(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028732
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】高分子フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20220208BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220208BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20220208BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C08L79/08 C
C08K5/09
C08G73/14
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180572
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2020111520の分割
【原出願日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0078286
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0146804
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0164668
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035707
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キ、ジョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、サンフン
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】イム、ドンジン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静的曲げ特性、折り畳み特性、および透明性に優れ、高温高湿下においても優れた光学的物性および機械的物性が保持される高分子フィルムを提供する。
【解決手段】高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含み、オートクレーブ処理前ヘイズ(HZ
0)が3%以下であり、下記式1aで表示されるΔHZ
24値が500%以下である。
<式1a>
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、および選択的にジカルボニル化合物を重合して形成された高分子樹脂、および酪酸を含む、高分子フィルム。
【請求項2】
前記酪酸は、下記化学式Tで表示される酪酸である、請求項1に記載の高分子フィルム。
<化T>
【請求項3】
前記酪酸は、前記高分子フィルムの総重量を基準に1ppm~1000ppmである、請求項1に記載の高分子フィルム。
【請求項4】
前記酪酸は、前記高分子フィルムの総重量を基準に1ppm~300ppmである、請求項1に記載の高分子フィルム。
【請求項5】
厚さ50μmを基準に曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、フィルムの内角が120°以上である、請求項1に記載の高分子フィルム。
【請求項6】
厚さ50μmを基準に曲率半径が2mmになるようにフォールディングする場合、破断する前までのフォールディング回数が20万回以上である、請求項1に記載の高分子フィルム。
【請求項7】
前記高分子樹脂は、下記化学式Aで表示される繰り返し単位および下記化学式Bで表示される繰り返し単位を20:80~100:0のモル比で含む、請求項1に記載の高分子フィルム:
<化A>
<化B>
前記化学式AおよびBのうち、
EおよびJは互いに独立して、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2、および-C(CF
3)
2から選択され、
eおよびjは互いに独立して1~5の整数の中から選択され、
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の4価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の4価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに接合されて縮合環を形成するか、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2の中から選択された連結基によって連結されている。
【請求項8】
透過度は80%以上であり、
黄色度は5以下であり、
モジュラスは4.0GPa以上である、請求項1に記載の高分子フィルム。
【請求項9】
高分子フィルムおよび機能層を含む、
前記高分子フィルムがジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、および選択的にジカルボニル化合物を重合して形成された高分子樹脂、および酪酸を含む、ディスプレイ用前面板。
【請求項10】
表示部と、
前記表示部上に配置された前面板と、を含み、
前記前面板は高分子フィルムを含み、
前記高分子フィルムがジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、および選択的にジカルボニル化合物を重合して形成された高分子樹脂、および酪酸を含む、ディスプレイ装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静的曲げ特性、折り畳み(フォールディング)特性、および透明性に優れ、高温高湿下においても優れた光学的物性および機械的物性が保持される高分子フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アミド-イミド)(poly(amide-imide)、PAI)等のようなポリイミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリイミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリイミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリイミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリイミドは、厨房調理器具へのコーティングのためにも使用され、耐熱性や耐薬品性の特徴があり、ガス分離に用いるメンブレンとしても使用され、天然ガス油井における二酸化炭素、硫化水素、および不純物などの汚染物のろ過装置にも用いられる。
【0004】
最近では、ポリイミドをフィルム化することによって、より安価で、かつ、光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリイミド系フィルムが開発されている。このようなポリイミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED;organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD;liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現の際に反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリイミド系フィルムは、高温、高湿の環境で物性が低下する脆弱な特性を示しバリア層を形成する問題がある。または、このような問題を解決するために、耐湿性に強いクレイなどの添加剤を導入したりもするが、この場合は光学的物性が低下したり、相溶性が劣る問題が発生し得る。
【0006】
また、このようなポリイミド系フィルムは、長時間折り曲げた状態が続いたときに復元性が低下するという問題があった。このような復元性が低下すると、フォルダブル(Foldable)ディスプレイなどに適用した際に、画面のひずみの問題が発生し得る。
【0007】
最近、フォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどの開発が盛んに行われることにつれ、長時間折り曲げた状態が続いた後平坦にした時、できる限り元の状態に復元される特性と、繰り返されるフォールディングに耐えられる特性に優れたフィルムの開発に関する研究、および高温、高湿の環境でも優れた物性を保持しながらも機械的特性および光学的特性に優れたフィルム開発のための研究が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、静的曲げ特性、折り畳み特性、および透明性に優れ、高温高湿下においても優れた光学的物性および機械的物性が保持される高分子フィルムを提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実現例による高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含み、オートクレーブ処理前のヘイズ(HZ0)が3%以下であり、下記式1aで表示されるΔHZ24値が500%以下である。
【0010】
<式1a>
前記式1aにおいて、
HZ
0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前のヘイズを意味し、
HZ
24は、前記フィルムをオートクレーブで処理した後のヘイズであり、
前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。
【0011】
本発明の他の実現例による高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含み、オートクレーブ処理前のモジュラス(MO0)が5GPa以上であり、下記式1bで表示されるΔTS24値が15%以下である。
【0012】
<式1b>
前記式1bにおいて、
TS
0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前の引張強度を意味し、
TS
24は、前記フィルムをオートクレーブで処理した後の引張強度であり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。
【0013】
本発明のまた他の実現例による高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂と、酪酸(butanoic acid)とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実現例による高分子フィルムは、優れた静的曲げ特性、光学的物性、および機械的物性を示すのみならず、高温、高湿の過酷な条件下においても優れた光学的物性および機械的物性を保持することができる。
【0015】
また、本発明の実現例による高分子フィルムは、長時間折り曲げた状態が続いた後、フィルムに加わる力を解放して平坦に復帰させた時の復元性が優れているので、フォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどに適用した際に均一な画面状態を実現することができる。
【0016】
さらには、本発明の実現例による高分子フィルムは、優れた折り畳み特性を実現し得るので、ディスプレイ装置用カバーウインドウ、およびフォルダブルディスプレイ装置、ローラブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実現例に係るディスプレイ装置の断面図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例に係る高分子フィルムの製造方法の概略的な手順を示す図である。
【
図3】
図3は、一実現例に係る高分子フィルムの工程設備を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は、様々な異なる形態で実現することができ、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0019】
本明細書で、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」とは、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体において、同一参照符号は同一構成要素のことを指す。
【0020】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
本明細書において、単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈される。
【0022】
また、本明細書に記載された構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0023】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素として区別するためにのみ用いられる。
【0024】
また、本明細書において「置換(された)」ということは、特別な記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記例示の置換基は互いに結合されて環を形成し得る。
【0025】
<高分子フィルム>
実現例は、静的曲げ特性、折り畳み特性、および光学的物性、機械的物性に優れ、高温高湿下においても優れた光学的物性および機械的物性が保持される高分子フィルムを提供する。
【0026】
一実現例による高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含む。
【0027】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前のヘイズ(HZ0)が3%以下である。
【0028】
