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特開2022-29054樹脂膜、樹脂膜の作成方法および液晶パネル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029054
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】樹脂膜、樹脂膜の作成方法および液晶パネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220209BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132159
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】598045058
【氏名又は名称】株式会社サムスン日本研究所
(71)【出願人】
【識別番号】517018101
【氏名又は名称】公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】大山 毅
(72)【発明者】
【氏名】高頭 孝毅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 美夏
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA06
2H149AB06
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA17
2H149DA18
2H149DA33
2H149DB26
2H149DB29
2H149DB30
2H149EA02
2H149FA02Y
2H149FA05Y
2H149FA12Y
2H149FA13Y
2H149FA41Y
2H291FA02Y
2H291FA14Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FB02
2H291FC08
2H291FC09
2H291FD22
2H291FD25
2H291HA11
2H291LA22
2H291LA25
2H291PA04
2H291PA08
2H291PA24
2H291PA52
2H291PA53
2H291PA54
2H291PA65
(57)【要約】
【課題】位相差についての樹脂膜の面内方向および樹脂膜の厚さ方向の波長分散特性を、それぞれ制御することができる樹脂膜等を提供する。
【解決手段】樹脂131と、粒子132と、を少なくとも有する樹脂膜において、樹脂131および粒子132は、樹脂膜中で配向することで、樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、粒子と、を少なくとも有する樹脂膜において、
前記樹脂および前記粒子は、前記樹脂膜中で配向することで、当該樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と当該樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なることを特徴とする樹脂膜。
【請求項2】
前記樹脂および前記粒子は、屈折率の異方性を有し、当該樹脂の異方性の方向と当該粒子の異方性の方向とが異なるように前記樹脂膜中で配向していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項3】
前記樹脂の屈折率楕円体は、楕円球形状をなすとともに、前記粒子の屈折率楕円体は、円盤形状をなすことを特徴とする請求項2に記載の樹脂膜。
【請求項4】
前記樹脂は、前記楕円球形状の長軸方向が、前記樹脂膜の面内方向に沿う方向に配向し、前記粒子は、前記円盤形状の軸方向が、当該樹脂膜の厚さ方向に沿う方向に配向することを特徴とする請求項3に記載の樹脂膜。
【請求項5】
前記樹脂の前記樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および当該樹脂膜の厚さ方向の屈折率は、全て異なるとともに、前記粒子の屈折率楕円体は、円盤形状をなすことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項6】
前記樹脂および前記粒子は、前記樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および当該樹脂膜の厚さ方向の屈折率の少なくとも1つが他と異なることを特徴とする請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項7】
前記樹脂の、前記樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率をnx1およびny1とし、当該樹脂膜の厚さ方向の屈折率をnz1としたときに、nx1>ny1≧nz1であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂膜。
【請求項8】
前記粒子の、前記樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、当該樹脂膜の厚さ方向の屈折率をnz2としたときに、nx2≧ny2>nz2であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂膜。
【請求項9】
前記粒子は、スメクタイトを含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項10】
前記樹脂は、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリカーボネートおよびポリエステルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項11】
前記樹脂膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)、当該樹脂膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)としたときに、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)となり、かつ、前記樹脂のみを膜としたときに、当該樹脂のみの膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_poly(λ)、当該樹脂のみの膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_poly(λ)としたときに、(Re_poly(450)/Re_poly(550))/(Re(450)/Re(550))>(Rth_poly(450)/Rth_poly(550))/(Rth(450)/Rth(550))になることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項12】
前記樹脂膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)、当該樹脂膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)としたときに、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)となり、かつ、前記樹脂のみを膜としたときに、当該樹脂のみの膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_poly(λ)、当該樹脂のみの膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_poly(λ)としたときに、(Re_poly(650)/Re_poly(550))/(Re(650)/Re(550))<(Rth_poly(650)/Rth_poly(550))/(Rth(650)/Rth(550))になることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項13】
前記樹脂は、複屈折が逆波長分散特性を有し、前記粒子は、複屈折が正波長分散特性を有することを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項14】
前記樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性は、前記樹脂の波長分散特性により主に定まり、
前記樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性は、前記樹脂と前記粒子との混合の割合により定まることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の樹脂膜。
【請求項15】
樹脂と、粒子と、を少なくとも有する樹脂膜において、
前記樹脂の屈折率楕円体は、楕円球形状をなすとともに、前記粒子の屈折率楕円体は、円盤形状をなし、当該樹脂の屈折率楕円体および当該粒子の屈折率楕円体は、前記樹脂膜中で長手方向が当該樹脂膜の面内方向に沿うように配向することを特徴とする樹脂膜。
【請求項16】
樹脂膜を作成するための塗布溶液を準備する準備工程と、
前記塗布溶液を塗布し膜状体を作成する塗布工程と、
前記膜状体を延伸し前記樹脂膜とする延伸工程と、
を有し、
前記塗布溶液は、前記延伸工程で延伸したときに前記樹脂膜中で配向することで、当該樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と当該樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なるようになる、樹脂および粒子と、当該樹脂および当該粒子を分散する溶媒と、
を含む樹脂膜の作成方法。
【請求項17】
樹脂膜を作成するための塗布溶液を準備する準備工程と、
前記塗布溶液を塗布し膜状体を作成する塗布工程と、
前記膜状体を延伸し前記樹脂膜とする延伸工程と、
を有し、
前記塗布溶液は、前記延伸工程で延伸したときに前記樹脂膜中で配向することで、屈折率楕円体が楕円球形状をなすようになる樹脂と、屈折率楕円体が円盤形状をなすようになる粒子と、当該樹脂および当該粒子を分散する溶媒と、
を含む樹脂膜の作成方法。
【請求項18】
樹脂膜を作成するための塗布溶液を準備する準備工程と、
前記塗布溶液を塗布し膜状体を作成する塗布工程と、
前記膜状体を延伸し前記樹脂膜とする延伸工程と、
を有し、
前記塗布溶液は、前記延伸工程で延伸したときに前記樹脂膜中で配向することで、当該樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および当該樹脂膜の厚さ方向の屈折率が、全て異なるようになる樹脂と、屈折率楕円体が円盤形状をなすようになる粒子と、当該樹脂および当該粒子を分散する溶媒と、
を含む樹脂膜の作成方法。
【請求項19】
前記延伸工程は、1軸延伸を行うことで、前記樹脂膜に2軸性の位相差を有するようにすることを特徴とする請求項16乃至18の何れか1項に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項20】
前記延伸工程は、2軸延伸を行うことで、前記樹脂膜に2軸性の位相差を有するようにすることを特徴とする請求項16乃至18の何れか1項に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項21】
前記延伸工程前における前記膜状体中の前記粒子の、当該膜状体の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、当該膜状体の厚さ方向の屈折率をnz2としたときに、nx2=ny2>nz2であることを特徴とする請求項16乃至20の何れか1項に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項22】
前記樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性を、前記樹脂と前記粒子との混合の割合により調整することを特徴とする請求項16乃至21の何れか1項に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項23】
光の透過状態を制御する液晶と、
光を偏光させる偏光手段と、
樹脂と、粒子と、を少なくとも有する位相差フィルムと、
を備え、
前記位相差フィルムは、
前記樹脂および前記粒子が前記位相差フィルム中で配向することで、当該位相差フィルムの面内方向の複屈折の波長分散特性と当該位相差フィルムの厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なる液晶パネル。
【請求項24】
前記液晶は、電圧を印加しない状態で垂直配列するものであることを特徴とする請求項23に記載の液晶パネル。
【請求項25】
前記液晶の厚さ方向の位相差の波長分散特性に応じ、前記位相差フィルム中の前記樹脂と前記粒子との混合の割合が定まることを特徴とする請求項24に記載の液晶パネル。
【請求項26】
前記液晶の厚さ方向の位相差の波長分散特性および前記位相差フィルムの厚さ方向の位相差の波長分散特性は、ともに正波長分散特性であることを特徴とする請求項24または25に記載の液晶パネル。
【請求項27】
前記液晶の厚さ方向の位相差の波長分散特性および前記位相差フィルムの厚さ方向の位相差の波長分散特性は、ともにフラットであることを特徴とする請求項24または25に記載の液晶パネル。
【請求項28】
前記位相差フィルムの面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)、前記液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)としたときに、Re(450)/Re(550)<Rth_p(450)/Rth_p(550)になることを特徴とする請求項24乃至27の何れか1項に記載の液晶パネル。
【請求項29】
前記位相差フィルムの面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)、前記液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)としたときに、Re(650)/Re(550)>Rth_p(650)/Rth_p(550)になることを特徴とする請求項24乃至28の何れか1項に記載の液晶パネル。
【請求項30】
