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特開2022-28906メタマテリアル光学フィルタ及びこれを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028906
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】メタマテリアル光学フィルタ及びこれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220208BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20220208BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/32
G03H1/04
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195260
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2019504818の分割
【原出願日】2017-07-21
(31)【優先権主張番号】1613182.3
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】15/653,374
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519026559
【氏名又は名称】メタマテリアル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】カロス、エフシミオス
(72)【発明者】
【氏名】パリカラス、ジョージオス
(72)【発明者】
【氏名】コーミエ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンヨン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】イック、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】レジェ、ティエリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レーザー保護システム(LPS)は一般的に狭帯域であるため光透過量を減らし、また薄い色がついており、重いという課題を有する。
【解決手段】LPS用のメタマテリアル光学フィルタは、透明な基板と、透明な基板上に形成された感光性ポリマー層を備える。感光性ポリマー層にはレーザーを用いて非等角のホログラフィックパターン化されたサブ波長格子が形成されており、所定の波長を遮断するように構成されている。その製造方法は、感光性ポリマー層を透明な基板に適用し、感光性ポリマー層をレーザーと鏡との間に配置し、レーザ光と鏡から反射された光との間の相互作用によって感光性ポリマー層内にホログラフィック格子が形成されるよう、感光性ポリマー層上にレーザを走査することにより実現できる。更に2つ以上のホログラフィックパターン化されたサブ波長格子層を積層することを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタマテリアル光学フィルタを製造するためのシステムであって、
鏡と、
レーザーと、
前記レーザーを感光性ポリマー層に対して移動させるレーザー移動システムと、を備え、
前記レーザー移動システムは、前記レーザーが前記感光性ポリマー層上を移動するとき、レーザー光が前記鏡で反射され、前記感光性ポリマー層内にホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を形成するように前記レーザー移動させることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記レーザー移動システムは、
感光性ポリマー層が与えられた透明な基板と、
前記鏡を備える第1の搬送機と、
を備え、
前記第1の搬送機は、前記レーザーに対して前記感光性ポリマー層の反対側に設けられ、
前記第1の搬送機は、レーザー光が前記感光性ポリマー層に向けて再帰反射するために前記鏡が前記レーザーに向けて角度付けされるように、前記レーザーと協調するように前記鏡を動かすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記レーザー移動システムは、
前記レーザーを搬送するための第2の搬送機と、
前記感光性ポリマー層の表面の近くに設けられたレールと、を備え、
前記第2の搬送機は、前記レールに対して移動可能に係合し、前記感光性ポリマー層の表面を横切って移動できるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記透明な基板に適用された感光性ポリマー層を保持するためのクランプをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の搬送機及びレールは、前記レーザーを縦方向に移動するように構成され、前記クランプは、前記感光性ポリマー層を横方向に移動するように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
メタマテリアル光学フィルタを製造するための方法であって、
基板上に感光性ポリマーを適用するステップと、
前記感光性ポリマー層をレーザーと鏡との間に配置して前記感光性ポリマー層上を前記レーザーで走査するステップと、を含み、
レーザー光と前記鏡との間の相互作用により、前記感光性ポリマー層内にホログラフィックパターン化されたサブ波長格子が形成されることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
レーザー光が前記感光性ポリマー層に向けて再帰反射するために前記鏡が前記レーザーに向けて角度付けされるように、前記レーザーと協調するように前記鏡を動かすステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記走査するステップは、前記レーザー、前記感光性ポリマー層、及び前記鏡の一つ又はそれ以上を移動させることを含む、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
