(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028599
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/10 20120101AFI20220208BHJP
G06V 30/412 20220101ALI20220208BHJP
G06V 30/12 20220101ALI20220208BHJP
【FI】
G06Q20/10 300
G06K9/20 340C
G06K9/03 C
G06K9/03 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079170
(22)【出願日】2021-05-07
(62)【分割の表示】P 2020542172の分割
【原出願日】2020-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】516380407
【氏名又は名称】ファーストアカウンティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】葛 鴻鵬
(72)【発明者】
【氏名】松田 顕
(72)【発明者】
【氏名】小俣 智
(72)【発明者】
【氏名】森 啓太郎
【テーマコード(参考)】
5B029
5B064
5L055
【Fターム(参考)】
5B029AA01
5B029BB02
5B029CC26
5B029CC28
5B064AA01
5B064BA01
5B064EA27
5B064FA02
5B064FA19
5L055AA32
(57)【要約】
【課題】請求書を管理するコンピュータに登録される金額の精度を高める。
【解決手段】データ処理装置1は、請求書データを取得するデータ取得部131と、請求書データに含まれる合計請求額と、請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する金額特定部133と、合計請求額と複数の商品金額の合算額とを比較する比較部134と、比較部134による比較結果が一致していない場合に警告情報を出力する出力部135と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
請求書データを取得するデータ取得部と、
前記請求書データに含まれる合計請求額と、前記請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する金額特定部と、
前記合計請求額と前記複数の商品金額の合算額とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果が一致していない場合に警告情報を出力する出力部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記請求書データは、前記合計請求額が記載された第1請求書データと、前記複数の商品の明細が記載された第2請求書データと、を含み、
前記比較部は、前記第1請求書データに含まれている前記合計請求額と、前記第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含む前記第2請求書データに含まれている前記複数の商品金額の合算額とを比較する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記比較部は、前記請求書データにおいて前記複数の商品の名称を示す文字列が配置されている方向に記載された前記複数の商品金額を合算することにより前記合算額を算出する、
請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記請求書データには、前記複数の商品それぞれに関連付けて、税抜金額と税額とが含まれており、
前記比較部は、前記複数の商品それぞれに対応する税抜金額と税額とを合算することにより前記合算額を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記請求書データには、前記複数の商品それぞれに関連付けて、税抜金額と税額とが含まれており、
前記比較部は、前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合算額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較し、
前記出力部は、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致しない場合に前記警告情報を出力する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、又は前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果が一致した場合、前記第1合算額又は前記第2合算額のどちらが前記合計請求額と一致したかを示す情報を出力する、
請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記比較結果が一致していない場合、前記複数の商品金額のいずれかと前記合計請求額とのうち、どちらに誤りがある可能性があるかを示す情報を出力する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記比較部は、前記請求書データに含まれている前記複数の商品それぞれの単価と数量とを乗算した結果に基づく額と前記商品金額とを比較した結果に基づいて、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがあるか否かを判定し、
