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特開2022-28601内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028601
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/07 20060101AFI20220208BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220208BHJP
   G02B 23/26 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
A61B1/07 733
A61B1/00 650
A61B1/00 715
G02B23/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084567
(22)【出願日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2020131476
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 進
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA13
2H040CA12
2H040GA02
2H040GA11
4C161BB02
4C161BB03
4C161BB04
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF40
4C161GG11
4C161JJ03
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させることができる内視鏡用照明光学系を提供する。
【解決手段】内視鏡用の光伝送光学部材51は、挿入部5の先端部11に設けられ、挿入部5の基端側から入射光として光が入射する入射面51cと、照明光として光を出射する出射面51a、51bとを有する。出射面51a、51bは、出射光を拡散させる拡散部DSを有する。拡散部DSは、出射面51a、51b上において所定の方向OCに沿って伸びる複数の凸状部UFを有し、各凸状部UFは、出射面51a、51bに対して角度θaを有し入射光を全反射させる斜面部IP1と、出射面51a、51bに対して角度θaよりも小さい角度θbを有し斜面部IP1で全反射された反射光及び入射光を透過して出射させる斜面部IP2とを有する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に挿入される挿入部を有する内視鏡用の照明光学系であって、
前記挿入部の先端部に設けられ、前記挿入部の基端側から入射光として光が入射する入射面と、照明光として前記光を出射する出射面とを有する光学素子を有し、
前記出射面は、前記出射光を拡散させる拡散部を有し、
前記拡散部は、前記出射面上において所定の方向に沿って伸びる複数の凸状部を有し、
各凸状部は、前記出射面に対して第1の角度を有し前記入射光を全反射させる全反射面と、前記出射面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度を有し前記全反射面で全反射された反射光及び前記入射光を透過して出射させる透過面とを有する、
内視鏡用照明光学系。
【請求項2】
前記各凸状部は、前記出射面に対して直交しかつ前記所定の方向に平行な面に対して面対称となるように、それぞれが前記全反射面と前記透過面により形成される2つの凸部を有する、請求項1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項3】
前記所定の方向から見たとき、前記第1の角度は、前記出射面に対して60°以上で85°以下の範囲の角度であり、前記第2の角度は、前記出射面に対して0°を超えて30°以下の範囲の角度である、請求項1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項4】
隣接する2つの全反射面により形成される第1の溝の深さは、隣接する2つの透過面により形成される第2の溝の深さよりも深い、請求項2に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項5】
前記複数の凸状部の一部は、前記複数の凸状部の他の一部に対して、前記所定の方向に平行な面に対して面対称で、前記出射面上に配設されている、請求項1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項6】
前記複数の凸状部の一部と前記複数の凸状部の他の一部とが前記所定の方向に平行な面に対して面対称で前記出射面上に配設されている領域が、複数設けられている、請求項1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項7】
前記内視鏡用照明光学系は、直視用、斜視用又は側視用の内視鏡の照明光学系である、請求項1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項8】
前記内視鏡用照明光学系は、前記直視用の照明光学系である場合、前記光学素子は、ロッドレンズである、請求項7に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項9】
前記内視鏡用照明光学系は、前記側視用の照明光学系である場合、前記光学素子は、前記入射光を反射する2つの反射面を有する略U字形状又は略U字形状の一部の形状を有するプリズムである、請求項7に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項10】
前記光学素子の前記出射面側に設けられ、前記出射面側とは反対側に砂目面を有する第1の光学部材と、
前記第1の光学部材と、前記砂目面において接着剤により接着された第2の光学部材とを有する、請求項1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項11】
被検体に挿入される挿入部を有する内視鏡の前記挿入部の先端部に装着可能な光学アダプタであって、
前記先端部に設けられ、前記挿入部の基端側から入射光として光が入射する入射面と、照明光として前記光を出射する出射面とを有する光学素子と、
前記光学素子の前記出射面からの前記照明光を出射する照明窓と、
を有し、
前記出射面は、前記出射光を拡散させる拡散部を有し、
前記拡散部は、前記出射面上において所定の方向に沿って伸びる複数の凸状部を有し、
各凸状部は、前記出射面に対して第1の角度を有し前記入射光を全反射させる全反射面と、前記出射面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度を有し前記全反射面で全反射された反射光及び前記入射光を透過して出射させる透過面とを有する、
内視鏡用光学アダプタ。
【請求項12】
前記照明窓から前記長手軸方向に対して直交する方向あるいは斜め方向に前記照明光を出射する、請求項11に記載の内視鏡用光学アダプタ。
【請求項13】
前記照明窓から前記長手軸方向に沿って前記先端部の前方に前記照明光を出射する、請求項11に記載の内視鏡用光学アダプタ。
【請求項14】
基端側から入射光として光が入射する入射面と、出射光として前記光を出射する出射面とを有する光学素子であって、
前記出射面は、前記出射光を拡散させる拡散部を有し、
前記拡散部は、前記出射面上において所定の方向に沿って伸びる複数の凸状部を有し、
各凸状部は、前記出射面に対して第1の角度を有し前記入射光を全反射させる全反射面と、前記出射面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度を有し前記全反射面で全反射された反射光及び前記入射光を透過して出射させる透過面とを有する、
