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特開2022-28502細骨材の製造方法及び汚染土壌の処理システム
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  • 特開-細骨材の製造方法及び汚染土壌の処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028502
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】細骨材の製造方法及び汚染土壌の処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/00 20060101AFI20220208BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20220208BHJP
   B03B 5/66 20060101ALI20220208BHJP
   B03B 7/00 20060101ALI20220208BHJP
   B03B 9/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B09C1/00
B03B5/00 Z
B03B5/66
B03B7/00
B03B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131945
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】土田 充
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山本 達生
【テーマコード(参考)】
4D004
4D071
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB05
4D004BA02
4D004CA04
4D004CA10
4D004CA12
4D004CB13
4D004CC03
4D004CC11
4D004DA09
4D004DA17
4D004DA20
4D071AA05
4D071AA53
4D071AA62
4D071AA64
4D071AB14
4D071AB23
4D071AB33
4D071AB52
4D071CA01
4D071CA05
4D071DA15
(57)【要約】
【課題】汚染土壌の減容化を図りつつ、コンクリートの細骨材として充分な強度を有する細骨材を安定して製造する。
【解決手段】加水した汚染土壌A0を解砕する解砕機11と、解砕後の汚染土壌である第1スラリーA1から粗粒子分Bを分離して第2スラリーA2を得る湿式ふるい12と、第2スラリーA2から第1細粒子分S1を除去して第3スラリーA3を得る第1分級機21と、第3スラリーA3に含まれる低強度礫砂を破砕するように調整された破砕機13と、破砕機13、次いで有機物分離機14で処理した後の第5スラリーA5を順次分級する第2分級機22、第3分級機23、第4分級機24を備え、第2分級機22、第3分級機23、第4分級機24から得られた礫砂を細骨材として回収し、第4分級機24で分離された最も小さい粒度範囲の画分を、破砕された礫砂として除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌に加水して解砕機により解砕し、
解砕後の汚染土壌から、粗粒子分と細粒子分を除去してスラリー状の礫砂を得、
得られた礫砂に含まれる絶乾密度が2.5g/cmに満たない礫砂、又は吸水率が3.5質量%を超える礫砂のいずれかに該当する礫砂を破砕し、
前記破砕された礫砂を除去した礫砂を細骨材として回収する、細骨材の製造方法。
【請求項2】
前記破砕を行った後の礫砂から、上向流式の分離機で比重差による沈降分離を行うことによって有機物を分離した後に、前記破砕された礫砂の除去を行う、請求項1に記載の細骨材の製造方法。
【請求項3】
前記破砕を行った後の礫砂を、複数回分級して複数の画分とし、最も小さい粒度範囲の画分を前記破砕された礫砂として除去し、他の画分を細骨材として回収する、請求項1又は2に記載の細骨材の製造方法。
【請求項4】
前記細骨材として回収した画分の内、最も小さい粒度範囲の画分の礫砂から有機物を分離する、請求項3に記載の細骨材の製造方法。
【請求項5】
加水した汚染土壌を解砕する解砕機と、
