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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029004
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】レール接合体
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20220209BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F16B7/04 301F
F16B7/04 301C
E05D15/06 125B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132068
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000133319
【氏名又は名称】株式会社ダイケン
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】下村 卓
【テーマコード(参考)】
2E034
3J039
【Fターム(参考)】
2E034CA04
2E034DA19
3J039AA01
3J039BB02
3J039CA01
3J039JA11
(57)【要約】
【課題】レールの製作精度の乱れによる影響を抑えることが可能なレール接合体を提供する。
【解決手段】長手方向に隣り合うレール100を接続するレール接合体1である。レール接合体1は、レール100の各端部を収容する本体2と、本体2に対して上下方向に位置決めが可能な上下位置決め機構6と、上下位置決め機構6に設けられてレール100を下方に付勢する付勢部材5とを備える。本体2は、下方に付勢されているレール100を側方に案内するテーパ部4を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に隣り合うレールを接続するレール接合体であって、
前記レールの各端部を収容する本体と、
前記本体に対して上下方向に位置決めが可能な上下位置決め機構と、
前記上下位置決め機構に設けられてレールを下方に付勢する付勢部材とを備え、
前記本体が、下方に付勢されているレールを側方に案内するテーパ部を有することを特徴とするレール接合体。
【請求項2】
テーパ部が、
レールが有する左下の外角部に接して当該レールを右側方に案内する左テーパと、
前記レールが有する右下の外角部に接して当該レールを左側方に案内する右テーパとを有することを特徴とする請求項1に記載のレール接合体。
【請求項3】
付勢部材が、レールの天面に形成された穴に係合する湾曲凸部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレール接合体。
【請求項4】
上下位置決め機構が、
上下方向にねじ孔が形成された基板と、
前記基板の上下位置を調整し得る上下位置決めボルトとを有し、
前記上下位置決めボルトが、
前記基板のねじ孔に螺合するねじ部と、
最も大径の頭部と、
前記ねじ部と頭部との間に位置して最も小径の円筒部とを具備し、
前記本体の天板が、
前記円筒部よりも大径でねじ部よりも小径の上下位置調整孔と、
前記ねじ部よりも大径で頭部よりも小径のボルト着脱孔とを具備し、
前記上下位置調整孔とボルト着脱孔とが、前記円筒部を移動可能な程度に連通していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレール接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に隣り合うレールを接続するレール接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吊り車を走行させるレールは、施工の現場において、図9に示すように、隣り合うもの100F,100Rが長手方向に接続されて使用される。そして、長手方向に隣り合うレール100F,100Rを接続するのに、レール接合体Jが使用される。
【0003】
従来のレール接合体として、走行方向に対してレールを斜めに接続するように構成されているレールの接続構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この接続により、特許文献1によると、走行がスムーズになるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-278575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載のレール接合体(レールの接続構造)は、レールの製作精度の乱れを考慮したものではない。例えば図9に示すように、実際のレール100F,100Rは、製作精度の乱れにより角部104の角度が一定でないことも多い。
