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特開2022-28476マスクブランク、及びマスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028476
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】マスクブランク、及びマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/50 20120101AFI20220208BHJP
   G03F 1/52 20120101ALI20220208BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20220208BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20220208BHJP
   G03F 1/26 20120101ALI20220208BHJP
【FI】
G03F1/50
G03F1/52
G03F1/54
G03F1/24
G03F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131901
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】米丸 直人
(72)【発明者】
【氏名】松井 一晃
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA07
2H195BA10
2H195BB03
2H195BB16
2H195BB25
2H195BC04
2H195BC05
2H195BC19
2H195BC20
2H195BC21
2H195BC22
2H195BC24
2H195CA01
2H195CA07
2H195CA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アスペクト比が高いパターンであっても、レジスト膜の現像中にレジストパターンが消失せず、微細なパターンを形成可能な、透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランク、及びそのマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】透過型マスクの製造に用いられるマスクブランク10は、基板11と、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な遮光膜12と、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なハードマスク13と、を有し、ハードマスク13は、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ベリリウム、アルミニウム、インジウム、及びスズから選ばれる1種類以上の金属元素を少なくとも含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクであって、
基板と、
前記基板上に形成され、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な薄膜と、
前記薄膜上に形成され、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なハードマスクと、を有し、
前記ハードマスクは、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ベリリウム、アルミニウム、インジウム、及びスズから選ばれる1種類以上の金属元素を少なくとも含有することを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記ハードマスクは、複数の層からなり、少なくとも最表面に前記金属元素を含有する密着層を有し、前記密着層よりも前記基板側に、前記密着層よりもフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が高い下層を有することを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記ハードマスクは、複数の層からなり、少なくとも最表面に前記金属元素を含有する密着層を有し、前記密着層よりも前記基板側に、クロムを含有する下層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記密着層の膜厚は、1nm以上10nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記下層の膜厚は、1nm以上19nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記ハードマスクの膜厚は、2nm以上20nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記薄膜は、ケイ素化合物、タンタル化合物、インジウム化合物、及びスズ化合物から選ばれる1種類以上の化合物を少なくとも含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記ケイ素化合物は、ケイ素と、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種以上の元素と、を含有することを特徴とする請求項7に記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記タンタル化合物は、タンタルと、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種以上の元素と、を含有することを特徴とする請求項7に記載のマスクブランク。
【請求項10】
前記インジウム化合物は、インジウムと、窒素、ホウ素、酸素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素と、を含有することを特徴とする請求項7に記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記スズ化合物は、スズと、窒素、ホウ素、酸素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素と、を含有することを特徴とする請求項7に記載のマスクブランク。
【請求項12】
前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、
前記薄膜は、波長193nmの光に対して光学濃度1以上の遮光性を有する遮光膜であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項13】
前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、
前記基板と前記遮光膜との間に、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能であり、波長193nmの光の位相差を所望量反転させる半透明膜を有することを特徴とする請求項12に記載のマスクブランク。
【請求項14】
前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、
前記基板と前記薄膜との間に、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスまたは酸素系ガスによってエッチングが可能な保護膜を有することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項15】
前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、
前記保護膜は、クロム、ルテニウム、ニオブ、及びアルミニウムから選ばれる1種類以上の元素を含有することを特徴とする請求項14に記載のマスクブランク。
【請求項16】
前記マスクブランクは、反射型マスクの製造に用いられる反射型マスクブランクであり、
前記薄膜が、波長13.5nmの光を吸収する吸収膜であり、
前記基板と前記吸収膜との間に、多層構造を有し、波長13.5nmの光を反射する多層反射膜を有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法であって、
前記マスクブランクの前記ハードマスク上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記ハードマスクを酸素含有塩素系ガスでエッチングし、ハードマスクパターンを形成する工程と、
前記ハードマスクパターンをマスクとして前記薄膜をフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスでエッチングし、薄膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI(大規模集積回路)等の製造において使用される透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランク、及びそのマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化により、LSIの回路を構成する配線パターンの細線化やセルを構成する層間の配線のためのコンタクトホールパターンの微細化技術への要求が高まっている。LSIの製造には、フォトリソグラフィーと呼ばれる写真現像技術を応用した加工技術が用いられ、フォトマスクを介して、所望の波長を有するレーザーをシリコンウェハ基板へ露光することで、LSIの回路パターンが得られる。
【0003】
フォトマスクは、基板上にLSIの回路パターンが描かれた回路パターンの原版であり、高精度なLSIの回路パターンを形成させるためには、設計に忠実で、かつ微細なパターンを有するフォトマスクが必要である。なお、フォトリソグラフィーに用いるレーザーの波長によって投影光学系が異なり、ArF光(波長193nm)の場合には透過光学系が、また、EUV光(Extreme Ultravioret Light、波長13.5nm)の場合には反射光学系がそれぞれ用いられるが、投影光学系に合わせてフォトマスクの形態も、透過型マスク、または反射型マスクとなる。
【0004】
ここで、フォトマスクのパターンは、ブランク(マスクブランク)と呼ばれる遮光膜や吸収膜等の薄膜が成膜された積層基板上に、スピンコート等によりレジスト膜を形成させた後、電子線描画、現像を行うことにより、レジストパターンを作成し、そのレジストパターンをマスクとして、上述の薄膜をエッチングし、薄膜パターンを得ることで作製される。
従来技術においては、レジスト膜を現像する際に微細なレジストパターンが消失して微細なパターンを形成出来ない、あるいは薄膜をエッチングする際に薄膜パターンの粗密差に依存してフォトマスク面内のエッチング速度にばらつきが発生して設計に忠実なパターンを形成出来ない、などの問題が生じてしまうことが知られている。従って、これらの問題を解決するための種々の手法の検討がなされてきた。
【0005】
