(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028991
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ターボ圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20220209BHJP
F04D 29/053 20060101ALI20220209BHJP
F04D 29/05 20060101ALI20220209BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F04D29/056 B
F04D29/053 Z
F04D29/05 Z
F25B1/053 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018238013
(22)【出願日】2018-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】庄山 直芳
(72)【発明者】
【氏名】孫 洪志
(72)【発明者】
【氏名】河野 文紀
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB42
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB68
3H130AC11
3H130BA22B
3H130BA22D
3H130BA22E
3H130BA22G
3H130BA24B
3H130BA24D
3H130BA24E
3H130BA24G
3H130BA74B
3H130BA74D
3H130BA74E
3H130BA74G
3H130BA87B
3H130BA87D
3H130BA87E
3H130BA87G
3H130DA02X
3H130DB01Z
3H130DB08Z
3H130DB10Z
3H130DB15X
3H130EA06D
3H130EA07B
3H130EA07C
3H130EA07E
3H130EA07G
(57)【要約】
【課題】回転軸の回転の安定性を高めるのに有利なターボ圧縮機を提供する。
【解決手段】
ターボ圧縮機(1a)は、回転軸(10)と、第一インペラ(21)と、第二インペラ(22)と、第一軸受(41)と、リターン流路(82a)とを備える。第一インペラ(21)は、第一吸込口(21a)及び第一吐出口(21b)を有する。第二インペラ(22)は、第二吸込口(22a)及び第二吐出口(22b)を有する。第一軸受(41)は回転軸(10)を回転可能に支持する。リターン流路(82a)は、第一吐出口(21b)から第二吸込口(22a)に作動流体を導く。第一吸込口(21a)及び第二吸込口(22a)は同じ向きに開口している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定され、作動流体が吸い込まれる第一吸込口及び前記作動流体が吐出される第一吐出口を有する、第一インペラと、
前記回転軸に固定され、前記作動流体が吸い込まれる第二吸込口及び前記作動流体が吐出される第二吐出口を有する、第二インペラと、
前記回転軸の軸線方向において前記第一インペラと前記第二インペラとの間に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第一軸受と、
前記第一吐出口から前記第二吸込口に前記作動流体を導くリターン流路と、を備え、
前記第一吸込口及び前記第二吸込口は、同じ向きに開口している、
ターボ圧縮機。
【請求項2】
前記軸線方向において前記第一軸受が存在する領域の全ては、前記軸線方向において前記リターン流路が存在する領域と重なっている、請求項1に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する前記作動流体を加速して圧縮する、請求項1又は2に記載のターボ圧縮機。
【請求項4】
前記軸線方向において前記第一軸受よりも前記第一インペラから離れた位置に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第二軸受と、
前記軸線方向において前記第一軸受と前記第二軸受との間で前記回転軸に固定されている回転子を有するモータと、をさらに備え、
請求項1から3のいずれか1項に記載のターボ圧縮機。
【請求項5】
前記第一吸込口及び前記第二吸込口と同じ向きに開口している第三吸込口を有し、前記軸線方向において前記第一軸受から離れた位置に配置され、前記回転軸に固定されている、第三インペラをさらに備え、
前記第二インペラは、前記第一インペラと前記第三インペラとの間に配置され、
前記第三インペラの固定位置における前記回転軸の直径は、前記第二インペラの固定位置における前記回転軸の直径以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のターボ圧縮機。
【請求項6】