前記位相差フィルムの厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)、前記液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)としたときに、(Re(450)/Re(550))/(Rth_p(450)/Rth_p(550))<(Rth_p(450)/Rth_p(550))/(Rth(450)/Rth(550))になることを特徴とする請求項24乃至29の何れか1項に記載の液晶パネル。
【請求項31】
前記位相差フィルムの厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)、前記液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)としたときに、(Re(650)/Re(550))/(Rth_p(650)/Rth_p(550))>(Rth_p(650)/Rth_p(550))/(Rth(650)/Rth(550))になることを特徴とする請求項24乃至30の何れか1項に記載の液晶パネル。
【請求項32】
基板と、
前記基板上に設けられ、請求項1乃至14の何れか1項に記載の樹脂膜と、
を備える光学部材。
【請求項33】
光を偏光させる偏光手段と、
前記偏光手段上に設けられ、請求項1乃至14の何れか1項に記載の樹脂膜と、
を備える偏光部材。
【請求項34】
樹脂と、粒子と、当該樹脂および当該粒子を分散する溶媒と、
を含み、
前記樹脂および前記粒子は、当該樹脂および当該粒子を含む膜状体を延伸し樹脂膜としたときに当該樹脂膜中で配向することで、当該樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と当該樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なるようになる樹脂膜形成用塗布溶液。
【請求項35】
樹脂と、粒子と、当該樹脂および当該粒子を分散する溶媒と、
を含み、
前記樹脂および前記粒子は、当該樹脂および当該粒子を含む膜状体を延伸し樹脂膜としたときに当該樹脂膜中で配向することで、当該樹脂の屈折率楕円体が楕円球形状をなすようになるとともに、当該粒子の屈折率楕円体が円盤形状をなすようになる樹脂膜形成用塗布溶液。
【請求項36】
樹脂と、粒子と、当該樹脂および当該粒子を分散する溶媒と、
を含み、
前記樹脂および前記粒子は、当該樹脂および当該粒子を含む膜状体を延伸し樹脂膜としたときに当該樹脂膜中で配向することで、当該樹脂は、当該樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および当該樹脂膜の厚さ方向の屈折率が、全て異なるようになるとともに、当該粒子の屈折率楕円体が円盤形状をなすようになる樹脂膜形成用塗布溶液。
【請求項37】
前記粒子は、スメクタイトを含むことを特徴とする請求項34乃至36の何れか1項に記載の樹脂膜形成用塗布溶液。
【請求項38】
前記樹脂は、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリカーボネートおよびポリエステルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項34乃至37の何れか1項に記載の樹脂膜形成用塗布溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜等に関する。より詳しくは、例えば、偏光フィルムの偏光特性を補償する樹脂膜等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶パネルを備えた表示装置では、画像を表示するため、光を偏光させる偏光フィルムを設けることがある。このとき偏光フィルムに透過する光の偏光特性を補償するために、位相差フィルムを用いることがある。位相差フィルムを用いることで、斜め方向から液晶パネルを見たときのコントラストの低下や中間階調の反転現象などを抑制できる。
【0003】
特許文献1は、2軸性位相差補償フィルムが開示されている。これは、フィルムの面上における屈折率nx、nyと厚み方向の屈折率nzがnx>ny>nzである。また、可視光の範囲内で波長が増加するほど面上の位相差値が増加する逆波長分散特性を有する。さらに、厚み方向の位相差値の絶対値が減少する正常波長分散特性の負の値を有する。そして、2軸性補償フィルムと垂直配向パネルの厚み方向の位相差値を含む厚み方向の位相差値の総合が可視光の範囲内で波長に比例する。この場合、30nm~150nmの範囲の値を有する。
特許文献2は、位相差フィルムが開示されている。位相差フィルムは、高分子媒体に屈折率異方性を有する棒状の無機物を分散させてなるフィルムを延伸する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006-515686号公報
【特許文献2】特開2005-227427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、位相差フィルムなどの樹脂膜では、光の波長により位相差が異なる波長分散特性を有する。そして、従来の方法では、位相差について、樹脂膜の面内方向および樹脂膜の厚さ方向の波長分散特性のそれぞれを制御することは困難である。その結果、液晶パネルを見る角度により、色が異なって見えるという現象が生じる。例えば、特許文献1の発明についても、その具体的な実現方法の記載に不備があったため、拒絶査定となっている。このように、実際に樹脂膜の面内方向と樹脂膜の厚さ方向のそれぞれの波長分散特性を別々に制御する方法を実現することは、従来は困難であると考えられていた。
本発明は、位相差についての樹脂膜の面内方向および樹脂膜の厚さ方向の波長分散特性を、それぞれ制御することができる樹脂膜等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂膜は、樹脂と、粒子と、を少なくとも有する。樹脂および粒子は、樹脂膜中で配向する。その結果、樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なる。
【0007】
樹脂および粒子は、屈折率の異方性を有する。樹脂および粒子は、樹脂の異方性の方向と粒子の異方性の方向とが異なるように樹脂膜中で配向している。
【0008】
ここで、樹脂の屈折率楕円体は、楕円球形状をなすとともに、粒子の屈折率楕円体は、円盤形状をなすようにすることができる。
また、樹脂は、楕円球形状の長軸方向が、樹脂膜の面内方向に沿う方向に配向することが好ましい。さらに、粒子は、円盤形状の軸方向は、樹脂膜の厚さ方向に沿う方向に配向することが好ましい。
さらに、樹脂の樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および樹脂膜の厚さ方向の屈折率は、全て異なるようにすることができる。また、粒子の屈折率楕円体は、円盤形状をなすようにすることができる。
そして、樹脂および粒子は、樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および樹脂膜の厚さ方向の屈折率の少なくとも1つが他と異なるようにすることができる。
また、樹脂の、樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率をnx1およびny1とし、樹脂膜の厚さ方向の屈折率をnz1とする。このとき、nx1>ny1≧nz1であるようにすることができる。
さらに、粒子の、樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、樹脂膜の厚さ方向の屈折率をnz2とする。このとき、nx2≧ny2>nz2であるようにすることができる。
そして、粒子は、スメクタイトを含むようにすることができる。
さらに、樹脂は、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリカーボネートおよびポリエステルの少なくとも1つを含むようにすることができる。
またさらに、樹脂膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)、樹脂膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)とする。このとき、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)になるようにすることができる。また、樹脂のみを膜としたときに、この樹脂のみの膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_poly(λ)とする。さらに、この樹脂のみの膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_poly(λ)とする。このとき、(Re_poly(450)/Re_poly(550))/(Re(450)/Re(550))>(Rth_poly(450)/Rth_poly(550))/(Rth(450)/Rth(550))になるようにすることができる。
またさらに、樹脂膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)、樹脂膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)とする。このとき、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)になるようにすることができる。また、樹脂のみを膜としたときに、この樹脂のみの膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_poly(λ)とする。さらに、この樹脂のみの膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_poly(λ)とする。このとき、(Re_poly(650)/Re_poly(550))/(Re(650)/Re(550))<(Rth_poly(650)/Rth_poly(550))/(Rth(650)/Rth(550))になるようにすることができる。
そして、樹脂は、複屈折が逆波長分散特性を有し、粒子は、複屈折が正波長分散特性を有するようにすることができる。
さらに、樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性は、樹脂の波長分散特性により主に定まる。そして、樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性は、樹脂と粒子との混合の割合により定まる。
【0009】
また、樹脂と、粒子と、を少なくとも有する。樹脂の屈折率楕円体は、楕円球形状をなすようにすることができる。また、粒子の屈折率楕円体は、円盤形状をなすようにすることができる。そして、樹脂の屈折率楕円体および粒子の屈折率楕円体は、樹脂膜中で長手方向が樹脂膜の面内方向に沿うように配向する。
【0010】
そして、本発明の樹脂膜の作成方法は、準備工程と、塗布工程と、延伸工程と、を有する。塗布溶液は、樹脂と、粒子と、溶媒とを含む。粒子は塗布工程および乾燥工程での材料の流動により配向する。樹脂についてもその材料の特性により、塗布時に配向する場合がある。さらに樹脂および粒子は、延伸工程で延伸したときに樹脂膜中で配向する。これにより、樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なるようになる。溶媒は、樹脂および粒子を分散する。
また、本発明の樹脂膜の作成方法は、準備工程と、塗布工程と、延伸工程と、を有する。準備工程は、樹脂膜を作成するための塗布溶液を準備する。塗布工程は、塗布溶液を塗布し膜状体を作成する。延伸工程は、膜状体を延伸し樹脂膜とする。塗布溶液は、樹脂と、粒子と、溶媒と、を含む。樹脂は、延伸工程で延伸したときに樹脂膜中で配向する。これにより、樹脂は、屈折率楕円体が楕円球形状をなすようになる。粒子は、塗布工程および乾燥工程中の材料の流動、延伸工程で延伸したときに膜中で配向する。これにより、粒子は、屈折率楕円体が円盤形状をなすようになる。溶媒は、樹脂および粒子を分散する。
さらに、本発明の樹脂膜の作成方法は、準備工程と、塗布工程と、延伸工程と、を有する。準備工程は、樹脂膜を作成するための塗布溶液を準備する。塗布工程は、塗布溶液を塗布し膜状体を作成する。延伸工程は、膜状体を延伸し樹脂膜とする。塗布溶液は、樹脂と、粒子と、溶媒と、を含む。樹脂は、延伸工程で延伸したときに樹脂膜中で配向する。これにより、樹脂は、樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および樹脂膜の厚さ方向の屈折率が全て異なるようになる。粒子は、塗布工程および乾燥工程中の材料の流動で配向し、さらに延伸したときに膜中で配向する。これにより、粒子は、屈折率楕円体が円盤形状をなす。溶媒は、樹脂および粒子を分散する。
ここで、延伸工程は、1軸延伸を行うことで、樹脂膜に2軸性の位相差を有するようにしてもよい。
また、延伸工程は、2軸延伸を行うことで、樹脂膜に2軸性の位相差を有するようにしてもよい。
さらに、延伸工程前における膜状体中の粒子の、膜状体の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とする。また、膜状体の厚さ方向の屈折率をnz2とする。このとき、nx2=ny2>nz2にすることができる。
また、樹脂膜は塗布後、c-プレートとなっていてもよい。材料により、塗布工程および乾燥工程中に流動配向し、c-プレートになる場合があり、塗布後の屈折率楕円体は円盤形状になる。その場合、1軸延伸することで、同様に2軸性の位相差を有するようにしてもよい。この場合、屈折率楕円体は楕円球が押しつぶされて円盤に近付いた楕円形状になる。
また、塗布膜がc-プレートになっていても、さらに2軸延伸することによって、同様に2軸性の位相差を有するようにしてもよい。
樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性を、樹脂と粒子との混合の割合により調整するようにしてもよい。
【0011】
そして、本発明の液晶パネルは、液晶と、偏光手段と、位相差フィルムと、を備える。液晶は、光の透過状態を制御する。偏光手段は、光を偏光させる。位相差フィルムは、樹脂と、粒子と、を少なくとも有する。樹脂および粒子は、位相差フィルム中で配向する。その結果、位相差フィルムの面内方向の複屈折の波長分散特性と位相差フィルムの厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なる。
液晶は、電圧を印加しない状態で垂直配列するものであってもよい。