熱成形された感光性ポリマー層が所定の要件を満たすために、前記感光性ポリマー層が反復可能なフィルター波長シフトおよびフィルタ波長事前補償を有するように、前記感光性ポリマー層を熱成形するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記感光性ポリマー層の最初のバンドギャップは、前記熱成形するステップで生じたシフトを相殺するために、より長い波長に事前シフトされていることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記バンドギャップの事前シフトは、前記感光性ポリマー層の中心から離れるにしたがって徐々に小さくなるように、径方向に依存することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記レーザーは別々のビームに分割され、分割された各ビームは異なる入射角度で感光性ポリマーに入射することを特徴とする請求項6から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記レーザーは、1つの結合ビームに結合された異なる波長の複数のレーザーを含み、
前記結合ビームは、事前決定された入射角度で前記感光性ポリマー層に入射し、異なる波長のノッチフィルタを通して同時に記録されることを特徴とする請求項6から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
単一の感光性ポリマー層上に形成されたホログラフィックパターン化されたサブ波長格子の各々が、多層メタマテリアル光学フィルタ積層体に再結合され、
前記多層メタマテリアル光学フィルタ積層体は、2つ以上のホログラフィックパターン化された格子を含み、
前記多層メタマテリアル光学フィルタ積層体の角度、バンドギャップ、光学密度および色彩調整が可能であることを特徴とする請求項6から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記多層メタマテリアル光学フィルタ積層体を接着するための接着剤をさらに含み、
前記多層メタマテリアル光学フィルタ積層体はグラフェンを含むことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
メタマテリアル光学フィルタであって、
透明な基板と、
前記透明な基板に与えられた感光性ポリマー層と、を備え、
前記感光性ポリマー層は、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を形成するようにレーザーを用いて処理され、
前記サブ波長格子は、所定の角度で入射する電磁放射の所定の波長のを遮断する非等角縞を備えることを特徴とするメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項17】
前記ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、保護の有効角度を最大化するために湾曲していることを特徴とする請求項16に記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項18】
前記ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は複数の格子を含み、
当該複数の格子の各々は、予め決定された異なる波長の電磁放射を防ぐように構成されていることを特徴とする請求項16または17に記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項19】
前記ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子のうちの少なくとも一つは、前記フィルタの色彩調整のために設けられている、請求項18に記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項20】
前記ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、約405nm、445nm、520nm、532nm、635nm、650nmの波長の少なくとも1つを選択的に防ぐように構成されていることを特徴とする請求項18または19に記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項21】
前記感光性ポリマー層は、熱成形を用いて前記透明な基板に形成され、
前記感光性ポリマー層は、熱形成の間、感光性ポリマーの変化を許容するように予め構成されていることを特徴とする請求項16から20のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項22】
前記感光性ポリマー層には、前記フィルタの色彩を調整するために選択された染料が注入されていることを特徴とする請求項16から21のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項23】
前記フィルタの色彩を調整するために選択された染料を含む補助的な基板をさらに備えることを特徴とする請求項16から22のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項24】
前記透明な基板は、2つ又はそれ以上の透明な基板を含み、前記感光性ポリマー層は、前記2つ又はそれ以上の透明な基板の少なくとも2つの間に位置決めされていることを特徴とする請求項16から23のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項25】
前記非等角縞の事前決定された角度は、前記フィルタの法線軸の75°以下であることを特徴とする請求項16から24のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項26】
前記電磁放射は、レーザーからの光学放射であることを特徴とする請求項16から25のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項27】
前記透明な基板と感光性ポリマー層を接着する接着剤をさらに備え、前記接着剤はグラフェンを含むことを特徴とする請求項16から26のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【請求項28】
前記透明な基板は、窓、眼鏡、及びバイザーの何れか1つから選択されることを特徴とする請求項16から27のいずれかに記載のメタマテリアル光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光学フィルタ及び光学フィルタを製造するための方法に関し、より具体的には特定の狭い光周波数にフィルターをかけることができる、ナノパターンが形成された光学的に透明な薄いフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の状況において目を保護することを含む、多くの目的で光学フィルタが使用されている。目を保護するためにフィルタを使用することの一例として、レーザー技術がある。
【0003】
