型ドラム10の径方向及び軸方向に移動させてローラ31を成型ドラム10の軸方向及び径方向に移動可能に構成されている。
【0042】
移動機構33として、例えばモータ及びボールネジ等を含み、モータの回転をボールネジを介して径方向移動及び軸方向移動に変換して支持部34を成型ドラム10の径方向及び軸方向に移動させる移動機構などが用いられる。
【0043】
ローラ31は、移動機構33によって、
図1の実線で示す径方向外側位置と
図1の二点鎖線で示す径方向内側位置との間で成型ドラム10の径方向に移動可能に構成されると共に、
図2の実線で示す軸方向内側位置と
図2の二点鎖線で示す軸方向外側位置との間で成型ドラム10の軸方向に移動可能に構成されている。ローラ31はそれぞれ、径方向内側位置において成型ドラム10に巻回されたカーカスプライ4を外面側から押圧しつつ軸方向内側位置から軸方向外側位置に移動するようになっている。
【0044】
移動機構33は、ローラ31を成型ドラム10の軸方向へ移動させるローラ31の移動速度及びローラ31によりカーカスプライ4を外面側から押圧する押圧力を変更できるようになっている。
【0045】
ローラ31は、硬度が48HDA以上52HDA以下に形成される。ローラ31の硬度が48HDA未満である場合、ローラ31がカーカスプライ4に圧着しにくくなってインナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアがチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動しにくくなる。また、しわなどの変形やローラ31の損傷を引き起こしやすくなる。一方、ローラ31の硬度が52HDAより大きい場合、ローラ31がチェーファ3の幅方向内端部3aにおいてはねてチェーファ3の幅方向内端部3aに沿って押圧しにくくインナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアがチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動しにくくなる。
【0046】
硬度は、JIS K7215に規定されるタイプAデュロメータを用い、JIS K7311に基づいて測定した硬さ(HDA)である。ローラ31は、例えば無発泡ウレタン樹脂などを用いて形成される。ローラ31は、例えば、外径が135~145mm、幅が12~20mmのものを用いることができる。
【0047】
図5は、ローラの押圧工程を説明するための説明図である。
図5に示すように、押圧装置30のローラ31はそれぞれ、両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅狭に、具体的には両側のチェーファ3の幅方向内端部3a間の二分の一より幅狭に形成されている。
【0048】
押圧装置30は、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4に対して、一対のローラ31を幅方向内側位置において成型ドラム10の径方向内側に移動させ、カーカスプライ4をローラ31により外面側から押圧する。
【0049】
ローラ31の軸方向内側位置は、ローラ31の軸方向内端部がカーカスプライ4の幅方向中心線L1となる位置であることが好ましいが、ローラ31の軸方向外端部が少なくとも後述する
図4に示すチェーファ3の内端部3aよりカーカスプライ4の幅方向内側の第1所定位置P1よりカーカスプライ4の幅方向内側になるように設定される。
【0050】
そして、カーカスプライ4をローラ31により外面側から押圧しつつ、ローラ31をチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側であるカーカスプライ4の幅方向中央側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aまで、具体的にはカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。
【0051】
成型ドラム10を回転させながら、一方のローラ31によりカーカスプライ4を外面側から押圧しつつ一方のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側からカーカスプライ4の一方の幅方向外端部4aより幅方向外側に移動させると共に、他方のローラ31によりカーカスプライ4を外面側から押圧しつつ他方のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側からカーカスプライ4の他方の幅方向外端部4aより幅方向外側に移動させる。
【0052】
ローラ31を幅方向内側位置からカーカスプライ4の幅方向外側に移動させるとき、
図5に示すように成型ドラム10を一定の回転速度R1で回転させながら、ローラ31を、カーカスプライ4の幅方向中央側では移動速度V1で移動させ、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側との間であるチェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲では移動速度V2で移動させ、カーカスプライ4の幅方向外端部側では移動速度V3で移動させる。
【0053】
図4に示すように、カーカスプライの幅方向中央側としてカーカスプライ4の幅方向中心線L1からカーカスプライ4の幅方向外側に距離X1の第1所定位置P1までの範囲が設定され、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側との間であるカーカスプライ4の幅方向所定範囲として第1所定位置P1からカーカスプライ4の幅方向中心線L1からカーカスプライ4の幅方向外側に距離X2の第2所定位置P2までの範囲が設定され、カーカスプライ4の幅方向外端部側の範囲として第2所定位置P2からカーカスプライ4の幅方向中心線L1からカーカスプライ4の幅方向外側に距離X3の第3所定位置P3までの範囲が設定される。
【0054】
