(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028764
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】コイル部品用磁性粉末及びこれを含むコイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 1/153 20060101AFI20220208BHJP
H01F 1/20 20060101ALI20220208BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220208BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20220208BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220208BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220208BHJP
B22F 1/08 20220101ALI20220208BHJP
【FI】
H01F1/153 108
H01F1/153 133
H01F1/20
H01F1/153 158
H01F17/04 F
B22F3/00 B
B22F1/00 Y
C22C38/00 303S
B22F1/08
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182471
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2017111230の分割
【原出願日】2017-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2016-0144637
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュン ロク
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ジョン ホ
(57)【要約】
【課題】
高飽和磁束特性(Ms)を有するコイル部品用磁性粉末及びこれを含むコイル部品を提供する。
【解決手段】
本発明は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含むコイル部品用磁性粉末を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、
前記鉄系粉末は単一粉末内に非晶質粒子と結晶質粒子が含まれた形であり、
前記Feの含有量は80~81at%であり、
前記Bの含有量は12~14at%である、コイル部品用磁性粉末。
【請求項2】
前記コイル部品用磁性粉末のXRDシグナルを測定した結果であって、
結晶質ピークの高さh1と非晶質ピークの高さh2の比h1/h2は1~1.5である、請求項1に記載のコイル部品用磁性粉末。
【請求項3】
前記結晶質粒子の含有量は5~6vol%である、請求項1または請求項2に記載のコイル部品用磁性粉末。
【請求項4】
Siの含有量は4~8at%であり、
Cの含有量は0.15~1.0at%であり、
Crの含有量は1~1.5at%である、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のコイル部品用磁性粉末。
【請求項5】
前記コイル部品用磁性粉末は、粗粉を70~90wt%含み、微粉を10~30wt%含む、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のコイル部品用磁性粉末。
【請求項6】
前記鉄系粉末のアスペクト比は1.1~1.3である、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のコイル部品用磁性粉末。
【請求項7】
コイル部品用磁性粉末を含む本体と、
前記本体の内側に配置され、両端部が前記本体の外側に露出するコイルと、
前記本体の外側に配置され、前記コイルの端部とそれぞれ接続される外部電極と、を含み、
前記コイル部品用磁性粉末は、
Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、
前記鉄系粉末は単一粉末内に非晶質粒子と結晶質粒子が含まれた形であり、
前記Feの含有量は80~81at%であり、
前記Bの含有量は12~14at%である、コイル部品。
【請求項8】
前記コイル部品用磁性粉末のXRDシグナルを測定した結果であって、
結晶質ピークの高さh1と非晶質ピークの高さh2の比h1/h2は1~1.5である、請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記結晶質粒子の含有量は5~6vol%である、請求項7または請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
Siの含有量は4~8at%であり、
Cの含有量は0.15~1.0at%であり、
Crの含有量は1~1.5at%である、請求項7から請求項9の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記コイル部品用磁性粉末は、粗粉を70~90wt%含み、微粉を10~30wt%含む、請求項7から請求項10の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記鉄系粉末のアスペクト比は1.1~1.3である、請求項7から請求項11の何れか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品用磁性粉末及びこれを含むコイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル部品のうちの一つであるインダクタ(inductor)は、抵抗、キャパシタとともに電子回路を構成してノイズ(Noise)を除去する代表的な受動素子でありコイル部品である。かかるインダクタは、電磁気特性を用いてキャパシタと組み合わせることで特定の周波数帯域の信号を増幅させる共振回路やフィルタ(Filter)回路などの構成に使用される。
【0003】
