(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028478
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】鉄骨建て込み用架台及び鉄骨の建て込み方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20220208BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20220208BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
E04B1/41 501
E04G21/12 105Z
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131904
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 靖之
(72)【発明者】
【氏名】岩吉 政輔
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】金谷 勝
(72)【発明者】
【氏名】坂手 直樹
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046BA00
2E125AA02
2E125AB01
2E125AC15
2E125AE07
2E125AG03
2E125AG43
2E125BA02
2E125BA27
2E125BB09
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE04
2E125BE08
2E125CA05
2E125CA82
2E125EA01
2E125EA02
2E125EA08
(57)【要約】
【課題】鉄骨コンクリート複合構造の施工に際し、従来よりもコンクリート打ち継ぎ回数を減らし、且つ、施工性の向上に資する鉄骨建て込み用架台及び鉄骨の建て込み方法を提供する。
【解決手段】鉄骨及びコンクリートを含む鉄骨コンクリート複合構造物の施工時に適用される鉄骨建て込み用架台であって、水平方向に配筋される軸方向鉄筋に留め具を介して固定され、当該軸方向鉄筋上に載置される固定プレート部と、鉄骨の端部に位置するエンドプレートを支持可能な鉄骨載置面を有し、エンドプレートとボルト締結するためのボルト孔が穿設された支持プレート部と、固定プレート部及び支持プレート部の間に介在すると共にこれらを連結し、支持プレート部に作用する積載荷重を固定プレート部に伝達する荷重伝達部を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨及びコンクリートを含む鉄骨コンクリート複合構造物の施工時に適用される鉄骨建て込み用架台であって、
水平方向に配筋される軸方向鉄筋に留め具を介して固定され、当該軸方向鉄筋上に載置される固定プレート部と、
前記鉄骨の端部に位置するエンドプレートを支持可能な鉄骨載置面を有し、前記エンドプレートとボルト締結するためのボルト孔が穿設された支持プレート部と、
前記固定プレート部及び前記支持プレート部の間に介在すると共にこれらを連結し、前記支持プレート部に作用する積載荷重を前記固定プレート部に伝達する荷重伝達部と、
を備える、
鉄骨建て込み用架台。
【請求項2】
前記留め具は前記固定プレート部に設けられたボルト孔に対して取り付け可能であり、且つ、前記軸方向鉄筋を係止する係止フック部を有するUボルトを含む、
請求項1に記載の鉄骨建て込み用架台。
【請求項3】
前記支持プレート部における前記複数のボルト孔が円弧長穴形状を有している、請求項1又は2に記載の鉄骨建て込み用架台。
【請求項4】
前記複数のボルト孔は、各々の円弧における仮想中心位置が同一点となるように前記支持プレート部に設けられている、請求項3に記載の鉄骨建て込み用架台。
【請求項5】
前記固定プレート部、前記荷重伝達部、及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで架台ユニットを構成しており、
前記固定プレート部は、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋に跨って載置可能であり、
前記固定プレート部には、第1の軸方向鉄筋を係止するUボルトを取り付けるための複数の第1ボルト孔が列状に配列されると共に、前記第1の軸方向鉄筋とは異なる第2の軸方向鉄筋を係止するUボルトを取り付けるための複数の第2ボルト孔が列状に配列されており、
前記第1ボルト孔が列状に配列されるボルト孔配列方向と、前記第2ボルト孔が列状に配列されるボルト孔配列方向は平行である、
請求項1から4の何れか一項に記載の鉄骨建て込み用架台。
【請求項6】
前記第1ボルト孔及び前記第2ボルト孔は、ボルト孔配列方向と直交する方向に延伸する長穴として形成されている、
請求項5に記載の鉄骨建て込み用架台。
【請求項7】
前記荷重伝達部及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで上部ユニットを構成しており、
前記固定プレート部は、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋にそれぞれ前記留め具を介して固定される複数の固定プレート片を含み、
複数の前記固定プレート片の各々に対して前記上部ユニットの前記荷重伝達部が接合されることで架台ユニットが構成される、
請求項1から4の何れか一項に記載の鉄骨建て込み用架台構造。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の鉄骨建て込み用架台構造を用いた鉄骨の建て込み方法であって、
水平方向に配筋された軸方向鉄筋上に前記固定プレート部を載置し、前記留め具を介し
て前記固定プレート部を前記軸方向鉄筋に固定する固定工程と、
前記鉄骨を吊り込み、前記エンドプレートを前記支持プレート部の前記鉄骨載置面に載置する工程と、
前記支持プレート部における各ボルト孔にボルトを挿入し、前記支持プレート部と前記エンドプレートとを締結する工程と、
を有する、鉄骨の建て込み方法。
【請求項9】
前記固定プレート部、前記荷重伝達部、及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで架台ユニットを構成しており、
前記固定工程においては、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋に跨って前記固定プレート部を複数の前記軸方向鉄筋に固定する、
請求項8に記載の鉄骨の建て込み方法。
【請求項10】
前記荷重伝達部及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで上部ユニットを構成しており、
前記固定プレート部は、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋にそれぞれ前記留め具を介して固定される複数の固定プレート片を含み、
前記固定工程においては、複数の前記固定プレート片を、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋にそれぞれ前記留め具を介して固定した後、前記固定プレート片の各々に対して前記上部ユニットの前記荷重伝達部を接合する、
請求項8に記載の鉄骨の建て込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨建て込み用架台及び鉄骨の建て込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄骨を軸方向鉄筋に代替して用いた鉄骨コンクリート(SC)複合構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この種のSC複合構造は、種々の土木・建築構造物に適用できるが、典型的には橋梁の下部構造や大口径深礎杭等に多く適用されている。また、軸方向鉄筋に代替する鉄骨には、付着性能に優れた突起付きH形鋼が多く用いられている。
【0003】
ところで、軸方向鉄筋に代替する鉄骨は、その下端に位置するエンドプレートを先埋めされたアンカーボルトや後施工アンカーボルトとナットで締結することで所定の位置に設置される。従って、従来においては、先埋めアンカーボルトや後施工アンカーボルトをコンクリートに固定するために、軸方向鉄筋に代替する鉄骨の下端エンドプレートの据付け設計高さ(以下、「エンドプレート据付け設計高さ」という)よりも下方位置にて、躯体コンクリートの打設を一度打ち止める必要があった。
【0004】
例えば、SC複合構造を橋梁の下部構造に適用する際、均しコンクリート上に基礎(フーチング)の下筋を配筋した後、鉄筋架台を組み立てた後に基礎の上筋を配筋してから、基礎の1次コンクリートをエンドプレート据付け設計高さよりも下方で打ち止めることで、均しコンクリート等にアンカー止めすることで立設させたアンカーフレーム等に支持された先埋めアンカーボルトを途中までコンクリートに埋設し、或いは、硬化した1次コンクリートに後施工アンカーを施工する。そして、軸方向鉄筋に代替する鉄骨を立て込む際には、1次コンクリートの打ち継ぎ処理を施した後、1次コンクリートに設置した先埋めアンカーボルトあるいは後施工アンカーに対して鉄骨のエンドプレートをボルト等で締結することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-78762号公報
【特許文献2】特開2006-348712号公報
【特許文献3】特許第5166632号公報