【0006】
図9に示す2本のレール100F,100Rにおいて、角部104の角度が異なると、これら2本のレール100F,100Rを長手方向に接続した後の正面視である図10に示すように、吊り車の走行箇所である走行台板およびその近傍に段差sが発生し、このような段差sは吊り車をスムーズに走行させる際の妨げになる。このように、レール100F,100Rの製作精度の乱れによる影響は、レール100F,100Rを長手方向に接続する上で、無視できないものであった。
【0007】
そこで、本発明は、レールの製作精度の乱れによる影響を抑えることが可能なレール接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の発明に係るレール接合体は、長手方向に隣り合うレールを接続するレール接合体であって、
前記レールの各端部を収容する本体と、
前記本体に対して上下方向に位置決めが可能な上下位置決め機構と、
前記上下位置決め機構に設けられてレールを下方に付勢する付勢部材とを備え、
前記本体が、下方に付勢されているレールを側方に案内するテーパ部を有するものである。
【0009】
また、第2の発明に係るレール接合体は、第1の発明にレール接合体におけるテーパ部が、
レールが有する左下の外角部に接して当該レールを右側方に案内する左テーパと、
前記レールが有する右下の外角部に接して当該レールを左側方に案内する右テーパとを有するものである。
【0010】
さらに、第3の発明に係るレール接合体は、第1または第2の発明に係るレール接合体における付勢部材が、レールの天面に形成された穴に係合する湾曲凸部を有するものである。
【0011】
加えて、第4の発明に係るレール接合体は、第1乃至第3のいずれかの発明に係るレール接合体における上下位置決め機構が、
上下方向にねじ孔が形成された基板と、
前記基板の上下位置を調整し得る上下位置決めボルトとを有し、
前記上下位置決めボルトが、
前記基板のねじ孔に螺合するねじ部と、
最も大径の頭部と、
前記ねじ部と頭部との間に位置して最も小径の円筒部とを具備し、
前記本体の天板が、
前記円筒部よりも大径でねじ部よりも小径の上下位置調整孔と、
前記ねじ部よりも大径で頭部よりも小径のボルト着脱孔とを具備し、
前記上下位置調整孔とボルト着脱孔とが、前記円筒部を移動可能な程度に連通しているものである。
【発明の効果】
【0012】
前記レール接合体によると、接続されるレールがテーパ部により側方に案内されるので、当該レールの形状が矯正されて、レールの製作精度の乱れによる影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るレール接合体で長手方向に隣り合うレールを接続する状態を示す斜視図である。
図2】同レール接合体の中央横断を示す拡大断面斜視図である。
図3】同レール接合体の中央縦断を示す拡大断面図である。
図4】同レール接合体にレールが挿入された状態の拡大横断図である。
図5図4のレールが下方に付勢された状態の拡大横断図である。
図6図5の状態の拡大縦断面図である。
図7】同レール接合体がボルト着脱孔を有する例を示し、上下位置決めボルトが上下位置調整孔に設置される前の中央横断を示す拡大断面斜視図である。
図8】同レール接合体がボルト着脱孔を有する例を示し、上下位置決めボルトが上下位置調整孔に設置された後の中央横断を示す拡大断面斜視図である。
図9】従来のレール接合体で長手方向に隣り合うレールを接続する状態を示す斜視図である。
図10】従来のレール接合体で長手方向に接続されたレールの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るレール接合体について、図面に基づき説明する。なお、以下では、このレール接合体が接続するレールの長手方向を前後方向とし、この前後方向に垂直な水平面上の方向を左右方向とする。
【0015】
図1に示すように、前記レール接合体1は、長手方向(前後方向)に隣り合う2本のレール100(例えば、吊り車による吊下げ用レール)を接続するものである。この接続のために、前記レール接合体1は、その前後に形成された2つの入口にそれぞれレール100が挿し入れられた状態で、これら2本のレール100を保持する。ここで、各レール100は、吊り車(図示省略)の軌道となるので、次の構成を備える。すなわち、各レール100は、レール天板101と、このレール天板101の両側端から下垂する左右のレール側板102と、これら左右のレール側板102の下端から内側に延びて上面を吊り車が走行し得る左右の走行台板103と、これら左右の走行台板103の内端から立ち上がる脱輪防止部106とを有する。