(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028527
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】外壁剥落防止構造および外壁剥落防止工法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
E04G23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020131995
(22)【出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000130374
【氏名又は名称】株式会社コンステック
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 健一
(72)【発明者】
【氏名】木村 芳幹
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176BB03
2E176BB21
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】建築構造物の外壁との間に隙間が生じにくい外壁剥落防止構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の外壁剥落防止構造1は、外壁Wの形状に応じて変形可能な可撓性シート2と、外壁Wに沿って一方向に延び、外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する固定手段3とを備え、可撓性シート2が、外壁W上に貼り付けられ、可撓性シート2の端縁2eに沿って配置された固定手段3によって、可撓性シート2の端縁2eに沿って可撓性シート2が建築構造物に固定されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の外壁の剥落を防止するための外壁剥落防止構造であって、
前記外壁の形状に応じて変形可能な可撓性シートと、
前記外壁に沿って一方向に延び、前記外壁との間で前記可撓性シートを挟持して、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する固定手段と
を備え、
前記可撓性シートが、前記外壁上に貼り付けられ、
前記可撓性シートの端縁に沿って配置された前記固定手段によって、前記可撓性シートの端縁に沿って前記可撓性シートが前記建築構造物に固定される、
外壁剥落防止構造。
【請求項2】
前記可撓性シートが、前記外壁上で隣接する可撓性シートと前記端縁に沿って重ね合わされて、前記外壁上に貼り付けられ、
前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って配置された前記固定手段によって、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って前記可撓性シートおよび前記隣接する可撓性シートが前記建築構造物に固定される、
請求項1記載の外壁剥落防止構造。
【請求項3】
前記可撓性シートが、基布および前記基布に積層されるゴム層を備えるゴム引布である、
請求項1または2記載の外壁剥落防止構造。
【請求項4】
前記固定手段が、
前記外壁に沿って一方向に延びるフレームと、
前記フレームを前記建築構造物に固定する固定具と、
前記フレームに沿って延び、前記フレームおよび前記固定具を覆うように前記フレームに固定されるフレームカバーと
を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の外壁剥落防止構造。
【請求項5】
前記フレームが、
前記フレームの延びる方向に沿って延びるフレーム本体と、
前記フレーム本体に沿って延び、前記フレーム本体の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレーム本体から立設するフレーム柱部と
を備え、
前記フレームカバーが、
前記フレームカバーの延びる方向に沿って延びるフレームカバー屋根部と、
前記フレームカバー屋根部に沿って延び、前記フレームカバー屋根部の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレームカバー屋根部から垂下するフレームカバー脚部と
を備え、
前記フレームカバーが前記フレームに固定されるときに、前記フレームの前記フレーム本体および前記フレーム柱部によって形成されるフレーム側凹部に前記フレームカバー脚部が嵌入され、前記フレームカバー屋根部および前記フレームカバー脚部により形成されるカバー側凹部に前記フレームの前記フレーム柱部が嵌入される、
請求項4記載の外壁剥落防止構造。
【請求項6】
前記フレームカバーが、前記フレームカバーの延びる方向に対して垂直方向の断面が略三角形状に形成される、
請求項4または5記載の外壁剥落防止構造。
【請求項7】
建築構造物の外壁の剥落を防止するための外壁剥落防止工法であって、
前記外壁の形状に応じて変形可能な可撓性シートを前記外壁上に貼り付ける工程と、
前記外壁に沿って一方向に延びる固定手段により、前記外壁との間で前記可撓性シートを挟持して、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程と
を含み、
前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程が、前記可撓性シートの端縁に沿って前記固定手段を配置して、前記可撓性シートの端縁に沿って前記可撓性シートを前記建築構造物に固定する工程を含む、
外壁剥落防止工法。
【請求項8】
前記可撓性シートを前記外壁上に貼り付ける工程が、前記可撓性シートを、前記外壁上で隣接する可撓性シートと前記端縁に沿って重ね合わせて、前記外壁上に貼り付ける工程を含み、