第1所定位置P1は、カーカスプライ4の幅方向中心線L1からカーカスプライ4の幅方向外側に距離X4のチェーファ3の内端部3aのある第4所定位置P4よりカーカスプライ4の幅方向内側に設定され、第2所定位置P2は、第4所定位置P4よりカーカスプライ4の幅方向外側に設定される。
【0055】
第1所定位置P1と第2所定位置P2とは、カーカスプライ4の幅方向において第4所定位置P4から等しい若しくはほぼ等しい距離に設定される。第4所定位置P4と第1所定位置P1との間の距離及び第4所定位置P4と第2所定位置P2との間の距離は、例えば25mm~35mmに設定される。カーカスプライ4の幅方向中心線L1からの距離X1,X2,X3,X4としてそれぞれ、例えば160mm、210mm、305mm、185mmが設定される。
【0056】
本実施形態では、ローラ31の移動速度は、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされ、ローラ31の移動速度V2は、ローラ31の移動速度V1及び移動速度V3に比して小さくされる。ローラ31の移動速度V1と移動速度V3とは、等しい速度に設定される。ローラ31の移動速度V3は、ローラ31の移動速度V1より低い速度に設定したり高い速度に設定したりすることも可能である。
【0057】
成型ドラム10は一定の回転速度R1で回転されるので、ローラ31をカーカスプライ4の幅方向に移動させるローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。ローラ31の送りピッチは、成型ドラム10が一回転するときの成型ドラム10の軸方向、すなわちカーカスプライ4の幅方向へのローラ31の移動距離である。
【0058】
ローラ31は、例えば16mmなどの幅W1に設定される。ローラ31の送りピッチは、例えば、ローラ31を移動速度V1で移動させるカーカスプライ4の幅方向中央側では9mmに設定され、ローラ31を移動速度V2で移動させるカーカスプライ4の幅方向所定範囲では3mmに設定され、ローラ31を移動速度V3で移動させるカーカスプライ4の幅方向外端部側では9mm設定される。
【0059】
ローラ31は、移動機構33によって成型ドラム10の径方向内側に、例えば0.3MPaなどの所定圧力で押圧される。ローラ31はそれぞれ、成型ドラム10を回転しつつ押圧され、カーカスプライ4に対してタイヤ周方向に少なくとも一周回転される。
【0060】
製造装置1はまた、ドラム駆動装置11、供給装置20及び押圧装置30などの作動を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、ドラム駆動装置11としてのモータ、押圧装置30の移動機構33などの作動を制御する。制御装置50は、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0061】
制御装置50は、成型ドラム10を回転駆動させつつ成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を順次供給し、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を順次巻き付ける。
【0062】
制御装置50はまた、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4をローラ31により外面側から押圧しつつローラ31をチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側に移動させる。
【0063】
前述したように、空気入りタイヤを製造する際には、製造装置1において、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4が順次巻き付けられ、カーカスバンド5が成型される。成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4に対し、ローラ31によりカーカスプライ4が外面側から押圧されつつローラ31がチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側に成型ドラム10が回転されながら移動される。
【0064】
本実施形態では、ローラ31がカーカスプライ4の幅方向外側に移動されるとき、ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。
【0065】
カーカスバンド5が成型されると、カーカスバンド5が別の成型ドラムに移動されて保持された後に、カーカスバンド5の両側部にビードが組み付けられると共にビード周りに折り返され、サイドウォールゴムが巻き付けられて円筒状のグリーンケースが成型される。一方、ベルト、トレッドゴムなどのタイヤ構成部材が更に別の成型ドラムに順に巻き付けられて、円筒状のトレッドバンドが成型される。
【0066】
そして、トレッドバンドがグリーンケースの径方向外側に搬送された後に、グリーンケースが径方向外側にトロイダル状に膨出されてトレッドバンドの内面に結合され、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは加硫成型装置によって加硫成型され、空気入りタイヤが製造される。
【0067】
本実施形態では、ローラ31がカーカスプライ4の幅方向外側に移動されるとき、成型ドラム10の回転速度を一定にしてローラ31の移動速度を変更しているが、ローラ31の移動速度V1,V2,V3を一定にして成型ドラム10の回転速度R1を変更することで、ローラ31の送りピッチを、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくするようにしてもよい。
【0068】
また、成型ドラム10の回転速度とローラの移動速度をそれぞれ変更することで、ローラ31の送りピッチを、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくすることも可能である。
【0069】
このように、本実施形態では、空気入りタイヤを製造する際に、ローラ31により、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を外面側から押圧しつつローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。