具体的に、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前のヘイズ(HZ0)は2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.8%以下、または0.6%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記高分子フィルムの下記式1aで表示されるΔHZ24値が500%以下である。
【0030】
<式1a>
前記式1aにおいて、
HZ
0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前のヘイズを意味し、
HZ
24は、前記フィルムをオートクレーブで処理した後のヘイズであり、
前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0031】
具体的に、前記高分子フィルムの前記式1aで表示されるΔHZ24値は400%以下、300%以下、250%以下、または200%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前のヘイズ(HZ0)と前記式1aで表示されるΔHZ24値とが前記範囲であると、高温高湿の過酷な条件を経た後でもフィルムの耐久性に優れ、特に光学的物性の変形の少ないフィルムを実現することができ、このような特性により、ディスプレイ用前面板およびディスプレイ装置に適用するのに容易である。
【0033】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の黄色度(YI0)が3以下である。
【0034】
具体的に、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の黄色度(YI0)は2.8以下、または2.7以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の面内位相差(Ro0)が180nm以下である。
【0036】
具体的に、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の面内位相差(Ro0)は、170nm以下、160nm以下、150nm以下、10nm~160nm、20nm~160nm、50nm~160nm、または80nm~150nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記高分子フィルムの下記式2aで表示されるΔYI24値が30%以下である。
【0038】
<式2a>
前記式2aにおいて、
YI
0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前の黄色度を意味し、
YI
24は、前記フィルムをオートクレーブで処理した後の黄色度であり、
前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0039】
具体的に、前記高分子フィルムの前記式2aで表示されるΔYI24値は25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
前記高分子フィルムの下記式3aで表示されるΔRo24値が8%以下である。
【0041】
<式3a>
前記式3aにおいて、
Ro
0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前の面内位相差を意味し、
Ro
24は、前記フィルムをオートクレーブで処理した後の面内位相差であり、
前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0042】
具体的に、前記高分子フィルムの前記式3aで表示されるΔRo24値は7%以下、6%以下、5%以下、または4.8%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後のヘイズ(HZ24)が3%以下である。前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0044】
具体的に、前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後のヘイズ(HZ24)は2.5%以下、2.0%以下、1.8%以下、または1.6%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後の黄色度(YI24)が3以下である。前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0046】
具体的に、前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後の黄色度(YI24)は2.8以下、または2.7以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0047】
特に、前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後の黄色度(YI24)が前記範囲を超えると、高温多湿な環境で透明性が低下し、前記フィルムを適用した前面板やディスプレイ装置を使用するためには不適である。さらに、画面がぼやけて暗く見えるようになり、これを補完するために、より明るい画面状態を保持するためには、より多くの電力を消費するなどの問題がある。
【0048】
前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後の面内位相差(Ro24)が180nm以下である。前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0049】
具体的に、前記高分子フィルムをオートクレーブで24時間処理した後の面内位相差(Ro24)は、160nm以下、150nm以下、145nm以下、20nm~160nm、40nm~150nm、または60nm~145nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0050】
特に、実現例による高分子フィルムは、低いΔHZ24値、ΔYI24値、およびΔRo24値を有するため、高温高湿の過酷な条件においても、優れた光学的物性を保持することができるのでディスプレイ装置に適用するのに容易であり、前記高分子フィルムを適用したディスプレイ装置を湿った地域や温度の高い地域で使用する際にも、依然として透明できれいな画面を実現することができる。
【0051】
さらに、前記実現例による高分子フィルムは、前述の範囲のHZ0、YI0、Ro0、HZ24、YI24、Ro24、ΔHZ24値、ΔYI24値、およびΔRo24値を有することにより、鮮明な光学的特性のみならず、優れた折り畳み特性をも実現することができるので、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置に適用するのに好適である。
【0052】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の引張強度(TS0)は20Kgf/mm2以上である。
【0053】
具体的に、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の引張強度(TS0)は、20Kgf/mm2~35Kgf/mm2である。または、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の引張強度(TS0)は21Kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の破断伸び率(EL0)が15%以上である。
【0055】
具体的に、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の破断伸び率(EL0)は15%~40%である。または、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前の破断伸び率(EL0)は、17%以上、18%以上、19%以上、または20%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前のモジュラス(MO0)は5GPa以上である。
【0057】
具体的に、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前のモジュラス(MO0)は5GPa~10GPaである。または、前記高分子フィルムのオートクレーブ処理前のモジュラス(MO0)は、5.2GPa以上、5.3GPa以上、または5.5GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記高分子フィルムの下記式1bで表示されるΔTS24値は15%以下である。
【0059】
<式1b>
前記式1bにおいて、TS
0は前記フィルムをオートクレーブで処理する前の引張強度を意味し、TS
24は前記フィルムをオートクレーブで処理した後の引張強度であり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0060】
具体的に、前記TS24は20Kgf/mm2以上である。
【0061】
また、前記高分子フィルムのΔTS24値は12%以下、10%以下または8.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記高分子フィルムの下記式2bで表示されるΔEL24値は30%以下である。
【0063】
<式2b>
前記式2bにおいて、EL
0は前記フィルムをオートクレーブで処理する前の破断伸び率を意味し、EL
24は前記フィルムをオートクレーブで処理した後の破断伸び率であり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0064】
具体的に、前記EL24は15%以上である。または、前記EL24は17%以上または20%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0065】
また、前記高分子フィルムのΔEL24値は28%以下または25%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記高分子フィルムの下記式3bで表示されるΔMO24値は15%以下である。
【0067】
<式3b>
前記式3bにおいて、MO
0は前記フィルムをオートクレーブで処理する前のモジュラスを意味し、MO
24は前記フィルムをオートクレーブで処理した後のモジュラスであり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0068】
具体的に、前記MO24は15%以上である。または、前記MO24は、5GPa以上、5.1GPa以上、5.5GPa以上または6.0GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0069】
また、前記高分子フィルムのΔMO24値は、12%以下または10%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記高分子フィルムのΔSUM24値は60%以下である。なお、前記ΔSUM24値は、前記ΔTS24、ΔEL24およびΔMO24の合計を示す値である。
【0071】
具体的に、前記高分子フィルムのΔSUM24値は50%以下、40%以下または35%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0072】
前記高分子フィルムのΔTS24、ΔEL24、ΔMO24およびΔSUM24が前述の範囲を満足することにより、高温高湿下においてもフィルムの耐久性が優れ、物性の変形がほとんどないので、前面板およびディスプレイ装置に適用することが容易である。
【0073】
前記高分子フィルムの下記式4bで表示されるΔTS72値は60%以下である。
【0074】
<式4b>
前記式4bにおいて、TS
0は前記フィルムをオートクレーブで処理する前の引張強度を意味し、TS
72は前記フィルムをオートクレーブで処理した後の引張強度であり、前記オートクレーブ処理はオートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で72時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0075】
具体的に、前記TS72は、5Kgf/mm2以上、8Kgf/mm2以上、または9Kgf/mm2以上である。
【0076】
また、前記高分子フィルムのΔTS72値は50%以下、40%以下、または30%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0077】
前記高分子フィルムの下記式5bで表示されるΔEL72値が50%以下である。
【0078】
<式5b>
前記式5bにおいて、EL
0は前記フィルムをオートクレーブで処理する前の破断伸び率を意味し、EL
72は前記フィルムをオートクレーブで処理した後の破断伸び率であり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で72時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0079】
具体的に、前記EL72は、8%以上、10%以上、または12%以上である。
【0080】
また、前記高分子フィルムのΔEL72値は、45%以下または40%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
前記高分子フィルムの下記式6bで表示されるΔMO72値が60%以下である。
【0082】
<式6b>
前記式6bにおいて、MO
0は前記フィルムをオートクレーブで処理する前のモジュラスを意味し、MO
72は前記フィルムをオートクレーブで処理した後のモジュラスであり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で72時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0083】
具体的に、前記MO72は、2GPa以上または2.5GPa以上である。
【0084】