ここで、液晶の厚さ方向において求められる位相差に応じ、位相差フィルム中の樹脂と粒子との混合の割合が定まるようにすることができる。
そして、液晶の厚さ方向の位相差の波長分散特性および位相差フィルムの厚さ方向の位相差の波長分散特性を考える。このとき双方を、ともに正波長分散特性とすることができる。
さらに、液晶の厚さ方向の位相差の波長分散特性および前記位相差フィルムの厚さ方向の位相差の波長分散特性を考える。このとき双方を、ともにフラットとすることができる。
また、位相差フィルムの面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)とする。さらに、液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)とする。このとき、Re(450)/Re(550)<Rth_p(450)/Rth_p(550)になるようにすることができる。
さらに、位相差フィルムの面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe(λ)とする。さらに、液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)とする。このとき、Re(650)/Re(550)>Rth_p(650)/Rth_p(550)になるようにすることができる。
そして、位相差フィルムの厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)とする。さらに、液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)とする。このとき、(Re(450)/Re(550))/(Rth_p(450)/Rth_p(550))<(Rth_p(450)/Rth_p(550))/(Rth(450)/Rth(550))になるようにすることができる。
また、位相差フィルムの厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth(λ)とする。さらに、液晶の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_p(λ)とする。このとき、(Re(650)/Re(550))/(Rth_p(650)/Rth_p(550))>(Rth_p(650)/Rth_p(550))/(Rth(650)/Rth(550))になるようにすることができる。
【0012】
そして、本発明の光学部材は、基板と、基板上に設けられる上記樹脂膜と、を備える。
【0013】
また、本発明の偏光部材は、光を偏光させる偏光手段と、基板上に設けられる上記樹脂膜と、を備える。
【0014】
そして、本発明の樹脂膜形成用塗布溶液は、樹脂と、粒子と、溶媒とを含む。粒子は塗布工程および乾燥工程中の材料の流動、樹脂および粒子は、樹脂および粒子を含む膜状体を延伸し樹脂膜としたときに樹脂膜中で配向する。これにより、樹脂膜の面内方向の複屈折の波長分散特性と樹脂膜の厚さ方向の複屈折の波長分散特性とが異なるようになる。溶媒は、樹脂および粒子を分散する。
また、本発明の樹脂膜形成用塗布溶液は、樹脂と、粒子と、溶媒とを含む。粒子は塗布工程および乾燥工程中の材料の流動、樹脂および粒子を含む膜状体を延伸し樹脂膜としたときに樹脂膜中で配向する。これにより、樹脂は、屈折率楕円体が楕円球形状をなすようになる。そして、粒子は、屈折率楕円体が円盤形状をなすようになる。溶媒は、樹脂および粒子を分散する。
さらに、本発明の樹脂膜形成用塗布溶液は、樹脂と、粒子と、溶媒とを含む。粒子は塗布工程および乾燥工程中の材料の流動、樹脂および粒子は、樹脂および粒子を含む膜状体を延伸したときに樹脂膜中で配向する。これにより、樹脂は、樹脂膜の面内方向における2方向の屈折率および樹脂膜の厚さ方向の屈折率が、全て異なるようになる。そして、粒子は、屈折率楕円体が円盤形状をなす。溶媒は、樹脂および粒子を分散する。
そして、粒子は、スメクタイトを含むようにすることができる。
さらに、樹脂は、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリカーボネートおよびポリエステルの少なくとも1つを含むようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位相差についての樹脂膜の面内方向および樹脂膜の厚さ方向の波長分散特性を、それぞれ制御することができる樹脂膜等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本実施の形態が適用される表示装置について説明した図である。(b)は、図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネルの構成の一例を示したものである。
図2】(a)~(c)は、位相差フィルムの構造について示した概略図である。
図3】(a)~(b)は、樹脂および粒子の屈折率楕円体を示した図である。(c)は、位相差フィルムの面内方向および厚さ方向の屈折率の算出式を示した図である。
図4】(a)は、樹脂単独での複屈折の波長依存性を示した図である。(b)は、粒子単独での複屈折の波長依存性を示した図である。(c)~(e)は、樹脂と粒子とを混合したときの複屈折の波長依存性を示した図である。
図5】本実施の形態の位相差フィルムの作成方法を説明したフローチャートである。
図6】(a)~(b)は、セルギャップを変更しなかったときの液晶の縦方向位相差Rthの波長分散特性について、示した図である。
図7】(a)~(c)は、位相差フィルムの波長分散特性について、示した図である。
図8】(a)~(c)は、黒表示時の色度の輝度視野角分布について示した図である。(d)~(f)は、(a)~(c)のぞれぞれの点で示した箇所の分光分布を示した図である。
図9】(a)~(b)は、樹脂の屈折率楕円体の他の例について示した図である。
図10】(a)~(b)は、樹脂の屈折率楕円体の他の例について示した図である。
図11】(a)は、粒子が長方形の形状である場合の概念図である。(b)は、延伸工程で延伸した後の粒子の屈折率楕円体である。
図12】液晶の構造について示した図である。
図13】a)~(b)は、セルギャップを変更したときの液晶の縦方向位相差Rthの波長分散特性について、示した図である。
図14】(a)~(b)は、位相差フィルムの波長分散特性について、示した図である。
図15】(a)は、図14(a)に示した従来の位相差フィルムを使用したときの、黒表示時の輝度および色度を示した表示である。(b)は、図14(b)に示した本実施の形態の位相差フィルムを使用したときの、黒表示時の輝度および色度を示した表示である。
図16】(a)~(b)は、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図17】(a)~(b)は、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性について示した図である。
図18】実施例3について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図19】実施例4について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図20】実施例5について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図21】実施例6について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図22】比較例3について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図23】比較例4について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図24】実施例7について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図25】実施例8について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
図26】比較例5について、面内位相差および縦方向位相差の波長依存特性の評価をした図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定するものではない。またその要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0018】
<表示装置の説明>
図1(a)は、本実施の形態が適用される表示装置1について説明した図である。
図示する表示装置1は、例えばPC(Personal Computer)用の液晶ディスプレイ、あるいは液晶テレビなどである。表示装置1は、液晶パネル1aに画像を表示する。
【0019】
<液晶パネル1aの説明>
図1(b)は、図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネル1aの構成の一例を示したものである。
本実施の形態の液晶パネル1aは、例えば、VA型液晶パネルである。図示する液晶パネル1aは、バックライト11と、偏光フィルム12aとを有する。また、液晶パネル1aは、位相差フィルム13aと、液晶14と、位相差フィルム13bと、偏光フィルム12bとを有する。そしてこれらは、この順で積層する構造となる。なお、以下、偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとを区別しない場合は、単に、偏光フィルム12と言うことがある。また、位相差フィルム13aと位相差フィルム13bとを区別しない場合は、単に、位相差フィルム13と言うことがある。また、液晶14は、一般的にはガラス基板2枚の間に液晶層が挟み込まれたセル構造になっている。
【0020】
バックライト11は、液晶14に対し光を照射する。バックライト11は、例えば、冷陰極蛍光ランプや白色LED(Light Emitting Diode)である。
偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、光を偏光させる偏光手段の一例である。偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとは、偏光方向が互いに直交するようになっている。偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA:poly-vinyl alcohol)にヨウ素化合物分子を含ませた樹脂フィルムを備える。そしてこれをトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)からなる樹脂フィルムで挟み接着したものである。ヨウ素化合物分子を含ませることで光が偏光する。VA型液晶パネルの場合、これらのTACのうち、液晶14側のものを、本実施の形態の位相差フィルム13aと兼用することが多い。一般的にはTACを延伸したものか、COP(cyclo olefin polymer)を2軸延伸したものが使われている。
【0021】
液晶14には、図示しない電源が接続され、この電源により電圧を印加すると液晶14の配列方向が変化する。そして液晶14は、これにより、光の透過状態を制御する。
VA型液晶パネルの場合、液晶14に電圧を印加していないとき(電圧OFF)は、液晶分子が、図中垂直方向に配列する。そして、バックライト11から光を照射すると、まず、偏光フィルム12aを光が通過して偏光となる。そして、偏光は、液晶14をそのまま通過する。さらに、偏光フィルム12bは、偏光方向が異なるため、この偏光を遮断する。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できない。即ち、液晶14に電圧を印加しない状態では、液晶の色は、「黒」となる。
【0022】
対して、液晶14に最大電圧を印加しているときは、液晶分子が、図中水平方向に配列する。そして、偏光フィルム12aを通過した偏光は、液晶14の作用により偏光の方向が90度回転する。そのため、偏光フィルム12bは、この偏光を遮断せず、透過させる。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できる。即ち、液晶14に最大電圧を印加している状態では、液晶の色は、「白」となる。また、電圧は、電圧OFFと最大電圧の間とすることもできる。この場合、液晶14は、図中上下方向と図中上下方向に対する垂直方向の間の状態となる。即ち、液晶14は、上下方向および垂直方向の双方に交差する方向である斜め方向に配列する。この状態では、液晶の色は、「グレー」となる。よって、液晶14に印加する電圧をOFFから最大電圧の間で調整することで、黒、白の他に、中間階調が表現できる。そして、これにより画像を表示する。
【0023】
なお、図示はしていないが、カラーフィルタを使用することでカラー画像を表示することもできる。また、偏光フィルム12bの図中上側に、ハードコート層や低屈折率層を形成することもできる。
【0024】
図示する偏光フィルム12と位相差フィルム13とは、一体として作成することができる。詳しくは後述するが位相差フィルム13は、基板上に、例えば、塗布を行うことで形成することができる。即ち、偏光フィルム12上に位相差フィルム13を形成することができる。よって、偏光フィルム12と位相差フィルム13とを併せて、偏光部材の一例として捉えることもできる。また、偏光フィルム12を基板の一例とすれば、基板と位相差フィルム13とを併せて、光学部材の一例として捉えることもできる。なお、基板は、フィルムに限られるものではなく、例えば、ガラスなどであってもよい。この場合、例えば、光学部材は、レンズや光学素子である。
【0025】
しかしながら、液晶14を透過した光は、直線偏光から楕円偏光に偏光状態が変化する。例えば、黒表示させた場合、液晶パネル1aを鉛直方向から見たときは、黒色に見える。一方、液晶パネル1aを斜め方向から見たときは、液晶14のリタデーションが発生する。また、偏光フィルム12の軸が90°ではなくなる。そのため、光抜けが生じて白くなり、コントラストが低下するという問題が生じる。即ち、液晶パネル1aに視野角依存性が生じる。位相差フィルム13a、13bは、この楕円偏光を直線偏光に戻す機能を有する。位相差フィルム13a、13bを設けることで、液晶パネル1aの視野角依存性を補償することができる。詳しくは後述するが、本実施の形態の位相差フィルム13は、面内方向の位相差と厚さ方向の位相差の波長分散特性が異なる。このことにより、斜めから観察する場合において、液晶14および偏光フィルム12のそれぞれの波長分散特性を補償することが可能になる。そして、全波長域に渡って光抜けを抑えることが可能になる。