レーザー保護システム(LPS)は世界中のラボで日常的に使用されている。LPSは典型的に、レーザー光線の使用中に使用者によってゴーグル又はアイシールドの形で使用されている。LPSは、周囲を保護するために、レーザーがある位置の周囲に配置された平らな窓としても用いられている。これらのフィルタは、通常、ポリマー及び染料(低強度レーザー用)又はガラス(高熱密度用)を用いて作られている。
【0004】
現在入手可能なLPSには、例えば航空用途のような他の用途における実現性に影響を及ぼす幾つかの技術的課題がある。第1に、LPSは通常、例えば緑又は青のような一つの帯域幅の光について保護をもたらすように機能し、一つのレーザー帯域幅からの保護をもたらす。第2に、LPSは一般的に狭帯域、すなわち使用されているレーザーの帯域幅にだけ限られていない。これは、LPSは一般的に必要以上の光を遮断してしまい、したがって、全体的な光透過を減らしながら全体的な光景を歪めてしまう。第3に、LPSは通常薄い色がついており、これも、視覚的知覚を歪めてしまう。第4に、ガラスベースのフィルタは重く、重みを加え、又は人が長時間快適に着用することができない。
【0005】
ラボ環境では、蒸着(例えば、スパッタリング)を用いた、ブラッグの法則に基づく狭域干渉フィルタが用いられるようになったが、これらのブラッグの法則に基づく狭域干渉フィルタは、角度光学性能(angle optical performance)が乏しい傾向にあり、フレーク状になって剥離し、薄い色がついている傾向にあり可視スペクトルを歪ませる。
【0006】
したがって、改良された光学フィルタ及び光学フィルタの製造方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の観点によれば、透明な基板、及び透明な基板上に設けられたメタマテリアル光学フィルムを含むメタマテリアル光学フィルタが提供される。メタマテリアルフィルムは、所定の角度範囲で入射する電磁放射の所定のバンド幅を遮断するように構成されている。メタマテリアルフィルムは、透明な基板上に設けられた一つ又はそれ以上のナノパターン化された感光性ポリマー層を含んでも良く、各々の感光性ポリマー層は、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を含むように、例えばレーザーを用いて処理され、格子は非等角縞を含む。光学フィルタは、航空機の窓(コックピットのウィンドシールド)、電車の窓/ウィンドシールド、船の窓、車の窓、建物の窓、試験設備の窓、眼鏡、及びバイザーを含む種々の用途で使用することができる。電磁放射の事前決定された帯域は、電磁放射の単一の波長であっても良い。ホログラフィック格子は、ときどきノッチフィルタと称される。
【0008】
本発明の他の観点によれば、透明な基板と、透明な基板に与えられた感光性ポリマー層と、を備え、感光性ポリマー層は、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を形成するようにレーザーを用いて処理されており、格子は、事前決定された角度で事前決定された波長の電磁放射を防ぐ非等角縞を備えるメタマテリアル光学フィルタが提供される。
【0009】
具体的なケースでは、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、保護の有効角度を最大化するために湾曲している。
【0010】
他のケースでは、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、複数の格子を有し、各々の格子は、事前決定された電磁放射の異なる帯域を遮断するように構成されている。この場合、複数のホログラフィックパターン化されたサブ波長格子の少なくとも1つは、フィルタの色彩調整のために設けられている。その上、複数のホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、約405nm、445nm、520nm、532nm、635nm、650nmの波長の少なくとも1つを選択的に防ぐように構成されている。
【0011】
他のケースでは、感光性ポリマー層は、熱成形を用いて透明な基板に形成され、感光性ポリマー層は、熱形成の間、感光性ポリマーの変化を許容するように事前に構成されている。
【0012】
他のケースでは、感応性ポリマー層は、フィルタの色彩を調整するために選択された染料を含む補助的な基板をさらに備える。
【0013】
別のケースでは、メタマテリアル光学フィルタは、フィルタの色彩を調整するために選択された染料を含む補助的な基板をさらに備えても良い。
【0014】
さらに別のケースでは、透明な基板は、2つ又はそれ以上の透明な基板を含み、感光性ポリマー層は、2つ又はそれ以上の透明な基板の少なくとも2つの間に位置決めされている。
【0015】
別のケースでは、非等角縞の事前決定された角度は、前記フィルタの法線軸の75°以下である。
【0016】
別のケースでは、電磁放射は、レーザーからの光学放射である。
【0017】
別のケースでは、透明な基板と感光性ポリマー層を接着する接着剤をさらに備え、接着剤はグラフェンを含む。
【0018】
別のケースでは、透明な基板は、窓、眼鏡、及びバイザーの何れか1つから選択される。
【0019】
本発明の他の観点では、メタマテリアル光学フィルタを製造するためのシステムであって、鏡に適用された感光性ポリマー層を保持するためのクランプと、レーザーと、レーザーを感光性ポリマー層に対して移動させるレーザー移動システムと、を備え、レーザー移動システムは、レーザーが感光性ポリマー上を移動するとき、レーザー光が鏡で反射され、感光性ポリマー層内にホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を形成するようにレーザーを移動させることを特徴とするシステムが提供される。
【0020】
具体的なケースでは、レーザー移動システムは、レーザーを搬送するための搬送機と、感光性ポリマー層の表面の近くに設けられたレールと、を備え、搬送機はレールに対して移動可能に係合し、感光性ポリマー層の表面を横切って移動できるように構成されている。
【0021】
本発明の他の観点では、メタマテリアル光学フィルタを製造するための方法であって、基板上に感光性ポリマーを適用するステップと、感光性ポリマー層をレーザーと鏡との間に配置して感光性ポリマー層上をレーザーで走査するステップ、とを含み、レーザー光と鏡との間の相互作用により、感光性ポリマー層内にホログラフィックパターン化されたサブ波長格子が形成される製造方法が提供される。
【0022】
具体的なケースでは、走査するステップは、レーザー、感光性ポリマー層、及び鏡の一つ又はそれ以上を移動させることを含む。
【0023】