【特許文献4】特許第6132587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来においては、SC複合構造の施工時に、エンドプレート据付け設計高さよりも下方位置で躯体コンクリートを水平に打ち継ぐ必要があるため、躯体コンクリートの打設回数(打ち継ぎ回数)が増えてしまう。また、これに起因して、コンクリート打設の段取りや、コンクリート打ち継ぎ面の処理に多くの労力や時間が掛かっており、施工コストの増大や工程への悪影響が懸念されていた。また、鉄骨のエンドプレートの締結に先埋めアンカーボルトを用いる場合、鉄骨の重量に耐えられるようにアンカーフレームを堅固にする必要がある。そのため、均しコンクリート上に立設するアンカーフレームが躯体の下筋(主筋、配力筋)に干渉する場合等にはその都度調整する必要があり、施工性に優れているものとは言えなかった。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄骨コンクリート
複合構造の施工に際し、従来よりもコンクリート打ち継ぎ回数を減らし、且つ、施工性の向上に資する鉄骨建て込み用架台及び鉄骨の建て込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、本発明は、鉄骨及びコンクリートを含む鉄骨コンクリート複合構造物の施工時に適用される鉄骨建て込み用架台であって、水平方向に配筋される軸方向鉄筋に留め具を介して固定され、当該軸方向鉄筋上に載置される固定プレート部と、前記鉄骨の端部に位置するエンドプレートを支持可能な鉄骨載置面を有し、前記エンドプレートとボルト締結するためのボルト孔が穿設された支持プレート部と、前記固定プレート部及び前記支持プレート部の間に介在すると共にこれらを連結し、前記支持プレートに作用する積載荷重を前記固定プレート部に伝達する荷重伝達部と、を備える。
【0009】
本発明によれば、鉄骨コンクリート複合構造物の施工時において、水平方向に配筋された軸方向鉄筋上に鉄骨建て込み用架台を設置することができる。これによれば、例えば格子状に堅固に配筋された軸方向鉄筋によって鉄骨建て込み用架台を支持することができるため、支持プレート部の鉄骨載置面上に据え付けた鉄骨の荷重に対して十分に耐えることができ、鉄骨を安定した状態で支持できる。また、本発明における鉄骨建て込み用架台は、上記のように配筋された軸方向鉄筋上に設置されるため、架台が軸方向鉄筋と干渉することがなく、非常に施工性に優れている。
【0010】
また、本発明によれば、鉄骨建て込み用架台への鉄骨の建て込みを完了した状態で、鉄骨コンクリート複合構造物を構築する躯体コンクリートの打設を開始できる。そのため、1次コンクリートを鉄骨のエンドプレートよりも上方の所定位置まで打設することができる。すなわち、従来の施工方法のように、鉄骨のエンドプレートのエンドプレート据付け設計高さよりも下方位置にて1次コンクリートを打ち止める必要が無い。従って、従来技術に比べて躯体コンクリートの打設回数及び打ち継ぎ回数を少なくとも1回減らすことができる。その結果、コンクリート打設の段取りや、コンクリート打ち継ぎ面の処理に要する労力や時間を従来よりも減らすことができる。つまり、鉄骨コンクリート複合の施工性の向上、施工コストの低減、及び工期短縮を実現できる。
【0011】
ここで、鉄骨建て込み用架台装置は、前記固定プレート部と前記軸方向鉄筋との間に挿設可能な着脱式の下部用フィラープレートを、更に備えていても良い。
【0012】
また、鉄骨建て込み用架台装置は、前記エンドプレートと前記支持プレート部との間に挿設可能な着脱式の上部用フィラープレートを、更に備えていても良い。
【0013】
また、前記支持プレート部における前記複数のボルト孔が円弧長穴形状を有していても良い。
【0014】
また、前記複数のボルト孔は、各々の円弧における仮想中心位置が同一点となるように前記支持プレート部に設けられていても良い。
【0015】
また、前記留め具は前記固定プレート部に設けられたボルト孔に対して取り付け可能であり、且つ、前記軸方向鉄筋を係止する係止フック部を有するUボルトを含んでいても良い。
【0016】
また、前記固定プレート部、前記荷重伝達部、及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで架台ユニットを構成しており、前記固定プレート部は、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋に跨って載置可能であり、前記固定プレート部には、第1の
軸方向鉄筋を係止するUボルトを取り付けるための複数の第1ボルト孔が列状に配列されると共に、前記第1の軸方向鉄筋とは異なる第2の軸方向鉄筋を係止するUボルトを取り付けるための複数の第2ボルト孔が列状に配列されており、前記第1ボルト孔が列状に配列されるボルト孔配列方向と、前記第2ボルト孔が列状に配列されるボルト孔配列方向は平行であっても良い。
【0017】
また、前記第1ボルト孔及び前記第2ボルト孔は、ボルト孔配列方向と直交する方向に延伸する長穴として形成されていても良い。
【0018】
また、本発明に係る鉄骨建て込み用架台装置は、前記荷重伝達部及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで上部ユニットを構成しており、前記固定プレート部は、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋にそれぞれ前記留め具を介して固定される複数の固定プレート片を含み、複数の前記固定プレート片の各々に対して前記上部ユニットの前記荷重伝達部が接合されることで架台ユニットが構成されていても良い。
【0019】
また、本発明は、上記鉄骨建て込み用架台装置を用いた鉄骨の建て込み方法として特定することもできる。すなわち、本発明に係る鉄骨の建て込み方法は、水平方向に配筋された軸方向鉄筋上に前記固定プレート部を載置し、前記留め具を介して前記固定プレート部を前記軸方向鉄筋に固定する工程と、前記鉄骨を吊り込み、前記エンドプレートを前記支持プレート部の前記鉄骨載置面に載置する工程と、前記支持プレート部における各ボルト孔にボルトを挿入し、前記支持プレート部と前記エンドプレートとを締結する工程と、を有する。
【0020】
そして、本発明に係る鉄骨の建て込み方法において、前記固定プレート部、前記荷重伝達部、及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで架台ユニットを構成しており、前記固定工程においては、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋に跨って前記固定プレート部を複数の前記軸方向鉄筋に固定しても良い。或いは、前記荷重伝達部及び前記支持プレート部が予め一体に接合されることで上部ユニットを構成しており、前記固定プレート部は、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋にそれぞれ前記留め具を介して固定される複数の固定プレート片を含み、前記固定工程においては、複数の前記固定プレート片を、間隔をおいて配列される別々の前記軸方向鉄筋にそれぞれ前記留め具を介して固定した後、前記固定プレート片の各々に対して前記上部ユニットの前記荷重伝達部を接合しても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鉄骨コンクリート複合構造の施工に際し、従来よりもコンクリート打ち継ぎ回数を減らし、且つ、施工性の向上に資する鉄骨建て込み用架台及び鉄骨の建て込み方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、SC複合構造物の施工に際し、鉄骨建て込み用架台を用いて鉄骨の建て込みを行った状態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、フーチングにおける下筋上に設置された鉄骨建て込み用架台を側方から眺めた概略図である。
【
図4】
図4は、フーチングの施工が完了した状況を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、柱脚の構築方法の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る基本型架台の斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る基本型架台の上面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る基本型架台の下面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る基本型架台の第1側面図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る基本型架台の第2側面図である。
【
図11】
図11は、固定プレート部を第1主筋に固定する留め具の詳細図である。
【
図12】
図12は、固定プレート片と第1主筋との間に挿設可能な着脱式の下部用フィラープレートの平面図である。
【
図13】
図13は、鉄骨のエンドプレートと支持プレート部の間に挿設可能な着脱式の第1の上部用フィラープレートの斜視図である。
【
図14】
図14は、鉄骨のエンドプレートと支持プレート部の間に挿設可能な着脱式の第2の上部用フィラープレートの斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態1に係るコーナー設置用架台の斜視図である。
【
図16】
図16は、実施形態1に係るコーナー設置用架台の上面図である。
【
図17】
図17は、実施形態1に係るコーナー設置用架台の第1側面図である。