光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子に関し、特に、出射光を拡散させる内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡が工業分野及び医療分野で広く用いられている。内視鏡は、挿入部を有し、挿入部の先端から照明光を出射する。被写体からの照明光の反射光は観察窓で受光されて、被写体像を取得することによって、被検体内の被写体像が得られる。
【0003】
内視鏡には、直視用の内視鏡、側視用の内視鏡などがある。照明光を被写体に均一に照射させるために、光を拡散させる拡散面を有する拡散素子が、照明光学系に設けられることがしばしば行われる。
【0004】
例えば、日本国特開2019-69043号公報には、U字形状のプリズムを用いて、全反射されないで外部への漏れる光の量を少なくし、照明光の伝送効率を向上させた内視鏡の照明光学系が提案されている。その提案に係る内視鏡では、U字プリズムから出射した照明光を全方向にすなわち二次元方向に均等に拡散させるために、拡散面を有する拡散素子が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-69043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光を二次元方向に均等に拡散させる拡散素子を用いると、照明光が、例えばモニタに表示される内視鏡画像の視野の外にも拡散されてしまい、視野内の光量が減少してしまうという問題がある。
【0007】
例えば、上述したU字プリズムは、光を出射面側に向けるように傾いた反射面を有している。その反射面で反射した照明光の配光は等方的でないため、U字プリズムの出射側に拡散素子を配置すると、視野内の全体の光量が減ってしまう。
【0008】
また、内視鏡画像が表示される横長のモニタ画面の形状に合わせて、画面の横方向に対応する一次元方向に光を拡散させるために断面形状が例えば三角形の凹凸表面を有する拡散素子を照明光の出射面側に設けることもできる。しかし、単に断面形状が三角形のような凹凸表面を有する拡散素子を採用しただけでは、拡散素子の凹凸表面で反射される戻り光が多くなって光量が減少するという問題もある。
【0009】
図27は、断面形状が台形の凹凸表面を有する拡散素子における光量の減少を説明するための図である。図27は、凹凸表面の一部の断面を示す。図27に示すように、一点鎖線で示す入射光R1は、拡散素子DEの凹凸表面の斜面で屈折して、出射光R1Eとして出射するが、二点鎖線で示す入射光R2は、拡散素子DEの凹凸表面で全反射して、戻り光R2Eとなっている。
【0010】
そこで、本発明は、視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させることができる内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の内視鏡用照明光学系は、被検体に挿入される挿入部を有する内視鏡用の照明光学系であって、前記挿入部の先端部に設けられ、前記挿入部の基端側から入射光として光が入射する入射面と、照明光として前記光を出射する出射面とを有する光学素子を有し、前記出射面は、前記出射光を拡散させる拡散部を有し、前記拡散部は、前記出射面上において所定の方向に沿って伸びる複数の凸状部を有し、各凸状部は、前記出射面に対して第1の角度を有し前記入射光を全反射させる全反射面と、前記出射面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度を有し前記全反射面で全反射された反射光及び前記入射光を透過して出射させる透過面とを有する。
【0012】
本発明の一態様の内視鏡用光学アダプタは、被検体に挿入される挿入部を有する内視鏡の前記挿入部の先端部に装着可能な光学アダプタであって、前記先端部に設けられ、前記挿入部の基端側から入射光として光が入射する入射面と、照明光として前記光を出射する出射面とを有する光学素子と、前記光学素子の前記出射面からの前記照明光を出射する照明窓と、を有し、前記出射面は、前記出射光を拡散させる拡散部を有し、前記拡散部は、前記出射面上において所定の方向に沿って伸びる複数の凸状部を有し、各凸状部は、前記出射面に対して第1の角度を有し前記入射光を全反射させる全反射面と、前記出射面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度を有し前記全反射面で全反射された反射光及び前記入射光を透過して出射させる透過面とを有する。
【0013】
本発明の一態様の光学素子は、基端側から入射光として光が入射する入射面と、出射光として前記光を出射する出射面とを有する光学素子であって、前記出射面は、前記出射光を拡散させる拡散部を有し、前記拡散部は、前記出射面上において所定の方向に沿って伸びる複数の凸状部を有し、各凸状部は、前記出射面に対して第1の角度を有し前記入射光を全反射させる全反射面と、前記出射面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度を有し前記全反射面で全反射された反射光及び前記入射光を透過して出射させる透過面とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させることができる内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に関わる、内視鏡装置の構成を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に関わる光学アダプタの斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に関わる、被検体の方から見た光学アダプタの平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った光学アダプタの断面図である。
図5図4のV-V線に沿った光学アダプタの断面図である。
図6図3のVI-VI線に沿った光学アダプタの断面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に関わる、光学アダプタ内の撮像光学系及び照明光学系の斜視図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に関わる、光学アダプタ内の撮像光学系及び照明光学系の正面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に関わる、光学アダプタ内の撮像光学系及び照明光学系の右側面図である。
図10】本発明の第1の実施の形態に関わる光伝送光学部材の斜視図である。
図11】本発明の第1の実施の形態に関わる光伝送光学部材の2つの延出部の一方の斜視図である。
図12】本発明の第1の実施の形態に関わる、光伝送光学部材の各延出部の拡散部と、拡散面の上側に配置された光学部材の斜視図である。
図13】本発明の第1の実施の形態に関わる、光伝送光学部材の各延出部の拡散部と、拡散面の上側に配置された2つの光学部材の側面図である。
図14】本発明の第1の実施の形態に関わる、光伝送光学部材の各延出部の拡散部と、拡散面の上側に配置された光学部材の一部を拡大した側面図である。
図15】本発明の第1の実施の形態に関わる、複数の凸状部の断面の形状を示す断面図である。
図16】本発明の第1の実施の形態に関わる、各凸状部の2つの斜面部の形状を規定する最小単位の三角柱部材の断面図である。
図17】本発明の第1の実施の形態に関わる各凸状部の断面形状を説明するための図である。