前記解砕機で解砕後の汚染土壌から粗粒子分を分離する湿式ふるい機と、
前記解砕機で解砕後の汚染土壌から細粒子分を除去する破砕前分級機と、
前記湿式ふるい機と前記破砕前分級機で処理した後に得られるスラリー状の礫砂に含まれる絶乾密度が2.5g/cmに満たない礫砂、又は吸水率が3.5質量%を超える礫砂のいずれかに該当する礫砂を破砕するように調整された破砕機と、
前記破砕機で処理した後の礫砂から、前記破砕機で破砕された礫砂を分級する破砕後分級機とを有する、汚染土壌の処理システム。
【請求項6】
前記破砕機が、二層流式砂洗浄工法(ハクリジェット)、アトリッションスクラバ、ボールミル、及びロッドミルからなる群から選択される1以上である、請求項5に記載の汚染土壌の処理システム。
【請求項7】
前記破砕を行った後の礫砂から有機物を分離する、有機物分離機をさらに有する、請求項5又は6に記載の汚染土壌の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細骨材の製造方法及び汚染土壌の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質や重金属類等の有害物質は、粒径が小さい土粒子ほど、単位重量あたりの吸着量が多くなる。そのため、粒度の小さいシルトや粘土を湿式分級することにより、汚染濃度が低下した礫や砂と、汚染濃度が高くなったシルトや粘土とに分け、汚染土壌を減容化することが行われている(特許文献1)。
このように、浄化の目的で、汚染土壌の分級処理が行われているが、分級処理後の浄化礫砂はコンクリートの細骨材として利用できる。
すなわち、汚染土壌の分級洗浄設備は、細骨材の生産設備としての側面も併せ持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-221421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートの細骨材には、充分な強度が求められており、コンクリート標準示方書で具体的な強度規格が定められている。そのため、浄化礫砂が上記の規格に適合しない場合、浄化礫砂中から強度の低い礫砂のみを除去する必要がある。しかし、従来、浄化礫砂中から強度の低い礫砂のみを除去する方法がなく、規格に適合する細骨材を安定して製造することが困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、汚染土壌の減容化を図りつつ、コンクリートの細骨材として充分な強度を有する細骨材を安定して製造できる細骨材の製造方法、及び汚染土壌の処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]汚染土壌に加水して解砕機により解砕し、
解砕後の汚染土壌から、粗粒子分と細粒子分を除去してスラリー状の礫砂を得、
得られた礫砂に含まれる絶乾密度が2.5g/cmに満たない礫砂、又は吸水率が3.5質量%を超える礫砂のいずれかに該当する礫砂を破砕し、
前記破砕された礫砂を除去した礫砂を細骨材として回収する、細骨材の製造方法。
[2]前記破砕を行った後の礫砂から、上向流式の分離機で比重差による沈降分離を行うことによって有機物を分離した後に、前記破砕された礫砂の除去を行う、[1]に記載の細骨材の製造方法。
[3]前記破砕を行った後の礫砂を、複数回分級して複数の画分とし、最も小さい粒度範囲の画分を前記破砕された礫砂として除去し、他の画分を細骨材として回収する、[1]又は[2]に記載の細骨材の製造方法。
[4]前記細骨材として回収した画分の内、最も小さい粒度範囲の画分の礫砂から有機物を分離する、[2]又は[3]に記載の細骨材の製造方法。
[5]加水した汚染土壌を解砕する解砕機と、
前記解砕機で解砕後の汚染土壌から粗粒子分を分離する湿式ふるい機と、
前記解砕機で解砕後の汚染土壌から細粒子分を除去する破砕前分級機と、
前記湿式ふるい機と前記破砕前分級機で処理した後に得られるスラリー状の礫砂に含まれる絶乾密度が2.5g/cmに満たない礫砂、又は吸水率が3.5質量%を超える礫砂のいずれかに該当する礫砂を破砕するように調整された破砕機と、
前記破砕機で処理した後の礫砂から、前記破砕機で破砕された礫砂を分級する破砕後分級機とを有する、汚染土壌の処理システム。
[6]前記破砕機が、二層流式砂洗浄工法(ハクリジェット)、アトリッションスクラバ、ボールミル、及びロッドミルから選択される1以上である、[5]に記載の汚染土壌の処理システム。
