(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028689
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】サイトカイン産生の調節
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220208BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220208BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20220208BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220208BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220208BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220208BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220208BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220208BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220208BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220208BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220208BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220208BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220208BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220208BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220208BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220208BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220208BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220208BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220208BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220208BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220208BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220208BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220208BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220208BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220208BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220208BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220208BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220208BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20220208BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220208BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220208BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220208BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220208BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220208BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220208BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20220208BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K31/7088
A61K31/711
A61K31/713
A61K35/76
A61K38/16
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/02
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P31/12
A61P31/14
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61K31/7105
A61P37/04
A61P43/00 111
A61P31/22
A61P31/18
A61K39/395 D
C12N15/86 Z
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C07K16/18
C12N15/13
C12Q1/02
C12N15/12
C07K14/47
C12Q1/68
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021177668
(22)【出願日】2021-10-29
(62)【分割の表示】P 2018529102の分割
【原出願日】2016-12-02
(31)【優先権主張番号】2015905035
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】317002869
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ アンブローズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ビーン
(57)【要約】
【課題】本発明は、対象において免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節する方法に関し、当該方法は、C6orf106タンパク質活性を変更する化合物を対象に投与することを含む。
【解決手段】本発明は、対象においてC6orf106タンパク質活性を調節するための化合物、並びにそのような化合物の同定するためのスクリーニング方法にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節する方法であって、前記対象に、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記化合物がC6orf106タンパク質活性を増大させ、前記免疫応答及び/又はサイトカイン産生が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増大したC6orf106タンパク質活性がIRF3依存性サイトカイン転写を減少させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は小分子である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1~11のいずれか1つ以上と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列又はその生物学的に活性なフラグメントを含むポリペプチドをコード化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、前記対象における前記ポリヌクレオチドの発現を指揮するプロモータに機能的に連結される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドを発現ベクター中で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、配列番号1~11のいずれか1つ以上に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列又はその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的に活性なフラグメントは機能的無秩序領域が欠けている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物がC6orf106タンパク質活性を低下させ、前記免疫応答及び/又はサイトカイン産生が増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、C6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を減少させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
C6orf106タンパク質活性の低下がIRF3依存性サイトカイン転写を増加させる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物がポリヌクレオチド、ポリペプチド又は小分子である、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが前記C6orf106遺伝子の発現を減少させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチドが、アンチセンスポリヌクレオチド、センスポリヌクレオチド、C6orf106と結合するポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド、二本鎖RNA分子又はそれに由来するプロセッシングされたRNA分子から選択される、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドが前記対象に投与された導入遺伝子から発現される、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチドがC6orf106に結合し、C6orf106タンパク質活性を低下させる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドがRNAアプタマー、DNAアプタマー、又はXNAアプタマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物がC6orf106と結合し、C6orf106タンパク質活性を低下させる、請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物がポリペプチドである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドが抗体又は抗原結合フラグメントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫応答がIFN応答である、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫応答がI型IFN応答である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記サイトカインがIFN-α、IFN-β及びTNF-αのうちの1つ、それ以上、又は全部である、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫応答が抗ウイルス免疫応答、自己免疫応答、炎症反応から選択される、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫応答が抗ウイルス免疫応答であり、前記免疫応答及び/又はサイトカイン産生が増大する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫応答が炎症反応であり、前記免疫応答及び/又はサイトカイン産生が減少する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が以下の疾患、すなわち、感染、免疫不全、自己免疫疾患、炎症性疾患又はがんのうちの1つ以上を有する、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記感染がウイルス感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ウイルスがマイナス鎖RNAウイルスである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルスが、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、ボルナウイルス及びコロナウイルスから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記対象に、前記ウイルスに対する免疫応答を刺激する少なくとも1つの抗原も投与する、請求項30から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記自己免疫疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、関節リウマチ、多発性関節炎、多発性硬化症、ブドウ膜炎、喘息、1型糖尿病、2型糖尿病、狼瘡又は慢性閉塞性肺疾患から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記対象にさらに、前記がんに対する免疫応答を刺激する少なくとも1つの抗原も投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
対象における感染、免疫不全又はがんの治療及び/又は予防方法であって、前記対象に、C6orf106タンパク質活性を低下させる化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
対象における自己免疫疾患の治療及び/又は予防方法であって、前記対象に、C6orf106タンパク質活性を増大させる化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
C6orf106が、配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が動物である、請求項1から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が哺乳類である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節するための薬物の製造におけるC6orf106タンパク質活性を改変する化合物の使用。
【請求項43】
対象における感染、免疫不全又はがんを治療するための薬物の製造におけるC6orf106タンパク質活性を低下させる化合物の使用。
【請求項44】
対象における自己免疫疾患を治療するための薬物の製造におけるC6orf106タンパク質活性を増加させる化合物の使用。
【請求項45】
対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生の調節で使用するためのC6orf106タンパク質活性を改変する化合物。
【請求項46】
ウイルス感染又はがんの治療において使用するためのC6orf106タンパク質活性を低下させる化合物。
【請求項47】
自己免疫疾患の治療において使用するためのC6orf106タンパク質活性を増大させる化合物。
【請求項48】
C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を同定する方法であって、
i)細胞を候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が前記細胞においてC6orf106タンパク質活性を増加又は低下させるかを判定すること
を含む、前記方法。
【請求項49】
C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を同定する方法であって、
i)細胞を候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が、前記細胞においてIRF3依存性サイトカイン転写を増加させるか又は低下させるかを判定すること
を含む、前記方法。
【請求項50】
C6orf106タンパク質活性を低下させる化合物を同定する方法であって、
i)細胞を候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が前記細胞におけるC6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を減少させるか否かを判定すること
を含む、前記方法。
【請求項51】
前記細胞におけるC6orf106mRNAの前記レベルを決定することを含む、請求項48から50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞におけるC6orf106タンパク質の前記レベルを決定することを含む、請求項48から50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
C6orf106と結合する化合物を同定する方法であって、
i)配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列又はその生物学的に活性なフラグメントを含むポリペプチドを候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が前記ポリペプチドと結合するか否かを判定すること
を含む、前記方法。
【請求項54】
前記候補化合物が抗体もしくはそのフラグメント、アプタマー又は小分子である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
C6orf106タンパク質活性を改変する化合物をコンピュータで同定する方法であって、
i)配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列又はその生物学的に活性なフラグメントを含むポリペプチドの三次元構造モデルを作成すること、及び
ii)前記構造に潜在的に結合する化合物について設計又はスクリーニングすること、及び/又は
iii)C6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を減少させる化合物について設計又はスクリーニングすること
を含む、前記方法。
【請求項56】
ii)において設計又はスクリーニングされた前記化合物を、C6orf106と結合し、C6orf106タンパク質活性を調節するその能力について試験することをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ii)において設計又はスクリーニングされた前記化合物を、ウイルス感染を調節するその能力について試験することをさらに含む、請求項55又は請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記天然に存在する分子と比べて改変された活性を有する天然に存在するC6orf106ポリペプチドの単離及び/又は組換え変異体。
【請求項59】
配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含むが、機能的UBA様ドメイン、機能的無秩序領域,及び/又は機能的FWドメインが欠損している、請求項58に記載の単離及び/又は組換え変異体。
【請求項60】
配列番号1~11のいずれか1つの約76のN末端アミノ酸アミノが欠損している、請求項58又は請求項59に記載の単離及び/又は組換え変異体。
【請求項61】
請求項59又は60に記載の単離及び/又は組換え変異体をコード化する単離及び/又は外因性ポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節する方法であって、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を対象に投与することを含む前記方法に関する。本発明はまた、対象におけるC6orf106タンパク質活性を改変するための化合物、ならびにそのような化合物を同定するためのスクリーニング法にも関する。
【背景技術】
【0002】
免疫関連疾患の治療及び/又は予防の新規方法を開発するために免疫応答のモジュレータを同定する必要がある。特に、ウイルス、細菌、原生動物又は真菌感染などの感染に対する免疫応答を増大させる新規方法が必要とされる。新興感染性疾患は、そのような感染に対して利用可能な治療又は予防法がないことが多いので特に問題である。例えば、野生生物や家畜から出現する人畜共通ウイルスは、ヒトや動物の健康に深刻な脅威をもたらし、次の大流行の最も有力な原因と認識されている。新興感染性疾患は、予測不可能であり、またヒトのための抗ウイルス治療法などの有効な抑制手段がないために、新興感染性疾患の勃発の抑制は、多くの場合困難である。したがって、免疫応答を増大させて感染に対する防御を提供する免疫系のモジュレータが必要とされている。
【0003】
さらに、対象が免疫不全、例えば後天性免疫不全症候群(AIDS)において免疫不全を経験している場合、免疫応答を増大させるための免疫応答の新規モジュレータも必要とされる。
【0004】
さらに、過敏性又は不適切な免疫応答を低下させることができる免疫応答のモジュレータが必要とされている。これは、自己免疫疾患などの慢性炎症の疾患において特に重要である。そのようなモジュレータはまた、損傷、例えば外傷に起因する損傷によって引き起こされる炎症についても興味深い。そのようなモジュレータは炎症を軽減できる。
【0005】
したがって、感染、免疫不全、自己免疫疾患及びがんなどの疾患を治療するための方法で使用できる、免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節するための新規標的、方法及び化合物を同定する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、C6orf106タンパク質活性を調節することで、免疫応答及び/又はサイトカイン産生が調節されることを特定した。
【0007】
したがって、一態様において、本発明は、対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節する方法であって、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0008】
本発明者らは、C6orf106タンパク質がIRFと結合することも見出した。したがって、一実施形態において、化合物は、C6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を改変する。
【0009】
一実施形態では、化合物はC6orf106タンパク質活性を増大させ、免疫応答及び/又はサイトカイン産生は減少する。一実施形態では、増加したC6orf106タンパク質活性はIRF3依存性サイトカイン転写を減少させる。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性を増加させることで、NF-κB活性は低下する。そのような化合物の例としては、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は小分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号1~11のいずれか1つ以上又はその生物学的に活性なフラグメントと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、対象においてポリヌクレオチドを発現させるプロモータと機能的に連結される。一実施形態において、ポリヌクレオチドは発現構築物である。
【0011】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは発現ベクター中で投与される。任意の好適な発現ベクターを使用することができ、その例としては、真核生物、原核生物又はウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。一実施形態において、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルスベクター又はそれに由来するベクターである。
【0012】
一実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1~11のいずれか1つ以上又はその生物学的に活性なフラグメントと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的UBA様ドメインが欠けている。一実施形態では、UBA様ドメインは配列番号12に記載されたアミノ酸配列を含む。一実施形態では、UBA様ドメインは配列番号13のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的FWドメインが欠けている。一実施形態において、FWドメインは配列番号57に示されるアミノ酸を含む。一実施形態において、FWドメインは配列番号58に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、FWドメインは配列番号60に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的無秩序領域が欠けている。一実施形態において、無秩序領域は配列番号61に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、無秩序領域は配列番号62に示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
一実施形態では、化合物はC6orf106タンパク質活性を低下させ、そして免疫応答及び/又はサイトカイン産生が増加する。一実施形態では、化合物はC6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を減少させる。一実施形態では、C6orf106タンパク質活性を低下させることで、IRF3依存性サイトカイン転写は増加する。一実施形態では、C6orf106タンパク質活性を低下させることでNF-κB活性が増大する。
【0014】
一実施形態において、化合物は細胞におけるC6orf106の転位置を改変する。
【0015】
C6orf106タンパク質活性を増加又は低下させる化合物の例としては、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は小分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
一実施形態において、ポリヌクレオチドはC6orf106遺伝子の発現を減少させる。C6orf106遺伝子発現を減少させるために使用することができるポリヌクレオチドの例としては、アンチセンスポリヌクレオチド、センスポリヌクレオチド、C6orf106と結合するポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド、二本鎖RNA(dsRNA)分子又はそれに由来するプロセッシングされたRNA分子から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、dsRNA分子は、siRNA、miRNA、shRNA又はアプタマーである。
【0017】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは対象に投与された導入遺伝子から発現される。一実施形態において、導入遺伝子は核酸構築物中にある。一実施形態において、導入遺伝子は発現ベクター中にある。