前記軸線方向において前記第一軸受よりも前記第一インペラから離れた位置に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第二軸受と、
前記軸線方向において前記第一軸受と前記第二軸受との間で前記回転軸に固定されている回転子を有するモータと、をさらに備え、
前記第三インペラは、前記軸線方向において前記第二インペラと前記回転子との間で固定されている、請求項5に記載のターボ圧縮機。
【請求項7】
気相冷媒を生じさせる蒸発器と、
前記蒸発器で生じた前記気相冷媒を前記作動流体として圧縮する、請求項1から6のいずれか1項に記載のターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機で圧縮された前記気相冷媒を凝縮させる凝縮器と、を備えた、
冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記蒸発器は液相冷媒をその内部に貯留し、
前記凝縮器は液相冷媒をその内部に貯留し、
前記蒸発器に貯留された前記液相冷媒及び前記凝縮器に貯留された前記液相冷媒の少なくとも1つが前記第一軸受に供給される、
請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターボ圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低圧の冷媒を圧縮するための多段のターボ圧縮機が知られている。
【0003】
図4Aに示す通り、特許文献1には、ターボ圧縮機200が記載されている。ターボ圧縮機200は、ケーシング221と、電動機213と、回転軸225と、転がり軸受227と、滑り軸受228とを備える。回転軸225の一端には2段のインペラ223a及び223bが固定されており、インペラ223a及び223bは、圧縮通路構造と共に圧縮部223を構成している。転がり軸受227は、電動機213とインペラ223a及び223bとの間で回転軸225を軸支し、回転軸225の他端が滑り軸受228によって軸支されている。転がり軸受227は、2つのアンギュラ玉軸受227a及び227bを有する。滑り軸受228において、軸受ボス221dに軸受メタル228aが圧入されている。電動機213は、ステータ213Aと、回転軸225に固定されたロータ213Bとを備える。電動機213によって圧縮部223が駆動されると、気化冷媒が圧縮部223に吸入されて圧縮される。
【0004】
一方、従来、ターボ圧縮機として、リターン流路を有する多段遠心式圧縮機が知られている。例えば、
図4Bに示す通り、特許文献2には、多段遠心式圧縮機300が記載されている。多段遠心式圧縮機300は、1段目の羽根車301と、次段羽根車304と、ディフューザ306と、リターンベーン307と、ディフューザベーン308と、ステージラビリンス309と、回転軸310とを備える。多段遠心式圧縮機300は、ディフューザ306からのガス流を次段羽根車304へ流入させるリターン流路を有し、リターンベーン307がリターン流路に配置されている。
図4Bにおいて、白抜きの矢印は、ガスの流れの主流を示す。リターン流路は、ガスの速度エネルギーを圧力エネルギーに変えるものである。
図4Bにおいて、Cは、回転軸310の軸心である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-125434号公報
【特許文献2】特開平7-127600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術によれば、例えば、常温(20℃±15℃:日本工業規格 JIS Z 8703)において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する気相冷媒等の作動流体を圧縮する場合に、回転軸の回転の安定性を高める余地がある。
【0007】
本開示は、回転軸の回転の安定性を高めるのに有利なターボ圧縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、
回転軸と、
前記回転軸に固定され、作動流体が吸い込まれる第一吸込口及び前記作動流体が吐出される第一吐出口を有する、第一インペラと、
前記回転軸に固定され、前記作動流体が吸い込まれる第二吸込口及び前記作動流体が吐出される第二吐出口を有する、第二インペラと、
前記回転軸の軸線方向において前記第一インペラと前記第二インペラとの間に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第一軸受と、
前記第一吐出口から前記第二吸込口に前記作動流体を導くリターン流路と、を備え、
前記第一吸込口及び前記第二吸込口は、同じ向きに開口している、