[7]前記破砕を行った後の礫砂から有機物を分離する、有機物分離機をさらに有する、[5]又は[6]に記載の汚染土壌の処理システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の細骨材の製造方法及び、汚染土壌の処理システムによれば、汚染土壌の減容化を図りつつ、コンクリートの細骨材として充分な強度を有する細骨材を安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る汚染土壌の処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る汚染土壌の処理システムを図1に基づいて説明する。
本実施形態の処理システムは、解砕機11と、湿式ふるい機12と、第1分級機21(破砕前分級機)と、破砕機13と、有機物分離機14と、第2分級機22と、第3分級機23と、第4分級機24(破砕後分級機)とをこの順に備えている。
また、本実施形態では、さらに、凝集沈殿装置31と加圧式濾過装置32とを備えている。
【0009】
解砕機11は、水を加えた土壌を解砕する装置である。解砕機11は、塊になった土壌を、加水した状態で砕いてほぐすことができればよく、従来公知の二次パドルミキサー、ロッドミル等の解砕機を使用できる。
二軸パドルミキサーは、パドルが回転することにより発生するせん断力が直接土粒子に作用するため、礫を過度に磨砕することなく、粘土塊を確実に解砕することができる。
【0010】
湿式ふるい機12は、解砕後の土壌から異物を選別して、礫・粗砂等の粗粒子分を分離できる装置であれば特に限定されないが、例えば、振動ふるい機、超音波ふるい機が挙げられる。湿式ふるい機12は、内部に網面を備え、網面の目開きにより、網面上に残す粗粒子分の粒度範囲を決めることができる。
なお、本明細書における粒度は、粒子が通過できる最小の標準ふるいの方形網目の1辺の長さである。
湿式ふるい機12を用いれば、網面上を流下する土壌に対して、洗浄水を散布しながら振動をあたえることにより、土壌を粒度により分画すると共に、洗浄を行うことができる。
【0011】
第1分級機21、第2分級機22、第3分級機23、第4分級機24としては、分級と共に洗浄を行うことができる分級機を用いることが好ましい。分級機には、乾式分級機と湿式分級機があるが、分級と共に洗浄も行えることから、湿式分級機を用いることが好ましい。
【0012】
好ましい分級機としては、ハイメッシュセパレータ、湿式サイクロン等が挙げられる。ハイメッシュセパレータは、対象物の比重差と表面積差によって生じる沈降速度差によって分離を行う沈降分離式の分離機である。同じ比重でも、比表面積が小さく粒度の大きい粒子は沈み、比表面積が大きく粒度の小さい粒子は沈みにくい性質を利用して分級機として使用できる。
湿式サイクロンは、渦状の流れを起こし、遠心力により分級する分級機である。
第1分級機21としては、ハイメッシュセパレータ、湿式サイクロン等の分級機に代えて、湿式振動ふるいを用いてもよい。
【0013】
第1分級機21、第2分級機22、第3分級機23、第4分級機24は、各々分級する粒度の範囲が異なり、上流側では、比較的大きい粒度の粒子が分離され、下流側に行くほど小さい粒度の粒子が分離されるように調整されている。
例えばハイメッシュセパレータの場合、投入スラリー流量を調整して上昇流速を変化させることにより、分級する粒度の範囲を変更することができる。また、例えば、越流堰を越流したスラリーの一部をハイメッシュセパレータに戻す場合は、戻す流量を調整することで、投入スラリー流量が一定でも上昇流速を変化させて、分級する粒度の範囲を変更することができる。
【0014】
破砕機13は、剪断、磨砕、圧壊、衝突により細骨材(2mm~5mm、あるいは、2mm~10mm)を破砕する装置である。
破砕機13は、強度を制御できるものであればよく、例えば、二層流式砂洗浄式(前田建設工業社製ハクリジェット)、磨砕式(アトリッションスクラバ)、圧壊式(ボールミル・ロッドミル)、解砕洗浄分級機構付きトロンメル(新六精機社製ハリケーン・サンドハリケーン等のハリケーンシリーズ(登録商標)、コウキ社製グラインドウォッシャー)、竪型3軸マルチクラッシャー(冨士機社製ビッグバン)等を使用できる。破砕機13は、1種又は2種以上の破砕機を組み合わせて使用してもよい。
二層流式砂洗浄工法(ハクリジェット)は、スラリー状の礫砂を吹きつけ装置を用いて空気と共に壁面や衝突板に吹きつけ、礫砂に衝撃力を作用させる装置である。なお、礫砂を吹きつける壁面や衝突板の位置は、水面下でも水面より上でもよい。
