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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028742
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】液体サンプル中の細胞の検出
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20220208BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 33/04 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 13/00 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 D
G01N1/30
G01N33/04
C12N13/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181062
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2019500033の分割
【原出願日】2017-03-17
(31)【優先権主張番号】16160837.7
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521483630
【氏名又は名称】パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシーズ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】PerkinElmer Health Sciences B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ローラン・エモン
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー・ゲイル・パールマッター
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ウィリス・クライダー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乳製品、好ましくは生乳などの液体サンプル中の、細菌および/または体細胞などの細胞を計測するための方法を提供する。
【解決手段】a)二量体核酸色素及び緩衝剤を含む染色組成物をサンプルと混合し;b)ステップa)の混合物を適宜超音波処理し;c)約45℃から約95℃の温度で10分未満の時間、混合物をインキュベートし;d)ステップc)のインキュベートした混合物を適宜超音波処理し;e)混合物、又はその一部の中の色素によって染色された細胞を計測することを含む方法であり、ここで、核酸は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する、液体サンプル中の細胞を計測する方法である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプル中の細胞を計測する方法であって、以下のステップ:
a)二量体核酸色素および緩衝剤を含む染色組成物を前記サンプルと混合し;
b)ステップa)の混合物を適宜超音波処理し;
c)約45℃から約95℃の温度で10分未満の時間、混合物をインキュベートし;
d)ステップc)のインキュベートした混合物を適宜超音波処理し;
e)前記混合物、またはその一部の中の前記色素によって染色された細胞を計測すること
を含む前記方法であり、ここで、核酸は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する、方法。
【請求項2】
二量体核酸色素が、37℃および中性pHで30分間インキュベートした後に、HeLa細胞に対して細胞非透過性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二量体核酸色素が、必要に応じて解離する機構でDNAに結合することが可能である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
架橋が約8から約150の非水素原子を含む、実質的に脂肪族で実質的に中性なリンカーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
架橋が式:
【化1】
[式中、
それぞれのLは架橋の一部であり、Q1またはQ2に共有結合し、独立して、単結合と、1つの炭素原子から約12個の炭素原子を有するポリメチレン単位とを含む部位であり、適宜、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、またはN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含むアリール基を含み、
α、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、およびιは、独立して0または1から約20の整数であり、
a、b、c、d、e、f、g、h、およびiは独立して0または1から約20の整数であり、
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9およびA10は独立して、核酸結合促進基、適宜N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む分岐アルキル、および適宜N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの飽和5員または6員環から成る群から選択される。]
を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
架橋が式:
【化2】
[式中、
架橋のそれぞれのLは-(CH)-であり、ここで、それぞれのxは独立して、1から11から選択される整数であり、
αは2から約20から選択される整数であってもよく、
βおよびγは、独立して0、2、または3であり、
bは0、または1から約20から選択される整数であり、
cは0、1、または2である。]
を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
架橋のそれぞれのLが-(CH)-であり、ここでxのそれぞれは5であり、
αが2または3であり、
βが2であり、
bが1または2であり、
cが0、1、または2であり、
cが1または2のとき、γが3である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
架橋が、
【化3】

から成る群から選択される式を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Q1および/またはQ2が蛍光核酸色素部位である、前記のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
蛍光核酸色素部位が、アクリジンに基づく核酸色素、非対称シアニンに基づく核酸色素、フェナントリジニウムに基づく核酸色素、対称シアニンに基づく核酸色素、ピロニン核酸色素、スチリル核酸色素、DAPI誘導体、およびHoechst色素誘導体から成る群から選択される核酸色素に由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
蛍光核酸色素部位が、アクリジンに基づく核酸色素、非対称シアニンに基づく核酸色素、およびフェナントリジニウムに基づく核酸色素から成る群から選択される核酸色素に由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
蛍光核酸色素部位が式I:
【化4】
[式中、
R1はそれぞれ独立して、H、C1-C2基、およびアルキルから成る群から選択され、
架橋はR2またはR3に結合し、
架橋がR2に結合している場合、R3はHまたは-CHから成る群から選択され、
架橋がR3に結合している場合、R2はH、-CH、-NH、-NHCH、-CN、および-C(=O)NHから成る群から選択され、
R6およびR7はそれぞれ独立して、H、C1-C2基、およびアルキルから成る群から選択され、
ψは色素と会合する正電荷を相殺するアニオンである。]
を有するアクリジンに基づく核酸色素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
蛍光核酸色素部位が、式II:
【化5】
[式中、
架橋はR7に結合し、
ψは色素と会合する、正電荷を相殺するアニオンである。]
を有する非対称シアニンに基づく核酸色素である、請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
蛍光核酸色素部位が、式III:
【化6】
[式中、
架橋はR1に結合し、
ψは色素と会合する、正電荷を相殺するアニオンである。]
を有するフェナントリジニウムに基づく核酸色素である、請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
Q1およびQ2が同じである、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
二量体核酸色素が以下の群:
a)Q1およびQ2がいずれも請求項13で定義される蛍光核酸色素部位であり、式:
【化7】
で示される架橋によって連結される、二量体核酸色素
b)Q1およびQ2がいずれも請求項13で定義される蛍光核酸色素部位であり、式:
【化8】
で示される架橋によって連結される、二量体核酸色素
c)Q1およびQ2がいずれも請求項14で定義される蛍光核酸色素部位であり、式:
【化9】
で示される架橋によって連結される、二量体核酸色素、並びに
d)Q1およびQ2がいずれも請求項15で定義される蛍光核酸色素部位であり、式:
【化10】
で示される架橋によって連結される、二量体核酸色素
から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
緩衝剤が有機緩衝剤である、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
緩衝剤がアミンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
緩衝剤がトリスおよびCAPSから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
緩衝剤が、約20から約400mM、約40から約300mM、約60から約400mM、約80から約300mM、または約100から約200mMなどの、約10から約500mMの濃度で存在する、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
染色組成物がさらに、セリンエンドペプチダーゼなどのプロテアーゼを含む、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
プロテアーゼが約0.12AU/mlから約1.92x10AU/mlなどの、約0.1AU/mlから約2x10酵素AU/ml(アンソン単位/ml)の分量で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記の染色組成物が、約8から約11、約8から約10.6、約8.5から約10.6などの約8から約11.5のpHを有する、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ステップc)が、約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または約62から約68℃などの約45から約95℃の温度で実行される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ステップc)が、約8から約11、約8から約10.6、約8.5から約10.6などの、約8から約11.5のpHで実行される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ステップc)が、8、7、6、4、3、または2分未満など、およそ1分未満などの9分未満の時間行われる、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が体細胞および/または細菌細胞である、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ステップa)で得られた混合物および/またはステップc)で得られた混合物を、約1から約10秒間、約15から約50kHzで超音波処理する、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記の液体サンプルが、ミルク、血液、尿、唾液、便および髄液から成る群から選択される生物学的サンプルを含む、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
染色細胞が、フローサイトメーター、蛍光顕微鏡、または蛍光イメージングシステム、蛍光光度計、または蛍光プレートリーダーなどの蛍光検出装置を用いることによって計測される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
液体サンプルが牛乳などのミルクである、前記の請求項のいずれかに記載の方法であって、以下のステップ:
a)二量体核酸色素、プロテアーゼ、および緩衝剤を含む染色組成物を、前記ミルクと混合し;
b)ステップa)の混合物を、約5秒間などの約1から約10秒間、約15から約50kHzで適宜超音波処理し;
c)混合物を、約62℃から約68℃の温度で、約1分から約5分間インキュベートし;
d)ステップc)のインキュベートした混合物を、約5秒間などの約1から約10秒間、約15から約50kHzで適宜超音波処理し;
e)前記混合物またはその一部の中の前記色素で染色した細胞を、フローサイトメーターを用いて計測すること
を含む前記方法であって、ここで、
核酸は式:
Q1-架橋-Q2
を有し、ここでQ1およびQ2は架橋によって連結される核酸色素部位であり、
Q1およびQ2は同じであり、構造I、構造II、および構造IIIを有する核酸色素部位から成る群から選択され、
架橋は
【化11】
から成る群から選択される式を有し、
緩衝剤はトリスである、方法。
【請求項32】
前記の請求項のいずれかに記載の方法を実行するために設計された装置であって、以下:
液体サンプルを混合カップに供給するためのサンプル流入口;
混合カップに染色組成物を供給するための染色組成物流入口、ここで、前記染色組成物は二量体核酸色素および緩衝剤を含み、前記二量体核酸色素は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する;
前記液体サンプルを前記染色組成物と混合して、混合物を得るための前記混合カップ;
前記混合物を、約45℃から約95℃の適切な温度に、10分未満の時間加熱するための発熱体;
前記混合物またはその一部を得て、前記混合物またはその一部を測定モジュールに供給するための出口;
混合物または前記その一部で染色された細胞を計測するための測定モジュール;
を含む前記装置であって、当該装置は適宜、前記混合物に超音波の形態でエネルギーを与えるための超音波処理機を含み、ここで、超音波処理機の先端は前記混合カップの内部に配置されているか、または、前記混合カップに対して配置されている、装置。
【請求項33】
a)液体サンプルおよび染色組成物を混合カップに分注するためのサンプル流入口および染色組成物流入口を制御し、
b)液体サンプルおよび染色組成物を混合カップ中で混合して混合物を得るための混合カップを制御し、
c)混合物を超音波処理するための任意の超音波処理機を適宜制御し、
d)混合物を、約45℃から約95℃の適切な温度に10分未満の時間加熱するための発熱体を制御し、
e)インキュベートした混合物を超音波処理するための任意の超音波処理機を適宜制御し、
f)混合物またはその一部を計測モジュールに供給するための出口を制御し、
g)混合物またはその一部に含まれる前記色素で染色された細胞を計測するための計測モジュールを制御する
ように構成された制御装置をさらに含む、請求項32に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願と参照による引用)
本願はシリアル番号EP16160837.7(2016年3月17日出願)の欧州特許出願の利益を主張する。
前記の出願、およびそれに含まれる、またはその経過で引用される全ての文献(「出願引用文献」)、並びに出願引用文献において引用されるまたは参照される全ての文献、並びに本明細書で引用または参照される全ての文献(「本明細書引用文献」)、並びに本明細書引用文献において引用または援用される全ての文献は、本明細書で、または本明細書で引用によって援用される任意の文献で言及される、任意の製品についての製造者の説明書、記載、製品の仕様、および製品仕様書と共に、引用によって本明細書に援用され、本発明の実施に用いられうる。より具体的には、全ての参考文献は、それぞれの個々の文献が引用によって援用されることが具体的に、および個別に示されているかのように、引用によって援用される。