例えば、遮光膜のエッチングの際に生じる、パターンの粗密差に依存したパターン寸法のばらつきを抑制するために、バイナリーマスクやハーフトーン型位相シフトマスクの遮光膜として広く用いられている酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なクロムを主成分とする遮光膜に代わって、フッ素系ガスや酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能なタンタルやケイ素を主成分とする遮光膜を用いる手法がある(特許文献1を参照)。酸素含有塩素系ガスによるエッチングは等方性が高いため、クロムを主成分とする遮光膜は、ローディング効果によってパターンの粗密差に依存して、フォトマスク面内のパターン寸法にばらつきが生じてしまう。一方、フッ素系ガスや酸素非含有塩素系ガスによるエッチングは異方性が高いため、タンタルやケイ素を主成分とする遮光膜は、クロムを主成分とする遮光膜と比較して、パターンの粗密差の影響を受け難く、設計に忠実に加工することが可能である。
【0006】
更に、例えば、レジスト膜の現像の際に微細なレジストパターンが消失することを防止するために、レジスト膜と遮光膜との間にハードマスクを設ける手法がある(特許文献2を参照)。ハードマスクを設けた場合のフォトマスクのパターンは、レジストパターンを得た後、レジストパターンをマスクとしてハードマスクをエッチングしてハードマスクパターンを形成し、次いで、そのハードマスクパターンをマスクとして遮光膜をエッチングして遮光膜パターンを得ることで作製される。ハードマスクを設けることで、レジスト膜の薄膜化が可能となり、レジストパターンのアスペクト比(パターン高さ÷パターン幅)が小さくなることで、レジスト膜の現像の際の表面張力を緩和させ、微細なレジストパターンの消失を防止することができる。なお、ハードマスクを設ける場合は、ハードマスクが遮光膜をエッチングする際のマスクとして機能する必要があるため、遮光膜のエッチング条件に対して耐性を有している必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4883278号
【特許文献2】特許第4989800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記より、パターンの粗密差に依存したパターン寸法のばらつきが抑制され、かつ現像の際に微細なレジストパターンが消失しないフォトマスクを得るためには、フッ素系ガスや酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能なタンタルやケイ素を主成分とする遮光膜の上に、フッ素系ガスや酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有する材料を主成分とするハードマスクを設ける手法が有効である。
しかしながら、フッ素系ガスによってエッチングが可能な遮光膜の上にハードマスクを設ける場合、クロムを主成分とするハードマスクが用いられることが多いが、クロムを主成分とするハードマスクは、フッ素系ガスや酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性は十分に有しているものの、レジストパターンとの密着性が十分でないものが多い。そのために、現像中にレジストパターンとハードマスクと間に現像液が入り込み、レジストパターンが消失し易く、特にレジストパターンのアスペクト比が高くなると、更にレジストパターンが消失し易くなってしまうことが課題となっていた。
【0009】
本発明は、以上のような事情の元になされ、アスペクト比が高いパターンであっても、レジスト膜の現像中にレジストパターンが消失せず、微細なパターンを形成可能な、透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランク、及びそのマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであって、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクは、基板と、前記基板上に形成され、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な薄膜と、前記薄膜上に形成され、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なハードマスクと、を有し、前記ハードマスクは、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ベリリウム、アルミニウム、インジウム、及びスズから選ばれる1種類以上の金属元素を少なくとも含有する。
【0011】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記ハードマスクは、複数の層からなり、少なくとも最表面に前記金属元素を含有する密着層を有し、前記密着層よりも前記基板側に、前記密着層よりもフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が高い下層を有してもよい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記ハードマスクは、複数の層からなり、少なくとも最表面に前記金属元素を含有する密着層を有し、前記密着層よりも前記基板側に、クロムを含有する下層を有してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記密着層の膜厚は、1nm以上10nm以下の範囲内であってもよい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記下層の膜厚は、1nm以上19nm以下の範囲内であってもよい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記ハードマスクの膜厚は、2nm以上20nm以下の範囲内であってもよい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記薄膜は、ケイ素化合物、タンタル化合物、インジウム化合物、及びスズ化合物から選ばれる1種類以上の化合物を少なくとも含有してもよい。
【0017】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記ケイ素化合物は、ケイ素と、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種以上の元素と、を含有してもよい。
【0018】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記タンタル化合物は、タンタルと、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種以上の元素と、を含有してもよい。
【0019】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記インジウム化合物は、インジウムと、窒素、ホウ素、酸素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素と、を含有してもよい。
【0020】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記スズ化合物は、スズと、窒素、ホウ素、酸素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素と、を含有してもよい。
【0021】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、前記薄膜は、波長193nmの光に対して光学濃度1以上の遮光性を有する遮光膜であってもよい。
【0022】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、前記基板と前記遮光膜との間に、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能であり、波長193nmの光の位相差を所望量反転させる半透明膜を有してもよい。
【0023】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、前記基板と前記薄膜との間に、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスまたは酸素系ガスによってエッチングが可能な保護膜を有してもよい。
【0024】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記マスクブランクは、透過型マスクの製造に用いられる透過型マスクブランクであり、前記保護膜は、クロム、ルテニウム、ニオブ、及びアルミニウムから選ばれる1種類以上の元素を含有してもよい。
【0025】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクにおいて、前記マスクブランクは、反射型マスクの製造に用いられる反射型マスクブランクであり、前記薄膜が、波長13.5nmの光を吸収する吸収膜であり、前記基板と前記吸収膜との間に、多層構造を有し、波長13.5nmの光を反射する多層反射膜を有してもよい。
【0026】
また、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法は、上述したマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法であって、前記マスクブランクの前記ハードマスク上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記ハードマスクを酸素含有塩素系ガスでエッチングし、前記ハードマスクパターンを形成する工程と、前記ハードマスクパターンをマスクとして前記薄膜をフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスでエッチングし、薄膜パターンを形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0027】
クロムと比較して、ハードマスクが含有する金属元素の表面自由エネルギーは低いため、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランクであれば、従来から用いられているクロムを主成分とするハードマスクと比較して、レジストパターンとハードマスクとの密着性が向上し、レジスト膜の現像中にレジストパターンとハードマスクとの界面に現像液が侵入し難く、アスペクト比が高いパターンであっても、その現像中にレジストパターンが消失しないため、微細なパターンが形成される。