別のケースでは、熱成形された感光性ポリマー層が所定の要件を満たすために、感光性ポリマー層が反復可能なフィルター波長シフトおよびフィルタ波長事前補償を有するように、感光性ポリマー層を熱成形するステップをさらに含む。この場合、感光性ポリマー層の最初のバンドギャップは、熱成形するステップで生じたシフトを相殺するために、より長い波長に事前シフトされている。さらに、バンドギャップの事前シフトは、感光性ポリマー層の中心から離れるにしたがって徐々に小さくなるように、径方向に依存する。
【0024】
別のケースでは、レーザーは別々のビームに分割され、分割された各ビームは異なる入射角度で感光性ポリマーに入射する。
【0025】
別のケースでは、レーザーは、1つの結合ビームに結合された異なる波長の複数のレーザーを含み、この結合ビームは、事前決定された入射角度で前記感光性ポリマー層に入射し、異なる波長のノッチフィルタを通して同時に記録される。
【0026】
別のケースでは、単一の感光性ポリマー層上に形成されたホログラフィックパターン化されたサブ波長格子の各々が、多層メタマテリアル光学フィルタ積層体に再結合され、この記多層メタマテリアル光学フィルタ積層体は、2つ以上のホログラフィックパターン化された格子を含み、この多層メタマテリアル光学フィルタ積層体の角度、バンドギャップ、光学密度および色彩調整が可能である。このケースでは、多層メタマテリアル光学フィルタ積層体を接着するための接着剤をさらに含み、多層メタマテリアル光学フィルタ積層体はグラフェンを含んでもよい。
【0027】
以下の図面は、メタマテリアルフィルタ及びシステム、並びに製造方法の実施形態の種々の観点を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】航空機のフロントガラスに適用されたメタマテリアルフィルムの実施形態を示す。
図2】格子を用いて作られた反射フィルタの原理を示す。
図3】ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子の異なる種類を示す。
図4】感光性ポリマー上のホログラフィックパターン化されたサブ波長湾曲格子の一例により得られた角度範囲を示す。
図5】第1の航空機窓の水平角度範囲を示す。
図6】第2の航空機窓の水平角度範囲を示す。
図7】第3の航空機窓の水平角度範囲を示す。
図8】第1の航空機窓の垂直角度範囲を示す。
図9】第2及び第3の航空機窓の垂直角度範囲を示す。
図10】熱成形メタマテリアル光学フィルタの断面図を示す。
図11】湾曲格子を記録ためのシステムの実施形態の概略図を示す。
図12】実施形態によるメタマテリアルフィルムを製造するシステムの概略図を示す。
図13】他の実施形態によるメタマテリアルフィルムを製造するシステムの概略図を示す。
図14】他の実施形態によるメタマテリアルフィルムを製造するシステムの概略図を示す。
図15】他の実施形態によるメタマテリアルフィルムを製造するシステムの概略図を示す。
図16】メタマテリアルフィルムを形成する、多層積層感光性ポリマー層とホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を示す。
図17】一つの格子を有するメタマテリアルフィルムの透過スペクトルを示す。
図18】複数の格子を有するメタマテリアルフィルムの透過スペクトルを示す。
図19】実施形態による航空機ウィンドシールドの種々のコンポーネントを示す。
図20】他の実施形態による航空機ウィンドシールドの種々のコンポーネントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
種々の用途において新しいタイプの光学フィルタとしてメタマテリアルフィルムが提案されている(例えば、PCT公報WO2013/054115号参照)。透明な極薄光学フィルタの開発のために多層ナノパターン格子を設計することができる。上記のPCT出願に開示されているものに加えて、メタマテリアルフィルムの一例は、Convestro(商標) Bayfol(商標)材料又はその派生品をベースにした感光性ポリマー層である。
【0030】
これらのメタマテリアルフィルタを、例えば、航空産業において関心が高まっているレーザー攻撃からの光を選択的に防ぐために航空機のコックピットのウィンドスクリーンに適用することができる。明るい可視レーザー光は、着陸又は離陸のような飛行の重要な段階で、パイロットを妨害し、又はパイロットに一時的な閃光盲を引き起こす。可視の又は不可視のビームがパイロットの目に恒久的な危害を加える可能性は高くはないが、可能性はある。これらのメタマテリアルフィルタには、航空機の乗員を、特に夜間作業中に起こりうる攻撃から守りながら、乗員がフロントウィンドウを通して良好な視界を維持できるように狭帯域の光だけを防ぐという利点がある。
【0031】
図1は、ナノパターンが形成された光学的に透明なフィルム100として形成され、航空機用途のウィンドシールドに適用されたメタマテリアルの例を示す。メタマテリアルフィルム100は、典型的に、飛行機110のコックピットガラス窓105の表面に適用される。メタマテリアルフィルム、およびシステム、並びに方法の実施形態は、眼鏡、ヘルメットのバイザー、ヘッドアップディスプレイ、又はこれらと同様のもの、家、ビル、若しくはこれらと同様のものの窓、並びに車、トラック、電車、船、ヘリコプターのような他の航空機、無人飛行体、及びこれらと同様のものを含む他の乗り物のウィンドスクリーン、又はウィンドシールドを含む種々の用途に適用可能であることが理解できる。さらに、他の用途では、メタマテリアルフィルムは、多層ウィンドスクリーン、窓、眼鏡、バイザー又はこれらと同様のもののガラスパネル/ガラス層の間に適用することもできる。
【0032】
メタマテリアル光学フィルタは、一般的に、眼鏡、コックピットのフロントウィンドウ、及び他の透明表面に適用することができる、光学的に透明な接着フィルム層を含む。メタマテリアルフィルタは、一般的に、フィルタ層及びフィルタ層のサブ波長格子によって、同時にかつ大部分が反射されると共に減衰又は部分的に内部に吸収される特定の波長を除いて、入射する可視スペクトルに対して透過性を有し、フィルタの背後にいる人を保護する。フィルタは、受動的な方法で(即ち、動力源なしで)、レーザー波長を含む光学スペクトル波長のような電磁放射からの保護をもたらす。
【0033】
上述した種類の光学フィルタの難点の一つは、ウィンドスクリーン及びこれと同様なもののような用途として十分大きく、容易に組み込める薄いフィルムを作る複雑さに関する。メタマテリアルフィルム内に、ナノパターンが形成されたサブ波長格子を形成する具体的な一つの方法は、ホログラフィーを用いる方法である。ホログラフィー又はフォトリフラクションは、複雑な大面積フィルムを、迅速に、例えば数分で製造できる製造方法の可能性を提示する。
【0034】