【0002】
本発明は生物学的液体などの液体サンプル中の体細胞および/または微生物などの細胞の、迅速な定量のための方法および手段に関する。さらに具体的には、本発明は蛍光色素を用いることによる、生乳中の細菌の計測のための方法および手段に関する。
【背景技術】
【0003】
食品、飲料、医薬、環境、製造、および医療業において、微生物(特に生きた細菌細胞)を検出および定量する技量は絶えず求められている。農業において、黄色ブドウ球菌などの細菌の存在によって、ウシの乳腺炎などが引き起こされることがあり、ミルクに存在する場合、消費者に有害でありうる。乳腺炎の検出自体はしばしば、乳腺炎の間にミルクに移動した体細胞(白血球:白血球細胞および上皮細胞)を計測することに基づく。(乳腺炎の存在に関係のない)正常なミルク中に、ccあたり0から500,000体細胞を有することが一般に許容される一方で、ccあたり100万以上の数の体細胞が、乳腺炎の確かな徴候である。当該分野において、ミルク中の体細胞の数を決定する様々な方法が教示されており、それによってミルクがヒトの消費に不適切であることの明確な指標となる。
【0004】
ミルクが乳腺炎を患っているウシからのものであるかどうかを検出するために、体細胞の数を測定することができることは重要であるが、言うまでもないことであるが、(生および/または加工)ミルクなどの生物学的液体における任意の種類の細菌の数を追跡して、ヒトの消費にとって安全であることを確認することは極めて重要である。当該分野において、ミルクのような乳製品などの液体サンプル中の細菌を検出するための多くの異なる方法が教示されている。
【0005】
生乳中の細菌を検出し計測するための従来の方法は標準平板菌数測定法によるが、これにはおよそ48時間を要する。この方法により、単位体積あたり、多数のコロニー形成単位(CFU)が得られる。この標準平板菌数測定法と同等に信頼できるが、よりさらに迅速な、ミルク中の細菌の計測および測定方法を用いることが明らかに望ましい。
【0006】
EP0750678B1はイオンキレート剤、タンパク質分解酵素、界面活性剤、および細菌特異性蛍光色素の混合物を含む組成物を用いることによる、液体サンプル中の細菌の検出方法を開示する。当該混合物はサンプル中の細胞の溶解を引き起こし、タンパク質粒子および細胞デブリを分解および可溶化させ、細菌を染色する。次のフローサイトメトリーのステップを用いることによって数を計測する。当該方法の欠点は、用いる試薬(イオンキレート剤および界面活性剤など)の数である。当該方法において、有毒な試薬である臭化エチジウムなどの細胞を貫通することが知られている蛍光色素が用いられる。有毒な試薬の使用は、面倒な廃棄物の処理およびサンプルごとに高いコストを要する。一般に、非毒性試薬を用いることが望ましい。
【0007】
WO02/08454は、生存細胞の酵素の活性によって検出可能なほどに変化する色素(二酢酸フルオレセインまたはOregon Green(登録商標)など)を用いることによって、液体サンプルに含まれる生存細胞の割合を測定し、それによって非生存細胞の数に対する生存細胞の数を比較する方法を開示する。当該方法の欠点は、遠心分離に要する時間がかかること、および細胞の生存に依存する色素を用いるため、いくつかの生細胞など、全ての細胞を検出することができないことである。
【0008】
WO00/12750は、細菌との相互作用によって検出可能な蛍光性生成物を生じる蛍光性基質を含む培地とともにミルクをインキュベートすることによって、ミルク中の細菌の存在を評価する方法を開示する。当該方法は、細菌および蛍光性基質のインキュベート時間を少なくとも7時間有するという欠点を有し、これは乳製品の迅速な加工には長すぎる。
【0009】
他の方法は、ミルクなどの液体タンパク質含有サンプル中の細菌の存在を測定するために、ポリメラーゼ連結反応(PCR)に基づく、またはループ介在等温増幅(LAMP)技術を応用したシステムを用いている。これらの核酸増幅/検出方法の多くは時間を要し、時に細菌の分解および遺伝物質の抽出および/または沈殿を必要とするため、これらの生成物は一般に複雑であり面倒である。
【0010】
WO2013/083754は、細菌と相互作用する(特異的)抗体が用いられ、これをその後の染色工程によって検出することができる、ミルク中の細菌の検出方法を開示する。当該方法を用いる欠点は、染色工程および特定の細菌に対する特異的抗体を用いることである(そのような抗体が結合していない細菌が見落とされうる)。言い換えれば、抗体は常に1つの抗原に対してある種の特異性を有し、他の抗原には有さないが、ミルクに存在する全ての細菌を計測することが必要である。さらに、(組み換え)抗体を用いることによる相対的に高いコストは、当該方法のさらなる欠点である。
【0011】
JP2013081424は等電点沈殿による除タンパク質化を必要とし、蛍光試薬を用いて(生)細菌を検出することができた後の濾過をさらに必要とする方法を開示する。この特定の方法における欠点は、複雑な除タンパク質化および時間を要する精製方法である。
【0012】
EP1918385B1は、サンプルを最初に脂肪分解酵素およびプロテアーゼで処理し、次いでDNAが核染色剤によって染色された後、トポイソメラーゼ毒および/またはDNAジャイレース毒によってサンプルを処理するステップを続ける、フローサイトメトリーによる液体サンプル中の細菌の検出方法を開示する。この方法は多くの高額な色素、および時間を用いるという欠点を有し:異なるステップが、合計で1から48時間続く手順になる。
【0013】
Gunasekeraら(A flow cytometry method for rapid detection and enumeration of total bacteria in milk. 2000. Appl Environ Microbiol 66(3):1228-1232)は、SYTO(登録商標)BCを蛍光核酸染色剤として使用し、プロテアーゼ(Savinase(登録商標))によって処理することで、ミルク中のタンパク質小球を明らかにし、次いでフローサイトメトリーによってUHTおよび生乳サンプル中の細菌を検出および計測することを開示する。この方法の欠点としては、Gunasekeraらはさらなる遠心分離のステップであると開示しており、これは時間を要し迅速な検出システムにおいては煩雑である。実際に、Gunasekeraらによって開示された方法は、最終的な解析の前におよそ60分を要する。これはまだ比較的長い手順である。
【0014】
US2015/0056625 A1はエマルジョン(水/脂肪混合物)を透明にして、そのようなエマルジョン中での後の細胞の測定を可能にする試薬を開示する。
CN101050416は、塗抹装置、乾燥装置、洗浄/乾燥装置およびスライドガラスを用いた顕微鏡検出装置による、ミルク中の細菌の顕微鏡検査方法について記述する。
【0015】
当技術分野において既知の上記の方法のいずれも、迅速で、わずかなステップしか必要とせず、信頼性が高く、高価でなく、安全である方法を教示していない。当技術分野において利用可能なおよび前記に列挙した、方法および手段にもかかわらず、(生)乳などの生物学的液体における細菌物質を検出するための高スループットで、安全、迅速、および信頼性の高い方法は必要とされている。列挙した方法の多くは、遅く、有毒な試薬を用い、煩雑であり、および/または高価であるかのいずれかであり、そのため、大規模製造プロセスおよび高スループットスクリーニングに適切でない。
本出願における任意の文献の引用または特定は、そのような文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものではない。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、液体サンプル中の細胞を計測するための方法であって、以下のステップ:
a)二量体核酸色素および緩衝剤を含む染色組成物を前記サンプルと混合し;
b)ステップa)の混合物を適宜超音波処理し;
c)約45℃から約95℃の温度で10分未満の時間、混合物をインキュベートし;
d)ステップc)でインキュベートした混合物を適宜超音波処理し;
e)前記混合物またはその一部中の前記色素で染色された細胞を計測すること
を含む前記方法に関し、ここで、核酸は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する。この方法の利点は、迅速で信頼性が高く、細胞非透過性および非変異原性であり、そのため使用において安全である、安全な核酸色素を用いることである。これらの細胞を計測することを可能にするために、これらの色素が全ての細胞の細胞膜に貫通するという問題は、本発明によって解決される。
【0017】
好ましい実施態様において、二量体核酸色素は、必要に応じて解離する機構によってDNAに結合することができる。
染色組成物の好ましい組成物、架橋、Q1、およびQ2の好ましい化学的性質、温度およびpHに関するインキュベーションステップc)の好ましい条件、並びに細胞計測の好ましい方法に関する、さらに好ましい実施態様が特許請求の範囲で定義される。
【0018】
好ましい実施態様において、前記細胞は体細胞および/または細菌細胞である。別の好ましい実施態様において、前記液体サンプルは、ミルク、血液、唾液、便および髄液から成る群から選択される生物学的サンプルである。ウシが乳腺炎を患っているかどうか、および/またはミルクサンプルがヒトの消費に適切であるかどうかを決定するために、特に生乳サンプルなどの動物のミルクサンプルが、生乳中の細菌および/または体細胞の数を測定するのに好ましい。本発明の別の局面において、前記液体サンプルは廃水などの環境サンプルである。
【0019】
さらに別の局面において、本発明は特許請求の範囲に定義される装置に関する。
そのため、いずれの既知の製品、製品の製造方法、または製品の使用方法も本発明の範囲内に含まないことは本発明の目的であり、これにより出願人は権利を留保し、もって既知の任意の製品、工程または方法の放棄を明らかにする。さらに注意すべきは、本発明は、USPTO(35U.S.C §112、第1段落)またはEPO(EPC第83項)の記載要件および実施可能要件を満たさない、いずれの製品、工程または製品の製造または製品の使用方法を本発明の範囲に含むことを意図せず、これにより出願人は権利を留保し、もって既知の任意の製品、製品の製造工程、または製品の使用方法の放棄を明らかにする。本発明の実施において、EPC第53項(c)並びにEPC規則28(b)および(c)に従うことが有利でありうる。本出願の系統、または他の任意の系統、または第三者の任意の先願における出願人の、任意の特許された特許出願の対象である任意の実施態様を明確に放棄している全ての権利は、明確に留保される。本明細書に記載のいずれも保証として解釈されるべきではない。
【0020】
注意すべきことであるが、本開示、特に特許請求の範囲および/または段落において、「含む」「含まれる」「例えば」などの用語は、米国特許法に記載される意味を有し;例えば、それらは「含む」「含まれる」「例えば」などを意味しうる;「実質的に~から成っている」および「実質的に~から成る」などの用語は、米国特許法に記載される意味を有し、例えばそれらは要素を明確に列挙しなくてもよいが、先行技術において発見された、または本発明の基本的なまたは新規な特徴に影響する要素を排除しない。
これらのおよび他の実施態様は、以下の詳細な説明によって開示され、明らかになり、また含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の詳細な説明は、例示のために示され、本発明を記載される特定の実施態様のみに限定することを意図せず、付属の図面と併せて最もよく理解されうる。
図1図1は、染色した大腸菌のフローサイトメーターのデータを示す。フローサイトメーターにおける3つの蛍光検出器は、以下の光学フィルター;527nm バンドパス(FL1)、590nm バンドパス(FL2)、および630nm ロングパス(FL3)を有する。FL1およびFL2蛍光チャネルを用いて、染色された細菌(それぞれCおよびA)を特定した。長方形の領域は、FL1対FL2の二次元相関プロットにおいて、染色された大腸菌として特定された陽性染色細胞の周辺に定めた(B)。
図2図2は、GelGreen(商標登録)を用いたフローサイトメーター細菌計測数のlog値対、Petrifilm(登録商標)計測によるCFU計測数のlog値のプロットにおける、明確な線形関係を示す。
図3図3は、(A)トリス緩衝生理食塩水(pH8.5)、(B)細菌が添加されていないが、本発明のプロトコルに従って処理された生乳、および(C)大腸菌細菌を混入させた生乳サンプル中の、GelGreen(登録商標)で染色された大腸菌のフローサイトメトリーのデータを示す。混入生乳において、大腸菌の明らかな増殖が特定され、FL1FL2計測領域と一致した。
図4図4は、異なる種類の細菌を混入生乳(RM)サンプルの計測数のmLあたりのフローサイトメーター(FCM)計測数のlog対、mLあたりのPetrifilm(登録商標)CFU計測数のlog値のプロットを示す。細菌の略語は実施例3に記載される通りである。
【0022】
図5図5は、3つの異なる色素および2つの異なる加熱プロトコルを用いた、異なる染色組成物の、大腸菌の染色能力を示す棒グラフである。3つの色素はGelGreen(登録商標)、TOTO(登録商標)-1およびSYBR(登録商標)Safeである。GelGreen(登録商標)については、棒グラフは左から右に、1)50℃のトリス緩衝生理食塩水(pH8.5)、2)23℃のトリス緩衝生理食塩水(pH8.5)、3)50℃の生理食塩水溶液(0.9%)および4)23℃の生理食塩水溶液(0.9%)である。TOTO(登録商標)-1およびSYBR(登録商標)Safeについては、棒グラフは左から右に、1)50℃のトリス緩衝生理食塩水(pH8.5)および2)23℃のトリス緩衝生理食塩水(pH8.5)である。
図6図6は、大腸菌を混入させ、それぞれ60℃(左)、40℃(中央)、および23℃(右)において本発明のプロトコルでインキュベートした生乳サンプルのフローサイトメトリーのドットプロットを示す(上部3つのパネル)。下部3つのパネルは、それぞれ60℃(左)、35℃(中央)および25℃(右)で、大腸菌と0.9%の塩を含む水(生理食塩水)に混入させ、インキュベートして得たフローサイトメトリーのドットプロットを示す。
図7図7は、液体サンプル中の細胞の計測装置を概略的に示す。
図8図8Aは、液体サンプル中の細胞の計測装置の混合ユニットの3次元画像を概略的に示す。図8Bは、図8Aの混合ユニットの断面図を概略的に示す。
図9図9は液体サンプル中の細胞の計測装置をさらに概略的に示す。
【0023】
図10図10は、本発明のプロトコルに従って測定した、2つの異なる生乳サンプルのフローサイトメトリーのドットプロットを示す。左のパネルは体細胞の高い計測数、および細菌サンプルの高い計測数のドットプロットを示し、右のドットプロット体細胞の低い計測数、および細菌サンプルの低い計測数を示す。図中のFL1、FL2の長方形の領域は、細菌が可視の領域(左下の領域)および体細胞が可視の領域(右上の領域)を示す。
図11図11は、本発明に記載の方法によって測定した29のミルクサンプル中の体細胞の計測数(y軸)および確立された参照方法を用いた計測数(x軸)の相関プロットである。この相関関係のRは0.9684であった。
図12図12は、本発明に記載の方法によって測定した同じ29のサンプル中の細菌細胞の計測数と、当技術分野において用いられる従来のプレート計測方法による値との相関プロットである。この相関関係のRは0.8247であった。
図13図13は、それぞれの試験サンプルについての、4つの試験色素の棒グラフを示す。それぞれのサンプルについて、棒グラフは左から右に、1)参照方法(GelGreen(登録商標))、2)EvaGreen(登録商標)、3)SYTOX(登録商標)Greenおよび4)ヨウ化プロピジウムであった。「ブランク」は精製水、「新鮮なミルク」は地元の農家から得られた24時間未満の新鮮な生乳、「24hミルク」はミルク工場から得られた24時間経過したミルク、「48hミルク」はミルク工場から得られた48時間経過したミルク、「混入ミルク」は生きた大腸菌を混入させた新鮮な生乳、および「混入および加熱ミルク」は、加熱(死亡)した大腸菌を混入させた新鮮な生乳である。IBC数は、mlあたり百万の計測数で示す。
【0024】
図14図14は、それぞれの試験サンプルに対する4つの試験緩衝剤についての棒グラフを示す。それぞれのサンプルについて、棒グラフは左から右に、1)参照方法(トリス緩衝生理食塩水)、2)NaClを含まないトリス溶液(ここでは「NaClを含まないTN」と称する)、3)CAPSおよび4)重炭酸ナトリウムである。「ブランク」は精製水、「新鮮なミルク」は地元の農家から得られた24時間未満の新鮮な生乳、「24h経過ミルク」は牛乳工場から得られた24時間経過したミルク、および「48h経過ミルク」は牛乳工場から得られた48時間経過したミルクである。IBC数は、mlあたり百万の計測数で示す。