【0026】
<位相差フィルム13の詳細説明>
次に、本実施の形態の位相差フィルム13について詳細に説明を行う。
図2(a)~(c)は、位相差フィルム13の構造について示した概略図である。
本実施の形態の位相差フィルム13は、樹脂膜または膜の一例である。位相差フィルム13は、樹脂131と、粒子132と、を有する。また、位相差フィルム13は、樹脂131および粒子132の他に、樹脂131の原料である未反応のモノマーなどを含んでいてもよい。さらに、位相差フィルム13は、分散剤、消泡剤、レベリング剤などの添加剤を含んでいてもよい。樹脂131は、位相差フィルム13の主成分でもある。よって、樹脂131中に粒子132が分散していると言うこともできる。ただし、粒子132は、完全に分散するとは限らず、部分的に凝集していてもよい。そして、ある程度凝集したものが、樹脂131中に分布していてもよい。なお、ここでは、樹脂131を線状で、粒子132を円盤状として図示しているが、説明の便宜上、このような形状で図示している。よって、樹脂131および粒子132の実際の形状を必ずしも表すものではない。粒子132が、詳しくは後述するスメクタイトの場合、スメクタイトは平坦な盤状粒子とみなすことができる。また、スメクタイトの盤状粒子は、その平坦な面が位相差フィルム13の膜面に対し、ほぼ水平に配列している。
【0027】
また、図2(a)は、樹脂131中に粒子132が、均一に分散している場合を示している。即ち、この場合、粒子132は、樹脂131中で偏在していない。また、図2(b)は、樹脂131中に粒子132が、上側に偏在する場合を示す。さらに、図2(c)は、樹脂131中に粒子132が、下側に偏在する場合を示す。図2(b)、(c)のような場合でも、位相差フィルム13の機能を発揮することができる。
【0028】
樹脂131および粒子132は、屈折率の異方性を有し、樹脂131の異方性の方向と粒子132の異方性の方向とが異なるように位相差フィルム13中で配向している。以下、この事項について、詳しく説明する。
【0029】
図3(a)~(b)は、樹脂131および粒子132の屈折率楕円体を示した図である。
図3(a)は、樹脂131の屈折率楕円体を示した図であり、図3(b)は、粒子132の屈折率楕円体を示した図である。
屈折率楕円体は、位相差フィルム13の面内方向および厚さ方向を、それぞれxy方向およびz方向としたときの、屈折率の分布を表す。つまり、屈折率楕円体は、xyzの直交座標系において、任意の方向の屈折率を表す。なお、「面内方向」は、位相差フィルム13の面に沿った予め定められた2軸方向であり、ここでは、x方向およびy方向の2方向である。なおここでは、x方向およびy方向をまとめて、xy方向と言っている。
【0030】
図3(a)に示すように、樹脂131の屈折率楕円体は、楕円球形状をなす。そして、樹脂131は、楕円球形状の長軸C1方向が、位相差フィルム13の面内方向に沿う方向に配向する。また、これは、樹脂131は、楕円球形状の長手方向が、位相差フィルム13の面内方向に沿う方向に配向する、と言うこともできる。また、樹脂131の分子が、このような向きになるように配向すると言うこともできる。なお、図示するように、楕円球形状の短軸C2方向は、位相差フィルム13の厚さ方向になる。そして、これは、楕円球形状の短軸C2方向は、位相差フィルム13の面外方向になる、と言うこともできる。
【0031】
樹脂131のx方向の屈折率をnx1、y方向の屈折率をny1、z方向の屈折率をnz1とする。樹脂131が、位相差フィルム13中でこのように配向すると、(1)式に示すように、nx1>ny1=nz1の関係が成り立つ。なお、y方向の屈折率ny1とz方向の屈折率nz1とをまとめて、ny=z1とすることもできる。この場合、(1)’式に示すように、nx1>ny=z1の関係が成り立つ。
【0032】
また、図3(b)に示すように、粒子132の屈折率楕円体は、円盤形状をなす。そして、粒子132は、円盤形状の軸C3方向が、位相差フィルム13の厚さ方向に沿う方向に配向する。また、これは、粒子132は、円盤形状の長手方向が、位相差フィルム13の面内方向に沿う方向に配向する、と言うこともできる。
【0033】
粒子132のx方向の屈折率をnx2、y方向の屈折率をny2、z方向の屈折率をnz2とする。粒子132が位相差フィルム13中でこのように配向すると、(2)式に示すように、nx2=ny2>nz2の関係が成り立つ。なお、x方向の屈折率nx2とy方向の屈折率ny2とをまとめて、nx=y2とすることもできる。この場合、(2)’式に示すように、nx=y2>nz2の関係が成り立つ。
【0034】
なお、楕円球形状および円盤形状については、厳密な意味でこの形状が求められるものではない。つまり、楕円球形状および円盤形状から多少外れた形状であっても、位相差フィルム13として使用するには、通常は問題がないことが多い。よって、楕円球形状および円盤形状とは、略楕円球形状および略円盤形状も含む概念である。
【0035】
以上の説明より、樹脂131および粒子132は、位相差フィルム13の面内方向における2方向の屈折率(この場合、nx1、ny1およびnx2、ny2)および位相差フィルム13の厚さ方向の屈折率(この場合、nz1およびnz2)の少なくとも1つが他と異なる、と言うことができる。つまり、樹脂131では、屈折率nx1が、他の屈折率ny1、nz1と異なる。また、粒子132では、屈折率nz2が、他の屈折率nx2、ny2と異なる。
【0036】
そして、このような樹脂131と粒子132とを、割合としてa:1-aで混合する。ここでは、このときの位相差フィルム13の面内方向および位相差フィルム13の厚さ方向の屈折率を考える。
図3(c)は、位相差フィルム13の面内方向および厚さ方向の屈折率の算出式を示した図である。ここでは、樹脂131と粒子132とを、a:1-aで混合したときのx方向、y方向、z方向のそれぞれの屈折率を算出している。
【0037】
ここで、樹脂131と粒子132とが混合した状態のx方向の屈折率を、屈折率nxmとする。このとき、屈折率nxmは、(3)式で示すように、nx1*a+nx2*(1-a)となる。またこれは、(3)’式で示すように、nx1*a+nx=y2*(1-a)と表すこともできる。
また、樹脂131と粒子132とが混合した状態のy方向の屈折率を、屈折率nymとする。このとき、屈折率nymは、(4)式で示すように、ny1*a+ny2*(1-a)となる。またこれは、(4)’式で示すように、ny=z1*a+nx=y2*(1-a)と表すこともできる。
さらに、樹脂131と粒子132とが混合した状態のz方向の屈折率を、屈折率nzmとする。このとき、屈折率nzmは、(5)式で示すように、nz1*a+nz2*(1-a)となる。またこれは、(5)’式で示すように、ny=z1*a+nz2*(1-a)と表すこともできる。
【0038】
そして、面内方向であるxy方向の複屈折Δnは、(6)式で示すように、nxm-nymとなる。そして、これを式変形すると、複屈折Δnは、(7)式で示すように、(nx1-ny1)*aとなる。
また、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pは、(8)式で示すように、(nxm+nym)/2-nzmとなる。そして、これを式変形すると、複屈折Pは、(9)式で示すように、(nx1-ny=z1)*a/2+(nx=y2-nz2)*(1-a)となる。
【0039】
(7)式を見た場合、面内方向であるxy方向の複屈折Δnは、樹脂131の屈折率nx1、ny1に依存する。複屈折Δnは、粒子132を加えた分に比例して、複屈折Δnは小さくなる。つまり、複屈折Δnは、a倍となる。一方、その波長分散特性には影響を与えない。そのため、面内の複屈折△nは、樹脂131の複屈折△nの波長分散特性の傾きと一致する。
また、(9)式を見た場合、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pは、樹脂131および粒子132の屈折率の双方に依存する。即ち、複屈折Pは、樹脂131の屈折率nx1、ny=z1および粒子132の屈折率nx=y2、nz2により表される。
【0040】
粒子132を、位相差フィルム13に入れた場合、面内方向の位相差である面内位相差の波長分散特性の傾きは、変化しない。対して、位相差フィルム13の厚さ方向の位相差である縦方向位相差の波長分散特性の傾きは、変化する。
これは、以下の理由による。
つまり、波長λにおける複屈折(屈折率異方性)をΔnλ、Pλとすると、以下の数1式の関係が成り立つ。ここで、Cnano、Δnnano、λ、Cpoly、Δnpoly、λは、Cnano=1-a,Δnnano,λ=nx2,λ-ny2,λ,Cpoly=a,Δnpoly=nx1,λ-ny1,λの関係がある。なお、λの添え字は、波長λにおける値であることを意味する。
【0041】
【数1】

【0042】
そのため、粒子132を添加した位相差フィルム13の面内方向の複屈折の波長依存特性は、樹脂131の材料の波長依存特性に等しくなる。
一方、位相差フィルム13の厚さ方向の複屈折Pは、以下の数2式の関係が成り立つ。ここで、Pnano、λ、Ppoly、λは、それぞれ、以下の数3式で算出できる。
【0043】
【数2】
【0044】
【数3】

【0045】
波長分散特性が、正波長分散特性であるか逆正波長分散特性であるかは、|Cnano(Pnano、λ-Pnano、550)|と、|Cpoly(Ppoly、λ-Ppoly、550)|の大小関係によるが、樹脂131単独の位相差フィルム13の波長依存性に比べて、正波長分散特性に近づく。
【0046】
図4(a)は、樹脂131単独での複屈折の波長依存性を示した図である。なお、複屈折の値については、550nmの複屈折を1として、規格化している。
ここでは、樹脂131単独での屈折率として、面内方向であるxy方向の複屈折Δnを示している。さらに、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pを示している。この場合、複屈折Δnおよび複屈折Pの波長依存性は、同じになる。そのため、双方の線が重なり、1本の線として表される。そして、樹脂131単独の屈折率は、光の波長が大きくなるに従い、複屈折Δn、複屈折Pも大きくなる。この場合、樹脂131単独の複屈折Δn、複屈折Pは、逆波長分散特性を有すると言うことができる。
【0047】
また、図4(b)は、粒子132単独での複屈折の波長依存性を示した図である。
ここでは、粒子132単独での複屈折として、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pを示している。そして、粒子132単独の複屈折Pは、光の波長が大きくなるに従い、小さくなる。この場合、粒子132単独の複屈折Pは、正波長分散特性を有すると言うことができる。なお、複屈折Δnは、ほぼ0の値となる。
【0048】
図4(c)~(e)は、樹脂131と粒子132とを混合したときの複屈折の波長依存性を示した図である。
このうち図4(c)は、質量比で、樹脂131を95%、粒子132を5%としたときの複屈折の波長依存性を示している。また、図4(d)は、樹脂131を90%、粒子132を10%としたときの複屈折の波長依存性を示している。さらに、図4(e)は、樹脂131を80%、粒子132を20%としたときの複屈折の波長依存性を示している。そして、図4(c)~(e)では、それぞれ面内方向であるxy方向の複屈折Δnについて図示している。さらに、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pについて図示している。
【0049】
図4(c)~(e)を比較すると、複屈折Δnの波長依存性は、粒子132の含有量が増加しても、変化しない。即ち、複屈折Δnは、樹脂131の屈折率に依存し、粒子132の屈折率は、影響しないことの結果が現れている。
対して、図4(c)~(e)を比較すると、複屈折Pは、粒子132の含有量が増加するに従い、傾きが大きくなる。また、複屈折Pは、粒子132の含有量が増加するに従い、減少幅が大きくなると言ってもよい。即ち、複屈折Pは、樹脂131の屈折率nx1、ny=z1および粒子132の屈折率nx=y2、nz2により表される。よって、複屈折Pの変化は、粒子132の含有量が増加するに従い、樹脂131の寄与率が小さくなり、粒子132の寄与率が大きくなることの結果が現れている。
【0050】
このように、本実施の形態の位相差フィルム13は、位相差フィルム13の面内方向と位相差フィルム13の厚さ方向とで、複屈折の波長依存性を、それぞれ独立に制御できる。またこれは、本実施の形態の位相差フィルム13は、面内複屈折と面外複屈折とを、それぞれ独立に制御することができると言うこともできる。
そして、本実施の形態の位相差フィルム13では、図4に示すように、位相差フィルム13の面内方向の複屈折Δnの波長分散特性は、樹脂131の波長分散特性により主に定まる。一方、位相差フィルム13の厚さ方向の複屈折Pの波長分散特性は、樹脂131と粒子132との混合の割合により定まる。即ち、位相差フィルム13の厚さ方向の複屈折Pの波長分散特性は、樹脂131と粒子132との混合の割合により制御できる。
【0051】
また、本実施の形態の位相差フィルム13は、位相差フィルム13の面内方向の複屈折(この場合、複屈折Δn)の波長分散特性と、位相差フィルム13の厚さ方向の複屈折(この場合、複屈折P)の波長分散特性とが異なる、と言うこともできる。
【0052】
なお、上述した例では、樹脂131について、図3の(1)式に示すように、nx1>ny1=nz1の関係が成り立つとした。しかし、ny1=nz1については、厳密に成り立つ必要はなく、ほぼ同じであればよい。即ち、樹脂131の形状によっては、ny1とnz1とが、異なる数値となることがある。よって、この観点からは、nx1、ny1、nz1の関係は、nx1>ny1≧nz1の関係が成り立つと言うことができる。
同様に、粒子132について、図3の(2)式に示すように、nx2=ny2>nz2の関係が成り立つとした。しかし、nx2=ny2については、厳密に成り立つ必要はなく、ほぼ同じであればよい。即ち、粒子132の形状によっては、nx2とny2とが、異なる数値となることがある。よって、この観点からは、nx2、ny2、nz2の関係は、nx2≧ny2>nz2の関係が成り立つと言うことができる。
【0053】
上述した性質を有する樹脂131の例としては、シクロオレフィンポリマー(COP)などの高分子である。また、トリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)、ジアセチルセルロース(diacetylcellulose)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエステルなどの高分子である。これらは、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