また、前記高分子フィルムのΔMO72値は、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記高分子フィルムのΔSUM72値は160%以下である。なお、前記ΔSUM72値は、前記ΔTS72、ΔEL72およびΔMO72の合計を示す値である。
【0086】
具体的に、前記高分子フィルムのΔSUM72値は、150%以下、120%以下、100%以下、または90%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記高分子フィルムのΔTS72、ΔEL72、ΔMO72およびΔSUM72が前述の範囲を満足することにより、高温高湿下においてもフィルムの耐久性に優れ、物性の変形がほとんどないので、前面板およびディスプレイ装置に適用することが容易である。
【0088】
実現例による高分子フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmとなるようにフォールディングするとき、破断するまでのフォールディング回数が10万回以上である。
【0089】
前記フォールディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmとなるように折りたたんだり広げたりすることを1回とする。
【0090】
前記高分子フィルムが、前述の範囲のフォールディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0091】
他の実現例による高分子フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が2mmとなるようにフォールディングするとき、破断するまでのフォールディング回数が20万回以上である。
【0092】
前記フォールディング回数は、フィルムの曲率半径が2mmとなるように折りたたんだり広げたりすることを1回とする。
【0093】
実現例による高分子フィルム内の残留溶媒の含有量は、2500ppm以下、または1200ppm以下である。
【0094】
例えば、前記残留溶媒の含有量は、2200ppm以下、2000ppm以下、1800ppm以下、1500ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下、1ppm~1000ppm、1ppm~800ppm、1ppm~500ppm、5ppm~1000ppm、10ppm~1000ppm、または20ppm~1000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0095】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発されず最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量を意味する。
【0096】
前記高分子フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、高温高湿条件下においてフィルムの耐久性および光学特性が低下され得、特に、前記フィルムの後加工時に影響を与え得る。具体的に、残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの加水分解を加速させ、機械的物性または光学的物性が低下し得る。また、前記高分子フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下され得、前述の静的曲げ特性や折り畳み特性など、耐屈曲特性にも影響を与え得る。
【0097】
実現例による高分子フィルムの下記式7で表示されるIS値は5~160である。
【0098】
<式7>
前記式7において、IMは、前記フィルム内のイミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の合計モル数を100としたとき、イミド繰り返し単位のモル数を意味し、RSは、前記フィルム内の残留溶媒の含有量(ppm)を意味する。
【0099】
例えば、前記IS値は5~150、または10~150、30~150、または50~150、5~80、5~60、5~50であり得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
前記高分子フィルムのIS値が前記範囲を満足することにより、高温高湿の過酷な条件の処理後にも、光学的特性および耐久性に優れ、かつ、折り畳み特性に優れたフィルムを実現し得る。
【0101】
特に、イミド含有量(IM)が高かったり、フィルム内の残留溶媒の含有量(RS)が高かったりして前記範囲を超える場合は、フィルムの長期耐久性が急激に低下する。具体的に、イミドの含有量が高くなり過ぎてアミドの含有量が相対的に少なくなると、フィルムの吸湿性が低下することにより、高湿条件において脆弱な特性を示し得る。
【0102】
前記高分子フィルムは、下記式8で表示されるCT値が10以下である。
【0103】
<式8>
前記式8において、HZ
0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前のヘイズを意味し、HZ
24は、前記フィルムをオートクレーブで処理した後のヘイズであり、前記オートクレーブ処理は、オートクレーブに水を満たした後、120℃の温度および1.2atmの圧力で24時間処理することを意味する。前記フィルムは、前記オートクレーブに配置された後、前記水に浸漬されず、前記水によって発生される水蒸気によって処理され得る。
【0104】
また、Ro0は、前記フィルムをオートクレーブで処理する前の面内位相差を意味する。
【0105】
前記CTは、結晶性を反映した耐熱/耐湿度を表す指標であり得る。前記高分子フィルムの結晶性が高いほど、概ねΔHZ24は低くなり得る。すなわち、前記高分子フィルムの結晶性が高いほど、前記高分子フィルムの耐熱/耐湿度は高くなり得る。前記高分子フィルムの結晶性が高いほど、前記面内位相差(Ro0)は高くなり、前記高分子フィルムの光学的特性が低下し得る。
【0106】
前記高分子フィルムは、適切な組成および適切な工程により製造され、前記向上された光学的物性を有しながら、向上された耐熱/耐湿度を有し得る。例えば、前記高分子フィルムは、相対的に高いアミド含有量を有し、残留溶媒の含有量を下げ、酪酸などの添加剤を適用し、乾燥工程および熱処理工程などの適切な工程を適用する。これにより、前記高分子フィルムは、前記面内位相差を下げるとともに、前記ΔHZ24を同時に下げることができる。
【0107】
これにより、前記CTは10以下であり得る。前記CTは8以下であり得る。前記CTは6以下であり得る。前記CTは4以下であり得る。前記CTは4以下であり得る。前記CTは3以下であり得る。前記CTは2以下であり得る。
【0108】
前記高分子フィルムは、低いCTを有するため、向上された耐熱/耐湿度を有しながら、向上された光学的物性を有することができる。これにより、前記高分子フィルムは、ディスプレイ用として効果的に使用され得る。具体的に、前記高分子フィルムは、湿気および/または熱などの苛酷な外部条件にさらされ易いモバイルディスプレイ機器に効果的に適用され得る。特に、前記高分子フィルムは、フォルダブルディスプレイの前面板に効果的に適用され得る。
【0109】
実現例による高分子フィルムは、前記高分子樹脂に加えて、酪酸をさらに含み得る。
【0110】
実現例による高分子フィルムは、高分子樹脂および酪酸を含む。前記高分子樹脂は、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含む。前記高分子フィルムは高分子樹脂を含み、前記高分子樹脂は複数のイミド繰り返し単位を含む。
前記酪酸は、下記化学式Tで表示される。
【0111】
【0112】
具体的に、前記酪酸は、前記化学式Tで表示される化合物を意味しており、前記酪酸の一部が置換された形態、前記酪酸の誘導体、塩、無水物などを意味するものではない。
【0113】
前記高分子フィルムは酪酸を含み、前記酪酸は、フィルム内に前記高分子フィルムの総重量を基準に1ppm~1200ppmで含まれる。
【0114】
具体的に、前記酪酸は、フィルム内に1ppm~1000ppm、5ppm~1000ppm、10ppm~1000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、500ppm~1000ppm、1ppm~800ppm、1ppm~700ppm、1ppm~500ppm、1ppm~300ppm、10ppm~300ppm、30ppm~300ppm、または50ppm~270ppmの分で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0115】
前記含有量は、フィルム製造の際に揮発されず、最終的に製造されたフィルムに残っている酪酸の含有量を意味する。
【0116】
前記高分子フィルム内の酪酸の含有量が前述の範囲を超えると、オートクレーブ処理後、フィルム上に一部の物質が溶出して、フィルムのヘイズが急激に上昇する問題が発生し得る。
【0117】
前記酪酸は、フィルムの製造過程において、pH調整剤として添加された酪酸が残存するものでもあり、他の反応の間で発生する副産物でもあり得るが、これに限定されるものではない。つまり、最終フィルムに残っている酪酸は、様々な過程により生成されたものであり得る。
【0118】
前記高分子フィルム内に残存する酪酸が存在することにより、長時間折り曲げた状態が続いた後、フィルムに加わる力を解放して平坦に復帰させた時の復元性に優れ、折り畳み特性に優れるので、フォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、ローラブルディスプレイなどに適用するのに容易である。
【0119】
前記高分子フィルム内に残存する酪酸の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの静的曲げ特性や折り畳み特性が低下され得、透過度、黄色度のような光学的物性もまた低下され得る。
【0120】
一実現例による高分子フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、フィルムの内角が120°以上である。
【0121】
具体的に、前記高分子フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、フィルムの内角が125°以上、130°以上、または135°以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0122】
従来のフィルムは、外部の押圧に脆弱で、特に長時間折り曲げた状態が続いた後には変形が大きく発生し、ディスプレイ装置に適用する際、均一な画面の状態を示すことができず、画面がひずむなどの問題が発生した。具体的に、従来のフィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、フィルムの内角が120°未満、具体的には115°以下の値を示し、静的曲げ耐性に劣る問題があった。
【0123】
一方、実現例による高分子フィルムは、前記実験によるフィルムの内角が120°以上を実現したことにより、従来のフィルムよりも優れた復元力を確保し、このような特性を有するフィルムを後工程に適用する際(例えば、フォルダブルディスプレイやフレキシブルディスプレイなどに適用する際)、画面のひずみなどの問題を解決した。
【0124】
他の実現例において、前記高分子フィルムは、MD方向(Machine Direction)の延伸比が1.01~1.15倍である。
【0125】
実現例による高分子フィルムのMD方向の延伸比が前記範囲を満たすことにより、長時間折り曲げた状態が続いた後、フィルムに加わる力を解放して平坦に復帰させたときにフィルムの変形が少なく、折り畳み特性に優れており、物理的な衝撃にも耐久性に優れたフィルムを実現することができる。具体的に、前記延伸により、フィルム内には配向による結晶化が生じ、これにより耐屈曲性に優れたフィルムを得ることができる。
【0126】
実現例による高分子フィルムのMD方向の延伸比が前記範囲から外れると、フィルムの復元特性が特に低下し、目的とする物性を達成するのが難しい。
【0127】
前記ポリアミド系樹脂は、アミド繰り返し単位を含む樹脂である。前記ポリイミド系樹脂は、イミド繰り返し単位を含む樹脂である。
【0128】
また、前記イミド繰り返し単位を含み、前記アミド繰り返し単位を含む樹脂は、前記ポリアミド系樹脂と言え、前記ポリイミド系樹脂と言える。
【0129】
例えば、前記高分子樹脂は、ポリアミド系樹脂を含む樹脂、ポリイミド系樹脂を含む樹脂、またはポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂のいずれも含む樹脂であり得る。
【0130】
一実現例による高分子フィルムは、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、および選択的にジカルボニル化合物を重合して形成された高分子樹脂を含む。
【0131】
一実現例として、前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とのモル比が、2:98~50:50、5:95~50:50、10:90~50:50、2:98~25:75、2:98~15:85、20:80~100:0、25:75~100:0、30:70~100:0、40:60~100:0、または50:50~100:0である。
【0132】
前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とのモル比が前記範囲であると、高温高湿状態において光学性物性に優れ、耐久性の強いフィルムを実現し得る。また、長時間折り曲げた状態が続いた後、フィルムに加わる力を解放して平坦に復帰させた時に復元力に優れ、折り畳み特性に優れながらも透明なフィルムを実現し得る。
【0133】
他の実現例として、前記ジアンヒドリド化合物が1種または2種以上からなり、前記ジカルボニル化合物が0種、1種、または2種以上からなり得る。
【0134】
前記高分子樹脂は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含む。
【0135】