【0018】
一実施形態において、ポリヌクレオチドはC6orf106と結合し、C6orf106タンパク質活性を低下させる。一実施形態において、ポリヌクレオチドはRNAアプタマー、DNAアプタマー、又はXNAアプタマーである。一実施形態において、アプタマーはC6orf106遺伝子と結合し、C6orf106遺伝子の発現を減少させる。一実施形態において、アプタマーはC6orf106タンパク質と結合し、C6orf106タンパク質活性を低下させる。
【0019】
一実施形態において、化合物はC6orf106と結合し、C6orf106タンパク質活性を低下させる。一実施形態において、化合物は抗体又は抗原結合フラグメントである。一実施形態において、抗体はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。
【0020】
一実施形態において、化合物は、遺伝子改変をC6orf106遺伝子又はその調節領域に導入するために標的化されたプログラム可能なヌクレアーゼである。
【0021】
一実施形態において、免疫応答はIFN応答である。一実施形態において、免疫応答はI型IFN応答である。
【0022】
一実施形態において、サイトカインはIFN-α、IFN-β及びTNF-αのうちの1つ、それ以上、又は全部である。一実施形態において、サイトカインはIFN-αである。一実施形態において、サイトカインはIFN-βである。一実施形態において、サイトカインはTNF-αである。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の増加は、IFN-α、IFN-β及びTNF-αのうちの1つ、それ以上、又は全部の転写を阻害する。一実施形態において、IFN-α、IFN-β及びTNF-αの転写調節は、IRF3及びNFκB翻訳とは無関係である。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の増加はIFN-α転写を阻害する。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の増加はIFN-β転写を阻害する。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の増加はTNF-α転写を阻害する。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の増加は下流のIFN及び/又はTNF-αシグナル伝達、例えばISG15又はIκBα活性を調節しない。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の低下はIFN-α転写を増大させる。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の低下はIFN-β転写を増大させる。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性の低下はTNF-α転写を増大させる。
【0023】
一実施形態において、免疫応答は、抗ウイルス免疫応答、自己免疫応答及び炎症反応から選択される。
【0024】
一実施形態において、免疫応答は抗ウイルス免疫応答であり、免疫応答及び/又はサイトカイン産生は増加する。
【0025】
一実施形態において、免疫応答は炎症反応であり、免疫応答及び/又はサイトカイン産生は減少する。
【0026】
一実施形態において、対象は以下の疾患:感染、免疫不全、自己免疫疾患、炎症性疾患又はがんのうちの1つもしくはそれ以上に罹患している。
【0027】
一実施形態において、感染はウイルス感染である。一実施形態において、ウイルスはマイナス鎖RNAウイルスである。
【0028】
一実施形態において、ウイルスは:モノネガウイルス、ヘルペスウイルス又はニドウイルス目の形態である。
【0029】
一実施形態において、ウイルスは、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、ボルナウイルス(Bornaviriade)及びコロナウイルスから選択される。
【0030】
一実施形態において、ウイルスはモノネガウイルス目由来である。一実施形態において、モノネガウイルスは、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス及びボルナウイルスから選択される。
【0031】
一実施形態において、対象にはさらに、免疫応答を刺激する少なくとも1つの抗原も投与される。一実施形態において、少なくとも1つの抗原は、植物抗原(例えば花粉)、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生動物(protozon)抗原、又は腫瘍抗原である。一実施形態において、対象に、ウイルスに対する免疫応答を刺激する抗原を投与する。
【0032】
一実施形態において、C6orf106活性を低下させる化合物を、少なくとも1つの抗原又はワクチン組成物とともに投与して、少なくとも1つの抗原又はワクチン組成物に対する免疫応答を増大させる。
【0033】
一実施形態において、C6orf106活性を低下させる化合物を少なくとも1つのがん抗原とともに投与して、少なくとも1つのがん抗原に対する免疫応答を増大させる。
【0034】
一実施形態において、自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、関節リウマチ、多発性関節炎、多発性硬化症、ブドウ膜炎、喘息、1型糖尿病、2型糖尿病、狼瘡又は慢性閉塞性肺疾患から選択される。
【0035】
一実施形態において、対象には、がんに対する免疫応答を刺激する抗原も投与される。
【0036】
一態様において、本発明は、対象における感染又はがんを治療及び/又は予防する方法であって、前記対象にC6orf106タンパク質活性を低下させる化合物を投与することを含む前記方法を提供する。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、対象における自己免疫疾患の治療及び/又は予防方法であって、前記対象にC6orf106タンパク質活性を増大させる化合物を投与することを含む前記方法を提供する。
【0038】
一実施形態において、C6orf106は、配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0039】
一実施形態において、対象は動物である。一実施形態において、対象は哺乳類である。一実施形態において、対象はヒトである。
【0040】
一態様において、本発明は、対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節するための薬物の製造におけるC6orf106タンパク質活性を改変する化合物の使用を提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、対象における感染、免疫不全又はがんを治療するための薬物の製造におけるC6orf106タンパク質活性を低下させる化合物の使用を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、対象における自己免疫疾患を治療するための薬物の製造におけるC6orf106タンパク質活性を増加させる化合物の使用を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節するのに使用するためのC6orf106タンパク質活性を改変する化合物を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、ウイルス感染又はがんの治療で使用するためのC6orf106タンパク質活性を低下させる化合物を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患の治療で使用するためのC6orf106タンパク質活性を増大させる化合物を提供する。
【0046】
別の態様では、本発明は、対象における免疫応答及び/又はサイトカイン産生の調節で使用するための、C6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を改変する化合物を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を同定する方法であって、
i)細胞を候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が、前記細胞におけるC6orf106タンパク質活性を増加させるか又は低下させるかを判定することを含む前記方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物を同定する方法であって、
i)細胞を候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が、前記細胞においてIRF3依存性サイトカイン転写を増加させるか、又は減少させるかを判定することを含む前記方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、C6orf106タンパク質活性を低下させる化合物を同定する方法であって、
i)細胞を候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が、前記細胞におけるC6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を減少させるか否かを判定することを含む前記方法を提供する。
【0050】
一実施形態において、方法は、ウイルス感染を調節するその能力について化合物を試験することをさらに含む。一実施形態において、ウイルス感染をインビトロ、インオボ又はインビボで評価する。一実施形態において、ウイルス感染をインビトロで評価する。一実施形態において、ウイルス感染をHeLa細胞においてインビトロで評価する。
【0051】
一実施形態において、方法は、細胞におけるC6orf106mRNAのレベルを決定することを含む。一実施形態において、細胞は哺乳類又はトリ細胞である。一実施形態において、細胞はHeLa細胞などのヒト細胞である。一実施形態において、mRNAレベルはqRT-PCRなどのPCRによって決定する。
【0052】
一実施形態において、方法は、細胞におけるC6orf106タンパク質のレベルを決定することを含む。一実施形態において、C6orf106タンパク質のレベルは、イムノアッセイによって決定する。例示的イムノアッセイフォーマットには、イムノブロット、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素イムノアッセイが含まれる。
【0053】
別の態様では、本発明は、C6orf106と結合する化合物を同定する方法であって、
i)配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列又はその生物学的に活性なフラグメントを含むポリペプチドを候補化合物と接触させ、そして
ii)前記化合物が前記ポリペプチドと結合するか否かを判定することを含む前記方法を提供する。
【0054】
一実施形態において、候補化合物は抗体又はそのフラグメント、アプタマー又は小分子である。
【0055】
別の態様では、本発明は、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物をコンピュータにより同定する方法であって、
i)配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列又はその生物学的に活性なフラグメントを含むポリペプチドの三次元構造モデルを作成し、そして
ii)構造に潜在的に結合する化合物について設計又はスクリーニングし、及び/又は
iii)C6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を改変する化合物について設計又はスクリーニングすることを含む前記方法を提供する。
【0056】
一実施形態において、方法は、C6orf106タンパク質活性と結合し調節するその能力について、ii)において設計又はスクリーニングした化合物を試験することをさらに含む。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性と結合し調節する能力は、イムノアッセイによって決定される。例示的イムノアッセイフォーマットには、イムノブロット、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素イムノアッセイが含まれる。
【0057】
一実施形態において、方法は、ii)において設計又はスクリーニングした化合物を、ウイルス感染を調節するその能力について試験することをさらに含む。一実施形態において、ウイルス感染をインビトロ、インオボ又はインビボで評価する。一実施形態において、ウイルス感染をインビトロで評価する。一実施形態において、ウイルス感染をHeLa細胞においてインビトロで評価する。
【0058】
一実施形態では、C6orf106タンパク質活性を調節することによりC6orf106タンパク質活性を増大させる。
【0059】
一実施形態では、C6orf106タンパク質活性を調節することでC6orf106タンパク質活性を低下させる。
【0060】
一態様において、本発明は、天然に存在する分子と比較して改変された活性を有する天然に存在するC6orf106ポリペプチドの単離及び/又は組換え変異体を提供する。
【0061】
一実施形態において、本発明は、配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含むが、機能的UBA様ドメインが欠けている単離及び/又は組換えポリペプチドを提供する。一実施形態において、UBA様ドメインは配列番号1~11のいずれか1つの約76のN末端アミノ酸アミノが欠けている。一実施形態において、UBA様ドメインは配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、UBA様ドメインは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含むが、機能的FWドメインが欠けている単離及び/又は組換えポリペプチド。一実施形態において、FWドメインは配列番号57に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、FWドメインは配列番号58に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、FWドメインは配列番号60に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、配列番号1~11のいずれか1つと少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含むが、機能的無秩序領域が欠けている単離及び/又は組換えポリペプチド。一実施形態において、無秩序領域は配列番号61に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、無秩序領域は配列番号62に示されるアミノ酸配列を含む。
【0062】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコード化する単離及び/又は外因性ポリヌクレオチドを提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコード化する単離及び/又は外因性ポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。一実施形態において、組成物は1つ又はそれ以上の賦形剤をさらに含む。一実施形態において、組成物は免疫応答を刺激する少なくとも1つの抗原をさらに含む。
【0064】
本明細書中で開示されているか又は本願の明細書中で示されているステップ、特徴、整数、組成物及び/又は化合物は、個々にもしくは集合的に、及び2つ以上の前記ステップ又は特徴の組み合わせ。
【0065】
本明細書中の任意の実施形態は、特に別段の表示がない限り、任意の他の実施形態に準用されるものとする。例えば、当業者は、本発明の方法について前記で概要を示した化合物の例は本発明の使用に等しく適用されることを理解するであろう。
【0066】
本発明は、例示のみを目的とする本明細書中で記載する特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。機能的に等価な生成物、組成物及び方法は、本明細書中で記載するように、明らかに本発明の範囲内に含まれる。
【0067】
本明細書全体にわたって、特に別の記載のない限り、又は文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単一のステップ、組成物、ステップの群又は組成物の群に関する言及は、1つ及び複数(すなわち、1つもしくはそれ以上)のそれらのステップ、組成物、ステップの群又は組成物の群を包含すると解釈されるべきである。
【0068】
本発明を、以下の非限定的実施例によって、そして添付の図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】C6orf106ノックダウンはウイルス産生を減少させる。(A)及び(B)HeLa細胞を、C6orf106を標的とするsiRNAプール又は非特異的RNA(siNT1)で48時間トランスフェクトさせた。細胞を、ヘンドラ(HeV)、おたふくかぜ(MuV)、A型インフルエンザ(H5N1)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)又は西ナイルウイルス(WNV)で感染多重度(moi)5にて24時間感染させた。この時点で、Vero細胞に関するTCID50によってウイルス産生を分析した。エラーバーは少なくとも3連の標準偏差±1を意味し、有意差(星印によって示す)はDunnの多重比較試験(Dunn’s multiple comparison test)での一元配置ANOVAによって決定した。(C)siRNAでのトランスフェクションの72時間後の細胞数。データをsiNEG値に対して正規化する。(D)前記siRNAでトランスフェクトした細胞における、アラマーブルー(Alamar blue)アッセイによって測定した、相対的な細胞代謝活性。
【
図2】C6orf106は、2つの推定上の機能ドメイン及び無秩序C末端領域を有する脊椎動物種にわたって高度に保存されている。C6orf106タンパク質配列はNCBI(受入番号Q9H6K1.2)から提供され、ClustalWを使用してEnsembl(www.ensembl.org)から予想した様々な脊椎動物C6orf106配列と整列させた。星印は同一の残基を示し、ボックスは、それぞれ推定UBA様ドメイン及びFWドメインの位置を示す。無秩序なC末端(Globpot(http://globplot.embl.de/cgiDict.py)及びPSI予測ソフトウェア(http://bioinf.cs.ucl.ac.uk/psipred)によって予測。
【
図3】C6orf106ノックダウンはポリ(I:C)に応答してサイトカイン転写を増強する。HeLa細胞を、C6orf106を標的とするsiRNAプールを標的とするsiRNAプール又は非特異的RNA(siNT1/siNT2)で48時間トランスフェクトし、次いでポリ(I:C)で6時間刺激した。(A)遺伝子ノックダウンを、qRT-PCR及びC6orf106特異的プライマー/抗体を用いたウェスタンブロッティングによってそれぞれ分析した。(B)インターフェロン及び炎症性サイトカインの相対的発現は、GAPDH内部標準と比較して、遺伝子特異的プライマーを用いるqRT-PCRを使用して測定した。
【
図4】C6orf106過剰発現はポリ(I:C)に応答してインターフェロンα/β転写及び分泌を阻害する。HeLa細胞をフラグ(Flag)標識C6orf106(C6-フラグ)もしくはeGFP又はベクター単独(pCAGG)で24時間トランスフェクトし、次いでポリ(I:C)で6時間刺激した。(A)インターフェロン及び炎症性サイトカインの相対的発現は、GAPDH内部標準と比較して、遺伝子特異的プライマーを用いるqRT-PCRを使用して測定した。(B)細胞培養上清中へのインターフェロンβ分泌をELISAによって検出した。
【
図5】内因性サイトカイン及びC6orf106RNAレベルはポリ(I:C)刺激の時間とともに増加する。(A)模擬トランスフェクトされたHeLa細胞をポリ(I:C)で6時間刺激し、次いでRNAを抽出し、サイトカインレベルをqPCR分析によって決定した。(B)表示した時点についての、ポリ(I:C)(5μg/mL)で刺激した後のHeLa細胞におけるC6orf106及びIFN-bmRNAレベル。エラーバーは3回の独立した実験の標準偏差-/+1を意味し、そして星印はDunnの多重比較試験を用いた一元配置ANOVAによって決定した有意差(0時間と比較)を意味する。(C)
図4においてと同様に処理したHeLa細胞をIFN-β-又はNF-κB-ホタル及びウミシイタケ-ルシフェラーゼベクターで24時間トランスフェクトした。細胞可溶化物をポリ(I:C)(5μg/mL、6h)で刺激後にルシフェラーゼ活性について分析し、相対レベルをトランスフェクション対照ウミシイタケルシフェラーゼに対して正規化した。
【
図6】UBA様ドメインの欠失は、サイトカイン転写に対するC6orf106の阻害効果を増強する。(A)C6orf106欠失変異体は、コドン最適化pCAGGs-C6orf106ベクターをテンプレートとして使用して産生した。(B)HeLa細胞を、フラグ標識C6orf106欠失変異体又はベクター単独(pCAGGs)で24時間トランスフェクトし、次いでポリ(I:C)で6時間刺激した。インターフェロン及び炎症性サイトカインの相対的発現は、GAPDH内部標準と比較して、遺伝子特異的プライマーを用いるqRT-PCRを使用して測定した。(C)HeLa細胞を、等量のフラグ-IRF3及びC6欠失変異体発現ベクターで24時間逆トランスフェクトし、次いで5μg/mLのポリ(I:C)で6時間刺激した。細胞を次いで溶解し、抗IRF3抗体と直接共免疫沈降に供した。IPサンプル(及び入力対照)を次いでウェスタンブロッティングによって抗フラグ及び抗IRF3抗体でプローブした。
【
図7】C6orf106過剰発現はポリ(I:C)に応答する転写因子の核移行を損なわない。HeLa細胞をフラグ標識C6orf106(C6-フラグ)もしくはeGFP又はベクター単独(pCAGG)で24時間トランスフェクトし、次いでポリ(I:C)で6時間刺激した。(A)細胞を抗C6及び抗p65抗体で固定し標識し、核染色Dapiで対比染色するか、又は(B)細胞を抗C6抗体及び抗IRF3抗体で固定し標識し、核染色Dapiで対比染色し、Leica SP5共焦点顕微鏡で観察した。
【
図8】C6orf106はポリ(I:C)に応答する転写因子の活性化又は核移行を損なわない。HeLa細胞を
図7で記載するようにして処理した。(A)ポリ(I:C)処置済み又は処置なしの、フラグ標識C6orf106(C6-フラグ)又はeGFPでトランスフェクトした細胞の処理群のFn/c比。エラーバーは二連の実験からの典型的な実験の標準偏差±1を意味し、星印はDunnの多重比較試験を用いた一元配置ANOVAによって決定した有意差を意味する。(B)
図7において処理したHeLa細胞を溶解し、細胞質フラクションと核フラクションに分離した。フラクションを転写因子IRF3及びp65、ならびにC6及びローディング対照GAPDHについてプローブした。
【
図9】内因性C6orf106RNAレベルはポリ(I:C)刺激の時間とともに増加する。(A)HeLa細胞を10μg/mLのポリ(I:C)で4、6及び9時間刺激し、そして同じ時点での模擬サンプル(左側の棒グラフ)と比較することによって、内因性C6orf106RNAレベルをqRT-PCR(右側の棒グラフ)により評価した。(B)IFN/TNF-aで誘導されたシグナル伝達はC6orf106過剰発現によって有意に損なわれることはない。
【
図10】C6orf106はIRF3と複合体を形成する。(A)C6orf106はIRF3と複合体を形成し、この結合はポリ(I:C)によって増強される。
図4のように処理したHeLa細胞を溶解し、抗IRF3抗体を用いた間接的免疫沈降に供した。IPサンプル(及び入力対照)を次いでウェスタンブロッティングによって抗C6抗体及び抗IRF3抗体でプローブした。(B)C6orf106がIRF3と複合体を形成することを示すために、IRF3単独、又はC6orf106との組み合わせでトランスフェクトしたHEK293Tを溶解し、抗IRF3抗体を用いた間接的免疫沈降に供した。IPサンプル及び入力対照をウェスタンブロッティングについては抗フラグ抗体でプローブした。IgGアイソタイプを免疫沈降実験の負の対照として使用した。
【
図11】C6-フラグ欠失変異体は異なる細胞内局在及びIRF3核輸送に対する効果を有する。Hela細胞を、フラグ標識C6orf106欠失変異体又はベクター単独(pCAGG)で24時間トランスフェクトし、次いで5μg/mLのポリ(I:C)で6時間刺激した。細胞を固定し、抗C6/フラグ(緑色)及びIRF3(赤色)抗体で染色し、Leica SP5共焦点顕微鏡で観察した。(A)集められた画像は2回の独立した実験を代表するものであり、バーは10μmを示す。画像は、ImageJソフトウェアを使用して解析して、IRF3(B)又は欠失変異体(C)のFn/c比を算出した。エラーバーは二連の実験からの典型的な実験の標準偏差±1を意味し、星印はDunnの多重比較試験を用いた一元配置ANOVAによって決定した有意差を意味する。各カラムの上のパーセンテージは、0.5の閾値よりも高いFn/c比を有する細胞の割合を表す(D)(A)におけるようなHeLa細胞を溶解し、細胞質フラクションと核フラクションに分離した。フラクションを転写因子IRF3及びp65、ならびにC6及び/又はフラグについてプローブした。
【0070】
配列表の凡例
配列番号1 H.sapiens C6orf106タンパク質配列;
配列番号2 G.gorilla C6orf106タンパク質配列;
配列番号3 C.sabaeus C6orf106タンパク質配列;
配列番号4 M.musculus C6orf106タンパク質配列;
配列番号5 M.lucifugus C6orf106タンパク質配列;
配列番号6 C.familiaris C6orf106タンパク質配列;
配列番号7 G.gallus C6orf106タンパク質配列;
配列番号8 A.carolinensis C6orf106タンパク質配列;
配列番号9 X.tropicalis C6orf106タンパク質配列;
配列番号10 D.rerio C6orf106タンパク質配列;
配列番号11 C.intestinalis C6orf106タンパク質配列;
配列番号12 H.sapiens C6orf106タンパク質配列のUBA様ドメイン;
配列番号13 C6orf106UBA様ドメインのコンセンサス配列;
配列番号14 プライマーSacI-START-C6 For;
配列番号15 プライマーXhoI-C6-フラグRev;
配列番号16 プライマーXhoI-C6(1-276)-フラグRev;
配列番号17 プライマーXhoI-C6(1-193)-フラグRev;
配列番号18 プライマーXhoI-C6(1-76)-フラグRev;
配列番号19 プライマーSacI-START-C6-UBA For;
配列番号20 プライマーIFN-α For;
配列番号21 プライマーIFN-α For;
配列番号22 プライマーIFN-β For;
配列番号23 プライマーIFN-β Rev;
配列番号24 プライマーIL-6 For;
配列番号25 プライマーIL-6 Rev;
配列番号26 プライマーTNF-α For;
配列番号27 プライマーTNF-α Rev;
配列番号28 プライマーISG15 For;
配列番号29 プライマーISG15 Rev;
配列番号30 プライマーIκBα For;
配列番号31 プライマーIκBα Rev;
配列番号32 プライマーhuC6orf106 For;
配列番号33 プライマーhuC6orf106 Rev;
配列番号34 プライマーGAPDH For;
配列番号35 プライマーGAPDH Rev;
配列番号36 siGENOMEヒトC6orf106SMARTプール標的配列D-016330-02-;
配列番号37 siGENOMEヒトC6orf106SMARTプール標的配列D-016330-03-;
配列番号38 siGENOMEヒトC6orf106SMARTプール標的配列D-016330-04-;