前記出力部は、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがあると前記比較部が判定した場合、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがある蓋然性が高いことを示す情報を出力し、前記複数の商品金額のいずれにも誤りがないと前記比較部が判定した場合、前記合計請求額に誤りがある蓋然性が高いことを示す情報を出力する、
請求項7に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記合計請求額に誤りがある可能性があると前記比較部が判定した場合、前記合計請求額の修正額候補として前記合算額を出力する、
請求項7又は8に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがある可能性があると前記比較部が判定した場合、前記複数の商品金額のうち誤りがある可能性がある一以上の商品金額の修正額候補を出力する、
請求項7から9のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
コンピュータが、
請求書データを取得するステップと、
前記請求書データに含まれる合計請求額と、前記請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定するステップと、
前記合計請求額と前記複数の商品金額の合算額とを比較するステップと、
比較した結果が一致していない場合に警告情報を出力するステップと、
を実行するデータ処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
請求書データを取得するステップと、
前記請求書データに含まれる合計請求額と、前記請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定するステップと、
前記合計請求額と前記複数の商品金額の合算額とを比較するステップと、
比較した結果が一致していない場合に警告情報を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求書を処理するためのデータ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文書を文字認識した結果に誤りがある場合に、誤認識された文字列を修正する機能を有する画像処理装置が知られている。特許文献1には、漢字の旧字と新字の違いや漢字の送り仮名の違い等の誤認識パターンに基づいて、誤認識した文字列を修正する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、請求書に記載された金額を認識し、認識した金額をコンピュータで管理するシステムが使用されている。請求書に記載された金額が正しく認識されないと、請求書を管理するコンピュータに正しい金額が登録されないので、経理処理に支障が生じてしまう。従来の技術により、誤認識パターンに当てはまる誤認識であれば、金額が正しく修正される場合があるが、誤認識パターンに当てはまらない誤認識が生じた場合、誤認識が発生していることに気づかないまま、誤った金額が登録されてしまう場合があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、請求書を管理するコンピュータに登録される金額の精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のデータ処理装置は、請求書データを取得するデータ取得部と、前記請求書データに含まれる合計請求額と、前記請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する金額特定部と、前記合計請求額と前記複数の商品金額の合算額とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果が一致していない場合に警告情報を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記請求書データは、前記合計請求額が記載された第1請求書データと、前記複数の商品の明細が記載された第2請求書データと、を含み、前記比較部は、前記第1請求書データに含まれている前記合計請求額と、前記第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含む前記第2請求書データに含まれている前記複数の商品金額の合算額とを比較してもよい。
【0008】
前記比較部は、前記請求書データにおいて前記複数の商品の名称を示す文字列が配置されている方向に記載された前記複数の商品金額を合算することにより前記合算額を算出してもよい。
【0009】
前記請求書データには、前記複数の商品それぞれに関連付けて、税抜金額と税額とが含まれており、前記比較部は、前記複数の商品それぞれに対応する税抜金額と税額とを合算することにより前記合算額を算出してもよい。
【0010】