【0070】
ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされるので、ローラ31の送りピッチが小さくされない場合に比して、ローラ31の移動が少なく、チェーファ3の内端部3aによってカーカスプライ4に形成される段差部近傍においてローラ31によってインナーライナ2及びチェーファ3に沿ってカーカスプライ4を径方向に変形させやすい。
【0071】
これにより、ローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで移動させてインナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアをカーカスプライ4の幅方向外側に移動させて排出するとき、インナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアをチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動させやすく、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを抑制することができる。
【0072】
また、ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされるので、カーカスプライ4の幅方向中央側又は幅方向外端部側においてもローラ31の送りピッチが小さくされる場合に比して、カーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部までローラ31を移動させるローラ31の送り時間を短縮し、生産性良く製造することができる。
【0073】
したがって、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0074】
また、チェーファ3は、スチールチェーファである。これにより、インナーライナ2とカーカスプライ4との間にスチールチェーファ3が配置される場合に、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを有効に抑制することができる。ナイロンチェーファに比してエアが溜まりやすいスチールチェーファが配置される場合に、チェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを有効に抑制することができる。
【0075】
本実施形態では、ローラ31がカーカスプライ4の幅方向中央側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側まで移動されるとき、移動機構33によってローラ31によりカーカスプライ4を押圧する押圧力は、一定の所定圧力に設定されているが、カーカスプライ4の幅方向中央側に比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において増加させることも可能である。
【0076】
ローラ31によりカーカスプライ4を押圧する押圧力は、例えば、カーカスプライ4の幅方向中心線L1から第1所定位置P1までの範囲では0.2MPaなどの第1押圧力に設定され、第1所定位置P1から第2所定位置P2までの範囲では0.3MPaなどの第1押圧力より高い第2押圧力に設定され、第2所定位置P2から第3所定位置P3までの範囲では0.2MPaなどの第1押圧力に設定される。ローラ31によりカーカスプライ4を押圧する押圧力は、第2所定位置P2から第3所定位置P3までの範囲において0.3MPaなどの第2押圧力に設定するようにしてもよい。
【0077】
このように、ローラ31による押圧力は、カーカスプライ4の幅方向中央側に比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において増加させることが可能である。かかる場合、チェーファ3の内端部3aによってカーカスプライ4に形成される段差部近傍においてローラ31によってインナーライナ2及びチェーファ3に沿ってカーカスプライ4をより径方向に変形させ、チェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることをより抑制することができる。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤの製造について説明する。
【0079】
第2実施形態に係る空気入りタイヤの製造は、インナーライナ2とカーカスプライ4との間に配置されるチェーファ3の幅方向内端部3aを覆う接合テープが配置されることを除き、第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造と同様であるので、同様の構成について説明を省略する。
【0080】
図6は、本発明の第2実施形態に係る成型ドラムに巻回されたタイヤ構成部材を示す断面図である。
図6では、
図4に対応するタイヤ構成部材の断面を示している。
図6に示すように、第2実施形態に係る空気入りタイヤの製造では、インナーライナ2とカーカスプライ4との間に両側のチェーファ3とカーカスプライ4とをそれぞれ接合する接合テープ6が配置されている。
【0081】
接合テープ6はそれぞれ、チェーファ3の幅方向内端部3aを覆うように設けられている。接合テープ6は、幅方向内端部6aがチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側に位置するように形成され、幅方向外端部6bがチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側、且つカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向内側に位置するように形成される。
【0082】