前記2本のレール100が、大きな製作精度の乱れを有していた場合、特に、レール側板102および走行台板103の角度に大きな製作精度の乱れを有していた場合、従来のレール接合体では、この製作精度の乱れによる影響を抑えられなかった。これに対し、本発明の実施の形態に係るレール接合体1は、単に2本のレール100を接続するだけでなく、前記製作精度の乱れによる影響を抑えることが可能である。以下、本発明の実施の形態に係るレール接合体1の構成について、詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、前記レール接合体1は、前記2本のレール100の各端部を収容する本体2と、前記本体2に対して上下方向に位置決めが可能な上下位置決め機構6とを有する。また、前記レール接合体1は、前記上下位置決め機構6に設けられて2本のレール100を下方に付勢する付勢部材5を備える。
【0017】
図2に示すように、前記本体2は、下方に付勢されている2本のレール100を側方に案内するテーパ部4を有する。前記本体2は、天板21と、この天板21の両側端から下垂する左右の側板22L,22Rと、これら左右の側板22L,22Rの下端から内側に延びて2本のレール100(具体的には左右の走行台板103)が載置される左右の受け板23L,23Rとを有する。前記テーパ部4は、前記左の側板22Lと左の受け板23Lとの内角に形成された左テーパ4Lと、前記右の側板22Rと右の受け板23Rとの内角に形成された右テーパ4Rとからなる。前記左テーパ4Lは、前記2本のレール100が下方に付勢された場合、当該2本のレール100が有する左下の外角部104Lを右側方に案内するものである。一方で、前記右テーパ4Rは、前記2本のレール100が下方に付勢された場合、当該2本のレール100が有する右下の外角部104Rを左側方に案内するものである。
【0018】
前記本体2の天板21には、上面から下面まで貫通する孔26が形成されている。この孔26は、前記上下位置決め機構6が本体2に対して上下方向に位置決めするのに必要な空間であるから、以下では上下位置調整孔26と称する。前記上下位置決め機構6は、前記上下位置調整孔26を貫通する上下位置決めボルト60を有する。すなわち、前記上下位置決めボルト60は、前記上下位置調整孔26の上方に頭部61が位置し、当該上下位置調整孔26の下方にねじ部63が位置する。また、前記上下位置決め機構6は、前記上下位置決めボルト60のねじ部63に螺合するねじ孔が上下方向に形成された基板65を有する。このため、前記上下位置決めボルト60の頭部61を回転させることにより、回転しない基板65は本体2に対して上昇または下降することになる。なお、前記頭部61の回転により頭部61が天板21の上面を傷付けないために、前記上下位置決め機構6は、前記頭部61と天板21との間に樹脂製などの防傷シート69を有してもよい。
【0019】
図3に示すように、前記付勢部材5は、2つの板ばね50である。各板ばね50は、前記基板65の上面にピン67で取り付けられた取付板51と、この取付板51から折曲げにより形成されて本体2の入口側に位置する垂直板52と、この垂直板52から折曲げにより形成されて本体2の奥側ほど下方に傾斜する付勢板53とを有する。各付勢板53は、その先端に、前記レール100の過剰な挿入れを防ぐストッパ54が形成されている。また、図6に示すように、前記各付勢板53は、その下面に、前記レール100のレール天板101の上面(天面)に形成された穴105に係合する湾曲凸部55を有する。各湾曲凸部55は、その表面が滑らかな湾曲面である。これにより、前記湾曲凸部55と穴105との係合および解除が使用者にクリック感を与えるとともに、当該係合およびその解除が容易になる。
【0020】
以下、前記レール接合体1の作用について説明する。
【0021】
予め、使用者は、上下位置決め機構6の基板65を本体2に対して十分に上昇させておき、そして、図1に示すように、本体2の2つの入口からそれぞれレール100を挿し入れる。2本のレール100の端部がそれぞれ収容された本体2は、図4に示すように、レール100の製作精度の乱れによって、当該レール100が有する左下および右下の外角部104L,104Rが、左テーパ4Lおよび右テーパ4Rにそれぞれ接触している状態である。ここで、基板65は十分に上昇しているので、2本のレール100は付勢部材5から下方に十分に付勢されていない。
【0022】