前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程が、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って前記固定手段を配置して、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って前記可撓性シートおよび前記隣接する可撓性シートを前記建築構造物に固定する工程を含む、
請求項7記載の外壁剥落防止工法。
【請求項9】
前記可撓性シートが、基布および前記基布に積層されるゴム層を備えるゴム引布である、
請求項7または8記載の外壁剥落防止工法。
【請求項10】
前記固定手段が、
前記外壁に沿って一方向に延びるフレームと、
前記フレームを前記建築構造物に固定する固定具と、
前記フレームに沿って延び、前記フレームおよび前記固定具を覆うように前記フレームに固定されるフレームカバーと
を備え、
前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程が、
前記可撓性シートの端縁に沿って前記フレームを配置する工程と、
前記固定具により前記フレームを前記建築構造物に固定することにより、前記フレームと前記外壁との間で前記可撓性シートを挟持して、前記可撓性シートを前記建築構造物に固定する工程と、
前記フレームおよび前記固定具を覆うように、前記フレームカバーを前記フレームに固定する工程と
を含む、
請求項7~9のいずれか1項に記載の外壁剥落防止工法。
【請求項11】
前記フレームが、
前記フレームの延びる方向に沿って延びるフレーム本体と、
前記フレーム本体に沿って延び、前記フレーム本体の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレーム本体から立設するフレーム柱部と
を備え、
前記フレームカバーが、
前記フレームカバーの延びる方向に沿って延びるフレームカバー屋根部と、
前記フレームカバー屋根部に沿って延び、前記フレームカバー屋根部の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレームカバー屋根部から垂下するフレームカバー脚部と
を備え、
前記フレームカバーが前記フレームに固定されるときに、前記フレームの前記フレーム本体および前記フレーム柱部によって形成されるフレーム側凹部に前記フレームカバー脚部が嵌入され、前記フレームカバー屋根部および前記フレームカバー脚部により形成されるカバー側凹部に前記フレームの前記フレーム柱部が嵌入される、
請求項10記載の外壁剥落防止工法。
【請求項12】
前記フレームカバーが、前記フレームカバーの延びる方向に対して垂直方向の断面が略三角形状に形成される、
請求項10または11記載の外壁剥落防止工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁剥落防止構造および外壁剥落防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の建築構造物の壁面に設けられたモルタルやタイルなどの外壁の剥落を防止するために、ピンネット工法と呼ばれる外壁剥落防止工法が用いられる。一般的なピンネット工法では、外壁に樹脂層またはポリマーセメント層が塗布され、その樹脂層またはポリマーセメント層にネットが貼付され、アンカーピンによってネットが建築構造物に固定されて、そのネットの上から樹脂層またはポリマーセメント層が塗布される。このようなピンネット工法では、外壁全体に亘って樹脂層またはポリマーセメント層を2回も塗布する必要があり、施工に膨大な時間と労力が必要とされる。
【0003】
このような問題を解決するための工法として、たとえば特許文献1に乾式のピンネット工法が開示されている。特許文献1のピンネット工法では、施工前に成形した建材を既存の建築構造物の外壁に固定する方法を採用している。使用される建材は、ネットの表面に付着させた樹脂を硬化させて、樹脂からネットが張り出すように形成される。特許文献1のピンネット工法では、外壁上に複数の建材が隣接して並べられて、隣接する建材から張り出すネット同士が重ねられた部分にアンカーピンが打設されて、複数の建材が外壁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のピンネット工法で用いられる建材は、硬化された樹脂を含んでいるために、たとえば外壁に不陸があった場合には、その不陸に対応して変形することができない。したがって、そのような建材が不陸を含む外壁に設けられると、建材の端縁が外壁から浮き上がってしまう。さらに、特許文献1のピンネット工法では、建材の4つの隅部にアンカーピンが設けられるが、建材の隅部同士を結ぶ端縁を固定する固定手段が設けられない。したがって、建材の端縁と外壁との間に隙間が生じてしまう。このように、特許文献1のピンネット工法では建材の端縁と外壁との間に隙間が生じやすく、その隙間から建材と外壁との間に水が浸入し、侵入した水が外壁をさらに劣化させる要因となる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、建築構造物の外壁との間に隙間が生じにくい外壁剥落防止構造および外壁剥落防止工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外壁剥落防止構造は、建築構造物の外壁の剥落を防止するための外壁剥落防止構造であって、前記外壁の形状に応じて変形可能な可撓性シートと、前記外壁に沿って一方向に延び、前記外壁との間で前記可撓性シートを挟持して、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する固定手段とを備え、前記可撓性シートが、前記外壁上に貼り付けられ、前記可撓性シートの端縁に沿って配置された前記固定手段によって、前記可撓性シートの端縁に沿って前記可撓性シートが前記建築構造物に固定されることを特徴とする。
【0008】
また、前記可撓性シートが、前記外壁上で隣接する可撓性シートと前記端縁に沿って重ね合わされて、前記外壁上に貼り付けられ、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って配置された前記固定手段によって、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って前記可撓性シートおよび前記隣接する可撓性シートが前記建築構造物に固定されることが好ましい。