最近、各種の通信デバイスやディスプレイデバイスなどのITデバイスの小型化及び薄膜化が加速しつつある。よって、かかるITデバイスに採用されるインダクタ、キャパシタ、トランジスタなどの各種の素子も小型化及び薄型化のための研究が継続的に行われている。
【0004】
このような小型化にも拘らず、コイル部品の性能に対しては、従来と同一であるか、または次第に高くなることが要求される傾向にある。コイル部品のうちの一つであるインダクタでは、インダクタンス(容量)、直流重畳特性及び損失効率などの特性が重要とされている。
【0005】
かかるコイル部品の性能は、コイル部品の本体に用いられる合金粉末の特性が大きく影響する。
【0006】
したがって、コイル部品の性能を向上させることができるコイル部品用磁性粉末が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2015-0038751号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2013-0094316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的のうちの一つは、高飽和磁束特性(Ms)を有するコイル部品用磁性粉末及びこれを含むコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するための方法として、本発明による一例は、コイル部品用磁性粉末を提案する。具体的には、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含む。
【0010】
上述の課題を解決するための方法として、本発明による他の例は、コイル部品を提案する。具体的には、コイル部品用磁性粉末を含む本体と、上記本体の内側に配置され、両端部が上記本体の外側に露出するコイルと、上記本体の外側に配置され、上記コイルの端部とそれぞれ接続される外部電極と、を含み、上記コイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含むため、高飽和磁束特性(Ms)を有することができる。
【0012】
また、本発明の他の実施形態によるコイル部品は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含むコイル部品用磁性粉末を含むため、高DC-bias性能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】比較例によるコイル部品用磁性粉末をXRD(X-Ray Diffraction)で測定したもので、非晶質粒子のみからなる磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【
図2】比較例によるコイル部品用磁性粉末をVSM(Vibrating Sample Magnetometer)で測定したものである。
【
図3】本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末をXRD(X-Ray Diffraction)で測定したもので、非晶質粒子と結晶質粒子が混合された磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【
図4】本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末をVSM(Vibrating Sample Magnetometer)で測定したものである。
【
図5】結晶質粒子の含有量が互いに異なる磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【
図6】結晶質粒子の含有量が互いに異なる磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【
図7】結晶質粒子の含有量が互いに異なる磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【
図8】XRDによる測定結果、結晶質ピークが観察されていない場合のTEMイメージとSAMパターンの結果を示したものである。
【
図9】XRDによる測定結果、結晶質ピークが観察された場合のTEMイメージとSADパターンの結果を示したものである。
【
図10】本発明の他の実施形態によるコイル部品の断面図を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
コイル部品用磁性粉末
本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含む。
【0016】
従来のコイル部品に用いられる高Ms特性を有する鉄系粉末とは、Feの含有量が78~84at%であり、飽和磁束密度(Bs)が約1.54~1.63Tレベルであり、保磁力が100A/m以下のレベルを有することを意味する。
【0017】
特に、特定の熱処理工程が適用された磁性粉末の場合、保磁力が100A/m以下レベルであり、粉末の粒度分布(D50)が20~25μmの条件下においてトロイダルコアを基準に透磁率の値は1MHzの周波数で32~35の範囲内とならねばならず、磁束密度0.02T(テスラ)かつ周波数1MHzの条件下において磁心損失は550kW/m3以下の特性を満たさねばならない。
【0018】
Feの含有量が高い鉄系粉末の場合は、上述の特性を満たすために、X線回折法(XRD)で測定した際に非晶質粒子を含んでいることを確認する必要がある。
【0019】
このような非晶質性を示し、且つFeの含有量が高い鉄系粉末のXRDシグナルは、
図1のようにハロー(halo)状を示す。
【0020】
非晶質粒子のみを含む比較例によるコイル部品用磁性粉末のMs特性をVSMで測定すると、
図2のとおりとなる。
【0021】
図2に示される比較例によるコイル部品用磁性粉末は、81at%のFe、4at%のSi、13at%のB、1at%のC、及び1%のCrの組成を有し、
図1に示すように、非晶質粒子のみを含むことが分かる。
【0022】
図2を参照すると、非晶質粒子のみを含む比較例によるコイル部品用磁性粉末のMsは約172.7emu/gであることが分かる。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末をXRD(X-Ray Diffraction)で測定したもので、非晶質粒子と結晶質粒子が混合された磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【0024】