本実施形態では、供給装置20は、カーカスプライ4の内面側に幅方向に離間して配置される両側の接合テープ6が取り付けられた状態で成型ドラム10にカーカスプライ4を供給する。製造装置1では、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のチェーファ3、及び両側の接合テープ6が取り付けられたカーカスプライ4が順次巻き付けられる。
【0083】
図7は、ローラの押圧工程を説明するための説明図である。
図7に示すように、押圧装置30のローラ31はそれぞれ、両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅狭に且つ両側の接合テープ6の幅方向内端部6aより幅狭に形成される。ローラ31は具体的には、両側の接合テープ6の幅方向内端部6a間の二分の一より幅狭に形成される。
【0084】
本実施形態においても、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3、及び両側の接合テープ6を含むカーカスプライ4に対し、ローラ31によりカーカスプライ4が外面側から押圧されつつローラ31がチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側に成型ドラム10が回転されながら移動される。
【0085】
ローラ31を幅方向内側位置からカーカスプライ4の幅方向外側に移動させるとき、成型ドラム10を一定の回転速度R1で回転させながら、ローラ31を、カーカスプライ4の幅方向中央側では移動速度V1で移動させ、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側との間であるチェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲では移動速度V2で移動させ、カーカスプライ4の幅方向外端部側では移動速度V3で移動させる。
【0086】
図6に示すように、カーカスプライの幅方向中央側としての範囲を規定する第1所定位置P1は、接合テープ6の幅方向内端部6aよりカーカスプライの幅方向内側に設定され、カーカスプライの幅方向外端部側としての範囲を規定する第2所定位置P2は、接合テープ6の幅方向外端部6bよりカーカスプライの幅方向外側に設定される。
【0087】
本実施形態においても、ローラ31の移動速度は、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされ、ローラ31の移動速度V2は、ローラ31の移動速度V1及び移動速度V3に比して小さくされる。
【0088】
成型ドラム10は一定の回転速度R1で回転されるので、ローラ31をカーカスプライ4の幅方向に移動させるローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。本実施形態では、ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、接合テープ6を含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。
【0089】
このように、本実施形態においても、ローラ31により、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を外面側から押圧しつつローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。
【0090】
ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされるので、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0091】
また、チェーファ3とカーカスプライ4の間にチェーファ3の幅方向内端部3aを覆う接合テープ6が配置され ローラ31の送りピッチが、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、接合テープ6を含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。
【0092】
これにより、接合テープ6によってチェーファ3とカーカスプライ4との接合強度を高めると共に、インナーライナ2とカーカスプライ4の間に配置されるチェーファ3の内端部3aにおいて空気入りタイヤのチェーファ3による強度変化を抑制することができる。チェーファ3とカーカスプライ4の間に接合テープ6が配置される場合においても、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0093】
前述した実施形態では、インナーライナ2は、両側の幅方向外端部2aが両側のチェーファ3の幅方向外端部3bより幅方向外側に位置するように形成されているが、両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に且つ両側のチェーファ3の幅方向外端部3bより幅方向内側に位置するように形成するようにしてもよい。
【0094】
次に、本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤの製造について説明する。
【0095】
前述した実施形態に係るインナーライナ2は、インナーライナとゴムチェーファとが一体的に形成されたものであるが、第3実施形態ではインナーライナ2とゴムチェーファ7とが別体で形成される。第3実施形態に係る空気入りタイヤの製造は、インナーライナ2とゴムチェーファ7とが別体で形成されることを除き、第2実施形態に係る空気入りタイヤの製造と同様であるので、同様の構成について説明を省略する。
【0096】
図8は、本発明の第3実施形態に係る成型ドラムに巻回されたタイヤ構成部材を示す断面図である。
図8では、第3実施形態に係る成型ドラムに巻回されるタイヤ構成部材を、
図4に対応する断面で示している。
図8に示すように、第3実施形態に係る空気入りタイヤの製造では、インナーライナ2と両側のチェーファ3、具体的にはスチールチェーファ3との間にそれぞれ別の両側のチェーファ7、具体的にはゴムチェーファ7が配置されている。
【0097】