【0009】
また、前記可撓性シートが、基布および前記基布に積層されるゴム層を備えるゴム引布であることが好ましい。
【0010】
また、前記固定手段が、前記外壁に沿って一方向に延びるフレームと、前記フレームを前記建築構造物に固定する固定具と、前記フレームに沿って延び、前記フレームおよび前記固定具を覆うように前記フレームに固定されるフレームカバーとを備えることが好ましい。
【0011】
また、前記フレームが、前記フレームの延びる方向に沿って延びるフレーム本体と、前記フレーム本体に沿って延び、前記フレーム本体の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレーム本体から立設するフレーム柱部とを備え、前記フレームカバーが、前記フレームカバーの延びる方向に沿って延びるフレームカバー屋根部と、前記フレームカバー屋根部に沿って延び、前記フレームカバー屋根部の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレームカバー屋根部から垂下するフレームカバー脚部とを備え、前記フレームカバーが前記フレームに固定されるときに、前記フレームの前記フレーム本体および前記フレーム柱部によって形成されるフレーム側凹部に前記フレームカバー脚部が嵌入され、前記フレームカバー屋根部および前記フレームカバー脚部により形成されるカバー側凹部に前記フレームの前記フレーム柱部が嵌入されることが好ましい。
【0012】
また、前記フレームカバーが、前記フレームカバーの延びる方向に対して垂直方向の断面が略三角形状に形成されることが好ましい。
【0013】
本発明の外壁剥落防止工法は、建築構造物の外壁の剥落を防止するための外壁剥落防止工法であって、前記外壁の形状に応じて変形可能な可撓性シートを前記外壁上に貼り付ける工程と、前記外壁に沿って一方向に延びる固定手段により、前記外壁との間で前記可撓性シートを挟持して、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程とを含み、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程が、前記可撓性シートの端縁に沿って前記固定手段を配置して、前記可撓性シートの端縁に沿って前記可撓性シートを前記建築構造物に固定する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、前記可撓性シートを前記外壁上に貼り付ける工程が、前記可撓性シートを、前記外壁上で隣接する可撓性シートと前記端縁に沿って重ね合わせて、前記外壁上に貼り付ける工程を含み、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程が、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って前記固定手段を配置して、前記可撓性シート同士の重ね合わせ部分に沿って前記可撓性シートおよび前記隣接する可撓性シートを前記建築構造物に固定する工程を含むことが好ましい。
【0015】
また、前記可撓性シートが、基布および前記基布に積層されるゴム層を備えるゴム引布であることが好ましい。
【0016】
また、前記固定手段が、前記外壁に沿って一方向に延びるフレームと、前記フレームを前記建築構造物に固定する固定具と、前記フレームに沿って延び、前記フレームおよび前記固定具を覆うように前記フレームに固定されるフレームカバーとを備え、前記可撓性シートを前記外壁上で前記建築構造物に固定する工程が、前記可撓性シートの端縁に沿って前記フレームを配置する工程と、前記固定具により前記フレームを前記建築構造物に固定することにより、前記フレームと前記外壁との間で前記可撓性シートを挟持して、前記可撓性シートを前記建築構造物に固定する工程と、前記フレームおよび前記固定具を覆うように、前記フレームカバーを前記フレームに固定する工程とを含むことが好ましい。
【0017】
また、前記フレームが、前記フレームの延びる方向に沿って延びるフレーム本体と、前記フレーム本体に沿って延び、前記フレーム本体の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレーム本体から立設するフレーム柱部とを備え、前記フレームカバーが、前記フレームカバーの延びる方向に沿って延びるフレームカバー屋根部と、前記フレームカバー屋根部に沿って延び、前記フレームカバー屋根部の延びる方向に対して略垂直方向に前記フレームカバー屋根部から垂下するフレームカバー脚部とを備え、前記フレームカバーが前記フレームに固定されるときに、前記フレームの前記フレーム本体および前記フレーム柱部によって形成されるフレーム側凹部に前記フレームカバー脚部が嵌入され、前記フレームカバー屋根部および前記フレームカバー脚部により形成されるカバー側凹部に前記フレームの前記フレーム柱部が嵌入されることが好ましい。
【0018】
また、前記フレームカバーが、前記フレームカバーの延びる方向に対して垂直方向の断面が略三角形状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、建築構造物の外壁との間に隙間が生じにくい外壁剥落防止構造および外壁剥落防止工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外壁剥落防止構造を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図3におけるフレームの断面図(a)およびフレームカバーの断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る外壁剥落防止構造および外壁剥落防止工法を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の外壁剥落防止構造および外壁剥落防止工法は、以下の実施形態に限定されることはない。
【0022】
本実施形態の外壁剥落防止構造1は、