そのため、本発明の一態様に係る透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランク、及びそのマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法であれば、アスペクト比が高いパターンであっても、レジスト膜の現像中にレジストパターンが消失せず、微細なパターンを形成可能な透過型マスクまたは反射型マスクの製造に用いられるマスクブランク、及びそのマスクブランクを用いた透過型マスクまたは反射型マスクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る透過型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る透過型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る透過型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る反射型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る透過型マスクブランクを用いた透過型マスクの製造工程を順に示す断面概略図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る透過型マスクブランクを用いた透過型マスクの製造工程を順に示す断面概略図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る透過型マスクブランクを用いた透過型マスクの製造工程を順に示す断面概略図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造工程を順に示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。なお、断面概略図は、実際の寸法比やパターン数を正確には反映しておらず、透明基板の掘り込み量や膜のダメージ量は省略してある。
本発明の透過型マスクブランク、及び反射型マスクブランクの好適な実施形態としては、以下に示す4つの形態が挙げられる。
【0030】
(マスクブランクの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る透過型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。図1に示す透過型マスクブランク10は、露光波長に対して透明な基板11と、基板11上に成膜された遮光膜12と、遮光膜12上に成膜されたハードマスク13とを含む。
次に、図2は、本発明の第2実施形態に係る透過型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。図2に示す透過型マスクブランク20は、露光波長に対して透明な基板21と、基板21上に成膜された半透明膜24と、半透明膜24上に成膜された保護膜25と、保護膜25上に成膜された遮光膜22と、遮光膜22上に成膜されたハードマスク23とを含む。
【0031】
次に、図3は、本発明の第3実施形態に係る透過型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。図3に示す透過型マスクブランク30は、露光波長に対して透明な基板31と、基板31上に成膜された保護膜35と、保護膜35上に成膜された半透明膜34と、半透明膜34上に成膜された遮光膜32と、遮光膜32上に成膜されたハードマスク33とを含み、ハードマスク33は、遮光膜32上に成膜された下層33aと、下層33a上に成膜された密着層33bとを含む。
【0032】
次に、図4は、本発明の第4実施形態に係る反射型マスクブランクの構造を示す断面概略図である。図4に示す反射型マスクブランク40は、露光による熱膨張が小さい基板41と、基板41上に成膜された多層反射膜44と、多層反射膜44上に成膜された保護膜45と、保護膜45上に成膜された吸収膜42と、吸収膜42上に成膜されたハードマスク43とを含む、ハードマスク43は、吸収膜42上に成膜された下層43aと、下層43a上に成膜された密着層43bとを含む。
以下、本発明の第1実施形態から第4実施形態に係る各マスクブランクを構成する各層について、説明する。
【0033】
(基板)
本実施形態において、露光波長に対して透明な基板11、21、31に対する特別な制限はなく、例えば、合成石英基板やCaFあるいはアルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、上述の露光による熱膨張が小さい基板41に対する特別な制限はなく、例えば、平坦なSi基板や合成石英基板、チタンを添加した低熱膨張ガラスを用いることができる。
【0034】
(遮光膜)
遮光膜12、22、32は、波長193nmの光に対して光学濃度1以上の遮光性を有する薄膜である。
遮光膜12、22、32は、例えば、ケイ素化合物、及びタンタル化合物から選ばれる1種類以上の化合物からなる単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜である。具体的には、ケイ素化合物からなる遮光膜12、22、32は、ケイ素と、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。また、タンタル化合物からなる遮光膜12、22、32は、タンタルと、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
【0035】
ケイ素化合物は、ケイ素を、ケイ素化合物全体の元素比率において、10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、30原子%以上80原子%以下の範囲内であればより好ましく、35原子%以上70原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述のケイ素の含有率が上記数値範囲内であれば、遮光性がさらに高まる。
タンタル化合物は、タンタルを、タンタル化合物全体の元素比率において10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、50原子%以上90原子%以下の範囲内であればより好ましく、60原子%以上80原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述のタンタルの含有率が上記数値範囲内であれば、遮光性がさらに高まる。
【0036】
遮光膜12の膜厚は、露光波長に対する光学濃度が2.0以上、好ましくは2.8以上になるように調整する。遮光膜12の膜厚は、例えば、35nm以上80nm以下の範囲内、特に40nm以上75nm以下の範囲内が好ましい。遮光膜12の膜厚が上記数値範囲内であれば、露光波長に対する光学濃度が十分に高くなり、遮光膜12を備えた透過型マスク100に高い転写性能を付与することができる。
【0037】
遮光膜22、32の膜厚は、半透明膜24、34の透過率により変化するが、遮光膜22、32の露光波長に対する光学濃度が1.0以上、もしくは遮光膜22、32、及び半透明膜24、34を合わせた積層体の、露光波長に対する光学濃度が2.0以上、好ましくは2.8以上になるように調整する。遮光膜22、32の膜厚は、例えば、半透明膜24、34の透過率が6%の場合では、25nm以上75nm以下の範囲内、特に30nm以上70nm以下の範囲内が好ましい。遮光膜22、32の膜厚が上記数値範囲内であれば、露光波長に対する光学濃度が十分に高くなり、遮光膜22、32を備えた透過型マスク200、300に高い転写性能を付与することができる。
遮光膜12、22、32は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な遮光膜である。
【0038】
(吸収膜)
吸収膜42は、波長13.5nmの光の反射率が多層反射膜44よりも低い薄膜である。吸収膜42は、例えば、波長13.5nmの光の反射率が0%以上6.5%未満、また好ましくは0%以上2%未満の範囲である。吸収膜42の膜厚が上記数値範囲内であれば、多層反射膜44に対するEUV光の反射率が十分に低くなり、吸収膜42を備えた反射型マスク400に高い転写性能を付与することができる。
【0039】
吸収膜42は、例えば、タンタル化合物、インジウム化合物、及びスズ化合物から選ばれる1種類以上の化合物からなる単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜である。具体的には、タンタル化合物からなる吸収膜42は、タンタルと、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。また、インジウム化合物からなる吸収膜42は、インジウムと、窒素、ホウ素、酸素、及び炭素から選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。また、スズ化合物からなる吸収膜42は、スズと、窒素、ホウ素、酸素、及び炭素から選ばれる1類種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。特に、インジウム化合物、及びスズ化合物はEUV光に対する反射率が低く、吸収膜42を薄膜化できるため、吸収膜42はインジウム化合物、及びスズ化合物の少なくとも一方を含むことが望ましい。
【0040】
また、タンタル化合物は、タンタルを、タンタル化合物全体の元素比率において、10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、17原子%以上75原子%以下の範囲内であればより好ましく、25原子%以上55原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述のタンタルの含有率が上記数値範囲内であれば、光吸収性がさらに高まる。
また、インジウム化合物は、インジウムを、インジウム化合物全体の元素比率において、10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、22原子%以上75原子%以下の範囲内であればより好ましく、35原子%以上55原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述のインジウムの含有率が上記数値範囲内であれば、光吸収性がさらに高まる。
また、スズ化合物は、スズを、スズ化合物全体の元素比率において、5原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、15原子%以上75原子%以下の範囲内であればより好ましく、25原子%以上55原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述のスズの含有率が上記数値範囲内であれば、光吸収性がさらに高まる。
【0041】
吸収膜42の膜厚は、EUV光に対する反射率が6%未満になるように調整する。吸収膜42の膜厚は、例えば、17nm以上90nm以下の範囲内、特に25nm以上75nm以下の範囲内が好ましい。吸収膜42の膜厚が上記数値範囲内であれば、EUV光に対する反射率が十分に低くなり、吸収膜42を備えた反射型マスク400に高い転写性能を付与することができる。
吸収膜42は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な吸収膜である。
【0042】
(ハードマスク)
ハードマスク13、23、33、43は、例えば、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ベリリウム、アルミニウム、インジウム、及びスズから選ばれる1種類以上の金属元素を少なくとも含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。上述の金属元素は、クロムよりも表面自由エネルギーが低いため、それらの金属元素を含むハードマスクは、基板11、21、31、41から遠い側に位置する最表面に上述の金属元素を含まずクロムを主成分とするハードマスクよりも、レジストパターンとの密着性が高い。