図18】本発明の第1の実施の形態に関わる拡散部における光路を説明するための図である。
図19】本発明の第1の実施の形態に関わる、出願人の行ったシミュレーションによる、凸状部の角度θaが75度、角度θbが20度のときの照明光の配光を示す図である。
図20】本発明の第1の実施の形態に関わる、出願人の行ったシミュレーションによる、凸状部の角度θaが80度、角度θbが20度のときの照明光の配光を示す図である。
図21】本発明の第1の実施の変形例1に関わる複数の凸状部を有する拡散部の断面の形状を示す断面図である。
図22】本発明の第1の実施の変形例2に関わる複数の凸状部を有する拡散部の断面の形状を示す断面図である。
図23】本発明の第1の実施の変形例4に関わる複数の凸状部を有する拡散部の断面の形状を示す断面図である。
図24】本発明の第2の実施の形態に関わる、内視鏡の先端部の斜視図である。
図25】本発明の第2の実施の形態に関わる、先端部内の2つの光学素子とロッドレンズの配置を示す平面図である。
図26】本発明の第2の実施の形態の変形例4に関わる、先端部内の2つの光学素子とロッドレンズの配置を示す平面図である。
図27】断面形状が台形の凹凸表面を有する拡散素子における光量の減少を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
(内視鏡装置の構成)
【0017】
図1は、本実施の形態に関わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。
【0018】
図1に示すように、内視鏡装置1は、ビデオプロセッサ等の機能を備えた装置本体2と、装置本体2に接続される内視鏡3とを有して構成されている。装置本体2は、内視鏡画像、操作メニュー等が表示される、例えば液晶パネル(LCD)等の表示部4を有する。この表示部4には、タッチパネルが設けられていてもよい。
【0019】
内視鏡3は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部としての挿入部5と、挿入部5の基端に連設された操作部6と、操作部6から延出したユニバーサルコード7とを有して構成されている。内視鏡3は、ユニバーサルコード7を介して装置本体2と着脱可能になっている。
【0020】
挿入部5は、先端側から順に、先端部11と、湾曲部12と、長尺な可撓部13とを有して構成されている。湾曲部12は、先端部11の基端に連設され、例えば上下左右方向に湾曲自在に構成されている。可撓部13は、湾曲部12に基端に連設され、可撓性を有する。
【0021】
挿入部5の先端部11には、例えばCMOSイメージセンサ等の撮像素子11x(図4)が内蔵されている。撮像素子11xは、挿入部5の先端部11に設けられた観察窓(図示せず)に入射した入射光を受光する。
【0022】
先端部11には、矢印で示すように、側視用の光学アダプタ10が着脱自在に装着可能となっている。側視用の光学アダプタ10を先端部11に装着することによって、内視鏡3は側視用内視鏡となる。すなわち、光学アダプタ10は、内視鏡3の挿入部5の先端部11に装着可能となっている。
【0023】
操作部6には、湾曲部12を上下左右方向に湾曲させる湾曲ジョイスティック6aが設けられている。ユーザは、湾曲ジョイスティック6aを傾倒操作することで、湾曲部12を所望の方向に湾曲させることができる。また、操作部6には、湾曲ジョイスティック6aの他に、内視鏡機能を指示するボタン類、例えば、フリーズボタン、湾曲ロックボタン、記録指示ボタン等の各種操作ボタンが設けられている。
【0024】
なお、表示部4にタッチパネルが設けられている構成の場合、ユーザは、タッチパネルを操作して、内視鏡装置1の種々の操作を指示してもよい。
【0025】
装置本体2の表示部4には、先端部11内に設けられた撮像ユニットの撮像素子11x(図4)によって撮像された内視鏡画像が表示される。また、装置本体2の内部には、画像処理や各種制御を行う制御部(図示せず)、処理画像をメモリ(図示せず)に記録する記録装置、等々の各種回路が設けられている。
(光学アダプタの構成)
【0026】
図2は、光学アダプタ10の斜視図である。図3は、被検体の方から見た光学アダプタ10の平面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った光学アダプタ10の断面図である。図5は、図4のV-V線に沿った光学アダプタ10の断面図である。図6は、図3のVI-VI線に沿った光学アダプタ10の断面図である。図7は、光学アダプタ10内の撮像光学系及び照明光学系の斜視図である。図8は、光学アダプタ10内の撮像光学系及び照明光学系の正面図である。図9は、光学アダプタ10内の撮像光学系及び照明光学系の右側面図である。
【0027】
挿入部5の先端部11は、図4の二点鎖線で示すように、円筒形状を有する先端硬性部材11aを有し、先端硬性部材11aの外周面の一部の領域R1には、雄螺子部11bが形成されている。
【0028】
側視用の光学アダプタ10は、円柱形状を有しており、円筒形状の止めリング10aを基端側に有している。止めリング10aは、挿入部5の中心軸(ここでは、先端部11の中心軸)O(以下、軸Oという)回りに回動可能であり、止めリング10aの基端部の内周面には、雄螺子部11bに螺合可能な雌螺子部10bが形成されている。軸Oは、光学アダプタ10を先端部11に装着したときに、円柱形状の光学アダプタ10の中心軸と一致する。
【0029】
止めリング10aの内側に先端硬性部材11aを内挿し、止めリング10aを所定の方向に回動して雄螺子部11bと雌螺子部10bを螺合することにより、光学アダプタ10を先端部11に装着して固定することができる。止めリング10aを所定の方向に回動すると、止めリング10aの先端部に設けられた内向フランジ部10cが光学アダプタ10のアダプタ本体31の段差部を押圧する。その結果、光学アダプタ10は先端部11にしっかりと固定される。
【0030】
また、止めリング10aを所定の方向とは反対方向に回動することにより、光学アダプタ10は先端部11から取り外すことができる。
【0031】
図2及び図3に示すように、光学アダプタ10の先端側の側面には、側視用の観察窓22と、観察窓22を挟むように設けられた2つの照明窓23a、23bが配設されている。
【0032】
図3に示すように、観察窓22は、正対視したとき、軸O方向に沿って両側がカットされて、2つの直線部22aを有する部分円形状を有する。観察窓22の2つの直線部22aに隣接して2つの照明窓23a、23bが配置されている。観察窓22は、挿入部5の先端部11の側方から光を取り込む。
【0033】
各照明窓23a、23bは、正対視したとき、軸Oに平行に延出した細長い形状で、図3に示すように、長方形の四隅に面取りを行った略四角形である。
【0034】
図4に示すように、光学アダプタ10のアダプタ本体31の先端面を覆うように、カバー部材32がアダプタ本体31に固定されている。カバー部材32は、先端側が閉じた円筒形状を有している。円柱形状のアダプタ本体31は、円筒部材33の内側に嵌合するように配置される。円筒部材33は、図示しない螺子等の固定手段によりアダプタ本体31に固定される。円筒部材33は、円筒形状のカバー部材32の内側に嵌合するように配置される。カバー部材32は、図示しない螺子等の固定手段により円筒部材33に固定される。
【0035】
カバー部材32及び円筒部材33は、それぞれ、軸Oから外径方向に所定の距離だけ離れた位置を通るように、軸O方向に沿って切り取られて形成された開口部32a、33aを有している。観察窓22及び2つの照明窓23a、23bは、カバー部材32及び円筒部材33に形成された2つの開口部32a、33aに配置される。
【0036】