前記請求書データには、前記複数の商品それぞれに関連付けて、税抜金額と税額とが含まれており、前記比較部は、前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合算額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較し、前記出力部は、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致しない場合に前記警告情報を出力してもよい。
【0011】
前記出力部は、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、又は前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果が一致した場合、前記第1合算額又は前記第2合算額のどちらが前記合計請求額と一致したかを示す情報を出力してもよい。
【0012】
前記出力部は、前記比較結果が一致していない場合、前記複数の商品金額のいずれかと前記合計請求額とのうち、どちらに誤りがある可能性があるかを示す情報を出力してもよい。
【0013】
前記比較部は、前記請求書データに含まれている前記複数の商品それぞれの単価と数量とを乗算した結果に基づく額と前記商品金額とを比較した結果に基づいて、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがあるか否かを判定し、前記出力部は、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがあると前記比較部が判定した場合、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがある蓋然性が高いことを示す情報を出力し、前記複数の商品金額のいずれにも誤りがないと前記比較部が判定した場合、前記合計請求額に誤りがある蓋然性が高いことを示す情報を出力してもよい。
【0014】
前記出力部は、前記合計請求額に誤りがある可能性があると前記比較部が判定した場合、前記合計請求額の修正額候補として前記合算額を出力してもよい。
【0015】
前記出力部は、前記複数の商品金額のいずれかに誤りがある可能性があると前記比較部が判定した場合、前記複数の商品金額のうち誤りがある可能性がある一以上の商品金額の修正額候補を出力してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様のデータ処理方法は、コンピュータが、請求書データを取得するステップと、前記請求書データに含まれる合計請求額と、前記請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定するステップと、前記合計請求額と前記複数の商品金額の合算額とを比較するステップと、比較した結果が一致していない場合に警告情報を出力するステップと、を実行する。
【0017】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、請求書データを取得するステップと、前記請求書データに含まれる合計請求額と、前記請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定するステップと、前記合計請求額と前記複数の商品金額の合算額とを比較するステップと、比較した結果が一致していない場合に警告情報を出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、請求書を管理するコンピュータに登録される金額の精度を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】データ処理システムSの構成を説明するための図である。
【
図2】請求書データに対応する請求書(鑑)の例を示す図である。
【
図3】請求書データに対応する請求書(明細)の例を示す図である。
【
図4】請求書の鑑を読み取って作成された請求書データの例を示す図である。
【
図5】請求書の明細を読み取って作成された請求書データの例を示す図である。
【
図7】商品金額に誤りがある蓋然性が高いことを示す情報が出力された請求書データの例を示す図である。
【
図8】データ処理装置1における金額チェック処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[データ処理システムSの概要]
図1は、データ処理システムSの構成を説明するための図である。データ処理システムSは、請求書を読み取って得られた請求書データを処理するためのシステムである。請求書データは、請求書を読み取ることにより作成されたデータであり、請求書の内容を示す画像、又は請求書に含まれる複数の文字列に対応する複数のテキストデータを含むデータである。
【0021】
データ処理システムSは、データ処理装置1と、経理端末2と、従業員端末3と、を備える。データ処理装置1、経理端末2及び従業員端末3は、ネットワークNを介してデータを送受信する。ネットワークNは、例えばインターネット又はイントラネットを含む。
【0022】
データ処理装置1は、各種の請求書データを管理するコンピュータである。データ処理装置1は、経理端末2又は従業員端末3から請求書の画像データを含むファイルを取得し、取得した画像データにおいて特定された文字列に基づいて、請求書データを作成してもよく、経理端末2又は従業員端末3から請求書データを含むファイルを取得してもよい。
【0023】