【0043】
ハードマスク13、23、33、43の膜厚は、ハードマスクエッチングの際のレジストパターンへのダメージを抑制し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性を備える(確保する)ために、2nm以上20nm以下の範囲内、特に4nm以上15nm以下の範囲内が好ましい。
このように、本実施形態に係るハードマスク13、23、33、43は、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なハードマスクである。
【0044】
ハードマスク13、23、33、43は、ハードマスク全体の元素比率において、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ベリリウム、アルミニウム、インジウム、及びスズから選ばれる1種類以上の金属元素を、10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、20原子%以上70原子%以下の範囲内であればより好ましく、30原子%以上60原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述の金属元素の含有率が上記数値範囲内であれば、レジストパターンとの密着性がさらに高まる。特に、上述の金属元素のうち、ハフニウム、及びスズであれば、他の元素と比較して表面自由エネルギーが特に低いため、ハードマスク13、23、33、43に添加する金属元素としては好ましい。
【0045】
また、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性が高くない上記金属元素を使用する場合には、ハードマスクを複数層膜にすることが好ましい。例えば、ハードマスク33、43は、少なくとも、基板31、41から遠い側に位置し、上述の金属元素を含む密着層33b、43bと、密着層33b、43bよりも基板31、41に近い側に位置し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性が高い材料からなる下層33a、43aとで構成されることが好ましく、特にフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性に優れるクロム化合物を下層33a、43aに含むことが好ましい。クロム化合物を含有する下層33a、43aは、クロムと、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜である。ここで、上記「フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性が高い材料」とは、上述の金属元素に対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレートと、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性が高い材料に対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレートとの比(フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性が高い材料に対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレート/上述の金属元素に対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレート)が1未満であることを意味する。
【0046】
また、下層33a、43aは、下層33a、43a全体の元素比率において、クロムを10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、40原子%以上95原子%以下の範囲内であればより好ましく、50原子%以上95原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。クロムの含有率が上記数値範囲内であれば、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性がさらに高まる。
【0047】
このように、ハードマスク33、43は、複数の層からなり、少なくとも最表面に上述した金属元素を含有する密着層33b、43bを有し、密着層33b、43bよりも基板31、41側に、密着層33b、43bよりもフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が高い下層33a、43aを有していてもよい。ここで、ハードマスク33、43の密着層33b、43bは、密着層33b、43b全体の元素比率において、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ベリリウム、アルミニウム、インジウム、及びスズから選ばれる1種類以上の金属元素を10原子%以上95原子%以下の範囲内で含んでいてもよく、20原子%以上70原子%以下の範囲内であればより好ましく、30原子%以上60原子%以下の範囲内であればさらに好ましい。上述の金属元素の含有率が上記数値範囲内であれば、レジストパターンとの密着性がさらに高まる。特に、上述の金属元素のうち、ハフニウム、及びスズであれば、他の元素と比較して表面自由エネルギーが特に低いため、密着層33b、43bに添加する金属元素としては好ましい。
【0048】
また、上記「密着層33b、43bよりもフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が高い下層33a、43a」とは、密着層33b、43bに対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレートと、下層33a、43aに対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレートとの比(下層33a、43aに対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレート/密着層33b、43bに対するフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングの際のエッチングレート)が1未満であることを意味する。
【0049】
密着層33b、43bの膜厚は、1nm以上10nm以下の範囲内、特に2nm以上5nm以下の範囲内が好ましい。密着層33b、43bの膜厚が上記数値範囲内であれば、レジストパターンとの密着性を十分に高めることできる。
また、下層33a、43aの膜厚は、1nm以上19nm以下の範囲内、特に2nm以上10nm以下の範囲内が好ましい。下層33a、43aの膜厚が上記数値範囲内であれば、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対するエッチング耐性を十分に高めることできる。
【0050】
(半透明膜)
半透明膜24、34は、基板21、31と、遮光膜22、32との間に位置し、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な膜であり、波長193nmの光の位相差を所望量反転可能な膜である。「波長193nmの光の位相差を所望量反転可能」とは、波長193nmの光の位相差を、後述するように、160度以上220度以下の範囲内で反転可能であることをいう。
【0051】
半透明膜24、34は、ケイ素化合物、及びタンタル化合物から選ばれる1種類以上の化合物からなる単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜である。ケイ素化合物を含有する半透明膜24、34は、ケイ素と、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚とを適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差とを調整させたものである。また、タンタル化合物を含有する半透明膜24、34は、タンタルと、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、炭素、及びモリブデンから選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚とを適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差とを調整させたものである。
【0052】
半透明膜24、34における透過率の値は、3%以上80%以下の範囲内であり、所望のLSIの回路パターンに応じて最適な透過率を適宜選択することが可能である。
半透明膜24、34における位相差の値は、160度以上220度以下の範囲内、特に175度以上190度以下の範囲内が好ましい。半透明膜24をエッチングする際は、同時に基板21を1nmから3nm程度掘り込み、半透明膜24の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。したがって、基板21の掘り込み量を考慮して、マスク完成時に所望する値より小さい位相差で半透明膜24を成膜する必要がある。一方、半透明膜34のエッチングは保護膜35で止まるため、基板31を意図的に掘り込む工程がない。したがって、マスク完成時に所望する値より小さい位相差で半透明膜34を成膜する必要はない。
【0053】
(多層反射膜)
多層反射膜44は、基板41と吸収膜42との間に位置する多層構造を有する膜であり、且つ波長13.5nmの光を反射する膜である。
多層反射膜44は、波長13.5nmの光のようなEUV光を反射するものであり、EUV光に対する屈折率の大きく異なる材料の組み合わせによって構成されている。例えば、モリブデンとケイ素、またはモリブデンとベリリウムといった組み合わせの層を40周期程度繰り返し積層することにより形成することができる。
なお、多層反射膜44は、例えば、波長13.5nmの光を50%以上反射することが可能な薄膜であり、その光を60%以上反射することが可能な薄膜であれば好ましい。
【0054】
(保護膜)
保護膜25、35、45は、基板21、31、41と、薄膜である遮光膜22、32、あるいは吸収膜42との間に位置し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスまたは酸素系ガスによってエッチングが可能な層である。
保護膜25、35、45は、クロム、ルテニウム、ニオブ、及びアルミニウムから選ばれる1種類以上の元素を含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。また、保護膜25、35、45は、クロム、ルテニウム、ニオブ、及びアルミニウムから選ばれる1種類以上の元素と、酸素、窒素、及びフッ素から選ばれる1種類以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であってもよい。また、保護膜25、35、45の膜厚は、フッ素系ガスに対するエッチング耐性を確保するために、3nm以上20nm以下の範囲内、特に5nm以上15nm以下の範囲内が好ましい。