配列番号39 siGENOMEヒトC6orf106SMARTプール標的配列D-016330-17-;
配列番号40 C6orf106-フラグタンパク質配列;
配列番号41 C6orf106(1-276)-フラグタンパク質配列;
配列番号42 C6orf106(1-193)-フラグタンパク質配列/C6orf106(delta dis)-フラグタンパク質配列;
配列番号43 C6orf106(1-76)-フラグタンパク質配列;
配列番号44 C6orf106(dUBA)-フラグタンパク質配列;
配列番号45 C6orf106(dFW)-フラグタンパク質配列;
配列番号46 H.sapiensC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号47 G.gorillaC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号48 C.sabaeusC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号49 M.musculusC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号50 M.lucifugusC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号51 C.familiarisC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号52 G.gallusC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号53 A.carolinensisC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号54 X.tropicalisC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号55 D.rerioC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号56 C.intestinalisC6orf106ヌクレオチド配列;
配列番号57 H.sapiensC6orf106タンパク質配列のFWドメイン;
配列番号58 C6orf106 FWドメインのコンセンサス配列;
配列番号59 C6(deltaFW)-フラグタンパク質配列;
配列番号60 H.sapiens C6orf106タンパク質配列のFWドメイン;
配列番号61 H.sapiens C6orf106タンパク質配列の無秩序領域;
配列番号62 H.sapiens C6orf106タンパク質配列の無秩序領域
【発明を実施するための形態】
【0071】
一般的技術及び選択された定義
特に別段の定めのない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語や科学用語は、当業者(例えば、分子生物学、細胞培養、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)により通常理解されるのと同じ意味を有すると解釈される。
【0072】
別段の定めのない限り、本発明で用いられる細胞培養及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的手順である。そのような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons(1984)、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (editors), DNA C;loning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996)、及びF.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, including all updates until present), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988), and J.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (現在までのすべての改訂を含む)などの出典の文献全体にわたって記載し説明されている。
【0073】
「及び/又は」という語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」あるいは「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味を明確に指示すると解釈される。
【0074】
本明細書全体にわたって、「備える(comprise)」という語、又は「備える(comprisesもしくはcomprising)」などの変化形は、記載した要素、整数もしくはステップ、又は要素、整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、又は要素、整数もしくはステップの群を除外しないと理解される。
【0075】
本明細書中で言及される「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNA又はRNAテクノロジーによって産生又は変更された遺伝子配列を含み、C6orf106タンパク質活性を改変するために使用できる。一例では、導入遺伝子は、C6orf106遺伝子の発現を抑制することを標的とするsiRNA、miRNA、shRNAをコード化する。一例では、導入遺伝子は、C6orf106遺伝子又はタンパク質を認識し結合するアプタマーをコード化する。一例では、導入遺伝子は、C6orf106遺伝子又はそのフラグメントを含む。一例では、導入遺伝子は、C6orf106遺伝子及び/又はタンパク質を認識し結合する抗体などの結合タンパク質をコード化する。一例では、導入遺伝子は、プログラム可能なヌクレアーゼ及び任意にC6orf106遺伝子の認識を目的とする1つ又はそれ以上のターゲティング配列をコード化する。導入遺伝子は当業者が認識する任意の方法によって対象の細胞に導入することができる。導入遺伝子は、染色体に導入される遺伝子配列ならびに染色体外である遺伝子配列を含む。導入遺伝子は、典型的には、ポリヌクレオチドを発現するために適したプロモータに機能的に連結される本明細書中に記載されるポリヌクレオチドをコード化するオープンリーディングフレームを含む。
【0076】
「小分子」という語は、本明細書中で使用する場合、2000ダルトン未満、好ましくは1500ダルトン未満、さらに好ましくは1000ダルトン未満、一層好ましくは750ダルトン未満、なお一層好ましくは500ダルトン未満の分子量を有する化合物又は分子を指す。一実施形態において、小分子はポリペプチドではない。
【0077】
本明細書中で使用する場合、「対象」という語は任意の動物であり得る。一例では、動物は脊椎動物である。例えば、動物は、哺乳類、トリ、節足動物、脊索動物、両生類又は爬虫類であり得る。対象の例としては、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ニワトリ、ウマ、ロバ、ブタ)、ペット(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲した野生動物(例えば、キツネ、シカ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一例では、哺乳類はヒトである。
【0078】
本明細書中で使用する場合、「治療する(treating」又は「治療(treatment)」という語は、特定の疾病又は疾患の少なくとも1つの症状を軽減又は排除するために充分な治療有効量の本明細書中で記載する化合物を投与することを含む。
【0079】
本明細書中で使用する場合、「予防する(prevent又はpreventing)」という語は、特定の疾病又は疾患の少なくとも1つの症状の発生を停止又は妨げるために充分な治療有効量の本明細書中で記載する化合物を投与することを含む。一実施形態において、化合物はウイルスによる細胞の感染を軽減する。
【0080】
本明細書中で使用する場合、「C6orf106及びIRF3を含む複合体」という語は、少なくともC6orf106及びIRF3を含む複合体を指す。複合体は、1つもしくはそれ以上のタンパク質、1つもしくはそれ以上のRNA分子、1つもしくはそれ以上のDNA分子又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0081】
本明細書中で使用する場合、「IRF3を含む複合体」という語は、1つもしくはそれ以上のタンパク質、1つもしくはそれ以上のRNA分子、1つもしくはそれ以上のDNA分子、又はそれらの組み合わせを含む複合体であって、IRF3タンパク質を含むかもしくはIRF3タンパク質と結合するものを包含する。
【0082】
本明細書中で使用する場合、「マイナス鎖RNAウイルス」又は「アンチセンス鎖RNAウイルス」という語は、マイナス又はアンチセンス鎖であって、RNAをコード化しないRNAの一本鎖から構成される遺伝情報を有するウイルスを含む。
【0083】
免疫応答
本明細書中で使用する場合、「免疫応答」という語は当該技術分野でのその通常の意味を有し、体液性免疫及び細胞性免疫の両方を包含する。免疫応答は、抗抗原抗体の発生、抗原特異的T細胞の増殖、腫瘍浸潤性-リンパ球(TIL)の増加、抗腫瘍又は抗腫瘍抗原遅延型過敏性(DTH)応答の発生、病原体のクリアランス、病原体及び/又は腫瘍成長及び/又は伝播の抑制、腫瘍減少、転移の減少又は消失、再発までの時間の延長、無病原体又は無腫瘍生存時間の増加、及び生存時間の増加のうちの1つ又はそれ以上として現れる可能性がある。免疫応答は、B細胞活性化、T細胞活性化、ナチュラルキラー細胞活性化、抗原提示細胞(例えば、B細胞、DC、単球及び/又はマクロファージ)の活性化、サイトカイン産生、ケモカイン産生、特異的細胞表面マーカー発現、特に、共刺激分子の発現のうちの1つ又はそれ以上が関与する可能性がある。免疫応答は、体液性、細胞性、Th1もしくはTh2応答、又はそれらの組み合わせによって特徴づけることができる。一実施形態において、免疫応答は先天性免疫応答である。
【0084】
一実施形態において、免疫応答はIFN応答である。一実施形態において、免疫応答はI型IFN応答である。一実施形態において、免疫応答はII型IFN応答である。一実施形態において、免疫応答はIII型IFN応答である。一実施形態において、免疫応答は、IFN-α、IFNβ及びTNF-αのうちの1つ又はそれ以上又はすべての発現を含む。一実施形態において、免疫応答は、IFN-α、IFNβ及びTNF-αのうちの1つ以上のレベルを測定することによって測定できる。
【0085】
本明細書中で使用する場合、「免疫応答を調節する」という語は、刺激に対する免疫応答を増加又は減少させることを指す。免疫応答の調節は、当業者に公知の任意の方法によって測定することができ、例えば、1つ又はそれ以上のサイトカインのレベルを測定することを含み得る。サイトカイン産生を測定するために適した方法の例は、実施例の節で提示する。
【0086】
本明細書中で使用する場合、「サイトカイン産生を調節する」という語は、対象におけるサイトカイン産生を増加させること又は減少させることを指す。一実施形態において、サイトカイン産生を調節するとは、対象の細胞によるサイトカインの分泌を増加させること又は減少させることを指す。一実施形態において、サイトカインの産生は、IRF3活性が関与する。一実施形態において、サイトカインはIFN経路にある。一実施形態において、サイトカインは、IFN-α、IFNβ及びTNF-αのうちの1つもしくはそれ以上又は全部である。サイトカイン産生の調節は、本明細書中、実施例の節で記載するものを含むが、それらに限定されない当業者に公知の任意の方法を用いて測定することができる。サイトカイン産生のレベルは、例えば、血液、血清又は血漿サンプルなどの患者サンプル中で測定できる。
【0087】
本明細書中で使用する場合、「IFN応答」という語は、IFN経路を含む免疫応答を指す。一実施形態において、免疫応答はI型IFN免疫応答である。一実施形態において、免疫応答はII型IFN免疫応答である。一実施形態において、免疫応答はIII型IFN免疫応答である。一実施形態において、IFN応答は、IFN-α、IFNβ及びTNF-αのうちの1つもしくはそれ以上又は全部を含む。
【0088】
C6orf106タンパク質活性を改変する化合物
本明細書中で使用する場合、「C6orf106タンパク質活性を改変する」という語は、C6orf106が免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節する能力を改変することを指す。一実施形態において、C6orf106mRNA又はC6orf106タンパク質のレベルを低下させることで、活性を低下させることによりC6orf106タンパク質活性を改変する。一実施形態において、C6orf106に結合し、C6orf106の活性を調節する化合物、例えばC6orf106タンパク質活性を低下又は阻害する化合物は、C6orf106タンパク質活性を改変すると考えられる。一実施形態において、C6orf106の活性を調節する化合物は、IRF3と結合するその能力を調節する。一実施形態において、C6orf106の活性を調節する化合物は、C6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を調節する。一実施形態において、C6orf106の活性を調節する化合物はIRF3と複合体を形成するその能力を調節する。一実施形態において、C6orf106mRNA又はC6orf106タンパク質又はその生物学的に活性なフラグメントのレベルを増加させることで、活性を増加させることによってC6orf106タンパク質活性を改変する。一実施形態において、C6orf106の細胞性輸送に関与するアゴニスト、阻害剤、受容体、又はタンパク質を調節することで、C6orf106タンパク質活性を改変することができる。一実施形態において、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物は処理する細胞の代謝活性を有意に変更しない。一実施形態において、細胞の代謝活性をアラマーブルーアッセイで評価する。
【0089】
本明細書中で使用する場合、「減少する(reduce)」又は「減少する(reduces)」又は「減少させた(reduced」又は「減少している(reducing)」という語は、化合物を投与する前の状態で存在するものと比べて、遺伝子発現、タンパク質活性、免疫応答又はサイトカイン産生の消滅させること、減少させること、又はより低いレベルを有することを意味する。一実施形態において、遺伝子発現、タンパク質活性、免疫応答及び/又はサイトカイン産生は、化合物を投与する前の状態で存在するものと比べて、少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%減少する。
【0090】
本明細書中で使用する場合、「増加する(increase又はincreases又はincreased又はincreasing)」という語は、化合物を投与する前の状態で存在するものと比べて、より高いか又はより大きなレベルの遺伝子発現、タンパク質活性、免疫応答又はサイトカイン産生を有することを指す。一実施形態において、遺伝子発現、タンパク質活性、免疫応答及び/又はサイトカイン産生は、化合物を投与する前の状態で存在するものと比べて、少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%増加する。
ポリヌクレオチド
【0091】
「ポリヌクレオチド」、及び「核酸」という語は交換可能に用いられる。ポリヌクレオチドはヌクレオチドモノマーのポリマーである。本発明の方法での使用に適したポリヌクレオチドは任意の長さのものであってよく、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、又はそのアナログ、あるいはその混合物を含み得る。本発明の方法での使用に適したポリヌクレオチドは、ゲノム、cDNA、半合成、又は合成起源のものであり得、二本鎖又は一本鎖であり得、そしてその起源又は操作のために、(1)自然界で関連するポリヌクレオチドの全部又は一部と関連しない、(2)自然界で連結しているもの以外のポリヌクレオチド(例えば、プロモータ)と連結している、又は(3)自然界で存在しない。以下はポリヌクレオチドの非限定的例である:遺伝子又は遺伝子フラグメントのコーディング又は非コーディング領域、連鎖分析から規定される座位、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、単離DNA、単離RNA、キメラDNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチドアナログなどの改変ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、ポリマーのアセンブリ前又は後に加えられる可能性がある。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分でのコンジュゲーションによるなど重合後にさらに改変されてもよい。
【0092】
「単離ポリヌクレオチド」によって、その天然状態で結合又は連結されるポリヌクレオチド配列から概して分離されたポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離ポリヌクレオチドは、自然に結合又は連結されるポリヌクレオチド配列を少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも75%、そしてさらに好ましくは少なくとも90%含まない。
【0093】
「外因性ポリヌクレオチド」によって、無細胞発現系あるいはポリヌクレオチド又はその天然状態と比較して変更された量で発現されたかもしくは変更された割合で発現されたポリヌクレオチド(例えば、mRNAの場合)を自然に含まない細胞中に存在するポリヌクレオチドを意味する。一実施形態において、ポリヌクレオチドを、自然にポリヌクレオチドを含まない細胞に導入する。典型的には、外因性DNAをmRNAの転写のためのテンプレートとして使用し、これを次に形質転換細胞内でポリペプチドをコードするアミノ酸残基の連続配列に翻訳する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは細胞に対して内因性であり、その発現は組換え手段によって変更され、例えば、外因性制御配列を関心対象の内因性遺伝子の上流に導入して、形質転換細胞が遺伝子によってコード化されるポリペプチドを発現することを可能にする。
【0094】
本発明における使用に適した外因性ポリヌクレオチドには、それが存在する細胞系又は無細胞発現系の他の成分から分離されていないポリヌクレオチド、及び前記細胞系又は無細胞系で産生されたポリヌクレオチドであって、その後、他の成分の少なくとも一部から精製されるポリヌクレオチドが含まれる。
【0095】
本発明のポリヌクレオチド、又は本発明に有用なポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、本明細書中で定義するポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズし得る。
【0096】
本発明のポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドと比較した場合、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、又は置換である1つ又はそれ以上の変異を有し得る。参照配列と比較して変異を有するポリヌクレオチドは、天然に存在する(すなわち、天然源から単離される)又は合成(例えば、核酸上で部位特異的変異誘発又はDNAシャッフリングを実施することによる)のいずれかであり得る。本発明のポリヌクレオチドはトランケーションを有し得る。トランケーションはN末端又はC末端トランケーションであり得る。
【0097】
一実施形態において、C6orf106タンパク質活性を改変するポリヌクレオチドを改変又は最適化してその活性を増強することができる。ヌクレオチドの改変又はアナログを導入して、ポリヌクレオチドの特性を改善することができる。改善された特性としては、増加したヌクレアーゼ耐性及び/又は増加した細胞膜透過能力が挙げられる。したがって、「ポリヌクレオチド」という語には、合成により改変された塩基、例えばイノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル-、2-プロピル-及び他のアルキル-アデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザシトシン及び6-アザチミン、シュードウラシル、4-チウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオールアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン及び他の8-置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン及び他の置換グアニン、他のアザ及びデアザアデニン、他のアザ及びデアザグアニン、5-トリフルオロメチルウラシル及び5-トリフルオロシトシンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
二本鎖RNA又はDNA
一実施形態において、ポリヌクレオチドはdsRNAである。一つの実施形態において、C6orf106遺伝子の発現は、RNAiのためにdsRNA分子をコード化する導入遺伝子によって減少する。
【0099】
「RNA干渉」、「RNAi」又は「遺伝子サイレンシング」とは、一般的に、二本鎖RNA分子が実質的又は全体的相同性を共有する核酸配列の発現をdsRNA分子減少させるプロセスを指す。しかしながら、RNA干渉は非RNA二本鎖分子を使用して達成できることが示されている(例えば、米国特許出願第20070004667号明細書を参照)。
【0100】
本発明は、本発明で使用するRNA干渉のための二本鎖領域を備える及び/又はコード化するポリヌクレオドを含む。ポリヌクレオチドは典型的にはRNAであるが、化学的に改変されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドを含み得る。
【0101】
二本鎖領域は少なくとも19個の連続したヌクレオチド、例えば約19~23個のヌクレオチドでなければならないか、又はそれよりも長くてもよく、例えば30もしくは50個のヌクレオチド、又は100個のヌクレオチドもしくはそれ以上であってよい。全遺伝子転写物に対応する完全長配列を使用することができる。好ましくは、それらは約19~約23ヌクレオチドの長さである。
【0102】
標的転写物に対する核酸分子の二本鎖領域の同一性の程度は、少なくとも90%、さらに好ましくは95~100%でなければならない。核酸分子はもちろん、分子を安定化させるように機能し得る無関係の配列を含んでもよい。
【0103】
「短鎖干渉RNA」又は「siRNA」という語は、本明細書中で使用する場合、例えば配列特異的にRNAiを媒介することによって、遺伝子発現を阻害又は下方調節することができるリボヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを指し、二本鎖部分は50ヌクレオチド長未満、好ましくは約19~約23ヌクレオチド長である。例えば、siRNAは自己相補的なセンス及びアンチセンス領域を備える核酸分子であり得、アンチセンス領域は標的核酸分子中のヌクレオチド配列に対して相補的であるヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域は標的核酸配列に対応するヌクレオチド配列又はその一部を有する。siRNAは2つの別個のオリゴヌクレオチドから構築することができ、一方の鎖はセンス鎖であり、他方の鎖はアンチセンス鎖であり、アンチセンス鎖及びセンス鎖は自己相補的である。
【0104】
本明細書中で使用する場合、siRNAという語は、配列特異的RNAi、例えばミクロRNA(miRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、短い干渉オリゴヌクレオチド、短い干渉核酸(siNA)、短い干渉改変オリゴヌクレオチド、化学的に改変されたsiRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)などを媒介することができるポリヌクレオチドを記載するために用いられる他の語と同等であることを意味する。さらに、本明細書中で使用する場合、RNAiという語は、配列特異的RNA干渉、例えば転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、又はエピジェネティクスを記載するために用いられる他の語と同等であることを意味する。例えば、siRNA分子は、転写後レベル又は転写前レベルの両方で遺伝子をエピジェネティックに発現停止させるために使用できる。非限定的例において、siRNA分子による遺伝子発現のエピジェネティックな調節は、遺伝子発現を変更するためのクロマチン構造のsiRNAによる改変に起因し得る。一つの実施形態において、本発明の方法で用いられるsiRNAは配列番号36~配列番号39の1つ又はそれ以上である。
【0105】
「shRNA」又は「短いヘアピンRNA」によって、約50個未満のヌクレオチド、好ましくは約19~約23個のヌクレオチドが同じRNA分子上に位置する相補的配列と塩基対を形成し、前記配列及び相補的配列が、塩基相補性の2つの領域によって形成されるステム構造の上に一本鎖ループを形成する少なくとも約4~約15個のヌクレオチドの不対領域によって隔てられているRNA分子を意味する。一本鎖ループの配列の例は:5’UUCAAGAGA3’を含む。
【0106】
含まれるshRNAは、二重又は二本フィンガー及び多フィンガーヘアピンdsRNAであり、RNA分子は一本鎖スペーサー領域によって隔てられた2以上のそのようなステム-ループ構造を備える。
【0107】
本明細書中で使用する場合、「アプタマー」は、C6orf106遺伝子又はC6orf106タンパク質を認識し結合し、その結果、C6orf106遺伝子又はタンパク質活性を改変することができる三次元立体構造を有する一本鎖核酸である。一実施形態において、アプタマーはDNA又はRNAである。一実施形態において、アプタマーは、DNAとRNA及びとの混合物である、及び/又は1つもしくはそれ以上の改変された塩基もしくは塩基アナログを含むことができ、これを本明細書中ではXNAと称する。
【0108】
一旦設計されると、二本鎖領域を備えるポリヌクレオチドは、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、インビトロ転写、組換え、又は合成手段によって生成することができる。
【0109】
ポリペプチド
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という語は、概して交換可能に用いられる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、C6orf106と結合する、及び/又はC6orf106の発現又は活性を低下させる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、C6orf106の発現又は活性を増加させる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、C6orf106のアゴニスト、阻害剤、受容体又はC6orf106の輸送及び/もしくは細胞局在に関与する細胞成分に結合する。一つの実施形態において、ポリペプチドはC6orf106又はその生物学的に活性なフラグメントである。一つの実施形態において、ポリペプチドはC6orf106とIRF3とを含む複合体の形成を調節する。
【0110】