図15図15は、それぞれの試験サンプルについての3つの試験温度の棒グラフを示す。それぞれのサンプルについて、棒グラフは左から右に、1)参照方法(68℃)、2)55℃および3)40℃である。「ブランク」は精製水、「新鮮なミルク」は地元の農家から24時間未満に得られた新鮮な生乳、「混入された新鮮なミルク」は生きた大腸菌を混入させた新鮮な生乳、「混入および加熱した新鮮なミルク」は、加熱(死亡)した大腸菌を混入させた新鮮な生乳、および「24h経過した汚染されたミルク」は牛乳工場から得られた、通常よりも細菌の計測数が高い、24時間経過したミルクである。IBC数は、mlあたり百万の計測数で示す。
図16図16は、それぞれの試験サンプルについての2つの試験温度の棒グラフを示す。それぞれのサンプルについて、棒グラフは左から右に、1)参照方法(68℃)および2)90℃である。「ブランク」は精製水であり、「新鮮なミルク」は地元の農家から24時間未満に得られた新鮮な生乳であり、「24h時間経過したミルク」は牛乳工場から得られた24時間経過したミルク、および「混入ミルク」は生きた大腸菌を混入させた新鮮な生乳である。IBC数は、mlあたり百万の計測数で示す。
【0025】
図17図17は、それぞれの試験サンプルについての3つの試験色素の棒グラフを示す。それぞれのサンプルについて、棒グラフは左から右に、1)参照方法(pH=10.6)、2)pH=8.7および3)pH=7.0である。「ブランク」は精製水、「新鮮なミルク」は地元の農家から24時間未満に得られた新鮮な生乳、「混入された新鮮なミルク」は生きた大腸菌を混入させた新鮮な生乳、「混入および加熱したミルク」は、加熱(死亡)した大腸菌を混入させた新鮮な生乳、および「24時間経過した汚染されたミルク」は牛乳工場から得られた、通常よりも細胞のカウント数が高い、24時間経過したミルクである。IBC数は、mlあたり百万の計測数で示す。
図18図18は、本発明の方法で用いられる二量体核酸色素が、必要に応じて解離する機構の概略的な図を示す。
図19図19は、Q1およびQ2がいずれも、本明細書に記載の構造Iを有するアクリジンに基づく核酸色素であり、式:-(CH-C(=O)NH-(CH-O-(CH-NH(O=C)-(CH-を有する架橋によって連結される、二量体核酸色素であるAOAO-12の化学構造を示す。
図20図20は、Q1およびQ2がいずれも、本明細書に記載の構造Iを有するアクリジンに基づく核酸色素であり、式:-(CH-C(=O)NH-(CH-[O-(CH-O-(CH-NH(O=C)-(CH-を有する架橋によって連結される、二量体核酸色素であるAOAO-13の化学構造を示す。
図21図21は、Q1およびQ2がいずれも、本明細書に記載の構造IIを有する非対称シアニンに基づく核酸色素であり、式:-(CH-C(=O)NH-(CH-[O-(CH-O-(CH-NH(O=C)-(CH-を有する架橋によって連結される、二量体核酸色素であるTOTO-13の化学構造を示す。
図22図22は、Q1およびQ2がいずれも、本明細書に記載の構造IIIを有するフェナントリジニウムに基づく核酸色素であり、式:-(CH-C(=O)NH-(CH-[O-(CH-O-(CH-NH(O=C)-(CH-を有する架橋によって連結される、二量体核酸色素であるET-27の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
グラム陽性菌、グラム陰性菌、好気性菌嫌気性菌および微好気性菌などの、多様な種類の微生物が一般にミルク中には存在し、これらは様々な細胞配列で生育し、およそ直径0.5から8ミクロンの範囲の大きさを有する。生乳中の細菌の正確な組成および数は、地理的におよび季節的に変化しうる。このことと、前記の当分野において用いられる(標準的な)方法について既知の欠点を踏まえて、生乳中に通常存在する他の物質に干渉されることなく、ミルク中に存在する様々な種類の細菌を検出するために、比較的単純で、安全、迅速な方法が必要とされる。しかしながら、生物学的液体、特に生乳の複雑さによって、それに含まれる細菌の迅速な検出、計測および列挙は、特に蛍光色素を用いる場合に難しい。ミルクは、リボフラビンおよびベータカロテンなどのいくつかの構成要素の存在に起因して、固有のバックグラウンド蛍光を示す性質を有する。ミルクサンプル中の細菌を染色するために蛍光色素が用いられる場合、そのような色素はまた、外膜タンパク質に結合する乳脂肪球に非特異的に結合しうる。このことによって明らかに、正確な読み取り値が阻害され、蛍光バックグラウンドシグナルが増加する結果になりうる。
【0027】
哺乳動物細胞におけるおよそ3ギガ塩基対と比較して、およそ2から8メガ塩基対(Mbp)の範囲でありうる小さなゲノムサイズの細菌に特に関連性がある。
【0028】
本発明は、ヒト細胞に色素が透過しないという意味で安全である色素を用いて、液体サンプル中の細胞を計測するための、迅速で信頼性が高い、安全な方法に関する。本発明の方法は計測する細胞を、計測する細胞を含む反応容器(混合カップとも呼ばれる)中でのみ色素を透過可能にする。本発明は、脂肪、細胞、タンパク質、およびミネラルを含みうる(生)乳などの生物学的液体サンプル中においても、迅速で信頼性の高い細胞の計測に適切である。本発明に記載の液体サンプル中の細胞を計測するための方法は、以下のステップ:
a)二量体核酸色素および緩衝剤を含む染色組成物を前記サンプルと混合し
b)ステップa)の混合物を適宜超音波処理し;
c)約45℃から約95℃の温度で10分未満の時間、混合物をインキュベートし;
d)ステップc)のインキュベートした混合物を適宜超音波処理し;
e)前記混合物、またはその一部中の前記色素によって染色された細胞を計測すること
を含み、ここで、核酸は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2で連結される。]
を有する。
【0029】
最初の作業中に、生乳を緩衝溶液中で希釈し、細胞透過性核酸染色SYTO(登録商標)9を用いて、ミルク中に含まれる細菌の染色に用いた。光源として488nmのレーザー、前方角および直角散乱光検出器、および3つの蛍光検出器を備えたフローサイトメーターを用いて、標識された細菌からの蛍光を検出した。最初の実験におけるフローサイトメーター中の3つの蛍光検出器は、以下の光学フィルターを有する;527nmバンドパス(FL1)、590nmバンドパス(FL2)、および630nmロングパス(FL3)。フローサイトメーターは、解析したサンプルの体積の測定を提供し、単位体積あたりのカウントが得られるシステムを利用している。細菌が混入された生乳が生理食塩水緩衝液で希釈され、SYTO(登録商標)9で染色された場合、フローサイトメーターによって検出された蛍光シグナルは、細菌を混入させていない生乳で検出された蛍光と同じであった。結論としては、生乳中の様々な成分からのバックグラウンドの蛍光シグナル、およびそれらの成分への色素の非特異的な結合がシグナルを支配し、一切の細菌に関連する蛍光を検出することが不可能であった。さらに、ミルク中の乳脂肪球、カゼインミセル、および他の要素からフローサイトメトリーで検出される大きな散乱光シグナルによって、細菌の検出における前方角および直角散乱光の使用ができなかった。バックグラウンドシグナルを抑制するために、本発明の発明者らはそのような干渉を最小化する試みを行った。これは生乳の様々な化学的および物理的な処理、並びに細菌を染色する様々な核酸色素を探索することに関する。DNAが細胞構造内に維持されるために、細菌を十分に無傷で保存しながら、ミルク中のタンパク質を分解する能力について、様々な酵素を研究した。
【0030】
様々な温度、緩衝剤、およびpHの範囲を調査して、他の場合には細胞非透過性である核酸色素の透過性を最適化し、それによって核酸色素による細菌の染色を改善した。生乳中の様々な成分の酵素分解、および細菌の染色の改良の補助として、サンプルの超音波処理もまた研究した。
【0031】
染色組成物
本発明の方法において用いられる染色組成物は、緩衝剤および二量体核酸色素を含み、ここで、二量体核酸は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する。ある実施態様において、染色組成物はさらに、セリンエンドペプチダーゼなどのプロテアーゼを含む。染色組成物の異なる成分は、以下にさらに詳細に記述される。
【0032】
二量体核酸色素
本発明者が本明細書において特定の種類の核酸色素について試験し、式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する核酸色素のみが、本発明の方法において用いられる場合に良好な性能を示すことが判明したように、用いる染色組成物が特定の種類の核酸色素を含むことが本発明に重要であることが判明した。本発明の染色組成物において用いられる二量体核酸色素は、同一の蛍光単量体核酸色素部位の対を含みうる。Q1およびQ2が同じである場合、得られた核酸色素はホモ二量体である。Q1およびQ2が異なる場合、得られた二量体はヘテロ二量体である。好ましくは、本発明の染色組成物中で用いられる二量体核酸色素はホモ二量体である。市販で入手可能な核酸色素GelGreen(商標登録)、EvaGreen(登録商標)およびGelRed(商標登録)は、米国特許第7,601,498号および7,803,943号によって変換され、これらは引用によって本明細書に援用される。
【0033】
これらの色素は、臭化エチジウムなどの細胞透過性で変異原性の既知の色素を安全な方法で置き換えることによって、アガロースゲル中の二本鎖DNAおよび一本鎖DNAまたはRNAの染色において用いるために開発されたが、(生存)細胞の染色および/または計測に用いるためには開発されていない。これらはさらに、低い毒性、優れた感受性および並外れた安定性を有するように設計された。安全な方法で遊離したDNAを染色するために開発されているため、これらの製品の安全性データによると、これらの色素は37℃においてヒト細胞に対して確実に細胞非透過性であるように選択された。これらの製品の安全性シートに記載されている試験は、以下のステップ:
-HeLa細胞を当該核酸色素とともに、30分間37℃で、アガロースゲル中でのDNAの染色に適切な色素濃度でインキュベートし、
-当該色素に適切な、光学フィルターセットを用いた蛍光顕微鏡観察を行い、細胞の染色を検出すること
を含む。
【0034】
そのため、37℃、中性pHで30分間のインキュベーション後、次いで当該色素に適切な光学フィルターセットを用いた蛍光顕微鏡によって、HeLa細胞の検出可能な染色がなかったことから決定されるように、HeLa細胞に浸透しない場合、本明細書に記載される通り、核酸色素は「細胞非透過性」である。
【0035】
非常に重要なことであるが、GelGreen(登録商標)などのこれらの二量体核酸色素の化学構造は、特に生物学的条件下で色素が細胞膜を通過することができないように設計されており、そのためそれらは「細胞非透過性」になり、それによって全体の細胞を染色するためには用いることができないことに注意されたい。このように、本発明の発明者は最初に、ミルクサンプル中の対比染色として用いるためにGelGreen(登録商標)を、サンプル中の他の成分を染色するが(細菌)細胞は染色しないであろうと推測して選択した。驚くことに、およそ50から60℃の温度において、トリス緩衝生理食塩水(pH8.5)で希釈した生乳サンプルにおける色素の実際の使用によって、細菌細胞が染色される結果となった。さらなる調査によって、GelGreen(登録商標)は室温(23℃)で、生理食塩水中においても、トリス緩衝生理食塩水中においても、細菌細胞を染色しないことが示された。さらに、NaCl溶液(=生理食塩水)中、50℃においては、GelGreen(登録商標)による細菌の最小限の染色しか見られなかった(図5)。これらの結果から、温度、色素、染色溶液の組成および可能なpHの組み合わせが、生乳中の細菌の適切な染色を得るために重要であることが示唆される。
【0036】
本発明で用いられる核酸色素は、本明細書において「架橋」と称されるリンカーによって連結される2つの核酸色素部位を含み、それらによって二量体核酸色素を形成する。さらに、2つの核酸色素部位は、主にH二量体である分子内二量体を形成する傾向があり、これが特に製造される核酸色素において有用な性質である。分子内二量体形成は、水溶液中の二量体色素の吸収スペクトルと、水溶液中の比較する単量体色素の吸収スペクトルを比較することによって確認されうる。分子内二量体形成はいずれも、二量体色素中の単量体色素成分のスペクトルを、比較する単量体色素のスペクトルに対して大きくシフトさせるはずである。この点について、大きなシフトは例えば、約10nmより大きくてもよい。
【0037】
この分子内二量体形成によって、本発明の方法で用いられる二量体核酸色素は、溶液中の場合、大部分がヘアピン上の構造であると考えられる。この色素のヘアピン上の構造または状態は、核酸に対して不活性であるか、核酸との相互作用または溝への結合が不可能である。溶液中、および核酸の存在下では、色素は、少量のヘアピン構造との実質的な平衡が存在するオープンランダムな配置または状態であるだろうと考えられている。色素のオープンランダム配置または状態は、核酸に対して活性であり、核酸に相互作用または結合することができる。色素が漸増量の核酸中に存在する場合、平衡はヘアピン状態から中間体、オープンランダム状態、またはDNA結合状態へのシフトが生じる。この機構は、時に「必要に応じて解離する、DNA結合機構」と称され、バックグラウンド蛍光を減少させ、時に色素の毒性を減少させうると考えられている。本明細書で用いられる二量体核酸色素は、分子内二量体形成または、ヘアピン構造の形成を行うことができる。さらに、本発明で用いられる二量体核酸色素は、例えば、米国特許第7,601,498号に記載されるように、必要に応じて開示する機構でDNAに結合することができる。必要に応じて解離する機構は図18に示される。
【0038】
いくつの色素に関するH二量体形成現象は、West, et al., J. Phys. Chem. (1965); Rohatgi, et al., J. Phys. Chem. (1966); Rohatgi, et al., Chem. Phys. Lett. (1971); and Khairutdinov, et al., J. Phys. Chem. (1997)において記載されている。架橋が柔軟で、中性、または実質的に中性な炭化水素リンカーであり、適宜1つ以上の中性の核酸結合促進基NABEGを含む場合に、分子内H二量体形成が促進されうる。二量体色素中のH二量体形成は、2つの主な利点に関連しうる。1つの主な利点は、蛍光シグナルの大きな増加によって示されるように、DNA結合時の蛍光の実質的な増加と相まって、バックグラウンド蛍光が時に劇的に減少することである。他の主な利点は、二量体色素中のH二量体形成によって、色素の毒性、特に変異原性が大きく減少しうることである。この点に関して、変異原性の大きな減少は、エームズ試験または同等の試験を用いて測定して、EBに対して少なくとも約20%程度でありうる。減少した変異原性は、色素の細胞膜透過性および有効濃度の減少に少なくとも一部起因しうると考えられている。さらに、二量体核酸色素の分子量は、一般に実質的にまたは有意に大きく、例えば既知の核酸ゲル染色剤の分子量よりも約2倍大きい。一般に、大きな分子量を有する分子は、小さな分子量を有する分子よりも、細胞膜を透過するのがより困難である。確かに、本発明の方法で用いられる二量体核酸色素は細胞非透過性である。
【0039】
本発明の方法で用いられる式:Q1-架橋-Q2を有する二量体核酸色素において、架橋はQ1およびQ2を共有結合的に結合する。本発明の方法で用いられる核酸色素の架橋成分は、約10から約100、約15から約80、約20から約50の非水素原子などの、約8から約150の非水素原子を含む、実質的な脂肪族である。架橋は、比較的限定された範囲内で正電荷を帯びているか、実質的に電荷的に中性であってもよく、分子内二量体形成を促進して二量体色素を生成する、実質的に柔軟な構成成分である。架橋の構成成分は、そのような限定的な正電荷または実質的に中性を提供するように選択されうる。実際に中性を含む、実質的な中性的な性質は以下でさらに議論する。実質的に柔軟な性質は一般に、実際の脂肪族の性質を含む、架橋の実質的に脂肪族の性質に関連する。この実質的な脂肪族の性質は一般に、架橋の非芳香族性または架橋の非剛直性に関連する。
【0040】
架橋は少なくとも1つの独立した核酸結合促進基(NABEG)を含みうる。NABEGは、静電気相互作用、疎水性相互作用または水素結合性相互作用の形態で、核酸に結合することが可能な部位である。単なる例示として、NABEGは一級アミン;二級アミン;三級アミン;アンモニウム;アミジン;N、O、Sから選択されるヘテロ原子、およびそれらの任意の組み合わせを適宜含むアリール基;高い電気陰性度のヘテロ原子を含む結合を有する部位;並びにそれらの任意の組み合わせから選択されうる。一級、二級、および三級アミンおよびアミジンは塩基性基であり、そのため生理学的pHにおいて、正に帯電しているか、少なくとも部分的に正に帯電している。アンモニウム基または四級化窒素基は、永続的に正に帯電している。一般に、正に帯電したまたは部分的に正に帯電した基は、静電気的相互作用を介して、色素の核酸への結合を促進し、これは高感度の蛍光核酸染色剤の開発において利用されうる性質である。過度な正電荷を有する架橋を用いることは、一般に二量体色素の生成に望ましくない。二量体色素の適切な架橋は、1個以下の正電荷を含みうる。架橋は実質的に柔軟であり、中性または実質的に中性なリンカーでありうる。この文脈において、実質的に中性とは、わずかな帯電をいう。例として、架橋は、例えば水溶液中の場合にごく少量の正電荷が存在しうるように、ピリジン基またはピラジン基などの弱い塩基性の構成成分を含むことができる。さらに例として、架橋が少なくとも1つの中性のNABEGを含む場合、正電荷の正確な量は一般にNABEGのpKaに関する。一般に、NABEGはpKaが高く、NABEGはプロトン化されおり、そのために正電荷を帯びている可能性が高い。例として、適切な弱塩基性のNABEG基は約8以下、または約7以下など、約11以下のpKaを有しうる。