両側のゴムチェーファ7はそれぞれ、少なくとも幅方向内端部7aがインナーライナ2の幅方向外端部2aより幅方向内側に位置するように形成される。また、ゴムチェーファ7はそれぞれ、幅方向外端部7bがスチールチェーファ3の幅方向外端部3bより幅方向外側に位置するように形成される。
【0098】
本実施形態では、供給装置20は、成型ドラム10にインナーライナ2、両側のゴムチェーファ7、両側のスチールチェーファ3、及び両側の接合テープ6が取り付けられたカーカスプライ4を順次供給する。
【0099】
製造装置1では、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のゴムチェーファ7、両側のスチールチェーファ3、及び両側の接合テープ6が取り付けられたカーカスプライ4に対し、ローラ31によりカーカスプライ4が外面側から押圧されつつローラ31がチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側に成型ドラム10が回転されながら移動される。
【0100】
成型ドラム10を一定の回転速度R1で回転させながら、ローラ31を、カーカスプライ4の幅方向中央側では移動速度V1で移動させ、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側との間であるチェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲では移動速度V2で移動させ、カーカスプライ4の幅方向外端部側では移動速度V3で移動させる。
【0101】
本実施形態においても、ローラ31の移動速度は、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされ、ローラ31の移動速度V2は、ローラ31の移動速度V1及び移動速度V3に比して小さくされる。ローラ31をカーカスプライ4の幅方向に移動させるローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。
【0102】
本実施形態では、インナーライナ2とカーカスプライ4との間に配置されるチェーファ3の幅方向内端部3aを覆う接合テープ6が配置されているが、インナーライナ2とカーカスプライ4との間にチェーファ3の幅方向内端部3aを覆う接合テープを配置しないようにすることも可能である。
【0103】
このように、本実施形態においても、ローラ31により、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を外面側から押圧しつつローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。
【0104】
ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされるので、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0105】
次に、本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤの製造について説明する。
【0106】
第4実施形態に係る空気入りタイヤの製造は、ローラ31によりカーカスプライ4を外面側から押圧しつつローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラム10を回転させながら移動させる前に、ローラ31より硬度が低く形成された別のローラによりカーカスプライ4を外面側から押圧することを除き、第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造と同様であるので、同様の構成については説明を省略する。
【0107】
図9は、本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置の概略側面図である。
図10は、空気入りタイヤの製造装置の概略正面図である。
図9及び
図10に示すように、第4実施形態に係る製造装置1´は、第1実施形態に係る製造装置1と同様に、成型ドラム10とドラム駆動装置11と供給装置20とを備えている。
【0108】
供給装置20は、前述した
図4に示すように、成型ドラム10に、インナーライナ2、幅方向に離間して配置される両側のチェーファ3、カーカスプライ4を順次供給する。製造装置1´においても、成型ドラム10にインナーライナ2及び両側のチェーファ3上にカーカスプライ4が円筒状に巻回される。
【0109】
製造装置1´はまた、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を外面側から押圧する第1押圧装置40と第2押圧装置30を備えている。第2押圧装置30は、製造装置1の押圧装置30と、ローラ31を第2ローラ31としていることを除いて同様に構成されている。製造装置1´の制御装置50は、ドラム駆動装置11としてのモータ、第1押圧装置40の移動機構及び第2押圧装置30の移動機構33などの作動を制御する。
【0110】
第1押圧装置40は、
図9及び
図10に示すように、円筒状に形成された第1ローラ41と、第1ローラ41に挿通されて固定されるシャフト42と、シャフト42を成型ドラム10の径方向に移動させる移動機構43とを備えている。移動機構43は、シャフト42を回転可能に支持する支持部44を備え、支持部44を成型ドラム10の径方向に移動させて第1ローラ41を成型ドラム10の径方向に移動可能に構成されている。移動機構43として、例えば空圧シリンダなどが用いられる。
【0111】
第1ローラ41は、移動機構43によって、
図9の実線で示す径方向外側位置と
図9の二点鎖線で示す径方向内側位置との間で成型ドラム10の径方向に移動可能に構成されている。第1ローラ41は、径方向内側位置において成型ドラム10に巻回されたカーカスプライ4を外面側から押圧するようになっている。
【0112】