観察窓22には、平凹レンズ41が位置決め部42により位置決めされて接着剤によりアダプタ本体31、カバー部材32及び円筒部材33に固定されている。平凹レンズ41の表面は平坦面であり、裏面は凹面である。なお、位置決め部42は、アダプタ本体31の一部により形成されている。
【0037】
平凹レンズ41の背面には、2つのプリズム43a、43bからなるプリズム部43が配設されている。
【0038】
アダプタ本体31には、軸Oに平行なシリンドリカルな形状を有する孔31aが形成されている。プリズム部43の基端側には、孔31aの中心軸O1に沿って並んだ2つのレンズ44a、44bからなるレンズ部44が配設され、接着剤によりアダプタ本体31の孔31a内に固定されている。カバーガラス45が、レンズ部44の基端側に配設され、接着剤によりアダプタ本体31の孔31a内に固定されている。
【0039】
2つのプリズム43aと43bの接合面が平凹レンズ41からの光をレンズ部44に向けて反射する反射面を構成する。この反射面は、金属膜や多層膜によって構成することが出来る。具体的には、反射面は、アルミニウム等の金属でコーティングにより形成することができる。また反射面は、コーティングなどの処理を行わず、単に全反射光をレンズ部44に向かわせる構成としても良い。よって、プリズム部43は、平凹レンズ41からの光の進行方向を90度変えてレンズ部44に向けて出射するように、接着剤によりアダプタ本体31に固定されている。平凹レンズ41、プリズム部43、レンズ部44、カバーガラス45、及び図示しない先端部11内のレンズ群が、内視鏡3の観察光学系を構成する。プリズム部43及びレンズ部44の光軸は、軸Oとは一致していない。
【0040】
以上のように、光学アダプタ10の平凹レンズ41、プリズム部43、レンズ部44及びカバーガラス45が、観察窓22から取り込まれた光を先端部11の長手軸に沿って先端側から基端側へ向けて出射する観察光学系を構成する。なお、プリズム部43の基端部側に明るさ絞り47が配置される。
【0041】
図6から図9に示すように、照明窓23aには、軸Oに直交する方向に積み重ねられた2枚の光学部材23a1と23a2が位置決め部42により位置決めされて接着剤によりアダプタ本体31、カバー部材32及び円筒部材33に固定されている。2枚の光学部材23a1と23a2は、光学接着剤により貼り合わされている。光学接着剤は、例えば紫外線を当てて硬化するタイプの樹脂接着剤などを用いればよい。
【0042】
照明窓23bにも、照明窓23aと同様に、軸Oに直交する方向に積み重ねられた2枚の光学部材23b1と23b2が位置決め部42により位置決めされて接着剤によりアダプタ本体31、カバー部材32及び円筒部材33に固定されている。2枚の光学部材23b1と23b2は、光学接着剤により貼り合わされている。照明窓23a、23bは、先端部11の側方へ照明光を出射する。
【0043】
光学部材23a1、23b1は、細長で板状のガラス製部材である。光学部材23a2、23b2は、それぞれ光学部材23a1、23b1側の面に、すりガラス状に加工がされた砂目面である拡散面(図6図8図9において点線で示す)を有している。砂目面である拡散面では、光が等方的(ランダム)に拡散される。これにより、配光ムラを更に解消することが出来る。光学部材23a2、23b2は、その拡散面側で、それぞれ光学部材23a1、23b1や光学部材23a2、23b2とは屈折率の異なる光学接着剤で光学部材23a1、23b1と接着されており、それぞれの拡散面で光が散乱される。
【0044】
なお、ガラス製部材の砂目面は、空気との接触面では、屈折率差が大きく拡散性が大きすぎるため、配光が広がりすぎてしまう。このため、砂目の拡散角を小さくして斑消し程度とするために、1.52や1.56といった屈折率を持つ光学接着剤でガラス製部材同士の接合を行っている(この例では、ガラスの屈折率は1.8)。
【0045】
さらになお、前述の砂目面や後述の拡散構造が空気に露出していると、内視鏡3を使用した際に砂目面等に傷がついたり、液滴が付着して光学特性が変化してしまうので、光学部材23a1、23b1をカバーガラスとして設けることで、傷などを防ぐことが出来る。
【0046】
カバー部材32及び円筒部材33の開口部32a、33a、平凹レンズ41及び2つの光学部材23a1、23b1の各表面は、平坦面であるので、光学アダプタ10は、これらの平面により形成された、軸Oに平行な平面部10pを有している。
【0047】
照明光は、照明窓23a及び23bから、軸Oに直交する方向LD(以下、照明方向LDという)に出射される。
【0048】
アダプタ本体31には、軸O方向に沿って、ロッドレンズ46用の孔31bが形成されている。孔31bの中心は、軸Oと一致しないで、孔31bは、軸Oから外径方向にずれてアダプタ本体31に形成されている。ロッドレンズ46は、その孔31b内に挿通され、接着剤等によりアダプタ本体31に固定されている。よって、孔31bの断面形状は、ロッドレンズ46の外径形状と略一致する。図5に示すように、ロッドレンズ46の、軸Oに直交する断面形状は、扁平であり、軸O側の面46aは、平面であり、外径方向側の面46bは、外径方向に突出した部分円筒形状である。
【0049】
図4に示すように、挿入部5内には、照明光用のライトガイド11yが挿通されている。そのライトガイド11yの先端面は、先端部11の照明窓(図示せず)の裏面に対向して配設されている。光学アダプタ10が先端部11に装着されたときに、先端部11の照明窓(図示せず)がロッドレンズ46の基端面に対向する位置になるように、ロッドレンズ46は、光学アダプタ10内に配設されている。
【0050】
ロッドレンズ46の先端面の先端側には、光伝送光学部材51が配設され、接着剤などによりアダプタ本体31に固定されている。
【0051】
照明窓23a、23b、光伝送光学部材51及びロッドレンズ46は、被検体に挿入される挿入部5を有する内視鏡3のための内視鏡用照明光学系を構成する。
【0052】
図7に示すように、被検体からの光L1は、光学アダプタ10の側方から観察窓22に入射する。光L1は、平凹レンズ41に入射し、プリズム部43で反射されて、レンズ部44及びカバーガラス45を通って先端部11の撮像光学系へ向けて出射する。
【0053】
先端部11のライトガイド11yの先端面から出射された光L2は、ロッドレンズ46の基端面に入射し、ロッドレンズ46の先端面から光伝送光学部材51の基端面である入射面に入射し、光伝送光学部材51の出射面から出射して、2つの照明窓23a、23bから、光学アダプタ10の側方へ出射される。
(光伝送光学部材51の構成)
【0054】
次に、照明光学系の光伝送光学部材51の構成について説明する。
【0055】
図10は、光伝送光学部材51の斜視図である。図11は、光伝送光学部材51の2つの延出部の一方の斜視図である。本実施形態の光伝送光学部材51の構成及び作用は、日本国特開2019-69043号公報に開示の構成と略同じであるので、ここでは簡単に説明し、その公報に開示の構成とは異なる構成についてのみ簡単に説明する。
【0056】
光伝送光学部材51は、図9に示すように、光学アダプタ10の軸O方向からみたときに、略U字形状を有する、透明なガラスまたはプラスチックからなる光学部材である。
【0057】
光伝送光学部材51は、部分円筒部51Xと、部分円筒部51Xの周方向の両端部から延出する2つの延出部51A、51Bを有している。上述したプリズム部43は、部分円筒部51Xと2つの延出部51A、51Bにより囲まれるように、略U字形状の光伝送光学部材51内に配置される。
【0058】
すなわち、光伝送光学部材51は、内側に観察光学系が配置されるように長手軸の先端側から見た断面形状が略U字形状又は略U字形状の一部の形状に形成されているプリズムである。
【0059】