フォトリフラクティブ材料は、入射するレーザー放射に基づいて屈折率を修正できる性質を有する。最も単純なシナリオでは、サンプルを鏡に向かって配置し、レーザーを照射する。フォトリフラクティブ材料内で作られた強度干渉パターンが屈折率を変化させて所望の屈折率パターンに一致するようになり、ブラッグ型ミラー又はブラッグ格子をなす。図2は、レーザーによるブラッグ型ミラーの相互作用を作り出すことに関する原理を示す。ブラッグ型ミラー/格子115は、(遮断すべき放射の波長に応じて)事前決定された厚さの高屈折率格子120と低屈折率格子の交互の層として示される。典型的には、数十又は数百層が要求されるが、この例では明確化のために数層だけを示す。一旦、ブラッグ格子が作り出されると、レーザービーム130はブラッグ格子の方向と平行に近い角度で入射したとき、干渉による強め合い効果がレーザービームを反射し返す135(即ち、フィルタリングする)。
【0035】
さらに、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を用いて形成されたメタマテリアルフィルタは、連続的に可変な感光性ポリマー層の屈折率の追加の利点と共に、誘電フィルタにおける波長の選択性をもたらす。この特性で、効率及び波長の選択性が増すことが期待される。ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を使用して作られたメタマテリアルフィルタは、回折光学素子で通常見られる光エネルギーで傾斜し又は湾曲させることができる誘電層をもたらす。メタマテリアルノッチフィルタは、光を曲げ又は集約する光学要素であってもよい。
【0036】
具体的に感光ポリマー層は、湿性現像剤を利用しないため、厚い層として作ってもよく、より厚い層は、より効率的であり、かつ狭い波長選択性(狭い帯域)を意味する。多層ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を用いて作られたメタマテリアルフィルタは、レーザー線を防ぎ、全体的な透過スペクトル及び色彩知覚に対する影響を最小にするために、近論理的最小帯域(near-theoretical minimum bandwidth)を取り除けると考えられる。
【0037】
メタマテリアルフィルタは、平行縞ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子、又は傾斜縞ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子の形態をとってもよい。両方とも、調節可能なフィルタとして効果的である。しかしながら、大量生産の観点から、傾斜縞格子と、非傾斜縞格子(縞平面が表面に対して平行である)との間には重要な実用上の相違点がある。
【0038】
傾斜縞格子は、要求される特定の波面を作り出すために必要な光学コンポーネントの完全な準備の存在、又は一旦、これらの準備が例えばラボに組み込まれたときに固定する能力の何れかを必要とする。完全な準備が利用可能であることの要求は、典型的に、その後更なる密着プリントを形成するために使用される「マスター」格子層に記録することで達成される。
【0039】
傾斜縞格子の製造は、レンズ自体は製造機器内で露光されていない感光性ポリマーの取り付けられた層と共に完全に製造される「ゴーグルレンズ」の一部として行うことができる。光学部品は、必要な、場合によっては複雑な基準および対象ビームを生成することができ、ロボット機構は、露光ステーションに部品を提示し、それをさらなる工程のために除去する。別の可能性は、露光前または露光後にブランクレンズをその感光性ポリマーラミネートと共に製造機械内にもたらすことである。製造機械がプラスチック中にレンズを成形し、感光性ポリマー層がその中に挿入され、又は冷却後に適用される場合、さらなる一体化が可能である。記録中または記録後(またはその両方)に感光性ポリマー層を一次元または二次元で湾曲させる必要がある場合、一体化した方法が必要になるかもしれない。
【0040】
傾斜縞格子は、元の「マスター」格子層として作られ、その後、「ウェブ」の方向に走査する一本線のレーザー光でスキャンすることで光学的に複製することができる。これは、マスター格子が、(回折格子の場合)固いドラムの外側に巻かれ、又は(透明格子の場合)内側からレーザー光の線が照射されている透明なドラムの外側に巻かれる場合に使用される。
【0041】
レーザー光によるスキャンは、傾斜縞の「マスター」格子層が平らな状態で複写され、もともとステップ・アンド・リピート方式が使用されるときに、ときどき採用される。しかし、ステップ・アンド・リピートが使用されるとき、すなわちマスターとコピーが相当の時間、これらの全表面領域上の空間に固定されているとき、レーザーの出力のみに制限されるが、マスター格子層の全表面を同時に照射できる。
【0042】
いずれの場合も、ステップ・アンド・リピートで複写された平らなマスター格子は、航空機のフロントウィンドウのような大面積メタマテリアルフィルタのために必要である。
【0043】
ノッチフィルタ用の非傾斜縞格子は、両者の姿及び両者の製造方法に起因して「ホログラフィックミラー」とも呼ばれ、その理由は、露光している間、記録媒体の平面内の動きを許容するため比較的製造が容易であり、特に、露光中に記録媒体が平行に縞平面方向に動いた場合、縞が不鮮明にならず、良好なコントラスト及び格子効率で記録できる。実際には、このようなナノパターン化されたサブ波長格子を作る機械は、感光性ポリマーの自身の平面内での「滑り」を許容し、この性質は、感光性ポリマー層の後ろに配置されるレーザーと平らな鏡が、移動するウェブが意図的に通過する、局所的な干渉縞の「スタック」を作る、大面積シームレスノッチフィルタを製造するために工業的に使用されている。
【0044】
大量製造される格子では、防振台上にある多くの光学コンポーネントの複雑な構成が、しばしば、広げられた一本のレーザービーム又はレーザー構成の走査線によって複写された「マスター格子層」によって置き換えられる。典型的には、「回折」格子のためには十分なホログラムが必要であるか、又は透明格子のためには弱い(効率50%)ホログラムが必要であるが、いずれの場合でも、視準が合ったレーザー光のビームによって複写することが必要であり、これは複雑なメタマテリアルノッチフィルタの設計の制限となり得る。
【0045】
比較的厚い、いわゆる「大きい格子」を製造するためには、露光時間を継続するために、光学干渉パターンを感光性ポリマー層内にしっかりと固定する必要がある。大きい格子の名は、それが干渉縞の三次元体積を記録できるのに十分厚く、例えば14マイクロメートルの厚さの感光性ポリマー層は、二十数個より多くの半波長縞層を記録できる。クレジットカードの銀のセキュリティーホログラムの製造に使用される機械的エンボスプロセスとは異なり、「鮮明な」干渉パターンを作るのに、レーザーのような可干渉性の光源が製造ラインで必要な部分となる。ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を用いたメタマテリアルを作るために、必要な光学特性を有するラボのレーザーを手軽に利用することができるが、実際のレーザーの出力の有限の極限が、あらゆる製造プロセスの速度に上限を設定するかもしれない。