図1に示されるように、建築構造物の外壁Wの剥落を防止するための構造である。外壁剥落防止構造1は、外壁Wの剥落を防止する必要のある建築構造物に適用可能であり、特に限定されることはなく、たとえば鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの建築構造物に適用可能である。特に、外壁剥落防止構造1は、外壁の剥落の危険性のある既存の建築構造物に好適に適用することができる。外壁剥落防止構造1が剥落を防止する外壁は、建築構造物の外側を覆う壁のことであり、特に限定されることはなく、たとえば建築構造物の外側の壁に設けられたタイルやモルタルなどの仕上げ層が例示される。
【0023】
外壁剥落防止構造1は、
図1に示されるように、外壁Wの形状に応じて変形可能な可撓性シート2と、可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する固定手段3とを備える。外壁剥落防止構造1は、固定手段3により可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定することで、外壁Wの少なくとも一部の剥落を防止する。外壁Wの形状に応じて変形可能な可撓性シート2は、たとえば外壁Wに不陸があったとしても、不陸に対応するように変形可能であるので、建築構造物に固定される際に外壁Wとの間に隙間が生じるのを抑制する。
【0024】
可撓性シート2は、外壁Wに沿って広げられて外壁W上に貼り付けられ、固定手段3により外壁W上で建築構造物に固定されるシート状の部材である。可撓性シート2は、外壁Wの形状に応じて変形可能な柔軟性を有するとともに、外力を受けたときに弾性変形可能な可撓性を有している。可撓性シート2は、柔軟性および可撓性を有するシート状の部材であればよく、特に限定されることはないが、本実施形態では、
図3の拡大図に示されるように、基布21および基布21に積層されるゴム層22を備えるゴム引布である。可撓性シート2は、図示されるように、基布21に積層される接着層23をさらに備えていてもよい。また、可撓性シート2は、基布21に接着層を介してゴム層22が間接的に積層されて構成されていてもよいし、基布21およびゴム層22が複数積層されて構成されていてもよい。
【0025】
基布21は、柔軟性を有し、ゴム層22が積層されるためのベースとなるシート状の部材である。基布21は、公知のゴム引布の基布として用いられる布から適宜選択して使用することができる。ここで布とは、織物、編物、および不織布を含み、多数の繊維の集合により形成されたシート状物を意味する。たとえば基布21を構成する繊維の例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンもしくはビニロンなどの一種または混合により形成された合成繊維、綿もしくは麻等から形成された天然繊維、または天然繊維および合成繊維を用いた混紡繊維等のいずれか一種または組み合わせが挙げられる。なお、基布21は、織目もしくは編目が残存した織物または編物であってもよいし、熱処理などにより織目もしくは編目を溶融させて実質的に目が閉じられたシート状物であってもよい。ただし、基布21は、より良好な柔軟性を得るためには、織目または編目を有する布であることが望ましい。
【0026】
基布21の膜厚は、基布21が柔軟性を有しつつ、外壁Wの剥落を抑制する強度を有していればよく、特に限定されることはない。基布21の膜厚は、柔軟性、強度、軽量化の観点から、たとえば50μm以上、1000μm以下の範囲で適宜選択される。基布21は、外壁の剥落をより確実に防止するという観点から、公知のピンネット工法で用いられるネットに要求される引張強度を有することが好ましい。基布21は、たとえば90N/cm以上の引張強度を有することが好ましく、100N/cm以上の引張強度を有することがより好ましく、110N/cm以上の引張強度を有することがよりさらに好ましい。
【0027】
ゴム層22は、可撓性を有し、基布21に直接または間接的に積層されるシート状の部材である。ゴム層22は、たとえば公知のゴム引布のゴム層として用いられるゴム材料から適宜選択して形成することができる。ゴム層22を形成するゴム材料は、天然ゴムおよび合成ゴムのいずれであってもよく、一種のゴム材料を含んでもよいし、または二種以上のゴム材料を含んでもよい。合成ゴムとしては、たとえばポリブタジエン系、シリコーン系、ポリウレタン系、塩素系またはフッ素系の複数の系に分類される各種のゴムを挙げることができる。ゴム層22は、耐候性の観点からは、塩素系ゴムを含むことが好ましく、特にクロロプレンゴムまたはクロロスルホン化ポリエチレンゴムを含むことが好ましい。
【0028】
ゴム層22の膜厚は、ゴム層22が可撓性を有しつつ、柔軟性を有していればよく、特に限定されることはない。ゴム層22の膜厚は、可撓性、柔軟性、軽量化の観点から、たとえば50μm以上、1000μm以下の範囲で適宜選択される。
【0029】
接着層23は、可撓性シート2を外壁W上に貼り付けるための部材である。可撓性シート2は、接着層23を介して外壁W上に貼り付けられる。接着層23は、可撓性シート2を外壁W上に貼り付けることができれば、特に限定されることはなく、たとえばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、メタクリル(MMA)樹脂などにより構成される。可撓性シート2は、接着層23を備えることにより、外壁Wに新たに接着層を設ける必要がなく、外壁W上に貼り付けることができる。これにより、可撓性シート2を外壁W上に貼り付けるための時間と労力を削減できる。ただし、可撓性シート2は、接着層23を有することなく、外壁Wに新たに設けられた接着層を介して貼り付けられてもよい。外壁Wに新たに設ける接着層としては、クロロプレンゴム系接着剤または変性シリコーン系接着剤が好適に用いられる。
【0030】
固定手段3は、