また、上述した性質を有する粒子132の例としては、スメクタイトを挙げることができる。粒子132は、微粒子であり、さらに、ナノ粒子とすることができる。粒子132の粒径は、例えば、1nm~400nmとすることができる。
スメクタイト以外に使用できるものとしては、例えば、スメクタイト族の鉱物が挙げられる、具体的には、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイトが挙げられる。また、カオリナイト族鉱物であるカオリナイト、アンチゴナイト、マイカ族鉱物である雲母が挙げられる。
このうち、本実施の形態では、人工合成により得られた、有機スメクタイトを特に好適に用いることができる。有機スメクタイトとしては、例えば、ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライトを挙げることができる。また、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム・トリオクチルメチルアンモニウムが挙げられる。さらに、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム塩化ジポリオキシエチレンヤシアルキルメチルアンモニウムが挙げられる。
【0054】
次に、位相差フィルム13の作成方法の説明を行なう。
図5は、本実施の形態の位相差フィルム13の作成方法を説明したフローチャートである。
まず、位相差フィルム13を形成するための塗布溶液を準備する(ステップ101:準備工程)。この塗布溶液は、樹脂膜形成用塗布溶液の一例である。また、ここで、「準備」とは、塗布溶液を作成することで準備する場合の他、塗布溶液を購入して準備する場合も含む。
塗布溶液は、樹脂131と、粒子132と、樹脂131および粒子132を分散する溶媒とを含む。溶媒は、樹脂131および粒子132を分散することができるものであれば、特に限られるものでない。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンを使用することができる。また、MEK(メチルエチルケトン:methyl ethyl ketone)、エタノール、メタノール、ノルマルプロピルアルコールを使用することができる。さらに、イソプロピルアルコール、ブタノール、ミネラルスピリット、オレイン酸を使用することができる。またさらに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-methylpyrrolidone)、DMP(フタル酸ジメチル:dimethyl phthalate)を使用することができる。また、塗布溶液は、分散剤、消泡剤、レベリング剤などを含んでいてもよい。
このとき、位相差フィルム13の厚さ方向の複屈折Pの波長分散特性を、樹脂131と粒子132との混合の割合により調整することができる。
【0055】
次に、塗布溶液を塗布し膜状体を作成する(ステップ102:塗布工程)。この膜状体は、延伸を行う前の樹脂膜である。塗布を行う方法は、特に限られるものではないが、基板上に塗布溶液を滴下し、バーコータで塗布する方法で行なうことができる。また、基板上に塗布溶液を滴下し、基板を回転させ、遠心力で、均一な厚さの膜状体を作成する方法を採用することもできる。さらに、量産にて膜状体を作成するには、スリットコーターを使って、Roll to Rollで塗布してフィルムを形成する溶液キャスト法を用いることができる。この場合、表面がステンレス等からなる金属製バンドまたは金属製ドラムに薄膜状に塗布する。
【0056】
さらに、塗布した塗布膜を乾燥させる(ステップ103:乾燥工程)。乾燥は、室温で放置して、溶媒を揮発させる方法や、加熱または真空引きなどにより溶媒を強制的に除去する方法により行なうことができる。
本実施の形態では、溶融押出法(メルト法)でも塗布膜を形成することができる。溶融押出法(メルト法)は、溶かした樹脂131を装置から押し出してロールに接触するだけで、フィルムを形成できる方法で、樹脂131によって、溶液キャスト法、メルト法を選択することができる。
粒子132は塗布工程および乾燥工程での材料の流動により配向する。樹脂131についてもその種類によっては厚み方向に位相差をもつc-plateの状態に配向するものもある。
【0057】
そして、膜状体を延伸する(ステップ104:延伸工程)。これにより、樹脂131および粒子132が、配向することで膜状体に位相差が発現し、面内に軸を有する位相差フィルム13となる。以上の工程により、位相差フィルム13を作成することができる。延伸は、延伸装置等を使用する既知の方法で行うことができる。
【0058】
図6(a)~(b)は、液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性について、示した図である。
図示するように、液晶14の縦方向位相差Rth_pは、正波長分散特性を有する。なお、この場合の液晶14の縦方向位相差Rth_pは、詳しくは後述するが、セルギャップを変更しない場合に該当する。この場合、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthについても、同様に正波長分散特性とすることが好ましい。これにより、詳しくは後述するが、光抜けが小さくなり、色味がかって見えにくくなる。
つまり、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthの波長分散特性と、液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性とを合わせることが好ましい。
【0059】
図7(a)~(c)は、位相差フィルム13の波長分散特性について、示した図である。図7(a)~(c)で、横軸は、波長を表し、縦軸は、位相差を表す。図7(a)~(c)では、位相差フィルム13の面内方向の位相差である面内位相差Reを示す。さらに図7(a)~(c)では、位相差フィルム13の厚さ方向の位相差である縦方向位相差Rthを示す。
さらに、図8(a)~(c)は、黒表示時の色度の輝度視野角分布について示した図である。「輝度視野角分布」とは、液晶パネル1aの画面を垂直に見たときの状態を円の中心に置き、その視野を液晶パネル1a上に置いた半球上のどの方向から見たものかを平面状に表したものである図8(a)は、図7(a)で示す波長分散特性を有する位相差フィルム13を用いたときの、液晶パネル1aの輝度視野角分布である。また、図8(b)は、図7(b)で示す波長分散特性を有する位相差フィルム13を用いたときの、液晶パネル1aの輝度視野角分布である。さらに、図8(c)は、図7(c)で示す波長分散特性を有する位相差フィルム13を用いたときの、液晶パネル1aの輝度視野角分布である。またここでは、液晶パネル1aの画面を垂直に見たときを0°方向とし、これから30°方向および60°方向の角度から見たときの輝度を示す。さらに、輝度視野角分布を表す円内の最大輝度をMaxとして示す。この黒表示時の色度の視野角分布は、液晶の斜め方向の光抜けを表し、その輝度値が高いほどコントラストの視野角特性が悪いということになる。
そして、図8(d)~(f)は、図8(a)~(c)のぞれぞれの点T1~点T3で示した箇所の分光分布を示した図である。
【0060】
このときの液晶パネル1aの構成として、図1(b)のような構成にした。液晶14は、電圧を印加しない状態で垂直配向している。偏光フィルム12については、偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとが、それぞれ軸が直交するように配置した。位相差フィルム13a、13bについては、図7の特性をもったものを、使用した。そして、位相差フィルム13a、13bを、液晶14と偏光フィルム12a、12bとの間に配置し、それぞれの軸を直交するように配置した。そして隣合う偏光フィルム12aおよび位相差フィルム13aについては、偏光フィルム12aの吸収軸と位相差フィルム13aの遅相軸が直交するように配置するようにした。また、隣合う偏光フィルム12bおよび位相差フィルム13bについても同様の構成とした。
【0061】
図7(a)は、波長分散特性がフラットである位相差フィルム13について示した図である。つまり、図7(a)の位相差フィルム13は、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの双方が、波長依存性を有さない。よって、位相差は、波長によらず、ほぼ一定である。この場合、波長分散特性は、「Flat」となっている。
図8(a)で示す視野角特性および図8(d)で示す分光分布を見ると、例えば、点T1で示す箇所は、赤色若しくは青色である。ただし、波長450nmと波長650nmとで比較すると450nmでの光強度の方が高い。30°方向の輝度は、0.005、60°方向の輝度は、0.022、最大輝度は、0.023を示している。この場合、黒表示した場合、斜めから見ると青みがかって見える。
【0062】
図7(b)は、波長分散特性が逆波長分散特性である位相差フィルム13について示した図である。つまり、図7(b)の位相差フィルム13は、波長が増加するに従い、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthは、増加する。
図8(b)で示す視野角特性および図8(e)で示す分光分布を見ると、例えば、点T2で示す箇所は、赤色と青色とが混ざったマゼンタ色である。またここでは、30°方向の輝度は、0.008、60°方向の輝度は、0.048、最大輝度は、0.059を示している。つまり、輝度が図7(a)より大きい。この場合、例えば、黒表示時に液晶パネル1aの斜め方向から見ると、マゼンタ色がかって見える。
【0063】
図7(c)は、本実施の形態の位相差フィルム13について示した図である。即ち、逆波長分散特性を有する樹脂131と、正波長分散特性を有する粒子132とを含む場合である。この場合、図4(c)~(e)で示した複屈折Δnおよび複屈折Pの特性より、図7(c)のような、波長分散特性を示す。つまり、図7(c)の位相差フィルム13は、波長が増加するに従い、面内位相差Reは増加し、縦方向位相差Rthは、減少する。
図8(c)で示す視野角特性および図8(f)で示す分光分布を見ると、例えば、点T3で示す箇所は、色付の無い、無彩色である。つまり、図7(a)および図7(b)に比較して、光抜けが全波長域において抑えられている。またここでは、30°方向の輝度は、0.004、60°方向の輝度は、0.010、最大輝度は、0.010を示している。つまり、輝度が図7(a)より小さい。この場合、例えば、黒表示時において液晶パネル1aの斜め方向から見ると、ぼぼ着色はない。
【0064】
面内位相差Reは、位相差フィルム13の厚さにより、変化する。また、粒子132を添加した場合、添加した分だけ面内位相差Reが減少する。例えば、質量比で、樹脂131が90%で、粒子132が10%であった場合、樹脂131が100%の場合と比較して、同じ厚みの場合は、面内位相差Reは90%となる。これを抑制するためには、位相差フィルム13の厚さを増加させる必要がある。
【0065】
本実施の形態の位相差フィルム13では、位相差フィルム13の面内方向と位相差フィルム13の厚さ方向とで、位相差の波長依存特性を、それぞれ独立に制御できる。またこれは、位相差フィルム13では、位相差の波長依存特性を、位相差フィルム13の面内方向と位相差フィルム13面外方向とで、それぞれ独立に制御することができると言うこともできる。さらに、本実施の形態の位相差フィルム13は、位相差フィルム13の面内方向と位相差フィルム13の厚さ方向とで、位相差の波長依存特性を、それぞれ独立に制御できる、と言うこともできる。さらに、本実施の形態の位相差フィルム13は、縦方向位相差Rthおよび面内位相差Reの波長依存特性を、それぞれ独立に制御できる、と言うこともできる。いわば、本実施の形態の位相差フィルム13は、2軸性の位相差を有する位相差フィルムであり、この2つの位相差をそれぞれ独立に制御できる。
【0066】
また、延伸工程において、膜状体を延伸するには、1軸延伸で行う方法と、2軸延伸で行う方法がある。何れも、図7(c)で示す波長分散特性を備える位相差フィルム13を作成することができる。
【0067】
1軸延伸では、樹脂131単独の縦方向位相差Rthは、面内位相差Reの1/2になる。このとき、粒子132を添加することで、複屈折Δnは、小さくなる。そしてこれに応じ、面内位相差Reは小さくなる。そして、面内位相差Reを維持するため、位相差フィルム13の厚みを厚くした場合、縦方向位相差Rthは、粒子132を添加する分量により、大きく変化する。
これにより、上述した2軸性の位相差フィルム13となる。
【0068】
対して、2軸延伸では、樹脂131単独の縦方向位相差Rthを、面内位相差Reの1/2以外とすることができる。上述したように、位相差フィルム13の面内位相差Reは、厚さにより、変化する。そのため、位相差フィルム13の厚さにより面内位相差Reの制御をすることができる。よって、この2つの手法により、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthの設計の自由度が向上する。即ち、2軸延伸では、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthは、粒子132の添加量だけでなく、延伸工程でも制御できる。例えば、位相差フィルム13の波長分散特性を、粒子132の添加量で調整し、複屈折Pを2軸延伸で調整することができる。
【0069】
なお、上述した例では、樹脂131の屈折率楕円体は、楕円球形状であった。この場合、位相差フィルム13の面内方向における2方向の屈折率および位相差フィルム13の厚さ方向の屈折率である3つの屈折率のうち、2つは同じかほぼ同じである。ただしこれに限られるものではなく、これら3つの屈折率を全て異なるようにすることもできる。
【0070】
図9(a)~(b)は、樹脂131の屈折率楕円体の他の例について示した図である。
このうち、図9(a)は、延伸する前の樹脂131の屈折率楕円体を示す。即ち、上述した膜状体の屈折率楕円体を示す。ここでも樹脂131のx方向の屈折率をnx1、y方向の屈折率をny1、z方向の屈折率をnz1とする。この場合、図示するように、nx1=ny1>nz1となる。膜状体が、このような場合、この膜状体をc-プレートと言うことがある。
【0071】