【0041】
ある実施態様において、架橋は以下に直接記載される式(式1):
【化1】

を有する。
式2において、Lはそれぞれ架橋部位であり、Q1またはQ2に共有結合する。Lはそれぞれ独立して、単結合と、1個の炭素原子から約12個の炭素原子を含むポリメチレン単位とを含み、適宜、N、O、およびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む部位;またはN、O、およびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含むアリール基である。(CH)メチレン単位に関する下付文字、すなわちα、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、およびιは同じであっても、異なっていてもよく、それぞれ独立して関連するメチレン単位の大きさを示し、独立して0、または1から約12など、1から約20の整数である。式2の角括弧に結合した下付文字、すなわちa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して関連する式の角括弧部位の大きさを示し、独立して0または、約1から約10、または約1から約5などの、1から約20の整数である。A、A、A、A、A、A、A、A、AおよびA10は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、核酸結合促進基(NABEG);適宜、N、OおよびSから選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含む分岐アルキル;またはN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含む、少なくとも1つの飽和5または6員環である。A、A、A、A、A、A、A、A、AおよびA10は、最大で1つの正電荷を含む架橋であってもよく、または実質的に中性であってもよく、後者の場合、これらの構成要素はそれぞれ独立して、それ自体が実際に中性を含む、実質的に中性であってもよい。NABEGは、電気陰性度が高いヘテロ原子、またはSを少なくとも1つ含む、少なくとも1つの共有結合;並びにハロゲン、N、O、およびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含むアリール基を含む部位から選択されてもよい。電気陰性度が高いヘテロ原子またはSを少なくとも1つ含む、少なくとも1つの共有結合を含む部位の例としては、これらに限定はされないが、少なくとも1つのアミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオ尿素結合、エーテル結合、またはチオエーテル結合を含む部位が挙げられる。A、A、A、A、A、A、A、A、A、およびA10は、同じであっても異なっていてもよく、独立して、電気陰性度が高いヘテロ原子またはSを少なくとも1つ含む、少なくとも1つの共有結合;並びにハロゲン、N、O、およびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含むアリール基を含む部位から選択されうるNABEGであってもよい。電気陰性度が高いヘテロ原子またはSを少なくとも1つ含む、少なくとも1つの共有結合を含む部位の例としては、これらに限定はされないが、少なくとも1つのアミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオ尿素結合、エーテル結合、またはチオエーテル結合を含む部位が挙げられる。A、A、A、A、A、A、A、A、A、およびA10は、最大で1つの正電荷を含むか、または実質的に中性である架橋を含むようなものあってもよく、後者の場合、これらの構成要素のそれぞれが、それ自体で実際に中性を含む、実質的に中性であってもよい。架橋は、前記の通り、例えば約10から約100個の非水素原子など、任意の適切な数の非水素原子を含みうる。
【0042】
そのため、ある実施態様において、架橋は以下に直接記載される式(式1):
【化2】

[式中、
-Lはそれぞれ架橋部位であり、Q1またはQ2に共有結合し、独立して単結合と、1個の炭素原子から約12個の炭素原子を含むポリメチレン単位とを含み、適宜、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、またはN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基を含み;
α、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、およびιは独立して0、または1から約20の整数であり、
a、b、c、d、e、f、g、h、およびiは独立して0、または1から約20の整数であり、
、A、A、A、A、A、A、A、AおよびA10は独立して、核酸結合促進基、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含む分岐アルキル、並びにN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を適宜含む、少なくとも1つの飽和5または6員環から成る群から選択される。]
を有する。
【0043】
好ましくは、架橋は以下に直接記載される式(式2):
【化3】

[式中、
架橋のLはそれぞれ-(CH)-であり、ここで、xはそれぞれ独立して、1から11から選択される整数であり、
αは2から約20から選択される整数であってもよく、
βおよびγは独立して、0、2、または3であり、
bは0または、1から約20から選択される整数であり、
cは0、1、または2である。]
を有していてもよい。
【0044】
さらに好ましくは、架橋は以下に直接記載される式(式3):
【化4】

[式中、
架橋のLはそれぞれ-(CH)-であり、ここでxはそれぞれ5であり、
αは2または3であり、
βは2であり、
bは1または2であり、
cは0、1、または2であり、
cが1または2である場合、γは3である。]
を有していてもよい。
【0045】
非常に好ましい実施態様において、架橋は
【化5】

から成る群から選択される式を有する。
【0046】
本発明の方法で用いられる、式:Q1-架橋-Q2を有する二量体核酸色素において、Q1は核酸色素部位であり、Q2は核酸色素部位であり、Q1およびQ2は同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、Q1およびQ2は同じである。本明細書で用いられる用語「色素」は、約250nmから約1,200nmのスペクトル範囲の光を吸収することのできる芳香族分子をいう。一般に、用語「色素」は、蛍光色素、非蛍光色素、または両方を指しうる。一般に、用語「蛍光色素」は、適切な波長の他の光によって励起された場合に光を発することのできる色素をいう。本明細書で用いられる用語「核酸色素」は、核酸に結合して、色素核酸複合体を形成することのできる色素をいう。本明細書で用いられる用語「核酸色素部位」は、分子中の核酸色素の官能基をいい、本発明の二量体核酸色素の場合、この分子は式:Q1-架橋-Q2を有する。好ましい実施態様において、核酸色素部位は蛍光性である。「蛍光核酸色素」は、核酸に結合して蛍光色素核酸複合体に結合することのできる色素をいう。蛍光核酸色素は一般に、それ自体で非蛍光または弱蛍光であるが、核酸の結合によって強い蛍光になる。
【0047】
好ましい実施態様において、本発明の染色組成物中で用いられる二量体核酸色素は、蛍光核酸色素部位Q1および蛍光核酸色素Q2を含み、ここでQ1およびQ2は同じであっても、異なっていてもよい。前記のいずれかの請求項に記載の方法において、Q1および/またはQ2は蛍光核酸色素部位である。Q1およびQ2は独立してそれぞれ、アクリジンに基づく核酸色素、非対称シアニンに基づく核酸色素、フェナントリジニウムに基づく核酸色素、対称シアニンに基づく核酸色素、ピロニン核酸色素、スチリル核酸色素、DAPIの誘導体、およびHoechst色素の誘導体から成る群から選択される核酸色素に由来する蛍光核酸色素部位でありうる。DAPIおよびHoechst色素は一般に、結合形成のための反応性基を有していないため、架橋に直接結合することはできない。この文脈において、誘導体は、反応基を付加するなど、結合形成のために十分に修飾されたDAPIまたはHoechst色素などの塩基性色素をいう。好ましくは、蛍光核酸色素はアクリジンに基づく核酸色素、非対称シアニンに基づく核酸色素、およびフェナントリジニウム核酸色素から成る群から選択される核酸色素に由来する。好ましくは、Q1およびQ2は同じ蛍光核酸色素部位である。
【0048】
本発明の方法で用いられる二量体核酸色素は、色素に関する正電荷を相殺するアニオンに結合しうる。そのようなアニオンは生物学的に許容可能である。適切なアニオンの例としては、これらに限定はされないが、ハライド、サルフェート、ホスフェート、パークロラート、テトラフルオロボラート、およびヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。単なる例示として、アニオンはクロライドまたはアイオダイドでありうる。
【0049】
蛍光核酸色素部位がアクリジンに基づく核酸色素である場合、好ましくは以下に直接記載される構造(構造I):
【化6】

[式中、
-R1はそれぞれ独立して、H、C1-C2基、およびアルキルから成る群から選択され、
-架橋はR2またはR3に結合し、
-架橋がR2に結合している場合、R3はHまたは-CH3から成る群から選択され、
-架橋がR3に結合している場合、R2はH、-CH3、-NH2、-NHCH3、-CN、および-C(=O)NH2から成る群から選択され、
-R6およびR7はそれぞれ独立して、H、C1-C2基およびアルキルから成る群から選択され、
-ψは色素に関する正電荷を相殺するアニオンである。]
を有する。
【0050】
蛍光核酸色素部位が非対称シアニンに基づく核酸色素部位である場合、好ましくは以下に記載される構造(構造II):
【化7】

[式中、
-架橋はR7に結合し、
-ψは色素に関する正電荷を相殺するアニオンである。]
を有する。
【0051】
蛍光核酸色素部位がフェナントリジニウムに基づく核酸色素である場合、好ましくは以下に記載される構造(構造III):
【化8】

[式中、
-架橋はR1に結合し、
-ψは色素に関する正電荷を相殺するアニオンである。]
を有する。
【0052】
本発明のさらに好ましい実施態様において、二量体核酸色素は、以下の群:
a)Q1およびQ2がいずれも、前記の構造Iを有する蛍光核酸色素部位であり、式:
【化9】

の架橋によって連結される、二量体核酸色素、
b)Q1およびQ2がいずれも、前記の構造Iを有する蛍光核酸色素部位であり、式:
【化10】

の架橋によって連結される、二量体核酸色素、
c)Q1およびQ2がいずれも、前記の構造IIを有する蛍光核酸色素部位であり、式:
【化11】

の架橋によって連結される、二量体核酸色素、
d)Q1およびQ2がいずれも、前記の構造IIIを有する蛍光核酸部位であり、式:
【化12】

の架橋によって連結される、二量体核酸色素
から選択される。
【0053】
別のさらに好ましい実施態様において、本発明の染色組成物において用いられる二量体核酸色素は、それぞれ図19、20、21、および22で示される構造IV、V、VI、およびVIIから成る群から選択される化学構造を有する。図19、20、21、および22に示される構造は2つのアイオダイドアニオンを示すが、本明細書に記載されるものなどの他の任意の適切なアニオンが、示されるアイオダイドアニオンの代わりに用いられてもよい。
【0054】
細胞非透過性であり、必要に応じて解離する機構でDNAに結合し、前記と一致する式:Q1-架橋-Q2を有する二量体核酸色素は、BiotiumからGelGreen(登録商標)、EvaGreen(登録商標)およびGelRed(登録商標)として市販されている。さらに、これらは米国特許第7,601,498号および7,803,943号の関連する実施例において記述されるように合成することができ、これらの実施例は引用によって本明細書に援用される。
【0055】
本発明の教示に基づき、当業者は染色組成物中の二量体核酸色素の適切な濃度は、用いる色素および計測する細胞に応じて変化しうることを理解するであろう。一般的に、二量体核酸色素を含む染色組成物を、アガロースゲル中のDNAを染色するために用いるのと同じ色素の濃度と同じ範囲内の濃度、例えば、アガロースゲル中のDNAを染色するために用いられる同じ色素の濃度とほぼ同じ濃度で用いた場合に、本発明は上手く機能する。
【0056】
緩衝剤
用いられる染色組成物がさらに緩衝剤を含むことが、本発明に重要であることも分かった。緩衝剤は好ましくは有機緩衝剤であり、さらに好ましくは、緩衝剤は1級または2級アミンなどのアミンを含む。好ましい実施態様において、緩衝剤はトリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)およびCAPS(N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)から成る群から選択される。さらに好ましい実施態様において、緩衝剤はトリスである。好ましい実施態様において、緩衝剤は約20から約400mM、約40から約300mM、約60から約400mM、約80から約300mM、または約100から約200mMなどの、約10から約500mMの濃度で、染色組成物中に存在する。
【0057】
本発明の方法で用いられる染色組成物は、室温で、すなわち染色組成物の任意の予熱の前、またはサンプルとのインキュベーションの間、好ましくは約8から約11、約8から約10.6、約8.5から約10.6などの、約8から約11.5のpHを有する。pHは温度依存性があることが知られている。pH設定(本明細書においてしばしば用いられている、8から10.6のpH範囲など)について言及されている場合は、特に言及されない限り、そのようなpHを有するそのような緩衝液は室温(~25℃)で調整した。染色反応が行われている間の最終温度が、例えば本明細書に開示される好ましい温度範囲に上昇すると、pHは減少しうる。しかしながら、一般に、トリスが緩衝剤として用いられ、染色組成物が室温(RT)で約9.5の初期pHを有している場合、60℃以上の温度を維持したとき、pHは8から8.5の範囲に減少する。これは、染色組成物または染色組成物を含む混合物を加熱したとしても、本明細書に記載されるように、pHは一般に8から10.6の範囲であることを意味する。加熱によってpHが減少したことによって、pHが室温でおよそ10.6である場合には、二量体核酸色素およびトリスを含む染色組成物のpHを調整することは必要ないことが本発明者らには分かった。本明細書で用いられる用語「トリスNaCl緩衝液」、「トリス生理食塩水緩衝液」、および「トリス緩衝生理食塩水」は同義で用いられ、pHをHClによる滴定によって調整した、緩衝剤としてトリス、および150mMのNaClを含む緩衝液をいう。本明細書で用いられる用語「トリスNaCl溶液」および「トリス生理食塩水溶液」は同義で用いられ、緩衝剤としてトリス、および150mMのNaClを含む溶液をいい、このとき、pHは調整されていないがおよそ10.6である。本明細書で用いられる用語「生理食塩水溶液」および「NaCl溶液」は交互に用いられ、150mMのNaCl溶液をいう。150mMのNaClは0.9%のNaCl溶液に相当する。
【0058】
細胞を熱に晒すことは、その透過性を変化させることが知られている(US5410030を参照されたい)。しかしながら、完全な透過性を生じ、細胞非透過性の色素を通過させるのに十分に膜を損なわせるため、細胞を非常に高温(90℃以上)に晒す必要があることが、当技術分野において一般に理解されている。実際に、細胞非透過性色素TOTO(登録商標)-1は、トリス緩衝生理食塩水と細菌を50℃に加熱したときに、細菌の最小限の染色を示す(図5)。TOTO(登録商標)-1と比較して、GelGreen(登録商標)は、トリス緩衝生理食塩水中で50℃の場合、予想外に有意に異なった染色の様子を示し(図5)、温度が約62℃から約68℃に上昇した場合、さらに良好な結果を示した。細胞非透過性のGelGreen(登録商標)およびEvaGreen(登録商標)の染色の様子を、細胞透過性のSYTOX(登録商標)Greenと比較した場合、同じ結論に達した(図13)。したがって、本発明の方法は、染色組成物がTOTO(登録商標)-1またはSYTOX(登録商標)Greenを含む場合とは反対に、いずれも細胞非透過性の式:Q1-架橋-Q2を有する二量体核酸色素である、GelGreen(登録商標)またはEvaGreen(登録商標)を染色組成物が含む場合に機能する。これに基づき、染色組成物に、例えばGelGreen(登録商標)およびEvaGreen(登録商標)などの、式:Q1-架橋-Q2を有する二量体核酸色素を用いることが、本発明に重要であると結論づけられる。GelGreen(登録商標)を用いた細菌染色のために、緩衝剤としてトリスを含む染色組成物を用いることが好ましいが、他の緩衝剤でも機能する。染色組成物中に用いられる適切な緩衝剤は、有機生物学的緩衝剤、特に、好ましくはトリスまたはCAPS、最も好ましくはトリスなどのアミンを含む有機緩衝剤から選択される。さらに、GelGreen(登録商標)以外の細胞非透過性二量体核酸色素は、他の緩衝液においてより機能しうる。現在の教示に基づいて、特定の色素を用いて最適な染色が得られる正しい緩衝液を見つけることは、当業者が容易に行うことができるものである。