なお、前記高分子樹脂は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を、2:98~50:50、5:95~50:50、10:90~50:50、2:98~25:75、2:98~15:85、20:80~100:0、25:75~100:0、30:70~100:0、40:60~100:0、または50:50~100:0のモル比で含み得るが、これに限定されるものではない。
【0136】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して、共重合体を形成する化合物である。
【0137】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は下記化学式1の化合物であり得る。
【0138】
<化1>
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され得る。
【0139】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合Eは互いに同一または異なり得る。
【0140】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表示される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0141】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表示される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0142】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表示される基、または前記化学式1-9bで表示される基であり得る。
【0143】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0144】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0145】
他の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0146】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4「-diaminobiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0147】
または、前記ジアミン化合物は、前記TFMBおよび4,4'-オキシジアニリン(ODA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0148】
前記ジアンヒドリド化合物は複屈折値が低いため、前記高分子樹脂を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る化合物である。なお、前記高分子樹脂はイミド繰り返し単位を含む重合体を意味する。
【0149】
前記ジアンヒドリド化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物または脂環族構造を含む脂環族ジアンヒドリド化合物であり得る。
例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
【0150】
<化2>
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の4価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の4価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに接合されて縮合環を形成するか、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2の中から選択された連結基により連結されている。
【0151】
前記化学式2のGは、下記化学式2-1a~2-9aで表示される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0152】
例えば、前記化学式2のGは、前記2-2aで表示される基、前記化学式2-8aで表示される基、または前記2-9aで表示される基であり得る。
【0153】
また、前記脂環族ジアンヒドリド化合物は、シクロブタン構造を含み得る。具体的に、前記脂環族ジアンヒドリド化合物は、CBDA(シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0154】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物、ビフェニル基を有する化合物、ケトン基を有する化合物、またはシクロブタン基を有する化合物を含み得る。
【0155】
前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ化炭化水素基であり得、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0156】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種以上の混合成分からなり得る。
【0157】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0158】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミド酸を生成し得る。
【0159】
次いで、前記ポリアミド酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
前記ポリイミドは、下記化学式Aで表示される繰り返し単位を形成し得る。
【0160】
<化A>
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeについては、前述した通りである。
【0161】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表示される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0162】
<化A-1>
前記化学式A-1のnは、1~400の整数である。
【0163】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
【0164】
<化3>
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され得る。
【0165】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
【0166】
Xはハロゲン原子である。具体的にXは、F、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0167】
前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1a~3-14aで表示される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0168】
具体的に前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表示される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0169】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは前記化学式3-1bで表示される基、前記化学式3-2bで表示される基、3-3bで表示される基、または3-8bで表示される基であり得る。
【0170】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、1種または互いに異なる少なくとも2種以上のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが、前記化学式3-1b~3-8bで表示される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0171】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0172】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0173】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ、芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0174】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0175】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0176】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物である場合、ベンゼン環を含んでいるので、調製されたポリアミド-イミド樹脂を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させることに寄与し得る。
【0177】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(Isophthaloyl Chloride、IPC)、またはこれらの組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0178】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はBPDCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0179】
前記第1ジカルボニル化合物としてBPDC、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを適宜組み合わせて使用すると、調製されたポリアミド-イミド樹脂を含むフィルムは高い耐酸化性を有し得る。
【0180】
または、前記第1ジカルボニル化合物はIPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0181】
前記第1ジカルボニル化合物としてIPC、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを適宜組み合わせて使用すると、調製されたポリアミド-イミド樹脂を含むフィルムは、高い耐酸化性を有し得るのみならず、コスト削減ができるので経済的である。
【0182】
前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、下記化学式Bで表示される繰り返し単位を形成し得る。
【0183】
<化B>
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は、前述した通りである。
【0184】
例えば、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-1およびB-2で表示されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0185】
または、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-2およびB-3で表示されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0186】
<化B-1>
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0187】
<化B-2>
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0188】
<化B-3>
前記化学式B-3のyは1~400の整数である。
【0189】
一実現例によると、前記高分子樹脂は、下記化学式Aで表示される繰り返し単位および選択的に下記化学式Bで表示される繰り返し単位を含み得る。
【0190】
【0191】
<化B>
前記化学式AおよびBのうち、
EおよびJは互いに独立して、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2、および-C(CF
3)
2から選択され、
eおよびjは互いに独立して1~5の整数の中から選択され、
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の4価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の4価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに接合されて縮合環を形成するか、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2の中から選択された連結基によって連結されている。
【0192】
前記高分子樹脂において、前記化学式Aで表示される繰り返し単位および前記化学式Bで表示される繰り返し単位のモル比が、2:98~50:50、5:95~50:50、10:90~50:50、2:98~25:75、2:98~15:85、20:80~100:0、25:75~100:0、30:70~100:0、40:60~100:0、または50:50~100:0であり得るが、これに限定されるものではない。
【0193】
前記化学式Aで表示される繰り返し単位および前記化学式Bで表示される繰り返し単位のモル比が前記範囲であると、高分子フィルムの折り畳み特性および高温高湿下における光学的物性および機械的物性に優れる。
【0194】
具体的に、前記化学式Bで表示される繰り返し単位に存在するCONH構造がOH基との親和性が高く、水分を引き寄せる吸湿性に優れた性質を示すことにより、滑り特性を有するようになり、高温高湿下において機械的強度および光学的特性の低下がほとんどないフィルムを実現し得る。
【0195】
他の実現例によると、前記高分子フィルムはフィラーをさらに含み得る。
【0196】