図1に示されるように、外壁Wに沿って一方向に延び、外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する。可撓性シート2は、可撓性を有しているので、固定手段3と外壁Wとの間で挟持されたときに押圧されて変形して、固定手段3および外壁Wのそれぞれとの間の密封性を高める。それによって、可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのを抑えることができる。固定手段3は、可撓性シート2の端縁2eに沿って配置され、可撓性シート2の端縁2eに沿って可撓性シート2を建築構造物に固定する。可撓性シート2は、端縁2eに沿って外壁W上に固定されることで、端縁2e近傍において外壁Wから浮き上がるのが抑制されて、可撓性シート2と外壁Wとの間に隙間が生じにくくなる。それによって、可撓性シート2の端縁2eから可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが侵入するのを抑えることができる。
【0031】
本実施形態では、
図1に示されるように、可撓性シート2は、外壁W上で隣接する可撓性シート2と端縁2eに沿って重ね合わされて、外壁W上に貼り付けられる。互いに重ね合わされる可撓性シート2、2は、外壁Wの形状に応じて変形可能に構成されているので、外壁Wに不陸があったとしても、可撓性シート2、2同士の重ね合わせ部分OLにおける可撓性シート2、2同士の間や、可撓性シート2と外壁Wとの間に隙間が生じにくい。固定手段3は、可撓性シート2、2同士の重ね合わせ部分OLに沿って配置され、可撓性シート2、2同士の重ね合わせ部分OLに沿って可撓性シート2および隣接する可撓性シート2を建築構造物に固定する。可撓性シート2の重ね合わせ部分OLが固定手段3により固定されることで、水などが侵入しやすい端縁2e近傍が可撓性シート2、2の重ね合わせで保護されて、水などの侵入をより抑制することができる。
【0032】
固定手段3は、本実施形態では、
図1に示されるように、外壁Wに沿って直線状に延びるように形成されている。そして、固定手段3は、外壁Wに対して鉛直方向(
図1中、上下方向)または水平方向(
図1中、左右方向)に沿うように配置されている。しかし、固定手段3は、少なくとも外壁Wに沿って一方向に延びていれば、図示された例に限定されることはなく、湾曲して延びるように形成されていてもよいし、鉛直方向や水平方向とは異なる方向に沿うように配置されてもよい。以下では、固定手段3が外壁W上に固定された状態で、固定手段3の延びる方向を長手方向LDといい、外壁Wの表面に沿って長手方向LDに対して垂直な方向を幅方向WDといい、長手方向LDおよび幅方向WDに垂直な方向を高さ方向HDという。
【0033】
固定手段3の構成材料は、可撓性シート2を外壁W上に固定することができればよく、特に限定されることはない。固定手段3の構成材料としては、たとえば強度、重量、耐久性などの観点から、アルミニウムなどを採用することができる。固定手段3の大きさは、外壁Wや可撓性シート2の大きさに応じて適宜設定可能であり、特に限定されることはない。固定手段3の長手方向LD、幅方向WDおよび高さ方向HDのそれぞれの長さは、たとえば施工性などの観点から、80cm以上、120cm以下(長手方向LDの長さ)、4cm以上、10cm以下(幅方向WDの長さ)、および2cm以上、5cm以下(高さ方向HDの長さ)とすることができる。
【0034】
固定手段3は、外壁Wに沿って一方向に延び、外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を外壁W上に固定することができればよく、その構造は特に限定されることはない。固定手段3は、本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、外壁Wに沿って一方向に延びるフレーム31と、フレーム31を建築構造物に固定する固定具32と、フレーム31に沿って延び、フレーム31および固定具32を覆うようにフレーム31に固定されるフレームカバー33とを備える。
【0035】
フレーム31は、外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を外壁W上に固定するとともに、フレームカバー33を支持する部材である。フレーム31は、
図2~
図4に示されるように、フレーム31の延びる方向(長手方向LD)に沿って延びるフレーム本体31aと、フレーム本体31aに沿って延び、フレーム本体31aの延びる方向に対して略垂直方向(高さ方向HD)に、外壁Wとは反対側に向かってフレーム本体31aから立設するフレーム柱部31bとを備える。フレーム31は、フレーム31の延びる方向に対して略垂直方向に立設するフレーム柱部31bを備えることで、フレーム31の延びる方向に対して垂直方向に高い曲げ強度を有している。これにより、フレーム31は、可撓性シート2の端縁2eに沿って可撓性シート2を外壁Wに対して強固に固定することができる。
【0036】
フレーム本体31aは、外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を外壁W上に固定する部位である。フレーム本体31aは、
図2~
図4に示されるように、フレーム本体31aの長手方向LDに対して垂直方向の断面が略矩形の板状に形成されている。フレーム本体31aは、板状に形成されることで、可撓性シート2に対して板面で面接触する。それにより、フレーム本体31aと可撓性シート2との接触面積、および可撓性シート2と外壁Wとの接触面積が大きくなるので、フレーム本体31aと可撓性シート2との間の密封性が高まるとともに、可撓性シート2と外壁Wとの間の密封性が高まる。
【0037】
また、フレーム本体31aには、
図2~
図4に示されるように、固定具32を挿入可能な固定具用孔H1が形成されている。固定具用孔H1は、フレーム本体31aの高さ方向HDにフレーム本体31aを貫通するとともに、フレーム本体31aの長手方向LDに沿って延びて、長孔状に形成されている(