次に、使用者は、上下位置決め機構6の基板65を本体2に対して下降させていく。具体的に説明すると、使用者は、上下位置決めボルト60を、そのねじ部63が基板65のねじ孔から抜ける方向に回転させる。これにより、図5に示すように、下降している基板65の下方にある付勢部材5がレール100を下方に付勢する。下方に付勢されているレール100は、左下の外角部104Lが左テーパ4Lで下方および右側方に案内されるとともに、右下の外角部104Rが右テーパ4Rで下方および左側方に案内される。言い換えれば、レール100が有する左右の外角部104L,104Rは、下方に案内されつつも中央寄りに案内される。この案内により、左右の走行台板103の下面が左右の受け板23L,23Rの上面にそれぞれ密着する。その結果、レール100の形状が、製作精度の乱れを打ち消す程度に矯正される。
【0023】
一方で、図3に示す湾曲凸部55は、本体2の入口にレール100の端部が挿し入れられた状態で、レール天板101の穴105に軽く係合する。そして、上下位置決め機構6の基板65が本体2に対して下降していくことで、図6に示すように、湾曲凸部55がレール天板101の穴105に完全に係合し、これにより、レール100が挿し入れられる位置(前後方向の位置)も矯正される。
【0024】
このように、前記レール接合体1によると、接続されるレール100がテーパ部4により側方に案内されるので、当該レール100の形状が矯正されて、レール100の製作精度の乱れによる影響を抑えることができる。
【0025】
また、テーパ部4が左テーパ4Lおよび右テーパ4Rを有することにより、接続されるレール100の形状が中央寄りに矯正されるので、レール100の製作精度の乱れによる影響を一層抑えることができる。
【0026】
さらに、付勢部材5の湾曲凸部55がレール天板101の穴105に係合するので、2本のレール100が挿し入れられる位置も矯正されて、レール100の製作精度の乱れによる影響を一層抑えることができる。
【0027】
ところで、前記実施の形態では、上下位置調整孔26への上下位置決めボルト60の設置について説明しなかったが、図7に示すように、上下位置調整孔26に連通するボルト着脱孔27により、上下位置調整孔26に上下位置決めボルト60を設置するように構成してもよい。具体的に説明すると、前記上下位置決めボルト60は、頭部61、ねじ部63および円筒部62の順に大径(頭部61が最も大径で円筒部62が最も小径)であり、前記上下位置調整孔26は、前記円筒部62よりも大径でねじ部63よりも小径であり、前記ボルト着脱孔27は、前記ねじ部63よりも大径で頭部61よりも小径である。前記上下位置調整孔26とボルト着脱孔27とは、鉛直方向の円筒部62が水平移動可能な程度に連通している。そして、使用者は、ボルト着脱孔27に上下位置決めボルト60を上方から入れて、図8に示すように、当該上下位置決めボルト60を水平移動させて上下位置調整孔26に位置させる。その後、使用者は、本体2の内部において基板65を持ち上げながら、上下位置決めボルト60を回転させて、基板65のねじ孔に上下位置決めボルト60のねじ部63を螺合させる。この螺合が維持されている限り、上下位置決めボルト60が上下位置調整孔26およびボルト着脱孔27から抜け落ちない。すなわち、前述した上下位置調整孔26およびボルト着脱孔27は、抜止め防止の機能を有する。
【0028】
また、前記実施の形態では、テーパ部4の一例として、左テーパ4Lおよび右テーパ4Rについて説明したが、必ずしもこれらに限定するものではなく、左テーパ4Lまたは右テーパ4Rのいずれか1つのテーパでもよい。さらに、本実施の形態に係るテーパは、傾斜した平面に限られず、傾斜した湾曲面も含む。
【0029】
加えて、前記実施の形態では、湾曲凸部55について説明したが、湾曲凸部55を有しない構成でもよい。
【0030】
また、前記実施の形態で説明したレール100の形状は一例に過ぎず、テーパ部4に案内されるものであれば、左右の脱輪防止部106が上側ほど互いに近づくなど、他の形状であってもよい。
【0031】
また、前記実施の形態では、付勢部材5の一例として板ばね50について説明したが、2本のレール100を下方に付勢するものであれば、板ばね50以外でもよい。付勢部材5の他の例としては、板ばね50以外のばね部材、ゴムなどの弾性体、または、自重により2本のレール100を押し下げる上下移動が可能な重りなどでもよい。
【0032】
また、前記実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。前記実施の形態で説明した構成のうち「課題を解決するための手段」での第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 レール接合体
2 本体
4 テーパ部
5 付勢部材
6 上下位置決め機構
26 上下位置調整孔
51 取付板
52 垂直板
53 付勢板
54 ストッパ
55 湾曲凸部
60 上下位置決めボルト
61 頭部
62 円筒部
63 ねじ部
65 基板
67 ピン
100 レール
103 走行台板
105 穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10