本実施形態に係るデータ処理装置1は、請求先企業が受け取った請求書の内容を示す請求書データを管理する。データ処理装置1は、過去に請求先企業が受け取った請求書の内容、及びそれぞれの請求書に関連する部門を示す複数の過去請求書データを含む請求書データベースを記憶しており、経理端末2からの要求に応じて、記憶している請求書データの内容を経理端末2に提供する。データ処理装置1は、請求書データに含まれている文字列を認識し、請求書データを管理するシステム(例えば経理用の基幹システム)のデータベースに登録されるデータを出力してもよい。
【0024】
データ処理装置1は、例えば人工知能を用いて請求書の画像データに含まれている文字列を認識して請求書データを作成するが、文字列を正しく認識できないという場合がある。また、請求書に誤記が存在する場合もある。誤認識又は誤記された文字列がデータベースに登録されてしまうと経理処理に支障が生じる。データ処理装置1は、経理処理に支障が生じないように、請求書データに含まれる合計請求額と、当該請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を比較することにより、誤認識又は誤記された文字列の有無を判定する。データ処理装置1は、誤認識された文字列や誤記された文字列があることを検出した場合に警告情報を出力することで、経理担当者に注意を促す。データ処理装置1は、誤認識又は誤記された文字列があることを検出した場合に、正しいと推定される文字列の候補を出力してもよい。
【0025】
経理端末2は、請求書を受領した請求先企業においてデータ処理装置1を利用する従業員(例えば経理担当者)が使用するコンピュータである。経理端末2は、例えばイントラネットを介してデータ処理装置1との間で各種のデータを送受信する。
【0026】
経理端末2は、例えば経理担当者がスキャナで読み取った請求書の画像データをデータ処理装置1に送信する。また、経理端末2は、経理担当者の指示に応じてデータ処理装置1が記憶している請求書データベースにアクセスして、経理担当者が指定した請求書データを表示する。
図1は1台の経理端末2を示しているが、複数の経理端末2がデータ処理装置1にアクセスしてもよい。
【0027】
従業員端末3は、商品等を請求元企業に発注した請求先企業の従業員が使用するコンピュータである。従業員端末3は、従業員が請求書を受け取った場合に、従業員の操作に応じて請求書の画像データをデータ処理装置1に送信する。
【0028】
図2及び
図3は、請求書の例を示す図である。
図2は、請求書における鑑の部分の例を示しており、
図3は、請求書における明細の部分の例を示している。鑑には明細の要点が記載されており、例えば、明細に記載されている複数の商品の金額の合計請求額が記載されている。
図2に示す例においては、
図3に示す明細に記載されている複数の商品の税抜金額の合計額である「御買上額」、複数の商品の消費税額の合計額である「消費税額」、及び「御買上額」と「消費税額」が合算された合計請求額が「御請求額」として記載されている。
【0029】
図3に示す明細においては、複数の商品それぞれの納品日、品名、数量、単価、商品金額、税額が記載されている。また、複数の商品の商品金額の小計、税額の小計も記載されており、それらを合算した金額である合算額が「御請求額」として記載されている。
【0030】
図4は、
図2に示した請求書の鑑を読み取って作成された請求書データの例を示す図である。データ処理装置1は、
図4に示す請求書データを、例えば経理端末2に表示させる。
【0031】
図4に示す請求書データにおいては、合計請求額が89,000円と読み取られており、「88,000円の可能性あり」という警告が表示されている。データ処理装置1は、例えば、
図4に示す合計請求額と、
図3に示した請求書を読み取った請求書データにおける複数の商品金額の合算値とを比較し、これらが一致しない場合に警告を経理端末2に表示させる。この際、正しい合計請求額の候補として、明細に記載されている複数の商品金額の合算値を修正額候補として経理端末2に表示させる。
【0032】
データ処理装置1は、鑑に税別金額と税額とが記載されている場合、税別金額と税額とを合算した額と合計請求額とを比較した結果に基づいて警告を表示させたり、修正額候補を表示させたりしてもよい。データ処理装置1がこのように警告を経理端末2に表示させることで、経理担当者が、請求書データに問題があることを認識することができる。また、データ処理装置1が修正額候補を表示させることにより、経理担当者が正しい額に訂正をしやすくなる。
【0033】
図5は、
図3に示した請求書の明細を読み取って作成された請求書データの例を示す図である。
図5に示す請求書データにおいては、「御請求額」が誤って98,000円と読み取られており、警告が表示されている。データ処理装置1は、「御請求額」として記載された額が、複数の商品金額の合算額80,000円と税額の合算額8,000円を合計した額である88,000円と一致していないことから、「御請求額」として記載された額に誤りがある可能性があると判定して警告を出力する。データ処理装置1は、鑑に記載されている合計請求額とも一致していないことに基づいて警告を出力してもよい。
【0034】