図2参照)。これにより、フレーム本体31aに対して固定具32を設ける位置を、フレーム本体31aの長手方向LDに沿ってある程度自由に選択できる。既存の建築構造物では、建築構造物に固定具32を固定する際に建築構造物中に含まれる鉄筋などを避ける必要があり、建築構造物に対して固定具32を設ける位置を固定手段3に合わせて自由に設定することが難しい場合がある。固定具用孔H1が長孔状に形成されることで、フレーム本体31aに対して固定具32を設ける位置をある程度自由に設定することができるので、建築構造物に対して固定具32を設ける位置を建築構造物に応じて調整することができ、固定手段3を所望の位置に固定し易くなる。なお、フレーム本体31aには、フレーム本体31aの可撓性シート2と接する側とは反対側の面で、フレーム本体31aの幅方向WDの中心に、長手方向LDに沿って延びる切欠き(図示せず)が設けられていてもよい。フレーム本体31aに切欠きが設けられることで、切欠きが目印となって、外壁W上の可撓性シート2に対してフレーム31を位置合わせし易くなる。
【0038】
フレーム柱部31bは、フレームカバー33を支持する部位である。本実施形態では、
図3および
図4(b)に示されるように、フレーム本体31aの幅方向WDの両方の端部側(図中、左右両側)に、幅方向WDで互いに離間して、2つのフレーム柱部31b、31bが形成されている。フレーム31の幅方向WDの略中央には、2つのフレーム柱部31b、31bとフレーム本体31aとによって画定されるフレーム側凹部R1が形成される。なお、上述した固定具用孔H1は、2つのフレーム柱部31b、31bの間で、フレーム本体31aのフレーム側凹部R1に面する部分に形成されている。フレーム側凹部R1は、フレームカバー33の後述するフレームカバー脚部33b、33bが嵌入可能な大きさに形成される。それにより、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、フレーム31のフレーム本体31aおよびフレーム柱部31b、31bによって形成されるフレーム側凹部R1にフレームカバー脚部33b、33bが嵌入される。したがって、フレーム31とフレームカバー33との間の密封性が高まり、固定手段3内部への水の侵入が抑制され、固定手段3内部に設けられた固定具用孔H1を介して可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのが抑制される。
【0039】
フレーム柱部31bは、
図3および
図4(b)に示されるように、フレーム本体31aの表面に対して略垂直な内側面31cと、フレーム本体31aの表面に対して傾斜する外側面31dとを備え、フレーム柱部31bの長手方向LDに対して垂直方向の断面が中空で底部が開口した略三角形状に形成されている。フレーム柱部31bは、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、内側面31cがフレームカバー脚部33bと面接触し、外側面31dが後述するフレームカバー屋根部33aと面接触するように、形成されている。フレーム柱部31bとフレームカバー脚部33bとが面接触することで、フレーム柱部31bとフレームカバー脚部33bとの間の密封性が向上し、フレーム柱部31bとフレームカバー屋根部33aとが面接触することで、フレーム柱部31bとフレームカバー屋根部33aとの間の密封性が向上する。これにより、フレーム柱部31bとフレームカバー屋根部33aとの間の界面、およびフレーム柱部31bとフレームカバー脚部33bとの間の界面を通じて固定手段3内に水などが浸入するのが抑制される。
【0040】
フレーム柱部31bの外側面31dには、
図3および
図4(b)に示されるように、フレームカバー屋根部33aをフレーム柱部31bに固定するためのビスやリベットなどの固定具34を固定する固定具用孔H2が形成される。固定具用孔H2がフレーム柱部31bの外側面31dに形成されることで、たとえ固定具用孔H2を介して固定手段3内に水などが侵入しようとしても、侵入しようとする水などは内側面31cと外側面31dとの間の空間に留まるので、固定具用孔H1が配置されたフレーム側凹部R1内への水などの侵入が抑制される。
【0041】
固定具32は、フレーム31を建築構造物に固定する部材である。固定具32は、固定具32自体が建築構造物に固定されることで、フレーム31を建築構造物に固定するように構成される。固定具32は、フレーム31を建築構造物に固定することができればよく、たとえば建築構造物の外壁Wにフレーム31を固定してもよいし、外壁Wよりも内側の建築構造物の内部にフレーム31を固定してもよい。固定具32は、特に限定されることはないが、本実施形態では、
図3に示されるように、アンカーボルトとして具現化されている。固定具32は、フレーム本体31aの固定具用孔H1および可撓性シート2を貫通して、建築構造物の外壁W内または外壁Wよりも内側の建築構造物内部まで侵入して固定される。
【0042】
フレームカバー33は、フレーム31に固定されて、フレーム31および固定具32を覆う部材である。フレームカバー33は、
図3に示されるように、固定具34によりフレーム31に固定される。ただし、フレームカバー33は、たとえば固定具34によらず係合や嵌合によって固定されてもよい。フレームカバー33は、フレーム31および固定具32を覆うことで、フレーム31内部や固定具32を外部から視認できないように覆い隠す機能(美観機能)を有するとともに、フレーム31内部に水が侵入するのを抑制する機能(防水機能)を有する。たとえばフレーム31に対する固定具32の位置が固定手段3毎に統一されておらず、それによって外観が優れない場合であっても、フレームカバー33が固定具32を覆い隠すことで、固定手段3の外観が優れたものとなり、結果として建築構造物の外観が優れたものとなる。また、フレームカバー33がフレーム31内部への水などの侵入を抑制することにより、フレーム31内部の固定具用孔H1を介して可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが侵入するのを抑制することができる。
【0043】
フレームカバー33は、
図3および
図4(a)に示されるように、フレームカバー33の延びる方向(長手方向LD)に対して垂直方向の断面が略三角形状に形成される。フレームカバー33の断面が略三角形状に形成されることで、