XRD及びVSMによる測定に用いられた本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、81at%のFe、4at%のSi、13at%のB、1at%のC、及び1%のCrの組成を有する。これにより、上述の比較例によるコイル部品用磁性粉末と同一の組成であることが分かる。
【0025】
上述の比較例とは異なり、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、非晶質粒子と結晶質粒子が混合されたヘテロジニアス(heterogeneous)粉末であるため、XRDで測定した際に、結晶性粒子に対するピーク(約45deg)が確認されることが分かる。
【0026】
すなわち、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含むため、XRDシグナルの測定結果において、結晶質ピークの高さh1と結晶質ピークの高さh2の比h1/h2は1~1.5であることが確認できる。
【0027】
この際、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末において結晶質粒子が占める含量は5~6vol%であることができる。
【0028】
結晶質ピークの高さh1と結晶質ピークの高さh2の比h1/h2が1未満の場合は、磁心損失が非常に高くMsが低いという問題があり、結晶質のピークの高さh1と結晶質ピークの高さh2の比h1/h2が1.5を超えると、透磁率が低くなり磁心損失も増加するという問題がある。
【0029】
よって、結晶質ピークの高さh1と結晶質ピークの高さh2の比h1/h2が1~1.5である場合、低磁心損失特性、適正な水準の透磁率、及び高Ms特性を有することができる。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末をVSM(Vibrating Sample Magnetometer)で測定したものである。
【0031】
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、非晶質粒子と結晶質粒子が混合されたヘテロジニアス(heterogeneous)粉末であるため、比較例と同一の組成にも拘らず、VSMによる測定結果、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末のMsは約182.6emu/gと比較例によるコイル部品用磁性粉末のMs測定値よりも約5~6%高いことが分かる。
【0032】
測定方法についてより詳細に説明すると、先ず81at%のFe、4at%のSi、13at%のB、1at%のC、及び1%のCrの組成を有する非晶質粒子のみからなる比較例によるコイル部品用磁性粉末、及び比較例と同一の組成を有し、且つ非晶質粒子と結晶質粒子が混合された本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末を用意した。
【0033】
次に、用意された比較例によるコイル部品用磁性粉末、及び本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、それぞれ粗粉を70~90wt%、微粉を10~30wt%含むように調節した。
【0034】
その後、比較例によるコイル部品用磁性粉末、及び本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末を用いてトロイダルコアを製造した。
【0035】
次に、比較例によるトロイダルコア、及び本発明の一実施形態によるトロイダルコアの電磁気特性に対する評価を行った。その結果、透磁率、品質係数、磁心損失などの電磁気特性の水準が互いに類似することが確認できた。
【0036】
しかし、入力された電流当たりの透磁率(%)は、比較例によるトロイダルコアの場合は約87.9%であり、本発明の一実施形態によるトロイダルコアの場合は約90.8%であるため、非晶質粒子と結晶質粒子が混合された場合のトロイダルコアのDC-bias性能が高いことが確認できた。
【0037】
本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Feの含有量が80~81at%であり、Siの含有量が4~8at%であり、Bの含有量が12~14at%であり、Cの含有量が0.15~1.0at%であり、Crの含有量が1~1.5at%であることができる。
【0038】
コイル部品には高Bs値が要求されるが、一般に、Bsが高い合金粉末の材料設計はFe元素が豊かな組成に基づく。
【0039】
具体的には、Fe元素が豊かな組成にSi、B、Cなどの半金属(metalloid)系元素を少量添加して母合金(Ingot)を作成し、噴霧(atomizer)装置を用いて粉末化する。この際、ガラス質化(Glass Forming Ability;GFA)できるように、コイル部品用磁性粉末の組成を調節することが重要である。
【0040】
本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Feの含有量が80~81at%であるため、高Bs値を有するようになる。
【0041】
また、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Siの含有量が4~8at%であり、Bの含有量が12~14at%であり、Cの含有量が0.15~1.0at%であるため、磁性粒子の一部がガラス質化できるようになる。
【0042】
特に、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Crの含有量が1.0~1.5at%であるため、耐腐食性に優れるとともに、磁気時効を防止し、Bsを1.5T以上実現することができる。
【0043】