このように、データ処理装置1は、請求書データに含まれる合計請求額と、請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額の合算額とが一致していない場合に警告を出力するので、請求書内の金額が誤って読み取られていることを経理担当者が認識する。その結果、誤った金額がデータベースに登録されることを防げる。以下、データ処理装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0035】
[データ処理装置1の構成及び動作]
図6は、データ処理装置1の構成を示す図である。データ処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。制御部13は、データ取得部131と、文字列特定部132と、金額特定部133と、比較部134と、出力部135とを有する。
【0036】
通信部11は、ネットワークNを介して経理端末2及び従業員端末3と各種のデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、例えば経理端末2から受信したデータをデータ取得部131に入力する。また、通信部11は、出力部135から入力されたデータを、例えば経理端末2に送信する。
【0037】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。記憶部12は、通信部11を介して受信した請求書の画像データを一時的に記憶するワークメモリとしても機能する。記憶部12は、過去の請求書の請求書データを記憶してもよい。
【0038】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部131、文字列特定部132、金額特定部133、比較部134及び出力部135として機能する。
【0039】
データ取得部131は、通信部11を介して各種のデータを取得する。データ取得部131は、例えば経理端末2又は3から送信された請求書データを取得する。データ取得部131は、取得した請求書データが画像データである場合、当該画像データを文字列特定部132に入力する。データ取得部131は、請求書の画像データを記憶部12に記憶させてもよい。データ取得部131は、取得した請求書データがテキストデータを含む場合、請求書データを金額特定部133に入力する。
【0040】
また、データ取得部131は、経理端末2における操作内容を示すデータを取得してもよい。指示データは、例えば複数の候補文字列から経理端末2の経理担当者が選択した候補文字列を示す選択データである。データ取得部131は、取得した選択データを金額特定部133に通知する。
【0041】
文字列特定部132は、請求書の画像データに含まれる複数の文字列を特定する。文字列特定部132は、例えばOCR(Optical Character Recognition)を用いて文字認識することにより複数の文字列を特定する。一例として、文字列特定部132は、文字が読み取られた画像データと文字列との組み合わせを教師データとして学習し、入力された画像データに対応する複数の文字列を出力する機械学習モデル(すなわち人工知能エンジン)に請求書の画像データを入力することにより、複数の文字列を特定する。文字列特定部132は、特定した文字列を金額特定部133に通知する。
【0042】
請求書が鑑と明細から構成されており、請求書の画像データが鑑のデータ(第1請求書データ)と明細のデータ(第2請求書データ)とを含んでいる場合、文字列特定部132は、読み取った請求書の画像データが鑑のデータであるか明細のデータであるかをさらに判別し、判別した結果を金額特定部133に通知してもよい。文字列特定部132は、例えば、複数の商品名の文字列を特定できなかった場合には読み取った請求書の画像データが鑑のデータであると判定し、複数の商品名の文字列を特定できた場合には読み取った請求書の画像データが明細のデータであると判定する。文字列特定部132は、予め鑑の書式と明細の書式とを教師データとして機械学習したモデルに読み取った請求書データを入力し、当該モデルから出力された結果に基づいて、読み取った請求書が鑑であるか明細であるかを判別してもよい。
【0043】
文字列特定部132は、特定した文字列に基づいて、複数の第1請求書データ及び複数の第2請求書データのうち、一つの請求書に対応する第1請求データと第2請求データとを特定してもよい。第2請求書データが、第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含んでいる場合、文字列特定部132は、例えば、第1請求書データと、当該第1請求書データに記載された請求書番号に対応する請求書番号を含む第2請求書データとを、一つの請求書データに含まれる鑑のデータ及び明細のデータであると判定してもよい。
【0044】
図2及び
図3に示す例の場合、第2請求書データは、第1請求書データが含む請求書番号S1000226と同一の請求書番号を含んでおり、
図2に示す第1請求書データが、
図3に示す第2請求書データの鑑であると判定する。文字列特定部132は、どの請求書データが鑑に対応し、どの請求書データが明細に対応するかを示す種別情報を金額特定部133に通知する。
【0045】
金額特定部133は、請求書データに含まれる合計請求額と、請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する。金額特定部133は、例えば、文字列特定部132から通知された種別情報に基づいて、鑑に含まれている金額が合計請求額であると特定し、明細において複数の商品名と同じ列又は同じ行に記載されている金額が複数の商品金額であると特定する。