本発明の以前に、C6orf106の充分に特性化されていなかった(Mungall et al., 2003;Zhang et al., 2015;Jiang et al., 2015)。本明細書中で使用する場合、「C6orf106」という語は、「未特性化タンパク質C6orf106」、「染色体6オープンリーディングフレーム106」、「DJ391O22.4」又は「FP852」を指す。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID64771又はEnsembl識別子ENSG00000196821に相当するH.sapiens C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID101134934又はEnsembl識別子ENSGGOG00000000388に相当するG.gorilla C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID103221631又はEnsembl識別子ENSCSAG00000009818に相当するC.sabaeus C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID224647又はEnsembl識別子ENSMUSG00000056692に相当するM.musculus C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、Ensembl識別子ENSMLUG00000002482に相当するM.lucifugus C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID100685164又はEnsembl識別子ENSCAFG00000001229に相当するC.familiaris C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID419902又はEnsembl識別子ENSGALG00000002778に相当するG.gallus C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID100552720又はEnsembl識別子ENSACAG00000015742に相当するA.carolinensis C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、Ensembl識別子ENSXETG00000031607に相当するX.tropicalis C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、遺伝子ID541415又はEnsembl識別子ENSDARG00000078075に相当するD.rerio C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、Ensembl識別子ENSCING00000020052に相当するC.intestinalis C6orf106である。一実施形態において、C6orf106は、配列番号46~56あるいは配列番号46~56又はその生物学的に活性なフラグメントに対して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は100%同一である配列のいずれか1つ又はそれ以上によってコード化される。一実施形態において、C6orf106は、配列番号1~11に対して少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも54%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%又は100%同一である配列あるいはその生物学的に活性なフラグメントであるアミノ酸を有する。ポリペプチドは、参照ポリペプチドと同じ活性、又は参照ポリペプチドに対して向上した活性を有し得る。
【0111】
本明細書中で使用する場合、「生物学的に活性なフラグメント」という語は、免疫応答及び/又はサイトカイン産生を調節する能力を有するC6orf106のフラグメントを指す。生物学的に活性なフラグメントは、本明細書中で使用する場合、完全長ポリペプチドを除外する。生物学的に活性なフラグメントは、所定の活性を維持する限り、任意のサイズ部分であり得る。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントはIRF3と結合する。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントはIRF3を含む複合体と結合する。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは、機能的UBA様ドメイン、機能的無秩序領域又は機能的FWドメインから選択される1つ又はそれ以上の推定上ドメインを欠いている(ドメイン及び領域は
図2で示される)。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的UBA様ドメインを欠いている。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的無秩序領域を欠いている。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的FWドメインを欠いている。一実施形態において、生物学的に活性なフラグメントは機能的UBA様ドメイン及び機能的無秩序領域を欠いている。好ましくは、生物学的に活性なフラグメントは、完全長タンパク質の活性の少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも75%、もしくは少なくとも90%を維持するか、又は完全長タンパク質に対して増強された活性を有する。好ましくは、生物学的に活性なフラグメントは、完全長タンパク質に対して増強された活性を有する。
【0112】
本明細書中で使用する場合、「ユビキチン結合様ドメイン」又は「UBA様ドメイン」という語は、
図2に示すようなC6orf106のN末端ドメインを指す。一実施形態において、UBA様ドメインは、配列番号1~8のアミノ酸23~63:又は配列番号10もしくは11の25~65のアミノ酸残基;又は配列番号9のアミノ酸残基23~66;又は配列番号12、もしくは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むか、又は前記配列のいずれかと少なくとも50%同一である配列を指す。本明細書中で使用する場合、「機能的UBA様ドメイン」が欠けているという表現は、UBA様ドメインが欠けている、UBA様ドメインのフラグメントが欠けている、又はUBA様ドメインの機能を妨害する置換、挿入又は欠失などの1つ又はそれ以上の変異をUBA様ドメイン中に備えるC6orf106を指す。一実施形態において、UBA-ドメインが欠けているC6orf106は、配列番号1~11のいずれか1つの約76個のN末端アミノ酸が欠けている。
【0113】
本明細書中で使用する場合、「無秩序領域」という語は、
図2で示す残基を備えるC6orf106のC末端領域を指す。一実施形態において、無秩序領域は、配列番号61に示されるアミノ酸配列を備えるか、又はそれと少なくとも50%同一である配列である。一実施形態において、無秩序領域は、配列番号62に示されるアミノ酸配列を備えるか、又はそれと少なくとも50%同一である配列である。一実施形態において、無秩序領域は、配列番号1~3のアミノ酸241~298:又は配列番号4~8のアミノ酸残基241~291;又は配列番号10の244~285のアミノ酸残基;又は配列番号11のアミノ酸残基244~281;又は配列番号9のアミノ酸残基244~281を指すか、又は前記配列のいずれかと少なくとも50%同一である配列である。
【0114】
本明細書中で使用する場合、「FWドメイン」又は「Nbr-1様ドメイン」という語は、
図2に示すような残基を備えるC6orf106ドメインを指す。一実施形態において、FWドメインは、配列番号1~8のアミノ酸98~190:又は配列番号10もしくは11の100~192のアミノ酸残基;又は配列番号9のアミノ酸残基100~194を指し;配列番号57、もしくは配列番号58、もしくは配列番号”60に記載するアミノ酸配列を含むか、又は前記配列のいずれかと少なくとも50%同一である配列である。
【0115】
本発明の方法における使用に適したポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対するそのアミノ酸の同一性の程度(%同一性)によるか、又は1つの参照アミノ酸配列に対して別のものに対してよりも高い同一性を有することによって定義することができる。参照アミノ酸配列に対するポリペプチドの%同一性は、典型的には、ギャップ生成ペナルティ=5、ギャップ伸長ペナルティ=0.3のパラメータを用いてGAP分析(Needleman and Wunsch, 1970;GCGプログラム)によって決定される。クエリー配列は少なくとも100個のアミノ酸の長さであり、GAP分析は少なくとも100個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。なお一層好ましくは、クエリー配列は少なくとも250アミノ酸の長さであり、GAP分析は少なくとも250個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。なお一層好ましくは、クエリー配列は少なくとも290アミノ酸の長さであり、GAP分析は少なくとも290個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。なお一層好ましくは、クエリー配列は少なくとも300アミノ酸の長さであり、GAP分析は少なくとも300個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。なお一層好ましくは、GAP分析はその全長にわたって2つの配列を整列させる。
【0116】
配列番号1~11のポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、本明細書中で定義される核酸に適切なヌクレオチド変化を導入することによるか、又は所望のポリペプチドのインビトロ合成によって調製することができる。そのような変異体は、例えばアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、又は置換を備える。欠失、挿入及び置換を組み合わせて、最終構築物に到達することができるが、ただし、最終ポリペプチド産物は所定の活性を有するものとする。
【0117】
変異(変更)ポリペプチドは、当該技術分野で公知の任意の技術を使用して、例えば、指向進化又は合理的設計法(下記参照)を使用して調製することができる。変異/変更DNAから誘導される産物は、本明細書中で記載するC6orf106タンパク質活性を調節する能力を有するか否かを判定するための技術を用いて容易にスクリーニングすることができる。
【0118】
アミノ酸配列変異の設計に際して、変異部位の位置及び変異の性質は、改変される特徴(複数可)に依存する。変異の部位は、個々に又は連続して、例えば、(1)まず保存的アミノ酸選択肢で置換し、次に達成される結果に応じてよりラジカルな選択肢で置換することによるか、(2)標的残基を欠失させることによるか、又は(3)配置された部位に隣接して他の残基を挿入することによって、改変することができる。
【0119】
アミノ酸配列欠失は、概して約1~15残基、さらに好ましくは約1~10残基、典型的には約1~5の連続残基の範囲である。
【0120】
置換変異体では、ポリペプチド中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている。置換型変異誘発について最も興味深い部位には、活性部位(複数可)として特定される部位、例えば基質又は補助因子結合部位が含まれる。他の興味深い部位は、様々な株又は種から得られる特定の残基が同一であるものである。これらの位置は生物学的活性にとって重要であり得る。これらの部位、特に、少なくとも3つの他の同等に保存された部位の配列内に含まれるものは、好ましくは比較的保存的に置換される。そのような保存的置換を「例示的置換」の見出しの下に示す。
【0121】
好ましい実施形態において、変異体(mutant/variant)ポリペプチドは、参照ポリペプチドと比較した場合に、1もしくは2もしくは3もしくは4個だけ、又は1もしくは2もしくは3もしくは4個以下の保存的アミノ酸変化を有する。保存的アミノ酸変化の詳細を表1に提示する。当業者ならわかるように、そのような小さな変化は、細胞において発現される場合にポリペプチドの活性を変更しないことは当然予測できる。
【0122】
【0123】
さらに、必要に応じて、非天然アミノ酸又は合成アミノ酸アナログをポリペプチド中への置換又は付加として導入することができる。そのようなアミノ酸としては、共通のアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えばβ-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、及びアミノ酸アナログ一般が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
合成中又は合成後に、例えば、ビオチニル化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解、抗体分子又は他の細胞性リガンドへの結合などによって異なって改変されるポリペプチドも範囲内に含まれる。これらの改変は、ポリペプチドの安定性及び/又は生物活性を増加させる働きをし得る。
【0125】
一実施形態において、C6orf106タンパク質活性を改変するポリペプチドは、その活性及び/又は安定性を増強するように改変又は最適化することができる。これは、多様化又は選択によって起こり得る。指向進化において、ランダム変異誘発をタンパク質に適用し、選択レジームを使用して、所望の性質、例えば増大した活性を有する変異体を選択する。さらに、変異及び選択のラウンドを次に適用する。典型的な指向進化戦略は以下の3ステップを含む:
【0126】
1)多様化:ポリペプチドをランダムに変異させ、及び/又は組換えて、遺伝子変異体の大きなライブラリを作製する。変異体遺伝子ライブラリは、エラープローンPCRにより構築することができる(例えば、Leung, 1989;Cadwell and Joyce, 1992を参照)、親テンプレートから調製されるDNaseI消化フラグメントのプールから構築することができる(Stemmer, 1994a;Stemmer, 1994b;Crameri et al., 1998;Coco et al., 2001)、変性オリゴヌクレオチドから構築することができる(Ness et al., 2002, Coco, 2002)、あるいは両者の混合物から、又はさらには未消化親テンプレートから構築することができ(Zhao et al., 1998;Eggert et al., 2005)、そして通常はPCRにより組み立てられる。ライブラリは、相同又は非相同組換えのいずれかによってインビボ又はインビトロで組換えられた親配列から作製することもできる(Ostermeier et al., 1999; Volkov et al., 1999;Sieber et al., 2001)。変異体遺伝子ライブラリはまた、関心対象の遺伝子を好適なベクターにサブクローニングし、ベクターを大腸菌(E. coli)XL-1 red(Stratagene)などの「変異誘発」株に形質転換し、そして形質転換された細菌を好適な世代数増殖させることによって構築することもできる。変異体遺伝子ライブラリはまた、関心対象のポリペプチドをHarayama(1998)によって広範に記載されているようなDNAシャッフリング(すなわち、ランダムフラグメンテーション及び再構築による選択された変異体遺伝子のプールのインビトロ相同的組換え)に供することによって構築することもできる。
【0127】
2)選択:ライブラリを、スクリーン又は選択を使用して所望の特性を有する変異体(mutant(variant))の存在について試験する。スクリーンが手作業による高性能な変異体の同定及び単離を可能にする一方で、選択は全ての非機能性変異体を自動的に除去する。スクリーンは既知の保存されたアミノ酸モチーフの存在についてスクリーニングすることを含み得る。代替的に、又は付加的に、スクリーンは、細胞又はトランスジェニック非ヒト生物もしくはその部分において変異ポリヌクレオチドを発現すること、そして例えばC6orf106タンパク質活性を調節する能力のレベルを分析すること、例えば細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分中あるいは細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分から抽出された結果としての産物のレベルを定量すること、そして変異ポリヌクレオチドが欠けている対応する細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分に対して産物のレベルを判定すること、そして場合によって、親(非変異)ポリヌクレオチドを発現することを含み得る。別法として、スクリーンは、細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分で標識された基質を供給し、そして細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分中、あるいは細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分から抽出された基質又は産物のレベルを、変異ポリヌクレオチドが欠けている対応する細胞又はトランスジェニック非ヒト生物又はその部分に対して判定すること、そして場合によって親(非変異)ポリヌクレオチドを発現することを含み得る。
【0128】
3)増幅:選択又はスクリーンで同定された変異体を何倍も複製して、どのような変異が起こったかを理解するために研究者らがそれらのDNAを配列決定することを可能にする。
【0129】
つまり、これら3つのステップは、指向進化の「ラウンド」と称する。ほとんどの実験は複数ラウンドを必要とする。これらの実験では、先のラウンドの「勝者」を次のラウンドで多様化させて、新しいライブラリを創出する。実験の最後で、すべての発生したタンパク質又はポリヌクレオチド変異体を、生化学的方法を用いて特性化する。
【0130】
結合剤
一実施形態において、ポリペプチドは結合剤である。一実施形態において、結合剤は抗体又はそのフラグメントである。いくつかの実施形態において、抗体は、C6orf106と結合し、C6orf106の発現又は活性を低下させる。いくつかの実施形態において、抗体は、受容体、阻害剤又はそのアゴニストなどの、C6orf106が相互作用するポリペプチドと結合する。一実施形態において、抗体は、細胞を透過するか又は細胞に取り込まれる(受動的に又は積極的に)ように改変された抗体である。
【0131】
「抗体」という語は、本明細書中で使用する場合、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、融合ダイアボディ、トリアボディ、ヘテロコンジュゲート抗体、インタクト分子を含むキメラ抗体ならびにそれらのフラグメント、及び他の抗体様分子を包含する。抗体は、例えば、限定されるものではないが、VH又はVLドメインのいずれかを含むドメイン抗体、重鎖可変領域の二量体(VHH、ラクダ科について記載のとおり)、軽鎖可変領域の二量体(VLL)、直接もしくはリンカーを介して結合し得る軽(VL)及び重鎖(VH)可変領域のみを含むFvフラグメント、又は重鎖可変領域及びCH1ドメインを含むFdフラグメントを含む、様々な形態の改変を含む。当業者は、抗体がSanta Cruz Biotechnolgyで入手可能なもの(例えば、sc-398490)などのC6orf106と結合する任意の抗体であり得ることを理解するであろう。
【0132】
一緒に結合して一本鎖抗体を形成する重及び軽鎖の可変領域からなるscFv(Bird et al., 1988;Huston et al., 1988)ならびにダイアボディやトリアボディなどのscFvのオリゴマーも「抗体」という語に含まれる。可変領域及び定常領域の一部を含むFab、(Fab’)2及びFabFc2フラグメントなどの抗体のフラグメントも含まれる。相補性決定領域(CDR)グラフト化抗体フラグメント及び抗体フラグメントのオリゴマーも含まれる。Fvの重及び軽鎖成分は、同じ抗体又は異なる抗体から誘導することができ、それによってキメラFv領域を産生することができる。抗体は、動物(例えばマウス、ウサギ又はラット)のものであってもよいし、又はキメラであってもよい(Morrison et al., 1984)。抗体は当該技術分野で公知の任意の方法によって産生することができる。
【0133】
本明細書中で提供されたガイドライン及び前述の参考文献及びHarlow & Lane, Antibodies:a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)のような刊行物で記載された当業者に周知の方法を使用して、本発明の方法で使用する抗体を容易に作製することができる。
【0134】
抗体は、軽鎖及び重鎖が直接又はリンカーを介して結合し得る可変軽(VL)鎖及び可変重(VH)鎖を含むFv領域であり得る。本明細書中で使用する場合、リンカーは、軽及び重鎖と共有結合し、それらが対象とするエピトープに特異的に結合することができる立体構造を達成することができるように、2つの鎖間に充分な間隔及び柔軟性を提供する分子を指す。タンパク質リンカーは、融合ポリペプチドのIg部分の内在性成分として発現することができるので、特に好ましい。
【0135】
一つの実施形態において、抗体は細胞内伝達の能力を有する。細胞内伝達の能力を有する抗体には、ラクダ及びラマ抗体、サメ抗体(IgNAR)、scFv抗体、細胞内抗体又はナノボディ、例えばscFv細胞内抗体及びVHH細胞内抗体などの抗体が含まれる。そのような抗原結合剤は、Harmsen and De Haard (2007)、Tibary et al.(2007)及びMuyldermans et al.(2001)によって記載されているようにして作製することができる。酵母SPLINT抗体ライブラリは、タンパク質-タンパク質相互作用を妨害できる細胞内抗体について試験するために利用可能である(例えば、それらの産生方法については、Visintin et al.(2008)を参照のこと)。そのような薬剤は、細胞透過ペプチド配列又は核局在化ペプチド配列、例えばConstantini et al.(2008)で開示されているものを含み得る。Vectocell又はDiatoペプチドベクター、例えばDe Coupade et al.(2005)及びMeyer-Losic et al.(2006)で開示されているものもインビボ送達に有用である。
【0136】
さらに、抗体は、細胞透過剤、例えば細胞透過性ペプチドに融合させることができる。細胞透過性ペプチドとしては、Tatペプチド、ペネトラチン、短い両親媒性ペプチド、例えばPep科及びMPG科由来のもの、オリゴアルギニン及びオリゴリジンが挙げられる。一例では、細胞透過性ペプチドはまた、脂質(C6~C18脂肪酸)ドメインとコンジュゲートさせて、細胞内送達を改善する(Koppelhus et al.,2008)。細胞透過性ペプチドの例は、Howl et al.(2007)及びDeshayes et al.(2008)で見出すことができる。したがって、本発明はまた、共有結合(例えば、ペプチド結合)により、場合によってN末端又はC末端で、細胞透過性ペプチド配列に融合した抗体の使用も提供する。
【0137】
C6orf106又はその生物学的に活性なフラグメントを含む、本発明の方法における使用に適したポリペプチドは、天然のポリペプチドの産生及び回収、組換えポリペプチドの産生及び回収、ならびにポリペプチドの合成(synthetic synthesis)を含む様々な方法で産生することができる。一実施形態において、ポリペプチドを産生するために有効な条件下でポリペプチドを発現することができる細胞を培養し、そしてポリペプチドを回収することができる細胞を培養することによって、単離ポリペプチドを産生する。有効な培養条件には、ポリペプチド産生を可能にする、有効な培地、バイオリアクター、温度、pH及び酸素条件が含まれるが、これに限定されるものではない。有効な培地とは、細胞を培養してポリペプチドを産生する任意の培地を指す。そのような培地は、典型的には、同化可能な炭素、窒素及びホスフェート源、ならびに適切な塩、ミネラル、金属及び他の栄養素、例えばビタミンを有する水性培地を含む。細胞は、従来型の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイター皿、及びペトリ皿中で培養することができる。培養は、宿主細胞に適切な温度、pH及び酸素含有量で実施することができる。そのような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0138】
プログラム可能なヌクレアーゼ
一実施形態において、ポリペプチドは、C6orf106遺伝子を改変することによってC6orf106タンパク質活性を改変するプログラム可能なヌクレアーゼである。本明細書中で使用する場合、「プログラム可能なヌクレアーゼ」という語は、「標的化」(「プログラム」)されて所定のゲノム位置を認識し編集するヌクレアーゼに関する。一実施形態において、タンパク質は、「標的化」又は「プログラム」されて、遺伝子修飾をC6orf106遺伝子又はその調節領域に導入する、プログラム可能なヌクレアーゼである。一実施形態において、遺伝子改変は、欠失、置換であるか、又はC6orf106もしくはその調節領域中にある。
【0139】
一実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼは、DNA結合亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)ドメインの組み合わせによってゲノム位置を認識するようにプログラムすることができる。ZFPはDNA配列中の特定の3bpを認識し、ZFPの組み合わせを用いて特定のゲノム位置を認識することができる。一実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼは、転写アクチベータ様エフェクタ(TALE)DNA結合ドメインによってゲノム位置を認識するようにプログラムすることができる。別の実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼは、1つ又はそれ以上のRNA配列によってゲノム位置を認識するようにプログラムすることができる。別の実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼは、1つ又はそれ以上のDNA配列によってプログラムすることができる。別の実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼは、1つ又はそれ以上のハイブリッドDNA/RNA配列によってプログラムすることができる。別の実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼは、RNA配列、DNA配列及びハイブリッドDNA/RNA配列の1つ又はそれ以上によってプログラムすることができる。
【0140】
本開示にしたがって使用できるプログラム可能なヌクレアーゼとしては、細菌のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-cas(CRISPR関連)システム由来のRNAに誘導された操作ヌクレアーゼ(RGEN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベータ様ヌクレアーゼ(TALEN)、及びアフゴノートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
一実施形態において、ヌクレアーゼはRNAにガイドされる操作ヌクレアーゼ(RGEN)である。一実施形態において、RGENは古細菌ゲノム由来であるか、又はその組換え体形である。一実施形態において、RGENは細菌ゲノム由来であるか、又はその組換え体形である。一実施形態において、RGENはI型(CRISPR)-cas(CRISPR関連)系由来である。一実施形態において、RGENはII型(CRISPR)-cas(CRISPR関連)系由来である。一実施形態において、RGENはIII型(CRISPR)-cas(CRISPR関連)系由来である。一実施形態において、ヌクレアーゼはクラスI RGENである。一実施形態において、ヌクレアーゼはクラスII RGENである。一実施形態において、RGENは多成分酵素である。一実施形態において、RGENは一成分酵素である。一実施形態において、RGENはCAS3である。一実施形態において、RGENはCAS10である。一実施形態においてRGENはCAS9である。一実施形態において、RGENはCpf1である(Zetsche et al., 2015)。一実施形態において、RGENは単一のRNA又はDNAによって標的とされる。一実施形態において、RGENは、複数のRNA及び/又はDNAによって標的とされる。一実施形態において、プログラム可能なヌクレアーゼはDNAプログラムされたアフゴノートであり得る(国際公開第14/189628号パンフレット)。一実施形態において、CAS9はSteptococcus pyogenes由来である。
