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特開2022-28503工作機械のドアの安全機構及び工作機械
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  • 特開-工作機械のドアの安全機構及び工作機械 図1
  • 特開-工作機械のドアの安全機構及び工作機械 図2
  • 特開-工作機械のドアの安全機構及び工作機械 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028503
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】工作機械のドアの安全機構及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20220208BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B23Q11/00 D
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131946
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】石川 太一
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011AA15
3C011DD02
(57)【要約】
【課題】手動操作でドアを閉動作させた際の作業者の安全性を確保すると共に、機械周囲の作業スペースを確保して作業性も損なわないようにする。
【解決手段】加工室2を覆うカバー3と、加工室2を部分的に開放する開口部4と、開口部4を開閉可能なドア5と、ドア5を開閉動作させる駆動部8と、を含む工作機械1において、ドア5の閉動作時の安全を確保するための安全機構20は、カバー3とドア5とにそれぞれ設けられ、ドア5の閉塞位置で互いに当接するカバー側緩衝部材22及びドア側緩衝部材23と、各緩衝部材22,23より外側に設けられ、開口部4への障害物の侵入を検知するエリアセンサ21と、を含んでなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工室を覆うカバーと、前記加工室を部分的に開放する開口部と、前記開口部を開閉可能なドアと、前記ドアを開閉動作させる駆動手段と、を含む工作機械において、前記ドアの閉動作時の安全を確保するための安全機構であって、
前記カバーと前記ドアとにそれぞれ設けられ、前記ドアの閉塞位置で互いに当接する緩衝部材と、
各前記緩衝部材より外側に設けられ、前記開口部への障害物の侵入を検知するエリアセンサと、を含んでなることを特徴とする工作機械のドアの安全機構。
【請求項2】
各前記緩衝部材は、前記カバー及び前記ドアの外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のドアの安全機構。
【請求項3】
加工室を覆うカバーと、前記カバーに設けた開口部を開閉可能なドアと、前記ドアを開閉動作させる駆動手段と、を含む工作機械であって、
請求項1又は2に記載の工作機械のドアの安全機構を設けたことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の開口部を開閉するドアの安全を確保するために設けられる安全機構と、当該安全機構を備えた工作機械とに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、加工室を囲むカバーが設けられ、カバーの一部には、加工室を開放する開口部が設けられる。開口部には、エアシリンダやボールねじ等のアクチュエータによって自動で開閉動作するドアが設けられている。このドアは、自動加工時にはプログラムに従って自動的に開閉動作する他、作業者によるボタン操作等の手動操作によって必要に応じて開閉動作させることができる。
このような工作機械では、ドアが閉動作する際に作業者の手や腕等が挟まることを防止して安全を確保するための安全機構が設けられる。この安全機構として、特許文献1には、ドアの先端に設けられる切削液の漏れ止め板をカバーと重なる正常位置に回転付勢して設け、ドアが閉じる途中に作業者の手又は体が漏れ止め板に当たって漏れ止め板が回転すると、ドアを開閉する駆動部材とドアとを連結する連結部材の係合を解除してドアを停止させる安全装置が開示されている。また、特許文献2には、開口部の外側にエリアセンサを設けて、障害物で光線が遮られた際にはドアを停止又は反転させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-17843号公報
【特許文献2】特開2000-354936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動化・高能率化する工作機械では、近年、ドアの開閉速度を大きくする傾向にあり、特にロボットを活用したシステムではその傾向が大きくなっている。よって、ドアをボールねじで駆動させてロボットによる自動加工時の高速化を図りながら、作業者による手動操作時には、安全性を考慮して速度を制限することも行われているが、従来に比べて高速化の傾向は強くなっている。