また、アトリッションスクラバは、回転羽根の回転により砂同士を水中で衝突させ、互いに摺り合わせる装置である。
【0015】
従来、二層流式砂洗浄工法(ハクリジェット)やアトリッションスクラバは、砂粒子の表面に付着した細粒子分を剥がしとる目的で使用されてきたが、本実施形態の処理システムでは、強度の小さい礫砂を破砕するため、破砕機として使用する。
二層流式砂洗浄工法(ハクリジェット)の破砕強度は、礫砂を吹きつけるためのコンプレッサーの空気流量調整により制御できる。
アトリッションスクラバの破砕強度は、固液比、回転速度、攪拌時間により制御できる。固液比については、固体の比率を高くするほど強度を高くできる。攪拌時間については、槽内容積は固定されているので、通常単位時間当たりの投入量により制御する。
ボールミルの破砕強度は、固液比、ボールの大きさ・重量、回転速度等により制御できる。ロッドミルの破砕強度は、固液比、内部の金属棒径・重量、回転速度等により制御できる。
ハリケーンシリーズやグラインドウォッシャーの破砕強度は、回転外胴部と回転内胴部に装着された歯先端・翼先端とのクリアランス長、固液比、回転速度等により制御できる。
ビッグバンの破砕強度は、固液比、回転速度等により制御できる。
【0016】
有機物分離機14としては、上向流式の分離機を使用できる。
上向流式の分離機は、比重差による沈降速度差を利用して、砂と混在している有機物を分離する装置である。上向流式の分離機としては、アップフローコラム、ウォーターセパレータ、ハイメッシュセパレータ等が挙げられる。
ハイメッシュセパレータを用いる場合、砂と有機物は比重差による沈降速度差が大きい。そのため、砂の分級機として用いる場合よりも、流量(流速)を小さくして使用することとなる。
【0017】
凝集沈殿装置31は、懸濁水中に浮遊する細粒子分を凝集沈殿させ、水から分離する装置である。
加圧式濾過装置32は、凝集沈殿させた細粒子分を脱水処理する装置で、例えば濾布等からなるフィルターとプレス機を備えた公知の加圧式濾過装置(ベルトプレスやフィルタープレス)等を使用できる。
【0018】
本発明の汚染土壌の処理システムによれば、汚染土壌A0を減容する処理方法を実施できる。また、コンクリートの細骨材として利用可能な細骨材を製造する方法を実施できる。
以下、図1に基づき、本実施形態の汚染土壌の処理システムによる処理方法、すなわち、汚染土壌の処理方法及び細骨材の製造方法について説明する。
【0019】
本実施形態の処理システムで処理の対象となる汚染土壌A0は、セシウム等の放射性物質や重金属等の有害物質で汚染された土壌である。但し、コンクリートの細骨材として利用可能な細骨材を製造するための汚染土壌A0としては、放射性物質の汚染土壌の場合、除染率に応じた汚染濃度以下の土壌を選択して使用する必要がある。なお、除染率とは、下式で求められる値である。
除染率=1-浄化後放射能濃度/浄化前放射能濃度
汚染土壌A0は、除染作業等で発生し、輸送車両等により、本実施形態の処理システムのある処理場に搬入される。
【0020】
本実施形態の処理システムでは、まず、汚染土壌A0の重量、粒度、放射能濃度等に応じて算出された適量の水を汚染土壌A0に添加する。水の添加量は、汚染土壌A0の重量に対して、例えば、3倍~10倍の重量とされる。水の添加量が多いほど、洗浄効果を高めやすい。水の添加量が少ないほど、処理システムをコンパクトにしやすい。
汚染土壌A0には、水と共に、陽イオンを添加してもよい。陽イオンを添加することにより、汚染土壌A0中の礫砂に対する細粒子分の密着力を低下させ、細粒子分を礫砂から剥がしやすくなる。
【0021】
陽イオンは、2価の陽イオンでも1価の陽イオンでもよいが、2価の陽イオンが好ましい。2価の陽イオンは、中間貯蔵施設等において、ふるいの目詰まりが生じないように添加される改質材を無力化できるため、細粒子分の分離を容易にしやすい。
2価の陽イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属のイオンが挙げられる。1価の陽イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属のイオンが挙げられる。
陽イオンは、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の塩の形で、汚染土壌A0に添加された水中に投入される。
【0022】