【0046】
記録媒体は、例えば、1ミリメートルあたり約1000線数、又はそれよりも多い、高い空間的解像度を有し、かつ得られたメタマテリアルフィルタがガラスのような透明度を有するように低ノイズ又は低粒子散乱を有することが好ましい。製造ライン上では、露光の間、一定の機械的安定性が要求される。材料は、基準の揺れが光の波長未満であることを保証するために効率的な露光時間が十分短くなるように、十分な感知性を有するべきである。
【0047】
殆どのナノパターン付き、及び/又はブラッグ型レーザーフィルタは、本質的に入射するレーザー光の角度に関して、低い操作性を有する。これは、従来の周期的(高および低指数)設計の場合、動作角がフィルタのバンドギャップに関連づけられているからであり、バンドギャップが小さくなるにつれて、バンドギャップが現れる入射角(AOI)も減少する。興味深いことに、この問題は、メタマテリアルフィルムの格子を湾曲させ、その曲率半径が、眼を受ける放射が見込まれる場所と中心合わせされることによって解決できる。これは、感光性ポリマーを、平らな鏡の上に置くことができる、(例えば曲率半径Rmを有する)湾曲した基板金型の上に配置することで達成される。最大の格子形成効率をもたらし、かつ不必要な影響を抑制するために、基板金型は感光性ポリマーに対して屈折率整合されるべきである。次いで、ポリマーが曲率半径Rpに曲げられると、有効曲率半径は1/(1/Rp-n/Rm)となり、nは、感光性ポリマー層の平均屈折率である。
【0048】
図3は、異なる種類の格子層を示し、図3Aは平行(非傾斜又は等角)格子、図3Bは傾斜(一定の傾斜)格子、図3Cは湾曲格子である。湾曲格子層では、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、平らな面上で、格子がメタマテリアルフィルムに沿った位置に応じて変化する主軸(kベクトル)を有する。例えば、メタマテリアルフィルム(x軸)の各水平位置について、(光学密度が2.0より大きいところでは)40°の入射角(AOI)が得られるが、このAOIは、メタマテリアルフィルムの長さに沿った異なる角度周辺に中心が置かれる。湾曲格子は、例示の湾曲格子層で60°よりも広い角度範囲が得られている図4に示すように、より大きい保護角度を可能にする。
【0049】
航空機のウィンドスクリーンのような車両のウィンドスクリーンの場合、両目の間の中心点をフィルムの曲率半径を整合させるために用いることができる。その上、車両用途では、特定の方向、典型的には地上から発生されるレーザー放射を取り除くために最適化できるように、メタマテリアルフィルムの格子を重ねて種々の角度に傾斜させてもよい。図5乃至9は、航空機のコックピットの窓の(水平方向及び垂直方向の両方)角度範囲の例を示す。図5は、航空機の第1の窓(窓1)の水平角度範囲Aを示す。エアバス(商標)A330(商標)航空機の特定の例では、角度Aは85°であり、軸Xに対する角度は-15°から+70°であってもよい。図6は、航空機の第2の窓(窓2)の水平角度範囲Bを示す。この特定の例では、角度Aは90°であり、軸Xに対する角度は-50°から+40°であってもよい。図7は、航空機の第3の窓(窓3)の水平角度範囲Cを示す。この特定の例では、角度Aは28°であり、軸Xに対する角度は-72°から-45°であってもよい。図8は、第1の窓(窓1)の垂直角度範囲D及びEを示す。航空機の場合、範囲は、一般的に水平よりも下にだけ必要であり、具体的には-7°から-63°の間の角度Dにだけ必要である(この場合、D=E)。図9は、第2及び第3の窓(窓2及び3)のための垂直角度範囲F及びGを示す。航空機の特定の例では、これらの場合に要求されるフィルタリング範囲(仰角F)は、窓2については+12°から-55°であり、窓3については+9°から-40°である。ここで述べた角度は、飛行中の異なる段階での航空機の飛行挙動及び地上で発生する潜在的なレーザー源の位置を考慮することを意図する。
【0050】
メタマテリアルフィルムは、一般的に容易に平ら又は円筒状の湾曲表面上に積層することができるが、メタマテリアルフィルムは、レンズ、ヘルメットバイザー又はウィンドスクリーンのような複合湾曲(球体)を有する物体に積層するのが一般的により困難である。この問題は、平らな紙でボールを包むことと類似する。このような技術的挑戦に対して熱成形が潜在的な解決法を提示する。
【0051】
実施形態による方法では、まず、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を用いて作られた一つ又はそれ以上のメタマテリアルフィルタを、光学接着剤を用いてポリカーボネート又はガラスのような平らな基板に貼り付ける。メタマテリアルフィルタ及び接着フィルムの両方は、シリコン、ポリマー等のような熱成形層で構成される。接着剤‐メタマテリアル積層体は、次いで、例えば半径75mmの円のような、レンズを形成するための所望の予形状に、機械を用いて切断される。次いで、積層体は、制御された圧力及び温度下で、例えば球状湾曲のような所望の形状に熱成形される。接着剤‐メタマテリアル積層体及び選択された基板は、次いで球体湾曲となり、平らではない眼鏡レンズ、キャノピー、ウィンドシールド、又はこれと同様のものと一体にするために通常のレンズ仕上げプロセスのために使用することができる。製造では、メタマテリアルフィルタの波長を、フィルタ形成の間の物理的な伸張のために事前補正してもよい。図10は、事前補正の例を示す、熱成形の前(明確化のために垂直軸を拡大した)の感光性ポリマーの断面を示す。具体的には、感光性ポリマー層の中央にある格子は、より大きい間隔(周期)を有する感光性ポリマー層の端にある格子よりも、小さい間隔(周期)を有する。メタマテリアルフィルムを熱形成するとき、端は引っ張られ、格子の間隔はレンズ上で均一になり、湾曲した表面にわたって、同じ波長とバンドギャップをフィルタリング(レーザーを遮断)するようになる。この方法で、熱形成フィルムが事前決定された遮断/フィルタリング要件に沿うように、熱形成の間、フィルムは、事前補正された波長で繰り返しのフィルタ波長シフトを有する。例えば、熱形成前は、熱形成プロセスによって引き起こされるシフトと均衡をとるために、元のメタマテリアルフィルムのバンドギャップを、より短い波長又はより長い波長に事前シフトさせててもよい。さらに、熱成形される感光性ポリマー層のバンドギャップの予めのシフトは均一である必要はなく、フィルムの中心から徐々に小さいシフトで半径方向に依存する可能性がある。このように単純なレンズの場合、熱成形プロセスは、波長依存性を有する放射状のメタマテリアルフィルタを生成して全体的な遮断角を大きくすることができる。この場合、最も短い波長は感光性ポリマー層の中央にあり、最も長い波長は外縁にある。