ターボ圧縮機を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記のターボ圧縮機は、回転軸の回転の安定性を高めるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示のターボ圧縮機の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の冷凍サイクル装置の一例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本開示のターボ圧縮機の別の一例を示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、従来の多段遠心式圧縮機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
例えば、常温で大気圧以下の飽和蒸気圧を有する作動流体を、リターン流路を有する多段のターボ圧縮機を用いて圧縮することが考えられる。この場合、リターン流路の断面積を大きくする必要がある。なぜなら、このような作動流体はリターン流路を大きな比容積で流れ、リターン流路における作動流体の体積流量が大きいからである。一方、リターン流路の断面積を大きくするためには、回転軸の軸線方向の長さを長くする必要がある。しかし、このことは、回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数を低下させやすい。回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数が低いと、回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数と回転軸の回転数とが近くなって共振が発生し、回転軸を所望の回転数で回転させることが難しくなる。このため、回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数の低下を防止するために、回転軸の軸線方向の長さの延伸を抑えることが望ましい。そこで、本発明者らは、回転軸の軸線方向の長さの延伸を抑えつつリターン流路の断面積を大きくするためのターボ圧縮機の構成について鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、回転軸を回転可能に支持する軸受とリターン流路との所望の配置関係を新たに見出し、本開示のターボ圧縮機を案出した。なお、この知見は、本発明者らの検討に基づくものであり、先行技術として自認するものではない。
【0012】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係るターボ圧縮機は、
回転軸と、
前記回転軸に固定され、作動流体が吸い込まれる第一吸込口及び前記作動流体が吐出される第一吐出口を有する、第一インペラと、
前記回転軸に固定され、前記作動流体が吸い込まれる第二吸込口及び前記作動流体が吐出される第二吐出口を有する、第二インペラと、
前記回転軸の軸線方向において前記第一インペラと前記第二インペラとの間に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第一軸受と、
前記第一吐出口から前記第二吸込口に前記作動流体を導くリターン流路と、を備え、
前記第一吸込口及び前記第二吸込口は、同じ向きに開口している。
【0013】
第1態様によれば、第一軸受は、回転軸の軸線方向において第一インペラと第二インペラとの間に配置されているので、回転軸の軸線方向の長さの延伸を抑えつつリターン流路の断面積を大きくしやすい。これにより、回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数の低下を防止できる。このため、第1態様に係るターボ圧縮機は、回転軸の回転の安定性を高めるのに有利である。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係るターボ圧縮機では、前記軸線方向において前記第一軸受が存在する領域の全ては、前記軸線方向において前記リターン流路が存在する領域と重なっている。第2態様によれば、より確実に回転軸の軸線方向の長さの延伸を抑えることができる。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1態様又は第2態様に係るターボ圧縮機では、常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する前記作動流体を加速して圧縮してもよい。第3態様によれば、回転軸の回転の安定性が高い状態で、常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する作動流体を圧縮できる。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1態様から第3態様に係るターボ圧縮機は、前記軸線方向において前記第一軸受よりも前記第一インペラから離れた位置に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第二軸受と、前記軸線方向において前記第一軸受と前記第二軸受との間で前記回転軸に固定されている回転子を有するモータと、をさらに備えていてもよい。