水と必要に応じて陽イオン等の添加剤を添加された汚染土壌A0は、解砕機11で解砕され、汚染土壌A0の解砕物と水とが混合された第1スラリーA1となる。
次いで、第1スラリーA1は湿式ふるい機12により、粗粒子分Bが分離された第2スラリーA2となる。
【0023】
粗粒子分Bとして除去する礫の粒度に限定はないが、5mm以下であればコンクリートの細骨材として使用できるので、粒度が5mmを超える礫を粗粒子分Bとして分離することが好ましい。
汚染土壌A0を適切に選択すれば、粗粒子分Bは、そのまま廃棄物の処理基準に従って処分できる。
粗粒子分Bは、コンクリート骨材以外の用途もあるため、有機物分離機で処理してもよい。
【0024】
粒度が5mmを超える礫を粗粒子分Bとして分離した場合、粗粒子分Bが分離された第2スラリーA2には、粒度が2~5mmの礫と、粒度が0.075mm以上2mm未満の砂と、粒度が0.075mm未満のシルト及び粘土が含まれる。
【0025】
第2スラリーA2は、第1分級機21で分級され、第1細粒子分S1が除去された第3スラリーA3となる。なお、細粒子分は、最終的に、後述の第2細粒子分S2としても除去されるので、この段階で多少の細粒子分が第3スラリーA3に残存しても差し支えない。
第1細粒子分S1として除去する細粒子の粒度に限定はないが、第2スラリーA2に含まれる粒度が0.075mm未満のシルト及び粘土を、第1細粒子分S1として除去することが好ましい。
【0026】
なお、破砕機13で処理する前に機処理前に第1細粒子分S1を概ね除去しておくのは、細粒子分を残したまま、次の破砕機13で処理すると、細粒子分がクッションとして作用して破砕効率が悪くなるためである。
除去した第1細粒子分S1は、有害物質の吸着量が多いと考えられるので、凝集沈殿装置31で処理して沈殿汚泥S3とし、次いで加圧式濾過装置32で処理して濃縮残渣S4とする。濃縮残渣S4は、熱処理や化学処理を行う熱処理施設等や最終処分場にて処分される。
【0027】
粒度が5mmを超える礫を粗粒子分Bとして分離した場合、第1細粒子分S1が分離された第3スラリーA3には、粒度が2~5mmの礫と、粒度が0.075mm以上2mm未満の砂とが含まれる。すなわち、第3スラリーA3は、粗粒子分と細粒子分を除去したスラリー状の礫砂である。第3スラリーA3中の礫砂には、強度の高い礫砂と強度の低い礫砂が混在している可能性がある。
【0028】
そこで、第3スラリーA3中の強度の低い礫砂を、破砕機13で破砕する。浄化礫砂を細骨材として使用するためには、強度が十分に大きいことが求められている。具体的には、絶乾密度が2.5g/cm以上であり、かつ吸水率が3.5質量%以下であるとの条件の双方を満たすことが必要とされている(コンクリート標準示方書による)。
なお、絶乾密度及び吸水率は、各々JIS A 1109に規定される方法で測定した値である。
【0029】
本実施形態の破砕機13は、絶乾密度が2.5g/cmに満たない礫砂、及び吸水率が3.5質量%を超える礫砂のいずれかに該当する礫砂(以下「低強度礫砂」という。)を破砕するように調整されている。破砕機13は、低強度礫砂を破砕して、シルト又は粘土のレベルまで粒度を小さくした破砕物とする。
【0030】
破砕機13の破砕強度を高くするほど、低強度礫砂を確実に破砕できるが、破砕強度を高くしすぎると、細骨材として使用可能な礫砂まで破砕してしまい、得られる細骨材の収率が低下する。また、破砕した礫砂は、最終的に第2細粒子分S2として凝集沈殿装置31及び加圧式濾過装置32で処理しなければならず、充分な減容ができなくなる。
したがって、本実施形態の破砕機13は、絶乾密度が2.5g/cm以上であり、かつ吸水率が3.5質量%以下である礫砂を破砕できないように調整されていることが好ましい。
【0031】
破砕機13で処理した後の第4スラリーA4には、強度の高い粒度が2~5mmの礫と、強度の高い粒度が0.075mm以上2mm未満の砂と、低強度礫砂の破砕物が含まれる。すなわち、第4スラリーA4は、強度の高い礫砂と低強度礫砂の破砕物を含んでいる。
第4スラリーA4は、有機物分離機14により有機物を除去され、第5スラリーA5となる。有機物を除去するのは、コンクリートの細骨材として使用する場合、有機物の混入が好ましくないためである。
破砕処理により砂礫と有機物の付着も充分にほぐされるため、有機物分離機14によって、有機物を容易に除去できる。
なお、第4スラリーA4の有機物の含有率が充分に小さい場合には、有機物分離機14による処理を省略することができる。有機物の含有率が十分に小さいとは、コンクリート標準示方書に示された基準(JIS A 1105)に適合することを意味する。