【0052】
熱成形のために事前補正する類似の方法では、メタマテリアルフィルタは、フィルタが装備される予定の環境の作動状況に基づいて事前補正されてもよい。例えば、ある航空機ウィンドシールドは、フィルタが意図された作動環境に基づいて所望の特性を提供できるように、暖房システムを有し、温度が格子の構成に影響を及ぼす可能性がある。
【0053】
図11は、感光性ポリマー層上に湾曲した格子を記録するシステム1000及び方法を示す。具体的には、感光性ポリマー層1005は、第1部分1015と第2型部分1020を有する湾曲した型1010内に保持される。湾曲した型は、要求される湾曲の種類、即ち湾曲が二次元又は三次元であるのかに応じて、円筒型又は球状型であっても良い。湾曲した型1010は、平らなミラー1025上に置かれる。入射するレーザービーム1030は、感光性ポリマー層1005上を走査し、反射されたビーム1035は鏡から戻り、入射ビームと反射ビームとの間の干渉から感光性ポリマー層1005内に反射格子を作る。この方法で、平面的な干渉縞及び格子が感光性ポリマー層領域内に形成されるが、感光性ポリマー層は曲がっているため、感光性ポリマー層が型から取り除かれ、平らにされたとき、先に参照した図3Cに示すように、これらの縞は湾曲する。
【0054】
上述した、ホログラフィックパターン化されたサブ波長格子を用いてメタマテリアルフィルタを製造するために、異なる原理を用いることができる。例えば、一実施形態では、レーザーによる露光は、レーザーを搬送する移動ヘッド又は出力を可撓性光ケーブルを通して、レール上を感光性ポリマー層の幅及び長さ方向に移動して、連続するオフセット線でスキャンすることで行っても良い。露光は、例えばスチール性ガイドレール上の可撓性駆動ベルトによって駆動する搬送機に取り付けられたレーザーヘッドの走路によって、感光性ポリマー層ウェブの幅又は長さに沿って細い線で行っても良い。ビームの幅、レーザーの出力、及び露光の間、感光性ポリマー層が進行する距離は、目に見える線がなく高い光密度の製品を得られるよう実験的に決定しても良い。レーザー出力ヘッドは、入射角が、ウィンドシールドの接着剤/処理による感光性ポリマー層の特定のバッチの収縮又は拡張を補償するように、モーター駆動回転ステージに取り付けられても良い。
【0055】
図12は、一つ又は複数層の複合であり等角な格子を含むメタマテリアルフィルタフィルムを製造するシステム1100の概略図である。図12では、透明な基板1105上の感光性ポリマー層が、鏡又は反射性フィルム1105に隣接し、又は適用されている。レーザー1115が、一つ又はそれ以上のレール1125に設けられた搬送機1120に取り付けられており、レーザー1115が感光性ポリマー層1105の縦方向に沿って移動できるように構成され、感光性ポリマー層1105の一本の「線」を処理する。この具体的な実施形態では、複数(3個)のレーザー1115及び搬送機1120が設けられており、他の実施形態では、より多くの、又は少ない数のレーザー及び関連する機器を設けても良い。一つの走路又は「線」が完成した後、(搬送機1120上の)レーザー1115は、レール1125の最初に戻り、レーザー1115が感光性ポリマー層1105の追加の「線」を処理できるように、感光性ポリマー層1105が搬送機1120の移動方向と直交する方向に移動する。この方法で、感光性ポリマー層1105は、適切な解像度レベルでレーザー1115によって処理される。この実施形態では、搬送機1120は、所望の縞角度に応じて感光性ポリマー層への入射角を調整できるように、レーザー1115を回転可能にする回転ヘッド1130を含む。レーザーの回転は、感光性ポリマー層の異なる領域のために縞角度を調整するために、レーザー走査に先立って、又はレーザー走査中に行うことができる。
【0056】
図13は、製造のためのシステム1200の他の実施形態を示す。この実施形態では、原理は図12に示す実施形態と類似しているが、レーザー1110がレーザーを、搬送機1115の走行方向に整合した方向に沿った光の「扇」に分岐させる光学レンズ1135を含むことが異なる。 この光の「ファン」は、ある範囲の角度にわたって露光を生成し、結果として得られるフィルタにおいてより広い角度、したがってスペクトル、帯域幅を誘導する。レンズ1135は、したがってフィルタの帯域幅を変更する制御機構を提供する。
【0057】
図14は、図13に示すシステムと類似する、製造システム1300の更なる実施形態の概略図である。この具体的な実施形態では、複数(3個)のレンズ1135付きレーザー1115が設けられている。複数のレーザーの使用は、一つの感光性ポリマー層(ノッチフィルタ)に、異なる波長を遮断できるように構成された複数の格子を記録するのを可能にする。例として、赤、緑及び青色レーザーを使用しても良い。他の実施形態では、より多くの又は少ない数のレーザー、および関連する機器を設けても良いことが理解できる。
【0058】
複数のレーザーを使用するとき、複数のレーザービームを利用して反射格子を連続し、又は同時に記録する処理を通して、異なる有効波長を有する複数のノッチフィルタをメタマテリアルフィルム積層体に提供することができる。図14には示されていないが、ノッチフィルタは、一つの記録レーザーを独立したビームに分け、前記ビームを異なる入射角度で感光性ポリマー層に指向することで、ノッチフィルタを同時に記録しても良い。変形として、異なる波長を有する複数のレーザーを一つのビームに組み合わせても良く、これを所望の入射角で感光性ポリマーに指向して、異なる波長のノッチを同時に記録するのを可能にしても良い。一つ又は複数のノッチを有する、記録された各々の格子層は、一つ又はそれ以上のこれらの格子層を互いに積層し、異なる波長、角度、色、及び光学密度制御の複合メタマテリアルフィルタ積層体を作る。
【0059】
これらの実施形態では、格子のための「対象ビーム」は、i)感光性ポリマー層の最終表面からの内部表面反射、ii)例えば積層等により、感光性ポリマー層に一時的に設けられた反射性フィルム又は鏡(図12に示すような鏡1110)、又はiii)屈折率整合液又はこれに似たものによって、感光性ポリマー層が光学的に接触した、金属鏡又はコーティングされたガラス鏡のような固い鏡面によってもたらすことができる。
【0060】