【0055】
上述した遮光膜、吸収膜、ハードマスク、密着層、下層、半透明膜、多層反射膜、保護膜は、いずれも公知の方法により成膜することができる。最も容易に均一性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく上げられるが、本実施形態ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
【0056】
ターゲットとスパッタガスとは膜組成によって選択される。例えば、ケイ素を含有する膜の成膜方法としては、ケイ素を含有するターゲットを用い、アルゴンガス等の不活性ガスのみで構成されるガス中で、または酸素等の反応性ガスのみで構成されるガス中で、あるいは不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス中で、それぞれ反応性スパッタリングを行う方法を挙げることができる。スパッタガスの流量は膜特性に合わせて調整すればよく、成膜中一定としてもよいし、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、目的とする組成に応じて変化させてもよい。また、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、ターゲットに対する印加電力、ターゲットと基板との距離、または成膜チャンバー内の圧力を調整してもよい。また、例えば、ケイ素と金属とを含有する膜の成膜では、ターゲットとして、ケイ素と金属との含有比を調整したターゲットを単独で使用してもよいし、ケイ素ターゲット、金属ターゲット、及びケイ素と金属とからなるターゲットから複数のターゲットを適宜選択してもよい。
透過型、及び反射型の各マスクは、上述した本実施形態の透過型、及び反射型の各マスクブランクが有する各々の膜を所望のパターンにパターニング又は除去することにより得られる。
【0057】
(マスクブランク、及びマスクの製造方法)
以下に、本実施形態の透過型、及び反射型の各マスクブランク、並びに透過型、及び反射型の各マスクの製造方法の好適な実施形態を挙げる。
図5は、図1に示す透過型マスクブランク10を用いた透過型マスク100の製造工程を順に示す断面概略図である。図5(a)は、透過型マスクブランク10を構成するハードマスク13上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン16を形成する工程を示す。図5(b)は、レジストパターン16に沿って酸素含有塩素系ガスエッチングによりハードマスク13をパターニングする工程を示す。図5(c)は、残存したレジストパターン16を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図5(d)は、ハードマスク13のパターンに沿ってフッ素系ガスエッチングにより遮光膜12をパターニングする工程を示す。図5(e)は、ハードマスク13を酸素含有塩素系ガスエッチングにより除去した後、洗浄する工程を示す。こうして、第1実施形態に係る透過型マスク100を製造する。
【0058】
図6は、図2に示す透過型マスクブランク20を用いた透過型マスク200の製造工程を順に示す断面概略図である。図6(a)は、透過型マスクブランク20を構成するハードマスク23上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン(第一のレジストパターン)26を形成する工程を示す。図6(b)は、レジストパターン26に沿って酸素含有塩素系ガスエッチングによりハードマスク23をパターニングする工程を示す。図6(c)は、残存したレジストパターン26を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図6(d)は、ハードマスク23のパターンに沿ってフッ素系ガスエッチングにより遮光膜22をパターニングする工程を示す。図6(e)は、ハードマスク23、及び遮光膜22のパターンに沿って酸素系ガスエッチングにより保護膜25をパターニングする工程を示す。図6(f)は、ハードマスク23、遮光膜22、及び保護膜25のパターンに沿ってフッ素系ガスエッチングにより半透明膜24をパターニングする工程を示す。図6(g)は、ハードマスク23を酸素含有塩素系ガスエッチングにより除去した後、洗浄する工程を示す。図6(h)は、第二のレジストパターン27を新たに形成する工程を示す。図6(i)は、第二のレジストパターン27に覆われていない領域の遮光膜22をフッ素系ガスエッチングにより除去する工程を示す。図6(j)は、第二のレジストパターン27に覆われていない領域の保護膜25を酸素系ガスエッチングにより除去する工程を示す。図6(k)は、残存した第二のレジストパターン27を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。こうして、第2実施形態に係る透過型マスク200を製造する。
【0059】
図7は、図3に示す透過型マスクブランク30を用いた透過型マスク300の製造工程を順に示す断面概略図である。図7(a)は、透過型マスクブランク30を構成するハードマスク33の密着層33b上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン(第一のレジストパターン)36を形成する工程を示す。図7(b)は、レジストパターン36に沿って酸素含有塩素系ガスエッチングにより密着層33bと下層33aとから構成されるハードマスク33を続けてパターニングする工程を示す。図7(c)は、残存したレジストパターン36を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図7(d)は、密着層33bと下層33aとから構成されるハードマスク33のパターンに沿って酸素非含有塩素系ガスエッチングにより遮光膜32をパターニングすると同時にハードマスク33の密着層33bが剥離される工程を示す。図7(e)は、ハードマスク33の下層33a、及び遮光膜32のパターンに沿ってフッ素系ガスエッチングにより半透明膜34をパターニングする工程を示す。図7(f)は、ハードマスク33の下層33a、遮光膜32、及び半透明膜34のパターンに沿って、酸素系ガスエッチングにより保護膜35をパターニングする工程を示す。図7(g)は、ハードマスクの下層33aを酸素含有塩素系ガスエッチングにより除去した後、洗浄する工程を示す。図7(h)は、第二のレジストパターン37を新たに形成する工程を示す。図7(i)は、第二のレジストパターン37に覆われていない領域の遮光膜32を酸素非含有塩素系ガスエッチングにより除去する工程を示す。図7(j)は、残存した第二のレジストパターン37を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。こうして、第3実施形態に係る透過型マスク300を製造する。
【0060】
図8は、図4に示す反射型マスクブランク40を用いた反射型マスク400の製造工程を順に示す断面概略図である。図8(a)は、反射型マスクブランク40を構成するハードマスク43の密着層43b上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン(第一のレジストパターン)46を形成する工程を示す。図8(b)は、レジストパターン46に沿って酸素含有塩素系ガスエッチングにより密着層43bと下層43aとから構成されるハードマスク43を続けてパターニングする工程を示す。図8(c)は、残存したレジストパターン46を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図8(d)は、密着層43bと下層43aとから構成されるハードマスク43のパターンに沿って酸素非含有塩素系ガスエッチングにより吸収膜42をパターニングすると同時にハードマスク43の密着層43bが剥離された後、洗浄する工程を示す。こうして、第4実施形態に係る反射型マスク400を製造する。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る透過型マスクブランク10、20、30、または反射型マスクブランク40を用いた透過型マスク100、200、300、または反射型マスク400の製造方法は、マスクブランク10、20、30、40のハードマスク13、23、33、43上にレジストパターン16、26、36、46を形成する工程と、レジストパターン16、26、36、46をマスクとしてハードマスク13、23、33、43を酸素含有塩素系ガスでエッチングし、ハードマスクパターンを形成する工程と、ハードマスクパターンをマスクとして薄膜である遮光膜12、22、32、または吸収膜42をフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスでエッチングし、薄膜パターンを形成する工程と、を有している。
【0062】
図5(a)、図6(a)、図7(a)、及び図8(a)の各工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上200nm以下の範囲内である。特に、微細なパターン形成が求められる透過型、及び反射型の各マスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターン16、26、36、46のアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、150nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は10μC/cm以上200μC/cm以下の範囲内であり、この描画の後に加熱処理、及び現像処理を施してレジストパターン16、26、36、46を得る。
【0063】
また、図5(b)、図6(b)、図7(b)、及び図8(b)の各工程において、ハードマスク13、23をパターニングする酸素含有塩素系ガスエッチングの条件、及び密着層33b、43bと下層33a、43aとから構成されるハードマスク33、43を続けてパターニングする酸素含有塩素系ガスエッチングの条件は、従来からクロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、例えば、塩素ガスと酸素ガスとを含むガスであってもよく、また塩素ガスと酸素ガスとに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。遮光膜12、22、32、及び吸収膜42は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0064】
また、図5(c)、図6(c)、図7(c)、及び図8(c)の各工程において、レジストパターン16、26、36、46の剥離除去は、エッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