前記フィラーは、硫酸バリウム、シリカ、および炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記高分子フィルムは、前記フィラーを含むことにより、照度および巻取性を向上させ得ることは無論のこと、フィルム作製時の走行性、スクラッチ改善効果を向上させ得る。
【0197】
また、前記フィラーの粒径は、0.01μm~1.0μm、0.01μm以上~1.0μm未満であり得る。例えば、前記フィラーの粒径は、0.05μm~0.9μm、0.1μm~0.8μm、0.1μm~0.5μm、または0.1μm~0.3μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0198】
前記高分子フィルムは、前記高分子フィルムの総重量を基準に、前記フィラーを0.01重量%~3.5重量%、0.01重量%~3重量%、または0.01重量%~2.5重量%の量で含み得る。
【0199】
前記高分子フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、85%~99%、または88%~99%であり得る。
【0200】
前記高分子フィルムの黄色度(yellow index)は5以下である。例えば、前記黄色度が4以下または3.5以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0201】
前記高分子フィルムのヘイズが2%以下である。具体的に、前記ヘイズは1.8%以下、1.5%以下、1%以下、0.8%以下または0.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0202】
前記高分子フィルムのモジュラスが、4.0GPa以上、4.2GPa以上、4.5GPa以上、または5.0GPa以上である。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、6.0GPa以上、6.2GPa以上、6.0GPa~8.0GPaであり得るが、これに限定されるものではない。
【0203】
前記高分子フィルムの圧縮強度は、0.3kgf/μm以上である。具体的に、前記圧縮強度は、0.4kgf/μm以上、0.45kgf/μm以上、または0.48kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0204】
前記高分子フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを使用して、10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が65mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が60mm以下、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0205】
前記高分子フィルムは表面硬度がHB以上である。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0206】
前記高分子フィルムは引張強度が14kgf/mm2以上である。具体的に、前記引張強度が15kgf/mm2以上、16kgf/mm2以上、18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0207】
前記高分子フィルムは伸び率が13%以上である。具体的に、前記伸び率が15%以上、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0208】
一実現例による高分子フィルムは、低いヘイズおよび低い黄色度(YI)などの優れた光学的物性および高いモジュラス、圧縮強度、穿孔最大径、表面硬度、引張強度、伸び率のような優れた機械的物性だけでなく、優れた折り畳み特性と、高温高湿下においても優れた光学的物性および機械的物性を確保することができる。これにより、モジュラス、伸び率、引張特性、弾性復元力、および耐屈曲性の面から柔軟性が求められる基材に対して長期的に安定した機械的物性および光学的物性を実現することができる。
【0209】
前述の前記高分子フィルムの物性は、40μm~60μmの厚さ、または70μm~90μmの厚さを基準とする。例えば、前記高分子フィルムの物性は、50μmの厚さまたは80μmの厚さを基準とする。
【0210】
前述の高分子フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0211】
また、前記高分子フィルムの前述した物性は、前記高分子フィルムをなす成分の化学的、物理的物性とともに、後述する前記高分子フィルムの製造方法において、各段階の工程条件が綜合されて表れる結果である。
【0212】
[ディスプレイ用前面板]
一実現例によるディスプレイ用前面板は、高分子フィルムおよび機能層を含む。
【0213】
前記高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含む。
【0214】
一実現例による高分子フィルムは、オートクレーブ処理前のヘイズ(HZ0)が3%以下であり、前記式1aで表示されるΔHZ24値が500%以下である。
【0215】
他の実現例による高分子フィルムは、オートクレーブ処理前のモジュラス(MO0)が5GPa以上であり、前記式1bで表示されるΔTS24値が15%以下である。
【0216】
また他の実現例による高分子フィルムは、高分子樹脂および酪酸を含む。
前記高分子フィルムに関する具体的な説明は前述の通りである。
【0217】
前記前面板は、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0218】
前記高分子フィルムは、折り畳み特性に優れており、高温高湿の過酷な条件下においても優れた光学的物性および機械的物性を保持することができる。特に、高分子フィルムのみならず、機能層も折り畳み特性に優れているので、前記前面板は、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用することができる。
【0219】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置された前面板とを含み、前記前面板は高分子フィルムを含む。
【0220】
また、前記高分子フィルムが、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含む。
【0221】
一実現例による高分子フィルムは、オートクレーブ処理前のヘイズ(HZ0)が3%以下であり、前記式1aで表示されるΔHZ24値が500%以下である。
【0222】
他の実現例による高分子フィルムは、オートクレーブ処理前のモジュラス(MO0)が5GPa以上であり、前記式1bで表示されるΔTS24値が15%以下である。
【0223】
また他の実現例による高分子フィルムは、高分子樹脂および酪酸を含む。
前記高分子フィルムおよび前面板に関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0224】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の断面図を示したものである。
具体的に、
図1には、表示部400および前記表示部400上に第1面101および第2面102を有する高分子フィルム100と、機能層200を含む前面板300とが配置され、前記表示部400と前面板300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0225】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0226】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0227】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0228】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示する。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に結合され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加できるように結合されることによって、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0229】
また、前記表示部400と前記前面板300との間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は光学的に透明な接着層であり得、特に限定されない。
【0230】
前記前面板300は前記表示部400上に配置される。前記前面板は、実現例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0231】
前記前面板300は、高分子フィルムおよび機能層を含み得る。前記機能層は、ハードコーティング、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記高分子フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0232】
[高分子フィルムの製造方法]
一実現例において、高分子フィルムの製造方法を提供する。
【0233】
一実現例による高分子フィルムの製造方法は、有機溶媒上でポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂を含むポリマー溶液を調製する段階と、前記ポリマー溶液をタンクに移動させる段階と、前記タンク内のポリマー溶液を押出およびキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含み、前記ゲルシートの熱処理は、残留溶媒が1200ppm以下になるまで行う。
【0234】
他の実現例による高分子フィルムの製造方法は、重合設備内において、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、およびジカルボニル化合物を重合して高分子樹脂を含むポリマー溶液を調製する段階と、前記ポリマー溶液をタンクに移動させる段階と、前記タンク内のポリマー溶液を押出およびキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含み、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~500℃の範囲で5分~180分間行われる。
【0235】
また他の実現例による高分子フィルムの製造方法は、有機溶媒上で高分子樹脂を含むポリマー溶液を調製する段階と、前記ポリマー溶液をタンクに移動させる段階と、前記タンク内のポリマー溶液をベルト上にキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して硬化フィルムを製造する段階とを含む。
【0236】
図2を参照すると、一実現例による高分子フィルムの製造方法は、重合設備内において、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、および選択的にジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させてポリマー溶液を調製する段階(S100)と、前記ポリマー溶液をタンクに移動させる段階(S200)と、不活性ガスによりパージする段階(S300)と、前記タンク内のポリマー溶液をベルト上にキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階(S400)と、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して硬化フィルムを製造する段階(S500)と、前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階(S600)と、前記冷却した硬化フィルムをワインダー(winder)により巻き取る段階(S700)とを含む。
【0237】
前記高分子フィルムは、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から構成される群より選択された高分子樹脂が主成分であるフィルムである。
【0238】
前記高分子フィルムの製造方法において、前記高分子樹脂を調製するためのポリマー溶液は、重合設備内で有機溶媒中にジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物、またはジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製される(S100)。
【0239】
一実現例において、前記ポリマー溶液を、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時に投入して反応させることにより調製し得る。
【0240】
他の実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを混合および反応させてポリアミド酸(Polyaminc acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド酸溶液(PAA)を脱水させてポリイミド(Polyimide、PI)溶液を調製する段階とを含み得る。
【0241】
また他の実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミド酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミド酸溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させてアミド結合およびイミド結合を形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド酸溶液はポリアミド酸を含む溶液である。
【0242】