延出部51Aの端面には、出射面51aが形成されており、延出部51Bの端面には、出射面51bが形成されている。以下、光伝送光学部材51において、延出部51A,51Bの出射面51a、51bの有る方向を上側方向ともいう。
【0060】
各出射面51a、51bには、光を所定の方向に(本実施形態では、軸Oに平行な方向に)拡散させるための拡散部DSが設けられている。拡散部DSは、ここでは、モールド成形技術を用いて形成される。拡散部DSは、複数の凸状部UF(図12図13)を有している。複数の凸状部UFは、出射面51a、51b上において、軸Oに直交する方向に沿って伸びるように形成されている。拡散部DSは、型を用いたモールド成形により光伝送光学部材51を製造したときに同時に形成される。よって、拡散部DSは、光伝送光学部材51を製造するときにモールド成形により形成することができるので、加工性が良い。
【0061】
なお、拡散部DSを有する板状部材を、各出射面51a、51bに光学接着剤により貼り合わせることにより、各延出部51A,51Bに拡散部DSを設けるようにしてもよい。
【0062】
延出部51Aの先端側には、平面部51a1が形成されており、延出部51Bの先端側には、平面部51b1が形成されている。また、光伝送光学部材51の基端側には、略U字形状を有する平面部51cが形成されている。平面部51cの一部、すなわちロッドレンズ46の先端面に対向する領域は、光の入射面である。
【0063】
すなわち、光伝送光学部材51は、照明光学系であって、挿入部5の先端部11に設けられる。光伝送光学部材51は、入射面としての平面部51cと、照明光として光を出射する出射面51a、51bとを有する光学素子である。平面部51cは、挿入部5の長手軸方向に沿って先端部11の基端側において光が入射する入射面である。出射面51a、51bは、照明光として光を出射する。
【0064】
部分円筒部51Xの先端側には、凹部51Uが形成されている。凹部51Uは、照明光を当てる被検体から光伝送光学部材51をみたときに、略V字状に形成されている。曲面である2つの反射面CS1、CS2が、光伝送光学部材51の凹部51Uに形成されている。
【0065】
2つの反射面CS1、CS2は、先端部11の中心軸を通る平面に対して面対称に2つ設けられている。2つの反射面CS1、CS2には、アルミコートなどの反射加工がされた曲面である。なお、CS1、CS2にコーティングなどの反射加工処理を行わず、単に全反射光を出射面51a、51bに向かわせる構成としても良い。
【0066】
凹部51Uに2つの反射面CS1,CS2を設けることにより、2つの反射面CS1,CS2で反射した光は、光伝送光学部材51の外周面に入射するときの入射角が臨界角以上のすることができるので、ライトガイドからの光のほとんど全てが全反射して、2つの照明窓に向かって反射して進むので、光の伝送効率を高めることができる。
(拡散部DSの構成)
【0067】
次に、略U字形状の光伝送光学部材51から出射する光の拡散部DSについて説明する。図12は、光伝送光学部材51の各延出部の拡散部DSと、拡散面の上側に配置された光学部材の斜視図である。図13は、光伝送光学部材51の各延出部の拡散部DSと、拡散面の上側に配置された2つの光学部材の側面図である。図14は、光伝送光学部材51の各延出部の拡散部DSと、拡散面の上側に配置された光学部材の一部を拡大した側面図である。
【0068】
光伝送光学部材51は、ここでは、プラスチック製であり、屈折率は1.5である。屈折率が1であるの空気の隙間gを介して、光学部材23a2、23b2が出射面51a、51bの上側に配設されている。光学部材23a2、23b2の上側には、それぞれ光学接着剤(図示せず)により光学部材23a1、23b1が密着して固定されている。図13に示すように、光学部材23a2、23b2の砂目面(点線で示す)に、光学接着剤(図示せず)により、光学部材23a1、23b1が接着される。光学部材23a1、23b1、23a2、23b2は、ガラス製であり、屈折率は、1.8である。
【0069】
なお、ガラス製部材の砂目面は、空気との接触面では、屈折率差が大きく拡散性が大きすぎるため、配光が広がりすぎてしまう。このため、砂目の拡散角を小さくして斑消し程度とするために、1.52や1.56といった屈折率を持つ光学接着剤でガラス製部材同士の接合を行っている(この例では、ガラスの屈折率は1.8)。
【0070】
略U字形状を有する光伝送光学部材51において、平面部51cに入射した光は、2つの反射面CS1、CS2で反射する。曲面である2つの反射面CS1、CS2で反射した光は、反射面形状により軸Oに直交する方向には広く拡散する一方で、軸Oに平行な方向においては広く拡散しない特性を有する。そのため、軸Oに平行な方向においては、光が拡散しないため、配光ムラが生じてしまう。このような配光特性を有する光伝送光学部材に対し、従来のような二次元方向に等方的な光拡散を行う拡散素子を用いても、配光ムラは改善されないほか、拡散素子により光が視野外にも拡散されてしまい視野内の光量が減ってしまうという問題がある。
【0071】
そこで、本実施形態では、光を軸Oに平行な方向において拡散させるために、各延出部51A,51Bの出射面51a、51b上に、軸O方向に直交する方向に沿って形成された複数の凸状部UFからなる拡散部DSが形成されている。各拡散部DSは、各延出部51A,51Bに軸O方向に沿って光を拡散させる。
【0072】
図12図14に示すように、拡散部DSは、各延出部51A,51Bの出射面51a、51b上に形成された複数の凸状部UFを有して形成されている。具体的には、拡散部DSは、出射面51a、51b上において所定の方向に沿って線状に伸びる複数の凸状部UFを有している。すなわち、各凸状部UFは、出射面51a、51bにおいて軸Oに直交する方向OCに沿って直線状に伸びるように形成されている。各凸状部UFは、図14に示すように、2つの斜面部IP1と2つの斜面部IP2を有している。各凸状部UFは、2つの凸部P1、P2を有している。図14に示すように、斜面部IP1は急斜面であり、斜面部IP2は斜面部IP1よりも傾斜角の小さい緩斜面である。
【0073】
各凸状部UFの2つの凸部P1、P2も、方向OCに沿って直線状に伸びるように形成されている。2つの斜面部IP1の一方と2つの斜面部IP2の一方とにより凸部P1が形成され、2つの斜面部IP1の他方と2つの斜面部IP2の他方とにより凸部P2が形成されている。
【0074】
隣り合う2つの凸状部UFの間の2つの斜面部IP1によって、溝G1が形成されている。各凸状部UFの平面PPに対して面対称の2つの斜面部IP2によって、溝G2が形成されている。複数の溝G1、G2は、互いに平行にかつ交互に配置される。
【0075】
図15は、複数の凸状部UFの断面の形状を示す断面図である。図15は、出射面51a、51bを方向OCからみたときの、拡散部DSの一部の断面を示す。図15に示すように、各凸部P1の斜面部IP1とIP2は、方向OCに平行な仮想平面(すなわち出射面51a、51bに平行な面)RPに対して、それぞれ角度θa、θbを有している。角度θbは、角度θaより小さい。
【0076】
また、凸部P2は、上述したように、平面PPに対して凸部P1と面対称な形状を有している。よって、各凸部P2の斜面部IP1とIP2も、方向OCに平行な仮想平面RPに対して、それぞれ角度θa、θbを有している。
【0077】
凸状部UFの形状について詳述する。図16は、各凸状部UFの2つの斜面部IP1,IP2の形状を規定する最小単位MUの三角柱部材TMの断面図である。図17は、各凸状部UFの断面形状を説明するための図である。
【0078】
最小単位MUは、断面が図16に示すような三角形を有する三角柱部材TMの形状を有する。この最小単位MUの形状に基づいて、複数の凸部P1,P2の形状が規定される。図16に示すように、断面形状が三角形の三角柱部材TMは、底面部BSと、底面部BSに対して角度(内角)θaを有する斜面部SSaと、底面部BSに対して角度(内角)θbを有する斜面部SSbとを有する。各凸状部UFの形状は、これら2つの斜面部SSa、SSbの形状に基づいて規定される。