第1ローラ41は、硬度が35HDA以上45HDA以下に形成される。第1ローラ41の硬度が35HDA未満である場合、第1ローラ41がカーカスプライ4に圧着しにくくなってインナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアがチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動しにくくなる。また、しわなどの変形や第1ローラ41の損傷を引き起こしやすくなる。一方、第1ローラ41の硬度が45HDAより大きい場合、第1ローラ41がチェーファ3の幅方向内端部3aにおいてはねてチェーファ3の幅方向内端部3aに沿って押圧しにくくインナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアがチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動しにくくなる。
【0113】
硬度は、JIS K7215に規定されるタイプAデュロメータを用い、JIS K7311に基づいて測定した硬さ(HDA)である。本実施形態では、第1ローラ41は、第2押圧装置30の第2ローラ31より硬度が低く形成されている。第1ローラ41は、例えば発泡ウレタン樹脂などを用いたスポンジから形成される。第1ローラ41は、例えば、外径が110~120mm、幅が380~450mmのものを用いることができる。
【0114】
図11は、第1ローラの押圧工程を説明するための説明図である。
図11に示すように、第1押圧装置40の第1ローラ41は、両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅広に形成されると共に、カーカスプライ4の両側の幅方向外端部4aより幅狭に形成される。
【0115】
第1押圧装置40は、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4に対して、第1ローラ41を成型ドラム10の径方向内側に移動させ、カーカスプライ4を第1ローラ41により、5秒などの所定時間、0.3MPaなどの所定圧力で外面側から押圧する。第1ローラ41は、成型ドラム10を回転しつつ押圧され、カーカスプライ4に対してタイヤ周方向に少なくとも一周回転される。
【0116】
第2押圧装置30は、第1押圧装置40の第1ローラ41によりカーカスプライ4が押圧され、第1ローラ41が径方向外側位置に移動された後に、一対の第2ローラ31を幅方向内側位置において成型ドラム10の径方向内側に移動させ、カーカスプライ4を第2ローラ31により外面側から押圧する。
【0117】
そして、カーカスプライ4を第2ローラ31により外面側から押圧しつつ、第2ローラ31をチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向内側であるカーカスプライ4の幅方向中央側からカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。
【0118】
本実施形態においても、第2ローラ31を幅方向内側位置からカーカスプライ4の幅方向外側に移動させるとき、第2ローラ31をカーカスプライ4の幅方向に移動させる第2ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされる。
【0119】
本実施形態においても、前述した第2実施形態と同様に、スチールチェーファ3とカーカスプライ4の間にチェーファ3の幅方向内端部3aを覆う接合テープ6を配置するようにしてもよい。
【0120】
このように、本実施形態においても、第2ローラ31により、成型ドラム10に順次巻き付けられたインナーライナ2、両側のチェーファ3及びカーカスプライ4を外面側から押圧しつつ第2ローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部まで成型ドラム10を回転させながら移動させる。
【0121】
第2ローラ31の送りピッチは、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向所定範囲において小さくされるので、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることを抑制しつつ生産性良く製造することができる。
【0122】
本実施形態では、両側のチェーファ3の幅方向内端部3aより幅広且つカーカスプライ4の両側の幅方向外端部4aより幅狭に形成された第1ローラ41によりカーカスプライ4を外面側から押圧した後に、第2ローラ31によりカーカスプライ4を外面側から押圧しつつ第2ローラ31をカーカスプライ4の幅方向中央側から幅方向外端部4aまで成型ドラム10を回転させながら移動させる。第2ローラ31は、カーカスプライ4の幅方向中央側と幅方向外端部側とに比して、チェーファ3の内端部3aを含むカーカスプライ4の幅方向における所定範囲において第2ローラ31の送りピッチを小さくし、第1ローラ41は、第2ローラ31より硬度が低く形成される。
【0123】
これにより、第1ローラ41は第2ローラ31より硬度が低く形成されるので、第1ローラ41によってインナーライナ2及びチェーファ3に沿ってカーカスプライ4を径方向に変形させやすくインナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアを第1ローラ41によってチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動させやすい。第1ローラ41はカーカスプライ4の両側の幅方向外端部4aより幅狭に形成されるので、カーカスプライ4の両側の幅方向外端部4aより幅広に形成される場合に比して、インナーライナ2とカーカスプライ4との間に存在するエアを第1ローラ41によってチェーファ3の幅方向内端部3aより幅方向外側に移動させやすい。さらに、第2ローラ31によってカーカスプライ4の幅方向外端部4aより幅方向外側に移動させて排出することができ、インナーライナ2とカーカスプライ4との間においてチェーファ3の内端部3a近傍にエアが溜まることをさらに抑制することができる。
【0124】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1,1´ 製造装置
2 インナーライナ
3 スチールチェーファ
4 カーカスプライ
6 接合テープ
10 成型ドラム
31 ローラ