【0046】
請求書の明細に合計請求額と複数の商品金額とが記載されている場合、金額特定部133は、金額が記載されている請求書内の位置、又は金額の横に記載されている文字の内容の少なくともいずれかに基づいて、合計請求額であるか商品金額であるかを判別してもよい。金額特定部133は、例えば請求書の最も下の位置に書かれている金額が合計請求額であると判別し、商品名と同じ列又は行に書かれている金額が商品金額であると判別する。
【0047】
比較部134は、金額特定部133が特定した合計請求額と複数の商品金額の合算額とを比較する。比較部134は、例えば、
図2に示した鑑に対応する第1請求書データに含まれている合計請求額と、
図3に示した明細に対応する第2請求書データに含まれている複数の商品金額の合算額とを比較する。比較部134は、請求書データにおいて複数の商品の名称を示す文字列が配置されている方向(
図3に示す例においては縦方向)に記載された複数の商品金額を合算することにより合算額を算出する。比較部134は、比較した結果を出力部135に通知する。なお、請求書の明細に合計請求額と複数の商品金額とが記載されている場合、比較部134は、一つの明細に記載された合計請求額と複数の商品金額の合算額とを比較してもよい。
【0048】
出力部135は、比較部134が比較した結果が一致していない場合に警告情報を出力する。出力部135は、比較した結果が一致していない場合に、合計請求額と複数の商品金額の合算額との差額を出力してもよい。出力部135は、合計請求額に誤りがある可能性があると判定した場合、合計請求額の修正額候補として合算額を出力してもよい。出力部135は、例えば経理端末2に警告情報又は修正額候補を送信することにより、警告情報、差額又は修正額候補を経理端末2に表示させるが、出力部135は、データ処理装置1に接続されたディスプレイに警告情報、差額又は修正額候補を表示させたり、紙に警告情報、差額又は修正額候補を印刷したりしてもよい。
【0049】
以下、比較部134及び出力部135の動作を詳細に説明する。
図3に示す例のように、明細に商品の税抜金額と税額とが別々に記載されている場合、比較部134は、複数の商品それぞれに対応する税抜金額と税額とを合算することにより合算額を算出する。比較部134は、複数の商品に対応する複数の税抜金額の合算額である第1合算額、及び複数の商品に対応する複数の税抜金額と複数の税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、合計請求額とを比較してもよい。この場合、出力部135は、第1合算額と合計請求額との比較結果、及び第2合算額と合計請求額との比較結果の両方が一致しない場合に警告情報を出力し、いずれか一方の比較結果が一致している場合には警告情報を出力しない。このように比較部134及び出力部135が動作することで、例えば、鑑に税込の合計請求額が記載されており、明細に商品別の税抜金額が記載されているような場合に、いずれかが誤っていると比較部134が誤判定して出力部135が警告情報を出力してしまうことを防止できる。
【0050】
また、出力部135は、第1合算額と合計請求額との比較結果、又は第2合算額と合計請求額との比較結果が一致した場合、第1合算額又は第2合算額のどちらが合計請求額と一致したかを示す情報を出力してもよい。出力部135は、例えば、第1合算額と合計請求額とが一致していると判定した場合、「鑑に記載された合計請求額は税抜金額です」と経理端末2に表示させ、第2合算額と合計請求額とが一致していると判定した場合、「鑑に記載された合計請求額は税込金額です」と経理端末2に表示させる。出力部135がこのような情報を出力することで、鑑に税抜金額が記載されている場合に、鑑に記載された合計請求額が税抜金額であることを経理担当者が認識して処理をすることができる。
【0051】
出力部135は、複数の商品金額の合算額と合計請求額との比較結果が一致していない場合、複数の商品金額のいずれかと合計請求額とのうち、どちらに誤りがある可能性があるかを示す情報を出力してもよい。これを可能にするために、比較部134は、請求書データに含まれている複数の商品それぞれの単価と数量とを乗算した結果に基づく額と商品金額とを比較した結果に基づいて、複数の商品金額のいずれかに誤りがあるか否かを判定する。出力部135は、複数の商品金額のいずれかに誤りがあると比較部134が判定した場合、複数の商品金額のいずれかに誤りがある蓋然性が高いことを示す情報を出力する。また、出力部135は、複数の商品金額のいずれにも誤りがないと比較部134が判定した場合、合計請求額に誤りがある蓋然性が高いことを示す情報を出力する。
【0052】
図7は、商品金額に誤りがある蓋然性が高いことを示す情報が出力された請求書データの例を示す図である。比較部134は、商品ごとに、数量と単価を乗算した額と、商品金額と、税額とを比較する。
図7に示す例の場合、比較部134は、「測定器A用プローブ」の数量と単価とを乗算した額である20,000円が商品金額に一致しておらず、税額2,000円とは整合していることから、商品金額「30,000円」に誤りがある蓋然性が高いと判定する。そして、比較部134は、数量と単価を乗算した額、又は税額のいずれかに基づいて、商品金額が「20,000円」である蓋然性が高いと判定する。出力部135は、複数の商品金額のいずれかに誤りがある可能性があると比較部134判定した場合、複数の商品金額のうち誤りがある可能性がある一以上の商品金額の修正額候補を出力する。