【0079】
図17に示すように、斜面部SSb上の1点を通り、三角柱部材TMの軸に平行でかつ底面部BSに直交する平面PPに対して、三角柱部材TMを面対称にしたときの2つの斜面部SSaと2つの斜面部SSbに基づいて、2つの凸部P1,P2の形状が規定される。各凸部P1、P2を形成する斜面部IP1とIP2は、それぞれ三角柱部材TMの2つの斜面部SSa、SSbの一部に対応する。
【0080】
拡散部DSは、図15に示すように、出射面51a、51b上に配設されることにより形成された凹凸部である。凹凸部は、軸Oに平行な軸方向に沿って所定の間隔d1で複数の凸状部UFが配設されることにより形成される。各凸状部UFは、2つの凸部P1、P2を有する。凸部P1、P2は、2つの斜面部IP1,IP2により形成される。すなわち、拡散部DSは、各延出部51A,51Bの出射面51a、51b上に、軸Oに平行な軸方向に沿って配置された複数の凸状部UFによって形状を有する。
【0081】
なお、各凸部P1,P2における斜面部IP1とIP2の接合部JPは、尖っていなくてもよく、例えば丸み形状を有したり、多面でカットされた面取り形状を有したりしてもよい。
(照明光の拡散及び配光)
【0082】
次に、照明光の拡散及び配光について説明する。
【0083】
図15に示したように、各凸状部UFは、軸Oに直交する平面PPに対して面対称の2つの斜面部IP1,IP2を有する。各凸状部UFの凸部P1は、凸部P2とは平面PPに対して面対称の形状を有する。各凸状部UFが平面PPに対して面対象な形状を有することで、左右方向において配光ムラが生じないようになっている。
【0084】
図18は、拡散部DSにおける光路を説明するための図である。光は、拡散部DSに向かって、60°程度広がって入射する。図18に示すように、拡散部DSに向かう光の一部は、凸部P1の斜面部IP1で全反射して斜面部IP2において屈折して出射する光L1となる。拡散部DSに向かう光の他の一部は、凸部P1の斜面部IP2に入射し、斜面部IP2において屈折して出射する光L2となる。
【0085】
さらに、拡散部DSに向かう光のさらに他の一部は、凸部P2の斜面部IP1で全反射して斜面部IP2において屈折して出射する光L3となる。拡散部DSに向かう光のさらに他の一部は、凸部P2の斜面部IP2に入射し、斜面部IP2において屈折して出射する光L4となる。その結果、光L1,L2と、光L3,L4とは、平面PPに対して面対称に出射する。各凸状部UFが2つの凸部P1,P2を有するため、出射光は、配光ムラが少なく出射される。単に断面形状が三角形状の凹凸表面を有する拡散素子を用いただけでは、図27のように戻り光が発生してしまい光量が減ってしまうが、拡散部DSがこのように急斜面であるIP1および緩斜面であるIP2を有した構造を採用することにより、戻り光を発生させずに光を出射させることが出来、光量の減少を防ぐことができる。
【0086】
図15に示すように、溝G1、溝G2の深さを、それぞれHa、Hbとし、方向OCからみたときの、斜面部IP1、IP2の軸O方向の長さを、それぞれa、bとしたとき、次の関係を有することが望ましい。通常、入射光は、60°程度の光を持って拡散部DSに到達する。
【0087】
60° <θa≦85° ・・・(1)
【0088】
0° <θb≦30° ・・・(2)
【0089】
Ha≧Hb ・・・(3)
【0090】
a≦b ・・・(4)
【0091】
式(1)は、斜面部IP1において入射光を全反射させるための関係を示す。式(2)は、斜面部IP2において斜面部IP1からの反射光を透過させるための関係を示す。式(3)は、斜面部IP1からの反射光をより多く透過させるための関係を示す。式(4)は、斜面部IP1からの反射光を損失を少なく斜面部IP2から射出させるための関係を示す。式(4)は、平面PPに対する出射するときの角度が大きな光L1、L3と、平面PPに対する出射するときの角度が小さな光L2、L4との光量比を変えて、配光を調整する関係式でもある。
【0092】
すなわち、軸Oに直交する方向OCから見たとき、角度θaは、出射面51a、51bに対して60°を超えて85°以下の範囲の角度であり、角度θbは、出射面51a、51bに対して0°を超えて30°以下の範囲の角度である。
【0093】
また、隣接する2つの斜面部IP1(全反射面)により形成される溝G1の深さHaは、隣接する2つの斜面部IP2(透過面)により形成される溝G2の深さHbよりも深い。
【0094】
以上のように、各凸状部UFは、出射面51a、51bに対して角度θaを有し入射光を全反射させる全反射面となる斜面部IP1と、斜面部IP2とを有する。斜面部IP2は、出射面51a、51bに対して角度θaよりも小さい角度θbを有し、斜面部IP1で全反射された反射光及び斜面部IP2に直接入射する入射光を透過して出射させる透過面となる。
【0095】
そして、各凸状部UFは、出射面51a、51bに対して直交しかつ所定の方向に平行な面(PP)に対して面対称となるように、それぞれが全反射面と透過面により形成される2つの凸部P1,P2を有する。
【0096】
出願人の行ったシミュレーションによれば、断面形状が二等辺三角形が複数配設された拡散部DSを有する一次元拡散素子であって、その二等辺三角形の底面に対して各斜面が10度又は20度の各拡散素子において、底面に直交する方向から光を入射させた場合、照明光に十分な拡散が得られなかった。
【0097】
また、出願人の行ったシミュレーションによれば、断面形状が二等辺三角形が複数配設された拡散部DSを有する一次元拡散素子であって、その二等辺三角形の底面に対して各斜面が30度、40度、50度又は60度の各拡散素子において、底面に直交する方向から光を入射させた場合、拡散面における反射で戻り光が生じ、光量が低下していた。
【0098】
さらにまた、出願人の行ったシミュレーションによれば、断面形状が二等辺三角形が複数配設された拡散部DSを有する一次元拡散素子であって、その二等辺三角形の底面に対して各斜面が70度又は80度の各拡散素子において、底面に直交する方向から光を入射させた場合、拡散面における反射による戻り光は発生しないが、配光ムラが生じていた。
【0099】
これらに対して、上述した実施形態のシミュレーションによれば、θaが75度、θbが20度のとき、照明光に所定の方向に拡散が得られ、拡散部DSにおける反射による戻り光も発生せず、配光ムラも少なかった。
【0100】
図19は、出願人の行ったシミュレーションによる、凸状部UFの角度θaが75度、角度θbが20度のときの照明光の配光を示す図である。図19に示すように、中心領域CAが最も明るく照明されるが、中心領域CAに隣接する周辺領域PAも、連続的に明るく照明される。照明光の照明の範囲は、所定の方向POにのみ拡散しているので、所定の一次元方向(図19の横方向)POに拡散し、配光ムラが少ない。よって、例えばモニタに表示される内視鏡画像の視野枠W(二点鎖線で示す)内に合わせて、照明光を出射させることができる。
【0101】
また、上述した実施形態の拡散部DSについてのシミュレーションによれば、角度θaが80度、角度θbが20度のときにも、所定の方向(軸Oに平行な方向)に拡散が得られ、拡散部DSにおける反射による戻り光も発生せず、配光ムラも少なかった。
【0102】
図20は、出願人の行ったシミュレーションによる、凸状部UFの角度θaが80度、角度θbが20度のときの照明光の配光を示す図である。図20に示すように、照明光の照明の範囲は、所定の一次元方向(図20の横方向)POに拡散し、配光ムラが少ない。
【0103】