または、前記ポリマー溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミド酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミド酸溶液を脱水させてポリイミド溶液を調製する段階と、前記ポリイミド溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させてアミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリイミド溶液は、イミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0243】
また他の実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させてポリアミド(PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させてイミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0244】
このようにして調製された前記ポリマー溶液は、ポリアミド酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位、およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択された1種以上を含む重合体が含有された溶液であり得る。
【0245】
例えば、前記ポリマー溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド繰り返し単位を含み得る。
【0246】
または、前記ポリマー溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来するアミド繰り返し単位とを含み得る。
【0247】
前記ポリマー溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得る。または、前記ポリマー溶液に含まれている固形分の含有量は15重量%~25重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0248】
前記ポリマー溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効率的に高分子フィルムが製造され得る。また、製造された高分子フィルムは、きれいな外観および透明性を保持しながら、特定範囲の光学スリップ指数、最大静止摩擦係数、および運動摩擦係数を確保して、アンチブロッキング性に優れる。さらには、高温高湿下においてもほとんど低下しない、優れた機械的物性、および低い黄色度などの光学性物性を有することができ、一定レベルの荷重を長時間持続しても変形がほとんどなく折り畳み特性に優れている。
【0249】
一実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0250】
この際、前記触媒は、β-ピコリン、無水酢酸(Acetic anhydride)、イソキノリン(isoquinoline、IQ)、およびピリジン系化合物からなる群より選択された1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0251】
前記触媒は、前記ポリアミド酸1モルを基準に0.01~0.4モル当量を投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0252】
または、前記触媒は、前記ポリマー溶液の総重量を基準に0.01重量%~0.3重量%投入し得る。具体的に、前記触媒は、前記ポリマー溶液の総重量を基準に0.01重量%~0.2重量%、0.01重量%~0.15重量%、0.01重量%~0.1重量%、または0.02重量%~0.1重量%投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0253】
前記触媒を投入する場合、反応速度を向上させることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内における化学的結合力を向上させ得る。加えて、前記触媒を使用することにより、黄色度の低いフィルムを製造し得る。
【0254】
一実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、脱水剤を投入する段階をさらに含み得る。
【0255】
この際、前記脱水剤は、無水酢酸であり得るが、これに限定されるものではない。
【0256】
前記脱水剤は、前記ポリマー溶液の総重量を基準に0.01重量%~10重量%、0.05重量%~5重量%、または0.05重量%~3重量%投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0257】
前記脱水剤を投入すると、黄色度とヘイズの低いフィルムを実現する効果がある。
【0258】
他の実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、前記ポリマー溶液の粘度を調節する段階をさらに含み得る。
【0259】
具体的に、前記ポリマー溶液を調製する段階は、(a)有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、および選択的にジカルボニル化合物を同時または順次に混合および反応させて、第1ポリマー溶液を調製する段階と、(b)前記第1ポリマー溶液の粘度を測定して、目標粘度に到達しているかどうかを評価する段階と、(c)前記第1ポリマー溶液の粘度が目標粘度に達していない場合には、前記ジアンヒドリド化合物またはジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2ポリマー溶液を調製する段階とを含み得る。
【0260】
前記目標粘度は、常温にて10万cps~50万cpsであり得る。具体的に、前記目標粘度は、常温にて10万cps~40万cps、10万cps~35万cps、10万cps~30万cps、15万cps~30万cps、または15万~25万cpsであり得るが、これに限定されるものではない。
【0261】
前記第1ポリマー溶液を調製する段階と、第2ポリマー溶液を調製する段階とでは、調製されたポリマー溶液の粘度が異なる。例えば、前記第1ポリマー溶液よりも前記第2ポリマー溶液の粘度がさらに高い。
【0262】
前記第1ポリマー溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2ポリマー溶液を調製する際の撹拌速度とが異なる。例えば、前記第1ポリマー溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2ポリマー溶液を調製する際の撹拌速度よりも速い。
【0263】
また他の実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、前記ポリマー溶液のpHを調節する段階をさらに含み得る。この段階において、前記ポリマー溶液のpHは4~7に調節され得、例えば、4.5~7、または4.5~7未満に調節され得るが、これに限定されるものではない。
【0264】
前記ポリマー溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調節することができ、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミン、またはアルカノールアミンなどのアミン系化合物、もしくは酢酸、酪酸などのカルボン酸系化合物を含み得る。
【0265】
前記ポリマー溶液のpHを前述の範囲で調節することにより、後続の工程で機器の損傷を防止することができ、前記ポリマー溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面から目的とする光学的物性および機械的物性を実現し得る。さらには、フィルムの復元性および折り畳み特性を向上させ得る。
【0266】
前記pH調整剤は、前記ポリマー溶液の総重量を基準に0.01重量%~0.7重量%、0.01重量%~0.5重量%、または0.02重量%~0.4重量%投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0267】
または、前記pH調整剤は、前記ポリマー溶液内の単量体の総モル数を基準に0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0268】
具体的に、ポリマー溶液の調製時に触媒を投入すると、触媒によって化学的イミド化または熱的イミド化が行われ、適正含有量で使用することにより、透明で黄色度の低いフィルムを製造し得る。一方、このような触媒作用時に副産物が発生したり、一部の物性が低下したりする可能性があるが、この際にpH調整剤を使用することにより、物性の低下を改善し得る。例えば、pH調整剤として酪酸が使用され得、前記酪酸は最終フィルムに一部残存して、長時間折り曲げた状態が続いた後、フィルムに加わる力を解放して平坦に復帰させた時に復元力に優れ、折り畳み特性に優れながら、透明なフィルムを実現し得る。
【0269】
前記高分子樹脂を調製するためのモノマーに由来するクロリド末端基やフィルムの製造過程で発生するHClなどで発生するCl副産物が反応性を下げ、分子量の低い形態で重合される場合が多かった。しかし、前記pH調整剤として酪酸を使用することにより、触媒の反応性を効果的に調節して、低分子量で重合される量を低減し、高分子量による重合を容易にする効果がある。
【0270】
さらには、高分子内に残存していた低分子重合体が、オートクレーブ処理後(つまり、高温高湿の過酷な条件処理後)に溶出する際、光学的特性が急激に低下する問題があった。また、従来の高分子フィルムは、高温、高湿の環境でバリア層を形成する問題があり、問題解決のために耐湿性に強いクレイなどの添加剤を導入したりもしたが、この場合は光学的物性が低下したり、相溶性が劣る問題が発生した。
【0271】
一方、実現例による高分子フィルムのように、酪酸を重合過程中に添加すると、前述の問題を解決することができ、高温高湿の過酷な条件処理後にも、光学的物性および機械的物性の低下がほとんどなく、折り畳み特性に優れた高分子フィルムを実現し得る。
【0272】
他の実現例において、前記ポリマー溶液を調製する段階は、不活性ガスによりパージする段階をさらに含み得る。不活性ガスパージ段階によって水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観と機械的物性などを実現し得る。
【0273】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0274】
前記ポリマー溶液を調製するために用いられる前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とのモル比は、2:98~15:85であり得る。例えば、前記モル比は、3:97~15:85、5:95~15:85、7:93~15:85、2:98~25:75、2:98~15:85、20:80~100:0、25:75~100:0、30:70~100:0、40:60~100:0、または50:50~100:0であり得るが、これに限定されるものではない。
【0275】
前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とが、このようなモル比で用いられることにより、前記ポリマー溶液から製造された高分子フィルムの機械的物性と光学的物性とが目標レベルに達成されるのに有利である。
【0276】
前記ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、およびジカルボニル化合物に関する説明は前述の通りである。
【0277】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記ポリマー溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0278】
次に、前記ポリマー溶液を調製する段階の後、前記ポリマー溶液をタンクに移動させる(S200)。
【0279】
図3は、一実現例による前記高分子フィルムの製造工程設備を概略的に示したものである。
図3を参照すると、前述の前記ポリマー溶液は、重合設備10において調製され、このように調製された前記ポリマー溶液は、タンク20に移動および保管される。
【0280】
この際、前記ポリマー溶液の調製後、別途の工程なく前記ポリマー溶液をタンクに移動する段階を行う。具体的に、前記重合設備において調製されたポリマー溶液は、不純物を除去するための別途の沈殿および再溶解の過程なしに、そのまま前記タンクに移動して保管される。従来は、前記ポリマー溶液の調製過程で生成される塩酸(HCl)などの不純物を除去するために、調製されたポリマー溶液を、別途の工程により精製して不純物を除去し、これを溶媒に再溶解させる工程を行った。ただし、この場合は、不純物を除去する過程で有効成分の損失が大きくなり、その結果、収率が低下する問題があった。
【0281】
そこで、一実現例による前記調製方法は、前記ポリマー溶液の調製過程において根本的に不純物の含有量を最小化するか、所定の不純物が存在していてもその後の工程にてこれらを適切に制御して、最終フィルムの物性を低下させないようにすることにより、別途の沈殿または再溶解の過程なくフィルムを製造する利点を有する。
【0282】
前記タンク20は、前記ポリマー溶液をフィルム化する前にこれを保管する場所であり、その内部の温度が-20℃~20℃であり得る。
【0283】
具体的に、前記内部温度は-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃であり得るが、これに限定されるものではない。
【0284】
前記タンク20の内部温度を前記範囲に調節することにより、前記ポリマー溶液が保管中に変質することを防止することができ、含湿率を低下させ、これから調製されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0285】
前記高分子フィルムの製造方法は、前記タンク20に移動された前記ポリマー溶液に真空脱泡を行う段階をさらに含み得る。
【0286】