第4態様によれば、モータの回転子が回転軸に固定された状態で、回転軸の回転の安定性を高めることができる。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第1態様から第4態様に係るターボ圧縮機は、前記第一吸込口及び前記第二吸込口と同じ向きに開口している第三吸込口を有し、前記軸線方向において前記第一軸受から離れた位置に配置され、前記回転軸に固定されている、第三インペラをさらに備えてもよく、前記第二インペラは、前記第一インペラと前記第三インペラとの間に配置されてもよく、前記第三インペラの固定位置における前記回転軸の直径は、前記第二インペラの固定位置における前記回転軸の直径以上であってもよい。第5態様によれば、第三インペラにより高い圧力比での運転を実現しやすい。加えて、第三インペラの固定位置における回転軸の直径が第二インペラの固定位置における回転軸の直径以上であることにより、回転軸の曲げ剛性が高くなりやすい。このため、第5態様によれば、回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数の低下を防止できる。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第5態様に係るターボ圧縮機は、前記軸線方向において前記第一軸受よりも前記第一インペラから離れた位置に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する第二軸受と、前記軸線方向において前記第一軸受と前記第二軸受との間で前記回転軸に固定されている回転子を有するモータと、をさらに備えてもよく、前記第三インペラは、前軸線方向において前記第二インペラと前記回転子との間で固定されていてもよい。第6態様によれば、モータの回転子が回転軸に固定された状態で回転軸の回転の安定性を高めることができる。
【0019】
本開示の第7態様に係る冷凍サイクル装置は、
気相冷媒を生じさせる蒸発器と、
前記蒸発器で生じた前記気相冷媒を前記作動流体として圧縮する、第1態様から第6態様のいずれか1つの態様のターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機で圧縮された前記気相冷媒を凝縮させる凝縮器と、を備える。
【0020】
第7態様によれば、ターボ圧縮機の回転軸の回転の安定性が高い状態で、蒸発器で発生した気相冷媒を圧縮できる。
【0021】
本開示の第8態様において、例えば、第7態様に係る冷凍サイクル装置では、前記蒸発器は液相冷媒をその内部に貯留してもよく、前記凝縮器は液相冷媒をその内部に貯留してもよく、前記蒸発器に貯留された前記液相冷媒及び前記凝縮器に貯留された前記液相冷媒の少なくとも1つが前記第一軸受に供給されてもよい。第8態様によれば、例えば、蒸発器に貯留された液相冷媒及び凝縮器に貯留された液相冷媒の少なくとも1つを第一軸受の潤滑又は冷却に利用できる。
【0022】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本開示の一例に関するものであり、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0023】
図1に示す通り、ターボ圧縮機1aは、回転軸10と、第一インペラ21と、第二インペラ22と、第一軸受41と、リターン流路82aとを備えている。第一インペラ21は、回転軸10に固定されている。第一インペラ21は、作動流体が吸い込まれる第一吸込口21a及び作動流体が吐出される第一吐出口21bを有する。第二インペラ22は、回転軸10に固定されている。第二インペラ22は、作動流体が吸い込まれる第二吸込口22a及び作動流体が吐出される第二吐出口22bを有する。第一軸受41は、回転軸の軸線方向において第一インペラ21と第二インペラ22との間に配置され、回転軸10を回転可能に支持する。なお、第一軸受41は、回転軸10を回転可能に支持するために不可欠な部材である。第一軸受41は、回転軸10を回転可能に支持するためには不可欠ではないシール部材とはこのような観点で区別される。リターン流路82aは、第一吐出口21bから第二吸込口22aに作動流体を導く流路である。第一吸込口21a及び第二吸込口22aは、同じ向きに開口している。
【0024】
例えば、回転軸10の軸線方向において第一軸受41が存在する領域の全ては、回転軸10の軸線方向においてリターン流路82aが存在する領域と重なっている。
【0025】
第一インペラ21は、例えば、回転軸10の一方の端部に固定されている。第一軸受41は、回転軸10の軸線方向において第一インペラ21と第二インペラ22との間に配置されているので、第一インペラ21が回転軸10の一方の端部に固定されていても、第一軸受41を回転可能に支持できる。
【0026】