また、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、コイル部品用磁性粉末にCrを1~1.5at%添加し、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末の表面にCrOx層を形成する。このように、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末の表面をリン酸塩系コーティング体でコーティングする場合、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末とリン酸塩系コーティング体の接合性を大幅に向上させ、優れた絶縁抵抗特性及び再現性を確保することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によるコイル部品に含まれる鉄系粉末のアスペクト比は、1.1~1.3であることができる。
【0045】
もし、鉄系粉末のアスペクト比が1.1未満であると、磁心損失が大きくなり、Msの値が非常に低くなる。逆に、鉄系粉末のアスペクト比が1.3を超えると、低透磁率及び高磁心損失特性を有するようになる。
【0046】
まとめると、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含むため、粗粉と微粉を8:2の割合で混合して製造した20パイのトロイダルコアを基準に1MHzの周波数で透磁率32以上、磁心損失500kW/m3以下、品質係数65以上を満たすとともに、180emu/g以上の高Ms測定値を有することができるという優れた効果がある。
【0047】
図5~
図7は、結晶質粒子の含有量が互いに異なる磁性粉末のXRDシグナルを概略的に示したものである。
【0048】
具体的には、
図5はh1/h2が0の場合、
図6はh1/h2が1.3の場合、及び
図7はh1/h2が2.82の場合における磁性粉末のXRDシグナルを示したものである。
【0049】
一方、
図5~
図7の磁性粉末の透磁率(1MHz)、磁心損失、及びMsをそれぞれ測定した。
【0050】
図5のようにh1/h2が1未満の場合、すなわち、結晶質ピークが観察されていない場合、透磁率は21.6、磁心損失は879kW/m
3、及びMsは172emu/gであることが確認できる。
【0051】
これとは異なり、
図7のようにh1/h2が1.5を超えると、透磁率は17.3、磁心損失は881kW/m
3、及びMsは184.4emu/gであることが確認できる。
【0052】
すなわち、h1/h2が1未満の場合は、磁心損失が高くMsが低いという問題があり、h1/h2が1.5を超えると、磁心損失が高く透磁率が低いという問題がある。
【0053】
しかし、
図6のように、h1/h2が1~1.5である場合、透磁率は21.5、磁心損失は717kW/m
3、及びMsは182emu/gと、高透磁率及びMs値を有するとともに低い磁心損失を有することが分かる。
【0054】
図8は、XRDによる測定結果、結晶質ピークが観察されていない場合のTEMイメージとSAMパターンの結果を示したものである。また、
図9は、XRDによる測定結果、結晶質ピークが観察された場合のTEMイメージとSADパターンの結果を示したものである。
【0055】
図8及び
図9を参照すると、XRDによる測定結果、結晶質ピークが観察されている場合は、TEM写真からも非晶質粒子と結晶質粒子が混在していることが確認でき、この際、結晶質粒子のグレインサイズ(粒径)は約9~10nmであることが分かる。
【0056】
コイル部品
図10は、本発明の他の実施形態によるコイル部品100の断面図を概略的に示したものである。
【0057】
図10を参照すると、本発明の他の実施形態によるコイル部品100は、本体110と、本体110の内側に配置され、両端部が本体110の外側に露出するコイル120と、本体110の外側に配置され、コイル120の端部とそれぞれ接続される外部電極130と、を含む。
【0058】
本体110は、磁性体シート111を積層することで形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
本体110は、本発明の一実施形態によるコイル部品用合金磁性粉末を含むことで形成することができる。
【0060】
本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含む。
【0061】
すなわち、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Fe-Si-B-C-Cr系の鉄系粉末を含み、上記鉄系粉末は非晶質粒子と結晶質粒子を含むため、XRDシグナルの測定結果において、結晶質ピークの高さh1と非晶質ピークの高さh2の比h1/h2は1~1.5であることが確認できる。
【0062】
また、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末は、Feの含有量が80~81at%であり、Siの含有量が4~8at%であり、Bの含有量が12~14at%であり、Cの含有量が0.15~1.0at%であり、Crの含有量が1~1.5at%であることができる。
【0063】
コイル部品を製造する際に用いられる本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末の鉄系粉末は、粗粉を70~90wt%含み、微粉を10~30wt%含むことができる。
【0064】
磁性体シート111を用いてコイル部品を形成するにあたり、磁性体シート111にコイルパターンをらせん状に形成し、かかる磁性体シート111を積層して、積層方向において隣接する各コイルパターンを、導電性ビアを介して互いに接続することでコイル120を形成することができる。コイル120は、投射平面図を見ると、コイルパターンが互いに重なり合って環状の軌道を構成するようになる。
【0065】
コイル120は、リードを介して本体110の長さ方向Lの両端面に配置される外部電極130と電気的に接続されるようにする。
【0066】
本発明の他の実施形態によるコイル部品は、本体110が、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末を含むため、本発明の一実施形態によるコイル部品用磁性粉末について上述したとおり優れた効果を有することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0068】
100 コイル部品
110 本体
111 磁性体シート
120 コイル
130 外部電極