【0059】
細胞およびサンプル
本発明の方法によって、液体サンプル中で計測することのできる細胞は、全ての種類の細胞でありうる。好ましい実施態様において、前記の細胞は体細胞および/または細菌細胞である。好ましくは、細胞は本明細書で例示される体細胞および/または細菌である。体細胞としては、例えば、ミルク中に存在する上皮細胞、多形核白血球(PMN)、マクロファージおよびリンパ球が挙げられうる。細菌細胞としては、グラム陽性並びにグラム陰性細胞が挙げられうる。グラム陽性細菌は、リステリア・モノサイトゲネス(Lm)、黄色ブドウ球菌(Sa)およびセレウス菌(Bc)から成る群から選択されうる。グラム陰性細菌は、緑膿菌(Pa)および大腸菌(Ec)から成る群から選択されうる。
【0060】
好ましい実施態様において、液体サンプルはミルク、血液、尿、唾液、便および髄液から成る群から選択される生物学的サンプルである。特に、好ましいサンプルは、ウシから得られる生乳サンプルなどの(牛)乳サンプルである。消費者および保健機関の観点からは、ミルクサンプル中の細菌細胞の数を計測して、ミルクが消費に適当であるかどうかを決定することは有益である。農家またはミルク生産者の観点からは、同じ目的のために細菌細胞を測定することだけでなく、乳腺炎の指標とするために体細胞を計測することは有益である。
【0061】
他の好ましい実施態様において、液体サンプルは、例えば水、湖水、土壌などの環境サンプルである。液体サンプルはまた、清潔であるか、またはさらに精製が必要かどうかを決定するために、細菌数を知ることが必要とされる他の水性サンプルでありうる。
【0062】
サンプルが固体または半固体物質である場合、例えば、便または土壌の場合、固体または半固体物質は、水あるいは緩衝液に分散もしくは溶解されるかのいずれかであり、次いでこれを染色組成物中で希釈するか、または染色組成物に直接分散もしくは溶解する。どちらにしても、固体または半固体サンプルは、本発明の方法によって細胞を計測する液体サンプルになる。
【0063】
プロテアーゼ
本発明の好ましい実施態様において、染色組成物はさらにプロテアーゼ、好ましくは非特異性プロテアーゼ、さらに好ましくは、市販のプロテアーゼであるAlcalase(登録商標)およびSavinase(登録商標)などのスブチリシンA(EC3.4.21.62)などのセリンエンドペプチダーゼを含む。酵素Savinase(登録商標)およびAlcalase(登録商標)は、そのタンパク質分解性活性は、細菌以外の生乳サンプル中の物質を、妥当な短時間(加熱、適切なpH、および任意の超音波処理をして10分未満)で分解することができるため、本発明の方法に用いるのに好ましい非特異性プロテアーゼである。しかしながら、Savinase(登録商標)またはAlcalase(登録商標)と同様の酵素活性を有する他の非特異性プロテアーゼが用いられうる。計測される細胞が生物学的サンプル中の細菌細胞である場合、生物学的サンプルの他の構成要素からのノイズを軽減させるため、染色組成物がプロテアーゼを含むことが特に有益である。染色組成物がプロテアーゼを含む場合、染色組成物のpHおよびインキュベーションステップc)の温度は、酵素の活性に適切な環境を提供するために選択され、当技術分野において通常の測定を用いて、用いられるタンパク質分解酵素の種類に応じて調節されうる。用いられるプロテアーゼの分量は、プロテアーゼの種類およびその特異的活性に依存する。計測される細胞以外のサンプル中の物質からのノイズを軽減させるため、当業者は本発明に基づき、染色組成物中に存在するプロテアーゼの分量を調節することができる。例として、本発明で用いられる染色組成物は、適切には、約0.12AU/mlから約1.92x10AU/mlなどの、約0.1AU/mlから約2x10酵素AU/ml(アンソン単位/ml)を含みうる。AUは定義される通りであるが、AU/mlはpH7.5、37℃において、1分あたり、カゼインから1.0μmol(181μg)のチロシンを遊離する酵素の分量と定義される。
【0064】
超音波処理
ステップa)で得られた混合物および/またはステップc)で得られた混合物は、細胞の核酸色素の透過性を上昇させるために、適宜、超音波処理されうる。ある実施態様において、任意の超音波処理ステップb)またはd)の少なくとも1つが実施される。実施される場合、細胞の分解を避けるという意味で、計測する細胞を保存するのに十分に穏やかに超音波処理を行うことが重要である。これは、計測される細胞が、DNA染色細胞を計測することができるように細胞の構造を維持するために、DNAを十分に無傷に保持していることを意味する。超音波処理は、細菌の細胞壁が透過性になるのを助け、さらに細菌がフローサイトメトリーの計測の間、一塊にならないようにすることができうる。ある実施態様において、体細胞および細菌細胞は同時に計測し、ステップa)で得られた混合物および/またはステップc)で得られた混合物を、約20から約45kHz、または約22.5kHzから約40kHzなどの、約15から約50kHzで、約2から約9、約3から約8、約4から約7、約5から約6秒などの、約1から約10秒間、超音波処理する。サンプルと染色組成物との混合物を、超音波処理プローブをサンプル中の直接設置するか、または超音波処理プローブを、サンプルを保持しているカップに対して間接的に設置するかのいずれかによって、約1から10秒間、適宜、超音波処理し;染色組成物を含むサンプルを、約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45から約95℃の温度で、最大で1から2分間、(好ましくは混合カップ中で)インキュベートし;サンプルを次いで適宜、直接または間接のいずれかで、再び約1から10秒間超音波処理し;その後ステップe)の細胞計測を行う。
【0065】
インキュベート
染色組成物およびサンプルの混合物を、細胞を核酸色素透過性にする条件下で、ステップc)でインキュベートした。好ましい実施態様において、インキュベートは、約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から70℃、約61から約69℃、または約62から約68℃などの、約45から約95℃の温度で行われる。前記で既に説明されている通り、インキュベーションステップの間のpHは温度の上昇の影響を受けるため、染色組成物中のpHが変化する。好ましくは、インキュベーションステップc)の間のpHは、約8から約11、約8から約10.6、約8.5から約10.6などの、約8から約11.5である。ステップc)におけるインキュベーションは、9、8、7、6、4、3、または2分未満などの、10分未満、好ましくはおよそ1分の間、適切に行われる。信頼性のある細胞計測が得られる一方で、ステップc)で必要な短いインキュベーション時間は、本発明の主な利点である。
【0066】
細胞計測
インキュベーションステップc)、および任意の超音波処理ステップd)の後、用いる二量体核酸色素の蛍光を検出するための蛍光検出装置一式を用いて、染色細胞を計測する。当業者は溶液中の染色細胞を計測するための異なる方法を認識する。本発明の好ましい局面において、フローサイトメーター、蛍光顕微鏡、または蛍光イメージングシステム、蛍光光度計、または蛍光プレートリーダーなどの蛍光検出装置を用いて、染色細胞を計測する。細菌などの標識された細胞からの蛍光の検出は、好ましくはフローサイトメーター(FCMとも称される)を用いて行われる。
ある実施態様において、体細胞および細菌細胞は同時に計測される。
【0067】
本発明の非常に好ましい実施態様において、生乳中の細菌の染色(および計測)方法は、以下のように行われる:Savinase(登録商標)(またはAlcalase(登録商標))およびGelGreen(登録商標)をTris生理食塩水溶液(pH10.6)に加え、これは以下で染色組成物と称され;この染色組成物を、約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45℃から約95℃の温度で予熱し;サンプルが約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45から約95℃の温度に到達するまでの十分な期間、生乳サンプルの少量を予熱し;予熱したサンプルを、予熱した染色組成物中で、好ましくは約1:10で希釈し;サンプルと染色組成物の混合物を適宜、超音波処理プローブをサンプル中に直接設置するか、または超音波処理プローブを、サンプルを保持しているカップに対して間接的に設置するかのいずれかによって、およそ5から10秒間超音波処理し;約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45から約95℃の温度で、最大1から2分間、サンプルを染色組成物と(好ましくは混合カップ中で)インキュベートし;サンプルを次いで適宜、およそ5から10秒間、直接的または間接的に再び超音波処理し;最後に、混合物(またはその代表的な一部)をフローサイトサイトメーターで解析し、体細胞および/または細菌からの蛍光シグナルを検出し、単位体積あたりの計測を決定する。このサンプルの採取から読み出しの全体の手順は、10分未満、好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2、または1分未満の時間を要する。別の方法において、ミルクサンプルはそれ自体、混合前に予熱されないが、色素を細胞/微生物に最適に導入させる温度に予熱された染色組成物と混合する際に加熱される。
【0068】
ある好ましい局面において、前記のプロテアーゼおよび前記の二量体核酸色素はトリス緩衝生理食塩水中で混合されて、前記の染色組成物を形成する。そしてさらに別の本発明の好ましい実施態様において、前記染色組成物を前記サンプルと混合する前に、約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45から約95℃に加熱する、本発明に記載の方法が提示される。それと共に好ましくは、前記サンプルは前記染色組成物と混合する際に、約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45から約95℃に加熱される。サンプルはまた、染色組成物と混合する前に、直接予熱されうる。サンプルの種類に応じて、当業者はサンプルを予熱するか、混合の前の初期温度(ミルクは一般に冷所で保管されているか、またはウシなどの供給源から直接得られた場合、ミルクは保管温度よりも高いが、インキュベート温度よりも低い温度を有していることがある)で用いるかを決定することができる。サンプルおよび染色組成物が混合された場合、インキュベーションは、好ましいおよび最適な温度で行われ、最も効率的な色素の細胞導入が得られる。あるいは、サンプルは予熱されていない(および、例えば冷蔵保管温度を有している)が、予熱された染色組成物と混合された時は、色素導入に最適な温度に達している。
【0069】
非常に好ましい実施態様において、本発明は牛乳などのミルク中の体細胞および/または細菌細胞などの細胞を計測する方法であって、以下のステップ:
a)二量体核酸色素、プロテアーゼ、および緩衝剤を含む染色組成物を、前記ミルクと混合し;
b)ステップa)の混合物を適宜、約5秒などの、約1から約10秒間、約15から約50kHzにおいて超音波処理し;
c)約62℃から約68℃の温度において、約1分から約5分間、混合物をインキュベートし;
d)ステップc)でインキュベートした混合物を適宜、約5秒間などの、約1から約10秒間、約15から約50kHzにおいて超音波処理し;
e)前記混合物またはその一部中の前記色素で染色した細胞を、フローサイトメーターによって計測すること
を含む前記方法に関し、ここで、
-核酸は式:Q1-架橋-Q2を有し、ここでQ1およびQ2は架橋によって連結された核酸色素部位であり、
-Q1およびQ2は同じであり、構造I、構造II、および構造IIIを有する核酸色素部位から成る群から選択され、
-ここで、架橋は
【化13】

から成る群から選択される式を有し、
-緩衝剤はトリスである。
【0070】
この実施態様において、少なくとも1つの任意の超音波処理ステップb)またはd)が行われるのが好ましく、両方の超音波処理ステップが行われるのがさらに好ましい。プロテアーゼは好ましくは、セリンエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.62)である。好ましくは、プロテアーゼは、約0.12AU/mlから約1.92x10AU/mlなどの、約0.1AU/mlから約2x10酵素AU/ml(アンソン単位/ml)の分量において用いられる。染色組成物が約20から約400mM、約40から約300mM、約60から約400mM、約80から約300mM、または約100から約200mMなどの、約10から約500mMの濃度において、トリスを含むことも好ましい。
【0071】
本発明はさらに、二量体核酸色素を含む染色組成物を製造する方法であって、前記色素を適切な緩衝液中で8から11のpHで維持し、前記緩衝液中の前記色素を約47から約90℃、約50から約85℃、約52から約80℃、約57から約75℃、約60から約70℃、約61から約69℃、または好ましくは約62から約68℃などの、約45から約95℃の温度に加熱するステップを含む前記方法に関する。
【0072】
本発明の方法の利点の1つは、ミルクなどの液体サンプルの処理に、イオンキレート剤、界面活性剤の使用、または遠心分離ステップを必要としないことである。むしろ、適切な緩衝液中における熱、酵素処理、および超音波処理を、核酸染色と組み合わせで用いることによって、体細胞および/または細菌を特異的に染色しながら、液体サンプル中の物質からの蛍光シグナルの緩衝を減少させ、これによって比較的単純で迅速な方法が得られ、採取から読み出しまでに、サンプルごとに9、8、7、6、5、4、3または2分未満など、10分未満の時間を要するようになる。さらに、本解析を行うために用いる装置について説明されるように、多数のサンプルを連続的に機械の内部で測定することができる。当該方法は、細菌の保存および標識(染色)の間、サンプル中の物質の干渉を抑制するため、特定のpHおよび温度範囲、並びに任意の超音波処理、並びにタンパク質分解酵素を用いる。遠心分離、または毒性化合物の使用は必要でない。さらに、界面活性剤またはイオンキレート剤もまた必要でない。
【0073】
別の利点は、本発明の方法は、37℃において真核または原核細胞を透過せず、そのため室温においても透過しないため、通常の条件下で安全である二量体核酸色素を用いることである。言い換えれば、本発明は、体細胞および/または細菌の染色のために、GelGreen(商標登録)またはGelRed(商標登録)などの通常は生存細胞の膜を通過しない、細胞非透過性、非変異原性核酸色素を用いる方法を提示し、それによって新規な染色方法、および環境的により安全な染色物質を提供する。
【0074】
本発明のさらに別の利点は、本発明が迅速で、数ステップのみを必要とする方法に関することである。本発明は特に、高スループット測定に適切である。
【0075】
図7は、液体サンプル中の細胞を計測するための装置700を図示する。装置700は、液体サンプル中の細胞を計測する前記方法を実施するためのものである。装置700は、混合カップ710、モーター720、発熱体760、任意の超音波処理機750、サンプル流入口730、染色組成物流入口732、出口742、計測モジュール740、および任意の制御装置770を含む。適宜、軸722、洗浄液流入口734、および液体ポンプまたはバルブ731、733、735、744が提供される。混合カップ710、モーター720、発熱体760、任意の超音波処理機750、サンプル流入口730、染色組成物流入口732、出口742、軸722、洗浄液流入口734は、混合ユニットAを形成する。混合ユニットの断面図を図8に示す。
【0076】
混合カップ710は、液体サンプルを染色組成物と混合し、混合液体を超音波処理および/またはインキュベートする間、混合液体を保持するための容器を形成するためのものである。混合カップ710は、仮想軸(virtual axis)を中心に回転可能なように配置されている。混合カップ710は、軸722によってモーター720と合体されうるが、モーターはまた、磁気装置などの他の方法で、混合カップ710に回転力を提供してもよい。そのような磁気装置において、モーターは永久磁石を回転させ、混合カップ710の底部も永久磁石を有し、回転された永久磁石は混合カップ710の永久磁石に回転力を与える。液体サンプルが、液体サンプル流入口730から供給され、染色組成物が、染色組成物流入口732から供給される場合、混合カップ710はゆっくりと回転して液体サンプルおよび染色組成物を混合し、混合サンプル712が得られる。混合カップ710はまた、遠心力によって、混合カップ710中の液体712を、混合カップ710から移動させるために、比較的高速で回転することができる。