ターボ圧縮機1aは、例えば、ケーシング60を備えており、第一軸受41は、ケーシング60に固定されている。ケーシング60は、静止流路をなす壁面を有し、リターン流路82aはケーシング60の内部に存在する。
【0027】
図1に示す通り、ターボ圧縮機1aは、例えばモータ70をさらに備えている。モータ70は、例えば、回転子71と、固定子72とを備えている。回転子71は、例えば、回転軸10に固定されている。回転子71は、望ましくは、回転軸10の軸線方向において第二インペラ22よりも第一インペラ21から離れた位置で回転軸10に固定されている。換言すると、回転軸10の軸線方向において、第一インペラ21、第二インペラ22、及び回転子71がこの順番で並んでいる。固定子72は、例えば、ケーシング60に固定されている。モータ70に電力が供給されると、固定子72によって回転磁界が発生し、回転子71に回転トルクが発生する。これにより、回転軸10に固定された第一インペラ21及び第二インペラ22が回転する。
【0028】
ターボ圧縮機1aは、例えば、常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する作動流体を加速して圧縮する。作動流体は、典型的には気相である。このような作動流体として、望ましくは水を使用できる。このような作動流体はリターン流路を大きな比容積で流れやすいので、リターン流路の断面積を大きくする必要性が高い。なお、ターボ圧縮機1aは、場合によっては、常温において大気圧を超える飽和蒸気圧を有する作動流体を加速して圧縮してもよい。
【0029】
ターボ圧縮機1aは、例えば、第二軸受42をさらに備えている。第二軸受42は、回転軸10の軸線方向において第一軸受41よりも第一インペラ21から離れた位置に配置されている。第二軸受42は、回転軸10を回転可能に支持する。モータ70の回転子71は、例えば、回転軸10の軸線方向において第一軸受41と第二軸受42との間で回転軸10に固定されている。回転軸10の軸線方向における中心は、例えば、第二インペラ22と回転子71との間に位置している。
【0030】
回転軸10は、望ましくは、回転時のアンバランスを最小限に抑えるために、高精度に軸対称な形状を有している。回転子71は、例えば、焼嵌めによって回転軸10に固定されている。回転軸10が高速で回転して遠心力により回転子71の直径が僅かに拡大しても焼嵌めしろが残るように、回転子71の焼嵌めにおいて十分に大きな焼嵌めしろが確保されている。回転軸10の回転数は、例えば、5000revolutions per minute(rpm)から100000rpmである。回転軸10の材料は、特定の材料に限定されない。回転軸10の材料は、例えば、SNCM630等の高強度の鉄系材料でありうる。
【0031】
例えば、第二インペラ22の固定位置における回転軸10の直径は、第一インペラ21の固定位置における回転軸10の直径より大きい。この場合、回転軸10が中央付近において大きな直径を有し、回転軸10の曲げ剛性に基づく固有振動数が高くなりやすい。このため、回転軸10の回転の安定性が高くなりやすい。
【0032】
ターボ圧縮機1aにおいて、第一インペラ21及び第二インペラ22は、典型的には、遠心式の圧縮機構を構成している。第一インペラ21の第一吸込口21aをなす部位の外径は、例えば、第一インペラ21の第一吐出口21bをなす部位の外径よりも小さい。第一吸込口21aは、例えば、第一インペラ21の前方に開口している。第一吐出口21bは、第一インペラ21の半径方向外側に開口している。第二インペラ22の第二吸込口22aをなす部位の外径は、例えば、第二インペラ22の第二吐出口22bをなす部位の外径よりも小さい。第二吸込口22aは、例えば、第二インペラ22の前方に開口している。第二吐出口22bは、第二インペラ22の半径方向外側に開口している。
【0033】
リターン流路82aは、例えば、回転軸10の軸線に垂直な方向において、第一軸受41の外側に位置する環状の流路である。第一インペラ21の第一吐出口21bをなす部位の外径は、例えば、第二インペラ22の第二吸込口22aをなす部位の外径よりも小さい。このため、リターン流路82aは、回転軸10の軸線方向において第二インペラ22に向かって窄むように形成されている。
【0034】
第一吸込口21aから吸い込まれた作動流体は、第一インペラ21によって加速されて、第一吐出口21bから吐出される。その後、作動流体は、リターン流路82aを通って、第二吸込口22aに吸い込まれ、第二インペラ22によって加速され、第二吐出口22bから吐出される。これにより、作動流体が圧縮される。ターボ圧縮機1aには流路83が接続されており、第二吐出口22bから吐出された作動流体は、流路83を通ってターボ圧縮機1aの外部に供給される。
【0035】