また、図5(d)、及び図6(d)の各工程において、遮光膜12、22をパターニングするフッ素系ガスエッチングの条件は、従来からケイ素化合物をエッチングする際に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。ハードマスク13、23、及び保護膜25は、フッ素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0065】
また、図7(d)、及び図8(d)の各工程において、遮光膜32または吸収膜42をパターニングする酸素非含有塩素系ガスエッチングの条件は、従来からタンタル化合物をエッチングする際に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、例えば、塩素ガスであってもよく、また塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。ハードマスク33、43の密着層33b、43bは、酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が相対的に低いため、本工程で除去される。ハードマスク33、43の下層33a、43a、半透明膜34、及び保護膜45は、酸素非含有塩素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0066】
また、図6(e)、及び図7(f)の各工程において、保護膜25、35をパターニングする酸素系ガスエッチングの条件は、例えば、酸素ガスであってもよく、また酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。ハードマスク23、ハードマスク33の下層33a、及び半透明膜24は、酸素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0067】
また、図6(f)、及び図7(e)の各工程において、半透明膜24、34をパターニングするフッ素系ガスエッチングの条件は、従来からケイ素化合物膜をエッチングする際に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。ハードマスク23、ハードマスクの下層33a、保護膜35は、フッ素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。図6(f)では、半透明膜24をパターニングすると同時に基板21を1nmから3nm程度掘り込み、半透明膜24の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。一方、図7(e)では、保護膜35がフッ素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、半透明膜34をパターニングする際に基板31が掘り込まれない。したがって、基板掘り込み量のパターン依存やマスク位置依存による位相差誤差が生じず、マスクの全パターン、全箇所においてより均一な位相差を実現できる。
【0068】
また、図5(e)、図6(g)、及び図7(g)の各工程において、ハードマスク13、23、及びハードマスク33の下層33aを除去する酸素含有塩素系ガスエッチングの条件は、従来からクロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、例えば、塩素ガスと酸素ガスとを含むガスであってもよく、また塩素ガスと酸素ガスとに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。遮光膜12、22、32は、いずれも酸素含有塩素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0069】
また、図6(h)、及び図7(h)の各工程において、描画方式は、電子ビーム描画よりも精度が落ちるレーザー描画を用いてもよく、レジスト膜を塗布し、電子ビーム描画又はレーザー描画を行い、その後に現像処理を施すことで、第二のレジストパターン27、37を得てもよい。
また、図6(i)の工程において、遮光膜22を除去するフッ素系ガスエッチングの条件は、従来からケイ素化合物をエッチングする際に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。保護膜25は、フッ素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0070】
また、図7(i)の工程において、遮光膜32を除去する酸素非含有塩素系ガスエッチングの条件は、従来からタンタル化合物をエッチングする際に用いられてきた公知のものと同じ条件であってもよく、例えば、塩素ガスであってもよく、また塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。半透明膜34は、酸素非含有塩素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0071】
また、図6(j)の工程において、保護膜25を除去する酸素系ガスエッチングの条件は、例えば、酸素ガスであってもよく、また酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合したものであってもよい。半透明膜24は、酸素系ガスエッチングに対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また図6(k)、及び図7(j)の各工程において、第二のレジストパターン27、37の剥離除去は、エッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
【0072】
[実施例]
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0073】
(実施例1、及び比較例1)
露光波長に対して透明な基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる遮光膜を58nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=45:15:5:35(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの遮光膜のArF光(193nm)の露光波長での光学濃度を測定したところ、3.0であった。
次に、この遮光膜の上にRFスパッタ装置を用いて、窒化ハフニウムからなるハードマスクを5nmの厚さで成膜した。ターゲットは窒化ハフニウムを用い、スパッタガスはアルゴンを用いた。このハードマスクの組成をESCAで分析したところ、Hf:N=50:50(原子%比)であった。
【0074】
このようにして、露光波長に対して透明な基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる遮光膜、ハフニウムと窒素とからなるハードマスクがこの順に積層された、実施例1の透過型マスクブランクを得た。このようにして形成された上記遮光膜は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な薄膜であった。また、このようにして形成された上記ハードマスクは、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なマスクであった。
【0075】
次に、このハードマスク上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚100nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストラインパターンを形成した。更に、このレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEM(Scanning Electron Microscope)にて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは95nm、最小解像パターンの寸法は40nm、最小解像パターンのアスペクト比は2.4となった。
【0076】
次に、比較例1として、従来から用いられている、ArF光(波長193nm)に対して透明な基板上に、ケイ素を主成分とする遮光膜、クロムを主成分とするハードマスクがこの順に積層されたマスクブランク上へ、実施例1と同様の方法でレジストラインパターンを形成した。次に、そのレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは95nm、最小解像パターンの寸法は52nm、最小解像パターンのアスペクト比は1.8となった。
従って、実施例1のレジストラインパターンは、比較例1よりも、最小解像パターンの寸法が小さく、アスペクト比が大きいレジストパターンを形成可能であることが確認された。
【0077】
次に、実施例1の透過型マスクブランクに対して、エッチング装置を用いて、ハードマスクをパターニングし、ハードマスクパターンを得た。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、遮光膜へのダメージはなかった。次に、レジストパターンを硫酸過水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、エッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングし、遮光膜パターンを得た。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、ハードマスクパターンへのダメージ量は1nmであり、微小欠陥の発生やハードマスクパターンの消失はなかった。
【0078】
次に、エッチング装置を用いて、ハードマスクパターンを除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜パターンへのダメージはなかった。
このようにして、露光波長に対して透明な基板からなる透明領域と、露光波長に対して透明な基板と遮光膜パターンとが積層されてなる遮光領域とからなる、実施例1の透過型マスクを得た。
【0079】
(実施例2、及び比較例2)
露光波長に対して透明な基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素と窒素とからなる半透明膜を83nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この半透明膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O:N=40:30:30(原子%比)であった。
次に、この半透明膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウムとニオブとからなる保護膜を7nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウム・ニオブ合金を用い、スパッタガスはキセノンを用いた。この保護膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:Nb=85:15(原子%比)であった。
【0080】