【0077】
混合カップ710は、混合カップ710の開口/上側に近い位置で、混合カップ710の直径が増加するように、傾斜した壁を有していてもよい。実施態様において、混合カップ710の内部の壁の3次元構造は、円錐台型である。さらに、図7は、混合カップ710の壁が比較的薄いことを示す。これは、熱がカップの外側からカップの内側に、壁を介して容易に移動することができるため、有利でありうる。混合カップ710の実施態様は、薄い壁を有する実施態様に限定されない。機械的および/または熱安定性の理由で、混合カップ710の壁は比較的厚いか、または混合カップの内部は固体ディスク内に形成され、その結果、混合カップ710の底部付近でより厚くなりうる。
【0078】
混合カップ710は、ステンレス鋼の材料で製造されうる。その結果、高い熱伝導率、高い酸化耐性が得られ、滑らかに研磨することなどの適切な後処理工程と組み合わせることができ、そのため、簡単に洗浄可能な表面である。用いることのできる代替材料は、当技術分野において既知の、良好な熱伝導特性を有する材料である。
【0079】
液体サンプル流入口730は、例えば、それを通して液体サンプルが混合カップ710に分注されるチューブである。装置700の内部の他の手段によって、液体を液体サンプル注入口730に供給してもよい。明確にするため、混合カップ710への液体サンプルの流量を制御することができる任意のポンプまたはバルブ731が描かれている。実施態様において、装置700は、例えば、細胞計測が得られる液体を含む容器からの液体サンプルを含む、取り込みまたは採取モジュールを含む。そのような取り込みおよび採取モジュールはまた、一連のプロセスから液体サンプルを得てもよい。
【0080】
染色組成物流入口732は、例えば、それを介して染色組成物が混合カップ710に分注されるチューブである。染色組成物は、二量体核酸色素および緩衝剤を含む。二量体核酸色素は式:Q1-架橋-Q2を有し、ここで、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。装置700の内部の他の手段によって、染色組成物を供給し、または製造してもよい。例えば染色組成物は、染色組成物を含むカートリッジからポンプで得られうる。例えば、染色組成物が混合物として利用可能でなく、染色組成物の原材料のみが利用可能である場合、染色組成物は装置700の内部の製造モジュールにおいて製造される。明確化のためにまた、染色組成物流入口732は、混合カップ710への染色組成物の分注を制御するために、任意のポンプまたはバルブ733を含みうることが図示されている。
【0081】
混合カップ710を洗浄する瞬間に、混合カップ710の内部に洗浄液を供給する、任意の洗浄液流入口734が図示される。洗浄液流入口734は、混合カップ710への洗浄液の分注を制御する、ポンプまたはバルブ735を含んでもよい。例えば、混合カップ710が空になった後、洗浄液は混合カップ710の底面表面の中心付近で供給され、洗浄液を混合カップ710から、混合カップ710の底面表面および壁に沿って動かすために、比較的速く回転する。用いる洗浄液は、例えば、水+Triton X-100、Decon 90、NaClO 0.1-1.0%、またはSurfonic JL80xである。本発明の方法において用いることのできるTritonの代替品は、リン酸トリブチルエステル、オキシラン、オキシランとの2-メチルポリマー、ソルビタン、モノ-(9Z)-9-オクタデセノエート、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル、モノ-ドデカノエート、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体、アルコールs、C9-11、D-グルコ-ピラノース、オリゴマー、デシル、オクチル、グリコシドs、D-グルコ-ピラノース、オリゴマー、C9-11アルキルグリコシドs、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)アルファ(2-プロピル-ヘプチル)-ω-ヒドロキシ、オキシラン、オキシランとの2-メチルポリマー、モノ(2-エチルヘキシル)エーテルである。
【0082】
混合カップ710の壁付近に、熱源およびセンサーも含む発熱体760が提供される。発熱体760は、混合カップ710の回転の妨げにならず、発熱体760において生成される熱が、混合カップ710の壁に十分に伝達される位置に配置される。発熱体760および混合カップ710の間には約1mmの隙間が存在する。発熱体760が、熱を生成しなければならないことを示す熱制御シグナルを受容した場合に、発熱体760は混合カップに熱を供給する。センサー(別個には示されていない)は、混合カップ710にできる限り接近した位置において、発熱体760内に供給され、発熱体および/または混合カップ710の温度を測定しうる。センサーはまた、混合カップ710中の混合物の温度を測定するために、混合カップ710に接近した別の部位において供給されうる。測定される温度は、混合カップ710の内部の液体712を特定の温度にするために、熱を制御するために用いられる。熱源およびセンサーは適宜、制御装置770に組み込まれ、制御ループを形成する。熱の制御、および混合カップ710に近接して配置されるセンサーの使用はまた、経時的な液体712の温度変化を十分に制御可能にすることができる。図7において、発熱体760は、混合カップ710の片側のみに描かれているが、しかしながら、発熱体は混合カップに対していくつかの相対的位置に配置された、いくつかの要素を含んでもよく、あるいは発熱体は、混合カップ710中の液体712の温度を良好に制御することができ、液体712をより迅速に加熱することができるように、混合カップ710の全体を含んでもよい。装置700の提示される実施態様において、発熱体760は混合カップ710に直接接触しておらず、発熱体760および混合カップ710の間には隙間が存在する。装置700の実施態様は、提示される実施態様に限定されない。別の実施態様において、発熱体760は、液体712にできる限り近接して熱を生成し、センサーが正確に混合カップ710中の液体712の温度を測定することができるように、混合カップ中で一体化されている。発熱体760が混合カップ710中で一体化されている場合、力を発熱体760に移動させ、制御装置770からの制御シグナルおよび測定シグナルを発熱体760に伝達し、その逆も行うための手段が示される必要がある。
【0083】
液体サンプルおよび染色組成物は、混合カップ710中で混合物として混合され、超音波処理機750は、混合カップ710内の液体712中に、少なくとも所定の距離分、延長する。適宜、混合物が混合カップ710中にある間の所定の瞬間に、超音波処理機は超音波によって、混合物にエネルギーを供給する。超音波処理機750は、例えば、20から40キロHzにおいて操作され、例えば5から10秒間、混合物に、例えば1から5ワットを供給する。ある実施態様において、超音波処理機750は作動装置によって移動可能であり、液体712に超音波の形態でエネルギーを供給する際に、混合カップ710内の液体712中で部分的に移動する。「超音波処理機」についての別の用語は、「超音波プローブ」である。
【0084】
出口742は、例えば、液体712を解析する準備をする際に、混合カップ710中に存在する液体712に挿入されるチューブである。出口742は、液体サンプルおよび染色組成物が混合カップ710中で混合される時、常に液体712中にあるような永久的な位置に存在していてもよく、あるいは出口742は、液体712の一部がくみ上げられる時に出口742の先が液体中にあるような、作動装置によって移動可能であってもよい。出口742は液体712のサンプルをくみ上げるため、およびサンプルを測定モジュール740に供給するためのポンプ744を有していてもよい。出口742が液体712からサンプルを採取し、測定モジュール740に供給した場合、混合カップ710は、混合カップ710の前記比較的高速な回転によって、空にされてもよい。
【0085】
適宜、全ての流入口730、732、および出口742はまた、サンプルまたは染色組成物がそれぞれ流入口730、732および出口742を通過した後、流入口730、732、および出口742の内部を洗浄するシステムに連結されていてもよい。
出口742は、測定モジュール740に連結されている。測定モジュール740は、出口から測定モジュール740に供給されるサンプル中の、染色細胞を計測するように構成される。ある実施態様において、測定モジュール740はフローサイトメーター、蛍光顕微鏡、蛍光光度計、または蛍光プレートリーダーである。
【0086】
装置700は、装置700の異なる構成要素を制御するための制御装置770を適宜有する。例えば、制御装置770はモーター720、発熱体760、任意の超音波処理機750、ポンプ/バルブ731、733、735、744、および測定モジュール740に連結されている。制御装置770はまた、図示されていない装置700の他の構成要素に連結されていてもよい。制御装置770と、装置700の構成要素との連結は、例えば、CAN(controller area network)バスによって行われてもよい。CANバスを介して、シグナルおよび/またはメッセージは、制御装置770から要素へ、およびその逆に伝達することができる。例えば、発熱体760は、接合772を介して、発熱帯が熱を生成しなければならないか、そうでないかを示すシグナルを受容し、接合772を介して、温度センサーの測定が制御装置770に供給されうる。制御装置770と、装置700の前記制御可能な構成要素との連結は、有線接続によって形成することができ、また無線接続によっても形成されてもよく、または光ファイバーを介して導かれる光通信シグナルによって形成されてもよい。
【0087】
測定モジュール740はまた、少なくとも測定の開始および終了に関する限り、制御装置770によって制御されてもよい。実施態様において、測定モジュール740はまた、測定データを受容し、さらにこのデータを、例えば測定結果を画面に表示するなどに使用するために保有する、データ加工ユニットに連結している。
【0088】
液体サンプル中の細菌などの細胞を測定するプロセスは、明確に定義された一連のステップであり、ステップのタイミングも同様に明確に定義されていてもよい。いくつかのステップにおいて、タイミングは重要でありうる。制御装置770は明確に定義された一連のステップおよび必要なタイミングを認識するユニットである。制御装置770はそれによっていくつかの要素を制御する。
【0089】
特にこの文書の文脈において、制御装置770はa)液体サンプルおよび染色組成物を混合カップ中に分注するための、サンプル流入口730および染色組成物流入口732の制御;b)液体サンプルおよび染色組成物を混合カップ中で混合して、混合物を得るための混合カップの制御-混合カップの制御はモーター720を制御することによって行われうる;c)混合物を超音波処理するための、任意の超音波処理機750の任意の制御;d)混合物をインキュベートするための温度に混合物を加熱するための、発熱体760の制御、インキュベーションの間、混合物の温度および/またはpHによって核酸色素が細胞透過性になる;e)インキュベートした混合物を超音波処理するための、任意の超音波処理機750の任意の制御;f)混合物またはその一部を測定モジュール740に提供するための、出口742の制御;並びにg)混合物またはその一部中の前記色素によって染色された細胞を計測するための、測定モジュール740の制御のために構成される。サンプル流入口730の制御、染色組成物流入口732の制御、および出口742の制御は、バルブまたはポンプ731、733、744の制御に関連しうる。
【0090】
制御装置770はまた、高速で混合カップ710を回転させるモーター720を制御し、混合カップ710がまだ比較的高速で回転している間、混合カップ710中に洗浄液を分注するための洗浄液流入口734のを制御するように構成される。混合カップ710が洗浄された時、制御装置770はそれに続く混合、超音波処理、インキュベート、および測定手順の開始を制御しうる。この段落は、装置700が順次ステップを実行することを記載するが、いくつかのステップはまた、装置700によって同時に実行されうることに注意する必要がある。例えば、測定モジュール740がまだサンプル中の染色細胞の計測をしている間に、サンプルが測定モジュール740に供給された場合、できる限り早く別の混合ステップが開始されうる。装置700の実施態様は、1つの混合カップ710のみ、および/または1つの測定モジュール740のみを有する装置700に限定されない。装置700はまた、装置が時間あたりにより多くの液体サンプルを分析できるように、いくつかの処理を並行して行うための装置の上記の全ての要素についてのいくつかの例を有していてもよい。
【0091】
基本的に、制御装置770のタスクは、装置700が前記方法の実施態様を実行するように、装置700を動作させることである。そのため、制御装置770は前記方法の実施態様を実行するために、装置700を制御するように構成される。実施態様において、制御装置770は、装置700が前記方法の実施態様を実施するのを制御装置770に制御させるような指示を含むコンピュータープログラムを含む。制御装置770はまた、装置700が前記方法の実施態様を実行するのを制御するように構成された専用ハードウェアに基づいてもよい。
【0092】
図8Aは、液体サンプル中の細菌などの細胞を計測するための装置の、混合ユニット800の三次元ビューを概略的に示す。混合ユニット800は、図7の混合ユニット700と同様である。示される要素および示される要素の機能の実施態様は、図7の文脈で議論されている。図8Aの三次元ビューは、要素:混合カップ810、超音波処理機850、サンプル流入口830、染色組成物流入口832、および出口842を示す。
【0093】
図8Bは、図8Aの混合ユニット800の断面図を概略的に示す。図8Bは、要素:混合カップ810、超音波処理機850、軸822、およびサンプル流入口830を概略的に示す。混合カップ810は、発熱体860と同様の発熱体が埋め込まれた熱質量体862によって取り囲まれている。熱質量体862は加熱され、熱質量体862と混合カップ810の間の距離が比較的短いため、混合カップ810も同様に加熱される。熱質量体862において、混合カップ810に近接して、混合カップ810の温度を感知する温度センサーが提供される。熱質量体862は、例えばステンレス鋼などの、例えば金属から作られる。
【0094】
図9は、液体サンプル中の細胞の計測のための追加装置900を概略的に示す。液体サンプル中の細胞のための追加装置900は、取り込みおよび採取ユニット980、混合ユニット910、測定ユニット940、制御装置970、並びにユーザー・インターフェースユニット990をさらに含む。混合ユニット910、測定ユニット940、および制御装置970の実施態様および機能は、図7図8Aおよび図8Bの文脈で前述されており、3桁の参照番号のうちの最初の数字が、図に応じて異なる。
【0095】
採取および取り込みユニット980は、計測される細胞がある液体を採取し、サンプルを混合ユニット910に提供するユニットである。採取および取り込みユニット980はまた、混合ユニット910に供給されなければならない他の液体および/または他の物質も取り込む。例えば、例として前記染色組成物、および前記洗浄液が挙げられる。ある実施態様において、染色組成物の原材料が、採取および取り込みユニット980によって取り込まれ、混合ユニット910に供給され、および/または混合ユニット910に供給される前に混合される。ある実施態様において、採取または取り込みユニット980は、水、および水と混合して、または水に溶解させて前記洗浄液が得られる洗浄物質中に取り込まれる。採取および取り込みユニット980は、採取される液体および他の液体を含むボトルが設置されている区画を含みうる。例えば、自動化ピペットはボトルから液体を吸い上げる。別の実施例において、採取および取り込みユニット980は、採取され取り込まれる液体を含む外部容器に、パイプまたはチューブによって、採取および取り込みユニット980を連結させるための連結部を含む。
【0096】
前述の通り、細胞を計測する液体サンプルおよび染色組成物は混合され、超音波処理され、混合ユニット910中でインキュベートされる。前述の通り、混合ユニット910は測定ユニット940に連結され、混合され、超音波処理され、インキュベートされたサンプルは測定ユニット940に供給される。測定ユニット940は、受け取ったサンプル中の細胞を計測する。測定ユニットの例としては:フローサイトメーター、蛍光顕微鏡、蛍光光度計、または蛍光プレートリーダーが挙げられる。
【0097】