第一軸受41は、回転軸10を回転可能に支持する限り、特定の軸受に限定されない。第一軸受41は、例えば、滑り軸受である。第一軸受41は、例えば、ラジアル支持部41aと、スラスト支持部41bとを有する。ラジアル支持部41aは、回転軸10を含む回転体の荷重を半径方向に支持する。スラスト支持部41bは、第一インペラ21及び第二インペラ22の回転によって生じるスラスト力を支持する。第一軸受41が滑り軸受である場合、第一軸受41を潤滑する流体は潤滑油であってもよいし、作動流体に対し相溶性を示す流体であってもよい。第一軸受41を潤滑する流体は、望ましくは、作動流体と同一成分の流体であってもよい。第一軸受41は、玉軸受等の転がり軸受であってもよいし、磁気軸受であってもよい。
【0036】
第二軸受42は、回転軸10を回転可能に支持する限り、特定の軸受に限定されない。第二軸受42は、例えば、滑り軸受である。第二軸受42は、例えば、ターボ圧縮機1aの通常運転では、スラスト力を支持しないように構成されている。第二軸受42は、例えば、回転軸10の軸線方向において、回転軸10を含む回転体に対し、回転軸10の軸線方向における全長の1000分の1程度又はそれ以上の寸法変化を許容する。これにより、ターボ圧縮機1aの運転中に回転軸10の温度上昇により回転軸10が膨張しても、第二軸受42は、回転軸10の膨張に伴う回転軸10の伸びに対応できる。第二軸受42は、玉軸受等の転がり軸受であってもよいし、磁気軸受であってもよい。
【0037】
ターボ圧縮機1aの動作及び作用の一例について説明する。第一インペラ21の第一吸込口21aの前方の空間には、例えば、1kPaの圧力の気相の作動流体が存在している。モータ70の作動により、回転軸10が回転すると、回転軸10と共に第一インペラ21及び第二インペラ22が回転する。これにより、第一吸込口21aの前方の空間の作動流体は、第一吸込口21aを通過して、第一インペラ21によって加速され、第一吐出口21bから吐出される。これにより、作動流体が圧縮される。第一インペラ21における作動流体の圧力比は例えば2であり、第一吐出口21bから吐出された作動流体の圧力は2kPaでありうる。第一吐出口21bから吐出された作動流体は、リターン流路82aを通って第二吸込口22aに吸い込まれる。例えば、作動流体が水蒸気である場合、2kPaの圧力の水蒸気の常温における比体積は67m3/kgであり、リターン流路82aは大きな断面積を必要とする。ターボ圧縮機1aにおいて、第一軸受41は、回転軸10の軸線方向において第一インペラ21と第二インペラ22との間に配置されている。このため、回転軸10は、本来、第一インペラ21と第二インペラ22との間に第一軸受41を配置するための長さを有している。ターボ圧縮機1aにおいて、第一軸受41は、回転軸10の軸線方向においてリターン流路82aと重なっているので、回転軸10の軸線方向の長さの延伸を抑えつつリターン流路82aの断面積を大きくしやすい。このため、回転軸10の曲げ剛性に基づく固有振動数が高くなりやすい。その結果、ターボ圧縮機1aによれば、回転軸10の曲げ剛性に基づく固有振動数と回転軸10の回転数とが近くなって共振が発生することを防止できる。
【0038】
例えば、ターボ圧縮機1aを用いて冷凍サイクル装置を提供できる。
図2に示す通り、冷凍サイクル装置100は、蒸発器30と、ターボ圧縮機1aと、凝縮器50と、を備えている。蒸発器30は、気相冷媒を生じさせる。ターボ圧縮機1aは、蒸発器30で生じた気相冷媒を作動流体として圧縮する。凝縮器50は、ターボ圧縮機1aで圧縮された気相冷媒を凝縮させる。冷凍サイクル装置100によれば、ターボ圧縮機1aの回転軸10の回転の安定性が高い状態で、蒸発器30で発生した気相冷媒を圧縮できる。冷凍サイクル装置100は、例えば、空気調和装置として機能させることができる。
【0039】
蒸発器30は、例えば、液相冷媒をその内部に貯留する。凝縮器50は、例えば、液相冷媒をその内部に貯留する。冷凍サイクル装置100において、蒸発器30に貯留された液相冷媒及び凝縮器に貯留された液相冷媒の少なくとも1つが第一軸受41に供給される。この場合、例えば、蒸発器30に貯留された液相冷媒及び凝縮器50に貯留された液相冷媒の少なくとも1つを第一軸受41の潤滑又は冷却に利用できる。
【0040】
図2に示す通り、冷凍サイクル装置100は、例えば、主回路80と、第一循環回路31と、第二循環回路51とを備えている。主回路80は、蒸発器30、ターボ圧縮機1a、及び凝縮器50がこの順に接続されている回路である。蒸発器30の内部空間とターボ圧縮機1aのケーシング60の内部空間とが流路81によって連通している。ターボ圧縮機1aのケーシング60の内部空間と凝縮器50の内部空間とが流路83によって連通している。凝縮器50の内部空間と蒸発器30の内部空間とが流路84によって連通している。
【0041】
第一循環回路31は、第一ポンプ35及び第一熱交換器33を有する。第一循環回路31は、蒸発器30に貯留された液体の作動流体が第一ポンプ35によって第一熱交換器33に供給され、第一熱交換器33で吸熱した作動流体が蒸発器30に戻るように構成されている。第一循環回路31において、蒸発器30と第一ポンプ35との入口とが流路31aによって接続されている。第一ポンプ35の出口と第一熱交換器33の入口とが流路31bによって接続されている。第一熱交換器33の出口と蒸発器30とが流路31cによって接続されている。