【
図18】
図18は、SC複合構造の構築方法を説明する図である。
【
図19】
図19は、第1主筋上に設置した固定プレート部を第1主筋に固定する状況を示す図である。
【
図20】
図20は、固定工程が完了した状況における基本型架台の斜視図である。
【
図21】
図21は、固定工程が完了した状況における基本型架台の側面図である。
【
図22】
図22は、固定工程が完了した状況における基本型架台の下面図である。
【
図24】
図24は、基本型架台における支持プレート部上に鉄骨を載置した状態を示す図である。
【
図25】
図25は、基本型架台を用いた場合の締結工程に対応する状況を説明する図である。
【
図26】
図26は、鉄骨をコーナー設置用架台の支持プレート部に固定した状況を説明する図である。
【
図29】
図29は、SC複合構造物の施工に際し、実施形態2に係る架台を用いて鉄骨の建て込みを行った状態を示す平面図である。
【
図30】
図30は、実施形態2に係る架台における固定プレート片の上面図である。
【
図31】
図31は、実施形態2に係る上部ユニットの斜視図である。
【
図32】
図32は、実施形態2に係る上部ユニットの下面図である。
【
図33】
図33は、実施形態2に係る固定プレート片の固定工程に対応する状況を示す図である。
【
図34】
図34は、実施形態2において、中央配置軸方向鉄筋に第2の下部用フィラープレートを取り付けた状況を示す図である。
【
図35】
図35は、実施形態2に係る架台の設置が完了した状況を示す図である。
【
図36】
図36は、実施形態2に係る架台の支持プレート部に鉄骨を据え付ける状況を示す図である。
【
図37】
図37は、実施形態2に係る架台の支持プレート部に対する鉄骨の据え付けが完了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されない。
【0024】
<実施形態1>
図1は、鉄骨及びコンクリートを含む鉄骨コンクリート(SC)複合構造物の施工に際し、鉄骨建て込み用架台1を用いて鉄骨2の建て込みを行った状態を示す平面図である。
図2は、
図1における一部の部分平面図である。ここでは、SC複合構造の一例として橋梁の下部構造である基礎(フーチング)の施工時に鉄骨建て込み用架台1を適用する場合を例に説明する。なお、
図1及び
図2に示す例では、鉄骨2をオーバル形状(長円形)に平面配置しているが、勿論、鉄骨2の配置形状や位置、数等は特に限定されない。
【0025】
図1及び
図2に示す符号3はフーチングの下筋である。下筋3は、
図1及び
図2中、X方向に沿って配される第1主筋3Aと、X方向に直交するY方向に沿って配される第2主筋3Bが格子状に配筋されている。下筋3(第1主筋3A、第2主筋3B)は、水平方向に配筋された軸方向鉄筋である。ここで、第1主筋3Aは、設計で規定されているピッチ(間隔)で平行に並べられている。第2主筋3Bも同様に、設計で規定されているピッチ(間隔)で平行に並べられている。
図1及び
図2に示す例では、第2主筋3Bの上に第1主筋3Aが配置されるように下筋3が格子状に配筋されている。
図1及び
図2に示すように、本実施形態においては、配筋された下筋3上に鉄骨建て込み用架台1を載置及び固定し、鉄骨建て込み用架台1の上に鉄骨2が建て込まれる。また、図中の符号20は、鉄骨2の下端に取り付けられたエンドプレートである。また、符号21は鉄骨2のウェブ、符号22は鉄骨2のフランジである。
【0026】
図3は、フーチングにおける下筋3上に設置された鉄骨建て込み用架台1を側方から眺めた概略図である。
図3において、鉄骨2の下端領域のみを示している。また、
図3に示す符号4は、フーチングの床付け面に打設された均しコンクリートである。
図3に示す例では、下筋3(第1主筋3A及び第2主筋3B)が2段配筋されている。なお、下筋3は、適宜のスペーサー等に支持されており、均しコンクリート4からのかぶり厚や、1段目の2段目の下筋3同士のあきが確保されるようになっている。
【0027】
ここで、鉄骨2は、フーチングに支持される橋脚の軸方向鉄筋に代替する部材として用いられる。そのため、鉄骨2のフランジ22の外面には、コンクリートとの付着性能に優れた突起付きH形鋼が用いられている。ここで、本実施形態における鉄骨建て込み用架台1を用いて施工されるフーチング及び当該フーチングに支持される橋脚の施工手順の一例について簡単に説明すると、
図1及び
図2に示すように鉄骨2の建て込みやフーチングにおける下筋2以外の上筋、縦筋等の配筋が完了した状態で、フーチングのコンクリートを打設する。
図4は、フーチングF1の施工が完了した状況を概略的に示す図である。符号CB1~CB3は、フーチングF1におけるコンクリートの水平打ち継ぎ箇所の一例を示している。符号C1~C4は、1次コンクリート~4次コンクリートである。勿論、フーチングF1におけるコンクリートの打ち継ぎ回数などは、フーチングF1の高さ(せい)寸法等に応じて適宜変更することができる。
【0028】
図4に示す符号5は、フーチングF1のコンクリート天端である。鉄骨(突起付きH形鋼)2は、フーチングF1の上部に構築される柱脚の軸方向鉄筋に代替する構造部材として用いられるため、
図4に示すように、フーチングF1のコンクリート天端5から鉄骨(突起付きH形鋼)2が突出した状態で上方に向かって延設されている。柱脚の施工方法については特に限定されないが、例えば、
図5に示すように順次、帯鉄筋や中間帯鉄筋等が予め配筋された筒形のプレキャスト埋設型枠6を吊り込み、フーチングのコンクリート天端5から鉄骨(突起付きH形鋼)2を挿通させてフーチングF1の上部にプレキャスト埋設型枠6を積み重ねる。順次、プレキャスト埋設型枠6を積み上げてゆき、プレキャスト埋設型枠6の内部にコンクリートを打設することによって、柱脚P1を構築することができる。なお、上述したフーチングF1及び柱脚P1の構築方法は一例であり、種々の構築方法が適用できるのは勿論である。
【0029】
次に、本実施形態における鉄骨建て込み用架台1の詳細について説明する。
図2に示すように、本実施形態における鉄骨建て込み用架台1には、符号1Aで示される架台と符号1Bで示される架台の2種類用意されている。符号1Aで示される架台を「基本型架台」と呼び、符号1Bで示される架台を「コーナー設置用架台」と呼ぶ。本実施形態において、基本型架台1Aは、据え付ける鉄骨2のウェブ21が基本型架台1Aを固定する下筋3(第1主筋3A)に平行又は直交方向に配置される場合に用いられる。一方、コーナー設置用架台1Bは、据え付ける鉄骨2のウェブ21がコーナー設置用架台1Bを固定する下筋3(第1主筋3A)に対して斜めに傾斜して配置される場合に用いられる。基本型架台1A及びコーナー設置用架台1Bは何れも鋼製である。
【0030】
まず、基本型架台1Aについて説明する。
図6は、実施形態1に係る基本型架台1Aの斜視図である。
図7は、実施形態1に係る基本型架台1Aの上面図である。
図8は、実施形態1に係る基本型架台1Aの下面図である。
図9は、実施形態1に係る基本型架台1Aの第1側面図である。
図10は、実施形態1に係る基本型架台1Aの第2側面図である。
図9には、
図7における矢視A方向の側面、
図10には
図7における矢視B方向の側面が示されている。
【0031】
基本型架台1Aは、支持プレート部11と、下筋3に留め具を介して固定される固定プレート部12と、支持プレート部11及び固定プレート部12の間に介在すると共にこれらを連結する脚部13A,13Bを主要構造とし、これらが一体に予め一体に接合された架台ユニットである。
【0032】
支持プレート部11は、鉄骨2を載置するための鋼製平板であり、その上面が鉄骨2のエンドプレート20を支持可能な鉄骨載置面111として形成されている。符号112は、支持プレート部11の下面である。支持プレート部11の鉄骨載置面111及び下面112は共に平坦面として形成されている。支持プレート部11の形状は特に限定されないが、本実施形態においては概略正方形の平面形状を有している。支持プレート部11の鉄骨載置面111における四辺の縁部近傍には、各辺の中点位置を示す目印113が付されている。また、支持プレート部11の鉄骨載置面111における中心部には、目印114が付されている。また、支持プレート部11における4カ所の隅部のうち、隣接する2カ所の隅部にはラウンド状に面取りされた面取り部116が形成されている。また、符号117は、支持プレート部11における一対の面取り部116に挟まれた辺であり、以下では「基準辺」という。
【0033】
更に、支持プレート部11には、鉄骨2のエンドプレート20とボルト締結するためのボルト孔115が支持プレート部11を貫通するように穿設されている。本実施形態においては、円形状のボルト孔115が4つ支持プレート部11に配置されているが、ボルト孔115の数及び形状については特に限定されない。例えば、ボルト孔115は長穴形状であっても良い。
【0034】
固定プレート部12は、一対の固定プレート片12A,12Bからなり、留め具としてのUボルト121及びナット122を用いて下筋3(第1主筋3A)に締結することができるように構成されている。ここで、固定プレート片12Aは一対の脚部13Aを介して支持プレート部11と接合された矩形状の鋼製平板である。同様に、固定プレート片12Bは一対の脚部13Bを介して支持プレート部11と接合された矩形状の鋼製平板である。脚部13A,13Bは、例えば鋼製アングル部材等によって構成された柱状部材である。脚部13Aは、その上端及び下端が固定プレート片12Aの上面123と支持プレート部11の下面112にそれぞれ溶接される等して接合されている。脚部13Bは、その上端及び下端が固定プレート片12Bの上面123と支持プレート部11の下面112にそ
れぞれ溶接される等して接合されている。