図1に示されるように複数の固定手段3が交差して設けられる場合に、互いに交差する固定手段3、3の間に隙間が生じにくくなるように、固定手段3を設計することができる。それにより、固定手段3の割り付け(配置)が容易になるとともに、交差する固定手段3、3の隙間から固定手段3内に水が浸入するのを抑制し、可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのを抑制することができる。また、フレームカバー33の断面が略三角形状に形成されることで、固定手段3が外壁Wに固定される際に、鉛直方向の上方に配置されるフレームカバー33の面が鉛直方向の下方に傾斜するように設置することが可能となる。それによって、フレームカバー33上に到達した水などが鉛直方向下方に流れ落ち易くなり、固定手段3によって水などが堰き止められて外壁W上に水などが留まるのを抑えることができる。
【0044】
フレームカバー33は、
図2~
図4に示されるように、フレームカバー33の延びる方向(長手方向LD)に沿って延びるフレームカバー屋根部33aと、フレームカバー屋根部33aに沿って延び、フレームカバー屋根部33aの延びる方向に対して略垂直方向(高さ方向HD)に、外壁Wに向かってフレームカバー屋根部33aから垂下するフレームカバー脚部33bとを備える。フレームカバー33は、フレームカバー33が延びる方向に対して垂直方向に垂下するフレームカバー脚部33bを備えることで、フレームカバー33が延びる方向に対して垂直方向に高い曲げ強度を有している。そして、フレームカバー33が、フレーム31とともに、フレーム31およびフレームカバー33の延びる方向に対して垂直方向(高さ方向HD)に高さを有する構造を形成することで、固定手段3の延びる方向に対して垂直方向への固定手段3の曲げ強度が増加する。それによって、固定手段3は、可撓性シート2の端縁2eに沿って可撓性シート2を外壁Wに対して強固に固定することができる。
【0045】
フレームカバー屋根部33aは、フレームカバー33の外縁を構成し、フレーム31および固定具32を覆う部位である。フレームカバー屋根部33aは、
図3および
図4(a)に示されるように、フレームカバー屋根部33aの長手方向LDに対して垂直方向の断面が、中空で底部が開口した略三角形状に形成される。フレームカバー屋根部33aは、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、フレーム31のフレーム柱部31bの外側面31dに面接触するように配置される。フレームカバー屋根部33aとフレーム柱部31bとが面接触して互いに固定されることで、フレームカバー屋根部33aとフレーム柱部31bとの間の密封性が高まり、フレーム31内への水などの侵入がより抑制される。フレームカバー屋根部33aには、固定具34が貫通する固定具用孔H3が形成される。固定具用孔H3は、フレームカバー33がフレーム31に取りけられるときにフレーム31のフレーム柱部31bの固定具用孔H2と直線状に並ぶように配置される。
【0046】
フレームカバー脚部33bは、フレームカバー屋根部33aを支持する部位である。本実施形態では、
図3および
図4(b)に示されるように、フレームカバー33の幅方向WDに互いに離間して2つのフレームカバー脚部33b、33bが設けられている。2つのフレームカバー脚部33b、33bは、フレーム31のフレーム本体31aおよびフレーム柱部31bによって形成されるフレーム側凹部R1に嵌入可能に形成される。それにより、上述したように、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、フレーム31のフレーム本体31aおよびフレーム柱部31b、31bによって形成されるフレーム側凹部R1にフレームカバー脚部33b、33bが嵌入される。また、フレームカバー脚部33b、33bの幅方向WDの外側において、フレームカバー屋根部33aおよびフレームカバー脚部33bによって画定されるカバー側凹部R2が形成される。カバー側凹部R2は、フレーム31のフレーム柱部31bが嵌入可能な大きさに形成される。それにより、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、フレームカバー屋根部33aおよびフレームカバー脚部33b、33bにより形成されるカバー側凹部R2、R2にフレーム31のフレーム柱部31b、31bが嵌入される。フレーム側凹部R1にフレームカバー脚部33b、33bが嵌入され、カバー側凹部R2、R2にフレーム31のフレーム柱部31b、31bが嵌入されることで、フレーム31とフレームカバー33との間の密封性が高まる。それによって、固定手段3内部への水などの侵入が抑制され、固定手段3内部に設けられた固定具用孔H1を介して可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのが抑制される。
【0047】
フレームカバー脚部33bは、
図3および
図4(a)に示されるように、フレームカバー脚部33bの長手方向LDに対して垂直方向の断面が略矩形の板状に形成される。フレームカバー脚部33bは、フレームカバー屋根部33aから高さ方向HDに沿って垂下するように配置される。フレームカバー脚部33bは、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、フレーム31のフレーム柱部31bの内側面31cに面接触するように配置される。フレームカバー脚部33bとフレーム柱部31bの内側面31cとが面接触することで、フレームカバー脚部33bとフレーム柱部31bの内側面31cとの間の密封性が高まり、フレームカバー脚部33bとフレーム柱部31bの内側面31cとの間を通って水などが浸入するのが抑制される。
【0048】
本実施形態では、
図3に示されるように、フレームカバー33がフレーム31に固定されることで、フレーム31のフレーム本体31aおよびフレーム柱部31b、31bと、フレームカバー33のフレームカバー屋根部33aおよびフレームカバー脚部33b、33bとによって囲繞される閉鎖空間Sが形成される。フレーム本体31aに設けられた固定具用孔H1は、固定手段3内の閉鎖空間S内に配置されて、固定手段3の外部から密閉される。これにより、固定手段3外部から固定手段3内部への水などの侵入が抑制され、固定具用孔H1を介して可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのが抑制される。