【0142】
小分子
一実施形態において、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物は小分子である。一実施形態において、小分子はC6orf106タンパク質活性を増加させる。一実施形態において、小分子はC6orf106タンパク質活性を低下させる。一実施形態において、小分子はC6orf106遺伝子と結合し、そしてその発現を阻害する。一実施形態において、小分子は、C6orf106タンパク質と結合して、C6orf106がその正常な機能を果たす能力を低下させ、C6orf106タンパク質活性を低下させる。一実施形態において、小分子はC6orf106タンパク質と結合して、その活性を増強して、それによりC6orf106タンパク質活性を増加させる。一実施形態において、小分子は、C6orf106の細胞性輸送又は局在化に関与するアゴニスト、受容体又はタンパク質などの、C6orf106と相互作用するポリペプチドと結合し、C6orf106タンパク質活性を低下又は増加させる。
【0143】
一実施形態において、投与される化合物は、不活性又は比較的低活性であるが、投与後に、化合物が欠損した同質遺伝子の細胞と比較した場合、細胞の集団において抗ウイルス遺伝子の発現及び/又はタンパク質活性を減少させる化合物に変換(例えば代謝)される前駆体化合物であり得る。それらの実施形態において、投与される化合物は、プロドラッグと称する場合がある。代替的に又は付加的に、投与される化合物は代謝されて、前記化合物を欠く同質遺伝子の細胞と比較した場合、細胞の集団における抗ウイルス遺伝子及び/又はタンパク質活性の発現の低下で活性がある活性代謝物を産生することができる。そのような活性代謝物の使用も、本開示の範囲内に含まれる。
【0144】
化合物中に存在する置換基に応じて、化合物は場合によって塩の形態で存在してもよい。本発明における使用に適した化合物の塩は、対イオンが薬剤的に許容される塩である。好適な塩としては、有機又は無機酸又は塩基と形成されるものが挙げられる。特に、酸と形成される好適な塩としては、鉱酸、強有機カルボン酸、例えば、非置換であるか又は例えばハロゲンで置換された1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えばヒドロキシカルボン酸、例えばアミノ酸と形成される塩、あるいは有機スルホン酸、例えばハロゲンで置換されているか又は置換されていない(C1~4)アルキルスルホン酸又はアリールスルホン酸などと形成される塩が挙げられる。薬剤的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フタル酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸、リジン及びアルギニンから形成されるものが挙げられる。薬剤的に許容される塩基塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばカリウム及びナトリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム及びマグネシウムの塩、ならびに有機塩基との塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルコミン(glucomine)、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ低級アルキルアミン、ジ低級アルキルアミンもしくはトリ低級アルキルアミン、例えばエチルプロピルアミン、t-ブチルプロピルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジイソプロピルプロピルアミン、トリエチルプロピルアミン、トリブチルプロピルアミンもしくはジメチルプロピルアミン、又はモノヒドロキシ低級アルキルアミン、ジヒドロキシ低級アルキルアミンもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミンが挙げられる。対応する内部塩も形成され得る。
【0145】
有機化学及び/又は医薬品化学技術分野の当業者は、多くの有機化合物が、その中で反応するか又はそれから析出もしくは結晶化する溶媒と複合体を形成し得ることを理解するであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は「水和物」として知られている。水和物などの溶媒和物は、原薬が化学量論量又は非化学量論量のいずれかで結晶格子中に水などの溶媒を取り込む場合に存在する。原薬は、これらが任意の段階で遭遇し得るため、水和物などの溶媒和物の存在についてルーチン的にスクリーニングされる。したがって、本発明に有用な化合物は水和物などの溶媒和物の形態で存在し得ることは理解されるであろう。本発明における使用に適した化合物の溶媒和形態は、関連する溶媒が薬剤的に許容されるものである。例えば、水和物は薬剤的に許容される溶媒和物の一例である。
【0146】
本発明に有用な化合物は、非晶質形態又は結晶性形態で存在し得る。多くの化合物は複数の多形体で存在し、全てのそのような形態の化合物の使用は、本開示に包含される。
【0147】
本開示に有用な小分子は、C6orf106タンパク質に対する結合について候補化合物のライブラリをスクリーニングし、次いで結合する化合物のいずれかがC6orf106タンパク質活性を低下させるか否かを判定するなどの標準的手順を用いて同定することができる。一実施形態において、本発明の化合物のスクリーニングは、前記化合物がインビトロ、インオボ又はインビボでウイルス感染を調節するか否かを評価することを含む。本開示で有用な小分子はまた、既知ライブラリ化合物のスクリーニングを含み得るコンピュータによるスクリーニングの標準的手順を使用して同定して、C6orf106遺伝子又はタンパク質と結合しC6orf106タンパク質活性を低下させる候補を特定することもできる。
【0148】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達
核酸構築物
一実施形態において、ポリヌクレオチドは核酸構築物である。一実施形態において、核酸構築物は導入遺伝子を含み得る。本明細書中で使用する場合、「核酸構築物」とは、例えば、二本鎖RNA分子(例えば、siRNA、miRNA、shRNAもしくはアプタマー)、プログラム可能なヌクレアーゼを「ガイド」もしくは「標的化」するRNA、DNAもしくはRNA/DNAハイブリッド配列、又はベクター中のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドをコード化する任意の核酸分子を指す。典型的には、核酸構築物は、二本鎖DNAもしくは二本鎖RNA、又はそれらの組み合わせである。さらに、核酸構築物は、典型的には、ポリヌクレオチドをコード化するオープンリーディングフレームと機能的に連結された好適なプロモータを含む。核酸構築物は、例えば二本鎖RNA分子の第1の一本鎖をコード化する第1のオープンリーディングフレームを含んでもよく、相補的な(第2の)鎖は、異なるか又は好ましくは同じ核酸構築物による第2のオープンリーディングフレームによってコード化される。核酸構築物は線状フラグメント又は環状分子であってよく、複製可能であっても複製可能でなくてもよい。当業者は本発明の核酸構築物が好適な発現ベクター内に含まれ得ることを理解するであろう。核酸構築物のレシピエント細胞へのトランスフェクション又は形質転換によって細胞が核酸構築物によってコード化されるRNA又はDNA分子を発現することが可能になる。
【0149】
別の例では、核酸構築物は、同じものの複数のコピー、及び/又は二本鎖領域を備える複数の異なるRNA分子、例えば短いヘアピンRNAを含む1つもしくはそれ以上(例えば、1、2、3、4、5、又はそれ以上)を発現し得る。一実施形態において、核酸構築物は、1つ又はそれ以上アプタマーアプタマーをコード化する配列、又はアプタマーを産生するように処理することができる配列を発現することができる。一例では、核酸構築物は、相同的組換えに適した構築物である。
【0150】
核酸構築物はまた、さらなる遺伝要素も含み得る。構築物に含まれ得る要素の種類は決して限定されず、当業者によって選択され得る。いくつかの実施形態において、核酸構築物は宿主細胞に導入遺伝子として挿入される。一実施形態において、宿主細胞は免疫細胞である。一実施形態において、免疫細胞は白血球である。一実施形態において、白血球はリンパ球又は食細胞である。一実施形態において、リンパ球はT細胞又はB細胞である。そのような場合では、導入遺伝子挿入プロセスからRNA分子をコード化する配列を保護するため、そして外部転写リードスルーの危険性を減らすために設計された構築物に、「スタッファー」フラグメントを含めることが望ましい場合がある。スタッファーフラグメントを構築物に含めて、例えばプロモータとコーディング配列及び/又はターミネータ成分との間の距離を増加させることもできる。スタッファーフラグメントは5~5000ヌクレオチド又はそれ以上の任意の長さであり得る。プロモータ間に1つ又はそれ以上のスタッファーフラグメントが存在し得る。複数のスタッファーフラグメントの場合、それらは同じ長さ又は異なる長さであり得る。スタッファーDNAフラグメントは好ましくは異なる配列である。好ましくは、スタッファー配列は、それらが挿入された細胞、又はその子孫内で見いだされるものと同じ配列を含む。さらなる実施形態において、核酸構築物は、二本鎖RNA(複数可)をコード化するオープンリーディングフレーム(複数可)に隣接するスタッファー領域を備える。
【0151】
別法として、核酸構築物は、転位因子、例えば、二本鎖RNA(複数可)をコード化するオープンリーディングフレームに隣接する末端逆方向反復配列を特徴とするトランスポゾンを含み得る。好適なトランスポゾンの例としては、Tol2、mini-Tol、Sleeping Beauty、Mariner及びGalluhopが挙げられる。
【0152】
核酸構築物に含まれ得るさらなる遺伝要素の他の例としては、レポーター遺伝子、例えばGFP又はRFPなどの蛍光マーカータンパク質の1つもしくはそれ以上の遺伝子;容易に分析される酵素、例えばβ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、クロラムフェニカル(chloramphenical)アセチルトランスフェラーゼ又は分泌された胚性アルカリホスファターゼ;又はホルモンもしくはサイトカインなどのそれらに対してイムノアッセイが容易に利用可能なタンパク質が挙げられる。実施形態で使用され得る他の遺伝要素としては、アデノシンデアミナーゼ、アミノグリコジン酸(aminoglycodic)ホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸リダクターゼ、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ又は薬物耐性などの選択的成長優位性を細胞に対して付与するタンパク質をコードするものが挙げられる。
【0153】
一実施形態において、さらなる遺伝要素は、対象における免疫応答を刺激する抗原をコード化する1つ又はそれ以上のポリヌクレオチドであり得る。
【0154】
核酸構築物が細胞にトランスフェクトされる場合、プロモータ及び任意のさらなる遺伝要素が、宿主ゲノム中に自然に存在するヌクレオチド配列から構成されることが望ましい。一実施形態において、核酸構築物はプロモータを備える。当業者であれば、構成的プロモータ又は誘導性プロモータなどのプロモータを本発明において使用できることを理解するであろう。一実施形態において、プロモータは、Pol I、Pol II又はPol IIIプロモータである。
【0155】
発現ベクター
場合によっては、ポリヌクレオチド又は核酸構築物を発現ベクターに挿入することが望ましい可能性がある。一実施形態において、発現ベクターを細胞に移入することができ、前記細胞を使用して本発明の方法における使用に適したポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを産生することができる。一実施形態において、発現ベクターを対象の細胞に移入し、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを対象において発現させることができる。
【0156】
したがって、例えば、対象由来の細胞をDNA又はRNAなどのポリヌクレオチドで操作して、ポリペプチドをエクスビボでコード化することができる。操作された細胞を次いで、ポリヌクレオチド又はポリペプチドで処理される対象に提供することができる。この実施形態において、細胞を、例えば、本発明の方法に有用なポリペプチドをコード化するRNAを含むベクターの使用によって、エクスビボで操作することができ、細胞を形質転換するために使用することができる。そのような方法は当該技術分野で周知であり、本発明におけるそれらの使用は本明細書中の教示から明らかになるであろう。
【0157】
さらに、細胞は、当該技術分野で公知の手順によりインビボでのポリペプチドの発現のためにインビボで操作することができる。発現構築物を次いで単離することができる。一例では、パッケージング細胞が今や関心対象の遺伝子を含む感染性ウイルス粒子を産生するように、本発明の方法に有用なポリペプチドをコード化するRNAを含むプラスミドベクターでパッケージング細胞を形質導入する。これらのプロデューサー細胞は、細胞のインビボでの操作ならびにポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドのインビボでの発現のために、対象に投与することができる。一実施形態では、発現ベクターを対象に直接投与する。本発明のポリペプチドを投与するためのこれらや他の方法は、本発明の教示から当業者には明らかであるはずである。
【0158】
本明細書中で使用する場合、「発現ベクター」は、宿主細胞を形質転換することができ、1つ又はそれ以上のポリヌクレオチドの発現を実施することができるDNA又はRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターはまた、宿主細胞内で複製することもできる。発現ベクターは原核生物、真核生物又はウイルスのいずれかであり得る。発現ベクターには、細菌、真菌、内部寄生虫、節足動物、動物、植物及び藻類細胞においてなど、本発明の宿主細胞において機能する(すなわち、遺伝子発現を行う)任意のベクターが含まれる。ベクターはRNA又はDNAのいずれかであり得る。ベクターは例えば、プラスミド、ウイルス、人工染色体、又はバクテリオファージであり得る。そのようなベクターは、染色体、エピソーム及びウイルス由来のベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、及びウイルス由来のベクター、それらの組み合わせ由来のベクター、例えばプラスミドならびにバクテリオファージ遺伝要素、コスミッド及びファージミド由来のものを含む。一実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。一実施形態において、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0159】
レトロウイルスプラスミドベクターが誘導され得るレトロウイルスとしては、限定されるものではないが、モロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血症ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳房腫瘍ウイルスが挙げられる。一実施形態において、レトロウイルスプラスミドベクターはモロニーマウス白血病ウイルス由来である。
【0160】
そのようなベクターは、ポリペプチドを発現するための1つ又はそれ以上のプロモータを含む。用いることができる好適なプロモータとしては、レトロウイルスLTR;SV40プロモータ;及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモータが挙げられるが、これらに限定されるものではない。細胞性プロモータ、例えば、これらに限定されるものではないが、ヒストン、RNAポリメラーゼIII、及びβ-アクチンプロモータを含む真核生物細胞性プロモータも用いることができる。用いることができるさらなるウイルスプロモータとしては、アデノウイルスプロモータ、チミジンキナーゼ(TK)プロモータ、及びB19パルボウイルスプロモータが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適なプロモータの選択は、本明細書に含まれる教示から当業者には明らかであろう。
【0161】
本発明の方法に有用なポリペプチドをコード化する核酸配列は好適なプロモータの制御下に置かれる。用いることができる好適なプロモータとしては、アデノウイルスプロモータ、例えばアデノウイルス主要後期プロモータ;又は非相同プロモータ、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモータ;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プロモータ;誘導性プロモータ、例えばMMTプロモータ、メタロチオネインプロモータ;熱ショックプロモータ;アルブミンプロモータ;ApoAIプロモータ;ヒトグロビンプロモータ;ウイルスチミジンキナーゼプロモータ、例えば単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモータ;レトロウイルスLTR(本明細書中で前述の改変レトロウイルスLTRを含む);β-アクチンプロモータ;及びヒト成長ホルモンプロモータが挙げられるが、これらに限定されるものではない。プロモータは、ポリペプチドをコード化する遺伝子を制御する天然のプロモータであり得る。
【0162】
レトロウイルスプラスミドベクターを使用して、パッケージング細胞株を形質導入して、プロデューサー細胞株を形成する。トランスフェクトできるパッケージング細胞の例としては、PE501、PA317、Y-2、Y-AM、PA12、T19-14X、VT-19-17-H2、YCRE、YCRIP、GP+E-86、GP+envAm12、及びMiller(1990)で記載されているDAN細胞株が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ベクターは、当該技術分野で公知の任意の手段によってパッケージング細胞に形質導入することができる。そのような手段としては、エレクトロポレーション、リポソームの使用、及びCaPO4沈殿が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1つの代替案では、レトロウイルスプラスミドベクターをリポソーム中に封入することができるか、又は脂質にカップリングさせ、その後、宿主に投与することができる。
【0163】
プロデューサー細胞株は、ポリペプチドをコード化する核酸配列(複数可)を含む、感染性レトロウイルスベクター粒子を生成する。そのようなレトロウイルスベクター粒子をその後に用いて、真核生物細胞をインビトロ又はインビボのいずれかで形質導入することができる。形質導入された真核生物細胞は、ポリペプチドをコード化する核酸配列(複数可)を発現する。形質導入され得る真核生物細胞としては、間葉(mesenchemymal)細胞、軟骨細胞、胚性幹細胞、胚性癌腫細胞、ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、及び気管支上皮細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
一実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターなど、遺伝子治療に好適である(Daya et al.,2008)。
【0165】
一実施形態において、ベクターは、複数の機能性RNAもしくはタンパク質又はそれらの組み合わせを発現することができるベクター、例えばKabadi et al.(2014)で記載されているベクターである。そのようなベクターは、プログラム可能なヌクレアーゼ及び1つもしくはそれ以上の「ガイド」又は「ターゲティング」配列の同時投与のために使用できる。そのようなベクターはまた、複数の二本鎖RNAの同時発現のためにも使用できる。
【0166】
一実施形態において、ベクターは、Cavatak(商標)又はImlygic(商標)(タリモジーン・ラハーパレプベック)などの、がん細胞を標的とし、好ましくは影響を及ぼすベクターである。
【0167】
細胞及び細胞培養
当業者は、本明細書中に記載したポリペプチド又はそのフラグメントが、本明細書中で記載するポリヌクレオチド又は発現ベクターの発現によって細胞培養中で産生することができることを理解するであろう。一例では、細胞は原核生物又は真核生物である。一例では、細胞は、哺乳類、トリ、細菌又は節足動物起源のものである。一例では、細胞は哺乳類である。一例では、細胞は連続細胞株由来である。一例では、細胞は初代細胞株由来である。一例では、細胞は不死化細胞株由来である。一例では、細胞は接着細胞である。一例では、細胞は非接着細胞(浮遊細胞)である。一例では、細胞は免疫細胞である。
【0168】
一例では、哺乳類細胞は、HEK、CHO又はHeLa細胞である。一例では、細胞はHeLa細胞である。一例では、細胞はニワトリ胚線維芽細胞(CEF)から誘導される一次細胞株由来である。一例では、細胞は、不死化ニワトリ胚細胞株PBS-1由来である。一例では、細胞は、ニワトリ線維芽細胞株DF-1由来である。一例では、細胞は、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞である。一例では、細胞はMDCK33016細胞である。一例では、細胞はMDCKCCL34細胞である。一例では、細胞はアフリカミドリザル腎臓由来Vero細胞である。一例では、細胞はヒト網膜由来PER.C6細胞である。一例では、細胞はAGE1.CR細胞である。一例では、細胞はMRC-5二倍体細胞株由来である。一例では、細胞はヒト胚腎臓細胞(HEK293)である。一実施形態において、細胞培養は細菌細胞培養である。一実施形態において、細菌細胞は大腸菌(Escherichia coli:E.coli)である。一例では、細胞は昆虫細胞である。一例では、昆虫細胞はイラクサギンウワバ由来である。一例では、細胞を血清の不在下で培養することができる。一例では、細胞を血清の存在下で培養する。
【0169】
本発明の細胞集団は、インビトロでの細胞の増殖を可能にするいかなる細胞培養培地中でも培養することができる。そのような培地及びプロセスは当業者に公知である(例えば、Genzel et al., 2009;Josefsberg et al., 2012;Wolf et al., 2011)。本発明の細胞集団を培養するための細胞培養培地の例としては:Iscove培地、UltraCHO、CDハイブリドーマ無血清培地、episerf培地、MediV SF103(無血清培地)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、イーグル変法イーグル培地(EMEM)、グラスゴー変法イーグル培地(GMEM)、SMIP-8、変法イーグル培地(MEM)、VP-SFM、DMEM系SFM、DMEM/F12、DMEM/HamのF12、VPSFM/William培地E、Excell525(SFM)、アデノウイルス発現培地(AEM)及びExcell65629(Genzel et al., 2009)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような培地には、さらなる成長因子、例えば限定されるものではないが、アミノ酸、ホルモン、ビタミン及びミネラルを追加してもよいことは、当業者には理解されるであろう。場合によって、そのような培地には、血清、例えばウシ胎仔血清を追加してもよい。
【0170】
一例では、細胞は、バッチ細胞培養プロセスを用いて培養する。一例では、細胞は、潅流細胞培養プロセスを用いて培養する。一例では、細胞は、種培地及び産生培地(production medium)中で培養する。一例では、細胞は、撹拌槽型リアクターで培養する。一例では、リアクターの容積は約1L~約2500Lである。一例では、細胞をウェーブバイオリアクター中で培養する。一例では、細胞を細胞工場システム、例えばNunc細胞工場システムで培養する(Genzel et al., 2009)。
【0171】
免疫応答を刺激する抗原
本発明は、免疫応答を刺激する少なくとも1つの抗原と組み合わせてC6orf106タンパク質活性を改変する化合物の使用を提供する。化合物は、少なくとも1つの抗原と混合するか又はコンジュゲートさせて、化合物を対象に投与する場合に保護免疫応答を生じさせることができる。一実施形態において、C6orf106活性を低下させる化合物を少なくとも1つの抗原又はワクチン組成物とともに投与して、少なくとも1つの抗原又はワクチン組成物に対する免疫応答を増加させる。
【0172】
「少なくとも1つの抗原」によって、1つ又はそれ以上の抗原型又は抗原決定基を意味する。一実施形態において、抗原を発明の化合物にコンジュゲートさせることができる。
【0173】
抗原にコンジュゲートした化合物又は化合物と抗原との組み合わせを含む組成物を、疾患に罹患しているか、又は疾患にかかりやすいか、又は疾患のリスクにある対象に投与することができる。
【0174】
本明細書中で使用する場合、「抗原」とは、特異的免疫応答を誘導する能力を有する物質を意味する。抗原は、その生活環ステージのいずれかの全生物、不活性化全生物、全生物から単離されたフラグメント又は成分、生物の可溶化物又は腫瘍可溶化物、当該技術分野で公知の方法により遺伝的又は合成的に操作された特異的抗原であり得る。さらに、選択された抗原は、成熟全生物又はスポロゾイト(オーシスト)のいずれか又は両方から誘導することができる。
【0175】
本発明の方法で使用するための抗原はまた、全細胞又はその細胞成分フラクションから構成され得る。そのような細胞又はその細胞成分フラクションは、例えば、腫瘍又は感染組織から誘導することができる。
【0176】
好ましい選択された抗原としては、例えば:
花粉;
アレルゲン、特に喘息を誘導するもの;
ウイルス、例えば本明細書中で記載するもの、及び特にインフルエンザ、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、HIV-1、HIV-2、狂犬病、麻疹、B型肝炎、口蹄病、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、A型肝炎、C型肝炎、HTLV-1及びHTLV-2;
細菌、例えば炭疽病、ハンセン病、結核、ジフテリア、ライム病、梅毒、腸チフス、及び淋病の病原体(ethiological agent);
原虫、例えば、Babeosis bovis、Plasmodium、Leishmania spp、Toxoplasma gondii、及びTrypanosoma cruzi;
真菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)種、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、及びヒストプラズマ・カプスラタム(Histoplasma capsulatum);
寄生虫、例えば、蠕虫;ならびに
腫瘍抗原、例えばムチン-1(MUC-1)、がん胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、前立腺特異的抗原、タンパク質MZ2-E、多形性上皮ムチン(PEM)、葉酸結合タンパク質LK26、トランケート型上皮成長因子受容体(EGRF)、Thomsen-Friedenreich(T)抗原、テロメラーゼ、スルビビン、Melan-A/MART-1、WT1、LMP2、ヒトパピローマウイルス(HPV)E6E7、ヒト上皮成長因子受容体(HER-2/neu)、イディオタイプ、メラノーマ関連抗原3(MAGE-3)、p53、NY-ESO-1、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、睾丸がん抗原(cancer testis antigen)、5T4、ならびにGM-2及びGD-2ガングリオシド.