【0035】
また、一対の固定プレート片12A,12Bは、間隔をおいて互いに平行に配置されている。符号125は各固定プレート片12A,12Bの長辺である。各固定プレート片12A,12Bの長辺125は互いに平行に配置されている。但し、本実施形態における固定プレート部12は、複数の固定プレート片12A,12Bに分離している必要はなく、単一の鋼製平板によって形成されていても良い。また、符号14は、補強プレート部である。補強プレート部14は、例えば鋼製のアングル部材を組み合わせることによって構成されており、脚部13A,13Bの外側を囲むようにロの字状に配置されている。補強プレート部14は、支持プレート部11の下面112及び各脚部13A,13Bにそれぞれ溶接されている。基本型架台1Aは補強プレート部14によって補強されることで、その強度や剛性が高められている。
【0036】
以上のようにして、一対の固定プレート片12A,12Bの各上面123から立設する脚部13A,13Bを介して支持プレート部11が支持されている。また、固定プレート片12A,12Bにおける上面123と反対側に位置する下面は、下筋3(第1主筋3A)に載置される鉄筋載置面124として形成されている。一対の固定プレート片12A,12Bにおける各鉄筋載置面124は同一面上に配置されている。なお、基本型架台1Aの脚部13A,13Bは、支持プレート部11に作用する積載荷重、すなわち鉄骨2の重量を固定プレート片12A,12Bに伝達する機能を有する部材として構成されており、本発明における荷重伝達部に相当する。
【0037】
ここで、各固定プレート片12A,12Bには、Uボルト121を取り付けるためのボルト孔15が固定プレート片12A,12Bを貫通するように穿設されている。
図8を参照して詳しく説明すると、各固定プレート片12A,12Bには複数のボルト孔15が配置されている。本実施形態においては、各固定プレート片12A,12Bにそれぞれ4個のボルト孔15が設けられている。また、各ボルト孔15は、各固定プレート片12A,12Bの長辺125に沿って延在する長穴として形成されている。
【0038】
ここで、各固定プレート片12A,12Bのうち、一方の端部(以下、「第1端部」という)127A側に位置する方のボルト孔を第1ボルト孔15Aと呼び、他方の端部(以下、「第2端部」という)127B側に位置する方のボルト孔を第2ボルト孔15Bと呼ぶ。本実施形態においては、固定プレート片12A,12Bの各第1端部127Aにそれぞれ第1ボルト孔15Aが2つずつ設けられており、各第2端部127B側にそれぞれ第2ボルト孔15Bが2つずつ設けられている。また、固定プレート部12全体で考えると、第1端部側127Aに4つの第1ボルト孔15Aが設けられており、第2端部127B側に4つの第2ボルト孔15Bが設けられている。
【0039】
固定プレート部12において、第1ボルト孔15A及び第2ボルト孔15Bが延伸する方向を「ボルト孔軸方向」という。上記のようにボルト孔軸方向は、各固定プレート片12A,12Bの長辺125と平行である。また、
図8に示すように、固定プレート部12における4個の第1ボルト孔15Aと、4個の第2ボルト孔15Bは、それぞれ間隔をおいて列状に配置されている。このように第1ボルト孔15A及び第2ボルト孔15Bがそれぞれ列状に配列される方向を「ボルト孔配列方向」という。第1ボルト孔15A及び第2ボルト孔15Bのそれぞれのボルト孔配列方向は平行であり、且つ、ボルト孔軸方向と直交する方向に規定されている。
【0040】
図11は、固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)を第1主筋3Aに固定する留め具の詳細図である。留め具は、Uボルト121、ナット122、及び座金126等を含んでいる。Uボルト121は一対のボルト軸部121Aと、これらを接続するU
字状の係止フック部121Bによって構成されている。座金126は、例えば矩形の平面形状を有しており(
図6を参照)、ボルト軸部121Aを挿通させることの可能な一対の挿通孔126Aが穿設されている。また、Uボルト121における各ボルト軸部121Aにはナット122が螺着可能である。
【0041】
本実施形態において、各固定プレート片12A,12Bにおける各ボルト孔15A,15Bにおけるボルト孔軸方向に沿った長さ(以下、「ボルト軸長さ」という)Lh1は、Uボルト121のボルト幅Wb1に比べて大きな寸法に設定されている。そのため、各ボルト孔15A,15Bに対するUボルト121の取り付け位置は、ボルト孔軸方向に沿って調整することが可能である。また、Uボルト121は、各固定プレート片12A,12Bにおける各ボルト孔15A,15Bに対して着脱することができる。上記のように各固定プレート片12A,12Bの第1端部127A側にはそれぞれ第1ボルト孔15Aが2つずつ設けられている。そのため、各固定プレート片12A,12Bにおいて、2つの第1ボルト孔15Aのうち何れか一方を選択的に使用してUボルト121を取り付けることもできるし、2つの第1ボルト孔15Aの何れとも使用してUボルト121を取り付けることもできる。同様に、各固定プレート片12A,12Bの第2端部127B側にはそれぞれ第2ボルト孔15Bが2つずつ設けられている。そのため、各固定プレート片12A,12Bにおいて、2つの第2ボルト孔15Bのうち何れか一方を選択的に使用してUボルト121を取り付けることもできるし、2つの第2ボルト孔15Bの何れとも使用してUボルト121を取り付けることもできる。
【0042】
次に、基本型架台1Aの付属する各種部材について説明する。
図12は、固定プレート片12A,12Bと第1主筋3Aとの間に挿設可能な着脱式の下部用フィラープレート16の平面図である。下部用フィラープレート16は、Uボルト121における一対のボルト軸部121Aを挿通することが可能な円形断面を有する一対のボルト孔161が穿設された鋼製板である。下部用フィラープレート16は、各固定プレート片12A,12Bと第1主筋3Aとの間の隙間を埋めるための部材であり、選択的に各固定プレート片12A,12Bと第1主筋3Aとの間に挿設される。
【0043】
図13は、鉄骨2のエンドプレート20と支持プレート部11における鉄骨載置面111との間に挿設可能な着脱式の第1の上部用フィラープレート17の斜視図である。第1の上部用フィラープレート17は、鉄骨2におけるエンドプレート20の略半分の大きさを有する矩形状の薄鋼板であり、鉄骨2のエンドプレート20と支持プレート部11を締結するボルトを挿通するための円形断面を有する一対のボルト孔171が穿設されている。第1の上部用フィラープレート17は、支持プレート部11の鉄骨載置面111とエンドプレート20との間に介在させることで、鉄骨2のエンドプレート20を設置する高さを調整することができる。なお、板厚の異なる複数種類の第1の上部用フィラープレート17を用意しておくことができる。
【0044】
図14は、鉄骨2のエンドプレート20と支持プレート部11における鉄骨載置面111との間に挿設可能な着脱式の第2の上部用フィラープレート18の斜視図である。第2の上部用フィラープレート18は、第1の上部用フィラープレート17と同様、エンドプレート20の略半分の大きさを有する矩形状の薄鋼板である。第2の上部用フィラープレート18は、ボルト孔171の代わりにU字形状を有するボルト用切り欠き181が設けられている。ボルト用切り欠き181は、
図14に示すように第2の上部用フィラープレート18の外縁と連通している。そのため、支持プレート部11における鉄骨載置面111に鉄骨2を据え付け、支持プレート部11とエンドプレート20とをボルト締結した後に、鉄骨載置面111とエンドプレート20との間の隙間に第2の上部用フィラープレート18を横差しすることができる。なお、第2の上部用フィラープレート18についても、板厚の異なるものを複数種類用意しておくと良い。
【0045】
次に、コーナー設置用架台1Bの詳細構造について説明する。コーナー設置用架台1Bは、上記のようにウェブ21が第1主筋3Aに対して斜めに傾斜して配置される鉄骨2の建て込みに使用される架台である。
図15は、実施形態1に係るコーナー設置用架台1Bの斜視図である。
図16は、実施形態1に係るコーナー設置用架台1Bの上面図である。
図17は、実施形態1に係るコーナー設置用架台1Bの第1側面図である。
図17には、
図16における矢視C方向の側面を示している。
【0046】
コーナー設置用架台1Bは、支持プレート部11Aと、下筋3(第1主筋3A)にUボルト121及びナット122等の留め具を介して固定される固定プレート部12と、支持プレート部11A及び固定プレート部の間に介在すると共にこれらを連結する脚部13A,13Bを主要構造として有している。コーナー設置用架台1Bにおける固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)及び脚部13A,13Bは基本型架台1Aと共通構造である。そして、コーナー設置用架台1Bは、支持プレート部11Aにおけるボルト孔115Aの形状が基本型架台1Aにおける支持プレート部11のボルト孔115と相違している点を除いて基本型架台1Aと共通する。以下、コーナー設置用架台1Bについて、基本型架台1Aと共通する構成については同一の参照符号を付し、基本型架台1Aとの相違点を中心に説明する。
【0047】
コーナー設置用架台1Bにおける支持プレート部11Aには4個のボルト孔115Aが設けられている。ボルト孔115Aは円弧長穴形状を有し、長軸が円弧状となっている。より詳しくは、支持プレート部11Aにおける各ボルト孔115Aは、各々の円弧における仮想中心位置が同一点となるように設けられている。
図16に示す例では、目印114が付されている鉄骨載置面111の中心位置CPが各ボルト孔115Aの円弧における仮想中心位置に一致している。