次に、この保護膜の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる遮光膜を48nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=45:15:5:35(原子%比)であった。また、分光光度計にて、この半透明膜と保護膜と遮光膜とを合わせた積層体の、ArF光(193nm)の露光波長での光学濃度を測定したところ、3.0であった。
次に、この遮光膜の上にRFスパッタ装置を用いて、窒化ハフニウムからなるハードマスクを5nmの厚さで成膜した。ターゲットは窒化ハフニウムを用い、スパッタガスはアルゴンを用いた。このハードマスクの組成をESCAで分析したところ、Hf:N=50:50(原子%比)であった。
【0081】
このようにして、露光波長に対して透明な基板の上にケイ素と酸素と窒素とからなる半透明膜、ルテニウムとニオブとからなる保護膜、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる遮光膜、ハフニウムと窒素とからなるハードマスクがこの順に積層された、実施例2の透過型マスクブランクを得た。このようにして形成された上記半透明膜は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された上記保護膜は、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスまたは酸素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された上記遮光膜は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な薄膜であった。また、このようにして形成された上記ハードマスクは、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なマスクであった。
【0082】
次に、このハードマスク上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚100nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストラインパターンを形成した。更に、このレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは95nm、最小解像パターンの寸法は40nm、最小解像パターンのアスペクト比は2.4となった。
【0083】
次に、比較例2として、従来から用いられている、ArF光(波長193nm)に対して透明な基板上に、ケイ素を主成分とする遮光膜、クロムを主成分とするハードマスクがこの順に積層されたマスクブランク上へ、実施例2と同様の方法でレジストラインパターンを形成した。次に、そのレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは95nm、最小解像パターンの寸法は52nm、最小解像パターンのアスペクト比は1.8となった。
従って、実施例2のレジストラインパターンは、比較例2よりも、最小解像パターンの寸法が小さく、アスペクト比が大きいレジストパターンを形成可能であることが確認された。
【0084】
次に、実施例2の透過型マスクブランクに対して、エッチング装置を用いて、ハードマスクをパターニングし、ハードマスクパターンを得た。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、遮光膜へのダメージはなかった。次に、レジストパターンを硫酸過水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、エッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングし、遮光膜パターンを得た。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、ハードマスクパターンのダメージ量は1nmであり、保護膜へのダメージはなく、微小欠陥の発生やハードマスクパターンの消失はなかった。
【0085】
次に、エッチング装置を用いて、保護膜をパターニングし、保護膜パターンを得た。エッチングガスは、酸素とヘリウムとを用い、ガス圧は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、ハードマスクパターン、半透明膜へのダメージはなかった。
次に、エッチング装置を用いて、半透明膜をパターニングし、半透明膜パターンを得た。エッチングガスは、CFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。エッチングは、露光波長に対して透明な基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。この際、ハードマスクパターンのダメージ量は1nmであり、微小欠陥の発生やハードマスクパターンの消失はなかった。
【0086】
次に、エッチング装置を用いて、ハードマスクパターンを除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜パターンへのダメージはなかった。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、第二のレジストパターンを形成した。
次に、エッチング装置を用いて、遮光膜パターンを除去した。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、保護膜パターンへのダメージはなかった。
【0087】
次に、エッチング装置を用いて、保護膜パターンを除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、半透明膜パターンへのダメージはなかった。
次に、第二のレジストパターンを硫酸過水洗浄によって剥離洗浄し、露光波長に対して透明な基板からなる透明領域と、露光波長に対して透明な基板と半透明膜パターンとが積層されてなる半透明領域と、露光波長に対して透明な基板と半透明膜パターンと保護膜パターンと遮光膜パターンとが積層されてなる遮光領域とからなる、実施例2の透過型マスクを得た。
【0088】
(実施例3、及び比較例3)
露光波長に対して透明な基板の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウムとニオブとからなる保護膜を7nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウム・ニオブ合金を用い、スパッタガスはキセノンを用いた。この保護膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:Nb=85:15(原子%比)であった。
次に、この保護膜上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる半透明膜を59nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この半透明膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=42:7:5:46(原子%比)であった。
【0089】
次に、この半透明膜上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素とからなる遮光膜を30nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=70:30(原子%比)であった。また、分光光度計にて、この保護膜と半透明膜と遮光膜とを合わせた積層体の、ArF光(193nm)の露光波長での光学濃度を測定したところ、3.0であった。
【0090】
次に、この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスクの下層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスクの下層の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
次に、このハードマスクの下層の上にDCスパッタ装置を用いて、スズと酸素とからなるハードマスクの密着層を2nmの厚さで成膜した。ターゲットは酸化スズを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このハードマスクの密着層の組成をESCAで分析したところ、Sn:O=38:62(原子%比)であった。
【0091】
このようにして、露光波長に対して透明な基板の上にルテニウムとニオブとからなる保護膜、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる半透明膜、タンタルと窒素とからなる遮光膜、クロムと窒素とからなるハードマスクの下層、スズと酸素とからなるハードマスクの密着層がこの順に積層された、実施例3の透過型マスクブランクを得た。このようにして形成された上記保護膜は、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスまたは酸素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された上記半透明膜は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された遮光膜は、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された上記ハードマスクの下層および上記ハードマスクの密着層は、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なマスクであった。また、このようにして形成された上記ハードマスクの下層は、上記ハードマスクの密着層よりもフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が高い層であった。
【0092】
次に、このハードマスクの密着層上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚100nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストラインパターン(第一のレジストパターン)を形成した。更に、このレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは95nm、最小解像パターンの寸法は38nm、最小解像パターンのアスペクト比は2.5となった。
【0093】
次に、比較例3として、従来から用いられている、ArF光(波長193nm)に対して透明な基板上に、ケイ素を主成分とする遮光膜、クロムを主成分とするハードマスクがこの順に積層されたマスクブランク上へ、実施例3と同様の方法でレジストラインパターンを形成した。次に、そのレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは95nm、最小解像パターンの寸法は52nm、最小解像パターンのアスペクト比は1.8となった。
従って、実施例3のレジストラインパターンは、比較例3よりも、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法が小さく、アスペクト比が大きいレジストパターンを形成可能であることが確認された。