従って、上記の式(1)、(2)によれば、光量の減少がなく、所定の方向への照明光の拡散を行うことができる。また、上記の式(3)、(4)によれば、配光ムラを低減することができる。
【0104】
以上のように、上述した実施形態によれば、視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させることができる内視鏡用照明光学系及び内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
【0105】
なお、上述した実施形態では、内視鏡3は、挿入部5の長手軸方向に対して直交する方向に照明光を出射して被検体内を観察する側視用であるが、上述した実施形態は、挿入部5の軸Oに対して斜め方向に照明光を出射して被検体内を観察する斜視用内視鏡にも適用可能である。
【0106】
次に変形例について説明する。
(変形例1)
【0107】
上述した実施形態では、配光ムラを少なくするために、拡散部DSの各凸状部UFは、平面PPに対して面対称の凸部P1,P2を有しているが、拡散部DSは、各凸状部は1つの凸部を有しかつその凸状部が複数配置されると共に、複数の凸状部が面対称に配置されるようにしてもよい。
【0108】
図21は、変形例1に関わる複数の凸状部UF1を有する拡散部の断面の形状を示す断面図である。図21は、出射面51a、51bを方向OCからみたときの、拡散部DSの一部の断面を示す。
【0109】
変形例1においては、各凸状部UF1は、斜面部IP1,IP2を有し、複数の凸状部UF1が、出射面51a、51bにおいて軸Oに直交する方向OCに沿って直線状に伸びるように形成されている。各凸状部UF1は、1つの凸部P3を有している。各凸部P3は、図21に示すように、1つの斜面部IP1と1つの斜面部IP2により形成されている。
【0110】
さらに、軸Oに直交する平面PP1に対して、複数の凸状部UF1の半分同士が、互いに面対称となるように配設されている。複数の凸状部UF1の半分同士が、図21の平面PP1に対して出射面51a、51b上に互いに面対称となるように配設されている。
【0111】
すなわち、複数の凸状部UF1の一部は、複数の凸状部UF1の他の一部に対して、軸Oに直交する方向OCに平行な面PP1に対して面対称で、出射面51a、51b上に配設されている。
【0112】
本変形例1では、上述した式(1)、式(2)及び式(4)は成り立つが、上述した式(3)に代わり、次の(5)の関係が成立している。
【0113】
Ha=Hb ・・・(5)
【0114】
本変形例1によっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
(変形例2)
【0115】
上述した変形例1では、配光ムラを少なくするために、拡散部DSは、1つの平面PP1に対して面対称の複数の凸状部UF1を有しているが、各凸状部が1つの凸部を有しかつ面対称に配置された複数の凸状部からなる凸状部グループを、複数有するようにしてもよい。
【0116】
図22は、変形例2に関わる複数の凸状部UF1を有する拡散部の断面の形状を示す断面図である。図22は、出射面51a、51bを方向OCからみたときの、拡散部DSの一部の断面を示す。変形例2の各凸状部UF1は、変形例1の凸状部UF1と同じ形状を有している。
【0117】
図22に示すように、軸Oに直交する平面PP2に対して、複数(ここでは2つ)の凸状部UF1同士が互いに面対称となるように配設され、その面対称の複数(ここでは4つ)の凸状部UF1からなる凸状部グループGr1が、出射面51a、51b上に複数配設されるようにして、拡散部DSが形成されている。すなわち、拡散部DSは、凸状部グループGr1の領域を複数有している。
【0118】
言い換えれば、複数の凸状部UF1の一部と複数の凸状部UF1の他の一部とが方向OCに平行な面PP2に対して面対称で出射面51a、51b上に配設されている領域が、複数設けられている。
【0119】
本変形例2においても、上述した式(1)、式(2)及び式(4)は成り立つが、上述した式(3)に代わり、上述した式(5)の関係が成立している。
【0120】
本変形例2によっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
(変形例3)
【0121】
上述した例では、凸状部は、所定の平面に対して出射面上に互いに面対称となるような部分を有しているが、例えば左右の配光に著しく影響が出ない範囲であれば面対称となるような部分を有していなくても良い。
【0122】
具体的には、緩斜面である斜面部IP2の角度をそれぞれ変えたり、長さbを各凸状部によってそれぞれ異なる値としても良い。これにより、凸状部の配置が面対称でなくとも、素子全体として適宜設計を行えば左右の配光ムラの不均一さを減らすことができる。なお、緩斜面の角度や長さだけでなく、急斜面である斜面部IP1の角度や長さaを適宜変更することとしても良い。
【0123】
本変形例3によっても、戻り光は減少し光量を増やすことができる。
(変形例4)
【0124】
上述した変形例1及び2では、複数の凸状部が面対称に配置された部分を有しているが、複数の凸状部の面対称に配置されなくてもよい。
【0125】
本変形例4では、複数の凸状部UF1が、上述した変形例1の図21に示すように、平面PP1に対して出射面51a、51b上に互いに面対称となるように配設されていない。そのため、本変形例4の場合、配光方向は、一方向に偏る。
【0126】
図23は、変形例4に関わる複数の凸状部UF1を有する拡散部の断面の形状を示す断面図である。図23は、出射面51a、51bを方向OCからみたときの、拡散部DSの一部の断面を示す。変形例4の各凸状部UF1は、変形例1の面対称の複数の凸状部UF1の片側部分(図21の左側部分)と同じ形状を有している。
【0127】
図23に示すように、同じ断面形状を有する複数の凸状部UF1が、出射面51a、51b上に複数配設されるようにして、拡散部DSが形成されている。すなわち、各凸状部UF1の斜面部IP1,IP2は、それぞれ他の凸状部UF1の斜面部IP1,IP2と、方向OCに平行な仮想平面RPに対して同じ角度を有している。
【0128】
本変形例4においても、上述した式(1)、式(2)及び式(4)は成り立つが、上述した式(3)に代わり、上述した式(5)の関係が成立している。
【0129】
そのため、本変形例4は、配光を例えば一方向に偏らせたい場合に有効である。
【0130】
本変形例4によっても、戻り光は減少し光量を増やすことができる。
【0131】
なお、本変形例1~4においても、各凸部P1,P2、すなわち斜面部IP1とIP2の接合部JPは、尖っていなくてもよく、例えば丸み形状を有したり、多面でカットされた面取り形状を有したりしてもよい。
(第2の実施の形態)
【0132】
第1の実施の形態の内視鏡装置は、側視用の内視鏡装置であるが、本実施の形態の内視鏡装置の内視鏡は、先端部11の照明窓から挿入部5の長手軸方向に沿って先端部11の前方に照明光を出射する直視用である。
【0133】
本実施の形態の内視鏡装置の構成は、第1の実施の形態の内視鏡装置の構成と略同じであるので、本実施の形態の内視鏡装置の構成において、第1の実施の形態の内視鏡装置と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明は省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0134】
図24は、内視鏡3の先端部11Aの斜視図である。観察窓22xと照明窓23xが、先端部11Aの先端面11Aaに設けられている。照明光が照明窓23xから出射され、被写体からの照明光の反射光が観察窓22xに入射する。観察窓22xに入射した反射光は、図示しない観察光学系を経て、撮像素子11xの撮像面に照射される。
【0135】