【0048】
ここで、
図16における符号VCは、中心位置CPを中心とした仮想円である。また、符号AX1~AX4は、各ボルト孔115Aにおける円弧状の長軸である。
図16に示すように、各ボルト孔115Aにおける円弧状の長軸AX1~AX4は、仮想円VCの一部に一致している。また、
図16に示す符号X1,X2は、支持プレート部11Aの中心位置CP(すなわち、仮想円VCの中心)を通る一組の直交する仮想線であり、各仮想線X1,X2は支持プレート部11Aにおける各辺の中点位置を通っている。
【0049】
また、
図16に示す符号P1~P4は、各ボルト孔115Aにおける円弧状の長軸AX1~AX4と仮想線X1との交点である。各交点P1~P4は、仮想円VC上に位置し、互いに円周方向へ90°ずれて位置している。
図16に示す例では、各交点P1~P4が、各ボルト孔115Aにおける円弧状の長軸AX1~AX4の中点に一致するように各ボルト孔115Aが設けられている。
【0050】
次に、本実施形態における鉄骨建て込み用架台装置1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B)を用いた鉄骨2の建て込み手順を含むフーチング(SC複合構造)の構築方法について説明する。
図18は、鉄骨2の建て込み手順を含むフーチング(SC複合構造)の構築方法を説明する図である。
【0051】
まず、ステップS01において、水平方向に配筋された軸方向鉄筋である下筋3上における所定位置に、順次、基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bにおける固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)を載置し、留め具としてのUボルト121、ナット122、座金126等を介して固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)を第1主筋3Aに固定する(固定工程)。ここでは、下筋3のうち、最上段に位置する第1主筋3Aの上に、各基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bを載置する。
【0052】
図19~
図22は、固定工程に対応する状況を説明する図である。
図19~
図22においては、例示的に基本型架台1Aを第1主筋3Aに固定する状況を図示する。なお、本実施形態における基本型架台1A及びコーナー設置用架台1Bは固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)が共通構造であるため、固定工程は同様の手順で行うことができる。
【0053】
図19は、最上段の第1主筋3A上に設置した固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)を第1主筋3Aに固定する状況を示している。
図19において、配筋された下筋3のうち、上段の第1主筋3A及び第2主筋3Bのみを図示しており、下段の第1主筋3A及び第2主筋3Bの図示を省略している。
【0054】
固定工程の詳細を説明すると、最上段に位置する第1主筋3Aの所定位置に固定プレート片12A,12Bを載置した後、Uボルト121等を用いて例えば固定プレート片12A,12Bの4カ所を最上段の第1主筋3Aに締結する。なお、基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bにおける固定プレート片12A,12Bを第1主筋3A上に載置する際、固定プレート片12A,12Bの上段に位置する支持プレート部11が予め定められた設計位置に配置されるように、その載置位置が調整される。ここでいう支持プレート部11の設計位置とは、後工程において支持プレート部11のボルト孔115を用いて鉄骨2のエンドプレート20を締結する際に、鉄骨2を正規の設計位置に建て込むことができる予め規定された位置である。
【0055】
ここで、基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bは、支持プレート部11における基準辺117(
図6、
図7等を参照)を配向させる方向が基本型架台1A,コーナー設置用架台1B毎に予め定められていても良い。これにより、基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bを第1主筋3A上に載置する際、支持プレート部11における一対の面取り部116を目印として支持プレート部11における基準辺117の向きを既定された向きに間違えることなく容易に合わせることができる。なお、第1主筋3A上に固定プレート片12A,12Bを仮設置した後、支持プレート部11の鉄骨載置面111における中心部に付された目印113や、四辺にそれぞれ付された目印114等を基準として測量等を行い、支持プレート部11が設計位置に合致するように第1主筋3Aに対する固定プレート片12A,12Bの位置を調整しても良い。
【0056】
なお、固定工程においては、
図22に示すように、各ボルト孔15A,15Bのボルト孔軸方向が第1主筋3Aの鉄筋軸方向と直交するように固定プレート片12A,12Bを複数の別々の第1主筋3Aに跨らせて載置する。すなわち、各ボルト孔15A,15Bのボルト孔配列方向が第1主筋3Aの鉄筋軸方向と平行に配置されるように固定プレート片12A,12Bを複数の別々の第1主筋3Aに跨らせて載置する。上記のように、固定プレート片12A,12Bにおける第1端部127A側の第1ボルト孔15Aと、第2端部127B側の第2ボルト孔15Bは、異なる第1主筋3Aに対して固定プレート片12A,12Bを締結するために用いられる。そのため、固定プレート片12A,12Bにおける4つの第1ボルト孔15Aが一の第1主筋3A(
図22において、(A)を付す)上に配置され、4つの第2ボルト孔15Bが他の第1主筋3A(
図22において、(B)を付す)上に配置されるように固定プレート片12A,12Bが設置される。そして、第1主筋3A(A),3A(B)に対してUボルト121の係止フック部121Bを係止した後、そのボルト軸部121Aを固定プレート片12A,12Bにおける第1ボルト孔15A,第2ボルト孔15Bに挿通させ、ボルト軸部121Aに座金126を装着してからナット122を螺着し、締め付ける。これにより、基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bにおける各固定プレート片12A,12Bを第1主筋3A(A),3A(B)に対して固定することができる。
【0057】
なお、上記の固定工程では、必要に応じて下部用フィラープレート16をUボルト121に装着した状態でUボルト121の締結を行う。これにより、固定プレート片12A,12Bと第1主筋3Aとの間に下部用フィラープレート16を挿設することができる。その結果、固定プレート片12A,12Bと第1主筋3Aとの間に隙間が形成されることを抑制できる。
【0058】
図20~
図22は、固定工程が完了した状態、すなわち、配筋された第1主筋3に対する固定プレート片12A,12Bの設置及び固定が完了した状態を示している。
図20は、固定工程が完了した状況における基本型架台1Aの斜視図を示す。
図21は、固定工程が完了した状況における基本型架台1Aの側面図を示す。
図22は、固定工程が完了した状況における基本型架台1Aの下面図を示す。符号3Cは、第1主筋3A同士の継手箇所に配置される機械式継手のカプラーである。第1主筋3Aは、例えば呼び名D51等といった大径の鉄筋棒鋼であり、ねじ節を有している。機械式継手は、例えばねじ節式継手、鋼管圧着式継手、モルタル充填式継手等が例示できるが、これらには限定されない。
【0059】
機械式継手のカプラー3Cは第1主筋3A同士の端部同士を覆うように配置される。そのため、
図20~
図22に示すように固定プレート片12A,12Bがカプラー3C上に載置される場合、そのままの状態では固定プレート片12A,12Bの鉄筋載置面124と第1主筋3Aとの間に隙間(段差)が生じてしまう。そこで、本実施形態においては、固定プレート片12A,12Bが機械式継手のカプラー3Cと重なる位置に設置される場合、下部用フィラープレート16をUボルト121に装着することで機械式継手のカプラー3C及び第1主筋3A間の段差を解消すると良い。これにより、固定プレート片12A,12Bの鉄筋載置面124及び第1主筋3A間の隙間(段差)を下部用フィラープレート16によって埋めることができる。その結果、がたつくこと無く固定プレート片12A,12Bを第1主筋3Aに固定することが可能となる。また、基本型架台1Aの支持プレート部11に鉄骨2を据え付けた際に、当該鉄骨2の荷重を固定プレート片12A,12Bから第1主筋3Aへと確実に伝達することができる。また、鉄骨2の荷重によって基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bが沈み込むことを抑制できる。
【0060】
図22に示すように、固定プレート片12A,12Bにおける第1端部127A側に設けられた複数の第1ボルト孔15Aは列状に配置され、そのボルト孔配列方向を第1主筋3A(A)に沿って配置することができる。そのため、第1主筋3A(A)の鉄筋軸方向に対して固定プレート片12A,12Bの第1端部127A側をそれぞれ固定することができる。
【0061】
更に、本実施形態においては、固定プレート片12A,12Bにおける第1端部127A側にはそれぞれ第1ボルト孔15Aが2つずつ配置されている。そのため、