【0032】
第5スラリーA5は、強度の高い礫砂と低強度礫砂の破砕物を含み、有機物が除去されている。そのため、分級を1回だけ行って、第5スラリーA5から低強度礫砂の破砕物を除去するだけでも、コンクリートの細骨材として使用できる細骨材を回収できる。
しかし、本実施形態では、複数回(本実施形態では3回)の分級を行い、粒度範囲の異なる複数(本実施形態では3つ)の画分の細骨材を回収するシステムとした。
細骨材を複数の画分として回収するのは、コンクリート標準示方書に定められた所定の粒度標準(粒度分布)に適合させる作業を容易にするためである。
【0033】
すなわち、第5スラリーA5は、まず第2分級機22で分級され、比較的粗い第1細骨材P1と第6スラリーA6に分級され、回収された第1細骨材P1は、第1集積場41に仮置きされる。
次いで、第6スラリーA6は、第3分級機23で分級され、中程度の粒度範囲の第2細骨材P2と第7スラリーA7に分級され、回収された第2細骨材P2は、第2集積場42に仮置きされる。
次いで、第7スラリーA7は、第4分級機24で分級され、比較的細かい第3細骨材P3と第2細粒子分S2に分級され、回収された第3細骨材P3は、第3集積場43に仮置きされる。
【0034】
第1細骨材P1と第2細骨材P2と第3細骨材P3の粒度範囲に限定はないが、例えば、第1細骨材P1を粒度が1.2mmを超える礫砂とし、第2細骨材P2を粒度が0.3mmを超え1.2mm以下の砂とし、第3細骨材P3を粒度が0.075mm以上、0.3mm以下の砂とすることができる。
この場合、第6スラリーA6には粒度が1.2mm以下の強度の大きい礫砂と低強度礫砂の破砕物が含まれ、第7スラリーA7には粒度が0.3mm以下の強度の大きい礫砂と低強度礫砂の破砕物が含まれ、第2細粒子分S2には粒度が0.075mmに満たないシルト又は粘土レベルの低強度礫砂の破砕物が含まれる。
【0035】
第1集積場41、第2集積場42、第3集積場43に各々仮置きされた第1細骨材P1、第2細骨材P2、及び第3細骨材P3は、調整細骨材P0で適切な比率で配合され、コンクリート標準示方書に定められた所定の粒度標準(粒度分布)に適合する調整細骨材P0とされる。
【0036】
なお、第1細骨材P1、第2細骨材P2、及び第3細骨材P3は、既に有機物分離機14により有機物が除去されているが、第3細骨材P3については粒度が小さいため、充分に有機物が除去されていない懸念がある。そのため、第3細骨材P3については、さらに有機物分離機により処理するようにしてもよい。
【0037】
第2細粒子分S2は、第1細粒子分S1と同様に凝集沈殿装置31で処理して沈殿汚泥S3とし、次いで加圧式濾過装置32で処理して濃縮残渣S4とする。濃縮残渣S4は、熱処理や化学処理を行う熱処理施設等や最終処分場にて処分される。
なお、第2細粒子分S2は有害物質濃度が低いと推察されるため、減容率を改善するためには、凝集沈殿装置31と加圧式濾過装置32とは別途の凝集沈殿装置と加圧式ろ過装置を設け、第1細粒子分S1とは別個に処理をし、再利用に供してもよい。
【0038】
本実施形態では、破砕処理後の分級を3回行う例を示したが、破砕処理後の分級は1回でも、2回でもよい。また、3回より多い分級を行ってもよく、例えば6つの分級機を用いて、6回の分級を行ってもよい。
6回の分級を行う場合、例えば、5mm~2.5mm、2.5mm~1.2mm、1.2mm~0.6mm、0.6mm~0.3mm、0.3mm~0.15mm、及び0.15mm~0.075mmの6つの画分の細骨材に分けることが好ましい。この場合、6つの画分は、コンクリート標準示方書に示されている各分画と同一であるために、調整場50にて、細骨材を粒度分布標準内に調整しやすい。
【符号の説明】
【0039】
11 解砕機
12 湿式ふるい機
13 破砕機
14 有機物分離機
21 第1分級機
22 第2分級機
23 第3分級機
24 第4分級機
31 凝集沈殿装置
32 加圧式濾過装置
41 第1集積場
42 第2集積場
43 第3集積場
50 調整場
A0 汚染土壌
A1 第1スラリー
A2 第2スラリー
A3 第3スラリー
A4 第4スラリー
A5 第5スラリー
A6 第6スラリー
A7 第7スラリー
B 粗粒子分
P0 調整細骨材
P1 第1細骨材
P2 第2細骨材
P3 第3細骨材
S1 第1細粒子分
S2 第2細粒子分
S3 沈殿汚泥
S4 濃縮残渣
図1