また、図9(b)は、延伸した後の樹脂131の屈折率楕円体を示す。即ち、上述した位相差フィルム13の屈折率楕円体を示す。この場合、図示するように、nx1>ny1>nz1となる。この場合、位相差フィルム13は、樹脂131単独で、2軸性の位相差を有する位相差フィルムとなる。この場合、延伸したときの屈折率であるnx1、ny1、nz1の3つの屈折率は、全て異なる。そしてこのとき、Re(λ)/Re(550)と、Rth(λ)/Rth(550)とは、波長λによらずほぼ同じとなる。なお、nx1>ny1>nz1となるときを、屈折率楕円体が、2軸になると言うことがある。
【0072】
これに対し、上述した粒子132を加えると、同様に、2軸性の位相差を有する位相差フィルムとなる。ただし、面内位相差Reには、樹脂131の屈折率は、粒子132の添加量に応じた寄与分が加わる状態となる。また、厚さ方向位相差Rthについても、粒子132が加わることにより、その値が変わり、さらにその分量により、波長分散特性も変化する。そのため、樹脂131の屈折率が逆波長分散特性で、粒子132の波長分散特性が、正波長分散特性であったときは、Re(λ)/Re(550)と、Rth(λ)/Rth(550)とは、異なる。よって、例えば、波長λが、450nmのときと550nmのときとを比べた場合、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)となる。また、波長λが、650nmのときと550nmのときとを比べた場合、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)となる。
【0073】
さらに、樹脂131のみの膜としたときに、この樹脂131のみの膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_poly(λ)とする。そして、この樹脂131のみの膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_poly(λ)とする。このとき、(Re_poly(450)/Re_poly(550))/(Re(450)/Re(550))>(Rth_poly(450)/Rth_poly(550))/(Rth(450)/Rth(550))になることが好ましい。
そして、(Re_poly(650)/Re_poly(550))/(Re(650)/Re(550))<(Rth_poly(650)/Rth_poly(550))/(Rth(650)/Rth(550))になることが好ましい。
【0074】
図10は、図9に示した樹脂131を使用したときの、位相差フィルム13の複屈折を算出した場合を示す図である。
【0075】
樹脂131の屈折率楕円体は、図9(b)と同様である。そして、樹脂131のx方向の屈折率をnx1、y方向の屈折率をny1、z方向の屈折率をnz1とする。このとき、(11)式に示すように、nx1>ny1>nz1の関係が成り立つ。
【0076】
また、粒子132の屈折率楕円体は、図3(b)と同様である。粒子132の屈折率楕円体は、円盤形状をなす。そして、粒子132は、円盤形状の軸C3方向が、位相差フィルム13の厚さ方向に沿う方向に配向する。
【0077】
粒子132のx方向の屈折率をnx2、y方向の屈折率をny2、z方向の屈折率をnz2とする。粒子132が位相差フィルム13中でこのように配向すると、(12)式に示すように、nx2=ny2>nz2の関係が成り立つ。なお、x方向の屈折率nx2とy方向の屈折率ny2とをまとめて、nx=y2とすることもできる。この場合、(12)’式に示すように、nx=y2>nz2の関係が成り立つ。これは、図3と同様である。
【0078】
そして、このような樹脂131と粒子132とを、割合としてa:1-aで混合する。ここでは、このときの位相差フィルム13の面内方向および位相差フィルム13の厚さ方向の屈折率を考える。
図10(c)は、位相差フィルム13の面内方向および厚さ方向の屈折率の算出式を示した図である。ここでは、樹脂131と粒子132とを、a:1-aで混合したときのx方向、y方向、z方向のそれぞれの屈折率を算出している。
【0079】
ここで、樹脂131と粒子132とが混合した状態のx方向の屈折率を、屈折率nxmとする。このとき、屈折率nxmは、(13)式で示すように、nx1*a+nx2*(1-a)となる。またこれは、(13)’式で示すように、nx1*a+nx=y2*(1-a)と表すこともできる。
また、樹脂131と粒子132とが混合した状態のy方向の屈折率を、屈折率nymとする。このとき、屈折率nymは、(14)式で示すように、ny1*a+ny2*(1-a)となる。またこれは、(14)’式で示すように、ny1*a+nx=y2*(1-a)と表すこともできる。
さらに、樹脂131と粒子132とが混合した状態のz方向の屈折率を、屈折率nzmとする。このとき、屈折率nzmは、(15)式で示すように、nz1*a+nz2*(1-a)となる。
【0080】
そして、面内方向であるxy方向の複屈折Δnは、(16)式で示すように、nxm-nymとなる。そして、これを式変形すると、複屈折Δnは、(17)式で示すように、(nx1-ny1)*aとなる。(17)式は、図3の(7)式と同様である。
また、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pは、(18)式で示すように、(nxm+nym)/2-nzmとなる。そして、これを式変形すると、複屈折Pは、(19)式で示すように、((nx1+ny1)/2-nz1)*a+(nx=y2-nz2)*(1-a)となる。(19)式は、図3の(9)式と異なる。
【0081】
(17)式を見た場合、面内方向であるxy方向の複屈折Δnは、樹脂131の屈折率nx1、ny1に依存する。複屈折Δnは、粒子132を加えた分に比例して、複屈折Δnは小さくなるが、その波長分散特性には影響を与えない。これは、1軸延伸でも2軸延伸でも同様である。
対して、(19)式を見た場合、位相差フィルム13の厚さ方向であるz方向の複屈折Pは、樹脂131および粒子132の屈折率の双方に依存する。即ち、複屈折Pは、樹脂131の屈折率nx1、ny1、nz1および粒子132の屈折率nx=y2、nz2により表される。
【0082】
この場合も、粒子132を加えた位相差フィルム13は、面内方向と膜の厚さ方向とで、複屈折の波長依存性を、それぞれ独立に制御できる。これに加え、2軸延伸で、ny1とnz1をそれぞれ制御して、トータルの複屈折Pの値を調整することが可能となる。そのため、粒子132の添加量で、複屈折Pの波長依存性を調整し、複屈折Pの値は、2軸延伸で調整するという方法も可能となる。
【0083】
なお、図3の(1)式で示した樹脂131の屈折率の関係である、nx1>ny1=nz1は、延伸工程における延伸率が、概ね100%以上の場合に成立する。これより、延伸率が低い場合は、図10の(11)式に示すように、nx1>ny1>nz1の関係となる。
【0084】
2軸延伸の場合、樹脂131のnx1、ny1、nz1がさらに延伸により変化する。そのため、複屈折Pとその波長分散特性はさらに調整が可能になる。
また、2軸延伸についての効果は、c-プレートを1軸延伸する場合でも同様である。
今回、図9で樹脂131の屈折率楕円体が2軸になる場合(nx1>ny1>nz1)についての実施の形態を示した。しかし、粒子132の屈折率楕円体が完全な円盤状ではなく、2軸になる場合も考えられる。つまり、上記実施形態ではnx2=ny2>nz2の場合を示したが、nx2>ny2>nz2となる場合もある。このような場合でも、粒子132の添加による面内方向、厚さ方向についての波長分散特性を独立に制御することができる。即ち、上述した場合と同様の効果を得ることができる。この場合、粒子132は、長方形の形状である場合が例示される。図11(a)は、粒子132が長方形の形状である場合の概念図である。そして、延伸工程で延伸した後の屈折率楕円体を、図11(b)に示す。この屈折率楕円体では、nx2>ny2>nz2となる。
このnx2>ny2>nz2の関係の粒子132を含んだ溶液を塗布した場合、塗布工程および乾燥工程で流動配向し、屈折率楕円体が円盤形状となる膜状体が形成される。この場合、面内はランダムになって面内の屈折率は平均化されるため、nx2=ny2>nz2となる。この膜状体を延伸した場合、延伸条件によっては延伸方向にこの粒子もさらに配向されることとなり、この粒子132の位相差フィルム13全体としての屈折率の関係は、nx2≧ny2>nz2となる。
【0085】
次に、液晶14と位相差フィルム13との関係について説明する。
図12は、液晶14の構造について示した図である。
図示するように、液晶14は、一対のガラス基板141a、141bに液晶層142が挟まれたセル構造を有する。液晶14は、液晶セルとも呼ばれる。また他に、液晶14は、カラーフィルタ143B、143G、143Rを備える。カラーフィルタ143B、143G、143Rは、それぞれ青色(B)、緑色(G)、赤色(R)のカラーフィルタである。さらに、液晶14は、TFT(Thin Film Transistor)144と、一対の透明電極145a、145bと、一対の配向膜146a、146bとを備える。またさらに、液晶14は、層間絶縁膜147と、グラックマトリクス148とを備える。
【0086】
この構造の液晶14では、カラーフィルタ143B、143G、143Rの厚さを変更することで、液晶層142の厚さ(セルギャップ)を変更することができる。その結果、液晶14の縦方向位相差Rthの波長分散特性を変化させることができる。
【0087】
図13(a)~(b)は、セルギャップを変更したときの液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性について、示した図である。図13(a)で、横軸は、波長を表し、縦軸は、液晶14の厚さ方向の位相差である縦方向位相差Rth_pを表す。また、図13(b)で、横軸は、波長を表し、縦軸は、Rth_p(λ)/Rth_p(550)を表す。ここで、Rth_p(λ)は、液晶14の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差である。
図13(a)では、縦方向位相差Rth_pが、波長によらず、ほぼ一定となっている。また、図13(b)では、Rth_p(λ)/Rth_p(550)が、波長によらず、ほぼ一定となっている。この場合、液晶14の波長分散特性は、いわば「Flat」となっている。液晶層142の厚さ(セルギャップ)を変更する等により、液晶14の縦方向位相差Rth_pを、「Flat」にすることができる。通常の駆動用液晶材料は正波長分散であるが、このような方法で波長分散を調整することが可能となる。
【0088】
また、図14(a)~(b)は、位相差フィルム13の波長分散特性について、示した図である。このうち、図14(a)は、従来の位相差フィルム13の波長分散特性について、示した図である。また、図14(b)は、図13で示した液晶14に適した位相差フィルム13の波長分散特性について、示した図である。
図14(a)~(b)で、横軸は、波長を表し、縦軸は、位相差を表す。図14(a)~(b)では、位相差フィルム13の面内方向の位相差である面内位相差Reを示す。さらに図14(a)~(b)では、位相差フィルム13の厚さ方向の位相差である縦方向位相差Rthを示す。
【0089】
図14(a)に示した従来の位相差フィルム13の波長分散特性は、図7(b)で示した場合と類似する。つまり、波長分散特性が逆波長分散特性となる場合である。このとき、波長が増加するに従い、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthは、増加する。
対して、図14(b)に示した本実施の形態の位相差フィルム13の波長分散特性は、波長が増加するに従い、面内位相差Reは増加するが、縦方向位相差Rthは、あまり変化せず、ほぼ「Flat」である。
【0090】
図15(a)は、図14(a)に示した従来の位相差フィルム13を使用したときの、黒表示時の輝度および色度を示した表示である。また、図15(b)は、図14(b)に示した本実施の形態の位相差フィルム13を使用したときの、黒表示時の輝度および色度を示した表示である。ここでは、液晶パネル1aの画面を垂直に見たときを0°方向とし、これから30°方向および60°方向の角度から見たときの輝度および色差を示す。さらに、0°方向から90°方向の範囲内の最大輝度をMaxとして示し、そのときの色差を示す。この場合、輝度値が高いほど光抜けが多く、コントラストの視野角特性が悪いということになる。また色差が大きいほど色味がかって見えることになる。
【0091】
さらに、図15(c)は、図14(a)に示した従来の位相差フィルム13を使用したときに、黒表示時の色度の分光分布を示した図である。またさらに、図15(d)は、図14(b)に示した本実施の形態の位相差フィルム13を使用したときに、黒表示時の色度の分光分布を示した図である。
【0092】
図15(a)と図15(b)とを比較する、この場合、従来の位相差フィルム13より、本実施の形態の位相差フィルム13を使用した方が、輝度が小さい。つまり、光抜けが小さく、コントラストの視野角特性がよい。また、従来の位相差フィルム13より、本実施の形態の位相差フィルム13を使用した方が、色差が小さい。つまり、色味がかって見えにくい。
さらに、図15(c)と図15(d)とを比較する。この場合、従来の位相差フィルム13より、本実施の形態の位相差フィルム13を使用した方が、波長450nm付近および波長650nm付近の輝度が低い。つまり、青色や赤色の光抜けが小さい。つまり、色味がかって見えにくい。
【0093】
位相差フィルム13の縦方向位相差Rthの波長分散特性と、液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性の傾きの方向性とを合わせることが好ましい。
図13のように、液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性が、「Flat(フラット)」の場合がある、このとき、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthの波長分散特性を、図14(b)のように、「Flat(フラット)」にする。波長分散特性が、Flat(フラット)であるとは、波長に対し、縦方向位相差Rthや縦方向位相差Rth_pが、ほぼ変化しない場合を言う。また、これは縦方向位相差Rthや縦方向位相差Rth_pの波長依存性がほぼない、と言うこともできる。さらに、液晶14の厚さ方向の位相差(縦方向位相差Rth_p)の波長分散特性を考える。また、位相差フィルム13の厚さ方向の位相差(縦方向位相差Rth)の波長分散特性を考える。このとき双方を、ともにフラットとする、と言うこともできる。