前記真空脱泡は、前記タンクの内部圧力を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件で真空脱泡を行うことにより、前記ポリマー溶液内の気泡を低減させることができ、その結果、これから製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0287】
また、前記高分子フィルムの製造方法は、前記タンク20に移動された前記ポリマー溶液に不活性ガスによりパージ(purging)する段階をさらに含み得る(S300)。
【0288】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1~2気圧でパージする方法により行われる。このような条件で窒素パージを実施することにより、前記ポリマー溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの光学物性と機械的物性などを優秀に実現し得る。
【0289】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0290】
前記真空脱泡する段階および前記タンクを不活性ガスによりパージする段階は、別の工程で行われる。
【0291】
例えば、前記真空脱泡する段階が行われ、その後に前記タンクを不活性ガスでパージする段階が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0292】
前記真空脱泡する段階および/または前記タンクを不活性ガスによりパージする段階を行うことにより、製造された高分子フィルム表面の物性が向上し得る。
【0293】
以降、前記ポリマー溶液をタンク20内で1時間~360時間保管する段階をさらに含み得る。この際、タンクの内部温度は-20℃~20℃に保持され得る。
【0294】
前記高分子フィルムの製造方法は、前記タンク20内のポリマー溶液を押出およびキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階を含む(S400)。
【0295】
前記ポリマー溶液は、キャスティングロール(roll)またはキャスティングベルト(belt)のようなキャスティング体によりキャスティングされ得る。
【0296】
図3を参照すると、一実現例において前記ポリマー溶液は、キャスティング体としてキャスティングベルト30上に塗布され、移動しながら乾燥され、ゲル状のシートに製造され得る。
【0297】
前記ポリマー溶液が前記ベルト30上に注入されるとき、その注入速度は300g/min~700g/minであり得る。前記ポリマー溶液の注入速度が前記範囲を満足することにより、前記ゲルシートが適切な厚さで均一に形成され得る。
【0298】
また、前記ポリマー溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記ポリマー溶液が前記厚さ範囲でキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一性とを確保し得る。
【0299】
前記ポリマー溶液は、前述のように、常温にて10万cps~50万cpsであり、例えば、10万cps~40万cps、10万cps~35万cps、15万cps~35万cps、または15万cps~25万cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記ポリマー溶液がベルト上にキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さでキャスティングされ得る。
【0300】
前記ポリマー溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度で、5分~60分の間乾燥させてゲルシートを製造し得る。具体的に、前記乾燥は60℃~120℃の熱風により10分~50分間乾燥させ得る。例えば、前記乾燥は、100℃の熱風により30分間乾燥させ得る。
【0301】
前記乾燥中に前記ポリマー溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造される。
【0302】
前記乾燥時にキャスティング体上におけるゲルシートの移動速度は、0.1m/分~15m/分であり、例えば、0.5m/分~10m/分であり得るが、これに限定されるものではない。
【0303】
前記高分子フィルムの製造方法は、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して硬化フィルムを製造する段階を含む(S500)。
【0304】
図3を参照すると、前記ゲルシートの熱処理は、熱硬化器40を通過することにより行われ得る。
【0305】
前記ゲルシートの熱処理は、80℃~500℃の範囲で5分~180分間行われる。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~500℃の範囲で2℃/min~80℃/minの速度で昇温させながら、5分~150分間行われ得る。より具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の温度範囲で2℃/min~80℃/minの速度で昇温させて行われ得る。
【0306】
他の実現例によると、前記ゲルシートは熱風処理され得る。
熱風による熱処理を行うと、熱の量が均一に付与され得る。もし、熱の量が均一に分布されない場合は、満足のいく機械的物性を達成することができない。特に、満足のいく表面粗さを実現することができず、その場合は表面張力が上昇しすぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0307】
例えば、前記ゲルシートを200℃~320℃の温度範囲で5分~60分間熱風処理し得る。より具体的に、前記ゲルシートを250℃~290℃にて25分~35分間熱風処理し得る。
【0308】
また他の実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
【0309】
他の実現例によると、前記熱処理を、フィルムに含まれている残留溶媒の含有量が1200ppm以下、または1000ppm以下になるまで行われ得る。
【0310】
前記熱処理は、前記第1熱処理段階の後、前記第2熱処理段階を行う。この際、前記第2熱処理の段階を行った後、ゲルシートに含まれている有機溶媒の含有量が1000ppmまたは1200ppmを超える場合には、さらに第3熱処理段階を行える。
【0311】
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間に行われる第1熱処理段階と、150℃~350℃の範囲で30分~120分間に行われる第2熱処理段階とを含み得る。
【0312】
例えば、前記第3熱処理段階は、200℃~350℃の範囲でゲルシートに含まれている有機溶媒の含有量が1200ppm以下、または1000ppm以下になるまで行われ得る。
【0313】
また、前記熱処理段階において、前記ゲルシートはMD方向に1.01倍~1.05倍延伸され得る。前記第1熱処理段階および前記第2熱処理段階の間に、前記ゲルシートはMD方向に1.01倍~1.05倍延伸され得る。
【0314】
前記熱処理段階において、前記ゲルシートはTD方向に1.01倍~1.05倍延伸され得る。前記第2熱処理段階において、前記ゲルシートはMD方向に1.01倍~1.05倍延伸し得る。
【0315】
前記ゲルシートは、前記MD方向および前記TD方向に、同時に1.01倍~1.05倍延伸され得る。前記ゲルシートは、前記MD方向に1.01倍~1.05倍延伸され、前記TD方向に1.01倍~1.05倍順次延伸され得る。
【0316】
このような条件で熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスを有するように硬化され得、製造された硬化フィルムは、優れた折り畳み特性と光学的物性、高温高湿下においても優れた光学的、機械的物性、長時間折り曲げた状態が持続された後、フィルムに加わる力を解放したとき復元性に優れた物性を確保し得る。
【0317】
前記高分子フィルムの製造方法は、前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階を含む(S600)。
【0318】
図3を参照すると、前記硬化フィルムは、熱硬化器40を通過した後に行われ、別の冷却チャンバー(図示せず)を使用して行うこともでき、別途の冷却チャンバーなしに、適切な温度雰囲気を造成して行うこともできる。
【0319】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階は、100℃/min~1000℃/minの速度で減温させる第1減温段階と、40℃/min~400℃/minの速度で減温させる第2減温段階とを含み得る。
【0320】
ここで、具体的に、前記第1減温段階の後、前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度より速くてもよい。
【0321】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0322】
前記硬化フィルムの冷却段階が、このように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化させることができ、前記硬化過程で確立されたフィルムの光学的物性および機械的物性をより安定的に長期間保持させ得る。
前記ゲルシートおよび前記硬化フィルムの移動速度は同一である。
【0323】
前記高分子フィルムの製造方法は、前記冷却された硬化フィルムをワインダー(winder)により巻き取る段階を含む(S700)。
【0324】
図3を参照すると、前記冷却された硬化フィルムの巻き取りは、ロール状のワインダー50を利用し得る。
【0325】
なお、前記乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度:巻き取り時の硬化フィルムの移動速度の比は、1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、1:1.0~1:1.05、または1:1.01~1:1.05であり得るが、これに限定されるものではない。
【0326】
前記移動速度の比が前記範囲を外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0327】
前記高分子フィルムの製造方法において、下記一般式1による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得る。具体的に、前記厚さ偏差(%)は5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0328】
<一般式1>
厚さ偏差(%)={(M1-M2)/M1}×100
前記一般式1において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻き取り時の冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0329】
前記高分子フィルムは、前述の製造方法によって製造されることにより、アンチブロッキング性、光学的、機械的に優れた物性を示し得る。このような前記高分子フィルムは、耐屈曲性、柔軟性、耐久性、および透明性が求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記高分子フィルムは、ディスプレイ装置の外にも、太陽電池、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0330】
前記製造方法により製造された高分子フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0331】
前記内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲はこれらのみに限定されるものではない。
(実施例および評価例)
【0332】
(実施例1a)
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノフェニル(TFMB)(0.2mol)を徐々に投入して溶解させた。その後、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)(0.1mol)を徐々に投入して1時間撹拌した。そして、ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)(0.1mol)を投入し1時間撹拌してポリマー溶液を調製した。
【0333】
次いで、前記ポリマー溶液に脱水剤および触媒として無水酢酸17gおよびイソキノリン4.5gを投入した後、1時間撹拌した。その後、pH調整剤として酪酸(butanoic acid)を添加し、2時間撹拌してポリマー溶液を調製した。
【0334】
得られたポリマー溶液をガラス板に塗布した後、100℃の熱風で30分乾燥した後、ガラス板から剥離し、ピンフレームに固定して270℃にて30分間乾燥して厚さ50μmの高分子フィルムを得た。
【0335】
(実施例2a、3a、比較例1aおよび2a)
下記表1に記載のように、各反応物と種類、含有量等を異にしたことを除いて、実施例1と同様にフィルムを製造した。
【0336】
前記実施例1a~3a、比較例1aおよび2aで製造されたフィルムについて、下記のような物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
【0337】
(評価例1a:フィルムの厚さ測定)
日本のミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を使用して、幅方向に5ポイント測定し平均値で厚さを測定した。
【0338】
(評価例2a:フィルム内の残留溶媒含有量測定)
熱重量分析装置(DTG-50、株式会社島津製作所製)を用いて、窒素気流下、昇温速度15℃/minの条件で、室温から300℃まで昇温させ、300℃にて30分間保持した。150℃から300℃まで昇温する間と、300℃にて30分間保持する間に、減少した質量の合計を試料の初期質量で除した値をフィルム内の残留溶媒量とした。
【0339】
(評価例3a:フィルム内の酪酸含有量測定)