【0042】
第二循環回路51は、第二ポンプ55及び第二熱交換器53を有する。第二循環回路51は、凝縮器50に貯留された液体の作動流体が第二ポンプ55によって第二熱交換器53に供給され、第二熱交換器53で放熱した作動流体が凝縮器50に戻るように構成されている。第二循環回路51において、凝縮器50と第二ポンプ55の入口とが流路51aによって接続されている。第二ポンプ55の出口と第二熱交換器53の入口とが流路51bによって接続されている。第二熱交換器53の出口と凝縮器50とが流路51cによって接続されている。
【0043】
冷凍サイクル装置100において、例えば、蒸発器30に貯留されている液相冷媒が第一軸受41及び第二軸受42に供給されるべき潤滑液として利用される。冷凍サイクル装置100において、例えば、凝縮器50に貯留されている液相冷媒が第一軸受41及び第二軸受42に供給されるべき潤滑液として利用されてもよい。第一軸受41及び第二軸受42に供給された液相冷媒は、蒸発器30又は凝縮器50に戻される。
【0044】
ターボ圧縮機1aは、様々な観点から変更可能である。例えば、ターボ圧縮機1aは、
図3に示すターボ圧縮機1bのように変更されてもよい。ターボ圧縮機1bは、特に説明する部分を除き、ターボ圧縮機1aと同様に構成されている。ターボ圧縮機1aの構成要素と同一又は対応するターボ圧縮機1bの構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ターボ圧縮機1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、ターボ圧縮機1bにも当てはまる。
【0045】
図3に示す通り、ターボ圧縮機1bは、第三インペラ23をさらに備えている。第三インペラ23は、回転軸10の軸線方向において第一軸受41から離れた位置に配置され、回転軸10に固定されている。第二インペラ22は、第一インペラ21と第三インペラ23との間に配置されている。ターボ圧縮機1bによれば、第三インペラ23によって高い圧力比での運転を実現しやすい。加えて、ターボ圧縮機1bにおいて、第三インペラ23の固定位置における回転軸10の直径は、第二インペラ22の固定位置における回転軸10の直径以上である。これにより、回転軸10は、軸線方向における中央付近において大きな直径を有しやすく、回転軸10の曲げ剛性が高くなりやすい。その結果、回転軸10の曲げ剛性に基づく固有振動数の低下を防止でき、回転軸10の曲げ剛性に基づく固有振動数と回転軸10の回転数とが近くなって共振が発生することを防止できる。
【0046】
第三インペラ23は、例えば、回転軸10の軸線方向において第二インペラ22と回転子71との間で回転軸10に固定されている。この場合、モータ70の回転子71が回転軸10に固定された状態で回転軸10の回転の安定性を高めることができる。回転軸10の軸線方向における中心は、例えば、第二インペラ22と回転子71との間に位置している。
【0047】
第三インペラ23は、典型的には、作動流体が吸い込まれる第三吸込口23a及び作動流体が吐出される第三吐出口23bを有する。第三吸込口23aは、例えば、第一吸込口21a及び第二吸込口22aの開口向きと同じ向きに開口している。第三インペラ23は、例えば、第一インペラ21及び第二インペラ22と共に遠心式の圧縮機構を構成している。第三インペラ23の第三吸込口23aをなす部位の外径は、例えば、第三インペラ23の第三吐出口23bをなす部位の外径よりも小さい。第三吸込口23aは、例えば、第三インペラ23の前方に開口している。第三吐出口23bは、第三インペラ23の半径方向外側に開口している。
【0048】
ターボ圧縮機1bは、例えば、リターン流路82bをさらに備えている。リターン流路82bは、第二吐出口22bから第三吸込口23aに作動流体を導く流路である。これにより、第一インペラ21及び第二インペラ22を通過して圧縮された小さい比体積を有する作動流体が第三インペラ23に導かれる。このため、第三インペラ23は、第三インペラ23における作動流体の流路の幅が第一インペラ21における作動流体の流路の幅よりも狭いように作製されうる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示に係るターボ圧縮機は、回転軸の曲げ剛性に基づく固有振動数の低下に伴う共振を防止でき、空気調和装置、チラー、及び熱サイクル発電システム用のターボ圧縮機の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1a、1b ターボ圧縮機
10 回転軸
11 一方の端部
21 第一インペラ
21a 第一吸込口
21b 第一吐出口
22 第二インペラ
22a 第二吸込口
22b 第二吐出口
23 第三インペラ
30 蒸発器
41 第一軸受
42 第二軸受
50 凝縮器
70 モータ
71 回転子
82a リターン流路
100 冷凍サイクル装置