図19に示すように何れか一方の第1ボルト孔15Aを選択的に使用してUボルト121を用いて第1主筋3A(A)と締結することができる。例えば固定プレート片12A,12Bの各々において、一方の第1ボルト孔15Aの下方に機械式継手のカプラー3Cが配置されている場合に、残りの第1ボルト孔15Aを用いてUボルト121を締結することができる。
【0062】
更に、各固定プレート片12A,12Bにおける第1ボルト孔15Aのボルト孔軸方向はボルト孔配列方向と直交方向に延伸しており、ボルト軸長さLh1はUボルト121のボルト幅Wb1に比べて大きいため、第1ボルト孔15Aのボルト孔軸方向に沿ってUボルト121の締結位置に調整代を確保できる。
図23は、
図22の破線丸で囲まれたD部を、固定プレート片12Aの上面123側から眺めた概略拡大図である。このように、各固定プレート片12A,12Bにおける第1ボルト孔15Aのボルト孔軸方向は、第1主
筋3Aの鉄筋軸方向と直交方向に沿って配置させることができる。そのため、第1主筋3A同士の配筋ピッチが多少ずれたとしても、第1主筋3A(A)に対して各固定プレート片12A,12Bの第1端部127A側を容易に締結することができる。
【0063】
同様に、
図22に示すように、固定プレート片12A,12Bにおける第2端部127B側に設けられた複数の第2ボルト孔15Bは列状に配置され、そのボルト孔配列方向を第1主筋3A(B)に沿って配置することができる。そのため、第1主筋3A(B)の鉄筋軸方向に対して固定プレート片12A,12Bの第2端部127B側をそれぞれ固定することができる。
【0064】
更に、本実施形態においては、固定プレート片12A,12Bにおける第2端部127B側にはそれぞれ第2ボルト孔15Bが2つずつ配置されている。そのため、固定プレート片12A,12Bの各々において、何れか一方の第2ボルト孔15Bを選択的に使用してUボルト121を用いて第1主筋3A(B)と締結することができる。例えば固定プレート片12A,12Bの各々において、一方の第2ボルト孔15Bの下方に機械式継手のカプラー3Cが配置されている場合に、残りの第2ボルト孔15Bを用いてUボルト121を締結することができる。
【0065】
更に、各固定プレート片12A,12Bにおける第2ボルト孔15Bのボルト孔軸方向はボルト孔配列方向と直交方向に延伸しているため、第2ボルト孔15Bのボルト孔軸方向を第1主筋3Aの鉄筋軸方向と直交方向に沿って配置させることができる。更に、第2ボルト孔15Bにおけるボルト軸長さLh1はUボルト121のボルト幅Wb1に比べて大きいため、第2ボルト孔15Bのボルト孔軸方向に沿ってUボルト121の締結位置に調整代を確保できる。これにより、第1主筋3A同士の配筋ピッチが多少ずれたとしても、第1主筋3A(B)に対して各固定プレート片12A,12Bの第2端部127B側を容易に締結することができる。
【0066】
以上のようにして、固定工程においては下筋3上に全ての基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bが設置及び固定される。固定工程が完了すると、ステップS02において、各基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bにおける支持プレート部11の鉄骨載置面111の高さを測量し、鉄骨載置面111の実際の高さと設計高さとの差を計測する(載置面高さ計測工程)。次に、ステップS03において、フーチングにおける下筋3以外の各種鉄筋、例えば上筋、縦筋等の配筋を行う(上筋組立工程)。
なお、本実施形態では、上筋組立工程の後に鉄骨2の建て込みを行うため、上筋組立工程においては、鉄骨2の建て込み時に上筋等が鉄骨2と干渉しないように上筋等の配筋を行う。
【0067】
上記のようにフーチングの下筋3以外の配筋作業を完了した後、ステップS04においては、順次、鉄骨2を吊り込み、鉄骨2のエンドプレート20を各基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bにおける支持プレート部11の鉄骨載置面111上に載置する(鉄骨建て込み工程)。
【0068】
鉄骨建て込み工程においては、必要に応じて第1の上部用フィラープレート17を支持プレート部11における鉄骨載置面111上に敷いた状態で鉄骨2を建て込む。すなわち、鉄骨2を据え付ける対象となる支持プレート部11における鉄骨載置面111の高さが設計高さよりも低い場合には、第1の上部用フィラープレート17を鉄骨載置面111とエンドプレート20との間に挿設する。本実施形態においては、厚さの異なる複数種類の第1の上部用フィラープレート17を用意しておくことで、適切な厚さの第1の上部用フィラープレート17を鉄骨載置面111とエンドプレート20との間に挿設できる。その結果、エンドプレート20の設置高さを設計位置に精度良く調整できる。
【0069】
なお、複数枚の第1の上部用フィラープレート17を重ね合わせて鉄骨載置面111上に配置した状態で鉄骨2を建て込むようにしても良い。
図24は、基本型架台1Aにおける支持プレート部11上に鉄骨2を載置した状態を示す図である。
図24においては、鉄骨2の下端部近傍のみを図示している。また、フーチングにおける下筋3以外の鉄筋の図示を省略している。また、鉄骨2のエンドプレート20には、典型的には4カ所にボルトを挿通するためのボルト孔(図示せず)が穿設されている。鉄骨2のエンドプレート20を支持プレート部11上に載置する際、支持プレート部11のボルト孔115にエンドプレート20のボルト孔がそれぞれ位置合わせされる。なお、鉄骨2のエンドプレート20に設けられるボルト孔の数は特に限定されない。
【0070】
次に、ステップS05において、基本型架台1A,コーナー設置用架台1Bの支持プレート部11に載置された鉄骨2のエンドプレート20と支持プレート部11を締結する(締結工程)。
【0071】
図25は、基本型架台1Aを用いた場合の締結工程に対応する状況を説明する図である。基本型架台1Aの支持プレート部11における各ボルト孔115にボルト23を挿入し、支持プレート部11とエンドプレート20とを締結する。図中、符号24は、エンドプレート20に設けられたボルト孔である。ここで、基本型架台1Aの支持プレート部11における各ボルト孔115とエンドプレート20に設けられた各ボルト孔24とは互いに位置合わせされている。
図25に示すように、位置合わせされたボルト孔24,115にボルト23を挿通させ、ボルト23の上下にナット25を螺着し、締め付ける。これにより、基本型架台1Aの支持プレート部11と鉄骨2のエンドプレート20が締結される。ここで、従来の先付けアンカーボルトや後施工アンカーにおいては、鉄骨の建て込み時にコンクリートに埋め込まれた状態のアンカーボルトをエンドプレートのボルト孔に通す必要があるため、鉄骨の建て込み時に横振れを起こした場合にはアンカーボルトが損傷する虞があった。これに対して、本実施形態においては、基本型架台1Aの支持プレート部11上に鉄骨2を載置した後、上記ボルト孔24,115にボルト23を挿入し、基本型架台1Aに対する鉄骨2の締結を行うことができるので、ボルト23の損傷を抑制できる。
【0072】
次に、コーナー設置用架台1Bを用いた場合の締結工程について説明する。
図2に示したように、コーナー設置用架台1Bは、据え付ける鉄骨2のウェブ21がコーナー設置用架台1Bを固定する第1主筋3Aに対して斜めに傾斜して配置される。これに対して、
図16に示したように、コーナー設置用架台1Bは、支持プレート部11Aの各ボルト孔115Aが円弧長穴形状を有している。そのため、鉄骨2のエンドプレート20を支持プレート部11Aに固定するためのボルト23の締結位置を自由に調整することができる。これにより、ウェブ21を第1主筋3Aに対して斜めに配置した状態で、コーナー設置用架台1Bにおける支持プレート部11A上に鉄骨2を建て込むことができる。すなわち、鉄骨2の平面的な向きを自由に調整した上でコーナー設置用架台1Bに建て込むことができる。
【0073】
図26は、
図2に示す(A)~(D)の位置にそれぞれ対応する鉄骨2をコーナー設置用架台1Bの支持プレート部11Aに固定した状況を説明する図である。(A)~(D)の何れも、下筋3における最上段の第1主筋3A上に設置されたコーナー設置用架台1Bの支持プレート部11Aに鉄骨2が建て込まれている。なお、(A)~(D)においては、便宜上、エンドプレート20の下方に位置する支持プレート部11Aの各ボルト孔115Aを透視した状態で図示している。(A)~(D)に示すように、コーナー設置用架台1Bに設置する対象となる鉄骨2の向きに合わせて、支持プレート部11Aに設けられた円弧長穴形状を有するボルト孔115Aへのボルト23の挿入位置を調整し、締結することができる。その結果、
図26に示すように、鉄骨2の平面的な向きを自由に調整して鉄
骨2をコーナー設置用架台1Bに建て込むことができる。
【0074】
以上の手順により、各鉄骨建て込み用架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B)に対する鉄骨2の建て込みが完了し、
図1に示した状態となる。
【0075】
次に、ステップS06において、フーチングのコンクリートを打設する(コンクリート打設工程)。コンクリート打設手順は特に限定されないが、