このため、特許文献1のように開閉速度が大きくなる以前に開発された安全装置では、開口部付近で作業者が作業を行う際、制限された手動操作時の閉速度であっても、作業者が漏れ止め板に干渉して連結部材の係合を解除してもドアが止まりきれないおそれがあった。
一方、工作機械における作業者の安全確保のため、JISB9700で危険に対する判断基準が定められ、同B9715ではその対策について規定されている。工作機械のカバーのドア開閉部を危険な空間として、同B9700上の危険区域に区分した場合、特許文献2のようなエリアセンサを取り付ける場合には、危険区域から約500mm離れた位置に設置する必要がある。この場合、機械周囲でのエリアセンサの検知範囲が広くなり、作業者の作業スペースが制限されて作業性が悪くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、手動操作でドアを閉動作させた際の作業者の安全性を確保できると共に、機械周囲の作業スペースを確保して作業性を損なうこともない工作機械のドアの安全機構及び工作機械を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち、第1の発明は、加工室を覆うカバーと、前記加工室を部分的に開放する開口部と、前記開口部を開閉可能なドアと、前記ドアを開閉動作させる駆動手段と、を含む工作機械において、前記ドアの閉動作時の安全を確保するための安全機構であって、
前記カバーと前記ドアとにそれぞれ設けられ、前記ドアの閉塞位置で互いに当接する緩衝部材と、
各前記緩衝部材より外側に設けられ、前記開口部への障害物の侵入を検知するエリアセンサと、を含んでなることを特徴とする。
第1の発明の別の態様は、上記構成において、各前記緩衝部材は、前記カバー及び前記ドアの外側に配置されることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち、第2の発明は、加工室を覆うカバーと、前記カバーに設けた開口部を開閉可能なドアと、前記ドアを開閉動作させる駆動手段と、を含む工作機械であって、
請求項1又は2に記載の工作機械のドアの安全機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カバーとドアとに、ドアの閉塞位置で互いに当接する緩衝部材をそれぞれ設けたことで、手動操作でドアを閉動作させた際の作業者の安全性を確保できる。また、緩衝部材によって開口部が危険区域に該当しなくなり、機械周囲でのエリアセンサの検知範囲が必要最小限となるため、機械周囲の作業スペースを確保できて作業性を損なうこともなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の斜視図である。
図2】ドア部分の横断面図である(ドアは閉塞位置)。
図3】ドア部分の横断面図である(ドアは閉動作中)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例(NC旋盤)を示す斜視図である。工作機械1は、左側に加工室2を有すると共に、加工室2の右側前面及び右側上面を覆うカバー3を備えている。カバー3の左側には、加工室2の前面及び上面を開放する開口部4が形成されている。
開口部4には、ドア5が設けられている。ドア5は、加工室2の左側前面を覆う前面部6と、加工室2の左側上面を覆う上面部7とを有する。上面部7の後端が、ボールねじ等のアクチュエータを備えた駆動手段としての駆動部8によって、カバー3の左端部と当接して開口部4を閉塞する右側の閉塞位置と、開口部4を開放する左側の開放位置(図1)との間をスライド可能となっている。ドア5は、自動加工時にはプログラムに従って自動的に開閉動作する他、自動加工時以外では、カバー3の前面に設けた図示しない操作盤のボタン等を作業者が操作することで、任意のタイミングで開閉動作させることができる。ドア5の前面部6には、透明な窓9が設けられている。
【0010】
カバー3の左端部には、カバー縁部材10が、カバー3の左端部形状に沿って取り付けられている。カバー縁部材10は、図2にも示すように、閉塞側を外に向けた横断面コ字状の外枠部11と、外枠部11の左側端部から左側へ突出する横断面L字状の内枠部12とを有している。
一方、カバー縁部材10に対向するドア5の右端部には、内側へ横断面逆L字状に折曲されるドア外縁部13が設けられている。ドア外縁部13は、カバー縁部材10の外枠部11の左側端部よりも短く形成されて、ドア5の閉塞位置では、外枠部11と内枠部12との間に隙間が生じるようになっている。
【0011】
また、ドア外縁部13よりも左側でドア5の内面には、ドア内縁部材14が設けられている。ドア内縁部材14は、閉塞側を左に向けた横断面倒コ字状で、前後方向の幅がカバー縁部材10の内枠部12よりも大きく形成されている。ドア5の閉塞位置では、ドア内縁部材14の内側端部が内枠部12の外側を非接触で覆うようになっている。
よって、図2に示すドア5の閉塞位置では、ドア外縁部13の内側にカバー縁部材10の内枠部12が非接触で重なり、内枠部12の内側にドア内縁部材14の内側端部が重なることで、加工室2から切削液等が外側へ漏出しないラビリンス構造15が形成される。