測定ユニット940は、ユーザー・インターフェースユニット990に連結される。測定ユニット940は、測定結果をユーザー・インターフェースユニット990に提供する。ユーザー・インターフェースユニット990は、測定結果を蓄積するデータストレージを含んでもよい。ユーザー・インターフェースユニット990はまた、測定結果を加工し、ユーザーに提示するために適切なフォーマットで結果を作成するための加工ユニットを含んでもよい。ユーザー・インターフェースユニット990は、例えば、測定し、加工した結果をユーザーに提示するためのディスプレイを含んでもよい。ユーザー・インターフェースユニット990はまた、ユーザーからのユーザーコマンドを受信するためのキーボードを含んでもよい。ユーザーは、例えば、特定のユーザーコマンドを提供することによって、ディスプレイ上に表示される情報を利用することができる。別の実施態様において、ディスプレイはユーザーコマンドを受容するのにも適切な、タッチセンサー式ディスプレイである。
【0098】
追加装置900は、追加装置900の操作を制御するための制御装置970を含む。制御装置970は前記ユニットに連結され、これらのユニットに操作コマンドを供給し、ユニットから情報を受容しうる。そのように受容された情報は、例えば、センサー情報、異なるユニットによって実行される動作の進行に関する情報、および/または異なるユニットで生成されたエラーメッセージである。前述の通り、制御装置970はまた、異なるユニットによって実行される動作および/またはタスクのタイミングを制御する。制御装置970はまた、ユーザー・インターフェースユニット990が、採取される液体の解析の進行についての情報を提示することができるように、ユーザー・インターフェースユニット990に連結される。ユーザー・インターフェースユニット990はまた、例えば、追加装置900の操作を開始する、および/または緊急の状況において、追加装置の操作を中断するユーザーコマンドを受容するために用いられうる。
【0099】
前記の実施態様は、本発明を限定するものでなく例示するものであり、当業者は多くの代替の実施態様を設計することができることに留意されたい。
【0100】
特許請求の範囲において、丸括弧の間に置かれた任意の参照の表示は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。動詞「含む」およびその活用形の使用は、特許請求の範囲において主張される以外の要素またはステップの存在を排除しない。要素に先行する冠詞「a」または「an」は、そのような要素の複数の存在を排除しない。本発明は、いくつかの別個の要素を含むハードウェアによって、および適切にプログラムされたコンピューターによって実施されうる。いくつかの手段を列挙する装置の特許請求の範囲において、これらの手段のいくつかはハードウェアの1つの同じ項目によって具体化されうる。いくつかの手段が、相互に異なる従属請求項において列挙されているという事実のみからは、それらの手段の組み合わせを有利に用いることができないことは示されない。
【0101】
本発明およびその利点は詳細に記載されているが、付属の特許請求の範囲に定義される発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変化、置換、および変更を行うことができることが理解される。
本発明は以下の実施例においてさらに説明されるが、これらの実施例は例示の目的のみのために示され、決して本発明を限定することを意図していない。
【実施例0102】
実施例1.細菌のGelGreen(登録商標)染色の検証
最初に、GelGreen(登録商標)を用いたフローサイトメーターで得られる細胞の計測が、従来のプレート計測と相関することを確認するために実験を行った。このために、使用が容易なので、寒天プレート法ではなくペトリフィルム法(Standard Methods for Examination of Dairy Products 17th Edition 2004. Edited by H. M. Wehr and J. R. Frank. American Public Health Association, 800 I Street, NW, Washington DC 200001. Chapter 6.040)を選択した。大腸菌(E.coli)培養を培養チューブにおいて、トリプチケースソイブイヨン(TSB)中、36℃で生育させた。染色組成物を以下のように調製した:核酸色素GelGreen(登録商標)(Biotiumより)を、あらかじめ50℃に加熱したトリス緩衝生理食塩水(100mM トリス(Trizma)塩基、100mM トリス HCl、150mM NaCl、pH8.5)中に、市販の10,000xストックから1×に希釈した。用いたGelGreen(登録商標)の1:10,000の希釈は、意図される目的、すなわちアガロースゲル中のDNAの染色のためのGelGreen(登録商標)の使用について、メーカーの推奨に従う。これは、本明細書の全ての実施例において用いられるGelGreen(登録商標)の希釈である。大腸菌培養を36℃のインキュベーターから取り出し、少量を予熱した染色組成物中に1:100で希釈し、およそ4.5分間50℃でインキュベートした。染色された大腸菌をフローサイトメーターで解析し、FL1(バンドパス 531nm(519-551))およびFL2(ロングパス>550nm)蛍光チャネルを用いて、染色細菌を特定した(図1Aおよび1C)。長方形の領域は、FL1対FL2の2次元相関プロットにおいて、生存細胞と特定された正の染色細胞の周辺に定義した(図1B)。大腸菌のmLごとのカウントは、フローサイトメトリー解析によって得た。大腸菌培養を次いで、TSB中で希釈し、3つの異なる濃度を得た(それぞれ1:10、1:100および1:1000)。大腸菌培養を、解析までのさらなる増殖を最小化するため、4℃で保存した。大腸菌のそれぞれの希釈液をGelGreen(登録商標)試薬で染色し、フローサイトメーターで解析し、それぞれの希釈液についての計測を得た。それぞれの大腸菌培養をまた、ButterfieldのPBSにおいて適切に希釈し、1mLの適切に希釈された培養液を2つのペトリフィルムに播種した。ペトリフィルムを30℃のインキュベーターに設置し、48時間後に取り出し、それぞれのペトリフィルム上のコロニーを、自動コロニー計測機を用いて計測した。それぞれの大腸菌希釈液についてのCFU/mLの平均を得た。GelGreen(登録商標)を用いた、フローサイトメーター細菌計測数のLogを、ペトリフィルムからのLog CFU計測数に対してプロットした(図2)。2つの方法の間の明確な直線的関係が示され、これは前記の条件下で色素が細菌の細胞膜に導入され、これらの細菌のDNA/RNAを染色したことを示す。
【0103】
実施例2.GelGreen(登録商標)で処理した生乳中の大腸菌の染色
FL1およびFL2シグナルプロット中、細菌がどこに現れるかを示すために、細菌をミルクを添加せずに染色組成物中で最初に計測した。大腸菌の培養は、培養チューブにおいて、トリプチケースソイブイヨン(TSB)中、36℃で生育させた。核酸色素GelGreen(登録商標)を、あらかじめ50℃に加熱した、およそpH8.5のトリス緩衝生理食塩水で希釈した。大腸菌培養を36℃のインキュベーターから取り出し、少量をあらかじめ加熱した染色組成物で1:100に希釈し、およそ4.5分間、50℃にインキュベートした。染色された大腸菌をフローサイトメーターで解析し、FL1およびFL2蛍光チャネルを用いて染色された細菌を特定した(図3A)。
【0104】
非混入生乳においてFL1、FL2シグナルがどのように見えるかを示すため、低い細菌数の生乳を解析した。地元で得られた生乳(一般的に農家から)は、mLあたり1000から50,000CFUの範囲の、非常に低い細菌数を有する。核酸色素としてGelGreen(登録商標)を含む染色組成物は、プロテアーゼ Savinase(登録商標)16L(Novozymesから)を1.92x10NPU/mlの分量で加える点以外は実施例1と同様に調製し、ここでNPUは「Novoプロテアーゼ単位」であり、これはアンソン単位(AU)と同じである。染色組成物をおよそ50℃にあらかじめ加熱し、生乳サンプルの少量を、サンプルが約50℃に達するのに十分な長さであらかじめ加熱し;あらかじめ加熱したサンプルを、あらかじめ加熱した染色組成物で約1:10に希釈し;染色組成物を含むサンプルを、およそ5秒間、22.5kHzで超音波処理した。これは好ましくは、サンプル中に超音波処理プローブを直接設置することによって行われたが、サンプルチューブに対して適切に超音波処理プローブを配置することによって間接的に実施してもよい。染色組成物を含むサンプルを、およそ4から5分間、および50℃でインキュベートし;サンプルをおよそ5秒間、再び超音波処理し、最終的にサンプルをフローサイトメーターで解析し、細菌からの蛍光シグナルを検出し、単位体積あたりの計測数を決定した。さらに研究を行い、わずかにより高い温度(56℃、およびさらに好ましくは62℃)において、さらに良好な染色が得られることが示された。
【0105】
このGelGreen(登録商標)生乳処理染色方法のプロトコルの後に、生乳の少量を処理し、解析した(図3B)。混入されていない生乳についてのFL1およびFL2シグナルを示すために、既知の数の大腸菌を、既知の体積の同じ生乳に入れ、処理、染色、およびフローサイトメーターでの解析まで4℃で保管した。同様にGelGreen(登録商標)生乳処理染色方法のプロトコルを用いて、大腸菌を含む生乳を処理し、解析した。生乳中に、FL1FL2計測領域中に入る、明らかな大腸菌の集団が確認された(図3C)。FL1FL2計測領域は、図3A、B、およびCにおける四角で示され、また、図3A、B、およびCの結果に基づいて特定される。このことから明らかに、本明細書に開示される方法は、生乳サンプル中で追跡することのできる、細菌の迅速な追跡方法を提供することが示される。
【0106】
実施例3.生乳中の細菌のフローサイトメトリー計測の検証
グラム陰性菌およびグラム陽性菌の選択は、実施例2に開示されるGelGreen(登録商標)生乳処理染色プロトコルに従って選択し、生乳中に加え、処理し、解析した。結果を図4に示す。選択されたグラム陽性菌は、ステリア・モノサイトゲネス(Lm)、黄色ブドウ球菌(Sa)、およびセレウス菌(Bc)であった。選択されたグラム陰性菌は、緑膿菌(Pa)および大腸菌(Ec)であった。異なる濃度でのそれぞれの培養を生乳サンプル中に加え、処理まで4℃で保存した。個々の細菌培養を加えた生乳サンプルのそれぞれを処理し、実施例2に記載されるGelGreen(登録商標)プロトコルに従って解析した。個々の細菌培養を加えた生乳サンプルのそれぞれを、ButterfieldのPBS中で適切に希釈し、1mLを2つのペトリフィルムに播種し、CFU/mLを得た。得られたmLごとのLog FCM計測を、mLごとのLog ペトリフィルム CFUに対してプロットした。これは全体的に線形関係(いくつかの外れ値を伴う)を示し、この新規方法の検証が得られる。
【0107】
実施例4.異なる核酸色素による大腸菌の染色
実施例2に記載されるように、大腸菌の培養をトリプチケースソイブイヨン(TSB)中、36℃で生育させ、GelGreen(登録商標)で染色し、フローサイトメーターで計測した(図5)。次いで大腸菌培養を、他の核酸色素で染色するまで、4℃で保管した。核酸色素TOTO(登録商標)-1およびSYBR(登録商標)Safe(いずれもThermo Fisher Scientificから)を代替として選択した。TOTO(登録商標)-1は非対称シアニン色素チアゾールオレンジの二量体であり、細胞非透過性である。SYBR(登録商標) Safeは、特に変異原性を減少させるために開発されたDNAゲル染色剤であるが、GelGreen(登録商標)とは異なり容易に細胞膜を通過する。いずれの色素も、GelGreen(登録商標)と同様のスペクトル特性を有し、GelGreen(登録商標)と同様の希釈係数を用いて、トリス緩衝生理食塩水で希釈した。大腸菌の染色はおよそ4.5分間、室温(~23℃)または50℃のいずれかで行われ、フローサイトメーターで解析し、計測数はFL1FL2計測領域を用いて得た。GelGreen(登録商標)をさらに150mM NaCl溶液中で希釈し、23℃および50℃で大腸菌を染色するのに用い、フローサイトメーターで解析し、蛍光染色された細菌からの計測数を得た(左側、4つの棒)。2つの温度、およびそれぞれトリス緩衝生理食塩水 pH=8.5および生理食塩水溶液中における、異なる核酸色素からのフローサイトメーターを用いて得た細胞計測データを、図5に示す。この棒グラフから明らかに、TOTO(登録商標)-1が50℃のトリス緩衝生理食塩水であっても、大腸菌を染色していないことが示される。また、SYBR(登録商標)Safeは透過性であり、大腸菌の染色に加熱を必要としないことが示される。GelGreen(登録商標)はNaCl溶液であっても、トリス緩衝生理食塩水であっても、室温では大腸菌を染色しない。これはGelGreen(登録商標)が特に、細胞膜を通過しないように設計されているためであると予測される。しかしながら、非常に驚くべきことに、GelGreen(登録商標)は50℃において、NaCl溶液中の場合には大腸菌の最小の染色を示すが、トリス緩衝生理食塩水中の場合には、50℃で実質的に全ての細菌細胞を染色する。
【0108】
実施例5.異なる温度を用いた生乳および生理食塩水中でのGelGreen(登録商標)による大腸菌の染色
本発明の方法が、生乳のみではなく他の液体サンプルにおいても利用可能であることを示すために、2つの異なる混入溶液を調製した:1つは生乳に基づき、もう一方は水+0.9%塩(=150mM NaCl、生理食塩水とも称される)である。45mlの溶液に200μlの細菌培養を加えることによって、両方の溶液に大腸菌細菌を混入させた。染色組成物を、実施例1に記載されるものと同様の、GelGreen(登録商標)(Biotiumから)の希釈によって調製したが、今回はさらに0.12AU/mlの液体Alcalase(登録商標) 2.4 L FG (Novozymesから)を含むトリス生理食塩水溶液(200mM トリス(Trizma)塩基、150mM NaCl、pH 10.6)中で調製した。混入生乳サンプルを60、40および23℃でインキュベートし、混入生理食塩水サンプルを60、35および25℃で1分間インキュベートすること以外は、インキュベートを前記の実施例に記載されるように行った。図6に示される結果から明らかに、60℃付近の温度を用いた場合には、低い温度を用いた場合より、より多くの細菌細胞を計測することができることが示された。それぞれのパネルは4つの4分割部:Q1、Q2、Q3およびQ4を含む。Q4に示される計測は、これらの4分の1のそれぞれにおける細胞の数を表す。左のパネル(上および下の列の両方)において、Q2中の計測は有意に高く、中央および右のパネル中よりも、プロットがさらに集中していることは明らかである。他のデータ(示されていない)は、この60℃付近の温度をさらに微調整した場合、この色素およびこのpHについての最適温度はおよそ62℃であると考えられることを示す。本来細胞非透過異性の核酸色素が細胞透過性になる任意の温度が適切であるから、この極めて特定の温度は本発明の範囲を限定しない。本明細書に開示される最適な範囲は40から70℃であり、さらに好ましい範囲は60から68℃であり、より好ましい温度点は62℃である。
【0109】
実施例6.液体サンプル中の体細胞と細菌細胞との識別
単一の液体サンプル中で、体細胞と細菌細胞との間で区別がつくかどうかについても、また調査した。このために、29のバルク貯蔵ミルクサンプルを、オランダ北部の異なる農家で回収した。これらの全てのサンプルを、実施例5と同じ染色組成物で処理した。200μlの非加熱の生乳を1800μlの染色組成物で希釈し、およそ62℃で1分間インキュベートし;サンプルをインキュベートの最初と最後に、5秒間、40kHzで超音波処理し、フローサイトメーターで解析した。(得られた)設定を微調整して、体細胞および細菌を同時に計測するために最適な結果を得た。長方形の体細胞計測ゲートは、FL1およびFL2蛍光シグナルに基づいて定義した。ゲートは図10の右上の長方形のゲートで示されている。この図において、高い細菌計測数および高い体細胞計測数のミルクサンプルは左側に示される。右側には、低い細菌および低い体細胞の計測数のミルクサンプルが示される。左下の長方形のゲートは細菌計測領域を定義し、右上のゲートは体細胞計測領域を定義する。
【0110】
全ての29サンプルの体細胞計測数は、右上の体細胞計測領域中の点を計測することによって決定した。参照として、同じバルク貯蔵ミルクサンプルをSomaScope SMART(Delta Instruments、オランダ)によって解析したが、これは参照体細胞計測数(MBC)を得るためのISO13366-2と適合する。両方の結果を図11において相関プロットにプロットした。この相関のRは0.9684である。
【0111】
全てのバルク貯蔵ミルクサンプルについて、細菌細胞を左下の長方形のゲート中の点を計測することによってもまた、同様に決定した。従来のPetrifilm Aerobic Count Plate(AOAC 公式番号986.33)を用いて、全ての29バルク貯蔵ミルクサンプルについての細菌の参照計測を得た。図12において、細菌計測の相関結果を示す。この相関のRは0.8247である。
これら(R)の結果は明らかに、同様の蛍光シグナルFL1およびFL2を用いて、同時に体細胞および細菌をも計測することができることを示す。
【0112】
この方法をSavinase(登録商標)を用いて検証するために、酪農工場から地元で得られた生のバルク貯蔵ミルクを回収した。24時間経過生乳は高い細菌計測数を有していないため、大腸菌を32℃のTSB中で一晩(およそ15時間)生育させた。200μlの分量の細菌培養を、45mlの24時間経過後生のバルクミルクに加えて、解析まで4℃で保管した。