図15は、傾斜縞格子を提供するように構成された製造システム1400の実施形態を示す。図14では、感光性ポリマー層1105が透明な基板1135の上に設けられている。透明な基板1135は、例えばポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、トリアセテート、又は同様のものであっても良い。再び、レーザー1115は、感光性ポリマー層1105に対する移動のために搬送機1120に取り付けられるが、この実施形態では、図12から図14とは異なり、レール1140が感光性ポリマー1105に対して縦方向に延び、感光性ポリマー層1105が矢印1145によって示される水平方向に移動可能である。その上、この実施形態では、レーザー1115に対して感光性ポリマー層1105の反対側に設けられた第2の搬送機1155に鏡1150が設けられている。第2の搬送機1155は、鏡1150がレーザー1115に向けて角度付けされるように、鏡1150をレーザー1115と協調して回転するのを許容する第2の回転ヘッド1160を含む。この実施形態では、レーザ1115から入射するレーザビームを感光性ポリマー層1105の上面に「再帰反射」させるように構成されたミラー1150を有することにより、鮮明な干渉縞が生成される。傾斜縞は、入射ビームと再起反射ビームとが交差するところ1165に形成される。
【0061】
図16は、多重波長メタマテリアルフィルタ積層体1500の原理を示す。この積層体では、3つの感光性ポリマー層に3つの記録された格子があり、各々が異なる波長又は波長帯域を遮断するように構成された異なる間隔を有する。具体的には、第1の層1505は、第1の波長1510を遮断するように構成され、第2の層1515は、第2の波長1520を遮断するように構成され、第3の層1525は第3の波長1530を遮断するように構成されている。格子/層は、適切な材料を用いることによりオーバーラップしてもよいことが理解できる。したがって、積層され記録された感光性ポリマー層の使用は、有効保護角度、及び/又は個々の層によって引き起こされる分散を無効にし、及び/又はフィルタの光学密度を向上させる。一対の傾斜格子フィルムが積層されるとき、一般的にこれらのフィルムは反対を向いた傾斜を有する。
【0062】
感光性ポリマーの格子層に加えて、メタマテリアルフィルタ積層体は、他の基板又は支持層を有していても良い。ここで説明するように、基板又は支持層は、PMMA、ポリカーボネート、トリアセテート(TAC)又はこれと同様のものを含んでも良い。感光性ポリマー(PP)格子層及び基板の種々の組み合わせを実施することができ、この場合、例えばTACを使用して、TAC-PP-PP-TAC、TAC-接着剤-PP-PP-接着剤-TAC、TAC-接着剤-PP-接着剤-TAC、及びこれと同様の組み合わせを実施してもよい。メタマテリアルフィルタ積層体は、グレア防止、スクラッチ防止、艶出し、又はこれと同様の機能を有するフィルム又はコーティングを含んでも良い。積層体に使用される接着剤は、あらゆる適切な接着剤であっても良く、グラフェンを含んでも良い。
【0063】
幾つかの実施形態では、メタマテリアルフィルタを、フィルタのための彩度抑制/最小化、及び/又は色彩調整を提供することで改善しても良い。具体的には、ブラッグ型のホログラフィックパターン化されたサブ波長格子は、例えばレーザーからの予め決定された波長を遮断するためにバンドギャップを作り出し、スペクトルの一部を反射する。しかしながら、この工程は、一般的に、このような格子を通した風景の中立の色を歪める。例えば、523nmの光を遮断する格子は、通常、スペクトルの緑部分が取り除かれるためピンクに見える。この作用は、中立色を得るために、スペクトルの一部の赤及び青部分を取り除くことで相殺(色彩調整)することができる。この色彩調整の結果は、吸収染料を追加し、又はスペクトルの青及び赤を取り除くホログラフィックパターン化された格子を追加することで達成される。図17は、色彩調整された二層メタマテリアル積層体の透過スペクトルの例を示し、第1の層は、532nmのホログラフィックパターン化された格子であり、第2の層はメタマテリアルフィルタ積層体全体の色を調整するために予め決定された濃度の青及び赤の吸収染料が塗られている。図18は、(図16に示すように)3個のホログラフィックパターン化された格子(青、緑、及び赤)を用いたメタマテリアル色彩調整フィルタ積層体を使用したときの予想される透過スペクトルの例を示す。得られるメタマテリアルフィルタ積層体は、優れた色彩調整特性を示し、この型のフィルタは、(図17に示すフィルタと同様に)緑色レーザーに加えて、赤及び青レーザー(これらの波長は垂直線によって示される)を遮断することができる。
【0064】
ここで説明するように、メタマテリアルフィルムは、航空機のウィンドシールドの他のコンポーネントに関連して、種々の位置に使用/適用することができる。幾つかの場合、メタマテリアルは、ウィンドシールドの内側に使用/適用することができ、他の場合、メタマテリアルは、ウィンドシールド構造の内部で使用/適用することができる。図19及び図20は、ウィンドシールドの2つの代替の構成を示す。
【0065】
上記の説明では、実施形態の完全な理解のために、例示の目的で多くの細部を記載した。しかしながら、これらの詳細な細部が必要ないかもしれないことは当業者にとって明確である。他の例では、理解を曖昧にしないために、周知の構造はブロック図の形態で示される場合がある。例えば、ここで説明される実施形態の要素がソフトウェアのルーチン、ハードウェア回路、ファームウェア、又はこれらの組み合わせで提供されるのかについての詳細は提供していない。
【0066】
実施形態の開示又は実施形態のコンポーネントは、(コンピューター可読媒体、プロセッサー可読媒体、又はコンピュータ可読プログラムコードが埋め込まれたコンピュータ使用可能媒体として知られる)機械可読媒体に記録されたコンピュータープログラム製品として提供しても良い。機械可読媒体は、フロッピー(登録商標)ディスク、読取専用コンパクトディスク(CD-ROM)、(揮発性、又は不揮発性)メモリーデバイス、又は同様のストレージ機構を含む、磁気、光学、又は電気的ストレージ媒体を含む、あらゆる適切な、有形であり、非一時的な媒体であっても良い。機械可読媒体は、プロセッサ又はコントローラに開示の実施形態による方法のステップを実施させるための種々の指令、コードシーケンス、コンフィグレーション情報、又は他のデータのセットを含んでも良い。当業者には、説明した手段を実装するために必要な他の指令及び操作を機械可読媒体に格納しても良いことが理解できる。機械可読媒体に格納された指令は、プロセッサ、コントローラ、又は他の適切なデバイスによって実行しても良く、説明したタスクを実行するために電気回路と相互作用しても良い。
【0067】
上述の実施形態は例示の目的に過ぎない。当業者によって、特定の実施形態に対して、ここに添付された特許請求の範囲によって定められる発明の範囲から逸脱することなく、変形、修正、及び変化をもたらすことができる。
図1
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