フィルム内の酪酸含有量を測定するためにTD-GC/MS分析法を用いた。具体的に、フィルムサンプル0.02gをサンプルチューブに入れて装着した後、10℃/minの速度で25℃から300℃まで加熱した。温度上昇による加熱によって発生するガスを吸着管(Tenax)に吸着させ、それを瞬時に加熱して(脱着)、ガスクロマトグラフィーにより各成分に分離した。分離された成分は、質量分析計で検出され得られたクロマトグラムから、成分の種類および含有量を分析した。
【0340】
フィルムの総重量を基準に酪酸の含有量をppm単位で測定し、その結果を下記表1に示した。
【0341】
(評価例4a:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを使用して550nmにおける光透過度を測定した。
【0342】
(評価例5a:黄色度測定)
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりCIE表色系を用いて測定された。
【0343】
(評価例6a:面内位相差測定)
面内位相差(Ro)は、位相差測定器(Axometrics社製、Axoscan、測定波長550nm)を用いて測定した。また、位相差測定器の基本データである屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589.3nm)により測定した。
【0344】
(評価例7a:オートクレーブ処理)
縦2cm、横10cm、厚さ50μmのフィルムをオートクレーブに入れて固定し、このオートクレーブに2Lの水を満たした後、オートクレーブを閉じて加熱した。この際、オートクレーブの温度を120℃に合わせ、圧力を1.2atmに上げて24時間処理した。設定時間が経過すると、オートクレーブは自動的にオフとなるように設定した。出口弁を開放してフィルムを取り出し、当該物性を測定した。前記フィルムは水に浸漬されていない。
【0345】
(評価例8a:耐屈曲性測定)
厚さ50μmのフィルムの曲率半径が3mmとなるようにフォールディング(折りたたんだり広げたりすることを1回とする)を繰り返した。10万回のフォールディング後、肉眼により折りたたまれた面の変形が確認されない時を○で示し、10万回のフォールディング後、肉眼により折りたたまれた面の変形が確認された時を×で示した。前記フォールディング回数測定は、ユアサシステム機器社のU字伸縮(U-shape folding)試験機器を使用した。
【0346】
【0347】
前記表1で確認できるように、実施例1a~3aの高分子フィルムは、フィルム内の残留溶媒含有量が1200ppm以下、酪酸含有量が1200ppm以下で存在することにより、高温、高湿の過酷な条件で処理した後でも、依然として優れた光学物性を保持することを確認した。
【0348】
一方、フィルム内の酪酸が全く検出されず、残留溶媒も1200ppmを超える量で存在する比較例1aおよび2aの場合は、オートクレーブ処理後、高分子内に残存していた低分子重合体が溶出して、ヘイズ、黄色度、および面内位相差のような光学的物性が著しく低下した。
【0349】
(実施例1b)
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒のジメチルアセトアミド(DMAc)585.68gを満たした後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノフェニル(TFMB)0.2molを徐々に投入して溶解させた。その後、3,3',4,4'-ベンゾフェノン(BTDA)0.02molを徐々に投入して1時間撹拌した。次いで、イソフタロイルクロリド(IPC)0.06molを投入して1時間撹拌し、テレフタロイルクロリド(TPC)0.12molを投入し、1時間撹拌してポリマー溶液を調製した。得られたポリマー溶液をガラス板に塗布した後、約80℃の熱風により20分乾燥して、ゲルシートを製造した。前記ゲルシートをガラス板から剥離してピンフレームに固定した。前記ゲルシートは、前記ピンフレームに固定されるとき、第1方向および前記第1方向に垂直な第2方向にそれぞれ約1.03倍延伸されて固定された。前記固定されたゲルシートを約270℃にて30分熱処理した後、厚さ50μmの高分子フィルムを得た。
【0350】
TFMB、BTDA、TPC、およびIPCの含有量に関して、ジアミン化合物100モルを基準に、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物のモル数を表2に記載した。
【0351】
(実施例2b~6bおよび比較例1b~3b)
下記表2に記載のように、各反応物の種類、含有量、熱処理時間などを異にしたことを除いて、実施例1bと同様にフィルムを製造した。
【0352】
前記実施例1b~6bおよび比較例1b~3bで製造されたフィルムについて、下記のような物性を測定および評価し、その結果を下記表2に示した。
【0353】
(評価例1b:フィルムの厚さ測定)
日本のミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を使用して、幅方向に5ポイント測定して平均値で厚さを測定した。
【0354】
(評価例2b:フィルム内残留溶媒の測定)
測定する試料0.02gを取った後、Purge&Trap-GC/MSD機器を使用して、30℃にて1時間パージし、300℃にて10分間アウトガスの捕集を行った後、アウトガスの定量および定性分析を行い、残留溶媒の量を測定した。
【0355】
(評価例3b:引張強度、破断伸び率測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に5cm以上、および主収縮方向に10mmに切り、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて12.5mm/min速度で伸しながら破断が起きるまでの応力-ひずみ曲線を得た。前記応力-ひずみ曲線において引張強度および破断伸び率を測定した。
【0356】
(評価例4b:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に5cm以上、および主収縮方向に10mmに切り、5cm間隔のクリップに装着した後、常温にて5mm/minの速度で伸しながら破断が起きるまでの応力-ひずみ曲線を得た。前記応力-ひずみ曲線において初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0357】
(評価例5b:オートクレーブ処理)
縦2cm、横10cm、厚さ50μmのフィルムをオートクレーブに入れて固定し、このオートクレーブに2Lの水を満たした後、オートクレーブを閉じて加熱した。この際、オートクレーブの温度を120℃に合わせ、圧力を1.2atmに上げ、24時間または72時間処理した。設定時間が経過すると、オートクレーブは自動的にオフとなるように設定した。出口弁を開放してフィルムを取り出し、当該物性を測定した。前記フィルムは水に浸漬されていない。
【0358】
(評価例6b:透過度の測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを使用して550nmにおける光透過度を測定した。
【0359】
(評価例7b:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりCIE表色系を用いて測定された。
【0360】
(評価例8b:耐屈曲性測定)
厚さ50μmの高分子フィルムの曲率半径が3mmとなるようにフォールディング(折りたたんだり広げたりすることを1回とする)を繰り返した。10万回以上フォールディングを繰り返しても破断されない場合をOで示し、10万回フォールディングする前に破断した場合を×で示した。前記フォールディング回数測定は、ユアサシステム機器社のU字伸縮(U-shape folding)試験機器を使用した。
【0361】
【0362】
前記表2で確認できるように、実施例1b~6bの高分子フィルムは、曲率半径が3mmとなるようにフォールディングを繰り返すとき、フィルムが破断するまでのフォールディング回数は、いずれも10万回以上になることを確認した。
【0363】
また、実施例1b~6bの高分子フィルムは、優れた折り畳み特性に加えて、黄色度および透過率においても優れた結果を示した。
【0364】
さらに、実施例1b~6bの高分子フィルムは、引張強度、破断伸び率、モジュラスのような機械的物性においても高い値を示し、一定時間の間、高温高湿の過酷な条件を処理した後でも、依然として優れた機械的物性を保持した。
【0365】
(実施例1c)
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下で有機溶媒のジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノフェニル(TFMB)を徐々に投入して溶解した。その後、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)を徐々に投入して1時間撹拌した。そして、テレフタロイルクロリド(TPC)を投入して2時間撹拌した。
【0366】
次いで、前記ポリマー溶液に触媒としてピリジン(pyridine)および脱水剤として無水酢酸を投入した。また、pH調整剤として酪酸を添加し、2時間撹拌してポリマー溶液を調製した。
【0367】
得られたポリマー溶液をガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥した後、80℃~300℃の温度範囲で2℃/minの速度で昇温させゲルシートを乾燥して、厚さ50μmの高分子フィルムを得た。
【0368】
ジアミン化合物(TFMB)、ジアンヒドリド化合物(6FDA)、ジカルボニル化合物(TPC)の含有量に関して、それぞれの投入モル数を表3に記載した。
【0369】
また、触媒(ピリジン)および酪酸の場合、前記ポリマー溶液の総重量を基準に投入した量を重量%に換算して表3に記載した。
【0370】
(実施例2c~5cおよび比較例1c~3c)
下記表3に記載したように、各反応物の種類、含有量等を異にしたことを除いて、実施例1cと同様にフィルムを製造した。また、比較例1c~3cの場合、酪酸投入の段階は経ていない。
【0371】
前記実施例1c~5cおよび比較例1c~3cで製造されたフィルムについて、下記のような物性を測定および評価し、その結果を下記表3に示した。
【0372】
(評価例1c:フィルム内の酪酸含有量測定)
フィルム内の酪酸含有量を測定するためにTD-GC/MS分析法を用いた。具体的に、フィルムサンプル0.02gをサンプルチューブに入れて装着した後、10℃/minの速度で25℃から300℃まで加熱した。温度上昇による加熱によって発生するガスを吸着管(Tenax)に吸着させ、それを瞬時に加熱して(脱着)、ガスクロマトグラフィーにより各成分に分離した。分離された成分は、質量分析計で検出され得られたクロマトグラムから、成分の種類や含有量を分析した。
【0373】
フィルムの総重量を基準に酪酸の含有量をppm単位で測定し、その結果を下記表3に示した。
【0374】
(評価例2c:変形角評価(静的曲げ試験))
長さ150mm、幅20mm、厚さ50μmの高分子フィルムを、曲率半径が2mmになるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、フィルムの内角を測定した。
【0375】
(評価例3c:フォールディング評価)
厚さ50μmの高分子フィルムの曲率半径が2mmになるようにフォールディング(折りたたんだり広げたりすることを1回とする)を繰り返した。フォールディング速度は60rpmとした。20万回以上フォールディングを繰り返しても破断されない場合をpassで示し、20万回フォールディングする前に破断した場合をfailで示した。前記フォールディング回数の測定は、ユアサシステム機器社のU字伸縮(U-shape folding)試験機器を使用した。
【0376】
(評価例4c:透過度測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを使用して550nmにおける光透過度を測定した。
【0377】
(評価例5c:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によってCIE表色系を用いて測定された。
【0378】
(評価例6c:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に5cm以上、および主収縮方向に10mmに切り、5cm間隔のクリップに装着した後、常温にて5mm/minの速度で伸しながら破断が起きるまでの応力-ひずみ曲線を得た。前記応力-ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0379】
【0380】
前記表3から確認できるように、実施例1c~5cの高分子フィルムは、フィルム内に残存する酪酸が存在することにより、長時間折り曲げた状態が続いた後、平坦に復帰させたときの復元性において優れた結果を示すことを確認した。具体的に、実施例1c~5cの高分子フィルムの場合、静的曲げ試験で変形角が120°以上の値を示したのに対し、比較例1c~3cの高分子フィルムの場合は115°以下の値を示しており、静的曲げ耐性において劣る結果を示した。
【0381】
また、実施例1c~5cの高分子フィルムの場合、曲率半径が2mmになるようにフォールディングを繰り返したとき、フィルムが破断するまでのフォールディング回数がいずれも20万回以上なので、フォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、ローラブルディスプレイ等に適用するのに容易であることを確認した。一方、比較例1c~3cの高分子フィルムの場合は、フォールディング試験の実施する際、フォールディング回数がいずれも20万回を越えられず破折された。
【0382】
さらに、実施例1c~5cの高分子フィルムは、静的曲げ特性および折り畳み特性の外にも、モジュラスのような機械的物性や透過度、黄色度のような光学的物性においても依然として優れた結果を保持した。
【符号の説明】
【0383】
10:重合設備
20:タンク
30:ベルト
40:熱硬化器
50:ワインダー
100:高分子フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:前面板
400:表示部
500:接着層