由来の抗原が挙げられる。
【0177】
抗原は、タンパク質、ペプチド、多糖又はオリゴ糖(遊離もしくはタンパク質担体にコンジュゲートしたもの)、又はそれらの混合物であり得る。タンパク質及びペプチドは、抽出物もしくは可溶化物の一部、天然源から精製したもの、固相合成によって合成したもの、又は遺伝子組み換え(recombinant genetics)によって得られたものであってよい。多糖類及びオリゴ糖類は、天然源から単離することができるか、又は酵素による手順及び/もしくは有機合成法を用いて合成することができる。
【0178】
抗原は、組換え宿主細胞における融合タンパク質の産生に際して発現及び精製を促進するために、融合タンパク質の一部を形成してもよい。融合タンパク質の非抗原部分は、概して融合ポリペプチドのN末端領域であり、カルボキシ末端配列は抗原配列を含む。融合タンパク質は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、又は任意の他のタンパク質もしくはその部分、特に結果としての融合タンパク質を生成するためにタンパク質の結合又は他のアフィニティ特性を利用するアフィニティ精製を可能にするものから選択することができる。タンパク質はまた、キャリアタンパク質のC末端又はN末端と融合させることもできる。融合タンパク質の性質は、その融合タンパク質が産生されるベクター系によって左右される。細菌発現ベクターの一例はpGEXであり、これは、このベクターに関心対象の遺伝子をサブクローニングすると、グルタチオン-S-トランスフェラーゼと関心対象のタンパク質とからなる融合タンパク質を産生する。
【0179】
別法として、場合によってタンパク質キャリアにカップリングしていてもよい合成ペプチド又はポリペプチドを本発明において用いることができる。合成ペプチド又はポリペプチドは、標準的方法に従って産生することができる。
【0180】
有用なペプチド又はポリペプチドは、全ポリペプチドが動物に投与されると、抗体及び/又は抗原特異的CTL応答を誘発することが知られているポリペプチドのエピトープを有する部分を備えていてもよい。このポリペプチド部分のエピトープはポリペプチドの免疫原性又は抗原エピトープである。
【0181】
「免疫原性エピトープ」は、全タンパク質が免疫原である場合、抗体及び/又は抗原特異的CTL応答を誘発するタンパク質の一部として定義される。一方、抗体又はMHC分子が結合できるタンパク質分子の領域は、「抗原エピトープ」と定義される。タンパク質の免疫原性エピトープの数は、概して、抗原エピトープの数よりも少ない。
【0182】
抗原エピトープを有するペプチド又はポリペプチドの選択に関して、タンパク質配列の一部を模倣する比較的短い合成ペプチドが、部分的に模倣されたタンパク質と反応する抗血清をルーチン的に誘発することは当該技術分野では周知である(例えば、Sutcliffe et al., 1983を参照)。タンパク質反応性血清を誘発することができるペプチドは、しばしば、タンパク質の一次配列で表され、簡単な化学的規則のセットによって特徴づけることができ、インタクトなタンパク質の免疫優性領域(すなわち、免疫原性エピトープ)にも、アミノ又はカルボキシル末端にも限定されない。
【0183】
本発明の抗原エピトープを有するペプチド及びポリペプチドは、好ましくは特定のポリペプチドのアミノ酸配列内に含まれる、少なくとも7個、さらに好ましくは少なくとも9個、最も好ましくは約15~30個のアミノ酸を含む。
【0184】
CTL上のT細胞受容体によって認識されるエピトープは、抗体によって認識されるものとは異なっていてもよい。通常、CTLは、MHCクラスI分子に結合し細胞表面上に露出した、ペプチド(サイトゾル区画中で酵素により分解されるタンパク質に由来する)を認識する。これらのCTLでよって認識されたペプチドは、MHC対立遺伝子特異的配列モチーフにしたがってMHCクラスI分子に対して選択的に結合する。これらのペプチドは、発現クローニングによって同定することができ(van der Bruggen, et al., 1991を参照)、そして様々なクラスI及びクラスII結合ペプチドアルゴリズムを用いて予測することができる(Pietersz et al., 2006)。
【0185】
別法として、CTLによって認識されたペプチドは、免疫化のために用いられるタンパク質抗原に由来するペプチドでのインビトロ又はエクスビボ刺激による細胞傷害性Tリンパ球の誘導によって同定することができる。特定のCTLによって認識されるエピトープを有する本発明のペプチド及びポリペプチドは、好ましくは少なくとも6個のアミノ酸の配列、そしてさらに好ましくは約7~20個のアミノ酸の配列である。
【0186】
エピトープを有するペプチド及びポリペプチドは、任意の従来型手段によって産生することができる。
【0187】
細菌抗原
抗原は、限定されるものではないが、Helicobacter pylori、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Ureaplasma urealyticum、Mycoplasma pneumoniae、Staphylococcus spp.、Staphylococcus aureus、Streptococcus spp.、Streptococcus pyogenes、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus viridans、Enterococcus faecalis、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Bacillus anthracis、Salmonella spp.、Salmonella typhi、Vibrio cholera、Pasteurella pestis、Pseudomonas aeruginosa、Campylobacter spp.、Campylobacter jejuni、Clostridium spp.、Clostridium difficile、Mycobacterium spp.、Mycobacterium tuberculosis、Treponema spp.、Borrelia spp.、Borrelia burgdorferi、Leptospira spp.、Hemophilus ducreyi、Corynebacterium diphtheria、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、hemophilus influenza、Escherichia coli、Shigella spp.、Erlichia spp.、及びRickettsia spp.を含む細菌から誘導することができる。
【0188】
細菌抗原は、天然、組換え又は合成のものであり得る。そのような細菌抗原としては、細胞表面上に存在する炭水化物決定基と結合する細菌由来のセレクチン又はレクチン、ならびにタンパク質、例えばフィブロネクチン、ラミニン、及びコラーゲンの細菌受容体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0189】
ウイルス抗原
抗原は、限定されるものではないが、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹(Varicell-zoster)ウイルス、ヘルペスウイルス(ヒト及び動物)、単純ヘルペスウイルス、パルボウイルス(ヒト及び動物)、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、アルファウイルス、ブニヤウイルス、狂犬病ウイルス、アレナウイルス、フィロウイルス、ボルナウイルス、HIV1、HIV2、HTLV-1、HTLV-II、FeLV、ウシLV、FeIV,イヌジステンパーウイルス、イヌ接触伝染性肝炎ウイルス、ネコカリシウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、TGEウイルス(ブタ)、及び口蹄病及び本明細書中で記載する他のウイルスを含むウイルスから誘導することができる。
【0190】
ウイルス抗原は、天然、組換え又は合成のものであり得る。そのようなウイルス抗原としては、感染プロセスを開始するための細胞表面受容体への付着の原因となるウイルス性タンパク質、例えば(i)レトロウイルス(HIV、HTLV、FeLVなど)及びヘルペスウイルスのエンベロープ糖タンパク質、ならびに(ii)インフルエンザウイルスのノイラミダーゼ(neuramidase)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0191】
腫瘍抗原
本発明の一実施形態において、対象はがんに罹患しているか、又はがんを発症する危険性が増大している。
【0192】
本発明のがんを治療及び/又は予防する方法は、1つ又はそれ以上の腫瘍関連抗原を含み得る。腫瘍関連抗原は、天然、組換え、又は合成であり得る。そのような腫瘍関連抗原としては、MUC-1及びそのペプチドフラグメント、タンパク質MZ2-E。多形性上皮ムチン、葉酸結合タンパク質LK26、MAGE-1又はMAGE-3及びそのペプチドフラグメント、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)及びそのペプチドフラグメント、がん胎児性抗原(CEA)及びそのペプチドフラグメント、αフェトプロテイン(AFP)及びそのペプチドフラグメント、膵臓腫瘍胎児抗原及びそのペプチドフラグメント、CA125、15-3,19-9、549、195及びそのペプチドフラグメント、前立腺特異的抗原(PSA)及びそのペプチドフラグメント、前立腺特異的膜抗原(PSMA)及びそのペプチドフラグメント、扁平上皮癌抗原(SCCA)及びそのペプチドフラグメント、卵巣がん抗原(OCA)及びそのペプチドフラグメント、膵臓がん関連抗原(PaA)及びそのペプチドフラグメント、Her1/neu及びそのペプチドフラグメント、gp-100及びそのペプチドフラグメント、変異体K-rasタンパク質及びそのペプチドフラグメント、変異体p53及びそのペプチドフラグメント、非変異体p53及びそのペプチドフラグメント、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFR)、キメラタンパク質p210BCR-ABL、テロメラーゼ及びそのペプチドフラグメント、スビビン(suvivin)及びそのペプチドフラグメント、Melan-A/MART-1 タンパク質及びそのペプチドフラグメント、WT1タンパク質及びペプチドフラグメント、LMP2タンパク質及びペプチドフラグメント、HPV E6 E7タンパク質及びペプチドフラグメント、HER-2/neuタンパク質及びペプチドフラグメント、イディオタイプタンパク質及びペプチドフラグメント、NY-ESO-1タンパク質及びペプチドフラグメント、PAPタンパク質及びペプチドフラグメント、睾丸がんタンパク質(cancer testis protein)及びペプチドフラグメント、ならびに5T4タンパク質及びペプチドフラグメントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の例示的腫瘍抗原(Cheever et al., 2009)。
【0193】
疾患
本発明の方法又は化合物で免疫応答を調節することによって治療及び/又は予防される例示的疾患としては:感染、免疫不全、自己免疫疾患、炎症性疾患及びがんが挙げられる。例示的疾患は、調節が必要な、不適切に増加した免疫応答又は不適切に減少した免疫応答を有し得る。例示的疾患は、調節が必要な、不適切に増加又は減少したIFN応答を有し得る。
【0194】
感染
一つの実施形態において、治療及び/又は予防される疾患は感染である。一つの実施形態において、感染は、ウイルス、細菌、真菌、又は原虫感染である。一実施形態において、感染はウイルス感染である。ウイルスは、ウイルスに対する免疫応答が、低下したC6orf106タンパク質活性によって増大する任意のウイルスであり得る。一実施形態において、ウイルスは動物ウイルスである。一実施形態において、動物ウイルスはヒトウイルスである。一実施形態において、ウイルスは非ヒトウイルスである。一実施形態において、ウイルスはマイナス鎖RNAウイルスである。
【0195】
本発明で使用するためのウイルスの例としては、モノネガウイルス、ヘルペスウイルス及びニドウイルス目のメンバーが挙げられる。一実施形態において、ウイルスはモノネガウイルス目由来である。一実施形態において、モノネガウイルスは、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス及びボルナウイルスから選択される。
【0196】
本発明で使用するためのウイルスの例としては、オルトミクソウイルス科、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、ボルナウイルス及びコロナウイルスから選択される科のウイルスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0197】
オルトミクソウイルス科ウイルスは、例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、及びC型インフルエンザウイルス、イサウイルス、ソゴトウイルス及び/又はカラナヤウイルス(Quaranjavirus)であり得る。インフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスであり得る。A型インフルエンザウイルスは、動物から単離されたA型インフルエンザウイルスから選択することができる。一実施形態において、動物はヒト又はトリである。特に、A型インフルエンザウイルスは、H1N1、H1N2、H1N3、H1N4、H1N5、H1N6、H1N7、H1N9、H2N1、H2N2、H2N3、H2N4、H2N5、H2N7、H2N8、H2N9、H3N1、H3N2、H3N3、H3N4、H3N5、H3N6、H3N8、H4N1、H4N2、H4N3、H4N4、H4N5、H4N6、H4N8、H4N9、H5N1、H5N2、H5N3、H5N6、H5N7、H5N8、H5N9、H6N1、H6N2、H6N3、H6N4、H6N5、H6N6、H6N7、H6N8、H6N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N4、H7N5、H7N7、H7N8、H7N9、H9N1、H9N2、H9N3、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8、H10N1、H10N3、H10N4、H10N6、H10N7、H10N8、H10N9、H11N2、H11N3、H11N6、H11N9、H12N1、H12N4、H12N5、H12N9、H13N2、H13N6、H13N8、H13N9、H14N5、H15N2、H15N8、H15N9及びH16N3から選択することができる。一つの実施形態において、A型インフルエンザウイルスは、H1N1、H3N2、H7N7,及び/又はH5N1から選択される。
【0198】
レトロウイルスは、例えばヒト免疫不全ウイルスであり得る。
【0199】
ヘルペスウイルスウイルスは、例えば、HSV-1、HSV-2、水痘帯状ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス又はサイトメガロウイルスであり得る。
【0200】
パラミクソウイルス科ウイルスは、例えば、パラミクソウイルス又は肺炎ウイルス亜科であり得る。一実施形態において、パラミクソウイルスは、例えばアクアパラミクソウイルス、アブラウイルス、フェルラウイルス(Ferlavirus)、ヘニパウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、レスピロウイルス、又はルブラウイルスであり得る。一実施形態において、肺炎ウイルス亜科は、例えば、Metapneumoウイルス又はOrthopneumoウイルスであり得る。一実施形態において、パラミクソウイルスはニューカッスル病ウイルスである。
【0201】
ラブドウイルスは、例えば、リッサウイルス、ノビラブドウイルスエフェメロウイルス、ペルハブドウイルス(Perhabdovirus)、Tibrovirusk、ヌクレオラブドウイルス)Nucleorhabdovirus)、ツパウイルス(Tupavirus)ベシクロウイルス、スプリビウイルス(Sprivivirus)、シトラブドウイルス(Cytorhabdovirus)、又はシグマウイルスであり得る。一実施形態において、ラブドウイルスは、狂犬病ウイルス、バス・コンゴウルス(Bas-Congovirus)、カラジャスウイルス、チャンディプラウイルス、コカル(Cocal)ウイルス、イスファハンウイルス、マラバウイルス、ピリ(Piry)ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、チブロガルガン(Tibrogargan)ウイルス、ダーラムウイルス、パーチラブドウイルス、コイ春ウイルス病ウイルス、Hirameラブドウイルス、感染性造血壊死ウイルス、ウイルス性出血性敗血症ウイルス又はスネークヘッドラブドウイルスであり得る。一実施形態において、水疱性口内炎ウイルスは、水疱性口内炎アラゴアスウイルス、水疱性口内炎インディアナウイルス、又は水疱性口内炎ニュージャージーウイルスである。
【0202】
フィロウイルスは、例えばエボラウイルス、クエバウイルス又はマールブルグウイルスであってよい。エボラウイルスは、例えば、ブンディブギョエボラウイルス、レストンエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、タイフォーレスト(Tai Forest)エボラウイルス又はザイールエボラウイルスであり得る。
【0203】
ボルナウイルス科は、例えば、コブラ科1ボルナウイルス、哺乳類1ボルナウイルス、スズメ目1ボルナウイルス、スズメ目2ボルナウイルス、オウム目1ボルナウイルス、オウム目2ボルナウイルス又は水鳥1ボルナウイルスであり得る。
【0204】
コロナウイルス科ウイルスは、例えばコロナビリナエ(Coronavirinae)又はコロビリナエ(Corovirinae)であり得る。コロナビリナエは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、又はガンマコロナウイルスであり得る。トロビリナエ(Torovirinae)はアルファコロナウイルス又はベータコロナウイルスであり得る。一実施形態において、コロナウイルス科(Coronaviradae)はSARS(重度の急性呼吸器症候群)コロナウイルスであり得る。
【0205】
一実施形態において、ウイルスは、インフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、鶏痘ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、おたふくかぜウイルス、ウマ脳脊髄炎、風疹ウイルス、産卵落下症候群ウイルス、トリ腫瘍溶解性ウイルス、トリ感染性咽頭気管炎ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス、天然痘ウイルス、感染性ファブリーキウス嚢病、ウシイバラキ(Ibaraki)ウイルス、組換えポックスウイルス、トリアデノウイルスI型、II型又はIII型、ブタ日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、感染気管支炎ウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、脳脊髄炎ウイルス、ベネズエラEEVウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、マレック病ウイルス、パルボウイルス、口蹄病ウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、ブタコレラウイルス、Bluetongueウイルス、カバネウイルス、感染性サケ貧血ウイルス、感染性造血壊死ウイルス、ウイルス性出血性敗血症ウイルス、ブンディブギョエボラウイルス、レストンエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、タイフォーレスト(Tai Forest)エボラウイルス、ザイールエボラウイルス、マーブルグ、SARS及び感染性膵臓壊死ウイルスから選択される。
【0206】
一実施形態において、感染は、細菌性感染である。一実施形態において、細菌は、Helicobacter pylori、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Ureaplasma urealyticum、Mycoplasma pneumoniae、Staphylococcus spp.、Staphylococcus aureus、Streptococcus spp.、Streptococcus pyogenes、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus viridans、Enterococcus faecalis、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Bacillus anthracis、Salmonella spp.、Salmonella typhi、Vibrio cholera、Pasteurella pestis、Pseudomonas aeruginosa、Campylobacter spp.、Campylobacter jejuni、Clostridium spp.、Clostridium difficile、Mycobacterium spp.、Mycobacterium tuberculosis、Treponema spp.、Borrelia spp.、Borrelia burgdorferi、Leptospira spp.、Hemophilus ducreyi、Corynebacterium diphtheria、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、hemophilus influenza、Escherichia coli、Shigella spp.、Erlichia spp.、及びRickettsia spp.から選択される。
【0207】
一実施形態において、感染は真菌感染である。一実施形態において、真菌感染は、Aspergillus sp.、Candida albicans、Cryptococcus neoformans、及びHistoplasma capsulatumから選択される。
【0208】
一実施形態において、感染は原虫感染である。一実施形態において、原虫は、Babeosis bovis、Plasmodium、Leishmania spp. Toxoplasma gondii、及びTrypanosoma cruziから選択される。
【0209】
免疫不全
一例では、治療及び/又は予防される疾患は免疫不全である。一例では、免疫不全は、X連鎖無γグロブリン血症、分類不能型免疫不全症、重症複合免疫不全、後天性免疫不全症候群、白血病、ヒト免疫不全ウイルス、ウイルス性肝炎、例えばC型肝炎及び多発性骨髄腫から選択される。
【0210】
自己免疫疾患
一例では、治療及び/又は予防される疾患は自己免疫疾患である。一例では、自己免疫疾患の患者は、C6orf106タンパク質活性を増大させる化合物で治療され、対象において免疫応答及び/又はサイトカイン産生が減少する。一実施形態において、自己免疫疾患は慢性炎症を特徴とする。一実施形態において、自己免疫疾患は炎症レベルの増加を特徴とする。一実施形態において、自己免疫疾患はIFN応答の増加を特徴とする。一実施形態において、自己免疫疾患はI型IFN応答の増加を特徴とする。
【0211】