照明窓23xは、モニタに表示される矩形の内視鏡画像の形状に合わせて、横方向SDに伸びた形状を有している。
【0136】
挿入部5内には、照明光を導光するライトガイド(図示せず)が挿通されている。ライトガイドの先端側には、部分円柱形状のロッドレンズ46Aが設けられている。
【0137】
図25は、先端部11A内の2つの光学部材23A、23Bとロッドレンズ46Aの配置を示す平面図である。図25は、横方向SDに直交する上下方向UDの上側から先端部11Aを見たときの、2つの光学部材23A、23Bとロッドレンズ46Aの配置を示す。ロッドレンズ46Aの入射面ISと、拡散部DSが形成された出射面とは、平行である。
【0138】
例えば、ロッドレンズ46Aはプラスチック製であり、屈折率は1.5であり、屈折率が1であるの空気の隙間gを介して、光学部材23A、23Bが配設されている。光学部材23Aはそれぞれ光学接着剤(図示せず)により、光学部材23Bと密着して固定されている。光学部材23Aの砂目面(点線で示す)側が、光学接着剤(図示せず)により、光学部材23Bと接着されている。光学部材23A、23Bは、ガラス製であり、屈折率は、1.8である。具体的には、光学接着剤の屈折率は1.52や1.56等の値、すなわち光学部材23A、23Bよりも屈折率が小さく、空気の屈折率である1よりも大きな値であればよい。
【0139】
ロッドレンズ46Aの先端面には、複数の凸状部UFを有する拡散部DSが設けられている。拡散部DSの凸状部UFの形状は、第1の実施の形態の凸状部UFの形状と同じであるが、上述した変形例1又は変形例2に示した形状でもよい。
【0140】
すなわち、拡散部DSは、ロッドレンズ46Aの出射面上において所定の方向に沿って線状に伸びる複数の凸状部UFを有する。拡散部DSは、ロッドレンズ46Aを製造するときにモールド成形により形成することができるので、加工性が良い。
【0141】
ロッドレンズ46Aの先端面側には、空気の隙間gを介して、ガラス製の2つの光学部材23A、23Bが配設されている。光学部材23Aと23Bは、図示しない光学接着剤により接着されて固定されている。光学部材23B側の光学部材23Aの表面には、すりガラス状に加工がされた砂目面(点線で示す)が設けられている。
【0142】
従って、上述した実施形態によっても、視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させることができる内視鏡用照明光学系及び内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
【0143】
なお、ロッドレンズ46Aの入射面IS側に拡散部DSを設けることも考えられるが、その場合、ロッドレンズ46A内を通り光が出射面から出射するとき、ロッドレンズ46A内に入った光は、ロッドレンズ46Aの側面から漏れ、出射面からの出射光の光量が減少してしまうという問題がある。
【0144】
さらになお、図24及び図25では、光学素子としてのロッドレンズ46Aは、挿入部5の先端部11A内に配設されているが、図1に示す挿入部5の先端部11に装着可能な光学アダプタ10内に配設するようにしてもよい。
(変形例)
【0145】
上述した第2の実施の形態では、ライトガイドの先端側に設けられたロッドレンズ46Aが、拡散部DSを有しているが、ロッドレンズの基端側の入射面と、ライトガイドの先端面の間に光学素子を配置し、その光学素子が、拡散部DSを有するようにしてもよい。
【0146】
図26は、本第2の実施の形態の変形例に関わる、先端部内の2つの光学素子とロッドレンズの配置を示す平面図である。図26は、横方向SDに直交する上下方向UDの上側から先端部11Aを見たときの、2つの光学部材23A、23B、ロッドレンズ46B、光学素子52及びライトガイド11y1の配置を示す。ロッドレンズ46Bの入射面ISと、光学素子52の出射面(拡散部DSが形成された部分)とは、平行である。また、光学素子52の入射面52aと、ライトガイド11y1の先端面とも、平行である。
【0147】
図26に示すように、光学素子52が、ライトガイド11y1の先端面と、ロッドレンズ46Bの基端面との間に配設される。光学素子52は、平板形状を有するガラス(あるいはプラスチック)である。光学素子52の入射面52aは、平面を有し、光学素子52の出射面は、拡散部DSを有する。拡散部DSは、光学素子52の出射面上において所定の方向に沿って線状に伸びる複数の凸状部UFを有する。凸状部UFは、図26に示すように、上述した図25のロッドレンズ46Aの拡散部DSの凸状部UFと同じ形状を有する。
【0148】
光学素子52の入射面52aに入射した光は、光学素子52の出射部である拡散部DSにおいて拡散されて、出射する。拡散した光は、ロッドレンズ46B内で、内部で反射して種々の方向に進行し、ロッドレンズ46Bの出射面OSから広がるように出射する。
【0149】
光学素子52から出射する光は、拡散部DSにより、横方向SD(図26において上下方向)に広がりを有するように拡散する。しかし、ロッドレンズ46Bは、部分円柱形状を有するため、拡散部DSからの光は、ロッドレンズ46B内において、内部で横方向SD以外の種々の方向にも反射される。
【0150】
その結果、ロッドレンズ46Bの出射面から出射される光は、横方向SDだけでなく、種々の方向に拡散して出射されるので、上述した第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
【0151】
第1及び第2の実施の形態は、内視鏡に用いる光学素子としての略U字形状の光伝送光学部材51あるいはロッドレンズ46Aに関わるが、第1及び第2の実施の形態において説明した拡散部DSを有する光学素子は、視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させる光学素子として、内視鏡装置以外の装置にも利用することができる。
【0152】
なお、第2及び第3の実施の形態においても、各凸部P1、P2、P3すなわち斜面部IP1とIP2の接合部JPは、尖っていなくてもよく、例えば丸み形状を有したり、多面でカットされた面取り形状を有したりしてもよい。
【0153】
以上のように、上述した各実施の形態によれば、視野内における照明光の光量を減少させることなく、少ない配光ムラで所定の方向にのみ拡散させることができる内視鏡用照明光学系、内視鏡用光学アダプタ及び光学素子を提供することができる。
【0154】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 内視鏡装置、2 装置本体、3 内視鏡、4 表示部、5 挿入部、6 操作部、6a 湾曲ジョイスティック、7 ユニバーサルコード、10 光学アダプタ、10a リング、10b 雌螺子部、10c 内向フランジ部、10p 平面部、11、11A 先端部、11Aa 先端面、11a 先端硬性部材、11b 雄螺子部、11x 撮像素子、11y、11y1 ライトガイド、12 湾曲部、13 可撓部、22 観察窓、22x 観察窓、22a 直線部、23x 照明窓、23A、23B 光学部材、23a 照明窓、23a1、23a2 光学部材、23b 照明窓、23b1 光学部材、31 アダプタ本体、31a、31b 孔、32 カバー部材、32a 開口部、33 円筒部材、41 平凹レンズ、42 位置決め部、43 プリズム部、43a、43b プリズム、44 レンズ部、44a レンズ、45 カバーガラス、46、46A、46B ロッドレンズ、46a、46b 面、51 光伝送光学部材、51A,51B 延出部、51B 延出部、51U 凹部、51X 部分円筒部、51a 出射面、51a1 平面部、51b 出射面、51b1、51c 平面部、52 光学素子、52a 入射面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27