図4で説明したように1次コンクリートC1~4次コンクリートC4を打ち継ぐことで行っても良い。本実施形態においては、コンクリート打設工程の前に各鉄骨建て込み用架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B)に対する鉄骨2の建て込みが完了しているため、1次コンクリートC1を鉄骨2のエンドプレート20よりも上方の所定位置まで打設することができる。すなわち、従来の施工方法のように、鉄骨のエンドプレートのエンドプレート据付け設計高さよりも下方位置にて1次コンクリートを打ち止める必要が無い。従って、本実施形態における鉄骨建て込み用架台1を用いたSC複合構造の構築方法によれば、従来技術に比べて躯体コンクリートの打設回数を少なくとも1回減らすことができる。また、これに付随して、コンクリートの打ち継ぎ回数も減らすことができる。その結果、コンクリート打設の段取りや、コンクリート打ち継ぎ面の処理に要する労力や時間を従来よりも減らすことができる。つまり、SC複合構造の施工性の向上、施工コストの低減、及び工期短縮を実現できる。すなわち、本実施形態においては、非常に施工性に優れた鉄骨建て込み用架台1、及び鉄骨の建て込み方法を提供することができる。
【0076】
また、本実施形態における鉄骨建て込み用架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B)において、支持プレート部11,11A上に設置された鉄骨2の荷重は、支持プレート部11,11Aから脚部13A,13Bを介して固定プレート部12(固定プレート片12A,12B)に伝達される。上記のように、鉄骨建て込み用架台1は、格子状に堅固に配筋された下筋3によって支持されているため、鉄骨2の荷重に対して十分に耐えることができ、鉄骨2を安定した状態で支持することができる。また、鉄骨建て込み用架台1は、上記のように配筋された下筋3上に設置されるため、鉄骨建て込み用架台1が下筋3と干渉することがなく、非常に施工性に優れている。
【0077】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る鉄骨建て込み用架台について説明する。
図27は、実施形態2に係る鉄骨建て込み用架台(以下、単に「架台」という)1Cの斜視図である。
図28は、実施形態2に係る架台1Cの上面図である。
図29は、鉄骨及びコンクリートを含む鉄骨コンクリート(SC)複合構造物の施工に際し、実施形態2に係る架台1Cを用いて鉄骨2の建て込みを行った状態を示す平面図である。本実施形態2における架台1Cにおいて、上述までの実施形態1に係る架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B)と同一の構成については同一の符号を付すことで詳しい説明を省略する。なお、本実施形態における架台1Cの基本コンセプトは、実施形態1に係る架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B)と同様であり、SC複合構造物の施工時に配筋された軸方向鉄筋上に設置され、その上部に鉄骨2を建て込むための架台ユニットである。
【0078】
なお、
図27においては、架台1C上に据え付けられた鉄骨2の下端側領域のみを図示している。また、
図27に示す符号22Aは、鉄骨2のフランジ22の外面に設けられた突起である。
図27から明らかなように、突起22Aは水平方向に延在しており、鉄骨2の軸方向に沿って多数の突起22Aが一定間隔で設けられている。但し、架台1Cに据え付ける鉄骨2の構造については特に限定されず、鉄骨2のフランジ22の外面に突起22Aが設けられていなくても良いのは勿論である。
【0079】
架台1Cは、複数の固定プレート片12Cと、これら複数の固定プレート片12Cに対
して接合される上部ユニット10によって形成された架台ユニットである。本実施形態においては、架台1Cが一組の固定プレート片12Cを備える態様を例に説明するが、3つ以上の固定プレート片12Cを架台1Cが備えていても良い。
【0080】
図30は、実施形態2に係る架台1Cにおける固定プレート片12Cの上面図である。
図30に示す固定プレート片12Cは、矩形平面を有する所謂短冊状の鋼板である。固定プレート片12Cには、実施形態1で説明したUボルト121を固定するためのボルト孔151が設けられている。各ボルト孔151は円形断面を有し、Uボルト121のボルト軸部121Aを挿通すること可能である。固定プレート片12Cの短辺方向に並ぶ一対のボルト孔151に、Uボルト121における一対のボルト軸部121Aを挿通させ、ナット122を用いることで固定プレート片12CにUボルト121を固定することができる。なお、
図30に示す例では、固定プレート片12Cの長辺方向に沿った4カ所にUボルト121を固定することができるようになっている。また、
図29及び
図33~
図36においては、便宜上、固定プレート片12Cの長辺方向における両端側の4カ所にUボルト121を取り付ける態様として作図しているが、固定プレート片12CにおいてUボルト121を固定する位置、固定可能な数については適宜変更することができる。本実施形態においては、一対の固定プレート片12Cを含んで固定プレート部が構成されている。
図29に示すように、一対の固定プレート片12Cは、下筋に留め具を介して固定される固定プレート部12と、SC複合構造物の施工時に水平方向に配筋された下筋3(軸方向鉄筋)に対してUボルト121等の留め具を用いて固定される。
【0081】
次に、
図31及び
図32を参照して架台1Cの上部ユニット10の詳細について説明する。
図31は、実施形態2に係る上部ユニット10の斜視図である。
図32は、実施形態2に係る上部ユニット10の下面図である。上部ユニット10は、支持プレート部11B及び荷重伝達用支持部材19が予め一体に接合されたユニットである。支持プレート部11Bは、実施形態1に係る支持プレート部11と同様、鉄骨2を載置するための部材である。本実施形態においても、支持プレート部11Bは、その上面が鉄骨2のエンドプレート20を支持可能な鉄骨載置面111として形成された鋼製平板である。また、支持プレート部11Bには、実施形態1に係る支持プレート部11と同様、鉄骨2のエンドプレート20とボルト締結するためのボルト孔115が支持プレート部11Bを貫通するように穿設されている。また、
図32に示すように本実施形態における支持プレート部11Bの下面112側には、ボルト孔115と対応する位置にナット25が溶接等によって予め取り付けられている。ナット25は、支持プレート部11Bに対するエンドプレート20の締結に用いるボルトを螺着することができる。
【0082】
上部ユニット10における荷重伝達用支持部材19は、支持プレート部11Bの下面112に接合されており、本実施形態においては異形棒鋼によって構成されている。
図31及び
図32に示す例では、上部ユニット10は、支持プレート部11Bに接合された3本の荷重伝達用支持部材19を有している。各荷重伝達用支持部材19は、間隔をおいて互いに平行に配置され、支持プレート部11Bの下面112から側方に向けて腕状に張り出すようにして設けられている。以下、各荷重伝達用支持部材19のうち、支持プレート部11Bの下面112から側方に向けて腕状に張り出した部位を「腕部191」と呼ぶ。また、各荷重伝達用支持部材19における腕部191のうち、支持プレート部11Bを基準として一方側を「第1腕部191A」と呼び、他方側を「第2腕部191B」と呼ぶ場合がある。
【0083】
上部ユニット10の荷重伝達用支持部材19は、実施形態1に係る脚部13A,13Bに代替する部材であり、使用時に各荷重伝達用支持部材19の腕部191が、軸方向鉄筋に固定された一対の固定プレート片12Cに接合される。このようにして、上部ユニット10の各荷重伝達用支持部材19を介して一対の固定プレート片12Cが上部ユニット1
0と一体に接合されることで、
図27及び
図28等に示すように1つの架台ユニットとなる。また、本実施形態における各荷重伝達用支持部材19は、支持プレート部11Bに作用する積載荷重である鉄骨2の重量を各固定プレート片12Cに伝達するための役割を有する部材として構成されており、本発明における荷重伝達部に相当する。
【0084】
なお、本実施形態において、各荷重伝達用支持部材19は支持プレート部11Bの下面112に溶接などによって接合されているが、その接合方法は特に限定されない。また、各荷重伝達用支持部材19を形成する異形棒鋼の呼び径は、支持プレート部11Bに作用する積載荷重、すなわち支持プレート部11Bに据え付ける鉄骨2の重量に応じて適宜選択することができる。また、本実施形態においては、各荷重伝達用支持部材19を異形棒鋼によって構成しているが、支持プレート部11Bに作用する積載荷重を各固定プレート片12Cに伝達することができる強度、剛性などを有していれば、別の部材によって構成されていても良い。また、架台1C(上部ユニット10)に含まれる荷重伝達用支持部材19の数についても特に限定されない。但し、支持プレート部11Bに作用する積載荷重を円滑に各固定プレート片12Cに伝達し、また、支持プレート部11Bを適切な姿勢に保持する観点からは少なくとも2本の荷重伝達用支持部材19を架台1C(上部ユニット10)が備えていることが好ましい。
【0085】
次に、実施形態2に係る架台1Cを用いた施工手順について説明する。
図33に示すように、水平方向に配筋された軸方向鉄筋である下筋3に対し、一対の固定プレート片12Cを留め具としてのUボルト121、ナット122等を介して固定する(固定工程)。
図33は、実施形態2に係る固定プレート片の固定工程に対応する状況を示す図である。
図33に示す例では、格子状に配筋された第1主筋3A及び第2主筋3B(
図29を参照)のうち、第2主筋3BにUボルト121の係止フック部121B(
図11を参照)を係止させることで、第2主筋3Bに固定プレート片12Cを固定している。
【0086】
また、
図33から明らかなように、一対の固定プレート片12Cは、間隔をおいて配列される別々の軸方向鉄筋にそれぞれ固定される。また、
図33に示すように、軸方向鉄筋の配筋ピッチは施工対象によって様々であるため、
図33に示すように、一対の固定プレート片12Cの少なくとも一方を段取り筋3Cに固定しても良い。