例えば、自己免疫疾患は、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無γグロブリン血症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性脂質異常症、自己免疫、免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性蕁麻疹、軸索及びニューロン神経障害、巴洛病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害(CIDP)、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コーガン症候群、コクサッキー心筋炎、CREST疾患、本態性混合型クリオグロブリン血症、脱髄性ニューロパシー、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円盤状ループス、ドレスラー症候群、線維化性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管性肉芽腫症(GPA)(以前はウェグナー肉芽腫症と呼ばれていた)、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶結性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、低ガンマグロブリン血症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4-関連硬化性疾患、封入体筋炎、間質性膀胱炎、過敏性腸症候群、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎症候群、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA疾患(LAD)、狼瘡(SLE)、ライム病、慢性、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(Devic’s)、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性精神神経疾患)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I、II、及びIII型自己免疫性多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、突発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、レーノー現象(Raynauds phenomenon)、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発軟骨炎、後腹膜繊維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子・精巣自己免疫、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交換性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病(UCTD)、ブドウ膜炎、血管炎、小水疱水疱性皮膚病、白斑、及びウェグナー肉芽腫症から選択される。
【0212】
一例では、自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、関節リウマチ、多発性関節炎、多発性硬化症、ブドウ膜炎、喘息、1型糖尿病、2型糖尿病、狼瘡又は慢性閉塞性肺疾患から選択される。
【0213】
炎症性疾患
一例では、治療及び/又は予防される疾患は炎症性疾患である。一例では、炎症性疾患は、C6orf106タンパク質活性を増大させる化合物の投与によって炎症が減少し、免疫応答及び/又はサイトカイン応答が減少する任意の疾患である。一実施形態において、疾患は慢性である。一実施形態において、炎症性疾患は前記自己免疫疾患のうちの1つによって引き起こされる。一実施形態において、炎症は外傷、例えば、損傷、熱傷又は凍傷に起因する外傷によって引き起こされる。
【0214】
がん
一例では、治療及び/又は予防される疾患はがんである。本明細書中で使用する場合、「がん」は、周囲組織に浸潤する、及び/又は新しいコロニー形成部位へ転移する能力を有する細胞の増殖によって特徴づけられる、様々な悪性新生物のいずれかを意味する。一実施形態において、がんは、例えば、膀胱がん、骨がん、腸がん、脳腫瘍、乳がん、結腸直腸がん、原発不明癌、子宮頸がん、胃がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、中皮腫、骨髄腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、膣がん、外陰がんであり得る。一実施形態において、がんは、癌腫、肉腫、リンパ腫、胚細胞腫瘍、又は芽細胞腫である。
【0215】
化合物の同定方法
一実施形態において、C6orf106タンパク質活性を改変する本発明の化合物は、スクリーニングによって同定することができる。そのような化合物は当業者に公知の任意の方法によって同定することができ、i)化合物のC6orf106遺伝子又はC6orf106mRNAと結合する能力を評価すること、ii)化合物のC6orf106遺伝子発現を改変する能力を評価すること、iii)化合物のC6orf106タンパク質に結合する能力を評価すること、iv)化合物の細胞におけるC6orf106活性を改変する能力を評価すること、のうちの1つもしくはそれ以上、又は全部を含み得る。化合物のC6orf106活性を改変する能力を評価することは、ウイルス感染などの感染に対する化合物の免疫応答を調節する能力を評価することを含み得る。あるいは、化合物のC6orf106活性を改変する能力は、化合物の免疫応答を誘導する能力を評価することを含み得る。免疫応答を評価することは、化合物による治療に応答するサイトカインのレベルを測定することを含み得るが、これに限定されるものではない。一実施形態において、免疫応答を測定することは、IFN-α、IFN-β及びTNF-αのうちの1つ又はそれ以上の遺伝子及び/又はタンパク質のレベルを測定することを含む。
【0216】
C6orf106遺伝子発現
一実施形態において、化合物は、C6orf106遺伝子の発現を減少させることによってC6orf106タンパク質活性を減少させ得る。一実施形態において、化合物は、C6orf106遺伝子又はそのフラグメントの発現を増加させることによってC6orf106タンパク質活性を増加し得る。そのような化合物をインビトロ、インオボ又はインビボでスクリーニングすることができる。インビトロ実験は、本発明の方法において使用するための候補化合物を細胞に投与し、そして化合物の投与前及び投与後のC6orf106mRNA発現レベルを評価することを含み得る。インビトロ研究は、任意の好適な細胞株を用いて実施することができる。一実施形態において、細胞株は哺乳類細胞株である。一実施形態において、細胞株はヒト細胞株、例えばHeLa細胞株である。インオボ研究はトリ卵において実施することができ、インビボ研究は、哺乳類モデル、例えばマウスモデルを用いて実施することができる。遺伝子発現はリアルタイムPCRを用いて測定することができる。
【0217】
組織及び/又は細胞におけるC6orf106遺伝子の発現レベルの定量的評価を可能にするものを含む、核酸の検出を可能にする任意の好適な技術を使用することができる。例えば、転写された遺伝子のレベルは、ノザンブロッティング、及び/又はRT-PCRによって決定することができる。定量的(リアルタイム)PCRの出現とともに、任意のRNA集団中に存在する転写物のコピー数は、関心対象の遺伝子に適切なプライマーを用いて正確に決定することができる。核酸は、標識することができ、遺伝子アレイ上にハイブリダイズすることができ、その場合、遺伝子濃度は、アレイ中に生成した放射性又は蛍光シグナル遺伝子の強度に正比例する。
【0218】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、複製コピーが、「上流」及び「下流」プライマーからなる「プライマー対」又は「プライマーセット」、ならびに重合の触媒、例えばDNAポリメラーゼ、及び典型的には熱安定性ポリメラーゼ酵素を使用する標的ポリヌクレオチドで構成される反応である。PCRのための方法は当該技術分野で公知であり、例えば、「PCR」(Ed. M.J. McPherson and S.G Moller (2000) BIOS Scientific Publishers Ltd, Oxford)で教示されている。PCRは、生物学的サンプルから単離されたmRNAを逆転写することから得られるcDNAに関して実施することができる。
【0219】
別の核酸増幅技術は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)である。まず、相補的なDNA(cDNA)を、逆転写酵素を用いてRNAテンプレートから作製し、次いで結果として得られたcDNAに関してPCRを実施する。
【0220】
増幅の別の方法は、欧州特許出願公開第0320308号明細書で開示されているリガーゼ連鎖反応(「LCR」)である。
【0221】
Qβレプリカーゼも、本発明におけるさらに別の増幅方法として使用することができる。この方法では、標的に対して相補的な領域を有するRNAの複製配列をRNAポリメラーゼの存在下でサンプルに添加する。ポリメラーゼはその後検出することができる複製配列をコピーする。
【0222】
制限エンドヌクレアーゼ及びリガーゼを使用して、制限部位の1本の鎖中にヌクレオチド5’α-チオ-トリホスフェートを含む標的分子の増幅を達成する等温増幅方法も、本発明における核酸の増幅において有用であり得る。
【0223】
鎖置換増幅(SDA)は、複数ラウンドの鎖置換及び合成、すなわちニック翻訳を伴う核酸の等温増幅を実施する別の方法である。
【0224】
標的特異的配列は、サイクリックプローブ反応(CPR)を用いて検出することもできる。CPRでは、非特異的DNAの3’及び5’配列ならびに特異的RNAの中間配列を有するプローブをサンプル中に存在するDNAにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションしたら、反応をRNase Hで処理し、プローブの産物は、消化後に放出される独特の産物として同定される。もとのテンプレートを別のサイクリングプローブにアニーリングし、反応を繰り返す。
【0225】
等温増幅技術の別の例はLAMP(DNAのループ媒介等温増幅)である。
【0226】
さらなる増幅方法は英国特許出願公開第2202328号明細書、及び国際出願PCT/US89/01025号明細書に記載され、本発明に従って使用することができる。
【0227】
他の核酸増幅手順は、核酸配列に基づく増幅(NASBA)及び3SR(国際公開第88/10315号パンフレット)をはじめとする転写に基づく増幅システム(TAS)を含む。
【0228】
ヌクレオチド配列の直接配列決定のための方法は当業者に周知であり、例えばAusubel et al, eds., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley, (1995)及びSambrook et al, Molecular Cloning, 2nd ed., Chap. 13, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)で見出すことができる。配列決定は、任意の好適な方法、例えば、ジデオキシ配列決定、化学的配列決定、次世代配列決定技術又はそれらの変形によって実施することができる。直接配列決定は、特定の配列の任意の塩基対における変化を決定するという利点を有する。
【0229】
ハイブリダイゼーションに基づく検出システムとしては、TaqManアッセイ及び分子ビーコンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。TaqManアッセイ(米国特許第5962233号明細書)は、一方の末端上にドナー色素を有し、他方の末端にアクセプター色素を有するので、色素対が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって相互作用をする対立遺伝子特異的(ASO)プローブを使用する。
【0230】
C6orf106タンパク質活性
一実施形態において、本発明の化合物は、タンパク質の発現を減少もしくは増加させることによるか、又はタンパク質の活性を改変することによって、C6orf106タンパク質活性を調節することができる。そのような化合物は、当業者に公知の任意の方法によって、タンパク質に対して結合する能力についてスクリーニングすることができ、タンパク質の活性のレベルを調節することができる。そのような方法には、イムノアッセイが含まれ得る。
【0231】
化合物は、過剰量の他のポリペプチドの存在下でC6orf106と結合することができる。そのような特異性を達成するために必要なパラメータは、当該技術分野における慣習的方法を用いてルーチン的に決定することができる。好ましくは、結合剤は、バックグラウンドの少なくとも1倍、又は少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、そしてさらに典型的にはバックグラウンドの10~100倍C6orf106と結合する。
【0232】
本明細書中で想定されるスクリーニングアッセイとしては、対象から単離された生物学的サンプル中のタンパク質を検出するための任意の公知アッセイ、例えば、SDS/PAGE、分画電気泳動、SDS/PAGE及び分画電気泳動を含む二次元ゲル電気泳動、イムノアッセイ、例えば、小分子(例えば、タンパク質の化合物、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレータ、競合的阻害剤、又は非競合的阻害剤)などのタンパク質の抗体又は非抗体リガンドを用いた検出に基づくシステムが挙げられる。これらの実施形態によると、抗体又は小分子をタンパク質の検出に適した任意の標準的固相又は液相アッセイフォーマットで使用することができる。質量分析、MALDI-TOF、バイオセンサーテクノロジー、一過性ファイバー光学、又は蛍光共鳴エネルギー移動を使用する、例えば蛍光標識細胞分取(FACS)などの光学的又は蛍光検出は、明らかに本発明に含まれる。質量分析サンプルのハイスループットスクリーニング、特にハイスループット共鳴スペクトロスコピー法(例えば、MALDI-TOF、エレクトロスプレーMS又は非エレクトロスプレーMS)における使用に適したアッセイシステムも想定される。
【0233】
好適なイムノアッセイフォーマットとしては、イムノブロット、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素イムノアッセイが挙げられる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、アイソトープでコードされたアフィニティタグ(ICAT)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、バイオセンサーテクノロジー、一過性ファイバー光学テクノロジー又はタンパク質チップテクノロジーを利用した改変イムノアッセイも有用である。
【0234】
一つの実施形態において、アッセイは半定量的アッセイ又は定量的アッセイである。
【0235】
標準的固相ELISAフォーマットは、様々なサンプル由来のタンパク質又は抗体の濃度を決定するのに特に有用である。
【0236】
そのようなELISAに基づくシステムは、例えば、既知量の標準に対して検出システムを校正することによるなど、サンプル中のタンパク質又は抗体の量の定量に特に好適である。
【0237】
別の形態では、ELISAは、固体マトリックス、例えば、膜、ポリスチレンもしくはポリカーボネートマイクロウェル、ポリスチレンもしくはポリカーボネートディップスティック又はガラス支持体上のC6orf106と特異的に結合する抗体を固定化することからなる。サンプルを次いで前記抗体と物理的に関係させ、サンプル中の抗原を結合又は「補足」させる。結合したタンパク質を次いで標識された抗体を用いて検出することができる。別法として、第2の(検出)抗体と結合する第3の標識された抗体を使用できる。
【0238】
インシリコスクリーニング
一実施形態において、そのような化合物は、当業者に公知の任意の方法によるコンピュータスクリーニングによって同定することができる。この種類の公知技術としては、Sheridan and Venkataraghavan, (1987)、Goodford, (1984)、Beddell, (1985)、Hol, (1986)、Verlinde and Hol, (1984)、Walters et al., (1998)、Langer and Hoffmann, (2001)、Good, (2001)、Gane and Dean, (2000)、Zhang et al., (2015)、Cerqueira et al., (2015)、Kuenemann et al., (2015)、Westermaier et al., (2015)で提供されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0239】
化合物がC6orf106タンパク質と結合するためには、典型的には、好適なレベルの立体化学的相補性が必要である。一般に、立体化学的相補性を有する分子の設計は、分子と標的受容体との間の「適合」を化学的及び/又は幾何学的に最適化する技術によって達成することができる。本発明によりC6orf106タンパク質の立体化学を補完する分子を設計するために少なくとも2つのアプローチがある。
【0240】
第1のアプローチは、これに限定されないが、主に幾何学的基準を使用して、三次元構造データベースから分子をコンピュータにより受容体部位へ直接ドッキングさせて、特定の分子の前記部位に対する適合度を評価することである。このアプローチでは、内部自由度数(及び分子立体構造空間中の対応する極小値)は、2つの剛体の幾何的(剛体球)相互作用のみを考慮することによって減少し、この場合、一方の実体(活性部位)は、第2の実体(リガンドとして、補体分子)の結合部位を形成する「ポケット」又は「溝」を含む。
【0241】
このアプローチは、Kuntz et al.(1982)及びEwing et al.(2001)によって示され、彼らのリガンド設計のアルゴリズムは、カリフォルニア大学理事によって配布された商業的ソフトウェアパッケージ、DOCKバージョン4.0に実装され、販売業者によって提供される表題「Overview of the DOCK program suite」の文書でさらに記載され、その内容を参照により本明細書中に援用される。Kuntzアルゴリズムによると、関心対象の領域の形状は、異なる半径を有する一連の重なり合う球として定義される。例えばケンブリッジ大学(University Chemical Laboratory, Lensfield Road, Cambridge CB2 1EW, U.K.)によって管理されているケンブリッジ構造データベースシステム、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(ラトガース大学、米国ニュージャージー州)によって管理されているタンパク質データバンク、LeadQuest(Tripos Associates, Inc.、ミズーリ州セントルイス)、Available Chemicals Directory(Molecular Design Ltd.,カリフォルニア州サンリアンドロ)、及びNCIデータベース(国立がん研究所、米国)などの結晶学データの1つ又はそれ以上の現存のデータベースを次いでこのように定義された形状を近似する分子について検索する。
【0242】
幾何的パラメータに基づいてこのようにして同定された分子を、次いで、化学的相補性、例えば水素結合、イオン相互作用ファンデルワールス相互作用に関連する基準を満たすように改変することができる。異なるスコアリング機能を用いて、データベースから最良の分子をランク付けし選択することができる(例えば、Bohm and Stahl, 1999を参照)。Tripos Associates, Inc.(ミズーリ州セントルイス)によって販売されているソフトウェアパッケージFlexXは、この直接ドッキングアプローチで使用できるもう1つのプログラムである(Rarey et al., 1996)。
【0243】
第2の好ましいアプローチは、各化学基(「プローブ」)と部位内及び周囲のサンプル位置での活性部位との相互作用の評価を伴い、その結果、エネルギー値のアレイが得られ、それから選択されたエネルギーレベルでの三次元カウンダー表面を生成させることができる。リガンド設計に対する化学プローブアプローチは、例えば、Goodford(1985)によって記載されいくつかの商業的ソフトウェアパッケージ、例えばGRID(Molecular Discovery Ltd., West Way House, Elms Parade, Oxford OX2 9LL, U.K.の製品)に実装されている。このアプローチにしたがって、異なる化学プローブ、例えば水、メチル基、アミン窒素、カルボキシル酸素、及びヒドロキシルで活性部位をプローブすることによって、部位補体分子にとっての化学的必須条件を最初に特定する。活性部位と各プローブとの間の相互作用について好ましい部位をこのように決定し、結果として得られたそのような部位の三次元パターンから、推定補体分子を生成させることができる。これは、三次元データベースを検索して所望のファルマコフォアパターンを組み入れる分子を特定することができるプログラムによるか、又は入力として好ましい部位及びプローブを用いて新しい設計を実施するプログラムによるかのいずれかで実施することができる。
【0244】
所望のファルマコフォアを有する分子を特定するために三次元データベースを検索するのに適したプログラムとしては:MACCS 3D and ISIS/3D(Molecular Design Ltd.,カリフォルニア州サンリアンドロ)、ChemDBS 3D(Chemical Design Ltd., Oxford, U.K.)、及びSybyl/3DB Unity(Tripos Associates, Inc.、ミズーリ州セントルイス)が挙げられる。
【0245】
化学構造のデータベースは、ケンブリッジ結晶学データセンター(Cambridge, U.K.)、Molecular Design, Ltd.,(カリフォルニア州サンリアンドロ)、Tripos Associates, Inc. (ミズーリ州セントルイス)、及びChemical Abstracts Service (Columbus, OH)をはじめとする多くのソースから入手可能である。
【0246】
デノボデザインプログラムとしては、Ludi(Biosym Technologies Inc.,カリフォルニア州サンディエゴ)、Leapfrog(Tripos Associates, Inc.)、Aladdin(Daylight Chemical Information Systems,カリフォルニア州アーバイン)、及びLigBuilder(北京大学、中国)が挙げられる。
【0247】
模倣物、例えばペプチド模倣物及び有機模倣物を、例えば現行のコンピュータモデル化ソフトウェア(コンピュータ支援の薬物設計又はCADDを使用する)(Walters, 1993; Munson, 1995)を用いてペプチド結合部位をフィットさせるために設計することができる。また、そのような技術を用いて調製した模倣物も本開示の範囲内に含まれる。一例では、SOCS-3のペプチド又は領域を模倣する。
【0248】
模倣物は、いくつかのペプチド構造から仮想のペプチドモデルを誘導できるソフトウェアを用いて生成することができる。これは、SLATEアルゴリズム(Perkin et al.(1995)、Mills et al. (2001)、De Esch et al.(2001)、Mills et al.(1997))からのソフトウェアを用いて実施できる。
【0249】
ペプチドアナログ、誘導体及び模倣物を設計する他のアプローチも当該技術分野で周知であり、例えば、Farmer(1980)、Ball and Alewood(1990)、Morgan and Gainor(1989)、Freidinger(1989)、Sawyer(1995)、Smith et al.(1995)、Smith et al. (1994)及びHirschman et al.(1993)を参照。
【0250】
必要ならば、有望な薬物(アゴニスト又はアンタゴニスト)を合成することができるか、又は商業的供給業者などの好適なソースから入手することができる。それを次いで任意の標準的結合アッセイに配置してC6orf106タンパク質に結合する能力に対するその効果を試験する、及び/又は標準的アッセイに配置して、C6orf106タンパク質の生物学的活性を調節する能力もしくはウイルス感染を調節する能力を判定することができる。
【0251】
本明細書中で記載する薬物スクリーニングアッセイのすべてについて、薬物の構造に対するさらなる精製が概して必要であり、特定の薬物スクリーニングアッセイによって提供されるステップのいずれか及び/又はすべての連続的反復によって行うことができる。
【0252】
投与
本発明の方法は、C6orf106タンパク質活性を改変する化合物又は組成物を対象に対して適切な経路により、単独又は例えば免疫応答を刺激する抗原などの別の化合物と組み合わせて投与することを含む。
【0253】
限定されるものではないが、経口、食物、局所、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、血管内又は皮下注射)、及び吸入(例えば、気管支内、鼻腔内又は経口吸入、点鼻剤)投与経路をはじめとする様々な投与経路が可能である。
【0254】
一つの実施形態において、化合物又は組成物を粘膜部位に投与する。粘膜部位の例としては、気道、例えば鼻部(例えば、鼻)、気管、気管支及び肺、経口(例えば、口及び歯肉)及び口腔咽頭空洞を含む頬又は経口組織、扁桃腺を含む喉、眼の結膜、胃腸管(例えば、食道、胃、十二指腸、小腸及び大腸、結腸及び直腸)、生殖器官/組織(膀胱、尿管、尿道及び関連組織、陰茎、外陰/膣及び頸部-膣組織、ならびに子宮及び卵管を含むがこれらに限定されない)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0255】
投与される組成物の処方は、選択された投与経路に応じてさまざまである(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)。