図7に示す例において、出力部135は、「20,000円の可能性あり」という情報を出力している。
【0053】
比較部134は、鑑に記載された合計請求額と、明細に記載された複数の商品金額の合算額とが一致しないことを条件として、複数の商品それぞれに関連付けられた数量、単価、商品金額、及び税額が、同じ列又は同じ行に記載された他の額と整合するかどうかを判定してもよい。比較部134がこのように動作することで、明細に記載された金額のいずれかに誤りがある可能性がある場合に限って、明細に記載された金額の整合性をチェックするため、鑑に記載された合計請求額と明細に記載された複数の商品金額の合算額とが一致している場合の処理時間を短縮することができる。
【0054】
ところで、以上の説明においては、請求書データに含まれている鑑のデータと明細のデータとが、同一の請求書に含まれている鑑と明細に対応するデータであることを前提に説明したが、請求書を読み取る作業をした人のミスにより、請求書データに含まれている鑑のデータと明細のデータとが、それぞれ異なる請求書の鑑と明細であるということもある。そこで、このようなミスを検出することができるように、出力部135は、鑑に記載された合計請求額と明細に記載された複数の商品金額の合算額との差異が、文字認識の誤りでないと判定した場合に、鑑と明細が整合していない可能性があることを示す警告情報を出力してもよい。
【0055】
近年の文字認識率は99%以上であり、複数の文字が誤認識される確率は低いので、比較部134は、合計請求額と複数の商品金額の合算額とを比較した結果、複数の数値が一致していないという場合に、鑑と明細が整合していない可能性があると判定してもよい。比較部134及び出力部135がこのように動作することで、鑑と明細が含まれている請求書を読み取る処理にミスが生じたことを経理担当者が把握できるので、誤ったデータがコンピュータに登録されることを防げる。
【0056】
[データ処理装置1の処理の流れ]
図8は、データ処理装置1における金額チェック処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、例えば経理担当者がデータ処理装置1に請求書の画像データを登録する処理を行った時点から開始している。
【0057】
データ取得部131は、経理端末2が送信した請求書の画像データを取得し、取得した画像データを文字列特定部132に入力する(S11)。データ取得部131は、文字列が特定された後の請求書データを取得し、取得した請求書データを金額特定部133に通知してもよい。文字列特定部132は、入力された画像データに含まれている文字列を特定し、特定した文字列を金額特定部133に通知する(S12)。
【0058】
金額特定部133は、鑑に記載されている文字列に基づいて、合計請求額を特定する(S13)。また、金額特定部133は、明細に記載されている文字列として通知された複数の文字列に基づいて、複数の商品金額を特定する(S14)。比較部134は、合計請求額と複数の商品金額とを比較する(S15)。
【0059】
比較部134は、比較した結果が一致していると判定した場合(S16においてYES)、金額チェック処理を終了する。比較部134は、比較した結果が一致していないと判定した場合、判定した結果を出力部135に通知して、出力部135が警告情報を出力する(S17)。出力部135は、比較部134が修正額候補を算出できた場合(S18においてYES)、修正額候補をさらに出力する(S19)。出力部135は、比較部134が修正額候補を算出できなかった場合(S18においてNO)、処理を終了する。
【0060】
[データ処理装置1による効果]
以上説明したように、データ処理装置1は、請求書データに含まれる合計請求額と、請求書データに含まれている複数の商品に対応する複数の商品金額の合算額とが一致していない場合に警告情報を出力するので、請求書内の金額が誤って読み取られていることを経理担当者が認識する。その結果、誤った金額がデータベースに登録されることを防げる。
【0061】
データ処理装置1は、例えば、請求書の鑑に記載された合計請求額と請求書の明細に記載された複数の商品金額の合算額とが一致していない場合に警告情報を出力する。したがって、出力部135は、文字列特定部132が文字列を誤認識した場合に加えて、それぞれ異なる請求書の鑑と明細とが混在したことにより、合計請求額と合算額とが一致しない場合にも、警告情報を出力することができる。その結果、鑑と明細が含まれている請求書を読み取る処理にミスが生じたことを経理担当者が把握することも可能になる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0063】
例えば、以上の説明においては、文字列特定部132が特定した文字列が、
図4又は
図5のような請求書の外観で経理端末2に表示される場合を例示したが、経理端末2に文字列が表示される態様は任意である。経理端末2は、コンピュータに登録する対象となる文字列を表形式で表示してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 データ処理装置
2 経理端末
3 従業員端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 データ取得部
132 文字列特定部
133 金額特定部
134 比較部
135 出力部