図33に示す例において、段取り筋3Cは、第2主筋3Bを支持する(固定プレート片12Cを固定する第2主筋3Bの直下に位置する)第1主筋3Aに結束線、バンド等を用いて、第2主筋3Bと平行に配筋されている。また、一対の固定プレート片12Cの上面123同士の高さを合わせるために、段取り筋3Cには、第2主筋3Bと呼び径が等しい鉄筋を用いるようにしている。
【0087】
また、
図33に示す例では、一方の固定プレート片12Cを第2主筋3Bに固定し、他方の固定プレート片12Cを段取り筋3Cに固定している。また、一方の固定プレート片12Cが固定される第2主筋3Bと、他方の固定プレート片12Cが固定される段取り筋3Cとの間には、1本の第2主筋3B(以下、「中央配置鉄筋」という)が配筋されている。本実施形態においては、中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bに対して、
図34に示すように着脱式の第2の下部用フィラープレート16Aを取り付ける。
図34は、中央配置軸方向鉄筋に第2の下部用フィラープレート16Aを取り付けた状況を示す図である。
図34には、第2の下部用フィラープレート16Aの拡大図も併せて示している。
【0088】
第2の下部用フィラープレート16Aは、概略U字形状、或いはフック形状を有しており、固定プレート片12Cと板厚が等しい。例えば、鋼板を折り曲げ加工することで第2の下部用フィラープレート16Aを製作しても良い。第2の下部用フィラープレート16Aは、上部ユニット10を各固定プレート片12Cに接合した際に、各荷重伝達用支持部材19と中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bとの隙間を埋めるためのフィラープ
レートである。なお、本実施形態では、各荷重伝達用支持部材19と同じ数(本実施形態では3個)の第2の下部用フィラープレート16Aを用意することが好ましい。
【0089】
次に、
図35に示すように、別々の軸方向鉄筋(第2主筋3B、段取り筋3C)にそれぞれ留め具を介して固定された一対の固定プレート片12Cに対して、上部ユニット10を一体に接合する(接合工程)。
図35は、実施形態2に係る架台1Cの設置が完了した状況を示す図である。具体的には、上部ユニット10における各荷重伝達用支持部材19の第1腕部191Aを一方の固定プレート片12Cに接合し、各荷重伝達用支持部材19の第1腕部191Aを一方の固定プレート片12Cに接合する。各荷重伝達用支持部材19の第1腕部191A、第2腕部191Bは、固定プレート片12Cの上面123に対して溶接されても良い。
【0090】
なお、接合工程においては、上部ユニット10の各荷重伝達用支持部材19を一対の固定プレート片12Cの上面123に跨ぐように仮置きした状態で、支持プレート部11Bが予め定められた設計位置に配置されるように上部ユニット10の位置調整を行った状態で、上部ユニット10が各固定プレート片12Cに接合される。その際、中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bに設置した第2の下部用フィラープレート16Aの位置調整が行われ、各荷重伝達用支持部材19と中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bとの間に各第2の下部用フィラープレート16Aを挿設する。これにより、各荷重伝達用支持部材19と中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bとの隙間を埋めることができる。
【0091】
勿論、上部ユニット10の支持プレート部11Bには、実施形態1の支持プレート部11と同様、位置合わせ用の目印113,114、面取り部116等が設けられていても良い。上記のように接合工程が完了すると、実施形態1の
図18で説明した載置面高さ計測工程、上筋組立工程を行った後、
図36に示すように支持プレート部11Bの鉄骨載置面111上に鉄骨2を据え付け、固定する(鉄骨建て込み工程)。
図36は、実施形態2に係る架台1Cの支持プレート部11Bに鉄骨2を据え付ける状況を示す図である。支持プレート部11Bの鉄骨載置面111上に鉄骨2を据え付ける前に、実施形態1で説明した第1の上部用フィラープレート17を適宜、鉄骨載置面111上に設置しておいても良い。このようにして、支持プレート部11Bの鉄骨載置面111と鉄骨2のエンドプレート20との間に第1の上部用フィラープレート17を挿設することで、鉄骨2の据え付け高さを調整することができる。
【0092】
なお、
図36においては、便宜上、鉄骨2の下端側領域のみを図示している。鉄骨2の建て込みに際しては、鉄骨2を吊り込んだ状態で支持プレート部11Bのボルト孔115にエンドプレート20のボルト孔24の位置をそれぞれ合わせる。その後、エンドプレート20側からボルト23Aをボルト孔24,115に挿入し、支持プレート部11Bの下面112に溶接されたナット25にボルト23Aを螺着し、締め付ける。これにより、鉄骨2のエンドプレート20を架台1Cにおける支持プレート部11Bに対して締結することができる。
図37は、実施形態2に係る架台1Cの支持プレート部11Bに対する鉄骨2の据え付けが完了した状態を示している。鉄骨2の建て込み完了後の後工程については実施形態1と同様であり、コンクリートを打設することでSC複合構造物が構築される。なお、
図37に示す符号5は、均しコンクリート4に設定された鉄筋用コンクリートスペーサーブロックであり、下筋(第1主筋3A)を支持している。
【0093】
以上のように、本実施形態における架台1Cにおいても、実施形態1における架台1と同様の効果が得られる。すなわち、架台1Cの支持プレート部11Bに据え付けられた鉄骨2の荷重を、水平方向に配筋された軸方向鉄筋上に固定されている一対の固定プレート片12Cへと各荷重伝達用支持部材19を介して伝達できる。これにより、鉄骨2の荷重に起因して架台1Cが沈み込むことがない。また、架台1Cは、支持プレート部11Bの
下方に位置する面112と中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bとの隙間に第2の下部用フィラープレート16Aを挿設し、各荷重伝達用支持部材19と中央配置軸方向鉄筋に相当する第2主筋3Bとの隙間を埋めることができる。これにより、支持プレート部11Bに作用する積載荷重を、各荷重伝達用支持部材19及び第2の下部用フィラープレート16Aを介して中央配置軸方向鉄筋に対しても伝達することが可能となり、より一層安定して鉄骨2を支持することができる。
【0094】
また、本実施形態における架台1Cにおいては、異なる軸方向鉄筋にそれぞれ固定される複数の固定プレート片12Cと、上部ユニット10がそれぞれ分離しており、軸方向鉄筋に各固定プレート片12Cをそれぞれ固定した後に、上部ユニット10を各固定プレート片12Cに溶接する方式を採用した。これによれば、軸方向鉄筋に対して位置決め固定された各固定プレート片12Cに対して上部ユニット10を接合する際の接合位置の調整範囲が広い。すなわち、支持プレート部11Bが予め定められた設計位置に配置されるように上部ユニット10の位置調整を行った上で容易に上部ユニット10を各固定プレート片12Cに対して接合できる。
【0095】
そして、本実施形態における架台1Cにおいても、実施形態1に係る架台1と同様、SC複合構造物を構築するための躯体コンクリートを打設する前に、架台1に対する鉄骨2の建て込みが完了しているため、1次コンクリートC1(
図4を参照)を鉄骨2のエンドプレート20よりも上方の所定位置まで打設することができる。すなわち、従来の施工方法のように、鉄骨のエンドプレートのエンドプレート据付け設計高さよりも下方位置にて1次コンクリートを打ち止める必要が無いため、従来技術に比べて躯体コンクリートの打設回数を少なくとも1回減らすことができる。これにより、SC複合構造の施工性の向上、施工コストの低減、及び工期短縮の実現に寄与することができる。
【0096】
なお、本実施形態における架台1Cにおいては、支持プレート部11Bと各固定プレート片12Cとを接合する荷重伝達用支持部材19を異形棒鋼によって形成しており、実施形態1の架台1における脚部13A,13Bに比べて高さ方向の寸法を低く抑えることができる。そのため、例えば鉄骨2におけるエンドプレート20の設計高さが低い場合等には特に好適に適用することができる。なお、本実施形態における架台1Cにおいても、支持プレート部11Bのボルト孔115を、
図16で説明した円弧長穴形状としても良い。つまり、支持プレート部11Bのボルト孔115を、コーナー設置用架台1Bにおける支持プレート部11Aのボルト孔115Aと同じ態様にしても良い。これにより、架台1Cを設置する下筋3に対して鉄骨2のウェブ21を斜めに傾斜配置する場合においても、架台1Cを用いて鉄骨2を好適に建て込むことができる。
【0097】
なお、上述までの本実施形態においては、フーチングにおける鉄骨2の建て込みに鉄骨建て込み用架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B),1Cを用いる例を説明したが、鉄骨建て込み用架台1(基本型架台1A,コーナー設置用架台1B),1Cの適用対象は特に限定されるものではなく、種々のSC複合構造物における鉄骨の建て込みに適用できる。
【符号の説明】
【0098】
1・・・鉄骨建て込み用架台
1A・・・基本型架台
1B・・・コーナー設置用架台
2・・・鉄骨
3・・・下筋
11・・・支持プレート部
12・・・固定プレート部
12A,12B・・・固定プレート片
13A,13B・・・脚部
20・・・エンドプレート
111・・・鉄骨載置面
115,115A・・・ボルト孔
121・・・Uボルト