【0113】
核酸色素としてGelGreen(登録商標)を含む染色組成物を、Alcalase(登録商標)プロテアーゼを0.12KNPU/ml Savinase(登録商標) 16L プロテアーゼ(Novozymesから)に置き換えたこと以外は、実施例5と同様に調製した。200μlの未加熱の生乳を、1800μlの染色組成物で希釈し、およそ68℃で1分間インキュベートし;サンプルをインキュベートステップの前および後に、5秒間40kHzで超音波処理し、フローサイトメーターで解析し;細菌からの蛍光シグナルを検出し、単位体積あたりの計測数を決定した。従来のプレート計測を用いて、細菌参照計測数を得た。本明細書で用いられる用語「従来のプレート計測」は、Petrifilm Aerobic Count Plate(AOAC 公式番号986.33)をいう。フローサイトメーターにおける24時間経過生乳からの個々の細菌計測数(IBC)/mLのLOGは、5.61であり、CFU/mlペトリフィルムのLogは4.83である。フローサイトメーターにおける、大腸菌LOGを混合させた24時間経過混入生乳からのIBCのLOGは6.48である。CFU/mlペトリフィルムのLOGは6.69である。この実験によって、図12(データは示されていない)において示されるように、IBC/mlとCFU/mlとの間に同様の良好な相関が示された。
【0114】
実施例7.異なる細胞非透過性色素の探索
核酸色素Evagreen(登録商標)、SYTOX(登録商標)Greenおよびヨウ化プロピジウムを、GelGreen(登録商標)(参照方法)に対して試験した。この実施例において、IBC/mlとCFU/mlとの間に良好な相関が得られることが分かった実施例6に概説される後者の条件を、「参照方法」として用いた、すなわちi)実施例1に記載されるものと同様に、トリス生理食塩水溶液(200mM Trizma(登録商標)塩基、150mM NaCl、pH10.6)中で希釈したGelGreen(登録商標)(Biotiumから)、および0.12 KNPU/ml Savinase(登録商標) 16L プロテアーゼ (Novozymesから)を用い、ii)1分間、およそ68℃のインキュベーション温度を用い、iii)インキュベーションの前および後の両方に、40kHzで5秒間超音波処理を行った。染色組成物中に含まれる色素の種類のみが異なる、参照方法と同じ染色およびインキュベーション条件を用いて、核酸色素Evagreen(登録商標)、SYTOX(登録商標)Green、およびヨウ化プロピジウムを試験した。Evagreen(登録商標)を、染色組成物中に1.25μMの濃度で用いた。SYTOX(登録商標)Greenおよびヨウ化プロピジウムを、染色組成物中に5μMの濃度で用いた。3種類の異なるミルクを用いた:地元の農家で回収した、農場および酪農工場からの地元で得られた生のバルク貯蔵ミルク。このミルクは新鮮な生乳と称され、24時間経過していない。24時間、および48時間経過したミルクは酪農工場から得た。新鮮な生乳は高い細菌計測数を有さないため、それぞれ生きた、または死んだ大腸菌細胞を混入させた。この目的のために、大腸菌をTSB中、32℃で一晩(およそ15時間)生育させた。死んだ細菌は、生育させた大腸菌を110℃で10分間加熱することによって得た。200μlの分量の大腸菌(生存または死亡/損傷)を、45mlの新鮮な生のバルクミルクに加える。生存および死亡の両方は、同じ培養チューブからのものであり、全く同じ分量を45mlの新鮮な生乳に加える。全てのミルクサンプルを解析まで4℃で保管する。ミルクサンプル中の細菌の染色(および計測)方法は、以下のように行った:200μlの未加熱ミルクを、1800μlの染色組成物で希釈し、およそ68℃で1分間インキュベートする;サンプルをインキュベーションの前と後の両方に、40kHzで5秒間、超音波処理する。最後に、サンプルをフローサイトメトリーで解析し、細菌からの蛍光シグナルを検出し、単位体積あたりの計測数を決定した。精製水を陰性対照として用いる(ここでは、ブランクサンプルと称される)。
【0115】
図13から分かるように、ブランクサンプル、新鮮なバルク貯蔵ミルクサンプル、および24時間経過バルク貯蔵ミルクサンプルについて、EvaGreen(登録商標)は、GelGreen(登録商標)を用いる標準参照方法とよく一致することを示す(図13を参照されたい)。48時間経過バルク貯蔵ミルク、大腸菌を混入させたミルク、および大腸菌を混入させて10分間加熱したミルクについて、EvaGreen(登録商標)は、GelGreen(登録商標)を用いる標準参照方法よりもわずかに低いIBCを示す。しかしながらこれらの結果は、高い(mlごとに>100万個)IBC数についての精度仕様が、低いIBC数よりも低いため、バルク貯蔵ミルク中のIBCを定量する目的で用いるためには未だに十分である。また、EvaGreen(登録商標)の結果は高いIBC数において、標準参照方法と比較して低いため、これらの結果は数学的な補正関数によって容易に相殺することができる。また、これらの実験結果から、EvaGreen(登録商標)は良好な細胞非透過性のGelGreen(登録商標)の代替色素であると結論づけることができる。
【0116】
SYTOX(登録商標)Greenは、新鮮なミルク、24時間経過ミルク、48時間経過ミルク、並びに混入および加熱ミルクについての標準的なGelGreen(登録商標)に基づく参照方法と比較して、(有意に)高いIBC数を示す。しかしながら混入ミルクについては、参照方法に基づく標準的なGelGreen(登録商標)と比較して、IBCが有意に低い。このことは、Sytox greenは細菌を染色せず(Sytoxに基づく混入ミルクの計測は、GelGreen参照方法と比較して非常に低い)、Sytox Greenを用いたバックグラウンドノイズが非常に高い(非混入サンプルについて非常に高い)ことを証明している。この結論は、ここには示されていないこれらの実験の生(ドットプロット)データによって裏付けられる。したがって、Sytox greenは機能しておらず、そのためGelgreenの代替として用いることができないことが結論づけられる。
【0117】
ヨウ化プロピジウムは、試験された条件下では明らかに機能しない。大腸菌を混入し10分間加熱したバルク貯蔵ミルク以外のミルクサンプルについて、ほぼ全くIBC計測数は計測されない。この色素は死細胞の細胞膜のみを貫通するため、この結果はヨウ化プロピジウムの特性と一致する。おそらく、他のミルクサンプル中の細菌の細胞膜は、ヨウ化プロピジウムが通過するのに十分なほど損傷していない。
【0118】
実施例8.異なる緩衝液の探索
pHがおよそ10.6であるが、実施例5-9において用いられるトリス生理食塩水溶液以外の他の緩衝液または溶液を含む染色組成物の有用性を調査するために、NaClを含まないトリス緩衝液(=トリス溶液)、CAPS緩衝液および重炭酸ナトリウム緩衝液を、「参照緩衝液」であるトリス生理食塩水緩衝液(200mM Trizma(登録商標)塩基、150mM NaCl、pH10.6)に対して試験した。緩衝液/溶液以外は、用いた染色組成物および染色方法は実施例7と同様であった。比較のために、異なる染色組成物は、200mM Trizma(登録商標)塩基、150mM NaClを、200mM Trizma(登録商標)塩基およびNaClなし、NaOHでpH10.6に滴定した100mM CAPS(およそ100mM NaOH)、またはNaOHでpH10.6に滴定した200mM 重炭酸ナトリウム(およそ100mM NaOH)のいずれかで置き換えて調製した。酪農工場および農家から地元で得られた生のバルク貯蔵ミルクを回収した。200μLの未加熱生乳を、1800μLの染色組成物で希釈し、およそ68℃で1分間インキュベートし;サンプルをインキュベーションの前および後の両方に、5秒間超音波処理する。最終的に、サンプルをフローサイトメーターで解析し、細菌からの蛍光シグナルを検出し、単位体積あたりの計測数を決定した。精製水を陰性対照として用いた(本明細書において、ブランクサンプルと称される)。
【0119】
図14から、NaClを含まないトリス溶液は、トリス生理食塩水溶液の良い代替物であることが明らかである。IBCの結果は、参照方法で用いられる標準的なトリス生理食塩水溶液とは統計的に有意な違いはない。CAPS(CAPS=N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)緩衝液は、高いIBCサンプルにおいて、高いIBC数を示す。高いIBC数サンプルにおける正確性は、低いIBCサンプルと比較すると重要性が低く、高いIBC数におけるこの違いは実際に、数学的な補正関数によって容易に修正することができるため、CAPS緩衝液も同様に、標準的なトリス生理食塩水の良い代替物であると結論づけられる。
重炭酸ナトリウム緩衝液は明らかに、試験した条件下で機能しない。低いIBCサンプルにおけるIBC数は非常に高い。また、重炭酸ナトリウムについての2つの反復実験間の変動は非常に高く、その結果再現性が乏しく、そのために不正確な結果を生じる。これはおそらく、この重炭酸ナトリウム緩衝液を用いた場合の高いノイズシグナルによって生じる。
【0120】
実施例9.生乳サンプルの異なる温度設定の探索
実施例5において、異なる温度設定および大腸菌を混入させた生理食塩水溶液を用いることによる本発明の方法の実験結果について議論した。最初の本格的なプロトタイプを作成した後、最終的な設定はわずかに調整して温度を好ましくは68℃にした。
【0121】
実施例5から、最適な設定よりも低い温度は、DNAの染色を減少させ、そのため細菌計測能力を低下させることが既に明らかである。これらの実験はミルクではなく、生理食塩水溶液で行われたため、生乳サンプルを用いた実験をさらに行った。新鮮な生乳および24時間経過ミルクを、実施例7に記載されるように入手し、新鮮な生乳に、実施例7に記載されるように生きた大腸菌を混入させた。ミルクサンプルを解析まで4℃で保存した。生乳中細菌を染色(および計測)する方法は、実施例7に記載される参照方法によって行った。
【0122】
図15に示す結果から、おおよそ実施例5と同じ結論を導き出すことができる。低い温度設定は、細菌計測効率を低下させる。40℃の温度設定については、例えば、混入生乳のIBC数は、参照方法に基づく標準的な68℃と比較してはるかに低いことを理解することができる。
【0123】
図16において、90℃の温度における生乳の実験の結果を示す。全てのサンプルについてのIBCの結果は、参照方法に基づく68℃と比べてわずかに高い。ブランクサンプルについてのIBCの結果はまた(有意に)高く、これらの高いIBC数の原因は、おそらく90℃における高いノイズシグナル量によるものである。しかしながらこの結果は、90℃の温度が依然として良好に機能していることを結論づけることができることとよく一致している。おそらく、高い温度はいくつかの実質的な制限を生じるが、最大100℃の温度もまた良好に機能する。
【0124】
実施例10.生乳サンプルの異なるpH設定の探索
新鮮な生乳および24時間経過ミルクを、実施例7に記載されるように得て、また実施例7に記載されるように、新鮮な生乳に生存および死亡大腸菌をそれぞれ混入させた。ミルクサンプルを解析まで4℃で保管した。pH10.6におけるトリス生理食塩水溶液を含む染色組成物を用いた、生乳中の細菌の染色、インキュベーション、および計測の参照法法は、実施例7に記載されるように行った。試験した他のpH値について、染色組成物はpH=10.6のトリス生理食塩水溶液をそれぞれpH=8.7および7.0に滴定した点について、参照方法の染色組成物とは異なっていた。
【0125】
図17に示す結果から、標準的な設定の10.6のpHの代わりに、8.7のpHを用いることによっても良好な結果が得られることを理解することができる。IBC数は参照方法と同程度である。しかしながら、7.0のpHは明らかに機能していない。低いIBCミルクサンプルにおけるIBC数は非常に高い(たとえは、生乳についての参照方法と比較して、mlごとに150万数よりも高い)。そのため、請求されるpH範囲は、約8から約11.5、約8から約8、約8から約10.6、または約8.5から約10.6の間のpHとして定義される。
【0126】
有利な実施態様を、以下の項に記載する:
1. 液体サンプル中の細胞を計測する方法であって、以下のステップ:
a)プロテアーゼを、室温、中性pHで細胞非透過性である核酸色素と混合して、染色組成物を生成し;
b)前記染色組成物を前記サンプルと混合し;
c)ステップb)の混合物を適宜超音波処理し;
d)混合物を40から70℃、好ましくは60から68℃、さらに好ましくは62℃でインキュベートし;
e)ステップd)でインキュベートした混合物を適宜超音波処理し;
f)前記混合物またはその一部中の前記色素によって染色された細胞を計測すること
を含む前記方法。
2. 前記細胞が体細胞および/または細菌細胞である、項1に記載の方法。
3. 前記液体サンプルがミルク、血液、尿、唾液、便、および髄液から成る群から選択される、項1または2に記載の方法。
4. 前記液体サンプルが廃棄水などの環境サンプルである、項1または2に記載の方法。
5. 前記染色組成物が、前記核酸色素が細胞透過性になるpHを有する、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
6. 前記染色組成物が8から10.6のpHを有し、前記インキュベーションが8から10.6の範囲のpHで行われる、項5に記載の方法。
7. 前記プロテアーゼおよび前記核酸色素をトリスNaCl緩衝液中で混合し、前記染色組成物を形成する、項1から6のいずれか1項に記載の方法。
8. 前記染色組成物を、前記サンプルと混合する前に、40から70℃、好ましくは60から68℃、さらに好ましくは62℃に加熱する、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
9. 前記サンプルを、前記染色組成物と混合する前または混合する際に、40から70℃、好ましくは60から68℃、さらに好ましくは62℃に加熱する、項1から8のいずれか1項に記載の方法。
10. 前記核酸色素がGelGreen(登録商標)またはGelRed(登録商標)ファミリーの色素、好ましくは、10,10’-(6,22-ジオキソ-11,14,17-トリオキサ-7,21-ジアザヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(3,6-ビス(ジメチルアミノ)アクリジン-10-イウム)アイオダイド)の色素である、項1から9のいずれか1項に記載の方法。
11. 前記プロテアーゼがプロテアーゼ型スブチリシンである、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
12. 染色細胞を、フローサイトメーター、蛍光顕微鏡、または蛍光イメージングシステム、蛍光光度計、または蛍光プレートリーダーなどの蛍光検出装置を用いて計測する、項1から11のいずれか1項に記載の方法。
13. GelGreen(登録商標)またはGelRed(登録商標)ファミリーの色素を細胞透過性にする方法であって、前記色素を適切な緩衝液中で8から10.6のpHに維持し、前記緩衝液中の前記色素を40から70℃の温度、好ましくは60から68℃の温度、さらに好ましくは62℃の温度に加熱するステップを含む前記方法。
14. 液体サンプル中の体細胞および/または細菌細胞を計測するための装置であって、
液体サンプルを染色組成物と組み合わせて、混合物を得るための混合カップ;
液体サンプルを混合カップに供給するためのサンプル流入口;
染色組成物を混合カップに供給するための染色組成物流入口;
混合カップおよび混合物を、40から70℃の適切な温度、好ましくは60から68℃の温度、さらに好ましくは62℃の温度に加熱するための発熱体;
混合物に超音波の形態でエネルギーを供給するための任意の超音波処理機、ここで、超音波処理機の先端は混合物中に配置されているか、または混合カップに対して配置されている;
混合物またはその一部を得るため、および前記混合物または前記その一部を測定モジュールに供給するための出口;並びに
前記混合物または前記その一部中の染色細胞を計測するための測定モジュール
を含む装置。
【0127】
本発明の好ましい実施態様が詳細に記載されているが、前記段落によって定義される発明は、前記特定の詳細な記載に限定されず、それらの多くの明らかな変化が、本発明の精神または範囲から逸脱することなく可能であることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプル中の細胞を計測する方法であって、以下のステップ:
a)二量体核酸色素および緩衝剤を含む染色組成物を前記サンプルと混合し;
b)ステップa)の混合物を適宜超音波処理し;
c)約45℃から約95℃の温度で10分未満の時間、混合物をインキュベートし;
d)ステップc)のインキュベートした混合物を適宜超音波処理し;
e)前記混合物、またはその一部の中の前記色素によって染色された細胞を計測すること
を含む前記方法であり、ここで、核酸は式:
Q1-架橋-Q2
[式中、Q1およびQ2は核酸色素部位であり、架橋はQ1およびQ2を連結する。]
を有する、方法。
【外国語明細書】