【0049】
つぎに、本発明の一実施形態に係る外壁剥落防止工法を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の外壁剥落防止工法は、以下の実施形態に限定されることはない。たとえば、以下では、本実施形態の外壁剥落防止工法に含まれる複数の工程を説明するが、必ずしも説明の順にそれぞれの工程が実施されなくてもよい。
【0050】
本実施形態の外壁剥落防止工法は、
図1に示されるように、建築構造物の外壁Wの剥落を防止するための工法である。外壁剥落防止工法は、外壁Wの形状に応じて変形可能な可撓性シート2を外壁W上に貼り付ける工程と、外壁Wに沿って一方向に延びる固定手段3により、外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する工程とを含んでいる。可撓性シート2は、外壁Wの形状に応じて変形可能な柔軟性を有しており、たとえば外壁Wに不陸があったとしても、不陸に対応するように変形可能であるので、外壁Wに固定される際に外壁Wとの間に隙間が生じるのを抑制する。また、可撓性シート2は、可撓性を有しているので、固定手段3と外壁Wとの間で挟持されたときに押圧されて変形して、固定手段3および外壁Wのそれぞれとの間の密封性を高める。それによって、可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのを抑えることができる。
【0051】
上述した可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する工程は、
図1に示されるように、可撓性シート2の端縁2eに沿って固定手段3を配置して、可撓性シート2の端縁2eに沿って可撓性シート2を建築構造物に固定する工程を含んでいる。可撓性シート2は、端縁2eに沿って外壁Wに固定されることで、端縁2e近傍において外壁Wから浮き上がるのが抑制されて、可撓性シート2と外壁Wとの間に隙間が生じにくくなる。それによって、可撓性シート2の端縁2eから可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが侵入するのを抑えることができる。
【0052】
本実施形態では、
図1に示されるように、可撓性シート2を外壁Wに貼り付ける工程が、可撓性シート2を、外壁W上で隣接する可撓性シート2と端縁2eに沿って重ね合わせて、外壁W上に貼り付ける工程を含んでいる。互いに重ね合わせる可撓性シート2、2は、外壁Wの形状に応じて変形可能に構成されているので、外壁Wに不陸があったとしても、可撓性シート2、2同士の重ね合わせ部分OLにおける可撓性シート2、2同士の間や、可撓性シート2と外壁Wとの間に隙間が生じにくい。そして、可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する工程が、可撓性シート2、2同士の重ね合わせ部分OLに沿って固定手段3を配置して、可撓性シート2、2同士の重ね合わせ部分OLに沿って可撓性シート2および隣接する可撓性シート2を建築構造物に固定する工程を含んでいる。可撓性シート2の重ね合わせ部分OLが固定手段3により固定されることで、水などが侵入しやすい端縁2e近傍が可撓性シート2、2の重ね合わせで保護されて、水などの侵入をより抑制することができる。
【0053】
上述したように、本実施形態では、固定手段3は、
図2および
図3に示されるように、フレーム31と、フレーム31を建築構造物に固定する固定具32と、フレーム31および固定具32を覆うようにフレーム31に固定されるフレームカバー33とを備えている。この場合、可撓性シート2を外壁W上で建築構造物に固定する工程は、可撓性シート2の端縁2eに沿ってフレーム31を配置する工程と、固定具32によりフレーム31を建築構造物に固定することにより、フレーム31と外壁Wとの間で可撓性シート2を挟持して、可撓性シート2を建築構造物に固定する工程と、フレーム31および固定具32を覆うように、フレームカバー33をフレーム31に固定する工程とを含んでいる。フレームカバー33が、フレーム31および固定具32を覆うことで、フレーム31内部や固定具32が覆い隠されて審美性が向上するとともに、フレーム31内部に水が侵入するのを抑制して防水性が向上する。
【0054】
さらに、
図3および
図4に示されるように、固定手段3のフレーム31は、フレーム本体31aと、フレーム本体31aから立設するフレーム柱部31bとを備え、固定手段3のフレームカバー33は、フレームカバー屋根部33aと、フレームカバー屋根部33aから垂下するフレームカバー脚部33bとを備えている。この場合、フレームカバー33がフレーム31に固定されるときに、フレーム31のフレーム本体31aおよびフレーム柱部31bによって形成されるフレーム側凹部R1にフレームカバー脚部33bが嵌入され、フレームカバー屋根部33aおよびフレームカバー脚部33bにより形成されるカバー側凹部R2にフレーム31のフレーム柱部31bが嵌入される。したがって、フレーム31とフレームカバー33との間の密封性が高まり、固定手段3内部への水などの侵入が抑制され、固定手段3内部に設けられた固定具用孔H1を介して可撓性シート2と外壁Wとの間に水などが浸入するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 外壁剥落防止構造
2 可撓性シート
2e 端縁
21 基布
22 ゴム層
23 接着層
3 固定手段
31 フレーム
31a フレーム本体
31b フレーム柱部
31c 内側面
31d 外側面
32 固定具
33 フレームカバー
33a フレームカバー屋根部
33b フレームカバー脚部
34 固定具
H1、H2、H3 固定具用孔
HD 高さ方向
LD 長手方向
OL 可撓性シート同士の重ね合わせ部分
R1 フレーム側凹部
R2 カバー側凹部
S 閉鎖空間
W 外壁
WD 幅方向