また、図6のように、液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性が、正波長分散特性の場合がある。このとき、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthの波長分散特性を正波長分散特性にする。これは、液晶14の厚さ方向の位相差(縦方向位相差Rth_p)の波長分散特性を考える。また、位相差フィルム13の厚さ方向の位相差(縦方向位相差Rth)の波長分散特性を考える。このとき双方を、ともに正波長分散特性にする、と言うこともできる。また、液晶14の縦方向位相差Rth_pが、波長(λ)に対し単調減少関数となる場合がある。このとき、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthの波長分散特性の傾きの方向性を、波長(λ)に対し単調減少関数にする、と言うこともできる。
【0094】
位相差フィルム13の波長λ(nm)に対する面内方向における位相差(面内位相差)Re(λ)とする。また、液晶14の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差(縦方向位相差)をRth_p(λ)とする。このとき、Re(450)/Re(550)<Rth_p(450)/Rth_p(550)になることが好ましい。また、Re(650)/Re(550)>Rth_p(650)/Rth_p(550)になることが好ましい。
【0095】
また、位相差フィルム13の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差(縦方向位相差)をRth(λ)とする。このとき、(Re(450)/Re(550))/(Rth_p(450)/Rth_p(550))<(Rth_p(450)/Rth_p(550))/(Rth(450)/Rth(550))になることが好ましい。また、(Re(650)/Re(550))/(Rth_p(650)/Rth_p(550))>(Rth_p(650)/Rth_p(550))/(Rth(650)/Rth(550))になることが好ましい。
【0096】
以上のことを行うには、位相差フィルム13中の樹脂131と粒子132との混合の割合を調整する。これにより、位相差フィルム13の縦方向位相差Rthを制御する。別の言い方をすると、液晶14の縦方向位相差Rth_pの波長分散特性に応じ、位相差フィルム13中の樹脂131と粒子132との混合の割合が定める。
【実施例0097】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定するものではない。
【0098】
〔塗布溶液の作成〕
(実施例1)
樹脂131として、大阪ガスケミカル株式会社製のフルオレン (fluorene)含有ポリエステル樹脂を用意した。また、粒子132として、クニミネ工業株式会社製のスメクタイトを用意した。さらに、溶媒として、塩化メチレンを用意した。そして、樹脂131と粒子132とを、それぞれ100質量部、8質量部となる比率で、溶媒に投入した。この場合、固形分を25質量%となることを目標とした。
そして、スターラーを使用し、回転数500rpm~1000rpmにて、4hの撹拌を行った。さらに、撹拌後、オイル真空ポンプにより減圧し、脱泡処理をした。
これにより、位相差フィルム13を形成するための塗布溶液を作成した。
具体的には、樹脂131は、7.00g、粒子132は、0.568g使用した。また、塗布溶液は、25.81g作成でき、固形分濃度は、23.6質量%であった。
【0099】
(比較例1)
粒子132を使用せず、撹拌時間を、3.5hとした以外は、実施例1と同様にして、塗布溶液を作成した。つまり、比較例1では、樹脂131単体で位相差フィルム13を作成する場合となる。
樹脂131は、7.52g使用した。また、塗布溶液は、25.48g作成でき、固形分濃度は、23.9質量%であった。
【0100】
〔塗布、乾燥〕
ステンレス板上に、基板としてPET(ポリエチレンテレフタラート:polyethylene terephthalate)フィルムを載せた。そして、さらにその上に、作成した塗布溶液を塗布した。PETフィルムは、四国トーセロ株式会社製の離型PETフィルムPET-01-BUを使用した。また、塗布の際には、PETフィルム上に塗布溶液を滴下し、バーコータで塗布する方法で行った。このとき、塗工装置として、自動マイクロメータ付アプリケータを使用した。そして、塗工速度は、50mm/sとし、塗布厚は、700μmとした。
そして、塗布後に1次乾燥として、ダクト付オーブン内で、3日間自然乾燥した。さらに2次乾燥として、50℃にて24hの乾燥を行った。これにより、延伸前の膜状体を作成した。
実施例1および比較例1の双方で、このようにして塗布および乾燥を行った。その結果、実施例1では、膜厚が102.8μmとなり、比較例1では、膜厚が、94.0μmとなった。
【0101】
〔延伸〕
延伸装置により、膜状体に対して、1軸延伸を行った。このとき、延伸前の膜状体は、20mm×20mmの大きさとした。そして、温度を、樹脂131のガラス転移点(Tg)+5℃である70℃とし、この温度を達成後、待ち時間を30分設定し、その後、延伸を行った。このとき、延伸速度を、30mm/sとし、延伸率が250%となる延伸を行った。この場合の最大応力は、実施例1では、10.1Nであり、比較例1では、5.3Nであった。
その結果、膜厚は、実施例1の場合、90μmから48μmになった。また、比較例1の場合、83μmから47μmとなった。また、膜状体の幅は、双方とも20mmから11mmとなった。以上のようにして、実施例1および比較例1について、位相差フィルムを作成した。
【0102】
〔評価〕
面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性の測定を行った。実施例1では、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthは、図7(c)のようになった。即ち、面内位相差Reは、右上がりの曲線となり、縦方向位相差Rthは、右下がりの曲線となった。対して、比較例1では、面内位相差Reは、縦方向位相差Rthの1/2となり、双方とも右下がりの曲線となった。
【0103】
図16a)~(b)は、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性の評価をした図である。
ここでは、光の波長が、450nmのときと、光の波長が550nmのときとの比率を考える。この場合、光の波長λ(nm)に対する面内位相差Reを、Re(λ)とする。また、光の波長λ(nm)に対する縦方向位相差Rthを、Rth(λ)とする。
【0104】
このとき、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)になればよいとしている。図16(a)に図示するように、光の波長が、550nmより小さいときは、面内位相差Reは、光の波長が、550nmのときより小さい。そのため、Re(λ)/Re(550)は、1より小さい。対して、光の波長が、550nmより小さいときは、縦方向位相差Rthは、光の波長が、550nmのときより大きい。そのため、Rth(λ)/Rth(550)は、1より大きい。そのため、光の波長が、550nmより小さいときの、波長の代表値を450nmとしたとき、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)になる。
【0105】
また、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)であると言うこともできる。つまり、図16(a)に図示するように、光の波長が、550nmより大きいときは、面内位相差Reは、光の波長が、550nmのときより大きい。そのため、Re(λ)/Re(550)は、1より大きい。対して、光の波長が、550nmより大きいときは、縦方向位相差Rthは、光の波長が、550nmのときより小さい。そのため、Rth(λ)/Rth(550)は、1より小さい。そのため、光の波長が、550nmより大きいときの、波長の代表値を650nmとしたとき、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)になる。
【0106】
実施例1では、この関係を満たす。しかし、比較例1では、図16(b)に示すように、Re(450)/Re(550)>Rth(450)/Rth(550)となる。よって、実施例1とは、不等号の向きが逆である。また、比較例1では、Re(650)/Re(550)<Rth(650)/Rth(550)となる。よって、実施例1とは、不等号の向きが逆である。このような不等式を考えることで、面内位相差Reや縦方向位相差Rthが、図7(c)のような状態になっているか否かを評価できる。
【0107】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、クニミネ工業株式会社製のスメクタイトSPNの10%ジクロロエタン溶液を用意した。また、ポリメチルメタクレート(PMMA)樹脂と東洋スチレン株式会社製樹脂MS600とを、重量比60:40の混合物とした樹脂を用意した。そして、上記溶液中に、スメクタイトSPNの重量が、樹脂重量に対して64:100になるように加え、溶解させた。これにより、位相差フィルムを作成するための塗布溶液を作成した。
得られた塗布溶液を用いて、実施例1と同様の方法で塗布・乾燥・延伸を行った。このとき、延伸率は、200%とした。その結果、膜厚64μmの位相差フィルムを作成できた。
【0108】
(比較例2)
粒子132を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、塗布溶液を作成した。つまり、比較例1では、樹脂131単体で樹脂膜を作成する場合となる。
そして、実施例2および比較例2で示した組成により作成した塗布溶液を基に、樹脂膜を作成した。
【0109】
図17(a)~(b)は、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性について示した図である。
ここで、図17(a)は、実施例2および比較例2の面内位相差Reの波長依存特性について図示している。また、図17(b)は、実施例2および比較例2の縦方向位相差Rthの波長依存特性について図示している。
【0110】
実施例2および比較例2で、樹脂131として使用したメタクリル酸スチレン共重合体は、正波長分散特性を有する。また、粒子132も、正波長分散特性を有する。よって、この場合、樹脂131が逆波長分散特性を有する場合より、粒子132による効果は小さい。即ち、粒子132により、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性を変化させる効果は小さい。
【0111】
また、実施例2の樹脂膜は、位相差フィルム13として、特性上使用しにくい。ただし、粒子132を添加することにより、膜の面内方向と膜の厚さ方向とで、位相差の波長依存特性を、それぞれ独立に制御できる、という効果は、この場合でも生じる。また、この観点からは、樹脂131および粒子132が、双方とも逆波長分散特性を有していてもよい。即ち、図7(b)で示す場合であってもよい。さらに、樹脂131が、正波長分散特性を有し、粒子132が、逆波長分散特性を有している場合でもよい。このような樹脂膜は、光学フィルムとしての用途が見込まれる。
【0112】
また、以下の実施例3~6および比較例3~4を行った。なお、実施例3~6および比較例3~4の製造条件や評価結果について、以下の表1にまとめた。
【0113】
【表1】
【0114】
〔塗布溶液の作成〕
(実施例3~6)
樹脂131として、株式会社ダイセル製酢酸セルロース(品番L-20)を用意した。また、粒子132として、クニミネ工業株式会社製のスメクタイトを用意した。さらに溶媒として塩化メチレンを用意した。また、助溶剤としてメタノールを用意した。
そして、溶媒の塩化メチレンと助溶剤のメタノールとは、混合し、混合溶媒として使用した。このときの比率は、溶媒の塩化メチレン100質量部に対して、助溶剤のメタノールを20質量部とした。
そして、樹脂131と粒子132とを、それぞれ100質量部および32質量部となる比率で混合溶媒に投入し、塗布溶液を作製した。この場合、固形分を14%となることを目標とした。
実際には、樹脂131は、7.00g、粒子132は、2.24gを使用した。また、混合溶媒は、塩化メチレン47.32g、メタノール9.45gを混合したものを用いた。その結果、塗布溶液は66.01g作製でき、固形分濃度は14.0質量%であった。
【0115】
なお詳しくは、粒子132は、上記混合溶媒に投入した後、4、5日間静置後、6hスターラー攪拌して均一な溶液を得た。さらに、得られた溶液に対して、上記の固形分14%となる量の樹脂131を投入した。その後、スターラーを使用し、回転数500rpm~1000rpmにて24h攪拌を行った。さらに1日静置した。これにより、位相差フィルム13を形成するための塗布溶液を作製した。
【0116】
(比較例3~4)
粒子132を使用しなかったこと以外は、実施例3~6と同様にして、塗布溶液を作製した。即ち、比較例3~4は、樹脂131単体で、位相差フィルム13を作製する場合である。樹脂131は7.00g使用した。溶媒は塩化メチレン36.00g、メタノール7.00gを使用した。その結果、塗布溶液は、50.0gとなり、固形分濃度は14.0質量%であった。
【0117】
[塗布・乾燥]
ステンレス板上に、基板としてPETフィルムを載せた。さらにその上に、作製した塗布溶液を塗布した。塗布の際には、PETフィルム上に塗布溶液を滴下し、バーコータで塗布する方法で行った。この際、塗工装置として、テスター産業株式会社製自動塗工装置PI-1210を使用した。また、バーコータとしてマイクロメータ付アプリケータを使用した。そして、塗工速度は50mm/sとし、塗布厚は700μmとした。また、塗布後にダクト付オーブン内に入れ、1次乾燥として、40℃で30分乾燥を行った。さらに、2次乾燥として、100℃で30分乾燥を行った。これにより延伸前の膜状体を作製した。
【0118】
[延伸]
作製した膜状体に対して、延伸装置により、1軸延伸を行った。このとき、膜状体は20mm×20mmの大きさとした。そして、実施例3では、温度を165℃とし、この温度達成後、待ち時間を30分設定し、その後延伸を行った。このとき、延伸速度を0.5mm/sとし、実施例3では、延伸率が60%となる延伸を行った。また、実施例4では、延伸率が15%となる延伸を行った。さらに、実施例5では、延伸率が30%となる延伸を行った。またさらに、実施例6では、温度を155℃とし、延伸率が15%となる延伸を行った。