【0012】
そして、開口部4には、手動操作でドア5が閉まる際の作業者の安全を確保するための安全機構20が設けられている。この安全機構20は、エリアセンサ21と、エリアセンサ21の内側に配置されるカバー側緩衝部材22及びドア側緩衝部材23とを備えている。
まず、開口部4及びドア5の左右両側には、前方へ突出する一対のブラケット24A,24Bが上下方向に取り付けられて、エリアセンサ21は、ブラケット24A,24Bに設けられている。ブラケット24A,24Bは、カバー3の外面と直交する前後方向の縦板部25と、縦板部25の前端から互いの対向側へ折曲する横板部26とを有する横断面L字状を有している。
エリアセンサ21は、一方のブラケット24Aの横板部26へ上下方向に設けられた投光器27,27と、他方のブラケット24Bの横板部26へ上下方向に設けられた図示しない受光器との間で複数の光線Lを平行に照射して、ブラケット24A,24B間への障害物の侵入を検知する。工作機械1の図示しない制御装置は、ドア5の閉動作時にエリアセンサ21による障害物の侵入を検知すると、駆動部8のアクチュエータを停止及び反転動作させてドア5を開動作させるようになっている。
【0013】
カバー3の外側でブラケット24Aに、カバー側緩衝部材22,22・・が設けられている。カバー側緩衝部材22は、ブラケット24Aの縦板部25の左側面へカバー縁部材10の外枠部11に沿って固着される横断面四角形状の棒状体で、スポンジやゴム等の弾性材料で形成されている。このカバー側緩衝部材22は、エリアセンサ21よりも内側に配置されている。
一方、ドア外縁部13の外側でドア5の端縁には、横断面L字状の取付部材30の一端部31が取り付けられて、前方へ突出する他端部32に、ドア側緩衝部材23,23が設けられている。ドア側緩衝部材23は、他端部32の右側面へ上下方向に固着される横断面四角形状の棒状体で、スポンジやゴム等の弾性材料で形成されている。このドア側緩衝部材23は、図2に示すように、ドア5の閉塞位置でカバー側緩衝部材22に圧接するようになっている。
【0014】
以上の如く構成された安全機構20及び工作機械1において、図1に示すドア5の開放位置で作業者がドア5の閉操作を行うと、駆動部8のアクチュエータが動作してドア5が閉塞位置へ閉動作する。図3に示す閉動作の途中で作業者の手等が開口部4へ近づき、エリアセンサ21の光線Lに触れると、制御装置がアクチュエータの駆動を停止及び反転させ、ドア5を開動作させる。しかし、エリアセンサ21が検知してドア5が一旦停止するまで0.2~0.25秒程度の遅れがあるため、二点鎖線で示すように遅れ分だけ閉動作したドア5とカバー3との間に作業者の手等が挟まるおそれがある。ところが、エリアセンサ21の内側でカバー3とドア5との間には、カバー側緩衝部材22とドア側緩衝部材23とが設けられているため、作業者の手等は両緩衝部材22,23に当接して衝撃が吸収される。
ここではカバー3とドア5との間に両緩衝部材22,23を設けたことで、開口部4がJISで定める危険区域に該当しなくなる。よって、エリアセンサ21を開口部4から500mm離して設置する必要がなくなり、両緩衝部材22,23の外側で開口部4に近い位置へエリアセンサ21を配置できる。
【0015】
このように、上記形態の安全機構20及び工作機械1によれば、安全機構20が、カバー3とドア5とにそれぞれ設けられ、ドア5の閉塞位置で互いに当接するカバー側緩衝部材22とドア側緩衝部材23と、各緩衝部材22,23より外側に設けられ、開口部4への障害物の侵入を検知するエリアセンサ21と、を含んでなることで、手動操作でドア5を閉動作させた際の作業者の安全性を確保できる。また、各緩衝部材22,23によって開口部4が危険区域に該当しなくなり、機械周囲でのエリアセンサ21の検知範囲が必要最小限となるため、機械周囲の作業スペースを確保できて作業性を損なうこともなくなる。
【0016】
特にここでは、各緩衝部材22,23を、カバー3及びドア5の外側に配置しているので、安全機構を具備しない既存の工作機械にも各緩衝部材22,23を追加設置することが可能となる。また、カバー3及びドア5の内側にラビリンス構造15があっても影響なく各緩衝部材22,23を採用できる。
【0017】
なお、各緩衝部材の形状や数は上記形態に限らない。複数でなく1列に繋がる1本の緩衝部材を設けることもできる。但し、緩衝部材は1列に限らず、前後に2列以上設けることもできる。緩衝部材の左右や前後の厚みも変更できる。
また、エリアセンサも、開口部やドアの形状等に合わせて設置位置や設置範囲を変更可能である。
そして、工作機械もNC旋盤に限らず、マシニングセンタや複合加工機等であっても本発明の安全機構は採用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1・・工作機械、2・・加工室、3・・カバー、4・・開口部、5・・ドア、10・・カバー縁部材、13・・ドア外縁部、14・・ドア内縁部材、15・・ラビリンス構造、20・・安全機構、21・・エリアセンサ、22・・カバー側緩衝部材、23・・ドア側緩衝部材、24A,24B・・ブラケット、30・・取付部材。
図1
図2
図3