【0256】
化合物を含む組成物は生理学的に許容される担体を含み得る。溶液又はエマルジョンに関して、好適な担体としては、水性又はアルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液、例えば食塩水及び緩衝媒体が挙げられる。非経口担体としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液又は固定油が挙げられる。静脈内担体は、様々な添加剤、防腐剤、又は流体、栄養素又は電解質補充剤などを含む。吸入のために、可溶性組成物を投与に適したディスペンサーにロードすることができる(例えば、アトマイザー、ネブライザー又は加圧エアロゾルディスペンサー)。
【実施例0257】
実施例1 物質及び方法
細胞及びウイルス:HeLa細胞(ATCC CCL-2)及びVero細胞(ATCC CRL-81)を成長培地(10%v/vウシ胎仔血清[FBS]、10mMのHEPES、2mMのL-グルタミン及び100U/mlのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシン[P/S; Life Technologies]を追加したイーグル変法イーグル培地[EMEM])中に維持した。A549細胞(ATCC CCL-185)を、前記のようなFBS、L-グルタミン及びP/Sを追加したダルベッコの変法イーグル培地/栄養素混合物F-12(DMEM-F12)中で維持した。全細胞を加湿インキュベータ(5%CO2)中で37℃にて保持した。使用したウイルス株は以下の通りであった:ヘンドラウイルス(HeV)(ヘンドラウイルス/Australia/ウマ/1994/ヘンドラ);A型インフルエンザウイルス(A/ニワトリ/Vietnam/008/2004 H5N1);おたふくかぜウイルス;呼吸器合胞体ウイルス(RSV);水疱性口内炎ウイルス(VSV/Atlanta/Bull/1962);西ナイルウイルス(WNV NY99);(WNV/New York/Crow/1999)。
【0258】
TCID50分析:50%組織培養感染用量(TCID50)分析のために、組織培養上清の10倍希釈を培地中で作製し、96ウェル組織培養中でVero細胞を添加した(5×104細胞/ウェル)。プレートを3日間(HeV、VSV)又は6日間(WNV、H5N1、MuV)、37℃及び5%CO2にてインキュベートし、そしてcytopathic 効果について採点した。感染価をReed and Muench(1938)の方法により算出した。
【0259】
C6orf106欠失変異体生成:特定の欠失を有する(
図6参照)を、C6orf106特異的プライマー(表2)を用いてQ5高忠実度DNAポリメラーゼ(New England Biolabs;NEB)で生成させた。クリーンアップ及び制限消化(SacI及びXhoI;NEB)後、生成物をpCAGG哺乳類発現ベクターにライゲートし、そして化学的にコンプテントな大腸菌(Max efficiency DH5コンピテント細胞;Life Technologies)に形質転換した。プラスミドを増幅し、QIAGEN EndoFree Plasmid Maxiキットを製造業者によって指定されるように用いて増幅し抽出した。
【0260】
【0261】
トランスフェクション:HeLa細胞(7×104)を、50nMのsiRNAプール(GE Life Sciences;標的配列D-016330-02-ACACACAGCCGCAUCGUAA、D-016330-03-GAGUCAAUACCUCCGGAUA、D-016330-04-GGGUGGACUUUUAGGAGUA、D-016330-17-CAGCAAUUGGCGCCUAUUAを含むsiGENOMEヒトC6orf106SMARTプールM-016330-01-0050)で、Opti-MEM(Life Technologies)中で0.5μLのDharmafect-1(GE Life Sciences)を使用して一晩逆トランスフェクトし、その後、培地を除去し、トランスフェクション培地(成長培地-抗生物質)と置換し、そして細胞をさらに24時間インキュベートした。DNAトランスフェクションのために、300ngのDNAをOpti-MEM(Life Technologies)中1μLのLipofectアミン2000とともにインキュベートし、そして使用して、HeLa細胞(1.4×105/ウェル)を逆転写した。培地をトランスフェクション後約6時間(h.p.t.)で置換し、そしてさらに18時間インキュベートした。細胞をトランスフェクトした高分子量ポリ(I:C)(Invivogen)(5~10μg/mLと1.5μLのLipofectamine2000)で6時間、トランスフェクション培地中で前記のように刺激した。
【0262】
RNA精製、逆転写及び定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR):細胞を500μLのTrizol(Life Technologies)又はTrisure(Bioline)中で溶解させ、そしてRNAを製造業者のプロトコルにしたがって抽出した。DNAse処理(RQ1 DNase, Promega)後に、500ngのRNAをSuperscript III RT(Life Technologies)又はSensifast RT(Bioline)第1鎖cDNA合成プロトコルを用いてオリゴ-d(T)及びランダムヘキサマーでDNAに逆転写した。ステップOne Plus PCRサイクラー(Applied Biosystems)でSybr green(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用してqRT-PCRを実施した。遺伝子検出のためのPCRサイクリングは95℃で10分間、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間を45サイクルであった。融解曲線分析を実施して、プライマー二量体アーチファクトを除去し、アッセイの特異性を検証した。サイトカイン発現及びウイルスRNA転写データは、ΔΔCT法を使用して分析し、遺伝子検出のためにグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対して正規化した。qRT-PCR分析で使用したプライマーを表3に示す。
【0263】
【0264】
二重-ルシフェラーゼアッセイ:HeLa細胞を、100ngのISRE-ルシフェラーゼ又はNF-κB-ルシフェラーゼ(ホタル)のいずれか及び50ngのウミシイタケルシフェラーゼ構築物とあわせて、100ngのeGFP/C6-フラグ過剰発現プラスミドで逆トランスフェクトした。20h.p.tで、細胞を上述のようにポリ(I:C)で6時間刺激し、その後、Passive溶解緩衝液(PLB;Promega)中で溶解させた。可溶化物を次いで、二重ルシフェラーゼキット(Promega)を製造業者の推奨どおりに使用して連続ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性について分析した。
【0265】
免疫沈降細胞及び分画:免疫沈降について、25μgの抗体を、製造業者(Life Technologies)によって指定されているとおりにPierce直接免疫沈降キットを使用して50μgのアガロースビーズにカップリングさせた。細胞を提供されたNP-40溶解緩衝液中に溶解させ、非特異的アイソタイプアガロース対照で4℃にて1時間前もってはっきりさせ(pre-clear)、次いで約1.5μgアガロース結合抗体とともに4℃にて一晩インキュベートした。樹脂を複数回洗浄し、次いで非還元サンプル緩衝液(2%w/vSDSを含む)を用いて100℃で10分間溶出を実施した。細胞質フラクションと核フラクションを、Pierce NE-PER細胞分画キット(Life Technologies)を製造業者によって指定されている通りに使用して細胞から調製し、ウェスタンブロット分析の前にBCAアッセイ(Life Technologies)によって全タンパク質を定量した。
【0266】
ウェスタンブロッティング:細胞を、プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤カクテル(Astral Scientific)を追加したSDS溶解緩衝液(50mMのTris-HCl pH8.0、2mMのEDTA pH8.0、150mMのNaCl、0.5%w/vのSDS及び10%のグリセロール)又はLDSサンプル緩衝液(Life Technologies)中に溶解させた。タンパク質可溶化物をLDSサンプル緩衝液(Life Technologies)中、4~12%勾配NuPAGEポリアクリルアミドゲル上、120Vで分離し、次いでTransBlot システム(Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜に移した。3%脱脂粉乳/TBS(+0.05%Tween-20)中デブロッキングした後、膜を一次抗体とともにブロッキング溶液中で4℃にて一晩インキュベートした。HRP結合二次抗体をブロッキング溶液中で1:5000に希釈し、ブロットしてRTで3時間インキュベートした。膜をTBS-Tweenで洗浄しリンスし、ECL展開溶液(Bio-Rad)とともにインキュベートし、そしてChemi-Doc(Bio-Rad)で検出した。
【0267】
免疫蛍光検査:細胞をPBS中4%w/vのパラホルムアルデヒド中でRTにて20分間固定し、続いて0.1%v/vのTriton X-100で透過化し、0.2Mのグリシンで10分間、それぞれRTにてクエンチした。固定した細胞をPBS中1%ウシ血清アルブミン(BSA;フラクションV、Sigma-Aldrich)中で30分間ブロックし、次いでブロッキング溶液中一次抗体とともに1時間RTにてインキュベートし、0.2%BSA/PBS中で3回洗浄し、1%BSA/PBS中、Alexa Fluor 488又はAlexa Fluor 568(Life Technologies)のいずれかにコンジュゲートした二次抗体とともにRTにて1時間インキュベートした。細胞をPBS中で洗浄し、次いで核色素DAPI(0.5μg/mL)で対比染色し、Leica SP5共焦点顕微鏡で観察するか、又はCellInsightで分析した。
【0268】
IFN-βELISA:トランスフェクトし、次いでポリ(I:C)で刺激したHeLa細胞からの細胞培養上清を集め、Elisaキット.comによって供給されるサンドイッチELISAキットを製造業者のプロトコルに従って使用して、IFN-β分泌について分析した。IFN-β濃度は、多項式回帰法を用いて標準と比較することによって算出した。
【0269】
実施例2 C6orf106はウイルス感染に必要である
C6orf106を、ヘンドラウイルス(HeV)感染に必要なタンパク質(宿主タンパク質)を調査するsiRNAスクリーンで特定した。C6orf106のノックダウンの結果、HeV及びNiV感染性ウイルス産生が有意に減少した。C6orf106についてのスクリーン結果を立証するために、HeLa細胞を、C6orf106(50nM)を標的とするsiRNAで48時間トランスフェクトし、次いでマイナス鎖RNAウイルスで24時間感染させ、その後、ウイルス産生をVero細胞中TCID50で分析した。SMARTプールsiC6orf106siRNAでトランスフェクトしたHeLa細胞から集めた細胞可溶化物は、siNEGでトランスフェクトした細胞、どの遺伝子も標的としない負の対照SMARTプールsiRNAと比較したmRNA及びタンパク質レベルの両方で、C6orf106発現レベルにおいて90%の減少を示した。
図1A及びBで示すように、siC6ノックダウンはHeLa細胞におけるウイルス産生を、負の非ターゲティング対照(siNT1)と比較して約1.5log(約95%)で減少させた。これらの実験をパラミクソウイルス(おたふくかぜウイルス;MuV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV、ラブドウイルス科)、オルトミクソウイルス(A型インフルエンザH5N1株)又は正のセンスRNAウイルス(西ナイルウイルスNY99株;WNVNY99)での細胞の感染で繰り返した。MuV、H5N1及びWNVNY99感染はC6orf106ノックダウンによっても影響を受けた。HeV(パラミクソウイルス)、水疱性口内炎ウイルス(VSV、ラブドウイルス科)及びA型インフルエンザ(H5N1)ウイルス(オルトミクソウイルス科)ウイルス価における有意な減少が、感染の24時間後に集めた上清中で観察された(
図A及びB)。対照的に、siC6orf106はWNVNY99(Flaviviridae)価に対して重大な影響を及ぼさず、このことは、C6orf106がマイナス鎖RNAウイルスによる感染を促進することを示唆した。
【0270】
細胞に対するC6orf106ノックダウンの影響を評価するために、健常なHeLa細胞をSMARTプールsiC6orf106又はsiNEG対照でトランスフェクトし、細胞数をトランスフェクション後72時間で評価した。細胞数における有意差はトランスフェクション72時間後のsiC6orf106サイレンシングで観察されなかった(
図1C)。アラマーブルーアッセイは、siNEGと比較してsiC6orf106 SMARTプールで処理した細胞における代謝活性で有意な変化を示さなかった(
図1D)。細胞死の正の対照として、アポトーシス誘導と関連する遺伝子である、polo様キナーゼ1(PLK1)を標的とするSMARTプールsiRNAで細胞をトランスフェクトした(Liu et al., 2003)。細胞数及び細胞の生存の両方の減少が、siPLK1でトランスフェクトされた細胞で観察された(
図1D及びE)。
【0271】
実施例3 C6orf106は2つの推定上の機能ドメインを有する脊椎動物種の間で高度に保存される
C6orf106アミノ酸配列は、NCBI(受入番号Q9H6K1.2)から供給され、ClustalWソフトウェアを用いてEnsemblデータベース(http://www.ensembl.org/index.html)から抽出されたホモログと整列させた。
図2に示すように、C6orf106タンパク質配列は脊椎動物種にわたって高度に保存され、ヒト由来の残基の50%はホヤ(C. intestinalis)配列と同一である。最高の程度の保存は2つの推定上の機能ドメイン;ユビキチン結合様(UBA様)ドメイン、Nbr-1様又はFWドメインで明らかであり、これは4つのトリプトファン残基によって特徴づけられる(
図2を参照)。ユビキチン受容体Nbr-1におけるこの後者のドメインは、微小管関連タンパク質MAP1Bオートファジー経路と微小管ネットワークとの間の潜在的な関連性との相互作用を促進することが示されている(Marchbanks et al., 2012)。ClustalWデータベースの検索は、C6orf106がUBA様ドメイン及びFWドメインを特徴づける今までに同定された唯一のヒトタンパク質であることを示唆する。
【0272】
実施例4 C6orf106ノックダウンはポリ(I:C)に応答してサイトカイン転写を増強する
サイトカイン転写に対するC6orf106サイレンシングの影響を次に評価した。合成二本鎖RNAアナログポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))を使用してウイルスRNA複製ならびにインターフェロン及び炎症性サイトカイン転写の誘導を模倣した。HeLa細胞を上述のようにC6orf106 siRNAで48時間処理し、次いでトランスフェクトされたポリ(I:C)で6時間刺激し、その後、RNAを抽出し、インターフェロンα及びβ(IFN-α/β)の転写ならびに炎症性サイトカインインターロイキン-6(IL-6)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)について分析した。
【0273】
図3Aは、C6orf106特異的抗体を使用して、RNAレベルでのC6orf106のノックダウンの成功(qRT-PCRによって評価して約90%の減少)及びほぼ検出不可能なタンパク質を示す。ポリ(I:C)で刺激した非ターゲティング対照(siNT1/NT2)において、IFN-α、IFN-β、IL-6及びTNF-αの転写はすべて、非刺激細胞と比べて増加した。細胞内ポリ(I:C)で処理したHeLa細胞はIFN-α/β、インターロイキン-6(IL-6)及び(TNF-α)の強固な上方調節を示した(
図5A及びB)。IFNα/β及びTNF-αの転写誘導は、C6orf106ノックダウン細胞において有意に増強されたが、IL-6転写は再現性よく変化しなかった(
図3B)。このことは、C6orf106がポリ(I:C)誘導抗ウイルスシグナル伝達の負の制御因子として作用することを示唆する。このことは、負のフィードバックループによって予想されるように、内因性C6orf106RNAレベルがポリ(I:C)刺激後の時間とともに増加するという観察結果によりさらに裏付けられる(
図9A)。
【0274】
実施例5 C6orf106過剰発現はポリ(I:C)に応答してインターフェロンα/β転写及び分泌を阻害する。
ポリ(I:C)誘導IFNシグナル伝達の負の制御因子としてのC6orf106の潜在的な役割を確認するために、HeLa細胞をC6orf106発現ベクター(pCAGGs-C6-フラグ;配列番号40)、ならびに非特異的GFP過剰発現対照でトランスフェクトした。トランスフェクションの18時間後に、細胞をポリ(I:C)で6時間刺激し、そして抽出されたRNAを前述のようにインターフェロン及び炎症性サイトカインについて分析した。GFP又はベクター単独(pCAGG)はポリ(I:C)に応答してサイトカイン転写を損なわなかった(
図4Aに示すとおり)が、C6orf106過剰発現の結果、IFN-α、IFN-β及びTNF-α転写が有意に減少した。IL-6転写物の誘導は、C6orf106による影響を受けなかった。さらに、組織培養上清をELISAによりIFN-βの分泌について評価すると、C6orf106を過剰発現する細胞においてIFN-β濃度の有意な減少が観察された。IFN-βmRNA及びタンパク質レベルの相対的減少が類似しているとすると、これは分泌経路におけるブロックとは対照的に、減少したmRNA/タンパク質発現に対するC6による減少に起因する。興味深いことに、下流IFN及び/又はTNF-αシグナル伝達は、それぞれIFN-α又はTNF-α処理に応答して未変化のISG15又はIκBαによって示されるように、C6orf106の発現によって重大な影響を受けなかった(
図9B)。
【0275】
C6orf106発現の個々の転写因子の活性に対する影響を、IRF3及び/又はNF-κB結合部位を含むルシフェラーゼベクターを用いて評価した。細胞内ポリ(I:C)に応答して、C6orf106過剰発現の結果、GFPでトランスフェクトされた細胞と比較してISRE-ルシフェラーゼ活性が約75%減少した(
図5C)。NF-κB-ルシフェラーゼの中程度の減少も観察された。
【0276】
実施例6 C6orf106のUBA様ドメインの欠失はその転写阻害効果を増強する
C6orf106の推定上の機能ドメインのどれがサイトカイン転写に対する影響の原因であるかを決定するために。
図6Aに示すようなUBA様ドメイン(ΔUBA)配列番号44、FW/Nbr-1様ドメイン(ΔFW)配列番号49及び無秩序領域(Δdis)配列番号42を欠失させることによって発現プラスミドを生成した。
図6Bに示すように、UBA様又はFWドメインのいずれかの欠失の結果、完全長C6orf106-フラグと比較した場合にポリ(I:C)に応答して有意に高いIFNα/β及びTNF-α mRNAのレベルが得られた。対照的に、無秩序領域の除去は、サイトカイン転写を回復せず、IFNα/βの場合、実際にこれらのレベルをさらに減少させた。これは、C6orf106-フラグ及び他の欠失変異体と比較して、Δdisタンパク質自体の全体的なレベルが低いにも関わらず観察された(
図11)。興味深いことに、Δdisタンパク質の細胞内局在は、完全長C6orf106と同様に。完全長C6orf106-フラグと最も似ており(
図11)、ポリ(I:C)に応答してIRF3核移行を損なわなかった。比較すると、ΔUBA及びΔFWタンパク質はどちらも変更された細胞内分布を示し、ΔUBAは核中に保持されるのに対して、ΔFWはより細胞質性であった。
【0277】
実施例7 C6orf106はポリ(I:C)に応答して転写因子の核移行を損なわない
IFN-α/β転写は、主に、インターフェロン応答因子3(IRF3)ならびに核因子κ-B(NFκB)によって制御され、どちらもTLR及びRLRリガンド、例えばポリ(I:C)に応答して核に転位する。C6orf106がサイトカイン転写を阻害する機構を調査するために、C6orf106を前述のようにポリ(I:C)で刺激したHeLa細胞において発現し、その後、細胞を固定し、C6orf106-フラグ、IRF3又はp65(NFκB)について標識した。IRF3核移行もp65核移行も、ポリ(I:C)で刺激されたC6orf106発現細胞において阻害されなかった(
図7A、7B及び
図8A)。しかしながら、C6orf106-フラグの核染色はポリ(I:C)刺激により増加することが観察され、このことは、C6orf106が上流シグナル伝達事象ではなく、核レベルでの転写に対して影響を及ぼすことを示唆し得た。GFPと比較して、C6orf106を発現する未刺激細胞におけるIRF3及びp65核染色において中程度ではあるが、有意な増加もあった。
【0278】
ポリ(I:C)などのリガンドによるRLR/TLR活性化後に、シグナル伝達エフェクタのカスケードの結果、IRF3リン酸化、二量体化及び核輸送となる。ウイルスRNA様刺激の認識によりIRF3活性化をブロックするか否かを評価するために、GFP及びC6orf106発現細胞の核及び細胞質フラクションを単離し、リン酸化IRF3についてプローブした(Ser396)。ポリ(I:C)刺激は、GFP発現細胞及びC6orf106発現細胞の両方でリン酸化IRF3のレベルを増加させた(
図8B)。さらに、p65、ホスホ-IRF3及び全IRF3の核内蓄積は、GFP-及びC6orf106発現細胞において同程度まで観察された。C6orf106は、転写因子活性化及び核移行の顆粒のIRF3/p65が関与する転写を阻害する。
【0279】
実施例8 C6orf106はIRF3と結合し、この結合はポリ(I:C)に応答して増強される
C6orf106がIRF3と結合するか否かを評価するため、C6orf106-フラグを前述のようにGFP-/+ポリ(I:C)と同時発現させ、その後、固定化されたIRF3抗体との直接共免疫沈降を実施した。
図10Aに示すように、C6orf106は、IRF3免疫沈降化可溶化物において検出することができ、これは、ポリ(I:C)の存在下で約4倍増加した。さらに、C6orf106がIRF3を結合することを示すために、HEK293T細胞をIRF3単独、又はC6orf106と組み合わせたIRF3でトランスフェクトした。細胞を溶解させ、抗IRF3抗体での間接的免疫沈降に供した。IPサンプル及び入力対照をウェスタンブロッティングのために抗フラグ抗体でプローブした。IgGアイソタイプを免疫沈降実験のための負の対照として使用した。結果は、
図10Bに示すように、C6orf106がIRF3に結合することを実証する。
【0280】
当業者であれば、広範に記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるような多くの変形及び/又は変更が本発明に対してなされ得ることが理解されるであろう。したがって、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0281】
本出願は、その全体のその内容を参照により本明細書中に援用される、2015年12月4日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2015905035号明細書、表題「サイトカイン産生の調節」の優先権を主張する。
【0282】
本明細書において議論及び/又は参照されるすべての刊行物は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0283】
本明細書に含まれるいかなる文書、行為、材料、装置、物品又は同種のものの論文も、単に本発明の状況を提供することを目的とするものである。これらの事項のいずれか又はすべてが、先行技術の基礎の一部をなすか、又は本出願の各クレームの優先日以前に存在していた本発明の関連技術分野での一般常識であることを認めるものではない。
【0284】
参考文献
Bird et al. (1988) Science 242:423-426.
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前記自己免疫疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、関節リウマチ、多発性関節炎、多発性硬化症、ブドウ膜炎、喘息、1型糖尿病、2型糖尿病、狼瘡又は慢性閉塞性肺疾患から選択される、請求項12に記載の方法。
対象における感染、免疫不全又はがんの治療及び/又は予防方法であって、前記対象に、C6orf106タンパク質活性を低下させる化合物を投与することを含む、前記方法。