また、比較例3では、延伸率は60%とした。さらに、比較例4では、延伸率は15%とした。以上のようにして、実施例3~6および比較例3~4の位相差フィルム13を作製した。
【0119】
[評価]
面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの値及びそれぞれの値の波長依存特性の測定を行った。それぞれの位相差フィルム13の膜厚、波長550nmでの面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの値を表1に示した。実施例3~6では、いずれもRe>30nm、Rth<300nmの値の範囲に入っておりVA型液晶パネル用の光学補償フィルムとして有効な位相差フィルム13となっている。また、比較例3、4に比べ、縦方向位相差Rthが若干、大きくなっているがこれはスメクタイトを添加したことによる。
図18は、実施例3について、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性の評価をした図である。
また、図19は、実施例4について同様の評価をした図である。さらに、図20は、実施例5について同様の評価をした図である。またさらに、図21は、実施例6について同様の評価をした図である。そして、図22は、比較例3について同様の評価をした図である。そして、図23は、比較例4について同様の評価をした図である。
実施例3~6では、面内位相差Reは、右上がりの曲線となり、縦方向位相差Rthは、ほぼ水平に近い曲線になった。
それに対して比較例3~4では、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存性は、ほぼ等しく、双方とも右上がりの曲線になった。
【0120】
そして、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthのそれぞれで、光の波長が、450nmのときと、550nmのときとの比率を考える。この場合、光の波長λ(nm)での面内位相差Reを、Re(λ)とする。また、光の波長λ(nm)に対する縦方向位相差Rthを、Rth(λ)とする。
【0121】
このとき、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)になればよいと評価する。
図18~21に図示するように、実施例3~6では、光の波長が550nmより小さいときは、面内位相差Reは、光の波長が550nmのときより小さくなる。例えば、450nmでは、550nmの値を1とするとき、0.95となる。対して、縦方向位相差Rthは、変化がほとんどない。例えば、550nmのときの縦方向位相差Rthを1とすると、450nmのときは、ほぼ1となる。
ここでは、光の波長が、550nmより小さいときの、波長の代表値を450nmとする。そして、実施例3~6では、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)になる。
【0122】
また、実施例3~6では、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)であると言うこともできる。つまり、図18~21に図示するように、光の波長が、550nmより大きいときは、面内位相差Reは、光の波長が、550nmのときより大きい。そのため、Re(λ)/Re(550)は、1より大きい。例えば、650nmの面内位相差Reは、550nmのときを1とするとき、1.025となっている。対して、縦方向位相差Rthは、波長による変化がほとんどない。例えば、縦方向位相差は550nmのときの縦方向位相差Rthを1とすると、650nmのときは、ほぼ1となる。
ここでは、光の波長が、550nmより大きいときの、波長の代表値を650nmとする。そして、実施例3~6では、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)になる。
【0123】
以上説明したように、実施例3~6では、このような関係を満たす。しかし、比較例3~4では、図22~23に示すように、面内位相差Reと縦方向位相差Rthの波長依存性の差はほとんど見られない。
即ち、550nmのときの面内位相差Reを1とすると、450nmの面内位相差Reは0.95となる。一方、縦方向位相差Rthでも、550nmの時の縦方向位相差Rthを1とすると、450nmのときの値は、0.95である。550nmのときの面内位相差Reを1とすると、650nmの面内位相差Reは1.025となる。一方、縦方向位相差Rthでも、550nmの時の縦方向位相差Rthを1とすると、650nmのときの値は、1.025である。
【0124】
このように、実施例3~6については、面内位相差Re、縦方向位相差Rthで、それぞれ異なる波長依存性を実現することが可能となっている。一方、比較例3~4については、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存性がほぼ一致する。
そのため、実施例3~6については、図13に示したような特性を持つ液晶14と組み合わせる場合、これに最適な図14(b)の位相差フィルム13のような波長分散特性を、位相差値の調整により実現することが可能となる。そして、図15(b)のような斜めの光抜けを抑えた視野角特性を得ることが可能になる。
【0125】
一方、比較例3~4については、図14(a)の位相差フィルムのような特性になるため、図13に示したような波長分散特性を持つ液晶14と組み合わせる場合、図15(a)のような視野角特性となる。そして、斜め方向で青、赤色の光抜けが生じてしまう。
【0126】
さらに、実施例3~6と、粒子132を使用せず樹脂131のみの比較例3~4とを比較する。樹脂131のみの膜としたときに、この樹脂131のみの膜の面内方向における光の波長λ(nm)に対する、位相差をRe_poly(λ)とする。さらに、この樹脂131のみの膜の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_poly(λ)とする。このとき、(Re_poly(450)/Re_poly(550))/(Re(450)/Re(550))>(Rth_poly(450)/Rth_poly(550))/(Rth(450)/Rth(550))になっていることが分かる。このように、粒子132の添加有無により、面内位相差Reの波長依存性の差に比べて、縦方向位相差Rthの波長依存性が粒子132の添加の実施例3~6ではフラットになる。そして、上記の式のような関係になることが分かる。
【0127】
また、(Re_poly(650)/Re_poly(550))/(Re(650)/Re(550))<(Rth_poly(650)/Rth_poly(550))/(Rth(650)/Rth(550))になっていることが分かる。この長波長側の場合も粒子132の添加有無により、面内位相差Reの波長依存性の差に比べて、縦方向位相差Rthの波長依存性が粒子132の添加の実施例3~6ではフラットになる。そして、上記の式のような関係になることが分かる。
【0128】
また、以下の実施例7、8および比較例5を行った。なお、実施例7、8および比較例5の製造条件や評価結果について、以下の表2にまとめた。
【0129】
【表2】
【0130】
〔塗布溶液の作成〕
(実施例7、8)
樹脂131として、株式会社ダイセル製酢酸セルロース(品番L-20)と同酢酸セルロース(品番TL-105)の50:50の混合物を用意した。また粒子132としてクニミネ工業株式会社製のスメクタイトを用意した。さらに溶媒として塩化メチレンを用意した。また助溶剤としてメタノールを用意した。そして溶媒の塩化メチレンと助溶剤のメタノールとは混合し混合溶媒として使用した。このときの比率は溶媒の塩化メチレン100質量部に対して助溶剤のメタノール4質量部とした。
そして、樹脂131と粒子132とを、それぞれ100質量部および32質量部となる比率で混合溶媒に投入し、塗布溶液を作製した。この場合、固形分を14%となることを目標とした。
実際には、樹脂131は、3.18g、粒子132は、1.02gを使用した。また、混合溶媒は、塩化メチレン25.38g、メタノール1.04gを混合したものを用いた。その結果、塗布溶液は30.62g作製でき、固形分濃度は14質量%であった。
【0131】
なお詳しくは、粒子132は、上記混合溶媒に投入した後、4、5日間静置後、6hスターラー攪拌して均一な溶液を得た。さらに、得られた溶液に対して、上記の固形分14%となる量の樹脂131を投入した。その後、スターラーを使用し、回転数500rpm~1000rpmにて24h攪拌を行った。さらに1日静置した。これにより、位相差フィルム13を形成するための塗布溶液を作製した。
【0132】
(比較例5)
粒子132を使用しなかったこと以外は、実施例7、8と同様にして、塗布溶液を作製した。即ち、比較例5は、樹脂131単体で、位相差フィルム13を作製する場合である。樹脂131は4.20g使用した。溶媒は塩化メチレン21.6g、メタノール4.2gを使用した。その結果、塗布溶液は、30.0gとなり、固形分濃度は14質量%であった。
【0133】
[塗布・乾燥]
ステンレス板上に、基板としてPETフィルムを載せた。さらにその上に、作製した塗布溶液を塗布した。塗布の際には、PETフィルム上に塗布溶液を滴下し、バーコータで塗布する方法で行った。この際、塗工装置として、テスター産業株式会社製自動塗工装置PI-1210を使用した。また、バーコータとしてマイクロメータ付アプリケータを使用した。そして、塗工速度は50mm/sとし、塗布厚は900μmとした。また、塗布後にダクト付オーブン内に入れ、1次乾燥として、40℃で30分乾燥を行った。さらに、2次乾燥として、100℃で30分乾燥を行った。これにより延伸前の膜状体を作製した。
【0134】
[延伸]
作製した膜状体に対して、延伸装置により、1軸延伸を行った。このとき、膜状体は20mm×20mmの大きさとした。そして、温度を165℃とし、この温度達成後、待ち時間を30分設定し、その後延伸を行った。このとき、延伸速度を0.5mm/sとし、実施例7では、延伸率が15%となる延伸を行った。また、実施例8では、延伸率は60%とした。この場合の最大応力は実施例7では、31.5Nであり、実施例8では、49.6Nであった。その結果、膜厚は、実施例7の場合、87μmから83μmとなった。また、実施例8では、膜厚が91μmから77μmとなった。
比較例5では、延伸率が15%となる延伸を行った。この場合の最大応力は、48.2Nであった。その結果、膜厚は、比較例5の場合、87μmから83μmになった。
以上のようにして、実施例7、8および比較例5の位相差フィルム13を作製した。
【0135】
[評価]
面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの値及びそれぞれの値の波長依存特性の測定を行った。それぞれの位相差フィルム13の膜厚、波長550nmでの面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの値を表2に示した。実施例7、8ではいずれもRe>30nm、Rth<300nmの値となっており、VA型液晶パネル用の光学補償フィルムとしての有効な位相差フィルム13となっている。
【0136】
実施例7、8と比較例5とを比較した場合、(Re_poly(450)/Re_poly(550))/(Re(450)/Re(550))>(Rth_poly(450)/Rth_poly(550))/(Rth(450)/Rth(550))になっていることが分かる。このように、粒子132の添加有無により、Reの波長依存性の差に比べて、Rthの波長依存性が粒子132の添加の実施例7、8ではフラットになる。そして、上記の式のような関係になることが分かる。
【0137】
また、(Re_poly(650)/Re_poly(550))/(Re(650)/Re(550))<(Rth_poly(650)/Rth_poly(550))/(Rth(650)/Rth(550))になっていることが分かる。この長波長側の場合も粒子132の添加有無により、Reの波長依存性の差に比べて、Rthの波長依存性が粒子132の添加の実施例7、8ではフラットになる。そして、上記の式のような関係になることが分かる。
【0138】
実施例7、8についても実施例3~6と同様、面内位相差Re、縦方向位相差Rthで、それぞれ異なる波長依存性を実現することが可能となっている。一方、比較例5については、比較例3、4と同様に、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存性がほぼ一致する。
【0139】
そのため、実施例7、8については、図13に示したような特性を持つ液晶14と組み合わせる場合、これに最適な図14(b)の位相差フィルム13のような波長分散特性を、位相差値の調整により実現することが可能となる。そして、図15(b)のような斜めの光抜けを抑えた視野角特性を得ることが可能になる。
【0140】
一方、比較例5については、図14(a)の位相差フィルムのような特性になるため、図13に示したような波長分散特性を持つ液晶14と組み合わせる場合、図15(a)のような視野角特性となる。そして、斜め方向で青、赤色の光抜けが生じてしまう。
【0141】
図24は、実施例7について、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性の評価をした図である。また、図25は、実施例8について、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性の評価をした図である。さらに、図26は、比較例について、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存特性の評価をした図である。
実施例7、8では、面内位相差Reは、右上がりの曲線となり、縦方向位相差Rthは、ほぼ水平に近い曲線になった。
それに対して、比較例5では、面内位相差Reおよび縦方向位相差Rthの波長依存性は、ほぼ等しく、双方とも右上がりの曲線になった。
【0142】
実施例7、8でも、Re(450)/Re(550)<Rth(450)/Rth(550)になっている。また、実施例7、8でも、Re(650)/Re(550)>Rth(650)/Rth(550)になっている。
【符号の説明】
【0143】
1…表示装置、1a…液晶パネル、11…バックライト、12、12a、12b…偏光フィルム、13、13a、13b…位相差フィルム、14…液晶、131…樹脂、132…粒子、Re…面内位相差、Rth…縦方向位相差
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