【0094】
次に、実施例3の透過型マスクブランクに対して、エッチング装置を用いて、ハードマスクの密着層、ハードマスクの下層を続けてパターニングし、密着層パターンと下層パターンからなるハードマスクパターンを得た。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、遮光膜へのダメージはなかった。次に、レジストパターンを硫酸過水洗浄によって剥膜洗浄した。
【0095】
次に、エッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングし、遮光膜パターンを得た。エッチングガスは塩素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、密着層パターンのダメージ量は2nmであり、密着層パターンが消失したが、下層パターンのダメージ量は1nmであり、半透明膜へのダメージはなく、微小欠陥の発生や下層パターンの消失はなかった。
【0096】
次に、エッチング装置を用いて、半透明膜をパターニングし、半透明膜パターンを得た。エッチングガスは、CFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは10%行った。エッチングは、保護膜があるため、露光波長に透明な基板を掘り込まずに停止した。この際、下層パターンのダメージ量は1nmであり、保護膜へのダメージはなく、微小欠陥の発生や下層パターンの消失はなかった。
【0097】
次に、エッチング装置を用いて、保護膜パターニングし、保護膜パターンを得た。エッチングガスは酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは10%行った。この際、下層パターンへのダメージはなかった。
次に、エッチング装置を用いて、下層パターンを除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、遮光膜パターンのダメージはなかった。
【0098】
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、第二のレジストパターンを形成した。
次に、エッチング装置を用いて、遮光膜パターンを除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、半透明膜パターンのダメージはなかった。
【0099】
次に、第二のレジストパターンを硫酸過水洗浄によって剥離洗浄し、露光波長に対して透明な基板からなる透明領域と、露光波長に対して透明な基板と保護膜パターンと半透明膜パターンとが積層されてなる半透明領域と、露光波長に対して透明な基板と保護膜パターンと半透明膜パターンと遮光膜パターンとが積層されてなる遮光領域とからなる、実施例3の透過型マスクを得た。
【0100】
(実施例4、及び比較例4)
露光による熱膨張が小さい基板の上にDCスパッタ装置を用いて、モリブデンからなる層とケイ素からなる層とを一対として40対積層された多層反射膜を280nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンからなる層にはモリブデンを、ケイ素からなる層にはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンを用いた。この多層反射膜の組成をESCAで分析したところ、モリブデンからなる層はMo=100(原子%比)、ケイ素からなる層はSi=100(原子%比)であった。
【0101】
次に、この多層反射膜上にDCスパッタ装置を用いて、ルテニウムからなる保護膜を3.5nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはアルゴンを用いた。この保護膜の組成をESCAで分析したところ、Ru=100(原子%比)であった。
次に、この保護膜上にDCスパッタ装置を用いて、スズと酸素とからなる吸収膜を30nmの厚さで成膜した。ターゲットは酸化スズを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。この吸収膜の組成をESCAで分析したところ、Sn:O=38:62(原子%比)であった。
【0102】
次に、この吸収膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスクの下層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスクの下層の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
次に、このハードマスクの下層の上にDCスパッタ装置を用いて、スズと酸素とからなるハードマスクの密着層を2nmの厚さで成膜した。ターゲットは酸化スズを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このハードマスクの密着層の組成をESCAで分析したところ、Sn:O=38:62(原子%比)であった。
【0103】
このようにして、露光による熱膨張が小さい基板の上にモリブデンとケイ素とからなる多層反射膜、ルテニウムからなる保護膜、スズと酸素とからなる吸収膜、クロムと窒素とからなるハードマスクの下層、スズと酸素とからなるハードマスクの密着層がこの順に積層された、実施例4の反射型マスクブランクを得た。このようにして形成された上記多層反射膜は、波長13.5nmの光を反射する多層構造を有する膜であった。また、このようにして形成された上記保護膜は、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスまたは酸素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された上記吸収膜は、波長13.5nmの光を吸収する膜であり、酸素含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスによってエッチングが可能な膜であった。また、このようにして形成された上記ハードマスクの下層および上記ハードマスクの密着層は、フッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性を有し、酸素含有塩素系ガスによってエッチングが可能なマスクであった。また、このようにして形成された上記ハードマスクの下層は、上記ハードマスクの密着層よりもフッ素系ガスまたは酸素非含有塩素系ガスエッチングに対する耐性が高い層であった。
【0104】
次に、このハードマスクの密着層上にポジ型化学増幅型電子線レジストを膜厚100nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストラインパターン(第一のレジストパターン)を形成した。更に、このレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは97nm、最小解像パターンの寸法は43nm、最小解像パターンのアスペクト比は2.3となった。
【0105】
次に、比較例4として、従来から用いられている、EUV光(波長13.5nm)の照射時の熱膨張が小さい基板上に、モリブデンとケイ素とからなる多層反射膜、ルテニウムからなる保護膜、タンタルからなる吸収膜、クロムと窒素とからなるハードマスクがこの順に積層されたマスクブランク上へ、実施例4と同様の方法でレジストラインパターンを形成した。次に、そのレジストラインパターンの膜厚方向の高さをAFMで測定し、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法をSEMにて測定した。レジストラインパターンの膜厚方向の高さは97nm、最小解像パターンの寸法は57nm、最小解像パターンのアスペクト比は1.7となった。
従って、実施例4のレジストラインパターンは、比較例4よりも、最小解像パターンの寸法が小さく、アスペクト比が大きいレジストパターンを形成可能であることが確認された。
【0106】
次に、実施例4の反射型マスクブランクに対して、エッチング装置を用いて、ハードマスクの密着層、ハードマスクの下層を続けてパターニングし、密着層パターンと下層パターンとからなるハードマスクパターンを得た。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。この際、吸収膜へのダメージはなかった。次に、レジストパターンを硫酸過水洗浄によって剥膜洗浄した。
【0107】
次に、エッチング装置を用いて、吸収膜をパターニングし、吸収膜パターンを得た。エッチングガスは塩素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは50%行った。この際、密着層パターンのダメージ量は2nmであり、密着層パターンが消失したが、下層パターンのダメージ量は1nmであり、保護膜へのダメージはなく、微小欠陥の発生や下層パターンの消失はなかった。次に、硫酸過水洗浄によって洗浄を行った。
【0108】
このようにして、露光による熱膨張が小さい基板と多層反射膜と保護膜とが積層されてなる反射領域と、露光による熱膨張が小さい基板と多層反射膜と保護膜と吸収膜とが積層されてなる吸収領域とからなる、実施例4の反射型マスクを得た。
実施例1から実施例4の評価結果より、従来の透過型、及び反射型の各マスクと比較して、本実施例の透過型、及び反射型の各マスクブランクを用いて製造される透過型、及び反射型の各マスクは、レジストラインパターンの最小解像パターンの寸法が小さく、アスペクト比が大きいレジストパターンを形成可能であることが可能であり、LSIの製造に有効である。
【0109】
以上、本実施例により本発明の透過型マスクブランク、及び反射型マスクブランク、並びにこれを用いて作製される透過型マスク、及び反射型マスクの各製造方法について説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの実施例や上述した各実施形態を変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明では、透過型マスクブランク、及び反射型マスクブランクの各組成、各膜厚、及び各層構造と、これを用いた透過型マスク、及び反射型マスクの各製造工程、及び各条件とを適切な範囲で選択した。そのため、28nm以下のロジック系デバイス、又は30nm以下のメモリ系デバイス製造に対応した、微細なパターンを高精度で形成した透過型マスク、及び反射型マスクを提供することができる。
【符号の説明】
【0111】
10、20、30・・・透過型マスクブランク
40・・・反射型マスクブランク
11、21、31・・・露光波長に対して透明な基板
41・・・露光による熱膨張が小さい基板
12、22、32・・・遮光膜
42・・・吸収膜
13、23、33、43・・・ハードマスク
33a、43a・・・下層
33b、43b・・・密着層
24、34・・・半透明膜
44・・・多層反射膜
25、35、45・・・保護膜
16、26、36、46・・・レジストパターン(第一のレジストパターン)
27、37・・・レジストパターン(第二のレジストパターン)
100、200、300・・・透過型マスク
400・・・反射型マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8